JP2019094293A - 脂肪族マレイミドの製造方法 - Google Patents

脂肪族マレイミドの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】穏和な条件下、簡便な操作で、目的とする脂肪族マレイミドを副生物の生成を抑制して高選択的かつ高収率で、効率よく得ることができる脂肪族マレイミドの製造方法を提供する。【解決手段】下記一般式(2)で表される脂肪族マレイミドの製造方法であって、無水マレイン酸、酸触媒、脱水助触媒として該酸触媒に対し0.15〜0.8モル当量の第三級アミン、及び、水と共沸可能な有機溶媒をそれぞれ含有する溶液に、加熱還流下、下記一般式(1)で表される脂肪族第一級アミン又はその溶液を供給し、均一反応系で脱水環化させる脂肪族マレイミドの製造方法。Rはn価の脂肪族炭化水素基を示し、nは1〜6の整数である。【選択図】なし

Description

本発明は、窒素原子上の置換基が脂肪族基であるN−脂肪族置換のマレイミドの製造方法に関するものである。
脂肪族マレイミドは、耐熱性樹脂のモノマー、医農薬中間体として有用な化合物群であり、これまで種々の製造方法が検討されている。
窒素原子上の置換基が脂肪族基である場合、窒素原子上の置換基が芳香族基であるものと比較して、前駆体であるマレアミド酸が、脱水環化の反応性に乏しい。また、脂肪族基である場合、異性化してフマルアミド酸となることにより脱水環化が進行せず、加水分解や分子間脱水等の副反応を起こしやすい。そのため、芳香族マレイミド類の製造方法と同様の方法では効率よく目的物を得ることは難しく、これらの方法を脂肪族マレイミドの製造方法に適用することは困難である。
脂肪族マレイミドを製造することの困難性は、例えば、特許文献1〜4にその理由とともに述べられており、それらの製造方法が開示されている。
特許文献1では、非プロトン性極性溶媒中、脂肪族マレアミド酸をナフテン酸コバルト等の金属塩触媒および無水酢酸等の脱水剤存在下に脱水環化を行って脂肪族マレイミドを製造している。
特許文献2では、水溶性の有機溶媒中、脂肪族マレアミド酸をステアリン酸コバルト等の金属塩触媒および無水酢酸等の脱水剤存在下に脱水環化を行って脂肪族マレイミドを製造している。
特許文献3および4では、ベンゼンまたはトルエンといった炭化水素系溶媒中、脂肪族アミンと無水マレイン酸より脂肪族マレアミド酸を経由してアルコール触媒および酸触媒の存在下に脱水環化を行って脂肪族マレイミドを製造している。
これらの特許文献以外にも、脂肪族マレイミドの製造の困難性については特に述べられていないが、各種の製造方法が検討され、提案されている。
例えば、酸と第三級アミンや第四級アンモニウム塩等のオニウム塩を触媒として、マレアミド酸を共沸脱水環化させる方法(特許文献5参照)、ブレンステッド酸および該ブレンステッド酸に対し0.05〜0.5当量の有機アミンを不均一系触媒とし、脂肪族マレアミド酸を反応系に供給して共沸脱水環化させる方法(特許文献6参照)、スルホン酸、ならびに酢酸等のプロトン性極性溶媒およびキシレン等の非極性溶媒の存在下、第一級アミンを滴下することにより、脂肪族マレアミド酸を生成させながら順次共沸脱水環化させる方法(特許文献7参照)が挙げられる。
特開昭54−148776号公報 特開昭58−96066号公報 米国特許第5,087,705号明細書 米国特許出願公開第2008/0262191号明細書 特開昭62−138467号公報 特開昭63−196560号公報 特開平10−59935号公報
しかしながら、上記特許文献1〜7に記載の脂肪族マレイミドの製造方法には下記の問題点があった。
特許文献1および2に記載の製造方法では、金属塩触媒存在下に無水酢酸等の脱水剤を使用して脂肪族マレアミド酸を脱水環化している。この方法は、比較的高い反応収率を提供するものの、脱水剤を大量に使用し、反応後、生成物の分離処理が煩わしくなり生産コストが高くなるため、経済的な量産方法ではない。しかも、得られる脂肪族マレイミドは、通常、暗紫色ないし黒色に着色しやすいという欠点がある。このような理由により、この脱水剤を使用する脂肪族マレイミドの製造方法は、特許文献4でも述べられるように、工業的方法にならないことが知られている。
特許文献3に記載の製造方法では、脂肪族マレイミドのN−シクロヘキシルマレイミドが反応収率70.0〜91.4%で、また、N−ブチルマレイミドが反応収率85%で製造されているが、これらの反応成績は、必ずしも満足できるレベルではない。さらに、反応溶媒のトルエンまたはベンゼンは、触媒として多量に使用されているiso−ブタノール、n−ブタノール、n−プロピルアルコールといったアルコールとの共沸混合物を生成すると考えられることから、両者の分離回収および廃水処理が困難となる欠点がある。
特許文献4に記載の製造方法では、ダイマージアミンであるヴァーサミン−552(Versamine−552)のビスマレイミド化合物が反応収率60%で製造されているが、この反応成績は、必ずしも満足できるレベルではない。さらに、特許文献3と同様、反応溶媒のトルエンは、触媒として多量に使用されるn−ペンタノール、n−ブタノールといったアルコールとの分離回収が困難となり、廃水処理も煩雑となる欠点がある。
特許文献5に記載の製造方法は、実施例で示されている収率は高いが、本発明者が特許文献5に示されている実施例に準じて追試を行ったところ、脂肪族マレアミド酸由来と思われる多量の不溶解分が副生し、示されている収率を再現することはできなかった。このことは、本明細書の比較例においても示す。
特許文献6に記載の製造方法では、ブレンステッド酸としてリン酸系酸触媒、かつ有機アミンとして原料アミンと共通である第一級アミンが使用されている。
脂肪族マレイミドのN−シクロヘキシルマレイミドが単離収率78〜86%で得られたと記載されている。しかしながら、酸触媒の使用量が製品の得量より多いため生産効率が劣るという欠点がある。しかも、予め脂肪族マレアミド酸を製造した後、これをろ過・乾燥して粉末として使用するか、あるいは溶媒に懸濁してスラリーとして使用するといった頻雑な操作が必要となる欠点がある。
特許文献7に記載の製造方法では、脂肪族マレイミドのN−シクロヘキシルマレイミドが83.2〜84.6%の反応収率で製造されているが、この反応成績は、必ずしも満足できるレベルではない。また、反応においてキシレンのような非極性溶媒と酢酸のようなプロトン性極性溶媒が併用されていることから、後処理において触媒層の再利用は困難と推察され、しかも、溶媒の分離回収および排水処理も煩雑となることから、工業的実施は困難と考えられる。
すなわち、本発明は、穏和な条件下、簡便な操作で、目的とする脂肪族マレイミドを副生物の生成を抑制して、高選択的かつ高収率で、効率よく得ることができる製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題に鑑み、脂肪族マレイミドの製造方法について鋭意研究を重ねた結果、脂肪族マレイミドの合成反応における酸触媒と脱水助触媒に特定の組み合わせを採用し、さらに酸触媒に対する脱水助触媒の使用量を特定の範囲とすることで、目的物である脂肪族マレイミドを高選択的に高収率で得られることを見出した。
すなわち、本発明者は、上記酸触媒と脱水助触媒の存在下、脂肪族アミンを供給することにより、前駆体の脂肪族マレアミド酸および触媒を析出させることなく、均一反応系で共沸脱水環化させることができ、脂肪族マレアミド酸の異性化やポリイミド化の進行を抑制してイミド化の転化率を向上し得ること、これにより、目的の脂肪族マレイミドを高選択的に、また効率を向上させて得ることできることを見出した。
本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
すなわち、上記の課題は以下の手段により解決された。
〔1〕
下記一般式(2)で表される脂肪族マレイミドの製造方法であって、
無水マレイン酸、酸触媒、脱水助触媒として該酸触媒に対し0.15〜0.8モル当量の第三級アミン、および、水と共沸可能な有機溶媒をそれぞれ含有する溶液に、加熱還流下、下記一般式(1)で表される脂肪族第一級アミンまたはその溶液を供給し、均一反応系で脱水環化させることを特徴とする脂肪族マレイミドの製造方法。
Figure 2019094293
(式中、Rはn価の脂肪族炭化水素基を示し、nは1〜6の整数である。)
〔2〕
前記脱水環化させた後の反応液を水で洗浄し、得られた水相を脱水した残留物を、前記の酸触媒および脱水助触媒またはそれらの一部として再利用することを特徴とする〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕
前記酸触媒が硫酸またはスルホン酸であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕
前記酸触媒の使用量が、前記脂肪族第一級アミンに対し1.0モル当量未満であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載の製造方法。
〔5〕
前記第三級アミンがトリアルキルアミンであることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれか1つに記載の製造方法。
本発明および本明細書において、N−脂肪族置換のマレイミド化合物を脂肪族マレイミド化合物、もしくは単に脂肪族マレイミドともいう。
本発明および本明細書において、組成、純度を表す「%」は、特段の断りのない限り質量基準である。
また、本発明および本明細書において、一般式(1)で表される脂肪族第一級アミンに対するモル比は、「分子中のアミノ基の数×一般式(1)で表される脂肪族第一級アミンのモル数」に対するモル比を意味する。
本発明の脂肪族マレイミドの製造方法によれば、従来の方法と比較し、特殊な反応装置や、高価・高沸点の非プロトン性極性溶媒を用いることなく、穏和な条件下、簡便な操作で、目的とする脂肪族マレイミドを高選択的に効率よく得ることができる。また、本発明の脂肪族マレイミドの製造方法によれば、脂肪族マレイミドを高収率で得ることができる。すなわち、本発明の脂肪族マレイミドの製造方法は、脂肪族マレイミドの工業的製造に好適である。
また、本発明の脂肪族マレイミドの製造方法によれば、ジアミン化合物のような多置換性アミンを原料とした場合にも、対応する多置換性脂肪族マレイミドを高選択的に製造することができる。
本発明の好ましい実施形態について以下に説明する。
<一般式(2)で表される脂肪族マレイミドの製造方法>
一般式(2)で表される脂肪族マレイミドは、無水マレイン酸、酸触媒、脱水助触媒として特定量の第三級アミン、および、水と共沸可能な有機溶媒をそれぞれ含有する溶液に、加熱還流下、一般式(1)で表される脂肪族第一級アミンまたはその溶液を供給し、均一反応系で脱水環化させることにより製造することができる。
ここで、「均一反応系で脱水環化させる」とは、触媒および前駆体である脂肪族マレアミド酸等を析出させることなく、反応溶液中に溶解させた状態で脱水環化させることを意味する。すなわち、反応系が均一の液相で構成され、触媒および前駆体である脂肪族マレアミド酸等が不溶解分(固相)として析出していない状態で、脱水環化させることを意味する。
本発明では、「均一反応系で脱水環化させる」ことが特に重要な条件となる。
−脂肪族第一級アミン−
本発明における脱水環化反応では、下記一般式(1)で表される脂肪族第一級アミンを用いる。
Figure 2019094293
(式中、Rはn価の脂肪族炭化水素基を示し、nは1〜6の整数である。)
Rにおけるn価の脂肪族炭化水素基は、後述する置換基Zを有していてもよく、総炭素数は1〜32が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜16が好ましい。
n価の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状または分岐状であっても、環状構造を有していてもよい。以下、1価の脂肪族炭化水素基を代表として具体的な基を記載するが、2〜6価の脂肪族炭化水素基についても同様に、価数の異なる具体的な基を記載したものとする。
直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。
また、環状構造を有する脂肪族炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
置換基Zとしては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキルもしくはシクロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロアルキル基;カルボキシ基またはその金属塩:炭素数1〜6のアシル基;炭素数1〜6のアルキルアミノ基;炭素数1〜6のアシルアミノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;フェニル基等のアリール基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;ピリジル基、チエニル基、フラニル基等のヘテロアリール基が挙げられる。
このうち、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアシルアミノ基、;ニトロ基;ヒドロキシ基、アリール基、アリールオキシ基またはヘテロアリール基が好ましい。
nは、1〜4が好ましく、1〜2がより好ましい。
一般式(1)で表される脂肪族第一級アミンとしては、具体的には、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、エチレンジアミン、1、3−ジアミノプロパン、1、4−ジアミノブタン、1、6−ジアミノヘキサン、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ビスアミノジシクロヘキシルメタン等を挙げることができる。
−脂肪族マレイミド−
本発明の製造方法により、下記一般式(2)で表される脂肪族マレイミドが得られる。
Figure 2019094293
(式中、R、nは上記一般式(1)のRおよびnと同義である。)
一般式(2)で表される脂肪族マレイミドは、具体的には、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−(n−プロピル)マレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−(n−ブチル)マレイミド、N−(sec−ブチル)マレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−(t−ブチル)マレイミド、N−(n−ペンチル)マレイミド、N−(n−ヘキシル)マレイミド、1,2−ビス(マレイミド)エタン、1,3−ビス(マレイミド)プロパン、1,4−ビス(マレイミド)ブタン、1,5−ビス(マレイミド)ペンタン、1,6−ビス(マレイミド)ヘキサン、N−(シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、1,6−ビス(マレイミド)−2,2,4−トリメチルヘキサン、1,6−ビス(マレイミド)−2,4,4−トリメチルヘキサン、1−マレイミド−3−マレイミドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ビスマレイミドジシクロヘキシルメタン等を挙げることができる。
−酸触媒−
本発明の製造方法に用いる酸触媒としては、本発明における反応(以下、当反応と称す。)が可能な酸触媒であればいずれでも構わない。具体的には、メタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、ならびに、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸およびキシレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸を包含するスルホン酸;硫酸、発煙硫酸、リン酸等の鉱酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸;三フッ化ホウ素−テトラヒドロフラン(THF)錯体、塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸;モンモリロナイトK−10、硫酸化ジルコニア等の固体酸等を挙げることができる。
このうち、カルボン酸は、一般式(1)で表される脂肪族第一級アミンと反応する可能性もあり、無機もしくは有機のスルホン酸、ルイス酸、固体酸が好ましい。
上記酸触媒としては、入手性、取り扱いの簡便さ、溶解性、反応性等の観点から、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸(有機のスルホン酸)、ならびに、硫酸および発煙硫酸等の鉱酸が好ましい。なかでも、後述する水と共沸可能な有機溶媒としてトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素を用いる場合には、加熱脱水によりスルホン化することができ、より均一反応系となりやすい点から、硫酸がより好ましい。
これらの酸触媒は単独で用いても、任意の割合で2種類以上を用いてもよい。
上記酸触媒の使用量は、特に制限するものではないが、一般式(1)で表される脂肪族第一級アミン1モルに対して、通常は0.01〜1.0モルであり、好ましくは0.1〜0.9モル、より好ましくは0.2〜0.8モルの範囲である。
酸触媒が少なすぎると、イミド化の反応速度が低下し、前駆体である脂肪族マレアミド酸の異性化あるいはポリイミド化が進行することによりイミド化の転化率が低下し、収率が低下する傾向がある。また、経済的な観点からは、酸触媒は多すぎないことが好ましい。
−脱水助触媒(第三級アミン)−
本発明の製造方法に用いる第三級アミンとしては、当反応が可能な第三級アミンであればいずれでも構わない。ここで、第三級アミンとは、アンモニアの水素原子が3つとも炭素原子で置換された化合物を意味する。具体的には例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルホリン等のトリアルキルアミン(総炭素数3〜15が好ましく、3〜12がより好ましい。);ジメチルアニリン、ジフェニルメチルアミン、トリフェニルアミン等の第三級芳香族アミン(総炭素数8〜20が好ましく、8〜15がより好ましい。);ピリジン、キノリン、ピロール、ピラゾール、トリアゾール等の含窒素ヘテロ環芳香族化合物を挙げることができる。
上記第三級アミンとしては、入手性や取り扱いの簡便さ、溶解性、反応性、水溶性等の観点から、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルホリン等のトリアルキルアミンが好ましい。
これらの第三級アミンは単独で用いても、任意の割合で2種類以上を用いてもよい。
上記第三級アミンの使用量は、上記酸触媒に対して1モル当量未満であれば当反応は進行するが、本発明においては、酸触媒に対して、0.15〜0.8モル当量であり、好ましくは0.2〜0.7モル当量、より好ましくは0.3〜0.6モル当量である。
第三級アミンが少なすぎると、イミド化の反応速度が低下し、前駆体である脂肪族マレアミド酸の異性化あるいはポリイミド化が進行することによりイミド化の転化率が低下し、収率が低下する傾向がある(比較例1参照)。また、経済的および反応性の観点からは、第三級アミンは多すぎないことが好ましい(比較例4参照)。
−無水マレイン酸−
本発明の製造方法における無水マレイン酸の使用量は、特に制限するものではないが、一般式(1)で表される脂肪族第一級アミン1モルに対して、通常0.5〜5.0モルであり、好ましくは0.8〜2.0モル、より好ましくは1.0〜1.5モルである。
反応を完結させたい場合には、前駆体である脂肪族マレアミド酸が無水マレイン酸との反応により混合酸無水物となることでイミド化が促進されると考えられるため、一般式(1)で表される脂肪族第一級アミンに対し小過剰の無水マレイン酸(具体的には、1.05モル以上が好ましく、1.1モル以上がより好ましい。)を用いることが好ましい。また、一般式(1)で表される脂肪族第一級アミンが一般式(2)で表される脂肪族マレイミド化合物にマイケル付加した副生成物が生成することによる収率の低下を抑制する点からも、一般式(1)で表される脂肪族第一級アミンに対し小過剰の無水マレイン酸を用いることが好ましい。
−重合禁止剤−
本発明の製造方法においては、目的物である脂肪族マレイミドが反応液中で重合する可能性がある場合に、重合禁止剤を用いてもよい。当反応に用いる重合禁止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類および銅化合物等の重合禁止剤が挙げられる。
ヒンダードフェノール類としては、4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチル−フェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
銅化合物としては、有機および無機のいずれの銅化合物でもよく、金属銅、酸化銅、水酸化銅、塩化銅、硫酸銅、酢酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸銅等が挙げられる。
上記重合禁止剤は、単独で添加しても、混合物として添加してもよい。
本発明の製造方法において、重合禁止剤の使用量は、特に制限するものではないが、一般式(1)で表される脂肪族第一級アミン1モルに対して、通常0.00001〜1.0モルであり、好ましくは0.00005〜0.1モル、より好ましくは0.0001〜0.01モルである。
−溶媒−
当反応は無溶媒で実施してもよいが、反応を円滑に進行するため、本発明においては、反応を阻害せず、水に不溶かつ水と共沸可能な溶媒(単に「水と共沸可能な溶媒」とも称す。)を用いる。
水と共沸可能な溶媒は、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;クロロベンゼン、ジクロロメタン等の含ハロゲン溶媒;n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−デカン等の脂肪族炭化水素溶媒が挙げられる。反応系がより均一反応系となりやすい点から、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒が好ましい。無水マレイン酸と酸触媒と脱水助触媒である第三級アミンと共に溶液を構成する水と共沸可能な溶媒と、第一級アミンの溶液を構成する溶媒とは、同一であることが好ましい。
当反応は上記の「水と共沸可能な溶媒」に加えて、必要に応じて、反応を阻害せず、水に可溶かつ水と共沸しない溶媒を使用しても構わない。このような溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
本発明では、蟻酸、酢酸およびプロピオン酸のような有機カルボン酸をプロトン性極性溶媒として、反応溶液に含まないことが好ましい。
溶媒は単独で使用しても、任意の混合割合の混合溶媒として使用してもよい。
溶媒量としては、反応系の攪拌が充分にできる量であればよいが、一般式(1)で表される脂肪族第一級アミン1モルに対して、通常0〜10Lであり、好ましくは0.2〜2Lである。
−反応工程−
当反応は、まず、酸触媒存在下で水と共沸可能な有機溶媒を還流し、酸触媒に含まれる水分あるいはスルホン化等により生成する水を共沸により留去する。その後、反応系を冷却してから第三級アミン、無水マレイン酸、用いるならば重合禁止剤を順次加える。これらの溶液を再度加熱還流しているところへ、均一反応系にて一般式(1)で表される脂肪族第一級アミンまたはその溶液を徐々に供給する。無水マレイン酸と反応して生成する脂肪族マレアミド酸を、生成する水を順次共沸により除去しつつ脱水環化反応を進行させ、一般式(2)で表される脂肪族マレイミドを得る。
一般式(1)で表される脂肪族第一級アミンと無水マレイン酸とを予め反応させた後、生成する脂肪族マレアミド酸を添加する方法は、反応性の低下を招き、一般式(2)で表される脂肪族マレイミドを収率よく得られない(比較例3参照)。
一般式(1)で表される脂肪族第一級アミンまたはその溶液の供給時の反応温度は、80℃〜使用する溶媒の還流温度という範囲を例示できるが、反応性向上の観点から、100〜160℃の範囲が好ましい。反応速度や反応設備の都合上、溶媒の還流温度を調整するために加圧もしくは減圧条件下で反応を実施してもよい。
本発明では脂肪族第一級アミンもしくはその溶液の供給時の無水マレイン酸等の溶液の温度を溶媒の還流温度と記載する。この「溶媒の還流温度」とは、上記のように脱水環化反応を進行させるために反応生成水を除去しながら溶媒の一部が還流する温度を意味し、溶媒および反応生成水を全還流させるという意味ではない。
一般式(1)で表される脂肪族第一級アミンまたはその溶液を供給する方法としては、落差またはポンプを用いる滴下が一般的であるが、供給速度、すなわち滴下速度を調整できれば特に問わない。
滴下時の滴下時間は、均一反応系で脱水環化される限り、酸触媒および第三級アミンの使用モル比に応じて適宜調整される。なかでも、一般式(1)で表される脂肪族第一級アミンと無水マレイン酸が反応して生成する脂肪族マレアミド酸の異性化やポリイミド化などの副反応が充分抑制され、イミド化閉環反応が優先的に進行する速度を保つ観点等から、好ましくは1時間〜30時間である。
当反応により得られる一般式(2)で表される脂肪族マレイミドを含む反応液(すなわち、脱水環化反応終了後の反応液)は、水または塩基性水溶液で洗浄する。
塩基性水溶液としては、例えば、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩もしくは炭酸水素塩の水溶液が使用できる。一般式(2)で表される脂肪族マレイミドの塩基に対する安定性から、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の炭酸水素塩の水溶液が好ましい。
水または塩基性水溶液の使用量としては、洗浄後に有機相と水相が分離する量であれば特に制限はないが、一般式(1)で表される脂肪族第一級アミン1モルに対して、通常0.01〜10Lであり、好ましくは0.05〜1Lである。
また、水で洗浄した場合、回収した水相を脱水して得られる残留物を、酸触媒および脱水助触媒またはそれらの一部として再利用してもよい。上記残留物には、酸触媒および脱水助触媒、重合禁止剤等の成分の他に、溶媒および溶媒に同伴(溶解)された脂肪族マレイミドが含まれ得る。これは、反応終了後の一回目の水洗水量を分液ができる程度の最少量に減らすことにより好適に実施可能となる。分液ができる最少量の水洗水量とは、例えばN−シクロヘキシルマレイミド製造の場合、原料の脂肪族第一級アミン:水洗水量の質量比がおおよそ2:1である。この結果、回収した水相を溶媒で抽出してマレイミドを回収するといった操作を行わずにマレイミドを回収でき、マレイミドの廃水へのロスも抑制できるというメリットがある。一回目の水洗水量を分液ができる最少量に減らすことができれば、二回目以降の水洗水量も同様に最少量に設定できることから、これにより、後処理操作における生産効率(釜効率)が事実上向上するという利点が生じる。
洗浄の温度は洗浄後に有機相と水相が分離する温度であれば特に制限はないが、通常0〜90℃であり、好ましくは室温(20℃)〜80℃である。
本発明の製造方法により得られる、一般式(2)で表される脂肪族マレイミドの単離方法に、特に制限はなく、常法により行うことができる。
例えば、洗浄後の有機相から溶媒を留去した後、蒸留するか、貧溶媒を加えて結晶を析出させた後にろ過することにより、一般式(2)で表される脂肪族マレイミドを単離することができる。
本発明の製造方法により得られる一般式(2)で表される脂肪族マレイミドは、樹脂モノマー、医農薬中間体として有用な化合物である。
次に、実施例を挙げて本発明化合物の製造方法を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
ここで、「洗浄後の反応液中の目的物の収率」は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)による内部標準法により算出した。
[1.N−シクロヘキシルマレイミドの製造]
以下、実施例1〜4、比較例1〜5の製造方法により、それぞれN−シクロヘキシルマレイミドを製造した。
実施例1
マグネットスターラー、滴下ロート、ディーンスターク管、還流管、温度計を備えた1000ml容の四つ口フラスコに、濃硫酸39.2g(0.4mol)、キシレン200mlを加え、反応系内に窒素を流しながら、共沸する水を抜き出しつつ還流した。約7.2mlの副生水を確認後、反応液を70℃まで冷却後、トリエチルアミン20.2g(0.2mol)をキシレン70mlに加えた溶液を反応系内温度が100℃以下になるように滴下した。反応系内に無水マレイン酸110.0g(1.1mol)、ジブチルジチオカルバミン酸銅72mg(0.16mmol)、キシレン10mlを順次加えた。次いで反応液を還流させながらシクロヘキシルアミン100.0g(1mol)をキシレン120mlに加えた溶液を、共沸する水を抜き出しつつ8時間掛けて滴下した。滴下後さらに3時間還流し、約17.8mlの副生水を分離した。この時の反応液は均一で不溶分の生成もなかった。反応液の一部をサンプリングしてHPLC内部標準法にて分析したところ、反応後の反応液にはシクロヘキシルアミンを基準とした収率97.4%に相当するN−シクロヘキシルマレイミドが生成していた。
50℃以下まで反応液を冷却後、反応液を水200mlで洗浄した。分液して得られた含触媒水相(洗浄水)には、収率2.3%に相当するN−シクロヘキシルマレイミドが含まれており、この含触媒水相を実施例2において触媒リサイクルに使用した。さらに、反応液を2%重曹水溶液200ml、次いで水200mlで2回洗浄した。洗浄後の反応液中には、収率92.0%に相当するN−シクロヘキシルマレイミドが含まれていた。さらに反応液にジブチルジチオカルバミン酸銅0.4g(0.85mmol)を加え、減圧下キシレンを留去した後、1mmHgの減圧下、バス温を115〜150℃まで昇温し蒸留を行い、N−シクロヘキシルマレイミドが152.6gの白色結晶として得られた。HPLC純度99.9%、収率85.2%。
GC−MS(M+)=179.1.
実施例2
マグネットスターラー、滴下ロート、ディーンスターク管、還流管、温度計を備えた300ml容の四つ口フラスコに、実施例1で得られた1回目の洗浄水81.4g(実施例1の1/4スケールとなるため、洗浄水の総量の1/4に相当する。この中にはN−シクロヘキシルマレイミド1.0g、濃硫酸8.8g(90mmol)、トリエチルアミン5.0g(49mmol)を含有)を加え、30mmHgの減圧下、バス温を100℃まで昇温し水を留去した。次いで、p−トルエンスルホン酸一水和物1.9g(10mmol)およびキシレン100mlを加え反応系内に窒素を流しながら、共沸する水を抜き出しつつ還流した。副生水の完全な留出を確認後、反応液を70℃まで冷却後、反応系内に無水マレイン酸30g(0.3mol)を加えた。次いで反応液を還流させながらシクロヘキシルアミン25g(0.25mol)をキシレン50mlに加えた溶液を、共沸する水を抜き出しつつ7時間掛けて滴下した。滴下後さらに2時間還流し、約4.8mlの副生水を分離した。この時の反応液は均一で不溶分の生成もなかった。50℃以下まで反応液を冷却後、反応液を水50mlで洗浄した。さらに、反応液を2%重曹水溶液50ml、次いで水50mlで2回洗浄した。洗浄後の反応液中には、シクロヘキシルアミンを基準とした収率98.5%に相当するN−シクロヘキシルマレイミドが含まれていた。さらに反応液にジブチルジチオカルバミン酸銅0.1g(0.21mmol)を加え、減圧下キシレンを留去した後、1mmHgの減圧下、バス温を110〜140℃まで昇温し蒸留を行い、N−シクロヘキシルマレイミドが38.1gの白色結晶として得られた。HPLC純度99.6%、収率85.1%。
この操作により含触媒水相のリサイクルが可能であることがわかる。
引き続き、得られた含触媒水相の全量を用いて触媒リサイクルの検討を行った。
すなわち、上記の実施例2と同じスケールの反応装置に、上記の実施例2で得られた1回目の洗浄水(含触媒水相)の全量80.0gを加えて減圧下で脱水後、p−トルエンスルホン酸一水和物1.9g(10mmol)、キシレン50mlを加えた。反応系内に窒素を流しながら、共沸する水を抜き出しつつ還流した。副生水の完全な留出を確認後、反応液を70℃まで冷却後、反応系内に無水マレイン酸27.5g(0.27mol)を加えた。次いで反応液を還流させながらシクロヘキシルアミン25g(0.25mol)をキシレン50mlに溶解した溶液を、共沸する水を抜き出しつつ7時間掛けて滴下した。滴下後さらに2時間還流し、約5.6mlの副生水を分離した。この時の反応液は均一で不溶分の生成もなかった。50℃以下まで反応液を冷却後、反応液を水50mlで洗浄した。さらに、反応液を2%重曹水溶液50ml、次いで水50mlで2回洗浄した。洗浄後の反応液中には、シクロヘキシルアミンを基準とした収率99.9%に相当するN−シクロヘキシルマレイミドが含まれていた。
この操作においても、含触媒水相のリサイクルが可能であることがわかった。
実施例3
マグネットスターラー、滴下ロート、ディーンスターク管、還流管、温度計を備えた300ml容の四つ口フラスコに、濃硫酸9.8g(0.1mol)、キシレン50mlを加え、反応系内に窒素を流しながら、共沸する水を抜き出しつつ還流した。約1.8mlの副生水を確認後、反応液を70℃まで冷却後、トリブチルアミン9.3g(50mmol)をキシレン50mlに加えた溶液を反応系内温度が100℃以下になるように滴下した。反応系内に無水マレイン酸25.0g(250mmol)、4−メトキシフェノール60mg(0.5mmol)を順次加えた。次いで反応液を還流させながらシクロヘキシルアミン25.0g(250mmol)をキシレン50mlに加えた溶液を、共沸する水を抜き出しつつ6時間掛けて滴下した。滴下後さらに3時間還流し、約4.8mlの副生水を分離した。この時の反応液は均一で不溶分の生成もなかった。50℃以下まで反応液を冷却後、反応液を水200mlで4回洗浄した。洗浄後の反応液中には、収率87.3%に相当するN−シクロヘキシルマレイミドが含まれていた。
実施例4
マグネットスターラー、滴下ロート、ディーンスターク管、還流管、温度計を備えた500ml容の四つ口フラスコに、濃硫酸29.4g(0.3mol)、キシレン100mlを加え、反応系内に窒素を流しながら、共沸する水を抜き出しつつ還流した。約5.6mlの副生水を確認後、反応液を70℃まで冷却後、ジメチルアニリン12.1g(0.1mol)をキシレン20mlに加えた溶液を反応系内温度が100℃以下になるように滴下した。反応系内に無水マレイン酸55.0g(550mmol)、ジブチルジチオカルバミン酸銅36mg(0.08mmol)、キシレン10mlを順次加えた。次いで反応液を還流させながらシクロヘキシルアミン50.0g(0.5mol)をキシレン70mlに加えた溶液を、共沸する水を抜き出しつつ4時間掛けて滴下した。滴下後さらに2時間還流し、約8.6mlの副生水を分離した。この時の反応液は均一で不溶分の生成もなかった。50℃以下まで反応液を冷却後、反応液を水200mlで洗浄した。さらに、反応液を2.5%重曹水溶液200ml、次いで水200mlで2回洗浄した。洗浄後の反応液中には、収率81.1%に相当するN−シクロヘキシルマレイミドが含まれていた。
比較例1
マグネットスターラー、滴下ロート、ディーンスターク管、還流管、温度計を備えた500ml容の四つ口フラスコに、濃硫酸29.4g(300mmol)、キシレン120mlを加え、反応系内に窒素を流しながら、共沸する水を抜き出しつつ還流した。約5.6mlの副生水を確認後、反応液を70℃まで冷却後、無水マレイン酸55.0g(550mmol)、ジブチルジチオカルバミン酸銅36mg(0.08mmol)、キシレン10mlを添加し、次いで反応液を還流させながらシクロヘキシルアミン50.0g(0.5mol)をキシレン70mlに加えた溶液を、共沸する水を抜き出しつつ4時間掛けて滴下した。滴下後さらに2時間還流し、約9.0mlの副生水を分離した。この時の反応液は均一で不溶分の生成もなかった。50℃以下まで反応液を冷却後、反応液を水200mlで洗浄し、反応液を2%重曹水溶液200ml、次いで水200mlで2回洗浄した。洗浄後の反応液中には、収率67.1%に相当するN−シクロヘキシルマレイミドしか含まれていなかった。
比較例2
マグネットスターラー、滴下ロート、ディーンスターク管、還流管、温度計を備えた300ml容の四つ口フラスコに、濃硫酸14.7g(150mmol)、o−キシレン50mlを加え、反応系内に窒素を流しながら、共沸する水を抜き出しつつ還流した。約2.8mlの副生水を確認後、反応液を70℃まで冷却後、4−メトキシフェノール90mg(0.75mmol)、シクロヘキシルアミン7.5g(75mmol)を添加し、次いで反応液を還流させながらシクロヘキシルアミン25.0g(250mmol)をo−キシレン50mlに加えた溶液と、無水マレイン酸25.0g(250mmol)をo−キシレン50mlに加えた溶液を、共沸する水を抜き出しつつ2.5時間掛けて同時滴下した。滴下後さらに2時間還流し、約2.7mlの副生水を分離した。10℃以下まで反応液を冷却後、析出した結晶をろ過で除去し、反応液を水100mlで5回洗浄した。洗浄後の反応液中には、収率64.0%に相当するN−シクロヘキシルマレイミドが含まれていた。反応液を減圧下、o−キシレンを留去し、減圧蒸留しN−シクロヘキシルマレイミド23.9gを得た。収率53.3%。
比較例3
比較例3は、出発物質にシクロヘキシルアミンに代えてN−シクロヘキシルマレアミド酸を用い、このキシレン溶液を滴下する製造方法であり、シクロヘキシルアミンの場合と同様、無水マレイン酸を小過剰となるよう添加した。
マグネットスターラー、滴下ロート、ディーンスターク管、還流管、温度計を備えた300ml容の四つ口フラスコに、濃硫酸3.9g(40mmol)、o−キシレン20mlを加え、反応系内に窒素を流しながら、共沸する水を抜き出しつつ還流した。約0.4mlの副生水を確認後、反応液を70℃まで冷却後、4−メトキシフェノール30mg(0.25mmol)、トリエチルアミン2.0g(20mmol)、無水マレイン酸2.0g(20mmol)を添加し、次いで反応液を還流させながらN−シクロヘキシルマレアミド酸19.3g(98mmol)をo−キシレン60mlに加えた加温溶液を、共沸する水を抜き出しつつ3時間掛けて滴下した。滴下後さらに2時間還流し、約1.9mlの副生水を分離した。反応液を2%重曹水溶液100mlで2回、次いで水100mlで5回洗浄した。洗浄後の反応液中には、収率66.0%に相当するN−シクロヘキシルマレイミドしか含まれていなかった。
比較例4
マグネットスターラー、滴下ロート、ディーンスターク管、還流管、温度計を備えた300ml容の四つ口フラスコに、濃硫酸19.6g(0.2mol)、キシレン100mlを加え、反応系内に窒素を流しながら、共沸する水を抜き出しつつ還流した。約3.6mlの副生水を確認後、反応液を70℃まで冷却後、トリエチルアミン20.2g(0.2mol)をキシレン10mlに加えた溶液を反応系内温度が100℃以下になるように滴下し、ジブチルジチオカルバミン酸銅36mg(0.08mmol)、無水マレイン酸55.0g(550mmol)、キシレン10mlを添加し、次いで反応液を還流させながらシクロヘキシルアミン50.0g(0.5mol)をキシレン70mlに加えた加温溶液を、共沸する水を抜き出しつつ4時間掛けて滴下した。滴下後さらに1時間還流し、約4.2mlの副生水を分離した。反応液は黒濁しており、水200mlを加えたところ多量のタール分が生成し分液操作はできなかった。
比較例5
特許文献5の実施例28記載の条件に準じてN−シクロヘキシルマレイミド製造の追試を行った。
マグネットスターラー、滴下ロート、ディーンスターク管、還流管、温度計を備えた500ml容の四つ口フラスコに、無水マレイン酸49.0g(0.5mol)、キシレン165g、トルエン54gを加え、反応系内に窒素を流しながら、シクロヘキシルアミン47.6g(0.48mol)を30℃で滴下し、滴下後1時間同温度で撹拌した。85%リン酸9.2g(80mmol)、N,N−ジメチルアニリン1.7g(14mmol)を添加し、反応液を共沸する水を抜き出しつつ9時間還流させた。約7.4mlの副生水を分離した。反応液は触媒相が分離しており、さらに不溶解分の生成がみられた。反応液を70℃まで冷却後、ろ過で不溶解分を除去した。この反応液中には、収率47.2%に相当するN−シクロヘキシルマレイミドしか含まれていなかった。
実施例1〜4、比較例1〜5の製造方法について、目的物であるN−シクロヘキシルマレイミドの選択性を、「洗浄後の反応液中の目的物の収率」により評価した。
実施例1は、本発明で規定するように、酸触媒と、酸触媒に対して0.5モル当量の脱水助触媒(第三級アミン)の存在下、無水マレイン酸を水と共沸可能な有機溶媒に溶解した溶液に、加熱還流下、脂肪族第一級アミンであるシクロヘキシルアミンの溶液を供給し、均一反応系で脱水環化させた。洗浄後の反応液中には、目的物であるN−シクロヘキシルマレイミドが92.0%に相当する高収率で含まれ、目的物を高選択的に得ることができた。なお、反応後の反応液中には、目的物であるN−シクロヘキシルマレイミドが97.4%であり、洗浄により洗浄水に一部損なわれていることがわかった。
また、実施例2で示すように、実施例1で得られた、酸触媒および脱水助触媒を含有する洗浄水を再利用した場合にも、洗浄後の反応液中には、目的物であるN−シクロヘキシルマレイミドが98.5%に相当する高収率で含まれ、目的物を高選択的に得ることができた。
さらに、実施例1に対して、脱水助触媒である第三級アミンの種類を変えた実施例3および4も、洗浄後の反応液中には、目的物であるN−シクロヘキシルマレイミドが順に87.3%、81.1%と好収率で含まれ、目的物を高選択的に得ることができた。
これに対して、本発明の規定を満たさない製造方法により製造した比較例1〜5は、いずれも、目的物であるN−シクロヘキシルマレイミドを高選択的に得ることができず、脂肪族マレイミドの製造方法として劣っていた。
脱水助触媒としての第三級アミンを使用しなかった比較例1では、洗浄後の反応液中の収率は67.1%と低かった。脱水助触媒としての第三級アミンに替えて第一級アミンを使用した比較例2では、洗浄後の反応液中の収率は64.0%、精製後の収率は53.3%と低かった。また、脂肪族第一級アミンに替えて前駆体マレアミド酸を滴下した比較例3では、洗浄後の反応液中の収率は66.0%と低かった。
さらに、酸触媒に対して第三級アミンを1.0モル当量と過剰に使用した比較例4では、多量のタール分が生成していて、目的物を分離することができなかった。
また、特開昭62−138467号公報に記載の方法に準じて、酸と第三級アミンを触媒として、マレアミド酸を共沸脱水環化した反応液中の収率は、比較例5では47.2%と低かった。
上記の通り、本発明の製造方法により、N−シクロヘキシルマレイミドを製造した実施例1〜4は、いずれも目的物であるN−シクロヘキシルマレイミドを高選択的に得ることができた。また、本発明の製造方法によれば、実施例1および2に記載するように、続く精製処理により、高純度のN−シクロヘキシルマレイミドを高収率で得ることができた(実施例1は純度99.9%、収率85.2%、実施例2は純度99.6%、収率85.1%)。
[2.各種脂肪族マレイミド]
以下、実施例5〜9の製造方法により、各種脂肪族マレイミドを製造した。
実施例5:N−n−ブチルマレイミドの製造
マグネットスターラー、滴下ロート、ディーンスターク管、還流管、温度計を備えた300ml容の四つ口フラスコに、濃硫酸9.8g(0.1mol)、キシレン100mlを加え、反応系内に窒素を流しながら、共沸する水を抜き出しつつ還流した。約1.8mlの副生水を確認後、反応液を70℃まで冷却後、トリエチルアミン5.1g(50mmol)をキシレン20mlに加えた溶液を反応系内温度が100℃以下になるように滴下した。反応系内に無水マレイン酸55.0g(550mmol)、ジブチルジチオカルバミン酸銅36mg(0.08mmol)、キシレン10mlを順次加えた。次いで反応液を還流させながらn−ブチルアミン36.6g(0.5mol)をキシレン70mlに加えた溶液を、共沸する水を抜き出しつつ3時間掛けて滴下した。滴下後さらに2時間還流し、約9.1mlの副生水を分離した。この時の反応液は均一で不溶分の生成もなかった。反応液の一部をサンプリングしてHPLC内部標準法にて分析したところ、反応後の反応液にはn−ブチルアミンを基準とした収率91.0%に相当するN−n−ブチルマレイミドが生成していた。50℃以下まで反応液を冷却後、反応液を水200mlで洗浄した。さらに、反応液を1.5%重曹水溶液200ml、次いで水200mlで2回洗浄した。さらに反応液にジブチルジチオカルバミン酸銅0.1g(0.21mmol)を加え、減圧下キシレンを留去した後、3mmHgの減圧下、バス温を110〜130℃まで昇温し蒸留を行い、N−n−ブチルマレイミドが56.4gの無色オイルとして得られた。HPLC純度99.2%、収率73.7%。
実施例6:N−n−ブチルマレイミドの製造
マグネットスターラー、滴下ロート、ディーンスターク管、還流管、温度計を備えた300ml容の四つ口フラスコに、濃硫酸9.8g(0.1mol)、トルエン100mlを加え、反応系内に窒素を流しながら、共沸する水を抜き出しつつ還流した。約1.8mlの副生水を確認後、反応液を70℃まで冷却後、トリエチルアミン5.1g(50mmol)をトルエン20mlに加えた溶液を反応系内温度が100℃以下になるように滴下した。反応系内に無水マレイン酸55.0g(550mmol)、ジブチルジチオカルバミン酸銅36mg(0.08mmol)、トルエン10mlを順次加えた。次いで反応液を還流させながらn−ブチルアミン36.6g(0.5mol)をトルエン70mlに加えた溶液を、共沸する水を抜き出しつつ14時間掛けて滴下した。滴下後さらに2時間還流し、約7.5mlの副生水を分離した。この時の反応液は均一で不溶分の生成もなかった。50℃以下まで反応液を冷却後、反応液を水200mlで洗浄した。さらに、反応液を1%重曹水溶液200ml、次いで水200mlで2回洗浄した。さらに反応液にジブチルジチオカルバミン酸銅0.1g(0.21mmol)を加え、減圧下トルエンを留去した後、3mmHgの減圧下、バス温を110〜130℃まで昇温し蒸留を行い、N−n−ブチルマレイミドが50.7gの無色オイルとして得られた。HPLC純度96.9%、収率66.2%。
実施例7:1,6−ビス(マレイミド)トリメチルヘキサン(2,2,4−および2,4,4−混合物)の製造
マグネットスターラー、滴下ロート、ディーンスターク管、還流管、温度計を備えた300ml容の四つ口フラスコに、濃硫酸9.8g(0.1mol)、キシレン100mlを加え、反応系内に窒素を流しながら、共沸する水を抜き出しつつ還流した。約1.8mlの副生水を確認後、反応液を70℃まで冷却後、トリエチルアミン5.1g(50mmol)をキシレン20mlに加えた溶液を反応系内温度が100℃以下になるように滴下した。反応系内に無水マレイン酸55.0g(550mmol)、ジブチルジチオカルバミン酸銅36mg(0.08mmol)、キシレン10mlを順次加えた。次いで反応液を還流させながらトリメチルヘキサメチレンジアミン(東京化成、2,2,4−および2,4,4−混合物)39.6g(0.25mol)をキシレン70mlに加えた溶液を、共沸する水を抜き出しつつ4時間掛けて滴下した。滴下後さらに1時間還流し、約9.4mlの副生水を分離した。この時の反応液は均一で不溶分の生成もなかった。反応液の一部をサンプリングしてHPLC内部標準法にて分析したところ、反応液にはトリメチルヘキサメチレンジアミンを基準とした収率89.9%に相当する1,6−ビス(マレイミド)トリメチルヘキサン(2,2,4−および2,4,4−混合物)が生成していた。
50℃以下まで反応液を冷却後、反応液にキシレン150mlを加え、水200mlで洗浄した。さらに、反応液を2%重曹水溶液200ml、次いで水200mlで2回洗浄した。キシレン相の不溶分をろ別後、減圧下キシレンを留去した後、メタノール250mlを加え、加熱溶解後徐々に10℃以下まで冷却し、析出した結晶をろ過乾燥し、1,6−ビス(マレイミド)トリメチルヘキサン(2,2,4−および2,4,4−混合物)が56.3gの乳白色結晶として得られた。HPLC純度98.8%、収率70.3%。
実施例8:1−マレイミド−3−マレイミドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(位置異性体混合物)の製造
マグネットスターラー、滴下ロート、ディーンスターク管、還流管、温度計を備えた300ml容の四つ口フラスコに、濃硫酸9.8g(0.1mol)、キシレン100mlを加え、反応系内に窒素を流しながら、共沸する水を抜き出しつつ還流した。約1.8mlの副生水を確認後、反応液を70℃まで冷却後、トリエチルアミン5.1g(50mmol)をキシレン20mlに加えた溶液を反応系内温度が100℃以下になるように滴下した。反応系内に無水マレイン酸55.0g(550mmol)、ジブチルジチオカルバミン酸銅36mg(0.08mmol)、キシレン10mlを順次加えた。次いで反応液を還流させながらイソホロンジアミン(東京化成、位置異性体混合物)39.0g(0.25mol)をキシレン70mlに加えた溶液を、共沸する水を抜き出しつつ5時間掛けて滴下した。滴下後さらに3時間還流し、約9.1mlの副生水を分離した。この時の反応液は均一で不溶分の生成もなかった。反応液の一部をサンプリングしてHPLC内部標準法にて分析したところ、反応液にはイソホロンジアミンを基準とした収率94.3%に相当する1−マレイミド−3−マレイミドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(位置異性体混合物)が生成していた。
50℃以下まで反応液を冷却後、反応液に酢酸エチル400mlを加え、水200mlで洗浄した。さらに、反応液を3%重曹水溶液200ml、次いで水200mlで2回洗浄した。有機相の不溶分をろ別後、減圧下溶媒を留去した後、メタノール150mlを加え、加熱溶解後徐々に10℃以下まで冷却し、さらに水を30ml加え、析出した結晶をろ過乾燥し、1−マレイミド−3−マレイミドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(位置異性体混合物)が51.9gの乳白色結晶として得られた。HPLC純度95.2%、収率65.6%。
実施例9:4,4’−ビスマレイミドジシクロヘキシルメタン(位置異性体混合物)の製造
マグネットスターラー、滴下ロート、ディーンスターク管、還流管、温度計を備えた500ml容の四つ口フラスコに、濃硫酸19.6g(0.2mol)、キシレン100mlを加え、反応系内に窒素を流しながら、共沸する水を抜き出しつつ還流した。約3.8mlの副生水を確認後、反応液を70℃まで冷却後、トリエチルアミン10.1g(0.1mol)をキシレン20mlに加えた溶液を反応系内温度が100℃以下になるように滴下した。反応系内に無水マレイン酸55.0g(550mmol)、ジブチルジチオカルバミン酸銅36mg(0.08mmol)、キシレン10mlを順次加えた。次いで反応液を還流させながら4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(東京化成、位置異性体混合物)52.6g(0.25mol)をキシレン70mlに加えた溶液を、共沸する水を抜き出しつつ6時間掛けて滴下した。滴下後さらに2時間還流し、約8.6mlの副生水を分離した。この時の反応液は均一で不溶分の生成もなかった。50℃以下まで反応液を冷却後、反応液に酢酸エチル500mlを加え、水200mlで洗浄した。さらに、反応液を2%重曹水溶液200ml、次いで水200mlで2回洗浄した。有機相の不溶分をろ別後、減圧下溶媒を留去し、粗4,4’−ビスマレイミドジシクロヘキシルメタン(位置異性体混合物)が92.0gの淡黄色固体として得られた。HPLC純度81.8%、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンを基準とした収率99.3%。
比較例6
特許文献5の実施例29に記載の条件に準じてN−n−ブチルマレイミド製造の追試を行った。
無水マレイン酸49.0g(0.5mol)、キシレン160g、トルエン54gを加え、反応系内に窒素を流しながら、n−ブチルアミン35.1g(0.48mol)を30℃で滴下し、滴下後1時間同温度で撹拌した後、リン酸9.2g(80mmol)、およびN,N−ジメチルドデシルアミン3.0g(14mmol)を触媒として加え、副生水の発生が止むまで反応を行った。この場合も、特許文献5の実施例28に準じて追試したN−シクロヘキシルマレイミドの製造(比較例5)と同様、冷却時に不溶分の析出が観察された。反応後、冷却して触媒層と分離し不溶分をろ別した後、HPLC内部標準法にて分析した結果、この反応液中には、収率54.5%に相当するN−n−ブチルマレイミドしか含まれていなかった。
上記の通り、本発明の製造方法により、各種の脂肪族マレイミを製造した実施例5〜9は、いずれも目的物である各種の脂肪族マレイミドを高選択的に得ることができ、また、精製処理により、目的物を好収率で得ることができた。
すなわち、本発明の製造方法により、N−n−ブチルマレイミドを製造した実施例5および6は、精製処理により、高純度のN−n−ブチルマレイミドを高収率で得ることができた(実施例5は純度99.2%、収率73.7%、実施例6は純度96.9%、収率66.2%)。いずれも、本発明の製造方法により、目的物であるN−n−ブチルマレイミドを高選択的に得られたと考えられる。
これに対し、特開昭62−138467号公報の実施例29に記載の方法に準じて、酸と第三級アミンを触媒として、マレアミド酸を共沸脱水環化した比較例6では、先に示したように、反応液に含まれるN−n−ブチルマレイミドの収率は54.5%と低く、実施例5〜9の結果と対照的である。
また、本発明の製造方法により、ジアミン化合物を原料とした場合にも、対応する二置換性脂肪族マレイミドを高選択的に製造することができた(実施例7〜9)。
具体的には、実施例7は、1,6−ビス(マレイミド)トリメチルヘキサン(2,2,4−および2,4,4−混合物)を純度98.8%、単離収率70.3%で、実施例8は、1−マレイミド−3−マレイミドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(位置異性体混合物)を純度95.2%、単離収率65.6%で得ることができた。また、実施例9は、4,4’−ビスマレイミドジシクロヘキシルメタン(位置異性体混合物)を純度81.8%、単離収率99.3%でそれぞれ得ることができた。
なお、実施例6〜9は、目的物が混合物で得られたため、「反応液中の目的物の収率」は、目的物の相対検出感度を同じと仮定して算出した。
以上から明らかなように、本発明の製造方法により、原料として、入手容易な一般式(1)で表される脂肪族第一級アミンから、特殊な反応装置を用いることなく、穏やかな条件下、簡便な操作で、目的とする一般式(2)で表される脂肪族マレイミドを高選択的かつ高収率で、極めて効率的な製造が可能となったことがわかる。しかも、触媒もしくは遷移金属に由来する有害な廃棄物も排出しないので、廃棄物処理が容易で環境にも優しく、工業的な利用価値が高いことがわかる。
すなわち、上記の課題は以下の手段により解決された。
〔1〕
下記一般式(2)で表される脂肪族マレイミドの製造方法であって、
無水マレイン酸、酸触媒、脱水助触媒として該酸触媒に対し0.15〜0.8モル当量の第三級アミン、および、水と共沸可能な有機溶媒をそれぞれ含有する溶液に、加熱還流下、下記一般式(1)で表される脂肪族第一級アミンまたはその溶液を供給し、有機カルボン酸を含まない反応溶媒の均一反応系で脱水環化させる(ただし、反応に使用する反応溶媒が水と共沸可能な有機溶媒のみから成ることを除く)ことを特徴とする脂肪族マレイミドの製造方法。

Claims (5)

  1. 下記一般式(2)で表される脂肪族マレイミドの製造方法であって、
    無水マレイン酸、酸触媒、脱水助触媒として該酸触媒に対し0.15〜0.8モル当量の第三級アミン、および、水と共沸可能な有機溶媒をそれぞれ含有する溶液に、加熱還流下、下記一般式(1)で表される脂肪族第一級アミンまたはその溶液を供給し、均一反応系で脱水環化させることを特徴とする脂肪族マレイミドの製造方法。
    Figure 2019094293
    (式中、Rはn価の脂肪族炭化水素基を示し、nは1〜6の整数である。)
  2. 前記脱水環化させた後の反応液を水で洗浄し、得られた水相を脱水した残留物を、前記の酸触媒および脱水助触媒またはそれらの一部として再利用することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記酸触媒が硫酸またはスルホン酸であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記酸触媒の使用量が、前記脂肪族第一級アミンに対し1.0モル当量未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記第三級アミンがトリアルキルアミンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
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