JP2019099800A - 耐エタノール性に優れた本革製品 - Google Patents

耐エタノール性に優れた本革製品 Download PDF

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Abstract

【課題】車両内装材やインテリア資材などの長期の使用用途において、十分な耐久性、特には、耐エタノール性、耐オレイン酸性、耐摩耗性を有する本革製品を提供する。【解決手段】本革基材の表面に、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含みカルボジイミド系架橋剤により架橋された樹脂層である多孔質ベースコート層、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含んでなるカラーコート層、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含みイソシアネート系架橋剤により架橋された樹脂層であるトップコート層が順次積層されてなる本革製品であって、耐エタノール性が合格である本革製品である。【選択図】 図1

Description

本発明は本革製品に関する。詳しくは、耐エタノール性、耐オレイン酸性、耐摩耗性を有する本革製品に関する。
本革製品は、通常、鞣処理などが施された本革基材の表面に、ポリウレタン樹脂とアクリル樹脂とからなるベースコート層、および、ポリウレタン樹脂からなるトップコート層が、順次積層された構造を有する。ここで、ベースコート層とは、本革基材の表面に位置する銀面層を被覆し、傷などを隠すとともに、トップコート層との密着性を向上させることを主目的として形成される最下層の樹脂層である。また、トップコート層とは、色や光沢、風合い、触感などを調整するとともに、耐摩耗性を向上させることを主目的として形成される最上層(最表層)の樹脂層である。さらに、必要に応じて、ベースコート層とトップコート層との間にミドルコート層が形成されることもある。
このような本革製品は、その特有の柔らかな風合いと高級感から、衣料、鞄、靴、インテリア資材、車両内装材など、様々な分野で用いられている。このうち、インテリア資材、車両内装材などに用いられた場合、過酷な使用状況に置かれることから、高度な耐久性が求められる。
インテリア資材、車両内装材などに用いられた場合、繰り返し使用して汚れても、取り外して洗濯することが不可能、あるいは非常に困難である。そのため、定期的に表面を拭くとともに、汚れが付着するたびに、その汚れを水やごく薄い洗浄液やアルコール水溶液で拭き取ったり、掃除機で吸引したりすることが行われている。しかし、アルコール水溶液は、天然皮革製品の塗膜、特に、塗膜の一部が多孔質層で形成されているような態様の皮革においては、塗膜が膨潤して塗膜破れが生じるという課題がある。したがって、アルコールに対する耐久性が強く求められている。
耐エタノール性が改善された皮革製品として、特許文献1には、含フッ素樹脂塗膜を最外層に有する皮革を開示している。しかしながら、長期の使用用途、例えば、車両内装材やインテリア資材などの用途においては、十分な耐エタノール性を有する本革製品は未だ得られていないのが現状である。
特開2000−54000号公報
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両内装材やインテリア資材などの長期の使用用途において、十分な耐久性、特には、耐エタノール性、耐オレイン酸性、耐摩耗性を有する本革製品を提供することである。
本発明の実施形態に係る本革製品は、本革基材の表面に、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含みカルボジイミド系架橋剤により架橋された樹脂層である多孔質ベースコート層、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含んでなるカラーコート層、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含みイソシアネート系架橋剤により架橋された樹脂層であるトップコート層が順次積層されてなる。該本革製品は、下記方法にて測定される耐エタノール性が合格である。
耐エタノール性測定方法:
1)前記本革製品からタテ50mm、ヨコ120mmの大きさの試験片を採取する。
2)試験片を、摩擦試験機I形のテーブルに、両面テープで固定する。
3)99.5体積%エタノールを0.7g含ませた15mm四方のフェルトを、5cm四方のガーゼ(JIS L0803準拠、呼び番号1−1)に包んだものを摩擦用白布として、該摩擦用白布を摩擦子(2cm四方の平板)の先端に両面テープで取り付ける。面圧が444g/cm(即ち、4.3512N/cm)になるよう摩擦子に荷重9.8N(即ち、1000gf)をかけた状態で、ストロークを100mmとし、往復50回/分のサイクルにて、摩擦用白布を試験片に摩擦させ、500回毎にトップコート層の塗膜の状態を確認する。500回毎にエタノールを0.7g追加しながら、トップコート層の塗膜に異常(破れなど)が認められるまで、最大10000回まで摩擦操作を行う。
4)1000回後にトップコート層の塗膜に異常の認められないものを合格とする。
前記多孔質ベースコート層を構成するポリカーボネート系ポリウレタン樹脂に対するカルボジイミド系架橋剤の配合量(固形分質量基準)が、3〜7質量%であることが好ましい。
本発明によれば、車両内装材やインテリア資材などの長期の使用用途において、十分な耐久性、特には、耐エタノール性、耐オレイン酸性、耐摩耗性を有する本革製品を提供することができる。
一実施形態に係る本革製品の断面模式図である。
本実施形態の本革製品は、本革基材の表面に、ポリカーボネート系ウレタン樹脂とカルボジイミド系架橋剤を含んでなる多孔質ベースコート層、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含んでなるカラーコート層、ポリカーボネート系ウレタン樹脂とイソシアネート系架橋剤を含んでなるトップコート層が順次積層されてなる本革製品であって、上述の方法にて測定される耐エタノール性が合格であることを特徴とするものである。
前記多孔質ベースコート層は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含み、カルボジイミド系架橋剤により架橋された樹脂層である。多孔質ベースコート層を、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を用いて形成することにより、車両内装材、特には、車両内装表皮材に求められる耐オレイン酸性を満足することができる。さらに、架橋剤としてカルボジイミド系架橋剤を用いることにより、車両内装材、特には、車両内装表皮材に求められる耐エタノール性を満足することができる。
そして、このベースコート層の表面に、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を用いて形成されるカラーコート層を積層することにより、さらに耐オレイン酸性を向上させることができる。
前記トップコート層は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含み、イソシアネート系架橋剤により架橋された樹脂層である。上記カラーコート層の表面に、ポリカーボネート系ウレタン樹脂とイソシアネート系架橋剤とを用いて形成されるトップコート層を積層することにより、車両内装表皮材に求められる耐オレイン酸性と耐エタノール性を満足しつつ、その他の物性、例えば、耐摩耗性を向上させることができる。
図1は、一実施形態に係る本革製品1の断面構造を模式的に示したものである。本革製品1では、本革基材2上に、多孔質ベースコート層3、カラーコート層4、及びトップコート層5が、この順に積層されている。
本実施形態に用いられる本革基材(床革も含む)は特に限定されるものでなく、原料として、例えば、牛、馬、豚、山羊、羊、鹿、カンガルーなどの哺乳類、ダチョウなどの鳥類、ウミガメ、オオトカゲ、ニシキヘビ、ワニなどの爬虫類などに由来するものを挙げることができる。なかでも、汎用性が高く、面積が大きな牛皮が好ましい。生皮そのものや、塩漬けにしたりして腐敗を防いだものを原皮といい、この状態のものが製革工程に供される。
動物の皮(原皮)を鞣して、耐久性(耐熱性、耐腐敗性、耐薬品性など)を付与するとともに、革らしさを引き出したものを「本革」(単に「革」ともいう)と呼び、鞣していない「皮」とは区別される。
製革工程は、一般に、大きく、鞣し工程、染色工程、仕上げ工程に分けられ、さらに細かく、次のように分けられる。
鞣し工程;原皮、水漬け・背割り、裏打ち、脱毛・石灰漬け、分割、再石灰漬け、脱灰・酵解、浸酸、鞣し。
染色工程;水戻し、水絞り・選別、シェービング、再鞣し、染色・加脂、セッティングアウト、乾燥、味取り、ステーキング(揉み、叩き)、張り乾燥、銀むき。
仕上げ工程;塗装、裏吹き塗布、アイロン掛け・型押し、艶出し。
個々の工程については改良が進められているものの、技術的におおよそ定まった工程であるといってよく、当業界において公知である。もっとも、一部順序が変わったり、省略されたり、複数回行われたり、あるいは、他の工程に置き換わったりする場合がある。
塗装に先立ち、通常、銀むきを施す。銀むきは、銀面の表面を削り取ることで、表面を平滑化し、個体差や部位差、虫食い、引っ掻き傷、皮膚病痕など、外観品位に影響を及ぼす要素を取り除き、均一化するための工程である。通常であれば、銀むきを施すが、動物の革本来の意匠を生かすことを目的として銀むきを施さない場合もある。
また、本革基材として床革を用いる場合は、同様の理由により塗装に先立ち、床革の表面にバフ加工を施す。
本実施形態においては、張り乾燥、銀むき、あるいはバフ加工までを経た本革を、本革基材として用いることができる。なお、本明細書においては、塗装前の本革を「本革基材」と呼び、塗装後の本革を「本革製品」と呼んで、便宜上区別する。
本革基材の厚さは1.0〜1.4mmであることが好ましく、より好ましくは1.1〜1.3mmである。厚さが1.0mm以上であることにより、得られた製品の強度が損なわれることを防ぐことができる。厚さが1.4mm以下であることにより、風合が粗硬になることを防ぐことができる。本実施形態において、本革基材の厚さは、以下のようにして求めることができる。すなわち、本革基材を背線に平行方向(タテ方向)に3等分、背線に垂直方向(ヨコ方向)に3等分して分割した9区画の中心部の厚さを、革ゲージ大 CALATI(CALATI製)を用いて、それぞれ測定し、これらの平均値を算出することにより求めることができる。
本革基材のBLC値は、得られる本革製品の風合いの観点から4.0以上であることが好ましい。本実施形態において、本革基材のBLC値は、以下のようにして求めることができる。すなわち、150mm四方(即ち、150mm×150mm)の大きさの試験片を1枚採取し、触感計測器(商品名「ST300 Leather Softness Tester」、BLC Leather Technology Center Ltd.製)を用いて、500gの荷重で押し込んだときの、歪み測定値(BLC値)を測定することで求めることができる。
本革基材の表面(一般的には銀面側)に塗装を施すことにより、第1の樹脂層として、上記多孔質ベースコート層を形成する。多孔質ベースコート層を形成する樹脂の一部に耐オレイン酸性に優れたポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を用いることにより、本革製品に耐オレイン酸性を付与することができる。また、架橋剤としてカルボジイミド系架橋剤を用いることにより、車両内装材、特には、車両内装表皮材に求められる耐エタノール性を満足することができる。
多孔質ベースコート層に用いられる樹脂としては、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含有することが肝要である。
多孔質ベースコート層に用いられる樹脂に対するポリカーボネート系ウレタン樹脂の配合量(固形分質量基準)は、特に限定されないが、耐オレイン酸性および耐エタノール性の観点から、19〜41質量%であることが好ましい。配合量が19質量%以上であることにより、耐オレイン酸性および耐エタノール性を向上させることができる。配合量が41質量%以下であることにより、風合や触感が粗硬になることを防ぐことができる。
なお、多孔質ベースコート層を形成する組成物全体に対するポリカーボネート系ウレタン樹脂の含有量は、特に限定されないが、固形分換算で、例えば10〜30質量%でもよい。
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、ポリカーボネートジオール成分とジイソシアネート成分とを反応させて得られるものである。
ポリカーボネートジオール成分としては、例えば、ポリエチレンカーボネートジオール、ポリブチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等のポリアルキレンポリカーボネートジオールなどを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
また、ジイソシアネート成分としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートあるいは脂環族ジイソシアネートなどを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
ポリカーボネート系ウレタン樹脂は、無溶剤系(無溶媒系)、ホットメルト系、溶剤系、水系を問わず、さらには、一液型、二液硬化型を問わず使用可能であり、その目的と用途に応じて適宜選択すればよい。なかでも、環境負荷の観点から、水系、一液型であることが好ましい。
多孔質ベースコート層を形成するポリカーボネート系ウレタン樹脂に架橋剤としてカルボジイミド系架橋剤を組み合わせて用いることが肝要である。カルボジイミド系架橋剤が有するカルボジイミド基は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂が有するカルボキシル基と反応してN−アシルウレアを形成し、三次元の架橋構造を形成することで、本革基材とベースコート層との密着性を向上させ、耐エタノール性を高めることができる。
カルボジイミド系架橋剤としては、カルボジイミド基を2つ以上有するものが好ましく、例えば、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニルカルボジイミド)等の芳香族ポリカルボジイミド;ポリ(ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等の脂環族ポリカルボジイミド、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミドなどを挙げることができる。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
カルボジイミド系架橋剤は、市販のものを用いることができる。なかでも環境負荷の観点から水溶性または水分散性(エマルジョンタイプ)が好ましく用いられる。
ポリカーボネート系ウレタン樹脂に対するカルボジイミド系架橋剤の配合量(固形分質量基準)は、3〜7質量%であることが好ましく、より好ましくは6〜7質量%である。配合量が3質量%以上であることにより、耐エタノール性を高めることができる。配合量が7質量%以下であることにより、風合や触感が粗硬になることを防ぐことができる。
本実施形態におけるベースコート層は多数の閉塞孔(すなわち、貫通していない閉じた孔)を有する多孔質ベースコート層であることが好ましい。多孔質であることにより、熱が伝わりにくくなり、表皮材が外気温による影響を受けにくく、接触冷温感の低い本革製品とすることができる。
閉塞孔の大きさは、特に限定されず、例えば、閉塞孔の長径が20〜60μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは30〜50μmの範囲である。閉塞孔の長径が20μm以上であることにより、接触冷温感の改善効果を高めることができる。また、閉塞孔の長径が60μm以下であることにより、天然皮革の素材感、特には、風合や皺入りが損なわれることを防ぐことができる。
多孔質ベースコート層に多数の閉塞孔を形成する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、機械の撹拌による物理的発泡、発泡剤添加による化学発泡、または、中空微粒子の添加による閉塞孔形成が挙げられる。好ましくは、閉塞孔の形状や大きさが調整しやすいという観点から、中空微粒子の添加による閉塞孔形成がよい。すなわち、本実施形態において、多孔質ベースコート層は、多孔質ベースコート層を形成する樹脂に中空微粒子を配合してなるものであり、多孔質ベースコート層中に多数の中空微粒子を含有しており、該中空微粒子により多数の閉塞孔が形成されていることが好ましい。
中空微粒子とは、内部の微小な空隙を、各種材料からなる皮膜(外殻、外壁などと呼ばれる)で覆った球形のものをいう。なかでも熱処理しても体積膨張を起こさないものであることが好ましい。このような中空微粒子を用いることにより、製造時の、多孔質ベースコート層の体積変動を最小限に抑え、品質のばらつきを少なくすることができるとともに、中空微粒子周辺の樹脂が引き延ばされて薄くなるのを防止し、耐摩耗性を良好なものにすることができる。
中空微粒子としては、前記条件を満足する種々のものを用いることができる。例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂または尿素樹脂などの熱硬化性樹脂や、アクリル樹脂または塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂からなる外殻を有する有機系中空微粒子を挙げることができる。あるいはまた、ガラス、シラス、シリカ、アルミナまたはカーボンなどからなる外殻を有する無機系中空微粒子を挙げることもできる。また、有機系中空微粒子の表面を、炭酸カルシウム、タルクまたは酸化チタンなどの無機微粉末で被覆したものを用いることもできる。なかでも、耐熱性、耐摩耗性、強度に優れる点から、熱可塑性樹脂からなる外殻を有する有機系中空微粒子、または、表面を無機微粉末で被覆した有機系中空微粒子が好ましい。
好ましく用いられる熱可塑性樹脂からなる外殻を有する中空微粒子としては、典型的には、マイクロカプセル型発泡剤を予め発泡させたものを用いることができる。マイクロカプセル型発泡剤自体は、熱処理により軟化且つ膨張可能な熱可塑性樹脂からなる外殻中に、低沸点炭化水素などの揮発型発泡剤を内包するものであり、熱膨張性マイクロカプセルとも称される。本実施形態においては、該熱膨張性マイクロカプセルを発泡、即ち膨張させて用いることができるほか、予め膨張させて得られた既膨張体として用いることもできる。閉塞孔の形状や大きさを調整しやすいという観点から、既膨張体が好ましい。
中空微粒子の大きさは、その長径が20〜60μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは30〜50μmの範囲である。長径が上記範囲であることにより、得られる閉塞孔の大きさを上述の20〜60μmとすることができる。
多孔質ベースコート層を構成する樹脂としては、ポリカーボネート系ウレタン樹脂とともに、ポリカーボネート系ウレタン樹脂以外のウレタン樹脂(以下、「他のウレタン樹脂」という。)および/またはアクリル樹脂などを用いてもよい。
他のウレタン樹脂としては、例えば、ポリエーテル系ウレタン樹脂および/またはポリエステル系ウレタン樹脂が挙げられる。多孔質ベースコート層に用いられる樹脂に対する他のウレタン樹脂の配合量(固形分質量基準)は、特に限定されず、40質量%以下でもよく、5〜40質量%でもよい。
アクリル樹脂としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸アルキルエステル; メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸アルキルエステル; アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のヒドロキシ基含有アクリル酸エステル; メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のヒドロキシ基含有メタクリル酸エステル等の、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーの重合体、および、その変性物を挙げることができる。多孔質ベースコート層に用いられる樹脂に対するアクリル樹脂の配合量(固形分質量基準)は、特に限定されず、40質量%以下でもよく、5〜40質量%でもよい。
多孔質ベースコート層を形成する樹脂液には、必要に応じて、多孔質ベースコート層の物性を損なわない範囲内で、顔料、艶消し剤、平滑剤、界面活性剤、充填剤、レベリング剤、増粘剤などの各種添加剤を用いることができる。
多孔質ベースコート層の着色は必ずしも要さないが、顔料により所望の色、すなわちカラーコート層と同色または近似色に着色されていることが好ましい。これによりカラーコート層による調色が容易になる。着色する場合に用いる顔料は、特に限定されず、従来公知の顔料を用いることができる。なかでも接触冷温感の低い本革製品とする場合は、赤外線反射または透過機能を有する顔料を用いることが好ましい。赤外線反射または透過機能を有する顔料としては、例えば、ペリレン系、アゾメチン系統の有機顔料や、酸化チタン系、複合酸化物系等の無機顔料などを挙げることができる。
多孔質ベースコート層を形成する樹脂液には、上述した添加剤以外に、必要に応じて溶媒を含有させる。溶媒としては、環境負荷の観点から、好ましくは水が用いられる。
多孔質ベースコート層は、多孔質ベースコート層を形成する樹脂液を塗布した後、熱処理をすることにより形成される。
多孔質ベースコート層を形成する樹脂液の塗布には、例えば、リバースロールコーター、スプレーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター等の装置を特に制限なく用いることができる。なかでも、少ない塗布量で均一な被膜を形成できることから、リバースロールコーターによる塗布が好ましい。塗布厚あるいはウェット塗布量は、所望するベースコート層の厚さに応じて適宜設定すればよい。
熱処理は、樹脂液中の溶媒を蒸発させて樹脂を乾燥させるため、また、樹脂と架橋剤との架橋反応を促進させるために行われる。本革基材の過剰な水分蒸発を防ぐために、熱処理は、本革基材自体が80℃以上の温度にならないように行うことが好ましい。そのため、熱処理温度は90〜130℃であることが好ましく、より好ましくは100〜120℃である。また、熱処理時間は1〜5分間であることが好ましく、より好ましくは2〜3分間である。熱処理温度や熱処理時間が下限値以上であることにより、乾燥や架橋反応が不十分となることを防ぐことができる。熱処理温度や熱処理時間が上限値以下であることにより、風合、触感が粗硬になることを防ぐことができる。
多孔質ベースコート層の厚さは20〜100μmであることが好ましく、より好ましくは52〜58μmである。多孔質ベースコート層の厚さが20μm以上であることにより、接触冷温感を改善することができる。多孔質ベースコート層の厚さが100μm以下であることにより、風合が粗硬になることを防ぐことができる。多孔質ベースコート層は、トップコート層よりも厚みが大きいことが好ましく、このように厚みが大きい多孔質ベースコート層を、ポリカーボネート系ウレタン樹脂とカルボジイミド系架橋剤を用いて形成することにより、耐オレイン酸性および耐エタノール性を向上することができる。
次いで、多孔質ベースコート層の表面に、第2の樹脂層として、カラーコート層を形成する。カラーコート層は、ベースコート層を隠蔽し、かつ、本革製品を所望の色に着色するための層である。
カラーコート層に用いられる樹脂としては、耐オレイン酸の観点から、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含有することが肝要である。
ポリカーボネート系ウレタン樹脂としては、多孔質ベースコート層と同様のポリカーボネート系ウレタン樹脂を用いることができる。
また、カラーコート層に用いられる樹脂に対するポリカーボネート系ウレタン樹脂の配合量(固形分質量基準)は、特に限定されないが、耐オレイン酸性および耐エタノール性の観点から、19〜41質量%であることが好ましい。配合量が19質量%以上であることにより、耐オレイン酸性および耐エタノール性を向上させることができる。配合量が41質量%以下であることにより、風合や触感が粗硬になることを防ぐことができる。
なお、カラーコート層を形成する組成物全体に対するポリカーボネート系ウレタン樹脂の含有量は、特に限定されないが、固形分換算で、例えば10〜30質量%でもよい。
また、多孔質ベースコート層と同様の理由により、カラーコート層には、ポリカーボネート系ウレタン樹脂に架橋剤としてカルボジイミド系架橋剤を組み合わせて用いることが好ましい。すなわち、カラーコート層は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂とともにカルボジイミド系架橋剤を含んでなる層であること、より詳細には、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含みかつカルボジイミド系架橋剤により架橋された樹脂層であることが好ましい。
カルボジイミド系架橋剤としては、多孔質ベースコート層と同様のカルボジイミド系架橋剤を用いることができる。
ポリカーボネート系ウレタン樹脂に対するカルボジイミド系架橋剤の配合量(固形分質量基準)は、3〜7質量%であることが好ましい。配合量が3質量%以上であることにより、耐エタノール性を高めることができる。配合量が7質量%以下であることにより、風合や触感が粗硬になることを防ぐことができる。
カラーコート層を形成する樹脂液には着色剤として、無機顔料、有機顔料等の顔料が添加される。顔料は、特に限定されず従来公知の顔料を用いることができる。なかでも接触冷温感の低い本革製品とする場合は、赤外線反射または透過機能を有する顔料を用いることが好ましい。赤外線反射または透過機能を有する顔料としては、多孔質ベースコート層と同様の顔料を用いることができる。
着色剤の添加量は特に限定されるものでなく、所望の色に応じて適宜設定すればよいが、カラーコート層を形成する組成物全体に対して、固形分換算で、1〜20質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜15質量%である。添加量が1質量%以上であることにより、多孔質ベースコート層の隠蔽性や、意匠として十分な着色性を高めることができる。添加量が20質量%以下であることにより、塗膜強度の低下に伴う耐エタノール性や耐オレイン酸性、耐摩擦性が損なわれることを防ぐことができる。
カラーコート層を構成する樹脂としては、ポリカーボネート系ウレタン樹脂とともに、他のウレタン樹脂および/またはアクリル樹脂などを用いてもよい。他のウレタン樹脂およびアクリル樹脂としては、多孔質ベースコート層と同様の樹脂を用いることができる。カラーコート層に用いられる樹脂に対する他のウレタン樹脂の配合量(固形分質量基準)は、特に限定されず、40質量%以下でもよく、5〜40質量%でもよい。カラーコート層に用いられる樹脂に対するアクリル樹脂の配合量(固形分質量基準)も、特に限定されず、40質量%以下でもよく、5〜40質量%でもよい。
カラーコート層を形成する樹脂液には、着色剤のほか、必要に応じて、公知の添加剤、例えば、艶消し剤、平滑剤、界面活性剤、充填剤、レベリング剤、増粘剤などの各種添加剤を用いることができる。カラーコート層を形成する樹脂液には、該添加剤以外に、必要に応じて溶媒を含有させる。溶媒としては、環境負荷の観点から、好ましくは水が用いられる。
カラーコート層は、カラーコート層を形成する樹脂液を塗布した後、熱処理をすることにより形成される。
カラーコート層を形成する樹脂液の塗布方法は、ベースコート層の塗布方法に挙げた方法を用いることができる。なかでも、均一で薄い塗膜の形成が可能という理由から、リバースロールコーター、スプレーコーターによる塗布が好ましい。塗布厚あるいはウェット塗布量は、所望するカラーコート層の厚さに応じて適宜設定すればよい。
熱処理は、樹脂液中の溶媒を蒸発させて樹脂を乾燥させるため、また、樹脂と架橋剤との架橋反応を促進させるために行われる。本革基材の過剰な水分蒸発を防ぐために、熱処理は、本革基材自体が80℃以上の温度にならないように行うことが好ましい。そのため、熱処理温度は90〜130℃であることが好ましく、より好ましくは100〜120℃である。また、熱処理時間は1〜5分間であることが好ましく、より好ましくは2〜3分間である。熱処理温度や熱処理時間が下限値以上であることにより、乾燥や架橋反応が不十分となることを防ぐことができる。熱処理温度や熱処理時間が上限値以下であることにより、風合、触感が粗硬になることを防ぐことができる。
カラーコート層の厚さは、7〜12μmであることが好ましく、より好ましくは8〜11μmである。カラーコート層の厚さが7μm以上であることにより、均一な塗膜を形成することができ、色ムラが生じることを防ぐことができる。また、耐エタノール性や耐オレイン酸性、耐摩耗性を改善することができる。カラーコート層の厚さが12μm以下であることにより、天然皮革本来の素材感、特に風合や皺入りなどが損なわれたり、接触冷温感の改善効果が損なわれたりすることを防ぐことができる。
次いで、カラーコート層の表面に、第3の樹脂層として、ポリカーボネート系ウレタン樹脂とイソシアネート系架橋剤を含んでなるトップコート層を形成する。トップコート層は、耐エタノール性や耐オレイン酸性、耐摩耗性の耐久性を向上させるための層である。
トップコート層に主剤として用いられる樹脂、すなわちマトリックスとなる樹脂は、耐オレイン酸性の観点から、ポリカーボネート系ウレタン樹脂であることが肝要である。
ポリカーボネート系ウレタン樹脂としては、多孔質ベースコート層と同様のポリカーボネート系ウレタン樹脂を用いることができる。
トップコート層に用いられる樹脂に対するポリカーボネート系ウレタン樹脂の配合量(固形分質量基準)は、特に限定されないが、耐エタノール性、耐オレイン酸性および耐摩耗性の観点から、60〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは80〜100質量%である。また、トップコート層を形成する組成物全体に対するポリカーボネート系ウレタン樹脂の含有量は、特に限定されないが、固形分換算で、例えば40〜80質量%でもよい。なお、トップコート層を構成する樹脂には、ポリカーボネート系ウレタン樹脂とともに、他のウレタン樹脂および/またはアクリル樹脂などを用いてもよい。
また、ポリカーボネート系ウレタン樹脂に架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を組み合わせて用いることが肝要である。イソシアネート系架橋剤が有するイソシアネート基は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂が有する水酸基、さらには樹脂成分中に存在する活性水素等と反応して三次元の架橋構造を形成することで、樹脂の密着性を向上させ、オレイン酸が浸透しにくくなることにより、耐オレイン酸性を高めることができる。
イソシアネート系架橋剤としては、特に限定されるものではなく、一般に用いられているものから適宜選択すればよい。例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートあるいは脂環族ジイソシアネートなどを挙げることができる。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
イソシアネート系架橋剤は、市販のものを用いることができる。なかでも環境負荷の観点から水溶性または水分散性(エマルジョンタイプ)が好ましく用いられる。
ポリカーボネート系ウレタン樹脂に対するイソシアネート系架橋剤の配合量(固形分質量基準)は、特に限定されないが、10〜45質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜40質量%である。
トップコート層を形成する樹脂液には、ベースコート層の場合と同様、各種の添加剤を添加してもよい。また、添加剤以外に、必要に応じて溶媒を含有させる。溶媒としては、環境負荷の観点から、好ましくは水が用いられる。
トップコート層は、トップコート層を形成する樹脂液を塗布した後、熱処理をすることにより形成される。
トップコート層を形成する樹脂液の塗布方法は、ベースコート層の塗布方法に挙げた方法を用いることができる。なかでも、均一に薄い塗膜の形成が可能という理由から、リバースロールコーター、スプレーコーターによる塗布が好ましい。塗布厚あるいはウェット塗布量は、所望するトップコート層の厚さに応じて適宜設定すればよい。
熱処理は、樹脂液中の溶媒を蒸発させて樹脂を乾燥させるため、また、樹脂と架橋剤との架橋反応を促進させるために行われる。本革基材の過剰な水分蒸発を防ぐために、熱処理は、本革基材自体が80℃以上の温度にならないように行うことが好ましい。そのため、熱処理温度は90〜130℃であることが好ましく、より好ましくは100〜120℃である。また、熱処理時間は1〜5分間であることが好ましく、より好ましくは2〜3分間である。熱処理温度や熱処理時間が下限値以上であることにより、乾燥や架橋反応が不十分となることを防ぐことができる。熱処理温度や熱処理時間が上限値以下であることにより、風合、触感が粗硬になることを防ぐことができる。
トップコート層の厚さは、12〜23μmであることが好ましく、より好ましくは14〜21μmである。トップコート層の厚さが12μm以上であることにより、均一な塗膜を形成することができ、耐エタノール性、耐オレイン酸性、耐摩耗性などの耐久性を改善することができる。トップコート層の厚さが23μm以下であることにより、天然皮革本来の素材感、特に風合や皺入りが損なわれたり、接触冷温感の改善効果が損なわれたりすることを防ぐことができる。
このようにして、本実施形態にかかる本革製品が得られる。
本発明が対象とする本革製品は、本革基材と、多孔質ベースコート層と、カラーコート層とトップコート層とを必須の構成部材とするものであるが、必要に応じて、各層の間に1層または2層以上の層を備えていてもよい。
本発明の本革製品の用途は、特に限定されないが、例えば自動車用シート、天井材、ダッシュボード、ドア内張材またはハンドルなどの自動車内装材をはじめとする各種車両のための内装材用途の他、ソファーや椅子のための表皮などのインテリア用途に用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
各評価項目は、以下の方法に従った。
[耐エタノール性]
タテ50mm、ヨコ120mmの大きさで試験片を採取した。試験片を、JIS L0849に準拠した摩擦試験機I形(クロックメーター:FI−307(電動式)、テスター産業株式会社製)のテーブルに、両面テープ(ゴム用両面テープ、775、株式会社寺岡製作所製)で固定した。
99.5体積%エタノール(ナカライテスク株式会社製)を0.7g含ませた15mm四方(即ち、15mm×15mm)のフェルト(Swissatest Testmaterialie AG社製、701(型番))を、5cm四方(即ち、5cm×5cm)のガーゼ(JIS L0803準拠、呼び番号1−1)に包んだものを摩擦用白布として、該摩擦用白布を摩擦子(2cm四方(即ち、2cm×2cm)の平板)の先端に両面テープ(ゴム用両面テープ、775、株式会社寺岡製作所製)で取り付けた。詳細には、上記のエタノールを浸み込ませたフェルトを、摩擦子の先端に、両面テープを用いて取り付け、該フェルトとともに摩擦子を覆うように、ガーゼを摩擦子に取り付け、これにより、フェルトをガーゼで被覆してなる摩擦用白布を、摩擦子の先端に取り付けた。
試験片の表面(トップコート層側の面)に対する面圧が444g/cm(4.3512N/cm)になるよう摩擦子に荷重9.8N(1000gf)をかけた状態で、ストロークを100mmとし、50回(往復)/分のサイクルにて、摩擦用白布を試験片に摩擦させ、500回毎にトップコート層の塗膜の状態を確認した。500回毎にフェルトにエタノールを0.7g追加しながら、トップコート層の塗膜に異常(破れなど)が認められるまで、最大10000回まで摩擦操作を行った。1000回後にトップコート層の塗膜に異常の認められないものを合格とした。下記表4には、評価としてトップコート層の塗膜に異常が認められたときの摩擦操作回数を示している。
[耐オレイン酸性]
タテ50mm、ヨコ120mmの大きさで試験片を採取した。試験片の表面上に、試験片と同サイズのペーパーウエス(キムタオル、日本製紙クレシア株式会社製)を重ね、オレイン酸(CAS番号:112−80−1)3.5gをペーパーウエス越しに塗布した。次いで、ペーパーウエスを重ねた試験片をアルミホイルにて包み、乾燥機(DRS620DA、ADVANTEC社製)にて80℃で3時間熱処理した。
熱処理後の試験片からペーパーウエスを取り除き、新たなペーパーウエスにて余分なオレイン酸を拭き取った後の試験片を、摩擦試験機I形(クロックメーター:FI−307(電動式)、テスター産業株式会社製)のテーブルに、両面テープ(ゴム用両面テープ、775、株式会社寺岡製作所製)で固定した。15mm四方のフェルト(Swissatest Testmaterialie AG社製、701(型番))を摩擦子(2cm四方の平板)の先端に両面テープ(ゴム用両面テープ、775、株式会社寺岡製作所製)で取り付けた。試験片の表面に対する面圧が444g/cm(4.3512N/cm)になるよう摩擦子に荷重9.8N(1000gf)をかけた状態で、ストロークを100mmとし、50回(往復)/分のサイクルにて、フェルトを試験片に摩擦させ、1000回毎にトップコート層の塗膜の状態を確認した。トップコート層の塗膜に異常(破れなど)が認められるまで、最大10000回まで摩擦操作を行った。1000回後に下記評価基準で評価し、4級以上を合格とした。
(評価基準)
5級:トップコート層の塗膜に異常が全く認められない
4級:トップコート層の塗膜に異常がわずかに認められるが目立たない
3級:トップコート層の塗膜に異常が認められる
2級:トップコート層の塗膜に異常がやや著しく認められる
1級:トップコート層の塗膜に異常が著しく認められる
[耐摩耗性]
JIS L1096 8.19.3 C法(テーバ形法)に準拠して、摩耗輪:CS−10、荷重:9.8Nで、2000回の摩耗を行った。摩耗後に下記の基準で4級以上を合格とした。
(評価基準)
5級:トップコート層の塗膜に異常が全く認められないもの
4級:トップコート層の塗膜に異常がわずかに認められるが目立たない
3級:トップコート層の塗膜に異常が認められる
2級:トップコート層の塗膜に異常がやや著しく認められる
1級:トップコート層の塗膜に異常が著しく認められる
[実施例1]
(1)本革基材の調製
原皮として成牛皮を用い、クロム鞣などの通常の工程を経ることによりクラストを得、次いで、銀むきを行った。なお、染色はカラーコート層と同系色になるように行った。本革基材の厚さは1.3mmであり、BLC値は4.3であった。
(2)多孔質ベースコート層の形成
[処方A1]
1)商品名「BAYDERM Bottom DLV」;160質量部
(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、固形分40質量%)
2)商品名「BAYDERM Bottom 51UD」;200質量部
(ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、固形分35質量%)
3)商品名「PRIMAL SB−300」;200質量部
(アクリル樹脂、固形分34質量%)
4)商品名「マツモトマイクロスフェアー F−30E」:20質量部
(中空微粒子(既膨張体)、平均粒子径45μm、固形分11質量%)
5)商品名「DILAC BLACK HS−9630」;160質量部
(ペリレン系黒顔料、固形分20質量%)
6)商品名「EUDERM Nappa Softs」;110質量部
(艶消し剤、固形分25質量%)
7)商品名「EUDERM Matting Agent SN−C」;120質量部
(艶消し剤・充填剤、固形分23質量%)
8)商品名「EUDERM Paste DO」;40質量部
(艶消し剤・充填剤、固形分52質量%)
9)商品名「AQUADERM Fluid H」;10質量部
(レベリング剤:水分散タイプシリコーン系、固形分100質量%)
10)商品名「ACRYSOL RM−1020」;約10質量部
(増粘剤、固形分20質量%)
11)水;150質量部
12)商品名「V−02−L2」;10質量部
(カルボジイミド系架橋剤、固形分40質量%)
原料は、水を除き、顔料はDIC株式会社製、中空微粒子は松本油脂製薬株式会社製、カルボジイミド系架橋剤は日清紡ケミカル社製、その他はランクセス株式会社製である。
処方A1に従い、各原料をミキサーにて混合し、粘度を5,000mPa・s(デジタル粘度計、BROOKFIELD社製、25℃)になるように、増粘剤で調整した。
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂に対するカルボジイミド系架橋剤の配合量は、6.25質量%であった。
上述の処方A1に従い調製した多孔質ベースコート層用樹脂組成物を、上述の(1)に従い調製した本革基材の表面に、リバースロールコーター(商品名「JUMBOSTAR−SR」、Ge.Ma.Ta.SpA製)にて、ウェット塗布量が150g/mになるように塗布し、乾燥機にて110℃で3分間処理して、多孔質ベースコート層を形成した。
(3)カラーコート層の形成
[処方B1]
1)商品名「BAYDERM Bottom DLV」;160質量部
(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、固形分40質量%)
2)商品名「BAYDERM Bottom 51UD」;200質量部
(ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、固形分35質量%)
3)商品名「PRIMAL SB−300」;200質量部
(アクリル樹脂、固形分34質量%)
4)商品名「DILAC BLACK HS−9610」;160質量部
(ペリレン系黒顔料、固形分20質量%)
5)商品名「EUDERM Nappa Softs」;110質量部
(艶消し剤、固形分25質量%)
6)商品名「EUDERM Matting Agent SN−C」;120質量部
(艶消し剤・充填剤、固形分23質量%)
7)商品名「EUDERM Paste DO」;40質量部
(艶消し剤・充填剤、固形分52質量%)
8)商品名「AQUADERM Fluid H」;10質量部
(レベリング剤、固形分100質量%)
9)商品名「ACRYSOL RM−1020」;約5質量部
(増粘剤、固形分20質量%)
10)水;150質量部
11)商品名「V−02−L2」;5質量部
(カルボジイミド系架橋剤、固形分40質量%)
原料は、水を除き、顔料はDIC株式会社製、カルボジイミド系架橋剤は日清紡ケミカル社製、その他はランクセス株式会社製である。
処方B1に従い、各原料をミキサーにて混合し、粘度を25秒(カップ粘度計、フォードカップNo.4、株式会社明治機械製作所、25℃)になるように、増粘剤で調整した。ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂に対するカルボジイミド系架橋剤の配合量は、3.13質量%であった。
(2)で得られた多孔質ベースコート層の表面に、スプレーコーター(商品名「TU ROT.3400/1.41」、BARNINI Srl製)を用いて、上述の処方B1の従い調製したカラーコート層用樹脂組成物を、ウェット塗布量が30g/mとなるよう塗布し、乾燥機にて110℃で3分間処理して、無孔質のカラーコート層を形成した。
(4)エンボス加工
(3)で得られたカラーコート層の表面に、エンボス機(商品名「KOMBIPRESS−1800NE」、BERGI ofb s.p.a製)を用いて、130℃、圧力:2352N/m、加工速度:2.8m/分で、熱エンボスを行い、表面にシボ柄の意匠付けを行った。エンボス加工後の多孔質ベースコート層の厚さは、55μmであり、カラーコート層の厚さは8μmであった。なお、層の厚さは、天然皮革の垂直断面をマイクロスコープ(キーエンス株式会社製、デジタルHFマイクロスコープVH−8000)で観察し、任意の10カ所についての厚さを測定し、これらの平均値を算出した。
(5)トップコート層の形成
[処方C1]
1)商品名「HYDRHOLAC UD−2」;340質量部
(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、固形分25質量%)
2)商品名「HYDRHOLAC Finish HW−2」;120質量部
(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、固形分35質量%)
3)商品名「AQUADERM Finish HAT」;200質量部
(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、固形分40質量%)
4)商品名「DILAC BLACK HS−9610」;20質量部
(ペリレン系黒顔料、固形分20質量%)
5)商品名「Rosilk 2229」;70質量部
(平滑剤、固形分60質量%)
6)商品名「AQUADERM Additive SF」;30質量部
(平滑剤、固形分50質量%)
7)商品名「AQUADERM Fluid H」;10質量部
(レベリング剤、固形分100質量%)
8)商品名「AQUADERM XL−50」;150質量部
(イソシアネート系架橋剤、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、固形分50質量%)
9)商品名「ACRYSOL RM1020」;約10質量部
(増粘剤、固形分20質量%)
10)水;150質量部
原料は、水を除き、顔料はDIC株式会社製、その他はランクセス株式会社製である。
処方C1に従い、各原料をミキサーにて混合し、粘度を25秒(カップ粘度計、フォードカップNo.4、株式会社明治機械製作所、25℃)になるように、増粘剤で調整した。ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂に対するイソシアネート系架橋剤の配合量は36.23質量%であった。
(4)で得られた中間製品の表面に、スプレーコーター(商品名「TU ROT.3400/1.41」、BARNINI Srl製)を用いて、上述の処方C1の従い調製したトップコート層用樹脂組成物を、ウェット塗布量が25g/mとなるよう塗布し、乾燥機にて110℃で3分間処理し、この工程を2回繰り返して無孔質のトップコート層を形成した。トップコート層の厚さは、固形分と塗布量から換算すると16.1μmであった。
このようにして、実施例1の本革製品を得た。得られた本革製品は、その表面に毛シボ柄の凹凸を有するものであり、多孔質ベースコート層の閉塞孔の大きさ(長径)は20μmであった。閉塞孔の大きさは、本革製品の垂直断面をマイクロスコープ(キーエンス株式会社製、デジタルHFマイクロスコープVH−8000)で観察し、最大値を閉塞孔の大きさとした。
その他の実施例及び比較例は、各々の層を形成する塗料を表1〜4に従って作製した以外は、全て実施例1と同様にして本革製品を作製した。各表の記載は次のとおりである。表1(多孔質ベースコート層形成用樹脂液の処方)、表2(カラーコート層形成用樹脂液の処方)、表3(トップコート層形成用樹脂液の処方)、表4(実施例および比較例の処方)。実施例および比較例によって作製された本革製品の評価は前述の方法によってなされ、結果を表4に記載した。

Claims (5)

  1. 本革基材の表面に、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含みカルボジイミド系架橋剤により架橋された樹脂層である多孔質ベースコート層、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含んでなるカラーコート層、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含みイソシアネート系架橋剤により架橋された樹脂層であるトップコート層が順次積層されてなる本革製品であって、下記方法にて測定される耐エタノール性が合格である本革製品。
    耐エタノール性測定方法:
    1)前記本革製品からタテ50mm、ヨコ120mmの大きさの試験片を採取する。
    2)試験片を、摩擦試験機I形のテーブルに、両面テープで固定する。
    3)99.5体積%エタノールを0.7g含ませた15mm四方のフェルトを、JIS L0803に準拠した呼び番号1−1の5cm四方のガーゼに包んだものを摩擦用白布として、該摩擦用白布を、2cm四方の平板からなる摩擦子の先端に両面テープで取り付ける。面圧が444g/cmになるよう摩擦子に荷重9.8Nをかけた状態で、ストロークを100mmとし、往復50回/分のサイクルにて、摩擦用白布を試験片に摩擦させ、500回毎にトップコート層の塗膜の状態を確認する。500回毎にエタノールを0.7g追加しながら、トップコート層の塗膜に異常が認められるまで、最大10000回まで摩擦操作を行う。
    4)1000回後にトップコート層の塗膜に異常の認められないものを合格とする。
  2. 前記多孔質ベースコート層を構成するポリカーボネート系ポリウレタン樹脂に対するカルボジイミド系架橋剤の固形分質量基準での配合量が3〜7質量%である、請求項1に記載の本革製品。
  3. 前記多孔質ベースコート層が閉塞孔を有する層である、請求項1又は2に記載の本革製品。
  4. 前記カラーコート層が、前記ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含みカルボジイミド系架橋剤により架橋された樹脂層である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の本革製品。
  5. 前記多孔質ベースコート層が前記トップコート層よりも厚みが大きい、請求項1〜4のいずれか1項に記載の本革製品。

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