JP2019104695A - 安息香酸誘導体を含む血管攣縮抑制剤、食品及び食品添加剤 - Google Patents

安息香酸誘導体を含む血管攣縮抑制剤、食品及び食品添加剤 Download PDF

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日出子 ▲高▼松
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Abstract

【課題】血管攣縮特効薬として有効なサラシア熱水抽出物に含まれる有効成分を同定すること。【解決手段】ベンゼン環上に1〜5個のヒドロキシ基を有する安息香酸誘導体、特に、下記式(I−1)及び式(I−2)で示される安息香酸誘導体が血管攣縮作用を有する。血管攣縮特効薬作用をもたらす化合物が上記の通り同定されたことにより、これらの化合物を医薬品、食品(特に、機能性食品)の製造に応用することができる。【化1】【選択図】なし

Description

本発明は、安息香酸誘導体を含む血管攣縮抑制剤、食品及び食品添加剤に関する。より詳しくは、ベンゼン環上に1若しくは2以上のヒドロキシ基を有する安息香酸誘導体を含む血管攣縮抑制剤、食品及び食品添加剤に関する。
「血管病」とは、血管の異常による血行障害によって、それが分布する各臓器の傷害を来たす病気であり、脳梗塞や心筋梗塞などの急性発症で致死的な疾患を引き起こす。血管病によって引き起こされた脳梗塞や心筋梗塞による死亡は、わが国の死亡原因の26%を占め、がんに次いで第2位である。血管病の起こり方には2種類あり、1つは動脈硬化により血管の内腔が狭窄するものであり、高血圧や喫煙など長年の生活習慣によってもたらされるが、もう一つは、血管が突然強度の収縮により血行が障害されるもので、血管攣縮と呼ばれている。血管攣縮は血管壁を構成する血管平滑筋の原因不明の強度の収縮によって起こり、それによる血行障害は重篤であり、有効な治療法は無く、日本人の年間6万人の突然死の原因の90%を占める。この血管攣縮は、血管の正常機能(=血圧維持)を担う正常収縮とはメカニズムの異なる異常収縮であり、原因不明であった。
脳梗塞、狭心症、心筋梗塞などの発症に関連し、重篤な症状を引き起こす上記血管攣縮については、正常収縮とは異なるメカニズムで起こるとされ、ほとんど詳細が明らかになっていない。血管攣縮を起こした患者は、前触れなしに突然血管平滑筋が異常収縮し、重篤な血行障害を引き起こす。危険因子の存在が不明瞭で“健康にみえる”患者にも突発することから、日本人の年間6万人が亡くなっている突然死の主因(2009年日本心臓病学会発表)として恐れられている。現時点における前記疾患の治療法は、疾患への関連性が少ない正常収縮を抑制することにより血管の収縮を抑制するという、いわば見かけ上の治療法であり、本質的な治療法、すなわち血管攣縮の原因究明と対策が切望されている。
近年、血管攣縮抑制作用を有する種々の物質が報告されている。
血管の収縮にはCa2+濃度に依存した「正常収縮」と、Ca2+濃度に依存せずに血管平滑筋が収縮する「血管異常収縮(血管攣縮)」とが知られており、血圧維持等の血管の正常機能を担う正常収縮についてはその機構を含めかなりの部分が明らかになってきている。このため、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞等の疾患に対しては、まず機構の明らかな正常収縮の阻害、特にCa2+チャネルを阻害することによる治療法や治療薬が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
抗HMGB1モノクローナル抗体を有効成分とする脳血管攣縮抑制剤が提案されている(特許文献2)。この脳血管攣縮抑制剤は、クモ膜下出血後に複数回若しくは持続的に投与することにより、クモ膜下出血後に遅発的に発生して患者に重篤な悪影響を及ぼし得る脳血管攣縮を抑制することを目的としている。
Rhoキナーゼ阻害剤を含有する医薬が脳血管攣縮を抑制したという報告(特許文献3)がある。Rhoキナーゼは、細胞の収縮、遊走、分裂、肥大、遺伝子発現など多彩な細胞機能に関与しているため、Rhoキナーゼを直接に阻害すると細胞障害などの多大かつ多様な副作用を伴う可能性がある。
滅菌を行っても形状が安定な、脳内埋め込み用の製剤が脳血管攣縮を予防できるという報告(特許文献4)がある。脳内に製剤を埋め込む場合、感染の危険が生じ、さらに生体が製剤を異物として認識し、効果を示さない可能性がある。また標的部位以外にも製剤が作用する可能性が考えられるため、被験者の身体的負荷が大きくなる。
N−{2−[4−(2,2−dimethylpropyonyloxy)phenylsulfonylamino]benzoyl}aminoacetateまたはその薬理学上許容可能な誘導体(総称してシベレスタットとも称する)が血管異常収縮を特異的に抑制可能であるという報告(特許文献5)がある。同報告には、生理的受容体の刺激薬U46619によって引き起こされた血管異常収縮をシベレスタットが特異的に抑制した、とあるが、スフィンゴシルフォスフォリルコリン(sphingosylphosphorylcholine、SPC)による血管異常収縮を抑制した記載がない。従って、スフィンゴシルフォスフォリルコリンによる血管異常収縮を抑制するかは不明である。さらに有効最適濃度は、0.2−0.3mMと非常に高濃度であるため、人体への安全性が懸念される。
一方、本発明者らは、スフィンゴ脂質の一種であるスフィンゴシルフォスフォリルコリン(sphingosylphosphorylcholine、以下SPCと略す)が血管攣縮の原因分子であることを突き止めた。さらにSPCはRho kinaseの活性化を介してCa2+濃度非依存的に血管平滑筋を収縮させるが、SPCはFynという別のタンパク質を活性化し、活性化されたFynが血管平滑筋細胞膜壁上のメンブレンラフトと呼ばれる構造に結合することによりRho kinaseを活性化することが、血管攣縮における重要なメカニズムであることを明らかにしている(例えば、非特許文献1〜4参照)。また、本発明者らは、正常収縮には影響せず異常収縮を特異的に抑制する血管攣縮の特効薬成分として、魚類などから得られる不飽和脂肪酸の一種であるエイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid、以下EPAと略す)を有効成分とし、血管攣縮に起因する血管病予防用に提供される食品組成物を提案している(例えば、特許文献6参照)。しかし、EPAは投与経路が経口に限られており、血管内投与可能な特効薬を開発する必要がある。さらに、EPAは魚油に多く含有され、サプリメント等機能性食品にも利用されているが、海洋汚染が深刻な現状では供給が不安定であり、更に、魚臭がある事から万人には受け入れ難い、といった問題がある。
他方、サラシア属植物は、主として南アジアに生育するニシキギ科のつる性多年生植物として知られている。これらのサラシア属植物は、インドやスリランカの伝統医学アーユルヴェーダにおいて根や幹を茶として飲むことでダイエット等に利用されてきたが、近年になって、当該植物の根皮に含まれるサラシノールやコタラノールがα−グルコシダーゼに対する強力な阻害活性を有することが確認され、これらの化合物を含有する血糖値上昇抑制用医薬組成物(例えば、特許文献7参照)が報告されている。
更に、本発明者らは、前記EPAの問題点を解決すべく、食用植物に注目し、EPAに代わる特効薬成分を探索した。植物は水溶性成分を多く含有し、血管内投与可能な特効薬成分を有する事が期待される。更に、計画的な栽培により安定的な供給が可能であり、茶等のし好品に使用される事から、特に機能性食品への応用において、万人に受け入れられやすい利点も期待できる。様々な食用植物由来の抽出物のスクリーニングを行った結果、サラシア属植物の抽出物に、SPCによる異常収縮を強力に抑制し、正常収縮をほとんど抑制しない、血管攣縮の特効薬成分が含まれている事を見出した。従来、サラシア属植物は、根部にα−グルコシダーゼ阻害作用を有するサラシノールを含有する事により、糖尿病の予防・治療に有効な機能性食品として応用されてきたが、血管攣縮の特効薬成分は、根部のみならず地上部(幹、枝、茎、葉)にも含有されていた。そしてこの、「サラシア属植物の抽出物を含有することを特徴とする血管攣縮抑制剤」の発明に関する特許出願は既になされている(特許文献8)。
特開2004−043374号公報 特開2007−308436号公報 特開2008−069174号公報 特開2011−088931号公報 特開2008−214309号公報 特開2007−112784号公報 特開2010−202597号公報 特開2016−056138号公報
月刊バイオインダストリー2003年11月号 「エイコサペンタエン酸(EPA)による血管攣縮の予防効果」 Nakao F, Kobayashi S.et al. (2002) Circ.Res. 91:953-960 Shirao S, Kobayashi S.et al. (2002) Circ.Res. 91:112-119 Somlyo A.V. (2002) Circ.Res. 91:83-84
前述の通り、これまでに提案されたEPA等の血管攣縮抑制作用を有する物質は、種々の問題点を有していた。特に、血管攣縮の特効薬成分として唯一広く実用化されているEPAは、魚臭がすること、海洋汚染などの影響により供給量が不安定であること、油溶性の脂肪酸を血液に注射により投与することは困難であること、等が問題点とされている。
先述の通り、サラシア・オブロンガ(Salacia oblonga)の根、幹、枝、茎、葉の全ての部位の熱水抽出物において、正常収縮抑制効果よりも大きな血管異常収縮抑制効果を確認し、先に特許出願を行った(特許文献8)。特許文献8によれば、サラシア幹熱水抽出物のダイアイオンHP20通液・水洗部を、親水性ビニルポリマーToyopearl HW−40Cで分画し、SPCによる血管異常収縮に強い抑制効果を示す一方、正常収縮にはわずかに抑制効果を示すに過ぎない、血管攣縮特効薬として有効なフラクションを得ているが、化合物の同定には至っていない。
本発明者らは、サラシア抽出物から血管攣縮抑制作用を有する特効薬成分の更なる検討を行うとともに、サラシア抽出物から血管攣縮抑制作用を有する特効薬成分の精製・単離・構造決定を進めた結果、サラシア属植物の抽出物に含有される血管攣縮抑制作用を有する化合物を同定するに至った。本発明はかかる知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]有効成分として下記式(I)で示される1種若しくは2種以上の安息香酸誘導体又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル、及び薬学的に許容される担体を含む血管攣縮抑制剤。
(式中、Rはヒドロキシ基を表し、nは1〜5の整数を表す)
[2]式(I)で示される安息香酸誘導体が下記のいずれかの化合物である、[1]記載の血管攣縮抑制剤。
[3]脳血管攣縮抑制剤であることを特徴とする[1]又は[2]記載の血管攣縮抑制剤。
[4]下記式(I)で示される1種若しくは2種以上の安息香酸誘導体又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを含む食品。
(式中、Rはヒドロキシ基を表し、nは1〜5の整数を表す)
[5]式(I)で示される安息香酸誘導体が下記のいずれかの化合物である、[4]記載の食品。
[6]機能性食品である[4]又は[5]記載の食品。
[7]下記式(I)で示される1種若しくは2種以上の安息香酸誘導体又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを含む食品添加剤。
(式中、Rはヒドロキシ基を表し、nは1〜5の整数を表す)
[8]式(I)で示される安息香酸誘導体が下記のいずれかの化合物である、[7]記載の食品添加剤。
また本発明の他の態様としては、[9]有効成分として下記式(I)で示される1種若しくは2種以上の安息香酸誘導体又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルの有効量を対象に投与することを特徴とする血管攣縮の抑制方法や、[10]血管攣縮を抑制するために用いるための、有効成分として下記式(I)で示される1種若しくは2種以上の安息香酸誘導体又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルや、[11]有効成分として式(I)で示される1種若しくは2種以上の安息香酸誘導体又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルの、血管攣縮を抑制する医薬の調製のための使用、を挙げることができる。
本発明の血管攣縮抑制剤は、前記従来技術の問題点を全て解決したものであって、サラシア属植物の根、幹、枝、茎又は葉の乾燥細断物を熱水抽出することにより得られる血管攣縮抑制剤よりも医薬原料及び医薬品としての取扱い易さ、安定性、保存性、等の点で優れている。また、前記化合物を添加した食品や前記化合物を含む機能性食品を摂取することにより、血管攣縮に起因する各種疾患を予防することが可能になる。
サラシア地上部抽出エキスのHPLCチャートである。 Sala−TY−2のMSスペクトルである。 Sala−TY−2のH−NMRスペクトルである。 Sala−TY−2の13C−NMRスペクトルである。 Sala−TY−3のMSスペクトルである。 Sala−TY−3のH−NMRスペクトルである。 Sala−TY−3の13C−NMRスペクトルである。 サラシア熱水抽出物の分子量1万限外ろ過膜抽出物、および、酵素分解物の血管収縮抑制効果を示すグラフである。 サラシア熱水抽出物HP−20未吸着部分画物(Fr.3〜Fr.7)、および、分画前熱水抽出物の血管収縮抑制効果を示すグラフである。 HP−20未吸着部Fr.5のODSカラム分画(Fr.1〜Fr.9)の血管収縮抑制効果を示すグラフである。 HP−20未吸着部Fr.4をODSカラム分取しHPLC分析で得た2ピーク成分(Sala−TY−2,Sala−TY−3)の血管収縮抑制効果を示すグラフである。 構造を決定した2化合物(Sala−TY−2,Sala−TY−3)の血管収縮抑制効果を示すグラフである。
本発明において用いられる化合物は、下記式(I)で示される1種若しくは2種以上の安息香酸誘導体又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルである。
式中、Rはヒドロキシ基を表し、nは1〜5の整数を表す。nが1〜4の場合、ヒドロキシ基の置換位置は化学的に可能である限り特に制限されない。
例えば、次のような化合物が例示される。
(I−1)3,4−ジヒドロキシ安息香酸(プロトカテク酸)
(I−2)4−ヒドロキシ安息香酸
(I−3)2−ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)
(I−4)3−ヒドロキシ安息香酸
(I−5)2,3−ジヒドロキシ安息香酸
(I−6)3,5−ジヒドロキシ安息香酸(α−レゾルシン酸)
(I−7)2,4−ジヒドロキシ安息香酸(β−レゾルシン酸)
(I−8)2,5−ジヒドロキシ安息香酸(ゲンチジン酸)
(I−9)2,6−ジヒドロキシ安息香酸(γ−レゾルシン酸)
(I−10)2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸
(I−11)3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸(没食子酸)
上記化合物のうち、特に好ましい化合物は、化合物I−1(3,4−ジヒドロキシ安息香酸)及び化合物I−2(4−ヒドロキシ安息香酸)である。
上記(I−1)〜(I−11)の化合物は、いずれも公知の化学合成方法若しくは微生物による製造法により製造することができる。また、市販の製品を使用することができる。更には、化合物I−1及び化合物I−2に関しては、以下に記載するように、サラシア属植物の根、幹、枝、茎及び葉の各部位に含まれ、サラシア属植物の根、幹、枝、茎又は葉の乾燥細断物を熱水抽出物をODSカラムで分離することにより得られる化合物を利用することもできる。なお、サラシア属植物の根、幹、枝、茎又は葉の乾燥細断物を熱水抽出物は、例えば、前記特許文献8に記載された方法あるいは以下の実施例1に記載された方法によって調製することができる。
本発明において、血管攣縮とは、細胞質Ca2+濃度に依存しない血管平滑筋の異常収縮を意味し、Ca2+濃度に依存する「正常収縮」に該当しない収縮をいう。
本発明において、血管攣縮(血管異常収縮)の抑制率は、正常収縮の抑制率と同様の方法で測定することができ、例えば、マグヌス管中に、動脈血管中膜条片をオーガンチャンバーに懸垂して一端を固定し、もう一端をトランスデューサーに連結した後、マグヌス管にSPCを加えて人為的に血管異常収縮(血管攣縮)を起こさせ、別のマグヌス管に高カリウム溶液を加えて脱分極による正常収縮(Ca2+濃度依存性収縮)を起こさせ、張力がプラトーになり安定したところで各被検試料を添加することにより、血管異常収縮(血管攣縮)や正常収縮の抑制率を測定する方法を挙げることができる。
本発明の血管攣縮抑制剤の血管攣縮抑制能としては、上記血管異常収縮(血管攣縮)の抑制率が50%以上であることを挙げることができ、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましく、かつ、血管の正常収縮の抑制率が60%以下であり、50%以下がより好ましく、40%以下がさらに好ましく、30%以下がさらにより好ましく、20%以下が特に好ましく、10%以下であることが非常に好ましい。
本発明の血管攣縮抑制剤は、脳梗塞防止作用、心筋梗塞防止作用、くも膜下出血後等における脳血管攣縮抑制作用、狭心症予防作用などを有することから、脳梗塞関連疾患治療剤、心筋梗塞関連疾患治療剤、脳血管攣縮抑制剤、その他の血管攣縮の予防または治療剤等の医薬品として、また、血管攣縮が関与する病態の予防剤や症状改善剤として、さらに血管攣縮が関与する病態の予防・改善作用を有するサプリメントや機能性食品を生産するための薬理組成物素材として、有利に用いることができる。
本発明の血管攣縮抑制剤は、薬品製造の分野において広く用いられる薬学的に許容される担体を含んでいてよい。例えば、この薬学的に許容される担体として、溶媒(例えば、水、通常生理食塩水、緩衝液、グリセリン、有機溶媒)、乳化剤、懸濁化剤、崩壊剤、結合剤、可溶化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、溶解補助剤、等張剤、安定化剤、保存剤、滑沢剤、風味剤、甘味剤、ゲル化剤、吸収遅延剤、リポソーム等を挙げることができる。また、上記血管攣縮抑制剤は、非経口投与、局所投与、又は経口投与に適する投薬形態に処方することができる。これらの投薬形態としては、特に制限されず、錠剤、丸剤、トローチ剤、カプセル剤、顆粒剤、皮下注、静注、筋注、腹腔内注等による注射剤(例えば、滅菌水溶液又は分散液)、滅菌散剤等を挙げることができる。
錠剤の形態に成形するに際しては、担体としてこの分野で従来公知のものを広く使用でき、例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン、デンプン等の保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等が例示できる。さらに錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フイルムコーテイング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができる。
丸剤の形態に成形するに際しては、担体としてこの分野で従来公知のものを広く使用でき、例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤、ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等が例示できる。坐剤の形態に成形するに際しては、担体として従来公知のものを広く使用でき、例えばポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン、半合成グリセライド等を挙げることができる。
注射剤として調製される場合には、液剤及び懸濁剤は殺菌され、かつ血液と等張であるのが好ましく、これら液剤、乳剤及び懸濁剤の形態に成形するに際しては、希釈剤としてこの分野において慣用されているものをすべて使用でき、例えば水、生理食塩水、植物油、可溶化剤、エチルアルコール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等を挙げることができる。なお、この場合等張性の溶液を調製するに充分な量の食塩、ブドウ糖あるいはグリセリンを製剤中に含有せしめてもよく、また通常の溶解補助剤、緩衝剤、無痛化剤等を添加してもよい。更に必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を該製剤中に含有せしめてもよい。
本発明の血管攣縮抑制剤の有効投与量は、対象となる患者の性別、年齢、症状等に依存するが、かかる血管攣縮抑制剤に含まれる式(I)で表される1種若しくは2種以上の化合物量が、成人1人当たり0.005mg〜50mg/kg体重/日となる範囲で、好ましくは0.001mg〜10mg/kg体重/日、更に好ましくは0.01mg〜5mg/kg体重/日の範囲である。投与回数は、一日1回ないし数回(例えば、2〜3回)に分けて投与する。
さらに、式(I)で表される1種若しくは2種以上の化合物を健康な人が血管攣縮を惹起することを予防するために、食品、食品素材または食品添加剤として利用することができる。例えば、式(I)で表される化合物の1種若しくは2種以上は、軽度の血管攣縮症を軽減するための機能性食品、健康食品、サプリメント等を製造する際に利用することが可能である。
例えば、式(I)で表される化合物の1種若しくは2種以上に、米粉、油脂、澱粉、乳糖、麦芽糖、植物油脂粉末、カカオ脂末、ステアリン酸などの適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、ペースト、ドリンク、ソフトカプセル、シームレスカプセル、ハードカプセル、顆粒、錠剤、丸剤などに成形して食用に供してもよい。また、種々の食品、例えば、食パン、菓子パン等のパン;ジャム;ビスケット;クッキー;せんべい等の菓子;ケーキ;ガム;インスタントラーメン、インスタントみそ汁、インスタントスープ等のインスタント食品;アイスクリーム製品;ヨーグルト、牛乳、ドリンク剤、清涼飲料(お茶、コーヒー、紅茶、ジュース等)などの飲料に添加して使用してもよい。本発明の式(I)で表される化合物の1種若しくは2種以上の配合量は、当該食用組成物の種類や状態等により適宜設定される。
以下に、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
[サラシア地上部の熱水抽出]
サラシア・オブロンガ地上部10kgの細断物に10倍量の水を加え、撹拌しながら90℃に加熱し、2日間に分けて10時間ずつ、計20時間抽出した抽出物を100メッシュろ過し、ろ過液を精密ろ過、減圧濃縮、減圧乾燥して得た濃縮液5.7L(乾燥物換算で359.1g)を、サラシア地上部熱水抽出物とした。
[HP20による精製]
サラシア地上部熱水抽出物に水75Lを加えてダイアイオンHP20(三菱化学株式会社)を充填したオープンカラムに添加してBrix計でモニターし、水で未吸着部をFr.10まで12.5Lで分画した。
[HP20未吸着部Fr.5のODSカラムによる分画物の作成]
上記HP20未吸着部Fr.5の凍結乾燥物500mgに蒸留水を加え、超音波で溶解後0.45μmフィルターろ過したもの2〜3mLを、ODSカラムを用いて分取を行った。分取条件は、下記の通りである。
1)移動相:(1)2%アセトニトリル+0.1%ギ酸(0−120分付近、150−180分付近) (2)50%アセトニトリル(120−150分付近)、
2)流速:30mL/min
3)カラム:YMC−Pack ODS A S−15μ 50×250mm
4)温度:室温
5)検出:254nm 波長254nmの吸光度からFr.1〜Fr.9の分取作業を16回繰り返し行い、得られた9画分について水浴温度50℃で濃縮後、凍結乾燥物を作成した。
[HP20未吸着部Fr.5のODSカラム分画物のHPLC精製]
HP20未吸着部Fr.5(およそ15g分)を前項の方法に従いODSカラムで分取した分画物のFr.4,5,6凍結乾燥物15mgに蒸留水を加え、超音波で溶解後0.45μフィルターろ過したものを1mL注入し、HPLCによる精製を行った。分取条件は、下記の通りである。
1)移動相:2%アセトニトリル+0.1%ギ酸
2)流速:5mL/min
3)カラム:YMC−Pack ODS A S−5μ 2×250mm
4)温度:室温
5)検出:254nm 波長254nmの吸光度からSala−TY−2(28mg),Sala−TY−3(72mg)の2種の化合物を得た。
HPLC分析の結果を図1に示す。図1は、サラシア地上部抽出エキスのHPLCチャートである。このチャートには、5つの主要なピークがある。これらのピークの保持時間、面積、高さ、面積%及び高さ%を以下の表に示す。
5つのピークのうち、保持時間が11.259分のピーク(ピーク#3)がSala−Ty−2を、保持時間が19.128分(ピーク#5)のピークがSala−Ty−3をそれぞれ示す。
HPLC分析により定量を行った結果、Sala−TY−2は0.71%、Sala−TY−3は0.18%の含量であった。
[Sala−TY−2の構造決定]
UPLC−MSおよびNMRによってSala−TY−2の構造決定を行った。UPLC−MS分析条件及びNMRの測定条件は以下の通りである。
(UPLC−MS分析条件)
UPLC部
移動相:A液−0.1%ギ酸水 B液−0.1%ギ酸MeCN
0−8min B液5%
8.1−16min B液5%→30%
16.1−20min B液30%→70%
20.1−24min B液70%
24.1−28min B液5%
カラム:YMC−Triart C18 2.0×100mm 1.9μm
流速:0.2mL/min
検出器 UPLC部:PDA検出器(UV200−400nm)
MS部
ESI(m/z 150−1000)
Negativeモード
Source Temperature:120℃
Desolvation Temperature:350℃
Capillary:3.0kV
Cone(V):30V
Gas Flow
Desolvation:650L/hr
Cone:50L/hr
(NMR測定条件)
NMR装置:JEOL ECZ−600
Sala−TY−2
測定溶媒:重メタノール
H−NMR測定条件
600 MHz
積算回数:32回
13C−NMR測定条件
150 MHz
積算回数:1212回
UPLC−MSによる分析により、m/z 153に[M−H]と思われるイオンピークが観測されたことから、分子量はCであることが推測された(図2)。
NMRによる測定では、H−NMRスペクトルから、3つの芳香族由来の水素のシグナルが観測された。また、13C−NMRスペクトルより、6つの芳香族由来の炭素およびカルボキシル基由来と思われる1つのカルボニル炭素のシグナルが観測された(図3及び図4)。
これらの結果からSala−TY−2は3置換ベンゼンの化合物であることが考えられた。
Sala−TY−2のNMRスペクトルを3,4−ジヒドロキシ安息香酸(3,4-dihydroxybenzoic acid)試薬のものと比較したところ、ほぼ同じ値が得られたため、Sala−TY−2を3,4−ジヒドロキシ安息香酸と同定した。
以下に比較結果を示す。
[Sala−TY−3の構造決定]
UPLC(ウルトラパフォーマンスLC)−MSおよびNMRによってSala−TY−3の構造決定を行った。UPLC−MS分析条件及びNMRの測定条件は以下の通りである。
(UPLC−MS分析条件)
UPLC部
移動相:A液−0.1%ギ酸水 B液−0.1%ギ酸MeCN
0−8min B液5%
8.1−16min B液5%→30%
16.1−20min B液30%→70%
20.1−24min B液70%
24.1−28min B液5%
カラム:YMC−Triart C18 2.0×100mm 1.9μm
流速:0.2mL/min
検出器 UPLC部:PDA検出器(UV200−400nm)
MS部
ESI(m/z 150−1000)
Negativeモード
Source Temperature:120℃
Desolvation(脱溶媒和) Temperature:350℃
Capillary:3.0kV
Cone(V):30V
Gas Flow
Desolvation:650L/hr
Cone:50L/hr
(NMR測定条件)
NMR装置:JEOL ECZ−600
Sala−TY−3
測定溶媒:重メタノール
H−NMR測定条件
600 MHz
積算回数:32回
13C−NMR測定条件
150 MHz
積算回数:900回
UPLC−MSによる分析により、m/z 137に[M−H]と思われるイオンピークが観測されたことから、分子量はCであることが推測された(図5)。
NMRによる測定では、H−NMRスペクトルから、2つの芳香族由来の水素のシグナルが観測された。また、13C−NMRスペクトルより、4つの芳香族由来の炭素およびカルボキシル基由来と思われる1つのカルボニル炭素のシグナルが観測された(図6及び図7)。
分子式およびNMRスペクトルのデータから、Sala−TY−3は対称体の構造をした2置換ベンゼンの化合物であることが考えられた。
Sala−TY−3のNMRスペクトルを4−ヒドロキシ安息香酸(4-hydroxybenzoic acid)試薬のものと比較したところ、ほぼ同じ値が得られたため、SalaTY−2を4−ヒドロキシ安息香酸と同定した。
以下に比較結果を示す。
[実施例2]
[血管攣縮抑制実験]
血管収縮実験はブタの冠状動脈(前下行枝)を用いて8チャンネル収縮実験装置で実施した。食肉処理場にて処理されたブタの心臓より、取得したブタ冠状動脈(左冠状動脈前下行枝)を主幹分岐部から1cm遠位で約3cm切り取り、血管の周りの脂肪を取り除いた後、外膜を取り除き、綿棒で内皮を除去し、剃刀を用いてブタ冠状動脈中膜条片幅1mm×長さ3−4mmを作製した。
マグヌス管中に細胞外液のイオン組成と類似する組成を有するKrebs液(123mM NaCl,4.4mM KCl,15.5mM NaHCO,1.2mM KHPO,1.2mM MgCl,1.25mM CaCl,11.5mM D−glucose)を満たし、上記ブタ冠状動脈血管中膜条片を7mLのオーガンチャンバーに懸垂して一端を固定し、もう一端をトランスデューサー(張力検知器)(TRI201AD、PanLab社製)に連結して等尺性張力の測定を行い、血管の張力を評価した。
マグヌス管に30μMのSPCを加えて異常収縮(攣縮)を起こさせ、別のマグヌス管に40mMの高カリウム溶液を加えて脱分極による正常収縮(Ca2+濃度依存性収縮)を起こさせ、ともに張力がプラトーになり安定したところで、前記各被検試料を終濃度0.5mg/mL(Sala−TY−2とSala−TY−3純品は終濃度2mM)となるように、SPCを加えたマグヌス管とカリウム溶液を加えたマグヌス管とに添加して血管収縮抑制効果を比較した。なお、Sala−TY−2とSala−TY−3の純品は、下記のメーカーの製品を使用した。
3,4−ジヒドロキシ安息香酸(3,4-dihydroxybenzoic acid)(Sala−TY−2純品):常盤植物化学研究所、Lot. 8KD6M-HR, 1g。
4−ヒドロキシ安息香酸(4-hydroxybenzoic acid)(Sala−TY−3純品):常盤植物化学研究所、Lot. FQVNI-HI, 1g。
1.供試サンプル
下記1)〜6)のサンプルを使用した。
1)サラシア地上部熱水抽出物(90℃,20時間)の分子量10,000限外ろ過膜透過物
2)サラシア地上部熱水抽出物(90℃,20時間)の酵素分解物
3)サラシア地上部10kg熱水抽出物(90℃,20時間)HP−20未吸着部のBrix計による分画物(Fr.3〜Fr.7)
4)サラシア地上部熱水抽出物(90℃,20時間)HP−20未吸着部Fr.5をODSカラムで分画したサンプル(Fr.1〜Fr.9)
5)サラシア地上部熱水抽出物(90℃,20時間)HP−20未吸着部Fr.4をODSカラムで分取しHPLC分析で得られた2つのピーク成分(Sala−TY−2、Sala−TY−3)、
6)構造を決定した2化合物(即ち,Sala−TY−2及びSala−TY−3)
2.サラシア地上部熱水抽出物(90℃,20時間)の分子量10,000限外ろ過膜透過物、および、酵素分解物の血管収縮抑制効果
サラシア地上部熱水抽出物(90℃,20時間)に含有される血管異常収縮抑制成分の分子量、および、ペプチドの可能性について検討するため、同熱水抽出物を、(1)分子量10,000限外ろ過膜(H1T−1−FUS 0181, ダイセル・メンブレンシステムズ)に透過したサンプル、(2)Protease(SIGMA)により酵素分解したサンプルの、血管収縮に対する抑制効果を検討した。
分子量10,000の限外ろ過膜を透過したサンプルは、正常収縮に対する抑制率より、異常収縮に対する抑制率が大きく、異常収縮を特異的に抑制する成分は分子量10,000以下と考えられた(図8)。更に、酵素分解物と、酵素を添加しなかったサンプル(酵素分解ブランク)には、血管収縮抑制率に差はなく、異常収縮を抑制成分がペプチドである可能性は低いと考えられた(図8)。図8は、サラシア熱水抽出物の分子量1万限外ろ過膜抽出物、および、酵素分解物の血管収縮抑制効果を示すグラフである。
3.サラシア地上部10kg熱水抽出物(90℃,20時間)HP−20未吸着部のBrix計による分画物(Fr.3〜Fr.7)の血管収縮抑制効果
異常収縮抑制成分の構造決定のため、更にスケールアップして抽出・分離を行った。すなわち、サラシア地上部10kg熱水抽出物(90℃,20時間)HP−20未吸着部をBrix計にてモニターし、Fr.1〜Fr.10の10分画に分けた各分画の中から、異常収縮を特異的に抑制する成分が含まれている可能性の高いFr.3〜Fr.7と、分画前の熱水抽出物について血管収縮抑制作用を検討した(図9)。図9は、サラシア熱水抽出物HP−20未吸着部分画物(Fr.3〜Fr.7)、および、分画前熱水抽出物の血管収縮抑制効果を示すグラフである。これまでの結果と一致して、Fr.3,4,5,6に異常収縮に特異的の高い抑制成分が含まれていた。
4.サラシア地上部熱水抽出物(90℃,20時間)HP−20未吸着部Fr.5をODSカラムで分画したサンプル(Fr.1〜Fr.9)の血管収縮抑制効果
サラシア地上部熱水抽出物(90℃,20時間)HP−20未吸着部各分画のうちFr.5をODSカラムで分画したサンプル(Fr.1〜Fr.9)の、血管収縮抑制作用を検討した(図10)。図10は、HP−20未吸着部Fr.5のODSカラム分画(Fr.1〜Fr.9)の血管収縮抑制効果を示すグラフである。Fr.1,3,5,6,7は、異常収縮に対する強い抑制作用と正常収縮に対する弱い抑制作用を有し、これらの分画が異常収縮のみを特異的に抑制する特効薬成分を含有する事が示唆された。
5.サラシア地上部熱水抽出物(90℃,20時間)HP−20未吸着部Fr.4をODSカラムで分取しHPLC分析で得られた2つのピーク成分(Sala−TY−2,Sala−TY−3)の血管収縮抑制効果
サラシア地上部熱水抽出物(90℃,20時間)HP−20未吸着部Fr.4をODSカラムで分取し、HPLC分析で得られた2つのピーク成分(Sala−TY−2,Sala−TY−3)について、構造決定と並行して血管収縮抑制作用を検討した(図11)。図11は、HP−20未吸着部Fr.4をODSカラム分取しHPLC分析で得た2ピーク成分(Sala−TY−2,Sala−TY−3)の血管収縮抑制効果を示すグラフである。最終濃度は0.5mg/mLで投与した。図11から明らかなように、Sala−TY−2は異常収縮を90%強、Sala−TY−3は異常収縮を60%強抑制した。
6.構造を決定した2化合物(Sala−TY−2,Sala−TY−3)の血管収縮抑制効果
NMRおよびMSスペクトルにより、Sala−TY−2は3,4−ジヒドロキシ安息香酸(3,4−dihydroxybenzoic acid)、Sala−TY−3は4−ヒドロキシ安息香酸(4−hydroxybenzoic acid)、と構造を決定したため、これら2化合物の純品を用いて血管収縮抑制効果を検討した(図12)。図12は、構造を決定した2化合物(Sala−TY−2,Sala−TY−3)の血管収縮抑制効果を示すグラフである。最終濃度は2mMで投与した。両化合物とも70%前後異常収縮を抑制した。
7.まとめ
前記の通り、サラシア地上部熱水抽出物(90℃,20時間)の限外ろ過膜透過物、および、酵素分解物の検討から、異常収縮を特異的に抑制する特効薬成分は、分子量10,000以下の低分子であり、ペプチドの可能性は低いと考えられた。また、サラシア地上部10kgの熱水抽出物HP−20未吸着部のBrix計による分画物(Fr.3〜Fr.7)の検討では、これまでの結果と一致して、Fr.3,4,5,6に異常収縮に特異的の高い抑制成分が含まれており、出発材料を10kgにスケールアップしても、安定して異常収縮抑制成分が精製できる事が示された。更に、Sala−TY−2及びSala−TY−3は、正常収縮よりも異常収縮を抑制する度合いが高いことが認められた。
発明者らは、正常収縮には影響せず異常収縮を特異的に抑制する血管攣縮の特効薬成分として、エイコサペンタエン酸(EPA)を発見した。しかし、EPAは投与経路が経口に限られており、経口摂取が不可能な患者への投与が困難である。また、緊急に血管攣縮を抑制する必要のある重篤な状態においては、腸管からの吸収を経て効果が発現される経口薬よりも、急性効果の期待できる血管内投与可能な注射薬が適しており、本発明により同定された化合物は水溶性のため、この様な注射薬の開発への応用が期待できる。さらに、EPAは魚油に多く含有され、サプリメント等機能性食品にも利用されているが、海洋汚染が深刻な現状では供給が不安定であり、更に、魚臭がある事から万人には受け入れ難い、といった問題があるが、食用植物であるサラシアは、計画的栽培によって安定供給が可能であり、更に、インドにおいて熱水やアルコールで抽出されて飲用されており、日本においても根部にa−グルコシダーゼ阻害作用を有するサラシノールが含有される事から糖尿病の予防・治療に有効な機能性食品として応用されており、比較的受け入れられやすいという利点を有する。
また、従来の発明では、サラシア熱水抽出物の血管攣縮特効薬として有効なフラクションを得たものの、化合物の同定には至っていなかったが、本発明で血管攣縮特効薬作用をもたらす化合物が同定された事により、医薬品開発及び機能性食品の開発への応用の可能性が大きく拡がったと言える。

Claims (8)

  1. 有効成分として下記式(I)で示される1種若しくは2種以上の安息香酸誘導体又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル、及び薬学的に許容される担体を含む血管攣縮抑制剤。
    (式中、Rはヒドロキシ基を表し、nは1〜5の整数を表す)
  2. 式(I)で示される安息香酸誘導体が下記のいずれかの化合物である、請求項1記載の血管攣縮抑制剤。
  3. 脳血管攣縮抑制剤であることを特徴とする請求項1又は2記載の血管攣縮抑制剤。
  4. 下記式(I)で示される1種若しくは2種以上の安息香酸誘導体又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを含む食品。
    (式中、Rはヒドロキシ基を表し、nは1〜5の整数を表す)
  5. 式(I)で示される安息香酸誘導体が下記のいずれかの化合物である、請求項4記載の食品。
  6. 機能性食品である請求項4又は5記載の食品。
  7. 下記式(I)で示される1種若しくは2種以上の安息香酸誘導体又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを含む食品添加剤。
    (式中、Rはヒドロキシ基を表し、nは1〜5の整数を表す)
  8. 式(I)で示される安息香酸誘導体が下記のいずれかの化合物である、請求項7記載の食品添加剤。
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