以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態に係る吸収体を備えた吸収性物品を詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
以下、本実施形態においては、「肌対向面」とは着用時に着用者側に向く面をいい、「非肌対向面」とは肌対向面の反対側の面、すなわち着用時に衣類に装着される側の面をいうものとする。また、前後方向(長手方向(図1及び図2中のX方向))は、吸収性物品1の長辺に沿う方向をいい、幅方向(短手方向(図1及び図2中のY方向))は、該長手方向と直交する方向のうち、肌対向面や非肌対向面に沿った方向をいうものとする。なお、図1において、文字Fは吸収性物品1の前方を示し、文字Bは吸収性物品1の後方を示している。
本実施形態に係る吸収性物品1は、図1及び図2に示すように、ショーツ等の衣類の肌接触面(内面)に取り付けて使用される生理用ナプキン、特に、排泄量の多い用途の夜用生理用ナプキンである。この吸収性物品1は、肌対向面側に配置される液透過性(透水性)の表面シート12と、非肌対向面側に配置される液防漏性(防水性)の裏面シート14と、これら両シート12,14間に配置された吸収体40とを備えている。
表面シート12及び裏面シート14は、吸収体40よりも大きな寸法を有し、吸収体40よりも前後方向に縦長で、かつ、吸収体40よりも幅方向に幅広な形状を有している。これら両シート12,14は、吸収体40の前後方向及び幅方向の両端からそれぞれ延出しており、両シート12,14間に吸収体40を挟持配置した状態で該吸収体40の周囲を囲うように、ヒートシール等によって互いに接着されることで、外周側に接着部17を形成している。
具体的には、表面シート12及び裏面シート14は、着用者の衣類の内面に取り付けられた際に、例えば、着用者の下腹部から液排泄部位(膣口等)を通って臀部に至る所定の長さ、及び両大腿部の付け根間に亘って液排泄部位を覆う所定の幅を有している。なお、図1においては、表面シート12及び裏面シート14は、それぞれ、平面視で見て同一外形を有する態様で示されている。
表面シート12及び裏面シート14には、吸収体40の前後方向に沿う両側縁部から幅方向の外方にそれぞれ延出するフラップ部5が形成されている。このフラップ部5には、サイドシート16が積層されており、着用時に着用者の液排泄部位(膣口等)に対向配置される液排泄部位対向領域Uにおいて、幅方向の外方に更に延出した一対のウイング部6,6が形成されている。
また、フラップ部5には、着用時に液排泄部位対向領域Uよりも着用者の背中側に配置される後方領域Vにおいて、吸収性物品1の幅方向の外方に向かって更に延出した一対の後方フラップ部7,7が設けられている。本実施形態に係る吸収性物品1は、その前後方向において、中央に上記液排泄部位対向領域Uと、この液排泄部位対向領域Uよりも前方Fの下腹側に配置される前方領域Wと、液排泄部位対向領域Uよりも後方Bの臀部側に配置される後方領域Vとに分けて表すことができる。
本実施形態の吸収性物品1は、後方領域Vに幅広な後方フラップ部7を有する夜用の生理用ナプキンである。昼用、夜用にかかわらず、ショーツ等の衣類の股下部に折り曲げて固定するウイング部6,6を備える場合は、このウイング部6,6の存在する領域に沿った前後方向領域が液排泄部位対向領域Uに対応する。なお、ウイング部6,6を備えない昼用生理用ナプキン等の吸収性物品の場合は、液排泄部位対向領域Uは、吸収性物品を前後方向に三等分した場合の中央領域に相当する。
表面シート12は、液透過性を有するシート材、例えば、単層(一枚)の織布、不織布、多孔性シート等、又はこれら材料を複数層重ねた構造で形成され得る。裏面シート14は、液防漏性を有するシート材、例えば、ポリエチレンや防水フィルム、或いはフィルムと織布等の複合材等で形成され得る。
裏面シート14の非肌対向面には、上記ショーツ等のクロッチ部分の非肌接触面にウイング部6,6を巻き付けて固定するための粘着剤層(図示せず)、及び吸収性物品1をショーツ等の内面に固定するための粘着剤層(図示せず)が積層されている。これら粘着剤層には、未使用時においては図示しない剥離紙が積層されている。
図1及び図2に示すように、表面シート12には、そのほぼ全域に亘って、肌対向面(表面)側に突出する複数の凸部13と、非肌対向面(裏面)側に突出する複数の凸部15とが、平面視で見て千鳥状に交互に形成されている。これら複数の凸部13,15によって、表面シート12は嵩高に形成されている。なお、各凸部13,15は、本実施形態においては半円球状に形成されているが、それぞれ、凸側の頂部の曲がりが緩やか或いは急な半楕円形状、円錐形状等の種々の形状を採用し得る。これら表面シート12の凸部13,15は、種々の公知の方法により形成することが可能である。
また、表面シート12の肌対向面には、その前後方向に沿って延び、かつ、幅方向の中心線(図示せず)に対して平面視で見て左右対称に設けられた一対の防漏溝20a,20bが形成されている。一対の防漏溝20a,20bは、表面シート12の肌対向面から非肌対向面に向けて筋状に凹んだ形状を有し、これらで囲まれた内側領域に受液領域が形成される。なお、本実施形態の説明において、「受液領域」とは、液排泄部位対向領域Uに含まれつつ、着用者の液排泄部位(膣口等)から排泄される経血等の液体を受ける領域のことをいい、本実施形態においては、吸収性物品1の前後方向の略中央部より前方側の領域、かつ、幅方向の略中央部の領域を指すものとする。防漏溝20a,20bは、着用者の液排泄部位から排出される経血や体液等の液体の拡がりを抑制すると共に、表面シート12と吸収性コア30を有する吸収体40とを一体化させて、着用時の圧縮変形を抑え形状を安定化させる役割も担う。また、防漏溝20a,20bは、着用時に吸収性物品1が両足に挟み込まれた際に、受液領域を着用者の液排泄部位に向けて隆起させ、フィットさせる役割も担っている。これら防漏溝20a,20bは、種々の公知の方法により形成することが可能である。
なお、表面シート12、裏面シート14及びサイドシート16は、図示の形状や上記の構成に限定されるものではなく、従来の吸収性物品に使用される公知のものを用いることが可能である。
吸収体40は、図1〜図4に示すように、吸収性を有する吸収性コア30と、吸収性コア30の少なくとも一部を被覆するコアラップシート38(図2及び図4参照)とを備えている。
吸収体40は、図1〜図3に示すように、平面視において略角丸矩形形状の外観を有しており、裏面シート14側である下層に配置される第1吸収層(以下、「主吸収層」と呼ぶ。)31と、主吸収層31の肌対向面上(表面シート12側)に積層配置された第2吸収層(以下、「中高吸収層」と呼ぶ。)32とを備えている。なお、図2〜図4に示す本実施形態の吸収体40では、吸収性コア30が主吸収層31と中高吸収層32とが積層された構造であり、該吸収性コア30がコアラップシート38で覆われた構造となっている。
主吸収層31は、熱可塑性樹脂繊維等の合成繊維とセルロース系吸水性繊維とを含む繊維層であり、図1に示すように、吸収性物品1の前方領域Wから液排泄部位対向領域Uを介して後方領域Vに亘って延びる縦長に形成されている。主吸収層31は、主に液体を吸収して貯蔵するためのものであり、図4に示すように、肌対向面(表面)を形成する第1面31aと、非肌対向面(裏面)を形成する第2面31bとを有している。なお、主吸収層31は、本実施形態では平面視において略角丸矩形形状の外観を有しているが、これに限定されるものではない。
中高吸収層32は、少なくともセルロース系吸水性繊維を含む繊維層であり、図1に示すように、主吸収層31よりも前後方向に短く幅方向に幅狭に形成された縦長に形成されている。中高吸収層32は、着用時に着用者の身体に主吸収層31よりも近接すると共に、主に主吸収層31よりも前に液体を受容するためのものであり、図4に示すように、肌対向面(表面)を形成する第1面32aと、非肌対向面(裏面)を形成する第2面32bとを有している。なお、中高吸収層32は、本実施形態では平面視において略角丸矩形形状の外観を有しているが、これに限定されるものではない。
中高吸収層32は、図1〜図4に示すように、主吸収層31の所定領域、すなわち、液排泄部位対向領域U内の受液領域を含む一定領域(以下、「積層領域」と呼ぶ。)Z上に、その前後方向を主吸収層31の前後方向に一致させて積層されている。具体的には、第1面32aが上方に向き、第2面32bが主吸収層31の第1面31aと接するように下方に向いた状態で、液排泄部位対向領域Uにおける主吸収層31の幅方向の中央部に積層配置されている。これにより、吸収性コア30は、主吸収層31の積層領域Z上に幅狭な中高吸収層32が積層された中高構造を有している。本実施形態に係る吸収性コア30では、着用者の動作に伴う動作追従性の観点から、主吸収層31及び中高吸収層32は互いに固着されていない。ただし、これに限定されず、形状安定性の観点から、主吸収層31及び中高吸収層32が互いに固着される構成としてもよい。
主吸収層31及び中高吸収層32に採用され得るセルロース系吸水性繊維としては、例えば、パルプ繊維37として、広葉樹や針葉樹を原料として得られる木材パルプ;竹、麻、綿(例えば、コットンリンター)等の非木材パルプ等が挙げられ、その他、ビスコース繊維、レーヨン繊維等の再生セルロース繊維;アセテート繊維、トリアセテート繊維、プロミックス繊維等の半合成繊維等が挙げられる。なお、セルロース系吸水性繊維としてパルプ繊維37を用いる場合は、安全性が高く、かつ、安価に製造可能なクラフトパルプを用いることが好ましい。以下、セルロース系吸水性繊維をパルプ繊維37として説明するが、図4以降の中高吸収層32においては、パルプ繊維を符号により図示していない。また、図4等においては、例えば、主吸収層31においては合成繊維36を太くて長い線により表示し、パルプ繊維37をドットにより表示しているが、これらは実際の繊維の太さや長さ或いは大きさ等を反映するものではない。
主吸収層31に採用され得る合成繊維36は、例えば、疎水性かつ非吸収性を有するものが好適であるが、親水性を有するものであってもよい。しかしながら、非吸水性であれば、吸収性コア30が体液と接触しても、合成繊維はその形状安定性に寄与する性質を維持できるので、吸収性コア30の形状安定性が一層高くなり得る。疎水性かつ非吸収性を有する合成繊維(熱可塑性繊維)としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。
繊維が親水性であるか疎水性であるかは、下記方法で測定される水との接触角に基づいて判断することができ、これが90度未満であれば親水性、90度以上であれば疎水性である。下記方法で測定される水との接触角が小さいほど親水性が高く(疎水性が低く)、該接触角が大きいほど親水性が低い(疎水性が高い)。
<接触角の測定方法>
測定対象(吸収性コア)から繊維を取り出し、その繊維に対する水の接触角を測定する。測定装置として、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA−Jを用いる。接触角の測定には脱イオン水を用いる。インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC−25)から吐出される液量を20ピコリットルに設定して、水滴を、繊維の真上に滴下する。滴下の様子を水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが望ましい。本測定では、17msec毎に画像が録画される。録画された画像において、繊維に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトFAMAS(ソフトのバージョンは2.6.2、解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする)にて画像解析を行い、水滴の空気に触れる面と繊維とのなす角を算出し、接触角とする。測定対象物から取り出した繊維は、繊維長1mmに裁断し、該繊維を接触角計のサンプル台に載せて、水平に維持する。繊維1本につき異なる2箇所の接触角を測定する。N=5本の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を、当該繊維と水との接触角と定義する。測定環境は、室温22±2℃、湿度65±2%RHとする。
また、本明細書において、合成繊維等の繊維の吸水性の程度は、下記方法により測定される水分率の値によって判定される。斯かる水分率が6.0%未満の場合、当該繊維は非吸水性繊維と判定され、6.0%以上の場合、当該繊維は吸水性繊維と判定される。
<水分率の測定方法>
水分率は、JIS P8203の水分率試験方法を準用して算出した。すなわち、繊維試料を温度40℃、相対湿度80%RHの試験室に24時間静置後、その室内にて絶乾処理前の繊維試料の重量W(g)を測定した。その後、温度105±2℃の電気乾燥機(例えば、株式会社いすゞ製作所製)内にて1時間静置し、繊維試料の絶乾処理を行った。絶乾処理後、温度20±2℃、相対湿度65±2%の標準状態の試験室にて、旭化成(株)製サランラップ(登録商標)で繊維試料を包括した状態で、Siシリカゲル(例えば、豊田化工(株))をガラスデシゲータ内(例えば、(株)テックジャム製)に入れて、繊維試料が20±2℃になるまで静置する。その後、繊維試料の恒量W’(g)を秤量して、次式により繊維試料の水分量を求める。
水分率(%)=(W−W’/W’)×100
そして、主吸収層31に含有される合成繊維36は、例えば、1種類の合成繊維又は2種類以上の合成繊維を混合したブレンドポリマーからなる単一繊維であってもよく、その他いわゆる複合繊維であってもよい。この複合繊維は、例えば、成分の異なる2種類以上の合成繊維を紡糸口金で複合し、同時に紡糸して得られる合成繊維のことであって、複数の成分がそれぞれ繊維の長さ方向に連続した構造で、単繊維内で相互接着しているものをいう。複合繊維の形態には、上述した芯鞘型、サイドバイサイド型等があるが、特に制限されるものではない。
一方、親水性の合成繊維、或いは親水化処理した合成繊維としては、例えば、ポリビニルアルコール繊維、ポリアクリロニトリル繊維等の親水性合成繊維;ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維等の疎水性合成繊維に親水化処理を施した繊維等が挙げられる。なお、繊維の親水化処理の方法は、例えば、合成繊維の内部への親水化剤の練り込みや、合成繊維の表面への親水化剤の付着処理、或いは合成繊維の表面へのプラズマ処理等が挙げられる。
なお、吸収性コア30の繊維組成物(形成材料)は、中高吸収層32においては全体又は一部がパルプ繊維37であり、主吸収層31においては一部がパルプ繊維37であることが好ましい。パルプ繊維37は、形成材料中に任意の割合で含ませることができる。吸収性コア30には、形成材料以外に、例えば、消臭剤や抗菌剤等の添加剤を必要に応じて配合してもよい。
また、主吸収層31におけるパルプ繊維37と合成繊維36との配合割合は、パルプ繊維37の配合割合が20質量%以上80質量%以下である場合、合成繊維36の配合割合が80質量%以上20質量%以下であることが好ましく、パルプ繊維37の配合割合が40質量%以上60質量%以下である場合、合成繊維36の配合割合が60質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
なお、中高吸収層32は、合成繊維36を含まない構成としてもよいし、主吸収層31と同様に、上述したような合成繊維36を含んで構成されていてもよい。中高吸収層32に合成繊維36が含まれる場合には、パルプ繊維37と合成繊維36との配合割合は、パルプ繊維37の配合割合が50質量%以上である場合、合成繊維36の配合割合が50質量%以下であることが好ましく、パルプ繊維37の配合割合が60質量%以上である場合、合成繊維36の配合割合が40質量%以下であることが好ましく、中高吸収層32は、主吸収層31よりも合成繊維36の単位面積当たりの質量(坪量)が小さくなるよう構成される。具体的には、主吸収層31に含有された合成繊維36の単位面積当たりの質量が、例えば、32g/m2以上320g/m2以下である場合は、中高吸収層32は、含有された合成繊維36の単位面積当たりの質量が、例えば、16g/m2以上120g/m2以下となるように形成されるとよい。このようにすれば、中高吸収層32にも柔軟性及び易変形性を与えることが可能となるので、装用感を更に向上させる効果が期待できる。
また、主吸収層31及び中高吸収層32の少なくとも一つは、図示しない高吸水性ポリマーを含んで構成されていてもよい。具体的には、特に着用者の液排泄部位に近い中高吸収層32が高吸水性ポリマーを含み、主吸収層31が高吸水性ポリマーを含まない、又は、中高吸収層32よりも単位面積当たりの質量が小さくなるよう高吸水性ポリマーを含んで構成されているとなおよい。高吸水性ポリマーとしては、例えば、セルロース系、デンプン系、合成ポリマー系、例えば、アクリル酸系等の高吸水性ポリマー等が挙げられる。主吸収層31及び中高吸収層32の少なくとも一つが高吸水性ポリマーを含んでいれば、吸収性コア30の液吸収性を更に向上させることができる。
中高吸収層32が高吸水性ポリマーを含む場合は、主吸収層31に含まれる高吸水性ポリマーの単位面積当たりの質量が、中高吸収層32よりも小さくなるように形成されるとよい。例えば、中高吸収層32に含有された高吸水性ポリマーの単位面積当たりの質量が15g/m2以上100g/m2以下である場合は、主吸収層31に含有された高吸水性ポリマーの単位面積当たりの質量は、例えば、10g/m2以上50g/m2以下とすることができる。このように構成すれば、吸収性コア30(又は吸収体40)の上層部に相当する中高吸収層32での理論的な吸液量(液吸収量)をより多くなるように設計し、その設計に基づく機能を有効に働かせやすい構造とすることができる。従って、高い吸収性能を発揮可能な吸収性コア30(又は吸収体40)を得ることができる。
コアラップシート38は、吸収性コア30の繊維組成物(形成材料)の漏れ出しを防止したり、吸収性コア30の主吸収層31及び中高吸収層32の位置保持性や形状安定性(保形性)を高めたりするために用いられる。コアラップシート38としては、例えば親水性のティッシュペーパー等の薄手の紙(薄葉紙)、クレープ紙、コットンやレーヨン等の親水性繊維からなる不織布、及び合成樹脂の繊維に親水化処理を施してなる不織布(例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布等)等の種々の親水性シートを採用可能である。
以上の構成を備える吸収体40は、図4に示すように、主吸収層31及び中高吸収層32からなる積層体の外周をコアラップシート38で覆うことで形成される。本実施形態では、主吸収層31と中高吸収層32が対向する面にはコアラップシート38が存在しない。なお、コアラップシート38は、主吸収層31の外周及び中高吸収層32の外周をそれぞれ覆うように配置されていてもよい。この場合においては、主吸収層31がコアラップシート38で覆われた主吸収体層41、中高吸収層32がコアラップシート38で覆われた中高吸収体層42によって吸収体40が構成されている。この場合、主吸収体層41及び中高吸収体層42が互いに固着されている場合は、コアラップシート38同士を図示しない接着剤等により互いに固着することで、両吸収体層41,42が固着される。そして、このように構成された吸収体40は、その前後方向が吸収性物品1の前後方向と一致するよう、吸収性物品1の幅方向の中央に配置されている。
このような吸収体40は、主吸収層31が、パルプ繊維37に合成繊維36が混合された繊維組成物からなる。このため、主吸収層31は、例えば、合成繊維36を含まずパルプ繊維37(及び高吸水性ポリマー)のみからなる場合と比較して、液吸収後も柔軟性に優れるので、吸収体40の厚さ方向に容易に屈曲したり凹んだりする易変形性を有する。
すなわち、液吸収前の吸収体40(又はコアラップシート38を除いた吸収性コア30)は、図4に示すように、例えば、全体の厚さT1が1mm以上12mm以下である場合、主吸収層31の厚さt1が、例えば、0.5mm以上6mm以下で、中高吸収層32の厚さt2が、例えば、0.5mm以上6mm以下となるように形成されている。
(吸収体の各部の厚みの測定方法)
測定対象である吸収体40の厚みの測定は、吸収性物品より切り出した小片の被測定部を5kPaの圧力で10分間加圧し、除重後直ぐに測定を行う。除重後のサンプルの中央域に、大きさ20mm×20mm、厚さ3mmのアクリルプレートを吸収体の上に置き、KEYENCE社製非接触式レーザー変位計(レーザーヘッドLK−G30、変位計LK−GD500)を用い、サンプルの厚みを測定する。切り出した小片の大きさが小さく、非接触式レーザー変位計により測定し難い場合には、前記切断されたサンプルの断面を、例えば、マイクロスコープ(KEYENCE社製VHX−1000)を用いて20〜100倍の倍率で観察し、測定してもよい。
そして、図4に示す液吸収前の吸収体40が液体を吸収すると、図5に示すように、液体の吸収により主吸収層31及び中高吸収層32が膨張し、これにより、主吸収層31及び中高吸収層32の厚さt1’,t2’が、それぞれ、液吸収前の厚さt1,t2よりも増加する。このとき、着用者の液排泄部位に近い中高吸収層32が高吸水性ポリマーを含み、主吸収層31が高吸水性ポリマーを含まない、又は、中高吸収層32よりも単位面積当たりの質量が小さくなるよう高吸水性ポリマーを含んで構成されているため、液吸収後の厚みの増加は、中高吸収層32の方が主吸収層31よりも大きくなる。
しかし、上記のように主吸収層31が易変形性を有するので、主吸収層31は、特に積層領域Z及びその周辺領域において、厚さがt2からt2’へと増加した中高吸収層32が下方へ沈み込むように変形する。すなわち、主吸収層31の易変形性によって、主吸収層31が変形しにくい場合と比較して、中高吸収層32の液吸収(吸液)による膨潤が阻害されない構造とすることができる。
この沈み込み深さDは、中高吸収層32の液吸収前後の厚さt2,t2’の設計や、主吸収層31及び中高吸収層32の繊維組成物の特性等を調整することで、任意に設定することが可能である。
そして、この沈み込み深さDが主吸収層31及び中高吸収層32の厚さt1’,t2’の増加分を相殺するので、液吸収後の吸収体40(又はコアラップシート38を除いた吸収性コア30)の全体の厚さT2は、例えば、1.2mm以上12mm以下となり、液吸収前の全体の厚さT1とほぼ変わらぬ厚さ(すなわち、厚さT2≒厚さT1)とすることができる。
これにより、例えば、吸収性物品1の装着時において、着用者の液排泄部位に対する中高吸収層32の当接圧が、液吸収後に増加することを抑制できる。このため、本実施形態に係る吸収性コア30(又は吸収体40)を用いれば、着用者が吸収性物品1を長時間装用したとしても、液吸収後の当接圧の増加による不快感を覚える状況や頻度は少なくなることが期待される。
従って、本実施形態に係る吸収体40によれば、装着時間に拘わらず柔軟性及び形状安定性を継続させて高い装着感を維持することができ、着用者に対して快適と思われる着用感を演出可能な吸収性物品1を提供することが可能となる。特に、このような構造の吸収体40において、例えば中高吸収層32が高吸水性ポリマーを含有する場合には、その吸液能力を最大限有効に活用することが可能となると共に、液吸収後においても高い装着感を維持することが可能となる。
なお、上述した吸収体40は、例えば、次のように構成されていてもよい。すなわち、図6に示すように、変形例の吸収体40Aは、主吸収層31の積層領域Zにおける合成繊維36の単位面積当たりの質量が、この積層領域Z以外の領域よりも大きくなるように形成されている点が、合成繊維36の単位面積当たりの質量が全領域に亘ってほぼ均等となるように形成された先の吸収体40とは相違している。
この吸収体40Aにおいて、具体的には、主吸収層31は、積層領域Z以外の領域の合成繊維36の単位面積当たりの質量が、例えば、16g/m2以上240g/m2以下である場合、積層領域Zにおける合成繊維36の単位面積当たりの質量が、例えば、32g/m2以上320g/m2以下と、相対的に大きくなるように形成されている。
これにより、積層領域Zにおける主吸収層31の易変形性を積層領域Z以外の領域よりも向上させることができ、中高吸収層32の主吸収層31への沈み込みをより大きくすることができるので、着用者の液排泄部位への当接圧の増加をより抑えることができる。このため、例えば本実施形態のように、吸収性物品1が夜用生理用ナプキンである場合において、液体を多量に吸収した際にも高い装着感を維持し、快適と思われる着用感を演出することが可能となる。
また、図7に示すように、他の変形例の吸収体40Bは、主吸収層31の積層領域Zにおける合成繊維36の単位面積当たりの質量が、積層領域Z以外の領域よりも小さくなるように形成されている点が、積層領域Zにおける合成繊維36の単位面積当たりの質量が積層領域Z以外の領域よりも大きくなるように形成された先の吸収体40Aとは相違している。
この吸収体40Bにおいて、具体的には、主吸収層31は、積層領域Z以外の領域の合成繊維36の単位面積当たりの質量が、例えば、32g/m2以上320g/m2以下である場合、積層領域Zにおける合成繊維36の単位面積当たりの質量が、例えば、16g/m2以上240g/m2以下と、相対的に小さくなるように形成されている。
これにより、積層領域Z以外の領域における主吸収層31の易変形性を積層領域Zにおけるものよりも向上させることができるので、例えば、積層領域Zの前後方向の両側や幅方向の両側の主吸収層31が、着用者の身体形状に沿って変形しやすく、かつ、着用者の動作に対して追従しやすくなるため、吸収性物品1のフィット性をより高めて快適な装用感を提供することが可能となる。
更に、上述した吸収体40は、例えば、次のように構成されていてもよい。すなわち、吸収体40は、吸収性コア30と該吸収性コア30の表面の少なくとも一部を覆う液透過性シート(コアラップシート38)を備えており、図8に示すように、変形例の吸収体40Cは、コアラップシート38が、非伸長性或いは難伸長性を有し、吸収性コア30の中高吸収層32の表面シート12側の第1面32a上を覆うように配置されている。ここで、非伸長性或いは難伸長性とは、シートに引張荷重を負荷した際の伸度が低いことを意味し、具体的には50mm幅のシートに1N負荷した時の伸度が25%以下である。
このように構成された吸収体40Cは、図8(a)に示すように、液吸収前は先の吸収体40とほぼ同等の形状を保っているが、液吸収後は、図8(b)に示すように変形する。すなわち、吸収体40Cは、中高吸収層32が液を吸収して膨潤する際に、表面シート12側の第1面32a上を覆うように配置されている非伸長性或いは難伸長性のコアラップシート38により、第2面32b側が側方に拡がるように断面台形状に膨潤しつつ、主吸収層31側へより沈み込むように変形する。
これにより、中高吸収層32の当接圧を逃し、高い装着感を維持することができるという効果を更に高めることができる。
以上のように、本実施形態に係る吸収体40を備えた吸収性物品1は、吸収体40が、例えば、合成繊維36とパルプ繊維37とを含む主吸収層31と、この主吸収層31よりも幅狭に形成され、少なくともパルプ繊維37を含む中高吸収層32とを備えて構成され、中高吸収層32が、主吸収層31の積層領域Z上に積層されている。また、中高吸収層32が、合成繊維36を含まない、又は、主吸収層31よりも単位面積当たりの質量が小さくなるよう合成繊維36を含んで構成されている。
このため、主吸収層31が液吸収後も柔軟性及び易変形性に優れた特性を備えるので、中高吸収層32が液吸収後に膨潤すると、主吸収層31側へ沈み込み、着用者の液排泄部位への当接圧を逃すことができる。これにより、装着時間に拘わらず柔軟性及び形状安定性を継続させて高い装着感を維持し、快適と思われる着用感を演出することが可能となる。また、中高吸収層32が合成繊維36を含んでいれば、中高吸収層32にも柔軟性及び易変形性を与えることができるので、装用感を更に向上させる効果が期待できる。
そして、主吸収層31及び中高吸収層32の少なくとも一つが、高吸水性ポリマーを含んでいれば、吸収性コア30の液吸収性を更に向上させることが可能となる。特に、中高吸収層32が高吸水性ポリマーを含み、主吸収層31が高吸水性ポリマーを含まない、又は、中高吸収層32よりも単位面積当たりの質量が小さくなるよう高吸水性ポリマーを含んでいれば、吸収性コア30の中高吸収層32での理論的な吸液量をより多くし、それに基づく機能を有効に働かせやすくできるので、高い吸収性能を発揮することが可能となる。
また、吸収体40Aのように、主吸収層31を、積層領域Zの合成繊維36の単位面積当たりの質量が積層領域Z以外の領域よりも大きくなるように形成すれば、積層領域Zにおける主吸収層31の易変形性を積層領域Z以外の領域よりも向上させることができる。これにより、中高吸収層32の主吸収層31への沈み込みをより多くすることができ、着用者の液排泄部位への当接圧の増加をより抑えて、高い装着感を維持することが可能となる。
更に、主吸収層31及び中高吸収層32が、積層領域Zにおいて、互いに固着されていなければ、中高吸収層32の液吸収後の膨潤が抑制されにくいため、液吸収性が更に向上すると共に、主吸収層31側へ沈み込みやすくなるため、更に快適な着用感を演出することが可能となる。そして、パルプ繊維37に含有される合成繊維36が、非吸水性であれば、吸収性コア30が膨潤したときに、吸水性の合成繊維よりも保形性を高めることができる。
なお、吸収体40の少なくとも中高吸収層32の第1面32a上を覆うように非伸長性或いは難伸長性のコアラップシート38を配置して吸収体40Cを構成すれば、中高吸収層32の身体への当接圧を逃して高い装着感を維持する効果を更に高めることができる。
なお、中高吸収層32が合成繊維36を含有する場合には、その合成繊維36の単位面積当たりの質量は、主吸収層31における、中高吸収層32と重なる位置に存在する領域の合成繊維36の単位面積当たりの質量と比較して少ないことが、上述した効果を奏する上で好ましい。高吸水性ポリマーの単位面積当たりの質量についても同様である。
本実施形態に係る吸収体40の吸収性コア30の製造方法としては、合成繊維とセルロース系吸水性繊維とを含む主吸収層31の積層領域Z上に、主吸収層31よりも幅狭で少なくともセルロース系吸水性繊維を含む中高吸収層32を積層した吸収性コア30が製造できる方法であれば、特に制限されず、当該技術分野における公知の方法を利用することができる。
以上説明した通り、本実施形態に係る吸収体40(及び40A〜40C)、及びこれを備えた吸収性物品1によれば、柔軟性及び形状安定性を継続させることができるので、液吸収後においても高い装着感を維持することが可能となる。なお、上記には本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、上記の実施形態では、吸収性物品1として生理用ナプキンを例に挙げて説明したが、本発明の吸収性コア30や吸収体40等は、このような生理用ナプキンに限らず、紙おむつや失禁用パンツ、或いは尿取りパッド等の、公知の種々の吸収性物品に適用可能である。また、吸収体40は、吸収性コア30にコアラップシート38を被覆したものを例に挙げて説明したが、コアラップシート38が被覆されていない吸収性コア30のみを吸収体として用いてもよい。