JP2019093564A - 2色成形レンズ - Google Patents

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Abstract

【課題】外表面にハードコート膜が形成されるとともに内表面に防曇塗装膜が形成された2色成形レンズにおいて、その製造工程での作業効率を向上させた上で外観不良の発生を効果的に抑制する。【解決手段】2色成形レンズ10の内表面10bに沿ってレンズ周壁部14からレンズ本体部12へ回り込むように形成された2次成形品10Sと接合する1次成形品10P1において、その内表面10Pa1と2次成形品10Sに対する接合面10b1との角部10Pbに形成されるコーナーRを、R0.2mm以下の値に設定する。これにより角部10Pbに沿って形成される溝状の隙間Gを極めて小さいものとする。そして、ハードコート膜および防曇塗装膜24を作業効率の良いハイブリッド型成膜工程で形成した場合であっても、溝状の隙間Gに溜まる防曇塗料P2の量を最小限に抑え、角部10Pb周辺に防曇塗料P2の含浸によるクラックが発生するのを効果的に抑制する。【選択図】図4

Description

本願発明は、外表面にハードコート膜が形成されるとともに内表面に防曇塗装膜が形成された2色成形レンズに関するものである。
従来より、透明樹脂製の1次成形品と不透明樹脂製の2次成形品とからなる2色成形レンズが知られている。
車両用灯具に用いられる2色成形レンズとしては、例えば「特許文献1」に記載されているように、レンズ本体部とその周縁部から2色成形レンズの内表面側に立ち上がるレンズ周壁部とを備えた構成が一般的である。
このような2色成形レンズにおいては、1次成形品が2色成形レンズの外表面に沿ってレンズ本体部からレンズ周壁部へ回り込むように形成されるとともに、2次成形品が2色成形レンズの内表面に沿ってレンズ周壁部からレンズ本体部へ回り込むように形成されている。
また従来より、車両用灯具の前照灯レンズにおいては、その外表面にハードコート膜が形成されるとともにその内表面に防曇塗装膜が形成された構成が多く採用されている。
これらの成膜作業は、例えば「特許文献2」に記載されているように、レンズの外表面にハードコート膜を形成した後、紫外線照射によって塗料中の合成樹脂組成物を硬化させ、その後、レンズの内表面に防曇塗装膜を形成した後、この防曇塗装膜を熱によって硬化させる、という独立した2つの工程(以下「独立型成膜工程」という)によって行われるのが一般的である。
特開2014−176974号公報 特開2000−182409号公報
2色成形レンズとして、その外表面にハードコート膜が形成されるとともにその内表面に防曇塗装膜が形成された構成とした場合において、その成膜工程として、従来の「独立型成膜工程」の代わりに、2色成形レンズの外表面にハードコート膜を形成した後、その内表面に防曇塗装膜を形成し、その後、ハードコート膜を紫外線照射によって硬化させた後、防曇塗装膜を熱によって硬化させる工程(以下「ハイブリッド型成膜工程」という)を採用すれば、成膜工程における省人化を図ることができ、これにより2色成形レンズの製造工程での作業効率を向上させることができる。
しかしながら、このようなハイブリッド型成膜工程を採用した場合には、次のような問題が生じてしまう。
すなわち、2色成形レンズにおいては、1次成形品の成形後に2次成形品の成形が行われるので、1次成形品にはその内表面と2次成形品に対する接合面との角部にコーナーRが不可避的に形成されてしまい、これをピン角(すなわちR0)で形成することはできない。その際、通常の金型加工では、エンドミルの構造上、最小コーナーRはR0.3mm程度の大きさとなる。
このため2色成形レンズには、1次成形品の角部に沿って略楔形の断面形状を有する溝状の隙間が形成されてしまう。
このような状況の下、ハイブリッド型成膜工程を採用した場合には、紫外線照射によるハードコート膜の硬化後に防曇塗装膜の硬化が行われるので、その間に2色成形レンズにおいては、1次成形品の角部に形成される溝状の隙間に溜まった防曇塗料が1次成形品の内部に含浸してしまい、これにより1次成形品の角部周辺にクラックが発生しやすくなる。
特に、2次成形品を成形する際、金型内に配置された状態にある1次成形品は金型内に射出された溶融樹脂によって押圧力を受けるので、成形完了後の2色成形レンズには1次成形品の角部周辺に残留応力が生じてしまい、このためクラックが一層発生しやすくなる。
そして、このようにして1次成形品の角部周辺にクラックが発生すると、このクラックが透明なレンズ本体部を透して見えてしまうので、2色成形レンズに外観不良が発生してしまう。
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、外表面にハードコート膜が形成されるとともに内表面に防曇塗装膜が形成された2色成形レンズにおいて、その製造工程での作業効率を向上させるようにした上で、外観不良の発生を効果的に抑制することができる2色成形レンズを提供することを目的とするものである。
本願発明は、1次成形品の構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
すなわち、本願発明に係る2色成形レンズは、
透明樹脂製の1次成形品と不透明樹脂製の2次成形品とからなる2色成形レンズであって、レンズ本体部とこのレンズ本体部の周縁部から上記2色成形レンズの内表面側に立ち上がるレンズ周壁部とを備え、外表面にハードコート膜が形成されるとともに内表面に防曇塗装膜が形成された2色成形レンズにおいて、
上記1次成形品は、上記2色成形レンズの外表面に沿って上記レンズ本体部から上記レンズ周壁部へ回り込むように形成されており、
上記2次成形品は、上記2色成形レンズの内表面に沿って上記レンズ周壁部から上記レンズ本体部へ回り込むように形成されており、
上記2色成形レンズの内表面側における上記1次成形品と上記2次成形品との接合面が、上記レンズ本体部に位置しており、
上記1次成形品において該1次成形品の内表面と上記接合面との角部に形成されるコーナーRが、R0.2mm以下の値に設定されている、ことを特徴とするものである。
上記「2色成形レンズ」は、1次成形品が2色成形レンズの外表面に沿ってレンズ本体部からレンズ周壁部へ回り込むように形成されるとともに2次成形品が2色成形レンズの内表面に沿ってレンズ周壁部からレンズ本体部へ回り込むように形成されていれば、その具体的な形状は特に限定されるものではない。
上記「レンズ周壁部」は、レンズ本体部の周縁部の全周にわたって形成されていてもよいし、その一部に形成されていてもよい。
本願発明に係る2色成形レンズは、その内表面に沿って2次成形品がレンズ周壁部からレンズ本体部へ回り込むように形成されており、その内表面側における1次成形品と2次成形品との接合面がレンズ本体部に位置しているので、1次成形品にはその内表面と上記接合面との角部にコーナーRが形成されることとなるが、このコーナーRはR0.2mm以下の値に設定されているので、1次成形品の角部に形成される溝状の隙間を極めて小さいものとすることができる。
したがって、本願発明に係る2色成形レンズは外表面にハードコート膜が形成されるとともに内表面に防曇塗装膜が形成された構成となっているが、これらの成膜作業を作業効率の良いハイブリッド型成膜工程によって行うようにした場合であっても、1次成形品の角部に形成される溝状の隙間に溜まる防曇塗料の量を最小限に抑えることができる。
このため、1次成形品の角部に形成される溝状の隙間に溜まった防曇塗料が1次成形品の内部に含浸してしまうのを効果的に抑制することができ、これにより1次成形品の角部周辺にクラックが発生してしまうのを効果的に抑制することができる。そしてこれにより2色成形レンズに外観不良が発生してしまうのを効果的に抑制することができる。
このように本願発明によれば、外表面にハードコート膜が形成されるとともに内表面に防曇塗装膜が形成された2色成形レンズにおいて、その製造工程での作業効率を向上させるようにした上で、外観不良の発生を効果的に抑制することができる。
その際、1次成形品の角部のコーナーRをR0.15mm以下の値(例えばR0.1mm程度の値)に設定するようにすれば、1次成形品の角部に形成される溝状の隙間をさらに小さくして、クラックの発生をより効果的に抑制することができ、これにより2色成形レンズの外観不良の発生をより効果的に抑制することができる。
上記構成において、2色成形レンズの内表面側における1次成形品と2次成形品との接合面が、レンズ本体部の周縁部近傍に位置している構成とすれば、レンズ本体部の大半を透明領域として有効に利用することができる。
このようにした場合において、上記接合面の位置が、2色成形レンズの内表面側におけるレンズ本体部とレンズ周壁部との接続位置から0.5mm以上離れた位置に設定された構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
すなわち、レンズ本体部の周縁部近傍に位置する接合面が、レンズ本体部とレンズ周壁部との接続位置に近づき過ぎてしまうと、この接続位置周辺に溜まった防曇塗料が1次成形品の角部まで拡がって溝状の隙間を分厚く覆ってしまい、これにより1次成形品の角部周辺にクラックが発生しやすくなる。
これに対し、上記接合面の位置を、2色成形レンズの内表面側におけるレンズ本体部とレンズ周壁部との接続位置から0.5mm以上離れた位置に設定することにより、その接続位置周辺に溜まった防曇塗料が1次成形品の角部までは拡がりにくくすることができる。そしてこれにより、1次成形品の角部に形成される溝状の隙間が防曇塗料で分厚く覆われてしまうのを効果的に抑制して、1次成形品の角部周辺にクラックが発生してしまうのを効果的に抑制することができる。
その際、上記接合面の位置を、2色成形レンズの内表面側におけるレンズ本体部とレンズ周壁部との接続位置から0.7mm以上離れた位置(例えば1mm程度離れた位置)に設定するようにすれば、その接続位置周辺に溜まった防曇塗料が1次成形品の角部まで拡がってしまうのをより効果的に抑制することができる。
上記構成において、上記接合面の位置において1次成形品の内表面と2次成形品の内表面とが面一となるように形成された構成とすれば、上記接合面の両側に位置する1次成形品の内表面と2次成形品の内表面との間に段差が生じないようにすることができるので、2色成形レンズの内表面側における上記接合面の周辺部分に防曇塗料が溜まらないようにすることができ、これにより上記段差の発生に起因するクラックの発生を未然に防止することができる。
本願発明の一実施形態に係る2色成形レンズを示す正面図 図1のII−II線断面図 図2のIII 部詳細図 (a)は図3のIV部詳細図、(b)は上記2色成形レンズをハイブリッド型成膜工程の途中の段階で示す(a)と同様の図 (a)は従来例を示す図4(b)と同様の図、(b)は比較例を示す図4(b)と同様の図 (a1)〜(a3)は上記2色成形レンズの製造工程を示す図、(b1)〜(b4)は従来の製造工程を(a1)〜(a3)と対比して示す図
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
図1は、本願発明の一実施形態に係る2色成形レンズ10を示す正面図であり、図2は、図1のII−II線断面図である。
これらの図において、Xで示す方向が2色成形レンズ10としての「前方」であり、Yで示す方向が「前方」と直交する「左方向」であり、Zで示す方向が「上方向」である。これら以外の図においても同様である。
図1に示すように、本実施形態に係る2色成形レンズ10は、車両の右前端部に配置されるヘッドランプの透光カバーであって、透明樹脂製(例えば無色透明のPC樹脂製等)の1次成形品10Pと不透明樹脂製(例えば黒色のPC樹脂製やABS樹脂製等)の2次成形品10Sとによって構成されている。
この2色成形レンズ10は、灯具正面視において横長略矩形状に形成されたレンズ本体部12と、このレンズ本体部12の外周縁から2色成形レンズ10の内表面10b側(すなわち後方側)へ向けて延びるレンズ周壁部14と、このレンズ周壁部14の後端位置から外周側へ向けて延びる外周フランジ部16とを備えた構成となっている。そして、この2色成形レンズ10は、車両に装着されたとき、そのレンズ本体部12が車体の表面形状に沿って延びる意匠面を構成するようになっている。
図2に示すように、1次成形品10Pは、2色成形レンズの外表面10aに沿ってレンズ本体部12からレンズ周壁部14へ回り込むように形成されており、一方、2次成形品10Sは、2色成形レンズの内表面10bに沿ってレンズ周壁部14からレンズ本体部12へ回り込むように形成されている。
2色成形レンズ10の外表面10a側における1次成形品10Pと2次成形品10Sとの接合面10a1は、レンズ周壁部14におけるレンズ本体部12と外周フランジ部16との略中央に位置している。一方、2色成形レンズ10の内表面10b側における1次成形品10Pと2次成形品10Sとの接合面10b1は、レンズ本体部12の周縁部近傍に位置している。
本実施形態に係る2色成形レンズ10は、その外表面10aにハードコート膜22が形成されるとともに、その内表面10bに防曇塗装膜24が形成された構成となっている。その際、ハードコート膜22は1次成形品10Pの全領域を覆うように形成されており、防曇塗装膜24も1次成形品10Pの全領域を覆うように形成されている。
2色成形レンズ10の詳細構造について説明する前に、その製造工程について説明する。
図6(a1)〜(a3)は、成形完了後の2色成形レンズ10に対して成膜作業を行う工程としてのハイブリッド型成膜工程を示す図である。
このハイブリッド型成膜工程においては、図6(a1)に示す第1工程で、2色成形レンズ10の外表面10aにハードコート膜22を形成した後、その内表面10bに防曇塗装膜24を形成し、次に、図6(a2)に示す第2工程で、ハードコート膜22を紫外線照射によって硬化させ、最後に、図6(a3)に示す第3工程で、防曇塗装膜24を熱によって硬化させるようになっている。
図6(a1)に示す第1工程では、2色成形レンズ10をターンテーブル(図示せず)に設置された治具(図示せず)に載置した状態で、ハードコート膜22を形成した後、ターンテーブルを180°回転させ、この状態で防曇塗装膜24を形成するようになっている。
ハードコート膜22の形成は、2色成形レンズ10の外表面10aに沿ってスプレーガンのノズル102を移動させながら、このノズル102からハードコート塗料P1を外表面10aに吹き付けることにより行うようになっている。
その際、ハードコート塗料P1としては、例えば、アクリル系モノマー、紫外線吸収剤、光安定剤、重合開始剤、溶剤等からなるアクリル系ハードコート塗料等が採用可能である。
また、防曇塗装膜24の形成は、2色成形レンズ10の内表面10bに沿ってスプレーガンのノズル104を移動させながら、このノズル104から防曇塗料P2を内表面10bに吹き付けることにより行うようになっている。
その際、防曇塗料P2としては、例えば、アクリル樹脂、界面活性剤、硬化剤(触媒)等からなるアクリル系防曇塗料等が採用可能である。
図6(a2)に示す第2工程では、紫外線照射装置106から2色成形レンズ10の外表面10aに紫外線を照射することにより、外表面10aに塗布されたハードコート膜22を硬化させるようになっている。なお、この紫外線照射に先立ち、2色成形レンズ10を赤外線照射等によって加熱するようにしてもよい。
図6(a3)に示す第3工程では、2色成形レンズ10を加熱炉108に入れてその内表面10bに120℃程度の温風で熱することにより、内表面10bに塗布された防曇塗装膜24を硬化させるようになっている。
第2および第3工程は、2色成形レンズ10をローラ搬送路(図示せず)で搬送することにより連続的に行われるようになっている。
このハイブリッド型成膜工程においては、成膜後の検査要員のほかに、第1工程と第2工程との間に2色成形レンズ10をターンテーブルからローラ搬送路に移し替える作業を行うための作業員2が1人配置されるようになっている。
一方、図6(b1)〜(b4)は、成形完了後の2色成形レンズ10に対して成膜作業を行う工程として従来より行われている独立型成膜工程を示す図である。
まず、図6(b1)に示す第1工程で、2色成形レンズ10の外表面10aに沿ってスプレーガンのノズル102を移動させながら、このノズル102からハードコート塗料P1を外表面10aに吹き付けることにより、外表面10aにハードコート膜22を形成するようになっている。
次に、図6(b2)に示す第2工程で、紫外線照射装置106から2色成形レンズ10の外表面10aに紫外線を照射することにより、外表面10aに塗布されたハードコート膜22を硬化させるようになっている。
次に、図6(b3)に示す第3工程で、2色成形レンズ10の内表面10bに沿ってスプレーガンのノズル104を移動させながら、このノズル104から防曇塗料P2を内表面10bに吹き付けることにより、内表面10bに防曇塗装膜24の形成するようになっている。
最後に、図6(b4)に示す第4工程で、2色成形レンズ10を加熱炉108に入れてその内表面10bに120℃程度の温風で熱することにより、内表面10bに塗布された防曇塗装膜24を硬化させるようになっている。
この独立型成膜工程においては、成膜後の検査要員のほかに、第1工程と第2工程との間に2色成形レンズ10をハードコート用ブースから紫外線照射用ブースに移し替える作業を行うための作業員2が配置され、また、第3工程と第4工程との間に2色成形レンズ10を防曇塗装用ブースから加熱炉108に移し替える作業を行うための作業員2が配置されるようになっている。さらに必要に応じて、第2工程と第3工程との間にも作業員2が配置されるようになっている。
この独立型成膜工程をハイブリッド型成膜工程に切り替えることにより、作業員2を少なくとも1名削減することが可能となる。
次に、2色成形レンズ10の詳細構造について説明する。
図3は、図2のIII 部詳細図であり、図4(a)は、図3のIV部詳細図である。
図3に示すように、1次成形品10Pは、接合面10b1に沿った環状領域が、その内周側の一般領域に対して内表面10b側に段上がりになった厚肉部10Paとして形成されている。
また、2次成形品10Sにおいてレンズ本体部12側に回り込んでいる本体側回込み部分10Saは、その内表面10Sa1が1次成形品10Pの厚肉部10Paの内表面10Pa1と面一になるように形成されている。
図4(a)に示すように、接合面10b1の位置は、2色成形レンズ10の内表面10b側におけるレンズ本体部12とレンズ周壁部14との接続位置10cから距離Lだけ離れた位置に設定されている。この距離Lは0.5mm以上の値(具体的には1mm程度の値)に設定されている。
2次成形品10Sに先立って成形される1次成形品10Pは、その内表面10Pa1と接合面10b1との角部10PbにコーナーRが形成された構成となっている。
本実施形態においては、この角部10Pbに形成されるコーナーRが、R0.2mm以下の値(具体的にはR0.1mm程度の値)に設定されている。このような小さいコーナーRは、1次成形品10Pを成形するための金型を加工する際に先端部の尖ったエンドミルを用いること等により形成することが可能である。
1次成形品10Pの角部10PbにコーナーRが形成されてしまうことによって、2色成形レンズ10の内表面10bには、この角部10Pbに沿って略楔形の断面形状を有する溝状の隙間Gが形成されてしまうこととなるが、コーナーRはR0.2mm以下の値に設定されているので、溝状の隙間Gは極浅い隙間として形成されることとなる。
図4(b)は、2色成形レンズ10をハイブリッド型成膜工程の途中の段階で示す、図4(a)と同様の図である。
すなわち、図4(b)においては、ハイブリッド型成膜工程の第1工程(図6(a1)参照)で内表面10bに防曇塗装膜24が形成された後、その第3工程(図6(a3)参照)で防曇塗装膜24の硬化が行われる前の段階にある2色成形レンズ10を示している。
この段階では、2色成形レンズ10の内表面10bに形成された防曇塗装膜24は、まだ流動性を有する防曇塗料P2の状態にある。
この防曇塗料P2は、2次成形品10Sの本体側回込み部分10Saの内表面10Sa1および1次成形品10Pの厚肉部10Paの内表面10Pa1では、数μm程度の膜厚で略均一に塗布された状態にあるが、レンズ本体部12とレンズ周壁部14との接続位置10c周辺には比較的大きな塗料溜りが形成されてしまい、また、溝状の隙間Gに入り込んだ防曇塗料P2も僅かながら塗料溜りを形成している。
図5(a)は、従来の2色成形レンズ110を、防曇塗装膜24の形成後その硬化が行われる前の段階で示す、図4(b)と同様の図である。
この2色成形レンズ110においては、1次成形品110Pの内表面110Pa1とその2次成形品110Sに対する接合面110b1との角部110Pbに形成されるコーナーRがR0.3mm程度の値に設定されている。
このため、2色成形レンズ110の内表面110bには、1次成形品110Pの角部110Pbに沿って比較的大きな溝状の隙間Gが形成されてしまう。そして、この溝状の隙間Gに入り込んだ防曇塗料P2が比較的大きな塗料溜りを形成している。
この2色成形レンズ110においては、防曇塗装膜24の硬化が行われるまでの間に、溝状の隙間Gに溜まった防曇塗料P2が1次成形品110Pの内部に含浸してしまい、これにより1次成形品110Pの角部110Pb周辺にクラックCが発生しやすくなる。
特に、2次成形品110Sを成形する際、金型内に配置された状態にある1次成形品110Pは金型内に射出された溶融樹脂によって押圧力Fを受けるので、成形完了後の2色成形レンズ110には1次成形品110Pの角部110Pb周辺に残留応力が生じてしまい、このためクラックCが一層発生しやすくなる。
そして、このようにして1次成形品110Pの角部110Pb周辺にクラックCが発生すると、このクラックCが透明なレンズ本体部112を透して見えてしまうので、2色成形レンズ110に外観不良が発生してしまう。
これに対し、図4(b)に示すように、本実施形態に係る2色成形レンズ10においては溝状の隙間Gが極めて小さいので、この溝状の隙間Gに入り込む防曇塗料P2の量は極僅かであり、この防曇塗料P2が1次成形品10Pの内部に含浸してしまうことはほとんどない。したがって、1次成形品10Pが押圧力Fを受けたとしても、その角部10Pb周辺にクラックが発生してしまうことはない。
図5(b)は、本実施形態の比較例としての2色成形レンズ210を、防曇塗装膜24の形成後その硬化が行われる前の段階で示す、図4(b)と同様の図である。
この2色成形レンズ210は、その内表面210b側におけるレンズ本体部212とレンズ周壁部214との接続位置210cから1次成形品210Pの内表面210Pa1とその2次成形品210Sとの接合面210b1までの距離Lが、0.3mm程度の値に設定されている。
一方、この2色成形レンズ210は、1次成形品210Pの内表面210Pa1と接合面210b1との角部210Pbに形成されるコーナーRに関しては、本実施形態の場合と同様、R0.1mm程度の値に設定されている。
この2色成形レンズ210においては、接続位置210cから接合面210b1までの距離Lが短いので、接続位置210c周辺に塗料溜りとなった防曇塗料P2が1次成形品210Pの角部210Pbまで拡がって溝状の隙間Gを分厚く覆ってしまうこととなる。そして、この溝状の隙間Gを厚く覆った防曇塗料P2が1次成形品210Pの内部に含浸することにより、1次成形品210Pの角部210Pb周辺にクラックCが多少発生しやすくなる。
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態に係る2色成形レンズ10は、その内表面10bに沿って2次成形品10Sがレンズ周壁部14からレンズ本体部12へ回り込むように形成されており、その内表面10b側における1次成形品10Pと2次成形品10Sとの接合面10b1がレンズ本体部12に位置しているので、1次成形品10Pにはその内表面10Pa1と接合面10b1との角部10PbにコーナーRが形成されることとなるが、このコーナーRはR0.2mm以下の値に設定されているので、1次成形品10Pの角部10Pbに形成される溝状の隙間Gを極めて小さいものとすることができる。
したがって、本実施形態に係る2色成形レンズ10は、その外表面10aにハードコート膜22が形成されるとともにその内表面10bに防曇塗装膜24が形成された構成となっているが、これらの成膜作業を作業効率の良いハイブリッド型成膜工程によって行うようにした場合であっても、1次成形品10Pの角部10Pbに形成される溝状の隙間Gに溜まる防曇塗料P2の量を最小限に抑えることができる。
このため、1次成形品10Pの角部10Pbに形成される溝状の隙間Gに溜まった防曇塗料P2が1次成形品10Pの内部に含浸してしまうのを効果的に抑制することができ、これにより1次成形品10Pの角部10Pb周辺にクラックが発生してしまうのを効果的に抑制することができる。そしてこれにより2色成形レンズ10に外観不良が発生してしまうのを効果的に抑制することができる。
このように本実施形態によれば、外表面10aにハードコート膜22が形成されるとともに内表面10bに防曇塗装膜24が形成された2色成形レンズ10において、その製造工程での作業効率を向上させるようにした上で、外観不良の発生を効果的に抑制することができる。
その際、本実施形態においては、1次成形品10Pの角部10PbのコーナーRがR0.15mm以下の値(具体的にはR0.1mm程度の値)に設定されているので、1次成形品10Pの角部10Pbに形成される溝状の隙間Gを十分小さくして、クラックの発生をより効果的に抑制することができ、これにより2色成形レンズ10の外観不良の発生をより効果的に抑制することができる。
また本実施形態においては、2色成形レンズ10の内表面10b側における1次成形品10Pと2次成形品10Sとの接合面10b1が、レンズ本体部12の周縁部近傍に位置しているので、レンズ本体部12の大半を透明領域として有効に利用することができる。
その際、本実施形態においては、接合面10b1の位置が、2色成形レンズ10の内表面10b側におけるレンズ本体部12とレンズ周壁部14との接続位置10cから0.5mm以上離れた位置に設定されているので、次のような作用効果を得ることができる。
すなわち、レンズ本体部12の周縁部近傍に位置する接合面10b1が、レンズ本体部12とレンズ周壁部14との接続位置10cに近づき過ぎてしまうと、この接続位置10c周辺に溜まった防曇塗料P2が1次成形品10Pの角部10Pbまで拡がって溝状の隙間Gを分厚く覆ってしまい、これにより1次成形品10Pの角部10Pb周辺にクラックが発生しやすくなる。
これに対し、本実施形態のように、接合面10b1の位置を接続位置10cから0.5mm以上離れた位置に設定することにより、接続位置10c周辺に溜まった防曇塗料P2が1次成形品10Pの角部10Pbまでは拡がりにくくすることができる。そしてこれにより、1次成形品10Pの角部10Pbに形成される溝状の隙間Gが防曇塗料P2で分厚く覆われてしまうのを効果的に抑制して、1次成形品10Pの角部10Pb周辺にクラックが発生してしまうのを効果的に抑制することができる。
その際、本実施形態においては、接合面10b1の位置が接続位置10cから0.7mm以上離れた位置(具体的には1mm程度離れた位置)に設定されているので、接続位置10c周辺に溜まった防曇塗料P2が1次成形品10Pの角部10Pbまで拡がってしまうのをより効果的に抑制することができる。
さらに本実施形態においては、接合面10b1の位置において1次成形品10Pの内表面10Pa1と2次成形品10Sの内表面10Sa1とが面一となるように形成されているので、接合面10b1の両側に位置する1次成形品10Pの内表面10Pa1と2次成形品10Sの内表面10Sa1との間に段差が生じないようにすることができる。したがって、2色成形レンズ10の内表面10b側における接合面10b1の周辺部分に防曇塗料P2が溜まらないようにすることができ、これにより上記段差の発生に起因するクラックの発生を未然に防止することができる。
上記実施形態においては、2色成形レンズ10が車両用ヘッドランプの透光カバーであるものとして説明したが、これ以外の用途に用いられる場合においても上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
なお、上記実施形態において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
また、本願発明は、上記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。
2 作業員
10 2色成形レンズ
10a 外表面
10a1、10b1 接合面
10b、10Pa1、10Sa1 内表面
10c 接続位置
10P 1次成形品
10Pa 厚肉部
10Pb 角部
10S 2次成形品
10Sa 本体側回込み部分
12 レンズ本体部
14 レンズ周壁部
16 外周フランジ部
22 ハードコート膜
24 防曇塗装膜
102、104 ノズル
106 紫外線照射装置
108 加熱炉
C クラック
F 押圧力
G 溝状の隙間
L 接続位置から接合面までの距離
P1 ハードコート塗料
P2 防曇塗料
R コーナーR

Claims (4)

  1. 透明樹脂製の1次成形品と不透明樹脂製の2次成形品とからなる2色成形レンズであって、レンズ本体部とこのレンズ本体部の周縁部から上記2色成形レンズの内表面側に立ち上がるレンズ周壁部とを備え、外表面にハードコート膜が形成されるとともに内表面に防曇塗装膜が形成された2色成形レンズにおいて、
    上記1次成形品は、上記2色成形レンズの外表面に沿って上記レンズ本体部から上記レンズ周壁部へ回り込むように形成されており、
    上記2次成形品は、上記2色成形レンズの内表面に沿って上記レンズ周壁部から上記レンズ本体部へ回り込むように形成されており、
    上記2色成形レンズの内表面側における上記1次成形品と上記2次成形品との接合面が、上記レンズ本体部に位置しており、
    上記1次成形品において該1次成形品の内表面と上記接合面との角部に形成されるコーナーRが、R0.2mm以下の値に設定されている、ことを特徴とする2色成形レンズ。
  2. 上記接合面が上記レンズ本体部の周縁部近傍に位置している、ことを特徴とする請求項1記載の2色成形レンズ。
  3. 上記接合面の位置が、上記2色成形レンズの内表面側における上記レンズ本体部と上記レンズ周壁部との接続位置から0.5mm以上離れた位置に設定されている、ことを特徴とする請求項2記載の2色成形レンズ。
  4. 上記接合面の位置において上記1次成形品の内表面と上記2次成形品の内表面とが面一となるように形成されている、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の2色成形レンズ。
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