図1から図19を参照して、スパッタ装置を具体化した一実施形態を説明する。以下では、スパッタ装置の構成、スパッタチャンバの構成、カソードユニットの構成、スパッタチャンバの電気的構成、スパッタチャンバの動作、および、スパッタチャンバの作用を順番に説明する。
[スパッタ装置の構成]
図1を参照してスパッタ装置の構成を説明する。
図1が示すように、スパッタ装置10は、搬出入チャンバ11、前処理チャンバ12、および、スパッタチャンバ13を備え、これら3つのチャンバが1つの方向である搬送方向に沿って並んでいる。3つのチャンバの各々は、互いに隣り合う他のチャンバとゲートバルブ14によって連結されている。3つのチャンバの各々には、チャンバ内を排気する排気部15が連結され、3つのチャンバの各々は、排気部15の駆動によって個別に減圧される。
3つのチャンバの各々の底面には、搬送方向に沿って延びる搬送部16が位置している。搬送部16は、例えば、搬送方向に沿って延びるレールと、レールに沿って並ぶ複数のローラーと、複数のローラーの各々を自転させる複数のモーターなどを含んでいる。搬送部16は、配置部の一例である。
搬送部16は、トレイTに支持された状態の基板Sを搬送する。搬送部16は、スパッタ装置10の内部に搬入された成膜前の基板Sを搬出入チャンバ11からスパッタチャンバ13に向けて搬送し、成膜後の基板Sをスパッタチャンバ13から搬出入チャンバ11に向けて搬送する。また、搬送部16は、各チャンバ内における所定の位置にて、基板Sの位置を固定することができる。
基板Sは成膜対象の一例であり、紙面の手前に向かって延びる矩形状を有している。スパッタ装置10内において、基板Sは、トレイTによって起立した状態で支持される。基板Sにおいて、例えば、搬送方向に沿う幅が2200mmであり、紙面の手前に向かう方向に沿う幅が2500mmである。
搬出入チャンバ11では、搬送部16によって、スパッタ装置10の外部から搬入される成膜前の基板Sが前処理チャンバ12へ搬送され、前処理チャンバ12から搬入される成膜後の基板Sがスパッタ装置10の外部に搬出される。
成膜前の基板Sが外部から搬出入チャンバ11へ搬入されるとき、また、成膜後の基板Sが搬出入チャンバ11から外部へ搬出されるとき、搬出入チャンバ11では、搬出入チャンバ11の内部が大気圧まで高められる。成膜前の基板Sが搬出入チャンバ11から前処理チャンバ12へ搬入されるとき、また、成膜後の基板Sが前処理チャンバ12から搬出入チャンバ11へ搬出されるとき、搬出入チャンバ11では、排気部15によって、前処理チャンバ12の内部と同じ程度にまで内部が減圧される。
前処理チャンバ12では、搬出入チャンバ11から前処理チャンバ12へ搬送された成膜前の基板Sに、例えば、前処理の一例である加熱処理や洗浄処理などが行われる。前処理チャンバ12では、搬送部16によって、成膜前の基板Sが前処理チャンバ12からスパッタチャンバ13に搬送され、成膜後の基板Sが前処理チャンバ12から搬出入チャンバ11へ搬送される。
スパッタチャンバ13は、基板Sに所定の膜を形成するためのカソード装置17を備え、スパッタチャンバ13では、成膜前の基板Sにカソード装置17を用いて所定の膜が形成される。カソード装置17の形成する膜は、主成分が無機物である膜であってもよいし、主成分が無機化合物である膜であってもよい。スパッタチャンバ13では、搬送部16によって、成膜前の基板Sが前処理チャンバ12からスパッタチャンバ13へ搬送され、成膜後の基板Sがスパッタチャンバ13から前処理チャンバ12へ搬送される。
スパッタ装置10は、スパッタ装置10に基板Sへの膜の形成に関わる処理を行わせる制御部10Cを備えている。制御部10Cは設定部の一例である。
なお、スパッタ装置10は、少なくともスパッタチャンバ13を備えていればよく、搬出入チャンバ11と前処理チャンバ12の少なくとも一方を備えていなくてもよい。また、スパッタ装置10は、複数の前処理チャンバを備えてもよいし、成膜後の基板Sに対して所定の処理を行う後処理チャンバを備えてもよい。
[スパッタチャンバの構成]
図2および図3を参照して、スパッタチャンバ13の構成を説明する。なお、図2および図3では、マスクの縁を図示する便宜上、マスクの上端の図示が省略されている。また、図3では、真空槽21内に区画される領域を説明する便宜上、成膜対象領域、対向領域、走査領域、および、マスクのみが模式的に示されている。
図2が示すように、スパッタチャンバ13は、真空槽21、搬送部16、カソードユニット22、走査部23、および、マスク25を備えている。
搬送部16は、真空槽21内における成膜対象領域A1に基板Sを配置する。カソードユニット22は、ターゲットから成膜対象領域A1に向けてスパッタ粒子を放出するための第1状態と、ターゲットから成膜対象領域A1外に向けてスパッタ粒子を放出するための第2状態と、を有している。成膜対象領域A1は、マスク25によって区画された領域である。
走査部23は、成膜対象領域A1と対向する対向領域よりも広い走査領域でカソードユニット22を走査する。走査部23は、対向領域から走査領域に出る走査から、対向領域に入る走査に切り替えることによって、走査領域でカソードユニット22を2回以上走査する。なお、対向領域に入る走査は、カソードユニット22の全体が対向領域の外側に位置する状態から、対向領域とその外側との境界を跨いでカソードユニット22の全体が対向領域に位置するまでの走査である。また、対向領域を出る走査は、カソードユニット22の全体が対向領域に位置する状態から、対向領域とその外側との境界を跨いでカソードユニット22の全体が対向領域の外側に位置するまでの走査である。
より詳しくは、真空槽21は箱状を有し、搬送部16の一部、トレイT、カソードユニット22、走査部23、および、マスク25を収容する空間を区画している。真空槽21は、搬出入口21a、排気口21b、および、ガス供給口21cを備えている。
搬出入口21aは、真空槽21に対するトレイTの搬出および搬入を行うための通路であり、上述したゲートバルブ14によって、空けられたり塞がれたりする部分である。排気口21bには、上述した排気部15が接続されている。ガス供給口21cは、ガス供給口21cを通じてガス供給部24をカソードユニット22に接続するための通路である。
ガス供給部24は、スパッタチャンバ13においてプラズマを生成するためのプラズマ生成用ガスを供給する。プラズマ生成用ガスは、カソードユニット22を用いて生成する膜に応じて選択することが可能であり、例えば、希ガスであってもよいし、希ガスに加えて、酸素ガスおよび窒素ガスなどの反応ガスを含む混合ガスであってもよい。
カソードユニット22は、カソード31と収容部32とを備えている。収容部32は、カソード31を収容することが可能な空間を区画し、空間内にカソード31を収容している。上述したガス供給部24は、カソードユニット22のうち、収容部32に接続し、収容部32が区画する空間であって、カソード31の周りにプラズマ生成用ガスを供給する。
こうした構成では、真空槽21の区画する空間にプラズマ生成用ガスが供給される構成と比べて、スパッタチャンバ13内におけるカソードユニット22の位置にかかわらず、カソード31の周りに供給されるガスの状態がほぼ同じ状態に保たれる。そのため、スパッタチャンバ13内におけるカソードユニット22の位置が変わることによって、カソード31の周りに生成されるプラズマの状態が変わることが抑えられる。
走査部23がカソードユニット22を走査する方向が走査方向であり、走査方向は、上述した搬送方向と平行な方向である。走査部23は、スパッタチャンバ13の底面に位置し、例えば、搬送部16と同様、走査方向に沿って延びるレールと、レールに沿って並ぶ複数のローラーと、複数のローラーの各々を自転させる複数のモーターなどを含んでいる。走査部23は、カソードユニット22のうち、収容部32を支持することによって、カソードユニット22を走査する。
こうしたスパッタチャンバ13では、カソードユニット22と走査部23とが、カソード装置17を構成している。
マスク25は、成膜対象領域A1を区画している。マスク25は、例えば矩形枠状を有し、基板Sのうち、走査方向における2つの端部に加えて、上端と下端とを覆っている。
マスク25と基板Sとが並ぶ方向から見て、マスク25のなかで基板Sに重なる部分がマスク25の縁25aであり、縁25aは、走査方向における基板Sの中心に向けて先細りする形状を有している。言い換えれば、マスク25の縁25aは傾斜を有し、より詳しくは、走査部23から搬送部16に向かう方向において、走査方向に沿う縁25a間の距離が小さくなるような傾斜を有している。
図3が示すように、真空槽21が区画する空間内には、成膜対象領域A1、対向領域A2、走査領域A3、および、外側領域A4が含まれる。このうち、成膜対象領域A1は、上述したように、マスク25によって区画される領域であり、対向領域A2は、成膜対象領域A1と対向する領域であり、成膜対象領域A1と対向領域A2とは互いに平行である。対向領域A2は、走査方向、すなわち1次元の方向において、2つの端A2eを有している。
走査領域A3は、対向領域A2よりも広い領域であって、カソードユニット22が走査部23によって走査される領域である。走査領域A3は、カソードユニット22の走査方向において、すなわち1次元の方向において、対向領域A2の2つの端A2eの各々よりも外側にも位置する領域である。
走査領域A3のうち、対向領域A2の外側が外側領域A4である。対向領域A2は、走査方向において2つの外側領域A4に挟まれ、各外側領域A4は、対向領域A2の端A2eに接している。
上述した走査部23は、対向領域A2よりも広い走査領域A3でカソードユニット22を1回走査することによって、外側領域A4から対向領域A2に入る走査を行い、そして、対向領域A2に沿う走査を行い、その後に、対向領域A2から出る走査を行う。
走査部23は、上述したように、走査領域A3の端において、対向領域A2から外側領域A4に出る走査から、外側領域A4から対向領域A2に入る走査に、カソードユニット22の走査を切り替える。これにより、走査領域A3において、カソードユニット22を2回以上走査する。
マスク25は、上述したように、成膜対象領域A1を区画し、マスク25の縁25aは、走査方向において、成膜対象領域A1の端から外側領域A4に向けて延びている。
[カソードユニットの構成]
図4および図5を参照して、カソードユニット22の構成を説明する。なお、図4および図5では、図示の便宜上、カソードユニット22が備える収容部32の図示が省略されている。
図4が示すように、カソード31は、ターゲット41とバッキングプレート42とを備えている。ターゲット41は、成膜対象領域A1と対向する外周面41aを有した円筒状を有している。ターゲット41において、外周面41aがスパッタされる面である。
バッキングプレート42は、ターゲット41と同様、成膜対象領域A1と対向する外周面を有した円筒状を有している。バッキングプレート42の外径は、ターゲット41の内径にほぼ等しく、バッキングプレート42の外周面に、ターゲット41の内周面が固定されている。
カソードユニット22は、さらに磁場形成部43を備えている。磁場形成部43は方向規定部の一例であり、ターゲット41が区画する空間の内部に位置するとともに、ターゲット41の外周面41a上に磁場を形成する。磁場形成部43は、ターゲット41から放出されるスパッタ粒子の放出方向を規定する。
磁場形成部43は、第1磁石43a、第2磁石43b、および、ヨーク43cを備えている。第1磁石43aは、ターゲット41の中心軸Cに沿って延びる棒状を有し、第2磁石43bは、ターゲット41の中心軸Cに沿って延び、かつ、第1磁石43aを取り囲む環状を有している。ヨーク43cは、ターゲット41の中心軸Cに沿って延びる板状を有し、第1磁石43aと第2磁石43bとはヨーク43cの1つの面に固定されている。第1磁石43aのうち、ヨーク43cに接する端部とは反対側の端部と、第2磁石43bのうち、ヨーク43cに接する端部とは反対側の端部とは、互いに異なる極性を有している。
カソードユニット22は、被回転筒部44をさらに備えている。被回転筒部44は、ターゲット41の中心軸Cに沿って延びる円筒状であって、ターゲット41およびバッキングプレート42と同心の円筒状を有している。被回転筒部44は、磁場形成部43のうち、ヨーク43cのなかで、第1磁石43aおよび第2磁石43bが位置する面とは反対側の面に固定されている。
図5が示すように、バッキングプレート42は多段の円筒状を有し、バッキングプレート42の筒端は、バッキングプレート42における筒端以外の部分よりも縮径されている。バッキングプレート42は、各筒端を塞ぐ壁部を有している。
被回転筒部44は、中心軸Cが延びる方向においてバッキングプレート42を貫通し、被回転筒部44の筒端は、バッキングプレート42の筒端よりも外側に位置している。被回転筒部44は、バッキングプレート42の筒端において、中心軸Cを回転軸とする回転が可能な状態で、バッキングプレート42によって支持されている。
カソードユニット22は、バッキングプレート42と、被回転筒部44とを支持する軸支部45を備えている。軸支部45は、バッキングプレート42と被回転筒部44とが通される空間を区画する筒状を有している。軸支部45は、中心軸Cを回転軸とするバッキングプレート42の回転が可能な状態で、バッキングプレート42の筒端を支持し、かつ、中心軸Cを回転軸とする被回転筒部44の回転が可能な状態で、被回転筒部44を支持している。
被回転筒部44の筒端には、回転部の一例である磁場用モーター46が接続し、磁場用モーター46は、ターゲット41の中心軸Cを回転軸として被回転筒部44、ひいては被回転筒部44に固定された磁場形成部43を回転させる。磁場用モーター46は、磁場形成部43を回転させることによって、スパッタ粒子の放出方向を回転させる。
カソードユニット22では、磁場形成部43が回転軸を中心に回転することによって、カソードユニット22の状態を第1状態と第2状態との間で変えることができる。磁場形成部43の回転は、ターゲット41が区画する空間内で行われるため、ターゲット41が平板状を有し、かつ、カソードユニットの状態を第1状態と第2状態との間で変える構成と比べて、真空槽21の内部において、カソードユニット22の状態を変えるために必要な空間を小さくすることができる。
カソードユニット22では、ターゲット41の周方向のうち、磁場形成部43における第1磁石43aおよび第2磁石43bとバッキングプレート42を挟んで対向する部分に、高密度のプラズマが生成される。そのため、磁場用モーター46が磁場形成部43を回転させることにより、ターゲット41の周方向において、高密度のプラズマが生成される領域が回転する。
ここで、ターゲット41のスパッタは、ターゲット41のうちで高密度のプラズマが生成されている部分に集中する。そのため、ターゲット41から放出されるスパッタ粒子の放出方向も、ターゲット41の周方向において、高密度のプラズマが生成されている位置によって決まる。それゆえに、磁場用モーター46は、磁場形成部43を回転させることによって、スパッタ粒子の放出方向を回転させることができる。結果として、カソードユニット22では、磁場形成部43が回転することによって、カソードユニット22の状態が、第1状態と第2状態との間で変わる。
例えば、磁場形成部43がカソード31を挟んで成膜対象領域A1に正対するとき、被回転筒部44の回転角度が0°であり、カソードユニット22の状態は第1状態である。これに対して、被回転筒部44の回転角度が180°であるとき、磁場形成部43が被回転筒部44に対して成膜対象領域A1が位置する側とは反対側に位置している。このとき、カソードユニット22の状態は第2状態である。そして、カソードユニット22の状態は、被回転筒部44の回転角度が0°から180°に変わるまでの間に、第1状態から第2状態に変わる。
バッキングプレート42の筒端には、プレート用モーター47が接続し、プレート用モーター47は、中心軸Cを回転軸としてバッキングプレート42、ひいてはバッキングプレート42に固定されたターゲット41を回転させる。
なお、カソードユニット22は、上述した磁場用モーター46およびプレート用モーター47を含み、磁場用モーター46およびプレート用モーター47は、ターゲット41とともに上述した走査部23によって、走査領域A3で走査される。
バッキングプレート42には、上述した真空槽21の外部に位置する電源26が接続されている。電源26は、例えば、バッキングプレート42に直流電圧を印加する直流電源であり、電源26が直流電圧を印加することによって、収容部32の内部に供給されたプラズマ生成用ガスからプラズマが生成される。なお、電源26は、バッキングプレート42に交流電圧を印加する交流電源でもよい。
被回転筒部44は冷却水が通る通路を内部に有し、通路には、真空槽21の外部に位置する循環部27が接続されている。循環部27は、被回転筒部44の通路内に冷却水を循環させることで、被回転筒部44を冷却し、ひいては輻射によって被回転筒部44の外側に位置するカソード31を冷却する。
[スパッタ装置の電気的構成]
図6を参照してスパッタ装置10の電気的構成を説明する。以下では、スパッタ装置10の電気的構成のうち、スパッタチャンバ13において膜を形成する処理を行うための電気的構成についてのみ説明する。
図6が示すように、上述した制御部10Cは、搬送部16、走査部23、ガス供給部24、電源26、磁場用モーター46、および、プレート用モーター47に接続している。
制御部10Cは、搬送部16の駆動を開始させるための開始信号を生成し、搬送部16に開始信号を出力して、搬送部16を駆動する。制御部10Cは、開始信号として第1開始信号と第2開始信号とを生成する。第1開始信号は、搬送部16に搬出入チャンバ11からスパッタチャンバ13に向かう方向に沿う基板Sの搬送を開始させるための信号であり、第2開始信号は、スパッタチャンバ13から搬出入チャンバ11に向かう方向に沿う基板Sの搬送を開始させるための信号である。
また、制御部10Cは、搬送部16の駆動を停止させるための停止信号を生成し、搬送部16に停止信号を出力して、搬送部16の駆動を停止する。制御部10Cは、搬送部16がスパッタ装置10内の所定の位置、例えば、スパッタチャンバ13の内部において駆動を停止するように搬送部16に停止信号を出力して、スパッタチャンバ13内の成膜対象領域A1に基板Sが位置するように搬送部16に基板Sを支持させる。
制御部10Cは、走査部23の駆動を開始させるための開始信号を生成し、走査部23に開始信号を出力して、走査部23を駆動する。制御部10Cは、開始信号として第1開始信号と第2開始信号とを生成する。
第1開始信号は、走査部23に、走査領域A3における一方の端部から他方の端部に向けたカソードユニット22の走査を開始させるための信号である。第2開始信号は、走査部23に、第1開始信号とは逆の方向、すなわち、走査領域A3における他方の端部から一方の端部に向けたカソードユニット22の走査を開始させるための信号である。
言い換えれば、第1開始信号は、走査部23に、例えば、スパッタチャンバ13から前処理チャンバ12に向かう方向と平行な方向に沿う走査を開始させるための信号である。第2開始信号は、走査部23に、例えば、前処理チャンバ12からスパッタチャンバ13に向かう方向と平行な方向に沿う走査を開始させるための信号である。
制御部10Cは、こうした開始信号の生成と出力とにより、カソードユニット22が対向領域A2に入る走査と、カソードユニット22が対向領域A2から出る走査とを走査部23に行わせる。
また、制御部10Cは、走査部23の駆動を停止させるための停止信号を生成し、走査部23に停止信号を出力して、走査部23の駆動を停止する。これにより、制御部10Cは、走査部23にカソードユニット22の走査を停止させる。
制御部10Cは、ガス供給部24の駆動を開始させるための開始信号を生成し、ガス供給部24に開始信号を出力して、ガス供給部24を駆動する。これにより、制御部10Cは、ガス供給部24にプラズマ生成用ガスを収容部32の内部に供給させる。また、制御部10Cは、ガス供給部24の駆動を停止させるための停止信号を生成し、ガス供給部24に停止信号を出力して、ガス供給部24の駆動を停止する。これにより、制御部10Cは、ガス供給部24にプラズマ生成用ガスの供給を停止させる。
制御部10Cは、電源26の駆動を開始させるための開始信号を生成し、電源26に開始信号を出力して、電源26を駆動する。これにより、制御部10Cは、電源26に所定の電圧をバッキングプレート42に印加させる。また、制御部10Cは、電源26の駆動を停止させるための停止信号を生成し、電源26に停止信号を出力して、電源26の駆動を停止する。これにより、制御部10Cは、電源26にバッキングプレート42への電圧の印加を停止させる。
制御部10Cは、磁場用モーター46の回転を開始させるための開始信号を生成し、磁場用モーター46に開始信号を出力して、磁場用モーター46を回転させる。制御部10Cは、開始信号として第1開始信号と第2開始信号とを生成する。第1開始信号は、磁場用モーター46に第1回転方向での回転を開始させるための信号であり、第2開始信号は、磁場用モーター46に第1回転方向とは逆の回転方向である第2回転方向での回転を開始させるための信号である。
制御部10Cは、第1回転信号および第2回転信号のいずれかを磁場用モーター46に出力することで、磁場用モーター46に磁場形成部43を回転させる設定を行い、それによって、カソードユニット22の状態を第2状態から第2状態に変える設定、または、第1状態から第2状態に変える設定を行う。
また、制御部10Cは、磁場用モーター46の回転を停止させるための停止信号を生成し、磁場用モーター46に停止信号を出力して、磁場用モーター46の回転を停止させる。
制御部10Cは、プレート用モーター47の回転を開始させるための開始信号を生成し、プレート用モーター47に開始信号を出力して、プレート用モーター47を回転させる。制御部10Cは、プレート用モーター47の回転を停止させるための停止信号を生成し、プレート用モーター47に停止信号を出力して、プレート用モーター47の回転を停止させる。
[スパッタチャンバの動作]
図7から図16を参照して、スパッタチャンバ13の動作を説明する。以下では、走査部23が、カソードユニット22を走査領域A3において2回走査する例におけるスパッタチャンバ13の動作を説明する。
なお、図7から図16では、図示の便宜上、カソードユニット22のうち、ターゲット41、バッキングプレート42、磁場形成部43、および、被回転筒部44以外の要素の図示が省略され、基板Sを支持するトレイTの図示も省略されている。また、図7から図16では、図2および図3と同様、マスク25の縁25aを図示する便宜上、マスクの上端の図示が省略されている。さらに、図7から図16では、図示の便宜上、走査部23と、走査部23がカソードユニット22を走査する範囲である走査領域A3とを1つのブロックで示している。
スパッタチャンバ13において基板Sへの膜の形成を行うときには、まず、制御部10Cは、搬送部16に基板Sの搬送を開始させ、真空槽21内の所定の位置まで基板Sを搬送させる。これにより、制御部10Cは、搬送部16に基板Sを成膜対象領域A1に配置させる。
図7が示すように、基板Sへの膜の形成を開始するときには、カソードユニット22は、走査領域A3の端に位置し、走査領域A3の端が、カソードユニット22の初期位置である。また、磁場形成部43は、被回転筒部44に対して成膜対象領域A1が位置する側とは反対側に位置している。このとき、被回転筒部44の回転角度は180°であり、180°の回転角度が、被回転筒部44の初期角度である。
制御部10Cは、プレート用モーター47にバッキングプレート42の回転を開始させる。次いで、制御部10Cは、ガス供給部24にプラズマ生成用ガスの供給を開始させ、その後に、電源26にバッキングプレート42への電圧の印加を開始させる。これにより、ターゲット41の周りにプラズマが生成され、ターゲット41のうち、磁場形成部43と対向する部分に高密度のプラズマが生成される。
このとき、高密度のプラズマは、被回転筒部44に対して成膜対象領域A1が位置する側とは反対側に生成されるため、スパッタ粒子Spは、被回転筒部44に対して成膜対象領域A1とは反対側に向けて放出される。言い換えれば、カソードユニット22の状態は、成膜対象領域A1外にスパッタ粒子Spを放出する第2状態である。
なお、被回転筒部44の初期角度は180°以外の角度であってもよく、成膜対象領域A1外にスパッタ粒子Spを放出することができれば、180°よりも小さくてもよいし、180°よりも大きくてもよい。
ターゲット41の周りにプラズマが生成されたとき、バッキングプレート42とともにターゲット41が回転しているため、ターゲット41の周方向において、スパッタ粒子Spを放出するエロージョン領域が固定されない。そのため、ターゲット41における周方向の全体がスパッタされる。
制御部10Cは、磁場用モーター46に中心軸Cを回転軸として磁場形成部43を右回りに回転させる。このとき、制御部10Cは、被回転筒部44の回転角度が0°になるまで、磁場用モーター46を回転させる。これにより、磁場形成部43が、被回転筒部44に対して成膜対象領域A1が位置する側に位置する。
なお、制御部10Cが電源26に電圧の印加を開始させてから磁場用モーター46に磁場形成部43の回転を開始させるまでの時間は、ターゲット41の周りに生成されるプラズマの状態が安定するまでの時間、例えば数秒間程度であればよい。
図8が示すように、制御部10Cは、走査部23に走査領域A3でのカソードユニット22の走査を開始させる。これにより、走査部23は、外側領域A4のなかで、カソードユニット22が外側領域A4から対向領域A2に入る走査を行う。
このとき、高密度のプラズマは、被回転筒部44に対して成膜対象領域A1が位置する側に生成されるため、スパッタ粒子Spは、被回転筒部44に対して成膜対象領域A1が位置する側に放出される。言い換えれば、カソードユニット22の状態は、成膜対象領域A1にスパッタ粒子Spを放出する第1状態である。
このように、制御部10Cは、外側領域A4のなかでカソードユニット22が外側領域A4から対向領域A2に入る走査において、カソードユニット22の状態を第2状態から第1状態に変える設定を行う。
そのため、ターゲット41のスパッタを開始したときにターゲット41から放出されるスパッタ粒子Spが基板Sに付着することが抑えられる。
図9が示すように、制御部10Cは、走査部23に対向領域A2でカソードユニット22を走査させ、カソードユニット22が外側領域A4に達する前に、制御部10Cは、磁場用モーター46に磁場形成部43の回転を開始させる。このとき、制御部10Cは、中心軸Cを回転軸として、磁場形成部43を右回りに回転させる。なお、対向領域A2にて磁場形成部43の回転を開始させる位置は、外側領域A4よりもターゲット41の径以下の距離だけ内側の位置であることが好ましい。
図10が示すように、制御部10Cは、走査部23に対向領域A2のなかでカソードユニット22を対向領域A2から出るように走査させている状態で、磁場用モーター46に磁場形成部43を回転させる。
制御部10Cが磁場用モーター46に磁場形成部43の回転を開始させても、被回転筒部44の回転角度が所定の角度を超えるまでの間は、ターゲット41から成膜対象領域A1に向けてスパッタ粒子Spが放出される。そのため、カソードユニット22の状態は、第1状態に維持される。
図11が示すように、被回転筒部44の回転角度が所定の角度を超えると、例えば回転角度が45°を超えると、ターゲット41から成膜対象領域A1外に向けてスパッタ粒子Spが放出される。これにより、カソードユニット22の状態は、第1状態から第2状態に変わる。
このように、制御部10Cは、カソードユニット22が対向領域A2から外側領域A4に出る走査において、カソードユニット22の状態を第1状態から第2状態に変える設定を行う。また、制御部10Cは、カソードユニット22の状態を第1状態と第2状態との間で変える設定において、磁場用モーター46に磁場形成部43を回転させる設定を行う。
カソードユニット22が走査領域で走査される構成では、カソードユニット22が対向領域から外側領域に出るとき、スパッタ粒子Spが成膜対象領域A1に到達しない位置までカソードユニット22を走査しなければ、成膜対象領域A1の端部に向けて放出されるスパッタ粒子Spの量が、他の部分よりも多くなる。これにより、基板Sに形成された膜の面内において、膜の厚さにばらつきが生じる。
この点で、スパッタチャンバ13では、対向領域A2から外側領域A4に出る走査において、カソードユニット22の状態が第1状態から第2状態に変わる。そのため、カソードユニット22を走査するのみの構成と比べて、対向領域A2の外側においてカソードユニット22を走査する距離が小さくとも、成膜対象領域A1にスパッタ粒子Spが到達しない。結果として、走査領域A3がより狭くともよい分だけ、カソードユニット22の走査される方向において、真空槽21の大きさを小さくすることができる。
図12が示すように、制御部10Cは、磁場用モーター46に被回転筒部44の回転角度が180°になるまで、磁場形成部43を回転させる。また、制御部10Cは、走査部23に走査領域A3の端までカソードユニット22を走査させ、カソードユニット22が走査領域A3の端に達したところで、走査部23にカソードユニット22の走査を一旦停止させる。
言い換えれば、制御部10Cは、走査部23にカソードユニット22を走査領域A3の端まで走査させたときに、被回転筒部44の回転角度が180°になるように、磁場用モーター46に磁場形成部43を回転させる。
なお、制御部10Cが、走査部23にカソードユニット22を走査領域A3の端まで走査させたときに、カソードユニット22の状態が第2状態であれば、被回転筒部44の回転角度は180°以外の角度であってもよい。すなわち、制御部10Cは、磁場用モーター46に被回転筒部44の回転角度が180°よりも小さい角度になるように磁場形成部43を回転させてもよいし、磁場用モーター46に被回転筒部44の回転角度が180°よりも大きい角度になるように磁場形成部43を回転させてもよい。
図13が示すように、制御部10Cは、磁場用モーター46に被回転筒部44の回転角度が0°になるまで、中心軸Cを回転軸として磁場形成部43を左回りに回転させる。
図14が示すように、磁場形成部43が被回転筒部44に対して成膜対象領域A1が位置する側に位置する状態で、制御部10Cは、走査部23にカソードユニット22の走査を再び開始させる。このように、制御部10Cは、カソードユニット22が外側領域A4から対向領域A2に入る走査と、カソードユニット22が対向領域A2から外側領域A4に出る走査との切り替えを走査領域A3の端において走査部23に行わせる。
図15が示すように、制御部10Cは、走査部23に対向領域A2でカソードユニット22を走査させ、カソードユニット22が外側領域A4に達する前に、図9を参照して先に説明した場合と同様、制御部10Cは、磁場用モーター46に磁場形成部43の回転を開始させる。このとき、制御部10Cは、中心軸Cを回転軸として、磁場形成部43を左回りに回転させる。なお、対向領域A2にて磁場形成部43の回転を開始させる位置は、外側領域A4よりもターゲット41の径以下の距離だけ内側の位置であることが好ましい。
そして、図10から図12を参照して先に説明した場合と同様、制御部10Cは、走査部23にカソードユニット22を走査領域A3の端まで走査させたときに、被回転筒部44の回転角度が180°になるように、走査部23による走査と磁場用モーター46による回転とを行わせる。
図16が示すように、カソードユニット22が走査領域A3の端に達すると、制御部10Cは、走査部23にカソードユニット22の走査を停止させる。制御部10Cは、電源26にバッキングプレート42への電圧の印加を停止させた後、ガス供給部24にプラズマ生成用ガスの供給を停止させる。そして、制御部10Cは、プレート用モーター47にバッキングプレート42の回転を停止させる。これにより、制御部10Cは、スパッタチャンバ13による基板Sへの膜の形成を終了する。
このように、スパッタチャンバ13では、カソードユニット22の走査される方向を切り替えるときに、カソードユニット22の状態が第1状態と第2状態との間で変わる。そのため、カソードユニット22の状態が第1状態に固定された構成と比べて、カソードユニット22の走査される方向の切り替えのためにカソードユニット22が停止する位置がより対向領域A2寄りであっても、基板Sにスパッタ粒子Spが付着することが抑えられる。結果として、カソードユニット22の走査される方向において、真空槽21の大きさを小さくすることができる。
[スパッタチャンバの作用]
図17から図19を参照して、スパッタチャンバ13の作用を説明する。なお、図17では、説明の便宜上、走査方向において互いに異なる位置に位置するカソードユニット22が全て実線で示されている。
上述したように、スパッタチャンバ13では、外側領域A4から対向領域A2に入るようにカソードユニット22が走査されるとき、カソードユニット22の状態が第2状態から第1状態に変わる。そのため、ターゲット41のスパッタを開始したときにターゲット41から放出されるスパッタ粒子Spが基板Sに付着することが抑えられる。
図17が示すように、マスク25を用いて基板Sに対して膜を形成するとき、カソードユニット22が走査方向に沿って走査されるのみでは、カソードユニット22が走査方向においてマスク25に近付くと、ターゲット41から放出されたスパッタ粒子Spの一部は、マスク25に向けて飛行する。これにより、スパッタ粒子Spの一部は、マスク25によって基板Sに到達することが妨げられる。
そのため、基板Sのうち、マスク25に囲まれる領域の縁では、他の部分と比べて、限られた放出方向に放出されるスパッタ粒子Spしか到達することができない。それゆえに、基板Sに形成された膜のうち、マスク25に囲まれる領域の縁において、他の部分と比べて膜厚が薄くなる。
これに対して、図18が示すように、外側領域A4の近傍にて磁場形成部43を回転させる構成によれば、カソードユニット22の状態が第1状態から第2状態に変わる途中にターゲット41から放出されるスパッタ粒子Spを、基板Sのうち、走査方向においてマスク25に囲まれる領域の縁に向けて飛行させることができる。これにより、基板Sのうち、マスク25に囲まれる領域の縁にもスパッタ粒子Spを到達させることができ、結果として、膜のうち、走査方向における基板Sの端部に形成された部分の厚さが、基板Sの他の部分に形成された部分よりも薄くなることが抑えられる。
これにより、図19が示すように、上述したスパッタチャンバ13を用いて形成した膜51では、走査方向における基板Sの端部において、他の部分に比べて膜厚が薄くなることが抑えられ、結果として、膜51の面内における膜厚のばらつきが抑えられる。
一方で、図17を参照して先に説明したように、カソードユニット22が走査されるのみによって形成された膜52では、走査方向における基板Sの端部において、他の部分に比べて膜厚が薄くなり、結果として、膜52の面内における膜厚のばらつきが生じる。
なお、走査方向における基板Sの端部において、他の部分に比べて膜厚が薄くなることを抑える上では、走査方向においてカソードユニット22がマスク25に近付いたときに、電源26がバッキングプレート42に印加する電圧を高めることも可能ではある。あるいは、走査方向におけるカソードユニット22の走査速度を低くめることも可能ではある。
しかしながら、これらの方法によって形成された膜53では、基板Sのうちスパッタ粒子Spが付着する部分の全体において膜厚が厚くなる。それゆえに、走査方向における基板Sの端部以外の部分においても、膜53の厚さが厚くなり、結果として、膜53の面内における膜厚のばらつきが生じる。
以上説明したように、スパッタ装置の一実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)スパッタ粒子Spの放出を開始して外側領域A4から対向領域A2に入るようにカソードユニット22が走査されるとき、カソードユニット22の状態が第2状態から第1状態に変わる。そのため、ターゲット41のスパッタを開始したときにターゲット41から放出されるスパッタ粒子Spが基板Sに付着することが抑えられる。
(2)対向領域A2から外側領域A4に出る走査において、カソードユニット22の状態が第1状態から第2状態に変わる。そのため、カソードユニットを走査するのみの構成と比べて、対向領域A2の外側においてカソードユニット22を走査する距離が小さくとも、成膜対象領域A1にスパッタ粒子Spが到達しない。結果として、走査領域A3がより狭くともよい分だけ、カソードユニット22の走査される方向において、真空槽21の大きさを小さくすることができる。
(3)スパッタ粒子Spの放出方向を規定する磁場形成部43を備えるため、磁場形成部43の回転によって、カソードユニット22の状態を第1状態と第2状態との間で変えることができる。
(4)カソードユニット22の状態が第1状態から第2状態に変わる途中にターゲット41から放出されるスパッタ粒子Spを、基板Sのうち、マスク25によって囲まれる領域の縁に向けて飛行させることができる。これにより、基板Sのうち、マスク25によって囲まれる領域の縁にもスパッタ粒子Spを到達させることができ、この部分に形成される膜51の厚さが薄くなることが抑えられる。
(5)カソードユニット22の走査される方向を切り替えるときに、カソードユニット22の状態が第1状態と第2状態との間で変わるため、カソードユニット22の走査される方向の切り替えのためにカソードユニットが停止する位置がより対向領域寄りであっても、基板Sにスパッタ粒子Spが付着することが抑えられる。結果として、カソードユニット22の走査される方向において、真空槽21の大きさを小さくすることができる。
(6)磁場形成部43が回転軸を中心に回転することによって、カソードユニット22の状態を第1状態と第2状態との間で変えることができる。磁場形成部43の回転は、ターゲット41が区画する空間内で行われるため、真空槽21の内部において、カソードユニット22の状態を変えるために必要な空間を小さくすることができる。
なお、上述した実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・図20が示すように、カソードユニット60は、カソード61、収容部62、磁場形成部63、および、磁場走査部64を備える構成であってもよい。カソード61は、平板状を有するターゲット61aと、同じく平板状を有するバッキングプレート61bとを含み、磁場形成部63は、カソード61に対して成膜対象領域A1が位置する側とは反対側に位置している。磁場走査部64は、走査方向と平行な方向に沿って磁場形成部63を走査する。収容部62は、カソード61、磁場形成部63、および、磁場走査部64を収容する空間を区画している。
こうした構成では、カソード61、磁場形成部63、および、磁場走査部64の間における相対位置が維持された状態で、回転軸Rに対して、カソード61、磁場形成部63、および、磁場走査部64が回転することが可能であればよい。こうした構成であっても、上述したカソードユニット22と同様、カソード61、磁場形成部63、および、磁場走査部64の回転によって、上述したカソードユニット22における磁場形成部63の回転に準じた効果を得ることはできる。
こうした構成では、スパッタ粒子の放出方向は、バッキングプレート61bによって規定されるため、バッキングプレート61bが方向規定部の一例である。
・上述したカソードユニット60は、ターゲット61aに対するバッキングプレート61bの位置を変えることが可能な構成であってもよく、ターゲット61aに対するバッキングプレート61bの位置が変わることによって、カソードユニット60の状態において第1状態と第2状態とが切り替えられてもよい。
・上述したカソードユニット60は、カソード61、磁場形成部63、および、磁場走査部64に対する収容部62の相対位置を変えることができる構成であってもよい。こうした構成では、カソード61、磁場形成部63、および、磁場走査部64が回転軸Rに対して回転するとき、カソード61、磁場形成部63、および、磁場走査部64が収容部62の外側に位置するように、収容部62の相対位置を変えればよい。これにより、カソード61、磁場形成部63、および、磁場走査部64が収容部62内にて回転する構成と比べて、収容部62の大きさを小さくすることができる。
・走査部23は、カソードユニット22を走査領域A3で1回のみ走査してもよいし、3回以上走査してもよい。走査部23がカソードユニット22を走査する回数は、基板Sに形成する膜の厚さと、1回の走査によって形成することのできる膜の厚さとを加味して適宜選択されればよい。
・スパッタチャンバ13はマスク25を備えていなくてもよい。こうした構成であっても、カソードユニット22を走査方向において走査する距離が小さくともスパッタ粒子Spが基板Sに付着することを抑えられるため、上述した(2)に準じた効果を得ることはできる。なお、マスク25を備えていない構成では、基板Sの配置される領域が成膜対象領域A1である。
・スパッタチャンバ13がマスク25を備えていない構成であっても、制御部10Cは、カソードユニット22が成膜対象領域A1と対向している状態で、磁場用モーター46に磁場形成部43の回転を開始させてもよい。
・制御部10Cが、対向領域A2から外側領域A4に出る走査においてカソードユニット22の状態が第1状態から第2状態に変える設定を行うときには、制御部10Cは、走査部23にカソードユニット22の走査を停止させた状態で、磁場用モーター46に磁場形成部43を回転させてもよい。こうした構成であっても、上述した(2)に準じた効果を得ることはできる。
・制御部10Cは、対向領域A2から外側領域A4に出る走査において、カソードユニット22の状態を第1状態から第2状態に変える設定を行えばよい。そのため、制御部10Cは、対向領域A2の外側でカソードユニット22の状態を第1状態から第2状態に変える設定を行ってもよいし、対向領域A2の内側でカソードユニット22の状態を第1状態から第2状態に変える設定を行ってもよい。いずれの場合であっても、制御部10Cは、対向領域A2から外側領域A4に出る走査において、カソードユニット22の状態を第1状態から第2状態に変える設定を行うため、上述した(2)に準じた効果を得ることはできる。
・制御部10Cは、外側領域A4から対向領域A2に入る方向に沿う走査において、カソードユニット22の状態を第2状態から第1状態に変える設定を行えばよい。そのため、制御部10Cは、対向領域A2の外側でカソードユニット22の状態を第2状態から第1状態に変える設定を行ってもよいし、対向領域A2の内側でカソードユニット22の状態を第2状態から第1状態に変える設定を行ってもよい。いずれの場合であっても、ターゲット41のスパッタを開始したときのスパッタ粒子Spは基板Sに到達しないため、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
・スパッタチャンバ13は、複数のカソードユニット22を備えてもよく、こうした構成では、複数のカソードユニット22は、走査方向に沿って並んでいればよい。スパッタチャンバ13が複数のカソードユニット22を備える構成では、全てのカソードユニット22において、磁場形成部43の回転が同時に行われてもよいし、互いに異なるタイミングで磁場形成部43の回転が行われてもよい。
こうした構成であっても、制御部10Cが、各カソードユニット22において、対向領域A2に入る走査において、カソードユニット22の状態を第1状態から第2状態に変える設定を行えばよい。これにより、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
・カソードユニット22が外側領域A4から対向領域A2に入る走査には、カソードユニット22が停止された状態で、ターゲット41の表面がクリーニングされる処理が含まれてもよい。こうした場合には、制御部10Cは、ターゲット41の周方向の全体が所定の量だけスパッタされる時間の後に、例えば、電源26に電圧の印加を開始させてから数十分から数時間の後に、磁場用モーター46に磁場形成部43の回転を開始させればよい。こうした構成であっても、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
・カソードユニット22が外側領域A4から対向領域A2に入る走査において、制御部10Cは、磁場用モーター46に磁場形成部43を回転させているときに、走査部23に、カソードユニット22を走査させてもよい。すなわち、制御部10Cは、磁場形成部43の回転よりも先にカソードユニット22の走査を走査部23に開始させてもよいし、磁場形成部43の回転と同時にカソードユニット22の走査を走査部23に開始させてもよい。いずれの場合であっても、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。