JP2019100178A - 耐火シート及びその巻回体 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱収縮率が低減された巻回体を提供すること。【解決手段】巻回体1は、巻芯4の周囲に耐火性樹脂組成物からなる耐火性シート2を巻回してなる。巻芯4と耐火性シート2との間には合成樹脂発泡体を含む緩衝材3が配置されている。【選択図】図1

Description

本発明は、耐火シート及びその巻回体に関する。
住宅等の構造物に耐火性を付与するために、従来、樹脂成分に耐火性材料を含有させた耐火性樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材が使用されている。このような耐火材は耐火シートの形で使用されているが、施工しやすさ、部品加工のしやすさから、耐火シートの長尺化が要望されている。そのような耐火シートとして、例えば特許文献1にはポリ塩化ビニル樹脂と熱膨張性黒鉛とを含有する耐火性樹脂組成物からなり、60℃,6時間の加熱処理の条件下での熱収縮率が5%以下である耐火シートが開示されている。
特開2017−141661号公報
しかしながら、従来の長尺の耐火シートは、巻芯の上に直接耐火シートを巻き取っている。このため、耐火シートの巻回体の製造工程で熱を加えると収縮による剥がれが生じたり、寸法が足りなくなったり、現場で耐火シートの寸法に狂じやすいという問題があった。
本発明の一つの目的は、熱収縮率が低減された耐火シート及びその巻回体を提供することにある。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく、巻芯と耐火シートの間に反発性と加熱時の変形性とを備えた緩衝材の層を設けることで、加熱処理後の耐火シートの熱収縮率を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の項に記載の主題を包含する。
項1.巻芯の周囲に耐火性樹脂組成物からなる耐火性シートを巻回してなる巻回体であって、前記巻芯と前記耐火性シートとの間に緩衝材が配置されて緩衝層を構成し、前記緩衝層の厚みが0.5mm以上であり、25%圧縮応力が20kPa以上であり、圧縮永久歪が10%以上である、巻回体。
項2.前記緩衝材が前記巻芯の上に巻回されたシート状の合成樹脂発泡体である項1に記載の巻回体。
項3.前記緩衝材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂、及びメラミン樹脂から成る群から選択された少なくとも一種の合成樹脂より形成されている項1又は2記載の巻回体。
項4.耐火性樹脂組成物からなる耐火シートであって、60℃、6時間の加熱条件下でのMD方向の熱収縮率が0.5%以下である耐火シート。
項5.巻芯の周囲に緩衝材を配置して緩衝層を構成する工程と、
前記緩衝層の周囲に耐火性樹脂組成物からなる耐火シートを巻回して巻回体とする工程と、を有し、
前記緩衝層の厚みが0.5mm以上であり、25%圧縮応力が20kPa以上であり、圧縮永久歪が10%以上である、巻回体の製造方法。
本発明の耐火シート及びその巻回体は熱収縮率が小さいため、特に現場での施工性に優れている。
本発明の第1実施形態の巻回体の略斜視図。 図1の巻回体をシート状態に延ばした状態の略斜視図。
本発明の実施形態の巻回体及び耐火シートを、図面を参照しながら説明する。
図1に示される本発明の一実施形態の巻回体1は、巻芯4の周囲に耐火性樹脂組成物からなる耐火性シート2を巻回してなる。巻芯4と耐火性シート2との間には緩衝材5が配置されて、緩衝層を構成している。巻芯4には巻き取り機のロッド3が挿通されており、ロッド3の回転により耐火性シート2は巻き取られる。巻芯4の材料は特に限定されず、例えば紙、合成樹脂、金属、又はそれらの組み合わせ等から形成することができる。巻芯4は50〜150℃、1〜24時間程度の加熱処理においても変形及び変質しないことが好ましい。
緩衝材5はシート状の合成樹脂発泡体であり、緩衝材5を巻芯4に沿って湾曲させることにより巻芯4の周囲へ巻き付けることができ、これにより緩衝層が構成される。緩衝材5は巻芯4の全周に1回又は複数回巻回することができる。巻芯4に巻き付けた時の緩衝材5の厚み(すなわち、緩衝層の厚み)は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、さらに好ましくは2mm以上である。緩衝層の厚みの上限は特に限定されないが50mm以下、好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下とされる。
合成樹脂発泡体を構成する材料は、圧縮に対して緩衝性を発揮する合成樹脂材料であれば特に限定されない。例えば、係る材料としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂、及びメラミン樹脂から成る群から選択された少なくとも一種の合成樹脂が挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びポリウレタンから成る群から選択された少なくとも一種の合成樹脂が好ましい。
図2に示すように、図1の巻回体1を、耐火シート2が平面状になるように延ばすと、Xが耐火シート2の長さ、Yが耐火シート2の幅、Zが耐火シート2の厚みである。本発明では、耐火シート2の全長Xは好ましくは2m以上であり、上限値は好ましくは1000m以下であり、全長Xはより好ましくは200m以上である。耐火シート2の幅Yは特に限定されないが、好ましくは0.03m以上5m以下である。耐火シート2の厚みZは特に限定されないが、好ましくは下限値は0.5mmであり、上限値は100mm以下である。より好ましくは厚みZは1mm以上5mm以下である。全長Xを長くすることで、耐火シート2の長尺化が可能である。
「MD」は、耐火シート2の成形時の耐火性樹脂組成物の流動方向(MD方向)を指し、「TD」は耐火性樹脂組成物の流動方向に直角な直角方向(TD方向)を指す。好ましくは、60℃、6時間の加熱条件下での耐火シート2のMD方向の熱収縮率が0.5%以下である。より好ましくは、60℃、6時間の加熱条件下での耐火シート2のMD方向及びTD方向の熱収縮率がともに0.5%以下である。
耐火シート2の熱収縮率は、耐火性樹脂組成物の製造時のアニーリングにより改善することができる。90℃、6時間の加熱処理は通常用いられる耐火シート2のアニーリングの条件である。
理論に束縛されることを望まないが、本願発明の実施形態の巻回体1は、巻芯4の上に緩衝材5を巻き付けたときに有る程度の大きさの圧縮応力が生じるが、巻芯4と耐火性シート2との間に緩衝材5を備えることにより巻回体1をアニーリングしたときに緩衝材5が有る程度変形する。このため、耐火シート2が緩衝材5の遊びにより適度にアニーリングされ、従来の紙芯等の巻芯のみを使用した場合に比べて加熱処理後の耐火シート2の熱収縮率が小さくなると考えられる。
巻芯4の上に緩衝材5を巻き付けて構成された緩衝層の25%圧縮応力は限定されないが、20kPa以上であることが好ましく、30kPa以上であることがより好ましく、30〜1000kPaであることがさらに好ましい。
また、巻芯4の上に緩衝材5を巻き付けて構成された緩衝層の圧縮永久歪は限定されないが、10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましい。緩衝層の圧縮永久歪の上限は特に限定されないが、24%以下、より好ましくは22%以下とされる。
なお、緩衝層の25%圧縮応力は、JIS K6767の方法に従って測定することができる。具体的には、30mm角にカットした緩衝材を複数積み重ねて厚さ10mm以上にして試験片とする。その試験片を3個用意する。その後、測定装置(ORIENTEC社製、製品名「TENSILON RTG−1250」)を用いて、3個の試験片の25%圧縮応力を測定し、その平均値を25%圧縮応力とした。
また、緩衝層の圧縮永久歪は、JIS K6767に準拠して測定することができる。具体的には、30mm角にカットした緩衝材を複数積み重ねて厚さ25mm以上にして試験片とする。その試験片を3個用意する。その厚みから25%ひずんだ状態に圧縮し、温度70℃において22時間放置する。圧縮終了後の厚さを測定する。以下の式にて、圧縮永久歪を算出した。
圧縮永久歪(%)=(試験片の初めの厚さ−試験片の試験後の厚さ)/試験片の初めの厚さ×100
3個の試験片の圧縮永久歪を測定し、その平均値を圧縮永久歪とした。
なお、図1及び2では巻回体1を延ばした全長を耐火シート2としているが、巻回体1を長手方向及び/又は幅方向に切断して巻回体1の一部となった耐火シート2も耐火シート2に含まれる。
次に、耐火シート2を構成する耐火性樹脂組成物について詳しく説明する。
耐火シート2を構成する耐火性樹脂組成物は、樹脂成分としてのバインダー樹脂に、熱膨張性黒鉛と、無機充填剤とを含む。
樹脂成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー、ゴム物質、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1−)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は、エポキシ基をもつエポキシ化合物と硬化剤とを反応させることにより得られる。
エラストマーの例としてはオレフィン系エラストマー(TPO)、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、これらの組み合わせ等が挙げられる。
ゴム物質としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。
これらの合成樹脂、エラストマー及び/又はゴム物質を、一種もしくは二種以上使用することができる。
これらの合成樹脂、エラストマー及び/又はゴム物質の中でも、柔軟でゴム的性質を有しているものが熱膨張性黒鉛及び無機充填剤を高充填することが可能であり、得られる耐火性樹脂組成物が柔軟で扱い易いものとなる点で好ましい。より柔軟で扱い易い耐火性樹脂組成物を得るためには、ブチル等の非加硫ゴムおよびポリエチレン樹脂が好適に用いられる。代わりに、樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。耐火性の点では、ポリ塩化ビニル樹脂が好ましい。
熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものである。無機酸としては濃硫酸、硝酸、セレン酸等が挙げられる。強酸化剤としては濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等が挙げられる。膨張性黒鉛は炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等でさらに中和してもよい。熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュかそれより値が小さいと、黒鉛の膨張度が膨張断熱層を得るのに十分であり、また粒度が20メッシュかそれより値が大きいと、樹脂に配合する際の分散性が良く、物性が良好である。
無機充填剤は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させる。無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;難燃剤としての無機リン酸塩;硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は一種もしくは二種以上を使用することができる(ただし下記のリン化合物は除く)。
無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウムでは、粒径18μmの「ハイジライトH−31」(昭和電工社製)、粒径25μmの「B325」(ALCOA社製)、炭酸カルシウムでは、粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(備北粉化工業社製)、粒径8μmの「BF300」(備北粉化工業社製)等が挙げられる。
前記耐火性樹脂組成物は、前記樹脂成分100重量部に対し、前記熱膨張性黒鉛を10〜350重量部及び前記無機充填剤を30〜400重量部の範囲で含むものが好ましい。
また、前記熱熱膨張性黒鉛及び前記無機充填剤の合計は、樹脂成分100重量部に対し、50〜600重量部の範囲が好ましい。
前記耐火性樹脂組成物における熱熱膨張性黒鉛及び無機充填剤の合計量は、50重量部以上では燃焼後の残渣量を満足して十分な耐火性能が得られ、600重量部以下であると機械的物性が維持される。
かかる耐火性樹脂組成物は加熱によって膨張し耐火断熱層を形成する。この配合によれば、前記熱膨張性耐火材は火災等の加熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に所定の強度を有する残渣を形成することもでき、安定した防火性能を達成することができる。
さらに、耐火性樹脂組成物は、前記の各成分に加えて、可塑剤を含むことができる。樹脂成分がポリ塩化ビニル樹脂を含む場合、耐火性樹脂組成物は可塑剤を含むことが好ましい。
可塑剤としては特に限定されず、例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル系可塑剤;ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等の脂肪酸エステル系可塑剤;エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル系可塑剤;アジピン酸エステル、アジピン酸ポリエステル等のポリエステル系可塑剤;トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル系可塑剤;トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)等の正燐酸エステル系可塑剤などが挙げられ、これらは単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
上記可塑剤の使用量は、樹脂成分100重量部に対して、好ましくは20〜200重量部であり、より好ましくは30〜100重量部である。可塑剤の使用量が20重量部以上であると、充分な耐衝撃性が得られ、200重量部以下であると、難燃性が発揮される。また、熱膨張性黒鉛や無機充填剤を含む場合は、加工条件によっては耐火シートを長尺化した際にシートが硬くなるためことがあるため、可塑剤の使用量は樹脂成分100重量部に対して80重量部以上であることが好ましい。
さらに、熱膨張性耐火材を構成する耐火性樹脂組成物は、膨張断熱層の強度を増加させ防火性能を向上させるために、前記の各成分に加えて、さらにリン化合物を含んでもよい。
リン化合物としては特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム;ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレム;低級リン酸塩;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、防火性能の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、及び、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、コスト等の点においてポリリン酸アンモニウムがより好ましい。
化学式(1)中、R1およびR3は、同一又は異なって、水素、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、炭素数6〜16のアリール基を示す。R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、または、炭素数6〜16のアリールオキシ基を示す。
赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。
リン酸エステルとしては、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル(TCP)、リン酸トリキシレニル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸キシレニルジフェニル等のリン酸アリールエステル;リン酸アルキルエステル;ビスフェノールAビス、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェートならび等のビスフェノール系芳香族縮合リン酸エステル等が挙げられる。ただし、上記の可塑剤であるものは除く。好ましいリン酸エステルはリン酸トリクレジル(TCP)である。
リン酸金属塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等が挙げられる。
ポリリン酸アンモニウム類としては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取り扱い性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、Budenheim Iberica社製「FR CROS 484」、「FR CROS 487」等が挙げられる。
化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
リン化合物が用いられる場合、例えばリン化合物は、樹脂成分100重量部に対して、上記リン化合物と上記熱熱膨張性黒鉛との合計量が20〜400重量部となるよう含有される。
さらに本発明に使用する前記耐火性樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂、成型補助材等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
前記耐火性樹脂組成物は、火災時などの高温にさらされた際にその膨張層により断熱し、かつその膨張層の強度があるものであれば特に限定されないが、50kW/m2の加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3〜50倍のものであれば好ましい。前記体積膨張率が3倍以上であると、膨張体積が前記樹脂成分の焼失部分を十分に埋めることができ、また50倍以下であると、膨張層の強度が維持され、火炎の進入を防止する効果が保たれる。
耐火性樹脂組成物の各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等公知の装置を用いて混練し、公知の成形方法で成形することにより、耐火シート2を得ることができる。
例えば、ニーダーミキサーで混練した耐火性樹脂組成物の成分の混合物を逆L字型カレンダーでシート上に成型し、冷却ロールで一旦冷却した後、アニール炉で高温(例えば120℃)の熱風を吹き付ける。その後、シートを再度冷却ロールを通した後に、巻取り機にて、緩衝材5を施しておいた巻芯4に巻取ることにより、耐火シート2を巻回体1として得ることができる。
なお、耐火シート2の表面に粘着剤層が形成されていてもよい。粘着剤層を耐火シート2の表面に塗工する方法は特に限定されないが、離型紙に粘着剤を塗工して耐火シート2に転写する方法、耐火シート2の片面にシリコーン離型剤等を塗布するなどの離型処理をした後に離型処理していない面に粘着剤を塗布する方法、又は両面テープを耐火シート2に貼り付ける方法などが挙げられる。
また、耐火シート2の表面に基材が形成されていてもよい。 基材は、可燃層であっても、準不燃層又は不燃層であってもよい。基材の厚みは特に限定されないが、例えば5μm〜1mmである。
可燃層に使用される素材としては、例えば、布材、紙材、木材、天然樹脂、合成樹脂等の一種もしくは二種以上を挙げることができる。
準不燃層又は不燃層に使用される素材としては、例えば、金属、無機材等の一種もしくは二種以上を挙げることができる。
布材としては、例えば、木綿、絹、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン等の織布、不織布からなるもの等を挙げることができる。
紙材としては、例えば、木材等の植物から取り出した繊維状物質、化学繊維を水等の分散媒中に分散させ、これを濾過して均一層を形成してから乾燥させた紙等が挙げられる。
紙に対して、塗料、撥水剤等を塗布して得られる加工紙、波状の紙をライナーと呼ばれる平面の紙により挟んで接着した段ボール等が挙げられる。
木材としては、例えば、天然木材から得られる木素材に限られず、木素材を含む集成木材、積層木材、積層木板等が挙げられる。
天然樹脂としては、例えば、セルロース誘導体、ゼラチン、アルギン酸塩、キトサン、プルラン、ペクチン、カラゲナン、タンパク質、タンニン、リグニン、ロジン酸等を主成分とする高分子、天然ゴム等が挙げられる。
合成樹脂としては、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ポリイソブチレンゴム、塩化ブチルゴム等の合成ゴム、
ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1−)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、
ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
金属としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス、錫、鉛、錫鉛合金、銅等が挙げられる。
また金属として金属箔を使用することが好ましく、前記金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、鉄箔、ステンレス箔、錫箔、鉛箔、錫鉛合金箔、銅箔等が挙げられる。
無機材としては、例えば、グラスウール、ロックウール、セラミックウール、石膏繊維、炭素繊維、ステンレス繊維、スラグ繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等が挙げられる。無機繊維層は、前記無機繊維を用いた無機繊維クロスを使用することが好ましい。また無機繊維層に使用する無機繊維は、金属箔をラミネートしたものを使用することが好ましい。
金属箔ラミネート無機繊維の具体例としては、例えば、アルミニウム箔ラミネートガラスクロス、銅箔ラミネートガラスクロス等がさらに好ましい。
一実施形態では、基材が不織布である。この場合、破断防止などの耐火性シート2の保護の点で優れている。
耐火シート2は、構造体、特には窓、障子、扉(すなわちドア)、ふすま、及び欄間等の建具;船舶;車両;並びにエレベータ等の構造体に耐火性を付与するために使用され得る。特にはこれらの構造体の開口部又は間隙の密封及び防火に使用される。例えば、耐火シート2は、建具の気密性又は水密性を改善するためのタイト材やシール材等の気密材として使用され得る。構造体は金属製、合成樹脂製、木製、又はそれらの組み合わせ等の任意の材料から構成されていてもよい。なお「開口部」は構造体と他の構造体との間又は構造体中に存在する開口部を指し、「間隙」は開口部の中でも向かい合う2つの部材又は部分間に生じる開口部を指す。
以上、本発明の実施形態の巻回体1及び耐火シート2について説明したが、本発明はこれに限られず、以下のような種々の変形が可能である。
上記の実施形態では、緩衝材5をシート状の合成樹脂発泡体としたが、巻芯4の周囲への緩衝材5の適用方法としては、これに限らず、液状の発泡性合成樹脂を巻芯4に吹付け、噴霧又は塗布して乾燥、硬化する等により巻芯4上に合成樹脂発泡体の緩衝材5を形成することもできる。
上記の実施形態では、巻芯4の上に緩衝材5が直接配置されているが、巻芯4と緩衝材5の間には別の部材が存在してもよい。
耐火シート2を構成する耐火性樹脂組成物は、熱熱膨張性黒鉛と、無機充填剤とを両方含有しなくてもよく、熱熱膨張性黒鉛及び無機充填剤のいずれか一方を含有してもよい。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.耐火シートの製造
表1に示した各成分を混練ロールで混合し、試験例1の塩ビ系耐火性樹脂組成物を製造した。表中の各成分の単位を質量部で示す。各成分の入手先は以下の通りである。
ポリ塩化ビニル 製品名 TK1000 信越化学工業株式会社
熱膨張性黒鉛 製品名 GREP−EG 東ソー株式会社
可塑剤 製品名 DIDP (ジイソデシルフタレート)株式会社ジェイ・プラス
炭酸カルシウム 製品名 ホワイトンBF−300 備北粉化株式会社
リン化合物 製品名 AP422 ポリリン酸アンモニウム クラリアント社
2.巻回体の準備
巻き取り機のロッドに、巻芯の直径を3インチ(約7.6cm)とし、シート状の実施例1〜5及び比較例1〜3の各緩衝材を表1に示した厚みで一周巻き付け、巻き付けた緩衝材の上に上記に製造した耐火シート(幅30cm、長さ300cm)を巻き付けた。
実施例1 ソフトロン#1001(ポリエチレン発泡体) 積水化学株式会社製
実施例2 ソフトロン#3002(ポリエチレン発泡体) 積水化学株式会社製
実施例3 ソフトロン#3003(ポリエチレン発泡体) 積水化学株式会社製
実施例4 ソフトロン#4004(ポリエチレン発泡体) 積水化学株式会社製
実施例5 ポリプロピレン発泡体 積水化学株式会社製
実施例6 プチプチd35 川上産業株式会社製
比較例1 紙芯 製品名 ボラーラ XLIM-WF03、積水化学工業株式会社製
比較例2 ポリウレタンフォームとPETフィルムの一体成形物 製品名 SR-S-15P、株式会社ロジャースイノアック
比較例3 非発泡性のアクリロニトリルブタジエン(NBR)シート、株式会社MonotaROから購入
3.巻回体及び耐火シートの性能の評価
[圧縮応力]
緩衝材の25%圧縮強度を、JIS K6767の方法に従って測定した。具体的には、30mm角にカットした緩衝材を複数積み重ねて厚さ10mm以上にして試験片とした。その試験片を3個用意した。測定装置(ORIENTEC社製、製品名「TENSILON RTG−1250」)を用いて、3個の試験片の25%圧縮応力を測定し、その平均値を25%圧縮応力とした。
[圧縮永久歪]
緩衝材の圧縮永久歪をJIS K6767に準拠して測定した。具体的には、30mm角にカットした緩衝材を複数積み重ねて厚さ25mm以上にして試験片とした。その試験片を3個用意した。その厚みから25%ひずんだ状態に圧縮し、温度70℃において22時間放置した。圧縮終了後の厚さを測定した。下記式に従い、圧縮永久歪を算出した。その平均値を圧縮永久歪とした。
圧縮永久歪(%)=(試験片の初めの厚さ−試験片の試験後の厚さ)/試験片の初めの厚さ×100
[熱収縮率]
実施例1〜6及び比較例1〜3の巻回体をJIS K 7133に準拠して60℃で6時間の加熱条件で加熱し、加熱前後の展開した耐火シートのMD方向の寸法を測定した。熱収縮率(%)=(加熱前の耐火シートのMD方向の寸法−加熱後の耐火シートのMD方向の寸法)/(加熱前の耐火シートのMD方向の寸法)×100を計算し、0.5%以下の場合を○、0.5%超の場合を×と評価した。
結果を表1に示す。
実施例1〜6の耐火シートはMD方向の熱収縮率が小さかったが、比較例1の耐火シートはMD方向の熱収縮率が大きかった。また、比較例2及び比較例3の緩衝材は圧縮応力及び圧縮永久歪が不良であり、MD方向の熱収縮率が大きかった。
1・・・巻回体、2…耐火シート、3…ロッド、4…巻芯、5…緩衝材。

Claims (5)

  1. 巻芯の周囲に耐火性樹脂組成物からなる耐火性シートを巻回してなる巻回体であって、前記巻芯と前記耐火性シートとの間に緩衝材が配置されて緩衝層を構成し、
    前記緩衝層の厚みが0.5mm以上であり、25%圧縮応力が20kPa以上であり、圧縮永久歪が10%以上である、巻回体。
  2. 前記緩衝材が前記巻芯の上に巻回されたシート状の合成樹脂発泡体である請求項1に記載の巻回体。
  3. 前記緩衝材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂、及びメラミン樹脂から成る群から選択された少なくとも一種の合成樹脂より形成されている請求項1又は2記載の巻回体。
  4. 耐火性樹脂組成物からなる耐火シートであって、60℃、6時間の加熱条件下でのMD方向の熱収縮率が0.5%以下である耐火シート。
  5. 巻芯の周囲に緩衝材を配置して緩衝層を構成する工程と、
    前記緩衝層の周囲に耐火性樹脂組成物からなる耐火シートを巻回して巻回体とする工程と、を有し、
    前記緩衝層の厚みが0.5mm以上であり、25%圧縮応力が20kPa以上であり、圧縮永久歪が10%以上である、巻回体の製造方法。
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