JP2019099704A - スクアリリウム系化合物、着色組成物、ディスプレイ用フィルター及びディスプレイ - Google Patents

スクアリリウム系化合物、着色組成物、ディスプレイ用フィルター及びディスプレイ Download PDF

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Abstract

【課題】耐久性に優れたスクアリリウム系化合物、それを含有する着色組成物、ディスプレイ用フィルター及びディスプレイの提供。【解決手段】極大吸収波長が560〜580nmの吸収極大を有し、透過率が80%以上である、一般式(1)で表されるスクアリリウム系化合物。(式(1)中、R1及びR2は各々独立に、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、又はアルデヒド基を表す。k及びlは各々独立に、1又は2を表す。m及びnは各々独立に、1〜4の整数を表す。)【選択図】なし

Description

本発明は、特定のスクアリリウム系化合物、それを含有する着色組成物及びディスプレイ用フィルター、ディスプレイ用フィルターを備えるディスプレイに関する。
近年、ディスプレイ装置の光源として、白色LEDや白色OLEDが用いられることが多くなっている。白色LEDの発光方式にはいくつかの種類があり、R(赤)、G(緑)、B(青)のそれぞれの光を発するLEDを並べて白色光を得る方式のものや、青色LEDからの青色発光と黄色蛍光体からの黄色発光の組み合わせや、青色LEDからの青色発光、緑色蛍光体からの緑色発光及び赤色蛍光体からの赤色発光の組み合わせにより白色光を得る方式のものがある。白色OLEDの発光方式にもいくつかの種類があり、赤色、緑色、青色のそれぞれの光を発する層を積層させたものや、青色、黄色のそれぞれの光を発する層を積層させたものがある。
得られた白色光のスペクトルには570nm付近の領域に緑味が強い光が含まれており、RGBのバランスが悪くなることから,この領域の光の発光強度が高いと色純度が低下することが知られていた。
特許文献1には、標準比視感度曲線の中心波長近傍に極大吸収値を有する有機色素として特定のスクアリリウム化合物を用いることで、CRT用フィルターにおいて、視野の明るさを保ちつつ眩しさを抑え、鮮明な色感が得られることが記載されている。
特開平10−204304号公報
本発明者らが検討したところ、特許文献1に記載されたスクアリリウム系化合物は、極大吸収波長が560〜580nmである吸収極大を有するためディスプレイ用フィルターの色素として使用することで、ディスプレイの色再現性の向上が期待されるものの、スクアリリウム系化合物特有の分子間会合が弱く、耐久性が依然として不十分であることが判明した。
そこで本発明は、極大吸収波長が560〜580nmである吸収極大を有し、耐久性に優れたスクアリリウム系化合物、それを含有する着色組成物、ディスプレイ用フィルター及びディスプレイを提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、スクアリリウム系化合物の置換基を特定なものとすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 下記一般式(1)で表される化学構造を有するスクアリリウム系化合物。
Figure 2019099704
(式(1)中、R1及びR2は各々独立に、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、又はアルデヒド基を表す。
k及びlは各々独立に、1又は2を表す。
m及びnは各々独立に、1〜4の整数を表す。)
[2] 波長380〜450nmにおける透過率が80%以上である、[1]に記載のスクアリリウム系化合物。
[3] 極大吸収波長が560〜580nmである吸収極大を有する、[1]又は[2]に記載のスクアリリウム系化合物。
[4] 前記吸収極大の半値幅が35nm以下である、[3]に記載のスクアリリウム化合物。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載のスクアリリウム系化合物及び消光剤を含有する着色組成物。
[6] [1]〜[4]のいずれかに記載のスクアリリウム系化合物を含有するディスプレイ用フィルター。
[7] [6]に記載のディスプレイ用フィルターを備えるディスプレイ。
本発明によれば、極大吸収波長が560〜580nmである吸収極大を有し、耐久性に優れたスクアリリウム系化合物、それを含有する着色組成物、ディスプレイ用フィルター及びディスプレイを提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル及び/又はメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイル」についても同様である。
また、本発明において「全固形分」とは、着色組成物中に含まれる、溶剤以外の全成分を意味するものとする。
さらに、本発明において、「重量平均分子量」とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)をさす。
<スクアリリウム系化合物>
スクアリリウム系化合物は波長380〜450nmの短波長領域における副吸収が少なく、極大吸収波長が560〜580nmである吸収極大を有するため、ディスプレイ装置の光源に含まれる緑味の強い光を効率的に吸収することができ、ディスプレイの色再現性(色純度)を向上することができる。
本発明のスクアリリウム系化合物は、スクアリリウム系化合物の中でも、下記一般式(1)で表される化学構造を有するものである。
Figure 2019099704
式(1)中、R1及びR2は各々独立に、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、又はアルデヒド基を表す。
k及びlは各々独立に、1又は2を表す。
m及びnは各々独立に、1〜4の整数を表す。
スクアリリウム系化合物はJ会合体を形成することでその吸収極大が狭小化し、ディスプレイの色再現性が良化する傾向があるが、高温高湿条件ではJ会合を維持できずに色再現性が悪化する場合がある。
これに対して、前記式(1)で表される化学構造を有するスクアリリウム系化合物は、その構造中にアルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、又はアルデヒド基を含むものであり、置換基として有する水酸基と間の水素結合によって環状の安定化構造をとり、電荷の偏りが生じやすくなって分子間会合が強くなり、高温高湿条件下であってもJ会合を維持しやすいため、高温高湿条件であってもディスプレイの色再現性を良光にできると考えられる。さらに、m及びnが1〜4の整数であることにより、化合物の安定性が高まり、また、極大吸収波長を所望なものとすることができると考えられる。
(R1、R2
式(1)中、R1及びR2は各々独立に、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、又はアルデヒド基を表す。
アルキルカルボニル基及びアルコキシカルボニル基(アルキルオキシカルボニル基)におけるアルキル基部位として、具体的には、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。
アルキル基の炭素数は特に限定されないが、1以上が好ましく、また、15以下が好ましく、10以下がより好ましく、5以下がさらに好ましく、3以下がよりさらに好ましく、2以下が特に好ましい。前記範囲内とすることで化合物の溶解度と立体障害の程度を調整できる傾向がある。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、n−へプチル基、2−へプチル基、2−メチルヘキシル基、n−オクチル基、2−オクチル基、3−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基等が挙げられる。これらの中でも分子振動の抑制の観点から、メチル基、エチル基、イソプロピル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基が有していてもよい置換基、つまり、それに含まれるアルキル基が有していてもよい置換基とは任意の1価の置換基であるが、好ましくは、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、炭素数1〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルキニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜6アルコキシカルボニル基、炭素数2〜6アルキルカルボニルオキシ基、炭素数2〜6のアルキルカルボニル基、炭素数3〜9の置換基を有していてもよいシリル基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数2〜6アルコキシチオカルボニル基、炭素数2〜6アルキルカルボニルチオ基、炭素数2〜6のアルキルチオカルボニル基、炭素数1〜10の置換基を有していてもよいアミノ基、1つ以上のフッ素原子を有する炭素数1〜5のアルキル基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基などや、それらを組み合わせた基が挙げられる。
(k及びl)
前記式(1)中、k及びlは各々独立に、1又は2を表す。これらの中でも溶解性の観点からは1が好ましく、一方で安定性向上の観点からは2が好ましい。
1及びR2の置換位置は特に限定されないが、四角酸部位に対し、水酸基がp−位で結合している場合、6員環を安定化構造とする観点から、四角酸部位に対してm−位が好ましい。
(m及びn)
前記式(1)中、m及びnは各々独立に、1〜4の整数を表すが、2以上が好ましく、3以下が好ましく、3がより好ましい。前記下限値以上とすることでスクアリリウム系化合物の化学的安定性を保ちやすい傾向があり、また、前記上限値以下とすることでJ会合形成のための立体障害を抑制できる傾向がある。
水酸基の置換位置は特に限定されないが、上記6員環安定化構造の観点からo−位又はp−位が好ましく、p−位が特に好ましい。
スクアリリウム系化合物は共鳴構造を複数書くことができ、例えば、k及びlが1で、m及びnが3の場合には、以下の共鳴構造を書くことができるが、これらは特に断らない限り同義である。
Figure 2019099704
以下にスクアリリウム系化合物の具体例を挙げる。
Figure 2019099704
(製造方法)
スクアリリウム系化合物は、公知の方法に準じて製造することができる。例えばTop. Heterocycl. Chem. 14, 133−181 (2008)に記載の方法に準じて製造することができる。
(物性)
スクアリリウム系化合物の吸収極大の極大吸収波長(λmax)は特に限定されないが、560nm以上が好ましく、563nm以上がより好ましく、565nm以上がさらに好ましく、567nm以上がよりさらに好ましく、570nm以上が特に好ましく、また、通常580nm以下であり、578nm以下が好ましく、575nm以下がより好ましく、573nm以下がさらに好ましい。前記範囲内とすることで色再現性が良好となる傾向がある。吸収極大の極大吸収波長は、スクアリリウム系化合物をテトラヒドロフラン等の溶媒に溶解させた溶液を作製して測定した吸収スペクトルから算出することができる。詳細な条件は実施例に記載のものを採用することが好ましい。
さらに、スクアリリウム系化合物の吸収極大の半値幅は特に限定されないが、40nm以下であることが好ましく、35nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましく、また、通常25nm以上である。前記上限値以下とすることでディスプレイ用フィルムの色再現性が向上される傾向がある。吸収極大の半値幅(FWHM)は、前述の吸収スペクトルにて、極大吸収波長(λmax)における吸光度Aの半値となる波長A1及び波長A2を読み取り、波長A1波長A2の差の絶対値を算出することで得られる。
スクアリリウム系化合物において、波長500〜620nmにおける吸収極大の数は特に限定されないが、輝度低下を抑制する観点から好ましくは1つである。吸収極大の数は、前述の吸収スペクトルから算出することができる。なお、波長500〜620nmにおける吸収極大の数は、吸収スペクトルに含まれる吸収極大のうち、その極大吸収波長が波長500〜620nmに含まれるものの数を意味する。
一方で、スクアリリウム系化合物の波長380〜450nmにおける透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、また、通常100%以下である。前記下限値以上とすることでフィルムの色再現性を向上する傾向がある。透過率は前述の吸光スペクトルから算出することができる。
<着色組成物>
本発明の着色組成物は、本発明のスクアリリウム系化合物を含有するものであり、必要に応じてさらに他の成分を含有していてもよい。
他の成分としては、消光剤、バインダー樹脂、粘着剤、溶剤、その他の添加剤等が挙げられる。
(消光剤)
消光剤は、本発明のスクアリリウム系化合物が発する蛍光を消光可能なものであれば特に限定されない。例えば、国際公開第2006/118277号に記載されているジチオレート系金属錯体や、特開2016−75738号公報及び特開2016−75739号公報に記載されている消光剤を使用することができる。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル系樹脂(PMMA等)、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂が挙げられる。
(粘着剤)
粘着剤としては、特に限定されるものではないが、アクリル系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、ゴム系又はシリコン樹脂系等の粘着剤が挙げられる。これらの中ではアクリル系粘着剤、シリコン樹脂系粘着剤が望ましい。
粘着剤は樹脂成分を加熱等で架橋したものでも、架橋する前のものであってもよい。
粘着剤を構成する樹脂成分としては、光学特性、特に透明性の観点から、(メタ)アクリル系共重合体を用いることが好ましい。(メタ)アクリル系共重合体を構成するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基含有モノマー等が挙げられる。
(メタ)アクリル系共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算値で、50万以上が好ましく、60万以上がより好ましく、70万以上がさらに好ましく、80万以上がよりさらに好ましく、90万以上が特に好ましく、100万以上が最も好ましく、また、300万以下が好ましく、250万以下がより好ましく、200万以下がさらに好ましい。Mwを前記下限値以上とすることでスクアリリウム系化合物の耐久性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで粘着剤として作業性が向上する傾向がある。
また、(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、0℃以下が好ましく、−5℃以下がより好ましく、−10℃以下がさらに好ましく、Tgは通常−100℃以上である。Tgを前記上限値以下とすることで常温において粘着性に優れた組成物が得られる傾向がある。
また、粘着剤は前記樹脂成分以外に、架橋剤、シランカップリング剤等の成分を含んでいてもよい。架橋剤としては、イソシアネート化合物、金属キレート化合物、エポキシ化合物等が挙げられる。
上述した粘着剤を構成する各成分としては、例えば、特開2017−53878号公報、特開2017−58422号公報、特開2017−71730号公報等に記載のものを採用することができる。
(溶剤)
溶剤としては、特に限定されるものではないが、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のアルカン類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン類;エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、ウンデカノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のプロピレングリコール類;アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の高極性溶剤類等が挙げられる。
(その他の添加剤)
その他の添加剤としては、特に限定されないが、近赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、滑材、可塑剤等の添加剤が挙げられる。
(着色組成物における各成分の含有割合)
本発明の着色組成物中のスクアリリウム系化合物の含有割合は特に限定されないが、全固形分中に0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上がさらに好ましく、また、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、0.1質量%以下がよりさらに好ましく、0.05質量%以下が特に好ましい。スクアリリウム系化合物の含有割合を前記下限値以上とすることで組成物が安定になる傾向があり、また、前記上限値以下とすることでスクアリリウム系化合物の析出を抑制できる傾向がある。
本発明の着色組成物がバインダー樹脂を含有する場合、その含有割合は特に限定されないが、全固形分中に1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上がよりさらに好ましく、80質量%以上が特に好ましく、また、通常99.9質量%以下である。バインダー樹脂の含有割合を前記下限値以上とすることでスクアリリウム系化合物の析出が抑制できる傾向がある。
本発明の着色組成物が粘着剤を含有する場合、その含有割合は特に限定されないが、全固形分中に1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上がよりさらに好ましく、80質量%以上が特に好ましく、また、通常99.9質量%以下である。粘着剤の含有割合を前記下限値以上とすることでスクアリリウム系化合物の析出が抑制できる傾向がある。
本発明の着色組成物が溶剤を含有する場合、固形分濃度は特に限定されないが、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、また、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。固形分濃度を前記下限値以上とすることで溶液安定性が良好となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで本発明の着色組成物を用いて得られる塗膜の性能が向上する傾向がある。なお、固形分濃度とは、着色組成物に対する全固形分の含有割合である。
[ディスプレイ用フィルター及びディスプレイ]
本発明のディスプレイ用フィルターは、本発明のスクアリリウム系化合物を含有する。本発明のディスプレイ用フィルターは、例えばディスプレイ構成外部においてバンドパスフィルターとして使用するものや、ディスプレイ構成内部において色再現や色域拡大のために使用するものが挙げられる。
ディスプレイ用フィルターの構成の具体例としては、以下の態様が挙げられる。
(フィルターA):樹脂フィルムの上に本発明のスクアリリウム系化合物及びバインダー樹脂を含むコーティング層が塗布されたフィルター
(フィルターB):樹脂フィルムの粘着剤層に本発明のスクアリリウム系化合物が含まれるフィルター
(フィルターC):樹脂フィルム中に本発明のスクアリリウム系化合物が含まれるフィルター
以下、「本発明のフィルター」という場合は、特に区別しない限り上記フィルターA〜Cの全てを指すものとする。同様に、本発明のスクアリリウム系化合物が樹脂フィルム上のコーティング層、粘着剤層及び樹脂フィルムのうちの複数の箇所に含まれたフィルターも「本発明のフィルター」に含まれるものとする。
本発明のフィルターの1つの態様は、本発明のスクアリリウム系化合物を含むことを特徴とする、ディスプレイに用いられる色補正フィルター、つまり、色純度改善フィルターである。
特に、色純度の観点から、白色LEDを光源とするディスプレイに好適に使用できる。中でもオレンジ光を除く観点から、白色LEDが、青色LEDと黄色蛍光体の組み合わせにより白色光を得る方式や、青色LED、緑色蛍光体及び赤色蛍光体の組み合わせにより白色光を得る方式の光源を有するディスプレイが好ましい。
色補正フィルターの設置位置は、バックライトとしての光源と視認者との間に配置されるものであれば特に限定されるものではない。例えば、ディスプレイのガラス板、偏光板等に塗布された色補正コーティング層又は色補正粘着剤層であってもよく、ディスプレイのガラス板、偏光板等の表面に貼り付けられた色補正フィルムであってもよい。
また、ディスプレイ内に設けられる板状の高分子成形体の表面に塗布された色補正コーティング層又は色補正粘着剤層であってもよく、高分子成形体の表面に貼り付けられた色補正フィルムであってもよい。また、板状の高分子成形体自身に本発明のスクアリリウム系化合物が含まれている形態であってもよい。上記高分子成形体としては、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート等が挙げられる。
色補正フィルターの位置は、ガラス板や高分子成形体の表裏のうち、光源側であってもよく、視認者側であってもよい。
本発明のフィルターの他の態様として、照明装置に用いられる色補正フィルターが挙げられる。光源としては、ディスプレイに関して挙げたものと同じものが挙げられる。
この場合、色補正フィルターの設置位置は、光源と視認者との間に配置されるものであれば特に限定されるものではない。例えば、電球型照明、直管型照明等の照明装置の最も外側にある筐体(ガラス、プラスチック等)の外側表面又は内側表面に塗布された色補正コーティング層であってもよく、筐体の外側表面又は内側表面に貼り付けられた色補正フィルムであってもよい。
なお、筐体とは光が出る部位であり、カバー、フード等とも呼ばれる。
また、筐体自身に本発明のスクアリリウム系化合物が含まれている形態であってもよい。この場合、筐体の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート等の高分子成形体が挙げられる。
照明装置としては、白色LEDを光源として用いる電球型照明、直管型照明、シーリングライト、スポットライト、ダウンライト、投光灯、街路灯、デスクライト等が挙げられる。
また、照明装置の白色の種類は特に限定されるものではなく、電球色(色温度2600〜3250K)、温白色(色温度3250〜3800K)、白色(色温度3800〜4500K)、昼白色(色温度4600〜5500K)、昼光色(色温度5700〜7100K)といった色の照明装置が使用される。上記色温度の区分はJIS Z 9112の基準に拠っている。
一方で、本発明のフィルターの他の態様として、外光補正フィルターが挙げられる。本発明の外光補正フィルターは、本発明のスクアリリウム系化合物を含有し、自然光、環境光等の外光と視認者の間に配置されるものであればよく、その形態、配置場所は特に限定されるものではない。
例えば、本発明のスクアリリウム系化合物及びバインダー樹脂とを含む色補正コーティング層、本発明のスクアリリウム系化合物及び粘着剤とを含む色補正粘着剤層、樹脂フィルムの上に本発明のスクアリリウム系化合物及びバインダー樹脂とを含む色補正コーティング層が塗布された外光補正フィルム(以下、外光補正フィルムA)、樹脂フィルムの粘着剤層に本発明のスクアリリウム系化合物が含まれる外光補正フィルム(以下、外光補正フィルムB)、樹脂フィルムに本発明のスクアリリウム系化合物が含まれる外光補正フィルム(以下、外光補正フィルムC)等の形態が挙げられる。
以後、「本発明の外光補正フィルム」という場合は、特に区別しない限り上記外光補正フィルムA〜Cの全てを指すものとする。また、本発明のスクアリリウム系化合物が樹脂フィルム上のコーティング層、粘着剤層及び樹脂フィルムのうちの複数の箇所に含まれたフィルムも「本発明の外光補正フィルム」に含まれるものとする。
本発明の外光補正フィルムは、外光を取り込む取込口、例えば、眼鏡、自動車等の輸送用機械のフロントガラス、建設用重機のガラス、建築物における窓ガラス等に好適に用いることができる。本発明の外光補正フィルムを、外光を取り込む取込口等に適用することで、外光の差し込む環境下で作業する作業者の視認性の向上を図ることができる。外光補正フィルターの位置は、ガラスや窓ガラスの表裏のうち、外光側であってもよく、視認者側であってもよい。
また、高分子樹脂に本発明のスクアリリウム系化合物を混練して加熱成形することにより、眼鏡レンズや窓用部材等に用いることもできる。
本発明のフィルター及び本発明の外光補正フィルターを構成する上記バインダー樹脂としては、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル系樹脂(PMMA等)、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂が挙げられる。
また、粘着剤としては、特に限定されるものではないが、アクリル系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、ゴム系又はシリコン樹脂系等の粘着剤が挙げられる。これらの中ではアクリル系粘着剤、シリコン樹脂系粘着剤が望ましい。
また、樹脂フィルムとしては、透明性を有する各種のプラスチック材料が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。
本発明のスクアリリウム系化合物とバインダー樹脂を混合して色補正コーティング層を設ける場合、スクアリリウム系化合物の含有割合は、バインダー樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましい。
また、本発明のスクアリリウム系化合物と粘着剤を混合して色補正粘着剤層を設ける場合、スクアリリウム系化合物の含有割合は、粘着剤100質量部に対して0.01〜10質量部であることが望ましい。
色補正コーティング層及び色補正粘着剤層を樹脂フィルム等(筐体、ガラス板、偏光板、高分子成形体等をも含む)に塗布する場合、スクアリリウム系化合物とバインダー樹脂及び/又は粘着剤、並びに、必要に応じてその他の添加剤を含む組成物を溶剤に溶解及び/又は分散させて塗工液を調製し、スピンコート、スプレー、バーコート、フローコート、グラビアコート、ロールコート、ブレードコート、ダイコーター等の公知の塗布方法により塗工する方法を用いることができる。
また、樹脂フィルムや高分子成形体中に本発明のスクアリリウム系化合物が含まれているフィルターを製造する場合、樹脂フィルムや高分子成形体の成形時に、樹脂中にスクアリリウム系化合物及び必要に応じてその他の添加剤を配合しておき、樹脂フィルムの成形及び高分子成形体の成形を行えばよい。
樹脂フィルムや高分子成形体中に本発明のスクアリリウム系化合物が含まれているフィルターを製造する場合、スクアリリウム系化合物の含有割合は、樹脂100質量部に対して0.0001〜1質量部であることが好ましい。
また、本発明のフィルター及び外光補正フィルターには、さらにその他の添加剤が含まれていてもよい。その他の添加剤としては、例えば、近赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、滑材、可塑剤等の添加剤が挙げられる。
以下、本発明のスクアリリウム系化合物について、具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)スクアリリウム系化合物1の合成
Figure 2019099704
化合物1(0.45g)と化合物2(0.15g)をトルエン20mLとn−ブタノール20mLの混合溶媒に添加し、100℃でディーンスターク法により3時間加熱撹拌した。続けて、ろ過を行い、得られた固体をトルエンで洗浄し、真空乾燥し、スクアリリウム系化合物1を0.46g得た。
(実施例2)スクアリリウム系化合物2の合成
Figure 2019099704
化合物3(0.49g)と化合物2(0.15g)をトルエン20mLとn−ブタノール20mLの混合溶媒に添加し、100℃でディーンスターク法により3時間加熱撹拌した。続けて、ろ過を行い、得られた固体をトルエンで洗浄し、真空乾燥し、スクアリリウム系化合物2を0.48g得た。
(実施例3)スクアリリウム系化合物3の合成
Figure 2019099704
化合物4(0.53g)と化合物2(0.15g)をトルエン20mLとn−ブタノール20mLの混合溶媒に添加し、100℃でディーンスターク法により3時間加熱撹拌した。続けて、ろ過を行い、得られた固体をトルエンで洗浄し、真空乾燥し、スクアリリウム系化合物3を0.46g得た。
(実施例4)スクアリリウム系化合物4の合成
Figure 2019099704
化合物5(0.61g)と化合物2(0.15g)をトルエン20mLとn−ブタノール20mLの混合溶媒に添加し、100℃でディーンスターク法により3時間加熱撹拌した。続けて、ろ過を行い、得られた固体をトルエンで洗浄し、真空乾燥し、スクアリリウム系化合物4を0.54g得た。
(比較例1)比較化合物1の合成
Figure 2019099704
化合物6(2.4g)と化合物2(1.0g)をトルエン20mLとn−ブタノール20mLの混合溶媒に添加し、100℃でディーンスターク法により3時間加熱撹拌した。続けて、ろ過を行い、得られた固体をトルエンで洗浄し、真空乾燥し、比較化合物1を2.6g得た。
<スクアリリウム系化合物の光学特性評価>
得られた各スクアリリウム系化合物の極大吸収波長(λmax)及び波長500〜620nmにおける吸収極大の数は、JASCO V−670紫外可視分光光度計(日本分光社製)を使用し、最大吸収波長での吸光度が1になるように濃度調整したテトラヒドロフラン溶液を作製して測定した吸収スペクトルから読み取った。
また半値幅は、極大吸収波長における吸光度Aの半値となる波長A1及び波長A2を吸収スペクトルから読み取り、波長A1と波長A2の差の絶対値を半値幅(FWHM)とした。
さらに、前記テトラヒドロフラン溶液を用い、同一の装置を用いて波長380〜450nmの透過率を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2019099704
<色素フィルム試験片の作製>
トルエンとMEK(メチルエチルケトン)を質量比8:2の割合で混合した混合溶剤8gにダイヤナールBR−80(三菱ケミカル社製)2gを溶解させ、表2に記載のスクアリリウム系化合物0.001gを攪拌し溶解させ実施例1〜4及び比較例1の着色組成物(樹脂液)を作製した。
得られた各樹脂液をポリエチレンテレフタレート製フィルム上に塗布し、100℃で2分間乾燥し、厚さ5μmの膜を形成し、色素フィルムの試験片を作製した。
<耐湿熱試験>
次に、色素フィルムの試験片を温度60℃湿度90%の恒温槽に入れ、200時間暴露した。分光光度計U−4100(日立製作所社製)にて、ポリエチレンテレフタレート製フィルムをリファレンスにして、暴露前後の試験片の吸収スペクトルを測定し、波長500〜620nmにおける吸収極大の最大吸収強度の変化率(=暴露後の最大吸収強度÷暴露前の最大吸収強度×100(%))を以下の基準で評価することで耐熱評価を行った。結果を表2に示す。
◎:吸収極大の最大吸収強度の変化率が80%以上
○:吸収極大の最大吸収強度の変化率が50%以上80%未満
△:吸収極大の最大吸収強度の変化率が10%以上50%未満
×:吸収極大の最大吸収強度の変化率が10%未満
Figure 2019099704
表2から明らかなように、実施例1〜4の各スクアリリウム系化合物を用いたディスプレイ用フィルターは耐久性が良好であることがわかった。
実施例1〜4の各スクアリリウム系化合物1〜4は、前記一般式(1)で表される化学構造を有し、R1及びR2が、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、又はアルデヒド基であるため、水酸基との間の水素結合によって環状の安定化構造をとることで分子間会合が強く、高温高湿暴露後であってもJ会合が維持されて吸光度が高くなったと考えられる。

Claims (7)

  1. 下記一般式(1)で表される化学構造を有するスクアリリウム系化合物。
    Figure 2019099704
    (式(1)中、R1及びR2は各々独立に、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、又はアルデヒド基を表す。
    k及びlは各々独立に、1又は2を表す。
    m及びnは各々独立に、1〜4の整数を表す。)
  2. 波長380〜450nmにおける透過率が80%以上である、請求項1に記載のスクアリリウム系化合物。
  3. 極大吸収波長が560〜580nmである吸収極大を有する、請求項1又は2に記載のスクアリリウム系化合物。
  4. 前記吸収極大の半値幅が35nm以下である、請求項3に記載のスクアリリウム化合物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のスクアリリウム系化合物及び消光剤を含有する着色組成物。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のスクアリリウム系化合物を含有するディスプレイ用フィルター。
  7. 請求項6に記載のディスプレイ用フィルターを備えるディスプレイ。
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