本明細書において、ある部材又はある領域等のある構成が、他の部材又は他の領域等の他の構成の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限り、これは他の構成の直上(又は直下)にある場合のみでなく、他の構成の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の構成の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
以下、本開示の実施の態様を、図面等を参照しながら説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の態様の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明する場合があるが、上下方向が逆転してもよい。
I.圧電素子積層体
まず、本開示の圧電素子積層体について説明する。本開示の圧電素子積層体は、2つに態様に大別される。
[I−A:第1態様]
本開示の圧電素子積層体の第1態様(以下、この項において本態様の圧電素子積層体とする場合がある。)は、基板および上記基板上の複数の圧電体を有する圧電素子と、上記圧電素子の一方の面上に配置され、開口部を有するプリント配線板と、上記圧電素子および上記プリント配線板間に配置された接着層と、を有する圧電素子積層体であって、上記圧電素子は、上記基板と上記開口部とが平面視上重なる領域である第1領域に上記圧電体を有し、上記接着層は、上記開口部の外周の外側に相当する位置で、且つ上記基板および上記プリント配線板が積層されている領域である第2領域に配置され、上記第2領域の内周側に相当する位置の、上記プリント配線板および上記基板の少なくとも一方に、隔壁を有する。
本態様の圧電素子積層体について、図面を参照しながら説明する。図1は、本態様の圧電素子積層体の一例を示す、圧電素子の実装面から見た概略平面図である。また、図2は図1のX−X線断面図であり、図3は図1の領域Pの拡大平面図である。なお、説明のため、図3において圧電素子1は破線で示す。本態様の圧電素子積層体10は、基板11および上記基板11上の複数の圧電体12を有する圧電素子1と、上記圧電素子1の一方の面上に配置され、開口部21を有するプリント配線板2と、を有する。上記圧電素子1は、基板11と開口部21とが平面視上重なる領域である第1領域Aに圧電体12を有する。図1で示す例では、第1領域Aにおいて、圧電素子1の基板11の平面視形状が、4つの梁部を有する十字形状である。また、上記開口部21の外周21aの外側に相当する位置で、且つ基板11および上記プリント配線板2が積層されている領域である第2領域Bには、基板11およびプリント配線板2の間に接着層3が配置されている。さらに、第2領域Bの内周側に相当する位置の、プリント配線板2および基板11の少なくとも一方には、隔壁30を有する。図1〜2で示す例では、プリント配線板2の圧電素子1側の面上に隔壁30が設けられている。
ここで、本態様の圧電素子積層体において、プリント配線板の開口部側を「内側」、プリント配線板の外周側を「外側」とする。また、上記開口部の外周とは、開口部の輪郭をなす外縁をいい、開口部の平面視形状とは、平面視において外周で囲まれた形状(外周形状)をいう。また、プリント配線板の外周とは、開口部を除くプリント配線板の輪郭をなす外縁をいう。後述する第2態様の圧電素子積層体についても同様とする。
本態様の圧電素子積層体において、第1領域とは、圧電素子の上記基板とプリント配線板の上記開口部とが平面視上重なる領域であり、図1、2において符号Aで示す領域である。上記第1領域の大きさは、プリント配線板の開口部の大きさに応じたものとなる。後述する第2態様の圧電素子積層体についても同様とする。
また、本態様の圧電素子積層体における第2領域とは、上記開口部の外周の外側に相当する位置で、且つ上記基板および上記プリント配線板が平面視上重なって積層されている領域であり、図1〜3において符号Bで示す領域である。上記第2領域の幅(図3におけるW2で示す長さ)は、通常、開口部の外周からプリント配線板の外周までの幅(図3におけるW1で示す長さ)よりも小さい。上記第2領域の幅は、機械強度的には広い方が好ましく、高価な基板の専有面積という観点では狭い方が好ましく、適宜設定することができる。上記第2領域の幅は、例えば500μm以上とすることができ、中でも750μm以上が好ましく、特に1000μm以上が好ましい。また、上記第2領域の幅は、例えば3000μm以下とすることができ、中でも2000μm以下が好ましく、特に1500μm以下が好ましい。上記第2領域の幅とは、上記第2領域の外周と内周との間の距離、具体的には、開口部の外周と圧電素子の基板の外周との間の直線距離をいう。後述する第2態様の圧電素子積層体についても同様とする。
上記第2領域の内周とは、上記第2領域の輪郭を成す縁のうち、開口部側に位置する縁をいい、通常、開口部の外周と平面視上重なる。また、第2領域の外周とは、上記第2領域の輪郭を成す縁のうち、プリント配線板の外周側に位置する縁をいい、通常、圧電素子の第2領域における基板の外周のうち、開口部の中心からの距離が大きい部分(プリント配線板の外周に近接する部分)と平面視上重なる。後述する第2態様の圧電素子積層体についても同様とする。
本態様の圧電素子積層体において、隔壁は、第2領域の内周側に相当する位置に配置される。具体的には、隔壁のプリント配線板と接する部分(以下、根元とする。)のうち内側(開口部側)の根元が、第2領域の内周上または上記内周から外側へ所望の間隔離れた位置に配置される。隔壁の内側の根元とは、図2、3において符号30aで示す部分である。第2領域の内周から隔壁の内側の上記根元までの間隔としては、プリント配線板のレジストのパタニング精度、上記精度に対する値段等に応じて適宜設定することができる。第2領域の内周から隔壁の内側の上記根元までの間隔は、例えば15μm以上とすることができ、中でも25μm以上が好ましく、特に50μm以上が好ましい。また、上記間隔は、例えば500μm以下とすることができ、中でも300μm以下が好ましく、特に200μm以下が好ましい。第2領域の内周から隔壁の内側の根元までの間隔とは、図2、3においてW3で示す長さである。
開口部を有するプリント配線板上に圧電素子を実装した圧電素子積層体においては、プリント配線板および圧電素子間を強固に接合し、圧電素子の振動変形を拘束するために、図4(a)、(b)で示すように、第2領域Bに位置する圧電素子1およびプリント配線板2間の空間(以下、第2領域における空間とする場合がある)に接着層3を有する。ここで、接着層3は、第2領域Bにおける上記空間に、硬化性樹脂を含む液状の接着剤を充填し硬化することで形成されるが、上記接着剤の粘性や流動性によっては、充填の際に、開口部21の外周を越えて第1領域A内に接着剤がはみ出してしまい、その状態で接着剤が硬化されると、図4(a)に示すように、第1領域A内にも接着層3の一部が存在することになる。このように、第1領域A内に接着層3の一部が存在すると、圧電素子1の振動が第1領域A内の接着層3により阻害されて振動幅が小さくなり、発生する振動エネルギー量が減少してしまう。そして、このような圧電素子基板を振動発電デバイスに用いると、振動発電デバイスが所望の発電能力を得られないという問題が生じる。
これに対し、本態様の圧電素子積層体によれば、図4(b)で示すように、プリント配線板2または圧電素子1の基板11の少なくとも一方には、所定の位置に隔壁30を有しているため、第2領域Bにおける上記空間に接着剤を充填する際に、接着剤の流動が隔壁30により遮られ、第1領域A内への接着剤のはみ出しを抑制することができる。これにより、接着層3の一部が第1領域A内に存在することによる圧電素子1の振動の阻害を抑制することができる。すなわち、本態様の圧電素子積層体は、上記の構造を有することで、振動発電デバイスに用いたときに、プリント配線板の有する開口部と圧電素子の基板とが平面視上重なる領域内に接着層がはみ出すことによる、振動発電デバイスの発電能力の低下を抑制することが可能となる。
本態様の圧電素子積層体は、プリント配線板に隔壁を有する第1実施形態、上記圧電素子の基板に隔壁を有する第2実施形態、上記プリント配線板および上記圧電素子の基板の両方に上記隔壁を有する第3実施形態が挙げられる。中でも、本態様の圧電素子積層体は、上記第1実施形態であることが好ましい。プリント配線板は、配線を有する面上に絶縁層が配置されるため、隔壁の材料を絶縁層の材料と同じとすることで、絶縁層の形成と同時に隔壁の形成が可能となる場合があるからである。以下、本態様の圧電素子積層体について、実施形態ごとに説明する。
A.第1実施形態
本態様の圧電素子積層体の第1実施形態(以下、この項において本実施形態とする場合がある。)は、上記第2領域の内周側に相当する位置の上記プリント配線板に上記隔壁を有する。すでに説明した図1〜3の各図は、本態様の圧電素子積層体の第1実施形態の一例を示している。以下、本態様の圧電素子積層体の第1実施形態の各構成について説明する。
1.プリント配線板
本実施形態におけるプリント配線板は、上記圧電素子の一方の面上に配置され、開口部を有する部材である。また、上記プリント配線板の、上記第2領域の内周側に相当する位置には、隔壁を有する。
プリント配線板は、開口部を有する絶縁性基板と、上記絶縁性基板の一方の面上の上記開口部の外周の外側に、複数の配線と、上記配線に連結する接続端子と、上記配線を覆う絶縁層とを有し、上記プリント配線板の上記絶縁層を有する面が上記圧電素子側となるようにして配置される。上記隔壁は、上記絶縁性基板の、絶縁層を有する面と同一面上の所定の位置に設けられ、上記絶縁層は、上記隔壁の上記第2領域の外周側に配置される。隔壁と絶縁層との間には、凹形状の領域を有することができる。なお、プリント配線板における絶縁性基板および絶縁層以外の部材については、図示を省略している。また、絶縁層について、一部図示を省略している。
(1)隔壁
隔壁は、上記プリント配線板の上記圧電素子側の面上の、上記第2領域の内周側に相当する位置に配置されている。
隔壁の材料は、上記隔壁を所望の形状に形成することができ、第2領域における空間内に接着剤を充填して接着層を設ける際に、第1領域内への接着剤の流入を阻止することが可能であれば特に限定されず、例えば、電離線硬化性樹脂が挙げられ、その中でも、レジストに用いられる感光性樹脂が好ましい。フォトリソグラフィ法により、隔壁を所望の位置に所望の形状で容易に形成することができるからである。
隔壁は、通常、絶縁性を示す。プリント配線板および圧電素子の間でショートが発生するのを防ぐことができるからである。また、上記プリント配線板の配線を有する面上には、通常、絶縁層が配置されるため、隔壁の材料を上記絶縁層と同じ絶縁性材料とすることで、上記絶縁層を所望のパターンで形成する際に、上記絶縁層の上記パターンの一部を隔壁とすることができるからである。
絶縁性を示す感光性樹脂としては、一般的なものを用いることができ、ポジ型感光性樹脂であってもよくネガ型感光性樹脂であってもよい。ポジ型感光性樹脂としては、例えばフェノールエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド、シクロオレフィン等を挙げることができる。また、ネガ型感光性樹脂としては、例えば、感光性ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂、感光性フェノール樹脂、感光性エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、メラミン樹脂等を挙げることができる。また、上記隔壁の材料として、上記の樹脂の種類に応じて架橋剤等の任意の組成を含んでいてもよい。
隔壁は、後述するプリント配線板の絶縁層と同一の組成であってもよく、異なる組成であってもよいが、上記プリント配線板上の上記絶縁層と同一の組成であることが好ましい。隔壁と絶縁層とを同一の材料を用いて形成することで、例えばフォトリソグラフィ法等の所望の方法により、隔壁と絶縁層とを一括で形成可能となるからである。
隔壁の断面形状は、特に限定されるものではなく、例えば、図5(a)で例示するように、上底の幅W4および下底の幅W5が同等の幅を有する垂直形状であってもよく、図5(b)に示すように、上底の幅W4が下底の幅W5より小さくなる順テーパー形状であってもよく図5(c)に示すように、上底の幅W4が下底の幅W5より大きくなる逆テーパー形状であってもよい。また、上記断面形状は、図5(a)〜(c)で示したように対称形状であってもよく、非対称形状であってもよい。ここで、隔壁の断面形状とは、隔壁を幅方向に切断した断面形状をいう。また、隔壁の上底とは、隔壁の配置面側とは反対側の面をいい、隔壁の下底とは、隔壁の配置面側の面をいう。
隔壁の高さは、第2領域における空間内に接着剤を充填して接着層を設ける際に、充填した接着剤が隔壁を越えて第1領域内へ流出するのを防ぐことが可能となる大きさに適宜設定することができる。例えば、上記プリント配線板および上記圧電素子間の間隔を1としたときに、上記隔壁の高さが0.3以上であることが好ましく、中でも0.6以上、特に0.9以上が好ましい。なお、上記プリント配線板および上記圧電素子間の間隔を1としたときの上記隔壁の高さは、通常、1以下である。具体的な隔壁の高さとしては、30μm以上とすることができ、中でも60μm以上、特に90μm以上が好ましい。また、上記隔壁の高さは、120μm以下とすることができ、中でも110μm以下、特に100μm以下が好ましい。プリント配線板および圧電素子間の間隔に対する隔壁の高さの比率、および具体的な隔壁の高さを上記の範囲内で設定することで、接着剤が上記隔壁を越えにくくなり、第1領域内への接着剤の流出量を少なくすることができるからである。
ここで、プリント配線板および圧電素子間の間隔とは、圧電素子積層体に外力が作用していない状態での、プリント配線板の絶縁性基板と圧電素子の基板との間の距離をいい、図5においてDで示す部分である。また、「隔壁の高さ」とは、圧電素子積層体に外力が作用していない状態での、隔壁の断面形状において下底から上底の最上部までの距離をいい、図5(a)〜(c)においてHで示す部分である。
隔壁の幅は、第2領域における空間内に接着剤を充填して接着層を設ける際に、接着剤が隔壁を越えて第1領域内へ流出するのを防ぐことが可能となる大きさであればよく、プリント配線板の構造、仕様等を考慮して設計することができる。例えば、上記隔壁の高さを1としたときに、上記隔壁の下底の幅が1.0以上であることが好ましく、中でも1.1以上、特に1.2以上であることが好ましい。また、上記隔壁の高さを1としたときに、上記隔壁の下底の幅が1.4以下であることが好ましく、中でも1.7以下、特に1.4以下であることが好ましいであることが好ましい。具体的な隔壁の下底の幅としては、100μm以上とすることができ、中でも110μm以上、特に120μm以上が好ましい。また、上記隔壁の下底の幅は、200μm以下とすることができ、中でも170μm以下、特に140μm以下が好ましい。
隔壁の断面形状は、例えば、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて確認することができる。また、隔壁の高さ、下底の幅等は触針式段差計、光学顕微鏡やSEMの観察像の計測値を基に算出することができる。触針式段差計、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)は、一般的なものを用いることができる。
隔壁30は、図6(a)で示すように、開口部21の外周21aの外側に相当する位置で、且つ基板11およびプリント配線板2が積層されている領域である第2領域Bの内周側に相当する位置に配置される。図6(b)で示すように、上記開口部21の外周21aの全周に沿って上記隔壁30を有していてもよい。開口部の外周の全周に沿って隔壁を有することで、第2領域における空間内に接着剤を充填して接着層を設ける際に、第2領域以外の領域から第1領域内へ接着剤が流出するのを阻止することができ、第1領域内の見栄えを良くすることができる。図6(a)、(b)はプリント配線板の一例を示す概略平面図であり、第1領域において、実装する圧電素子の基板11の平面視形状が、4つの梁部を有する十字形状である例を示している。また、図6(a)、(b)において、右図は左図の領域Pの拡大図である。
隔壁は、フォトリソグラフィ法、印刷法等の一般的な方法を用いて形成することができる。上記隔壁がプリント配線板における絶縁層と同一の材料で形成される場合は、フォトリソグラフィ法を用いることが好ましい。
(2)プリント配線板
以下、プリント配線板を構成する、絶縁性基板、複数の配線および接続端子、ならびに絶縁層について説明する。
(a)絶縁層
プリント配線板における絶縁層は、上記プリント配線板の上記圧電素子側の面上の、上記開口部の外周の外側に、上記隔壁および上記隔壁の上記第2領域の外周側に配置される。
絶縁層は、上記プリント配線板の配線を有する面において、上記第2領域の外周の外側に位置する配線を保護し、プリント配線板と圧電素子との間でショートが発生することを防止する機能を有する。
図7(a)、(b)は、プリント配線板の他の例を示す概略平面図およびX−X線断面図である。図7(a)、(b)で例示するプリント配線板2は、圧電素子1側の面上の、開口部21の外周21aの外側に、隔壁30および上記隔壁30の第2領域Bの外周側に配置された絶縁層31を有する。隔壁30と絶縁層31との間の領域32は凹形状となる。図7(a)、(b)では、隔壁30と絶縁層31とが、同一の材料で形成されている。
絶縁層の材料としては、絶縁性を示す樹脂が用いられ、具体的には、上述した隔壁の材料である絶縁性の感光性樹脂を用いることができる。中でも、上記絶縁層と上記隔壁とが同一の材料で形成されていることが好ましい。絶縁層と隔壁とを、例えばフォトリソグラフィ法等の所望の方法により一括で形成することが可能となるからである。
絶縁層の厚みは、上述した絶縁層の機能を発揮可能であれば特に限定されず、一般的なプリント基板における絶縁層の標準的な厚みと同様とすることができる、上記絶縁層の厚みとしては、例えば10μm以上とすることができ、中でも20μm以上が好ましい。また、上記絶縁層の厚みとしては、例えば、100μm以下とすることができ、中でも60μm以下とすることができる。上記絶縁層の厚みは、隔壁の高さと同じであってもよく、異なってもよい。絶縁層と隔壁とが一括で形成される場合は、上記絶縁層の厚みは隔壁の高さと同じとすることができる。
隔壁と絶縁層とは、それぞれが分離独立して配置されていてもよく、連結して一体であってもよい。前者の場合であれば、上記隔壁および上記絶縁層の間の領域において、プリント配線板の絶縁性基板の表面は露出することができ、一方、後者の場合であれば、プリント配線板の絶縁性基板の表面の少なくとも一部を露出しないものとすることができる。
隔壁および絶縁層の間の領域は、断面が凹形状を有する。上記隔壁および上記絶縁層の間の領域の幅は、上記領域内に接着層を有することができ、上記接着層を介してプリント配線板および圧電素子間を接合可能となる幅となるように適宜設定することができる。
隔壁および絶縁層の間の領域の平面視形状は、隔壁と絶縁層との配置に応じて適宜設定することができる。上記開口部の外周の全周に沿って上記隔壁を有し、上記隔壁の上記第2領域の外周側の上記絶縁性基板の表面全域に絶縁層を有する場合であれば、上記領域の平面視形状は、プリント配線板の開口部の平面視形状に応じた形状とすることができる。例えば、上記開口部が四角形や四角形以外の多角形であれば、上記隔壁および上記絶縁層の間の領域の平面視形状も四角形や多角形とすることができる。
また、隔壁および絶縁層の間の領域の断面形状は、隔壁の形状および絶縁層の側面形状に応じて適宜設計することができ、例えば、垂直形状、順テーパー形状、逆テーパー形状等が挙げられる。上記隔壁および上記絶縁層の間の領域は、隔壁の高さおよび絶縁層の厚みに応じた深さを有する。上記領域においてプリント配線板の絶縁性基板表面が露出していない場合であれば、上記隔壁および上記絶縁層の間の領域は、上記隔壁30の高さ(図8中のH1)または絶縁層の厚みから、上記領域内の絶縁層の厚み(図8中のH2)を除いた深さを有することができる。
隔壁および絶縁層の間の領域の平面視形状および断面形状は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて確認することができる。また、上記領域の幅、深さ等はSEMの観察像の計測値を基に算出することができる。走査型電子顕微鏡(SEM)は、一般的なものを用いることができる。
絶縁層は、上記プリント配線板の絶縁性基板上において、上記隔壁よりも上記第2領域の外周側の配線を保護するように設けられる。また、上記絶縁層は、上記隔壁との間に凹形状の領域を有することが可能な位置に配置される。上記隔壁および上記絶縁層の間の上記領域は、第2領域と少なくとも一部が重複していればよく、上記絶縁層の内周側面の位置に応じて、上記第2領域の外周の外側の領域を含んでいてもよい。したがって、上記絶縁層の内周側面の位置としては、例えば、第2領域の外周上であってもよく、上記第2領域の外周より外側であってもよく、上記第2領域の外周より内側であってもよい。後述する図12では、上記絶縁層の内周側面が第2領域Bの外周より外側に位置することから、上記隔壁および上記絶縁層の間の領域は、第2領域Bおよびその外側の領域を含んでいる。上記絶縁層の外周側面は、上記第2領域の外周より外側、例えばプリント配線板の外周上に位置する。
(b)絶縁性基板
プリント配線板における上記絶縁性基板は、配線、接続端子、絶縁層および隔壁を支持する部材である。
絶縁性基板は、所望の絶縁性を有すれば特に限定されず、例えば、ガラスエポキシ板等の従来公知のプリント配線板に用いられる絶縁性基板を適用することができる。
絶縁性基板は開口部を有する。上記絶縁性基板の開口部が、すなわちプリント配線板の開口部となる。上記開口部の平面視形状(開口部の外周形状)は、振動発電デバイスを組み立てる際に、重錘体の出し入れが可能な形状であれば特に限定されず、例えば四角形、四角形以外の多角形、円形等の任意の形状とすることができる。上記四角形や多角形は、正四角形や正多角形を含む。上記四角形や多角形は、角が面取りされた面取り部を有していてもよい。角は、平面状に面取りされていてもよく、曲面状に面取りされていてもよい。
図7(a)は、開口部21の平面視形状が、四隅が面取りされた面取り部21bを有する正方形である例を示している。図7(a)において正方形の四隅の角は、平面状に面取りされている。面取り幅は特に限定されず、適宜設定することができ、例えば梁部の幅以上とすることができる。また、上記面取り幅の上限は特に限定されないが、梁部の長さの2倍以下であることが好ましい。なお、面取り幅とは、角の面取りにより形成された面の面内方向の長さをいい、図7(a)中のTで示す長さをいう。
中でも、上記開口部の平面視形状が、四隅が面取りされた面取り部を有する正方形であり、面取り部が、圧電素子の基板における梁部の幅以上の面取り幅を有することが好ましい。後述するように、十字形状の梁部を有する圧電素子の基板の4つ梁部が、それぞれ上記開口部の面取り部と直交して配置されることで、圧電素子に対して衝撃力が印加される方向と交差する方向に梁部が延在する構造となるため、プリント配線板に固定される梁部の端部に生じる応力集中を分散させることができ、より高い出力性および高い衝撃信頼性を有することができるからである。
開口部の大きさは、重錘体の出し入れが可能な大きさとなるように適宜設定することができる。
絶縁性基板の平面視外周形状は、特に限定されず、例えば四角形、四角形以外の多角形、円形等の任意の形状とすることができる。上記四角形や多角形は、正四角形(正方形)や正多角形を含む。上記四角形や多角形は、角が面取りされていてもよい。中でも上記絶縁性基板の平面視外周形状は、四角形であることが好ましく、例えば正方形や長方形とすることができる。
絶縁性基板の厚みは、配線、接続端子、絶縁層および隔壁を支持することができれば、特に限定されない。
(c)複数の配線および接続端子
プリント配線板における複数の配線は、複数のプリント配線および複数のダミー配線を含む。上記配線は、上記絶縁性基板の開口部の外周の外側に設けられており、具体的には上記絶縁性基板上の上記絶縁層が配置される領域に位置する。
プリント配線およびダミー配線は、所望の導電性を有すれば特に限定されず、従来公知のプリント配線板に用いられる配線の材料で形成することができる。
配線は、一端に外部への出力電極(出力端子)を有し、他端に圧電素子からの入力電極(入力端子)を有する。これらの接続端子は、所望の導電性を有すれば特に限定されず、従来公知のプリント配線板に用いられる接続端子と同様とすることができる。上記配線が有する接続端子のうち、少なくとも配線の一方の一端に有する接続端子は、上記隔壁および上記絶縁層の間の領域に位置することができる。
(d)その他
プリント配線板は、従来公知の形成方法により形成することができる。
(3)その他
プリント配線板は、上記圧電素子の圧電体により生じる電気エネルギーを回収可能となるように電気的に接続される。すなわち、プリント配線板上の1対の電極の入力電極が、圧電素子の圧電体の電位差が生じる両端にそれぞれ接続される。圧電体で生じた電位差は、電気エネルギーとしてそれぞれの出力電極にて回収することができる。プリント配線板と圧電素子との電気的な接続方法としては、特に限定されないが、例えば、上記第2領域における空間に後述する電気接続部材を配置してフリップチップ方式により接続する方法、プリント配線板の上記第2領域にホールを設け、上記ホールを介して電気接続部材によるワイヤボンディング方式により接続する方法等が挙げられる。
2.圧電素子
本実施形態における圧電素子は、基板および上記基板上の複数の圧電体を有する。上記圧電素子は、上記基板と上記開口部とが平面視上重なる領域である第1領域に上記圧電体を有する。
(a)圧電体
圧電体は、圧電層および上記圧電層上に配置された集電層を有する。上記圧電素子は、上記集電層においてプリント配線板と電気的な接続を取ることができる。ここで、基板上に複数の圧電体を有するとは、図9(a)で示すように、基板11上に単一の圧電層22が配置され、上記単一の圧電層22上に集電層23が個片状に配置されることで、個片状の集電層23およびそれと平面視上重なる圧電層22の領域から成る圧電体12を上記基板11上に複数有していてもよく、図9(b)で示すように、圧電層22および上記圧電層22上の集電層23を有する個片状の圧電体12を上記基板11上に複数有していてもよい。中でも図9(a)で示す構造は、圧電層が例えば窒化アルミニウムで形成される場合に、電極からの配線を絶縁体でもある圧電体上で引き回すことが可能となる点で好ましい。なお、図9(a)、(b)は、基板上の複数の圧電体を説明する模式図であり、右側が平面図、左側が断面図である。
圧電層の材料としては、従来公知の圧電体や強誘電体に用いられる材料から選択することができる。このような材料としては、非鉛系強誘電体材料を好ましく用いることができる。上記非鉛系強誘電体としては、例えば、窒化アルミニウム(AlN);スカンジウム含有窒化アルミニウム(Sc−AlN)、マグネシウムおよびニオブ含有窒化アルミニウム(Mg/Nb−AlN)等の異元素含有窒化アルミニウム;酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ニオブ含有チタン酸ジルコン酸鉛(Nb−PZT)等の異元素含有チタン酸ジルコン酸鉛;ニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)等が挙げられる。中でも、鉛を含まないという環境への優しさ、圧電定数の2乗を誘電率で除した値で決まる性能指標の高さ、生産技術が確立されているという点から、窒化アルミニウム(AlN)または異元素含有窒化アルミニウムであることが好ましく、窒化アルミニウム(AlN)がより好ましい。
上記圧電層に含まれる窒化アルミニウム(AlN)または異元素含有窒化アルミニウムの割合は、42質量%以上とすることができ、中でも99質量%以上とすることが好ましく、特に99.5質量%以上とすることが好ましい。圧電性の低下を招く他の物質を含まないことにより、上記圧電層を高密度な層とすることができるからである。
圧電層の厚みは、特に限定されないが、例えば1μm以上とすることができ、中でも2μm以上が好ましい。また、上記圧電層の厚みは、例えば20μm以下とすることができ、中でも10μm以下が好ましい。
集電層は、上記圧電層の表面に現れた電荷を収集する。上記集電層の構成材料としては、一般的な圧電素子における電極に用いられる材料を適用することができ、例えば、銅、銀、金、白金、モリブデン、タングステン、ニッケル、チタン、亜鉛、アルミニウム等の金属、銀にシリカを主成分としたガラス等を含有させた銀化合物、銀−鉛合金、銀−パラジウム合金、銀−白金合金等、金−鉛合金、金−パラジウム合金、金−白金合金等の合金等が挙げられる。集電層を構成する材料は1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
集電層の厚みは、一般的な圧電素子における電極の厚みと同様とすることができ、例えば0.05μm以上5μm以下の範囲内とすることができる。
複数の圧電体は、上記基板と上記開口部とが平面視上重なる領域である第1領域に配置される。複数の圧電体は、上記第1領域において、基板のプリント配線板側の面上に有していてもよく、プリント配線板側と反対側の面上に有していてもよく、両面上に有していてもよい。中でも、上記第1領域において、上記基板の両方の面上に上記複数の圧電体を有することが好ましい。振動による発電を効率的に行うことができるからである。このとき、基板の一方の面上に配置される圧電体と他方の面上に配置される圧電体とが平面視上重なることが好ましい。圧電体層の残留応力による基材の反りの影響を低減できるからである。
圧電素子における圧電体の数は、所望の発電能力を得ることが可能であれば特に限定されない。
(b)基板
基板は、圧電体を支持する薄板状の部材であり、振動板と称することができる。上記基板は、外力の作用により開口部の外周と平面視上重なる位置を起点として振動する。また、上記基板は、本開示の圧電素子積層体を振動発電デバイスに用いたときに、重錘体との固定位置となる領域(図1中の領域R)を有する。
基板は、圧電素子が外力の作用する方向に屈曲可能となるための物性が求められる。このため、上記基板は、高靭性と弾性を備え、曲げ剛性が低いことが好ましい。このような基板としては、例えば、樹脂基板、金属基板が挙げられる。樹脂基板の樹脂としては、シリコン樹脂、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等が挙げられる。金属基板の金属としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金等が挙げられる。中でも上記基板は、金属基板が好ましく、より好ましくはSUS基板である。SUS基板は高い靭性を有し、値段が比較的に安く、工業的に入手しやすいからである。ステンレス鋼としては、例えばSUS303、SUS304等が挙げられる。中でもSUS304が好ましい。その理由については、後述する「II.振動発電デバイス 2.重錘体」の項で詳細に説明するため、ここでの説明は省略する。
基板の平面視形状は、圧電素子の平面視形状に相当する。上記基板は、外力の作用により屈曲振動可能な平面視形状を有することができる。上記第1領域における上記基板の平面視形状は、特に限定されないが、4つの梁部を有する十字形状であることが好ましい。上記第1領域における上記基板の平面視形状を十字形状とすることで、基板が外力の作用により屈曲振動が生じやすく、より大きな振動エネルギーを得ることができ、高い出力および高い衝撃信頼性を有することができるからである。
図10(a)〜(c)は、圧電素子の一例を示す概略平面図であり、第1領域Aにおける基板11の平面視形状が、4つの梁部11aを有する十字形状である。第1領域Aにおいて、基板11の梁部11a以外の部分は、貫通孔(図10における符号11b)となる。
基板の梁部は、絶縁性基板における開口部の外周と交差するが、中でも、上記開口部の平面視形状が、四隅が面取りされた面取り部を有する正方形であることが好ましい。このとき、上記面取り部は、上記梁部の幅以上の面取り幅を有し、上記4つ梁部がそれぞれ上記面取り部と直交することが好ましい。上記基板が、圧電素子に対して衝撃力が印加される方向と交差する方向に梁部が延在する構造となるため、プリント配線板に固定される梁部の端部に生じる応力集中を分散させることができ、より高い出力性および高い衝撃信頼性を有することができるからである。図10(b)では、基板11の4つ梁部11aがそれぞれ、絶縁性基板における正方形の開口部21aの面取り部21bと直交している。
上記4つ梁部がそれぞれ上記面取り部と直交するとは、梁部と面取り部とが交わる平面角度(以下、交差角度とする。)が90°である場合のほか、上述した効果を奏しうる範囲であれば、上記交差角度が90°より大きいまたは小さい場合も含むことができ、具体的には、上記交差角度が90°±30°の範囲を許容するものとして定義することができる。
第1領域において上記基板の平面視形状が十字形状である場合、梁部は両方の端部が固定された両持ち梁とすることができる。図10(a)〜(b)に例示する基板の4つの梁部はそれぞれ、一方の端部がプリント配線板に固定され、他方の端部が梁交差部11cに固定された両持ち梁である。4つの梁部を有する十字形状の場合、4つの梁部の交差位置にあたる梁交差部11cに振動の作用点を有することができ、梁交差部11cにおいて圧電素子と後述する重錘体とを固定して、振動発電デバイスとすることができる。
第1領域において上記基板の平面視形状が十字形状である場合、上記梁部の端部が上記プリント配線板に固定されている態様としては、上記梁部の一方の端部がプリント配線板上に直接積層固定されていてもよく、上記基板が外周枠を有し、上記梁部の端部が上記外周枠に連結固定され、上記外周枠と上記プリント配線板とが、上記開口部の外周より外側で積層固定されていてもよい。なお、図7(a)、(b)に例示する基板は、それぞれの梁部の一方の端部が外周枠に連結固定されており、図7(c)に例示する基板は、4つの梁部がそれぞれ、一方の端部がプリント配線板に固定される。
基板が外周枠を有する場合、上記外周枠の平面視形状としては、プリント配線板の開口部と平面視上重ならず、上記開口部の外周の外側で積層可能となる形状であれば特に限定されず、例えば、四角形、四角形以外の多角形、円形等、プリント配線板の開口部の平面視形状に応じて適宜設計することができる。上記四角形や多角形は、正四角形や正多角形を含む。また、上記四角形や多角形は、角が面取りされていてもよい。
基板の梁部の幅や有効長さは、特に限定されず、載置する圧電体の大きさや個数、基板や開口部の大きさ、外部から印可される振動に対する重錘体の振動傾向に応じて想定して要求される共振周波数や発電レンジ等に応じて適宜設計することができる。なお、梁部の有効長さとは、両端が固定された梁部において振動可能な領域の長さをいう。基板における複数本の梁部は、それぞれの有効長さが等しいことが好ましく、また、それぞれの幅が等しいことが好ましい。
基板の大きさは、特に限定されず、圧電素子の大きさや、圧電素子積層体を用いる振動発電デバイスの大きさに応じて適宜設計することができる。
基板は、上述した物性を発揮可能な厚みを有することが好ましく、例えば10μm以上とすることができ、中でも20μm以上、特に25μm以上が好ましい。また、上記基板の厚みは、1000μm以下とすることができ、中でも500μm以下、特に100μm以下が好ましい。基板の厚みを上記の範囲内で設定することで、圧電体を支持することができ、外力の作用により振動が可能となるからである。
(c)その他
圧電素子の形成方法としては、特に限定されず、例えば、基板に対し、化学気相成長法(CVD)、有機金属分解法(MOD)、ゾルゲル法といった化学的堆積法や、スパッタリング、分子線エピタキシー、パルスドレーザーデポジション(PLD)といった物理的堆積法により直接に成膜し、所望の形状に加工して圧電体を形成することで得られる。また、上記圧電素子は、予め所望の形状に加工した基板を準備し、上記基板の第1領域に位置する領域に接着剤等を用いて圧電体を接合固定して得ることができる。このとき圧電体は、焼結法など公知の方法を用いて形成することができる。
3.接着層
本実施形態における接着層は、上記圧電素子および上記プリント配線板間に配置される部材である。上記接着層は、上記開口部の外周の外側に相当する位置で、且つ上記基板および上記プリント配線板が積層されている領域である第2領域に配置される。振動発電デバイスにおける接着層は、一般に「アンダーフィル」と呼ばれ、上記接着層を形成する接着剤は、一般に「アンダーフィル材」と呼ばれる。
接着層は、硬化性樹脂を含む液状の接着剤が硬化した硬化物である。上記硬化性樹脂としては、圧電素子と基板との接合に使用される一般的な接着剤に含まれる硬化性樹脂が挙げられ、例えば、シリコン樹脂、変性シリコン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂等又はこれらの樹脂の組み合わせ、あるいは、これらの樹脂を1種以上含むハイブリッド樹脂等が挙げられる。中でもシリコン樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。
接着層は、第2領域における空間を充填するように設けられる。これにより、後述する電気接続部材を介して上記プリント配線板および上記圧電素子間の電気的接続を取る場合に、接着層により上記電気接続部材が補強され、接続信頼性を高めることができる。上記隔壁および上記絶縁層の間の領域が上記第2領域および上記第2領域よりも外側の領域を含む場合、第2領域における空間を含む上記隔壁および上記絶縁層の間の領域を充填するようにして上記接着層が設けられていてもよい。
第2領域における接着層の厚みは、第2領域における空間を充填することができ、上記プリント配線板と上記圧電素子とを強固に接合することができる大きさであればよく、通常、上記プリント配線板および上記圧電素子間の間隔と同じ大きさとすることができる。
接着層は、通常、上記第2領域の隔壁よりも外側に形成されるが、図11で示すように、プリント配線板2の開口部21の外周を越えなければ、上記第2領域Bにおいて、隔壁30よりも内側、すなわち、隔壁30よりも開口部21側且つ開口部21の外周の外側に接着層6の一部を有していてもよい。
接着層の形成方法は、例えば部品実装基板において部品および基板間に接着層(アンダーフィル)を設ける方法と同様とすることができる。具体的には、上記プリント配線板および上記圧電素子を、電気接続部材等を介して接続した後、第2領域における上記プリント配線板および上記圧電素子間の空間に、上記第2領域の外周側からニードル等を用いて液状の接着剤(アンダーフィル材)を注入して充填後、硬化させて形成することができる。
4.電気接続部材
圧電素子積層体の上記第2領域には、上記隔壁よりも上記第2領域の外周側に、さらに電気接続部材を有することができる。具体的には、上記電気接続部材は、上記隔壁および上記絶縁層の間の領域内に有することができる。上記電気接続部材は、上記プリント配線板と上記圧電素子とを電気的に接続する部材である。本実施形態においては、第2領域内の所定の位置に電気接続部材を有することで、上記電気接続部材を介してプリント配線板および圧電素子間の導通を取ることができる。
図12は、圧電素子積層体の第1実施形態の他の例を示す概略断面図であり、第2領域Bの所定の位置に電気接続部材33を有し、プリント配線板2と圧電素子1とが電気接続部材33を介してフリップチップ方式により接続されている。なお、図12において説明しない符号については、図1等の符号と同じである。
電気接続部材による接続方式は、上記第2領域内の所定の位置に上記電気接続部材を有することで、プリント配線板および圧電素子間の導通を取ることが可能な方式であればよく、ワイヤボンディング方式でもよく、フリップチップ方式でもよい。また、上記電気接続部材は、接続方式により適宜選択することができ、フリップチップ方式であれば、例えばバンプを用いることができ、ワイヤボンディング方式であれば、例えば導電性ワイヤを用いることができる。中でも、上記電気接続部材がバンプであること、すなわち、プリント配線板および圧電素子間がフリップチップ方式で接続されることで、プリント配線板および圧電素子間の接続信頼性を向上させることができる。上記第2領域における空間は、接着層により充填されていることから、振動時の上記バンプへの応力の集中が周囲の接着層により抑制されるからである。
バンプの材料としては、導電性を示す材料であれば特に限定されず、例えば、半田、金属ペースト等、一般的なバンプの材料を用いることができる。上記半田の組成や金属ペーストの組成については、特に限定されず、一般にプリント配線板への部品の実装に用いられる、半田の組成や金属ペーストとの組成と同様とすることができる。
電気接続部材の形成方法は、特に限定されず、一般的な部品実装配線板の製造に用いられる方法を用いて形成することができる。例えばプリント配線板および圧電素子間の電気的接続をリップチップ方式で行う場合であれば、上記電気接続部材は、以下の方法により形成することができる。まず、プリント配線板の上記圧電素子側の面上の、第2領域に相当する位置に有する接続端子上に、スクリーン印刷によりクリーム半田を印刷し、プリント配線板側電気接続部材を設ける。同様に、上記圧電素子の上記プリント配線板側の面上の、第2領域に相当する位置に有する集電層上に、スクリーン印刷によりクリーム半田を印刷し、圧電素子側電気接続部材を設ける。そして圧電素子をプリント配線板上に配置し、上記プリント配線板側電気接続部材と上記圧電素子側電気接続部材とを重ねてリフローする。これにより、上記プリント配線板側電気接続部材と上記圧電素子側電気接続部材とが一体化した電気接続部材を形成することができる。
5.任意の部材
本実施形態においては、上記の部材の他に、整流回路、電圧レギュレータ回路、バッテリー等のエナジーマネジメント回路要素およびその回路自身、キャパシタ等の受動素子、加速度センサや超音波トランスデューサ等の物理量センサ、においセンサ等の化学量センサ、信号処理回路、通信回路を有することができる。
B.第2実施形態
本態様の圧電素子積層体の第2実施形態(以下、この項において本実施形態とする場合がある。)上記第2領域の内周側に相当する位置の圧電素子の上記基板に隔壁を有する。
図13は、本態様の圧電素子積層体の第2実施形態の一例を示す概略断面図であり、隔壁30が、第2領域Bの内周側に相当する位置の、圧電素子1の基板11上に配置されていること以外は、図2で例示した第1実施形態と同様である。以下、圧電素子積層体の第2実施形態の各構成について説明する。
1.圧電素子
本実施形態における圧電素子は、基板および上記基板上の複数の圧電体を有する部材である。上記基板の、上記第2領域の内周側に相当する位置には、隔壁を有する。
(1)隔壁
隔壁は、上記圧電素子の基板の、上記プリント配線板側の面上において、上記第2領域の内周側に相当する位置に配置されている。上記隔壁の材料、隔壁の断面形状、下底の幅、高さ等は、上述の第1実施形態における隔壁と同様とすることができる。
隔壁30は、図14(a)、(b)で示すように、圧電素子1の基板11において、第2領域Bの内周側に相当する位置に配置される。また、上記圧電素子の上記プリント配線板側の面上には、上記隔壁および上記隔壁の上記第2領域の外周側に配置された絶縁層を有し、上記隔壁および上記絶縁層の間に凹形状の領域を有していてもよい。その理由および絶縁層の詳細については、上述の第1実施形態における、プリント配線板上における絶縁層と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
(2)圧電素子
圧電素子の構造については、上述の第1実施形態における圧電素子と同様であるため、ここでの説明は省略する。
2.プリント配線板
本実施形態おけるプリント配線板は、隔壁を有さないこと以外は、上述の第1実施形態におけるプリント配線板と同様であるため、ここでの説明は省略する。
3.接着層、電気接続部材および任意の部材
本実施形態における接着層、電気接続部材および任意の部材については、上述の第1実施形態で詳細に説明したため、ここでの説明は省略する。
C.第3実施形態
本態様の圧電素子積層体の第3実施形態(以下、この項において本実施形態とする場合がある。)は、上記第2領域の内周側に相当する位置の、プリント配線板および圧電素子の上記基板の両方に隔壁を有する。
本実施形態においては、上記プリント配線板の上記圧電素子側の面上の、上記第2領域の内周側に相当する位置に、上記第1の隔壁が配置されている。また、上記圧電素子の基板の、上記プリント配線板側の面上において、上記第2領域の内周側に相当する位置に、上記第2の隔壁が配置されている。
本実施形態においては、プリント配線板に配置される隔壁である第1の隔壁と、圧電素子の上記基板に配置される隔壁である第2の隔壁とが、平面視上重なっていてもよい。この場合、第1の隔壁と第2の隔壁とは、一体であってもよく別体であってもよい。また、第1の隔壁と第2の隔壁とが別体である場合、第1の隔壁と第2の隔壁とは、平面視上完全に重なっていてもよく、一部が重なっていてもよい。
第1の隔壁と第2の隔壁とが一体であるとは、単一の隔壁の一方の端部がプリント配線板と接し、他方の端部が圧電素子の上記基板と接していることをいう。このときの隔壁の高さは、プリント配線板および圧電素子間の間隔と同様とすることができる。一方、第1の隔壁と第2の隔壁とが別体であるとき、第1の隔壁の高さと第2の隔壁の高さは、その和は、「A.第1実施形態」の項で説明した隔壁の高さの範囲内となるようにそれぞれ設定することができる。
また、本実施形態においては、プリント配線板に配置される隔壁である第1の隔壁と、圧電素子の上記基板に配置される隔壁である第2の隔壁とが、平面視上重なっていなくてもよい。この場合、第1の隔壁と第2の隔壁とは、通常、別体であり、第1の隔壁の高さおよび第2の隔壁の高さは、それぞれ「A.第1実施形態」の項で説明した隔壁の高さの範囲内とすることができる。
上述した隔壁の配置態様の他、この項において説明しない本実施形態の詳細については、上記「A.第1実施形態」及び「B.第2実施形態」の各項で説明した圧電素子積層体の詳細と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
D.用途
本態様の圧電素子積層体は、例えば振動発電デバイス、圧電式加速度センサ、圧電式角速度センサ、超音波トランスデューサに好適に用いることができる。
[I−B:第2態様]
本開示の圧電素子積層体の第2態様(以下、この項において本態様の圧電素子積層体とする場合がある。)は、基板および上記基板上の複数の圧電体を有する圧電素子と、上記圧電素子の一方の面上に配置され、開口部を有するプリント配線板と、上記圧電素子および上記プリント配線板間に配置された接着層と、を有する圧電素子積層体であって、上記圧電素子は、上記基板と上記開口部とが平面視上重なる領域である第1領域に上記圧電体を有し、上記第1領域では、上記基板の平面視形状が、4つの梁部を有する十字形状であり、上記接着層は、上記開口部の外周の外側に相当する位置で、且つ上記基板および上記プリント配線板が積層されている領域である第2領域に配置されている。
本態様の圧電素子積層体は、例えば、図1、2に例示する圧電素子積層体において、隔壁30を有さないものとすることができる。
振動発電デバイスは、高い発電能力が要求される。このような要求を満たすためには、圧電素子の振動による振動エネルギーの発生量を大きくし、電気エネルギーへの変換効率を向上させる必要がある。また、振動による圧電素子の耐久性も要求される。
このような課題に対し、本態様の圧電素子積層体によれば、第1領域において圧電素子の基板の平面視形状が、4つの梁部を有する十字形状を有することにより、基板が外力の作用により屈曲振動が生じやすく、より大きな振動エネルギーを得ることができ、高い出力および高い衝撃信頼性を有することができる。
中でも、上記開口部の平面視形状が、四隅が面取りされた面取り部を有する正方形であり、上記面取り部は、上記梁部の幅以上の面取り幅を有し、上記4つ梁部がそれぞれ上記面取り部と直交することが好ましい。基板が、衝撃の方向に対して梁部を有する構造となるため、より高い出力性および高い衝撃信頼性を有することができるからである。上記4つ梁部がそれぞれ上記面取り部と直交することの定義については、上述した通りである。
本態様の圧電素子積層体における、圧電素子、プリント配線板、接着層については、第1態様の圧電素子積層体と同様とすることができる。また、第2態様の圧電素子積層体は、第1態様の圧電素子積層体と同様に隔壁部を有していてもよく、有さなくてもよい。
本態様の圧電素子積層体は、例えば振動発電デバイス、圧電式加速度センサ、圧電式角速度センサ、超音波トランスデューサに好適に用いることができる。
II.振動発電デバイス
次に、本開示の振動発電デバイスについて説明する。本開示の振動発電デバイスは、一対の圧電素子積層体と、上記一対の圧電素子積層体間にあり、それぞれの上記圧電素子積層体が有する圧電素子に固定された重錘体と、を有し、上記圧電素子積層体が、上述の「I.圧電素子積層体」の項で説明した第1態様または第2態様のいずれかである。
本開示の振動発電デバイスについて、図面を参照しながら説明する。図15は、本開示の振動発電デバイスの一例を示す概略斜視図であり、図16は図15の概略平面図、図17は図15のX−X線断面図である。なお、説明のため、図16ではプリント配線板2の図示を一部省略している。図15〜17に示す本開示の振動発電デバイス10は、一対の圧電素子積層体10A、10Bと、一対の圧電素子積層体10A、10B間にあり、それぞれの圧電素子積層体10A、10Bが有する圧電素子1に固定された重錘体51と、を有する。図15〜17における圧電素子積層体10A、10Bは、上述の「I.圧電素子積層体」の項で説明した第1態様である。
本開示の振動発電デバイスは、上述の「I.圧電素子積層体」の項で説明した第1態様の圧電素子積層体を用いることで、プリント配線板の開口部と圧電素子の基板とが平面視上重なる領域である第1領域内への接着層のはみ出しによる、発電能力の低下を抑制することができるという効果を奏する。
また、本開示の振動発電デバイスは、上述の「I.圧電素子積層体」の項で説明した第2態様の圧電素子積層体を用いることで、基板が外力の作用により屈曲振動が生じやすく、より大きな振動エネルギーを得ることができ、高い出力および高い衝撃信頼性を有することができるという効果を奏する。
以下、本開示の振動発電デバイスの各構成について説明する。
1.圧電素子積層体
本開示の振動発電デバイスにおける圧電素子積層体は、上述の「I.圧電素子積層体」の項で説明した第1態様または第2態様のいずれかである。
圧電素子積層体の各態様については、上述の「I.圧電素子積層体」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
一対の圧電素子積層体は、後述する重錘体の軸方向に上記重錘体を介して対向して配置される。一対の圧電素子積層体の配置態様としては、それぞれの圧電素子積層体の圧電素子側の面が重錘体側を向くように配置されていてもよく、それぞれの圧電素子積層体のプリント配線板側の面が重錘体側を向くように配置されていてもよい。また、一方の圧電素子積層体の圧電素子側の面と、他方の圧電素子積層体のプリント配線板側の面とが、重錘体側を向くように配置されていてもよい。中でも、一対の圧電素子積層体はそれぞれ、圧電素子側の面が重錘体側を向くように配置されていることが好ましい。圧電素子の初期撓みを小さくし、初期撓みによる曲げ剛性の上昇を抑制することができるため、発電能力の低下を抑制することができるからである。
2.重錘体
本開示の振動発電デバイスにおける重錘体は、上記一対の圧電素子積層体間にあり、圧電素子に固定される部材である。上記重錘体は、それぞれの上記圧電素子積層体が有する圧電素子の、基板の第1領域で固定され、一対の圧電素子積層体の圧電素子間を連結する。上記重錘体は、その質量によって外力を複数の圧電素子へ伝達される力に変換する機能を有する。
重錘体の材料は、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼(例えばSUS303、SUS304)、快削真鍮(C3604)、銅、タングステン、タンタル等を用いることができる。
また、重錘体の材料は、圧電素子の基板の材料と同一であってもよく、異なってもよいが、中でも上記重錘体と上記圧電素子の上記基板とが、同じ金属で形成されていることが好ましい。重錘体と圧電素子積層体とが接合しやすく、また、熱膨張係数差がほとんどないため、温度によるひずみが発生しにくいからである。このとき、上記金属は、ステンレス鋼であることが好ましく、SUS304であることがより好ましい。SUS304は、強度が高く、重錘体および圧電素子積層体間を強固に接合すること可能となるからである。また、重錘体と圧電素子積層体とを、例えばスポット溶接により接合する場合、SUS304はレーザーの吸収率が高く、レーザースポットにより小径での溶接が可能となるからである。
重錘体は、一対の圧電素子積層体の圧電素子間を連結可能とする形状であればよく、例えば、円柱形状、角柱形状等とすることができる。また、上記重錘体は、胴体部および上記胴体部の軸方向上下に配置される一対の固定部を有する多段形状であってもよい。図18(a)で示す重錘体は、円柱形の胴体部51aおよび一対の円柱形固定部51bを有する多段円注形状、図18(b)で示す重錘体は、角柱形の胴体部51aおよび一対の角柱形固定部51bを有する多段角柱形状である。なお、図18(a)、(b)中の符号Qは胴体部の軸を示し、胴体部の軸方向とは、圧電素子へ外力を作用させる方向であり、一対の圧電素子積層体の圧電素子間を連結する方向である。
重錘体の形状およびサイズは、安定して外力を圧電素子へ伝える力に変換可能な形状およびサイズであれば特に限定されない。また、重錘体が胴体部および固定部を有する構造である場合、上記重錘体の位置および固定部の位置は、重錘体の軸延長線上であり、安定して外力を圧電素子へ伝える力に変換可能な位置に設計することができ、その位置は特に限定されない。
重錘体と圧電素子積層体との接合方法は、特に限定されず、例えば、溶接により接合することができる。中でも上記圧電素子積層体の上記基板と上記重錘体とが、スポット溶接により接合されていることが好ましい。安価でかつ高強度な接合が可能となるからである。
3.固定部材
本開示の振動発電デバイスは、上記一対の圧電素子積層体間を固定する固定部材を有することができる。
固定部材の材料は、寸法公差が小さく耐久性を備えた固定部材とすることが可能であれば特に限定されない。このような材料としては、例えば金属、樹脂等が挙げられる。金属としては、例えばアルミニウム(A5052)、ステンレス(SUS)等が挙げられる。樹脂としては、例えばポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ナイロン(Ny)、そしてそれら同士、あるいはポリプロピレン(PP)やエラストマーなどとのアロイ、アラミド繊維複合樹脂等が挙げられる。
固定部材の形状や寸法等は、本開示の1実施態様の振動発電デバイスの形状や寸法等に応じて適宜設定することができる。上記固定部材の形状としては、例えば、柱状、板状等が挙げられる。
固定部材は、一対の圧電素子積層体間であって、圧電素子の振動を阻害しない位置に配置される。上記固定部材は、圧電素子積層体の第2領域より外側で、プリント配線板の重錘体側の面と接して固定されていることが好ましい。また、上記固定部材は、プリント配線板の外周に沿って間隔を空けて柱状に配置されてもよく、間隔を空けず板状(壁状)に配置されてもよいが、中でも板状(壁状)に配置されることが好ましい。プリント配線板と固定部材との接触面積を確保することができ、2つの圧電素子積層体間が十分に固定されることで、圧電素子の無駄な振動を制御することができるからである。
本開示の振動発電デバイスは、固定部材として少なくとも重錘体の軸方向に沿って一対の圧電素子積層体間の、各圧電素子積層体の第2領域より外側に配置される側面固定部材(図19中の符号52Aで示す部材)を有することが好ましい。また、固定部材として、側面固定部材の他に、一対の圧電素子積層体を重錘体の軸方向上下から挟持する上面固定部材および下面固定部材(図19中の符号52Bおよび符号52Cで示す部材)を有していてもよい。上面固定部材および下面固定部材は、外部から大きな衝撃が加わった際に、圧電素子の基板の梁部の破壊を防ぐために、錘(もしくは圧電素子)と上面固定部材または下面固定部材とをぶつけることで上記梁部の変位を抑制するストッパーとして機能することができる。また、上面固定部材および下面固定部材は、圧電素子へのゴミの付着等を防ぐ封止(パッケージング)として機能することができる。
上面固定部材および下面固定部材の重錘体側の面には、図19で示すようにストッパー53を有していてもよい。発電に寄与する振動方向であっても、材料の弾性限界を超えた変位が生じないようにすることができるからである。
上記固定部材と他の部材との固定方法や上記固定部材同士の固定方法は、特に限定されず、例えば、ねじ止め等の締付手段を用いた固定方法、接着剤や粘着剤等による接合手段を用いた固定方法等が挙げられる。
4.その他
本開示の振動発電デバイスは、上述した部材の他に、一対の圧電素子積層体間を固定する側面固定部材の重錘体側の面に固定潤滑層(図19中の符号54で示す部材)を有していてもよい。圧電素子の振動方向を重錘体の軸方向に制限することができるからである。固定潤滑層は、耐摩擦性や耐摩耗性を有することが好ましい。固定潤滑層の材質としては、例えばテフロン(登録商標)に代表されるフッ素樹脂、テフロン含有ニッケルめっき(Ni−PTFE)等が挙げられる。
本開示の振動発電デバイスは、一対の圧電素子積層体を複数有していてもよい。このとき、重錘体は圧電素子積層体の対ごとに配置され、一対の圧電素子積層体ごとに側面固定部材で固定される。また、単一の上面固定部材および下面固定部材により、複数の一対の圧電素子積層体を固定することで、1つの振動発電デバイスとすることができる。
5.用途
本開示の振動発電デバイスは、例えば、配線給電や電池駆動が難しい車載応用システムやインフラ健全性診断システムといったIoT(Internet of Things)向けセンサネットワークモジュール等への電力供給源として用いることができる。
以下に実施例および比較例を示し、本開示を更に詳細に説明する。
[実施例]
1.圧電素子の形成
化学的機械研磨により、算術平均粗さRaで示される表面粗さで0.001μm以下に平滑化した直径100mm、厚み50μmのステンレス基板の両面に対し、アルゴンと窒素の混合ガスによるRFマグネトロンスパッタ法を用いた反応性スパッタ成膜にて厚み10μmの窒化アルミニウム膜を形成した。その後、フォトリソグラフィにより形成したポジレジストをマスクに、窒化アルミニウム膜を水酸化テトラメチルアンモニウム溶液によりウェットパタニングした。次に、電極・配線層となる金属をスパッタ成膜し、フォトリソグラフィによりパタニングした。最後に、ポジレジストをマスクにステンレス基板を塩化第二鉄溶液にエッチングして、十字形状を形成したのち、ダイシングにより圧電素子毎に個片化した。
2.半田バンプの形成
次に、圧電素子の電気接続部(配線引き出し部位)上に、メタルマスクを用いたスクリーン印刷により有鉛半田(千住金属工業株式会社、スパークルペーストOZ Sn63%)をパタニングし、窒素雰囲気で温度220℃〜250℃のリフロー炉にて70秒熱処理し、半田バンプを形成した。
同様の工程にて、プリント配線板上にも半田バンプを形成した。プリント配線板は、図7(a)で例示したように、上記開口部の平面視形状が、四隅が面取りされた面取り部を有する正方形であり、上記面取り部が、上記梁部の幅以上の面取り幅を有するものを用いた。実施例では、図7(a)で例示するように、プリント配線板において、上記開口部を囲むように、高さ45μm、幅130μmのソルダーレジストによる隔壁(図7(a)の符号30)を設けた。
3.フリップ実装
フリップチップ実装装置を用いて、半田バンプが形成された圧電素子を、素子を吸着するための金属製の冶具であるコレットで持ち上げ、顕微鏡にてプリント配線板の半田バンプパタンに対し位置合わせを行い、窒素雰囲気で265℃に加熱しながら、半田バンプ同士を押し付け、徐冷し実装した。その後、接着剤注入用のニードルを用いてアンダーフィル材(パナソニック、CV5350AS)を圧電素子とプリント配線板の間に充填し、オーブンにて150℃で2時間加熱し硬化させた。これにより圧電素子積層体を得た。実施例の圧電素子積層体は、第1領域において圧電素子の上記基板が十字形状を有し、図10(b)に例示するように、第1領域において4つの梁部がそれぞれ上記開口部の各面取り部と直交する位置関係とした。
[比較例]
プリント配線板においては隔壁を設けなかったこと以外は、実施例と同様にして圧電素子積層体を得た。比較例の圧電素子積層体では、プリント配線板として、図7(a)で例示したように、開口部21の平面視形状が、四隅が面取りされた面取り部21bを有する正方形であり、面取り部21bが、梁部の幅以上の面取り幅を有するものを用いた。また、比較例の圧電素子積層体は、第1領域において圧電素子の上記基板が十字形状を有し、図10(a)に例示するように、第1領域Aにおいて4つの梁部がそれぞれ開口部21の正方形の各辺と直交する位置関係とした。
なお、比較例の圧電素子積層体は、プリント配線板全体の寸法、板裏面の仕上げ(配線のない面)等の点で、実施例の圧電素子積層体と相違したが、プリント配線板を構成する材料は実施例と同種であるので、後述する評価において、隔壁の有無による圧電素子積層体における接着層の塗れ拡がりを比較することが可能である。
[評価]
実施例、比較例の圧電素子積層体について、充填されたアンダーフィル材の圧電素子の梁部側へのはみ出し量を比較した。測定は、実施例、比較例の圧電素子積層体について、充填されたアンダーフィル材の圧電素子の梁部側へのはみ出し量を、光学顕微鏡による圧電素子積層体のプリント配線板の裏面(プリント配線板の、圧電素子側とは反対側の面)からの観察画像を用いて測定した(図20〜図22)。図20で示すように、プリント配線板2の裏面において、開口部21の外周21aおよびその延長線21a’からアンダーフィル材のはみ出し部Gの先端へ鉛直線を引き、その長さLをはみ出し量と定義した。実施例の圧電素子積層体について、プリント配線板の裏面からの観察画像を図21(a)、(b)に示す。同一の圧電素子積層体において、任意の2箇所で画像観察およびはみ出し量の測定を行った。図21(a)は測定点1での観察画像、図21(b)は測定点2での観察画像をそれぞれ示す。同様に、比較例の圧電素子積層体について、プリント配線板の裏面からの観察画像を図22(a)、(b)に示す。同一の圧電素子積層体において2箇所について観察および測定し、図22(a)は測定点1での観察画像、図22(b)は測定点2での観察画像をそれぞれ示す。なお、図21(b)の右下図は、はみ出し部Gの拡大図である。実施例および比較例について、測定点1および2でのアンダーフィル材のはみ出し量の測定結果を、下記表1に示す。
以上の結果から、隔壁によって、開口部側へのアンダーフィル材のはみ出しを抑制できる効果を確認できた。