JP2019090000A - シンチレータ、その形成方法および放射線検出装置 - Google Patents

シンチレータ、その形成方法および放射線検出装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ブライトバーンの抑制およびシンチレータの品質の向上の双方に有利な技術を提供する。【解決手段】シンチレータは、基板に蒸着された柱状結晶構造のシンチレータであって、前記結晶構造の各柱は、ハロゲン化アルカリ金属化合物を母体材料として備えると共に、水素(H)よりイオン化傾向の小さい金属である貴金属の化合物を添加物として含有しており、前記添加物は前記母体材料より融点が低い。【選択図】図2

Description

本発明は、シンチレータ、その形成方法および放射線検出装置に関する。
放射線検出装置(或いは放射線撮像装置)のなかには、放射線をシンチレータにより光に変換し、その光を光電変換素子により検出するように構成されたものがある。シンチレータには、放射線が照射されたことに応じて特性が変動する場合があり、このような現象は「ブライトバーン」とも称される(特許文献1参照)。
特開2016−88988号公報
特許文献1には、ブライトバーンを抑制する方法の一例として、一価の陽イオンとなる原子をシンチレータの発光効率を向上させるための賦活剤より多く含有させることが記載されている。しかしながら、このような構成によれば、シンチレータの結晶性が低下する原因となり、或いは、シンチレータ内の光の伝達効率が低下する原因ともなりうる。
本発明の目的は、ブライトバーンの抑制およびシンチレータの品質の向上の双方に有利な技術を提供することにある。
本発明の一つの側面はシンチレータにかかり、前記シンチレータは、基板に蒸着された柱状結晶構造のシンチレータであって、前記結晶構造の各柱は、ハロゲン化アルカリ金属化合物を母体材料として備えると共に、水素(H)よりイオン化傾向の小さい金属である貴金属の化合物を添加物として含有しており、前記添加物は前記母体材料より融点が低いことを特徴とする。
本発明によれば、ブライトバーンを抑制すると共にシンチレータの品質を向上させることができる。
ブライトバーンの評価方法の例を説明するための図である。 シンチレータの形成方法の例を説明するための図である。 幾つかの条件に基づく実験結果を対比して説明するための図である。 放射線検出装置の使用態様の例を説明するための図である。
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な態様を説明する。なお、各図は、構造ないし構成を説明する目的で記載されたものに過ぎず、図示された各部材の寸法は必ずしも現実のものを反映するものではない。また、各図において、同一の部材または同一の構成要素には同一の参照番号を付しており、以下、重複する内容については説明を省略する。
図1(A)及び図1(B)は、ブライトバーンの評価方法を説明するための模式図である。図1(A)に示されるように、ここでは、基板1に蒸着されたシンチレータ2を、複数の光電変換素子が配列されたセンサ基板(センサ部)3に貼り合わせて成る放射線検出装置APについて、ブライトバーンの評価を行う。シンチレータ2は、放射線を受けて光(シンチレーション光)を発生し、この光はセンサ基板3により検出される。放射線検出装置APは、このような構成により放射線を検出可能とする。
シンチレータ2は、一般に蒸着装置を用いて略真空(例えば0.01Pa以下)の環境下で蒸着法により基板1に形成され、本例では柱状(針状)結晶構造を有する。結晶構造の各柱は、母体材料としてハロゲン化アルカリ金属化合物を備える。この母体材料として、本例ではヨウ化セシウム(CsI)が用いられるものとする。また、本例では、シンチレータ2の各柱は、発光効率を向上させるための賦活剤としてタリウム(Tl)を含有する。
尚、母体材料の例は、本例に限られるものではなく、例えばヨウ化ナトリム(NaI)やヨウ化カリウム(KI)等の他の蛍光体が用いられてもよい。また、賦活剤の例は、本例に限られるものではなく、例えばユウロピウム(Eu)やインジウム(In)等の他の賦活剤が用いられてもよい。
図1(B)は、放射線検出装置AP上に放射線遮蔽材4を配置された状態を示す。図中において、シンチレータ2のうち、放射線遮蔽材4で覆われていない部分を「露出部分21」と示し、放射線遮蔽材4で覆われた部分を「被覆部分22」と示す。よって、この状態で放射線検出装置APに対して放射線を照射した場合、露出部分21には放射線が入射し、被覆部分22には放射線が入射しない。ここで、放射線照射の終了後において、これら部分21及び22間には特性(感度、或いは、放射線から光への変換効率)の差が生じる場合がある。
具体的には、放射線が入射した露出部分21ではキャリア(電子‐正孔対)が発生し、これらが再結合することでシンチレーション光が発生する。このとき、露出部分21では、格子欠陥等に起因するエネルギートラップ準位(以下、単にトラップ準位)に、このキャリアが意図せずに捕獲される場合がある。このことは、放射線照射の終了後の不測のタイミングでの再結合の発生、或いは、更なる放射線照射の際の不測の特性変動をもたらしうる。このような現象はブライトバーンと称される。
より詳細には、トラップ準位は、シンチレータ2の結晶構造におけるバンドギャップ(価電子帯‐導電帯間のエネルギーバンド)間に形成されうるエネルギー準位であってキャリアを捕獲(トラップ)可能なエネルギー準位である。一例として、トラップ準位は、主にヨウ化セシウムで構成されたシンチレータ2の結晶構造において、例えば1以上のヨウ素原子が抜けて成る格子欠陥(いわゆるヨウ素抜け)により形成されうる。また、トラップ準位は、賦活剤としてのタリウムの存在によっても形成されうる。一般に、タリウムの存在に起因するトラップ準位は、格子欠陥に起因するトラップ準位に比べて“深い(バンドギャップの中央寄りの)”エネルギー準位である。よって、格子欠陥及びタリウムが互いに近傍に存する場合には、キャリアが比較的長時間にわたってトラップ準位に捕獲される形となり、上記ブライトバーンを生じさせる。ブライトバーンは、放射線照射後、例えば数時間〜数日にわたって残存することもある。
尚、上記説明は、次の文献:
‐“半導体中の深いエネルギー準位の不純物の測定”、堺和夫ほか、生産研究、25巻、7号、278〜287頁、1973年7月
‐“電子デバイスにおける素材とその計測評価技術 DLTS法”、奥村次徳、HYBRIDS、Vol.7、No.5、29〜36頁、1991年
を参照することで補足されうる。
上記説明のとおり、放射線照射の終了後ではブライトバーンが生じ、部分21及び22間に特性の差が生じうる。ブライトバーンの評価は、比較的大きい放射線強度(線量)の放射線を照射して、いわゆる「焼付け」を行った後に、比較的小さい放射線強度の放射線を照射したときのシンチレータ2の輝度を計測することで、行われる。本明細書において、ブライトバーンの評価値BB(t)は、
BB(t)≡{a(t)/b(t)}/{a(0)/b(0)}−1、
ここで、
a(0):焼付け前の露出部分21の輝度値(単位体積当たり。以下同様。)、
b(0):焼付け前の被覆部分22の輝度値、
a(t):焼付け後、時間t経過後の露出部分21の輝度値、
b(t):焼付け後、時間t経過後の被覆部分22の輝度値、
で表される。
上記式において、a(0)/b(0)は、焼付け前の露出部分21及び被覆部分22間の輝度値の比を表す。ここでは、シンチレータ2の輝度分布は露出部分21及び被覆部分22間で均一であり、
a(0)/b(0)=1、
が成立するものとする。
次に、図1(B)に示されるように、放射線遮蔽材4を設置して焼付けを行った後に放射線遮蔽材4を除去し、時間t経過後の露出部分21及び被覆部分22の輝度値をそれぞれ測定してa(t)/b(t)を求めた。
ここで、前述のブライトバーンが生じている場合、
a(t)/b(t)>1、
が成立することとなり、
BB(t)>0、
となる。一方、ブライトバーンが抑制ないし低減されている場合には、
BB(t)≒0、
となる。即ち、評価値BB(t)が小さいほどブライトバーンが抑制ないし低減されており、シンチレータ2の品質が良好であるといえる。
ブライトバーン評価値BB(t)が大きい場合、或る撮影で得られる信号に、その直前の撮影で得られた信号が重畳されることとなりうる。このことは、撮像により得られた画像に残像やアーチファクト等をもたらす場合があり、画像の品質の低下の原因ともなりうる。このことは、例えば放射線撮影を連続して行う場合(いわゆる連続撮影を行う場合)に顕著に現れうる。
ここで、センサ基板3上の光電変換素子におけるノイズ(暗電流に起因するノイズ成分、いわゆるダークノイズ。)に比べて充分に小さい場合(例えば、1/10以下の場合)、焼付け後の露出部分21及び被覆部分22の輝度値の変化量は該ノイズに埋もれて区別しにくくなると云える。そのため、一般的に用いられるセンサ基板3上の光電変換素子のS/N比を30dBとした場合(20×log10(S/N)=30、即ち、S/N≒33の場合)、上記ブライトバーン評価値BB(t)の目標値として0.3%以下が設定されるとよい。
図2は、実施形態に係るシンチレータ2の形成方法を説明するための模式図である。詳細については後述とするが、本実施形態では、上述のブライトバーンの抑制ないし低減のため、シンチレータ2は、母体材料より融点の低い添加物(以下、本明細書において単に「添加物」という場合がある。)を更に含有する。
この添加物としては、水素(H)よりイオン化傾向の小さい金属である貴金属の化合物が用いられる。貴金属としては、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、銅(Cu)及び水銀(Hg)が挙げられ、これらの少なくとも1つが用いられればよい。貴金属が銅や銀の場合、その化合物の例としては、ヨウ化銅やヨウ化銀等のヨウ化物、或いは、臭化銅や臭化銀等の臭化物が挙げられる。
シンチレータ2は、公知の蒸着装置5を用いて形成可能である。蒸着装置5による蒸着処理には電子ビーム蒸着が好適に採用され、本実施形態では、蒸着装置5は、チャンバ50、保持部51、並びに、蒸発部52A、52B及び52Cを備える。チャンバ50は、蒸着処理を行うための空間を提供する。チャンバ50内の圧力および温度は不図示のコントローラにより制御可能であり、蒸着処理の際にはチャンバ50内は略真空状態(0.01Pa以下)かつ所望の温度(例えば80〜140℃程度)に維持される。保持部51は、蒸着処理対象物としての基板1を、図中において矢印で示されるように回転可能に保持し、蒸着処理の際には基板1を回転させる。
蒸発部52Aは、るつぼ内に原料(蒸発原料)としてヨウ化セシウムを貯留しており、蒸着処理の際にはその融点以上の温度まで加熱し、保持部51に保持された基板1に向けて蒸発物を出射する。蒸発部52Bは、るつぼ内に原料としてヨウ化タリウムを貯留しており、蒸着処理の際にはその融点以上の温度まで加熱し、基板1に向けて蒸発物を出射する。蒸発部52Cは、るつぼ内に原料として銅を貯留しており、蒸着処理の際にはその融点以上の温度まで加熱し、基板1に向けて蒸発物を出射する。蒸発部52A〜52Cによる蒸発物の出射は並行して行われ、詳細については後述とするが、これにより、基板1には、賦活剤および添加物を含有するシンチレータ2が柱状結晶構造を有して形成される。
シンチレータ2が上記添加物を含有することでブライトバーンが抑制ないし低減されることは本願発明者による鋭意検討により見出され、そのメカニズムは次のように考えられている。即ち、本実施形態によれば、シンチレータ2が含有する添加物は、上述のトラップ準位にカップリングし、又は、トラップ準位の作用をキャンセルする。或いは、添加物は、トラップ準位が捕獲可能なキャリア(自由電子)を提供してこのキャリアを該トラップ準位に予め捕獲させる。これにより、その後の放射線照射の際に生じるキャリア(電子‐正孔対)は、該トラップ準位に捕獲されることなく、適切に再結合してシンチレーション光を発生する。結果として上述のブライトバーンは抑制ないし低減される形となる。
シンチレータ2が含有する添加物は、例えばX線回析により確認可能である。シンチレータ2は潮解性を有するため、例えば、シンチレータ2を水に溶かした後、それを蒸発乾固させてシンチレータ2の粉末を取得する。本実施形態では上記貴金属として銅が用いられ、この粉末に対してX線回析を行うと、純水な金属としての銅は検出されない一方で、CuI(融点605℃)、CsCu(融点390℃)、及び、CsCu(融点383℃)が検出される。
即ち、上記添加物は銅の化合物(CuI、CsCu、及び、CsCu)であり、これらは何れも母体材料のヨウ化セシウム(融点621℃)に比べて融点が低い。本実施形態では、上記添加物は、母体材料より高い融点を有しないため、蒸着装置5による蒸着処理の結果、少なくとも、粒子状あるいは粉末状の不純物としては含有されなかった。換言すると、添加物を構成する元素(原子)は、シンチレータ2が有する柱状結晶構造に、該結晶構造の構成原子として組み込まれているものと考えられ、何らかの固形物としては析出していない。このことは、シンチレータ2の結晶性を向上させ、それに伴ってシンチレーション光の伝達特性を向上させることとなり、即ち、シンチレータ2の品質が向上する。
以下、図3を参照しながら、幾つかの条件に基づく実験結果を説明する。図3では、比較例および第1〜第6実験例を示す。
比較例は、貴金属の添加物を含有しない比較例に対応する。比較例では、母体材料としてヨウ化セシウムを備えると共にタリウムを賦活剤として含有する柱状結晶構造のシンチレータ2を形成した。具体的には、蒸発部52Aおよび52Bは、それぞれ、ヨウ化セシウムおよびヨウ化タリウムを貯留し、それらを蒸発させて基板1に向けて出射する。基板1としては、所定の厚さのシリコン基板にアルミニウム膜(Al、膜厚200nm)を反射層として形成し、その上に酸化シリコン(SiO、膜厚100nm)を積層したものを準備した。蒸着処理は、チャンバ50内の圧力が0.01Pa以下、基板1の温度が80℃〜140℃程度、及び、保持部51による基板1の回転速度が60rpm、という条件下で行われた。尚、比較例では蒸発部52Cは設置/駆動されないものとする。
蒸着処理の後、該処理済の基板1の温度が室温まで下がってから、基板1に形成されたシンチレータ2についてSEM(走査型電子顕微鏡)観察およびICP(誘導結合プラズマ)分析を行った。比較例では、膜厚750μm程度およびタリウム濃度0.42モル%程度の柱状結晶構造がシンチレータ2として得られた。
このようなシンチレータ2に対して、国際規格に準拠する線質RQA5を用いて、エッジ法に基づく空間周波数2LP/mm(本/mm)でのMTF(Modulation Transfer Function)の評価を行った。後述の第2実験例との対比のため、比較例のMTF評価値は図3において「100」と示される。
また、このようなシンチレータ2に対して、図1(B)を参照しながら述べたブライトバーン評価を行った。先ず、図1(B)の状態(放射線遮蔽材4を配置した状態)で、放射線照射条件として、管電圧80kV程度かつ線量2.9mGy程度として、シンチレータ2に対して照射(焼付け)を行った。その後、放射線遮蔽材4を除去して、焼付け後から2.5分経過後、10分経過後、及び、30分経過後のそれぞれについて、管電圧70kV程度かつ線量2μGy程度として、0.6mm厚の銅板を介して放射線を照射した。これにより、ブライトバーン評価値BB(2.5min)、BB(10min)及びBB(30min)をそれぞれ取得した。
上記2.5分経過後のブライトバーン評価値は、対比のため、図3において「100」と示される。このとき、10分経過後のブライトバーン評価値(即ち、BB(10min)/BB(2.5min)×100)は95であった。また、30分経過後のブライトバーン評価値(即ち、BB(30min)/BB(2.5min)×100)は91であった。
次に、第1実験例は、添加物を含有させた本実施形態の実験例に対応する。第1実験例では、蒸発部52A及び52Bと共に蒸発部52Cが駆動され、蒸発部52Cは、銅を貯留し、これを蒸発させて基板1に向けて出射する。その他の条件については、比較例同様とする。これにより、添加物として銅の化合物を更に含有するシンチレータ2が形成され、SEM観察およびICP分析の結果、第1実験例では、膜厚720μm程度、タリウム濃度0.45モル%程度、及び、添加物濃度3ppmの柱状結晶構造がシンチレータ2として得られた。
第1実験例についても、比較例同様の手順で、MTF評価およびブライトバーン評価を行った。第1実験例では、MTF評価値は112となった。また、第1実験例では、2.5分経過後、10分経過後、及び、30分経過後のブライトバーン評価値は、それぞれ、60、51、及び、38となり、即ち、ブライトバーンが比較例に比べて6割程度に抑制ないし低減されたと言える。
第2実験例は、第1実験例より多くの添加物を含有させた本実施形態の実験例に対応する。SEM観察およびICP分析の結果、第2実験例では、膜厚585μm程度、タリウム濃度0.75モル%程度、及び、添加物濃度10ppmの柱状結晶構造がシンチレータ2として得られた。
第2実験例についても、比較例同様の手順で、MTF評価およびブライトバーン評価を行った。第2実験例では、MTF評価値は127となった。また、第2実験例では、2.5分経過後、10分経過後、及び、30分経過後のブライトバーン評価値は、それぞれ、46、39、及び、36となり、即ち、ブライトバーンが抑制ないし低減されたと言える。
第3実験例は、第2実験例より多くの添加物を含有させた本実施形態の実験例に対応する。SEM観察およびICP分析の結果、第3実験例では、膜厚655μm程度、タリウム濃度0.43モル%程度、及び、添加物濃度30ppmの柱状結晶構造がシンチレータ2として得られた。
第3実験例についても、比較例同様の手順で、MTF評価およびブライトバーン評価を行った。第3実験例では、MTF評価値は111となった。また、第3実験例では、2.5分経過後、10分経過後、及び、30分経過後のブライトバーン評価値は、それぞれ、34、32、及び、30となり、即ち、ブライトバーンが抑制ないし低減されたと言える。
第4実験例は、第3実験例より多くの添加物を含有させた本実施形態の実験例に対応する。SEM観察およびICP分析の結果、第4実験例では、膜厚830μm程度、タリウム濃度0.54モル%程度、及び、添加物濃度160ppmの柱状結晶構造がシンチレータ2として得られた。
第4実験例についても、比較例同様の手順で、MTF評価およびブライトバーン評価を行った。第3実験例では、MTF評価値は139となった。また、第3実験例では、2.5分経過後、10分経過後、及び、30分経過後のブライトバーン評価値は、それぞれ、39、35、及び、20となり、即ち、ブライトバーンが抑制ないし低減されたと言える。
第5実験例は、第4実験例より多くの添加物を含有させた本実施形態の実験例に対応する。SEM観察およびICP分析の結果、第5実験例では、膜厚720μm程度、タリウム濃度0.55モル%程度、及び、添加物濃度180ppmの柱状結晶構造がシンチレータ2として得られた。
第5実験例についても、比較例同様の手順で、MTF評価およびブライトバーン評価を行った。第3実験例では、MTF評価値は146となった。また、第3実験例では、2.5分経過後、10分経過後、及び、30分経過後のブライトバーン評価値は、それぞれ、40、35、及び、11となり、即ち、ブライトバーンが抑制ないし低減されたと言える。
第6実験例は、第5実験例より多くの添加物を含有させた本実施形態の実験例に対応する。SEM観察およびICP分析の結果、第6実験例では、膜厚650μm程度、タリウム濃度1.37モル%程度、及び、添加物濃度240ppmの柱状結晶構造がシンチレータ2として得られた。
第6実験例についても、比較例同様の手順で、MTF評価およびブライトバーン評価を行った。第3実験例では、MTF評価値は161となった。また、第3実験例では、2.5分経過後、10分経過後、及び、30分経過後のブライトバーン評価値は、それぞれ、16、11、及び、10となり、即ち、ブライトバーンが抑制ないし低減されたと言える。
以上、本実施形態によれば、柱状結晶構造のシンチレータ2の各柱は、ハロゲン化アルカリ金属化合物を母体材料として備えており、かつ、この母体材料より融点の低い添加物として貴金属の化合物を含有している。これにより、放射線照射の際に生じるキャリア(電子‐正孔対)がシンチレータ2の格子欠陥等に起因するトラップ準位に意図せず捕獲されてしまうことを防止する。よって、本実施形態によれば、ブライトバーンを抑制ないし低減可能となる。このことは、他の添加物として賦活剤(本実施形態ではタリウム)を含有して“深い”トラップ準位を有しうる結晶構造において特に有利である。また、上記添加物として母体材料に比べて融点が低いものを用いることで、蒸着の際には、添加物の元素は、シンチレータ2が有する柱状結晶構造に、該結晶構造の構成原子として組み込まれているものと考えられ、析出することがない。よって、本実施形態によれば、シンチレータ2の結晶性を向上させることもでき、シンチレータ2の品質向上にも有利である。
ここで、添加物濃度を大きくすると、シンチレータ2が放射線を受けた際の輝度が低下する可能性がある。図3を参照すると、第1〜第6実験例の実験結果から分かるように、第1実験例によれば添加物濃度を3ppmとしてブライトバーンが抑制ないし低減される。そのため、添加物を過剰にシンチレータ2に含有させる必要はない。例えば、添加物濃度を、240ppm以下、好適には160ppm以下、より好適には30ppm以下とすることで、シンチレータ2の輝度を維持しながらブライトバーンを抑制ないし低減することができる。一方、ブライトバーンを適切に抑制ないし低減するため、例えば、添加物濃度は、3ppm以上、好適には10ppm以上であるとよい。
まとめると、シンチレータ2が貴金属の化合物を添加物として含有することでシンチレータ2の結晶性の向上および品質向上の双方を実現可能となる。一方で、添加物濃度を大きくし過ぎると、シンチレータ2の輝度(シンチレーション光の輝度)が低下してしまう場合がある。そのため、シンチレータ2は、上記添加物を、シンチレーション光の輝度が維持される濃度で含有するとよい。例えば、添加物濃度は、該添加物を含有するシンチレータ2の輝度の低下量が、該添加物を含有しない場合の輝度に比べて20%以下、好適には10%以下、となるように決定されるとよい。
上述のシンチレータは、放射線を検出する放射線検出装置(放射線撮像装置)に適用されうる。放射線には、典型的にはX線が用いられるが、アルファ線やベータ線等が用いられてもよい。
図4は、放射線検出装置の使用態様の一例を示す。放射線源610が発生した放射線611は、患者等の被検者620の胸部621を透過し、放射線検出装置630に入射する。装置630に入射した放射線611には患者620の体内の情報が含まれており、装置630は、放射線611に応じた電気的情報を取得する。この電気的情報は、ディジタル信号に変換された後、例えばプロセッサ640によって所定の信号処理が為される。
医師等のユーザは、この電気的情報に応じた放射線画像を、例えばコントロールルームのディスプレイ650で観察することができる。ユーザは、放射線画像又はそのデータを、所定の通信手段660により遠隔地へ転送することができ、この放射線画像を、他の場所であるドクタールームのディスプレイ651で観察することもできる。また、ユーザは、この放射線画像又はそのデータを所定の記録媒体に記録することもでき、例えば、プロセッサ670によってフィルム671に記録することもできる。
以上では幾つかの好適な例を示したが、本発明はこれらに限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその一部が変更されてもよい。また、本明細書に記載された個々の用語は、本発明を説明する目的で用いられたものに過ぎず、本発明は、その用語の厳密な意味に限定されるものでないことは言うまでもなく、その均等物をも含みうる。
1:基板、2:シンチレータ。

Claims (10)

  1. 基板に蒸着された柱状結晶構造のシンチレータであって、
    前記結晶構造の各柱は、ハロゲン化アルカリ金属化合物を母体材料として備えると共に、水素(H)よりイオン化傾向の小さい金属である貴金属の化合物を添加物として含有しており、前記添加物は前記母体材料より融点が低い
    ことを特徴とするシンチレータ。
  2. 前記添加物は、粒子状あるいは粉末状の不純物としては前記結晶構造に含有されていない
    ことを特徴とする請求項1に記載のシンチレータ。
  3. 前記貴金属は、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、銅(Cu)及び水銀(Hg)の少なくとも1つである
    ことを特徴とする請求項1に記載のシンチレータ。
  4. 前記貴金属は、金(Au)、銀(Ag)及び銅(Cu)の少なくとも1つである
    ことを特徴とする請求項1に記載のシンチレータ。
  5. 前記添加物は、10ppmから30ppmの範囲内である
    ことを特徴とする請求項1に記載のシンチレータ。
  6. 前記結晶構造の各柱は、前記結晶構造のバンドギャップ間にトラップ準位を形成する他の添加物を更に含有する
    ことを特徴とする請求項1に記載のシンチレータ。
  7. 前記他の添加物は、前記母体材料の発光効率を向上させるための賦活剤である
    ことを特徴とする請求項6に記載のシンチレータ。
  8. 請求項1に記載のシンチレータと、
    複数の光電変換素子が配列されたセンサ部と、を備える
    ことを特徴とする放射線検出装置。
  9. 基板に蒸着された柱状結晶構造のシンチレータであって、
    前記結晶構造の各柱は、ハロゲン化アルカリ金属化合物を母体材料として備えると共に、前記母体材料より融点が低い添加物として、水素(H)よりイオン化傾向の小さい金属である貴金属の化合物を、シンチレーション光の輝度が維持される濃度で含有している
    ことを特徴とするシンチレータ。
  10. シンチレータの形成方法であって、
    基板を準備する工程と、
    前記基板に対して、ハロゲン化アルカリ金属化合物と、水素(H)よりイオン化傾向の小さい金属である貴金属とを蒸着させて柱状結晶構造のシンチレータを形成する工程と、を含み、
    前記結晶構造の各柱は、母体材料として前記ハロゲン化アルカリ金属化合物を備えると共に、前記母体材料より融点の低い添加物として前記貴金属の化合物を含有する
    ことを特徴とするシンチレータの形成方法。
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