JP2019112232A - 紙送りロール用ゴム組成物および紙送りロール - Google Patents

紙送りロール用ゴム組成物および紙送りロール Download PDF

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Abstract

【課題】摩擦係数の保持性と耐摩耗性に優れた紙送りロール用ゴム組成物および紙送りロールを提供する。【解決手段】ゴム組成物は、ポリマー成分と軟化剤と架橋剤とを少なくとも含有し、紙送りロール用ゴム組成物中に占めるポリマー成分の比率は44質量%以上であり、ポリマー成分はエチレン−プロピレン−ジエン共重合体を含み、軟化剤は、40℃における動粘度が10mm2/s以上60mm2/s以下の、ポリ−α−オレフィンである。【選択図】図16

Description

本発明は、紙送りロール用ゴム組成物(以下では単に「ゴム組成物」と記すことがある)と、かかるゴム組成物からなるゴム層を備えた紙送りロールとに関する。
静電気式複写機、レーザープリンター、もしくはファクシミリなどのOA機器、または自動預金支払機などに使用される紙送りロールには、天然ゴム(NR)、ウレタンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(以下「EPDM」と記すこともある)、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、または塩素化ポリエチレンゴム等が用いられている。中でも、安価で耐候性に優れるという理由から、EPDMが多く用いられている。このような紙送りロールには、通紙による搬送性能の低下を抑え、搬送性能を長期に渡って安定化する為に、摩擦係数の保持性が要求されており、紙種の多様化に伴い、その要求は、ますます高度化している。これらの要求に対し、これまでに開発された技術としては、たとえば特許文献1および2に記載の技術が挙げられる。
特許文献1には、(A)エチレン・α−オレフィン・ジエン共重合ゴム100重量部に対して、(B)下記一般式(I)
1OCOOR2 ・・・・(I)
(式中、R1 およびR2 は同一または異なるものであり、炭素数10〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、あるいはシクロアルキル基を含むアルキル基であって、R1およびR2のうち少なくとも一つは炭素数10〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である。)で表わされる長鎖アルキルカーボネート15〜160重量部を含むことを特徴とする架橋可能なゴム組成物が記載されている。
特許文献2には、動的粘弾性の温度分散測定において、損失正接tanδがとる極大値が1.1以下であり、損失正接tanδが極大値を示すときの温度であるTmax(以下ではT(tanδmax)と記す)が−40℃以下であり、かつ、室温領域の動的弾性率E1(22℃)が2.1MPa以下であるゴム組成物が記載されている。
特開平9−31269号公報 特開2013−139315号公報
しかしながら、特許文献1に記載の架橋可能なゴム組成物は、一般式(I)のR1およびR2の炭素数が限定された上記の長鎖アルキルカーボネート(B)をエチレン・α−オレフィン・ジエン共重合ゴム(A)に特定量配合することにより、通常市販のパラフィンオイルに較べて耐寒性を向上させつつエチレン・α−オレフィン・ジエン共重合ゴム(A)に優れた耐摩耗性を付与し、摩擦係数の変化が少ない加硫ゴムを得ることができるとされている。しかし、耐寒性についての具体的な物性パラメーターの指定はなく、長鎖アルキルカーボネート(B)と併用しても良いとされる既存の軟化剤についても、耐寒性に影響する動粘度の指定がない。したがって、本特許文献では、特に耐寒性の向上を摩擦係数の向上に結び付けて考察している訳ではなく、長鎖アルキルカーボネート(B)をエチレン・α−オレフィン・ジエン共重合ゴム(A)と組み合わせることにより摩擦係数保持性が向上する理由を、長鎖アルキルカーボネート(B)がエチレン・α−オレフィン・ジエン共重合ゴム(A)に対して相溶性と相分離性の中間の性質を有することから、表面に微量の長鎖アルキルカーボネート(B)がブリードアウトして膜を形成するためとしている。また、同じ理由で耐摩耗性も向上すると推測しているに過ぎない。その結果、長鎖アルキルカーボネート(B)の配合量の上限値が160重量部と多く、合わせて、ゴム補強材および充填剤の望ましい配合量の上限値も、エチレン・α−オレフィン・ジエン共重合ゴム(A)当り200重量部と多い値が記載されている。そのため、一般式(I)のR1およびR2の炭素数が限定された上記の長鎖アルキルカーボネート(B)をエチレン・α−オレフィン・ジエン共重合ゴム(A)に特定量配合するだけでは、通紙による摩擦係数保持性の向上(および耐摩耗性の向上)に関して、十分な効果を上げることができなかった。
特許文献2は、動的粘弾性の温度分散測定において、低温領域の粘弾性特性であるtanδmax(動的粘弾性の温度分散測定において、損失正接tanδがとる極大値)が1.1以下であり、動的粘弾性の温度分散測定において、損失正接tanδが極大値を示すときの温度であるTmax(以下ではT(tanδmax)と記す)が−40℃以下であり、かつ、室温領域の22℃における動的(貯蔵)弾性率E1(22℃)が2.1MPa以下であるゴム組成物を用いて紙送りロールのゴム層を作製すれば、摩擦係数の保持性に優れた紙送りロールを提供できるとしたものである。しかしながら、昨今の粗悪紙・新興国紙の流通量増加を含む紙種の多様化によって、紙粉付着による摩擦係数低下の抑制とともに、紙送りロールには、更なる耐摩耗性の向上が要求されている。
本発明は、上記の点に鑑みて、摩擦係数の保持性と耐摩耗性に優れた紙送りロール用ゴム組成物(以下では単に「ゴム組成物」と記すことがある)を提供し、それによって、多様化する様々な紙に対しても、分離給紙性能の長期安定化を実現可能とする紙送りロールを提供することを目的とする。
[1]本発明の一態様にかかるゴム組成物は、ポリマー成分と軟化剤と架橋剤とを少なくとも含有し、紙送りロール用ゴム組成物中に占めるポリマー成分の比率は44質量%以上であり、ポリマー成分はエチレン−プロピレン−ジエン共重合体を含み、軟化剤は、40℃における動粘度が10mm2/s以上60mm2/s以下の、ポリ−α−オレフィンおよび長鎖アルキルカーボネートの少なくとも1つである。
[2]上記ゴム組成物において、軟化剤は、40℃における動粘度が10mm2/s以上30mm2/s以下であることが好ましい。
[3]上記ゴム組成物は、ポリマー成分100質量部に対して、45質量部以上110質量部以下の軟化剤を含むことが好ましい。
[4]上記ゴム組成物において、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体は、52質量%以上70質量%以下のエチレン成分ユニットと、2.8質量%以上5.5質量%以下のジエン成分ユニットとを含むことが好ましい。
[5]上記ゴム組成物は、ポリマー成分100質量部に対して、架橋剤として1質量部以上2.8質量部以下の硫黄を含むことが好ましい。
[6]本発明の一態様にかかる紙送りロールは、上記ゴム組成物からなるゴム層を備える。ここで、紙送りロールは、紙のみならず、OHPシート、プラスチックシートなど、種々のシート材を搬送可能である。
本発明にかかるゴム組成物により、摩擦係数の保持性と耐摩耗性に優れた紙送りロール用ゴム組成物を提供でき、それによって、多様化する様々に紙に対しても、分離給紙性能の長期安定化が実現可能である。
図1は、FRR給紙の力関係モデルにおいて1枚目の紙を送る条件を示す概略側面図である。 図2は、FRR給紙の力関係モデルにおいて2枚目の紙を戻す条件を示す概略側面図である。 図3は、FRR給紙の力関係モデルにおいて1枚目の紙と2枚目の紙との間の密着力を示す概略側面図である。 図4は、紙搬送装置における作動線図である。 図5は、特許文献2の請求項1の要件を満たしても残存摩擦係数が低くなる事例を示すグラフである。 図6は、フィードロールにおける残存摩擦係数の30%Mod(−40℃)依存性を示すグラフである。 図7は、フィードロールにおける残存摩擦係数のE1(−30℃)依存性を示すグラフである。 図8は、30%Mod(−40℃)のエチレン成分ユニット含有量依存性を示すグラフである。 図9は、E1(−30℃)のエチレン成分ユニット含有量依存性を示すグラフである。 図10は、30%Mod(−40℃)のジエン成分ユニット含有量依存性を示すグラフである。 図11は、E1(−30℃)のジエン成分ユニット含有量依存性を示すグラフである。 図12は、40000枚の通紙試験後のリタードロール外径変化量のE1(22℃)/軟化剤質量部数依存性を示すグラフである。 図13は、30%Mod(−40℃)の軟化剤動粘度依存性を示すグラフである。 図14は、E1(−30℃)の軟化剤動粘度依存性を示すグラフである。 図15は、2次加硫での質量変化率の軟化剤動粘度依存性を示すグラフである。 図16は、紙送りロールの形状を示す概略図である。 図17は、本発明に関わる給紙機構の概略断面図である。 図18は、摩擦係数の測定方法を示す概略図である。 図19は、実施例および比較例についてフィードロールにおける30%Mod(−40℃)とT(tanδmax)との関係を示すグラフである。 図20は、実施例および比較例についてフィードロールにおけるE1(−30℃)とT(tanδmax)との関係を示すグラフである。 図21は、実施例および比較例についてE1(22℃)/軟化剤質量部数と40000枚の通紙試験後のリタードロール外径変化量の関係を示すグラフである。 図22は、実施例および比較例についてE1(22℃)/軟化剤質量部数と30%Mod(−40℃)の関係を示すグラフである。 図23は、実施例および比較例についてE1(22℃)/軟化剤質量部数とE1(−30℃)の関係を示すグラフである。 図24は、実施例13および比較例1についての−40℃におけるS−Sカーブ特性を示すグラフである。 図25は、実施例および比較例ならびに特許文献2の実施例についてE1(22℃)/軟化剤質量部数とE1(−30℃)の関係を示すグラフである。
[実施形態1:ゴム組成物]
本実施形態のゴム組成物は、ポリマー成分と軟化剤と架橋剤とを少なくとも含有し、紙送りロール用ゴム組成物中に占めるポリマー成分の比率は44質量%以上であり、ポリマー成分はエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(以下、EPDMと記す)を含み、軟化剤は、40℃における動粘度が10mm2/s以上60mm2/s以下の、ポリ−α−オレフィンおよび長鎖アルキルカーボネートの少なくとも1つである。本実施形態のゴム組成物は、摩耗係数の保持性および耐摩耗性に優れた紙送りロール用ゴム組成物である。
図1および図2を参照して、FRR給紙方式(FRR給紙方式及び後述する紙搬送装置における作動線図については特開2003−237968号公報参照)において、1枚の紙を分離給紙するために、1枚目の紙を送る条件として、FBをフィードロールが1枚目の紙に与える給送力、TAをトルクリミッタ戻し力、Trをトルクリミッタトルク、RSをリタードロール半径、RAを紙−紙間の抵抗力、PBをリタードロール作動圧、μpを紙−紙間の摩擦係数、μrをゴムロール−紙間の摩擦係数、およびmを紙の質量とするとき、FB>TA+RA、FB=μr・PB、およびRA=μp・mから、
B>(1/μr)TA+(μp/μr)m ・・・(1)
を満たすことが必要である。また、2枚目の紙を戻す条件として、さらにFCを1枚目の紙が2枚目の紙に与える給送力、FDおよびFEを紙−紙間の戻し抵抗力とするとき、TA>FC+FD+FE、FC=μp・PB、FD=μp・m、およびFE=μp・2mから、
B<(1/μp)TA−3m ・・・(2)
を満たすことが必要である。すなわち、図4を参照して、不送り境界線L2と重送境界線L1との間の適正領域Rにおいて、1枚の紙を分離給紙することができる。
昨今の紙の多様化に伴い、上記の式(1)および式(2)には記載していない(従来の紙では無視できた)図3に示す紙間密着力Qの大きい紙も分離給紙する必要がある。図3において、Fppは紙−紙間の抵抗力を示し、μpは紙−紙間の摩擦係数を示し、Wは荷重を示す。なお、紙間密着力Qは、荷重Wに依存しない。そこで、式(1)および(2)を、紙間密着力Qを考慮したものに修正する必要がある。紙間密着力Qを考慮して上記の式(1)を修正すると、
B>(1/μr)TA+(μp/μr)m+Q/μr ・・・(3)
となり、紙間密着力Qを加味して上記の式(2)を修正すると、
B<(1/μp)TA−3m−2Q/μp ・・・(4)
となる。すなわち、図4を参照して、紙間密着力Qを考慮して修正した不送り境界線L2qと重送境界線L1qとの間の適正領域Rqにおいて、1枚の紙を分離給紙することができる。
図4を参照して、紙間密着力Qを考慮した適正領域Rqは、紙間密着力Qを考慮しない適正領域Rに比べて、高トルク側、高荷重側にシフトする。給紙機構を高トルク、高荷重の設定にすると、紙送りロールに掛かる負荷が大きくなるので、昨今の紙送りロールには、摩擦係数の保持性とともに、更なる耐久性(耐摩耗性)の向上が求められている。耐摩耗性を高める手法としては、粒径が小さく、表面積の大きいカーボンブラックの配合や、オイル配合量の減量および架橋剤増量による架橋密度増加や、EPDMを主成分とするゴム組成物の場合は、EPDMのエチレン含有量の増加が知られている。
しかし、粒径が小さく、表面積の大きいカーボンブラックの配合は、硬度上昇とそれに伴う摩擦係数の低下に繋がり、かつ、ゴムロールが黒くなることで、用紙汚染の懸念が高くなる。また、オイルなどの軟化剤の配合量の減量も、硬度上昇とそれに伴う摩擦係数の低下に繋がる。さらに、特許文献2の技術を土台として、オイルなどの軟化剤の配合量を減量すれば、T(tanδmax)の上昇を招き、摩擦係数保持性の低下を招くという問題もある。
架橋密度の向上、たとえば、硫黄架橋系配合の場合は硫黄増量による架橋密度の向上や、EPDMを主成分とするゴム組成物におけるEPDMのエチレン成分ユニットの増加は、耐摩耗性向上に効果があるが、本発明者による特許文献2の出願後の研究で、これらの手法を施した場合、特許文献2の請求項1の条件を満足していても、図5に示すように、必ずしも高い摩擦係数保持性を得られない場合があることが分かってきた。なお、図5に示すプロットは、いずれも、E1(22℃)≦2.1MPaの条件を満たしている。また、図5において、横に延びる破線はT(tanδmax)=−40℃の線を示し、縦に延びる破線はtanδmax=1.1の線を示す。
本実施形態のゴム組成物は、ポリマー成分と軟化剤と架橋剤とを少なくとも含有し、紙送りロール用ゴム組成物中に占めるポリマー成分の比率は44質量%以上であり、ポリマー成分はEPDMを含み、軟化剤は、特許文献2において用いられたパラフィン系の石油系配合油ではなく、40℃における動粘度が10mm2/s以上60mm2/s以下のポリ−α−オレフィンおよび長鎖アルキルカーボネートの少なくとも1つであるため、パラフィン系の石油系配合油に比べて、2次加硫工程での揮発量を抑制しながら動粘度を小さくできるので、少ない軟化剤の配合量で、摩擦係数の保持性を高めることができ、軟化剤の配合量を少なくできる結果として耐摩耗性も高めることができる。本実施形態のゴム組成物で紙送りロールのゴム層を構成することにより、摩擦係数の保持性と耐摩耗性に優れた紙送りロールを提供でき、その結果、多様化する様々な紙に対しても、紙送りロールの分離給紙性能の長期安定化を実現できる。ここで、「紙送りロールが摩擦係数の保持性に優れている」とは、紙などのシート材を所定枚数搬送した後であっても紙送りロールが所定の摩擦係数を維持していることを意味し、「紙送りロールが耐摩耗性に優れている」とは、紙などのシート材を所定枚数搬送した後であっても紙送りロールが所定の外径を維持していることを意味する。
<ポリマー成分>
ポリマー成分は、安価で耐候性に優れるという観点から、EPDMを含み、EPDMを主成分とすることが好ましい。ここで、「EPDMを主成分とする」とは、ポリマー成分がEPDMを80質量%以上含むことを意味する。ポリマー成分に占めるEPDMの比率が80質量%未満である場合、EPDMの特徴である安価で耐候性に優れるという利点が弱まることと、EPDM以外のゴム材料との共架橋性を高めることとが難しくなり、ブレンドして得られるゴム組成物の耐摩耗性などの物性が低下する可能性がある。なお、ポリマー成分は、EPDM以外のゴム材料として、たとえば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリノルボルネンゴム、ブタジエン−ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリルゴム、およびエピクロルヒドリンゴムなどの少なくとも1つを含んでも良い。ポリマー成分としてEPDMを用いる場合、EPDMは、非油展グレードであっても良く、油展グレードであっても良く、非油展グレードと油展グレードとを混合したものであっても良い。
ゴム組成物中に占めるポリマー成分の比率は、44質量%以上であることが好ましい。ゴム組成物中に占めるポリマー成分の比率が44質量%未満であれば、耐摩耗性の低下を招く場合がある。また、ゴム組成物中に占めるポリマー成分の比率は、70質量%以下が好ましい。ゴム組成物中に占めるポリマー成分の比率が70質量%を超えると、機械強度の低下を招く場合がある。
本実施形態のゴム組成物の成分となるEPDMは、52質量%以上70質量%以下のエチレン成分ユニットを含むことが好ましい。エチレン成分ユニットの含有量が52質量%未満であれば、紙送りロールのゴム層の耐摩耗性の低下を招くことがある。一方、エチレンユニットの含有量が70質量%を超えると、30%Mod(−40℃)およびE1(−30℃)が大きくなり、摩擦係数保持性が低下し、通紙後に必要な摩擦係数を確保することが難しい場合がある。かかる観点から、エチレン成分ユニットの含有量は、52質量%以上67質量%以下であることがより好ましい。ここで、30%Mod(−40℃)とは、−40℃における30%伸張時のモジュラスをいう。また、E1(−30℃)とは、−30℃における動的弾性率(貯蔵弾性率ともいう)をいう。E1(−30℃)は、30%Mod(−40℃)とは物理的意味が異なる特性値であるが、30%Mod(−40℃)の代用とすることができる。すなわち、30%Mod(−40℃)≦0.94MPaをE1(−30℃)≦4.2MPaと、30%Mod(−40℃)≦0.80MPaをE1(−30℃)≦4.2MPaと、それぞれ読み替えることができる。
本実施形態のゴム組成物の成分となるEPDMは、2.8質量%以上5.5質量%以下のジエン成分ユニットを含むことが好ましい。ジエン成分ユニットの含有量が2.8質量%未満であれば、硫黄で架橋する場合、架橋点が少なく、加硫工程で所望の形状を有するロールサンプルが得られない場合があり、また、加硫成型が可能な場合でも、その加硫成型物を紙送りロールのゴム層に適用した場合、耐摩耗性の低下や圧縮永久歪み特性の低下を招くことがある。一方、ジエン成分ユニットの含有量が5.5質量%を超えると、30%Mod(−40℃)が大きくなって、摩擦係数保持性が低下し、通紙後に必要な摩擦係数を確保することが難しい場合がある。かかる観点から、ジエン成分ユニットの含有量は、2.8質量%以上4.8質量%以下であることが、より好ましい。ここで、EPDMに含まれるジエン成分ユニットは、特に限定されないが、たとえば、エチリデンノルボルネン(以下「ENB」と記すこともある)、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどであれば良く、エチリデンノルボルネンであることが好ましい。
本実施形態のゴム組成物のポリマー成分は、1種のEPDMのみを含んでも良いし、2種以上のEPDMを含んでも良い。ポリマー成分が2種以上のEPDMを含む場合、エチレン成分ユニットの含有量は、各種EPDMの含有比率から算出した平均値として評価され、具体的には各種EPDMが有する特性値と当該EPDMの含有率との積の合計値として評価される。すなわち、2種以上のEPDMを組合せて用いる場合には、上記特性値を満たすEPDMと上記特性値を満たさないEPDMとを混合しても良い。
<軟化剤>
本実施形態のゴム組成物の成分となる軟化剤は、40℃における動粘度が10mm2/s以上60mm2/s以下である。動粘度が10mm2/s未満であれば、ゴム組成物がブリードを起こし、摩擦係数の低下や用紙汚染を起こすことがある。動粘度が60mm2/sを超えると、30%Mod(−40℃)が大きくなって、摩擦係数保持性が低下し、通紙後に必要な摩擦係数を確保することが難しい場合がある。また、軟化剤は、動粘度が低く(すなわち、30%Mod(−40℃)および/またはE1(−30℃)を小さくできる)、かつ、2次加硫での質量変化率が少ない(すなわち揮発量が少ない)という観点から、ポリ−α−オレフィンおよび長鎖アルキルカーボネートの少なくとも1つである。
さらに、軟化剤は、軟化剤のブリードを抑制しながら、30%Mod(−40℃)および/またはE1(−30℃)を小さくでき、さらにT(tanδmax)も低くできるという観点から、40℃における動粘度が10mm2/s以上30mm2/s以下であることがより好ましい。また、ポリマー成分に伸展油が含まれる場合には、軟化剤はポリマー成分に含まれる伸展油であっても良い。
本実施形態のゴム組成物は、1種の軟化剤のみを含んでいても良いし、2種以上の軟化剤を含んでいても良い。ゴム組成物が2種以上の軟化剤を含む場合、40℃における軟化剤の動粘度は、各種軟化剤の含有比率から算出した平均値として評価され、具体的には40℃における各種軟化剤の動粘度と当該軟化剤の含有率との積の合計値として評価される。すなわち、2種以上の軟化剤を組合せて用いる場合には、上記範囲内の動粘度を有する軟化剤と上記範囲外の動粘度を有する軟化剤とを混合しても良い。
本実施形態のゴム組成物は、ポリマー成分100質量部に対して、45質量部以上110質量部以下の軟化剤を含むことが好ましい。軟化剤配合量が45質量部未満の場合、上記30%Mod(−40℃)および/またはE1(−30℃)が大きくなって、摩擦係数保持性が低下し、通紙後に必要な摩擦係数を確保することが難しい場合がある。軟化剤配合量が110質量部より多い場合、E1(22℃)/軟化剤質量部数が小さくなり、耐摩耗性の低下を招くことがある。かかる観点から、軟化剤の配合量は、ポリマー成分100質量部に対して、45質量部以上100質量部以下であることが、より好ましい。尚、ポリマー成分に伸展油が含まれる場合、伸展油の質量は軟化剤の配合質量として扱う。ここで、E1(22℃)/軟化剤質量部数とは、動的粘弾性の温度分散測定において得られる22℃における動的弾性率E1(22℃)を、ポリマー成分の100質量部に対する上記軟化剤の質量部数で除した値をいう。
<架橋剤>
架橋剤(加硫剤)としては、安価かつ容易に入手可能であり、加硫されたゴム組成物の耐摩耗性に優れる観点から、硫黄が好適である。硫黄以外にも、テトラアルキルチラウムジスルフィドなどの硫黄系有機化合物、酸化マグネシウムなどの金属化合物、有機過酸化物、または樹脂架橋剤などが使用可能である。
架橋剤の配合量は、特に限定されないが、硫黄を用いる場合、ポリマー成分100質量部に対して1質量部以上2.8質量部以下であることが好ましい。硫黄の配合量が1.0質量部未満であれば、紙送りロールのゴム層の耐摩耗性の低下や圧縮永久歪み特性の低下を招くことがある。硫黄の配合量が2.8質量部を超えれば、上記30%Mod(−40℃)が大きくなって、摩擦係数保持性が低下し、通紙後に必要な摩擦係数を確保することが難しい場合がある。
<加硫促進剤>
本実施形態のゴム組成物が架橋剤として硫黄を含む場合、ゴム組成物は加硫促進剤を含むことが好ましい。加硫促進剤は、特に限定されず、ジベンゾチアジルジスルフィドなどのチアゾール類、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド類、テトラメチルチラウムジスルフィドなどのチラウム類、またはジメチルジチオカルバミン酸亜鉛などのジチオカルバミン酸塩などであれば良い。これらの材料を単独で用いても良いし、これらの材料の2種以上を組み合わせて用いても良い。加硫促進剤の配合量は、特に限定されず、適宜設定されれば良い。
<加硫促進助剤>
本実施形態のゴム組成物は加硫促進助剤を含んでも良い。加硫促進助剤は、亜鉛華などの金属酸化物、ステアリン酸またはオレイン酸などの脂肪酸、またはステアリン酸亜鉛など公知のものから、架橋系によって適切なものを選択することができる。加硫促進助剤の配合量は、特に限定されず、適宜設定されれば良い。
<スコーチ防止剤>
本実施形態のゴム組成物はスコーチ防止剤を含んでも良い。スコーチ防止剤としては、公知の無水マレイン酸、チオイミン系化合物、スルフェンアミド系化合物、スルフォンアミド系化合物などが挙げられる。スコーチ防止剤の配合量は、特に限定されず、適宜設定すれば良いが、ポリマー成分100質量部に対して、3質量部以下であることが好ましい。
<充填剤>
本実施形態のゴム組成物には、必要により充填剤を配合することができる。充填剤は、特に限定されないが、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク、珪藻土、マイカ、木片、またはコルクであっても良いし、ワラ、竹、金属、ガラス、またはポリマーからなる繊維であっても良い。これらを単独で用いても良いし、これらを混合して用いても良い。
充填剤の配合量は、特に限定されないが、カーボンブラックを用いる場合は、ゴム組成物の色が黒くなり、該ゴム組成物を紙送りロールのゴム層に用いた場合、紙送りロールと紙のスリップが発生した時に、紙に紙送りロールのスリップ痕を残すことがあるので、カーボンブラックの配合量は、ポリマー成分100質量部に対して3質量部以下とすることが好ましい。カーボンブラック以外の充填剤を用いる場合も、その配合量は、ポリマー成分100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。充填剤の配合量が10質量部を超えると、E1(22℃)を2.1MPa以下にして紙送りロールとシート材との間に十分な接触面積を確保して紙送りロールに適した高い摩擦係数が得つつ、E1(22℃)/軟化剤質量部数を大きくして耐摩耗性を高めることが難しくなる。
<老化防止剤>
本実施形態のゴム組成物には、必要により老化防止剤を配合することができる。この場合、使用される老化防止剤としては、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、硫黄系老化防止剤などが挙げられる。老化防止剤の配合量は、特に限定されない。
ここで、上述した本発明の配合設計方針を詳述する。これまで、ゴムの粘弾性特性が、摩擦特性や耐摩耗性に影響する重要な因子であることは知られていた。しかし、従来の粘弾性特性の観点からの材料開発は、OA機器などにおける、紙送りロール1回転あたり1変形に相当する周波数領域(1Hz〜数百Hz)の粘弾性特性に主眼を置いたものであった。OA機器が通常使用される温度域で、周波数が1Hz〜数百Hzの領域における粘弾性特性の制御は、初期(通紙前の状態)の摩擦係数や耐摩耗性の向上にはある程度の効果を示したが、摩擦係数の保持性に関しては十分な効果を上げることができなかった。そこで、本発明者は、紙送りロールには、ロール1回転あたり1変形に相当する周波数の振動以外に、それよりも高い周波数領域(数百Hz〜数百万Hz)の振動も発生しており、この高周波数領域の粘弾性特性が摩擦係数の保持性に影響していると考え、公知の時間−温度換算則の考え方を適用した。そして、高周波数領域の粘弾性特性を低温領域の粘弾性特性で代用することで、動的粘弾性の温度分散測定において、低温領域の粘弾性特性であるtanδmaxが1.1以下であり、T(tanδmax)が−40℃以下であり、かつ室温領域である22℃における動的弾性率E1(22℃)が2.1MPa以下であるゴム組成物を用いて紙送りロールのゴム層を構成すれば、摩擦係数の保持性に優れた紙送りロールを提供できることを提案した(特許文献2)。ここで、tanδとは、損失正接ともいい、動的損失率(損失弾性率ともいう)E2を動的弾性率E1で除した値である。tanδmaxとは、動的粘弾性の温度分散測定において得られるtanδの極大値をいう。T(tanδmax)とは、tanδが極大値を示すときの温度をいう。E1(22℃)とは、22℃における動的弾性率E1をいう。
しかし、本発明者の特許文献2の出願後の研究で、図5に示すように、特許文献2の請求項1の条件を満足していても、必ずしも高い摩擦係数保持性を得られない場合があることが分かってきた。これは、摩擦係数保持性には、特許文献2記載のtanδmax、T(tanδmax)、E1(22℃)以外に、より影響力の強い別の物性パラメーターが支配因子として存在することを示唆している。
そこで、本発明者が、摩擦係数保持性を支配する、tanδmax、T(tanδmax)、E1(22℃)以外の因子の解明に鋭意取り組んだ結果、図6に示すように、その物性パラメーターが30%Mod(−40℃)であることを見出した。ここで、この新しい物性パラメーターである30%Mod(−40℃)の物理的意味について以下に述べる。
特許文献2においては、前述の通り、紙送りロールのゴム層表面には、ロール1回転あたり1変形に相当する周波数の振動以外に、それよりも高い周波数領域(数百Hz〜数百万Hz)の振動が発生しており、この高周波数領域の粘弾性特性が摩擦係数の支配因子であると考察した。ただし、ここでの粘弾性特性は、「動的粘弾性実験とは、微小な振幅で正弦的に変化する応力または歪みを物体に加えた時に、それによって物体に生じる歪みまたは応力の模様を定量的に調べる実験である」との定義通り、低歪み(0.02%程度の動歪み)に対する応答性を評価したものである。
しかし、本発明者は、特許文献2の出願後の研究結果から、紙送り時の紙送りロールのゴム層表面には、特許文献2に記載した通り、ロール1回転あたり1変形に相当する周波数の振動以外に、それよりも高い周波数領域(数百Hz〜数百万Hz)の振動が発生しているが、その振動の歪みは、上記粘弾性測定の様な0.02%前後の低い歪みではなく、数%〜数百%の高歪みではないかと考えた。そして、時間−温度換算則の考え方を適用し、高周波数での振動(変形)を低温での変形に置き換え、温度と歪み(伸び)を変量して引張試験を行った。
その結果、実際の紙送りロールの表面で発生している振動の周波数と歪みの特定には至っていないが、図6に示すように、−40℃で1.1mm/secで引張試験を行ったときの30%伸張時のモジュラスである30%Mod(−40℃)が、摩擦係数保持性の強い因子であり、30%Mod(−40℃)が小さい程、フィードロール10Fにおける残存摩擦係数が高くなることを見出した。すなわち、紙送り時の紙送りロールのゴム層表面には、ロール1回転あたり1変形に相当する周波数よりも高い周波数領域(数百Hz〜数百万Hz)で、かつ、通常の粘弾性測定機で動的粘弾性を測定する場合よりも大きな歪みの繰り返し変形が起こっており、この変形が起こり易い(大きい歪みでのモジュラスが小さい)方が、摩擦係数の保持性が高くなると考えられる。
なお、配合や測定機によっては、30%Mod(−40℃)を測定する際、破断やチャック滑り、ロードセルの容量超え等の問題が発生して、30%Mod(−40℃)を正確に測定できない場合がある。その場合は、図7に示すように、フィードロール10Fにおける残存摩擦係数との関係に関して、30%Mod(−40℃)を、E1(−30℃)で代用することができる。すなわち、
30%Mod(−40℃)≦0.94MPa を E1(−30℃)≦4.2MPa
30%Mod(−40℃)≦0.80MPa を E1(−30℃)≦3.8MPa
と、読み替えることができる。
また、紙送りロール表面において高速かつ大歪みの変形が起こっているとすれば、その変形は、紙送り中に繰り返し行われていることになり、この変形によるゴム内部のロス(ポリマー主鎖間、ポリマー主鎖と充填剤間、充填剤間同士の摩擦など)が少ない方が、ゴムの疲労が少なく、特性の長期安定化に繋がると考えられる。その意味で、摩擦係数保持性を長期間に渡って高めるには、30%Mod(−40℃)が小さいことと合わせ、T(tanδmax)が低い方が好ましく、具体的には、T(tanδmax)が−50℃以下であることが好ましい。
次に、摩擦係数保持性の支配因子を30%Mod(−40℃)とし、本願の解決すべき、もう1つの課題である耐摩耗性の向上を考えた。ポリマーの主成分をEPDMとしたとき、一般には、EPDMのエチレン成分ユニットの含有量やジエン成分ユニットの含有量を高めた方が、耐摩耗性が向上すると言われている。
しかし、EPDMのエチレン成分ユニットの含有量を高めると、図8に示すように30%Mod(−40℃)が増加する傾向を示し、図9に示すようにE1(−30℃)も増加する傾向を示す。また、EPDMのジエン成分ユニット(たとえばENB(エチリデンノルボルネン))の含有量を高めると、図10に示すように30%Mod(−40℃)が増加する傾向を示し、図11に示すようにE1(−30℃)も増加する傾向を示す。
したがって、EPDM単体としての耐摩耗性を向上させる方向は、30%Mod(−40℃)およびE1(−30℃)が増加する方向、すなわち、摩擦係数保持性を低下させる傾向となり、単なるEPDMのエチレン成分ユニットの含有量の増減および/またはジエン成分ユニットの含有量の増減では、本願の課題である摩擦係数の高い保持性と高い耐摩耗性の両立はできない。
一方で、軟化剤配合量の観点からゴム組成物の耐摩耗性を見ると、軟化剤を配合したゴム組成物の場合、図12に示すように、軟化剤1質量部当りのE1(22℃)(測定温度22℃における動的弾性率E1)が大きい方が、耐摩耗性が高い(ゴム層の外径変化量の絶対値が小さい)傾向を示す。したがって、軟化剤配合量が少ない方が、耐摩耗性が高くなるが、当然のことながら、単なる軟化剤配合量の減量は、硬度上昇および30%Mod(−40℃)の上昇につながり、初期の摩擦係数および摩擦係数保持性を低下させる。
ここで、軟化剤の動粘度に着目すると、図13および図14に示すように、軟化剤の動粘度が低い程、30%Mod(−40℃)およびE1(−30℃)が小さくなる傾向が見られる。したがって、動粘度の低い軟化剤を使用すれば、動粘度の高い軟化剤を使用する場合に比べて、少ない配合量で、30%Mod(−40℃)、E1(−30℃)を小さくすることが可能と考えられる。
しかし、軟化剤の40℃における動粘度が10mm2/s未満になると、軟化剤がブリードする懸念があるので、軟化剤の上記動粘度は10mm2/s以上であることが望ましい。ただ、上記動粘度を10mm2/s以上としても、紙送りロールからのブリードによる用紙汚染を抑制するには、加硫成型したゴムロールに140℃から190℃の温度で、30minから180min程度の2次加硫(再缶)を施して、ブリードの原因物質となり得る低分子成分を除去することが好ましい。ただ、通常のパラフィン系石油配合油の場合、図15に示すように、動粘度が低くなると、2次加硫での揮発量が多くなる。2次加硫での揮発量が多くなると、配合組成上の軟化剤配合量から予測される物性が得られない場合(たとえば、30%Mod(−40℃)が配合組成上の軟化剤配合量から予測される値よりも大きくなるなど)や、ゴムコットが著しい収縮を起こし所望のゴムコット形状が得られない場合がある。
したがって、動粘度が低く、かつ、2次加硫での質量変化率の少ない(すなわち揮発量が少ない)軟化剤が好ましい。その様な特性を有する軟化剤として、図15に示すようなポリ−α−オレフィン(以下、PAOと記すことがある)や長鎖アルキルカーボネートが挙げられる。
以上から、本実施形態のゴム組成物の上記の特性を発現するには、ポリマーの主成分がEPDMの場合は、EPDM単体としては、それを増加すれば耐摩耗性向上方向となるエチレン成分ユニットの含有量を70質量%以下および/またはジエン成分ユニットの含有量を5.5質量%以下に抑え、代わりに動粘度の低い軟化剤を用いることで、30%Mod(−40℃)およびE1(−30℃)を所定の値までさげるのに必要な軟化剤質量部数を少なくして、E1(22℃)/軟化剤質量部数[MPa/phr]を高めるという配合設計方針を立てる。その方針の中で、EPDMのエチレン成分ユニット含有量およびジエン成分ユニット(たとえばENB)含有量、軟化剤の動粘度および配合量の最適バランス点を見出してく必要がある。
本実施形態のゴム組成物の成分となるEPDMのムーニー粘度ML1+4(125℃)は、50以上120以下であることが好ましい。ここで、ムーニー粘度ML1+4(125℃)とは、JIS K−6300−1:2013に準拠し、試験温度125℃で、L形の形状を有するロータを余熱時間1分間とし、ロータの回転時間を4分間として測定されるものである。ムーニー粘度ML1+4(125℃)が50以上である場合、ポリマー分子量が十分大きく、耐摩耗性が十分確保される。一方、ムーニー粘度ML1+4(125℃)で150以下である場合、加工性が良好であるという利点を有する。なお、ここでのムーニー粘度ML1+4(125℃)は、油展グレードの場合は、伸展油を除いた状態での測定値を意味する。
30%Mod(−40℃)を、0.94MPa以下とすることにより、紙送りロールの通紙後の残存摩擦係数を高くすることができる。ここで、30%Mod(−40℃)が0.8MPa以下で、かつ、T(tanδmax)が−50℃以下であることがより好ましい。30%Mod(−40℃)の規定と合わせて、T(tanδmax)も−50℃以下であることが好ましいとしているのは、T(tanδmax)が−50℃以下の場合、紙送りロール表面のゴム層が繰返し高速、かつ、大歪みの変形を受けた場合の内部ロス、すなわち、ゴムの疲労が少なく特性の長期安定化に有利との考えに基づく。
E1(−30℃)を、4.2MPa以下とすることにより、紙送りロールの通紙後の残存摩擦係数を高くすることができる。ここで、E1(−30℃)が3.8MPa以下で、かつ、T(tanδmax)が−50℃以下であることがより好ましい。
E1(22℃)/軟化剤質量部数を0.008MPa/phr以上とすることで、耐摩耗性を高くでき、紙送りロールの通紙によるゴム組成物の外径変化量を抑制することができる。
[ゴム組成物の製造方法]
本実施形態のゴム組成物の製造方法は、ポリマー成分と軟化剤と架橋剤とを少なくとも含有する配合物を混練することにより未加硫ゴム組成物を得る混練工程と、未加硫ゴム組成物を加硫することにより加硫ゴム組成物を得る加硫工程とを、含む。ここで、加硫ゴム組成物中に占めるポリマー成分の比率は44質量%以上であり、ポリマー成分は、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体を含み、軟化剤は、40℃における動粘度が10mm2/s以上60mm2/s以下の、ポリ−α−オレフィンおよび長鎖アルキルカーボネートの少なくとも1つである。本実施形態のゴム組成物の製造方法は、加硫ゴム組成物中に占めるポリマー成分の比率が44質量%以上であり、ポリマー成分がエチレン−プロピレン−ジエン共重合体を含み、軟化剤が40℃における動粘度が10mm2/s以上60mm2/s以下の、ポリ−α−オレフィンおよび長鎖アルキルカーボネートの少なくとも1つであることから、摩擦係数の保持性と耐摩耗性に優れた紙送りロール用ゴム組成物が得られる。
本実施形態のゴム組成物の製造方法においては、摩擦係数の保持性により優れた紙送りロール用ゴム組成物が得られる観点から、軟化剤が40℃における動粘度が10mm2/s以上30mm2/s以下であることが好ましい。
本実施形態のゴム組成物の製造方法は、具体的には、所定量のポリマー成分と、軟化剤と、架橋剤と、必要に応じて所定量の充填剤、その他加硫促進剤、加硫促進助剤、スコーチ防止剤および老化防止剤等の添加剤とからなる配合物をニーダーやオープンロールなど、公知の混練り機を用いて混練りして未加硫ゴム組成物を得、これを所定の加熱条件で加硫成形することにより加硫ゴム組成物を製造することができる。未加硫ゴム組成物の加硫成形方法としては、押出し成形、トランスファー成形などを挙げることができる。たとえば、未加硫ゴム組成物を、所定のトランスファー成形用金型に導入し、140℃〜180℃の温度で、5分〜30分程度の加硫(1次加硫)を行うことにより、ゴム組成物の架橋とチューブ状への成形を同時に行うことができる。成形されたチューブに、必要に応じて、140℃〜190℃の温度で、30分〜180分程度の2次加硫を施しても良い。このように2次加硫を行なうと、ブリードし易い低分子成分を揮発させることができる。その後、成形されたゴムチューブを、たとえば、円筒研磨盤で所望の外径になるまで研磨し、所望の長さにカットすることにより、紙送りロールに適した形状の架橋ゴム組成物を得ることができる。
[実施形態2:紙送りロール]
本実施形態の紙送りロールは、実施形態1のゴム組成物からなるゴム層を備える。具体的には、図16を参照して、本実施形態の紙送りロール10は、実施形態1のゴム組成物からなるゴム層11に軸芯12が挿入されて、または両者が接着剤で結合されて構成されている。紙送りロール10の構成のうちゴム層11の材料以外の構成、たとえば紙送りロールの形状(たとえば円筒形状やD字形状など)、表面の加工方法(たとえば研磨、ローレット加工、シボ加工、または凹凸パターンなど)、ゴム層11の厚み、軸芯12の材料、および軸芯12の径などについては、紙送りロール10の構成として通常用いられている構成であれば良いが、ゴム層11はシート材に接するロール最外層を構成していることが好ましい。このような紙送りロール10は、OA機器または自動預金支払機などにおけるピックアップロール10P、フィードロール10F、またはリタードロール10Rなどとして使用可能である。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<紙送りロールの作製>
図16に示す形状の紙送りロール10を作製した。まず、混練機を用いて表1〜表5に示す配合成分を混練し、これを所定の金型内で160℃、30分間の条件で加硫成形してから、さらに160℃、60分間の条件で2次加硫した。これにより、外径21mm、内径9mm、長さ50mmの筒状の紙送りロール用ゴム成形体を得た。次に、このゴム成形体を直径10mmの芯にはめ込み、幅10mmにカットした。次いで、これをゴム層11として、図16に示すようにポリアセタール樹脂製の軸芯12に挿入した。次に、ゴム層11の表面を外径20mmまで研磨し、ゴム層11と軸芯12とからなる実施例および比較例の紙送りロール10を作製した。研磨後のゴム層11の形状は、外径20mm、内径10mm、長さ10mmである。
<粘弾性特性の測定>
混練機を用いて表1〜表5に示す配合成分を混練し、シート状の金型を用いて、160℃、30分間の条件で加硫成形し、さらに160℃、60分間の条件で2次加硫した。これにより、シート状のゴム架橋物を得た。このシートから、幅5mm×長さ20mm×厚さ2mmの短冊状のサンプルを打ち抜いた。動的粘弾性測定装置(UBM社製Rheogel E4000FHP)を用いて、打抜いたサンプルの粘弾性特性(温度分散)を下記の測定条件で測定した。
測定温度:−84℃〜120℃
測定温度の昇温速度:2℃/min
測定温度間隔:1℃
測定周波数:10Hz
初期歪み:1.3mm
振幅:2μm
変形モード:引っ張り
チャック間距離10mm
波形:正弦波
上記で作製したサンプルにつき、測定結果から動的弾性率E1(−30℃)、E1(22℃)の値を読み取り、また得られた温度と損失正接tanδとの関係を示すグラフからtanδmaxとT(tanδmax)とを読み取った。
<30%Mod(−40℃)の測定>
混練機を用いて表1〜表5に示す配合成分を混練し、シート状の金型を用いて、160℃、30分間の条件で加硫成形し、さらに160℃、60分間の条件で2次加硫した。これにより、シート状のゴム架橋物を得た。このシートから、幅5mm×長さ20mm×厚さ2mmの短冊状のサンプルを打ち抜いた。動的粘弾性測定装置(UBM社製Rheogel E4000FHP)を用いて、打抜いたサンプルの30%Mod(−40℃)を下記の測定条件で測定した。
測定温度制御:−65℃以下(−75℃以上)まで温度を下げ、以後、自然昇温で−40℃±1℃になるまで待機
サンプル形状:幅5mm×厚み2mm×長さ(チャック間距離)10mm
測定モード:S−S測定
変位設定値:3.3mm
1秒間読込点数:10
<通紙試験>
実施例および比較例の各紙送りロールをカラー複合機DocuCentre C6550I(富士ゼロックス社製)に装着し、富士ゼロックッス社製「ゼロックス4200」を通紙した。通紙試験を行う複合機の給紙機構の断面模式図を図17に示した。給紙装置は、シート材としての用紙(紙P)を積載した用紙カセットと、紙Pの上面の先端側に当接して用紙カセットから紙Pを送り出すピックアップロール10Pと、ピックアップロール10Pの用紙搬送方向下流側に、ピックアップロール10Pから送り込まれた紙Pを1枚ずつ分離しながら搬送する分離機構10Sを含んで構成されている。分離機構10Sは、給紙ローラの一例としてのフィードロール10Fと、フィードロール10Fの下側で、フィードロール10Fに対向して圧接配置された、ゴム層11とトルクリミッタを含んで構成されるリタードロール10Rからなる。フィードロール10Fは、不図示の駆動源によって、紙Pの搬送方向と直交する方向を軸方向として、この軸周りに回転駆動される駆動ローラであり、フィードロール10Fが、用紙カセットから送り出される紙Pの上面(表面)に当接して、回転駆動することにより、紙Pが下流へ搬送される(図中の点線矢印参照)。フィードロール10Fとリタードロール10Rの間に、用紙カセットから送り出された紙Pを挟持するニップ部が形成されるが、このニップ部に、複数枚の紙Pが重なって搬送された場合は、リタードロール10Rに具備されたトルクリミッタが、その紙Pへ下面側(裏面側)から搬送抵抗を付与して、フィードロール10Fが搬送する紙Pの重送を抑制する。通紙試験および測定は、評価を促進する為に、通常の室内環境(たとえば温度22℃、湿度55%)対比、通紙による紙送りロールへの紙粉の付着が起こり易い温度10℃、湿度15%環境下で行った。紙送りロール、測定用紙、および通紙試験機は、この環境下で24時間以上放置してから通紙試験を開始した。
<摩擦係数μの測定>
摩擦係数μを図18に示す方法で測定した。摩擦係数の測定は、温度10℃、湿度15%環境下で行った。紙送りロール、測定用紙、測定治具は、この環境下で24時間以上放置してから測定を開始した。まず、ゴム層11および軸芯12で構成された紙送りロール10とテフロン(登録商標)製の台板20との間に、ロードセル30に接続した80mm×210mmサイズの紙P(富士ゼロックス社製「ゼロックス4200」)を挟み、図中の鉛直矢印Wで示す様に、紙送りロール10を鉛直荷重W(W=250gf)で台板20に押し付けた。次いで、紙送りロール10を図中の矢印aで示す方向に、周速300mm/secで回転させながら、紙が引っ張られる力、すなわち、発生する摩擦力(図中の白矢印で示される力F)をロードセルで測定した。F[gf]および荷重W[gf]から、下記式(5)
摩擦係数μ=F[gf]/W[gf] ・・・(5)
により摩擦係数μを求めた。なお、摩擦係数の測定は、初期および所定枚数の通紙後に行った。
<ロール外径の測定>
ロールの外径は、レーザ寸法測定機(KEYENCE LS−3100)を用いて、温度10℃、湿度15%環境下で行い、外径変化量を算出した。ここで、「外径変化量」とは、所定枚数の用紙を通紙した後のロールの外径から、初期のロールの外径を減じた値である。外径変化量の「絶対値」が小さいほど、ゴムが削れにくく、耐摩耗性に優れることを示す。
<粘弾性特性および通紙性能の評価>
上記引張特性測定(S−S測定)、粘弾性測定、通紙試験および摩擦係数μと外径変化量の測定により、通紙性能を評価した。なお、ピックアップロール10Pとリタードロール10Rは、通常、用紙/用紙間の摩擦係数よりも大きいロール/用紙間摩擦係数が必要であるが、フィードロール10Fは、フィードロール10Fとリタードロール10Rの間に形成されるニップ部に、ピックアップロール10Pによって用紙カセットから1枚の用紙が搬送されたときには、用紙の重送防止の機能を担うリタードロール10Rの搬送抵抗に打ち勝って用紙を搬送する必要があるので、フィードロール10Fの残存摩擦係数は非常に重要となる。また、フィードロール10Fとリタードロール10Rの間に形成されるこのニップ部に複数枚の紙Pが重なって搬送された場合に、その紙Pへ下面側(裏面側)から搬送抵抗を付与して、フィードロール10Fが搬送する紙Pの重送を抑制する機能を担うリタードロール10Rには、ピックアップロール10P、フィードロール10Fよりも高い負荷が掛かるので摩耗が進行しやすく、給紙機構が長期に渡って安定した分離搬送機能を維持するためには、リタードロール10Rの摩耗の低減が重要となる。したがって、ここでは、摩擦係数としてはフィードロール10Fの摩擦係数を、外径変化量としてはリタードロール10Rの外径変化量を採り上げた。結果を、表6〜表10および図19〜図23に示した。表6〜表10に記載した「通紙性能」には、通紙枚数が40000枚に達した時点でのフィードロール10Fの残存摩擦係数が1.0以上で、かつ、リタードロール10Rの外径変化量の絶対値が0.22mm以下である場合にはAと記し、通紙枚数が40000枚に達した時点でのフィードロール10Fの残存摩擦係数が1.0以上であるが、リタードロール10Rの外径変化量の絶対値が0.22mmより大きい場合にはB1と記し、通紙枚数が40000枚に達した時点でのリタードロール10Rの外径変化量の絶対値が0.22mm以下であるが、フィードロール10Fの残存摩擦係数が1.0より小さい場合にはB2と記した。また、通紙枚数が10000枚に達した時点で、フィードロール10Fの残存摩擦係数が既に1.0未満となった場合にはCと記した。さらに、プレス成型は可能だが、その後の2次加硫工程での軟化剤の揮発量が多く、それに起因するロールサンプルの収縮が大きくて、所望の形状を有するロールサンプルが得られなかった場合にはD、プレス成型で所望の形状を有するロールサンプルが得られなかった場合にはEと記した。
図19は実施例および比較例についてフィードロール10Fにおける30%Mod(−40℃)とT(tanδmax)との関係を示すグラフである。図19において、横に延びる破線はT(tanδmax)=−40℃とT(tanδmax)=−50℃の線を示し、縦に延びる破線は、30%Mod(−40℃)=0.94MPaと30%Mod(−40℃)=0.80MPaの線を示す。図20は実施例および比較例についてフィードロール10FにおけるE1(−30℃)とT(tanδmax)との関係を示すグラフである。図20において、横に延びる破線はT(tanδmax)=−40℃とT(tanδmax)=−50℃の線を示し、縦に延びる破線は、E1(−30℃)=4.2MPaとE1(−30℃)=3.8MPaの線を示す。図21は、実施例および比較例におけるE1(22℃)/軟化剤質量部数とリタードロール10Rの外径変化量の関係を示すグラフである。図21において、横に延びる破線はリタードロール外径変化量=−0.22mmの線を示し、縦に延びる破線はE1(22℃)/軟化剤質量部数=0.008MPa/phrの線を示す。図22は実施例および比較例におけるE1(22℃)/軟化剤質量部数と30%Mod(−40℃)の関係を示すグラフである。図23は実施例および比較例についてのE1(22℃)/軟化剤質量部数とE1(−30℃)の関係を示すグラフである。図24は実施例13および比較例1における−40℃におけるS−Sカーブ特性を示す図である。
Figure 2019112232
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表1〜表5の注釈(*)は以下の通りである。
(*1)EP57Fは、JSR製のEPDM(非油展)であり、ムーニー粘度ML1+4(125℃)は58、エチレン成分ユニット含有量は66質量%、ジエン成分ユニット含有量は4.5質量%である。
(*2)EP103AFは、JSR社製のEPDM(非油展)であり、ムーニー粘度ML1+4(125℃)は91、エチレン成分ユニット含有量は59質量%、ジエン成分ユニット含有量は4.5質量%である。
(*3)KELTAN5170Pは、LANXESS社製のEPDM(非油展)であり、ムーニー粘度ML1+4(125℃)は59、エチレン成分ユニット含有量は71質量%、ジエン成分ユニット含有量は1.5質量%である。
(*4)Vistalon9301は、ExxonMobil社製のEPDM(非油展)であり、ムーニー粘度ML1+4(125℃)は67、エチレン成分ユニット含有量は69質量%、ジエン成分ユニット含有量は2.8質量%である。
(*5)KELTAN5260Qは、LANXESS社製のEPDM(非油展)であり、ムーニー粘度ML1+4(125℃)は55、エチレン成分ユニット含有量は62質量%、ジエン成分ユニット含有量は2.3質量%である。
(*6)E532は、住友化学社製のEPDM(非油展)であり、ムーニー粘度ML1+4(125℃)は81、エチレン成分ユニット含有量は51質量%、ジエン成分ユニット含有量は3.5質量%である。
(*7)E5128は、住友化学社製のEPDM(非油展)であり、ムーニー粘度ML1+4(125℃)は46、エチレン成分ユニット含有量は68質量%、ジエン成分ユニット含有量は0.6質量%である。
(*8)Vistalon5601は、ExxonMobil社製のEPDM(非油展)であり、ムーニー粘度ML1+4(125℃)は72、エチレン成分ユニット含有量は69質量%、ジエン成分ユニット含有量は5.0質量%である。
(*9)Vistalon7001は、ExxonMobil社製のEPDM(非油展)であり、ムーニー粘度ML1+4(125℃)は60、エチレン成分ユニット含有量は73質量%、ジエン成分ユニット含有量は5.0質量%である。
(*10)KELTAN9650Qは、LANXESS社製のEPDM(非油展)であり、ムーニー粘度ML1+4(125℃)は94、エチレン成分ユニット含有量は53質量%、ジエン成分ユニット含有量は6.5質量%である。
(*11)512Fは、住友化学社製のEPDM(非油展)であり、ムーニー粘度ML1+4(125℃)は66、エチレン成分ユニット含有量は65質量%、ジエン成分ユニット含有量は4.0質量%である。
(*12)SUNPURE LW70は、日本サン石油社製のパラフィン系の石油系配合油(プロセスオイル)であり、40℃における動粘度は12.40mm2/secである。
(*13)PW32は、出光興産株式会社製のパラフィン系の石油系配合油(プロセスオイル)であり、40℃における動粘度は30.85mm2/secである。
(*14)PW90は、出光興産株式会社製のパラフィン系の石油系配合油(プロセスオイル)であり、40℃における動粘度は95.54mm2/secである。
(*15)PW380は、出光興産株式会社製のパラフィン系の石油系配合油(プロセスオイル)であり、40℃における動粘度は381.6mm2/secである。
(*16)LUCANT HC−40は、三井化学社製の炭化水素系合成油であり、40℃における動粘度は400mm2/secである。
(*17)LUCANT HC−100は、三井化学社製の炭化水素系合成油であり、40℃における動粘度は1300mm2/secである。
(*18)LUCANT HC−600は、三井化学社製の炭化水素系合成油であり、40℃における動粘度は9850mm2/secである。
(*19)Synfluid PAO4は、Chevron Phillips社製のポリ−α−オレフィンであり、40℃における動粘度は16.8mm2/secである。
(*20)Synfluid PAO9は、Chevron Phillips社製のポリ−α−オレフィンであり、40℃における動粘度は53.4mm2/secである。
(*21)LIALCARB SR−1000/Rは、三井化学ファイン社製の長鎖ジアルキルカーボネートであり、40℃における動粘度は17mm2/secである。
(*22)NAS−5Hは、日油社製イソパラフィン系溶剤であり、40℃における動粘度は11.0mm2/secである。
(*23)デンカブラックは、電気化学社製のアセチレンブラックである。
(*24)ステアリン酸は、花王社製の商品名「ルナックS−30」である。
(*25)亜鉛華は、正同化学社製の酸化亜鉛(商品名「亜鉛華1号」)である。
(*26)NipsilVN3は、東ソー・シリカ社製のシリカである。
(*27)硫黄は、鶴見化学工業社製の粉末硫黄(商品名「サルファックスA」)である。
(*28)ノクセラーDMは、大内新興化学社製の加硫促進剤である。
(*29)ノクセラーTRAは、大内新興化学社製の加硫促進剤である。
(*30)ノクセラーBZは、大内新興化学社製の加硫促進剤である。
(*31)ノクセラーEZは、大内新興化学社製の加硫促進剤である。
(*32)ノクセラーTTCuは、大内新興化学社製の加硫促進剤である。
Figure 2019112232
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表6〜表10および図19に示す結果から、−40℃における30%伸張時のモジュラスである30%Mod(−40℃)が0.94MPa以下であれば、好ましくは30%Mod(−40℃)が0.8MPa以下およびT(tanδmax)が−50℃以下であれば、高い残存摩擦係数が得られることが分かった。
表6〜表10および図20に示す結果から、動的粘弾性測定により得られる−30℃における動的弾性率E1(−30℃)が4.2MPa以下であれば、好ましくはE1(−30℃)が3.8MPa以下およびT(tanδmax)が−50℃以下であれば、高い残存摩擦係数が得られることが分かった。
表6〜表10および図21に示す結果から、E1(22℃)/軟化剤質量部数が、0.008MPa/phr以上であれば、リタードロールの外径変化率の絶対値が0.22mm以下の高い耐摩耗性が得られることが分かった。
図22に示す結果から、同じE1(22℃)/軟化剤質量部数で比較したときに、実施例は、比較例と対比して、30%Mod(−40℃)を小さくできる。すなわち、実施例は、比較例と対比して、残存摩擦係数と耐摩耗性を高いレベルで両立させることができることが分かる。
図23に示す結果から、同じE1(22℃)/軟化剤質量部数で比較したときに、実施例は、比較例と対比して、E1(−30℃)を小さくできる。すなわち、実施例は、比較例と対比して、残存摩擦係数と耐摩耗性を高いレベルで両立させることができることが分かる。
比較例1、2は、40℃における動粘度が、60mm2/sを超えるパラフィン系の石油系配合油(プロセスオイル)を軟化剤として使用しているため、30%Mod(−40℃)が0.94MPaより大きくなり(加えて、E1(−30℃)も4.2MPaよりも大きくなり)、残存摩擦係数が低くなったと考えられる。
比較例3、4は、40℃における動粘度が、60mm2/sを超える炭化水素系合成油を軟化剤として使用しているため、30%Mod(−40℃)が0.94MPaより大きくなり(加えて、E1(−30℃)も4.2MPaよりも大きくなり)、残存摩擦係数が低くなったと考えられる。
比較例5は、エチレン成分ユニット含有量が73質量%と、極めて高い値を持つEPDMグレードを使用したため、30%Mod(−40℃)が0.94MPaより大きくなり(加えて、E1(−30℃)も4.2MPaよりも大きくなり)、残存摩擦係数が低くなったと考えられる。
比較例6、硫黄配合量が3phrと多く、かつ、加硫促進作用の強い加硫促進剤の系を使用している為、30%Mod(−40℃)が0.94MPaより大きくなり(加えて、E1(−30℃)も4.2MPaよりも大きくなり)、残存摩擦係数が低くなったと考えられる。
比較例7〜20は、軟化剤配合量を120phrと多くしたため、E1(22℃)/軟化剤質量部数が、0.008MPa/phrよりも小さくなり、耐摩耗性が低くなったと考えられる。
比較例21は、40℃における動粘度が、12.4mm2/sと低いパラフィン系の石油系配合油(プロセスオイル)を軟化剤として使用したため、プレス成型は可能だったが、その後の2次加硫工程での軟化剤の揮発量が多く、それに伴ってロールサンプルが大きく収縮したため、所望の形状を有するロールサンプルが得られなかった。
比較例22は、40℃における動粘度が60mm2/sをはるかに超える炭化水素系合成油を軟化剤として使用しているため、30%Mod(−40℃)が0.94MPaより大きくなり(加えて、E1(−30℃)も4.2MPaよりも大きくなり)、摩擦係数の保持性が低くなり、10,000枚通紙しただけで、残存摩擦係数が1.0未満となったと考えられる。
比較例23は、40℃における動粘度が、11.0mm2/sと低いイソパラフィン系溶剤を軟化剤として使用したため、プレス成型は可能だったが、その後の2次加硫工程での軟化剤の揮発量が多く、それに伴ってロールサンプルが大きく収縮したため、所望の形状を有するロールサンプルが得られなかった。
比較例24〜26は、使用したEPDMのジエン成分ユニット(ENB)含量(比較例25および26は2種のEPDMをブレンドしているので加重平均としてのENB含量)が2.8質量%よりも低いために、ゴム弾性を発現するのに必要な架橋密度を確保できず、結果、加硫工程で所望の形状を有するロールサンプルが得られなかった。
残存摩擦係数と耐摩耗性を共に高いレベルで両立するには、30%Mod(−40℃)を小さくし、かつ、E1(22℃)/軟化剤質量部数を大きくすること、あるいは、E1(−30℃)を小さくし、かつ、E1(22℃)/軟化剤質量部数を大きくすることが必要であるが、これらは、相反特性であるため、従来の配合技術では、両立できなかった。
たとえば、特許文献2の実施例のE1(−30℃)とE1(22℃)/軟化剤質量部数の関係を図23に追記すると、図25が得られる。図25から分かる様に、特許文献2の配合技術を適用しても、本明細書の比較例と同様、E1(22℃)/軟化剤質量部数を大きくして耐摩耗性を高めると、E1(−30℃)も大きくなり、摩擦係数保持性が低下する。しかし、本願の技術を適用すれば、図25の本願の実施例のプロットが示す通り、E1(22℃)/軟化剤配合量が大きくしても、E1(−30℃)の上昇を抑制することができ、その結果、特許文献2の利点である摩擦係数の保持率を維持・向上させながら、耐摩耗性を高めることが可能となる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 紙送りロール、10F フィールドロール、10P ピックアップロール、10R リタードロール、10S 分離機構、11 ゴム層、12 軸芯、20 台板、30
ロードセル、F 摩擦力、W 荷重、FB フィードロールが1枚目の紙に与える給送力、FC 1枚目の紙が2枚目の紙に与える給送力、FD,FE 紙−紙間の戻し抵抗力、Fpp,RA 紙−紙間の抵抗力、P 紙、PB リタードロール作動圧、Q 紙間密着力、RS リタードロール半径、TA トルクリミッタ戻し力、Tr トルクリミッタトルク、μ 摩擦係数、μp 紙−紙間の摩擦係数、μr ゴムロール−紙間の摩擦係数、L1,L1q 重送境界線、L2,L2q 不送り境界線、L3 FRR作動線、R,Rq 適正領域。

Claims (6)

  1. ポリマー成分と軟化剤と架橋剤とを少なくとも含有する紙送りロール用ゴム組成物であって、
    前記紙送りロール用ゴム組成物中に占める前記ポリマー成分の比率は44質量%以上であり、
    前記ポリマー成分はエチレン−プロピレン−ジエン共重合体を含み、
    前記軟化剤は、40℃における動粘度が10mm2/s以上60mm2/s以下の、ポリ−α−オレフィンである、紙送りロール用ゴム組成物。
  2. 前記軟化剤は、40℃における動粘度が10mm2/s以上30mm2/s以下である、請求項1に記載の紙送りロール用ゴム組成物。
  3. 前記ポリマー成分100質量部に対して、45質量部以上110質量部以下の前記軟化剤を含む、請求項1または請求項2に記載の紙送りロール用ゴム組成物。
  4. 前記エチレン−プロピレン−ジエン共重合体は、52質量%以上70質量%以下のエチレン成分ユニットと、2.8質量%以上5.5質量%以下のジエン成分ユニットとを含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の紙送りロール用ゴム組成物。
  5. 前記ポリマー成分100質量部に対して、前記架橋剤として1質量部以上2.8質量部以下の硫黄を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の紙送りロール用ゴム組成物。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の紙送りロール用ゴム組成物からなるゴム層を備える紙送りロール。
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