以下、添付図面を参照して、本発明に係る結束具および搾乳ユニットの実施の形態について説明する。
図1に示す搾乳システム1は、真空2系統式の搾乳システムの一例であって、牛舎に常設された搾乳用真空配管2および送乳用真空配管3と、搾乳ユニット10とを備えている。この場合、搾乳用真空配管2および送乳用真空配管3には、搾乳ユニット10を着脱可能な被着脱部4が配設されている。なお、この搾乳システム1は、搾乳用真空配管2や送乳用真空配管3が接続された真空ポンプ(真空圧源)、搾乳システム1の各部を統括的に制御する主制御装置、および送乳用真空配管3が接続されたミルクタンク(ミルクジャー)などを備えて構成されているが、これらの構成については公知のため、図示および説明を省略する。
搾乳用真空配管2は、図示しない低真空圧源に接続されており、後述するように被着脱部4に装着された搾乳ユニット10のミルククロー11(後述するティートカップ11a)に搾乳動作用の真空圧を供給する。送乳用真空配管3は、図示しない高真空圧源およびミルクタンクに接続されており、被着脱部4に装着された搾乳ユニット10のミルククロー11に送乳用の真空圧(ミルク回収用の真空圧)を供給することでミルククロー11からミルクを回収してミルクタンクに送乳する。
搾乳ユニット10は、「搾乳ユニット」の一例であって、ミルククロー11、エアホース12a,12b、ミルクホース13、制御装置14、ロープ15、スイッチ16、信号ケーブル16a、シャットオフバルブ17、エアホース18、着脱部19および複数の結束具20(図1における結束具20a〜20dなど)を備えて構成されている。ミルククロー11は、制御装置14内のパルセータを介して搾乳用真空配管2からの真空圧(脈動圧)が供給されることで搾乳動作する4つのティートカップ11aを備えると共に、各ティートカップ11aからのミルクを一時的に貯留した後にミルクホース13を介して搾乳用真空配管2に送乳可能に構成されている。
エアホース12a,12bは、「搾乳動作用真空圧を供給する第2のホース」の一例であって、ポリ塩化ビニルや塩化ビニル等の弾性樹脂材料で形成されて、一端部がティートカップ11aに接続されると共に、他端部が制御装置14内のパルセータに接続されて着脱部19を介して搾乳用真空配管2に接続される。この場合、本例の搾乳ユニット10では、図3に示すように、一例として、エアホース12a,12bの2本が連結部12cを介して連結された2連ホースで「第2のホース」が構成されている。
ミルクホース13は、「ミルクを回収する第1のホース」の一例であって、ポリ塩化ビニルや塩化ビニル等の弾性樹脂材料で形成されて、一端部がミルククロー11に接続されると共に、他端部が着脱部19を介して送乳用真空配管3に接続される。この場合、図1に示すように、本例の搾乳ユニット10では、ミルクホース13における長手方向の中間部にシャットオフバルブ17が取り付けられている。なお、シャットオフバルブ17と同様の機能を有する開閉弁がミルククロー11内に配設されている場合には、ミルククロー11と制御装置14(着脱部19)との間のミルクホース13にシャットオフバルブ17のような弁体が配設されずに「搾乳ユニット」が構成される(図示せず)。
制御装置14は、上記のパルセータ、および一端部がミルククロー11に固定されたロープ15を巻き上げることでミルククロー11を吊下部14aまで待避させる巻上装置(いずれも図示せず)を備えている。この場合、ロープ15は「ミルククローを釣支可能な線状体」の一例であって、一端部が制御装置14内において巻上装置に固定され、他端部が搾乳ユニット10のミルククロー11に固定されている。また、ロープ15には、制御装置14の吊下部14aからミルククロー11を吊下可能に吊下部14aに係合させられる係合部材15a(図7参照)が取り付けられている。この係合部材15aは、吊下部14aに係合させられた状態において制御装置14(巻上装置)の下方に吊り下げられたミルククロー11が接地しないように、ロープ15におけるミルククロー11寄りの位置に取り付けられている。
スイッチ16は、搾乳ユニット10による搾乳処理の開始や終了を制御装置14に報知するための遠隔操作用の操作スイッチであって、ミルククロー11寄りの位置に配設されてエアホース12a,12bと一体化されている。信号ケーブル16aは、「電気ケーブル」の一例であって、一端部がスイッチ16に接続されると共に、他端部が制御装置14に接続されている。
シャットオフバルブ17は、「第1ホースで構成されるミルク回収ラインを開閉する開閉弁」の一例であって、前述したように、本例の搾乳ユニット10では、ミルクホース13における長手方向の中間部に配設されている。エアホース18は、「開閉用真空圧を供給する第3のホース」の一例であって、ポリ塩化ビニルや塩化ビニル等の弾性樹脂材料で形成されて、制御装置14を介して搾乳用真空配管2からの真空圧をシャットオフバルブ17に供給することでミルクホース13(ミルクラインの一部)を閉塞させる。この場合、本例の搾乳ユニット10では、一例として、エアホース12a,12bとエアホース18とが同径のホース(内径および外径が等しいホース)で構成されている。
着脱部19は、エアホース12a,12b、ミルクホース13、信号ケーブル16aおよびエアホース18を被着脱部4に対して取外し可能に装着するコネクタ(図示せず)を備えて構成されている。
結束具20は、「結束具」の一例であって、図2に示すように、ホース嵌入部21,22a,22b,23およびケーブル嵌入部24がポリアセタール等の弾性樹脂材料で一体的に形成され、エアホース12a,12b,18、ミルクホース13および信号ケーブル16a等を束ねて一体化可能に構成されている。なお、図1では、結束具20の構成に関する説明についての理解を容易とするために、配設されている位置毎に符号を異ならせて「20a」〜「20d」としているが、これらは、同一の結束具20で構成されている。
ホース嵌入部21は、「第1のホースを嵌入可能な第1のホース嵌入部」の一例であって、図4に示すように、その内径がミルクホース13の外径よりも僅かに小径の正面視C字状に形成されて、ミルクホース13を嵌入可能(着脱可能)に構成されている。また、本例の結束具20では、ホース嵌入部21に対するミルクホース13の長手方向に沿った相対的な位置ずれを防止するための位置ずれ防止用リブ21a(ホースの周方向に沿ってホースの外周面に線的に接するリブ状に形成された「突起」の一例)がホース嵌入部21の内面に形成されている(「第1のホース嵌入部および第2のホース嵌入部の少なくとも一方の内面」が「第1のホース嵌入部の内面」である構成の例)。
ホース嵌入部22aは、「第2のホースを嵌入可能な第2のホース嵌入部」の一例であって、その内径がエアホース12aの外径よりも僅かに小径の正面視C字状に形成されてエアホース12aを嵌入可能(着脱可能)に構成されている。また、ホース嵌入部22bは、「第2のホースを嵌入可能な第2のホース嵌入部」の他の一例であって、その内径がエアホース12bの外径よりも僅かに小径の正面視C字状に形成されてエアホース12bを嵌入可能(着脱可能)に構成されている。
この場合、本例の結束具20では、ホース嵌入部22aの開口部(エアホース12aを嵌入/取り外しするための切欠き部)と、ホース嵌入部22bの開口部(エアホース12bを嵌入/取り外しするための切欠き部)とが対向するようにホース嵌入部22a,22bが設けられている。また、本例の結束具20では、図3に示すように、ホース嵌入部22aに嵌入されたエアホース12aとホース嵌入部22bに嵌入されたエアホース12bとの間に隙間が生じるようにホース嵌入部22a,22bが僅かに離間して配設されると共に、両ホース嵌入部22a,22bを隔てる凸状部の突端22cが平坦に形成されている。
ホース嵌入部23は、その内径がエアホース18の外径よりも僅かに小径の正面視C字状に形成されてエアホース18を嵌入可能(着脱可能)に構成されている。また、ホース嵌入部23は、「線状体を離脱可能に保持する線状体保持部」の一例であって(「線状体保持部が第3のホースを嵌入可能に構成されている」との構成の例)、図5に示すように、エアホース18が嵌入されていない状態においてロープ15を引っ掛けて保持しておくことができるように構成されている。
ケーブル嵌入部24は、その内径が信号ケーブル16aの外径よりも僅かに小径の正面視C字状に形成されて信号ケーブル16aを嵌入可能(着脱可能)に構成されている。また、ケーブル嵌入部24は、「線状体を離脱可能に保持する線状体保持部」の他の一例であって(「線状体保持部が電気ケーブルを嵌入可能に構成されている」との構成の例)、図6に示すように、信号ケーブル16aが嵌入されていない状態においてロープ15を引っ掛けて保持しておくことができるように構成されている。
次に、搾乳システム1の使用方法について、添付図面を参照して説明する。
搾乳システム1の新設時や、使用済の搾乳ユニット10を新しい搾乳ユニット10に交換する際には、搾乳ユニット10を組み立てる。具体的には、まず、所望の長さに切断したエアホース12a,12b、ミルクホース13およびエアホース18を用意すると共に、ミルクホース13の中間部にシャットオフバルブ17を取り付ける。次いで、エアホース12a,12bおよびミルクホース13の一端部をミルククロー11にそれぞれ接続し、かつ他端部を制御装置14にそれぞれ接続すると共に、エアホース18の一端部をシャットオフバルブ17に接続し、かつ他端部を制御装置14に接続する。続いて、信号ケーブル16aの一端部をスイッチ16に接続すると共に、他端部を制御装置14に接続する。
次いで、エアホース12a,12b、ミルクホース13、信号ケーブル16aおよびエアホース18を、30cm〜100cm程度の間隔で複数の結束具20によって結束して一体化させる。
まず、制御装置14とシャットオフバルブ17との間については、図1,3に示す結束具20aのように、エアホース12a,12b、ミルクホース13、信号ケーブル16aおよびエアホース18のすべてを結束具20によって結束する。具体的には、結束具20のホース嵌入部21における切欠き部位を拡げるようにしてミルクホース13をホース嵌入部21に嵌入すると共に、ホース嵌入部22aにおける切欠き部位およびホース嵌入部22bにおける切欠き部位をそれそれ拡げるようにしてエアホース12a,12bをホース嵌入部22a,22bに嵌入する。また、ホース嵌入部23における切欠き部位を拡げるようにしてエアホース18をホース嵌入部23に嵌入すると共に、ケーブル嵌入部24における切欠き部位を拡げるようにして信号ケーブル16aをケーブル嵌入部24に嵌入する。
なお、ホース嵌入部21,22a,22b,23およびケーブル嵌入部24に対するミルクホース13、エアホース12a,12b,18および信号ケーブル16aの嵌入の順序は、上記の記載の順に限定されず、他の部位の結束具20による結束に関する後述の作業時を含めて任意の順序で嵌入することができる。この場合、本例の搾乳ユニット10では、結束具20が弾性樹脂材料によって弾性変形可能に構成されているため、例えば寒冷期などでミルクホース13、エアホース12a,12b,18および信号ケーブル16aなどが硬い状態(弾性変形し難い状態)であったとしても、これらを確実かつ容易に嵌入することが可能となっている。
また、本例の結束具20では、前述したようにホース嵌入部22a,22bの間の凸状部の突端22cが平坦に形成されているため、図3に実線で示す状態および破線で示す状態のいずれの状態でエアホース12a,12bをホース嵌入部22a,22bに嵌入したとしても、連結部12cが結束具20に接することなくこれを嵌入することが可能となっている。これにより、エアホース12a,12b、ミルクホース13、信号ケーブル16aおよびエアホース18が結束具20によって結束されて一体化された状態となる。
また、シャットオフバルブ17とスイッチ16との間については、エアホース18が存在しないため、図1,5に示す結束具20bのように、エアホース12a,12b、ミルクホース13および信号ケーブル16aを結束具20によって結束する。具体的には、結束具20のホース嵌入部21にミルクホース13を嵌入し、ホース嵌入部22a,22bにエアホース12a,12bを嵌入し、かつケーブル嵌入部24に信号ケーブル16aを嵌入する。これにより、エアホース12a,12b、ミルクホース13および信号ケーブル16aが結束具20によって結束されて一体化された状態となる。
さらに、スイッチ16とミルククロー11との間については、信号ケーブル16aおよびエアホース18が存在しないため、図1,6に示す結束具20cのように、エアホース12a,12bおよびミルクホース13を結束具20によって結束する。具体的には、結束具20のホース嵌入部21にミルクホース13を嵌入し、かつホース嵌入部22a,22bにエアホース12a,12bを嵌入する。これにより、エアホース12a,12bおよびミルクホース13が結束具20によって結束されて一体化された状態となる。なお、図1,7に示す結束具20dは、後述するように、「結束具」として使用するためではなく、ロープ15を引っ掛けたり係合部材15aを保持させたりするために、必要に応じてミルクホース13に取り付ける。
以上により、搾乳ユニット10の組立てが完了する。次いで、搾乳ユニット10の着脱部19を被着脱部4に装着すると共に、ロープ15の一端部をミルククロー11に固定する。これにより、搾乳ユニット10を使用した搾乳を行うことが可能な状態となる。
この搾乳ユニット10(搾乳システム1)では、ホース嵌入部21の内面に位置ずれ防止用リブ21aが形成された結束具20によってエアホース12a,12bおよびミルクホース13などが結束されている。したがって、図4に示すように、ホース嵌入部21に嵌入したミルクホース13に対して位置ずれ防止用リブ21aの先端が強く押しつけられた状態(ミルクホース13に対して位置ずれ防止用リブ21aの先端が押し込まれた状態)となる結果、ミルクホース13に対して結束具20が移動し難くなっている。この結果、エアホース12a,12bおよびミルクホース13などを曲げ伸ばししたときに、隣り合う結束具20,20の間が過剰に拡がったり過剰に狭まったりする事態が好適に回避される。
搾乳作業時には、搾乳ユニット10の取り回し(着脱部19に対するミルククロー11の位置の変化)に伴い、エアホース12a,12b,18およびミルクホース13や信号ケーブル16aに対して捩れを生じさせるような力が加わることがある。この場合、結束具20によってこれらを結束している本例の搾乳ユニット10では、ミルクホース13の外周面に対して周方向に沿って線的に接するように形成した位置ずれ防止用リブ21aによってミルクホース13に対する結束具20(ホース嵌入部21)の相対的な移動を規制する構成が採用されている。
したがって、この位置ずれ防止用リブ21aの存在によってミルクホース13に長手方向への結束具20の相対的な移動を上記のように好適に規制しつつ、ミルクホース13の周方向に沿った結束具20の相対的な移動(ミルクホース13に対する結束具20の相対的な回動)が可能な状態となっている。このため、ミルクホース13を捩るような力が加わったとしても、結束具20に対するミルクホース13の回動が規制されてミルクホース13に潰れが生じる事態を招くことなく、ミルクホース13を結束具20によって保持した状態を維持することができる。
また、搾乳ユニット10の取り回しに伴ってエアホース12a,12bに対して捩れを生じさせるような力が加わったときには、ホース嵌入部22aに嵌入されているエアホース12aがホース嵌入部22bの側に接近するような変形や、ホース嵌入部22bに嵌入されているエアホース12bがホース嵌入部22aの側に接近するような変形が生じることがある。この場合、本例の搾乳ユニット10の結束具20とは異なり、ホース嵌入部22a,22bの間の凸状部の突端を山形(△形状)に形成した場合には、上記のようなエアホース12a,12bの変形が阻害されてエアホース12a,12bに傷付きが生じたり、変形したエアホース12a,12bがホース嵌入部22a,22bの間の凸状部の先端に接して傷付きが生じたりするおそれがある。
これに対して、本例の搾乳ユニット10の結束具20では、前述したように、ホース嵌入部22a,22bの間の凸状部の突端22cが平坦に形成されている。このため、エアホース12a,12bの上記のような変形が許容される結果、エアホース12a,12bに潰れが生じる事態が好適に回避されると共に、エアホース12a,12bに傷付きが生じる事態も好適に回避される。
さらに、この搾乳ユニット10(搾乳システム1)では、ホース嵌入部23やケーブル嵌入部24を「線状体保持部」として使用しロープ15を引っ掛けておくことが可能となっている。この場合、ミルククロー11および制御装置14(巻上装置)に固定されたロープ15の長さが過剰に短い状態では、例えばミルククロー11を搾乳位置(乳牛の腹下)に移動させるためのエアホース12a,12bおよびミルクホース13等を伸ばそうとしたときに、ロープ15が張った状態となってエアホース12a,12bおよびミルクホース13等を十分に伸ばすことができなくなるおそれがある。したがって、ロープ15については、搾乳ユニット10の全長よりも十分に長くする必要がある。
しかしながら、ロープ15を十分な長さとした状態では、搾乳処理中に搾乳ユニット10(エアホース12a,12bやミルクホース13)よりも下方までロープ15が垂れ下がった状態となる。このため、垂れ下がったロープ15が搾乳中の乳牛に踏まれ、ミルククロー11が乳牛から外れてしまったり、制御装置14(巻上装置)にロープ15を介して過剰に大きな力が加わって破損したりするおそれがある。
そこで、本例の搾乳ユニット10(搾乳システム1)では、ミルククロー11とスイッチ16との間の結束具20、およびスイッチ16とシャットオフバルブ17との間の結束具20のいずれかまたは双方にロープ15を保持させておくことで、ロープ15が搾乳ユニット10よりも下方に垂れ下がった状態となるのを回避することが可能となっている。
具体的には、例えばスイッチ16とシャットオフバルブ17との間の結束具20bによってロープ15を保持するときには、図5に示すように、エアホース18が嵌入されていないホース嵌入部23にロープ15を引っ掛ける。これにより、ロープ15が離脱可能に結束具20(ホース嵌入部23)によって保持される結果、ロープ15の大きな垂れ下がりが好適に回避される。
また、ミルククロー11とスイッチ16との間の結束具20cによってロープ15を保持するときには、図6に示すように、信号ケーブル16aが嵌入されていないケーブル嵌入部24、またはエアホース18が嵌入されていないホース嵌入部23にロープ15を引っ掛ける。これにより、ロープ15が離脱可能に結束具20(ケーブル嵌入部24またはホース嵌入部23)によって保持される結果、ロープ15の大きな垂れ下がりが好適に回避される。
さらに、ミルククロー11の近傍においては、図1に示すように、エアホース12a,12bをティートカップ11aに接続し、かつミルクホース13をミルククロー11に接続するために、エアホース12a,12bとミルクホース13とを分離させる必要がある。したがって、同図に示す結束具20dのように、ホース嵌入部21にミルクホース13を嵌入させることでミルクホース13に結束具20を取り付けることにより、図7に示すように、エアホース12a,12bが嵌入されていないホース嵌入部22aまたはホース嵌入部22bにロープ15を引っ掛けることが可能となる。これにより、ロープ15が離脱可能に結束具20(ホース嵌入部22a,22b)によって保持される結果、ロープ15の大きな垂れ下がりが好適に回避される。
また、本例の搾乳システム1では、前述したように、ロープ15におけるミルククロー11寄りの部位に係合部材15aが配設されている。したがって、図1,7に示す結束具20dのようにミルクホース13に結束具20を取り付けてホース嵌入部22a,22bに係合部材15aを嵌め込むことにより、結束具20によって係合部材15aを保持してロープ15の大きな垂れ下がりを回避することもできる。
この場合、結束具20のホース嵌入部23,24を「線状体保持部」として機能させてロープ15を保持させたり、結束具20のホース嵌入部22a,22bによって係合部材15aを保持させた状態では、ミルククロー11を制御装置14における吊下部14aの下方に待避させるために制御装置14の巻上装置がロープ15を巻き上げた際に、ホース嵌入部23,24に引っ掛けられたり、ホース嵌入部22a,22bによって係合部材15aが保持されたりしているロープ15が結束具20から容易に離脱する結果、巻上装置によるロープ15の巻上が妨げられることなく、ミルククロー11が吊下部14aの下方に待避させられる。
一方、例えば搾乳ユニット10を長期間に亘って使用したときには、エアホース12a,12b,18およびミルクホース13や信号ケーブル16aが劣化したり傷付きが生じたりして交換を必要とする状態となることがある。かかる場合には、交換を要するホース、またはケーブルを、前述した組立て作業時の手順とは逆の順序で搾乳ユニット10から取り外し、新しいホース、またはケーブルを取り付ける。この際に、本例の搾乳ユニット10における結束具20が弾性樹脂材料によって形成されて弾性変形可能なため、長期に亘る使用に起因してホースやケーブルが硬化していたとしても、それらを容易に取り外す(ホース嵌入部21,22a,22b,23やケーブル嵌入部24から離脱させる)ことができ、結束具20を再使用することが可能となっている。
また、例えば、交換を要するホースやケーブルと同じホースや同じケーブルの入手が困難となって、外径が僅かに相違するホースやケーブルを使用する必要が生じた場合であっても、結束具20(ホース嵌入部21,22a,22b,23やケーブル嵌入部24)の変形可能範囲内でそれらを保持することができれば、そのようなホースやケーブルを使用して搾乳ユニット10を再生する(劣化したホースやケーブルを新しいホースやケーブルに交換する)ことが可能となっている。
このように、この結束具20では、ミルクホース13の長手方向に沿った結束具20の相対的な位置ずれを防止するための「突起(本例では、位置ずれ防止用リブ21a)」がホース嵌入部21の内面に設けられている。また、この搾乳ユニット10によれば、上記の結束具20と、ミルククロー11と、エアホース12a,12bおよびミルクホース13とを少なくとも備えて構成されている。
したがって、この結束具20および搾乳ユニット10によれば、ホース嵌入部21にミルクホース13を嵌入したときに、ホース嵌入部21の内面に形成されている位置ずれ防止用リブ21aの先端がミルクホース13に対して強く押し付けられた状態となるため、ミルクホース13の長手方向への結束具20(ホース嵌入部21)の相対的な移動を好適に回避することができる。これにより、エアホース12a,12bやミルクホース13を結束している各結束具20に関して、隣り合う結束具20,20の間が過剰に拡がったり過剰に狭まったりする事態を回避できるため、結束されて一体化されているべきエアホース12a,12bおよびミルクホース13などが分離した状態となって突起物等への引っ掛かりを生じさせたり、エアホース12a,12bおよびミルクホース13の曲げ伸ばしが困難な状態となったりすることを回避できるため、搾乳作業を確実かつ容易に実施することができる。
また、この結束具20および搾乳ユニット10によれば、ミルクホース13の周方向に沿ってミルクホース13の外周面に線的に接するリブ状に「突起(位置ずれ防止用リブ21a)」を形成したことにより、ミルクホース13の長手方向への結束具20の相対的な移動を回避しつつ、ミルクホース13の周方向に沿った結束具20の相対的な移動(ミルクホース13に対する結束具20の相対的な回転)を許容することができるため、ミルクホース13に捩れを生じさせるような力が加わったときに、捩れが制限されてミルクホース13に潰れが生じる事態を好適に回避することができる。また、例えば、ミルクホース13等に対して点的に接するピン状の「突起」を形成した構成とは異なり、ミルクホース13等に対して「突起」が過剰に強い力で押し付けられてミルクホース13等に傷つきが生じる事態を回避できると共に、ミルクホース13等に接する部位が広面積の「突起」、すなわち、ミルクホース13等に対して面的に接する「突起」を形成した構成とは異なり、ミルクホース13等に対する単位面積当りの「突起」の押付け力が過剰に小さくなって「結束具」に対してミルクホース13等が容易に移動してしまう事態を回避できる。
さらに、この結束具20および搾乳ユニット10によれば、ミルククロー11を釣支可能なロープ15を離脱可能に保持する「線状体保持部」として機能するホース嵌入部23およびケーブル嵌入部24を設けたことにより、巻上装置によるロープ15の巻上を妨げることなく、非巻上状態においてロープ15が搾乳ユニット10よりも下方に大きく垂れ下がった状態となるのを好適に回避することができる結果、ロープ15が搾乳中の乳牛に踏まれてミルククロー11が乳牛から落下したり、巻上装置に対して過剰に大きな力が加わって破損したりするのを好適に回避することができる。
また、この結束具20および搾乳ユニット10によれば、エアホース18を嵌入可能に「線状体保持部(本例では、ホース嵌入部23)」を構成したことにより、搾乳ユニット10においてエアホース18が存在する部位において、エアホース12a,12bやミルクホース13と共にエアホース18を結束して一体化させた状態とすることができるため、エアホース18がエアホース12a,12bやミルクホース13と分離した状態となって突起物に対する引っ掛かりが生じるのを好適に回避することができる。
さらに、この結束具20および搾乳ユニット10によれば、搾乳ユニット10の信号ケーブル16aを嵌入可能に「線状体保持部(本例では、ケーブル嵌入部24)」を構成したことにより、搾乳ユニット10における信号ケーブル16aが存在する部位において、エアホース12a,12bやミルクホース13と共に信号ケーブル16aを結束して一体化させた状態とすることができるため、信号ケーブル16aがエアホース12a,12bやミルクホース13と分離した状態となって突起物に対する引っ掛かりが生じるのを好適に回避することができる。
なお、「結束具」や「搾乳ユニット」の構成は、上記の結束具20および搾乳ユニット10の構成の例に限定されない。例えば、「突起」に相当する位置ずれ防止用リブ21aが内面に設けられたホース嵌入部21に嵌入される「第1のホース」を、上記の搾乳ユニット10におけるミルクホース13に代えて、図8に示す搾乳ユニット10A(「搾乳ユニット」の他の一例)におけるミルクホース13Aのような「蛇腹ホース」で構成することもできる。この搾乳ユニット10Aにおけるミルクホース13Aは、「第1のホース」の他の一例であって、その内径がミルクホース13の内径と同程度の径で、かつ、その最大外径がミルクホース13の外径と同程度の径となるように形成されている。なお、この搾乳ユニット10Aにおいて前述した搾乳ユニット10の構成要素と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
このような構成の搾乳ユニット10Aによれば、内面に位置ずれ防止用リブ21aが設けられたホース嵌入部21に嵌入されるミルクホース13Aを蛇腹ホースで構成したことにより、ホース嵌入部21にミルクホース13Aを嵌入したときに、ホース嵌入部21の内面に形成されている位置ずれ防止用リブ21aの先端がミルクホース13Aの周面の溝に嵌まり込んだ状態となるため、ミルクホース13Aの長手方向への結束具20(ホース嵌入部21)の相対的な移動を好適に回避することができる。これにより、エアホース12a,12bやミルクホース13Aを結束している各結束具20に関して、隣り合う結束具20,20の間が過剰に拡がったり過剰に狭まったりする事態を回避できるため、結束されて一体化されているべきエアホース12a,12bおよびミルクホース13Aなどが分離した状態となって突起物等への引っ掛かりを生じさせたり、エアホース12a,12bおよびミルクホース13Aの曲げ伸ばしが困難な状態となったりすることを回避できるため、搾乳作業を確実かつ容易に実施することができる。また、「蛇腹ホース」ではない通常の「ストレートホース」のミルクホース13よりも、「蛇腹ホース」であるミルクホース13Aの方が曲げ伸ばしに要する力が小さく、かつ軽量であるため、搾乳ユニット10Aを容易に取り回すことができる。
なお、図示を省略するが、「第2のホース」や「第3のホース」を「蛇腹ホース」で構成することもできる。この場合、「蛇腹ホース」で構成したホースが嵌入される「ホース嵌入部」の内面に「突起」を設けることにより、ホースに対する「結束具」の移動を好適に回避することができる。また、「ホース」の周面の溝に「突起」が嵌まり込んだ状態となることで「ホース」の長手方向への「結束具」の相対的な移動が好適に回避されるものの、「ホース」の周方向に沿った「結束具」の相対的な移動(「ホース」に対する「結束具」の相対的な回動)は許容された状態となるため、「ホース」に捩れを生じさせるような力が加わったときに、捩れが制限されて「ホース」に潰れが生じる事態を好適に回避することができる。
この場合、例えば、前述した搾乳ユニット10,10Aのように、この種の「搾乳ユニット」では、搾乳ユニット10,10Aにおけるミルクホース13のような「第1のホース」が、搾乳ユニット10,10Aにおけるエアホース12a,12bやエアホース18のような「第2のホース」および「第3のホース」よりも大径のホースで構成されている。したがって、この種の「搾乳ユニット」では、必要な剛性を確保するために、「第2のホース」および「第3のホース」よりも「第1のホース」の方が厚肉に形成されており、これに起因して、「第1のホース」が「第2のホース」および「第3のホース」よりも変形し難くなっている。
このため、「第1のホース」、「第2のホース」および「第3のホース」を「結束具」で結束したときに、「第2のホース」および「第3のホース」については、「結束具」によって結束されている部位が小径化するような変形が生じてホースの長手方向への「結束具」の相対的な移動が生じ難くなるものの、「第1のホース」については、「結束具」によって結束されている部位が小径化するような変形が生じ難いことでホースの長手方向への「結束具」の相対的な移動が生じ易い傾向がある。したがって、他の「ホース嵌入部」に「突起」を設けるか否かを問わず、前述した結束具20のホース嵌入部21における位置ずれ防止用リブ21aのように、少なくとも、大径の「第1のホース」が嵌入される「第1のホース嵌入部」に「突起」を設けるのが好ましい。
また、「第1のホース嵌入部」としてのホース嵌入部21に「突起」としての位置ずれ防止用リブ21aを設けた結束具20を例に挙げて説明したが、このような構成に代えて(または、このような構成に加えて)、「第2のホース嵌入部」としてのホース嵌入部22a,22b、「第3のホース嵌入部」としてのホース嵌入部23、および「線状体保持部」としてのケーブル嵌入部24のいずれか、またはすべてに「突起」を設けて「結束具」を構成することもできる(図示せず)。このような構成を採用した「結束具」においても、「突起」を設けた「ホース嵌入部」に嵌入されるホースや「突起」を設けた「線状体保持部」に嵌入される線状体(ケーブル等)に対する「結束具」の相対的な移動を好適に回避することができる。
さらに、「ホースの周方向に沿ってホースの外周面に線的に接するリブ状」の位置ずれ防止用リブ21aを「突起」として設けた結束具20を例に挙げて説明したが、「ホースの外周面に線的に接する」との構成は、結束具20における位置ずれ防止用リブ21aのように「ミルクホース13の外周面に対して直線的に接する」との構成に限定されず、「ホースの外周面に破線状に接する」との構成(複数の「突起(リブ)」が「ホース」の周方向に沿って並んで設けられた構成)を採用することもできる(図示せず)。また、「突起」の形状は「リブ状」に限定されず、「ホースの外周面に点的に接する突起」や、「ホースの外周面に面的に接する突起」を設けることもできる(図示せず)。これらの構成を採用した場合においても、突起の先端が「ホース」に対して強く押し付けられた状態となるため、「ホース」に対する「結束具」の相対的な移動を好適に回避することができる。
また、「第3のホース」としてのエアホース18を嵌入可能なホース嵌入部23や、「電気ケーブル」としての信号ケーブル16aを嵌入可能なケーブル嵌入部24を有する結束具20の構成を例に挙げて説明したが、エアホース18が存在しない「搾乳ユニット」に使用する「結束具」においては、ホース嵌入部23を設けない構成を採用することができ、信号ケーブル16aが存在しない「搾乳ユニット」に使用する「結束具」においては、ケーブル嵌入部24を設けない構成を採用することができる(共に図示せず)。
さらに、エアホース12a,12b、ミルクホース13およびエアホース18以外のホースを有する「搾乳ユニット」に使用する「結束具」においては、そのようなホースを嵌入可能な「ホース嵌入部」を設け、信号ケーブル16a以外の「電気ケーブル」を有する「搾乳ユニット」に使用する「結束具」においては、そのようなケーブルを嵌入可能な「ケーブル嵌入部」を設けて「結束具」を構成することもできる(図示せず)。
また、「電気ケーブル」としての信号ケーブル16aを備えた搾乳ユニット10、およびそのような搾乳ユニット10を他のエアホース12a,12bおよびミルクホース13と共に結束可能な結束具20の例について説明したが、「電気ケーブル」は、信号ケーブル16aのようなスイッチ16の操作信号を伝送するためのケーブルに限定されず、一例として、ミルククロー11の近傍に設けられた照明装置に電力を伝送する「電気ケーブル」や、ミルクの温度、乳牛の温度および牛舎内の室温などを検出する温度センサ等の各種センサからのセンサ信号を伝送する「電気ケーブル」をエアホース12a,12bおよびミルクホース13などと共に「結束具」によって結束することもできる。
さらに、ロープ15を引っ掛けて保持させるホース嵌入部23およびケーブル嵌入部24を「線状体保持部」として備えた結束具20の構成を例に挙げて説明したが、「線状体保持部」の構成はこれに限定されない。例えば、「結束具」および「線状体」の少なくとも一方に磁石を配設し、他方に磁石または金属片などを配設して磁力によって「線状体」を「結束具」に保持させる構成を採用することができる(図示せず)。また、「結束具」および「線状体」に面ファスナをそれぞれ配設して面ファスナの結合力によって「線状体」を「結束具」に保持させる構成を採用することができる(図示せず)。