JP3919178B2 - 紙葉類の重送防止部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等の給紙機構に用いられる、分離シート、分離パッド等の紙葉類の重送防止部材の耐摩耗性を改良するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンター、レーザプリンター、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、自動預金支払機(ATM)等における紙送り機構においては、図3に示される様に、搬送される紙葉類1を挟んで、紙送りローラ2と板状の紙葉類の重送防止部材3を対向配置している。この紙葉類の重送防止部材と紙葉類との間の摩擦抵抗によって、紙葉類が二枚以上同時に送られる不都合を防止している。
【0003】
即ち、詳細には、紙と紙送りローラとの間の摩擦係数μ1、紙と紙葉類の重送防止部材との摩擦係数μ2、重ねられた紙同士の間の摩擦係数μ3との間には、μ1>μ2>μ3なる関係が成立していることが要求される。
また、紙葉類の重送防止部材は、紙葉類の分離性能が安定していることが必要であり、さらには耐オゾン性等の耐久性及び耐摩耗性に優れていることが要求される。
【0004】
実験の結果では、上記μ3の値は0.3〜0.35程度であることから、μ2は0.5以上が必要である。また、μ1値は、通常、1.5〜2.5程度である。
紙葉類の重送防止部材はその上に紙を滑らせて使用するため、上記の摩擦係数μ2とするためには、ある程度の硬度が必要である。従来は、紙葉類の重送防止部材用の組成物の配合において、無機充填剤等を多く配合することにより、この必要な硬さを保っている。よって、従来の配合は、無機充填剤が多いので、加工可能とするために、さらにオイルを添加している。
【0005】
このような給紙機構に用いられる組成物及び各部材について、種々の提案がなされており、例えば、本出願人は、特開2000−204208号で、良好な摩擦係数を維持しつつ、耐摩耗性を高めるために、ローラの伸縮歪みを一定範囲とし、ローラ用組成物のSHORE−A硬度を20〜50、かつ50℃での損失係数tanδを0.02以上0.16以下とした紙送りローラを提案している。
【0006】
また、本出願人は、特許3053372号で、高摩擦係数と優れた耐摩耗性を得るために、EPDMを主成分とし、JIS A硬度20〜30度、かつ、50℃での損失係数tanδを0.02以上0.035以下としたゴム組成物及びこの組成物を用いた紙送りローラを提案している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特開2000−204208号及び特許3053372号に開示の組成物は、紙送りローラとしては非常に有用ではあるものの、いずれも硬度が低いため、紙葉類の重送防止部材としては、充分な分離性能を得られない場合があり、未だ改善の余地がある。
【0008】
また、紙葉類の重送防止部材は紙送りローラのように回転せず、平板状であるため、摩擦係数、均一摩耗性等、微妙な物性バランスが必要となる点が開示された紙送りローラとは異なる。よって、開示された紙送りローラ用のゴム組成物では紙葉類の重送防止部材としての性能が不十分である。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、優れた耐摩耗性を備え、かつ、紙の分離性能が安定している紙葉類の重送防止部材を提供することを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、粘弾性スペクトロメータで、測定温度23℃で測定した損失正接(tanδ)の値が0.1以下である組成物からなることを特徴とする紙葉類の重送防止部材を提供している。
【0011】
本発明者は、鋭意研究の結果、組成物の弾性ヒステリシスを小さくする、即ち、損失係数を小さくすると、紙葉類と重送防止部材との間でのエネルギー損失を低減することができ、これにより通紙による摩耗量を抑制できることを見出した。
【0012】
上記組成物のtanδの値を0.1以下としているのは、0.1より大きいと組成物の粘着性が大きくなると共に、エネルギー損失が大きくなり耐摩耗性に劣る原因となるためである。0.1より小さくなるほど耐摩耗性には優れるが、tanδが小さくなりすぎると、重送防止部材の破壊特性等が劣るためtanδは0.02以上が好ましい。
なお、より好ましいtanδの値は、0.03以上0.08以下である。
【0013】
上記損失正接は、粘弾性スペクトロメータで、測定温度23℃、チャック間距離20mm、初期歪み2mm、基本周波数10Hz及び変位振幅50μmの条件で測定したtanδの値としている。本条件であれば測定も容易である。
【0014】
本発明の紙葉類の重送防止部材は、EPDMゴム(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)を主成分として、過酸化物架橋したゴム組成物からなるのが好ましい。EPDMゴムを用いるのが好ましいのは以下の理由による。
即ち、EPDMゴムはその配合量により摩擦係数の調節が容易とされる。またEPDMは主鎖が飽和炭化水素からなり、主鎖に二重結合を含まないため、高濃度オゾン雰囲気、光線照射等の環境下に長時間曝されても、分子主鎖切断が起こりにくい。従って、紙葉類の重送防止部材の耐オゾン性を高めることができる。
【0015】
本発明の紙葉類の重送防止部材は、EPDM以外のゴム成分として、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプロピレンゴム(CR)、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPR)等から選択される1種または2種以上を混合使用しても良い。
しかし、耐オゾン性が高い点より、EPDMのみを使用することが最も好ましく、EPDMと他のゴムとをブレンドする場合、全ゴムに占めるEPDMの比率は、50重量%以上、さらに、80重量%以上が好ましい。
【0016】
EPDMには、ゴム成分のみからなる非油展タイプのEPDMとゴム成分とともに親展油を含む油展タイプのEPDMとが存在するが、本発明ではいずれのタイプのものも使用可能である。
【0017】
また、過酸化物架橋するのが好ましい理由は、架橋によるブルームが防止され耐久性が向上するためである。
上記過酸化物架橋に用いる過酸化物としては、従来公知のものが使用でき、例えば以下のものが挙げられる。すなわち、ベンゾイルパーオキサイド、1―1ジ−tert―ブチルパーオキシ3―3―5トリメチルシクロヘキサン、2―5ジメチル2―5ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ−tert―ブチルパーオキシジイソプロピルベンゼン、ジ−tert―ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキシド、tert―ブチルクミルパーオキシド、2―5ジメチル2―5ジ(tert―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−tert―ブチルパーオキシド及び2―5ジメチル2―5ジ(tert―ブチルパーオキシ)ヘキセン―3などが使用できる。
【0018】
使用する過酸化物の量は過酸化物の種類、用いる他の成分との関係で、適宜選択することができるが、ゴム成分100重量部に対して0.5重量部以上5.0重量部以下が好ましく、より好ましくは1.0重量部以上3.0重量部以下である。
【0019】
ゴム成分、架橋剤、架橋促進剤、架橋促進助剤以外の配合量は、上記ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、50重量部以下としていることが好ましい。これは、50重量部より多く配合すると耐摩耗が悪くなりやすいためである。
さらには30重量部以下が良い。
上記tanδの値を0.1以下とするためには、組成物の配合において、相対的にゴム成分を高め、架橋剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、共架橋剤等の架橋に関与する薬品以外の配合量を低減することが好ましい。
即ち、架橋に関与しない薬品である充填剤や軟化剤、加工助剤等の合計の配合量を相対的に減じ、過酸化物加硫するのが好ましい。
【0020】
本発明の紙葉類の重送防止部材は、JIS A硬度が70度〜90度であるのが好ましい。上記範囲としているのは、上記範囲より小さいと研磨加工等の加工が困難になりやすいためであり、一方、上記範囲より大きいと樹脂を貼り付ける加工等が困難になりやすいためである。
なお、JIS A硬度とは、JIS 6253デュロメータにより、測定した硬度であり、国際規格表示の従来のシェアA、JIS Aと同じ硬度である。
【0021】
架橋反応を適切に行い、効率良くtanδの値を小さくするために公知の共架橋剤を用いてもよい。共架橋剤とは、それ自身も架橋するとともに、ゴム分子とも反応して架橋し、全体を高分子化する働きをする多官能性モノマー、メタクリル酸あるいはアクリル酸の金属塩、1,2ポリブタジエンの官能基を利用した多官能性ポリマ―類、ジオキシムなどが挙げられる。これらの共架橋剤を用いるゴム組成物は、この共架橋剤により、架橋分子の分子量が増大し、これにより硬度が増大するので、従来の充填剤添加による硬度付与と比較して、耐摩耗性を著しく向上させることができる。上記共架橋剤としては、メタクリル酸の高級エステル類が好適に用いられ、特に、加工性が良好なトリメチロールプロパントリメタクリレートが好ましい。なお、共架橋剤の配合量は、ゴム成分100重量部に対して、5重量部以上20重量部以下が好ましい。
【0022】
架橋反応を適切に行うために公知の架橋助剤を用いても良く、架橋助剤としては例えば金属酸化物が良好に使用され、特に酸化亜鉛、炭酸亜鉛が好ましい。その配合量は加工性の理由からゴム成分100重量部に対して、1重量部以上5重量部以下が好ましい。
【0023】
上記組成物には、機械的強度を向上させるために、必要に応じて充填剤を配合することができる。充填剤としては、例えば、シリカ、カーボンブラック、クレー、タルク等の粉体を挙げることができる。
【0024】
本発明の紙葉類の重送防止部材の作成方法としは、公知の方法が採用でき、例えば以下の方法により作成できる。
組成物の配合を2軸押出機、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー等のゴム混練装置に投入し、混練りし、80℃〜90℃に加熱しながら、5〜6分程度混練りし、この混合物を金型内にセットして165℃〜175℃にてプレス加硫を行い、ゴムシートを作製する。このシートを所望の厚さにスライスした後、さらに所望の大きさの長方形に裁断し、紙葉類の重送防止部材としている。
【0025】
本発明の紙葉類の重送防止部材は、適切な摩擦係数を付与でき、かつ優れた耐摩耗性を有する。また、耐オゾン性にも優れ、良好な硬度を有し、加工性も良い。
よって、インクジェットプリンター、レーザプリンター、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置等の紙送り機構において、紙送りローラと対向配置すると、紙の分離性能を安定させることができ、耐久性、耐摩耗性に優れているので良好に使用することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の紙葉類の重送防止部材としての分離シートが用いられた給紙機構が示された模式的断面図である。
【0027】
この給紙機構は、紙送りローラ12とトレイ14とを備えている。トレイ14は、その上面の紙送りローラ12寄りに分離シート16を備えている。トレイ14の上面には、多数枚の紙葉類18が重ねられて蓄えられている。トレイ14の紙送りローラ12寄りは、その下面に当接するバネ(図示されず)によって上方に押し上げられ、紙送りローラ12に向かって押し付けられている。
【0028】
分離シート16と紙送りローラ12との間には、紙葉類18の先端部分20が挟まれており、紙送りローラ12が図中の矢印Rで示される方向に回転することによって、紙葉類18が1枚ずつ画像形成機構に向けて送り出される構成としている。
【0029】
紙葉類の重送防止ゴム部材である分離シート16は下記のゴム組成物を用いて成形されている。
ゴム組成物は、ゴム成分としてEPDMゴムを単独で用い、EPDMゴム100重量部に対して3重量部の過酸化物を用いて過酸化物架橋を行っており、粘弾性スペクトロメータで、測定温度23℃で測定した損失正接(tanδ)の値が0.07であり、JIS A硬度が83度である。
【0030】
上記ゴム組成物には、ゴム成分、架橋剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、共架橋剤以外の成分として、酸化ケイ素を15重量部、炭酸カルシウムを20重量部、酸化チタンを2重量部、カーボンを1重量部の合計38重量部配合している。なお、オイル等の軟化剤は配合していない。
【0031】
上記配合のゴム組成物を混練した後、金型内にセットして165〜175℃にてプレス加硫を行い、ゴムシートを作製する。このシートを所望の厚さにスライスした後、さらに所望の大きさの長方形に裁断し、紙葉類の重送防止部材である分離シート6としている。
【0032】
このように、tanδが0.1以下である組成物を用いて紙葉類の重送防止部材である分離シート16を形成している。このため、摩耗量を低減することができ、分離シート16の耐久性を向上することができる。
【0033】
図2は、本発明の紙葉類の重送防止ゴム部材としての分離パッドが用いられた給紙機構が示された模式的断面図である。
この給紙機構では、トレイ22と紙送りローラ22とが離間しており、紙送りローラ22と対向する位置には、基板24に固定された分離パッド26が設けられている。紙送りローラ22が図中の矢印Rで示される方向に回転することにより、トレイ22の上の紙葉類28が1枚ずつ画像形成機構に向けて送り出される構成としている。
【0034】
また、分離パッド26に代えて、分離ローラが設けられた給紙機構も存在し、分離パッドと分離シートとの両方を備えた給紙機構も存在する。
上記のような分離シート、分離パッド、分離ローラ等のいずれの場合でも、本発明の紙葉類の重送防止ゴム部材とすることができる。
【0035】
また、分離シート、分離パッド、分離ローラ等の紙葉類の重送防止ゴム部材は、表面が研磨されることによって表面粗度を高め、その摩擦係数を調整しても良い。
【0036】
以下、本発明の紙葉類の重送防止ゴム部材の実施例、比較例について詳述する。
下記の表1に示すように、実施例および比較例について、表に記載の配合からなる混練物を作成し、該混練物を170℃20分の条件でプレス加硫して50mm×200mm×2mmのシート状に成形し、このシートを1.2mmにスライスした後、幅10mm長さ60mmの長方形に裁断し、紙葉類の重送防止部材を製造した。
【0037】
【表1】
【0038】
表中の各配合の数値単位は重量部であり、使用した材料は下記の通りである。
EPDMゴム:住友化学製「エスプレン586」
TMPT:メタクリル酸高級エステル 新中村化学製、NKエステルTMPT、トリメチロールプロパントリメタクリレート
酸化ケイ素 日本シリカ製 ニプシール VN3
炭酸カルシウム 備北粉化製 BF300
酸化亜鉛 三井金属 酸化亜鉛2種
パラフィンオイル 出光興産 ダイアナプロセスオイルPW−90
酸化チタン チタン工業製 クロノス 酸化チタン KR380
カーボン 東海カーボン製 シーストSO
過酸化物 日本油脂製 パークミルD(ジクミルパーオキサイド)
【0039】
(実施例1乃至実施例4)
表1に示すように、EPDMゴムと、EPDMゴム成分100重量部に対して酸化ケイ素が10重量部〜30重量部含まれると共に、上記酸化ケイ素に対して上記シランカップリング剤が5重量%〜30重量%含まれるゴム組成物を用いて紙葉類の重送防止ゴム部材を成形した。
実施例1乃至実施例4はtanδの値が0.10〜0.03であり、全て0.1以下である。よって実施例1〜4の紙葉類の重送防止部材は本発明の紙葉類の重送防止部材である。また、ゴムとしてEPDMゴムのみが用いられ、過酸化物により加硫を行っておりデュロメータ硬度は72°〜88°である。
【0040】
さらに、各配合中、EPDMゴム及び架橋に関与する配合薬品である過酸化物(架橋剤)、TMPT(共架橋剤)及び酸化亜鉛(架橋促進剤)を除いた配合薬品(すなわち、充填剤である酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボン)の配合量が、EPDM100重量部に対して、実施例1は43重量部、実施例2及び実施例3は38重量部であり、実施例4は33重量部である。
【0041】
(比較例1)
比較例1はtanδの値が0.10より大きいので比較例1の紙葉類の重送防止部材は、本発明の範囲外である。また、比較例1はその配合中、EPDMゴム及び架橋に関与する配合薬品を除いた配合薬品の配合量が、充填剤及び軟化剤であるオイルが多いためにEPDM100重量部に対して103重量部となり、多い割合となっている。
【0042】
上記実施例1〜実施例4及び比較例1の紙葉類の重送防止部材を、以下の様に、粘弾性スペクトル、加工性、硬度、初期摩擦係数、初期の通紙状況及び摩耗量に関して以下の様に測定し、又は評価した。それらの結果を表1中に記載した。
【0043】
(粘弾性スペクトル測定)
レオロジー社製の粘弾性スペクトルを使用し、以下に記載の条件で測定することにより、tanδを求めた。
測定条件 ジグ:引っ張り、波形:正弦波、チャック間距離:20mm、基本周波数:10Hz、変位振幅:50μm、初期制御:歪み2mm、温度23℃、サンプル形状:4mm×30mm×1mm(厚み)
【0044】
(加工性の評価)
加工性についても良好なものを「○」、加工性があまり良くなかったものを「△」とした。
【0045】
(硬度)
JIS A硬度(JIS K6253スプリング式測定法 デュロメータ)を測定した。この硬度は国際規格表示である従来のシェアAと同じである。
【0046】
(摩擦係数の測定)
ヘイドン14型の摩擦係数測定機(新東科学社の商品名「トライボギア TYPE:HEIDON−14DR」)を用意し、測定紙としてキャノン社のプロパーボンド紙を用いて、初期摩擦係数を測定した。測定条件は、荷重が200gfで、速度が600mm/minとした。
初期摩擦係数は0.6以上1.0以下が好ましい。
【0047】
(通紙状況の観察及び評価と耐久試験)
各実施例及び比較例の紙葉類の重送防止部材ををプリンター(キャノン社の商品名「LPB470」)に装着し、23℃、相対湿度55%で、PPC用紙を用いて初期通紙1000枚にて通紙状況の観察を行った。
この初期の通紙状況の評価は、○:良好、△:不送り有り、×:不送り並びに重送有り、の三段階で行った。
また耐久試験としては上記プリンターを用いて23℃、相対湿度55%で、5万枚(50K)の通紙試験を行い、この試験の前後においての紙葉類の重送防止部材の重量差を摩耗量(mg)50K耐久とした。この摩耗量は35mg以下が最適である。
【0048】
表1の結果から明らかな様に、tanδの値が0.1以下である実施例1〜4の紙葉類の重送防止部材は、全て良好な加工性、硬度、初期摩擦係数、耐摩耗性を有し、初期通紙状況も全て良好であった。特に、摩耗量を非常に低減することができた。
【0049】
特に、共架橋剤(トリメチロールプロパントリメタクリレート)をEPDMゴム100重量部に対して15重量部配合した実施例4は、上記の摩耗量(mg)50K耐久の結果が10mgと特に少なく、耐摩耗性が非常に優れていた。
【0050】
また、実施例1〜4の紙葉類の重送防止部材は、無機充填剤を大量に配合していないが、良好な硬度を有していた。また、オイルを配合していないが加工性も良かった。従って、架橋に関与しない薬品を大量に配合する必要がないので、コスト的にも優れていた。
【0051】
また、本実施例においては、ゴムとしてEPDMを使用しているので、紙葉類の重送防止部材の耐オゾン性が高められるという利点もあった。また過酸化物加硫を行っているので、ブルームが抑制され、耐久性を向上させることができた。
【0052】
一方、tanδの値が0.1よりも大きい比較例1の紙葉類の重送防止部材は、50K耐久の摩耗量が75mgであり非常に大きく、耐久性に劣っていた。
【0053】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、損失係数(tanδ)が小さい組成物を用いているため、弾性ヒステリシスが小さく、紙葉類と重送防止部材との間でのエネルギー損失を低減することができ、これにより通紙による摩耗量を抑制することができる。よって、優れた耐摩耗性を備え、かつ、紙の分離性能を安定させることができる。
【0054】
また、本発明の紙葉類の重送防止部材は、架橋に関与しない配合が少なく、所要の摩擦係数、耐摩耗性、耐久性、加工性、硬度を満足出来る程度に両立させることができる。
【0055】
従って、本発明の紙葉類の重送防止部材は、紙やフィルム等をピックアップし分離しながら紙送りをする必要がある複写機、プリンター、ファクシミリなどにの給紙機構において極めて良好に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の紙葉類の重送防止部材としての分離シートが用いられた給紙機構が示された模式的断面図である。
【図2】 本発明の紙葉類の重送防止部材としての分離パッドが用いられた給紙機構が示された模式的断面図である。
【図3】 重送防止部材の他の使用例を示す図である。
【符号の説明】
12 紙送りローラ
14、22 トレイ
16 分離シート
18 紙葉類
20 先端部分
24 基板
26 分離パッド
Claims (4)
- 粘弾性スペクトロメータで、測定温度23℃で測定した損失正接(tanδ)の値が0.1以下である組成物からなることを特徴とする紙葉類の重送防止部材。
- 上記組成物が、EPDMゴムを主成分とし、過酸化物架橋してなるゴム組成物である請求項1に記載の紙葉類の重送防止部材。
- ゴム成分、架橋剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、共架橋剤以外の配合量は、上記ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、50重量部以下としている請求項2に記載の紙葉類の重送防止部材。
- JIS A硬度が70度〜90度である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の紙葉類の重送防止部材。
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