まず、本発明の第1軸封装置について図1〜図3を参照して具体的に説明する。図1は第1軸封装置の一例を示す断面図であり、図2は図1の要部を拡大して示す断面図であり、図3は図2と異なる図1の要部を拡大して示す断面図である。
第1軸封装置M1は、図1に示す如く、低沸点液(液体アンモニア、LPG等の液化ガス等)等の液体を扱うポンプ等の回転機器のハウジング1と回転軸2との間に装備されるもので、液体領域である機内領域Aと大気領域である機外領域Bとの間を、機内領域A側の第1メカニカルシール3及び機外領域B側の第2メカニカルシール4によって両メカニカルシール3,4間に形成されたバッファ領域Cを介してシールするように構成されている。なお、第1軸封装置M1の説明において、前後とは図1〜図3における左右を意味するものとし、軸線とは回転軸2の中心線をいい、軸線方向とは当該軸線に平行する方向をいうものとする。
第1メカニカルシール3は、図1に示す如く、ハウジング1に取り付けられたシールケース6と、回転軸2に固定されたスリーブ7と、回転軸2に設けられた軸側密封環8と、軸側密封環8に直対向した状態でシールケース6に設けられたケース側密封環9と、ケース側密封環9を軸側密封環8へと押圧附勢するスプリング10と、両密封環8,9の対向端面たる密封端面8a,9a間にシールガスG1を供給するシールガス供給通路11とを具備して、密封端面8a,9a間にシールガス供給通路11から供給したシールガスG1により静圧を発生させて、密封端面8a,9aを非接触状態に保持しつつ相対回転させることにより、密封端面8a,9aの内周側領域である機内領域Aとその外周側領域であるバッファ領域Cとを遮蔽シールするように構成された静圧形の非接触シールである。
シールケース6は、図1に示す如く、ハウジング1の基端部(前端部)に取り付けられたフランジ部6aと、フランジ部6aの内周部から突出してハウジング1の内周部に嵌合された本体部6bと、本体部6bの先端部(後端部)の内周部に形成された第1リテーナ部6cと、本体部6bの基端部(前端部)の内周部に形成された第2リテーナ部6dとからなる円筒構造体である。
スリーブ7は、図1に示す如く、回転軸2に挿通された本体部7aと、本体部7aの軸線方向中央部に形成された密封環保持部7bと、本体部7aの両端部分に嵌合された位置決め部7c,7dとからなる円筒構造体であり、回転軸2にキー7e,7f及び固定環7gを介して固定されている。
軸側密封環8は、図1及び図2に示す如く、回転軸2にスリーブ7を介して固定された円環状体である。軸側密封環8は、スリーブ7の密封環保持部7bの先端面(後端面)に当接する状態でスリーブ7の本体部7aに固定されている。軸側密封環8の先端面(後端面)は軸線に直交する平滑な環状平面である密封端面8aに構成されている。
ケース側密封環9は、図1及び図2に示す如く、軸側密封環8の機内領域A側に配置された円環状体であって、第1〜第3Oリング12,13,14を介してシールケース6に軸線方向に移動可能に保持されている。第1Oリング12は、図2に示す如く、ケース側密封環9とシールケース6の第1リテーナ部6cとの対向周面間に装填されていて、当該対向周面間をシールした状態でケース側密封環9をシールケース6に軸線方向に移動可能に保持している。第2及び第3Oリング13,14は、図2に示す如く、ケース側密封環9とシールケース6の本体部6bとの対向周面間に装填されていて、当該対向周面間をシールする。ケース側密封環9の先端面(前端面)は、軸側密封環8の密封端面8aに直対向する円環状の平滑面である密封端面9aに形成されている。なお、ケース側密封環9は、図1に示す如く、その基端部(後端部)に形成した係合孔9bにシールケース6の第1リテーナ部6cに取り付けたドライブピン15を係合させることによって、所定範囲での軸線方向移動が許容された状態で、シールケース6に対する相対回転が阻止されている。また、ケース側密封環9には、その基端部とシールケース6との間に形成された空間であって第1及び第3Oリング12,14によってシールされた閉塞空間をバッファ領域Cに連通させる連通路9cが形成されている。
スプリング10は、図1に示す如く、ケース側密封環9とシールケース6の第1リテーナ部6cとの対向端部間に装填されたコイルスプリングであり、ケース側密封環9を軸側密封環8へと押圧附勢している。
シールガス供給通路11は、図1及び図2に示す如く、シールケース6及びケース側密封環9に形成された一連のものであり、シールケース6の本体部6bとケース側密封環9との対向周面に形成された環状空間であって第2Oリング13と第3Oリング14とでシールされた接続空間11aと、シールケース6の本体部6bを貫通して接続空間11aに連通するケース側通路11bと、ケース側密封環9の密封端面9aに形成した静圧発生溝11cと、ケース側密封環9を貫通して接続空間11aと静圧発生溝11cとを連通する密封環側通路11dとを具備して、シールガスG1をケース側通路11b、接続空間11a及び密封環側通路11dを経て、静圧発生溝11cから両密封環8,9の密封端面8a,9a間に供給するように構成されている。静圧発生溝11cは、ケース側密封環9の密封端面9aの径方向における中央部又は略中央部に形成されており、当該密封端面9aと同心状の環状をなして連続又は断続する断面三角形状の浅い凹溝である。密封環側通路11dの上流側部分にはオリフィス11eが配設されている。なお、静圧発生溝11cが環状をなして断続するものである場合、つまり当該密封端面9aの円周方向に並列する複数の円弧状溝で構成されている場合、密封環側通路11dにおけるオリフィス11eより下流側の部分を分岐して、各分岐部分を当該各円弧状溝に連通させておく。
而して、第1メカニカルシール3にあっては、密封端面8a,9a間にシールガス供給通路11から供給されたシールガスG1により静圧が発生し、この静圧により密封端面8a,9aを離間させる方向に作用する開力とスプリング10の附勢力により密封端面8a,9aを接近させる方向に作用する閉力とがバランスされて、密封端面8a,9a間が非接触状態に保持される。
第2メカニカルシール4は、図1に示す如く、シールケース6及びスリーブ7と、回転軸2に設けられた軸側密封環16と、軸側密封環16に直対向した状態でシールケース6に設けられたケース側密封環17と、ケース側密封環17を軸側密封環16へと押圧附勢するスプリング18とを具備し、両密封環16,17の対向端面である密封端面16a,17aを、当該密封端面16a,17a間にその一方に形成した動圧発生溝19により動圧を発生させて、非接触状態で相対回転させることにより、密封端面16a,17aの外周側領域であるバッファ領域Cとその内周側領域である機外領域Bとを遮蔽シールするように構成された動圧形の非接触シールである。
軸側密封環16は、図1及び図3に示す如く、第1メカニカルシール3の軸側密封環8の機外領域B側に配して、回転軸2にスリーブ7を介して固定された円環状体である。軸側密封環16は、スリーブ7の密封環保持部7bの基端面(前端面)に当接する状態でスリーブ7の本体部7aに固定されている。本実施形態において、軸側密封環16は、円環状の摺動材に円環状の補強材が外嵌されたものであり、当該補強材の基端面(後端面)の周方向数箇所に設けられた凸部とスリーブ7の密封環保持部7bの基端面(前端面)の対応する箇所に設けられた凹部とが係合することにより、軸側密封環16は、スリーブ7に対して回り止めされている。軸側密封環16の先端面(前端面)は軸線に直交する平滑な環状平面である密封端面16aに構成されている。軸側密封環16の密封端面16aには、バッファ領域Cに開口するスパイラル状等の適宜形状の動圧発生溝19が形成されている。
ケース側密封環17は、図1及び図3に示す如く、軸側密封環16の機外領域B側に配置された円環状体であって、保持環20を介してシールケース6の第2リテーナ部6dに軸線方向に移動可能に保持されている。保持環20は、図3に示す如く、断面L字形状の円筒体であり、シールケース6の第2リテーナ部6dにOリング21及びドライブピン22を介して軸線方向に移動可能に保持されている。ケース側密封環17は、図3に示す如く、保持環20にOリング23及びドライブピン24を介して連結されており、保持環20を介してシールケース6の第2リテーナ部6dに軸線方向に移動可能に保持されている。ケース側密封環17の先端面(後端面)は、軸側密封環16の密封端面16aに直対向する円環状の平滑面である密封端面17aに構成されている。
スプリング18は、図1に示す如く、保持環20とシールケース6の第2リテーナ部6dとの間に装填されたコイルスプリングであり、ケース側密封環17を保持環20を介して軸側密封環16へと押圧附勢する。
第1メカニカルシール3と第2メカニカルシール4とでシールされたバッファ領域Cには、シールケース6の本体部6bに形成されたバッファガス供給通路25からバッファガスG2が供給される。
而して、バッファガスG2の圧力P2は、機内領域Aの圧力P0と同圧又はこれより高圧とされている。また、シールガスG1の圧力P1は、バッファガスG2の圧力P2より高圧とされている。すなわち、シールガスG1は、バッファ領域Cの圧力(バッファガスG2の圧力)P2及び機内領域Aの圧力P0より高圧とされている。具体的には、例えば、ゲージ圧において、バッファガスG2の圧力P2はP2=P0+0〜0.2MPaGに設定し、シールガスG1の圧力P1はP1=P2+0.2MPaG(=P0+0.2〜0.4MPaG)に設定しておくことが好ましい。シールガスG1及びバッファガスG2としては、機内領域Aの液体に混入しても支障がなく且つ機外領域Bに漏出しても問題がないガスが使用されるが、この例では、これらのガスG1,G2として不活性な安全ガスである窒素ガスを使用している。
したがって、第2メカニカルシール4にあっては、密封端面16a,17aの相対回転により、その外周側領域であるバッファ領域CのバッファガスG2が動圧発生溝19から密封端面16a,17a間に導入されて当該密封端面16a,17a間に動圧を発生させる。そして、この動圧により密封端面16a,17aを離間させる方向に作用する開力とスプリング18による附勢力により密封端面16a,17aを接近させる方向に作用する閉力とがバランスされて、密封端面16a,17a間が非接触状態に保持される。
以上のように構成された第1軸封装置M1にあっては、第1メカニカルシール3により密封端面8a,9aの内周側領域である機内領域Aとその外周側領域であるバッファ領域Cとの間がシールされる(隔離される)。
すなわち、第1メカニカルシール3によれば、密封端面8a,9a間に供給されるシールガスG1の圧力P1が機内領域Aの圧力P0及びバッファ領域Cの圧力P2より高圧であるから、シールガスG1は密封端面8a,9a間から機内領域A及びバッファ領域Cに噴出されることになる。したがって、密封端面8a,9aが非接触状態にあるにも拘わらず、機内領域Aの液体が密封端面8a,9a間に侵入することがなく、当該液体を良好にシールする。また、シールガスG1が密封端面8a,9a間から機内領域Aに噴出することから、機内領域Aの低沸点液等の液体に固形微粒子等の異物が混入している場合にも、当該異物が密封端面8a,9a間やケース側密封環9及びシールケース6と第1Oリング12との接触部分に侵入してメカニカルシール機能を低下、喪失させるようなことがなく、良好且つ安定したメカニカルシール機能が発揮される。
また、第2メカニカルシール4にあっては、密封端面16a,17a間に動圧発生溝19によって発生するバッファガスG2の動圧により密封端面16a,17aが非接触状態で相対回転することにより、当該密封端面16a,17aの外周側領域であるバッファ領域Cとその内周側領域である機外領域(大気領域)Bとの間がシールされる(隔離される)。
ところで、機内領域Aの液体が液体アンモニア等の低沸点液である場合には、その気化ガスが第1メカニカルシール3の密封端面8a,9a間からバッファ領域Cに侵入(蒸気漏れ)する虞れがあるが、バッファ領域Cの圧力P2が機内領域Aの圧力P0と同圧又はこれより高圧となっていることから、気化ガスが密封端面8a,9a間からバッファ領域Cに侵入することがない。したがって、機内領域Aの液体が気化し易い低沸点液である場合にも、当該液体を第1メカニカルシール3により確実にシールすることができる。また、機内領域Aの液体が高圧である場合にも、上記した如く、バッファ領域Cの圧力P2が機内領域Aの圧力P0と同圧又はこれより高圧であることから、当該液体を第1メカニカルシール3により良好にシールすることができる。
以上のように、第1軸封装置M1によれば、機内領域Aの液体が固形微粒子等の異物が混入している場合や当該液体が低沸点液や高圧液体である場合にも、当該液体を機外領域Bに漏洩させることなく、第1及び第2メカニカルシール3,4により良好且つ確実にシールすることができる。
また、バッファ領域CがバッファガスG2によるガス領域であることから、第2メカニカルシール4として動圧形の非接触シールを使用することができる。すなわち、第1軸封装置M1を構成するすべてのメカニカルシール3,4を密封端面8a,9a、16a,17aが非接触状態で相対回転する非接触シールとしておくことができる。したがって、軸封装置を構成するすべてのメカニカルシールを密封端面が接触状態で相対回転する接触シールとする従来軸封装置に比して、回転軸2に作用するトルクが減少し、回転軸2の動力費を含むランニングコストが大幅に削減される。
さらに、各メカニカルシール3,4が非接触シールであるから、密封端面が接触状態により相対回転することにより発熱する接触シールのように、密封端面を冷却するためのフラッシング手段等を必要とせず、軸封装置の付帯設備を簡略化することができる。したがって、第1軸封装置にあっては、従来軸封装置に比して、イニシャルコスト、ランニングコストを大幅に削減することができる。
次に、本発明の第2軸封装置について図4〜図6を参照して具体的に説明する。図4は第2軸封装置の一例を示す断面図であり、図5は図4の要部を拡大して示す断面図であり、図6は図5と異なる図4の要部を拡大して示す断面図である。
第2軸封装置M2は、図4に示す如く、低沸点液(液体アンモニア、LPG等の液化ガス等)等の液体を扱うポンプ等の回転機器のハウジング101と回転軸102との間に装備されるもので、液体領域である機内領域Aと大気領域である機外領域Bとの間を、機内領域A側に設けた第1メカニカルシール103、機外領域B側に設けた第3メカニカルシール105及び両メカニカルシール103,105間に設けた第2メカニカルシール104によって、第1及び第2メカニカルシール103,104間に形成されたバッファ領域C並びに第2及び第3メカニカルシール104,105間に形成された二次シール領域Dを介してシールするように構成されている。なお、以下の説明において、前後とは図4〜図6における左右を意味するものとし、軸線とは回転軸102の中心線をいい、軸線方向とは当該軸線に平行する方向をいうものとする。
第1メカニカルシール103は、図4及び図5に示す如く、後述するシールケース106及びスリーブ107の構成を除いて、第1軸封装置M1の第1メカニカルシール3と同一構造をなし且つ同一機能を発揮する静圧形の非接触シールである。したがって、第1メカニカルシール103において第1軸封装置M1の第1メカニカルシール3と同一構成をなす部材については、図4及び図5において当該第1メカニカルシール3の構成部材と同一の符号であって丸括弧を付した符号を使用することにより、その詳細な説明は省略することとする。
すなわち、第1メカニカルシール103は、図4及び図5に示す如く、ハウジング101に取り付けられたシールケース106と、回転軸102に固定されたスリーブ107と、回転軸102に設けられた軸側密封環(8)と、軸側密封環(8)に直対向した状態でシールケース106に設けられたケース側密封環(9)と、ケース側密封環(9)を軸側密封環(8)へと押圧附勢するスプリング(10)と、両密封環(8),(9)の密封端面(8a),(9a)間にシールガスG1を供給するシールガス供給通路(11)とを具備して、密封端面(8a),(9a)を非接触状態で相対回転させることにより、密封端面(8a),(9a)の内周側領域である機内領域Aとその外周側領域であるバッファ領域Cとの間をシールするように構成されている。
シールケース106は、図4に示す如く、ハウジング101の基端部(前端部)に取り付けられたフランジ部106aと、フランジ部106aから突出してハウジング101の内周部に嵌合された本体部106bと、本体部106bの先端部(後端部)の内周部に形成された第1リテーナ部106cと、本体部106bの軸線方向中央部の内周部に形成された第2リテーナ部106dと、フランジ部106aの内周部に形成された第3リテーナ部106eとからなる円筒構造体である。
スリーブ107は、図4に示す如く、回転軸102に挿通された第1本体部107aと、第1本体部107aの機外領域B側に配して回転軸102に挿通された第2本体部107bと、第1本体部107aの基端側(前端側)に形成された第1密封環保持部107cと、第2本体部107bの軸線方向中央部に形成された第2密封環保持部107dと、第1及び第2本体部107a,107bに嵌合された位置決め部107e,107f,107gとからなる円筒構造体であり、回転軸102にキー107h,107i及び固定環107jを介して固定されている。
軸側密封環(8)は、図4及び図5に示す如く、スリーブ107の第1密封環保持部107cの先端面(後端面)に当接する状態でスリーブ107の第1本体部107aに固定されている。ケース側密封環(9)は、図4及び図5に示す如く、軸側密封環(8)の機内領域A側に配置された円環状体であって、第1〜第3Oリング(12),(13),(14)及びドライブピン(15)を介してシールケース106の第1リテーナ部106cに軸線方向に移動可能に且つ相対回転不能に保持されている。
スプリング(10)は、図4に示す如く、ケース側密封環(9)とシールケース106の第1リテーナ部106cとの間に装填されたコイルスプリングであり、ケース側密封環(9)を軸側密封環(8)へと押圧附勢している。
シールガス供給通路(11)は、図4及び図5に示す如く、シールケース106の本体部106bとケース側密封環(9)との対向周面間に形成されて第2及び第3Oリング(13),(14)でシールされた接続空間(11a)と、シールケース106の本体部106bに形成されて接続空間(11a)に連通するケース側通路(11b)と、ケース側密封環(9)の密封端面(9a)に形成した静圧発生溝(11c)と、ケース側密封環(9)に形成されて接続空間(11a)と静圧発生溝(11c)とを連通する密封環側通路(11d)と、密封環側通路(11d)に配設されたオリフィス(11e)とを具備して、シールガスG1を静圧発生溝(11c)から両密封環(8),(9)の密封端面(8a),(9a)間に供給するように構成されている。
而して、第1メカニカルシール103にあっては、第1軸封装置M1の第1メカニカルシール3と同様に、密封端面(8a),(9a)間にシールガス供給通路(11)から供給されたシールガスG1により静圧が発生し、この静圧により密封端面(8a),(9a)を離間させる方向に作用する開力とスプリング(10)の附勢力により密封端面(8a),(9a)を接近させる方向に作用する閉力とがバランスされて、密封端面(8a),(9a)間が非接触状態に保持される。
第2メカニカルシール104は、図4及び図6に示す如く、シールケース106及びスリーブ107の構成並びに軸線方向における密封環配置を逆にした点を除いて、第1軸封装置M1の第2メカニカルシール4と同一構造をなし且つ同一機能を発揮する動圧形の非接触シールである。したがって、第2メカニカルシール104において第1軸封装置M1の第2メカニカルシール4と同一構成をなす部材については、図4及び図6において当該第2メカニカルシール4の構成部材と同一の符号であって丸括弧を付した符号を使用することにより、その詳細な説明は省略することとする。
すなわち、第2メカニカルシール104は、図4及び図6に示す如く、回転軸102に設けられた軸側密封環(16)と、軸側密封環(16)に直対向した状態でシールケース106に設けられたケース側密封環(17)と、ケース側密封環(17)を軸側密封環(16)へと押圧附勢するスプリング(18)とを具備し、両密封環(16),(17)の対向端面である密封端面(16a),(17a)を、当該密封端面(16a),(17a)間にその一方に形成した動圧発生溝(19)により動圧を発生させて、非接触状態で相対回転させることにより、密封端面(16a),(17a)の内周側領域であるバッファ領域Cとその外周側領域である二次シール領域Dとの間をシールするように構成されている。
軸側密封環(16)は、図4及び図6に示す如く、第1メカニカルシール103の機外領域B側に配して、スリーブ107の第2密封環保持部107dの先端面(後端面)に当接する状態でスリーブ107の第2本体部107bに固定されている。軸側密封環(16)の先端面(後端面)は軸線に直交する平滑な環状平面である密封端面(16a)に構成されている。軸側密封環(16)の密封端面(16a)には、二次シール領域Dに開口するスパイラル状等の適宜形状の動圧発生溝(19)が形成されている。
ケース側密封環(17)は、図4に示す如く、軸側密封環(16)の機内領域A側に配して、保持環(20)、Oリング(21),(23)及びドライブピン(22),(24)を介してシールケース106の第2リテーナ部106dに軸線方向に移動可能に且つ相対回転不能に保持されている。
スプリング(18)は、図6に示す如く、保持環(20)とシールケース106の第2リテーナ部106dとの間に装填されたコイルスプリングであり、ケース側密封環(17)を保持環(20)を介して軸側密封環(16)へと押圧附勢する。
第3メカニカルシール105は、図4及び図6に示す如く、シールケース106及びスリーブ107の構成を除いて、第1軸封装置M1の第2メカニカルシール4と同一構造をなし且つ同一機能を発揮する動圧形の非接触シールである。したがって、第3メカニカルシール105において第1軸封装置M1の第2メカニカルシール4と同一構成をなす部材については、図4及び図6において当該第2メカニカルシール4の構成部材と同一の符号であって角括弧を付した符号を使用することにより、その詳細な説明は省略することとする。
すなわち、第3メカニカルシール105は、図4及び図6に示す如く、回転軸102に設けられた軸側密封環[16]と、軸側密封環[16]に直対向した状態でシールケース106に設けられたケース側密封環[17]と、ケース側密封環[17]を軸側密封環[16]へと押圧附勢するスプリング[18]とを具備し、両密封環[16],[17]の対向端面である密封端面[16a],[17a]を、当該密封端面[16a],[17a]間にその一方に形成した動圧発生溝[19]により動圧を発生させて、非接触状態で相対回転させることにより、密封端面[16a],[17a]の外周側領域である二次シール領域Dとその内周側領域である機外領域(大気領域)Bとの間をシールするように構成されている。
軸側密封環[16]は、図4及び図6に示す如く、第2メカニカルシール104の機外領域B側に配して、スリーブ107の第2密封環保持部107dの基端面[前端面]に当接する状態でスリーブ107の第2本体部107bに固定されている。軸側密封環[16]の先端面[前端面]は軸線に直交する平滑な環状平面である密封端面[16a]に構成されている。軸側密封環[16]の密封端面[16a]には、二次シール領域Dに開口するスパイラル状等の適宜形状の動圧発生溝[19]が形成されている。
ケース側密封環[17]は、図6に示す如く、軸側密封環[16]の機外領域B側に配して、保持環[20]、Oリング[21],[23]及びドライブピン[22],[24]を介してシールケース106の第3リテーナ部106eに軸線方向に移動可能に且つ相対回転不能に保持されている。
スプリング[18]は、図4に示す如く、保持環[20]とシールケース106の第3リテーナ部106eとの間に装填されたコイルスプリングであり、ケース側密封環[17]を保持環[20]を介して軸側密封環[16]へと押圧附勢する。
第1メカニカルシール103と第2メカニカルシール104とでシールされたバッファ領域Cには、第1軸封装置M1と同様に、図4に示す如く、シールケース106の本体部106bに形成されたバッファガス供給通路(25)からバッファガスG2が供給される。また、第2メカニカルシール104と第3メカニカルシール105とでシールされた二次シール領域Dには、図4及び図6に示す如く、シールケース106の本体部106bに形成された二次シールガス供給通路125から二次シールガスG3が供給される。
而して、第1軸封装置M1と同様に、バッファガスG2の圧力P2は、機内領域Aの圧力P0と同圧又はこれより高圧とされており、シールガスG1の圧力P1は、バッファ領域Cの圧力(バッファガスG2の圧力)P2及び機内領域Aの圧力P0より高圧とされている。また、二次シールガスG3の圧力P3は、バッファ領域Cの圧力(バッファガスG2の圧力)P2より高圧とされている。具体的には、例えば、ゲージ圧において、バッファガスG2の圧力P2はP2=P0+0〜0.2MPaGに設定し、シールガスG1の圧力P1はP1=P2+0.2MPaG(=P0+0.2〜0.4MPaG)に設定し、二次シールガスG3の圧力P3はP3=P2+0.2MPaG(=P0+0.2〜0.4MPaG)に設定しておくことが好ましい。シールガスG1、バッファガスG2及び二次シールガスG3としては、機内領域Aの液体に混入しても支障がなく且つ機外領域Bに漏出しても問題がないガスが使用されるが、この例では、これらのガスG1,G2,G3として不活性な安全ガスである窒素ガスを使用している。
したがって、第2及び第3メカニカルシール104,105にあっては、第1軸封装置M1の第2メカニカルシール4と同様に、密封端面(16a),(17a)、[16a],[17a]の相対回転により、その外周側領域である二次シール領域Dの二次シールガスG3が動圧発生溝(19),[19]から密封端面(16a),(17a)、[16a],[17a]間に導入されて当該密封端面16a),(17a)、[16a],[17a]間に動圧を発生させる。そして、この動圧により密封端面(16a),(17a)、[16a],[17a]を離間させる方向に作用する開力とスプリング(18),[18]による附勢力により密封端面(16a),(17a)、[16a],[17a]を接近させる方向に作用する閉力とがバランスされて、密封端面(16a),(17a)、[16a],[17a]間が非接触状態に保持される。
以上のように構成された第2軸封装置M2にあっては、第1軸封装置M1と同様に、第1メカニカルシール103により機内領域Aとバッファ領域Cとの間が良好にシールされる。すなわち、第1メカニカルシール103によれば、密封端面(8a),(9a)間に供給されるシールガスG1の圧力P1が機内領域Aの圧力P0及びバッファ領域Cの圧力P2より高圧であるから、シールガスG1は密封端面(8a),(9a)間から機内領域A及びバッファ領域Cに噴出されることになる。したがって、密封端面(8a),(9a)が非接触状態にあるにも拘わらず、機内領域Aの液体が密封端面(8a),(9a)間に侵入することがなく、当該液体を良好にシールする。また、シールガスG1が密封端面(8a),(9a)間から機内領域Aに噴出することから、機内領域Aの低沸点液等の液体に固形微粒子等の異物が混入している場合にも、当該異物が密封端面(8a),(9a)間やケース側密封環(9)及びシールケース(6)と第1Oリング(12)との接触部分に侵入してメカニカルシール機能を低下、喪失させるようなことがなく、良好且つ安定したメカニカルシール機能が発揮される。
また、第2メカニカルシール104によりバッファ領域Cと二次シール領域Dとの間がシールされ(隔離され)、第3メカニカルシール105により二次シール領域Dと機外領域Bとの間がシールされる(隔離される)。そしてバッファ領域Cの圧力P2が機内領域Aの圧力P0と同圧又はこれより高圧であり、二次シール領域Dの圧力P3がバッファ領域Cの圧力P2より高圧であることから、機内領域Aからバッファ領域Cへの漏洩が阻止され、万一バッファ領域Cに漏洩することがあっても、バッファ領域Cからこれより高圧の二次シール領域Dへの漏洩は確実に阻止される。したがって、機内領域Aの液体が高圧である場合にもこれを良好且つ確実にシールすることができ、当該液体が気化し易い液体アンモニア等の低沸点液である場合にも、その気化ガスの二次シール領域Dへの侵入を阻止し、機外領域Bへの漏洩を確実に阻止することができる。したがって、第2軸封装置M2によれば、第1軸封装置M1と同等以上のシール機能が発揮される。
また、バッファ領域C及び二次シール領域DがバッファガスG2及び二次シールガスG3によるガス領域であることから、第2及び第3メカニカルシール104,105として動圧形の非接触シールを使用することができる。したがって、第2軸封装置M2を構成するすべてのメカニカルシール103,104,105を密封端面(8a),(9a)、(16a),(17a)、[16a],[17a]が非接触状態で相対回転する非接触シールとしておくことができるから、第1軸封装置M1と同様に、従来軸封装置に比して、回転軸102の動力費を含むランニングコストや付帯設備を含めた軸封装置のイニシャルコストを大幅に削減することができる。
なお、本発明の構成は上記した各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本原理を逸脱しない範囲で適宜に改良、変更することができる。例えば、第2メカニカルシール4,104及び第3メカニカルシール105を、ケース側密封環17,(17),[17]を保持環20,(20),[20]を介することなくシールケース6,106に保持させるように構成しておくことも可能である。