JP2019091732A - 鉄基軟磁性材料、鉄基軟磁性材料の製造方法及び鉄基軟磁性コア - Google Patents

鉄基軟磁性材料、鉄基軟磁性材料の製造方法及び鉄基軟磁性コア Download PDF

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Abstract

【課題】渦電流損失を十分に低減することができる鉄基軟磁性材料及び当該鉄基軟磁性材料によって構成された鉄基軟磁性コアを提供する。更に、上記のような鉄基軟磁性材料の製造方法を提供する。【解決手段】鉄と、銅と、少なくとも硫黄を含むカルコゲンと、を主成分とする鉄基軟磁性材料において、これらの含有率を特定の範囲に収め、且つチタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、亜鉛、硼素、アルミニウム、ガリウム及び珪素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む物質を更に配合してなる溶湯を急冷する。これにより、鉄を主成分とする母相からなるセルと、セルの境界に存在し銅を含む硫化物を主成分とするセル境界相と、を含むセルウォール構造を達成する。【選択図】図1

Description

本発明は、鉄基軟磁性材料、鉄基軟磁性材料の製造方法及び鉄基軟磁性コアに関する。
鉄基軟磁性材料は、例えばモータ、トランス及びリアクトル等のコアとして広く使用されている。コアに交流磁場を印加すると渦電流が発生する。この渦電流に起因する電気エネルギー損失(渦電流損失)を低減するためには、鉄を主成分とする母相が小さい領域(1つ又は複数の結晶粒によって構成されるセル)に分割されており且つ個々のセルが電気的に絶縁されていることが望ましい。このように個々のセルを電気的に絶縁するためには、高い電気抵抗を有する物質によってセル境界相を形成させることが望ましい。このように個々のセルがセル境界相によって覆われている構造は「セルウォール構造」と称される。
そこで、当該技術分野においては、鉄を主成分とする母相と、モリブデン及びタングステンのうちの少なくともいずれか一方と鉄と硫黄とを含み、母相を構成するセルの境界に沿ってセルを仕切るセル境界相と、を備えた鉄基軟磁性材料が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。これによれば、良好な磁性を保持しつつ、低コスト化を図ると共に、高い電気抵抗を有し且つ渦電流損失が発生し難い鉄基軟磁性材料を提供することができる。しかしながら、このような組成を有する鉄基軟磁性材料においてセルウォール構造を達成するためには、構成材料を熔解させて溶湯とした後に急冷凝固させる際の温度条件等の厳密な制御が必要とされる。また、形成されるセル境界相の電気抵抗を高めることが困難である。
更に、鉄を主成分とする母相からなるセル、並びにバナジウム及びクロムのうちの少なくとも何れか一方と鉄と硫黄とを含むセル境界相を備え、母相が、母相を構成するセルの境界に沿って、セル境界相によって仕切られていることを特徴とする軟磁性材料も提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。これによれば、良好な磁性を保持しつつ、低コスト化を図ると共に、高い電気抵抗を有し且つ渦電流損失が発生し難い軟磁性材料を提供することができる。しかしながら、このような組成を有する鉄基軟磁性材料において形成されるセル境界相の電気抵抗は、渦電流損失を十分に低減するには不十分である。
加えて、インベストメント鋳造において、内面に核生成剤を含む鋳型に固体粒子を分散させた溶湯を注入し、当該鋳型を低融点液体冷却材金属中に迅速に浸漬して溶湯を急冷・凝固させることにより、微細な等軸結晶粒組織を生成させることが提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。これによれば、複雑な幾何学的形状を有する比較的大きい部材の鋳造を可能とすることができる。しかしながら、当該従来技術はインベストメント鋳造に限定され、また鋳型の内面に核生成剤を均一に分布させたり固体粒子を溶湯中に均一に分散させたりすることは現実には困難である。
特開2015−046506号公報 特開2014−049639号公報 特開2013−136097号公報
前述したように、当該技術分野においては、鉄基軟磁性材料において微小なセルを生成させたり高い電気抵抗を有するセル境界相によってセルウォール構造を達成したりすることを目的として、種々の技術が提案されている。しかしながら、渦電流損失を十分に低減することを可能とするセルウォール構造の達成には至っていない。
本発明は、上記課題に対処するためになされたものである。即ち、本発明は、渦電流損失を十分に低減することができる鉄基軟磁性材料及び当該鉄基軟磁性材料の製造方法を提供することを1つの目的とする。更に、本発明は、上記のような鉄基軟磁性材料によって構成された鉄基軟磁性コアを提供することをもう1つの目的とする。
そこで、本発明者は、鋭意研究の結果、鉄(Fe)と、銅(Cu)と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)と、を主成分とする鉄基軟磁性材料において、鉄(Fe)、銅(Cu)及びカルコゲン(Ch)の含有率を特定の範囲に収め、且つ所定量の特定元素(第四元素)を更に配合してなる溶湯を急冷することにより、鉄を主成分とする母相と、当該母相を構成するセルの境界に存在し銅を含む硫化物を主成分とするセル境界相と、を含むセルウォール構造を達成し、渦電流損失を十分に低減することができることを見出した。
本発明に係る鉄基軟磁性材料(以下、「本発明材料」と称される場合がある。)は、鉄を主成分とする母相と、前記母相を構成するセルの境界に存在し銅を含む硫化物を主成分とするセル境界相と、を含む構造を有する鉄基軟磁性材料である。更に、本発明材料において、前記鉄基軟磁性材料に含有される鉄(Fe)と、銅(Cu)と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)と、の合計を100at%とする場合、以下の条件(1)及び(2)が成立する。
(1)鉄(Fe)と、銅(Cu)と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)と、のそれぞれの含有率の組み合わせが、鉄(Fe)、銅(Cu)及びカルコゲン(Ch)の原子濃度の三元組成図において、87at%Fe−12at%Cu−1at%Chを表すA点、91.9at%Fe−7.1at%Cu−1at%Chを表すB点、75at%Fe−13.1at%Cu−11.9at%Chを表すC点、及び75at%Fe−20at%Cu−5at%Chを表すD点によって囲まれる領域である特定領域に対応する組み合わせである。
(2)チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)及び珪素(Si)からなる群より選択される少なくとも1種の元素である第四元素を更に含有している。上記において、前記第四元素として珪素(Si)が含まれない場合は、前記第四元素の含有率が0.1at%以上であり且つ3.0at%未満である。前記第四元素が珪素(Si)のみからなる場合は、前記第四元素の含有率が0.1at%以上であり且つ7.0at%未満である。前記第四元素として珪素(Si)及び珪素(Si)以外の元素が含まれる場合は、珪素を含む前記第四元素の総含有率が0.1at%以上であり且つ7.0at%未満であると共に珪素以外の前記第四元素の含有率は3.0at%未満である。
更に、本発明材料は、例えば、以下に列挙する各工程を含む、本発明に係る鉄基軟磁性材料の製造方法(以下、「本発明方法」と称される場合がある。)によって製造することができる。
第1工程:鉄(Fe)と、銅(Cu)と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)と、のそれぞれの配合率の組み合わせが前記特定領域に対応する組み合わせとなるように、鉄(Fe)と、銅(Cu)と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)、当該カルコゲン(Ch)と鉄(Fe)との化合物及び当該カルコゲン(Ch)と銅(Cu)との化合物からなる群より選択される少なくとも1種の物質である硫黄源と、を秤量する。
第2工程:鉄(Fe)と、銅(Cu)と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)と、の合計を100at%とする場合において、前記第四元素及び前記第四元素の窒化物からなる群より選択される少なくとも1種の物質である第四元素源を秤量する。このとき、前記第四元素として珪素(Si)が含まれない場合は、前記第四元素の含有率が0.1at%以上であり且つ3.0at%未満となるように、第四元素源を秤量する。前記第四元素が珪素(Si)のみからなる場合は、前記第四元素の含有率が0.1at%以上であり且つ7.0at%未満となるように、第四元素源を秤量する。前記第四元素として珪素(Si)及び珪素(Si)以外の元素が含まれる場合は、珪素を含む前記第四元素の総含有率が0.1at%以上であり且つ7.0at%未満であると共に珪素以外の前記第四元素の含有率は3.0at%未満となるように、第四元素源を秤量する。
第3工程:前記第1工程及び前記第2工程において秤量された前記鉄(Fe)と、前記銅(Cu)と、前記硫黄源と、前記第四元素源と、を加熱して熔解させることにより溶湯とする。
第4工程:前記第3工程において得られた溶湯を少なくとも毎秒1℃以上の降温速度にて冷却して前記溶湯を凝固させることにより前記鉄基軟磁性材料を得る。
加えて、本発明に係るコア(以下、「本発明コア」と称される場合がある。)は、本発明材料によって構成される鉄基軟磁性コアである。
本発明によれば、鉄(Fe)と、銅(Cu)と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)と、を主成分とする鉄基軟磁性材料において、鉄を主成分とする母相と、当該母相を構成するセルの境界に存在し銅を含む硫化物を主成分とする(高い電気抵抗を有する)セル境界相と、を含むセルウォール構造を達成することにより、渦電流損失を十分に低減することができる。
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
本発明の第1実施形態に係る鉄基軟磁性材料(第1材料)における鉄(Fe)と、銅(Cu)と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)と、のそれぞれの含有率の組み合わせの範囲を示す三元組成図である。 本発明の第2実施形態に係る鉄基軟磁性材料の製造方法(第2方法)に含まれる各工程を示すためのフローチャートである。 実施例1において製造したサンプル1a乃至1cの研磨断面の顕微鏡写真である。 実施例2において製造したサンプル2a及び2bの研磨断面の顕微鏡写真である。 実施例3において製造したサンプル3a及び3bの研磨断面の顕微鏡写真である。 実施例3において製造したサンプル3a及び3bの研磨断面における各生成相のSEM−EDS分析箇所を示す顕微鏡写真である。 実施例4において製造したサンプル4a及び4bの研磨断面の顕微鏡写真である。
《第1実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第1実施形態に係る鉄基軟磁性材料(以下、「第1材料」と称される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
第1材料は、鉄を主成分とする母相からなるセルと、セルの境界に存在し銅を含む硫化物を主成分とするセル境界相と、を含む構造を有する鉄基軟磁性材料である。即ち、第1材料は、個々のセルがセル境界相によって覆われている「セルウォール構造」を有する。
母相の主成分である「鉄」は必ずしも純鉄に限定されるものではなく、例えば、純鉄、鉄−ケイ素合金、鉄−コバルト合金、鉄−アルミニウム合金、鉄−ケイ素−アルミニウム合金、及び鉄−ニッケル合金からなる群より選択される少なくとも1種を母相の主成分とすることができる。特に、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及び珪素(Si)は、鉄の一部として鉄の組成に含まれていてもよい(固溶されていてもよい)。更に、母相の主成分である「鉄」は、結果として得られる鉄基軟磁性材料の磁気特性に対する悪影響を及びさない限りにおいて、例えば窒素(N)及び/又は酸素(O)等の不純物を僅か(例えば、数百質量ppm未満)に含有していてもよい。
セル境界相の主成分である「銅を含む硫化物」は、例えば、CuS、CuFeS、CuFeS、及びこれらから鉄(Fe)又は銅(Cu)が欠損した分子式によって表される硫化物からなる群より選択される少なくとも1種の物質である。CuS、CuFeS、及びCuFeSから鉄(Fe)又は銅(Cu)が欠損した分子式によって表される硫化物の具体例としては、例えば、Cu1.96S、Cu3116、Cu、Cu、CuS、CuS、CuFe、CuFeS、CuFeS、及びCuFe16等を挙げることができる。これらの硫化物は高い電気抵抗を有するので、渦電流損失の低減に有効である。
〈組成〉
第1材料は、鉄と、銅と、カルコゲンと、を主成分とする鉄基軟磁性材料であり、このカルコゲンは少なくとも硫黄を含む。換言すれば、第1材料は、鉄と、銅と、硫黄と、を主成分とする鉄基軟磁性材料であり、硫黄以外のカルコゲンを更に含んでいてもよい。このような第1材料に含有される鉄(Fe)と、銅(Cu)と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)と、の合計を100at%とする場合、以下の条件(1)及び(2)が成立する。
(1)鉄(Fe)と、銅(Cu)と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)と、のそれぞれの含有率の組み合わせが、図1の太い実線で囲まれた領域によって示すように、鉄(Fe)、銅(Cu)及びカルコゲン(Ch)の原子濃度の三元組成図において、87at%Fe−12at%Cu−1at%Chを表すA点、91.9at%Fe−7.1at%Cu−1at%Chを表すB点、75at%Fe−13.1at%Cu−11.9at%Chを表すC点、及び75at%Fe−20at%Cu−5at%Chを表すD点によって囲まれる領域である特定領域に対応する組み合わせである。
上記三元組成図において、点Aと点Bとを結ぶ直線よりもカルコゲン(Ch)の含有率が低くなると、セル境界相を構成する原子の数が相対的に少なくなり、渦電流損失の低減に十分なセルウォール構造の形成が困難となるので望ましくない。一方、点Cと点Dとを結ぶ直線よりも鉄(Fe)の含有率が低くなると(具体的には、75at%未満になると)、セル境界相を構成する原子の数が相対的に多くなり(具体的には、25at%以上になり)、第1材料全体に占める磁性体部分である母相の比率が75at%未満となる。その結果、第1材料を用いて製造される鉄基軟磁性コアの全体としての最大磁化が小さくなるので望ましくない。
また、点Bと点Cとを結ぶ直線よりもカルコゲン(Ch)の含有率が高くなると、銅(Cu)の含有率が相対的に低下し、低い電気抵抗を有する硫化鉄(II)(FeS)が粒界相において生成されて渦電流損失の低減効果の低下に繋がるので望ましくない。一方、点Aと点Dとを結ぶ直線よりも銅(Cu)の含有率が高くなると、銅(Cu)の含有率が相対的に上昇し、低い電気抵抗を有する銅(Cu)が粒界相において生成されて渦電流損失の低減効果の低下に繋がるので望ましくない。
逆に、鉄(Fe)と、銅(Cu)と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)と、のそれぞれの含有率の組み合わせが、上記特定領域に対応する組み合わせである場合、高い電気抵抗を有するセル境界相と磁性体部分である母相とをバランス良く含むセルウォール構造が形成される。その結果、渦電流損失を十分に低減することができる。
(2)チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)及び珪素(Si)からなる群より選択される少なくとも1種の元素である第四元素を更に含有している。上記において、第四元素として珪素(Si)が含まれない場合は、第四元素の含有率が0.1at%以上であり且つ3.0at%未満である。第四元素が珪素(Si)のみからなる場合は、第四元素の含有率が0.1at%以上であり且つ7.0at%未満である。第四元素として珪素(Si)及び珪素(Si)以外の元素が含まれる場合は、珪素を含む第四元素の総含有率が0.1at%以上であり且つ7.0at%未満であると共に、珪素以外の第四元素の含有率は3.0at%未満である。
第1材料に含有される鉄(Fe)、銅(Cu)及びカルコゲン(Ch)の合計に対する第四元素の含有率が3.0at%以上であると、第1材料を用いて製造される鉄基軟磁性コアの全体としての最大磁化が小さくなるので望ましくない。一方、第1材料に含有される鉄(Fe)、銅(Cu)及びカルコゲン(Ch)の合計に対する第四元素の含有率が0.1at%未満であると、第四元素の添加による渦電流損失の低減効果を十分に達成することが困難となるので望ましくない。
但し、第四元素として珪素(Si)のみを選択する場合は、0.1at%以上であり且つ7.0at%未満である含有率にて第四元素が含有されていてもよい。これは、前述したように、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及び珪素(Si)は、鉄の一部として鉄の組成に含まれていてもよいことに対応する。より具体的には、第1材料を用いて製造される鉄基軟磁性コアの母相に珪素(Si)が固溶することにより、最大磁化は低下するが、磁化率は向上する。従って、第四元素として珪素(Si)のみを選択する場合は、その含有率の上限を7.0at%まで高めることができる。
また、第四元素として珪素(Si)及び珪素(Si)以外の元素が含まれている場合は、珪素を含む第四元素の総含有率が0.1at%以上であり且つ7.0at%未満であると共に珪素以外の第四元素の含有率は3.0at%未満である。これは、前述したように、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及び珪素(Si)は、鉄の一部として鉄の組成に含まれていてもよいことに対応する。より具体的には、第1材料を用いて製造される鉄基軟磁性コアの母相に珪素(Si)が固溶することにより、最大磁化は低下するが、磁化率は向上する。従って、第四元素として珪素(Si)及び珪素(Si)以外の元素が含まれている場合は、珪素以外の第四元素の含有率が3.0at%未満である限りにおいて、珪素を含む第四元素の総含有率の上限を7.0at%まで高めることができる。
第四元素の含有率が上記範囲に入る場合、セルウォール構造の形成が更に促進され、その結果、渦電流損失の低減効果が更に高まる。尚、第四元素の添加によるセルウォール構造の形成促進メカニズムは現時点において未だ解明されておらず不明であるが、後に詳細に考察する。
《第2実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第2実施形態に係る鉄基軟磁性材料の製造方法(以下、「第2方法」と称される場合がある。)について説明する。第2方法は、上述した第1材料の製造方法である。図2に示すように、第2方法は、以下に列挙する第1工程乃至第4工程を含む。
第1工程(ステップS01):鉄(Fe)と、銅(Cu)と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)と、のそれぞれの配合率の組み合わせが上述した特定領域に対応する組み合わせとなるように、鉄(Fe)と、銅(Cu)と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)、当該カルコゲン(Ch)と鉄(Fe)との化合物及び当該カルコゲン(Ch)と銅(Cu)との化合物からなる群より選択される少なくとも1種の物質である硫黄源と、を秤量する。
具体的には、鉄(Fe)と、銅(Cu)と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)と、のそれぞれの配合率の組み合わせが上述した特定領域に対応する組み合わせとなるように、鉄(Fe)と、銅(Cu)と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)と、を秤量してもよい。或いは、第3工程において各種原料を加熱して熔解させて溶湯を生成させる過程におけるカルコゲン(Ch)の蒸発を低減することを目的として、例えば、カルコゲン(Ch)そのもの(単体)ではなく、鉄(Fe)のカルコゲン化物、銅(Cu)のカルコゲン化物、及び/又は鉄(Fe)及び銅(Cu)の複合カルコゲン化物等を使用してもよい。当然のことながら、後者の場合、カルコゲン化物を構成する鉄(Fe)及び/又は銅(Cu)もまた第1材料の主成分となる鉄(Fe)及び/又は銅(Cu)として扱う(配合率に算入する)。
第2工程(ステップS02):鉄(Fe)と、銅(Cu)と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)と、の合計を100at%とする場合において、前述した第四元素及び第四元素の窒化物からなる群より選択される少なくとも1種の物質である第四元素源を秤量する。このとき、第四元素として珪素(Si)が含まれない場合は、第四元素の含有率が0.1at%以上であり且つ3.0at%未満となるように、第四元素源を秤量する。第四元素が珪素(Si)のみからなる場合は、第四元素の含有率が0.1at%以上であり且つ7.0at%未満となるように、第四元素源を秤量する。第四元素として珪素(Si)及び珪素(Si)以外の元素が含まれる場合は、珪素を含む第四元素の総含有率が0.1at%以上であり且つ7.0at%未満であると共に珪素以外の第四元素の含有率は3.0at%未満となるように、第四元素源を秤量する。
第四元素の配合率が上記範囲に入る限りにおいて、第四元素は、第四元素そのもの(単体)として添加してもよく、或いは第四元素の窒化物として添加してもよい。後者の場合、後述するセルウォール構造の形成促進メカニズムにおいて、母相の晶出に対する凝固核として、そのまま作用することができるものと考えられる。
尚、当然のことながら、上述したステップS01及びステップS02の実行順序は特に限定されず、上述した順序と同じであってもよく、或いは上述した順序とは逆であってもよい。
第3工程(ステップS03):上記第1工程及び上記第2工程において秤量された鉄(Fe)と、銅(Cu)と、硫黄源と、第四元素源と、を加熱して熔解させることにより溶湯とする。
この第3工程は第1材料を構成する全ての原材料の秤量が完了した後(即ち、ステップS01及びステップS02の実行が完了した後)に実行される。これらの原材料を加熱するための具体的な手段は特に限定されないが、例えば、これらの原材料を収容する坩堝等の容器を溶解炉中に入れ、例えば赤外線ヒータ等の熱源を用いて加熱することができる。また、これらの原材料を加熱する際の周囲環境も特に限定されないが、例えばアルゴンガス(Ar)又は窒素ガス(N)等の不活性雰囲気下において加熱することが望ましい。或いは、これらの原材料を大気雰囲気下において加熱する場合は、例えばフラックスを混ぜる等して、原材料と大気との反応を防ぐことが望ましい。
第4工程(ステップS04):上記第3工程において得られた溶湯を少なくとも毎秒1℃以上の降温速度にて冷却して上記溶湯を凝固させることにより鉄基軟磁性材料を得る。
この第4工程は第1材料を構成する全ての原材料が熔解して溶湯となった後(即ち、ステップS03の実行が完了した後)に実行される。上記のように溶湯を急速に冷却して溶湯を凝固させるための具体的な手法は特に限定されないが、例えば、水冷式銅製鋳型への溶湯の注入、溶湯を注入したインベストメント鋳型の低融点金属の溶湯への投入、及び水冷された銅板の表面上への注湯等、種々の手法を採用することができる。
以上説明してきた各工程を含む第2方法によれば、前述したような構成を有することにより渦電流損失が低減された鉄基軟磁性材料(例えば、第1材料)を製造することができる。
〈第四元素によるセルウォール構造の形成促進メカニズム〉
前述したように、上述した範囲に入る含有率にて第四元素を添加することによりセルウォール構造の形成が更に促進され、その結果、渦電流損失の低減効果が更に高まる。この「第四元素の添加によるセルウォール構造の形成促進メカニズム」は現時点において未だ解明されておらず不明であるが、以下に列挙する2種の推定メカニズム(A)及び(B)が考えられる。
(A)強い硫化物形成傾向を有する第四元素については、優先的にセル境界相に取り込まれ、セル境界相の凝固点を下げる。これにより、鉄を主成分とする母相からなるセルが凝固した後にセル境界相が凝固することとなり、セルウォール構造の形成が促進される。
(B)強い窒化物形成傾向及び/又は強い酸化物形成傾向を有する第四元素については、形成される窒化物及び/又は酸化物の凝固点が鉄を主成分とする母相の凝固点よりも高く、母相の凝固点よりも高い温度において(即ち、母相が凝固を開始する前に)窒化物及び/又は酸化物が晶出を開始する。こうして晶出した窒化物及び/又は酸化物の微小な結晶が、母相の晶出に対する凝固核として作用する。
尚、冒頭に述べたように、鋳型の内面に核生成剤を分布させたり固体粒子を外部から溶湯に添加して溶湯中に分散させたりすることによって微細な等軸結晶粒組織を生成させる従来技術が既に知られている(例えば、特許文献3を参照。)。このような従来技術において核生成剤及び固体粒子が果たす役割は、上記推定メカニズム(B)における窒化物及び/又は酸化物の微小な結晶と同様である。しかしながら、鋳型の内面に核生成剤を均一に分布させたり固体粒子を外部から溶湯に添加して均一に分散させたりすることは現実には困難である。
これに対し、上記推定メカニズム(B)においては、溶湯中に熔解している第四元素が母相の凝固点よりも高い温度において(即ち、母相が凝固を開始する前に)窒化物及び/又は酸化物の微小な結晶として晶出する。従って、このような結晶は自ずと溶湯中に均一に分散された状態となる。その結果、第2方法において使用される第四元素は、母相の晶出に対する凝固核として有効に作用することができる。
ところで、上記推定メカニズム(B)において窒化物及び酸化物を構成する窒素(N)及び酸素(O)は、例えば、鉄(Fe)に含まれる不純物、上述した第3工程における熔解時の周囲雰囲気及び溶湯を収容する容器等から取り込まれ得る。従って、上記推定メカニズム(B)が想定される第四元素の添加により、鉄(Fe)に含まれる不純物としての窒素(N)及び酸素(O)が消費されて母相の磁化率が高まるという副次的な効果も得ることができる。
上記のように推定メカニズム(B)において生成される第四元素の窒化物及び酸化物の具体例としては、例えば、窒化チタン(TiN)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化珪素(Si)、鉄−クロム複合酸化物(Fe,Cr)、並びに酸窒化チタン(Ti(N,O))及び酸窒化ジルコニウム(Zr(N,O))等の複合化合物を挙げることができる。更に、例えば、硼化チタン(TiB)等の硼化物及び炭化チタン(TiC)等の炭化物もまた、上記推定メカニズム(B)において微小な結晶として晶出して、母相の晶出に対する凝固核として作用することができる。
尚、前述した種々の第四元素のうち、上記推定メカニズム(A)及び(B)の両方が該当すると推定される第四元素としては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、及びアルミニウム(Al)を挙げることができる。また、上記推定メカニズム(A)のみが該当すると推定される第四元素としては、モリブデン(Mo)、亜鉛(Zn)及びガリウム(Ga)を挙げることができる。更に、上記推定メカニズム(B)のみが該当すると推定される第四元素としては、珪素(Si)を挙げることができる。一方、タングステン(W)及び硼素(B)については、上記推定メカニズム(A)及び(B)の何れにも該当しないと推定され、セルウォール構造の形成を促進するメカニズムは不明であるものの、何らかのメカニズムによりセルウォール構造の形成が促進される。
《第2実施形態の変形例1》
前述したように、第3工程において各種原料を加熱して熔解させて溶湯を生成させる過程において、カルコゲン(Ch)が蒸発する場合がある。このようなカルコゲン(Ch)の蒸発が起こると、鉄(Fe)と、銅(Cu)と、前述した硫黄源としてのカルコゲン(Ch)と、のそれぞれの配合率の組み合わせが上述した特定領域に対応する組み合わせとなるように原材料を秤量して配合しても、第1材料における三元組成が初期の組成とは異なる虞がある。そこで、カルコゲン(Ch)の蒸発を低減することを目的として、例えば、カルコゲン(Ch)そのもの(単体)ではなく、鉄(Fe)のカルコゲン化物、銅(Cu)のカルコゲン化物、及び/又は鉄(Fe)及び銅(Cu)の複合カルコゲン化物等を前述した硫黄源として使用してもよい。
しかしながら、上記のようなカルコゲン化物を硫黄源として使用する場合においてもなお、第3工程において各種原料を加熱して熔解させて溶湯を生成させる過程において、カルコゲン(Ch)が蒸発する場合がある。このような問題を低減するためには、硫黄源の加熱期間の短縮及び加熱温度の低下の少なくとも何れかを実行することが望ましい。
そこで、第2方法の変形例1においては、上記第3工程において、鉄(Fe)、銅(Cu)及び第四元素源が熔解して溶湯となった後に、又は、鉄(Fe)、銅(Cu)及び第四元素源を熔解させてなる溶湯の温度を低下させ始めた後に、硫黄源を当該溶湯に添加して熔解させる。
これによれば、硫黄源の加熱期間の短縮及び加熱温度の低下の少なくとも何れかを実行することができるので、第3工程におけるカルコゲン(Ch)の蒸発を低減して、最終的に得られる第1材料における鉄(Fe)、銅(Cu)及びカルコゲン(Ch)のそれぞれの含有率の組み合わせを、より確実且つ容易に、上述した特定領域に対応する組み合わせとすることができる。
《第2実施形態の変形例2》
ところで、上述した第4工程においては、第3工程において得られた溶湯を少なくとも毎秒1℃以上の降温速度にて急速に冷却して溶湯を凝固させることにより、鉄基軟磁性材料が得られる。この凝固過程においては、鉄を主成分とする母相からなるセルが凝固した後にセル境界相が凝固することによってセルウォール構造が形成される。その結果、凝固過程におけるセル(母相)とセル境界相との間における熱膨張係数の違い等に起因する応力が発生して、セル(母相)に歪みを生じたり、セル境界相にクラック等の欠陥を生じたりする虞がある。
セルに歪みが生ずると、例えば第1材料のヒステリシス損失の増大を招く虞がある。一方、セル境界相にクラック等の欠陥が生ずると、例えばセル境界相の電気的絶縁性が低下して、第1材料の渦電流損失の増大を招く虞がある。従って、第1材料のヒステリシス損失及び渦電流損失を低減するためには、セルにおける歪み及びセル境界相にけるクラック等の欠陥を低減することが望ましい。
そこで、第2方法の変形例2は、上記第4工程において得られた鉄基軟磁性材料を700℃以上であり且つ900℃未満である温度において10分間以上保持する第5工程を更に含む。
これによれば、第4工程において溶湯を急速に冷却して溶湯を凝固させる過程においてセルとセル境界相との間における熱膨張係数の違い等に起因する応力によってセルに生じた歪みを緩和させたり、セル境界相に生じたクラック等の欠陥を消失させたりすることができる。その結果、第1材料のヒステリシス損失及び渦電流損失を低減することができる。
《第3実施形態》
以下、本発明の第3実施形態に係る鉄基軟磁性コア(以下、「第3コア」と称される場合がある。)について説明する。第3コアは、上述した第1材料を始めとする本発明材料によって構成される鉄基軟磁性コアである。従って、第3コアは、渦電流損失が少ない、良好な磁気特性を有する鉄基軟磁性コアとすることができる。
尚、第3コアの大きさ及び形状は、当該コアの用途に応じて適宜定めることができる。また、第3コアの製造方法は、鉄基軟磁性コアの製造方法として当該技術分野において広く採用されている各種方法の中から適宜選択することができる。
具体的には、例えば、上述した第2方法に含まれる第4工程において溶湯を注入する鋳型を第3コアとして所望の大きさ及び形状に対応したものとしてもよく、第4工程において溶湯を鋳型に注入して得られた成形体を第3コアとして所望の大きさ及び形状に対応して加工してもよく、或いはこれらの製造方法を組み合わせてもよい。更に、必要に応じて、所望の大きさ及び形状に成形・加工された第3コアの表面を絶縁性樹脂等によってコーティングしてもよい。鉄基軟磁性コアの製造方法についての更なる詳細については当業者に周知であるので、これ以上の説明は省略する。
《鉄基軟磁性材料サンプルの製造》
上述した特定領域に該当する78.8at%Fe−13.0at%Cu−8.2at%Sの三元組成となり(図1の点Pを参照)、当該三元組成100at%に対して第四元素としてのジルコニウム(Zr)の含有率が1at%となり、合計質量が1.4gとなるように、鉄(Fe)、銅(Cu)、硫黄源としての硫化鉄(FeS)及び第四元素源としての窒化ジルコニウム(ZrN)を原材料として秤量した(第1工程及び第2工程)。各種原材料をグラファイト製の坩堝に入れ、アルゴン雰囲気下にて1550℃に加熱して1分間保持し、原材料を完全に熔解させて溶湯とした後、当該溶湯を水中に落下させることにより急冷した(第3工程及び第4工程)。このようにして製造した、本発明の実施例に係る鉄基軟磁性材料を「サンプル1a」と称する。
また、第四元素源として窒化ジルコニウム(ZrN)に代えて窒化チタン(TiN)を採用し、上記と同様の方法によって製造した、第四元素としてチタン(Ti)を含有する、本発明の実施例に係る鉄基軟磁性材料を「サンプル1b」と称する。更に、第四元素源を添加せず、上記と同様の方法によって製造した、第四元素を含有しない、比較例に係る鉄基軟磁性材料を「サンプル1c」と称する。
《鉄基軟磁性材料サンプルのセルウォール構造》
上記のようにして製造した本発明の実施例に係るサンプル1a及び1b並びに比較例に係るサンプル1cの研磨断面の顕微鏡写真を図3の(a)、(b)及び(c)にそれぞれ示す。図3からも明らかであるように、実施例に係るサンプル1a及び1bにおいては、比較例に係るサンプル1cに比べて、鉄を主成分とする母相がより小さいセル(明るい部分)に分割されており且つ個々のセルがセル境界相(暗い部分)によって覆われている。即ち、実施例に係るサンプル1a及び1bにおいては、比較例に係るサンプル1cに比べて、セルウォール構造の形成が促進されていることが確認された。従って、本発明の実施例に係るサンプル1a及び1bにおいては、比較例に係るサンプル1cに比べて、渦電流損失が低減される。
《鉄基軟磁性材料サンプルの製造》
上述した特定領域に該当する78.7at%Fe−13.0at%Cu−8.2at%S−0.1at%Teの三元組成(硫黄(S)及びテルル(Te)を併せてカルコゲン(Ch)一元とみなす)となり(図1の点Qを参照)、当該三元組成100at%に対して第四元素としての珪素(Si)の含有率が1at%となり、合計質量が1.4gとなるように、鉄(Fe)、銅(Cu)、硫黄源としての硫化鉄(FeS)及び二テルル化鉄(FeTe)、並びに第四元素源としての窒化珪素(Si)を原材料として秤量した(第1工程及び第2工程)。上述した実施例1と同様に第3工程及び第4工程を実行して、本発明の実施例に係る鉄基軟磁性材料である「サンプル2a」を製造した。
更に、第四元素源を添加せず、上記と同様の方法によって製造した、第四元素を含有しない、比較例に係る鉄基軟磁性材料を「サンプル2b」と称する。
《鉄基軟磁性材料サンプルのセルウォール構造》
上記のようにして製造した本発明の実施例に係るサンプル2a及び比較例に係るサンプル2bの研磨断面の顕微鏡写真を図4の(a)及び(b)にそれぞれ示す。図4からも明らかであるように、実施例に係るサンプル2aにおいては、比較例に係るサンプル2bに比べて、鉄を主成分とする母相がより小さいセル(明るい部分)に分割されており且つ個々のセルがセル境界相(暗い部分)によって覆われている。即ち、実施例に係るサンプル2aにおいては、比較例に係るサンプル2bに比べて、セルウォール構造の形成が促進されていることが確認された。従って、本発明の実施例に係るサンプル2aにおいては、比較例に係るサンプル2bに比べて、渦電流損失が低減される。
《鉄基軟磁性材料サンプルの製造》
上述した特定領域に該当しない90at%Fe−5at%Cu−5at%Sの三元組成となり(図1の点Rを参照)、当該三元組成100at%に対して第四元素としてのジルコニウム(Zr)の含有率が1at%となり、合計質量が1.4gとなるように、鉄(Fe)、銅(Cu)、硫黄源としての硫化鉄(FeS)及び第四元素源としての窒化ジルコニウム(ZrN)を原材料として秤量した(第1工程及び第2工程)。上述した実施例1と同様に第3工程及び第4工程を実行して、本実施例に係る鉄基軟磁性材料である「サンプル3a」を製造した。
更に、第四元素源を添加せず、上記と同様の方法によって製造した、第四元素を含有しない、比較例に係る鉄基軟磁性材料を「サンプル3b」と称する。尚、上記のように本実施例に係る鉄基軟磁性材料の主成分である鉄(Fe)−銅(Cu)−硫黄(S)の三元組成は特定領域に該当しないので、サンプル3a及びサンプル3bは何れも比較例に係る鉄基軟磁性材料である。
《鉄基軟磁性材料サンプルのセルウォール構造》
上記のようにして製造した比較例に係るサンプル3a及び3bの研磨断面の顕微鏡写真を図5の(a)及び(b)にそれぞれ示す。これらのサンプル3a及び3bは何れも特定領域に該当しない鉄(Fe)−銅(Cu)−硫黄(S)の三元組成を有するが、図5からも明らかであるように、第四元素としてのジルコニウム(Zr)を所定量(1at%)含有するサンプル3aにおいては、第四元素を含有しないサンプル3bに比べて、鉄を主成分とする母相がより小さいセル(明るい部分)に分割されており且つ個々のセルがセル境界相(暗い部分)によって覆われている。即ち、第四元素を含むサンプル3aにおいては、第四元素を含まないサンプル3bに比べて、セルウォール構造の形成が促進されていることが確認された。
《鉄基軟磁性材料サンプルの生成相の構成元素分析》
ところで、図6に示すように、サンプル3a及び3bの何れの研磨断面においても、3つの相が生成していることが確認された。具体的には、母相からなるセル(明るい部分)、セルの境界に存在するセル境界相(暗い部分)、セル境界相中に見られる更に暗い部分(第三相)が観察された。そこで、SEM/EDS(走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法)により、各生成相の構成元素を調べた。その結果、以下の表1に示すように、サンプル3a及び3bの何れにおいても、母相は鉄(Fe)によって構成されており(スペクトル1乃至3)、セル境界相は斑銅鉱(CuFeS)によって構成されており(スペクトル4乃至6)、第三相は硫化鉄(FeS)によって構成されていることが判った(スペクトル7乃至9)。硫化鉄(FeS)は電気抵抗が低いため、渦電流損失を低減する観点からは望ましくない。
《纏め》
以上より、たとえ所定量の第四元素を含有することによりセルウォール構造が形成されていても、鉄(Fe)−銅(Cu)−硫黄(S)の三元組成が特定領域に該当しないと、上記のように低い電気抵抗を有する物質からなる相がセル境界相に生成し、セル境界相の電気的絶縁性を低下させ、渦電流損失の低減効果を損なう虞があることが確認された。
《鉄基軟磁性材料サンプルの製造》
上述した特定領域に該当する90at%Fe−8.2at%Cu−1.8at%Sの三元組成となり(図1の点Sを参照)、当該三元組成100at%に対して第四元素としてのアルミニウム(Al)の含有率が1at%となり、合計質量が0.12gとなるように、鉄(Fe)、銅(Cu)、硫黄源としての硫化鉄(FeS)及び第四元素源としてのアルミニウム(Al)を原材料として秤量した(第1工程及び第2工程)。各種原材料をアルミナ製の坩堝に入れ、アルゴン雰囲気下にて1550℃に加熱して10分間保持し、原材料を完全に熔解させて溶湯とした後、当該溶湯を急冷した(第3工程及び第4工程)。
上記のようにして製造した、本発明の実施例に係る鉄基軟磁性材料を「サンプル4a」と称する。更に、第四元素源を添加せず、上記と同様の方法によって製造した、第四元素を含有しない、比較例に係る鉄基軟磁性材料を「サンプル4b」と称する。
《鉄基軟磁性材料サンプルのセルウォール構造》
上記のようにして製造した本発明の実施例に係るサンプル4a及び比較例に係るサンプル4bの研磨断面の顕微鏡写真を図7の(a)及び(b)にそれぞれ示す。図7からも明らかであるように、実施例に係るサンプル4aにおいては、比較例に係るサンプル4bに比べて、鉄を主成分とする母相がより小さいセル(明るい部分)に分割されており且つ個々のセルがセル境界相(暗い部分)によって覆われている。即ち、実施例に係るサンプル4aにおいては、比較例に係るサンプル4bに比べて、セルウォール構造の形成が促進されていることが確認された。従って、本発明の実施例に係るサンプル4aにおいては、比較例に係るサンプル4bに比べて、渦電流損失が低減される。
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び変形例並びに実施例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び変形例並びに実施例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。

Claims (5)

  1. 鉄を主成分とする母相からなるセルと、前記セルの境界に存在し銅を含む硫化物を主成分とするセル境界相と、を含む構造を有する鉄基軟磁性材料であって、
    前記鉄基軟磁性材料に含有される鉄(Fe)と、銅(Cu)と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)と、の合計を100at%とする場合、
    鉄(Fe)と、銅(Cu)と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)と、のそれぞれの含有率の組み合わせが、鉄(Fe)、銅(Cu)及びカルコゲン(Ch)の原子濃度の三元組成図において、鉄(Fe)、銅(Cu)及びカルコゲン(Ch)の原子濃度の三元組成図において、87at%Fe−12at%Cu−1at%Chを表すA点、91.9at%Fe−7.1at%Cu−1at%Chを表すB点、75at%Fe−13.1at%Cu−11.9at%Chを表すC点、及び75at%Fe−20at%Cu−5at%Chを表すD点によって囲まれる領域である特定領域に対応する組み合わせであり、且つ
    チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)及び珪素(Si)からなる群より選択される少なくとも1種の元素である第四元素を含有しており、
    前記第四元素として珪素(Si)が含まれない場合は、前記第四元素の含有率が0.1at%以上であり且つ3.0at%未満であり、
    前記第四元素が珪素(Si)のみからなる場合は、前記第四元素の含有率が0.1at%以上であり且つ7.0at%未満であり、
    前記第四元素として珪素(Si)及び珪素(Si)以外の元素が含まれる場合は、珪素を含む前記第四元素の総含有率が0.1at%以上であり且つ7.0at%未満であると共に珪素以外の前記第四元素の含有率は3.0at%未満である、
    鉄基軟磁性材料。
  2. 請求項1に記載の鉄基軟磁性材料の製造方法であって、
    鉄(Fe)と、銅(Cu)と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)と、のそれぞれの配合率の組み合わせが前記特定領域に対応する組み合わせとなるように、鉄(Fe)と、銅(Cu)と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)、当該カルコゲン(Ch)と鉄(Fe)との化合物及び当該カルコゲン(Ch)と銅(Cu)との化合物からなる群より選択される少なくとも1種の物質である硫黄源と、を秤量する、第1工程と、
    鉄(Fe)と、銅(Cu)と、少なくとも硫黄(S)を含むカルコゲン(Ch)と、の合計を100at%とする場合において、前記第四元素として珪素(Si)が含まれない場合は前記第四元素の含有率が0.1at%以上であり且つ3.0at%未満となるように、前記第四元素が珪素(Si)のみからなる場合は第四元素の含有率が0.1at%以上であり且つ7.0at%未満となるように、前記第四元素として珪素(Si)及び珪素(Si)以外の元素が含まれる場合は珪素を含む前記第四元素の総含有率が0.1at%以上であり且つ7.0at%未満であると共に珪素以外の前記第四元素の含有率は3.0at%未満となるように、前記第四元素及び前記第四元素の窒化物からなる群より選択される少なくとも1種の物質である第四元素源を秤量する、第2工程と、
    前記第1工程及び前記第2工程において秤量された前記鉄(Fe)と、前記銅(Cu)と、前記硫黄源と、前記第四元素源と、を加熱して熔解させることにより溶湯とする、第3工程と、
    前記第3工程において得られた溶湯を少なくとも毎秒1℃以上の降温速度にて冷却して前記溶湯を凝固させることにより前記鉄基軟磁性材料を得る、第4工程と、
    を含む、鉄基軟磁性材料の製造方法。
  3. 請求項2に記載の鉄基軟磁性材料の製造方法であって、
    前記第3工程において、前記鉄(Fe)、前記銅(Cu)及び前記第四元素源が熔解して溶湯となった後に、又は、前記鉄(Fe)、前記銅(Cu)及び前記第四元素源を熔解させてなる溶湯の温度を低下させ始めた後に、前記硫黄源を当該溶湯に添加して熔解させる、
    鉄基軟磁性材料の製造方法。
  4. 請求項2又は請求項3に記載の鉄基軟磁性材料の製造方法であって、
    前記第4工程において得られた前記鉄基軟磁性材料を700℃以上であり且つ900℃未満である温度において10分間以上保持する、第5工程、
    を更に含む、鉄基軟磁性材料の製造方法。
  5. 請求項1に記載の鉄基軟磁性材料によって構成される鉄基軟磁性コア。
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