JP2019094981A - 車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両をフリクションスタートさせる際に係合する発進クラッチの差回転を適切に検出することのできる装置を提供する。【解決手段】駆動力源と、駆動輪と、前記駆動力源と前記駆動輪との間でトルクを伝達する自動変速機と、前記駆動力源と前記自動変速機との間または前記自動変速機の入力軸と出力軸との間で選択的にトルクの伝達および遮断を行う発進クラッチと、車両を前進方向に走行させるシフトポジションが選択されている状態で前記車両が後進方向に後退するずり下がりを判定するとともに、前記入力側部材の回転数と前記出力側部材の回転数との差である差回転を算出する演算部と、を備えた車両の制御装置において、前記ずり下がりの発生を判定した場合は、前記出力側部材の回転数を負の値にして(ステップS3)、前記差回転を算出する(ステップS5)。【選択図】図3
Description
この発明は、駆動力源および自動変速機を搭載した車両を制御する制御装置に関し、特に、車両を発進させる際に係合し、駆動力源と駆動輪との間でトルクを伝達する発進クラッチを制御する車両の制御装置に関するものである。
従来、エンジンを駆動力源とする車両には、エンジンの出力軸(クランク軸)の回転数を変速し、エンジンと駆動輪との間でトルクを伝達する変速機が搭載されている。変速機が自動変速機であれば、通常、発進装置として、エンジンと自動変速機との間にトルクコンバータが設けられる。一方で、例えば、低回転域から大きなトルクを発生することが可能な高出力のエンジンを搭載する場合や、トルク伝達の応答性を高め、発進時や加速走行時の俊敏な操作フィーリングを実現するために、トルクコンバータを省いた車両も知られている。そのような自動変速機の入力側にトルクコンバータを搭載しない車両では、発進装置として、エンジンと自動変速機との間に、スリップ係合が可能な摩擦式のクラッチ(発進クラッチ)が設けられる。あるいは、自動変速機内に設けられた所定の変速段を設定する際に係合するクラッチが、発進クラッチとして用いられる。そして、車両の発進時に、そのような発進クラッチをスリップさせながら係合することにより、エンジンが出力するトルクを徐々に駆動輪へ伝達して駆動力を発生させる。すなわち、いわゆるフリクションスタートが実施される。
上記の発進クラッチのように、スリップ係合して伝達トルク容量を変化させるクラッチに関連する発明が、特許文献1および特許文献2に記載されている。特許文献1には、車両に搭載される部品の温度を推定する装置であって、特に、クラッチの温度を推定する部品温度推定装置が記載されている。この特許文献1に記載された部品温度推定装置は、クラッチの上昇温度、クラッチの下降温度、および、クラッチの温度補正量に基づいて、クラッチの温度を推定する。クラッチの上昇温度は、クラッチの滑り量、すなわち、クラッチの入力側と出力側との間の回転数差に基づいて推定される。クラッチの下降温度は、クラッチから外気への放熱の程度、あるいは、クラッチから外部の部材への熱伝達の程度に基づいて推定される。そして、クラッチの温度補正量は、例えば、気温、車速、ならびに、それら気温および車速をパラメータとして予め設定されたマップなどに基づいて算出される。
また、特許文献2には、車両に搭載される自動変速機へ供給する潤滑油の流量を制御する自動変速機の潤滑流量制御装置が記載されている。この特許文献2に記載された潤滑流量制御装置は、選択されたシフトポジションに対応するクラッチ、すなわち、選択された所定の変速段を設定する際に係合するクラッチに必要な潤滑油の流量を、そのクラッチの差回転(すなわち、クラッチの入力側と出力側との間の回転数差)に基づいて算出する。クラッチの差回転は、自動変速機のシフトポジションが後進用ポジションと前進用ポジションとの間で切り替えられた直後は、クラッチの出力側の回転数を検出する回転数センサの検出値の正負を逆にした値に基づいて算出される。
なお、特許文献3には、クラッチの過熱を抑制しつつ、エンジンのストールを防止することを目的とした車両の制御装置が記載されている。この特許文献3に記載された制御装置は、エンジンの出力軸と変速機の入力軸との間で選択的にトルクの伝達および遮断を行うクラッチの動作を制御するクラッチ制御手段、および、エンジンの出力トルクを制御するエンジン制御手段を備えている。クラッチ制御手段は、クラッチの係合部が半係合状態(すなわち、スリップ係合状態)であるときに、クラッチの係合部の温度が予め定められた温度(閾値)以上の場合は、係合部が完全係合状態になるようにクラッチを制御する。エンジン制御手段は、クラッチ制御手段によって係合部が完全係合状態となるようにクラッチが制御される場合に、少なくともエンジンが停止してしまうことのないトルクを出力するようにエンジンを制御する。
上記のように、車両の発進クラッチは、発進時に、スリップ係合して伝達トルク容量が徐々に増大するように制御される。したがって、発進クラッチをスリップ係合させる際には、発進クラッチの伝達トルク容量を制御するために、発進クラッチの差回転が求められる。また、摩擦材の過熱を防止して発進クラッチを保護するために、発進クラッチの温度が求められる。例えば、上記の特許文献1に記載された技術を適用し、発進クラッチの差回転に基づいて、発進クラッチの温度を推定することができる。また、その場合の発進クラッチの差回転は、上記の特許文献2に記載された技術を適用すると、自動変速機のシフトポジションが後進用ポジションと前進用ポジションとの間で切り替えられた直後は、発進クラッチの出力側の回転数を検出する回転数センサの検出値の正負を逆にした値に基づいて算出される。例えば、シフトポジションが後進用ポジションから前進用ポジションに切り替えられた直後は、通常は正の値として処理される回転数センサの検出値が、負の値にされる(絶対値は不変)。
一般に、車両の駆動系統における回転部材の回転数の検出には、例えば、パルスギヤと電磁ピックアップとを使用したセンサや過電流変位センサなどが用いられる。ただし、そのようなパルス信号を取得して回転数を計測するタイプの回転数センサは、計測対象の回転方向を検出することはできない。そこで、特許文献2に記載された発明では、上記のように後進用ポジションと前進用ポジションとの間で切り替えられた直後は、回転数センサの検出値の正負が逆にされる。そのため、上記のようにシフトポジションが切り替えられた直後で、一時的に、選択された車両の進行方向に対応する回転方向と発進クラッチの出力側の回転方向とが逆になる状況であっても、適切に発進クラッチの差回転を求めることができる。
しかしながら、例えば、車両が坂路を後退する(ずり下がる)ような場面では、選択されている車両の進行方向に対応する回転方向と発進クラッチの出力側の回転方向とが逆になる状態を回転数センサの検出値に反映させることができず、正確な差回転を検出することができない場合がある。例えば、前進用ポジションを選択している車両が登坂路でずり下がる場合は、シフトポジションの切り替えが行われていなくとも、選択されている車両の進行方向(前進方向)に対応する回転方向と発進クラッチの出力側の回転方向とが逆になる。すなわち、車両は前進する状態であるにもかかわらず、発進クラッチの出力側は、車両が後進する回転方向に回転する。その場合、特許文献2に記載された発明では、シフトポジションの切り替えが行われていないので、上記のような選択されている車両の進行方向に対応する回転方向と発進クラッチの出力側の回転方向とが逆になる状態は回転数センサの検出値に反映されない。したがって、そのような状況で得られた回転数センサの検出値から求められる発進クラッチの差回転は、実際よりも少ない値になってしまう。そして、そのような実際よりも少ない差回転に基づいて推定される発進クラッチの温度は、実際よりも低い値になってしまう。その結果、例えば、発進クラッチを保護するための制御を適切に実行することができず、発進クラッチの耐久性を低下させてしまうおそれがある。
この発明は、上記のような技術的課題に着目して考え出されたものであり、車両をフリクションスタートさせる際に係合する発進クラッチの差回転を適切に算出することのできる装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、駆動力源と、駆動輪と、前記駆動力源と前記駆動輪との間でトルクを伝達する自動変速機と、前記自動変速機で設定するシフトポジションを選択するシフト装置と、前記駆動力源からトルクが伝達される入力側部材および前記入力側部材に選択的に係合する出力側部材を有するとともに、前記入力側部材と前記出力側部材とが相対的にスリップしつつトルクを伝達できるように構成され、前記駆動力源と前記自動変速機との間または前記自動変速機の入力軸と出力軸との間で選択的にトルクの伝達および遮断を行う発進クラッチと、前記シフト装置で選択された前記シフトポジション、ならびに、前記発進クラッチにおける前記入力側部材の回転数の絶対値および前記出力側部材の回転数の絶対値を検出する検出部と、車両を前進方向に走行させる前記シフトポジションが選択されている状態で前記車両が後進方向に後退するずり下がりを判定するとともに、前記入力側部材の回転数と前記出力側部材の回転数との差である差回転を算出する演算部と、を備えた車両の制御装置において、前記演算部は、前記ずり下がりの発生を判定した場合は、前記検出部で検出した前記出力側部材の回転数を負の値にして前記差回転を算出することを特徴とするものである。
この発明によれば、例えば、登坂路上の車両が、車両を前進方向に走行させるシフトポジションが選択されている状態で、後進方向に後退する場合、すなわち、車両のずり下がりが生じていることを判定した場合は、発進クラッチの出力側部材の回転数の検出値が負の値として処理される。上記のようにシフト装置で前進のシフトポジションが選択されている状態で車両がずり下がる場合は、発進クラッチの入力側部材は車両を前進させる方向に回転するのに対して、発進クラッチの出力側部材は、車両がずり下がって駆動輪が後進する方向に回転する。発進クラッチの差回転は、入力側部材の回転数と出力部材の回転数との相対的な回転数差であるが、入力側部材の回転数および出力部材の回転数はいずれも絶対値として検出されるため、それらの回転数の検出値をそのまま用いると、上記のように車両のずり下がりが生じている場合は、発進クラッチの差回転を適正に算出することができない。それに対して、この発明によれば、上記のように、車両のずり下がりが生じている場合、すなわち、シフト装置で選択されている車両の進行方向に対応する回転方向と発進クラッチの出力部材の回転方向とが逆になる場合には、発進クラッチの出力側部材の回転数が負の値にされる。そのため、発進クラッチの差回転を正確に算出することができる。そのように算出時の誤差を排除して発進クラッチの差回転が正確に求められることにより、例えば、発進クラッチをスリップ係合する際に、発進クラッチの伝達トルク容量を適切に制御することができる。また、発進クラッチの温度を精度良く推定することができ、発進クラッチを保護するための制御を適切に実施することができる。
つぎに、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1に、この発明を適用することのできる車両の一例を示してある。図1に示す車両Veは、エンジン(ENG)1を駆動力源とし、そのエンジン1の出力側に、自動変速機(AT)2が連結されている。自動変速機2の出力側には、プロペラシャフト3が連結されている。プロペラシャフト3は、終減速機であるデファレンシャルギヤ4および左右の駆動軸5を介して、駆動輪6に連結されている。すなわち、この図1に示す例では、車両Veは、エンジン1が出力する動力を後輪(駆動輪6)に伝達して駆動力を発生させる後輪駆動車として構成されている。なお、この発明の実施形態における車両Veは、エンジン1が出力する動力を前輪に伝達して駆動力を発生させる前輪駆動車であってもよい。あるいは、エンジン1が出力する動力を前輪および後輪にそれぞれ伝達して駆動力を発生させる四輪駆動車であってもよい。
エンジン1は、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関であり、出力の調整、ならびに、始動および停止などの作動状態が電気的に制御されるように構成されている。ガソリンエンジンであれば、スロットルバルブの開度、燃料の供給量または噴射量、点火の実行および停止、ならびに、点火時期などが電気的に制御される。ディーゼルエンジンであれば、燃料の噴射量、燃料の噴射時期、あるいは、EGR[Exhaust Gas Recirculation]システムにおけるスロットルバルブの開度などが電気的に制御される。
自動変速機2は、例えば遊星歯車機構(図示せず)、および、所定の変速段(変速比)を設定するために選択的に係合されるクラッチ・ブレーキ機構から構成される従来一般的な有段式の自動変速機である。あるいは、この発明の実施形態における自動変速機2は、ベルト式無段変速機やトロイダル式無段変速機のように、変速比を連続的に変化させることが可能な無段変速機であってもよい。
いずれのタイプであっても、自動変速機2は、自動変速機2の入力軸2aと出力軸2bとの間で選択的に動力の伝達および遮断を行う発進クラッチ7を有している。例えば、上記のような遊星歯車機構を用いた有段式の自動変速機2であれば、自動変速機2内のいずれか二つの回転要素を選択的に連結するクラッチ機構が、この発明の実施形態における「発進クラッチ」に相当し、この発進クラッチ7として機能する。すなわち、発進クラッチ7は、自動変速機2で所定の変速段(もしくは変速比)を設定する場合に係合し、動力伝達を行うとともに、解放することにより、入力軸2aと出力軸2bとの間の動力伝達を遮断して自動変速機2をニュートラルの状態にするクラッチ機構である。発進クラッチ7は、入力軸2aに直接または間接的に連結され、エンジン1からトルクが伝達される入力側部材7aと、出力軸2bに直接または間接的に連結され、出力軸2bへトルクを伝達する出力側部材7bとを有している。出力側部材7bは、入力側部材7aに選択的に係合し、入力側部材7aと出力側部材7bとが相対的にスリップしつつトルクを伝達できるように構成されている。
上記の自動変速機2には、シフト装置8が設けられている。シフト装置8は、自動変速機2のシフトポジション(または、シフトレンジ)を選択するための機器あるいは機構であり、例えば、シフトレバーやセレクトスイッチなどによって構成されている。車両Veの運転者は、シフト装置8を操作することにより、例えば、D(ドライブ)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、および、P(パーキング)ポジションを選択することができる。Dポジションは、車両Veを前進方向に走行させるためのシフトポジションであり、Rポジションは、車両Veを後進方向に走行させるためのシフトポジションである。車両Veを前進方向に走行させるためのシフトポジションとして、上記のDポジションに加えて、例えば、L(ロー)ポジション、2(セカンド)ポジション、および、B(ブレーキ)ポジション等を選択可能なように構成することもできる。
車両Veは、車両Veの各部を制御するためのデータを取得する検出部9を備えている。検出部9は、車両Veを制御するための各種データを検出するセンサや機器を総称している。検出部9は、例えば、発進クラッチ7における入力側部材7a(または、後述する発進クラッチ20における入力側部材20a)の回転数を検出する入力側回転数センサ9a、発進クラッチ7における出力側部材7b(または、後述する発進クラッチ20における出力側部材20b)の回転数を検出する出力側回転数センサ9b、シフト装置8で選択されたシフトポジションを検出するシフトポジションセンサ9c、潤滑油の温度を検出する油温センサ9d、また、駆動輪6を含む車輪の回転速度をそれぞれ検出する車輪速センサ(図示せず)などを有している。なお、上記の入力側回転数センサ9a、および、出力側回転数センサ9bは、いずれも、パルスギヤと電磁ピックアップとを使用したセンサ、あるいは、過電流変位センサなどから構成されている。そのようなパルス信号を取得して回転数を計測するタイプのセンサを用いることにより、計測対象の回転方向を検出することはできないが、比較的に容易に設けることができ、そのため、装置の簡素化やコストダウンを図ることができる。そして、検出部9は、後述するコントローラ10と電気的に接続されており、上記のような各種センサや機器等の検出値に応じた電気信号を検出データとしてコントローラ10に出力する。
上記のような車両Veを制御するためのコントローラ(ECU)10が設けられている。コントローラ10は、例えばマイクロコンピュータを主体にして構成される電子制御装置である。コントローラ10には、上記の検出部9で検出された各種データが入力される。コントローラ10は、入力された各種データおよび予め記憶させられているデータや計算式等を使用して演算を行う。すなわち、コントローラ10は、この発明の実施形態における「演算部」に相当する。そして、コントローラ10は、その演算結果を制御指令信号として出力し、少なくとも、上記のようなエンジン1、自動変速機2、および、発進クラッチ7(または20)の動作をそれぞれ制御するように構成されている。例えば、コントローラ10は、自動変速機2の油圧制御装置を制御して各変速段を設定し、また、変速制御を実行する。なお、図1では一つのコントローラ10が設けられた例を示しているが、コントローラ10は、例えば制御する装置や機器毎に、あるいは制御内容毎に、複数設けられていてもよい。
この発明の実施形態で制御対象にする車両Veは、上記の図1で示した構成に限定されない。例えば、この発明の実施形態における「発進クラッチ」は、図2に示すように、エンジン1と自動変速機2との間に設けられた発進クラッチ20でもよい。発進クラッチ20は、エンジン1と自動変速機2との間に配置されたいわゆる発進装置であり、エンジン1と自動変速機2との間で選択的に動力の伝達および遮断を行う。発進クラッチ20は、スリップ係合あるいはいわゆる半クラッチが可能な摩擦クラッチによって構成されている。具体的には、発進クラッチ20は、エンジン1の出力軸1a側に連結された入力側部材20a、および、自動変速機2の入力軸2a側に連結された出力側部材20bを有している。すなわち、発進クラッチ20は、エンジン1からトルクが伝達される入力側部材20aと、自動変速機2を介して駆動輪6側へトルクを伝達する出力側部材20bとを有している。そして、出力側部材20bは、入力側部材20aに選択的に係合し、入力側部材20aと出力側部材20bとが相対的にスリップしつつトルクを伝達できるように構成されている。なお、図2では図示していないが、発進クラッチ20は、例えば、複数の入力側部材(摩擦板)20aおよび複数の出力側部材(摩擦板)20bを有し、それら複数の入力側部材(摩擦板)20aと複数の出力側部材(摩擦板)20bとを交互に配置した多板クラッチによって構成することもできる。
このように、この発明の実施形態における「発進クラッチ」は、上記の図1で示したような自動変速機2の内部に組み込まれた発進クラッチ7に限らず、この図2に示すようなエンジン1の出力側に設けた発進クラッチ20であってもよい。いずれにしても、「発進クラッチ」をスリップ係合させ、エンジン1が出力するトルクを駆動輪6に伝達して駆動力を発生させ、車両Veを発進させることができる。すなわち、この発明の実施形態で制御対象にする車両Veは、「発進クラッチ」を用いて、いわゆるフリクションスタートを実施することが可能な構成となっている。
前述したように、この発明の実施形態におけるコントローラ10は、フリクションスタートを実施する車両Veを対象にして、上記のような「発進クラッチ」の差回転を適切に算出することを目的として構成されている。そのような目的を実現するためにコントローラ10で実行される制御の一例を、図2のフローチャートに示してある。
図2のフローチャートに示す制御は、シフト装置8で、Dポジション、すなわち、車両Veを前進方向に走行させるシフトポジションが選択されている場合に実行される。図2のフローチャートにおいて、先ず、車両Veの後退が検出されたか否か、すなわち、車両Veのずり下がりが発生したか否かが判断される(ステップS1)。車両Veのずり下がりは、車両Veを前進方向に走行させるシフトポジションが選択されている状態で、車両Veが後進方向に後退する現象である。このずり下がりの判定は、周知の各種手法によって行うことができる。例えば、加速度センサ(図示せず)の検出値に基づいて判定することもできる。また、例えば、本出願人は、特願2017−170032号の「車両のずり下がり検出装置」の出願において、車両のずり下がりを適切に検出するための技術を提案している。このステップS1では、それら周知の各種判定手法や技術を適宜に利用して、車両Veのずり下がりを検出することができる。
車両Veの後退が検出されないこと、すなわち、車両Veのずり下がりは発生していないことにより、このステップS1で否定的に判断された場合は、ステップS2へ進む。
ステップS2では、発進クラッチ7(または20)の出力側部材7b(または20b)の回転数Noutが、正の値として検出される。すなわち、出力側回転数センサ9bによって回転数の絶対値として検出された値が、そのまま、正値の回転数Noutとして処理される。
一方、車両Veの後退が検出されたこと、すなわち、車両Veのずり下がりが発生していることにより、ステップS1で肯定的に判断された場合には、ステップS3へ進む。
ステップS3では、発進クラッチ7(または20)の出力側部材7b(または20b)の回転数Noutが、負の値として検出される。すなわち、出力側回転数センサ9bによって回転数の絶対値として検出された値が、負値の回転数Noutとして処理される。
上記のステップS2またはステップS3で回転数Noutが検出されると、あるいは、上記のステップS1,S2,S3の制御と併行して、発進クラッチ7(または20)の入力側部材7a(または20a)の回転数Ninが検出される(ステップS4)。すなわち、入力側回転数センサ9aによって回転数の絶対値として検出された値が、そのまま、正値の回転数Ninとして処理される。
続いて、発進クラッチ7(または20)の前後の回転数差、すなわち、発進クラッチ7(または20)の差回転Nslipが算出される(ステップS5)。具体的には、発進クラッチ7(または20)の差回転Nslipは、下記の(1)式から算出される。
Nslip = Nin − Nout ・・・・・(1)
Nslip = Nin − Nout ・・・・・(1)
このように発進クラッチ7(または20)の差回転Nslipを求める際には、図4のタイムチャートに破線で示すように、従来は車両Veのずり下がりが考慮されないために、発進クラッチの差回転が、実際よりも小さい値に算出されてしまう。そのため、誤差を含んだ差回転に基づいて推定される発進クラッチの温度にも推定誤差が含まれてしまう。それに対して、上記のように、この発明に実施形態において算出される発進クラッチ7(または20)の差回転Nslipは、車両Veのずり下がりが考慮され、出力側回転数センサ9bにおける回転数の検出誤差が適切に補正される。すなわち、車両Veのずり下がりが生じていることを判定した場合は、出力側回転数センサ9bの検出値が負の値として処理される。そのため、回転数の検出誤差を排除した正確な差回転Nslipを算出することができる。そして、後述するように、発進クラッチ7(または20)の温度を精度良く推定することができる。
上記のように、車両Veのずり下がりが発生した場合であっても、回転数の検出誤差が排除された正確な差回転Nslipに基づいて、発進クラッチ7(または20)を適切に制御することができる。例えば、この図3に示すフローチャートでは、次のステップS6以降で、発進クラッチ7(または20)の温度を精度良く推定し、発進クラッチ7(または20)を適切に保護するための制御が実行される。
ステップS6では、発進クラッチ7(または20)のクラッチトルク容量(伝達トルク容量)Tcが推定される。また、潤滑油の油温Toilが検出される。クラッチトルク容量Tcは、差回転Nslipから求めることができる。油温Toilは、油温センサ9dによって検出される。
ステップS7では、発進クラッチ7(または20)における発熱量Qh、および、発進クラッチ7(または20)における冷却量Qcが算出される。それら発熱量Qh、および、
冷却量Qcは、それぞれ、下記の(2)式、および、(3)式から算出される。
Qh =(Nslip × Tc )/m ・・・・・(2)
Qc = λ ×(Tpre − Toil ) ・・・・・(3)
上記の(2)式において、mは、発進クラッチ7(または20)の摩擦材の面数である。前述したように、発進クラッチ7(または20)を複数の摩擦板を有する多板クラッチによって構成した場合、その摩擦材の面数mを考慮して発熱量Qhが算出される。また、上記の(3)式において、λは、発進クラッチ7(または20)の熱伝達係数(放熱係数)であって、例えば、実験やシミュレーションによって予め求められた定数である。Tpre は、発進クラッチ7(または20)の推定温度の前回値である。
冷却量Qcは、それぞれ、下記の(2)式、および、(3)式から算出される。
Qh =(Nslip × Tc )/m ・・・・・(2)
Qc = λ ×(Tpre − Toil ) ・・・・・(3)
上記の(2)式において、mは、発進クラッチ7(または20)の摩擦材の面数である。前述したように、発進クラッチ7(または20)を複数の摩擦板を有する多板クラッチによって構成した場合、その摩擦材の面数mを考慮して発熱量Qhが算出される。また、上記の(3)式において、λは、発進クラッチ7(または20)の熱伝達係数(放熱係数)であって、例えば、実験やシミュレーションによって予め求められた定数である。Tpre は、発進クラッチ7(または20)の推定温度の前回値である。
ステップS8では、発進クラッチ7(または20)の温度変化量ΔTが算出される。温度変化量ΔTは、下記の(4)式から算出される。
ΔT =(1/C )×(Qh − Qc ) ・・・・・(4)
上記の(4)式において、Cは、発進クラッチ7(または20)の熱容量であって、例えば、実験やシミュレーションによって予め求められた定数である。
ΔT =(1/C )×(Qh − Qc ) ・・・・・(4)
上記の(4)式において、Cは、発進クラッチ7(または20)の熱容量であって、例えば、実験やシミュレーションによって予め求められた定数である。
ステップS9では、発進クラッチ7(または20)の推定温度(今回値)Tcur が算出される。推定温度Tcurは、下記の(5)式から算出される。
Tcur = Tpre + ΔT ・・・・・(5)
すなわち、発進クラッチ7(または20)の熱収支(すなわち、「Qh−Qc」)から求めた温度変化量ΔTを、例えば計算周期毎に積分することにより、現在の推定温度Tcurを算出することができる。
Tcur = Tpre + ΔT ・・・・・(5)
すなわち、発進クラッチ7(または20)の熱収支(すなわち、「Qh−Qc」)から求めた温度変化量ΔTを、例えば計算周期毎に積分することにより、現在の推定温度Tcurを算出することができる。
ステップS10では、推定温度Tcurが所定値以下であるか否かが判断される。この場合の所定値は、発進クラッチ7(または20)を保護するために予め設定した許容温度である。推定温度Tcurが所定値以下であることにより、このステップS10で肯定的に判断された場合は、このルーチンを一旦終了する。
一方、推定温度Tcurが所定値よりも高いことにより、ステップS10で否定的に判断された場合は、ステップS11へ進む。
ステップS11では、発進クラッチ7(または20)の保護制御が実行される。発進クラッチ7(または20)の保護制御は、発進クラッチ7(または20)の過熱を防ぎ、発進クラッチ7(または20)を保護するための制御である。例えば、発進クラッチ7(または20)の係合油圧を増大し、発進クラッチ7(または20)を強制的に完全係合させる。あるいは、発進クラッチ7(または20)の係合油圧を低減し、発進クラッチ7(または20)を強制的に解放させる。要するに、この場合は、スリップ係合(半係合)中の発進クラッチ7(または20)が過熱するおそれがある状態なので、発進クラッチ7(または20)を完全に係合する、または、完全に解放することにより、発進クラッチ7(または20)の差回転Nslipを強制的に0にする。
ステップS11で発進クラッチ7(または20)の保護制御が実行されると、このルーチンを一旦終了する。
このように、この発明の実施形態における車両Veの制御装置によれば、上記のように回転数の検出誤差を排除して発進クラッチ7(または20)の差回転Nslipが正確に求められることにより、発進クラッチ7(または20)の温度を精度良く推定することができる。そのため、上記のような発進クラッチ7(または20)の保護制御を適切に実施することができ、その結果、発進クラッチ7(または20)の過熱を確実に防止もしくは抑制することができる。ひいては、発進クラッチ7(または20)の耐久性を向上させることができる。
1…エンジン(駆動力源;ENG)、 1a…(エンジンの)出力軸、 2…自動変速機(AT)、 2a…(自動変速機の)入力軸、 2b…(自動変速機の)出力軸、 3…プロペラシャフト、 4…デファレンシャルギヤ、 5…駆動軸、 6…駆動輪、 7,20…発進クラッチ、 7a,20a…入力側部材、 7b,20b…出力側部材、 8…シフト装置、 9…検出部、 9a…入力側回転数センサ、 9b…出力側回転数センサ、 9c…シフトポジションセンサ、 9d…油温センサ、 10…コントローラ(演算部;ECU)、 Ve…車両。
Claims (1)
- 駆動力源と、駆動輪と、前記駆動力源と前記駆動輪との間でトルクを伝達する自動変速機と、前記自動変速機で設定するシフトポジションを選択するシフト装置と、前記駆動力源からトルクが伝達される入力側部材および前記入力側部材に選択的に係合する出力側部材を有するとともに、前記入力側部材と前記出力側部材とが相対的にスリップしつつトルクを伝達できるように構成され、前記駆動力源と前記自動変速機との間または前記自動変速機の入力軸と出力軸との間で選択的にトルクの伝達および遮断を行う発進クラッチと、前記シフト装置で選択された前記シフトポジション、ならびに、前記発進クラッチにおける前記入力側部材の回転数の絶対値および前記出力側部材の回転数の絶対値を検出する検出部と、車両を前進方向に走行させる前記シフトポジションが選択されている状態で前記車両が後進方向に後退するずり下がりを判定するとともに、前記入力側部材の回転数と前記出力側部材の回転数との差である差回転を算出する演算部と、を備えた車両の制御装置において、
前記演算部は、前記ずり下がりの発生を判定した場合は、前記検出部で検出した前記出力側部材の回転数を負の値にして前記差回転を算出する
ことを特徴とする車両の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017224906A JP2019094981A (ja) | 2017-11-22 | 2017-11-22 | 車両の制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017224906A JP2019094981A (ja) | 2017-11-22 | 2017-11-22 | 車両の制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2019094981A true JP2019094981A (ja) | 2019-06-20 |
Family
ID=66971204
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2017224906A Pending JP2019094981A (ja) | 2017-11-22 | 2017-11-22 | 車両の制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2019094981A (ja) |
-
2017
- 2017-11-22 JP JP2017224906A patent/JP2019094981A/ja active Pending
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