JP2019090142A - 不織布 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い強度と良好な風合いとを兼ね備える不織布に関する。【解決手段】不織布は、プロピレン単独重合体とエチレン−プロピレン共重合体との混合物で形成された繊維で構成される。上記不織布は、上記繊維が熱融着された熱融着部と、上記繊維が熱融着されていない非熱融着部と、を有する。上記非熱融着部のDSC曲線には、140℃以上162℃以下の領域に1300μW/mg以上の高さの吸熱ピークが見られる。この不織布の非熱融着部には、プロピレン単独重合体のβ晶が多く存在している。これにより、この不織布では、高い強度と良好な風合いとを両立することができる。【選択図】図3A

Description

本発明は、ポリプロピレン系の不織布に関する。
特許文献1には、スパンボンド法でポリプロピレン系の不織布を製造する技術が開示されている。この技術では、原料樹脂を溶融させて連続的に紡糸した連続繊維でウェブを形成し、このウェブに熱エンボス加工を施すことにより不織布が得られる。スパンボンド法では、原料樹脂から一連の工程で効率よく不織布を製造可能である。
特開2012−12759号公報
特許文献1に記載の不織布の強度は、25mm幅あたり0.1〜1N/目付である。しかしながら、不織布には、更なる高強度が求められる。
また、不織布の製造コストの低減のためには、目付を少なくすることが有効である。しかしながら、不織布では、目付を少なくするほど強度が低下する。不織布の強度を向上させるためには、高剛性の繊維を用いることが有効である。ところが、高剛性の繊維を用いた不織布は、硬い触り心地となり、風合いが損なわれやすい。
本発明の課題は、高い強度と良好な風合いとを兼ね備える不織布に関する。
本発明の一形態に係る不織布は、プロピレン単独重合体とエチレン−プロピレン共重合体との混合物で形成された繊維で構成される。
上記不織布は、上記繊維同士が熱融着した熱融着部と、上記繊維同士が熱融着していない非熱融着部と、を有する。
上記非熱融着部のDSC曲線には、140℃以上162℃以下の領域に1300μW/mg以上の高さの吸熱ピークが見られる。
本発明の不織布は、高い強度と良好な風合いとを兼ね備える。
スパンボンド法における紡糸工程を説明するための図である。 スパンボンド法における熱エンボス加工を模式的に示す断面図である。 実施例及び比較例に係る不織布の非熱融着部のみのDSC曲線を示すグラフである。 実施例及び比較例に係る不織布全体のDSC曲線を示すグラフである。 実施例に係る不織布の熱履歴リセット後のDSC曲線を示すグラフである。 実施例及び比較例に係る不織布のMD方向の引張り試験の結果を示すグラフである。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
[不織布の概略構成]
不織布は、プロピレン単独重合体とエチレン−プロピレン共重合体との混合物で形成された繊維で構成されている。不織布を構成する繊維は、連続繊維又は長繊維であることが好ましい。
不織布は、熱融着部と非熱融着部とから構成される。不織布の熱融着部は、略円形のスポット状に形成され、縦横に所定の間隔をあけて規則的に配列されている。不織布の非熱融着部は、不織布における熱融着部以外の部分を占める。
不織布を構成する繊維の太さ(繊維径)は、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは20μm以下であり、更に好ましくは12μm以下である。これにより、繊維が柔らかくなるため、平滑性と柔軟性の高い肌触りのよい不織布が得られる。また、繊維が細いと繊維本数が増し、一つの融着点あたりの繊維本数が増すため、高強度の不織布が得られる。
なお、一般的な不織布では、単純に繊維を細くした場合、硬くなって肌触りが悪化しやすく、また繊維の伸度が小さくなって強度が低下しやすい傾向がある。この点、本実施形態に係る不織布では、良好な肌触りと高い強度とを両立可能に構成されている。このような構成の詳細については後述する。
不織布の熱融着部では、繊維同士が熱融着している。したがって、不織布を構成する繊維は、熱融着部において部分的に一体化している。これにより、不織布では、繊維が分離して離脱することなく、シート形状を良好に維持することができる。
また、不織布の非熱融着部では、繊維同士が熱融着していない。したがって、非熱融着部では、繊維本来の柔らかい触り心地が得られる。熱融着部は、熱融着により高剛性となっているものの、不織布に占める面積が小さいため、非熱融着部における良好な風合いを損ないにくい。
不織布を構成する繊維では、エチレン−プロピレン共重合体のエチレン濃度(エチレンモノマー含量)が10重量%以上25重量%以下である繊維を用いることが好ましく、この繊維のエチレン濃度が13重量%以上20重量%以下であることがより好ましい。エチレン濃度を10重量%以上、好ましくは13重量%以上とすることで、繊維が低剛性となるため、不織布の風合いが更に向上するとともに繊維の破断伸度が増すため高強度の不織布が得られる。
本実施形態に係る不織布では、繊維の破断伸度が高い構成によって、高い強度が得られる。つまり、不織布を引っ張ると熱融着部と非熱融着部の繊維との境界で破断することが観察されるが、このとき熱融着部間の繊維長の短い繊維から順次破断される。したがって、繊維の破断伸度が高いことにより、切れずに伸長することで強度の高い不織布が得られる。
また、エチレン濃度を25重量%以下、好ましくは20重量%以下に留めることで、不織布として必要な剛性が確保されやすくなる。エチレン濃度が高くなりすぎると伸長はするが樹脂自体の強度が低下するため、熱融着部と非熱融着部の境界部で破断しやすくなる。一方、上記範囲とすることで後述する成形条件においてプロピレン単独重合体のβ晶が形成されやすくなり、強度が高く、伸度の高い繊維になるとともに熱融着部と非熱融着部の境界部でのダメージが少なくなるため、破断しにくくなるものと推察される。
エチレン−プロピレン共重合体においてはエチレンがランダムに共重合されたランダム共重合体やエチレンがブロック的に共重合したブロック共重合体が好ましい。
また、不織布を構成する繊維では、上記エチレン濃度範囲のエチレン−プロピレン共重合体の含有量が5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、また、30重量%以下であることが好ましく、25重量%以下であることがより好ましい。共重合体の含有量を5重量%以上とすることで、繊維が低剛性となるため、不織布の風合いが更に向上するとともに繊維の破断伸度が増すため高強度の不織布が得られる。また、共重合体の含有量を25重量%以下に留めることで、不織布として必要な剛性が確保されやすくなる。
一般的に、エチレン−プロピレン共重合体が多く、プロピレン単独重合体が少ないほど、伸度が高いが強度の低い不織布となる。このため、ただ単にエチレン−プロピレン共重合体をブレンドしても、プロピレン単独重合体のみで構成された不織布よりも高い強度を有する不織布を得ることは難しい。
この点、本実施形態に係る不織布では、上記のようなエチレン濃度を有するエチレン−プロピレン共重合体の含有量を上記範囲とすることで、高い強度が得られる。詳細については後述するが、本実施形態に係る不織布では、プロピレン単独重合体のβ晶の量が多くなるような繊維の成形条件を採用することにより、強度が高く、伸度が高くなるとともに、熱融着部と非熱融着部の境界部でのダメージが少なくなるため、破断しにくくなるものと推察される。
エチレン−プロピレン共重合体の融点は80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましく、また、130℃以下であることが好ましく、115℃以下であることがより好ましい。この数値範囲であると、β晶の形成される温度(推定110℃〜140℃)よりも低い温度でエチレン−プロピレン共重合体が固相となるため、エチレン−プロピレン共重合体が溶融状態で共結晶化によりプロピレン単独重合体の結晶中に入り込みやすくなり、後述する成形条件においてβ晶が形成されやすくなるため好ましい。
エチレン−プロピレン共重合体中のエチレン濃度やエチレン−プロピレン共重合体の含有量はNMRやIR測定法(参考文献:西岡篤夫、高分子,P309,vol.15,No169(1966),NMRによる共重合物の確認、特表2016−522335)によって求められる。
なお、不織布における熱融着部の形状や配置などの構成は、適宜変更可能である。例えば、熱融着部は、規則的に配列されていていなくてもよく、例えば、ランダムに分散して配置されていてもよい。
不織布における熱融着部の連続パターンとしては、例えば、斜め格子、直交格子、湾曲した波線が交差するパターンがあげられる。線状の熱融着部では、1本あたりの太さは0.3mm以上1.5mm以下であることが好ましい。
また、不織布における熱融着部のパターンは、非連続パターンであってもよい。非連続パターンとしては、例えば、千鳥配置や格子配置、5角、6角、7角、8角などの規則的なパターンがあげられる。これらの中でも、大小の凸部を形成する観点から、4角と6角の組み合わせたパターンが好ましい。また、格子や上記多角形などのパターンは、1本又は複数本の破線で形成されていてもよく、2本または3本並べて形成することが好ましい。この場合、相互に隣接する破線における途切れる位置を延在方向にずらすことが好ましく、これにより強度の高い不織布が得られる。熱融着部の形状は円形、楕円、矩形などの多角形、星形、十字状、Y字状、S字状であることが好ましい。特に、十字状とY字状の熱融着部を組み合わせた構成は、大小の凸部が形成されることにより、外観と肌触りが優れる点で好ましい。熱融着部の大きさは0.05mm以上であることが好ましく、0.15mm以上であることがより好ましく、また、1.8mm以下であることが好ましく、0.8mm以下であることがより好ましい。
熱融着部間のピッチは、機械流れ方向(MD方向、Machine Direction)及びこれに直交する方向(CD方向、Cross Direction)のいずれにおいても、0.3mm以上であることが好ましく、0.7mm以上であることがより好ましく、また、10mm以下であることが好ましく、4mmであることより好ましい。この数値範囲であることにより、非融着部に手が触れたときに、非融着部を構成する繊維が自由に動くことができる範囲が増えるため肌触りがよくなり、かつ高い強度が得られる点で好ましい。
CD方向に並ぶ熱融着部を結んでできる仮想直線に対するロール軸方向とのなす角度は0.5度から5度の範囲で傾いていると、圧力変動が少なくエンボスロールの突起とフラットロールとの間で加わる衝撃が小さくなるため、穴あきしにくく、強度も高くなるため好ましい。
不織布における熱融着部の面積率は3%以上であることが好ましく、7%以上であることが好ましく、また、30%以下であることが好ましく、14%以下であることがより好ましい。この数値範囲内であることにより、毛羽立ちを防止でき、また強度と肌触りを両立することができる。
[プロピレン単独重合体の結晶構造]
(概要)
プロピレン単独重合体の結晶構造には、剛性の高いα晶と、剛性の低いβ晶と、が存在する。本実施形態に係る不織布は、プロピレン単独重合体のβ晶を多く含む繊維を用いて製造される。溶融したプロピレン単独重合体を延伸しながら急冷するとβ晶が観察されるが一般的な繊維の紡糸条件では急冷してもβ晶がほとんど観察されずα晶が観察される。また、β核剤を添加すればプロピレン単独重合体においてもβ晶が観察されるが、強度の高い不織布を得ることが困難であった。また、プロピレン単独重合体の各結晶には、異なる微細構造を有する分子鎖が同じ結晶に取り込まれ、つまり共結晶化したものも含まれる。プロピレン単独重合体のβ晶を多く含む繊維を形成する方法については、後述の「不織布の製造方法」の項目で説明する。
プロピレン単独重合体のα晶の融点は162℃を超え180℃以下であり、プロピレン単独重合体のβ晶の融点は140℃以上162℃以下である。したがって、プロピレン単独重合体におけるα晶及びβ晶の存在については、示差走査熱量測定(DSC)によって得られるDSC曲線によって確認することができる。
つまり、DSCによって得られるDSC曲線において162℃を超え180℃以下の領域に吸熱ピークPαが見られれば、α晶の存在を確認することができる。吸熱ピークPαの値が大きいことはα晶が多いことを意味する。また、DSCによって得られるDSC曲線において140℃以上162℃以下の領域に吸熱ピークPβが見られれば、β晶の存在を確認することができる。吸熱ピークPβの値が大きいことはβ晶が多いことを意味する。
不織布では、熱融着部と非熱融着部とでプロピレン単独重合体の結晶構造を異なる構成とすることによって、高い強度と良好な風合いとを両立することができる。以下、不織布の熱融着部及び非熱融着部におけるプロピレン単独重合体の結晶構造について説明する。
(熱融着部)
不織布の熱融着部には、プロピレン単独重合体のα晶が多く含まれていることが好ましい。これにより、熱融着部では、非熱融着部を構成する繊維を強固に支持することが可能となる。これは後述するβ晶からα晶への転移量が多くなり、転移による発熱量が増すことで熱融着部と非熱融着部の境界部の強度が増し破断しにくくなるためと考えられる。
なお、プロピレン単独重合体のβ晶を多く含む繊維から、プロピレン単独重合体のα晶を多く含む熱融着部を形成する方法については、後述の「不織布の製造方法」の項目で説明する。また、熱融着部には、必要に応じて、プロピレン単独重合体のβ晶が多く含まれていてもよい。
(非熱融着部)
不織布の非熱融着部には、プロピレン単独重合体のβ晶が多く含まれる。つまり、非熱融着部には、プロピレン単独重合体のβ晶を多く含む繊維がそのまま存在している。このため、非熱融着部は、プロピレン単独重合体のβ晶を多く含む低剛性の繊維本来の柔らかい触り心地が得られる。
具体的に、不織布では、非熱融着部のDSCによって得られるDSC曲線の140℃以上162℃以下の領域に、1300μW/mg以上の高さの吸熱ピークPβが見られ、特に2000μW/mg以上の高さの吸熱ピークPβが見られることが好ましい。なお、非熱融着部のDSCは、不織布から非熱融着部のみを切り出したサンプルを用いて行う。
不織布の非熱融着部では、140℃以上162℃以下の領域の吸熱ピークPβの方が162℃を超え180℃以下の領域の吸熱ピークPαよりも高いことが好ましい。具体的に、吸熱ピークPβの吸熱ピークPαに対する比率Pβ/Pαは、1.2倍以上、より好ましくは1.4倍以上であること好ましい。これにより、不織布の非熱融着部では、柔軟性が向上することで境界部でのダメージが抑制されるため、破断しにくくなる。このため、不織布では、伸度が向上するとともに、高い強度が得られる。
さらに、不織布の非熱融着部は、140℃以上162℃以下の領域に吸熱ピークPβを有し、162℃を超え180℃以下の領域に吸熱ピークPαを有さないことが好ましい。これにより、上記の効果がより顕著に得られる。
また、不織布の非熱融着部のみにおける吸熱ピークPβは、不織布全体における吸熱ピークPβよりも高いことが好ましい。これにより、相対的に熱融着部よりも非熱融着部の方がβ晶が多くなり、熱融着部と非熱融着部の境界部において、繊維に加わるダメージが低減される。したがって、強度の高い不織布が得られる。不織布の非熱融着部の吸熱ピークPβに対する不織布全体の吸熱ピークPβの比(前者/後者)が1.1以上、さらには1.2以上であることが好ましい。
上記の測定には、株式会社日立ハイテクサイエンス製の示差走査熱量計DSC7000Xを用い、試料1mg±0.10mgを蓋つきのアルミニウム製受皿にセットし、窒素雰囲気下で25℃から昇温速度10℃/minで300℃まで昇温した際の吸熱ピークを結晶融解ピークとして測定し、その温度を融解温度(Tm)として求める。吸熱ピークは吸熱値の絶対値(μW)をサンプル重量(mg)で割ることで求める。測定サンプル数はn=2として、その平均を求める。また、180℃時の熱流を0としてベースライン補正する。温度範囲内に吸熱ピークがない場合は、その温度範囲内での吸熱値の絶対値について、その最大値を吸熱ピーク値として求める。
試料の重量は0.01mgまで秤量可能な電子天秤を用いる。
市販の吸収性物品から不織布をサンプリングする際は、ホットメルト接着剤などの付着がない部分からサンプリングする。それができない場合はホットメルト接着剤などの付着をトルエン等の溶媒で洗い流した後、溶媒を常温で乾燥させてから測定を行う。
非熱融着部を構成する繊維は、プロピレン単独重合体のβ晶の作用によって、大きく引き伸ばされても破断しにくい。つまり、非熱融着部では、引き伸ばされて破断する伸度である破断伸度が大きい。具体的に、不織布の破断伸度は、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。つまり、不織布では、MD方向及びCD方向のいずれか一方の破断伸度がこの範囲であることが好ましく、MD方向及びCD方向の両方の破断伸度がこの範囲であることがより好ましい。これにより、強度の高い不織布が得られる。
これにより、不織布では、非熱融着部の剛性が低いものの、強い力で大きく引き伸ばされることが可能である。したがって、不織布では、引き伸ばされて繊維が部分的に破断する強度である破断強度が高い。具体的に、不織布の破断強度は、4000cN/50mm以上であることが好ましく、4700cN/50mm以上であることがより好ましく、また、単位目付あたり1.1N/25mm/g/m以上、更には1.3N/25mm/g/m以上であることが好ましい。更に、不織布では、MD方向及びCD方向のいずれか一方の破断強度がこの範囲であることが好ましく、MD方向及びCD方向の両方の破断強度がこの範囲であることがより好ましい。
また、不織布の非熱融着部を構成する繊維には、ベースポリマーに添加されるポリマーとして低アイソタクチック性のプロピレン単独重合体が多く含まれていることが好ましい。これにより、不織布では、非熱融着部における破断伸度が更に大きくなる。したがって、不織布では、更に高い破断強度が得られる。
不織布を構成する繊維のベースポリマーとしてはプロピレン単独重合体からなるもので、アイソタクチックプロピレンからなるホモポリマーが好ましい。ベースポリマーは主成分として構成繊維中に60重量%以上、より好ましくは75重量%以上含むことが好ましい。
不織布を構成する繊維には、柔軟性、摩擦低減、べたつき防止の観点から、柔軟剤として例えばワックスエマルジョン、反応型柔軟剤、シリコーン系化合物、界面活性剤などを使用することが好ましい。特にアミノ基含有シリコーン、オキシアルキレン基含有シリコーン、界面活性剤を使用することが好ましい。界面活性剤としては、(1)カルボン酸塩系のアニオン界面活性剤、スルホン酸塩系のアニオン界面活性剤、硫酸エステル塩系のアニオン界面活性剤、リン酸エステル塩系のアニオン界面活性剤(特にアルキルリン酸エステル塩)等のアニオン界面活性剤;(2)ソルビタン脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノステアレート、ジエチレングリコールモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノオレート、プロピレングリコールモノステアレート等の多価アルコールモノ脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、N−(3−オレイロキシ−2−ヒドロキシプロピル)ジエタノールアミン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビット蜜ロウ、ポリオキシエチレンソルビタンセスキステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンセスキステアレート、ポリオキシエチレングリセリルモノオレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等の、非イオン系界面活性剤;(3)第4級アンモニウム塩、アミン塩又はアミン等のカチオン界面活性剤;(4)カルボキシ、スルホネート、サルフェートを含有する第2級若しくは第3級アミンの脂肪族誘導体、又は複素環式第2級若しくは第3級アミンの脂肪族誘導体等の、両性イオン界面活性剤などを使用することができる。また、必要に応じて、公知の薬剤を副次的添加剤(少量成分)として本発明の柔軟剤に添加することができる。柔軟剤は、構成繊維中に0.1重量%以上、20重量%以下含まれることが好ましく、0.5重量%以上、2.0重量%以下含まれることがより好ましい。
不織布における繊維としては単芯構造、または繊維断面がサイドバイサイドや芯鞘(同芯、偏芯)からなる複合繊維があげられる。
不織布を構成する繊維は少なくとも1種類以上からなり、不織布全体重量に対して50重量%、好ましくは80重量%以上が上記繊維であることが、十分な効果を呈する上で好ましい。2種以上の場合は、混綿、積層構造があげられる。積層の場合、1層以上に上記繊維を用いることが好ましい。
[不織布の製造方法]
(全体構成)
不織布製造装置は、供給部と、延伸部と、ネットコンベアと、熱エンボス部と、原反ロール巻取り部と、を備える。不織布製造装置は、原料となる樹脂からスパンボンド法によってスパンボンド不織布を連続的に製造可能に構成されている。
なお、スパンボンド不織布は、スパンボンド法で製造されたスパンボンド層のみからなる不織布に限定されず、スパンボンド層を用いた構成の不織布を広く含むものとする。例えば、スパンボンド不織布には、スパンボンド層以外にメルトブローン法で製造されたメルトブローン層を用い、スパンボンド層−メルトブローン層−スパンボンド層の順に積層された不織布(SMS不織布)等が含まれる。この場合、各層が同じ組成であってもよいし、異なっていてもよい。繊維径も各層で異なっていてもよい。例として、スパンボンド法により積層したSS、SSS、SSSS構造、スパンボンド法とメルトブローン法を組み合わせた、SMS、SSMS,SSMMS、SSSMMS、SMMMS、SMMMMS構造があげられる。
供給部は、樹脂を収容可能に構成されている。供給部の底部には、ノズルが配列されている。供給部は、溶融させた樹脂をノズルから押し出す。これにより、供給部は、ノズルの径に応じた外径に成形された樹脂を連続的に供給することができる。
延伸部は、供給部の下方に配置され、上下方向に貫通する筒状に形成されている。延伸部内では、上方から下方に向けて冷風が吹き付けられている。これにより、供給部から供給された樹脂は、延伸部内を通過する際に冷風によって延伸させられる。これにより、連続繊維である繊維が得られる。
このように、供給部及び延伸部は、樹脂を連続的に紡糸して連続繊維である繊維を得るための紡糸工程を行う。供給部及び延伸部における紡糸工程の詳細については後述する。
ネットコンベアは、延伸部の下方に配置されている。延伸部を通過した繊維は、ネットコンベア上で重なり合ってウェブを形成する。ネットコンベアは、繊維によって形成されたウェブを連続的に所定の搬送速度でMD方向に搬送することができる。
熱エンボス部は、ネットコンベアのMD方向に隣接している。熱エンボス部は、ネットコンベアで搬送されてきたウェブに熱エンボス加工によって熱融着部を形成する熱融着工程を行う。これにより、不織布が得られる。熱エンボス部における熱融着工程の詳細については後述する。
不織布原反ロールは、熱エンボス部のMD方向に隣接している。不織布原反ロールは、熱エンボス部で熱エンボス加工された不織布を巻き取ることによって回収する。このように、不織布製造装置では、原料となる樹脂から不織布を連続的に製造することができる。
(紡糸工程の詳細)
図1は、紡糸工程を示す図である。図1には、不織布製造装置の供給部110、延伸部120、及びネットコンベア130が示されている。また、図1には、供給部110のノズル111とネットコンベア130との間の紡糸距離Dが示されている。更に、図1には、供給部110のノズル111から押し出される樹脂Pの速度V1と、延伸部120を通過した繊維の速度V2と、が示されている。速度V1は速度V1=単位時間当たりの単孔ノズル樹脂押出重量/(ノズル孔断面積・ノズル温度における溶融樹脂比重)として求められる。また、速度V2は速度V2=単位時間当たりの単孔ノズル樹脂押出重量/(不織布繊維の平均直径から求められる繊維断面積・不織布繊維樹脂比重)として求められる。
延伸部120において樹脂Pを延伸させる倍率であるスピニング倍率Sは、速度V1,V2を用いて、以下の式で表すことができる。
S=V2/V1
スピニング倍率Sが大きいほど、繊維の太さ(繊維径)が小さくなるとともに、繊維の冷却速度が高くなる。スピニング倍率Sは、例えば、延伸部120における冷風の速度によって調整可能である。
紡糸工程における樹脂Pの平均速度は、(V1+V2)/2と表すことができる。ここで、樹脂Pの冷却がネットコンベア130に到達したときに完了するものとみなすと、繊維Pの冷却時間tは、以下の式で表すことができる。
t=2D/(V1+V2)
樹脂Pの平均冷却速度Rは、ノズル111の温度T1とネットコンベア130上の温度T2とを用いて、以下の式で表すことができる。
R=(T1−T2)/t=(T1−T2)(V1+V2)/2D
以上のように、紡糸工程における樹脂Pの平均冷却速度Rを算出可能である。
紡糸工程では、樹脂Pのスピニング倍率Sは、500倍以上が好ましく、900倍以上がより好ましく、また、1500倍以下が好ましく、1300倍以下がより好ましい。紡糸工程における繊維の平均冷却速度Rは、1.6℃/ms以上が好ましく、2.0℃/ms以上がより好ましく、また、3.5℃/ms以下が好ましく、3.0℃/msがより好ましい。このように、樹脂Pを急冷することによって、β晶の核となる核剤(β核剤)を添加することなく、プロピレン単独重合体のβ晶を多く含む繊維を形成することができる。エチレン−プロピレン共重合体が共結晶化によりプロピレン単独重合体の結晶中に入り込むことでβ晶が生成されやすくなると推察される。
β核剤を添加した場合、繊維伸度が低下し、強度の高い不織布が得られにくい。β核剤の例としてはガンマキナクリドン、キニザリンスルホン酸のアルミニウム塩、ジヒドロキナクリジン−ジオン及びキナクリジン−テトロン、トリフェネオールジトリアジン(triphenenol ditriazine)、ケイ酸カルシウム、ジカルボン酸(例えば、スベリン酸、ピメリン酸、オルト−フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸)、これらのジカルボン酸のナトリウム塩、これらのジカルボン酸の周期表第IIA族金属(例えば、カルシウム、マグネシウム、又はバリウム)との塩、δキナクリドン、アジピン酸又はスベリン酸のジアミド、種々のインジゴゾル及びシバンチン有機顔料、キナクリドンキノン、N',N'−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド、アントラキノンレッド及びビスアゾイエロー顔料等があげられるが、これらを含まないことが好ましい。
紡糸工程では、スピニング倍率Sを500倍以上と高くすることによって、樹脂Pの平均冷却速度Rを1.6℃/ms以上まで高めやすくなる。また、スピニング倍率Sを1500倍以下に留めることによって、延伸部120における樹脂Pの破断の発生を抑制することができる。
樹脂Pにおけるエチレン−プロピレン共重合体のエチレン濃度は、10重量%以上20重量%以下であることが好ましい。エチレン濃度を10重量%以上とすることで、前記成形条件においてβ晶が形成されやすくなる。また、エチレン濃度を20重量%以下に留めることで、本紡糸工程で、高いスピニング倍率Sでも破断しにくく、樹脂Pの良好な成形性が得られやすい。
また、樹脂Pにおけるエチレン−プロピレン共重合体の含有量は、5重量%以上25重量%以下であることが好ましい。共重合体の含有量を5重量%以上とすることで、前記成形条件においてβ晶が形成されやすくなる。また、共重合体の含有量を25重量%以下に留めることで、本紡糸工程において、高いスピニング倍率Sでも破断しにくく、樹脂Pの良好な成形性が得られやすい。
更に、樹脂Pにおけるエチレン−プロピレン共重合体は、ブロック共重合体であることが好ましい。ブロック共重合体は、アイソタクチックブロックとエチレンランダムブロックとが複数共重合されており、ランダム共重合体よりもアイソタクチックブロックがプロピレン単独重合体と相溶性が高いため、プロピレン単独重合体の結晶中に入り込みやすい。プロピレン単独重合体では、エチレン−プロピレン共重合体が結晶中に入り込むことにより、β晶が形成されやすくなる。
(熱融着工程の詳細)
図2は、熱融着加工を模式的に示す断面図である。熱エンボス部140は、表面に突起Eが形成されたエンボスロール141と、表面が平坦なフラットロール142と、を有する。エンボスロール141及びフラットロール142は、上下に隣接して配置されている。エンボスロール141及びフラットロール142は、その表面温度が例えば140℃程度となるように加熱される。また、エンボスロール141とフラットロール142の表面温度に差を設け、好ましくは2℃以上、より好ましくは5℃以上、また、好ましくは20℃以下、より好ましくは15℃以下とする。特にエンボスロールの表面温度をフラットロールの表面温度よりも低くすることが、エンボスロールがあたる面側の肌触りを良くする点で好ましい。エンボスロール141とフラットロール142にかかる線圧は50kgf/cm以上が好ましく、80kgf/cm以上がより好ましく、また、200kgf/cm以下が好ましく、150kgf/cm以下がより好ましい。繊維融着において、エンボスロール141またはフラットロール142の表面温度がDSC測定による融点に満たない場合であっても、エンボスロール141とフラットロール142間の圧力により繊維の融点が下がり、繊維同士が融着すると考えられる。
ネットコンベア130で形成されたウェブは、エンボスロール141とフラットロール142との間に挟まれて、MD方向に更に搬送される。ウェブがエンボスロール141とフラットロール142との間を通過する際には、ウェブがエンボスロール141の突起Eによってフラットロール142に押し付けられる。これにより、繊維が密着した状態で溶融することによって、繊維同士が融着して、熱融着部が形成される。
図2に示す状態では、突起Eからフラットロール142に向けて、4本の繊維F1〜F4がこの順番で重なり合っている。このような場合、突起Eとフラットロール142との間の中央領域の繊維Fには熱が加わりにくい。
つまり、突起Eに接触している繊維F1とフラットロール142に接触している繊維F4には熱が加わりやすいが、突起E及びフラットロール142のいずれにも接触していない繊維F2,F3には熱が加わりにくい。繊維F2,F3のいずれも溶融しないと、繊維F2,F3が融着しない。これに対し、繊維F2,F3を確実に溶融させるために繊維Fに高い温度を加えると、熱融着部と非熱融着部の境界部において、繊維F1,F4に加わる熱によるダメージが大きくなる。
この点、本実施形態では、繊維Fに加える温度を高くすることなく、繊維F2,F3を良好に融着させることができる。つまり、本実施形態では、繊維F2,F3を構成するプロピレン単独重合体のβ晶がα晶に再結晶化する際の発熱によって、繊維F2,F3の溶融が促進される。β晶がα晶に転移する際に、一度融解すると考えられている。このため、不織布では、熱融着部と非熱融着部の境界部において繊維Fに加わるダメージを抑えつつ、熱融着部においてより確実に繊維F同士を融着させることができる。これにより毛羽立ちも防止できる。
(スパンボンド法以外の不織布の製造方法)
不織布の製法としては短繊維を用いたヒートロール法、エアスルー法とエンボス処理を組み合わせた方法もあげられる。好ましくは紡糸された繊維をネット、ドラム、ベルトコンベアに集積する直接紡糸法があげられ、代表的にはスパンボンド法(S)、メルトブローン法(M)があげられる。繊維の融着点であるエンボス接合部の形成方法としては、ヒートエンボス法、超音波エンボス法があげられ、高速で成形する点でヒートエンボス法が好ましい。エンボスの前または後に繊維交絡処理として水流交絡、水蒸気交絡、ニードルパンチを行ってもよい。さらにエンボス後の各種処理としてカレンダー処理、親水化剤、または撥水化剤を塗布する処理、噛合いロールによる機械加工、起毛処理を加えることが好ましい。
[不織布の用途]
本発明に係る不織布は、肌触りの良さを活かして、各種の物品における人の肌に触れる面を形成するシートとして好ましく用いられる。例えば、生理用ナプキン、パンティライナー、使い捨ておむつ等の吸収性物品の表面シートや、吸収体を含む吸収性本体及びそれを固定しているパンツ型の外装体からなるパンツ型の吸収性物品における前記外装体の構成部材(外層材または内層材)等として用いることができる。更に、対人用清拭シート、スキンケア用シートなどとしても好適に用いられる。本発明に係る不織布は、凹凸形状に加工されてもよく、凸部側を、肌に接する側にして使用することが好ましい。
不織布と樹脂フィルムとが積層された積層シートは、例えば、おむつの裏面材として用
いることができる。不織布は、これを例えば吸収性物品の外層材または内層材シートとして用いる場合には、その目付け(坪量)が7g/m以上であることが好ましく、10g/m以上であることがより好ましく、また、25g/m以下であることが好ましく、15g/m以下であることがより好ましい。
[実施例及び比較例]
本発明の実施例及び比較例について説明する。しかし、以下に説明する実施例の構成は本発明の構成の一例に過ぎず、本発明は実施例の構成に限定されない。
具体的に、実施例及び比較例1〜3にでは、上記の不織布製造装置を用いて不織布を作製し、各不織布について評価を行った。いずれの不織布も、以下に示す条件以外については共通の条件で作製した。
表1には、各不織布の作製条件が示されている。具体的には、樹脂の組成として、プロピレン単独重合体及びエチレン−プロピレン共重合体の含有量、並びにエチレン−プロピレン共重合体におけるエチレン濃度が示されている。また、紡糸条件(スピニング倍率及び平均冷却速度)並びに不織布の目付が示されている。尚、プロピレン単独重合体及びエチレン−プロピレン共重合体の合計量を100重量%として、柔軟化剤として脂肪酸アミドが0.5重量%、白色向上剤として酸化チタン粒子が0.5重量%、すべての不織布に添加されている。
実施例、比較例1、2、3に用いたプロピレン単独重合体樹脂は、日本ポリプロ株式会社製SA03、MRF30g/10min、密度0.90g/cm、引張破断強さ36MPa、融点164℃のものを用いた。実施例に用いたエチレン−プロピレン共重合体樹脂はエクソンモービル社製Vistamaxx6202、MFR20g/10min、密度0.863g/cm、引張破断強さ5.5MPa以上、融点105℃のものを用いた。比較例2、3に用いたエチレン−プロピレン共重合体樹脂は、エクソンモービル社製Vistamaxx3980FL、MFR8g/10min、密度0.879g/cm、引張破断強さ19MPa以上、融点約120℃のものを用いた。
Figure 2019090142
比較例1では、実施例とは異なり、エチレン−プロピレン共重合体を用いず、つまりプロピレン単独重合体のみを用いた。また、比較例1では、スピニング倍率及び平均冷却速度を、実施例と同様に高くした。実施例と比較例1とでは、エチレン−プロピレン共重合体の有無のみが異なる。
比較例2,3では、スピニング倍率及び平均冷却速度を、実施例及び比較例1よりも低くした。また、比較例2,3では、実施例と同様に、エチレン−プロピレン共重合体を用いた。しかし、比較例2,3では、エチレン−プロピレン共重合体の含有量、並びにエチレン−プロピレン共重合体におけるエチレン濃度が実施例とは異なる。
なお、実施例及び比較例1〜3では、スピニング倍率が異なっていても、不織布における繊維径及び目付が同等となるように調整した。不織布における繊維径は、例えば、供給部のノズルの径によって調整可能である。不織布の目付は、例えば、ネットコンベアの搬送速度によって調整可能である。
図3Aは、実施例及び比較例1〜3に係る不織布から非熱融着部のみを切り出したサンプルのDSCで得られたDSC曲線を示すグラフである。DSC曲線では、横軸が温度を示し、縦軸が1mgあたりの熱流を示す。DSC曲線では、正のピークが発熱ピークであり、負のピークが吸熱ピークである。表2には、各サンプルについて、吸熱ピークPβ,Pαの値及びPβ/Pαの値が示されている。
Figure 2019090142
実施例では、160℃付近にプロピレン単独重合体のβ晶の溶融を示す吸熱ピークPβが見られる。また、この吸熱ピークPβは、1300μW/mg以上の2050μW/mgであり、実施例に係る不織布の非熱融着部にはプロピレン単独重合体のβ晶が多く含まれていることがわかる。
比較例1では、165℃付近にプロピレン単独重合体のα晶の溶融を示す吸熱ピークPαが見られる。この一方で、比較例1では、プロピレン単独重合体のβ晶の吸熱ピークPβが見られない。このため、比較例1に係る不織布の非熱融着部にはプロピレン単独重合体のβ晶がほとんど含まれていないことがわかる。
比較例2では、160℃付近にプロピレン単独重合体のβ晶の吸熱ピークPβが見られる。しかし、この吸熱ピークPβは、1300μW/mgよりも低い1280μW/mgであり、比較例2では実施例よりも不織布の非熱融着部に含まれるプロピレン単独重合体のβ晶が少ないことがわかる。
比較例3では、プロピレン単独重合体のβ晶の吸熱ピークPβが見られない。このため、比較例3に係る不織布の非熱融着部にはプロピレン単独重合体のβ晶がほとんど含まれていないことがわかる。このように、比較例1〜3ではいずれも実施例よりも不織布の非熱融着部に含まれるプロピレン単独重合体のβ晶が少ない。
次に、実施例に係る不織布の熱融着部に含まれるプロピレン単独重合体の結晶構造について検討した。不織布から熱融着部のみを切り出すことが困難なため、不織布全体のサンプルのDSCを行った。図3Bは、不織布全体のサンプルのDSCで得られたDSC曲線を示すグラフである。表3には、実施例に係るサンプルについて、吸熱ピークPβ,Pαの値及びPβ/Pαの値が示されている。また、表3には、不織布全体の吸熱ピークPβに対する表2に示す非熱融着部のみの吸熱ピークPβの比率であるPβ(非熱融着部)/Pβ(全体)の値も示されている。
Figure 2019090142
実施例では、プロピレン単独重合体のβ晶の吸熱ピークPβ以外に、167℃付近にプロピレン単独重合体のα晶の吸熱ピークPαが見られる。非熱融着部のみではプロピレン単独重合体のα晶の吸熱ピークPαが見られなかったことを考慮すると、熱融着部にプロピレン単独重合体のα晶が含まれていることがわかる。
また、図3Bには、比較例1〜3についても不織布全体のサンプルのDSCで得られたDSC曲線を示している。表3には、比較例1〜3に係るサンプルについても、吸熱ピークPβ,Pαの値及びPβ/Pαの値が示されている。表2に示す非熱融着部のみの吸熱ピークPβの値と、表3に示す不織布全体の吸熱ピークPβの値とを比較すると、実施例では不織布の非熱融着部の吸熱ピークPβよりも不織布全体の吸熱ピークPβの方が低くなったのに対し、比較例2と3では不織布の非熱融着部の吸熱ピークPβよりも不織布全体の吸熱ピークPβの方が高くなった。
続いて、実施例に係る不織布における製造過程の熱履歴について検討するためのサンプルを作製した。このサンプルでは、180℃に加熱してから徐冷することにより、不織布の製造過程における熱履歴をリセットした。図4は、このサンプルのDSCで得られたDSC曲線を示すグラフである。
このDSC曲線では、160℃付近にプロピレン単独重合体のβ晶の吸熱ピークPβが見られず、165℃付近にプロピレン単独重合体のα晶の吸熱ピークPαが見られる。つまり、熱履歴をリセットすると、プロピレン単独重合体のβ晶が消滅する。したがって、プロピレン単独重合体のβ晶の発生には紡糸工程での急冷が必要であることがわかる。
実施例及び比較例1〜3に係る不織布について、MD方向及びCD方向の引張り試験を行った。MD方向の引張り試験には、MD方向に200mm、CD方向に50mmの不織布のサンプルを用いた。CD方向の引張り試験には、MD方向に50mm、CD方向へ200mmの不織布のサンプルを用いた。
引張り試験では、株式会社島津製作所製のオートグラフAG-ISを用い、チャク間を150mmとし各サンプルを300mm/分の速度で伸長させ、各伸度における引張り荷重を測定した。そして、各サンプルの引張り荷重における最大点強度を破断強度とした。また、各サンプルにおいて最大点強度における伸度を破断伸度とした。表4は、各サンプルにおけるMD方向及びCD方向の破断強度及び破断伸度を示している。サンプル数はn=5とし、その平均値を求めた。
Figure 2019090142
実施例では、MD方向及びCD方向のいずれにおいても、比較例1〜3よりも高い破断強度が得られている。単位目付あたり1.39N/25mm/g/mと高いものであった。図5は、MD方向の引張り試験の結果を示すグラフである。図5では、横軸が伸度を示し、縦軸が引張り荷重を示している。なお、CD方向の引張り試験でも、MD方向の引張り試験と同様の傾向が見られている。
図5に示すように、実施例では比較例1よりも曲線の立ち上がりが緩やかであり、実施例に係る不織布では比較例1に係る不織布よりも剛性が低いことがわかる。しかし、実施例に係る不織布では、破断伸度が58%と大きいことにより、破断伸度が22%と小さい比較例に係る不織布よりも大幅に高い破断強度が得られている。
比較例2,3では、実施例と同様に大きい破断伸度が得られている。しかし、実施例では比較例2,3よりも曲線の立ち上がりが急峻であり、実施例に係る不織布では比較例2,3に係る不織布よりも剛性が高いことがわかる。このため、実施例に係る不織布では、比較例2,3に係る不織布よりも高い破断強度が得られている。
110…供給部
111…ノズル
120…延伸部
130…ネットコンベア
142…フラットロール
E…突起
P…樹脂
F…繊維
W…ウェブ

Claims (8)

  1. プロピレン単独重合体とエチレン−プロピレン共重合体との混合物で形成された繊維で構成され、
    前記繊維同士が熱融着した熱融着部と、前記繊維同士が熱融着していない非熱融着部と、を有し、
    前記非熱融着部のDSC曲線には、140℃以上162℃以下の領域に1300μW/mg以上の高さの吸熱ピークが見られる
    不織布。
  2. 請求項1に記載の不織布であって、
    前記不織布は、スパンボンド不織布である
    不織布。
  3. 請求項1又は2に記載の不織布であって、
    破断伸度が50%以上である
    不織布。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の不織布であって、
    前記エチレン−プロピレン共重合体中のエチレン濃度が10重量%以上25重量%以下である
    不織布。
  5. 請求項4に記載の不織布であって、
    前記エチレン−プロピレン共重合体の含有量が前記混合物に対し5重量%以上25重量%以下である
    不織布。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載の不織布であって、
    前記エチレン−プロピレン共重合体がブロック共重合体である
    不織布。
  7. スパンボンド法による不織布の製造方法であって、
    プロピレン単独重合体とエチレン−プロピレン共重合体との混合物を、500倍以上1500倍以下のスピニング倍率で、平均冷却速度が1.6℃/ms以上3.5℃/ms以下となるように紡糸して繊維を形成し、
    前記繊維でウェブを形成し、
    前記ウェブに熱エンボス加工を施すことにより、前記繊維が熱融着された熱融着部を形成する
    不織布の製造方法。
  8. 前記エチレン−プロピレン共重合体中のエチレン濃度が10重量%以上20重量%以下である
    請求項7に記載の不織布の製造方法。
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