JP2019104079A - メタルブレード、切断加工装置およびメタルブレードの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】冷却効果を高められ、切屑排出性を良好に維持でき、切れ刃の自生発刃作用を促して切れ味を安定させられるメタルブレードを提供する。【解決手段】円板状のメタルボンド相1と、メタルボンド相1の外周縁部に形成された切れ刃1Aと、メタルボンド相1に分散された複数の砥粒2と、メタルボンド相1の内部を延び、メタルボンド相1の外面に開口する複数の気孔3と、を備える。【選択図】図4
Description
本発明は、メタルブレード、切断加工装置およびメタルブレードの製造方法に関する。
例えば脆性材料等の被切断材を切断する切断用ブレードとして、メタルブレードおよびビトリファイドブレード等が知られる。
ビトリファイドブレードは、多孔質状のビトリファイドボンド相を備える。ビトリファイドブレードは、ボンド相に形成された複数の気孔によって、冷却効果を高めたり、切屑排出性を良好に維持したり、切れ刃の自生発刃作用を促して切れ味を安定させたりすることができる。
ビトリファイドブレードは、多孔質状のビトリファイドボンド相を備える。ビトリファイドブレードは、ボンド相に形成された複数の気孔によって、冷却効果を高めたり、切屑排出性を良好に維持したり、切れ刃の自生発刃作用を促して切れ味を安定させたりすることができる。
メタルブレードは、ビトリファイドブレードに比べて靱性が高く、破損しにくい。メタルブレードは、中実のメタルボンド相を備える。ビトリファイドボンド相とは異なり、メタルボンド相は、多孔質状ではない。
従来、例えば下記特許文献1に記載の有気孔メタルボンド砥石が知られる。この有気孔メタルボンド砥石は、マトリックスである金属結合材(メタルボンド相)の中に、砥粒と球状の中空微粒子とが分散される。つまり、金属結合材自体を多孔質状に形成することはできないため、金属結合材内にシリカバルーンやガラスバルーン等の中空微粒子を分散させることで、球状の気孔を形成する。砥石の摩耗が進行し、切れ刃近傍で中空微粒子が外部に露出すると、中空微粒子は部分的に切除されて凹部となる。この凹部によって、切れ刃の目詰まりを抑えたり、加工面への金属融着の発生を抑制したりしている。
しかしながら、ビトリファイドブレードに比べてメタルブレードは、ボンド相から砥粒が脱落しにくい傾向があり、切れ刃の自生発刃作用が滞りやすい。自生発刃作用が滞ると、目潰れ(目詰まり)や偏摩耗が生じて、加工品位に影響する。このためメタルブレードでは、加工品位を良好に維持するために、切れ刃のドレッシング(目立て)を頻繁に行う必要があった。特に、脆性材料等の被切断材に対して、切削力を高めるために硬質のボンド相を有するメタルブレードを使用すると、自生発刃作用が滞りやすかった。
また、特許文献1のように中空微粒子を用いた場合、中空微粒子が割れて生じたシリカ片やガラス片が、被切断材の加工面を傷付ける可能性がある。
また、特許文献1のように中空微粒子を用いた場合、中空微粒子が割れて生じたシリカ片やガラス片が、被切断材の加工面を傷付ける可能性がある。
上述の事情に鑑み、本発明は、冷却効果を高められ、切屑排出性を良好に維持でき、切れ刃の自生発刃作用を促して切れ味を安定させられるメタルブレードおよび切断加工装置を提供することを目的の一つとする。
また本発明は、上記メタルブレードを安定して製造できるメタルブレードの製造方法を提供することを目的の一つとする。
また本発明は、上記メタルブレードを安定して製造できるメタルブレードの製造方法を提供することを目的の一つとする。
本発明の一態様のメタルブレードは、円板状のメタルボンド相と、前記メタルボンド相の外周縁部に形成された切れ刃と、前記メタルボンド相に分散された複数の砥粒と、前記メタルボンド相の内部を延び、前記メタルボンド相の外面に開口する複数の気孔と、を備えることを特徴とする。
本発明のメタルブレードは、メタルボンド相の内部を延びて外面(表面)に開口する複数の気孔を有する。本発明の「気孔」は、連続気孔であり、従来のように中空微粒子により形成された球状の気孔(独立気孔)とは構成が異なる。このため、下記の顕著な作用効果を奏する。
本発明では、メタルブレードの外面に開口する気孔がブレード内を延びて、長い孔に形成される。このため、切断加工時にメタルブレードに供給される冷却液を、気孔内に取り込みブレード内に含浸しやすくすることができる。これにより、メタルブレードの冷却効率が高められ、被切断材の加工面のバリの発生等が抑制されて、加工品位が向上する。また、切断加工時に、メタルボンド相が溶けて被切断材の加工面に付着(融着)するようなことが抑制されて、加工品位が良好に維持される。
また、気孔が長く延びているため、気孔の容積が大きい。このため、切断加工時に生じた切屑を気孔内にキャッチしやすい。つまり、気孔内に切屑を一時的に保持してブレードの外部に排出しやすくなり、切屑排出性が向上する。したがって、被切断材の加工面に切屑が付着したり噛み込んだりすることが抑えられて、加工面の品位が高められる。
また、メタルボンド相内に細長い気孔が複数形成されることで、メタルブレードでありながらも、砥粒がボンド相から適度に脱落しやすくされて、切れ刃の自生発刃作用が促される。つまり、メタルボンド相における砥粒の保持力を維持しつつ、自生発刃作用を促進できる。このため、切れ刃の目潰れ(目詰まり)や偏摩耗が抑制されて、切れ味が安定して高められ、加工品位が良好に維持される。そして、切れ刃のドレッシング(目立て)の頻度を少なくすることができる。本発明によれば、脆性材料や難切削材等の被切断材の切断加工時においても、ドレッシングの頻度を低減できる。
また本発明の気孔は、従来の中空微粒子により形成される気孔とは異なり、シリカバルーンやガラスバルーン等の外殻を有さない。したがって本発明では、中空微粒子が割れて生じるシリカ片やガラス片によって被切断材の加工面が傷付けられるような不具合が抑えられる。
そして、上述の作用効果を奏しつつも、本発明はメタルブレードであるため、ビトリファイドブレードに比べて靱性が高く、破損しにくく、工具寿命が長い。
以上より本発明のメタルブレードによれば、冷却効果が高められ、切屑排出性が良好に維持され、切れ刃の自生発刃作用が促されて切れ味が安定する。
また、上記メタルブレードにおいて、前記メタルボンド相は、前記気孔同士が繋がって形成される3次元網目構造の部分を有することが好ましい。
この場合、メタルボンド相が、多孔質状に形成された3次元網目構造の部分を有する。したがって、上述した本発明の作用効果がより格別なものとなる。すなわち、メタルブレード内に冷却液がより行き渡りやすくなり、冷却効率が高められる。また、気孔内に切屑をより保持しやすくなり、切屑排出性が向上する。また、砥粒の自生発刃作用がより促されて、切れ味が向上する。
なお上記構成では、例えば、切断加工装置において、メタルブレードの内部を通して切れ刃に冷却液を供給する、いわゆる中心給液(中心給水)方式とすることも可能である。
なお上記構成では、例えば、切断加工装置において、メタルブレードの内部を通して切れ刃に冷却液を供給する、いわゆる中心給液(中心給水)方式とすることも可能である。
また、上記メタルブレードにおいて、前記気孔の内面は、カーボンが付着する部分を有することが好ましい。
本発明では、ブレード製造時に、例えばメタルボンド相を焼結する前工程において、ボンド相(ブレード成形体)内に分散した有機フィラーを加熱し気化(昇華)させることにより、上記気孔を形成する。つまり、気化した有機フィラーがボンド相内を通って外部に放出される際に形成される通路(ガスの放出経路)を、ボンド相の焼結後まで残すことにより、細長い形状の気孔を形成する。この際、気孔の内面には、有機フィラーが気化した痕跡として、カーボンが部分的に付着する。
気孔の内面がカーボンの付着部分を有することにより、気孔の内面の濡れ性が高められる。このため、気孔が細長くても、気孔内に冷却液を引き込みやすい。したがって、冷却液がメタルボンド相の内部まで含浸されやすくなって、冷却効率が向上する。
また、上記メタルブレードにおいて、前記気孔の平均内径が、5μm以下であることが好ましい。
この場合、気孔の平均内径が5μm以下であるので、毛細管現象等の作用によって、冷却液を気孔内により引き込みやすくなり、上述した気孔による機能が安定して得られる。また、気孔の内径が小さいため、メタルブレードの各部における、気孔の有無による剛性の変動が抑えられる。つまり、メタルブレードの剛性の局部的な低下を抑えることができ、ブレード全体に剛性が確保されて、ブレードの破損等が抑制される。
また、上記メタルブレードにおいて、前記メタルブレード全体の体積に占める前記気孔の体積の割合が、10〜50vol%であることが好ましい。
この場合、上述した気孔による作用効果が安定して得られつつ、ブレード剛性が確保される。
詳しくは、メタルブレード全体の体積に占める気孔の体積の割合(以下、気孔率という)が10vol%以上であるので、気孔によって得られる各種の作用効果、すなわち冷却効果が高められ、切屑排出性が良好に維持され、切れ刃の自生発刃作用が促されて切れ味が安定する等の作用効果が、より格別なものとなる。
また、気孔率が50vol%以下であるので、メタルボンド相に気孔を形成し過ぎることによるブレード強度の低下を抑えて、ブレード剛性を確保できる。
詳しくは、メタルブレード全体の体積に占める気孔の体積の割合(以下、気孔率という)が10vol%以上であるので、気孔によって得られる各種の作用効果、すなわち冷却効果が高められ、切屑排出性が良好に維持され、切れ刃の自生発刃作用が促されて切れ味が安定する等の作用効果が、より格別なものとなる。
また、気孔率が50vol%以下であるので、メタルボンド相に気孔を形成し過ぎることによるブレード強度の低下を抑えて、ブレード剛性を確保できる。
また、上記メタルブレードにおいて、前記メタルブレード全体の重量に占める前記砥粒の重量の割合が、3〜40wt%であることが好ましい。
この場合、メタルブレードの工具寿命を長く確保でき、かつ、加工精度を良好に維持できる。
詳しくは、メタルブレード全体の重量に占める砥粒の重量の割合が、3wt%以上であるので、切れ刃の切れ味を確保でき、メタルボンド相の摩耗が早期に進行することを抑えて、メタルブレードの工具寿命を長く確保できる。
また、メタルブレード全体の重量に占める砥粒の重量の割合が、40wt%以下であるので、メタルボンド相内で砥粒が密集し過ぎることによる切れ味や加工品位の低下を抑えて、加工精度が良好に維持される。また、メタルブレードが脆くなることを抑制できる。
詳しくは、メタルブレード全体の重量に占める砥粒の重量の割合が、3wt%以上であるので、切れ刃の切れ味を確保でき、メタルボンド相の摩耗が早期に進行することを抑えて、メタルブレードの工具寿命を長く確保できる。
また、メタルブレード全体の重量に占める砥粒の重量の割合が、40wt%以下であるので、メタルボンド相内で砥粒が密集し過ぎることによる切れ味や加工品位の低下を抑えて、加工精度が良好に維持される。また、メタルブレードが脆くなることを抑制できる。
また、本発明の一態様の切断加工装置は、上述したメタルブレードと、前記メタルブレードを、前記メタルボンド相の中心軸回りに回転させる主軸と、前記主軸から前記メタルボンド相の内部に冷却液を供給する冷却液供給手段と、を備えることを特徴とする。
この切断加工装置では、メタルブレード内を通して切れ刃に冷却液を供給する、いわゆる中心給液(中心給水)方式が採用される。つまり、冷却液供給手段によりメタルボンド相の内部に冷却液を供給することで、メタルボンド相内の気孔を通して、遠心力等により冷却液を切れ刃近傍に供給できる。中心給液方式では作用面から冷却液を放出できるので、切れ刃および加工面に冷却液を安定して到達させることができる。メタルボンド相内から切れ刃に向けて冷却液が流れるので、冷却効率が高められる。ブレード内から外部へ向けて冷却液が流出するので、切れ刃の目詰まりが抑制され、切屑排出性が向上する。冷却液の供給量を低減できる。
また、本発明の一態様のメタルブレードの製造方法は、メタルボンド粉末、砥粒および有機フィラーを混合したブレード素材を、円板状のブレード成形体に成形する成形工程と、前記ブレード成形体を加熱し前記有機フィラーを気化させることにより、前記ブレード成形体の内部を延びて前記ブレード成形体の外面に開口する複数の気孔を形成する脱脂工程と、前記ブレード成形体を焼結する焼結工程と、を備えることを特徴とする。
本発明のメタルブレードの製造方法では、脱脂工程において、ブレード成形体(焼結前のメタルボンド相)を加熱し、有機フィラーを気化(昇華)させる。つまり、有機フィラーが気化する温度(有機フィラーの昇華点以上の温度)で、かつブレード成形体の焼結温度よりは低い温度で、ブレード成形体を加熱する。これにより、気化した有機フィラーが、ブレード成形体内を通って外部に放出される。この際、ブレード成形体の内部を延びてブレード成形体の外面に開口する通路(ガスの放出経路)が複数形成されて、これらの通路が気孔となる。この後、焼結工程において、気孔を潰さずに(気孔を残して)ブレード成形体を焼結することにより、メタルボンド相の内部に気孔が形成される。
以上より本発明によれば、メタルボンド相の内部を延び、メタルボンド相の外面に開口する複数の気孔を備えたメタルブレードを、容易にかつ安定して製造できる。
本発明によれば、冷却効果を高められ、切屑排出性を良好に維持でき、切れ刃の自生発刃作用を促して切れ味を安定させられるメタルブレードおよび切断加工装置が提供される。
また本発明によれば、上記メタルブレードを安定して製造できるメタルブレードの製造方法が提供される。
また本発明によれば、上記メタルブレードを安定して製造できるメタルブレードの製造方法が提供される。
以下、本発明の一実施形態のメタルブレード10について、図面を参照して説明する。なお、本発明の実施形態の説明に用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、要部となる部分を拡大、強調、抜粋して示す場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際のものと同じであるとは限らない。
本実施形態のメタルブレード10は、脆性材料や難切削材等の被切断材の切断加工に用いられる切断用ブレードである。具体的に、このメタルブレード10は、例えば、パワーデバイスに用いられる炭化ケイ素(SiC)、車載用LEDのベース材となる高純度アルミナ(Al2O3)および窒化アルミ(AlN)、LEDチップのベース材となるサファイアなどの脆性材料や難切削材等の被切断材の精密切断加工に適している。また、被切断材は、板状である。
図1〜図4に示すように、メタルブレード10は、円板状のメタルボンド相1と、切れ刃1Aと、複数の砥粒2と、複数の気孔3と、を備える。
本実施形態においては、メタルボンド相1の中心軸Oが延びる方向(中心軸Oに沿う方向)を、中心軸O方向と呼ぶ。中心軸O方向は、メタルボンド相1の厚さ方向に相当する。
中心軸Oに直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Oに接近する向きを径方向の内側と呼び、中心軸Oから離間する向きを径方向の外側と呼ぶ。
中心軸O回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。
中心軸Oに直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Oに接近する向きを径方向の内側と呼び、中心軸Oから離間する向きを径方向の外側と呼ぶ。
中心軸O回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。
本実施形態のメタルブレード10は、円形平板状のワッシャタイプの薄刃ブレードである。メタルブレード10は、図示しない切断加工装置(ダイサー)の主軸(スピンドル)に、フランジを用いて取り付けられる。
切断加工装置は、メタルブレード10と、主軸と、冷却液供給手段と、を備える。
被切断材は、その板面を鉛直方向(Z方向)に向けた姿勢で、切断加工装置に配置される。メタルブレード10は、中心軸Oを水平方向(X方向)に延ばした姿勢で、主軸に取り付けられる。メタルブレード10は、中心軸O方向の両側から一対のフランジに挟まれて、主軸に着脱可能に装着される。フランジは、円形リング板状である。
被切断材は、その板面を鉛直方向(Z方向)に向けた姿勢で、切断加工装置に配置される。メタルブレード10は、中心軸Oを水平方向(X方向)に延ばした姿勢で、主軸に取り付けられる。メタルブレード10は、中心軸O方向の両側から一対のフランジに挟まれて、主軸に着脱可能に装着される。フランジは、円形リング板状である。
主軸は、メタルブレード10を中心軸O回りに回転させる。主軸およびメタルブレード10は、被切断材に対して、鉛直方向(Z方向)に往復移動させられる。また、被切断材とメタルブレード10とは、中心軸O方向(X方向)および鉛直方向(Z方向)に垂直な水平方向(Y方向)に相対移動させられる。また、被切断材とメタルブレード10とは、中心軸O方向(X方向)にも相対移動させられる。
上述の回転および各種の移動が組み合わされることにより、メタルブレード10は、メタルボンド相1のうちフランジよりも径方向外側に突出する外周縁部(切れ刃1A)で、被切断材を切断加工する。メタルブレード10が被切断材を切断し個片化することで、例えば四角形板状のチップが複数形成される。
冷却液供給手段は、主軸からメタルボンド相1の内部に冷却液を供給する。冷却液は、例えば純水、切削液剤等である。冷却液供給手段は、主軸の内部を延びる冷却液の流通路と、流通路に冷却液を供給する送液手段と、を有する。冷却液供給手段によりメタルボンド相1に供給された冷却液は、遠心力等によって、メタルボンド相1の気孔3内を流れ径方向外側へ向けて移動する。
メタルブレード10の外径は、例えば50〜60mmであり、内径(後述する取付孔1Bの内径)は、例えば35〜45mmである。メタルブレード10の中心軸O方向に沿う厚さは、例えば500μm以下である。メタルブレード10の厚さは、好ましくは150μm以下であり、望ましくは100μm以下である。
メタルボンド相1は、メタルブレード10の基材であり、金属結合材またはブレード本体と言い換えてもよい。メタルボンド相1は、例えば、Cu−Sn、CoおよびFeのいずれかを主成分(ベース)とする材料により形成されている。
図1および図2に示すように、メタルボンド相1は、外周縁部に切れ刃1Aを有し、内周縁部に取付孔1Bを有する。
メタルボンド相1の径方向の中央部(中心軸O上)には、該メタルボンド相1を中心軸O方向に貫通する取付孔1Bが形成される。取付孔1Bは、中心軸Oを中心とする円孔状である。取付孔1B内には、切断加工装置の主軸が挿入される。このためメタルボンド相1は、具体的には円形リング板状をなしている。つまり、本実施形態でいう「円板状のメタルボンド相1」には、円形リング板状のメタルボンド相1が含まれる。
メタルボンド相1の径方向の中央部(中心軸O上)には、該メタルボンド相1を中心軸O方向に貫通する取付孔1Bが形成される。取付孔1Bは、中心軸Oを中心とする円孔状である。取付孔1B内には、切断加工装置の主軸が挿入される。このためメタルボンド相1は、具体的には円形リング板状をなしている。つまり、本実施形態でいう「円板状のメタルボンド相1」には、円形リング板状のメタルボンド相1が含まれる。
切れ刃1Aは、メタルボンド相1の外周縁部に形成されている。切れ刃1Aは、メタルボンド相1の中心軸O方向を向く一対の板面(切断加工装置に取り付けられた状態では一対の側面)1Cにおける各外周縁部と、メタルボンド相1の外周面と、一対の前記外周縁部と前記外周面との交差稜線部である一対のエッジと、を有する。切れ刃1Aの刃幅は、上述したメタルブレード10の厚さと同一である。
図4に示すように、複数の砥粒2が、メタルボンド相1に分散されている。砥粒2の硬度は、メタルボンド相1の硬度よりも高い。砥粒2は、例えばダイヤモンドの粒である。砥粒2の平均粒径は、メタルブレード10の厚さ(以下、ブレード厚さという場合がある)に応じて適宜選択されることが好ましい。具体的に、本実施形態の一例としては、ブレード厚さに対し、1/4〜1/5程度の平均粒径を有する砥粒2を使用するのが砥粒限界粒径(上限)であり、所望の加工品位に応じて、これより細かな(小さな)平均粒径を有する砥粒2を適宜使用する。つまり、例えば、ブレード厚さが200μmの場合、砥粒2の平均粒径は40〜50μmが最大であり、所望する加工品位によって、平均粒径10μmを使用するなどは任意となる。
上記「平均粒径」とは、複数の砥粒2の粒径の平均値を表しており、例えば、ある粒径範囲をもった砥粒2をマイクロトラック(登録商標)などにより測定し、平均粒径を算出する等の方法が取られる。
メタルブレード10全体の重量に占める砥粒2の重量の割合は、3〜40wt%である。前記割合は、好ましくは、3〜25wt%であり、より望ましくは、6.25〜12.5wt%である。また、メタルボンド相1には、砥粒2以外に、砥粒2よりも硬度が低い無機フィラーが分散されていてもよい。無機フィラーの材質は、例えばSiC等である。
図3および図4に示すように、複数の気孔3は、メタルボンド相1の内部を延び、メタルボンド相1の外面(外部に露出する面。表面)に開口する。本実施形態の気孔3は、連続気孔である。気孔3は、メタルボンド相1の外面のうち、中心軸O方向を向く一対の板面1C、径方向外側を向く外周面および径方向内側を向く内周面のいずれかに開口する。図4に示す例では、複数の気孔3には、中心軸O方向(図4における上下方向)を向く一対の板面1Cの両方に開口する気孔3と、一対の板面1Cのうちいずれかに開口する気孔3と、が含まれる。メタルブレード10全体の体積に占める気孔3の体積の割合は、10〜50vol%である。
気孔3は、細長い形状の孔であり、その内径よりも全長が大きい。気孔3の全長に対する内径の割合(比の値)は、例えば、1/200〜1/10である。
気孔3の平均内径は、5μm以下である。本実施形態でいう「気孔3の平均内径」とは、気孔3の内径の平均値を表しており、例えば、SEM(走査電子顕微鏡)による観察等により得られる。
気孔3の平均内径は、5μm以下である。本実施形態でいう「気孔3の平均内径」とは、気孔3の内径の平均値を表しており、例えば、SEM(走査電子顕微鏡)による観察等により得られる。
気孔3の内面は、メタルボンド相1により形成される。つまり、本実施形態の気孔3は、シリカバルーンやガラスバルーン等の外殻によって画成された孔ではない。また、気孔3の内面は、カーボン(図示省略)が付着する部分を有する。カーボンは、気孔3の内面全体を覆うわけではなく、気孔3の内面に部分的に付着する。
メタルボンド相1の内部において、複数の気孔3同士は、互いに連通する。メタルボンド相1は、気孔3同士が繋がって形成される3次元網目構造の部分を有する。つまり、メタルボンド相1は、多孔質状の部分を有する。3次元網目構造の部分は、メタルボンド相1の一部に形成されてもよいし、複数箇所に形成されてもよいし、メタルボンド相1全体に形成されてもよい。
次に、本実施形態のメタルブレード10の製造方法について説明する。
メタルブレード10の製造方法は、成形工程と、脱脂工程と、焼結工程と、研削・ラップ工程と、をこの順に備える。
メタルブレード10の製造方法は、成形工程と、脱脂工程と、焼結工程と、研削・ラップ工程と、をこの順に備える。
〔成形工程〕
まず、ボールミル等の混合装置を用いて、メタルボンド相1の材料であるメタルボンド粉末、砥粒2および有機フィラーを混合したブレード素材を用意する。有機フィラーは、球状である。有機フィラーの平均粒径は、例えば10μm以下であり、好ましくは5μm以下である。有機フィラーとしては、例えば、アクリルビーズ、ウレタンビーズ、ワックス等を用いることができる。上記ブレード素材には、有機フィラーを均等に分散させるため、界面活性剤を添加することが好ましい。なお、メタルボンド相1に無機フィラーを分散させる場合には、上記ブレード素材に無機フィラーも混合する。
まず、ボールミル等の混合装置を用いて、メタルボンド相1の材料であるメタルボンド粉末、砥粒2および有機フィラーを混合したブレード素材を用意する。有機フィラーは、球状である。有機フィラーの平均粒径は、例えば10μm以下であり、好ましくは5μm以下である。有機フィラーとしては、例えば、アクリルビーズ、ウレタンビーズ、ワックス等を用いることができる。上記ブレード素材には、有機フィラーを均等に分散させるため、界面活性剤を添加することが好ましい。なお、メタルボンド相1に無機フィラーを分散させる場合には、上記ブレード素材に無機フィラーも混合する。
このブレード素材をプレス装置の金型にセットし、圧力を加えて、円板状のブレード成形体に成形する。ブレード成形体の外形寸法は、焼結工程後の収縮量および研削・ラップ処理の削り代等を考慮して設定される。具体的に、上記ブレード成形体の外径は、製造するメタルブレード10の外径よりも大きく設定する。また、上記ブレード成形体の内径は、製造するメタルブレード10の内径よりも小さく設定する。また、上記ブレード成形体の厚さは、製造するメタルブレード10の厚さよりも大きく設定する。
〔脱脂工程〕
次に、ブレード成形体を脱脂装置に入れて加熱し、ブレード成形体内の有機フィラーを気化(昇華)させる。具体的には、有機フィラーが気化する温度(有機フィラーの昇華点以上の温度)で、かつブレード成形体の焼結温度よりは低い温度において、ブレード成形体を加熱する。これにより、気化した有機フィラーが、ブレード成形体内を通って外部に放出され、脱脂される。この際、ブレード成形体の内部を延びてブレード成形体の外面に開口する通路(ガスの放出経路)が複数形成されて、これらの通路が気孔3となる。脱脂工程においてブレード成形体に形成される気孔3の平均内径は、有機フィラーの平均粒径と略同等である。
また、有機フィラーが気化した痕跡として、気孔3の内面には、カーボンが部分的に付着する。
次に、ブレード成形体を脱脂装置に入れて加熱し、ブレード成形体内の有機フィラーを気化(昇華)させる。具体的には、有機フィラーが気化する温度(有機フィラーの昇華点以上の温度)で、かつブレード成形体の焼結温度よりは低い温度において、ブレード成形体を加熱する。これにより、気化した有機フィラーが、ブレード成形体内を通って外部に放出され、脱脂される。この際、ブレード成形体の内部を延びてブレード成形体の外面に開口する通路(ガスの放出経路)が複数形成されて、これらの通路が気孔3となる。脱脂工程においてブレード成形体に形成される気孔3の平均内径は、有機フィラーの平均粒径と略同等である。
また、有機フィラーが気化した痕跡として、気孔3の内面には、カーボンが部分的に付着する。
〔焼結工程〕
次に、ブレード成形体をホットプレス装置に入れて加熱し、ブレード成形体を焼結する。この際、プレス圧を所定範囲に設定することで、ブレード成形体内の気孔3を潰さずに(気孔3を残したまま)、メタルボンド相1を作製できる。具体的に、上記プレス圧は、例えば、100〜2000MPaである。つまり本実施形態における焼結工程のプレス圧は、従来のメタルブレード製造時における焼結工程のプレス圧よりも低い。このため、焼結工程によって気孔3が潰れてしまう(消失する)ことが抑制される。
このホットプレス処理後、メタルボンド相1内の気孔3の平均内径は、5μm以下となる。また、メタルブレード10全体の体積に占める気孔3の体積の割合(気孔率)は、10〜50vol%となる。
本実施形態では、焼結後の気孔3の平均内径および気孔率を、有機フィラーの平均粒径と、ホットプレス圧と、により制御する。
次に、ブレード成形体をホットプレス装置に入れて加熱し、ブレード成形体を焼結する。この際、プレス圧を所定範囲に設定することで、ブレード成形体内の気孔3を潰さずに(気孔3を残したまま)、メタルボンド相1を作製できる。具体的に、上記プレス圧は、例えば、100〜2000MPaである。つまり本実施形態における焼結工程のプレス圧は、従来のメタルブレード製造時における焼結工程のプレス圧よりも低い。このため、焼結工程によって気孔3が潰れてしまう(消失する)ことが抑制される。
このホットプレス処理後、メタルボンド相1内の気孔3の平均内径は、5μm以下となる。また、メタルブレード10全体の体積に占める気孔3の体積の割合(気孔率)は、10〜50vol%となる。
本実施形態では、焼結後の気孔3の平均内径および気孔率を、有機フィラーの平均粒径と、ホットプレス圧と、により制御する。
〔研削・ラップ工程〕
次に、焼結により得られたメタルブレード10の外径および内径を、所定の大きさに研削する。また、メタルブレード10の厚さを、所定の厚さにラップ処理する。研削・ラップ処理後は、メタルブレード10を洗浄し乾燥する。
次に、焼結により得られたメタルブレード10の外径および内径を、所定の大きさに研削する。また、メタルブレード10の厚さを、所定の厚さにラップ処理する。研削・ラップ処理後は、メタルブレード10を洗浄し乾燥する。
以上説明した本実施形態のメタルブレード10は、メタルボンド相1の内部を延びて外面(表面)に開口する複数の気孔3を有する。本実施形態の「気孔3」は、連続気孔であり、従来のように中空微粒子により形成された球状の気孔(独立気孔)とは構成が異なる。このため、下記の顕著な作用効果を奏する。
本実施形態では、メタルブレード10の外面に開口する気孔3がブレード内を延びて、長い孔に形成される。このため、切断加工時にメタルブレード10に供給される冷却液を、気孔3内に取り込みブレード内に含浸しやすくすることができる。これにより、メタルブレード10の冷却効率が高められ、被切断材の加工面のバリの発生等が抑制されて、加工品位が向上する。また、切断加工時に、メタルボンド相1が溶けて被切断材の加工面に付着(融着)するようなことが抑制されて、加工品位が良好に維持される。
また、気孔3が長く延びているため、気孔3の容積が大きい。このため、切断加工時に生じた切屑を気孔3内にキャッチしやすい。つまり、気孔3内に切屑を一時的に保持してブレードの外部に排出しやすくなり、切屑排出性が向上する。したがって、被切断材の加工面に切屑が付着したり噛み込んだりすることが抑えられて、加工面の品位が高められる。
また、メタルボンド相1内に細長い気孔3が複数形成されることで、メタルブレード10でありながらも、砥粒2がボンド相1から適度に脱落しやすくされて、切れ刃1Aの自生発刃作用が促される。つまり、メタルボンド相1における砥粒2の保持力を維持しつつ、自生発刃作用を促進できる。このため、切れ刃1Aの目潰れ(目詰まり)や偏摩耗が抑制されて、切れ味が安定して高められ、加工品位が良好に維持される。そして、切れ刃1Aのドレッシング(目立て)の頻度を少なくすることができる。本実施形態によれば、脆性材料や難切削材等の被切断材の切断加工時においても、ドレッシングの頻度を低減できる。
また本実施形態の気孔3は、従来の中空微粒子により形成される気孔とは異なり、シリカバルーンやガラスバルーン等の外殻を有さない。したがって本実施形態では、中空微粒子が割れて生じるシリカ片やガラス片によって被切断材の加工面が傷付けられるような不具合が抑えられる。
そして、上述の作用効果を奏しつつも、本実施形態の切断用ブレードはメタルブレード10であるため、ビトリファイドブレードに比べて靱性が高く、破損しにくく、工具寿命が長い。
以上より本実施形態のメタルブレード10によれば、冷却効果が高められ、切屑排出性が良好に維持され、切れ刃1Aの自生発刃作用が促されて切れ味が安定する。
また本実施形態では、メタルボンド相1が、気孔3同士が繋がって多孔質状に形成された3次元網目構造の部分を有する。したがって、上述した本実施形態の作用効果がより格別なものとなる。すなわち、メタルブレード10内に冷却液がより行き渡りやすくなり、冷却効率が高められる。また、気孔3内に切屑をより保持しやすくなり、切屑排出性が向上する。また、砥粒2の自生発刃作用がより促されて、切れ味が向上する。
なお上記構成により、本実施形態のように、切断加工装置において、メタルブレード10の内部を通して切れ刃1Aに冷却液を供給する、いわゆる中心給液(中心給水)方式とすることが可能である。
なお上記構成により、本実施形態のように、切断加工装置において、メタルブレード10の内部を通して切れ刃1Aに冷却液を供給する、いわゆる中心給液(中心給水)方式とすることが可能である。
また本実施形態では、気孔3の内面が、カーボンが付着する部分を有する。これにより、気孔3の内面の濡れ性が高められる。このため、気孔3が細長くても、気孔3内に冷却液を引き込みやすい。したがって、冷却液がメタルボンド相1の内部まで含浸されやすくなって、冷却効率が向上する。
また本実施形態では、気孔3の平均内径が5μm以下であるので、毛細管現象等の作用によって、冷却液を気孔3内により引き込みやすくなり、上述した気孔3による機能が安定して得られる。また、気孔3の内径が小さいため、メタルブレード10の各部における、気孔3の有無による剛性の変動が抑えられる。つまり、メタルブレード10の剛性の局部的な低下を抑えることができ、ブレード全体に剛性が確保されて、ブレードの破損等が抑制される。
また本実施形態では、メタルブレード10全体の体積に占める気孔3の体積の割合(以下、気孔率という)が、10〜50vol%であるので、上述した気孔3による作用効果が安定して得られつつ、ブレード剛性が確保される。
詳しくは、気孔率が10vol%以上であるので、気孔3によって得られる各種の作用効果、すなわち冷却効果が高められ、切屑排出性が良好に維持され、切れ刃1Aの自生発刃作用が促されて切れ味が安定する等の作用効果が、より格別なものとなる。
また、気孔率が50vol%以下であるので、メタルボンド相1に気孔3を形成し過ぎることによるブレード強度の低下を抑えて、ブレード剛性を確保できる。
詳しくは、気孔率が10vol%以上であるので、気孔3によって得られる各種の作用効果、すなわち冷却効果が高められ、切屑排出性が良好に維持され、切れ刃1Aの自生発刃作用が促されて切れ味が安定する等の作用効果が、より格別なものとなる。
また、気孔率が50vol%以下であるので、メタルボンド相1に気孔3を形成し過ぎることによるブレード強度の低下を抑えて、ブレード剛性を確保できる。
また本実施形態では、メタルブレード10全体の重量に占める砥粒2の重量の割合が、3〜40wt%であるので、メタルブレード10の工具寿命を長く確保でき、かつ、加工精度を良好に維持できる。
詳しくは、メタルブレード10全体の重量に占める砥粒2の重量の割合が、3wt%以上であるので、切れ刃1Aの切れ味を確保でき、メタルボンド相1の摩耗が早期に進行することを抑えて、メタルブレード10の工具寿命を長く確保できる。
また、メタルブレード10全体の重量に占める砥粒2の重量の割合が、40wt%以下であるので、メタルボンド相1内で砥粒2が密集し過ぎることによる切れ味や加工品位の低下を抑えて、加工精度が良好に維持される。また、メタルブレード10が脆くなることを抑制できる。
なお、上述の作用効果をより格別なものとするには、好ましくは、前記割合が3〜25wt%であり、より望ましくは、前記割合が6.25〜12.5wt%である。
詳しくは、メタルブレード10全体の重量に占める砥粒2の重量の割合が、3wt%以上であるので、切れ刃1Aの切れ味を確保でき、メタルボンド相1の摩耗が早期に進行することを抑えて、メタルブレード10の工具寿命を長く確保できる。
また、メタルブレード10全体の重量に占める砥粒2の重量の割合が、40wt%以下であるので、メタルボンド相1内で砥粒2が密集し過ぎることによる切れ味や加工品位の低下を抑えて、加工精度が良好に維持される。また、メタルブレード10が脆くなることを抑制できる。
なお、上述の作用効果をより格別なものとするには、好ましくは、前記割合が3〜25wt%であり、より望ましくは、前記割合が6.25〜12.5wt%である。
また、本実施形態の切断加工装置は、上述のメタルブレード10と、メタルブレード10を中心軸O回りに回転させる主軸と、主軸からメタルボンド相1の内部に冷却液を供給する冷却液供給手段と、を備えている。冷却液供給手段は、冷却液を、メタルボンド相1のブレード端面からメタルボンド相1の内部に供給する。つまり、この切断加工装置では、メタルブレード10内を通して切れ刃1Aに冷却液を供給する、いわゆる中心給液(中心給水)方式が採用される。冷却液供給手段によりメタルボンド相1の内部に冷却液を供給することで、メタルボンド相1内の気孔3を通して、遠心力等により冷却液を切れ刃1A近傍に供給できる。中心給液方式では作用面から冷却液を放出できるので、切れ刃1Aおよび加工面に冷却液を安定して到達させることができる。メタルボンド相1内から切れ刃1Aに向けて冷却液が流れるので、冷却効率が高められる。ブレード内から外部へ向けて冷却液が流出するので、切れ刃1Aの目詰まりが抑制され、切屑排出性が向上する。冷却液の供給量を低減できる。
また、本実施形態のメタルブレード10の製造方法によれば、メタルボンド相1の内部を延び、メタルボンド相1の外面に開口する複数の気孔3を備えたメタルブレード10を、容易にかつ安定して製造できる。
また本実施形態では、成形工程において、球状の有機フィラーを用いるので、ブレード成形体内において有機フィラーが気化(蒸発)するときのガスの放出経路が安定して形成され、複数の気孔3の孔形状が互いに似通ったものとなる。したがって、メタルブレード10の性能が安定する。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
前述の実施形態では、メタルボンド相1が、Cu−Sn、CoおよびFeのいずれかを主成分(ベース)とする材料により形成されているとしたが、これに限定されない。メタルボンド相1は、上記以外の金属材料により形成されていてもよい。
また前述の実施形態では、メタルボンド相1に分散される砥粒2として、ダイヤモンド砥粒を用いているが、これに代えて、またはこれとともに、cBN砥粒を用いてもよい。
また前述の実施形態では、メタルボンド相1に分散される砥粒2として、ダイヤモンド砥粒を用いているが、これに代えて、またはこれとともに、cBN砥粒を用いてもよい。
また、前述の実施形態では、気孔3の内面が、カーボンが付着する部分を有するとしたが、気孔3の内面には、カーボンが付着していなくてもよい。ただし、気孔3の内面にカーボンが付着していると、濡れ性が高められて冷却効率が向上することから、より好ましい。
また、前述の実施形態では、切断加工装置が中心給液(中心給水)方式を用いているとしたが、これに限定されない。切断加工装置は、メタルボンド相1の外部から切れ刃1A近傍に向けて、冷却液を供給してもよい。
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし本発明はこの実施例に限定されるものではない。
〔切断試験A〕
本発明の実施例として、前述の実施形態で説明したメタルブレード10を用意した。メタルブレード10の諸元については、下記の通りとした。
・メタルブレードの外径:56mm、内径:40mm、厚さ:150μm
・メタルボンド相の材質:Cu、Sn
・気孔形成用の有機フィラー:ポリウレタン
・砥粒の材質:ダイヤモンド
・砥粒の平均粒径:10〜20μm
・気孔の種類:連続気孔(気孔の外殻無し)
・気孔の平均内径:1〜7μmの間で複数種類を用意(実施例1〜4)
・メタルブレード全体の体積に占める気孔の体積の割合(気孔率):30vol%
・メタルブレード全体の重量に占める砥粒の重量の割合(砥粒の含有率):12.5wt%
本発明の実施例として、前述の実施形態で説明したメタルブレード10を用意した。メタルブレード10の諸元については、下記の通りとした。
・メタルブレードの外径:56mm、内径:40mm、厚さ:150μm
・メタルボンド相の材質:Cu、Sn
・気孔形成用の有機フィラー:ポリウレタン
・砥粒の材質:ダイヤモンド
・砥粒の平均粒径:10〜20μm
・気孔の種類:連続気孔(気孔の外殻無し)
・気孔の平均内径:1〜7μmの間で複数種類を用意(実施例1〜4)
・メタルブレード全体の体積に占める気孔の体積の割合(気孔率):30vol%
・メタルブレード全体の重量に占める砥粒の重量の割合(砥粒の含有率):12.5wt%
また、従来の比較例のメタルブレードとして、メタルボンド相が中実とされて気孔を有さないもの(比較例1)、および、メタルボンド相にガラスバルーンの中空微粒子が分散されることにより気孔が形成されたもの(比較例2)を用意した。比較例2の諸元を、下記に示す。
・気孔の種類:独立気孔(気孔の外殻有り)
・気孔の平均内径:5μm
なお、気孔に関する構成以外の比較例1、2のメタルブレードの諸元については、上記実施例と同様にした。
・気孔の種類:独立気孔(気孔の外殻有り)
・気孔の平均内径:5μm
なお、気孔に関する構成以外の比較例1、2のメタルブレードの諸元については、上記実施例と同様にした。
上述した実施例1〜4および比較例1、2の各メタルブレードを用いて、被切断材の切断加工試験を行った。切断条件は、下記の通りとした。
・被切断材の種類:ホウ珪酸ガラス、厚さ:0.5mm
・主軸回転数:20krpm
・送り速度:10mm/sec
・冷却液の種類:純水
・冷却液供給方式:実施例は中心給液(中心給水)、比較例は外部給液(外部給水)
・切断形態:1Pass Full Cut
・切断パス数:10回
・被切断材の種類:ホウ珪酸ガラス、厚さ:0.5mm
・主軸回転数:20krpm
・送り速度:10mm/sec
・冷却液の種類:純水
・冷却液供給方式:実施例は中心給液(中心給水)、比較例は外部給液(外部給水)
・切断形態:1Pass Full Cut
・切断パス数:10回
被切断材の加工面の評価は、上記切断パス数を経過した時点で行うこととした。また、評価するサンプルの数は、任意の10個とした。評価の符号S、A、B、Cの内容は、下記の通りである。
・S…加工面に欠け、傷(スクラッチ)、金属の融着、バリ等が全く見受けられず、加工品位が特に優れている。
・A…加工面に欠け、傷、金属の融着、バリ等がほとんど見受けられず、加工品位が優れている。
・B…加工面に欠け、傷、金属の融着、バリ等がわずかに見受けられるものの、加工品位は良好である。
・C…加工面に欠け、傷、金属の融着、バリ等が明らかに見受けられ、加工品位が確保できない。
・S…加工面に欠け、傷(スクラッチ)、金属の融着、バリ等が全く見受けられず、加工品位が特に優れている。
・A…加工面に欠け、傷、金属の融着、バリ等がほとんど見受けられず、加工品位が優れている。
・B…加工面に欠け、傷、金属の融着、バリ等がわずかに見受けられるものの、加工品位は良好である。
・C…加工面に欠け、傷、金属の融着、バリ等が明らかに見受けられ、加工品位が確保できない。
切断試験Aの結果を、下記表1に示す。
表1に示す「加工面の評価」より、実施例1〜4は、評価がS、A、Bのいずれかであり、加工品位が確保された。実施例1〜4のうち、気孔の平均内径が5μm以下である実施例1〜3については、評価がSまたはAであり、加工品位が優れていた。中でも、実施例3については、評価がSであり、加工品位が特に優れていた。
一方、比較例1、2は、評価がCであり、実施例1〜4に比べて加工面の品位が劣っていた。
一方、比較例1、2は、評価がCであり、実施例1〜4に比べて加工面の品位が劣っていた。
〔切断試験B〕
本発明の実施例として、前述の実施形態で説明したメタルブレード10を用意した。メタルブレード10の諸元については、下記の通りとした。
・メタルブレードの外径:56mm、内径:40mm、厚さ:150μm
・メタルボンド相の材質:Cu、Sn
・気孔形成用の有機フィラー:ポリウレタン
・砥粒の材質:ダイヤモンド
・砥粒の平均粒径:10〜20μm
・気孔の種類:連続気孔(気孔の外殻無し)
・気孔の平均内径:5μm
・メタルブレード全体の体積に占める気孔の体積の割合(気孔率):5〜55vol%の間で複数種類を用意(実施例5〜11)
・メタルブレード全体の重量に占める砥粒の重量の割合(砥粒の含有率):12.5wt%
本発明の実施例として、前述の実施形態で説明したメタルブレード10を用意した。メタルブレード10の諸元については、下記の通りとした。
・メタルブレードの外径:56mm、内径:40mm、厚さ:150μm
・メタルボンド相の材質:Cu、Sn
・気孔形成用の有機フィラー:ポリウレタン
・砥粒の材質:ダイヤモンド
・砥粒の平均粒径:10〜20μm
・気孔の種類:連続気孔(気孔の外殻無し)
・気孔の平均内径:5μm
・メタルブレード全体の体積に占める気孔の体積の割合(気孔率):5〜55vol%の間で複数種類を用意(実施例5〜11)
・メタルブレード全体の重量に占める砥粒の重量の割合(砥粒の含有率):12.5wt%
また、従来の比較例のメタルブレードとして、メタルボンド相が中実とされて気孔を有さないもの(比較例3)、および、メタルボンド相にガラスバルーンの中空微粒子が分散されることにより気孔が形成されたもの(比較例4)を用意した。比較例4の諸元を、下記に示す。
・気孔の種類:独立気孔(気孔の外殻有り)
・気孔の平均内径:5μm
・気孔率:30vol%
なお、気孔に関する構成以外の比較例3、4のメタルブレードの諸元については、上記実施例と同様にした。
・気孔の種類:独立気孔(気孔の外殻有り)
・気孔の平均内径:5μm
・気孔率:30vol%
なお、気孔に関する構成以外の比較例3、4のメタルブレードの諸元については、上記実施例と同様にした。
上述した実施例5〜11および比較例3、4の各メタルブレードを用いて、被切断材の切断加工試験を行った。切断条件は、下記の通りとした。
・被切断材の種類:ホウ珪酸ガラス、厚さ:0.5mm
・主軸回転数:20krpm
・送り速度:10mm/sec
・冷却液の種類:純水
・冷却液供給方式:実施例は中心給液(中心給水)、比較例は外部給液(外部給水)
・切断形態:1Pass Full Cut
・切断パス数:10回
・被切断材の種類:ホウ珪酸ガラス、厚さ:0.5mm
・主軸回転数:20krpm
・送り速度:10mm/sec
・冷却液の種類:純水
・冷却液供給方式:実施例は中心給液(中心給水)、比較例は外部給液(外部給水)
・切断形態:1Pass Full Cut
・切断パス数:10回
被切断材の加工面の評価は、上記切断パス数を経過した時点で行うこととした。また、評価するサンプルの数は、任意の10個とした。評価の符号S、A、B、Cの内容は、上述の「切断試験A」と同様である。
切断試験Bの結果を、下記表2に示す。
表2に示す「加工面の評価」より、実施例5〜11は、評価がAまたはBであり、加工品位が確保された。実施例5〜11のうち、気孔率が10〜50vol%である実施例6〜10については、評価がAであり、加工品位が優れていた。
一方、比較例3、4は、評価がCであり、実施例5〜11に比べて加工面の品位が劣っていた。
一方、比較例3、4は、評価がCであり、実施例5〜11に比べて加工面の品位が劣っていた。
〔切断試験C〕
本発明の実施例として、前述の実施形態で説明したメタルブレード10を用意した。メタルブレード10の諸元については、下記の通りとした。
・メタルブレードの外径:56mm、内径:40mm、厚さ:150μm
・メタルボンド相の材質:Cu、Sn
・気孔形成用の有機フィラー:ポリウレタン
・砥粒の材質:ダイヤモンド
・砥粒の平均粒径:10〜20μm
・気孔の種類:連続気孔(気孔の外殻無し)
・気孔の平均内径:5μm
・メタルブレード全体の体積に占める気孔の体積の割合(気孔率):30vol%
・メタルブレード全体の重量に占める砥粒の重量の割合(砥粒の含有率):5〜35wt%の間で複数種類を用意(実施例12〜18)
本発明の実施例として、前述の実施形態で説明したメタルブレード10を用意した。メタルブレード10の諸元については、下記の通りとした。
・メタルブレードの外径:56mm、内径:40mm、厚さ:150μm
・メタルボンド相の材質:Cu、Sn
・気孔形成用の有機フィラー:ポリウレタン
・砥粒の材質:ダイヤモンド
・砥粒の平均粒径:10〜20μm
・気孔の種類:連続気孔(気孔の外殻無し)
・気孔の平均内径:5μm
・メタルブレード全体の体積に占める気孔の体積の割合(気孔率):30vol%
・メタルブレード全体の重量に占める砥粒の重量の割合(砥粒の含有率):5〜35wt%の間で複数種類を用意(実施例12〜18)
また、従来の比較例のメタルブレードとして、メタルボンド相が中実とされて気孔を有さないもの(比較例5)、および、メタルボンド相にガラスバルーンの中空微粒子が分散されることにより気孔が形成されたもの(比較例6)を用意した。比較例6の諸元を、下記に示す。
・気孔の種類:独立気孔(気孔の外殻有り)
・気孔の平均内径:5μm
・砥粒の含有率:12.5wt%(比較例5、6ともに同じ)
なお、気孔に関する構成以外の比較例5、6のメタルブレードの諸元については、上記実施例と同様にした。
・気孔の種類:独立気孔(気孔の外殻有り)
・気孔の平均内径:5μm
・砥粒の含有率:12.5wt%(比較例5、6ともに同じ)
なお、気孔に関する構成以外の比較例5、6のメタルブレードの諸元については、上記実施例と同様にした。
上述した実施例12〜18および比較例5、6の各メタルブレードを用いて、被切断材の切断加工試験を行った。切断条件は、下記の通りとした。
・被切断材の種類:ホウ珪酸ガラス、厚さ:0.5mm
・主軸回転数:20krpm
・送り速度:10mm/sec
・冷却液の種類:純水
・冷却液供給方式:実施例は中心給液(中心給水)、比較例は外部給液(外部給水)
・切断形態:1Pass Full Cut
・切断パス数:10回
・被切断材の種類:ホウ珪酸ガラス、厚さ:0.5mm
・主軸回転数:20krpm
・送り速度:10mm/sec
・冷却液の種類:純水
・冷却液供給方式:実施例は中心給液(中心給水)、比較例は外部給液(外部給水)
・切断形態:1Pass Full Cut
・切断パス数:10回
被切断材の加工面の評価は、上記切断パス数を経過した時点で行うこととした。また、評価するサンプルの数は、任意の10個とした。評価の符号S、A、B、Cの内容は、上述の「切断試験A」と同様である。
切断試験Cの結果を、下記表3に示す。
表3に示す「加工面の評価」より、実施例12〜18は、評価がAまたはBであり、加工品位が確保された。実施例12〜18のうち、砥粒の含有率が10〜20wt%である実施例13〜15については、評価がAであり、加工品位が優れていた。
一方、比較例5、6は、評価がCであり、実施例12〜18に比べて加工面の品位が劣っていた。
一方、比較例5、6は、評価がCであり、実施例12〜18に比べて加工面の品位が劣っていた。
本発明のメタルブレードおよび切断加工装置によれば、冷却効果を高められ、切屑排出性を良好に維持でき、切れ刃の自生発刃作用を促して切れ味を安定させられる。また本発明のメタルブレードの製造方法によれば、上記メタルブレードを安定して製造できる。従って、産業上の利用可能性を有する。
1…メタルボンド相、1A…切れ刃、2…砥粒、3…気孔、10…メタルブレード、O…中心軸
Claims (8)
- 円板状のメタルボンド相と、
前記メタルボンド相の外周縁部に形成された切れ刃と、
前記メタルボンド相に分散された複数の砥粒と、
前記メタルボンド相の内部を延び、前記メタルボンド相の外面に開口する複数の気孔と、を備える、メタルブレード。 - 請求項1に記載のメタルブレードであって、
前記メタルボンド相は、前記気孔同士が繋がって形成される3次元網目構造の部分を有する、メタルブレード。 - 請求項1または2に記載のメタルブレードであって、
前記気孔の内面は、カーボンが付着する部分を有する、メタルブレード。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載のメタルブレードであって、
前記気孔の平均内径が、5μm以下である、メタルブレード。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載のメタルブレードであって、
前記メタルブレード全体の体積に占める前記気孔の体積の割合が、10〜50vol%である、メタルブレード。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載のメタルブレードであって、
前記メタルブレード全体の重量に占める前記砥粒の重量の割合が、3〜40wt%である、メタルブレード。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載のメタルブレードと、
前記メタルブレードを、前記メタルボンド相の中心軸回りに回転させる主軸と、
前記主軸から前記メタルボンド相の内部に冷却液を供給する冷却液供給手段と、を備える、切断加工装置。 - メタルボンド粉末、砥粒および有機フィラーを混合したブレード素材を、円板状のブレード成形体に成形する成形工程と、
前記ブレード成形体を加熱し前記有機フィラーを気化させることにより、前記ブレード成形体の内部を延びて前記ブレード成形体の外面に開口する複数の気孔を形成する脱脂工程と、
前記ブレード成形体を焼結する焼結工程と、を備える、メタルブレードの製造方法。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022102335A1 (ja) * | 2020-11-10 | 2022-05-19 | 株式会社ノリタケカンパニーリミテド | 多孔質メタルボンド砥石の製造方法および多孔質メタルボンドホイールの製造方法 |
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2017
- 2017-12-12 JP JP2017237937A patent/JP2019104079A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2022102335A1 (ja) * | 2020-11-10 | 2022-05-19 | 株式会社ノリタケカンパニーリミテド | 多孔質メタルボンド砥石の製造方法および多孔質メタルボンドホイールの製造方法 |
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