JP2019108489A - 熱可塑性樹脂組成 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた引張弾性率を有する成形体が得られる熱可塑性樹脂組成物を提供すること。【解決手段】熱可塑性樹脂100質量部に対して、粉砕パルプを5質量部以上50質量部以下含有し、粉砕パルプにおけるセルロースに対するキシランの質量比(キシラン/セルロース)が0.05以上であり、粉砕パルプのセルロースI型結晶化指数が5%以上65%以下である、熱可塑性樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関する。
従来、有限な資源である石油由来のプラスチック材料が多用されていたが、近年、環境に対する負荷の少ない技術が脚光を浴びるようになり、かかる技術背景の下、天然に多量に存在するバイオマスであるセルロース繊維を用いた材料が注目されている。
特許文献1には、延性的特性が向上した新規なセルロース系プラスチック複合材料の提供を課題として、非晶化度50%以上の非晶化セルロースを含有し、非晶化セルロースと熱可塑性樹脂のマトリックスポリマーとの間にエラストマーが介在する熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
特許文献2には、寸法安定性や廃棄特性に優れ、また臭いのない熱可塑性組成物を提供することを課題として、熱可塑性樹脂と木材繊維とを混合した熱可塑性組成物において、前記木材繊維は前記熱可塑性組成物中に50重量%以上含有されていることを特徴とする熱可塑性組成物が開示されている。
特許文献3には、靱性と剛性(引張弾性率)を両立する樹脂組成物を提供することを課題として、熱可塑性樹脂に、該熱可塑性樹脂100質量部に対して、相対結晶化度が50%未満である非晶化セルロースを5質量部以上70質量部以下、及び相溶化剤を4質量部以上20質量部以下含有してなる、樹脂組成物が開示されている。
特開2015−155535号公報 特開2002−003723号公報 特開2017−137470号公報
引用文献1は、非晶質化セルロースと熱可塑性樹脂に加えて、エラストマーを用いるものである。また、引用文献2は、ヘミセルラーゼでキシランを分解している木材繊維を用いるものであり、引張弾性率の付与という点ではまだ十分とはいえない。更に、引用文献3では、相溶化剤を用いており、靱性と剛性(引張弾性率)との両立を目指しているが、相溶化剤を添加する必要があるため、簡易に弾性率を付与できる樹脂組成物が望まれている。
本発明は、優れた引張弾性率を有する成形体が得られる熱可塑性樹脂組成物を提供することに関する。
本発明者等は、セルロースに対してキシランを特定量含有し、セルロースI型結晶化指数が特定の範囲である粉砕パルプを、熱可塑性樹脂に対して特定量添加することにより、上記の課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明は以下の<1>に関する。
<1> 熱可塑性樹脂100質量部に対して、粉砕パルプを5質量部以上50質量部以下含有し、粉砕パルプにおけるセルロースに対するキシランの質量比(キシラン/セルロース)が0.05以上であり、粉砕パルプのセルロースI型結晶化指数が5%以上65%以下である、熱可塑性樹脂組成物。
本発明によれば、優れた引張弾性率を有する成形体が得られる熱可塑性樹脂組成物が提供される。
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明の熱可塑性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、粉砕パルプを5質量部以上50質量部以下含有し、粉砕パルプにおけるセルロースに対するキシランの質量比(キシラン/セルロース)が0.05以上であり、粉砕パルプのセルロースI型結晶化指数が5%以上65%以下である。
本発明者等は、特定の粉砕パルプを特定量含有する熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体は、高い引張弾性率を有することを見出した。その詳細な作用機序は不明であるが、一部は以下のように推定される。
すなわち、セルロースに対するキシランの質量比が特定量以上の範囲である粉砕パルプでは、セルロースに比べて、より疎水性の高いキシランが特定量以上共存することで、セルロース単体よりも疎水的になると考えられる。その結果、熱可塑性樹脂と粉砕パルプとの親和性が向上し、フィラーと樹脂との界面密着性が向上し、該粉砕パルプを含有する熱可塑性組成物の強度が向上すると考えられる。そのため、セルロースI型結晶化指数が比較的高い範囲の粉砕パルプを使用しても、熱可塑性樹脂中での分散性と、フィラーとしての強度とのバランスに優れ、結果として、優れた引張弾性率を有する成形体が得られる樹脂組成物が提供されたものと推定される。
<熱可塑性樹脂>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含有する。
本発明における熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではなく、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン(PB)、ポリイソプレン(PIP)等のポリオレフィン樹脂;ポリクロロプレン(PCP);ポリアクリル酸(PA)、ポリアクリル酸エステル等のポリ(メタ)アクリル系樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のポリスチレン樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;ビニルエーテル樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスルホン樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、得られる成形体の引張弾性を向上させる観点から、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリアミド樹脂から選ばれる1種又は2種以上を構成樹脂として含有するものが好ましく、ポリオレフィン樹脂及びポリアミド樹脂から選ばれる1種又は2種を構成樹脂として含有するものがより好ましく、少なくともポリオレフィン樹脂を含有するものが更に好ましく、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン樹脂のみを含有することがより更に好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン及びポリプロピレンから選ばれる1種又は両者を含有することができるが、引張弾性率を向上させる観点から、ポリプロピレンがより好ましい。
熱可塑性樹脂におけるポリオレフィン樹脂の含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上である。上限は特に限定されず、ポリオレフィン樹脂からなるもの、すなわち、100質量%であってもよい。
本発明の樹脂組成物における熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂組成物から得られる成形体の引張弾性率を向上させる観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、また、パルプを配合し、樹脂組成物から得られる成形体の引張弾性率を向上させる観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは87質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
<粉砕パルプ>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、粉砕パルプを含有する。
熱可塑性樹脂組成物における粉砕パルプの含有量は、引張弾性率が向上した成形体を得る観点から、熱可塑性樹脂100質量部に対して、5質量部以上、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15以上であり、そして、50質量部以下、好ましくは40質量部以下、更に好ましくは35質量部以下である。
−パルプ−
本発明で使用する粉砕パルプの原料であるパルプとは、木材や草などから得られる植物繊維のことで、主成分はセルロースであり、ヘミセルロース、リグニン等を含有する。ヘミセルロースには主成分としてキシランが含まれる。
パルプとしては、間伐材、剪定枝、各種木材チップ、木材から製造されるウッドパルプ、綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプ等のパルプ類が挙げられる。
植物繊維の原料としては、特に制限はなく、幹、枝、葉、茎、根、種子、果実等の植物の各部位、例えば、稲わら、トウモロコシ茎等の植物茎・葉類;籾殻、パーム殻、ココナッツ殻等の植物殻類等が使用できる。
植物の種類としては、キシランを多く含む観点から、広葉樹が好ましく、アカシア、ユーカリ等が好ましく例示される。
原料パルプの平均繊維径は、樹脂組成物から得られる成形体の引張弾性率を向上させる観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、そして、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、更に好ましくは20μm以下である。
−粉砕パルプ−
本発明では、前記パルプを粉砕した粉砕パルプを用いる。
粉砕方法としては特に限定されないが、具体的には、上述したパルプを、必要により、シュレッダー等の裁断機を利用して予め大きさを好ましくは0.1〜70mm角に整えてから、媒体式の粉砕機や押出機による処理を行ったり、乾燥処理を行ったり、あるいは、いずれの処理も行うことで、嵩密度を50〜600kg/mあるいは比表面積を0.2〜750m/kgの範囲に調整して得られた粗粉砕パルプを、衝撃式の粉砕機を用いて0.5分〜24時間撹拌することで、セルロースI型結晶化指数(以下、単に「結晶化指数」ともいう。)を所望の範囲に調整した粉砕パルプを得ることができる。
得られる粉砕パルプの結晶化指数は、ローターの周速度やサンプル供給スピード、撹拌時間等を調整することで制御することができる。なお、粉砕処理を効率よく行う観点から、パルプ原料の水分含量が1.8質量%以下であることが好ましい。なお、パルプ原料から水を除く方法としては、特に限定はなく、例えば、真空乾燥やドライエアーによる乾燥により行なうことができる。
本発明に用いる粉砕パルプは、樹脂組成物から得られる成形体の引張弾性率を向上させる観点から、粉砕パルプ中、セルロース及びキシランの合計含有量が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上である。また、低コストの観点から、好ましくは99質量%以下である。セルロース及びキシラン以外の他の成分としては、リグニン等を含有する。
リグニンを低減する方法としては、例えば、特開2008−92910号公報記載のアルカリ蒸解法や、特開2005−229821号公報記載の硫酸分解法等が挙げられる。
本発明で用いられる粉砕パルプにおいて、セルロースに対するキシランの質量比(キシラン/セルロース)は、樹脂組成物から得られる成形体の引張弾性率を向上させる観点から、0.05以上、好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.15以上であり、また、生産コスト及び入手性の観点から、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.25以下である。
なお、粉砕パルプを2種類使用した場合は、全パルプ中のキシラン/セルロースの平均質量割合として、上記の値を求める。
粉砕パルプ中のキシランの含有量及びセルロースの含有量は、実施例に記載の方法により測定される。
本発明において、粉砕パルプのセルロースI型結晶化指数は、樹脂組成物から得られる成形体の引張弾性率を向上させる観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上である。そして、樹脂組成物中での分散性の観点から、65%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下、より更に好ましくは18%以下である。
なお、本明細書において、セルロースI型結晶化指数とは、X線回折法による回折強度値からSegal法により算出したものであり、下記計算式(A)により定義される。
セルロースI型結晶化指数(%)
=[(I22.6−I18.5)/I22.6]×100 (A)
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は,アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
粉砕パルプのメジアン径は、パルプの種類や粉砕条件により異なるが、粉砕パルプを樹脂フィラーとして、樹脂組成物から得られる成形体の引張弾性率を向上させる観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上であり、そして、成形体中の粉砕パルプの分散性を向上させ、引張弾性率を向上させる観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは120μm以下である。
粉砕パルプのメジアン径は、実施例に記載の方法により測定される。
<その他の成分>
−相溶化剤−
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述の成分に加えて、更に相溶化剤を含有していてもよい。なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、特定の結晶化指数及び特定の組成を有する粉砕パルプを含有するため、相溶化剤を使用しなくても、優れた引張弾性率を有する成形体が得られる。
相溶化剤は、粉砕パルプの分散性の向上、及び粉砕パルプと熱可塑性樹脂との界面安定化を図る観点から添加される。
相溶化剤としては、以下の相溶化剤(1)〜相溶化剤(6)が例示され、より具体的には、特開2017−137470が参照される。
相溶化剤(1):エチレン/酢酸ビニル共重合体
相溶化剤(2):エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体
相溶化剤(3):酸無水物基、カルボキシ基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシ基、及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基(置換基)を有するポリオレフィン系樹脂
相溶化剤(4):酸無水物基、カルボキシ基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシ基、及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基(置換基)を有するアクリル系樹脂又はスチレン系樹脂
相溶化剤(5):ポリエステル系樹脂
相溶化剤(6):アイオノマー樹脂
相溶化剤は、使用する熱可塑性樹脂の種類に応じて、適宜選択すればよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物中の相溶化剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは3質量部以下、より好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下、より更に好ましくは実質上含有しないことが好ましく、より更に好ましくは0質量部である。
相溶化剤は、粉砕パルプと共に熱可塑性樹脂に配合してもよく、予め粉砕パルプと相溶化剤とを混合した後、熱可塑性樹脂に配合してもよく、特に限定されない。
また、パルプに相溶化剤を添加し、相溶化剤の存在下に粉砕処理した粉砕パルプを使用してもよい。
−その他の成分−
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述した以外の他の成分を含有してもよく、他の成分としては、可塑剤;充填剤(無機充填剤、有機充填剤);加水分解抑制剤;難燃剤;酸化防止剤;炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;防曇剤;光安定剤;顔料;防カビ剤;抗菌剤;発泡剤;界面活性剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン;ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;香料;流動調整剤;レべリング剤;導電剤;紫外線分散剤;消臭剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
また、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の高分子材料や他の樹脂組成物を添加することも可能である。任意の添加剤の含有割合としては、本発明の効果が損なわれない範囲で適宜含有されてもよいが、樹脂組成物中、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂に対して、特定量の粉砕パルプを含有するものであれば特に限定なく調製することができ、例えば、前記した熱可塑性樹脂及び粉砕パルプの他、更に必要により各種添加剤を含有する原料を、ヘンシェルミキサー等で撹拌、あるいは密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて溶融混練又は溶媒キャスト法により調製することができる。原料は、予めヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等を用いて均一に混合した後に、溶融混練に供してもよく、また、原料を予め別々に混合してもよい。なお、樹脂組成物を調製する際に熱可塑性樹脂の可塑性を促進させるため、超臨界ガスを存在させて溶融混合させてもよい。溶融混練後は、公知の方法に従って、溶融混練物を乾燥させてもよい。
溶融混練温度は、樹脂組成物の成形性及び劣化防止を向上する観点から、好ましくは160℃以上、より好ましくは175℃以上、更に好ましくは190℃以上であり、好ましくは300℃以下、より好ましくは275℃以下、更に好ましくは250℃以下、より更に好ましくは220℃である。溶融混練時間は、溶融混練温度、混練機の種類によって一概には決定できないが、15秒間以上900秒間以下が好ましい。
[成形体]
本発明の樹脂組成物に対して、射出成形、押出成形、熱成形等の種々の成形加工方法を用いることにより、成形体が得られる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物から成形された成形体は、引張弾性率が高く、日用雑貨品、家電部品、自動車部品等に好適に使用される。
各種物性については、以下の方法により、測定及び評価を行った。
なお、以下の実施例及び比較例において、特に断りのない限り、部及び%は質量基準である。
(1)水分量の測定
粉砕前のパルプの水分量は、赤外線水分計(株式会社島津製作所製「MOC−120H」)を用いて測定した。測定1回あたり試料5gを用い、試料を平らにならして温度120℃にて測定を行い、30秒間の質量変化率が0.05%以下となる点を測定の終点とした。測定された水分量をパルプに対する質量%に換算し、水分量とした。
(2)結晶化指数の算出
粉砕パルプのセルロースI型結晶化指数は、得られたX線回折強度から、以下の式(A)に基づいて算出した。
測定装置:株式会社リガク製の「RigakuRINT 2500VC XRAY diffractometer」
測定条件:X線源:Cu/Kα-radiation、管電圧:40kV、管電流:120mA
測定範囲:回折角2θ=5〜45°、X線のスキャンスピード:10°/minとする。
測定用サンプル:面積320mm×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製した。
セルロースI型結晶化指数(%)
=[(I22.6−I18.5)/I22.6]×100 (A)
〔式中、I22.6はX線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5はアモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
(3)体積中位粒径(メジアン径、D50)の測定
粉砕パルプの体積中位粒径(メジアン径、D50)は、レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「LS13 320」)を用い、乾式法(トルネード方式)にて測定した。具体的には粉砕パルプ20mLをセルに仕込み、吸引して測定を行った。
(4)平均繊維径の測定
原料パルプの繊維径観察にSEM(KEYENCE製、VE−9800)を使用した。1サンプルあたり3箇所の撮影を行った。観察倍率は200倍とした。SEM像より繊維5本の繊維径を測定し、数平均(3×5)の繊維径を求め、平均繊維径とした。
(5)原料パルプ中のキシラン量分析
パルプ固形分中のキシランの割合をNational Renewable Energy Laboratory(NREL)手法2に則り測定した。詳細には、乾燥したパルプチップ約0.1gを72%硫酸3mLと共に、30℃1時間混合した。水84gで試験管内を共洗いし、規格瓶に導入後、オートクレーブにより120℃で1時間加温した。その後、ガラスフィルター(Fine3G4)に、取り出した溶液を流し込み濾過した。ろ液を炭酸カルシウムで希釈しpHを5〜5.5に調整した。ろ液をHPLC(Elite LaChrom、日立ハイテクフィールディング製)で分析しキシロースの含有量を測定した。
(6)原料パルプ中のセルロース量分析
パルプ固形分中のセルロースの割合をNational Renewable Energy Laboratory(NREL)手法2に則り測定した。詳細には、乾燥したパルプチップ約0.1gを72%硫酸3mLと共に、30℃1時間混合した。水84gで試験管内を共洗いし、規格瓶に導入後、オートクレーブにより120℃で1時間加温した。その後、ガラスフィルター(Fine3G4)に、取り出した溶液を流し込み濾過した。ろ液を炭酸カルシウムで希釈しpHを5〜5.5に調整した。ろ液をHPLC(Elite LaChrom、株式会社日立ハイテクフィールディング製)で分析しセルロースの含有量を測定した。
(7)引張弾性率の測定
25℃の恒温室において、後述の方法で得られたシートをJIS K7127に基づき2号試験片を5個作製して、引っ張り試験を行い、引張弾性率を求めた。
引張試験には、株式会社島津製作所製 オートグラフ精密万能試験機(AGS−10kNX)を用い、JIS K7127に従って、1サンプルにつき5点試験を行い、数平均値を求めた。引張弾性率は数値が大きいほど引張弾性率に優れていることを示す。
使用した材料は、以下の通りである。
[原料パルプ]
<針葉樹由来パルプ>
・Tembec社製BioflocHV+〔結晶化指数:82%〕
・ウェストフレザー社製、ヒントン〔結晶化指数:70%〕
<広葉樹由来パルプ>
・PT.RAPP社製、Riau ACACIA〔結晶化指数:80%〕
・PT.TEL社製、ユーカリ〔結晶化指数:80%〕
[熱可塑性樹脂]
・日本ポリプロ株式会社製、ポリプロピレン、商品名:ノバテックPP、型番:BC03B(射出成形グレード)
製造例
〔裁断処理〕
セルロース含有原料であるシート状木材パルプを、スリッターカッターであるシートペレタイザ(株式会社ホーライ製、「SG(E)−220」)にかけ、約3mm×1.5mm×1.0mmの大きさの直方体に裁断した。
〔乾燥処理〕
裁断処理により得られたチップ状のセルロース含有原料を、真空乾燥器(ADP300、ヤマト科学株式会社製)で105℃、3時間乾燥した。乾燥後のパルプの水分は1%以下であった。
〔粉砕処理〕
バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製「MB−1」、容器内径142mm、容器内部の円柱形の空間の軸方向長さ220mm、容器容量3.6L)の容器内部に、直径30mm、長さ211mmのステンレス製の円柱状媒体を13本配置し粉砕を行った。
乾燥処理により得られたチップ状のセルロース含有原料を100g添加し、所望の結晶化指数に応じて5〜30分間程度粉砕した。振動ミルは振幅8mm、振動数20Hzの条件で運転し、粉砕パルプを得た。
実施例1〜7、及び比較例1〜5
[熱可塑性樹脂組成物の調製]
得られた粉砕パルプ5〜30質量部と熱可塑性樹脂100質量部とを混練機(株式会社東洋精機製作所製、ラボプラストミル)を用いて、回転数90rpm、200℃で8分間溶融混練して、熱可塑性樹脂組成物を得た。
[成形体:シートの作製]
オートプレス(P2−30T、株式会社東洋精機製作所製)を使用してシート化した。ポリイミドフィルム(ユーピレックス、宇部興産株式会社製)で被覆した金属板(400×400mm)の中央に混練後の樹脂約19.0gを設置し、厚み4mm、250×250mmの金属フレームで囲んだ。その後、上部より同様の金属板で挟み込み、自動制御にてプレス条件を3段階に変更し(200℃、0.48MPa、2分;200℃、20MPa、2分;15℃、0.48MPa、1分)、プレスした。
得られた成形体について、引張弾性率を測定した。結果を以下の表1に示す。
表1から明らかなように、本発明の熱可塑性樹脂組成物から得られた成形体は、粉砕パルプを含有しない比較例1の熱可塑性樹脂から得られた成形体に比べて、高い引張弾性率を有する。また、添加した粉砕パルプ量が等量である実施例1〜3、6、7と、比較例2とを対比すると、特定のキシラン/セルロース含有量を有し、かつ、セルロースI型結晶化指数が特定の範囲である粉砕パルプを使用することにより、実施例では、より引張弾性率に優れた成形体がえられた。
同様の傾向は、実施例4と比較例3との対比、及び実施例5と比較例4との対比でも認められた。
本発明の樹脂組成物に対して、射出成形、押出成形、熱成形等の種々の成形加工方法を用いることにより、成形体が得られる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物から成形された成形体は、引張弾性率が高く、日用雑貨品、家電部品、自動車部品等に好適に使用される。

Claims (6)

  1. 熱可塑性樹脂100質量部に対して、粉砕パルプを5質量部以上50質量部以下含有し、
    粉砕パルプにおけるセルロースに対するキシランの質量比(キシラン/セルロース)が0.05以上であり、
    粉砕パルプのセルロースI型結晶化指数が5%以上65%以下である、
    熱可塑性樹脂組成物。
  2. 粉砕パルプのメジアン径が、20〜200μmである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 粉砕パルプが、広葉樹由来である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 熱可塑性樹脂が、オレフィン樹脂である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 粉砕パルプ中、キシランとセルロースとの合計含有量が、80質量%以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体。
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