[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。本発明に基づいた実施の形態における定着装置および画像形成装置について、以下、図を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品、同一の処理に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。また、各実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。以下では、「画像を形成すること」を、「印刷する」ともいう。
[画像形成装置の構成]
図1を参照して、実施の形態における画像形成装置1501の概略構成について説明する。図1は、画像形成装置1501の全体構成を示す図である。実施の形態における画像形成装置1501は、その内部の略中央部にベルト部材として中間転写ベルト1502を備えている。
中間転写ベルト1502の下部水平部の下には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色にそれぞれ対応する4つの作像ユニット1506Y,1506M,1506C,1506Kが中間転写ベルト1502に沿って並んで配置されている。
作像ユニット1506Y,1506M,1506C,1506Kは、感光体ドラム1507Y,1507M,1507C,1507Kをそれぞれ有している。各感光体ドラム1507Y,1507M,1507C,1507Kの周囲には、その回転方向に沿って順に、感光体ドラムに帯電する帯電ローラ1508と、プリントヘッド部1509と、現像器1510と、中間転写ベルト1502を挟んで各感光体ドラム1507Y,1507M,1507C,1507Kと対向する1次転写ローラ1511Y,1511M,1511C,1511Kがそれぞれ配置されている。
中間転写ベルト1502の中間転写ベルト駆動ローラ1505で支持された部分には、2次転写ローラ1503が圧接されており、2次転写ローラ1503と中間転写ベルト1502とのニップ部が、2次転写領域1530になっている。2次転写領域1530の後流側の搬送路1541の下流位置には、定着装置100が配置されている。
画像形成装置1501の下部には、給紙カセット1517が着脱可能に配置されている。給紙カセット1517の内部に積載収容された用紙Pは、給紙ローラ1518の回転によって最上部のものから1枚ずつ搬送路1540に送り出されることになる。中間転写ベルト1502の最下流側の作像ユニット1506Kと2次転写領域1530との間には、レジストセンサを兼用する画像濃度(AIDC)センサ1519が設置されている。
次に、以上の構成からなる画像形成装置1501の概略動作について説明する。外部装置(例えばパソコン)から画像形成装置1501の画像信号処理部(図示せず)に画像信号が入力される。画像信号が入力された画像信号処理部では、この画像信号をイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックに色変換したデジタル画像信号を作成する。各作像ユニット1506Y,1506M,1506C,1506Kのプリントヘッド部1509は、それぞれデジタル画像信号に基づいて発光し、各感光体ドラム1507Y,1507M,1507C,1507Kに対して露光を行なう。
各感光体ドラム1507Y,1507M,1507C,1507Kの上に形成された静電潜像は、各現像器1510によりそれぞれ現像されて各色のトナー画像となる。各色のトナー画像は、各1次転写ローラ1511Y,1511M,1511C,1511Kの作用により、矢印A方向に移動する中間転写ベルト1502上に順次重ね合わされて1次転写される。
中間転写ベルト1502上に形成されたトナー画像は、中間転写ベルト1502の移動にしたがって2次転写領域1530に達する。この2次転写領域1530において、重ね合わされた各色トナー画像は、2次転写ローラ1503の作用により、用紙Pに一括して2次転写される。
用紙Pに2次転写されたトナー像(未定着のトナー像)は、定着装置100に達する。この定着装置100による高温圧接により、トナー像は、用紙Pに定着される。図1では、静電潜像担持体上に形成された静電潜像をトナーにより現像することによって形成されるトナー像を中間転写ベルト1502に転写する工程と、中間転写ベルト1502上に転写されたトナー像を用紙(画像支持体)に転写する工程とを含む画像形成装置に対して、定着装置100を適用する例を説明する。しかしながら、他の画像形成装置に対して、該定着装置100を適用するようにしてもよい。他の画像形成装置は、たとえば、静電潜像担持体上に形成された静電潜像をトナーにより現像することによって形成されるトナー像を用紙(画像支持体)に直接転写する画像形成装置としてもよい。
[画像形成装置のハードウェア構成]
図2は、画像形成装置1501のハードウェア構成を示した図である。図2を参照して、画像形成装置1501は、プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)101と、データを不揮発的に格納するROM(Read Only Memory)102と、データを揮発的に格納するRAM(Random Access Memory)103と、フラッシュメモリ104と、タッチスクリーン105と、スピーカ106とを備える。
タッチスクリーン105は、表示装置としてのディスプレイ1051と、入力装置としてのタッチパネル1052とにより構成される。具体的には、タッチスクリーン105は、ディスプレイ1051(たとえば液晶ディスプレイ)上にタッチパネル1052を位置決めした上で固定することにより実現される。なお、タッチスクリーンは、タッチパネルディスプレイ、タッチパネル付きディスプレイ、あるいはタッチパネルモニタとも称される。なお、タッチスクリーン105においては、タッチ位置の検出方法として、たとえば抵抗膜方式または静電容量方式を用いることができる。ユーザによるタッチスクリーン105への操作によりジョブが入力されれる。
フラッシュメモリ104は、不揮発性の半導体メモリである。フラッシュメモリ104は、CPU101が実行するオペレーティングシステムおよび各種のプログラム、各種のコンテンツおよびデータを格納している。また、フラッシュメモリ104は、画像形成装置1501が生成したデータ、画像形成装置1501の外部装置から取得したデータ等の各種データを揮発的に格納する。
スピーカ106は、CPU101からの指令に応じて音を発生させる。CPU101は、タッチパネル1052からの出力に基づいて入力位置を特定し、当該特定した入力位置に基づいた画面表示を行なう。
また、通信IF108は、他の外部機器(たとえば、PC)とネットワークを通じて接続されている。該他の外部機器からユーザによりジョブが入力されたときには、画像形成装置1501は、通信IF108を経由して該ジョブを取得する。
画像形成装置1501における処理は、各ハードウェアおよびCPU101により実行されるソフトウェアによって実現される。このようなソフトウェアは、フラッシュメモリ104に予め記憶されている場合がある。同図に示される画像形成装置1501を構成する各構成要素は、一般的なものである。したがって、本発明の本質的な部分は、フラッシュメモリ104、メモリカードその他の記憶媒体に格納されたソフトウェア、あるいはネットワークを介してダウンロード可能なソフトウェアであるともいえる。なお、画像形成装置1501の各ハードウェアの動作は周知であるので、詳細な説明は繰り返さない。
なお、記録媒体としては、DVD-ROM、CD−ROM、FD(Flexible Disk)、ハードディスクに限られず、磁気テープ、カセットテープ、光ディスク(MO(Magnetic OptiDal Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、光カード、マスクROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュROMなどの半導体メモリ等の固定的にプログラムを担持する媒体でもよい。また、記録媒体は、当該プログラム等をコンピュータが読取可能な一時的でない媒体である。
ここでいうプログラムとは、CPUにより直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム形式のプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む。
[定着装置について]
次に、定着装置100について説明する。図3は、定着装置100を示した図である。定着装置100は、電源部60と、制御部62と、定着器70とを含む。定着器70は、第1ヒータ41と、第2ヒータ42と、第1ヒータ41の温度を検出する第1センサ71と、第2ヒータ42の温度を検出する第2センサ72とを含む。以下では、第1ヒータ41および第2ヒータ42については、駆動することにより加熱状態となり、駆動しないことにより非加熱状態となる。
本実施形態では、第1ヒータ41と、第2ヒータ42とは共に、ハロゲンランプであるとする。第1ヒータ41と、第2ヒータ42とのうち少なくとも1つは他の部材を用いるようにしてもよい。他の部材とは、たとえば、セラミックヒータなどの抵抗発熱型のヒータ、IH(induction heating)などとしてもよい。
電源部60は、チョッパー回路52と、スイッチ64とを含む。このように、図3の定着装置100では、定着器70のソフトスタート制御として、チョッパー回路52を用いたPWM(Pulse Width Modulation)制御を実行する。
制御部62は、第1センサ71で検出された温度、および第2センサ72で検出された温度に基づいて、PWM信号および切替信号を出力する。例えば、制御部62は、第1センサ71で検出される温度が所望の温度(後述する第1目標温度および第2目標温度)になるように、チョッパー回路52にPWM信号を送信する。チョッパー回路52は、該PWM信号に基づき、第1ヒータ41にDuty比に応じた電圧を出力する。
また、制御部62は、スイッチ64のONおよびOFFを切替える切替制御を実行する。たとえば、制御部62は、該切替制御として、切替信号を出力する。スイッチ64がONである状態において、チョッパー回路52が電圧を出力すると、第1ヒータ41と第2ヒータ42との双方に電圧が出力される。一方、スイッチ64がOFFである状態において、チョッパー回路52が電圧を出力すると、第1ヒータ41に電圧が出力され第2ヒータ42には電圧が出力されない。
このように、スイッチ51を用いることにより、1つのチョッパー回路52を第1ヒータ41および第2ヒータ42の共通の電源として用いることができるとともに、必要に応じて第2ヒータ42の駆動の有無を異ならせることができる。つまり、制御部62は、第1ヒータ41の駆動および第2ヒータ42の駆動(たとえば、ソフトスタートによる駆動)を、同一のPWM信号(同一の制御信号)により制御することができる。
制御部62は、第1ヒータ41の駆動を実行する一方第2ヒータ42の駆動を実行しない第1制御と、第1ヒータ41の駆動および第2ヒータ42の駆動の双方を実行する第2制御とを実行することができる。また、第1制御と第2制御とについては、スイッチ64がON状態であれば、第2制御が実行され、スイッチがOFF状態であれば、第1制御が実行される。
[定着部について]
次に、定着器70の構成を説明する。図4は、定着器70の構成を示す図である。定着器70は、加熱ローラ171と、該加熱ローラ171に圧接される圧接ローラ172とを含む。加熱ローラ171には、ベルト(図示せず)が巻かれており、圧接ローラ172にもベルトが巻かれている。第1ヒータ41および第2ヒータ42は共に加熱ローラ171の内部に設けられている。用紙は、加熱ローラ171のベルトと、圧接ローラ172のベルトとの圧接箇所Sに搬送される。該用紙は、該圧接箇所Sにおいて、加熱ローラ171と、圧接ローラ172とで挟持されて通紙される。この通紙により、該トナー層は用紙に対して圧接加熱されることにより定着される。用紙が、圧接箇所Sに搬送する方向を搬送方向M1とし、加熱ローラ171の軸方向を軸方向M2とする。なお、搬送方向M1と、軸方向M2とは直交する。
第1ヒータ41は、軸方向M2において、加熱ローラ171の中央部に設けられることにより構成される。これにより、第1ヒータ41は、搬送方向M1において用紙の中央部を加熱する。また、第2ヒータ42は、軸方向M2において、加熱ローラ171の一端部に端部ヒータ42Aが設けられ、他端部に端部ヒータ42Bが設けられることにより構成される。これにより、第2ヒータ42は、搬送方向M1において用紙の両端部を加熱する。端部ヒータ42Aおよび端部ヒータ42Bはそれぞれ直列接続されている。
画像形成装置1501が印刷可能な用紙のサイズは、A4の用紙2aとA3の用紙2bとを含む。A4の用紙2aに形成されたトナー像を定着させる場合、およびA3の用紙2bに形成されたトナー像を定着させる場合のいずれの場合でも、制御部62は、第1ヒータ41を駆動する。なお、他の用紙サイズ(たとえば、A5サイズの用紙)に形成されたトナー像を定着させる場合にも、制御部62は、第1ヒータ41を駆動する。このように、第1ヒータ41は、トナー像を定着させる用紙のサイズに関わらず、駆動されるヒータである。
また、A3の用紙2bに形成されたトナー像を定着させる場合のいずれの場合には、制御部62は、第1ヒータ41を駆動するとともに、第2ヒータ42も駆動する。一方、A4の用紙2aに形成されたトナー像を定着させる場合には、制御部62は、第1ヒータ41を駆動するが、第2ヒータ42を駆動しない。このように、第2ヒータ42は、所定のサイズ(たとえば、A3)の用紙上のトナー像を定着させる場合に、駆動されるヒータである。第2ヒータ42が駆動されるときには、第1ヒータ41も駆動される。
また、第1ヒータ41および第2ヒータ42は、用紙に印刷されるときのみならず、画像形成装置1501のウォームアップを行う場合にも駆動される。
第1ヒータ41および第2ヒータ42それぞれの定格電力は、加熱対象領域の面積および熱容量に比例するよう選定されている。これにより、制御部62は、共通のPWM制御により(同一のPWM信号)により、第1ヒータ41および第2ヒータ42を同一の温度に調整できる。
第1ヒータ41の近傍には、第1センサ71が設けられている。第1センサ71は、軸方向M1の中央部の温度を検出する。つまり、第1センサ71は、第1ヒータ41による加熱温度を検出する。第2ヒータ42を構成する2つの端部ヒータ42A、42Bのうちのいずれか(図4では、端部ヒータ42A)の近傍には、第2センサ72が設けられている。第2センサ72は、軸方向M1の端部の温度を検出する。つまり、第2センサ72は、第2ヒータ42による加熱温度を検出する。
ところで、ヒータ(第1ヒータ41および第2ヒータ42)を非加熱状態から加熱状態に制御する際に、突入電流が発生する場合がある。突入電流が発生すると、電源部60内の不図示のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの素子が破損する可能性があるため、画像形成装置1501は、定着器70の駆動についてソフトスタートを行う。ここで、ソフトスタートは、PWMのDuty比を目標値まで一定の増加率で徐々に増加させる制御である。
ここで、第1ヒータ41および第2ヒータ42は共通のPWM制御で駆動される。たとえば、第1ヒータ41が駆動されているが第2ヒータが駆動されていない状態(第1制御が実行されている状態)において、第2ヒータを駆動する場合には、ソフトスタートが不要な第1ヒータ41に対しても、ソフトスタートを行わなければいけない。そうすると、第1ヒータ41に、所望の電圧(目標温度に制御させるために必要な電圧)よりも低い電圧が出力されてしまう(所望のDutyよりも低いDutyが投入されてしまう)。第1ヒータ41に該低い電圧が出力されている期間に、用紙が圧接箇所Sに搬送されると、定着温度が足りないことから、トナー像の溶融が不十分となる。そうすると、トナー像と用紙の付着力が生じにくくなり、たとえば、加熱ローラ171にトナー像が付着するという低温オフセットが発生する場合がある。
本実施形態の画像形成装置1501ではこのような問題を鑑み、図5の処理を実行する。図5は、制御部62の処理の流れをフローチャートである。図5の処理は、たとえば、第2ヒータ42を駆動する必要のある用紙(たとえば、A3用紙)を印刷する第1ジョブと、第2ヒータ42を駆動する必要のない用紙(たとえば、A4用紙)を印刷する第2ジョブと、第2ヒータ42を駆動する必要のある用紙(たとえば、A3用紙)を印刷する第3ジョブとがこの順番で入力された場合の処理である。そして、該A3用紙を印刷した直後(第1ジョブを終了した直後)にA4用紙を印刷し(第2ジョブを開始し)、さらに該A4用紙の印刷直後(第2ジョブを終了した直後)にA3用紙を印刷する(第3ジョブを開始する)場合に実行される処理である。また、第1ヒータ41の目標温度を第1目標温度に設定されていることにより、第1ヒータ41の温度は第1目標温度であるとする。
まず、S10において、制御部62は、第2センサ72の温度が第2閾値Th2以上であるか否かを判断する。ここで、第2閾値Th2は、画像形成装置1501の環境と、印刷中の用紙の種類とに基づいて決定される。本実施形態では、画像形成装置1501の環境とは、画像形成装置1501の機内の温度であり、印刷中の用紙の種類とは、印刷中の用紙の坪量(厚さ)である。図6は、第2閾値Th2のテーブルである。たとえば、画像形成装置1501の機内温度が15度未満であり、かつ、用紙の坪量が64g/m2未満である場合には、第2閾値Th2=140度と設定される。
S10において、第2センサ72の温度が第2閾値Th2以上であると判断された場合には(S10のYES)、S12に進む。また、S10では、YESと判断されるまでS10の処理が繰返される。また、S10でYESと判定された場合にというのは、第1ジョブ(A3用紙の印刷)が終了して、第2ジョブ(A4用紙の印刷)を実行する場合などである。
S12において、制御部62は、ONとされていたスイッチ64をOFFにすることにより、第2ヒータ42の駆動を停止する。
このように、S10およびS12の処理において、第2ヒータ42が駆動されており、かつ第2ヒータ42の温度(第2センサ72により検出された温度)が第2閾値Th2以上である場合というのは、第2ヒータ42の加熱温度が高すぎるということである。第1ヒータ41が駆動されていたとしても、用紙のサイズに関わらず該用紙の中央部に加熱ローラ171が当接することから、加熱ローラ171は、該用紙の中央部に吸熱される。したがって、第1ヒータ41の温度が増加しない傾向にある。
一方、第2ヒータ42が駆動されている場合において、所定の用紙(A3サイズ)であるときにのみ該用紙の端部に加熱ローラ171が当接することから、第2ヒータ42の温度は過度に増加する傾向にある。したがって、S10において、NOと判断された場合には、S12により、制御部62は、第2ヒータ42の駆動を停止する。
また、図6に示すように、印刷中の用紙の坪量が大きくなればなるほど、第2閾値Th2も高くなる。これは、用紙の坪量(厚み)が多くなると、低温オフセット温度(低温オフセットが生じる温度)が高くなることから、第2閾値Th2も増加させる必要があるという思想に基づく。また、画像形成装置1501の機内温度が低くなればなるほど、第2閾値Th2は高くなる。これは、画像形成装置1501の機内温度が低くなると、低温オフセット温度が高くなることから、第2閾値Th2も増加させる必要があるという思想に基づく。
また、図6のテーブルに対応する情報は予め所定領域(たとえば、ROM102)に格納されている。また、制御部62は、S10の判断の際には、印刷されている用紙の坪量を取得するとともに、画像形成装置1501の機内温度を取得する。画像形成装置1501の機内温度については、画像形成装置1501内に設けられているセンサ(特に図示せず)が検出するようにしてもよい。そして、制御部62は、用紙坪量と、機内温度とに基づいて、第2閾値Th2を抽出する。制御部62は、該第2閾値Th2と用いて、S10の処理を実行する。
次に、S14において、制御部62は、第2センサ72が検出した温度が第1閾値Th1以下であるか否かを判断する。ここで第1閾値Th1は、第2閾値Th2よりも小さい値である。S14でNOと判断されたときには、S14でYESと判断されるまで、該S14の処理を繰替えす。S14の処理が繰返されている期間(第2センサ72の温度が第1閾値T1を超えると判断されている期間)は、第2ヒータ42は駆動されていない状態が継続される。
また、第1閾値Th1は、画像形成装置1501の環境と、印刷中の用紙の種類とに基づいて決定される。本実施形態では、画像形成装置1501の環境とは、画像形成装置1501の機内の温度であり、印刷中の用紙の種類とは、印刷中の用紙の坪量(厚さ)である。図7は、第1閾値Th1のテーブルである。たとえば、画像形成装置1501の機内温度が15度未満であり、かつ、用紙の坪量が64g/m2未満である場合には、第1閾値Th1=130度と設定される。また、図7に示すように、印刷中の用紙の坪量が大きくなればなるほど、第1閾値Th1も高くなる。これは、用紙の坪量(厚み)が多くなると、低温オフセット温度(低温オフセットが生じる温度)が高くなることから、第1閾値Th1も増加させる必要があるという思想に基づく。また、画像形成装置1501の機内温度が低くなればなるほど、第1閾値Th1は高くなる。これは、画像形成装置1501の機内温度が低くなると、低温オフセット温度が高くなることから、第1閾値Th1も増加させる必要があるという思想に基づく。
また、図7のテーブルに対応する情報は予め所定領域(たとえば、ROM102)に格納されている。また、制御部62は、S14の判断の際には、印刷されている用紙の坪量を取得するとともに、画像形成装置1501の機内温度を取得する。そして、制御部62は、用紙坪量と、機内温度とに基づいて、第1閾値Th1を抽出する。制御部62は、該第1閾値Th1と用いて、S14の処理を実行する。
S14においてYESと判定された場合には、S18に進む。S18においては、第2ヒータ42の非駆動期間が所定期間に到達したか否かを判断する。ここで、所定期間とは、図5の例では、たとえば、30秒間であるが他の期間としてもよい。第2ヒータ42の非駆動期間が所定期間に到達していない場合(図5のS18でNO)とは、第2ヒータ42中のフィラメントの温度が高い状態である。フィラメントの温度が高い状態において、ソフトスタートを実行せずに、現在のDuty(電圧)を出力しても、突入電流が発生しない。また、フィラメントの温度が高い状態では、突入電流が発生しても、電源部60内のIGBTなどの素子を破壊するほどではない。
一方、第2ヒータ42の非駆動期間が所定期間に到達した場合(図5のS18でYES)とは、第2ヒータ42中のフィラメントの温度が低い状態である。この場合には、ソフトスタートさせないと、電源部60内のIGBTなどの素子を破壊するほどの突入電流が生じてしまう。そこで、S18でYESと判断された場合には、後述のS30において、ソフトスタートを実行する。
S18においてYESと判定されると、S22に進む。S22において、制御部62は、定着器70の目標温度を第1目標温度から第2目標温度に変更する。
ここで、第2目標温度について説明する。図8は、第2目標温度を示すテーブルである。図8のテーブルでは、連続印刷時間が所定時間であるか否かにより、第1テーブル(図8(A))と、第2テーブル(図8(B))とに分けられる。このように、第2目標温度は、定着装置100が駆動している期間、画像形成装置1501の環境と、印刷中の用紙の種類とに基づいて決定される。本実施形態では、画像形成装置1501の環境とは、画像形成装置1501の機内の温度であり、印刷中の用紙の種類とは、印刷中の用紙の坪量(厚さ)である。
第1テーブルについて説明すると、たとえば、機内温度が15度未満であり、かつ用紙の坪量が64g/m2未満である場合には、第2目標温度は、「第1目標温度+3」と設定される。また、第1テーブルの例では、印刷中の用紙の坪量が大きくなればなるほど、第2目標温度も高くなる。これは、用紙の坪量(厚み)が多くなると、用紙の搬送による被加熱体(本実施形態では、加熱ローラ171に巻かれたベルト)の温度低下度合が大きくなるため、その分、事前に該被加熱体の温度を上げておく必要があるという思想に基づく。また、画像形成装置1501の機内温度が低くなればなるほど、第2目標温度も低くなる。これは、画像形成装置1501の機内温度が低くなると、用紙の搬送による被加熱体の温度低下度合が大きくなるため、その分、事前に該被加熱体の温度を上げておく必要があるという思想に基づく。
また、第1テーブルと第2テーブルとを比較すると、第1テーブル(連続印刷時間が短い時に用いられるテーブル)の方が、第2テーブル(連続印刷時間が長い時に用いられるテーブル)よりも、第2目標温度は低く設定される。これは、連続印刷時間が長い場合には、連続印刷時間が短い場合よりも、定着装置100に蓄熱されるため、用紙の搬送による温度低下が低減される。したがって、連続印刷時間が長い場合には、連続印刷時間が短い場合よりも、第2目標温度を低く設定するのである。なお、連続印刷時間は、「1つのジョブにおける印刷時間という概念」と、「1つのジョブが終了してから所定時間(たとえば、1秒)後に次のジョブを実行するときにおいて該1つのジョブにおける印刷時間と該次のジョブにおける印刷時間との合計時間という概念」とを含む。
また、第1テーブルおよび第2テーブルにおいては、第2目標温度=第1目標温度+0とされている箇所がある。たとえば、第1テーブルにおいて、機内温度が30度以上であり、かつ用紙の坪量が64g/m2未満である場合には、第2目標温度は、第1目標温度と同一とされる。これは、用紙が搬送されても被加熱体の温度低下が小さいため、温度を事前に上げる必要がないためである。また、第2目標温度が、第1目標温度と同一である場合には、S22およびS24の処理を省略するようにしてもよい。
次に、S26において、制御部62は、定着器70(第1ヒータ41)への電圧(Duty)を0にする。制御部62は、このS26の処理を実行することにより、突入電流の発生を防止できる。なお、変形例として、S26の処理においては、突入電流の発生を防止できるのであれば、他の処理を実行するようにしてもよい。たとえば、S26では、出力する電圧(Duty)を小さい値としてもよい。
次に、第3ジョブ(A3用紙の印刷)を実行するとする。この場合には、S28では、制御部62は、スイッチ51をONにする。このS28により、第1ヒータ41のみならず第2ヒータ42に対しても電圧を出することができる。次いで、S30において、制御部62は、PWM信号を出力することにより、定着器70(第1ヒータ41および第2ヒータ42)をソフトスタート(電圧が所望電圧に到達するまで徐々に電圧を上げていく制御を実行)させる。なお、変形例として、たとえば、第1ヒータ41および第2ヒータ42がソフトスタートを実行せずとも破損しないヒータである場合には、このS30のソフトスタートを実行せずに、直接、所望電圧の電圧を出力するようにしてもよい。次いで、S32において、第2目標温度に設定されていた目標温度を第1目標温度に戻す。なお、S30の処理は、S32と同時に行ってもよく、S32よりも前に実行するようにしてもよい。
[タイミングチャート]
次に、本実施形態の画像形成装置1501のタイミングチャートを説明する。図9は、本実施形態のタイミングチャートを説明するための図である。図9(A)は第1ヒータ41および第2ヒータ42の温度の推移を示し、縦軸が該温度を示し、横軸が時間を示す。図9(A)において、実線は第1ヒータ41の温度(第1センサ71の検出温度)を示し、破線は第2ヒータ42の温度(第2センサ72の検出温度)を示す。図9(B)において、ヒータに投入されるDuty比を示し、縦軸が該Duty比を示し、横軸が時間を示す。図9(C)は、スイッチのONまたはOFFを示し、横軸は時間を示す。
タイミングT1以前では、スイッチ64がON状態となっているとする。この場合のDuty比を「D1」とする(図9(B)参照)。また、第1ヒータ41の温度は第1目標温度を保っているとする。タイミングT1において、第2センサの温度が第2閾値以上になったとする(S10のYES)。そうすると、このタイミングT1で、制御部62が、スイッチをOFFにする(S12、図9(C)も参照)。
その後、タイミングT2において、第2ヒータ42の温度が第1閾値Th1以下になったとする(S14のYES)。この場合において、S18でYESと判定されたとする(つまり、タイミングT1〜T2までの期間が30秒以上であるとする)。
このタイミングT2では、制御部62は、第1目標温度を第2目標温度に変更する。このように、目標温度が高くなったことに伴い、制御部62は、Dutu比をD1からD2に変更する。ただし、D2>D1である。
その後、タイミングT3で、第1ヒータ41の温度が第2目標温度に到達したとする(S24のYES)。制御部62は、このタイミングT3で、制御部62は、Duty比を0にする(S26)。このS26の処理を実行することにより、突入電流の発生を防止できる。その後T4において、制御部62は、スイッチ64をONにする。なお、タイミングT3からタイミングT4の期間は、「Duty比が0であると判断したとき」から、「スイッチ64に対してONの切替信号を出力することによりスイッチ64がONとなるとき」までの期間である。
タイミングT4の後のタイミングT5において、制御部62は、スイッチ64がONとなっている状態で、Duty比が徐々に増加することにより(図9(B)参照)ソフトスタートを開始する。その後、第2目標温度となっていた目標温度を第1目標温度に戻す(S32)。これにより、タイミングT6で、第1ヒータ41の温度は、第1目標温度を維持することができる。
なお、第2ヒータ42の温度は、タイミングT6以降上がり続けているが、これは、印刷される用紙のサイズ(たとえば、A4の用紙)によっては、用紙が、第2ヒータの加熱領域を通過しない。この場合には、第2ヒータ42からの熱は、通紙により吸熱されない。したがって、第2ヒータ42の温度は、タイミングT6以降上がり続けることになる。そして、第2ヒータ42の温度が第2閾値Th2を超えると、また、タイミングT1の処理(図5のS12の処理)を実行するようにしてもよい。
[比較例との対比]
次に、本実施形態の画像形成装置1501と比較例との対比を説明する。図10(A)は第1ヒータ41の温度を示し、縦軸が該温度を示し、横軸が時間を示す。図10(A)において、実線は本実施形態の第1ヒータ41の温度を示し、一点鎖線は比較例の第1ヒータの温度を示す。なお、比較例の定着装置の構成は、図3と同一であるが、比較例の定着装置の制御部と本実施形態の制御部62とは異なる制御を実行する。
図10(B)は、ヒータに投入されるDuty比を示し、縦軸が該Duty比を示し、横軸が時間を示す。図10(B)において、実線は本実施形態の第1ヒータ41の温度を示し、一点鎖線は比較例の第1ヒータの温度を示す。図10に付しているタイミングTは、図9に付したタイミングTと対応するものである。
図10(A)に示すように、タイミングT2において、本実施形態の制御部62は、目標温度を高くなるように変更することにより(S22に示すように、第1目標温度から第2目標温度に変更し)、Duty比を増加させる。その後、タイミングT3において、制御部62は、Duty比を0にする。その後、タイミングT5において、制御部62は、ソフトスタートを実行する。
一方、比較例の制御部は、S22の処理(目標温度を高く変更する処理)を実行しない。つまり、目標温度を高く変更する処理を実行せずに、Duty比を0にし、その後、ソフトスタートを実行する。
比較例では、S22の処理(目標温度を高く変更する処理)を実行しないことから、図10(A)に示すように、第1ヒータの温度が低温オフセット温度に到達してしまう場合があり、この場合には、トナー像を用紙に適切に定着できない(低温オフセットが生じる)場合がある。
一方、本実施形態の定着装置100では、Duty比を0にする前に、第1加熱部の目標温度を高くする(第1目標温度から第2目標温度に変更する)。その後、電源部60から出力される電力を低下させ(本実施形態では、Duty比を0にする)、ソフトスタートを実行する。したがって、図10(A)の実線に示すように、第1ヒータ41の温度が低温オフセット温度に到達しないようにすることができる。
[第2実施形態]
第1実施形態では、加熱部をヒータであるとして説明した。しかしながら、第2実施形態では、用紙を加熱する加熱部として、コイルを用いる。図11(A)は、定着装置150の構成例を示した図である。
定着装置150は、加熱ローラ201と、該加熱ローラ201に対して加圧する圧接ローラと、加熱コイル203と、消磁コイル群210と、第1センサ271、第2センサ272などを含む。
加熱ローラ201には、ベルト(図示せず)が巻かれており、圧接ローラ172にもベルトが巻かれている。加熱コイル203は、加熱ローラ201の周方向の表面の一部を加熱ローラ201の長手方向の全域に沿って覆うように加熱ローラ201に隣接して配置されている。これにより、インバータ電源部200から供給される高周波電力により加熱コイル203が発生する誘導磁束を加熱ローラ201が効率よく受け止めることができるように、高い磁気結合が実現される。
消磁コイル群210は、加熱ローラ201に対して加熱コイル203の奥側に配置された第1消磁コイル211と第2消磁コイル212とを含む。第1消磁コイル211、および第2消磁コイル212は加熱コイル203とは薄い絶縁物を挟んで密接して配置されている。
第1消磁コイル211と第2消磁コイル212とが、例えば、幅が短い用紙(たとえば、A4の用紙)を加熱ローラ201と圧接ローラとの間に挟持して通紙するときに、加熱ローラ201の長さ方向の両端部の領域は用紙が通過しない非通紙部となる。この非通紙部においては用紙により吸熱されないことから、過度の温度上昇が発生する。そこで、本実施形態の定着装置150は、非通紙部に対する加熱コイル203の磁束を打ち消して、非通紙部の温度上昇を抑制する。
このような抑制を実現するために、第1消磁コイル211と第2消磁コイル212とが、典型的には、加熱ローラ201の長さ方向の両端部に配置される。第1消磁コイル211と第2消磁コイル212とのそれぞれが独立した巻き線となる第1構成と、第1消磁コイル211と第2消磁コイル212とで一体の巻き線となる第2構成とがある。第1構成および第2構成のうちいずれを採用するようにしてもよい。
また、第1消磁コイル211と第2消磁コイル212とは、加熱ローラ201を通過する用紙のサイズ(A3、A4、A5等)に応じて、加熱コイル203を消磁する長さが異なる。また、第1消磁コイル211と第2消磁コイル212とは、巻き始め部分と巻き終わり部分から、スイッチ回路230に接続するための引き出し線が繋がっており、引き出し線はスイッチ回路230の第1接点スイッチ231、および第2接点スイッチ232にそれぞれ接続されている。
スイッチ回路230は、典型的には、リレーを用いた回路で構成されている。リレーの第1接点スイッチ231が第1消磁コイル211の引き出し線に、第2接点スイッチ232が第2消磁コイル212の引き出し線にそれぞれ接続されている。
第1接点スイッチ231がオンにより閉じられると、第1消磁コイル211が導通され、第1消磁コイル211と加熱コイル203との相互誘導により、加熱コイル203の磁束を打ち消すように動作する。また、第2接点スイッチ232がオンにより閉じられると、第2消磁コイル212が導通され、第2消磁コイル212と加熱コイル203との相互誘導により、加熱コイル203の磁束を打ち消すように動作する。第1接点スイッチ231あるいは第2接点スイッチ232がオフ動作により開かれると、第1消磁コイル211と第2消磁コイル212との導通が遮断され、第1消磁コイル211と第2消磁コイル212の消磁動作が停止する。
例えば、幅が最も狭い用紙(たとえば、A5用紙)が通紙されるときには、第1消磁コイル211が導通されることにより、加熱ローラ201のA5の幅に応じた箇所が加熱される。また、幅が次に狭い用紙(たとえば、A4用紙)が通紙されるときには、第2消磁コイル212が導通されることにより、加熱ローラ201のA4の幅に応じた箇所が加熱される。また、幅が広い用紙(たとえば、A3用紙)が通紙されるときには、2つの消磁コイルには導通されないことにより、加熱ローラ201のA3の幅に応じた箇所が加熱される。以下では、第1消磁コイル211と第2消磁コイル212とをまとめて「消磁コイル」という。
図11(B)は、加熱コイル203を示したものである。このように、加熱コイル203と、消磁コイルとを用いることにより、加熱コイル203を複数の加熱部としての機能を有することになる。図11(B)の例では、通紙される用紙のサイズに関わらず(例えば、A5、A4、およびA3)ずれのサイズであっても)加熱される第1加熱部203Aと、通紙される用紙のサイズが例えば、A4またはA3である場合に加熱される第2加熱部203Bと、通紙される用紙のサイズが例えば、A3である場合に加熱される第3加熱部203Cとを機能的に有する。
また、第1センサ271は、第1加熱部203Aの温度を検出し、第2センサ272は、第2加熱部203Bの温度を検出する。
第1接点スイッチ231、および第2接点スイッチ232は、主に接点と巻き線が一体に組み込まれており、巻き線に電流を流すと接点がオンになり、巻き線に流れていた電流を遮断すると接点がオフになる。第1接点スイッチ231及び第2接点スイッチ232のオン動作及びオフ動作は、共振型のインバータ電源部200から各巻き線への通電及び遮断によって行われる。
また、インバータ電源部200は高周波電力を加熱コイル203に供給することにより加熱コイル203を駆動する。この駆動により加熱コイル203は高周波磁束を発生し、電磁誘導作用により加熱ローラ201を加熱する。また、インバータ電源部200からの供給電力の調整により加熱コイル203の出力を変化させることができるようになっている。なお、インバータ電源部200の共振方式は電圧共振であっても電流共振であっても良い。
また、制御基板250は、インバータ電源部200に対して電力指令を送信し、加熱コイル203へ供給する電力の開始や終了、あるいは供給する電力値等を制御する。さらに制御基板250は、スイッチ回路230に対する動作指令をインバータ電源部200に送信し、この指令を受けたインバータ電源部200は第1接点スイッチ231、第2接点スイッチ232をオンまたはオフさせる。
また、この実施形態では、加熱コイル203を駆動したまま、第1接点スイッチ231または第2接点スイッチ232のオンおよびオフが実行される。このため、第1接点スイッチ231または第2接点スイッチ232のオンおよびオフがされたときに加熱コイル203の駆動を停止させた場合に生じる、加熱ローラ201の通紙領域において温度が低下するという問題(低温オフセットの発生の問題)は発生しない。
しかしながら、定着温度に対する必要電力を加熱コイル203から出力し続けたまま第1接点スイッチ231または第2接点スイッチ232をオンおよびオフにすると、加熱コイル203の急激な負荷変動によって電力が変動する場合がある。この場合には、インバータ電源部200内のスイッチング素子における定格を超えてしまい、インバータ電源部200の部品が破損するという問題がある。
図12は、本実施形態の制御基板250のフローチャートである。図12の処理は、たとえば、第2加熱部203Bおよび第3加熱部203Cを駆動する必要のない用紙(たとえば、A4用紙)を印刷する第1ジョブと、第2加熱部203Bおよび第3加熱部203Cのいずれかを駆動する必要のある用紙(たとえば、A3用紙)を印刷する第2ジョブと、第2加熱部203Bおよび第3加熱部203Cを駆動する必要のない用紙(たとえば、A4用紙)を印刷する第3ジョブとがこの順番で入力された場合に実行される処理である。そして、該A4用紙を印刷した直後(第1ジョブを終了した直後)にA3用紙を印刷し(第2ジョブを開始し)、さらに該A3用紙の印刷直後(第2ジョブを終了した直後)にA4用紙を印刷する(第3ジョブを開始する)場合に実行される処理である。
S110において、制御基板250は、第2センサ272が第1閾値Th1以下であるか否かを判断する。S110において、第2センサ272の温度が第1閾値Th1以下であると判断された場合には(S110のYES)、S112に進む。また、S110では、YESと判断されるまでS110の処理が繰返される。
また、S110でYESと判定された場合というのは、第1ジョブ(A4用紙の印刷)が終了して、第2ジョブ(A3用紙の印刷)を実行する場合などである。S112では、制御基板250は、定着させる用紙のサイズに応じて、第1接点スイッチ231および第2接点スイッチ232の少なくとも1つをオフにする。これにより、定着させる用紙のサイズに応じた消磁コイルをオフにする。このS112の処理は、S12の処理と対応する処理である。このS112の処理により、加熱温度が低い第2加熱部および第3加熱部の少なくとも1の駆動を開始できる。S112の処理の後、S114に進む。S114においては、第2センサが第2閾値Th2以上であるか否かが判断される。S114でYESと判断されたときには、S22に移行する。
S114で第2センサ272が第2閾値Th2以上であると判断された場合というのは、第2加熱部または第3加熱部の加熱温度が高すぎるということである。S114の処理でYESと判断された場合には、S22に進む。また、S22の処理の終了後、S24に進む。
また、S24でYESと判定された後のS126では、加熱コイル203に供給される電力を0にする。このS126の処理により、「インバータ電源部200内のスイッチング素子における定格を超えてしまい、インバータ電源部200の部品が破損するという問題」を極力解消できる。S126の処理の終了後、S128に移行する。S128においては、定着させる用紙のサイズに応じて、第1接点スイッチ231および第2接点スイッチ232のうち、少なくとも1をオンにする。
[本実施形態の奏する効果]
(1) 以下では、第1実施形態と第2実施形態とをまとめて、「本実施形態」という。本実施形態では、図3および図11に示すように、制御部(制御部62、制御基板250)は、同一の制御信号(PWM信号、電力指令信号)により、第1加熱部(第1ヒータ41、第1加熱部203A)の駆動および第2加熱部(第2ヒータ42、第2加熱部203B、第3加熱部203C)の駆動を実行する。
ここで、本実施形態では、制御部は、同一の制御信号を電源部(電源部60、インバータ電源部200)に対して出力することにより第1加熱部の駆動および第2加熱部の駆動を実行することができる。したがって、それぞれ異なる制御信号の出力により第1加熱部の駆動および第2加熱部の駆動を実行するものと比較して、コストを低減させることができる。
次に、第1加熱部の温度が第1目標温度となるように駆動されておりかつ第2加熱部が駆動されていない場合において、第2加熱部を駆動する場合の制御について説明する。この制御では、制御部は、電源部から供給される電力を低下させる(図5のS26、図12のS126、図9のT3の処理)。このように電力を低下させる電力低下処理を実行することにより、第1実施形態では突入電流が発生することを防止でき、第2実施形態では、インバータ電源部200内のスイッチング素子における定格を超えてしまい、インバータ電源部200の部品が破損するという問題を防止できる。
さらに本実施形態では、電力低下処理の前に、目標温度を高く設定する処理を実行する(図5および図12のS22、図9のT2〜T3の処理)。このような処理を実行することにより、第1加熱部の温度が低温オフセット温度となってしまうことを防止できる(図10(A)参照)。
(2) また、印刷ジョブの実行中において、用紙の端部の温度を検出する温度検出部(図4の第2センサ72、図11の第2センサ272)を備える。また、第2加熱部のソフトスタートを実行する条件は、「温度検知部により検知された温度(第2加熱部の温度)が第1閾値Th1以下になった」というS14の条件(図5参照)を含む。第2加熱部の温度が第1閾値Th1より高いということ(S14の条件を満たさないということ)は、第2加熱部の温度がある程度高いということである。そうすると、第2加熱部については、駆動させなくても(ソフトスタートさせなくても)、用紙の端部のトナー像を定着できる。このように、S14の条件を満たしていないときには、ソフトスタートを実行しないことから、S14の条件が成立しているか否かに関わらずソフトスタートを実行する画像形成装置と比較して処理量を削減できる。
(3) また、第1閾値Th1は、図7で説明したように、用紙の種類(図7の例では、用紙の坪量)および画像形成装置1501の環境(図7の例では、画像形成装置1501内の温度)のうち少なくとも1つに応じて定めれられる。したがって、本実施形態の画像形成装置1501は、S14の判断処理において細やかな判断処理を実行することができる。
(4) また、第1実施形態において、第2加熱部のソフトスタートを実行する条件は、「第2加熱部が駆動されていない期間が閾値期間以上となる」という条件(S18参照)を含む。第1実施形態で説明したように、S18でNOと判定された場合、つまり、第2ヒータ42中のフィラメントの温度が高い状態である場合には、S22〜S32の処理を実行しなくても、突入電流が発生しない、または突入電流が発生しても、電源部60内のIGBTなどの素子を破壊するほどではない。したがって、第2加熱部のソフトスタートを実行する条件に、S18の条件を含めることにより、S22〜S32の処理を実行する必要がないことから、S18の条件が成立しているか否かに関わらずS22〜S32の処理を実行する画像形成装置と比較して、速やかに第1加熱部および第2加熱部を第1目標温度に到達させることができる。
(5) また、制御部は、目標温度を高く設定する処理として、現状の目標温度(第1目標温度)を、該目標温度よりも高い目標温度(第2目標温度)に設定する。したがって、目標温度を適切に高めることができる。なお、変形例として、第2目標温度を設定せずに、第1加熱部に供給する電力を増加させる処理(たとえば、第1実施形態であれば、Duty比を増加させる処理)を実行するようにしてもよい。このような構成であっても、目標温度を適切に高めることができる。
(6) 第2目標温度は、図8などでも説明したように、用紙の種別、画像形成装置の環境、および定着装置の駆動時間のうち少なくとも1つにより定まる。したがって、本実施形態の制御部は、細やかな第2目標温度を設定することができる。
(7) また、第2加熱部に供給される電力を徐々に上げる処理を実行することにより、前記第2加熱部の駆動は実行される(図5および図12のS30のソフトスタート参照)。これにより、例えば、突入電流が発生することを防止できる。
(8) また、第1加熱部は、用紙の搬送方向(進行方向)M1において、用紙の中央部を加熱し、第2加熱部は、用紙の搬送方向(進行方向)M1において、用紙の端部を加熱する。このように、本実施形態の画像形成装置では、用紙のサイズに応じた加熱部で該用紙を加熱する(トナー像を定着させる)ことがら、用紙のサイズに応じて細やかな定着処理を実行することができる。
[その他]
(1) 本実施形態では、画像形成装置1501の環境とは、画像形成装置1501の機内の温度であるとして説明した。しかしながら、画像形成装置1501の環境は他の要素としてもよい。たとえば、画像形成装置1501の環境は、画像形成装置1501の周囲の温度としてもよい。また、画像形成装置1501の機内の湿度としてもよい。
また、印刷中の用紙の種類とは、用紙の坪量として説明した。しかしながら、用紙の種類は、用紙の坪量に限らない。たとえば、印刷中の用紙の種類とは、たとえば、上質紙、光沢紙、コート紙、マットコート紙、特殊紙などとしてもよい。
(2) 本発明の本質的な部分は、フラッシュメモリその他の記憶媒体に格納されたソフトウェア、あるいはネットワークを介してダウンロード可能なソフトウェアであるともいえる。なお、記録媒体としては、DVD-ROM、CD−ROM、FD、ハードディスクに限られず、磁気テープ、カセットテープ、光ディスク、光カード、マスクROM、EPROM、EEPROM、フラッシュROMなどの半導体メモリ等の固定的にプログラムを担持する媒体でもよい。また、記録媒体は、当該プログラム等をコンピュータが読取可能な一時的でない媒体である。また、ここでいうプログラムとは、CPUにより直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム形式のプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む。
また、今回開示された各実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、実施の形態および各変形例において説明された発明は、可能な限り、単独でも、組合わせても、実施することが意図される。