JP2019087414A - バイポーラ電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】セパレータにおいて電解液が入るスペースを確保することができるバイポーラ電池の製造方法を提供する。【解決手段】バイポーラ電池の製造方法は、ニッケル箔15の上面15aに形成された正極16とニッケル箔15の下面15bに形成された負極17とを有するバイポーラ電極11がセパレータ12を介して積層されてなる電極積層部13と、電極積層部13を取り囲むように配置され、ニッケル箔15を保持する一次シール部20とを備えた電池構造体22を作製する工程と、電池構造体22の内部を加熱する加熱工程と、電池構造体22の内部空間Vの圧力を低下させる減圧工程と、加熱工程及び減圧工程を実施した後に、電池構造体22の内部空間Vに電解液を注入する注液工程とを含む。【選択図】図4
Description
本発明は、バイポーラ電池の製造方法に関する。
バイポーラ電池の製造方法としては、例えば特許文献1に記載されている技術が知られている。特許文献1に記載のバイポーラ電池の製造方法では、集電体の一方の面に正極層が設けられると共に集電体の他方の面に負極層が設けられたバイポーラ電極をセパレータを介して複数積層させて、単電池(セル)を形成し、その後単電池に電解液を含浸させると共に、単電池の周囲を取り囲むように隣接するバイポーラ電極の集電体の間にシール層を配置することにより、バイポーラ電池を作製する。
ところで、セルの内部空間に空気が存在していると、セルの内部空間に電解液が入りにくいため、電解液の注入前にセルの内部空間を減圧することがある。しかし、セルの内部空間を減圧すると、セルの内部空間が縮小されるため、セパレータの容積が小さくなり、セパレータにおいて電解液が入るスペースが狭くなる。その状態で電解液を注入すると、セパレータに規定量の電解液が入らなかったり、セパレータに電解液が入るのに要する時間が長くなるおそれがある。
本発明の目的は、セパレータにおいて電解液が入るスペースを確保することができるバイポーラ電池の製造方法を提供することである。
本発明の一態様に係るバイポーラ電池の製造方法は、集電体の一方面に形成された正極と集電体の他方面に形成された負極とを有するバイポーラ電極がセパレータを介して積層されてなる電極積層部と、電極積層部を取り囲むように配置され、集電体を保持するシール部とを備えた電池構造体を作製する工程と、電池構造体の内部を加熱する加熱工程と、電池構造体の内部空間の圧力を低下させる減圧工程と、加熱工程及び減圧工程を実施した後に、電池構造体の内部空間に電解液を注入する注液工程とを含むことを特徴とする。
このようなバイポーラ電池の製造方法においては、電池構造体の内部を加熱することにより、セパレータが膨張するため、セパレータ内の容積が大きくなる。これにより、電池構造体の内部空間に電解液を注入する前に、電池構造体の内部空間の圧力を低下させても、つまり電池構造体の内部空間を減圧しても、セパレータにおいて電解液が入るスペースが確保される。
減圧工程は、加熱工程の後に実施してもよい。この場合には、電池構造体の内部の加熱によってセパレータが膨張した状態で、電池構造体の内部空間が減圧されることになる。このため、電池構造体の内部空間を減圧する際には、セパレータ内の容積が大きくなっている。従って、セパレータにおいて電解液が入るスペースが確保されやすくなる。
加熱工程では、恒温槽を用いて電池構造体の内部を加熱してもよい。この場合には、電極積層部の積層数が多くても、電池構造体の内部全体を一括して短時間で効率良く且つ均等に加熱することができる。
本発明によれば、セパレータにおいて電解液が入るスペースを確保することができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図中、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係るバイポーラ電池の製造方法により製造されるバイポーラ電池を備えた蓄電装置を示す概略断面図である。図1において、蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の車両のバッテリとして使用される。蓄電装置1は、複数(ここでは3つ)の蓄電モジュールとしてのバイポーラ電池2を備えている。バイポーラ電池2は、例えばニッケル水素二次電池である。
複数のバイポーラ電池2は、金属製の導電板3を介して積層されている。導電板3は、最上側及最下側に位置するバイポーラ電池2の外側にも配置されている。バイポーラ電池2及び導電板3は、例えば積層方向(Z軸方向)から見て矩形状(平面視矩形状)を呈している。導電板3は、隣り合うバイポーラ電池2と電気的に接続されている。これにより、複数のバイポーラ電池2が積層方向に直列接続されている。バイポーラ電池2については、後で詳述する。
最下側に位置する導電板3には、正極端子4が接続されている。最上側に位置する導電板3には、負極端子5が接続されている。正極端子4及び負極端子5は、積層方向に垂直な方向(X軸方向)に延在している。このような正極端子4及び負極端子5を設けることにより、蓄電装置1の充放電を実施することができる。
導電板3は、バイポーラ電池2において発生した熱を放出するための放熱板としても機能し得る。導電板3には、積層方向と正極端子4及び負極端子5の延在方向とに垂直な方向(Y軸方向)に延在した複数の空隙3aが設けられている。これらの空隙3aを空気等の冷媒が通過することにより、バイポーラ電池2からの熱を効率的に外部に放出することができる。
また、蓄電装置1は、バイポーラ電池2及び導電板3を積層方向に拘束する拘束ユニット6を備えている。拘束ユニット6は、バイポーラ電池2及び導電板3を積層方向に挟む1対の拘束プレート7と、これらの拘束プレート7同士を締結する複数組のボルト8及びナット9とを有している。
拘束プレート7は、鉄等の金属からなっている。各拘束プレート7と導電板3との間には、樹脂フィルム等の絶縁フィルム10がそれぞれ配置されている。拘束プレート7及び絶縁フィルム10は、例えば平面視矩形状を呈している。拘束プレート7は、積層方向から見てバイポーラ電池2、導電板3及び絶縁フィルム10よりも大きい。
拘束プレート7の縁部には、ボルト8の軸部8aを挿通させる複数の挿通孔7aが設けられている。ボルト8の軸部8aが各拘束プレート7の挿通孔7aを挿通した状態で、軸部8aの先端部にナット9が螺合することで、バイポーラ電池2、導電板3及び絶縁フィルム10が1対の拘束プレート7に挟持される。これにより、バイポーラ電池2、導電板3及び絶縁フィルム10に積層方向の拘束荷重が付与される。
図2は、バイポーラ電池2の概略断面図である。図2において、バイポーラ電池2は、複数のセル(例えば24セル)が積層された構造(複数セル構造)を有している。バイポーラ電池2は、複数のバイポーラ電極11がセパレータ12を介して積層されてなる電極積層部13と、この電極積層部13を取り囲むシール枠14とを備えている。
バイポーラ電極11及びセパレータ12は、例えば平面視矩形状を呈している。セパレータ12は、積層方向に隣り合うバイポーラ電極11の間に配置されている。バイポーラ電極11は、集電体であるニッケル箔15と、このニッケル箔15の上面15a(一方面)に形成された正極16と、ニッケル箔15の下面15b(他方面)に形成された負極17とを有している。
バイポーラ電極11の正極16は、セパレータ12を挟んで積層方向に隣り合う一方のバイポーラ電極11の負極17と対向している。バイポーラ電極11の負極17は、セパレータ12を挟んで積層方向に隣り合う他方のバイポーラ電極11の正極16と対向している。
電極積層部13の最下層には、正極側終端電極18が配置されている。正極側終端電極18は、ニッケル箔15と、このニッケル箔15の上面15aに形成された正極16とを有している。電極積層部13の最上層には、負極側終端電極19が配置されている。負極側終端電極19は、ニッケル箔15と、このニッケル箔15の下面15bに形成された負極17とを有している。正極側終端電極18の正極16は、セパレータ12を挟んで最下層のバイポーラ電極11の負極17と対向している。負極側終端電極19の負極17は、セパレータ12を挟んで最上層のバイポーラ電極11の正極16と対向している。正極側終端電極18及び負極側終端電極19のニッケル箔15は、積層方向に隣り合う導電板3(図1参照)に接続されている。
正極16は、ニッケル箔15の一方面に正極活物質を塗工することにより形成されている。正極活物質としては、例えばコバルト(Co)酸化物コートが施された水酸化ニッケルが用いられる。負極17は、ニッケル箔15の他方面に負極活物質を塗工することにより形成されている。負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が用いられる。ニッケル箔15の縁部15cは、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。
セパレータ12は、正極16と負極17との間に配置され、正極16と負極17とを隔離する。セパレータ12は、積層方向から見てニッケル箔15よりも小さく且つ正極16及び負極17よりも大きい。セパレータ12は、例えばシート状に形成されている。セパレータ12は、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、もしくはPE、PP、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはメチルセルロース等からなる不織布または織布等で形成されている。また、セパレータ12は、フッ化ビニリデン樹脂化合物等で補強されていてもよい。なお、セパレータ12の形状としては、特にシート状に限られず、袋状であってもよい。
シール枠14は、電極積層部13を取り囲むように配置され、各ニッケル箔15の縁部15cを保持する複数の一次シール部20と、これらの一次シール部20の周囲に配置された二次シール部21とを有している。
各一次シール部20は、積層方向に沿ってニッケル箔15毎に配置されている。一次シール部20は、枠状に形成されている。一次シール部20は、ニッケル箔15の縁部15cに溶着されている。また、積層方向に隣り合う一次シール部20同士も溶着されている。従って、積層方向に隣り合う一次シール部20には、ニッケル箔15の縁部15cが埋没した状態で保持されている。
積層方向に隣り合うニッケル箔15間には、ニッケル箔15、正極16、負極17及び一次シール部20によって画成された内部空間Vが設けられている。内部空間Vは、液密に形成されている。セパレータ12内を含む内部空間Vには、アルカリ性の電解液が注入されている。アルカリ性の電解液としては、例えば水酸化カリウム水溶液等を含むアルカリ溶液が用いられている。一次シール部20は、内部空間Vを封止する。
二次シール部21は、角筒状を有している。二次シール部21は、各一次シール部20を取り囲んでおり、内部空間Vを更に封止する。二次シール部21は、各一次シール部20に溶着されている。
一次シール部20及び二次シール部21は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)または変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等の樹脂で形成されている。
図3は、以上のようなバイポーラ電池2を製造する工程の手順を示すフローチャートである。図3において、まず図4に示されるような電池構造体22を作製する(工程S101)。
電池構造体22は、ニッケル箔15の上面15aに形成された正極16とニッケル箔15の下面15bに形成された負極17とを有するバイポーラ電極11がセパレータ12を介して複数積層されてなる電極積層部13と、この電極積層部13を取り囲むように配置され、ニッケル箔15の縁部15cを保持する複数の一次シール部20とを備えている。電池構造体22は、図2に示されたバイポーラ電池2において二次シール部21が無い状態であり、複数セル構造を有している。なお、1つのセルは、2つのニッケル箔15、正極16、負極17、セパレータ12及び一次シール部20により構成されている。
続いて、電池構造体22の内部を加熱する(工程S102)。このような加熱工程では、図4に示されるように、電池構造体22を恒温槽23の中に入れ、その状態で恒温槽23内を所定の温度に保つことにより、電池構造体22の内部を加熱する。これにより、電池構造体22の内部が温められるため、セパレータ12が膨張し、セパレータ12内を含む電池構造体22の内部空間Vの容積が増加する。
続いて、電池構造体22の内部空間Vの圧力を低下させる。つまり、電池構造体22の内部空間Vを減圧する(工程S103)。このような減圧工程では、電池構造体22を恒温槽23の中から取り出した後、真空ポンプ(図示せず)によって、一次シール部20に設けられた注液孔24を通して電池構造体22の内部空間Vを減圧する。これにより、電池構造体22の内部空間Vに存在する空気が排出される。
続いて、電池構造体22の内部空間Vに電解液を注入する(工程S104)。このような注液工程では、シリンジ(図示せず)を用いて、一次シール部20に設けられた注液孔24から電池構造体22の内部空間Vに電解液を注入する。このとき、電池構造体22の内部空間Vから空気が抜けているため、電池構造体22の内部空間Vに電解液が入りやすくなっている。注入された電解液は、セパレータ12内に入り込んでいく。なお、注液孔24は、電解液の注入後にシール材(図示せず)により封止される。
その後、二次シール部21を各一次シール部20に溶着することにより、上記のバイポーラ電池2が得られる。
以上のように本実施形態にあっては、電池構造体22の内部を加熱する加熱工程と電池構造体22の内部空間Vの圧力を低下させる減圧工程とを実施した後に、電池構造体22の内部空間Vに電解液を注入する注液工程を実施する。このように電池構造体22の内部を加熱することにより、セパレータ12が膨張するため、セパレータ12内の容積が大きくなる。これにより、電池構造体22の内部空間Vに電解液を注入する前に、電池構造体22の内部空間Vの圧力を低下させても、つまり電池構造体22の内部空間Vを減圧しても、セパレータ12において電解液が入るスペースが確保される。その結果、セパレータ12の流路抵抗が小さくなるため、セパレータ12に規定量の電解液を入れることができると共に、セパレータ12に電解液を入れるのに要する時間を短縮することができる。
また、本実施形態では、加熱工程を実施した後に減圧工程を実施するので、電池構造体22の内部の加熱によってセパレータ12が膨張した状態で、電池構造体22の内部空間Vが減圧されることになる。このため、電池構造体22の内部空間Vを減圧する際には、セパレータ12内の容積が大きくなっている。従って、セパレータ12において電解液が入るスペースが確保されやすくなる。
また、本実施形態では、恒温槽23を用いて電池構造体22の内部を加熱するので、電極積層部13の積層数が多くても、電池構造体22の内部全体を一括して短時間で効率良く且つ均等に加熱することができる。
また、電池構造体22の内部空間Vが減圧されると、電池構造体22における隣り合うセルの空間同士が互いに干渉し合う。このため、隣り合う一方のセルのセパレータ12内の容積が小さくなると、隣り合う他方のセルのセパレータ12内の容積が大きくなり、結果として各セルのセパレータ12内の容積がばらつきやすくなる。しかし、本実施形態では、電池構造体22の内部が加熱されるので、電池構造体22の内部空間Vの容積が全体的に大きくなる。従って、その後の減圧工程において隣り合うセルの空間同士が干渉し合っても、各セルのセパレータ12内の容積のばらつきが抑えられる。これにより、各セパレータ12において電解液が入るスペースを均等化することができる。
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、電池構造体22の内部を加熱した後に、電池構造体22の内部空間Vを減圧しているが、特にその形態には限られず、電池構造体22の内部を加熱すると同時に、電池構造体22の内部空間Vを減圧してもよいし、或いは電池構造体22の内部空間Vを減圧した後に、電池構造体22の内部を加熱してもよい。この場合でも、電池構造体22の内部の加熱によってセパレータ12が膨張するため、セパレータ12において電解液が入るスペースを確保することができる。
また、上記実施形態では、二次シール部21が無い状態の電池構造体22において加熱工程、減圧工程及び注液工程を実施しているが、特にその形態には限られず、二次シール部21がある状態の電池構造体において加熱工程、減圧工程及び注液工程を実施してもよい。
また、上記実施形態では、電池構造体22は複数セル構造を有しているが、電池構造体22の構成としては、特にそれには限られず、図5に示されるような1セル構造であってもよい。そのような1セル構造の電池構造体22の内部を加熱するときは、例えば図5に示されるように、電池構造体22の上方及び下方に設置されたヒータ25によって加熱してもよい。
また、複数セル構造の電池構造体22の内部を加熱するときでも、ヒータ25を用いてもよい。この場合には、電池構造体22の上方及び下方だけでなく電池構造体22の側方にもヒータ25を設置することで、電池構造体22の内部全体を均等に加熱することができる。
さらに、上記実施形態では、バイポーラ電池2はニッケル水素二次電池であるが、バイポーラ電池2としては、特にニッケル水素二次電池には限られず、リチウムイオン二次電池等であってもよい。
2…バイポーラ電池、11…バイポーラ電極、12…セパレータ、13…電極積層部、15…ニッケル箔(集電体)、15a…上面(一方面)、15b…下面(他方面)、16…正極、17…負極、20…一次シール部(シール部)、22…電池構造体、23…恒温槽、V…内部空間。
Claims (3)
- 集電体の一方面に形成された正極と前記集電体の他方面に形成された負極とを有するバイポーラ電極がセパレータを介して積層されてなる電極積層部と、前記電極積層部を取り囲むように配置され、前記集電体を保持するシール部とを備えた電池構造体を作製する工程と、
前記電池構造体の内部を加熱する加熱工程と、
前記電池構造体の内部空間の圧力を低下させる減圧工程と、
前記加熱工程及び前記減圧工程を実施した後に、前記電池構造体の内部空間に電解液を注入する注液工程とを含むことを特徴とするバイポーラ電池の製造方法。 - 前記減圧工程は、前記加熱工程の後に実施することを特徴とする請求項1記載のバイポーラ電池の製造方法。
- 前記加熱工程では、恒温槽を用いて前記電池構造体の内部を加熱することを特徴とする請求項1または2記載のバイポーラ電池の製造方法。
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