JP2019097423A - XPA pre−mRNAのプロセシングにおけるエクソン3のスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチド - Google Patents

XPA pre−mRNAのプロセシングにおけるエクソン3のスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチド Download PDF

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Abstract

【課題】XPA pre-mRNAのプロセシングにおけるエクソン3のスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチド、及び色素性乾皮症の治療に有効なAONを含有する医薬の提供。【解決手段】配列番号1で表されるヌクレオチド配列中の連続する少なくとも15個のヌクレオチドからなる配列と相補的なヌクレオチド配列を含む、XPA pre-mRNAのプロセシングにおけるエクソン3のスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチド。【選択図】なし

Description

本発明は、XPA pre-mRNAのプロセシングにおけるエクソン3のスキッピング(以下「XPAのエクソン3のスキッピング」と略記する場合がある)を誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチド及びその用途に関する。
色素性乾皮症(Xeroderma pigmentosum:XP)は、常染色体劣性のヒト遺伝性の光線過敏性皮膚疾患であり、皮膚癌の発生率が非常に高く、多くの場合神経障害を伴う。XPは遺伝性疾患であり、現在根治できる治療法はなく、患者ケアの基本は、紫外線からの完全防御と合併症に対する対症療法のみである。
XPは、7つの遺伝子相補性群A〜G群とバリアント型に分類されている。XP-A群(XP-A、OMIM 278700)の患者は、通常、これらの群の中で最も重篤な臨床症状を示すことが知られている。日本のXP患者の約50%は相補性群A群に属し、また本邦 XP-A群では創始者変異があり、患者の80%にXPA遺伝子IVS3-1G>Cのホモ接合体変異がみられる(非特許文献1)。XPは、紫外線によって生じたDNA損傷(シクロブタン型ピリミジンダイマー,6-4 光産物)の修復システム(ヌクレオチド除去修復nucleotide excision repair;NER,損傷乗り越え複製 translesion synthesis;TLS)が遺伝的な異常により正確に作動しないために発症することが知られている。図1に示すように、XPA遺伝子のIVS3-1G>C変異では、イントロン3の3’ splice acceptor site中の変異によりフレームシフトが生じ、エクソン(Exon)4のN末端領域に終止コドンが挿入されたmRNAができ、これが主なスプライシングパターンとなっている(非特許文献2)。このmRNAからは、不完全なXPAタンパク質(Def I)が翻訳される。
本発明者らは以前、片方のアリル上のXPA遺伝子IVS3-1G>C変異を有し、他方のアリル上のXPA遺伝子に他の変異を有する患者の中に、正常なXPタンパク質が発現しないにも関わらず、神経症状の軽い患者が存在すること、この患者の細胞では、エクソン3の全塩基及びエクソン4の始めの1塩基に対応するアミノ酸配列のみが欠失するタンパク質(Def II)が発現することを報告した(非特許文献1、3、4)。しかしながら、Def IIの発現と神経症状との関連性は不明である。
ところで、最近アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)を用いた標的遺伝子の発現抑制やエクソンスキッピキングにより、疾患を治療する方法が開発されている(例えば、特許文献1、非特許文献5〜7)。エクソンスキッピングは、5’若しくは3’スプライス部位のいずれか若しくは両方、又はエクソンの内部を標的とするAONの結合により誘導することができる。エクソンは、両方のスプライス部位がスプライソソーム複合体によって認識された場合のみmRNAに包含されるため、スプライス部位をアンチセンス核酸でターゲッティングすることにより、エクソンスキッピングを誘導することができる。また、エクソンがスプライシングの機構に認識されるためには、エクソンに存在してスプライシングを促進するモチーフであるESE(exonic splicing enhancer)へのSRタンパク質の結合が必要であると考えられており、ESEをターゲッティングすることでもエクソンのスキッピングを誘導し得る。このようなエクソンスキッピングは、例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療法に用いられている(例えば、特許文献1、非特許文献5)。しかしながら、XPの治療にエクソンスキッピキングの誘導を用いること、及びこれに用いることができるAONは報告されていない。
国際公開第2010/048586号公報
Nishigori C et al., Arch Dermatol, 1994; 130(2): 191-197 Satokata I et al., Proc. Nat. Acad. Sci., 1990; 87: 9908-9912 Sato M et al., Mutat Rese, 1996; 362: 199-208 Tanioka M et al., J. Invest Dermatol, 2005; 125(2): 244-246 Matsuo M, Brain Dev, 1996; 18: 167-172 Maeki E et al., Circulation, 2008; 118(7): 743-753 Mulamba GB et al., Antimicrob. Agents Chemother., 1998: 42(4): 971-973
従って、本発明は、XPAのエクソン3のスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)、及び色素性乾皮症の治療に有効なAONを含有する医薬を提供することを課題とする。
本発明者らは、IVS3-1G>C変異とIVS1+2T>G変異とを別のアリル上に有するXP-A群患者において、XPA遺伝子機能の指標である不定期DNA合成(UDS)能が正常人のわずか11%しかないが、重症型XP-A群患者と比較して、聴力レベルが高く、神経症状が軽いことを見出した(図2)。この結果及び上記報告(非特許文献1、3、4)より、本発明者らは、IVS3-1G>C変異を有するにも関わらず症状の軽い患者では、Def IIが発現しており、このDef IIが、正常なXPAタンパク質の機能を部分的に代償することで、神経症状が軽減されているのではないかと考えた。そうであれば、積極的にエクソン3を除いて転写させる(エクソン3をスキップさせる)ことにより、重症型XP-A群患者の症状が改善するのではないかとの着想(仮説)を得た。
この仮説を検証するため、まず、IVS3-1G>C変異XPA遺伝子をホモに有する細胞であるXP20SSV細胞に、変異XPAタンパク質をコードするcDNAを導入し、変異XPAタンパク質を発現させた。その結果、Def IIを発現する細胞では、コントロールベクターを発現させた細胞と比較して、DNA修復能が改善し、顕著に紫外線(UV)感受性が低減することを見出した(図4)。この効果は、軽症型XP-A群患者で発現が見られるC末端を一部欠失した変異XPA(R228*、W235fs)を発現した場合とほぼ同程度であった。上記の結果は、XPAのエクソン3をスキップさせることにより、XPが改善する上記仮説を支持し、従って、XPAのエクソン3のスキッピングを誘導する薬剤が、XPの治療や改善につながることを支持した。
次に、エクソン3のスキッピングを誘導する方法として、ESEに着目した(図5)。ESEを解析する3種のツール(ESE Finder、Rescue ESE、Human Splicing Finder及びZhang & Chasinの方法)を用いることで、ESE候補領域が含まれる領域(配列番号1で示されるヌクレオチド配列を有する領域)を同定した。次に、その領域に結合するAONを設計し、細胞を用いてエクソン3のスキッピング誘導効果を検証し、その結果、エクソン3のスキッピング誘導効果を有するAONを見出した。本発明は、そのような知見を基にして完成に至ったものである。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 配列番号1で表されるヌクレオチド配列中の連続する少なくとも15個のヌクレオチドからなる配列と相補的なヌクレオチド配列を含む、XPA pre-mRNAのプロセシングにおけるエクソン3のスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチド。
[2] 配列番号2〜7のいずれかで表されるヌクレオチド配列中の連続する少なくとも15個のヌクレオチドからなる配列と相補的なヌクレオチド配列を含む、[1]に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
[3] 15〜40個のヌクレオチドからなる、[1]又は[2]に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
[4] 前記相補的なヌクレオチド配列が配列番号8〜23のいずれかで表されるヌクレオチド配列(但し、チミンはウラシルであってもよい)である、[1]〜[3]のいずれかに記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
[5] 前記相補的なヌクレオチド配列が配列番号24〜44のいずれかで表されるヌクレオチド配列(但し、チミンはウラシルであってもよい)である、[1]〜[3]のいずれかに記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
[6] 糖−リン酸骨格の1種以上の修飾を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
[7] 2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸を含む、[6]に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
[8] 全ヌクレオチドの1/3以上が2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸である、[7]に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
[9] 配列番号45又は46で表されるヌクレオチド配列からなる、[1]に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
[10] [1]〜[9]のいずれかに記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有してなる、XPA pre-mRNAのプロセシングにおけるエクソン3のスキッピング誘導用試薬。
[11] [1]〜[9]のいずれかに記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有してなる、色素性乾皮症の治療剤。
[12] 前記色素性乾皮症がXPA遺伝子のIVS3-1G>C変異に起因する、[11]に記載の剤。
[13] 哺乳動物に対し、[1]〜[9]のいずれかに記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効量を投与することを特徴とする、該哺乳動物における色素性乾皮症の治療方法。
[14] 色素性乾皮症の治療に使用するための、[1]〜[9]のいずれかに記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)によれば、XPA、特にヒトXPAのエクソン3のスキッピングを誘導することができる。このため、本発明のAONは、色素性乾皮症の治療薬や予防薬として用いることができる。
図1は、XPA遺伝子のIVS3-1G>C変異の概略を示す。イントロン3のスプライスアクセプター部位の変異により、mRNAにおいて2塩基の欠失及びフレームシフトが生じ、エクソン4の翻訳中に終止コドン(PTC)が生じる。このmRNA(Def I)はナンセンス変異依存mRNA分解機構(NMD)による分解の対象となり、従って途中で翻訳が停止した短いタンパク質産物の発現レベルは低く抑えられている。この時、エクソン3(106塩基)のスキップが起こると計108塩基の欠失(in-frame欠失)となるため、タンパク質の翻訳は本来の終止コドンまで進み、mRNAはNMDによる分解を受けない(Def II)。 図2は、神経症状の軽いXP-A群患者における不定期DNA合成(UDS)、聴力レベル及びMRIを示す。 図3は、神経症状の軽いXP-A群患者におけるXPAのスプライシングパターンを示す。 図4は、IVS3-1G>C変異アリルのホモ接合体である重症型XP-A群患者由来培養細胞(XP2OSSV)を親株とし、XP-A群患者で発現するさまざまな変異XPA遺伝子のcDNAを安定発現した細胞株の紫外線感受性及びDNA修復活性に対する影響を示す。Def Iを発現しても紫外線感受性やDNA修復活性は親株や発現ベクターのみを導入した細胞と同等レベルであるのに対し、Def II発現細胞は軽症型XP-A群患者で発現が見られるC末端を一部欠失した変異XPA(R228*、W235fs)を発現した場合とほぼ同等レベルまで回復が見られている。 図5は、XPAのエクソン3のスキッピング方法の概念図を示す。 図6は、XPAのエクソン3のスキッピング誘導に関わる配列を示す。 図7はAON1(配列番号45)によるXPAのエクソン3のスキッピング誘導効果を示す。XP2OSSV細胞にさまざまな濃度のAON1をトランスフェクションし、24時間後に全RNAを抽出してエクソン3のスキッピングを検出するプライマーセットを用いてRT-PCRを行った。 図8は、AON1の一部ヌクレオシド構造を3塩基ごとにENAに置換したAON (ENA1:配列番号46)によるXPAエクソン3のスキッピングの誘導効果を示す。 図9は、ENA1によるエクソン3スキッピング誘導効果を、定量RT-PCRによって評価した結果を示す。 図10は、ENA1によって誘導されるXPAエクソン3のスキッピングが、XPAタンパク質の発現に及ぼす影響を示す。
1.XPA pre-mRNAのプロセシングにおけるエクソン3のスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチド
本発明は、XPA pre-mRNAのエクソン3のESE又はスプライス部位に対して相補的なヌクレオチド配列を含む、XPAのエクソン3のスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチド(以下「本発明のAON」と略記する場合がある)を提供する。
本発明において、「XPA pre-mRNAのプロセシングにおけるエクソン3のスキッピングを誘導する」とは、本発明のAONを用いて、AONを導入した対象(細胞、個体等)に、エクソン3のヌクレオチド配列が欠失したXPA mRNA(エクソン3欠失XPA mRNA)を誘導することを意味し、「誘導する」とは、本発明のAONを導入しない場合と比較して、導入した場合に、対象において、エクソン3欠失XPA mRNAの存在量が増加することを意味する。本発明のAONが標的とするXPA pre-mRNAの配列は、例えば、NCBIのデータベース(例えば、ヒトの場合、(NC_000009.12:c97697409-97654398)やUCSC Genome browserなど)を参照して設定することができる。非ヒト哺乳動物(例:ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ウシ、イヌ、ネコ、サル)のXPA pre-mRNAを標的とする場合も、同様に公知の配列を参照して標的配列を設定することができる。また、本明細書では、特にことわらない限り、ヒトXPA pre-mRNAのヌクレオチド配列に基づいて、AONが標的とするヌクレオチド配列やヌクレオチドの長さ等を記載するが、非ヒト哺乳動物オルソログにおける対応するヌクレオチド配列やヌクレオチドの長さ等も、当該記載内容に包含されるものである。以下の表1に、ヒトXPA遺伝子のエクソン(及びイントロンの一部)の塩基配列を示す。表1のエクソン1〜6の配列を、それぞれ配列番号48〜53で表す。
本発明のAONが標的とするXPA pre-mRNAのヌクレオチド配列としては、本発明のAONがXPAのエクソン3のスキッピングを誘導し得る限り特に制限されないが、例えば、ヒトXPA pre-mRNAのエクソン3の-10位からイントロン3の10位に亘る配列である配列番号1(cuuuucuuagGACCUGUUAUGGAAUUUGAUUAYGUAAUAUGYGAAGAAUKUGGGAAAKAAUUUAUGGAUUCUUAHCUUAUGAACCACUUUGAUUUGCCAACUURUGAUAACUGCARguacuuauuu)で表される配列の全部又は一部の配列が挙げられ、その配列の中でも、複数の検索アルゴリズムで共通して候補とされた領域を含む配列が好ましい。このような配列として、例えば、配列番号2(UGYGAAGAAUKUGGGAAAKAAUUUAUGGAUUCUUAHCUUAUGAACCACUUUGAUUU)又は配列番号3(cuuagGACCUGUUAUGGAAUUUGAUUAYGUAAUAUGYGAAGAA)で表される配列の全部又は一部の配列が挙げられる。配列番号2で表される配列の一部の配列としては、例えば、配列番号4(UGYGAAGAAUKUGGGAAAKAAUUUAUGGAU)又は配列番号5(AUUUAUGGAUUCUUAHCUUAUGAACCACU)で表される配列が挙げられ、配列番号3で表される配列の一部の配列としては、例えば、配列番号6(AAUUUGAUUAYGUAAUAUGYGAAGAA)又は配列番号7(cuuagGACCUGUUAUGGAAUUUGAU)で表される配列が挙げられる。これらの配列中、大文字はエクソン3、小文字はイントロンの配列、YはC又はU、KはG又はU、HはA、U又はC、RはA又はGを示す。また、下線部位を欠失する変異も報告されている(States et al. Hum Mutat 12:103, 1998)ことから、これらの配列を欠失した配列も配列番号1、2又は4に包含される。これらの配列中、特に連続する少なくとも15個(例:15、20個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個又はそれ以上)のヌクレオチドからなる配列であることが好ましい。配列番号2と3の位置関係を、図6に示す。本明細書では、特にことわらない限り、ヌクレオチド配列は左から右に、5’から3’の方向に記載する。
配列番号2で表される配列は、ヒトXPA遺伝子の中でもアミノ酸の置換又は欠失を伴う複数の変異が知られている部位に対応するXPA pre-mRNAの配列であり、配列番号2で表される配列の全部又は一部を標的とするAONは、導入対象が有する変異に合わせて配列を適宜設定することが好ましい。一方で、配列番号3で表される配列は、ヒトXPA遺伝子の中でもアミノ酸の置換又は欠失を伴う変異が報告されていない部位に対応するXPA pre-mRNAの配列であり、配列番号3で表される配列の全部又は一部を標的とするAONは、導入対象ごとに配列を設定する必要性が低く、ユニバースに用いることができる。
本発明において「相補的である」とは、標的配列に対して完全相補的な(即ち、ミスマッチなくハイブリダイズする)配列のみならず、哺乳動物細胞の生理的条件下で標的配列とハブリダイズし得る限り、1ないし数個(例:2、3、4又は5個)のミスマッチを含む配列をも含む意味で用いられる。例えば、XPA pre-mRNA中の標的配列に対して完全相補的な配列と、80%以上(例:85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上)、最も好ましくは100%の同一性を有する配列が挙げられる。また、個々の塩基における相補性は、対象となる塩基とワトソン・クリック型塩基対を形成することに限定されるものではなく、フーグスティーン型塩基対やゆらぎ塩基対(Wobble base pair)を形成することも含む。
本発明のAONは、XPAのエクソン3のスキッピングを誘導できる限り特に制限されないが、好ましくは自己相補的配列を含まず、XPA pre-mRNAのエクソン3の領域及びその近傍領域(エクソン3の開始点より20塩基及びエクソン3の終結点より20塩基)以外の領域と高い相同性を有さないことが好ましい。自己相補的配列を含まないとは、該配列を全く含まないだけでなく、例えば、3塩基以上、4塩基以上、又は5塩基以上の連続する自己相補的配列を含まないことを包含する意味で用いられる。核酸を利用した既存のDMD等の治療薬(特許文献1、非特許文献5〜7)では、用いられたオリゴヌクレオチドは4塩基以上の連続する自己相補的配列を含まないため、4塩基以上の連続する自己相補的配列が含まれないものが好ましい。また、相同性は、BLASTにより評価することができ、本発明のAONの導入対象のゲノム及び転写産物中に、該AONの配列と完全相補的な配列が存在しないことが好ましい。
かかるAONの具体例として、例えば、配列番号2で表される配列の一部と相補的な配列を含むAONである、配列番号8又は9で表される配列を含むAONが挙げられ、好ましくは、該配列からなるAONである。配列番号8又は9で表される配列((A)ATCCATAAATTMTTTCCCAMATTCTTCRCA)中のMはA又はCを示し、RはA又はGを示す。C108F変異を有する対象には、5’側のMがCであり、3’側のMがAであるAONを用いることが好ましく、E111X変異を有する対象には、5’側のMがAであり、3’側のMがCであるAONを用いることが好ましく、その他の対象には、両方のMがCであるAONを用いることが好ましい。また、その他のAONの具体例として、配列番号10〜23のいずれかで表される配列を含むAONが挙げられ、好ましくは、該配列からなるAONである。配列番号10〜23のいずれかで表される配列((AAATCA)AGTGGTTCATAAGDTAAGAATCCATAAAT(T))(下線を引いた配列は欠失していてもよい)中のDはA、G又はT若しくはUを示し、Y116X変異を有する対象には、DがT又はUであるAONを用いることが好ましく、その他の対象には、DがAであるAONを用いることが好ましい。
また、本発明のAONとして、例えば、配列番号3で表される配列と相補的な配列を含むAONである、配列番号24〜33、及び配列番号34〜44のいずれかで表される配列を含むAONが挙げられ、好ましくは、該配列からなるAONである。配列番号24〜33のいずれかで表される配列(TTCTTCRCATATTACRTAATCAAATT(CCATAACAG))及び配列番号34〜44のいずれかで表される配列((ATATTACRTA)ATCAAATTCCATAACAGGTCCTAAG)中のRはA又はGを示す。
本発明のAONの長さは、15ヌクレオチド長以上(例:15、19、20、21、22、23、24、25ヌクレオチド長又はそれ以上)であることが好ましく、50ヌクレオチド長以下(例:50、45、40、36ヌクレオチド長又はそれ以下)であることが好ましい。典型的には15〜50ヌクレオチド長であり、好ましくは15〜40ヌクレオチド長であり、より好ましくは20〜40ヌクレオチド長であり、さらに好ましくは25〜36ヌクレオチド長である。好ましい実施態様において、本発明のAONは30ヌクレオチド長である。
本発明のAONの構成単位としては、例えば、リボヌクレオチド及びデオキシリボヌクレオチドが挙げられる。下述の実施例で示す通り、非修飾のヌクレオチド残基からなるDNAを用いた場合でもXPAのエクソン3のスキッピングが誘導されたことから、本発明のAONのヌクレオチドは、非修飾であってもよく(非修飾のヌクレオチド残基を「非修飾ヌクレオチド残基」と称する場合がある)、あるいは修飾されていてもよい(修飾されたヌクレオチド残基を「修飾ヌクレオチド残基」と称する場合がある)。本発明のAONは、例えば、修飾ヌクレオチド残基を含むことによって、ヌクレアーゼ耐性が向上し、安定性の改善が可能である。本発明のAONに修飾ヌクレオチド残基が含まれる場合、その修飾ヌクレオチド残基の割合は特に限定されないが、全ヌクレオチド残基の1/3以上が修飾ヌクレオチド残基であることが好ましい。また、本発明のAONは、非修飾ヌクレオチド残基や修飾ヌクレオチド残基とは異なる分子で構成されるリンカー領域を含んでいてもよい。
本発明のAONは、例えば、標識物質で標識化されてもよい。前記標識物質は、特に制限されず、例えば、蛍光物質、色素、同位体等が挙げられる。前記標識物質は、例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy3色素、Cy5色素等の蛍光団が挙げられ、前記色素は、例えば、Alexa488等のAlexa色素等が挙げられる。前記同位体は、例えば、安定同位体及び放射性同位体が挙げられ、好ましくは安定同位体である。前記安定同位体は、例えば、被ばくの危険性が少なく、専用の施設も不要であることから取り扱い性に優れ、また、コストも低減できる。また、前記安定同位体は、例えば、標識した化合物の物性変化がなく、トレーサーとしての性質にも優れる。前記安定同位体は、特に制限されず、例えば、2H、13C、15N、17O、18O、33S、34S及び36Sが挙げられる。
前記ヌクレオチド残基は、構成要素として、糖、塩基及びリン酸を含む。リボヌクレオチドは、糖としてリボース残基を有し、塩基として、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)及びウラシル(U)(チミン(T)に置き換えることもできる)を有し、デオキシリボヌクレオチド残基は、糖としてデオキシリボース残基を有し、塩基として、アデニン(dA)、グアニン(dG)、シトシン(dC)及びチミン(dT)(ウラシル(dU)に置き換えることもできる)を有する。
前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、前記非修飾ヌクレオチド残基の構成要素のいずれが修飾されてもよい。本発明において、「修飾」には、例えば、前記構成要素の置換、付加及び/又は欠失、前記構成要素における原子及び/又は官能基の置換、付加及び/又は欠失が挙げられる。前記修飾ヌクレオチド残基としては、例えば、天然に存在するヌクレオチド残基、人工的に修飾したヌクレオチド残基等が挙げられる。前記天然由来の修飾ヌクレオチド残基としては、例えば、リンバックら(Limbach et al.、1994、Summary:the modified nucleosides of RNA、Nucleic Acids Res.22:2183〜2196)を参照できる。また、前記修飾ヌクレオチド残基としては、例えば、前記ヌクレオチドの代替物の残基が挙げられる。
前記ヌクレオチド残基の修飾は、例えば、糖−リン酸骨格(該骨格には、塩基も含まれる)(以下、糖リン酸骨格)の修飾が挙げられる。
前記糖リン酸骨格において、糖がリボースの場合、例えば、リボース残基を修飾できる。前記リボース残基は、例えば、2’位炭素を修飾でき、具体的には、例えば、2’位炭素に結合する水酸基をメチル基で修飾、あるいは該水酸基を水素又はフルオロ等のハロゲンに置換できる。また、前記2’位炭素の水酸基を水素に置換することで、リボース残基をデオキシリボース残基に置換できる。前記リボース残基は、例えば、立体異性体に置換でき、例えば、アラビノース残基に置換してもよい。また、本発明において、「核酸」にはヌクレオチドなどの核酸モノマーが包含される。
前記糖リン酸骨格は、例えば、非リボース残基(非デオキシリボース残基も包含されるものとする)及び/又は非リン酸を有する非リボースリン酸骨格に置換してもよく、このような置換も糖リン酸骨格の修飾に包含される。前記非リボースリン酸骨格は、例えば、前記糖リン酸骨格の非荷電体が挙げられる。前記非リボースリン酸骨格に置換された、前記ヌクレオチドの代替物は、例えば、モルホリノ、シクロブチル、ピロリジン等が挙げられる。前記代替物としては、この他に、例えば、人工核酸が挙げられる。具体例として、例えば、PNA(ペプチド核酸)、架橋構造型人工核酸(BNA:Bridged Nucleic Acid)などが挙げられる。BNAとしては、例えば、ロックト人工核酸(LNA:Locked Nucleic Acid)、2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸(ENA:2’−O,4’−C−Ethylenebridged Nucleic Acid)などが挙げられる。以下に、本発明に用いることができるLNA及びENAを含むBNAの具体的な構造(ヌクレオシド部分)を、国際公開第2016/006697号公報に記載の図を引用して示す。
式中、Rは、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、または核酸合成のアミノ基の保護基を表す。好ましくは、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、またはベンジル基であり、より好ましくは、Rは、水素原子またはメチル基である。式中、Baseは塩基を表す。
また、これらのうち、標的RNAとの結合の安定性及び生体内に存在する分解酵素(ヌクレアーゼ)に対する耐性という観点からは、好ましくは、以下のヌクレオシド構造を有するENAである。
これらの人工核酸は、例えば、特開2002-241393、特開2000-297097等を参照して合成することができる。
前記糖リン酸骨格において、例えば、リン酸基を修飾できる。前記糖リン酸骨格において、糖残基に最も隣接するリン酸基は、αリン酸基と呼ばれる。前記αリン酸基は、負に荷電し、その電荷は、糖残基に非結合の2つの酸素原子にわたって、均一に分布している。前記αリン酸基における4つの酸素原子のうち、ヌクレオチド残基間のホスホジエステル結合において、糖残基と非結合である2つの酸素原子は、以下、「非結合(non-linking)酸素」ともいう。他方、前記ヌクレオチド残基間のホスホジエステル結合において、糖残基と結合している2つの酸素原子は、以下、「結合(linking)酸素」という。前記αリン酸基は、例えば、非荷電となる修飾、又は、前記非結合酸素における電荷分布が非対称型となる修飾を行うことが好ましい。
前記リン酸基は、例えば、前記非結合酸素を置換してもよい。前記酸素は、例えば、S(硫黄)、Se(セレン)、B(ホウ素)、C(炭素)、H(水素)、N(窒素)及びOR(Rは、アルキル基又はアリール基)のいずれかの原子で置換でき、好ましくは、Sで置換される。前記非結合酸素は、例えば、両方が置換されていることが好ましく、より好ましくは、両方がSで置換される。前記修飾リン酸基は、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレネート、ボラノホスフェート、ボラノホスフェートエステル、ホスホネート水素、ホスホロアミデート、アルキル又はアリールホスホネート、及びホスホトリエステル等が挙げられる。
前記リン酸基は、例えば、前記リン非含有のリンカーに置換してもよい。前記リンカーは、例えば、シロキサン、カーボネート、カルボキシメチル、カルバメート、アミド、チオエーテル、エチレンオキサイドリンカー、スルホネート、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ、及びメチレンオキシメチルイミノなどを含み、好ましくは、メチレンカルボニルアミノ基及びメチレンメチルイミノ基を含む。
あるいは、前記リン酸基は、リン酸非含有のリンカーに置換してもよい。このようなリンカーとしては、例えば、“Med. Chem. Commun., 2014, 5, 1454-1471”に記載されたもの(以下に図を引用して示す)が挙げられる。
本発明のAONは、例えば、3’末端及び5’末端の少なくとも一方のヌクレオチド残基が修飾されてもよい。前記修飾は、例えば、3’末端及び5’末端のいずれか一方でもよいし、両方でもよい。前記修飾は、例えば、前述のとおりであり、好ましくは、末端のリン酸基に行うことが好ましい。前記リン酸基は、例えば、全体を修飾してもよいし、前記リン酸基における1つ以上の原子を修飾してもよい。前者の場合、例えば、リン酸基全体の置換でもよいし、欠失でもよい。
前記末端のヌクレオチド残基の修飾としては、例えば、他の分子の付加が挙げられる。前記他の分子は、例えば、前述のような標識物質、保護基等の機能性分子が挙げられる。前記保護基としては、例えば、S(硫黄)、Si(ケイ素)、B(ホウ素)、エステル含有基等が挙げられる。前記標識物質等の機能性分子は、例えば、本発明のAONの検出等に利用できる。
前記他の分子は、例えば、前記ヌクレオチド残基のリン酸基に付加してもよいし、スペーサーを介して、前記リン酸基又は前記糖残基に付加してもよい。前記スペーサーの末端原子は、例えば、前記リン酸基の前記結合酸素、又は、糖残基のO、N、SもしくはCに、付加又は置換できる。前記糖残基の結合部位は、例えば、3’位のCもしくは5’位のC、又はこれらに結合する原子が好ましい。前記スペーサーは、例えば、前記PNA等のヌクレオチド代替物の末端原子に、付加又は置換することもできる。
前記スペーサーは、特に制限されず、例えば、-(CH2)n-、-(CH2)nN-、-(CH2)nO-、-(CH2)nS-、O(CH2CH2O)nCH2CH2OH、無塩基糖、アミド、カルボキシ、アミン、オキシアミン、オキシイミン、チオエーテル、ジスルフィド、チオ尿素、スルホンアミド、及びモルホリノ等、ならびに、ビオチン試薬及びフルオレセイン試薬等を含んでもよい。前記式において、nは、正の整数であり、n=3又は6が好ましい。
前記末端に付加する分子は、これらの他に、例えば、色素、インターカレート剤(例えば、アクリジン)、架橋剤(例えば、ソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サッフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、親油性担体(例えば、コレステロール、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コール酸、ジメトキシトリチル、又はフェノキサジン)及びペプチド複合体(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、リン酸、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG-40K)、MPEG、[MPEG]2、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射線標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収促進剤(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えば、イミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン−イミダゾール複合体、テトラアザマクロ環のEu3+複合体)等が挙げられる。
本発明のAONは、前記5’末端が、例えば、リン酸基又はリン酸基アナログで修飾されてもよい。前記リン酸基は、例えば、5’一リン酸((HO)2(O)P-O-5’)、5’二リン酸((HO)2(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’三リン酸((HO)2(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’−グアノシンキャップ(7-メチル化又は非メチル化、7m-G-O-5’-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’−アデノシンキャップ(Appp)、任意の修飾又は非修飾ヌクレオチドキャップ構造(N-O-5’-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’一チオリン酸(ホスホロチオエート:(HO)2(S)P-O-5’)、5’一ジチオリン酸(ホスホロジチオエート:(HO)(HS)(S)P-O-5’)、5’-ホスホロチオール酸((HO)2(O)P-S-5’)、硫黄置換の一リン酸、二リン酸及び三リン酸(例えば、5’-α-チオ三リン酸、5’-γ-チオ三リン酸等)、5’-ホスホルアミデート((HO)2(O)P-NH-5’、(HO)(NH2)(O)P-O-5’)、5’−アルキルホスホン酸(例えば、RP(OH)(O)-O-5’、(OH)2(O)P-5’-CH2、Rはアルキル(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル等))、5’-アルキルエーテルホスホン酸(例えば、RP(OH)(O)-O-5’、Rはアルキルエーテル(例えば、メトキシメチル、エトキシメチル等))等が挙げられる。
前記ヌクレオチド残基において、前記塩基は、特に制限されず、例えば、天然の塩基でもよいし、非天然の塩基でもよい。前記塩基は、例えば、天然由来でもよいし、合成品でもよい。前記塩基として、例えば、一般的な塩基、その修飾アナログ、ユニバーサル塩基などが使用できる。
前記塩基としては、例えば、アデニン及びグアニン等のプリン塩基、シトシン、ウラシル及びチミン等のピリミジン塩基が挙げられる。前記塩基としては、この他に、イノシン、チミン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌバラリン(nubularine)、イソグアニシン(isoguanisine)、ツベルシジン(tubercidine)等が挙げられる。前記塩基は、例えば、2-アミノアデニン、6-メチル化プリン等のアルキル誘導体;2-プロピル化プリン等のアルキル誘導体;5-ハロウラシル及び5-ハロシトシン;5-プロピニルウラシル及び5-プロピニルシトシン;6-アゾウラシル、6-アゾシトシン及び6-アゾチミン;5-ウラシル(プソイドウラシル)、4-チオウラシル、5-ハロウラシル、5-(2-アミノプロピル)ウラシル、5-アミノアリルウラシル;8-ハロ化、アミノ化、チオール化、チオアルキル化、ヒドロキシル化及び他の8-置換プリン;5-トリフルオロメチル化及び他の5-置換ピリミジン;7-メチルグアニン;5-置換ピリミジン;6-アザピリミジン;N-2、N-6、及びO-6置換プリン(2-アミノプロピルアデニンを含む);5-プロピニルウラシル及び5-プロピニルシトシン;ジヒドロウラシル;3-デアザ−5-アザシトシン;2-アミノプリン;5-アルキルウラシル;7-アルキルグアニン;5-アルキルシトシン;7-デアザアデニン;N6,N6-ジメチルアデニン;2,6-ジアミノプリン;5-アミノ−アリル−ウラシル;N3-メチルウラシル;置換1,2,4-トリアゾール;2-ピリジノン;5-ニトロインドール;3-ニトロピロール;5-メトキシウラシル;ウラシル−5-オキシ酢酸;5-メトキシカルボニルメチルウラシル;5-メチル-2-チオウラシル;5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウラシル;5-メチルアミノメチル-2-チオウラシル;3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウラシル;3-メチルシトシン;5-メチルシトシン;N4-アセチルシトシン;2-チオシトシン;N6-メチルアデニン;N6-イソペンチルアデニン;2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン;N-メチルグアニン;O-アルキル化塩基等が挙げられる。また、プリン及びピリミジンは、例えば、米国特許第3,687,808号、「Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering」、858〜859頁、クロシュビッツ ジェー アイ(Kroschwitz J.I.)編、John Wiley & Sons、1990、及びイングリッシュら(Englischら)、Angewandte Chemie、International Edition、1991、30巻、p.613に開示されるものが含まれる。ユニバーサル塩基は、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル及びチミンなどと塩基対を形成し得るヌクレオチド塩基類似体を意味する。前記ユニバーサル塩基としては、例えば、C−フェニル、C−ナフチル及び他の芳香族の誘導体、イノシン、アゾールカルボザミド(carbozamide)、ニトロアゾール誘導体(3−ニトロピロール、4−ニトロインドール、5−ニトロインドール、及び6−ニトロインドール等)(Loakes,2001,Nucleic Acids Res.29:2437)や、国際公開第2007/026485号公報に記載の塩基などが挙げられるが、これらに限定されない。
前記修飾ヌクレオチド残基は、これらの他に、例えば、塩基を欠失する残基、すなわち、無塩基の糖リン酸骨格を含んでもよい。また、前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、国際公開第2004/080406号に記載された残基が使用できる。
ヌクレオチド残基が修飾されたAONとしては、例えば、配列番号46で表される配列を含むAON並びに該AONの修飾箇所や修飾割合が異なるオリゴヌクレオチドを含むAONなどが挙げられ、好ましくは、これらの配列からなるAONである。該ヌクレオチド配列は、配列の型としてDNAで表わされるが、一部又は全てのデオキシリボース残基がリボース残基で置換されたオリゴヌクレオチド、及び/又は一部又は全てのチミンがウラシルで置換されたオリゴヌクレオチドも、これらの配列に包含される。
本発明のAONの合成方法は、特に制限されず、従来公知の方法が採用できる。前記合成方法は、例えば、遺伝子工学的手法による合成法、化学合成法等が挙げられる。遺伝子工学的手法は、例えば、インビトロ転写合成法、ベクターを用いる方法、PCRカセットによる方法が挙げられる。前記ベクターは、特に制限されず、プラスミド等の非ウイルスベクター、ウイルスベクター等が挙げられる。前記化学合成法は、特に制限されず、例えば、ホスホロアミダイト法及びH-ホスホネート法等が挙げられる。前記化学合成法は、例えば、市販の自動核酸合成機を使用可能である。前記化学合成法は、一般に、アミダイトが使用される。前記アミダイトは、特に制限されず、市販のアミダイトとして、例えば、RNA Phosphoramidites(2’-O-TBDMSi、商品名、三千里製薬)、ACEアミダイト及びTOMアミダイト、CEEアミダイト、CEMアミダイト、TEMアミダイト等が挙げられる。
本発明のAONが非修飾リボヌクレオチド残基のみで構成される場合、本発明のAONは、該AONの前駆体として、該AONを発現可能な状態でコードする核酸やベクターの形態で提供されてもよい。該発現ベクターは、本発明のAONをコードするDNAを標的細胞内で機能的なプロモーターの調節下に含むことを特徴とし、その他の構成は何ら制限されない。該発現ベクターを、自体公知の遺伝子導入法を用いて、標的対象に導入することにより、該対象内でXPAのエクソン3のスキッピングを誘導することができる。
前記プロモーターは、導入対象(XPA pre-mRNAを発現する細胞等)内で機能し得るものであれば特に制限はなく、例えば、pol I系プロモーター、pol II系プロモーター、pol III系プロモーターなどを使用することができるが、好ましくは、pol III系プロモーターである。具体的には、SV40由来初期プロモーター、サイトメガロウイルスLTR等のウイルスプロモーター、β−アクチン遺伝子プロモーター等の哺乳動物の構成タンパク質遺伝子プロモーター、並びにU6プロモーター、H1プロモーター、tRNAプロモーターなどのプロモーターなどが挙げられる。上記発現ベクターは、好ましくは本発明のAONをコードする核酸の下流に転写終結シグナル、すなわちターミネーター領域を含有する。さらに、形質転換細胞選択のための選択マーカー遺伝子(テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン等の薬剤に対する抵抗性を付与する遺伝子、栄養要求性変異を相補する遺伝子等)をさらに含有することもできる。
本発明において発現ベクターに使用されるベクターの種類は特に制限されないが、ヒトへの投与に好適なベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等のウイルスベクター、プラスミドベクターなどが挙げられる。このうち、アデノウイルスは、遺伝子導入効率が極めて高く、非分裂細胞にも導入可能である等の利点を有する。治療効果の持続性の観点から、比較的遺伝子導入効率が高く、非分裂細胞にも導入可能で、且つ逆位末端繰り返し配列(ITR)を介して染色体に組み込まれ得るアデノ随伴ウイルスの使用もまた好ましい。
2.本発明のAONを含有してなる、XPA pre-mRNAのプロセシングにおけるエクソン3のスキッピング誘導用試薬
本発明のAONは、前述のように、XPAのエクソン3のスキッピングを誘導することができる。従って、本発明のAONは、XPAのエクソン3のスキッピング誘導用試薬(以下「本発明の試薬」と略記する場合がある)として用いることができる。また、本発明の試薬が2種以上のAONを含む場合や、その他の試薬類を含む場合、該試薬は、各AON、試薬類を別個の試薬中に含む試薬キットとして提供され得る。本発明の試薬に含まれるAONは、AON分子の形態であってもよく、上述したようにAONをコードする核酸やベクター等の形態でもあってもよく、これらの形態が混合していてもよい。
本発明の試薬は、例えば、前記XPAの遺伝子に変異を有する対象に、前記AONを単独で、あるいは薬理学上許容される担体とともに投与することができる。前記投与工程は、例えば、前記導入対象に前記AONを接触させることにより行うことができる。前記導入対象は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト哺乳類等の非ヒト動物の細胞、組織又は器官が挙げられる。前記投与は、例えば、in vivoでもin vitroでもよい。
本発明のAONの標的細胞内への導入を促進するために、本発明の試薬は、更に核酸導入用試薬を含んでいてもよい。該核酸導入用試薬として、塩化カルシウム、Calcium enrichment試薬、アテロコラーゲン;リポソーム;ナノパーティクル;リポフェクチン、リプフェクタミン(lipofectamine)、DOGS(トランスフェクタム)、DOPE、DOTAP、DDAB、DHDEAB、HDEAB、ポリブレン、あるいはポリ(エチレンイミン)(PEI)等の陽イオン性脂質等を用いることができる。
3.本発明のAONを含有してなる医薬
本発明のAONは、XPAのエクソン3のスキッピングを誘導することができるため、該AONを含有する医薬(以下「本発明の医薬」と略記する)は、XPA遺伝子の変異が関与する疾患の治療に用いることができる。本発明において、「治療」には、症状の軽減や改善、病気や症状の進行、あるいは症状の顕在化の予防、遅延や停止も包含される。このような疾患として、色素性乾皮症が挙げられる。本発明の医薬は、XPA遺伝子のIVS3-1G>C変異に起因する色素性乾皮症に治療に好適に用いることができる。該変異を有する対象が、本発明のAONが標的とする配列に変異を有している場合には、これらの変異に合わせて(例えば、AONが該変異箇所の塩基に対して相補的な塩基となるように)、適宜AONの配列を設計することができる。このような変異としては、例えば、既報のC108F(G323T)変異、E111X(G331T)変異、Y116X(T348A)変異、C126Y(G377A)変異、R130K(G389A)変異、XPAのORFの349番目から353番目の5塩基(CTTAT)が欠失した変異、374番目のCが欠失した変異や、アミノ酸の置換を伴わないサイレント変異(例:T306C変異、C315T変異、T348C変異等)などが挙げられる。ここで記載した変異は、単なる例示であって、具体的な変異に限定されるものではなく、これらの変異以外の変異(既知の変異及び今後発見される変異を含む)に合わせて、適宜AONの配列を設計することができる。
本発明の医薬は、有効量の本発明のAONを単独で用いてもよいし、任意の担体、例えば医薬上許容される担体とともに、医薬組成物として製剤化してもよい。本発明の医薬に含まれるAONは、AON分子の形態であってもよく、上述したようにAONをコードする核酸やベクター等の形態でもあってもよく、これらの形態が混合していてもよい。
医薬上許容される担体としては、例えば、ショ糖、デンプン等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エアロジル等の滑剤、クエン酸、メントール等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム等の安定剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリド等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水等の希釈剤、ベースワックス等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
本発明のAONの標的細胞内への導入を促進するために、本発明の医薬は更に核酸導入用試薬を含んでいてもよい。該核酸導入用試薬としては、上述したものと同様のものを用いることができる。
また、本発明の医薬は、本発明のAONがリポソームに封入されてなる医薬組成物であってもよい。リポソームは、1以上の脂質二重層により包囲された内相を有する微細閉鎖小胞であり、通常は水溶性物質を内相に、脂溶性物質を脂質二重層内に保持することができる。本明細書において「封入」という場合には、本発明のAONはリポソーム内相に保持されてもよいし、脂質二重層内に保持されてもよい。本発明に用いられるリポソームは単層膜であっても多層膜であってもよく、また、粒子径は、例えば10〜1000nm、好ましくは50〜300nmの範囲で適宜選択できる。標的組織への送達性を考慮すると、粒子径は、例えば200nm以下、好ましくは100nm以下であり得る。
オリゴヌクレオチドのような水溶性化合物のリポソームへの封入法としては、リピドフィルム法(ボルテックス法)、逆相蒸発法、界面活性剤除去法、凍結融解法、リモートローディング法等が挙げられるが、これらに限定されず、任意の公知の方法を適宜選択することができる。
本発明の医薬は、経口的に又は非経口的に、哺乳動物(例:ヒト、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ウシ、イヌ、ネコ、サル)に対して投与することが可能であるが、非経口的に投与するのが望ましい。
非経口的な投与(例えば、皮下注射、筋肉注射、静脈内注入、局所注入(局所外用、局所塗布)、髄腔内投与、腹腔内投与など)に好適な製剤としては、水性及び非水性の等張な無菌の注射液剤があり、これには抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、等張化剤等が含まれていてもよい。また、水性及び非水性の無菌の懸濁液剤が挙げられ、これには懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤等が含まれていてもよい。当該製剤は、アンプルやバイアルのように単位投与量あるいは複数回投与量ずつ容器に封入することができる。また、有効成分及び医薬上許容される担体を凍結乾燥し、使用直前に適当な無菌のビヒクルに溶解又は懸濁すればよい状態で保存することもできる。非経口的な投与に好適な別の製剤としては、噴霧剤等を挙げることが出来る。
医薬組成物中の本発明のAONの含有量は、例えば、医薬組成物全体の約0.1ないし100重量%である。
本発明の医薬の投与量は、投与の目的、投与方法、対象疾患の種類、重篤度、投与対象の状況(性別、年齢、体重など)によって異なるが、例えば、成人に全身投与する場合、通常、本発明のAONの一回投与量として2 nmol/kg以上50 nmol/kg以下、局所投与する場合、1 pmol/kg以上10 nmol/kg以下が望ましい。かかる投与量を1〜10回、より好ましくは5〜10回投与することが望ましい。
以下、実施例等により、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 エクソン3スキッピングXP-A群患者における神経症状(聴力)の改善
軽症例XP-A群患者と重症例XP-A群患者から採取した皮膚より樹立した線維芽細胞5x10を35mm ペトリ皿に置いたカバーグラス上に播種し一昼夜(約18時間)培養した後、細胞を軽くPBSで洗った後、紫外線(UV-C)を30J/m照射した。照射後の細胞に[H]-チミジンを含有する培養液で3時間培養したのち、固定した。翌日、カバーグラスをスライドグラスに貼り付け、暗室でオートラジオグラフィー用の乳剤に浸したのち、冷暗所で10日おいた。スライドグラスを写真用の現像液で現像し、固定後水洗し、カバーグラス全体を大きめのカバーグラスで覆った。油浸レンズを用いて1000倍の対物レンズを装着して、一つの細胞あたりのグレイン数を数え、横軸にグレイン数、縦軸に細胞数をとってヒストグラムを作成すると同時に、百個の核についての平均グレイン数を出した。正常細胞のグレイン数を100%とした時の被験細胞でのグレイン数を%で表す。
聴力測定は両耳にヘッドホンを装着して音源から周波数(Hz)と音の強度(dB)の異なる音を出し、その音が聞こえたかどうかを右(○)と左(x)をそれぞれプロットしてオーデイオグラムを作成した。縦軸は20-120dBで、横軸は125-8000Hzを用いている。
エクソン3スキッピングXP-A群患者(自験例)と重症型XP-A群患者、健常人(コントロール)で、UDSならびに神経症状(聴力)を比較した。その結果、エクソン3スキッピングXP-A群患者は、UDSが正常人のわずか11%しかないが、神経症状は重症型XP-A群患者と比べて軽いことが示された(図2)。
実施例2 XPAのエクソン3のスキッピングのin vitroでの効果の検証
<コンストラクトの作製>
N末端にFLAGタグを融合したヒトXPA(野生型または変異型)のcDNAを、レトロウイルス発現用ベクターpMMPに組み込んだ。このコンストラクトをFuGene HD (Promega) を用いて293GPG細胞にトランスフェクションし、組換えレトロウイルスを産生させた。pMMPベクター及び293GPG細胞は、Oryら [PNAS, 93, 11400-11406 (1996)] が報告したものを用いた。重症型XP-A群患者由来の皮膚線維芽細胞株XP2OSSVを親株に用い、Nafら [Mol Cell Biol, 18, 5952-5960 (1998)] の方法に従って、FLAG-XPA(野生型または変異型)を発現する組換えレトロウイルスの感染及び安定発現細胞の作製を行った。
<トランスフェクション>
AON1及びENA1のXP2OSSV細胞へのトランスフェクションは、FuGene HD (Promega) を用いて行った。
<UV感受性試験>
細胞株を12穴プレートの各穴に2.4 × 104個播種し、37℃で一晩培養した。紫外線をさまざまな線量照射した後、37℃で3日間培養した。培地を除いた後、CellTiter 96 AQueous One Solution Reagent (Promega) を培地で6倍希釈した溶液を各穴に加えた。37℃でインキュベーションした後、各サンプルの490 nmの吸光度を測定し、各線量照射時の生存率を測定した。
<DNA修復能試験>
細胞株を10 cmディッシュに播種し、約80%コンフルエントに達するまで培養した。培地に6 mM チミジンを添加して2時間培養してDNA複製を停止させた後、培地を取り除き、殺菌灯 (Toshiba, GL-15) を用いて紫外線 (UVC) を10 J/m2の線量に達するまで照射した。線量率は紫外線強度計 (Topcon) を用いて測定した。再び6 mM チミジンを含む培地でさまざまな時間培養した後、QIAamp DNA Blood Mini Kit (Qiagen) を用いてゲノムDNAを精製した。ゲノムDNA中の6-4光産物の定量はMoriらの方法 [Photochem Photobiol, 54, 225-232 (1991)] に従い、損傷を特異的に認識するモノクローナル抗体 (6-4M2) を用いたELISA法により行った。
以上より、Def Iを発現しても紫外線感受性やDNA修復活性は親株や発現ベクターのみを導入した細胞と同等レベルであるのに対し、Def II発現細胞は軽症型XP-A群患者で発現が見られるC末端を一部欠失した変異XPA(R228*、W235fs)を発現した場合とほぼ同等レベルまで回復が見られている(図4)。このことは、XPAのエクソン3をスキップさせることにより、XPが改善することを示唆する。
実施例3 アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)の設計
<ESE(exonic splicing enhancer)の候補配列の同定>
入力された塩基配列を解析し、Exon Splicing Enhancer (ESE。SRタンパク質が結合し、スプライシングを誘導する)の位置を表示するプログラムであるESE Finder(http://rulai.cshl.edu/cgi-bin/tools/ESE3/esefinder.cgi?process=home; Smith, P. J et al. Hum. Mol. Genet. 15(16): 2490-2508, 2006、 2006CartegniL. et al. Nucleic Acid Research, 2003, 31(13): 3568-3571, 2003)、Intronと比してExon に高頻度に出現し、かつconsensus splice siteよりもnon-consensus splice sitesに高頻度に出現する、6ntの配列を検出するプログラムであるRescue ESE(http://genes.mit.edu/burgelab/rescue-ese/; FairbrotherWG et al. Science 297(5583):1007-1013, 2002)、及び
スプライシングに重要な部位を予測するプログラムであるHuman Splicing Finder(http://www.umd.be/HSF3/; Zhang XH and Chasin LAa, Genes Dev. 18, 1241-1250, 2004)を用いて、ESE(exonic splicing enhancer)の候補配列を同定した。
<AONの設計>
(1)4塩基以上の自己相補的配列を含まない、(2)目的の領域に特異的に結合する(BLASTでの検索結果が、ヒトXPAのエクソン3以外の領域を含まない)及び(3)オリゴヌクレオチドの長さが30nt前後である、との3条件、上記ESEの解析結果、並びに既知のXPAの変異に基づき、XPAのエクソン3のスキッピングを誘導し得るAONを設計した。その結果を図6に示す。
実施例4 AONのエクソン3スキッピングの誘導効果の検証
上記で設計したAONの内、配列番号45(ATCCATAAATTCTTTCCCACATTCTTCGCA)で表される配列からなるAON(以下「AON1」と略記する)を400nM、800nM又は1600nM用いて、エクソン3スキッピングの誘導効果を検証した。まず、XP2OSSV細胞に上記のさまざまな濃度のAON1をトランスフェクションし、24時間後に全RNAを抽出してエクソン3のスキッピングを検出するプライマーセットを用いてRT-PCRを行った。増幅されたDNA断片をアガロースゲル電気泳動で分離し、臭化エチジウムで蛍光染色した結果を図7に示す。対照としてb-アクチンのcDNAを増幅するプライマーセットを用いて、同様にRT-PCRを行った。AON1を導入しなかった対照細胞(C)と比較して、特に1600 nMのAON1を用いた場合に、エクソン3がスキップされたmRNA量の増加が見られた。
以上より、AON1は、XPAのエクソン3のスキッピングを誘導できることが示された。
実施例5 ENA置換によるエクソン3スキッピング誘導の増強効果の検証
次に、AON1の一部(2、5、8、11、14、17、20、23、26、29番目のヌクレオチド残基)のヌクレオシド構造をENAに置換したAON(以下「ENA1」と略記する)(配列番号46(A(T)CC(A)TA(A)AT(T)CT(T)TC(C)CA(C)AT(T)CT(T)CG(C)A)で表される)を用いて、エクソン3スキッピングの誘導効果を検討した。該配列中、括弧書きの塩基はENA修飾ヌクレオチド残基を示す。XP2OSSV細胞にさまざまな濃度のENA1をトランスフェクションし、24時間後に全RNAを抽出してエクソン3のスキッピングを検出するプライマーセットを用いてRT-PCRを行った(図8左)。その結果、ENA1はAON1よりも低濃度(400 nM)でエクソン3のスキッピングを誘導できることが示された。さらにENA1を200 nM又は400 nMの濃度でXP2OSSV細胞にトランスフェクションし、1日後(Day1)及び2日後(Day2)にエクソン3のスキッピングを検出したところ、Day1の方がより高い効果が見られた(図8右)。
以上より、ENA1は、AON1と比較してより効果的にXPAのエクソン3のスキッピングを誘導できることが示された。
エクソン3スキッピングの誘導効果をより定量的に評価するため、ENA1を400 nM又は800 nMの濃度でXP2OSSV細胞にトランスフェクションし、12時間又は24時間培養した後に全RNAを抽出した。逆転写酵素によりcDNAを合成後、エクソン3がスキップされたcDNA配列を増幅するためのプライマーセットを用いて定量PCRを行った。同じRNAサンプルから得られたbアクチン(ACTB)mRNA量で補正した定量結果を図9に示す。対照としてENAをトランスフェクションしなかった細胞(no TF)及びENA1の配列のうち、ENA置換された6か所の塩基に変異を導入したネガティブコントロールENA(配列番号47(A(T)CC(G)TA(G)AT(C)CT(T)TC(C)CA(T)AT(C)CT(C)CG(C)A)で表される)を400 nMの濃度で処理した細胞(NC)を用いた。該配列中、括弧書きの塩基はENA修飾ヌクレオチド残基を示し、下線の塩基は変異を導入した塩基を示す。
以上より、ENA1は濃度依存的にエクソン3のスキッピングを誘導し、その効果が配列特異的であることが示された。
実施例6 エクソン3スキッピングの誘導がXPAタンパク質の発現に及ぼす効果の検証
ENA1を0 nM又は400 nMの濃度でXP2OSSV細胞にトランスフェクションし、1日後(Day1)又は2日後(Day2)に細胞抽出液を調製して抗XPA抗体によりウエスタンブロッティングを行った結果を図10に示す。野生型XPAタンパク質を発現するU2OS細胞(レーン1)及びエクソン3がスキップされたXPAのcDNAを導入して、変異タンパク質を安定発現させたXP2OSSV細胞(レーン6)を同時に解析した。各レーンにロードされた細胞抽出液量の比較のため、aチューブリン(TUBA)の検出を合わせて行った。
以上より、XP2OSSV細胞ではエクソン3スキッピングにより分子量が小さくなったXPAタンパク質が発現しており、ENA1の導入によってその量が増加すること、RT-PCRの結果と一致してタンパク質量に対する効果もENA1の導入後1日目の方が2日目よりも高いことが示された。
本発明のAONは、細胞あるいは個体への投与により、XPAのエクソン3のスキッピングを誘導できるため、色素性乾皮症の治療剤や予防剤として用いることができ、またより効果の高い治療剤の開発にも貢献する。

Claims (14)

  1. 配列番号1で表されるヌクレオチド配列中の連続する少なくとも15個のヌクレオチドからなる配列と相補的なヌクレオチド配列を含む、XPA pre-mRNAのプロセシングにおけるエクソン3のスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチド。
  2. 配列番号2〜7のいずれかで表されるヌクレオチド配列中の連続する少なくとも15個のヌクレオチドからなる配列と相補的なヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
  3. 15〜40個のヌクレオチドからなる、請求項1又は2に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
  4. 前記相補的なヌクレオチド配列が配列番号8〜23のいずれかで表されるヌクレオチド配列(但し、チミンはウラシルであってもよい)である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
  5. 前記相補的なヌクレオチド配列が配列番号24〜44のいずれかで表されるヌクレオチド配列(但し、チミンはウラシルであってもよい)である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
  6. 糖−リン酸骨格の1種以上の修飾を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
  7. 2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸を含む、請求項6に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
  8. 全ヌクレオチドの1/3以上が2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸である、請求項7に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
  9. 配列番号45又は46で表されるヌクレオチド配列からなる、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有してなる、XPA pre-mRNAのプロセシングにおけるエクソン3のスキッピング誘導用試薬。
  11. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有してなる、色素性乾皮症の治療剤。
  12. 前記色素性乾皮症がXPA遺伝子のIVS3-1G>C変異に起因する、請求項11に記載の剤。
  13. 哺乳動物に対し、請求項1〜9のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効量を投与することを特徴とする、該哺乳動物における色素性乾皮症の治療方法。
  14. 色素性乾皮症の治療に使用するための、請求項1〜9のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
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