以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本実施形態に係るタイヤ構成部材の製造装置10である。
製造装置10は、リボンゴム供給部12と、成形ドラム14、形状センサ16、及び制御装置20を備え、いわゆるリボン巻き工法によって成形ドラム14上にタイヤ構成部材50を製造する。なお、本実施形態では、タイヤ構成部材50として空気入りタイヤのトレッド部に設けられ接地面を構成するトレッドゴムを成形する場合について説明するが、サイドウォールゴム等、トレッドゴム以外のタイヤ構成部材の製造にも本発明を適用することができる。
タイヤ構成部材50は、図3に示すように、第1内側層52A及び第2内側層52Bからなる内側層52と、内側層52の外側に積層された第1外側層54A及び第2外側層54からなる外側層54とを備える。
リボンゴム供給部12は、リボンゴム40を所定の断面形状に押出可能な押出機を備え、押出機からリボンゴムを押し出し成形しながら成形ドラムに供給する。リボンゴム40の断面形状は、特に限定されず、例えば、台形状、三日月形状、三角形状など、扁平な断面形状を有する種々の形状を採用することかできる。またリボンゴム40の寸法は、特に限定されず、例えば、幅が15〜40mmで、厚み(最大厚み部での厚み)が0.5〜3.0mmでもよい。
成形ドラム14は、回転軸を中心とした回転と、軸方向(回転軸に平行な方向)への移動とが可能に構成されている。なお、成形ドラム14とリボンゴム供給部12とが軸方向において相対的に移動可能であれば、成形ドラム14の代わりにリボンゴム供給部12を移動可能に構成してもよい。
形状センサ16は、成形ドラム14上に形成したタイヤ構成部材50の外形状、つまり、タイヤ構成部材の幅、断面積、及び幅方向における厚み分布を、成形ドラム14上において非接触状態で測定するセンサである。なお、タイヤ構成部材50の幅及び幅方向とは、成形ドラム14の軸方向に一致する方向であって、他の部材とともにタイヤを構成したときにタイヤ幅方向に相当する方向である。
形状センサ16としては、タイヤ構成部材50を成形ドラム14上において非接触状態で測定するセンサであり、例えば、成形ドラム14上に形成したタイヤ構成部材50にレーザー光を照射して反射面までの距離を測定するレーザー変位センサを用いることができる。なお、タイヤ構成部材50の幅、断面積、及び幅方向における厚み分布は、タイヤ構成部材50の周方向に所定間隔をあけて複数箇所において測定し、各測定点での測定結果の合計値あるいは平均値をタイヤ構成部材の測定値とすることができる。
制御装置20は、演算処理部21、メモリ34、及びディスプレイ35を備えたコンピューターや制御マイコン装置によって構成され、リボンゴム供給部12、成形ドラム14、及び形状センサ16に接続されている。制御装置20は、リボンゴム供給部12及び成形ドラム14の動作を制御することで、成形ドラム14を回転させながらリボンゴム供給部12から成形ドラム14に未加硫の帯状のリボンゴム40を供給して、リボンゴム40を成形ドラム14上に巻き付けてタイヤ構成部材50を成形する。
また、演算処理部21は、設定入力部22、条件設定部24、駆動制御部26、データ取得部28、判定部30、及び修正部32を備える。
設定入力部22は、リボンゴム供給部12から成形ドラム14へ供給するリボンゴム40の断面形状、タイヤ構成部材50の断面の目標形状、リボンゴム40の巻始め位置及び巻き終わり位置、成形ドラム14の移動パターン等、後述する巻き付け回数Rと送りピッチPの算出に用いられる各種パラメータが入力される。入力された各種パラメータは一旦メモリ34に格納される。
条件設定部24は、設定入力部22で入力された各種パラメータに基づいて、成形ドラム14にリボンゴム40を巻き付ける巻き付け回数Rと、成形ドラムの1回転毎にリボンゴム40を成形ドラム14の軸方向へ移動させる移動距離(送りピッチ)Pとを算出し、算出した巻き付け回数R及び送りピッチPをテスト条件とする。つまり、巻き付け回数RがN回(N:整数、図3ではN=41)の場合、リボンゴム40の巻き回し開始端から360度ずつ巻き回す周回毎(n=1,2,・・・N−1)に、リボンゴム40の軸方向への移動量であるn巻目の送りピッチPn (n=1,2,・・・N−1)が設定されている。なお、送りピッチPは、リボンゴム40の幅よりも小さく設定され、幅方向に隣接するリボンゴム40の間で少なくとも一部が重なり合うように巻き付けられている。
条件設定部24で得た巻き付け回数R及び各周回毎の送りピッチPは、リボンゴム40の巻始め位置及び巻き終わり位置や成形ドラム14の移動パターンとともに、駆動制御部26へ入力される。また、条件設定部24で得た巻き付け回数R及び各周回毎の送りピッチPは、メモリ34に格納される。
駆動制御部26は、条件設定部24や修正部32から入力されたデータに基づいてリボンゴム供給部12及び成形ドラム14の動作を制御して成形ドラム14上にタイヤ構成部材50のテストサンプルを作製する。
図3に例示する場合、成形ドラム14の幅方向中央部に位置する巻始め端40Aからタイヤ幅方向一方側W1に向かって8周目までリボンゴム40を巻き付けて第1内側層52Aを形成し、当該一方側の端部E1で折り返して9周目からリボンゴム40をタイヤ幅方向他方側W2に向かってタイヤ幅方向中央部(21周目)まで巻き付けて第1外側層54Aを形成し、そのままタイヤ幅方向他方側W2に向かって28周目までリボンゴム40巻き付けて第2内側層52Bを形成し、当該他方側の端部E2で折り返して29周目からリボンゴム40をタイヤ幅方向一方側W1に向かってタイヤ幅方向中央部(41周目)まで巻き付けて第2外側層54Bを形成する。つまり、図3の場合、1〜8周目までのリボンゴム40によって第1内側層52Aを形成し、9〜21周目までのリボンゴム40によって第1外側層54Aを形成し、22〜28周目までのリボンゴム40によって第2内側層52Bを形成し、29〜41周目までのリボンゴム40によって第2外側層54Bを形成する。
データ取得部28は、形状センサ16から変位信号(センサから反射面までの距離を表す信号)を受け、成形ドラム14上に形成されたテストサンプルの形状に関するデータ、具体的には、テストサンプルの幅、断面積、及び幅方向における厚み分布(輪郭形状)に関するデータを取得する。取得したデータは一旦メモリ34に格納される。
判定部30は、メモリ34に格納されたテストサンプルの幅、断面積、及び幅方向における厚み分布に関するデータを読み込み、テスト条件で作製したテストサンプルが目標形状になっているか否か、例えば、テスト条件で作製したテストサンプルと目標形状との間で幅、断面積、及び幅方向における厚み分布を比較し、これらのズレ量が所定範囲内であるか否かを判定する。
判定部30は、テストサンプルが目標形状になっていれば、その旨を修正部32に入力する。一方、テスト条件で作製したテストサンプルが目標形状になっていない場合、判定部30は、テストサンプルの幅、断面積、及び幅方向における厚み分布の各評価項目のうち、目標形状とのズレ量が所定範囲から外れている評価項目を修正部32に入力する。
修正部32は、判定部30からの入力に基づいて次に作製するタイヤ構成部材50の成形条件を決定し、これを駆動制御部26へ入力する。次に作製するタイヤ構成部材50の成形条件の決定方法は、後述する。
次に、図2を参照して本実施形態の処理の流れについて説明する。
まず、リボンゴム供給部12から成形ドラム14へ供給するリボンゴム40の断面形状、タイヤ構成部材50の断面の目標形状等の巻き付け回数Rと送りピッチPの算出に用いられる各種パラメータが、設定入力部22において入力される(ステップS10)
次いで、設定入力部22に入力された各種パラメータに基づいて、条件設定部24が、目標形状に応じた巻き付け回数Rと送りピッチPを算出し、テスト条件を取得する(ステップS11)。
次いで、駆動制御部26が、条件設定部24が算出したテスト条件に基づいてリボンゴム供給部12及び成形ドラム14の動作を制御して成形ドラム14上にタイヤ構成部材50のテストサンプルを作製する(ステップS12)。
次いで、形状センサ16が成形ドラム14上に作製したタイヤ構成部材50のテストサンプルの幅、断面積、及び幅方向における厚み分布を測定し、その測定結果をデータ取得部28が取得する(ステップS13)。
次いで、判定部30は、テスト条件で作製したテストサンプルと目標形状との間で幅、断面積、及び幅方向における厚み分布を比較し、これらのズレ量が所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS14〜S16)。
具体的には、テストサンプルと目標形状との間で幅のズレ量が所定範囲を越える場合(ステップS14のNo)、修正部32は、最も内側に配置される層、つまり、内側層52を形成するリボンゴム40の巻き付け回数(図3の場合、1〜8周目及び22〜28周目の合計15回)R及び送りピッチP(図3の場合、P1〜P7及びP21〜P27)の少なくとも一方を調整して修正条件を決定する(ステップS17)。この場合の修正条件の決定方法としては、例えば、テストサンプルの幅が目標形状の幅より短い場合は、不足する長さ(幅)を内側層52を構成するリボンゴム40の巻き数で按分した距離だけ内側層52を構成する全てのリボンゴム40の送りピッチPを長くしたり、あるいは、巻き付け回数Rを増やして不足する長さを補う。また、テストサンプルの幅が目標形状の幅より長い場合は、超過する長さ(幅)を内側層52を構成する全てのリボンゴム40の巻き数で按分した距離だけ内側層52を構成する全てのリボンゴム40の送りピッチPを短くしたり、あるいは、巻き付け回数Rを減らして超過する長さを短縮する。
テストサンプルと目標形状との間で幅のズレ量が所定範囲内にあるが、断面積のズレ量が所定範囲を超える場合(ステップS15のNo)、修正部32は、最も外側に配置される層、つまり、外側層54の巻き付け回数(図3の場合、9〜21周目及び29〜41周目の合計26回)Rを調整して修正条件を決定する(ステップS18)。この場合の修正条件の決定方法としては、テストサンプルの断面積の測定値とテストサンプルを作製した時の巻き付け回数Rからリボンゴム40の断面積を算出し、算出した断面積に基づいて不足あるは超過する面積に相当する回数だけ巻き付け回数Rを調整する。
また、テストサンプルと目標形状との間で幅及び断面積のズレ量が所定範囲内にあるが、幅方向における厚み分布が所定範囲を超える場合(ステップS16のNo)、修正部32は、最も外側に配置される層、つまり、外側層54の送りピッチP(図3の場合、P8〜P20及びP28〜P40)を調整して修正条件を決定する(ステップS19)。この場合の修正条件の決定方法としては、厚みが不足する位置にあるリボンゴム40の送りピッチPを小さくし、厚みが超過する位置にあるリボンゴム40の送りピッチPを大きくする。送りピッチPの変化量は、テストサンプルと目標形状との厚みの偏差に応じて変化させることができる。
そして、ステップS17〜S19において修正部32が修正条件を決定すると、再びステップS12に戻り、駆動制御部26が、修正部32が算出した修正条件に基づいてリボンゴム供給部12及び成形ドラム14の動作を制御して成形ドラム14上にタイヤ構成部材50の第2テストサンプルを作製する。
以後、テストサンプルと目標形状との間で幅、断面積、及び幅方向における厚み分布の全ての評価項目のズレ量が所定範囲内になるまで、テストサンプルの作製(ステップS12)、測定(ステップS13)、評価(ステップS14〜S16)及び修正条件の決定(S17〜S19)を繰り返す。そして、全ての評価項目のズレ量が所定範囲内であれば(ステップS16のYes)、作製したテストサンプルが目標形状になっているとして、修正部32は、初期条件あるいは修正条件を修正することなく成形条件に設定し、この条件でタイヤ構成部材50を製造する。
本実施形態によれば、熟練した作業者による技能や経験を要することなく、リボンゴムを成形ドラムの軸方向に移動させながら成形ドラムの外周面に巻き付けてタイヤ構成部材50を得ることができる。
また、本実施形態では、成形ドラム14上に形成したタイヤ構成部材50のテストサンプルの幅、断面積、及び幅方向における厚み分布を非接触状態で測定するため、測定中にテストサンプルが変形することがなく正確な測定が可能となる。
上記の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
例えば、本実施形態では、成形ドラム14の外周面にリボンゴム40を直接巻き付けてタイヤ構成部材50のテストサンプルを作製する場合について説明するが、例えば、成形ドラム14の外周面に既に設けられた別のタイヤ構成部材の上にタイヤ構成部材50のテストサンプルを設けてもよい。その場合、タイヤ構成部材50のテストサンプルの作製前に成形ドラム14の外周面の形状を測定しておき、テストサンプルの作製後の測定結果と作製前の測定結果との差分を、テストサンプルの測定値としてもよい。
また、本実施形態では、設定入力部22で入力された各種パラメータに基づいて、条件設定部24が算出した巻き付け回数R及び送りピッチPをテスト条件に設定したが、使用者が直接入力した条件をテスト条件としたり、あるいは、以前使用した条件をテスト条件としてもよい。