しかしながら、上記従来の苗移植機では、畝の高さが高い場合を想定して、走行車体の車高を高くすることが可能な構成にしておく必要がある為、クローラ走行装置の前端部に配置された駆動輪の駆動輪軸と、後端部に配置された従動輪の従動輪軸との軸間の距離を十分に確保しておく必要があった。その為、従来のクローラ走行装置の前後幅は一定以上の寸法を確保する必要があり、コンパクトな構成にすることが出来なかった。
本発明は、このような従来の作業車両の課題を考慮して、クローラ走行装置の前後幅をコンパクトな構成にすることが出来る作業車両を提供することを目的とする。
請求項1の発明は、駆動輪(510)と複数の従動輪(520、531、532)とクローラ(540)とを有する左右一対のクローラ走行装置(500、1500、2500)と、前記左右一対のクローラ走行装置に駆動力を伝動する左右一対の走行伝動ケース(60、160)と、を備えた作業車両であって、前記走行伝動ケースは、前記駆動力を入力する入力軸(61)と、前記駆動力を出力する出力軸(62)とを有し、前記走行伝動ケースは、前記入力軸を中心として回動可能であると共に、前記出力軸には、前記クローラ走行装置の前記駆動輪(510)が取り付けられていることを特徴とする作業車両である。
また、請求項2の発明は、前記複数の従動輪(520、531、532)は、従動輪軸(521、531a、532a)を介して装着し、該従動輪軸(521、531a、532a)の内の少なくとも一つの従動輪軸(521)は機体上側に位置し、前記複数の従動輪(520、531、532)の前記従動輪軸(521、531a、532a)の内の他の少なくとも一つの従動輪軸(531a、532a)は下側に位置し、前記クローラ走行装置(500、1500)は、前記走行伝動ケース(60、160)に連結されると共に、前記上側に位置する前記少なくとも一つの従動輪軸(521)を支持する第1フレーム(550、560、1550、1560)と、前記第1フレーム(550、560、1550、1560)に対して揺動自在に連結されると共に、前記下側に位置する前記他の少なくとも一つの従動輪軸(531a、532a)を支持する第2フレーム(570)とを有し、前記第2フレーム(570)に一端側が連結されると共に、前記走行伝動ケース(60、160)側に他端側が連結された揺動リンク部材(580)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両である。
また、請求項3の発明は、前記左右一対の走行伝動ケース(160)の側面から外側に向けて、前記出力軸(62)の前側と後側に前側突き出し部(161)と後側突き出し部(162)が設けられており、前記前側突き出し部(161)と前記後側突き出し部(162)に対する連結位置が左右方向へのスライド移動により変更可能な前側筒状部(1551)と後側筒状部(1552)が前記第1フレーム(560、1550、1560)に設けられており、前記第1フレーム(560、1550、1560)は、前記前側筒状部(1551)と前記前側突き出し部(161)との連結と、前記後側筒状部(1552)と前記後側突き出し部(162)との連結とにより、前記走行伝動ケース(160)に連結されていることを特徴とする請求項2に記載の作業車両である。
また、請求項4の発明は、前記第1フレーム(550、560、1550、1560)は、前記走行伝動ケース(60、160)に固定された走行伝動ケース側フレーム(550、1550)と、前記上側に位置する前記少なくとも一つの従動輪軸(521)を支持する従動輪軸支持フレーム(560、1560)とを有し、前記走行伝動ケース側フレーム(550、1550)と前記従動輪軸支持フレーム(560、1560)は、前記走行伝動ケース側フレーム(550、1550)と前記従動輪軸支持フレーム(560、1560)の何れかに設けられた長穴(561)を介して連結されており、前記車輪(2)と前記クローラ走行装置(500、1500、2500)が水平面に接地した状態で、前記入力軸(61)を中心とした前記走行伝動ケース(60、160)の植付作業中における回動の範囲内においては、側面視で、前記長穴(561)は、前記少なくとも一つの従動輪軸(521)よりも下側に位置し、且つ、前記他の少なくとも一つの従動輪軸(531a、532a)よりも上側に位置することを特徴とする請求項2または3に記載の作業車両である。
また、請求項5の発明は、前記下側に位置する前記他の少なくとも一つの従動輪軸(531a、532a)は、二つの揺動従動輪軸(531a、532a)で構成されており、前記二つの揺動従動輪軸(531a、532a)の内の一方の揺動従動輪軸(531a)は、前記第2フレーム(570)の前端側において支持されており、且つ、他方の揺動従動輪軸(532a)は、前記第2フレーム(570)の後端側において支持されており、前記車輪(2)と前記クローラ走行装置(500、1500)が水平面に接地した状態で、前記入力軸(61)を中心とした前記走行伝動ケース(60、160)の植付作業中における回動の範囲内においては、側面視で、前記二つの揺動従動輪軸(531a、532a)の前後方向における中間位置よりも前側に前記上側に位置する前記少なくとも一つの従動輪軸(521)が配置されていることを特徴とする請求項2または3に記載の作業車両である。
本発明に関連する第1の関連発明は、駆動輪(510)と複数の従動輪(520、531、532)とクローラ(540)とを有する左右一対のクローラ走行装置(500、1500、2500)と、前記左右一対のクローラ走行装置に駆動力を伝動する左右一対の走行伝動ケース(60、160)と、を備えた作業車両であって、前記走行伝動ケースは、前記駆動力を入力する入力軸(61)と、前記駆動力を出力する出力軸(62)とを有し、前記走行伝動ケースは、前記入力軸を中心として回動可能であると共に、前記出力軸には、前記クローラ走行装置の前記駆動輪(510)が取り付けられている、ことを特徴とする作業車両である。
また、本発明に関連する第2の関連発明は、前記クローラ走行装置とは別に車輪(2)を有し、前記車輪(2)と前記クローラ走行装置(500、1500、2500)が水平面に接地した状態で、前記入力軸(61)を中心とした前記走行伝動ケース(60、160)の植付作業中における回動の範囲内においては、側面視で、前記複数の従動輪(520、531、532)の従動輪軸(521、531a、532a)の内の少なくとも一つの従動輪軸(521)は前記出力軸(62)よりも上側に位置し、且つ、前記複数の従動輪(520、531、532)の前記従動輪軸(521、531a、532a)の内の他の少なくとも一つの従動輪軸(531a、532a)は前記出力軸(62)よりも下側に位置する、ことを特徴とする上記第1の関連発明の作業車両である。
また、本発明に関連する第3の関連発明は、前記左右一対の走行伝動ケース(60、160)が有する左右一対の前記出力軸(62)の回動を制動する左右一対の制動装置(511)を備えた、ことを特徴とする上記第2の関連発明の作業車両である。
また、本発明に関連する第4の関連発明は、前記クローラ走行装置(500、1500)は、前記走行伝動ケース(60、160)に連結されると共に、前記上側に位置する前記少なくとも一つの従動輪軸(521)を支持する第1フレーム(550、560、1550、1560)と、前記第1フレーム(550、560、1550、1560)に対して揺動自在に連結されると共に、前記下側に位置する前記他の少なくとも一つの従動輪軸(531a、532a)を支持する第2フレーム(570)とを有し、前記第2フレーム(570)に一端側が連結されると共に、前記走行車体側に他端側が連結された揺動リンク部材(580)を備えた、ことを特徴とする上記第2又は第3の関連発明の作業車両である。
また、本発明に関連する第5の関連発明は、前記左右一対の走行伝動ケース(160)の側面から外側に向けて、前記出力軸(62)の前側と後側に前側突き出し部(161)と後側突き出し部(162)が設けられており、前記前側突き出し部(161)と前記後側突き出し部(162)に対する連結位置が左右方向へのスライド移動により変更可能な前側筒状部(1551)と後側筒状部(1552)が前記第1フレーム(560、1550、1560)に設けられており、前記第1フレーム(560、1550、1560)は、前記前側筒状部(1551)と前記前側突き出し部(161)との連結と、前記後側筒状部(1552)と前記後側突き出し部(162)との連結とにより、前記走行伝動ケース(160)に連結されている、ことを特徴とする上記第4の関連発明の作業車両である。
また、本発明に関連する第6の関連発明は、前記第1フレーム(550、560、1550、1560)は、前記走行伝動ケース(60、160)に固定された走行伝動ケース側フレーム(550、1550)と、前記上側に位置する前記少なくとも一つの従動輪軸(521)を支持する従動輪軸支持フレーム(560、1560)とを有し、前記走行伝動ケース側フレーム(550、1550)と前記従動輪軸支持フレーム(560、1560)は、前記走行伝動ケース側フレーム(550、1550)と前記従動輪軸支持フレーム(560、1560)の何れかに設けられた長穴(561)を介して連結されており、前記車輪(2)と前記クローラ走行装置(500、1500、2500)が水平面に接地した状態で、前記入力軸(61)を中心とした前記走行伝動ケース(60、160)の植付作業中における回動の範囲内においては、側面視で、前記長穴(561)は、前記少なくとも一つの従動輪軸(521)よりも下側に位置し、且つ、前記他の少なくとも一つの従動輪軸(531a、532a)よりも上側に位置する、ことを特徴とする上記第4又は第5の関連発明の作業車両である。
また、本発明に関連する第7の関連発明は、前記下側に位置する前記他の少なくとも一つの従動輪軸(531a、532a)は、二つの揺動従動輪軸(531a、532a)で構成されており、前記二つの揺動従動輪軸(531a、532a)の内の一方の揺動従動輪軸(531a)は、前記第2フレーム(570)の前端側において支持されており、且つ、他方の揺動従動輪軸(532a)は、前記第2フレーム(570)の後端側において支持されており、前記車輪(2)と前記クローラ走行装置(500、1500)が水平面に接地した状態で、前記入力軸(61)を中心とした前記走行伝動ケース(60、160)の植付作業中における回動の範囲内においては、側面視で、前記二つの揺動従動輪軸(531a、532a)の前後方向における中間位置よりも前側に前記上側に位置する前記少なくとも一つの従動輪軸(521)が配置されている、ことを特徴とする上記第4又は第5の関連発明の作業車両である。
また、本発明に関連する第8の関連発明は、前記クローラ走行装置(2500)は、前記走行伝動ケース(60、160)に連結されると共に、前記上側に位置する前記少なくとも一つの従動輪軸(521)を支持する第1フレーム(550、1550、1560)と、前記第1フレーム(550、1550、1560)に対して揺動自在に連結されると共に、前記下側に位置する前記他の少なくとも一つの従動輪軸(531a、532a)を支持する第2フレーム(1570)と、前記第2フレーム(1570)が揺動できる範囲を規制する規制部材(1561)とを有し、前記第2フレーム(1570)が揺動できる範囲は変更可能である、ことを特徴とする上記第2又は第3の関連発明の作業車両である。
また、本発明に関連する第9の関連発明は、前記第2フレーム(1570)は板状部材であり、且つ、前記第1フレーム(550、1550、1560)と側面視で一部が重なっており、前記第2フレーム(1570)の縁部には、前記第2フレームの揺動支点(571)から臨む角度が異なる位置にそれぞれ段差部(1571b、1571c)が設けられており、前記規制部材(1561)は、前記第1フレーム(550、1550、1560)に対して、装着位置が変更可能に設けられており、前記臨む角度が異なる位置に設けられた前記段差部(1571b、1571c)と前記規制部材(1561)の前記装着位置がそれぞれ対応しており、前記第2フレーム(1570)が前記揺動支点(571)を中心に揺動する際、前記規制部材(1561)の前記装着位置に対応して、前記揺動できる範囲が規制される、ことを特徴とする上記第8の関連発明の作業車両である。
また、本発明に関連する第10の関連発明は、前記走行伝動ケース(60、160)の排油口(92)が、前記走行伝動ケース(60、160)の前記入力軸(61)を中心とした回動で上下動する位置に設けられている、ことを特徴とする上記第1乃至第9の何れか一つの関連発明の作業車両である。
請求項1の発明によって、入力軸(61)と出力軸(62)を個別に設けて、出力軸(62)に駆動輪(510)を取り付けたことにより、駆動輪(510)と従動輪(532)との距離を短く出来、クローラ走行装置(500、1500、2500)の前後幅(W)を短くすることが出来る。
また、請求項2の発明によって、請求項1の発明の効果に加えて、複数の従動輪(520、531、532)を干渉させることなく、前後幅を押さえてコンパクトにクローラを構成出来る。
また、走行伝動ケース(60、160)を上下に回動させても、第2フレーム(570)に対して従動輪軸(531a、532a)により連結された従動輪(531、532)は所望の姿勢に維持出来る。
また、請求項3の発明によって、請求項2の発明の効果に加えて、クローラ(540)の左右の位置調節が行える。また、左右位置調節を行っても、出力軸(62)からクローラ(540)への伝動を的確に行える。
また、請求項4の発明によって、請求項2または3の発明の効果に加えて、クローラ走行装置(500、1500、2500)をコンパクトに構成出来る。
また、請求項5の発明によって、請求項2または3の発明の効果に加えて、クローラ走行装置(500、1500)をコンパクトに構成出来、クローラ走行装置(500、1500)の上下動で他の部材に干渉しないように出来る。
また、第1の関連発明によって、入力軸(61)と出力軸(62)を個別に設けて、出力軸(62)に駆動輪(510)を取り付けたことにより、駆動輪(510)と従動輪(532)との距離を短く出来、クローラ走行装置(500、1500、2500)の前後幅(W)を短くすることが出来る。
また、第2の関連発明によって、複数の従動輪(520、531、532)を干渉させることなく、前後幅を押さえてコンパクトにクローラを構成出来る。
また、第3の関連発明によって、左右一対のクローラ走行装置(500、1500、2500)の何れか一方を的確に制動出来、機体の小回り旋回が行える。
また、第4の関連発明によって、走行伝動ケース(60、160)を上下に回動させても、第2フレーム(570)に対して従動輪軸(531a、532a)により連結された従動輪(531、532)は所望の姿勢に維持出来る。
また、第5の関連発明によって、クローラ(540)の左右の位置調節が行える。また、左右位置調節を行っても、出力軸(62)からクローラ(540)への伝動を的確に行える。
また、第6の関連発明によって、クローラ走行装置(500、1500、2500)をコンパクトに構成出来る。
また、第7の関連発明によって、クローラ走行装置(500、1500)をコンパクトに構成出来、クローラ走行装置(500、1500)の上下動で他の部材に干渉しないように出来る。
また、第8の関連発明によって、クローラ平面を接地させた形態で機体旋回させるか、それともクローラ曲面を接地させた形態で機体旋回させるかの何れで旋回させるかを、予め切替出来る。
また、第9の関連発明によって、規制部材(1561)の装着位置を変更するだけで、クローラ平面を接地させた形態で機体旋回させるか、それともクローラ曲面を接地させた形態で機体旋回させるかの何れで旋回させるかを、容易に切替出来る。
また、第10の関連発明によって、排油口(92)を、潤滑油の液面確認用孔(検油口)として兼用出来る。
以下、本発明の作業車両の一実施の形態の苗移植機について説明する。
(実施の形態)
本実施の形態1では、本発明の作業車両の一実施の形態の苗移植機について、図面を用いて説明する。
図1に、本実施の形態の苗移植機1の概略の左側面図を示し、図2に概略の平面図を示す。
野菜などの苗を移植する苗移植機1は、図1、図2に示すように、左右一対の従動前輪2および左右一対のクローラ走行装置500を備えた走行車体15と、走行車体15の前部に配置されたエンジン12およびミッションケース(主伝動ケースとも呼ぶ)4と、走行車体15の後部に配置された、取出装置200により供給されてくる苗(図示省略)を圃場に植え付けるべく植付具301を上下揺動させる苗植付装置300と、その苗を収容する為の育苗ポット(図示省略)を縦方向と横方向とに多数形成したトレイ(図示省略)を供給するトレイ供給装置100と、そのトレイ供給装置100に配置されたトレイの育苗ポットの内部に取出部材260を突入させて苗を取りだして植付具301へ供給する取出装置200と、苗の植付深さを一定に保つためのセンサ板71を含む植付深さ調整機構(図示省略)と、鎮圧輪13、操縦ハンドル8、及び操縦ハンドル8の中央部に配置された操作部72等を備えて構成されている。
クローラ走行装置500については、図3を用いて更に後述する。
また、図1、図2に示す通り、エンジン12から出力される回転動力は、ミッションケース4により分岐され、左右一対の走行伝動ケース60に設けられた入力軸61(入力軸61は、後述するミッション出力軸4aと例えばスプライン結合により連結されている)と出力軸62を介して左右一対のクローラ走行装置500の駆動輪510に伝動されるとともに、ミッションケース4の後側に設けられた植付伝動装置18にも伝動される構成である。
即ち、本実施の形態の苗移植機1では、エンジン12からの回転動力は、ミッション出力軸4aから走行伝動ケース60の入力軸61に入力されて、所定の減速比により減速されて出力軸62に伝達される。出力軸62の先端側にはクローラ走行装置500の駆動輪510が取り付けられている。
また、本実施の形態の苗移植機1では、育苗ポットから苗を取り出して圃場の畝Uに植付けるべく、ミッションケース4からの動力が植付伝動装置18に伝動されて、チェーンベルト202を介して取出装置200に伝動されるとともに、その植付伝動装置18に取り付けられた苗植付装置駆動機構400と、苗植付装置300を介して植付具301に伝達される。尚、苗植付装置駆動機構400は、苗移植機1の植付動作を間欠的に行う為の機構である。
また、図1、図2に示す通り、ミッションケース4の後端の左右方向に配置された左右フレーム16の後部には、右寄りの位置に延びる主フレーム17を設けている。該主フレーム17の後端部には左右端側から後方に延びた操縦ハンドル8を設け、この操縦ハンドル8が主フレーム17および左右フレーム16を介してミッションケース4に支持された構成となっている。
これにより、作業者は、走行車体15の後方を歩きながら操縦ハンドル8で走行車体15の操向操作を行うことが出来る。
即ち、本実施の形態の苗移植機1は、左右一対の従動前輪2、2及び左右一対のクローラ走行装置500によって畝U(図1参照)を跨いだ状態で走行車体15を走行させながら、トレイの育苗ポットに収容されている苗を、軌跡T1において上死点近傍に移動してきた植付具301に供給し、軌跡T1の下死点の手前で当該植付具301の下端部が畝Uの上面に突入して苗を放出することにより、畝Uの上面に苗を自動的に植え付けることが出来る構成である。
また、図1、図2に示す通り、本実施の形態の苗移植機1には、走行車体15に配置されたミッションケース4に対して、左右一対の走行伝動ケース60を、入力軸61を中心として時計回り又は反時計回りに回動させることにより、左右一対の走行伝動ケース60に連結されている左右一対のクローラ走行装置500を上下動させて、走行車体15の姿勢及び車高を制御する機体制御機構50が設けられている。
機体制御機構50には、図1、図2に示す通り、走行伝動ケース60の入力軸61を中心とした回動による左右一対のクローラ走行装置500の上げ下げによって走行車体15を昇降させるための油圧昇降シリンダ10と、圃場面の凹凸に対して走行車体15を水平に保つための水平用油圧シリンダ14とが設けられている。
また、左右一対の走行伝動ケース60とミッションケース4との間において、ミッションケース4の左右側面から突出して形成された左右回動内筒部4b内には、ミッション出力軸4aがミッションケース4の左右外側に向けて突出して設けられている。
一方、左右一対の走行伝動ケース60とミッションケース4との間において、左右一対の走行伝動ケース60の側面には、ミッションケース4の左右回動内筒部4bの外周面を取り囲む様に嵌め込まれ、ミッション出力軸4aとスプライン結合により連結された走行伝動ケース60の入力軸61を中心として回動可能となる様に構成された回動外筒部63が固定されている。そして、左右の回動外筒部63の外周の上面側には、入力軸61と直交方向に延びたスイングアーム63aがそれぞれ固着されている(図4参照)。
また、油圧昇降シリンダ10のピストンロッドの先端部にはロッド連結板9が取り付けられており、ロッド連結板9の左右両端部と、左右のスイングアーム63aとが、連結ロッド11を介して連結されている。
また、左側の連結ロッド11とスイングアーム63aの間には、水平用油圧シリンダ14が組み込まれている。
そして、当該油圧昇降シリンダ10を伸縮作動させると、左右一対の走行伝動ケース60が入力軸61を中心として同方向に同量だけ回動し、それに連動して、左右一対のクローラ走行装置500が同方向に同量だけ走行車体15に対し上下動し、走行車体15が昇降する。
また、油圧昇降シリンダ10は、ミッションケース4の上部に取り付けられた油圧切替バルブ部40(図1参照)に固着して設けられ、ミッションケース4に取り付けられた油圧ポンプからの油圧を切り替える油圧切替バルブ部40に備えられた昇降制御バルブ(図示省略)を操作することにより作動する構成である。
尚、昇降制御バルブには、昇降操作レバー81(図1、図2参照)がケーブル(図示省略)を介して連結されるとともに、センサ板71(図1参照)の上下動が伝達される構成である。
即ち、昇降操作レバー81は、「下げ」、「中立」、「上げ」の3段階に手動切り替え可能に構成されており、「下げ」位置に切り替えると、油圧昇降シリンダ10が走行車体15を下降させるべく作動し、センサ板71が畝Uの上面を検知することにより下降が停止されると共に、植付入り切りボタン(図示省略)がON状態であれば、植付クラッチ(図示省略)が「入」状態となり、植付作業が開始される。
また、植付作業中においてセンサ板71が上下動すると、その動きが昇降制御バルブに伝達されて、センサ板71の角度が元に戻る方向に油圧昇降シリンダ10を作動させる構成である。
これにより、畝Uの上面から走行車体15までの高さを一定に維持する様に車体を昇降制御し、畝Uの高さの変化に影響を受けることなく常に苗の植え付け深さを一定に保つことが出来、苗の成育が良好となる。
また、昇降操作レバー81を「中立」位置に切り替えると、植付作業を停止させ、「上げ」位置に切り替えると、油圧昇降シリンダ10が走行車体15を上昇させるべく作動する。
また、ミッションケース4の右側には振り子式の左右傾斜センサ41が設けられており、この左右傾斜センサ41の検出により油圧切替バルブ部40に備えられた水平操作バルブ(図示省略)を介して水平用油圧シリンダ14を作動させ、左側のクローラ走行装置500のみを上下動させて、畝Uの谷部の凹凸に関係なく走行車体15を左右水平に維持すべく構成されている。
次に、本実施の形態の苗移植機1のクローラ走行装置500について、図3を用いて説明する。
図3は、本実施の形態の苗移植機1の植付作業中における、左側のクローラ走行装置500と、左側の走行伝動ケース60と、左側の従動前輪2とを示す概略側面図である。
本実施の形態の苗移植機1の右側のクローラ走行装置500と右側の走行伝動ケース60と右側の従動前輪2は、左側のクローラ走行装置500と左側の走行伝動ケース60と左側の従動前輪2と、それぞれ同じ構成であるので、その説明を省略する。
走行伝動ケース60は、上述した通り、入力軸61を回動中心として回動可能に構成されており、エンジン12からの回転駆動力が入力軸61に入力されて、所定の減速比により減速されて出力軸62に伝達される構成である。
出力軸62は、走行伝動ケース60から外側に向けて突き出しており、その先端側には、クローラ走行装置500の駆動輪510が取り付けられている。
クローラ走行装置500は、図3に示す通り、駆動輪510と、従動転輪520と、第1遊転輪531及び第2遊転輪532と、これら駆動輪510と従動転輪520と第1遊転輪531と第2遊転輪532の外側縁部に巻き掛けられた、外周面に複数の突起が一体形成された合成ゴム製のクローラ540とを有している。
また、駆動輪510には、スプロケットブレーキ511が設けられており、左右の操作ハンドル8にそれぞれ設けられたサイドクラッチレバー82の操作に連動して、駆動輪510との摩擦力を利用して駆動輪510を停止させる構成である。
尚、右側の操作ハンドル8に設けられたサイドクラッチレバー82には、右側の走行伝動ケース60の入力軸61への駆動力の入切を行う為のサイドクラッチケーブル(図示省略)と、右側の走行伝動ケース60の出力軸62に取り付けられた駆動輪510に設けられたスプロケットブレーキ511の入切を行う為のスプロケットブレーキ用ケーブル(図示省略)とが、連結されている。
左側の操作ハンドル8に設けられたサイドクラッチレバー82についても、上記と同様の構成である。
これにより、左右の何れか一方のサイドクラッチレバー82を操作することで、操作した側の駆動輪510への駆動力の伝達が「切」状態になると共に、駆動輪の惰性による回動が制動される為、操作した側のクローラ540を的確に制動出来て、走行車体15の小回り旋回が実現出来る。
ここで、本実施の形態のスプロケットブレーキ511は、本発明の制動装置の一例にあたる。
また、クローラ走行装置500は、図3に示す通り、従動転輪520を走行伝動ケース60に対して前後方向にスライド移動可能に固定する為の走行伝動ケース側支持プレート550及び従動転輪支持プレート560と、従動転輪支持プレート560に対し支持ピン571を介して揺動自在に連結されると共に第1遊転輪531及び第2遊転輪532を支持する遊転輪支持プレート570とを有している。
また、走行伝動ケース側支持プレート550の前端部は走行伝動ケース60の後端部に直接固定されており、中央部及び後端部において貫通孔(図示省略)が2つ設けられている。
これに対して、従動転輪支持プレート560の前端側には、上述した走行伝動ケース側支持プレート550に設けられた2つの貫通孔に対応した2つの長穴561が設けられており、当該長穴561側から上記貫通孔に挿入されたボルト562にナット(図示省略)を締め付けることにより、走行伝動ケース側支持プレート550に対して従動転輪支持プレート560が、長穴561の前後の幅の範囲内において前後方向にスライド移動可能に固定される構成である。
また、本実施の形態の苗移植機1では、従動前輪2とクローラ走行装置500のクローラ接地面540aが水平面に接地した状態で、入力軸61を中心とした走行伝動ケース60の植付作業中における回動の範囲内においては、側面視で、2つの長穴561は、従動転輪520の従動転輪軸521よりも下側に位置し、且つ、第1遊転輪531の第1遊転輪軸531a及び第2遊転輪532の第2遊転輪軸532aよりも上側に位置する(図3参照)。
これにより、クローラ540の張圧の調節が容易に行える。
また、遊転輪支持プレート570に後端部581が回動自在に連結されると共に、走行車体15の下端部15aに前端部582が回動自在に連結された揺動リンクロッド580が、側面視で走行伝動ケース60の下方に配置されている。
ここで、本実施の形態の揺動リンクロッド580は、本発明の揺動リンク部材の一例にあたる。
また、当該揺動リンクロッド580は、第1遊転輪531と第2遊転輪532がクローラ540のクローラ接地面540aを介して水平面に接地している状態において、側面視で入力軸61と支持ピン571とを結ぶ仮想線583に対して平行になる様に配置されている。
この揺動リンクロッド580を設けたことにより、走行伝動ケース60が入力軸61を中心として、矢印A(図3参照)で示す通り時計回り又は反時計回りに回動した場合でも、第1遊転輪531及び第2遊転輪532が水平状態を維持するので、クローラ接地面540aは常に水平状態を維持出来る。
また、上記構成により、昇降操作レバー81の切り替え操作や、植付作業中におけるセンサ板71の上下動に応じて、油圧昇降シリンダ10が伸縮し、走行伝動ケース60が入力軸61を回動中心として反時計回りに回動すると、クローラ走行装置500は、クローラ接地面540aを水平状態に保持したまま上方に向けて移動するので車高は低くなる。
一方、走行伝動ケース60が入力軸61を回動中心として時計回りに回動すると、クローラ走行装置500は、クローラ接地面540aを水平状態に保持したまま下方に向けて移動するので車高は高くなる。
尚、エンジン4の下方に設けられた従動前輪支持ステー210の左右両端部に左右従動前輪支持ロッド211が高さ調節可能に取り付けられ、左右従動前輪支持ロッド211の下端部に各々従動前輪2が回動自在に取り付けられている。
また、本実施の形態の苗移植機1では、従動前輪2とクローラ接地面540aが水平面に接地した状態で、入力軸61を中心とした走行伝動ケース60の植付作業中における回動の範囲内においては、側面視で、従動転輪520の従動転輪軸521は、出力軸62よりも上側に位置し、且つ、第1遊転輪軸531aと第2遊転輪軸532aは、出力軸62よりも下側に位置する(図3参照)。
また、本実施の形態の苗移植機1では、従動前輪2とクローラ接地面540aが水平面に接地した状態で、側面視で入力軸61よりも出力軸62が高位となる構成である。
これにより、走行伝動ケース60の入力軸61と、クローラ接地面540aとの高低差が小さくなるので、植付作業中における走行伝動ケース60の矢印A方向への回動でクローラ走行装置500が上下動することによるクローラ接地部540aの前後移動を抑えることが出来る。
また、走行伝動ケース60において入力軸61と出力軸62を個別に設けて、出力軸62に駆動輪510を取り付けたことにより、駆動輪510と後部の第2遊転輪532との距離を短く出来、クローラ走行装置500の前後幅Wを短くすることが出来る。
また、本実施の形態の苗移植機1では、従動前輪2とクローラ接地面540aが水平面に接地した状態で、入力軸61を中心とした走行伝動ケース60の植付作業中における回動の範囲内においては、側面視で、第1遊転輪軸531aと第2遊転輪軸532aの前後方向における中間位置よりも前側に従動輪軸521が配置されている(図3参照)。
これにより、クローラ走行装置500をコンパクトに構成出来、クローラ走行装置500の上下動で他の部材(例えば、苗タンク)に干渉しないように出来る。
尚、本実施の形態の従動転輪軸521は、本発明の少なくとも一つの従動輪軸の一例にあたる。また、本実施の形態の第1遊転輪軸531aと第2遊転輪軸532aは、本発明の他の少なくとも一つの従動輪軸の一例にあたる。
また、本実施の形態の走行伝動ケース側支持プレート550と従動転輪支持プレート560とを含む構成は、本発明の第1フレームの一例にあたり、走行伝動ケース側支持プレート550が本発明の走行伝動ケース側フレームの一例にあたり、従動転輪支持プレート560が本発明の従動輪軸支持フレーム560の一例にあたる。
また、本実施の形態の遊転輪支持プレート570は、本発明の第2フレームの一例にあたる。
尚、上記実施の形態では、従動転輪520を走行伝動ケース60に対して前後方向にスライド移動可能に固定する構成について説明したが、この構成に加えて、図4に示す通り、第2クローラ走行装置1500を第2走行伝動ケース160に対して左右方向にスライド移動可能な構成としても良い。図4は、左側の第2クローラ走行装置1500を左側の第2走行伝動ケース160に対して左右方向にスライド移動可能な構成とした場合の連結部の概略斜視図である。ここで、上記実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。また、右側の第2クローラ走行装置(図示省略)は、左側の第2クローラ走行装置1500と同じ構成であるので、その説明を省略する。
図4に示す構成例では、第2走行伝動ケース160の側面の前後方向における中央位置から外側に向けて出力軸62が突き出しており、当該出力軸62の前側に配置された入力軸61と同軸の位置において第2走行伝動ケース160の側面から外側に向けて前側スライド軸161が出力軸62と平行に突き出して溶接固定されていると共に、当該出力軸62の後側において第2走行伝動ケース160の側面から外側に向けて後側スライド軸162が出力軸62と平行に突き出して溶接固定されている。ここで、本実施の形態の前側スライド軸161は、本発明の前側突き出し部の一例にあたり、本実施の形態の後側スライド軸162は、本発明の後側突き出し部の一例にあたる。
一方、第2クローラ走行装置1500には、上記実施の形態の走行伝動ケース60の後端部に直接固定された走行伝動ケース側支持プレート550に代えて、第2走行伝動ケース160に対して、前側スライド軸161及び後側スライド軸162を介してスライド移動可能に連結する為の前側パイプ部材1551及び後側パイプ部材1552と、出力軸62を貫通させる為の中央パイプ部材1553とが互いに固定板1554で連結固定された第2走行伝動ケース側支持プレート1550が設けられている。第2走行伝動ケース側支持プレート1550に、従動転輪支持プレート560に設けられた2つの長穴561に対応した2つの貫通孔(図示省略)が設けられている点は、上記実施の形態の走行伝動ケース側支持プレート550と同じである。ここで、本実施の形態の前側パイプ部材1551は、本発明の前側筒状部の一例にあたり、本実施の形態の後側パイプ部材1552は、本発明の後側筒状部の一例にあたる。
図4に示す構成により、作業者が、苗移植機1の左側の第2クローラ走行装置1500及び右側の第2クローラ走行装置(図示省略)のトレッド調節を行う場合、前側パイプ部材1551及び後側パイプ部材1552と、前側スライド軸161及び後側スライド軸162とを互いに嵌合挿入しスライド移動して所望の位置に位置決めした後、ボルト1555で固定する。そして、中央パイプ部材1553の外側の開口部1553aから突き出している出力軸62に駆動輪510をボルト(図示省略)で固定する。これにより、クローラ540の左右方向の位置調節が行える。また、左右方向の位置調節を行っても、出力軸62からクローラ540への駆動力の伝動を的確に行える。尚、左右の従動前輪2についても、トレッド調節を適宜行う。
また、図4に示す構成では、第2走行伝動ケース160の上端面には潤滑油を給油するための給油口90が設けられており、当該給油口90には給油キャップ91が着脱自在に設けられている。更に、第2走行伝動ケース160の前側の端面であって、通常の植付作業における第2走行伝動ケース160の回動範囲において上下動する位置に、潤滑油を排出するための排油口92が設けられており、当該排油口92には排油キャップ93が着脱自在に設けられている。これにより、排油口92は、通常作業の姿勢(通常の植付作業における第2走行伝動ケース160の回動範囲)において、潤滑油の油面が排油口92まで満たされているか否か、即ち、油面が適正状態にあるか否かを確認するための油面確認用孔(検油口)として兼用出来る。尚、第2走行伝動ケース160内の潤滑油を排油口92から排出する際は、第2走行伝動ケース160を回動範囲において最上動位置(走行車体15を最も下降させた状態)にし、第2走行伝動ケース160において排油口92を下位にして行う。尚、必要に応じて、連結ロッド11と第2走行伝動ケース160(スイングアーム63a)との連結を外し、作業者が第2走行伝動ケース160を持ち上げる等して第2走行伝動ケース160の最下部に排油口92が位置するようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、遊転輪支持プレート570が、揺動リンクロッド580により走行車体15の下端部15aに連結された構成について説明したが、これに限らず例えば、図5に示す通り、第2遊転輪支持プレート1570の可動域(即ち、揺動できる範囲)を調節出来る構成であっても良い。図5は、第2遊転輪支持プレート1570の可動域を調節出来る左側の第3クローラ走行装置2500の構成を示す概略側面図である。ここで、上記実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。また、
右側の第3クローラ走行装置(図示省略)は、左側の第3クローラ走行装置2500と同じ構成であるので、その説明を省略する。
即ち、図5に示す通り、第2従動転輪支持プレート1560の下端側は、上端側に略扇形の切り欠き部1571を有する第2遊転輪支持プレート1570の当該略扇形の切り欠き部1571を覆うと共に、支持ピン571を介して第2遊転輪支持プレート1570を揺動自在に連結している。
第2従動転輪支持プレート1560の下端側が、第2遊転輪支持プレート1570の略扇形の切り欠き部1571を側面から覆う構成としたことにより、当該切り欠き部1571への挟み込みを防止出来る。
また、略扇形の切り欠き部1571の前側の縁部1571aは、側面視で、支持ピン571の中心点から延びる仮想直線571a上に沿って形成されており、略扇形の切り欠き部1571の後側の縁部は、仮想直線571aを基準として、支持ピン571の中心点から臨む角度θa、θbが異なる位置に第1段差部1571bと第2段差部1571cがそれぞれ形成されている。ここで、θa>θbである。また、第2従動転輪支持プレート1560には、第2遊転輪支持プレート1570の可動域を調節する為の規制ピン1561が着脱可能な第1穴1562aと第2穴1562bが、支持ピン571からの距離が異なる位置であって、昇降操作レバー81を操作して車高が最も低くなるまで走行車体15を下降させた状態において、側面視で略扇形の切り欠き部1571の前側の縁部1571aに沿った位置にそれぞれ設けられている。尚、第1穴1562aと第2穴1562bは、支持ピン571の中心点から延びる直線上に配置されていれば、前記前側の縁部1571aよりも前側に離れた位置であってもよい。規制ピン1561を第1穴1562aに装着した場合、第2遊転輪支持プレート1570の可動域はθaの範囲であり、規制ピン1561を第2穴1562bに装着した場合、第2遊転輪支持プレート1570の可動域はθbの範囲である。
ここで、図5で説明した第2従動転輪支持プレート1560は、本発明の第1フレームの一例にあたり、第2遊転輪支持プレート1570は、本発明の第2フレームの一例にあたる。また、図5で説明した支持ピン571は、本発明の揺動支点の一例にあたり、規制ピン1561は、本発明の規制部材の一例にあたる。
図5に示す構成において、苗移植機1を旋回させる場合の動作について、図6、図7を用いて説明する。
図6は、苗移植機1を一輪旋回させる為に、走行車体15が上昇途中における第3クローラ走行装置2500の状態を示す概略側面図であり、図7は、走行車体15が完全に上昇して第3クローラ走行装置2500が一輪旋回可能な状態になっていることを示す概略側面図である。
ここでは、作業者が、苗移植機1を一輪旋回させることを想定して、植付作業を開始する前に、規制ピン1561を予め第2穴1562bに装着した場合について説明する。
尚、本実施の形態では、旋回動作は、植付作業中の動作には含まないものとする。
苗移植機1を旋回させる時には、通常の植付作業を一旦停止させる。そして、作業者は、操作ハンドル8を持ちながら、昇降操作レバー81を「上げ」位置に切り替えることで、油圧昇降シリンダ10の作動に伴って、図6に示す側面視で、走行伝動ケース60が入力軸61を回動中心として時計回りに回動を開始する。そして、図6に示す通り、第1遊転輪531と第2遊転輪532とがクローラ540を接地させたまま走行伝動ケース60が時計回りに回動を続け、作業者が操作ハンドル8を押し下げると、従動前輪2が、その接地状態を解かれて走行伝動ケース60と共に上昇し始める。
そして、作業者が操作ハンドル8を押し下げることにより、従動前輪2と走行伝動ケース60とがさらに角度θαの位置まで上昇すると、規制ピン1561の側面が第2遊転輪支持プレート1570の第1段差部1571bに当たり(図6参照)、第2遊転輪支持プレート1570の遊びが無くなる。そうすると、第2遊転輪支持プレート1570は第2従動転輪支持プレート1560と一体となって、作業者の操作ハンドル8を押し下げる動作に連動して、第1遊転輪531が上昇する方向に回動を開始し、第2遊転輪532のみがクローラ540を接地させた状態を維持したまま、走行伝動ケース60が角度θβの位置まで上昇する(図7参照)。ここで、θα<θβである。
これにより、苗移植機1は、クローラ曲面で接地した状態での旋回、即ち第2遊転輪532のみの一輪旋回が可能となり、圃場の土の横押し量も少なく出来て、安定した小回り旋回が行える。
次に、作業者が、苗移植機1をクローラ平面を接地させて旋回させることを想定して、植付作業を開始する前に、規制ピン1561を予め第1穴1562aに装着した場合について、図7を参照しながら説明する。
この場合、作業者の操作ハンドル8を押し下げる動作により、走行伝動ケース60が角度θβまで上昇した状態(図7参照)では、第1穴1562aに装着された規制ピン1561の側面は、第2遊転輪支持プレート1570の第2段差部1571cに当たらないので(図7参照)、第2遊転輪支持プレート1570の遊びがまだ残っており、第1遊転輪531と第2遊転輪532とがクローラ540を接地させた状態となる。
これにより、作業者は苗移植機1をクローラ540の平面を接地させて旋回させることが出来る。
上記構成により、作業者が予め規制ピン1561の装着位置を選択することで、クローラ平面を接地させた形態で機体旋回させるか、それともクローラ曲面を接地させた形態で機体旋回(一輪旋回)させるかの何れで旋回させるかを、予め選択出来る。
尚、上記実施の形態では、本発明の少なくとも一つの従動輪軸の一例として、従動転輪軸521を一つ備えた場合について説明したが、これに限らず例えば、従動輪軸を二つ又はそれ以上設けることにより、従動輪を二つ又はそれ以上設けた構成であっても良い。
また、上記実施の形態では、本発明の他の少なくとも一つの従動輪軸の一例として、第1遊転輪軸531aと第2遊転輪軸532aを備えた場合について説明したが、これに限らず例えば、遊転輪軸を三つ又はそれ以上設けることにより、遊転輪を三つ又はそれ以上設けた構成であっても良い。
また、上記実施の形態では、走行伝動ケース側支持プレート550に対して従動転輪支持プレート560が長穴561を介して連結固定され、更に従動転輪支持プレート560に対して遊転輪支持プレート570が支持ピン571を介して回動自在に連結された構成について説明したが、これに限らず例えば、走行伝動ケースが後方に長く伸びた形状を成しており、その走行伝動ケースの後端部に設けられた出力軸にクローラ走行装置の駆動輪が取り付けられていると共に、その出力軸を中心として回動自在に連結された別の遊転輪支持プレートにより複数の遊転輪が支持され、これら駆動輪と複数の遊転輪との外側にクローラが巻き掛けられており、且つ、別の揺動リンクロッドが上記の構成例と同様に設けられている構成であっても良い。
また、上記実施の形態では、走行伝動ケース60が入力軸61を中心として、矢印A(図3参照)で示す通り時計回り又は反時計回りに回動した場合でも、クローラ接地面540aが常に水平状態を維持するべく揺動リンクロッド580を設けた構成について説明したが、これに限らず例えば、水平状態に限らず所望の姿勢を維持するべく揺動リンクロッドを設けた構成であっても良い。
また、上記実施の形態では、揺動リンクロッド580(図3参照)を設けた構成について説明したが、これに限らず例えば、揺動リンクロッドを設けずに、遊転輪支持プレート570(図3参照)の回動範囲を制限するためのストッパーピンを、従動転輪支持プレート560の表面であって、遊転輪支持プレート570の支持ピン571の前側と後側にそれぞれ立設させた構成であっても良い。
また、上記実施の形態では、駆動輪510にスプロケットブレーキ511が設けられて場合について説明したが、これに限らず例えば、スプロケットブレーキ511が設けられていない構成であっても良い。
また、上記実施の形態では、移植物として、野菜などの苗について説明したが、野菜に限らず、取出装置で取り出して植付具で圃場に植え付ける移植物であればどの様なものであっても良い。
また、上記実施の形態では、作業車両の一例として苗移植機を例に挙げて説明したが、これに限らず例えば、クローラ走行装置を備えた作業車両であればどのような作業を行う作業車両であっても良い。
また、上記実施の形態では、作業車両の一例として、エンジン12を搭載し、当該エンジン12からの駆動力をクローラ走行装置500等に伝動する場合について説明したが、これに限らず例えば、エンジンに代えてモータ等を搭載し、当該モータ等からの駆動力を利用する構成であっても良い。
また、上記実施の形態では、作業車両の一例として、従動前輪2とクローラ走行装置を備えた構成について説明したが、これに限らず例えば、従動前輪2を備えずクローラ走行装置のみで走行する構成であっても良い。
また、上記実施の形態では、作業車両の一例として、車輪としての従動前輪2を走行車体15の前側に備え、当該従動前輪2の後側にクローラ走行装置を備えた構成について説明したが、これに限らず例えば、車輪をクローラ走行装置の後側に備え、且つ、当該車輪の前側にクローラ走行装置を備えた構成であっても良い。
また、上記実施の形態では、第2遊転輪支持プレート1570の揺動できる範囲を、図5に示す第3クローラ走行装置2500において、側面視で、第2遊転輪支持プレート1570が反時計回りに回動する場合においてのみ変更出来る構成について説明したが、これに限らず例えば、第2遊転輪支持プレート1570が時計回りに回動する場合においてのみ変更出来る構成であっても良いし、或いは、第2遊転輪支持プレート1570が反時計回りに回動する場合と時計回りに回動する場合の両方において変更出来る構成であっても良い。ここで、第2遊転輪支持プレート1570の揺動できる範囲を、第2遊転輪支持プレート1570が時計回りに回動する場合において変更可能にする為には、略扇形の切り欠き部1571の前側の縁部1571aにおいて、第1段差部1571b及び第2段差部1571cと同様の段差を設ければ良い。