JP2019089993A - 表面修飾粒子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】極性の高い樹脂と無機粒子又は無機塩水和物を含む粒子との混和性を改善する表面修飾粒子の製造方法を提供する。【解決手段】溶媒の中で、表面に水酸基を有する無機粒子又は無機塩水和物を含む粒子と、多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物と、を混合し、無機粒子又は無機塩水和物を含む粒子の表面に多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物を結合する工程と、上記表面に結合した複数の上記多価イソシアネート化合物又は上記多価ブロックイソシアネート化合物に存在するイソシアネート基を架橋反応させる工程と、を有する、表面修飾粒子の製造方法である。【選択図】なし

Description

本開示は、表面修飾粒子の製造方法に関する。
従来、物質を保護することを目的として、マイクロカプセル法により種々の物質をカプセルに内包して外部と隔離する技術が知られている。
マイクロカプセルは、一般的に所望とするカプセル封入材料を、壁材によって被覆したミクロン単位のカプセルである。マイクロカプセルは、樹脂等への混和性の最適化、外部環境(例えば空気又は光による分解)からの保護及び放出制御等の様々な目的で使用されるに至っている。
画像を印刷する技術分野においては、カプセル封入材料として顔料の粒子を選択し、壁材及び架橋剤によって粒子を表面処理する技術が知られている。例えば、水中でポリイソシアネートとアミンとを反応させ、得られた水溶性ポリイソシアネート付加生成物を含む分散剤に顔料を加え、表面処理された顔料調合物を作製する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、粒子の表面処理の際、界面重合法を用いる方法も知られている。例えば、イソシアネート及び顔料粒子を含む有機溶媒相と、界面活性剤を含む連続水性相とを有する水中油型エマルジョンを作製することで、顔料を含むマイクロカプセルを製造する方法が記載されている(例えば、特許文献2参照)。
金属酸化物等の無機粒子の表面処理に利用される技術として、界面重合法を用いずに無機粒子に直接表面処理を施す方法が知られている。このような方法として、例えば特許文献3には、ポリマー性脂肪酸及び水酸化マグネシウムを強力ミキサー中で混合し、水酸化マグネシウムの表面をポリマー性脂肪酸で修飾する方法が開示されている。
また、アミノシランで表面修飾された微粒子無機材料を含む水媒体中に、ポリイソシアネートを含む、水に不溶性の溶液を滴下することで、水中油型エマルションを形成し、架橋反応させてマイクロカプセル化する方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。
特許第4101330号公報 特許第5138958号公報 特表平11−501686号公報 特許第5379169号公報
しかし、従来技術のうち、特許文献1、2及び4ではいずれも、無機粒子の、樹脂との混和性については言及されていない。また、特許文献1では、水中でイソシアネートとアミンとを反応させ、架橋させた後に顔料を加えるため、顔料の分散性に劣り、樹脂との混和性は期待できない。
また、一般的に、有機溶媒相において無機粒子及び無機塩水和物を含む粒子は溶解しにくい。そのため、特許文献2のように界面重合法を用いた方法では、有機溶媒相に分散しにくい例えば金属酸化物等の無機粒子をカプセル化することは困難であり、有機溶媒相における無機粒子の分散性の向上は期待できない。さらに、特許文献2のように界面重合法を用いた方法では、イソシアネートが多量に含まれるため、無機粒子が凝集しやすく、むしろ有機溶媒相における無機粒子の分散性が阻害されている。結果、無機粒子を含むマイクロカプセルと、樹脂と、の混和性を良好に保つことはできない。
特許文献4に記載の方法では、反応点となるイソシアネート基を複数有する多価イソシアネート化合物が無機粒子に結合された態様とは逆に、アミノシランで表面修飾された無機粒子に対してポリイソシアネートが架橋剤として加えられている。そのため、生成されるマイクロカプセルの大きさを考慮すると、イソシアネートの量は多いと推察される。結果、粒子が凝集しやすく、粒子の分散性が充分とは言い難い。
また、特許文献3に記載の方法では、水酸化マグネシウムをポリマー性脂肪酸で修飾しているが、ポリマー性脂肪酸を用いた修飾では無機粒子と樹脂との混和性が充分とは言えず、ポリオレフィンよりも極性の高い樹脂との混和性は期待できない。
本開示は、極性の高い樹脂と無機粒子又は無機塩水和物を含む粒子との混和性を改善する表面修飾粒子の製造方法を提供することを課題とする。
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 溶媒の中で、表面に水酸基を有する無機粒子又は無機塩水和物を含む粒子と、多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物と、を混合し、無機粒子又は無機塩水和物を含む粒子の表面に、多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物を結合する工程と、表面に結合した複数の多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物に存在するイソシアネート基を架橋反応させる工程と、を有する表面修飾粒子の製造方法である。
<2> 表面に水酸基を有する無機粒子又は無機塩水和物を含む粒子が、金属水酸化物、金属塩化物の水和物、金属硫酸塩の水和物、金属炭酸塩の水和物及び金属酢酸塩の水和物からなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子である、<1>に記載の表面修飾粒子の製造方法である。
<3> 多価イソシアネート化合物が脂肪族多価イソシアネート化合物である<1>又は<2>に記載の表面修飾粒子の製造方法である。
<4> 脂肪族多価イソシアネート化合物が、イソホロンジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン又はヘキサメチレンジイソシアネートを含むアダクト型、ビウレット型又はイソシアヌレート型イソシアネート化合物である<3>に記載の表面修飾粒子の製造方法である。
<5> 架橋反応は、イソシアネート基と水又は架橋剤とを反応させて行う<1>〜<4>のいずれか1つに記載の表面修飾粒子の製造方法である。
<6> 架橋剤が、ポリオール又はポリアミンである<5>に記載の表面修飾粒子の製造方法である。
<7> 多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物の含有量に対する、架橋剤の含有量の比率が、0.5質量%〜20質量%である<5>又は<6>に記載の表面修飾粒子の製造方法である。
<8> 多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物の含有量に対する、架橋剤の含有量の比率が、1質量%〜5質量%である<5>〜<7>のいずれか1つに記載の表面修飾粒子の製造方法である。
<9> 無機塩水和物を含む粒子の含有量に対する、多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物の含有量の比率が、0.1質量%〜100質量%である<1>〜<8>のいずれか1つに記載の表面修飾粒子の製造方法である。
<10> 無機塩水和物を含む粒子の含有量に対する、多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物の含有量の比率が、0.5質量%〜40質量%である<1>〜<9>のいずれか1つに記載の表面修飾粒子の製造方法である。
<11> 無機粒子の含有量に対する、多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物の含有量の比率が、0.1質量%〜20質量%である<1>〜<10>のいずれか1つに記載の表面修飾粒子の製造方法である。
<12> 無機粒子の含有量に対する、多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物の含有量の比率が、0.5質量%〜5質量%である<1>〜<11>のいずれか1つに記載の表面修飾粒子の製造方法である。
<13> 溶媒が有機溶媒であり、架橋反応させる工程は、有機溶媒と無機粒子又は無機塩水和物を含む粒子と多価イソシアネート化合物とを含む第1溶液と、水と乳化剤とを含む水溶液と、を混合して乳化分散を行う工程である<1>〜<12>のいずれか1つに記載の表面修飾粒子の製造方法である。
<14> 溶媒が有機溶媒であり、架橋反応させる工程は、有機溶媒と無機粒子又は無機塩水和物を含む粒子と多価イソシアネート化合物とを含む第1溶液と、有機溶剤と架橋剤とを含む第2溶液と、を混合して無機粒子又は無機塩水和物を含む粒子を分散する工程である<1>〜<12>のいずれか1つに記載の表面修飾粒子の製造方法である。
<15> 無機粒子の平均粒子径が、0.2μm〜50μmである<1>〜<14>のいずれか1つに記載の表面修飾粒子の製造方法である。
<16> 無機塩水和物を含む粒子の平均粒子径が、10μm〜100μmである<1>〜<15>のいずれか1つに記載の表面修飾粒子の製造方法である。
本開示によれば、極性の高い樹脂と無機粒子又は無機塩水和物を含む粒子との混和性を改善する表面修飾粒子の製造方法を提供することができる。
以下、本開示の表面修飾粒子の製造方法の一実施形態について詳細に説明する。
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
≪表面修飾粒子の製造方法≫
−表面修飾粒子の製造方法の第一の態様−
本開示の表面修飾粒子の製造方法の第一の態様は、溶媒の中で、表面に水酸基を有する無機粒子と、多価イソシアネート化合物または多価ブロックイソシアネート化合物(以下、総じて「多価イソシアネート」ということもある。)と、を混合し、無機粒子の表面に多価イソシアネートを結合する工程(以下、「結合工程」ともいう。)と、上記表面に結合した複数の上記多価イソシアネートに存在するイソシアネート基を架橋反応させる工程(以下、「架橋工程」ともいう。)と、を有する。また、本開示の表面処理無機粒子の製造方法は、必要に応じて、その他の工程を含むことができる。
本開示において、第一の態様によって得られる表面修飾粒子を表面処理無機粒子という。
従来のように、界面重合法を利用して無機粒子の表面処理を行う場合、有機溶媒相に溶解しない無機粒子(特に、金属酸化物の粒子及び金属水酸化物の粒子)は、有機溶媒相における分散性を充分に保つことが難しい。そのため、有機溶媒相中の無機粒子は、凝集しやすく、個々の粒子について表面処理を安定的に行うことが困難であった。
また、界面重合法を利用しない方法では、例えば、粒子表面をポリマー性脂肪酸で表面処理する等の方法があるが、樹脂との混和性の点で課題がある。
一方、無機粒子の表面に所望とする表面処理に必要な官能基が存在すれば、表面処理が可能になる。例えば、イソシアネート基と無機粒子の表面に存在する水酸基とを反応させ、イソシアネート化合物を無機粒子の表面に化学結合により固定化することが挙げられる。これによって、分散剤を用いることなく、有機溶媒系または水系の溶媒相における無機粒子の高い分散性が得られる。さらに、良好な分散性を維持した状態で無機粒子の表面に存在する未反応のイソシアネート基をウレタン反応又はウレア反応させることにより、高極性の樹脂への混和性が高いウレタン樹脂、ウレア樹脂又はウレタンウレア樹脂を形成することが可能となる。
本開示において、極性の高い樹脂とは、溶解度パラメータ(SP値)が、ポリオレフィンの値(7.0cal/cm〜8.5cal/cm)よりも高い樹脂をいう。
本開示におけるSP値は、Fedors法により推算されるSP値である。
本開示の表面処理無機粒子の製造方法を、さらに具体的に説明する。
本開示の一実施形態によれば、無機粒子(特に、金属水酸化物の粒子及び金属水酸化物の粒子)の表面における水酸基と多価イソシアネートのイソシアネート基とを反応させ、化学結合により無機粒子と多価イソシアネートとを固定化することで、無機粒子の、有機溶媒系または水系の溶媒相における分散性を高めることができる。
更に、無機粒子表面に結合した多価イソシアネートに存在する未反応のイソシアネート基を架橋剤で架橋し、表面をウレタン樹脂、ウレア樹脂又はウレタンウレア樹脂で被覆する。ウレタン樹脂、ウレア樹脂又はウレタンウレア樹脂で被覆することによる表面処理は、ポリマー性脂肪酸による表面処理と比較して、極性の高い樹脂との混和性を効果的に改善することができる。
また、本開示の一実施形態によれば、溶媒として有機溶媒を用いる場合、無機粒子表面にイソシアネート化合物を結合させることで無機粒子の有機溶媒相における分散性が改善されるため、有機溶媒相において分散剤を使用する必要がない。従って、より少ない工程で樹脂との混和性に優れる表面処理された無機粒子製造することができる。
以下、各工程について詳細に説明する。
<結合工程>
第一の態様における結合工程は、溶媒の中で、表面に水酸基を有する無機粒子と、多価イソシアネート化合物または多価ブロックイソシアネート化合物と、を混合し、無機粒子の表面に多価イソシアネートを結合する工程である。
結合工程によって得られる溶液(以下、混合液という)中では、無機粒子の分散性が良好となる。即ち、水酸基とイソシアネート基とを反応させることで、無機粒子表面と多価イソシアネート化合物との間にウレタン結合が形成され、無機粒子の表面に多価イソシアネートが固定化される。これにより、混合液中での無機粒子の分散性が大きく改善されると考えられる。
混合は、溶媒中に多価イソシアネートを混合した後に、無機粒子を加えることによって行ってもよく、溶媒中に無機粒子を加えた後に、多価イソシアネートを混合することによって行ってもよい。また、混合は、溶媒中に多価イソシアネートと無機粒子とを同時に加えることによって行ってもよい。
混合は、攪拌機(例えば、スターラー等)を用いて行ってもよく、ホモジナイザー(例えば、株式会社日本精機製作所製、エースホモジナイザー)を用いて、表面に水酸基を有する無機粒子と、多価イソシアネートとを溶媒中で攪拌することによって行ってもよい。
混合温度及び混合時間は、反応系により適宜選択することができる。
後述する架橋工程において、乳化分散を行う分散系(例えば後述の態様A)の場合、及び有機溶媒を含有する2液を混合して分散する溶液分散系(例えば後述の態様B)の場合は、混合時に多価イソシアネートが無機粒子に結合する結合反応が速いため、混合温度は比較的低温域であることが好ましく、反応時間は数分程度の短い時間であることが好ましい。具体的には、混合温度は、0℃〜40℃であることが好ましく、5℃〜30℃がより好ましい。また、混合時間は、0.5分〜10分であることが好ましく、1分〜5分であることがより好ましい。
また、後述する架橋工程において、水を含有する2液を混合して分散する水分散系(例えば後述の態様C)の場合、混合時にブロックイソシアネートを解離させ易くする観点から温度を高めることが好ましい。したがって、混合温度は、20℃〜90℃であることが好ましく、50℃〜75℃がより好ましい。また、混合時間は、0.5時間〜12時間であることが好ましく、1時間〜5時間であることがより好ましい。
(表面に水酸基を有する無機粒子)
本開示における無機粒子は、粒子表面に水酸基を有している。
無機粒子は無機化合物の粒子であり、粒子自体が水酸基を有するものは、そのまま本開示の表面処理無機粒子の製造方法に用いることができる。また、粒子自体が水酸基を粒子表面に有していないものは、水酸基を表面に修飾することで本開示の表面処理無機粒子の製造方法に用いることが可能である。
例えば、金属粒子等の無機粒子の表面には、少なくとも部分的に酸化した領域が存在するため、一般に水酸基が存在している。
本開示における無機粒子は、表面に水酸基を有する無機粒子であれば、特に制限されない。例えば、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、亜鉛、ジルコニウム、スズ、鉛、鉄、銅、銀等の金属の粒子、並びにマグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、亜鉛、ジルコニウム、スズ、鉛、鉄、銅、銀等の金属を含む金属酸化物の粒子及び金属水酸化物の粒子が挙げられる。
上記の中でも、金属酸化物の粒子及び金属水酸化物の粒子が好ましく、金属水酸化物の粒子がより好ましく、水酸化アルミニウムの粒子及び水酸化マグネシウムの粒子がさらに好ましい。
無機粒子は、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、協和化学工業株式会社製のキスマ(登録商標)シリーズ(例:キスマ5Q−S(水酸化マグネシウム)、キスマ8(水酸化マグネシウム)等)、昭和電工株式会社製のハイジライト(登録商標)シリーズ(例:ハイジライトH−42(水酸化アルミニウム)、H−43(水酸化アルミニウム)等)、堺化学工業株式会社製の酸化亜鉛シリーズ(例:2種(酸化亜鉛)等)などが挙げられる。
無機粒子の平均粒子径は、0.1μm以上20μm以下が好ましく、0.2μm以上10μm以下がより好ましく、0.5μm以上3.0μm以下が更に好ましい。
無機粒子の平均粒子径は、平均二次粒子径であり、マイクロトラックFRA(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定される値である。
無機粒子の含有量は、上記結合工程で用いる混合液の全質量に対して、5質量%〜70質量%が好ましく、20質量%〜50質量%がより好ましい。無機粒子の含有量が20質量%以上であると、生産性の点で有利である。また、無機粒子の含有量が50質量%以下であると、反応物の均質性の点で有利である。
(多価イソシアネート)
結合工程における多価イソシアネート化合物または多価ブロックイソシアネート化合物(多価イソシアネート)は、無機粒子表面の水酸基と結合することで、無機粒子の、有機溶媒系または水系の溶媒相での分散性を改善することができる。また、無機粒子の表面でイソシアネート基同士が架橋されることで、無機粒子の表面に樹脂膜を形成することができる。
結合工程では、多価イソシアネートが一分子中に有する複数のイソシアネート基の内の1以上であって、かつ、すべてではないイソシアネート基が無機粒子表面に存在する水酸基と結合される。
上記無機粒子表面の水酸基と結合するイソシアネート基は、無機粒子表面の水酸基とウレタン結合を形成し、結合に寄与しない他のイソシアネート基は後述する架橋反応に用いられる。
多価イソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、4−クロロキシリレン−1,3−ジイソシアネート、2−メチルキシリレン−1,3−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルヘキサフルオロプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン及び1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物が挙げられる。
以上では、2官能のジイソシアネート化合物を例示したが、多価イソシアネートはこれらから類推される3官能のトリイソシアネート化合物、4官能のテトライソシアネート化合物であってもよい。
また、多価イソシアネートとしては、上記にて例示した多価イソシアネートと、エチレングリコール系化合物もしくはビスフェノール系化合物等の2官能アルコール又はフェノールと、の付加物も挙げられる。
上記の中でも、多価イソシアネートによって形成される樹脂膜は、3官能以上のイソシアネート化合物の重合物を含む樹脂膜が好ましい。
3官能以上のイソシアネート化合物としては、例えば、3官能以上の芳香族イソシアネート化合物、3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物等が挙げられる。3官能以上のイソシアネート化合物の例としては、2官能のイソシアネート化合物(分子中に2つのイソシアネート基を有する化合物)と分子中に3つ以上の活性水素基を有する化合物(3官能以上の例えばポリオール、ポリアミン、又はポリチオール)とのアダクト体(付加物)として3官能以上としたイソシアネート化合物(アダクト型)、及び2官能のイソシアネート化合物の3量体(ビウレット型又はイソシアヌレート型)も好ましい。
多価イソシアネートとしては、上記の中でも、脂肪族多価イソシアネート化合物が特に好ましい。
脂肪族多価イソシアネート化合物は、反応性が低いため、無機粒子の表面に存在する水酸基とイソシアネート基との反応が良好に進行しやすく、分散性がより良好に保たれる。
脂肪族多価イソシアネート化合物とは、非環式または環式の非芳香族性の炭素構造、すなわち炭素原子同士が鎖状に連なっている構造を有している多価イソシアネートをいい、イソシアネート基が脂肪族基に結合したポリイソシアネートを意味する。
具体的には、脂肪族多価イソシアネート化合物としては、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,2−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m−フェニレンビス(イソプロピルイソシアネート)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。中でも、脂肪族多価イソシアネート化合物は、イソホロンジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが好ましく、より好ましくはイソホロンジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネートである。
また、脂肪族多価イソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンまたはヘキサメチレンジイソシアネートを含むアダクト型、ビウレット型またはイソシアヌレート型のイソシアネート化合物も好ましい。
脂肪族多価イソシアネートは、一種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(アダクト型イソシアネート化合物)
アダクト型イソシアネート化合物とは、多価アルコールとイソシアネート化合物との付加体のことをいう。
イソシアネートとしてはジイソシアネート化合物が好ましい。ジイソシアネート化合物としては、その骨格は特に限定されるものではなく、1分子中にジイソシアネート基を2個有するものであればどのようなものでもよく、炭化水素基(脂肪族基、脂環族基または芳香族基)を有するジイソシアネート化合物が好ましい。炭化水素基の炭素数としては、2〜30が好ましく、2〜20がより好ましい。
本開示では特に、炭化水素基が、脂肪族または芳香族6員環化合物のみからなる基、脂肪族または芳香族6員環化合物と−CH−の組み合わせからなる基、および、これらの基にアルキル基(好ましくはメチル基)が置換している基が好ましい。
ジイソシアネート化合物の分子量は、100〜1000であることが好ましい。
本開示のアダクト型イソシアネート化合物の合成に使用される、ジイソシアネート化合物は、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,9−ノナメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、2,2’−ジエチルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−メチレンジトリレン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、テトラクロロフェニレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素化1,3−キシリレンジイソシアネート、水素化1,4−キシリレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物およびこれらの化合物から派生するプレポリマー型の骨格の化合物を好適に用いることができる。これらの中でも、トリレンジイソシアネート(TDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)が特に好ましい。
3官能以上のアダクト型イソシアネート化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例としては、タケネート(登録商標)D−102、D−103、D−103H、D−103M2、P49−75S、D−110N、D−120N(イソシアネート価=3.5 mmol/g)、D−140N、D−160N(以上、三井化学(株))、デスモジュール(登録商標)L75、UL57SP(住化バイエルウレタン(株))、コロネート(登録商標)HL、HX、L(日本ポリウレタン(株))、P301−75E(旭化成(株))等が挙げられる。
中でも、アダクト型の3官能以上のイソシアネート化合物としては、三井化学(株)のタケネート(登録商標)D−110N、D−120N、D−140N、及びD−160Nから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
本開示におけるアダクト型イソシアネート化合物の合成に使用される多価アルコールとしては、価数の下限が3価以上であることが好ましく、価数の上限としては6価以下であることが好ましい。分子量としては、50〜700の分子量を有するものが好ましく、50〜500の分子量を有するものがより好ましい。また脂肪族多価アルコールであることが好ましく、環状構造を持たない脂肪族多価アルコールであることが好ましい。本開示で用いる多価アルコールとしては、分岐の脂肪族炭化水素基に水酸基(OH基)が3個以上結合した基であることが好ましい。かかる脂肪族炭化水素基の炭素数は、3〜30が好ましく、4〜20がより好ましい。OH基の数は、3〜6個が好ましい。
具体的には、多価アルコールとしては、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン(TMP)、トリメチロールオクタン、1,2,6−ヘキサントリオール、2,4−ジヒドロキシ−3− ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1−トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール等の4価アルコール;アラビット、リビトール、キシリトール等の5価アルコール(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット等の6価アルコール(ヘキシット)などが挙げられる。中でも、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールが特に好ましい。
(ビウレット型イソシアネート化合物)
ビウレット型イソシアネート化合物は、母構造がビウレット構造であるイソシアネート化合物である。
上記ビウレット構造とは、下記式(bi)で表される構造である。なお、下記式中、波線部分は他の構造との結合部分である。

ビウレット構造の合成に用いられるイソシアネート化合物としては、1分子中にイソシアネート基を2個以上有するものであればどのようなものでもよく、脂肪族、脂環族又は芳香族のイソシアネートであってよい。ビウレット構造の形成に用いられるイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,9−ノナメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、2,2’−ジエチルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−メチレンジトリレン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、テトラクロロフェニレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素化1,3−キシリレンジイソシアネート、水素化1,4−キシリレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物及びこれらの化合物から派生するプレポリマー型の骨格の化合物を好適に用いることができる。これらの中でも、トリレンジイソシアネート(TDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)が特に好ましい。
イソシアネート化合物におけるビウレット構造の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法により形成すればよいが、例えば、イソシアネート化合物の3量化により容易に形成することができる。
3官能以上のビウレット型イソシアネート化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、タケネート(登録商標)D−165N、NP1100(三井化学株式会社製)、スミジュール(登録商標)N3210(住化バイエルウレタン株式会社製)、デュラネート(登録商標)24A−100(旭化成株式会社製)などが挙げられる。
(イソシアヌレート型イソシアネート化合物)
イソシアヌレート型イソシアネート化合物とは、下記式で表されるイソシアヌレート構造を母構造として有するブロックイソシアネート化合物である。本開示におけるブロックイソシアネート化合物としては、硬化性の観点から、1分子内に2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物であることが好ましい。

上記式中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、カルボキシル基、またはこれらを組み合わせた基を表す。
上記式で表されるイソシアヌレート構造を母構造として有するブロックイソシアネート化合物の具体例としては、特許第5849152号公報の段落0087〜0093に記載の化合物が挙げられる。
3官能以上のイソシアヌレート型イソシアネート化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、タケネート(登録商標)D−127N、D−170N、D−170HN、D−172N、D−177N(三井化学株式会社製)、スミジュールN3300、デスモジュール(登録商標)N3600、N3900、Z4470BA(住化バイエルウレタン)、コロネート(登録商標)HX、HK(日本ポリウレタン株式会社製)、デュラネート(登録商標)TPA−100、TKA−100、TSA−100、TSS−100、TLA−100、TSE−100(旭化成株式会社製)などが挙げられる。
<多価ブロックイソシアネート化合物>
多価ブロックイソシアネート化合物は、多価ブロックイソシアネート基を有する化合物であれば特に制限はないが、硬化性の観点から、1分子内に2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物であることが好ましい。
なお、ブロックイソシアネート基とは、熱によりイソシアネート基を生成することが可能な基であり、例えば、ブロック剤とイソシアネート基とを反応させイソシアネート基をブロック剤で保護した基が好ましく例示できる。
また、ブロックイソシアネート基は、50℃〜250℃(より好ましくは50℃〜130℃)の熱によりイソシアネート基を生成することが可能な基であることが好ましい。特に水系の溶媒相でブロックイソシアネート基からイソシアネート基を生成する場合は、ブロックイソシアネート基は50℃〜90℃の熱によりイソシアネート基を生成することが可能な基であることが好ましい。例えば、後述の態様Cのように、多価ブロックイソシアネート化合物を用いると、溶媒に水を用いることができる。溶媒である水に多価ブロックイソシアネート化合物を含有する場合、水との反応が抑えられて第3溶液を調製することができる。これにより、2種類の水系溶液を用いた反応系とすることができ、熱を加えるまで架橋反応が起きることを遅らせることができる。
また、多価ブロックイソシアネート化合物としては、その骨格は特に限定されるものではなく、1分子中にブロックされたイソシアネート基を2個有するものであればどのようなものでもよく、脂肪族、脂環族または芳香族のイソシアネートであってよい。多価ブロックイソシアネート化合物のイソシアネート化合物としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,9−ノナメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、2,2’−ジエチルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−メチレンジトリレン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、テトラクロロフェニレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素化1,3−キシリレンジイソシアネート、水素化1,4−キシリレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物およびこれらの化合物から派生するプレポリマー型の骨格の化合物を好適に用いることができる。これらの中でも、トリレンジイソシアネート(TDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)が特に好ましい。
本開示における多価ブロックイソシアネート化合物の母構造としては、上述したアダクト型、ビウレット型、イソシアヌレート型等を挙げることができる。
アダクト型ブロックイソシアネート化合物は、市販品として入手可能であり、例えば、タケネートD−120N(ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト)、D−110N(XDIとTMPとのアダクト)、D−140N(IPDIとTMPとのアダクト)、D−212L(TDIとTMPとのアダクト)(以上、三井化学(株)製)が挙げられる。
母構造がビウレット構造である多価ブロックイソシアネート化合物は、市販品として入手可能であり、例えば、デュラネート17B−60PX、17B−60P、(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)が挙げられる。
母構造がイソシアヌレート構造である多価ブロックイソシアネート化合物は、市販品として入手可能であり、例えば、コロネートAPステーブルM、コロネート2503、2515、2507、2513、2555、ミリオネートMS−50(以上、日本ポリウレタン工業(株)製)、タケネートB−830、B−815N、B−820NSU、B−842N、B−846N、B−870N、B−874N、B−882N(以上、三井化学(株)製)、デュラネート17B−60PX、17B−60P、TPA−B80X、TPA−B80E、MF−B60X、MF−B60B、MF−K60X、MF−K60B、E402−B80B、SBN−70D、SBB−70P、K6000(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)、デスモジュールBL1100、BL1265 MPA/X、BL3575/1、BL3272MPA、BL3370MPA、BL3475BA/SN、BL5375MPA、VPLS2078/2、BL4265SN、PL340、PL350、スミジュールBL3175(以上、住化バイエルウレタン(株)製)等を好ましく使用することができる。
(ブロック剤)
本開示における多価ブロックイソシアネート化合物の合成に使用されるブロック剤としては、オキシム化合物、ラクタム化合物、フェノール化合物、アルコール化合物、アミン化合物、活性メチレン化合物、ピラゾール化合物、メルカプタン化合物、イミダゾール系化合物、およびイミド系化合物等を挙げることができる。これらの中でも、オキシム化合物、ラクタム化合物、フェノール化合物、アルコール化合物、アミン化合物、および活性メチレン化合物及びピラゾール化合物から選ばれるブロック剤がより好ましく、オキシム化合物、ラクタム化合物、フェノール化合物およびアルコール化合物から選ばれるブロック剤がより好ましい。
オキシム化合物としては、オキシム、および、ケトオキシムが挙げられ、具体的には、アセトキシム、ホルムアルドキシム、シクロヘキサンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム、アセトキシム等が例示できる。
ラクタム化合物としては、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタム等が例示できる。
フェノール化合物としては、フェノール、ナフトール、クレゾール、キシレノール、ハロゲン置換フェノール等が例示できる。
アルコール化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキル等が例示できる。
アミン化合物としては、1級アミンおよび2級アミンが挙げられ、芳香族アミン、脂肪族アミン、脂環族アミンいずれでもよく、アニリン、ジフェニルアミン、エチレンイミン、ポリエチレンイミン等が例示できる。
活性メチレン化合物としては、マロン酸ジエチル、マロン酸ジメチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル等が例示できる。
ピラゾール化合物としては、ピラゾール、メチルピラゾール、ジメチルピラゾール等が例示できる。
メルカプタン化合物としては、アルキルメルカプタン、アリールメルカプタン等が例示できる。
無機粒子の含有量に対する、多価イソシアネート化合物または多価ブロックイソシアネート化合物の含有量の比率は、0.1質量%〜20質量%が好ましい。
無機粒子の含有量に対する、多価イソシアネート化合物または多価ブロックイソシアネート化合物の含有量の比率が0.1質量%以上であることで、膜の厚みが薄くなりすぎず、より良好な樹脂混和性を有する膜を形成できる。無機粒子の含有量に対する、多価イソシアネート化合物または多価ブロックイソシアネート化合物の含有量の比率が20質量%以下であることで、後述の架橋反応工程において、無機粒子表面の水酸基と反応できない遊離のイソシアネート基の発生がより抑えられ、無機粒子表面上に存在するイソシアネート基同士を架橋する架橋反応の反応性をより良好に保つことができる。無機粒子の含有量に対する、多価イソシアネート化合物または多価ブロックイソシアネート化合物の含有量の比率は、より好ましくは0.5質量%〜10質量%であり、さらに好ましくは0.5質量%〜5質量%である。
従来の界面重合法のようにイソシアネートの含有量が多いと、多価イソシアネートの複数のイソシアネート基が、異なる無機粒子上の水酸基と反応しやすく、無機粒子同士が多価イソシアネートを介して結合し、凝集しやすくなり分散性を阻害することがある。加えて、多量の多価イソシアネートが含まれることで、無機粒子を内包しない不要な粒子が生成しやすくなる。
そこで、多価イソシアネートの量を最適量とすることで、単一の無機粒子表面で水酸基とイソシアネート基とを反応させることができ、さらに分散性を向上させることができる。この結果、後述する架橋工程において形成されるウレタン樹脂、ウレア樹脂又はウレタンウレア樹脂が、一つ一つの無機粒子表面に形成される。
さらに、本開示の一実施形態によれば、従来のように多量の多価イソシアネート及び架橋剤を用いないので、多価イソシアネートの使用量を大幅に減量でき、かつ、架橋剤を使用せず、又は少量で架橋反応させることが可能となる。その結果、作業効率性及び経済性等を改善することができる。
多価イソシアネートの有機溶媒相中における濃度は、表面処理無機粒子の大きさ及び膜厚等に鑑みて適宜調整することができる。
(溶媒)
本工程における溶媒は、特に制限はないが、有機溶媒又は水を含むことができる。
−有機溶媒−
有機溶媒の例としては、メチルエチルケトン等のケトン系化合物、酢酸エチル等のエステル系化合物、イソプロピルアルコール等のアルコール系化合物等が挙げられる。
有機溶媒の沸点としては、揮発性の点から130℃以下が好ましい。
有機溶媒の含有量は、混合液の全質量に対して、30質量%〜90質量%が好ましく、50質量%〜80質量%がより好ましい。
有機溶媒の含有量は、本工程における無機微粒子、及び後述する架橋工程における混合液の分散性に鑑みて適宜調整することができる。
<架橋工程>
第一の態様における架橋工程は、無機粒子の表面に結合した複数の多価イソシアネートに存在するイソシアネート基を架橋反応させる工程である。これによって、極性の高い樹脂への混和性が高い膜を有する表面処理無機微粒子が得られる。
架橋反応は、無機粒子に結合されたイソシアネート化合物に存在する未反応のイソシアネート基と水または架橋剤との間で進行することが好ましい。これにより、ウレア結合又はウレタン結合が形成される。
後述する態様A及び態様Cでは、溶媒として含まれる水と未反応のイソシアネート基との間で架橋反応が進行し、ウレア結合が形成される。また、後述の態様Bでは、架橋剤と未反応のイソシアネート基との間で架橋反応が進行し、ウレタン結合が形成される。
架橋剤としては、ポリオールまたはポリアミンであることが好ましい。
架橋反応は、好ましくは加熱下で行われる。
架橋における反応温度は、通常は40℃〜100℃であり、50℃〜80℃が好ましい。
また、反応時間は、通常は0.5時間〜10時間程度であり、1時間〜5時間程度が好ましい。
架橋温度を高めることで、架橋時間を短縮することができる。
架橋中に表面処理無機粒子同士が凝集するのを防止するためには、水性溶液(例えば、水、酢酸水溶液など)を更に加え、表面処理無機粒子同士の衝突確率を下げることが好ましく、充分な撹拌を行うことも好ましい。架橋中にあらためて凝集防止用の分散剤を添加してもよい。
更に、必要に応じて、ニグロシン等の荷電調節剤、又はその他任意の補助剤を添加してもよい。補助剤は、膜の形成時又は任意の時点で添加可能である。
本開示における架橋工程は、例えば、以下に示す態様A〜態様Cであってもよい。
[態様A]
本開示における架橋工程の態様Aは、溶媒が有機溶媒であり、有機溶媒と無機粒子と多価イソシアネート化合物とを含む第1溶液と、水と乳化剤とを含む水溶液と、を混合して乳化分散を行う工程を含む態様である。
既述の通り、従来であれば第1溶液中に分散剤を含む必要があったが、無機粒子表面に多価イソシアネート化合物を結合させることで、分散剤を含むことなく、第1溶液中の、無機粒子の分散性を良好に保つことができる。第1溶液は、既述の結合工程で得られるものである。
本態様では、第1溶液中で多価イソシアネート化合物がイソシアネート基の一部を介して無機粒子の表面に結合し、多価イソシアネート化合物に存在する未反応のイソシアネート基と水溶液中の水とが反応してウレア結合が形成されることで、無機粒子は表面がウレア樹脂で被覆される。
態様Aにおける混合は、上記結合工程における混合と同義であり、攪拌時間及び温度等も同様とすることができる。
(第1溶液)
第1溶液は、有機溶媒と無機粒子と多価イソシアネート化合物とを含むことが好ましい。
態様Aにおける溶媒は、有機溶媒であり、有機溶媒としては、既述の結合工程における有機溶媒と同義であり、好ましい範囲等も同様である。
無機粒子及び多価イソシアネート化合物は、既述の結合工程における無機粒子及び多価イソシアネート化合物と同義であり、好ましい範囲等も同様である。
(水溶液)
水溶液は、少なくとも水及び乳化剤を含むことが好ましく、さらに架橋剤を含むことができる。
水溶液には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤等の他の成分を含有してもよい。他の成分は、水溶液の全質量に対して、0質量%超20質量%以下の範囲で含有されてもよく、0.1質量%超15質量%以下の範囲で含有されてもよく、1質量%超10質量%以下の範囲で含有されてもよい。
−水−
水は、イオン交換水等を用いることができる。
水を含むことで第1溶液を水中に乳化分散させる。この際、無機粒子の表面に結合した未反応のイソシアネート基は、水と反応して−NHCOOHを形成後に−NHとなり、−NHは同一粒子表面に存在する他のイソシアネート基と反応してウレア結合を形成することによって架橋構造が形成される。
水の含有量は、表面に水酸基を有する無機粒子と多価イソシアネート化合物と水との合計の質量に対して、20質量%〜80質量%が好ましく、30質量%〜70質量%がより好ましく、更に好ましくは40質量%〜60質量%である。
−乳化剤−
乳化剤には、分散剤もしくは界面活性剤、又はこれらの組み合わせが含まれる。
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール及びその変性物、ポリアクリル酸アミド及びその誘導体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン−アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、澱粉及びその誘導体、アラビアゴム及びアルギン酸ナトリウム等が挙げられ、ポリビニルアルコールが好ましい。
分散剤は、多価イソシアネートと反応しない又は極めて反応し難い化合物が好ましく、分子鎖中に反応性のアミノ基を有する化合物例えばゼラチン等を用いる場合、予め反応性を失わせる処理が施されたゼラチン等が好ましい。
分散剤は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例として、株式会社クラレ製のポリビニルアルコール(例:PVA−205等)などが挙げられる。
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、特に限定されず、従来公知の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例として、花王株式会社製のデモールシリーズ(例:デモールEP、MS、P、RN等)、エマールシリーズ、ペレックスシリーズ、ポイズシリーズ(例:ポイズ532A)、エマルゲンシリーズ、などが挙げられる。
乳化剤の含有量は、水溶液の全質量に対して、0質量%超20質量%以下が好ましく、0.005質量%〜10質量%がより好ましく、0.01質量%〜10質量%が更に好ましく、1質量%〜5質量%が特に好ましい。
乳化とは、第1溶液を油滴として水溶液に分散させることをいう。
乳化は、第1溶液と水溶液との分散に通常用いられる手段(例えば、ホモジナイザー、マントンゴーリー、超音波分散機、ディゾルバー、ケディーミル、又は他の公知の分散装置)を用いて行うことができる。
乳化温度は、0℃〜60℃であることが好ましく、15℃〜40℃がより好ましい。
乳化時間は、1分〜30分であることが好ましく、3分〜20分であることがより好ましい。
水溶液に対する第1溶液の混合比(第1溶液の質量/水溶液の質量)としては、0.1〜1.5が好ましく、0.2〜1.2がより好ましく、0.4〜1.0が更に好ましい。混合比が0.1〜1.5の範囲内であると、適度の粘度を保持でき、製造適性に優れ、乳化液の安定性に優れる。
乳化分散後には、得られた乳化液に更に水を加え、攪拌しながら加温し、攪拌後に冷却してもよい。
以上のようにして、表面処理無機粒子が得られる。
[態様B]
本開示における架橋工程の態様Bは、溶媒が有機溶媒であり、有機溶媒と無機粒子と多価イソシアネート化合物とを含む第1溶液と、有機溶剤と架橋剤とを含む第2溶液と、を混合して無機粒子を分散する工程を含む態様である。
第1溶液及び第2溶液はいずれも有機溶媒を含むため、混合が容易に行え、無機粒子を分散させやすい。即ち、第1溶液中に分散剤を含むことなく、無機粒子の分散性を良好に保つことができる。また、本態様では、乳化による分散を行わないので、第2溶液に乳化剤を含めることなく、良好な分散性を付与することができる。
態様Bにおける混合は、上記結合工程における混合と同義であり、攪拌時間及び温度等も同様とすることができる。
(第1溶液)
第1溶液は、有機溶媒と無機粒子と多価イソシアネート化合物とを含むことが好ましい。態様Bにおける溶媒は、有機溶媒である。
有機溶媒は、既述の結合工程における有機溶媒と同義であり、好ましい範囲等も同様である。無機粒子及び多価イソシアネート化合物は、既述の結合工程における無機粒子及び多価イソシアネート化合物と同義であり、好ましい範囲等も同様である。
(第2溶液)
第2溶液は、有機溶剤と架橋剤とを含むことが好ましい。有機溶剤は、既述の結合工程における有機溶媒と同義であり、好ましい範囲等も同様である。
架橋剤は、多価イソシアネートのイソシアネート基と反応して架橋構造を形成する化合物であればよく、アルコール及びアミンの少なくとも一方を含むことが好ましく、水は架橋剤として機能し得るが、本開示において水は架橋剤には含まれない。
多価イソシアネートのイソシアネート基とアルコールの水酸基とが反応することで、ウレタン結合が形成され、多価イソシアネートのイソシアネート基とアミンのアミノ基とが反応することでウレア結合が形成される。これにより、無機粒子の表面がウレタン樹脂、ウレア樹脂、又はウレタンウレア樹脂により被覆される。
アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンなどの水酸基を2つ以上有するポリオール等が挙げられる。これらのアルコール成分は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、アルコールと後述のアミン成分とを混合して用いてもよい。
アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタンミン、イミノビスプロピルアミン、ジアミノエチルエーテル、1,4−ジアミノブタン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2−ヒドロキシトリメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジアミノプロピルアミン、ジアミノプロパン、2−メチルペンタメチレンジアミン、キシレンジアミン、等の脂肪族系アミン、m−フェニレンジアミン、トリアミノベンゼン、3,5−トリレンジアミン、ジアミノジフェニルアミン、ジアミノナフタレン、t−ブチルトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジアミノフェノール等が挙げられる。中でも、フェニレンジアミン、ジアミノフェノール、トリアミノベンゼン等の芳香族系アミンが好ましい。
架橋剤としては、ポリオールまたはポリアミンであることが好ましい。
ポリオールの具体例としては、脂肪族又は芳香族の多価アルコール、ヒドロキシポリエステル、ヒドロキシポリアルキレンエーテル、多価アミンのアルキレンオキサイド付加物等を挙げることができる。中でも、脂肪族又は芳香族の多価アルコール、多価アミンのアルキレンオキサイド付加物が好ましく、より好ましくは、多価アミンのアルキレンオキサイド付加物である。
ポリアミンとしては、分子中に2個以上の−NH基または−NH基を有するものであれば、いずれも使用可能である。具体的な化合物としては、例えば、テトラエチレンペンタミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,3−プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族多価アミン;脂肪族多価アミンのエポキシ化合物付加物;ピペラジン等の脂環式多価アミン;3,9−ビス−アミノプロピル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ−(5,5)ウンデカンなどの複素環式ジアミンなどを挙げることができる。
多価イソシアネートの含有量に対する架橋剤の含有量の比率(含有比率)は、0.5質量%〜20質量%が好ましく、0.5質量%〜10質量%がより好ましい。
架橋剤の含有比率が0.5質量%以上であると、無機粒子表面に結合した多価イソシアネートに存在する複数のイソシアネート基の間の架橋反応を良好に進行させることができ、ウレタン樹脂、ウレア樹脂又はウレタンウレア樹脂による膜を形成しやすい。また、架橋剤の含有比率が20質量%以下であると、未反応の架橋剤が存在することによる弊害が生じにくい点で有利である。
架橋剤の含有比率としては、1質量%〜8質量%がより好ましく、2質量%〜5質量%が更に好ましい。
[態様C]
本開示における架橋工程の態様Cは、溶媒が水であり、水と無機粒子と多価ブロックイソシアネート化合物とを含む第3溶液と、水と架橋剤とを含む第4溶液と、を混合して分散させる工程を含む態様である。
態様Cにおいて、第3溶液及び第4溶液はいずれも溶媒として水を含むため、混合が容易で、水系の混合液を調製することができる。
態様Cにおける混合は、上記結合工程における混合と同義であり、攪拌時間及び温度等も同様とすることができる。また、分散は、既述の分散と同義である。
(第3溶液)
第3溶液は水と無機粒子と多価イソシアネート化合物とを含む。態様Cにおいて、溶媒は水である。水は既述の態様Aにおける水と同義であり、好ましい範囲等も同様である。
また、無機粒子及び多価イソシアネート化合物は、既述の結合工程における無機粒子及び多価イソシアネート化合物と同義であり、好ましい範囲等も同様である。
(第4溶液)
態様Cにおける第4溶液は、少なくとも水と架橋剤とを含む。水及び架橋剤は、既述の態様Aにおける水及び態様Bにおける架橋剤と同義であり、好ましい範囲等も同様である。
<他の工程>
本開示の表面処理無機粒子の製造方法は、必要に応じて、加熱工程後の遠心分離工程、洗浄工程及び乾燥工程等の他の工程を有していてもよい。
<表面処理無機粒子>
本開示の表面処理無機粒子の製造方法により製造される表面処理無機粒子は、無機粒子の表面に多価イソシアネートが結合され、各イソシアネート同士が、互いにウレタン結合、ウレア結合又はウレタンウレア結合を介して架橋されることで、無機粒子の表面にウレタン樹脂、ウレア樹脂又はウレタンウレア樹脂の膜が形成されている。
本開示の表面処理無機粒子は、平均二次粒径が3μm〜100μmであることが好ましく、5μm〜50μmであることがより好ましく、8μm〜30μmであることがさらに好ましい。
表面処理無機粒子の粒径は、平均二次粒子径であり、マイクロトラックFRA(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定される値である。
(他の成分)
本開示の表面処理無機粒子は、表面処理無機粒子に加え、さらに他の成分を含有することができる。
他の成分には、特に制限はなく、目的又は必要に応じて適宜選択すればよい。
他の成分としては、例えば、色材、界面活性剤、架橋剤、潤滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤等が挙げられる。
−表面修飾粒子の製造方法の第二の態様−
本開示の表面修飾粒子の製造方法の第二の態様は、溶媒の中で、無機塩水和物を含む粒子と、多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物と、を混合し、無機塩水和物を含む粒子の表面に、多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物を結合する工程(結合工程)と、表面に結合した複数の多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物に存在するイソシアネート基を架橋反応させる工程(架橋工程)と、を有する。
本開示において、第二の態様によって得られる表面修飾粒子は、カプセル粒子という。
本明細書において、「カプセル壁と、内包成分と、を含むカプセル粒子」との文言は、「内包成分が、カプセル壁の内部に含有された状態のカプセル粒子」を包含する意味で用いられる。本明細書では、カプセル粒子に内包された内包成分を単に「内包物」と称することがある。
従来より、蓄熱材料として、パラフィンを内包したPCM(Phase Change Material)カプセルが知られている。PCMカプセルとは、熱を繰り返し吸収及び放出することで、目的の温度を保持することができるカプセル粒子をいう。
PCM材料として効果が高い素材として、金属塩の水和物が挙げられるが、金属塩の水和物は水溶性であることから、特にO/W(Oil/Water)乳化系におけるカプセル化が困難であった。
本開示のカプセル粒子の製造方法によれば、金属塩の水和物の表面に所望とするカプセル化に必要な官能基が存在すれば、金属塩の水和物をカプセル化することが可能である。例えば、イソシアネート基と、無機塩水和物を含む粒子の表面に存在する水酸基との間の水素結合により、イソシアネート化合物を無機塩水和物を含む粒子の表面に、固定化することが挙げられる。これによって、分散剤を用いることなく、有機溶媒系または水系の溶媒相における無機塩水和物を含む粒子の高い分散性が得られる。さらに、良好な分散性を維持した状態で、架橋剤、有機溶媒(例えば、酢酸エチル)等に含まれる水を介在させながら、無機塩水和物を含む粒子の表面に存在する未反応のイソシアネート基をウレタン反応又はウレア反応させることができる。これによって、内包物に対する隔離性を有するウレタン樹脂、ウレア樹脂又はウレタンウレア樹脂を形成することが可能となる。即ち、このようにして、無機塩水和物が内包されたカプセル粒子が形成される。
(結合工程)
第二の態様における結合工程は、溶媒の中で、無機塩水和物を含む粒子と、多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物と、を混合し、無機塩水和物を含む粒子の表面に、多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物を結合する工程である。これによって、無機塩水和物に配位している水が多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物と反応する。第二の態様における結合工程では、さらに、必要に応じて添加する少量の架橋剤若しくは有機溶媒に含まれる水、又は水和物中に含まれる配位していない水とイソシアネートとを反応させるため、混合時間を長くしてもよい。
また、後述する架橋工程において良好な分散性を維持した状態で、架橋剤、有機溶媒(例えば、酢酸エチル)等に含まれる水を多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物と反応させることで架橋反応を行うことができる。
第二の態様における結合工程は、上記の点以外は上述の結合工程と同様である。
無機塩水和物としては、例えば、金属塩化物の水和物、金属硫酸塩の水和物、金属炭酸塩の水和物及び金属酢酸塩の水和物等が挙げられる。
金属塩化物の水和物としては、塩化カルシウム6水和物が挙げられる。
金属硫酸塩の水和物としては、硫酸ナトリウム10水和物が挙げられる。
金属炭酸塩の水和物としては、炭酸ナトリウム10水和物が挙げられる。
金属酢酸塩の水和物としては、酢酸ナトリウム3水和物が挙げられる。
中でも、カプセル化の困難性がより顕在化される観点から、塩化カルシウム6水和物が好ましい。
第二の態様において用いることができる多価イソシアネート化合物及び多価ブロックイソシアネート化合物としては、上述の多価イソシアネート化合物及び多価ブロックイソシアネート化合物が挙げられる。
第二の態様において用いることができる多価イソシアネート化合物及び多価ブロックイソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネートを含むアダクト型、イソホロンジイソシアネートを含むビウレット型、又はイソシアヌレート型の多価イソシアネート化合物及び多価ブロックイソシアネート化合物が好ましい。これによって、粒子同士の凝集を抑制した状態で、架橋剤や有機溶媒中に含まれる水を介在させながら、無機塩水和物を含む粒子の表面に存在する未反応のイソシアネート基をウレタン反応又はウレア反応させることができる。
無機塩水和物を含む粒子の含有量に対する、多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物の含有量の比率は、8質量%〜80質量%が好ましい。
無機塩水和物を含む粒子の含有量に対する、多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物の含有量の比率が8質量%以上であることで、膜の厚みが薄くなりすぎず、より良好な樹脂混和性を有する膜を形成でき、かつ、カプセル粒子が壊れにくくなり、PCMカプセルとして温度を保持する効果により優れる。
無機塩水和物を含む粒子の含有量に対する、多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物の含有量の比率が80質量%以下であることで、後述の架橋反応工程において、無機塩水和物を含む粒子の表面の水酸基と反応できない遊離のイソシアネート基の発生がより抑えられ、無機塩水和物を含む粒子の表面上に存在するイソシアネート基同士を架橋する架橋反応の反応性をより良好に保つことができる。無機塩水和物を含む粒子の含有量に対する、多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物の含有量の比率は、より好ましくは10質量%〜50質量%であり、さらに好ましくは15質量%〜40質量%である。
結合工程における溶媒は、上述の溶媒と同様である。
(架橋工程)
第二の態様における架橋工程は、上述の架橋工程と同様である。
カプセル粒子の製造方法における架橋工程としては、上述の態様A〜態様Cであってもよい。カプセル化の困難性がより顕在化される観点から、態様A又はBが好ましく、態様Bがより好ましい。
<他の工程>
本開示のカプセル粒子の製造方法は、必要に応じて、加熱工程後の遠心分離工程、洗浄工程及び乾燥工程等の他の工程を有していてもよい。
本開示のカプセル粒子の製造方法としては、具体的には、以下の方法が挙げられるが、以下の方法に限定されない。
酢酸エチルにジイソシアネートを混合後、塩化カルシウム2水和物6.7部に水を加えて調製した塩化カルシウム6水和物を加え、ホモジナイザーを用いて分散し、分散液を得る。そして、水に乳化剤(例えば、デモールEP(花王株式会社製))を溶解した溶液中に上記の分散液を加えて、乳化分散する。乳化分散後の乳化液に水を加え、攪拌しながら30℃24時間攪拌後、塩化カルシウム6水和物のカプセル粒子を得る。さらに遠心分離を行い、沈降物を水洗した後、遠心分離、乾燥により塩化カルシウム6水和物のカプセル粒子を得る。
<カプセル粒子>
本開示のカプセル粒子の製造方法により製造されるカプセル粒子は、無機塩水和物を含む粒子の表面に多価イソシアネートが結合され、各イソシアネート同士が、互いにウレタン結合、ウレア結合又はウレタンウレア結合を介して架橋されることで、内包成分として無機塩水和物を含む粒子を有し、カプセル壁としてウレタン樹脂、ウレア樹脂又はウレタンウレア樹脂が形成されている。
本開示のカプセル粒子は、平均二次粒径が10μm〜100μmであることが好ましい。カプセル粒子の平均二次粒径が10μm以上であることで、例えば本開示のカプセル粒子をPCMカプセルとして用いた場合に、目的の温度を良好に保持することができる。
カプセル粒子の平均二次粒径が100μm以下であることで、カプセル粒子を樹脂と混練させた場合において、混練後の樹脂の面状を良好に保つことができる。また、カプセル粒子の平均二次粒径が100μm以下であることで、カプセル自体の均質性を向上させることができるため、例えば本開示のカプセル粒子をPCMカプセルとして用いた場合に目的の温度を良好に保持することができる。
カプセル粒子の平均二次粒径は、15μm〜80μmであることがより好ましく、20μm〜70μmであることがさらに好ましく、20μm〜50μmであることが特に好ましい。
カプセル粒子の粒径は、平均二次粒子径であり、上述と同様の測定方法で測定される値である。
カプセル粒子の数平均壁厚は、カプセル壁材の種類、カプセル粒子中の内包物の内包量、及びカプセル粒子の粒径等の種々の条件に依存するが、耐久性と内包性の観点から、30nm〜1000nmの範囲が好ましく、50nm〜500nmの範囲がより好ましく、80nm〜300nmの範囲がさらに好ましい。
なお、カプセル粒子の数平均壁厚は、上記範囲において、カプセル粒子の使用目的に応じて適宜選択される。
カプセル粒子の数平均壁厚とは、カプセル粒子を形成する樹脂膜(いわゆるカプセル壁)の厚み(nm)を指し、数平均壁厚とは、5個のカプセル粒子の個々のカプセル壁の厚み(nm)を走査型電子顕微鏡(SEM)により求めて平均した平均値をいう。具体的には、まずカプセル液を任意の支持体上に塗布し、乾燥して塗布膜を形成する。得られた塗布膜の断面切片を形成し、形成された断面を、SEMを用いて観察し、任意の5個のカプセル粒子を選択の上、選択した個々のカプセル粒子の断面を観察してカプセル壁の厚みを求めて平均値を算出する。
カプセル粒子の壁厚は、下記式で表されるように、カプセル壁及び内包物とカプセル粒子の粒径との関係に支配され、カプセル粒子の粒径、カプセル壁の密度、カプセル粒子内の溶質、溶媒及び補助溶媒の量、及び壁材量などにより調整が可能である。
具体的には、例えばカプセル粒子に内包される溶質、溶媒、補助溶媒、及び壁材等の内包物の量を増やすことにより、カプセル壁を薄厚に調整することができる。
カプセル粒子において、カプセル壁の質量に対する内包成分の質量の比としては、5〜50であることが好ましい。なお、内包成分の質量は、内包される成分の総量を指す。
以下、本開示の発明を実施例により更に具体的に説明するが、本開示の発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
以下において、表面処理無機粒子、無機粒子及び無機塩水和物を含む粒子の平均二次粒子径は、マイクロトラックFRA(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定した。
(実施例1)
酢酸エチル(有機溶剤)20部に、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体(タケネートD−140N、三井化学株式会社製;脂肪族多価イソシアネート化合物、固形分75質量%)1.0部を混合後、無機粒子である水酸化マグネシウム(共和化学工業株式会社製 キスマ(登録商標)5Q−S、平均二次粒子径0.74μm;無機粒子)10部を加え、ホモジナイザー(エースホモジナイザー、株式会社日本精機製作所製)を用いて、5000rpm(revolutions per minute)、室温(25℃)で2分間攪拌し、混合液Aを得た(結合工程)。
次に、水56.5部にポリビニルアルコール(PVA−205、株式会社クラレ製;乳化剤、固形分100質量%)3.5部を溶解した水溶液B中に、上記の混合液Aを加えて、エースホモジナイザーを用いて、6000rpm、室温(25℃)、5分の条件下、乳化分散した。乳化分散して得られた乳化液に水65部を加え、攪拌しながら70℃まで加温し、3時間攪拌した(架橋工程)。その後、30℃まで冷却した。
さらに、遠心分離機(小型遠心機、アズワン株式会社製)を用いて遠心分離を行った後、沈殿物の洗浄を行った。その後、再度遠心分離して溶媒と分離し、乾燥させ、表面処理無機粒子を得た。
(実施例2)
実施例1において、タケネートD−140Nの量を0.3部に変更し、水56.5部にポリビニルアルコール(PVA−205、株式会社クラレ製)3.5部を溶解した溶液を、水59部にポリカルボン酸型高分子界面活性剤(デモール(登録商標)EP 花王株式会社製;乳化剤、固形分25質量%)1.0部を溶解した溶液に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面処理無機粒子を得た。
(実施例3)
実施例2において、キスマ(登録商標)5Q−S(共和化学工業株式会社製)を、キスマ(登録商標)8(共和化学工業株式会社製、平均二次粒子径1.51μm;水酸化マグネシウム)に変更した以外は、実施例2と同様にして、表面処理無機粒子を得た。
(実施例4)
実施例3において、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体(タケネートD−140N、三井化学株式会社)0.3部を、HDIビューレット変性型イソシアネート(スミジュールN3210、住友バイエルウレタン株式会社;脂肪族多価イソシアネート化合物、固形分100質量%)0.23部に変更した以外は、実施例3と同様にして、表面処理無機粒子を得た。
(実施例5)
実施例3において、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体(タケネートD−140N、三井化学株式会社)を、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体(タケネートD−110N、三井化学株式会社、脂肪族多価イソシアネート化合物、固形分75質量%)に変更し、混合液濃度を5分の1(多価イソシアネートの量:0.06部、水酸化マグネシウムの量:2.0部、デモールEPの量:0.2部)に変更した以外は、実施例3と同様にして、表面処理無機粒子を得た。
(実施例6)
実施例3において、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体(タケネートD−140N、三井化学株式会社)を、トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体(バーノックD750、DIC社製、芳香族多価イソシアネート化合物、固形分75質量%)に変更し、混合液濃度を5分の1(イソシアネートの量:0.06部、水酸化マグネシウムの量:2.0部、デモールEPの量:0.2部)に変更した以外は、実施例3と同様にして、表面処理無機粒子を得た。
(実施例7)
実施例2において、水酸化マグネシウム(キスマ5Q−S、共和化学工業株式会社製)を水酸化アルミニウム(ハイジライトH−42、昭和電工株式会社製、平均二次粒子径1.0μm)に変更した以外は、実施例2と同様にして、表面処理無機粒子を得た。
(実施例8)
実施例7において、水酸化アルミニウム(ハイジライトH−42、昭和電工株式会社製)を酸化亜鉛2種(堺化学工業株式会社製、平均二次粒子径0.6μm、酸化亜鉛)に変更した以外は、実施例7と同様にして、表面処理無機粒子を得た。
(実施例9)
酢酸エチル(有機溶剤)20部にイソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体(タケネートD−140N、三井化学株式会社;脂肪族多価イソシアネート化合物、固形分75質量%)1.0部を混合後、水酸化マグネシウム(キスマ(登録商標)5Q−S、共和化学工業株式会社製;無機粒子)10部を加え、ホモジナイザーを用いて5000rpm、室温(25℃)2分間の条件にて攪拌し、混合液Cを得た(結合工程)。
そして、酢酸エチル(有機溶剤)10部にN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(アデカポリエーテルEDP−300、株式会社アデカ製;架橋剤(ポリオール))0.05部を溶解した溶液D中に上記の混合液Cを加え、ホットスターラー(アズワン株式会社製)により室温(25℃)下、3時間攪拌し、表面処理水酸化マグネシウムの分散液を得た(架橋工程)。
さらに、遠心分離機(小型遠心機、アズワン株式会社製)を用いて遠心分離を行い、沈殿物の洗浄を行った。その後、再度遠心分離して溶媒と分離し、乾燥させて、表面処理無機粒子を得た。
(実施例10)
水46.4部に、多価ブロックイソシアネート化合物(ブロックイソシアネート基を有するウレタン樹脂、エラストロンH−3−DF、第一工業製薬株式会社製;固形分28%)3.6部を混合後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH=6に調整し、皮膜液Aを得た。
また、水48.8部に、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤(ポイズ(登録商標)532A 花王株式会社製;乳化剤、固形分40%)1.3部を混合後、無機粒子である水酸化マグネシウム(共和化学工業株式会社製 キスマ(登録商標)5Q−S、平均二次粒子径0.74μm;無機粒子)50部を加え、ホモジナイザー(エースホモジナイザー、株式会社日本精機製作所製)を用いて、10000rpm、室温(25℃)で1分間攪拌し、分散液Aを得た。
得られた分散液Aに水600部、皮膜液A50gを加え、攪拌しながら70℃まで加温し、3時間攪拌した。その後、30℃まで冷却した。
さらに、遠心分離機(小型遠心機、アズワン株式会社製)を用いて遠心分離を行った後、沈殿物の洗浄を行った。その後、再度遠心分離して溶媒と分離し、乾燥させ、表面処理無機粒子を得た。
得られた表面修飾無機粒子の平均二次粒子径は4.4μmであった。
(比較例1)
表面処理が施されていない無機粒子として、水酸化マグネシウム(キスマ(登録商標)5Q−S、共和化学工業株式会社製、平均二次粒子径0.74μm)を用意した。
(実施例1A)
−カプセル粒子の調製−
酢酸エチル20部にイソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体(三井化学 タケネートD−140N)4.0部を混合後、塩化カルシウム2水和物6.7部(関東化学)に水3.3部を加えて調製した塩化カルシウム6水和物を加え、30℃でホモジナイザーを用いて分散し、分散液Aを得た(結合工程)。
そして、水59部にデモールEP(花王株式会社製)1.0部を溶解した溶液中に上記の分散液Aを加えて、乳化分散した。乳化分散後の乳化液に水65部を加え、攪拌しながら30℃24時間攪拌した(架橋工程)。
その後遠心分離を行い、沈降物を水洗した後、遠心分離、乾燥により塩化カルシウム6水和物のカプセル粒子を得た。
得られたカプセル粒子を冷却後、DSC測定すると、28℃に融解、凝固するピークが認められ、蓄熱性があることを確認した。
(実施例2A〜実施例5A)
塩化カルシウム6水和物を、表2に記載の無機塩水和物を含む粒子に変更し、分散及び撹拌における温度を、実施例2Aは34℃に、実施例3Aは50℃に、実施例4Aは60℃に、実施例5Aは34℃に変更した以外は、実施例1Aと同様にして、カプセル粒子を調製した。
<評価>
上記した実施例1〜実施例10及び比較例1並びに実施例1A〜実施例5Aの表面処理無機粒子又はカプセル粒子の各々について、以下の評価を行った。実施例1〜実施例10及び比較例1の評価結果は下記表1に、実施例1A〜実施例5Aの評価結果は下記表2に示す。
(樹脂への混和性)
表面処理無機粒子5部と、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA;三井・デユポンポリケミカル株式会社製、EV260)100部と、を二軸混練押出機(商品名:KZW15−45MG、同方向回転型、スクリュー15mm×45L/D、テクノベル社製)を用いて以下の条件で溶融混練し、ストランドをホットカットすることでチップを得た。
<混練条件>
・設定温度:180℃
・スクリュー回転速度:500rpm(revolutions per minute)
得られたチップを加熱プレス(120℃×10分間)にて成形することによって、2mm厚のシート状成形体を得た。得られたシート状成形体の光の透過率を紫外可視光分光光度計(島津製作所社製、UV−3150)により測定し、下記の評価基準に従って評価した。
−評価基準−
A:波長550nmでの光の透過率が60%以上である。
B:波長550nmでの光の透過率が60%未満である。
(無機粒子の凝集性)
結合工程で得られた混合液について、無機粒子の凝集性を以下の評価基準にしたがって評価した。
−評価基準−
A:次の架橋工程で上記混合液をそのままの濃度で用いても、著しい凝集を伴うことなく分散することができた。
B:次の架橋工程における上記混合液の流動性が悪いため、混合液に対する固形分の添加量を5分の1に減じることにより凝集を伴うことなく分散することができた。
表1に示すように、実施例の製造方法により製造された表面処理無機粒子は、無機粒子の樹脂への混和性が良好であった。中でも、無機粒子として金属水酸化物を用いた実施例1〜7、9、10では、優れた樹脂への混和性を示した。
また、脂肪族系の多価イソシアネートを用いた実施例1〜5、7〜9は、脂肪族系の多価イソシアネート以外の他の多価イソシアネートを用いた実施例6と比較して、凝集性により優れ、かつ、樹脂への混和性により優れていた。
さらに、実施例においては、分散剤を用いなくても良好な分散性が得られており、凝集性の懸念が抑えられていた。無機粒子の平均二次粒子径が1.0μm以下である実施例1、2、7〜10では、製造される表面処理無機粒子の平均二次粒子径が大きくなり過ぎず、凝集性も低く抑えることができた。
表2に示すように、実施例1A〜実施例5Aの製造方法により製造されたカプセル粒子は、無機粒子又は無機塩水和物を含む粒子の樹脂への混和性及び凝集性に優れていた。

Claims (16)

  1. 溶媒の中で、表面に水酸基を有する無機粒子又は無機塩水和物を含む粒子と、多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物と、を混合し、無機粒子又は無機塩水和物を含む粒子の表面に、多価イソシアネート化合物又は多価ブロックイソシアネート化合物を結合する工程と、
    前記表面に結合した複数の前記多価イソシアネート化合物又は前記多価ブロックイソシアネート化合物に存在するイソシアネート基を架橋反応させる工程と、
    を有する表面修飾粒子の製造方法。
  2. 前記表面に水酸基を有する無機粒子又は無機塩水和物を含む粒子が、金属水酸化物、金属塩化物の水和物、金属硫酸塩の水和物、金属炭酸塩の水和物及び金属酢酸塩の水和物からなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子である、請求項1に記載の表面修飾粒子の製造方法。
  3. 前記多価イソシアネート化合物が脂肪族多価イソシアネート化合物である請求項1又は請求項2に記載の表面修飾粒子の製造方法。
  4. 前記脂肪族多価イソシアネート化合物が、イソホロンジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン又はヘキサメチレンジイソシアネートを含むアダクト型、ビウレット型又はイソシアヌレート型イソシアネート化合物である請求項3に記載の表面修飾粒子の製造方法。
  5. 前記架橋反応は、イソシアネート基と水又は架橋剤とを反応させて行う請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の表面修飾粒子の製造方法。
  6. 前記架橋剤が、ポリオール又はポリアミンである請求項5に記載の表面修飾粒子の製造方法。
  7. 前記多価イソシアネート化合物又は前記多価ブロックイソシアネート化合物の含有量に対する、前記架橋剤の含有量の比率が、0.5質量%〜20質量%である請求項5又は請求項6に記載の表面修飾粒子の製造方法。
  8. 前記多価イソシアネート化合物又は前記多価ブロックイソシアネート化合物の含有量に対する、前記架橋剤の含有量の比率が、1質量%〜5質量%である請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の表面修飾粒子の製造方法。
  9. 前記無機塩水和物を含む粒子の含有量に対する、前記多価イソシアネート化合物又は前記多価ブロックイソシアネート化合物の含有量の比率が、0.1質量%〜100質量%である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の表面修飾粒子の製造方法。
  10. 前記無機塩水和物を含む粒子の含有量に対する、前記多価イソシアネート化合物又は前記多価ブロックイソシアネート化合物の含有量の比率が、0.5質量%〜40質量%である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の表面修飾粒子の製造方法。
  11. 前記無機粒子の含有量に対する、前記多価イソシアネート化合物又は前記多価ブロックイソシアネート化合物の含有量の比率が、0.1質量%〜20質量%である請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の表面修飾粒子の製造方法。
  12. 前記無機粒子の含有量に対する、前記多価イソシアネート化合物又は前記多価ブロックイソシアネート化合物の含有量の比率が、0.5質量%〜5質量%である請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の表面修飾粒子の製造方法。
  13. 前記溶媒が有機溶媒であり、
    前記架橋反応させる工程は、前記有機溶媒と前記無機粒子又は無機塩水和物を含む粒子と前記多価イソシアネート化合物とを含む第1溶液と、水と乳化剤とを含む水溶液と、を混合して乳化分散を行う工程である請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の表面修飾粒子の製造方法。
  14. 前記溶媒が有機溶媒であり、
    前記架橋反応させる工程は、前記有機溶媒と前記無機粒子又は無機塩水和物を含む粒子と前記多価イソシアネート化合物とを含む第1溶液と、有機溶剤と架橋剤とを含む第2溶液と、を混合して前記無機粒子又は無機塩水和物を含む粒子を分散する工程である請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の表面修飾粒子の製造方法。
  15. 前記無機粒子の平均粒子径が、0.2μm〜50μmである請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の表面修飾粒子の製造方法。
  16. 前記表面修飾粒子がカプセル粒子であって、前記カプセル粒子の平均粒子径が、10μm〜100μmである請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載の表面修飾粒子の製造方法。
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