JP2019112383A - ソフトカプセルの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】一般加工食品の製造過程における加熱殺菌工程に耐えうる耐熱性を有し、一般加工食品に適した食感を有するゼリー状のソフトカプセルの製造方法を提供する。【解決手段】本発明のソフトカプセルの製造方法は、カプセル皮膜の皮膜基剤として寒天を含むソフトカプセルを、水溶性食物繊維、還元澱粉糖化物及び澱粉糖化物からなる群より選ばれた少なくとも1種の成分を含有する浸漬液に浸漬させる浸漬工程を有する。【選択図】なし

Description

本発明は、一般加工食品、健康食品又は機能性食品等の食品類、化粧品、医薬品等の分野で用いられるソフトカプセルの製造方法に関する。
カプセルは、ハードカプセルとソフトカプセルがあり、その材質としてはゼラチン又は多糖類をベースに作製される。このうち、ソフトカプセルは、液状物の内包に適しており、内容物の臭いや味のマスキングに優れていることから、医薬品のみならず、食品や化粧品等の分野において幅広く用いられている。一般的にソフトカプセルは、その取り扱いを容易とするため、内容物を内包したゼリー状の生(なま)カプセル(「湿潤カプセル」、「ゼリーカプセル」とも呼ばれる)を製造した後、このゼリー状の生カプセルを目的に応じて適宜乾燥させることが行われている。ところが、乾燥処理を施していないゼリー状の生カプセルは、滑らかな舌触りと柔らかく弾力性に富む独特の食感を有していることから、生カプセルの一般加工食品分野への利用が期待されている。
しかしながら、生カプセルのカプセル皮膜には水分が多く含まれていることから、微生物が利用できる「自由水」の割合、すなわち、水分活性値(AW)も高く、微生物が活動しやすい状態であるため、カプセル物性を変化させたり、人が摂取するにあたり有害な微生物が増殖しやすい。それゆえ、ゼリー状の生カプセルにおける微生物の活動を抑制したり、微生物を減少させるために加熱殺菌工処理を行う必要がある。加熱殺菌処理としては、具体的には、一般食品の殺菌基準として、85℃で30分以上加熱することが挙げられる。それゆえ、生カプセルには、例えば、油中で30分間85℃の加熱処理を行っても、カプセルが溶解しないこと、及び、カプセルの皮膜の溶解や軟化によってカプセル同士の付着現象(ダマ)が発生しないこと、が求められる。ところが、上述したように、カプセル皮膜はゼラチン又は多糖類をベースに作製されているため、熱に弱く、85℃のような高温条件下ではカプセルが容易に溶解してしまう。
そこで、ソフトカプセルの耐熱性の向上を目的とした技術として、特許文献1では、耐熱性を有するジェランガムをカプセル皮膜の皮膜基剤として用いることが提案されている。また、特許文献2では、ゲル化剤とアルギン酸ナトリウムからなるカプセル皮膜を形成したのち、カルシウム塩水溶液に浸漬させてカプセル皮膜中のアルギン酸を架橋し、得られた生カプセルを乾燥させて耐熱性を付与する技術が提案されている。
特開2009−28544号公報 特開2014−47138号公報
しかしながら、特許文献1,2に記載されているカプセル皮膜は、ジェランガムと金属塩(特許文献1)又はアルギン酸ナトリウムとカルシウム塩(特許文献2)という、金属塩で反応させており、いずれも皮膜基剤の弾力性が低く、硬いゲルの状態となっている。それゆえ、これらの材料で作成された生カプセルは、食感や味が損なわれており、一般加工食品には適さないという問題があった。
また、特許文献2に記載されている技術は、生カプセルの耐熱性を向上させることを目的としたものではなく、乾燥工程を経た乾燥カプセルの耐熱性を向上させる技術であり、乾燥工程前の生カプセルは依然として熱に弱く、加熱殺菌処理によってカプセル皮膜のゲル化剤(寒天)が溶解し、カプセルが変形するおそれがあった。
したがって、本発明は上述した点に鑑みてなされたもので、その目的は、一般加工食品の製造過程における加熱殺菌工程に耐えうる耐熱性を有し、一般加工食品に適した食感を有するゼリー状のソフトカプセル及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明のソフトカプセルの製造方法は、カプセル皮膜の皮膜基剤として寒天を含むソフトカプセルを、水溶性食物繊維、還元澱粉糖化物及び澱粉糖化物からなる群より選ばれた少なくとも1種の成分を含有する浸漬液に浸漬させる浸漬工程を有する。この浸漬工程を行うことにより、寒天を皮膜基剤とするソフトカプセルに、食品製造時の加熱殺菌処理に耐えうる耐熱性が付与され、例えば、食用油中で30分間以上85℃の加熱処理を行っても、カプセルが溶解せず、ダマを形成しないソフトカプセルが得られる。
また、上述した浸漬液中には、水溶性食物繊維、還元澱粉糖化物又は澱粉糖化物成分が35重量%以上含まれていることも好ましい。これにより、耐熱性が安定して付与される浸漬液の好適な濃度が選択され、熱に対する安定性が高められたソフトカプセルが得られる。
また、上述した水溶性食物繊維、還元澱粉糖化物及び澱粉糖化物は、平均分子量が800以上であることも好ましい。これにより、耐熱性がより向上し、熱に対する安定性が高められたソフトカプセルが得られる。
さらに、この水溶性食物繊維は、ポリデキストロース又は難消化性デキストリンであることも好ましい。これにより、浸漬工程で用いられる水溶性食物繊維として、好適な材料が選択される。
また、上述の浸漬工程において、カプセル皮膜の水分活性値が0.92〜0.95となるまでソフトカプセルを浸漬液に浸漬させることも好ましい。これにより、カプセル皮膜の水分活性値を測定することによって、ソフトカプセルへの耐熱性の付与を確認することができる。
さらに、上述のソフトカプセルは、シームレスソフトカプセルであることも好ましい。これにより、製造が容易であり、一般加工食品に好適なカプセルの種類が選択され、食感も良好な寒天を皮膜基剤とするソフトカプセルが得られる。
本発明によれば、以下のような優れた効果を有するソフトカプセルの製造方法及びソフトカプセルを提供することができる。
(1)一般加工食品に適した食感を有し、食品の製造過程における加熱殺菌工程に耐えうる耐熱性を有するソフトカプセルが得られる。
(2)特定の液体に浸漬するのみで耐熱性が付与されるため、製造が容易である。
(3)浸漬液の材料である水溶性食物繊維及び還元澱粉糖化物は、一般加工食品に広く用いられる物質であるため、経口摂取に対しての安全性が高い。
本発明のソフトカプセルの製造方法は、寒天をカプセル皮膜の皮膜基剤に含むソフトカプセルを、水溶性食物繊維、還元澱粉糖化物及び澱粉糖化物からなる群より選ばれた少なくとも1種の成分を含有する浸漬液に浸漬させる工程を有している。一般的に、寒天ゲルの融解温度は通常80〜85℃であり、ゼラチンやカラギーナン等と比較すると融解温度は高いものの、加熱処理(例えば、食品製造時における加熱殺菌処理)に耐えるほどの耐熱性は有していない。しかしながら、カプセル皮膜を寒天で形成した生カプセルに対し、本発明における浸漬処理を施すことにより、優れた耐熱性が付与され、加熱処理を施しても生カプセルの溶解又は崩壊がなく、生カプセル同士が付着してダマを形成することもないため、一般加工食品を含め、さまざまな用途に用いることができるソフトカプセルが得られる。
本明細書において、耐熱性とは、本発明の浸漬処理を施していないカプセルと比べて、高い温度条件下で、カプセルの溶解、変形、又はカプセル同士の付着(ダマ)が見られないことをいう。また、加工食品として食品中に組み込まれた際に、ソフトカプセルが含まれる製品中(油液中又は水溶液中など)でソフトカプセルを85℃で30分以上加熱処理し、常温に冷却した後に、カプセルの溶解、変形、又はカプセル同士の付着が見られないことをいう。
本発明におけるソフトカプセルのカプセル皮膜は、寒天を皮膜基剤として用いている。なお、カプセル皮膜には、寒天の他に、本発明の作用効果を妨げない範囲において、他のゲル化材料成分、可塑剤、防腐剤、香料、甘味料、着色料などを含むことも可能である。他のゲル化材料成分としては、特に限定されないが、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸塩、ゼラチン、可溶性澱粉、デキストリン、グルコマンナン、カードラン、プルラン、ガム類(例えば、ローカストビーンガム、サイリウムシードガム、タマリンドシードガム、アラビアガム、ジェランガム、キサンタンガム、グアーガム等)、セルロース類(例えば、HPMC、HPC、MC、HEC、CMEC、HPMCP等)が挙げられる。また、可塑剤としては、例えば、グリセリン、ポリビニルアルコール、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール類、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
本発明におけるソフトカプセルの内容物としては、上述した寒天を皮膜基剤としたカプセル皮膜で被覆できるものであれば何でも用いることができ、主に、液体状又はゲル状の物質が内容物として好適に選択される。
本発明におけるソフトカプセルの製造方法としては、ゼリー状のソフトカプセルを得ることができる方法であれば、特に限定されず、例えば、多重ノズルでカプセル皮膜溶液と内容物を同時に冷却油中に滴下させて製造する滴下法(シームレス方式)、金型の間にカプセル皮膜溶液からなるフィルムを2枚挟み込み、フィルム間に内容物を充填した後に金型を圧着させて製造するロータリーダイ法などが挙げられる。このうち、ゼリー状のソフトカプセルが容易に製造できる観点から、滴下法で得られるシームレスソフトカプセルとして、本発明のソフトカプセルを製造することが好ましい。
本発明におけるソフトカプセルの浸漬工程について説明する。浸漬工程では、上述した製造方法により得られたソフトカプセルを浸漬液に浸漬することが行われる。浸漬液には、水溶性食物繊維、還元澱粉糖化物及び澱粉糖化物からなる群より選ばれた少なくとも1種の成分が含有されている。
浸漬液に配合される水溶性食物繊維としては、具体的には、ポリデキストロース、難消化性デキストリン等が挙げられ、耐熱性に優れる観点から、ポリデキストロースが特に好ましい。ポリデキストロースとしては、一例として、スターライトIII(株式会社光洋商会製品)、ライテスIIIシロップ(ダニスコジャパン株式会社製品)が用いられる。また、難消化性デキストリンとして用いられる製品としては、一例として、なんデキストリン(日本コーンスターチ株式会社製品)、パインファイバーC(松谷化学工業株式会社製品)が挙げられる。
浸漬液に配合される水溶性食物繊維の濃度は、耐熱付与効果に優れる観点から、35重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、70重量%以上がさらに好ましい。70重量%以上の水溶性食物繊維を含む浸漬液でカプセルを浸漬させることにより、85℃条件で1時間の加熱処理に耐え得るだけでなく、90℃条件で1時間の加熱処理を行っても、カプセルの溶解又は変形が見られないばかりか、カプセル同士の付着もなく、高度に耐熱化されたカプセルを得ることができる。また、浸漬時間としては、カプセルに安定的な耐熱性を獲得できる観点から、1時間以上とすることが好ましく、6時間以上とすることがより好ましく、12時間以上とすることがさらに好ましい。なお、カプセルの浸漬時間は、浸漬されたカプセルの水分活性値(AW)が0.92〜0.95、特に0.92〜0.93となるように調整されてもよい。
他方、浸漬液に配合される還元澱粉糖化物とは、糖アルコールの一種であり、澱粉を加水分解して得られる水飴を水素添加して還元することにより得られる。本発明において用いられる還元澱粉糖化物の平均分子量は、その耐熱付与効果の観点から、800以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、1200以上であることがさらに好ましい。ここで、本明細書における還元澱粉糖化物の平均分子量とは、重量平均分子量のことをいう。本発明において、還元澱粉糖化物として用いられる製品としては、一例として、PO−20、PO−30、PO−40又はPO−500(いずれも三菱商事フードテック株式会社製品)、アマミール(三菱商事フードテック株式会社製品)、エスイー58又はエスイー500(いずれも物産フードサイエンス株式会社製品)等が挙げられる。
浸漬液に配合される還元澱粉糖化物の濃度は、耐熱付与効果に優れる観点から、35重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、70重量%以上がさらに好ましい。70重量%以上の還元澱粉糖化物を含む浸漬液でカプセルを浸漬させることにより、85℃条件で1時間の加熱処理に耐え得るだけでなく、90℃条件で1時間の加熱処理を行っても、カプセルの溶解又は変形がなく、不可逆的なカプセル同士の付着も見られない、高度に耐熱化されたカプセルを得ることができる。また、浸漬時間としては、カプセルに安定的な耐熱性を獲得できる観点から、1時間以上とすることが好ましく、6時間以上とすることがより好ましく、12時間以上とすることがさらに好ましい。なお、カプセルの浸漬時間は、浸漬されたカプセルの水分活性値(AW)が0.92〜0.95、特に0.92〜0.94となるように調整されてもよい。
また、浸漬液に配合される澱粉糖化物とは、デキストリンであり、澱粉を加水分解することにより得られる。本発明において用いられる澱粉糖化物の平均分子量は、その耐熱付与効果の観点から、800以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、1200以上であることがさらに好ましい。また、デキストロース当量(DE)が10<DE<20の範囲にあるマルトデキストリンであることがより好ましい。本発明において、澱粉糖化物として用いられる製品としては、一例として、MALTRIN M150又はMALTRIN M180(いずれも三晶株式会社製品)、TK−16(松谷化学工業株式会社製品)等が挙げられる。
浸漬液に配合される澱粉糖化物の濃度は、耐熱付与効果に優れる観点から、35重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、70重量%以上がさらに好ましい。また、浸漬時間としては、カプセルに安定的な耐熱性を獲得できる観点から、1時間以上とすることが好ましく、6時間以上とすることがより好ましく、12時間以上とすることがさらに好ましい。なお、カプセルの浸漬時間は、浸漬されたカプセルの水分活性値(AW)が0.92〜0.95となるように調整されてもよい。
浸漬液には、水溶性食物繊維、還元澱粉糖化物及び澱粉糖化物を組み合わせて含有させることも可能である。また、本願発明の効果を妨げない範囲において、これら以外の他の成分を含んでいてもよい。
カプセルの浸漬にあたっては、浸漬液を入れた容器にソフトカプセルを入れ、一定時間浸漬させることにより行われる。ソフトカプセルが全体的に浸漬液に浸かるように浸漬させればよく、特に限定されないが、例えば、浸漬させるソフトカプセルの重量と浸漬液の割合が1:1となるように浸漬させることが好ましい。
浸漬処理されたカプセルは、その耐熱性付与効果の観点から、水分活性値(AW)が、0.92〜0.95に調整されていることが好ましい。また、浸漬処理されたソフトカプセルは、使用するまで浸漬液に浸漬された状態で0〜30℃で保存することができるが、微生物の増殖を抑制するため、10℃以下で保存されることがより好ましい。上述した浸漬処理を経たソフトカプセルは、耐熱性が向上しており、中鎖脂肪酸油中でソフトカプセルを85℃で1時間加熱処理しても、カプセルの溶解や変形がなく、カプセル同士の付着が見られない。それゆえ、ドレッシングソースのような調味料、飲料、乳製品又は菓子等の一般加工食品に好適に利用することができる。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下表1に、実施例で調製した浸漬液に含まれる各成分の仕様を示す。各成分NO.は、以下実施例で示す表3〜9に記載された成分NO.に対応している。
Figure 2019112383
[実施例1]
1.浸漬処理によるソフトカプセルの耐熱性付与(1)
(寒天皮膜ソフトカプセルの製造)
本実施例に用いたソフトカプセルは、多重ノズルでカプセル皮膜溶液と内容物を同時に冷却油中に滴下させて製造する滴下法により得られた、シームレスソフトカプセルを用いた。カプセル皮膜溶液には、水100重量部に寒天2重量部を溶解させた寒天溶液を用い、内容物には中鎖脂肪酸油(ココナードML;花王株式会社製品)を用いた。冷却油中に滴下されて形成したゼリー状のソフトカプセルを洗浄し、カプセル外周に付着した冷却油を除去した。得られたソフトカプセルの直径は5.8mmであり、ソフトカプセル1粒あたりの重量は112mg、ゼリー強度(日寒水式測定法)は500〜800g/cmであった。製造したソフトカプセルは、浸漬処理を行うまで、ゼリー状のカプセル皮膜の乾燥を防ぐため、保存液(精製水97.9重量%、ソルビン酸カリウム2重量%及びクエン酸0.1重量%)に入れて保存した。
(浸漬処理)
下記表3に示す成分を有する浸漬液を対照及び試験1−1〜1−13についてそれぞれ準備した。なお、本実施例における浸漬液のうち、試験1−1、1−3〜1−7、1−9〜13は、いずれも表1に示す各製品の原液をそのまま用いている。試験1−2及び試験1−8で用いた浸漬液は、いずれも精製水30gに対応する製品70gを溶解させたものを浸漬液として用いている。表3に示す対照及び試験1−1〜1−13の各浸漬液に、ソフトカプセルと浸漬液の重量割合が1:1となるように、ソフトカプセルを常温(20±5℃)で各浸漬液に浸漬させた。浸漬時間は12時間とした。
(浸漬後のカプセルの水分活性値の測定)
浸漬処理後、浸漬液から取り出したソフトカプセルについて、水分活性値(AW)を測定した。ソフトカプセルを水分活性測定装置(ロトロニック AW−パーム、ロトロニックジャパン株式会社製品)に付帯された容器に9割程度入れ、数値を測定した。
(食用油中85℃・1時間の加熱処理に対する耐熱性評価)
ソフトカプセルを浸漬液から引き上げ、5分間網の上に置いて浸漬液を除去した。40gの中鎖脂肪酸油(ココナードML;花王株式会社製品)を入れた試験瓶に、ソフトカプセル30粒を入れて封入し、1時間85℃の加熱処理を行った。加熱処理後、試験瓶を冷蔵庫に入れて7℃に冷却した。冷却後の試験瓶内の中鎖脂肪酸油中のソフトカプセルの外観を観察し、以下表2に示す基準に基づいて評価した。この評価のうち、◎及び〇と評価されたものは、一般加工食品の製造時における加熱殺菌工程等に耐えうる十分な耐熱性が付与されたものと評価できる。
Figure 2019112383
(カプセル同士の付着温度の測定)
ソフトカプセルを浸漬液から引き上げ、5分間網の上に置いて浸漬液を除去した。40gの中鎖脂肪酸油(ココナードML;花王株式会社製品)を入れた試験瓶に、ソフトカプセル30粒を入れて封入し、各試験温度(65℃〜95℃;5℃刻み)にて30分間加熱処理を行った。加熱処理後、試験瓶を冷蔵庫に入れて7℃に冷却した。冷却後の試験瓶内の中鎖脂肪酸油中のソフトカプセルの外観を観察し、上記表2に示す基準において、カプセル同士の付着が観察される「△」と評価された加熱温度を、「カプセル付着温度(℃)」とした。
対照及び試験1−1〜1−13の結果を以下表3に示す。
Figure 2019112383
対照及び試験1−1〜1−13の結果によれば、水溶性食物繊維、還元澱粉糖化物又は澱粉糖化物を含む浸漬液にソフトカプセルを浸漬することによって、一般加工食品の製造時における加熱殺菌工程等に耐えうる十分な耐熱性が付与されることがわかった。このうち、特に、水溶性食物繊維又は平均分子量が800以上の還元澱粉糖化物を含む浸漬液にソフトカプセルを浸漬することによって、より高く、安定した耐熱性が付与され、ゼリー状の生カプセルを油中で85℃、1時間加熱処理を行った場合においても、カプセルの溶解・変形がなく、カプセル同士の付着も生じないソフトカプセルが得られることがわかった。
具体的には、浸漬処理を行わない対照では、カプセル付着温度は70℃と低いが、水溶性食物繊維、還元澱粉糖化物又は澱粉糖化物を含む浸漬液にソフトカプセルを浸漬することによって、カプセル付着温度は85℃〜95℃にまで高くなることが見出された。このうち、水溶性食物繊維又は平均分子量が800以上の還元澱粉糖化物を含む浸漬液にソフトカプセルを浸漬することによって、カプセル付着温度は15℃以上も高くなり、特に水溶性食物繊維のうち、ポリデキストロースが配合された浸漬液にカプセルを浸漬することによって、カプセル付着温度は20℃も高くなり、優れた耐熱性が付与されることがわかった。他方、浸漬処理後のカプセルの水分活性値(AW)を確認したところ、耐熱性が付与されたカプセルは、浸漬処理を行っていないカプセル(対照)の水分活性値よりも低く調整されており、約0.92〜0.93の値を示す傾向があることがわかった。
[実施例2]
2.浸漬液の濃度の検討(1−1)
水溶性食物繊維であるポリデキストロース(成分NO.A−1)を含む浸漬液について、ポリデキストロースが70重量%含まれる浸漬液(原液)、35重量%含まれる浸漬液(精製水で原液を2倍に希釈したもの)、17.5重量%含まれる浸漬液(精製水で原液を4倍に希釈したもの)を準備した。実施例1で製造したソフトカプセルについて、上述した濃度が異なる3種類の浸漬液を用い、実施例1と同様の方法でカプセルの浸漬処理を行った。浸漬処理されたソフトカプセルについて、75℃、80℃、85℃又は90℃の加熱温度でそれぞれ1時間の加熱処理を行った以外は、実施例1と同様の方法で加熱処理を行い、それぞれの加熱温度で処理されたカプセルについて、表2に示す基準に基づいて耐熱性の評価を行った。結果を以下表4に示す。
Figure 2019112383
この結果によれば、水溶性食物繊維であるポリデキストロースが70重量%含まれる浸漬液で浸漬処理することにより、寒天を皮膜基材とするゼリー状のソフトカプセルに対し、90℃もの高温にも耐えうる安定した十分な耐熱性が付与されることがわかった。また、濃度が35重量%の浸漬液については、85℃までの加熱に耐えうる耐熱性が付与されることがわかった。なお、ポリデキストロースが17.5重量%含まれる浸漬液での浸漬処理では加熱温度が80℃までの耐熱性が付与された。
[実施例3]
3.浸漬液の濃度の検討(1−2)
平均分子量が約1230の還元澱粉糖化物(成分NO.B−1)を含む浸漬液について、その濃度が70重量%の浸漬液(原液)、35重量%の浸漬液(精製水で原液を2倍に希釈したもの)、17.5重量%含まれる浸漬液(精製水で原液を4倍に希釈したもの)を準備した。実施例1で製造したソフトカプセルについて、上述した濃度が異なる3種類の浸漬液を用い、実施例1と同様の方法でカプセルの浸漬処理を行った。浸漬処理されたソフトカプセルについて、75℃、80℃、85℃又は90℃の加熱温度でそれぞれ1時間の加熱処理を行った以外は、実施例1と同様の方法で加熱処理を行い、それぞれの加熱温度で処理されたカプセルについて、表2に示す基準に基づいて耐熱性の評価を行った。結果を以下表5に示す。
Figure 2019112383
この結果によれば、平均分子量が約1230の還元澱粉糖化物が70重量%含まれる浸漬液で浸漬処理することにより、寒天を皮膜基材とするゼリー状のソフトカプセルに対し、90℃もの高温にも耐えうる耐熱性が付与されることがわかった。また、濃度が35重量%の浸漬液については、85℃までの加熱に耐えうる耐熱性が付与されることがわかった。なお、濃度が17.5重量%含まれる浸漬液での浸漬処理では十分な耐熱性付与効果はみられなかった。
[実施例4]
4.浸漬処理時間の検討
下記表6に示す成分を有する浸漬液を対照及び試験4−1〜4−6についてそれぞれ準備した。なお、本実施例における浸漬液のうち、試験4−1と試験4−3〜4−6で用いた浸漬液は、いずれも表1に示す各製品の原液をそのまま用いている。試験4−2で用いた浸漬液は、精製水30gに対応する製品70gを溶解させたものを浸漬液として用いている。実施例1で製造したソフトカプセルについて、各浸漬液への浸漬処理時間を、1時間、3時間、6時間、12時間、24時間、36時間又は72時間と変えた以外は、実施例1と同様の方法で浸漬処理を行った。浸漬処理されたソフトカプセルについて、実施例1と同様の方法でカプセルの水分活性値の測定及び85℃で1時間加熱処理を行い、表2に示す基準に基づいて耐熱性の評価を行った。結果を以下表6に示す。
Figure 2019112383
この結果によれば、水溶性食物繊維を含有する浸漬液に浸漬させた場合には、浸漬時間が1時間と比較的短い時間であっても耐熱性が付与され、浸漬時間を12時間とすることにより、より優れた耐熱性が付与されることがわかった(試験4−1及び試験4−2)。また、還元澱粉糖化物を含有する浸漬液に浸漬させた場合においては、分子量が比較的大きい成分を用いると浸漬時間が短くても耐熱性が付与されるが、分子量が小さい場合には12時間以上の浸漬時間を要することがわかった(試験4−3〜4−5)。また、耐熱性が付与されたカプセルの水分活性値を確認したところ、耐熱性が得られたカプセル(評価:◎又は〇)の水分活性値は、対照区の約0.99よりも低く、約0.92〜0.95の狭い範囲内に調整される傾向にあることがわかった。それゆえ、浸漬処理後のカプセルの水分活性値(AW)が、この約0.92〜0.95の範囲内にあることが、ソフトカプセルの耐熱化に重要であると考えられた。
[実施例5]
5.浸漬処理によるソフトカプセルの耐熱性付与(2)
(寒天及びアルギン酸塩皮膜ソフトカプセルの製造)
以下実施例に用いたソフトカプセルは、多重ノズルでカプセル皮膜溶液と内容物を同時に冷却油中に滴下させて製造する滴下法により得られた、シームレスソフトカプセルを用いた。カプセル皮膜溶液には、水100重量部に寒天1重量部及びアルギン酸ナトリウム2重量部を溶解させた寒天及びアルギン酸塩溶液を用い、内容物にはオリーブオイル95重量%にレモンフレーバー5重量%を混合した香油を用いた。冷却油中に滴下されて形成したゼリー状のソフトカプセルを洗浄し、カプセル外周に付着した冷却油を除去した。その後、カプセルを5%の乳酸カルシウム水溶液に10分間浸漬させて、カプセル皮膜中に含まれるアルギン酸塩をカルシウム架橋させた。得られたソフトカプセルの直径は3mmであり、ソフトカプセル1粒あたりの重量は16mg、ゼリー強度(日寒水式測定法)は1000〜1300g/cmであった。製造したソフトカプセルは、浸漬処理を行うまで、ゼリー状のカプセル皮膜の乾燥を防ぐため、保存液(精製水97.9重量%、ソルビン酸カリウム2重量%及びクエン酸0.1重量%)に入れて保存した。
(浸漬処理)
下記表7に示す成分を有する浸漬液を対照及び試験5−1〜5−13についてそれぞれ準備した。なお、本実施例における浸漬液のうち、試験5−1、5−3〜5−7、5−9〜13は、いずれも表1に示す各製品の原液をそのまま用いている。試験5−2及び試験5−8で用いた浸漬液は、いずれも精製水30gに対応する製品70gを溶解させたものを浸漬液として用いている。表7に示す対照及び試験5−1〜5−13の各浸漬液に、ソフトカプセルと浸漬液の重量割合が1:1となるように、ソフトカプセルを常温(20±5℃)で各浸漬液に浸漬させた。浸漬時間は12時間とした。
浸漬処理を行ったソフトカプセルについて、実施例1と同様の方法で、食用油中85℃・1時間の加熱処理に対する耐熱性評価と、カプセル同士の付着温度の測定を行った。対照及び試験5−1〜5−13の結果を以下表7に示す。
Figure 2019112383
本実施例では、寒天を皮膜基剤とするカプセル皮膜に、耐熱性が高いとされるアルギン酸ゲルを含有させているものの、浸漬処理を行わない対照区のカプセルは75℃でカプセル同士が付着し、85℃では溶解してしまう。しかしながら、試験5−1〜5−8の結果によれば、水溶性食物繊維、還元澱粉糖化物又は澱粉糖化物を含む浸漬液にソフトカプセルを浸漬することによって、一般加工食品の製造時における加熱殺菌工程等に耐えうる十分な耐熱性が付与されることがわかった。具体的には、浸漬処理を行わない対照区では、カプセル付着温度は75℃と低いが、水溶性食物繊維、還元澱粉糖化物又は澱粉糖化物を含む浸漬液にソフトカプセルを浸漬することによって、カプセル付着温度は85℃〜95℃にまで高くなることが見出された。
[実施例6]
6.浸漬液の濃度の検討(2−1)
実施例5で製造した、寒天及びアルギン酸塩皮膜のソフトカプセルを用いて、次の試験を行った。水溶性食物繊維であるポリデキストロース(成分NO.A−1)を含む浸漬液について、ポリデキストロースが70重量%含まれる浸漬液(原液)、35重量%含まれる浸漬液(精製水で原液を2倍に希釈したもの)、17.5重量%含まれる浸漬液(精製水で原液を4倍に希釈したもの)を準備した。実施例5と同様の方法で、上述した濃度が異なる3種類の浸漬液を用い、ゼリー状のシームレスソフトカプセルの浸漬処理を行った。浸漬処理されたソフトカプセルについて、75℃、80℃、85℃又は90℃の加熱温度でそれぞれ1時間の加熱処理を行った以外は、実施例5と同様の方法で加熱処理を行い、それぞれの加熱温度で処理されたカプセルについて、表2に示す基準に基づいて耐熱性の評価を行った。結果を以下表8に示す。
Figure 2019112383
この結果によれば、水溶性食物繊維であるポリデキストロースが70重量%含まれる浸漬液で浸漬処理することにより、寒天及びアルギン酸塩を皮膜基材とするゼリー状のソフトカプセルに対し、90℃もの高温にも耐えうる安定した十分な耐熱性が付与されることがわかった。また、濃度が35重量%の浸漬液については、85℃までの加熱に耐えうる耐熱性が付与されることがわかった。なお、ポリデキストロースが17.5重量%含まれる浸漬液での浸漬処理では加熱温度が80℃までの耐熱性が付与された。
[実施例7]
7.浸漬液の濃度の検討(2−2)
実施例5で製造した、寒天及びアルギン酸塩皮膜のソフトカプセルを用いて、次の試験を行った。平均分子量が約1230の還元澱粉糖化物(成分NO.B−1)を含む浸漬液について、その濃度が70重量%の浸漬液(原液)、35重量%の浸漬液(精製水で原液を2倍に希釈したもの)、17.5重量%含まれる浸漬液(精製水で原液を4倍に希釈したもの)を準備した。実施例5と同様の方法で、上述した濃度が異なる3種類の浸漬液を用い、ゼリー状のシームレスソフトカプセルの浸漬処理を行った。浸漬処理されたソフトカプセルについて、75℃、80℃、85℃又は90℃の加熱温度でそれぞれ1時間の加熱処理を行った以外は、実施例5と同様の方法で加熱処理を行い、それぞれの加熱温度で処理されたカプセルについて、表2に示す基準に基づいて耐熱性の評価を行った。結果を以下表9に示す。
Figure 2019112383
この結果によれば、平均分子量が約1230の還元澱粉糖化物が70重量%含まれる浸漬液で浸漬処理することにより、寒天及びアルギン酸塩を皮膜基材とするゼリー状のソフトカプセルに対し、90℃もの高温にも耐えうる耐熱性が付与されることがわかった。また、濃度が35重量%の浸漬液については、85℃までの加熱に耐えうる耐熱性が付与されることがわかった。なお、濃度が17.5重量%含まれる浸漬液での浸漬処理では十分な耐熱性付与効果はみられなかった。
本発明は、上記の実施形態又は実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態も技術的範囲に含むものである。

Claims (6)

  1. カプセル皮膜の皮膜基剤として寒天を含むソフトカプセルを、水溶性食物繊維、還元澱粉糖化物及び澱粉糖化物からなる群より選ばれた少なくとも1種の成分を含有する浸漬液に浸漬させる浸漬工程を有することを特徴とするソフトカプセルの製造方法。
  2. 前記浸漬液中には、前記成分が35重量%以上含まれていることを特徴とする請求項1に記載のソフトカプセルの製造方法。
  3. 前記水溶性食物繊維、還元澱粉糖化物及び澱粉糖化物は、平均分子量が800以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のソフトカプセルの製造方法。
  4. 前記水溶性食物繊維は、ポリデキストロース又は難消化性デキストリンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のソフトカプセルの製造方法。
  5. 前記浸漬工程において、前記カプセル皮膜の水分活性値が0.92〜0.95となるまで前記ソフトカプセルを前記浸漬液に浸漬させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のソフトカプセルの製造方法。
  6. 前記ソフトカプセルがシームレスソフトカプセルであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のソフトカプセルの製造方法。
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