JP2019086259A - 気化部材用銅多孔質体、沸騰冷却器、及び、ヒートパイプ - Google Patents

気化部材用銅多孔質体、沸騰冷却器、及び、ヒートパイプ Download PDF

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Abstract

【課題】液相媒体との接触面積を確保できるとともに、さらに気相媒体を効率的に排出することができ、発熱体からの熱によって液相媒体を効率的に気化させることが可能な気化部材用銅多孔質体を提供する。【解決手段】接触する液相媒体を気化させる気化部材として用いられる気化部材用銅多孔質体であって、複数の銅繊維11の焼結体からなり、三次元網目構造の骨格部12を有し、気孔率が65%以上95%以下の範囲内とされ、開口径が100μm以上2000μm以下の範囲内とされるとともに、比表面積S(m2/g)と前記銅繊維の直径R(m)の積で定義される規格化比表面積SD=S×Rが0.001以上0.25以下の範囲内とされている。【選択図】図2

Description

本発明は、接触する液相媒体を気化させる気化部材として用いられる気化部材用銅多孔質体、この気化部材用銅多孔質体を備えた沸騰冷却器、及び、ヒートパイプに関するものである。
例えば、半導体装置における半導体素子等の発熱体を効率良く冷却する装置として、例えば特許文献1,2に開示されているように、発熱体からの熱によって液相媒体を気化し、このときの蒸発潜熱を利用して発熱体を冷却する沸騰冷却器、及び、ヒートパイプが提供されている。
上述の沸騰冷却器においては、熱伝達を向上させて液相媒体を効率的に気化させるために、液相媒体を気化させる沸騰部に、三次元網目構造をなす金属多孔質体を配設することが提案されている。
また、上述のヒートパイプにおいては、パイプ体の内部にウィックとして、三次元網目構造をなす金属多孔質体を配設することが提案されている。
この金属多孔質体においては、三次元状に連結する骨格部を有し、この骨格部により三次元状に連通する連通孔が形成されており、骨格部の比表面積が大きいことから、この連通孔に流通される液相媒体との接触面積が大きくなるため、この金属多孔質体を介して液相媒体を加熱することで、液相媒体を効率的に気化することができる。
ここで、上述のように金属多孔質体においては、気化した気相媒体が金属多孔質体から速やかに排出されないと、液相媒体の流通が妨げられ、効率良く液相媒体を気化させることができなくなるおそれがあった。
そこで、特許文献1においては、気孔率が互いに異なる第1多孔質層と第2多孔質層とが積層された構造のものが提案されている。特許文献1においては、気孔率が低い第1多孔質層において液相媒体の気化を促進し、気孔率が高い第2多孔質層において気相媒体の排出を促進する構成とされている。
特開2013−243249号公報 特開平08−047113号公報
ところで、特許文献1に示すように、気孔率が互いに異なる第1多孔質層と第2多孔質層とが積層された構造とすると、沸騰部(蒸発部)に配設される金属多孔質体が大型化してしまい、沸騰冷却器、及び、ヒートパイプの装置設計の自由度が低下してしまう。また、沸騰冷却器、及び、ヒートパイプの構造が複雑となり、製造コストが増加してしまうおそれがあった。
また、積層構造とした場合には、気孔率の低い第1多孔質層では、やはり気相媒体の排出が速やかに行われないと、液相媒体を効率的に気化させることができなくなるおそれがあった。
本発明は、以上のような事情を背景としてなされたものであって、液相媒体との接触面積を確保できるとともに、気相媒体を効率的に排出することができ、発熱体からの熱によって液相媒体を効率的に気化させることが可能な気化部材用銅多孔質体、この気化部材用銅多孔質体を備えた沸騰冷却器、及び、ヒートパイプを提供することを目的としている。
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明の気化部材用銅多孔質体は、接触する液相媒体を気化させる気化部材として用いられる気化部材用銅多孔質体であって、複数の銅繊維の焼結体からなり、三次元網目構造の骨格部を有し、気孔率が65%以上95%以下の範囲内とされ、開口径が100μm以上2000μm以下の範囲内とされるとともに、比表面積S(m/g)と前記銅繊維の直径R(m)の積で定義される規格化比表面積S=S×Rが0.001以上0.25以下の範囲内とされていることを特徴としている。
この構成の気化部材用銅多孔質体によれば、三次元網目構造の骨格部を有し、比表面積S(m/g)と前記銅繊維の直径R(m)の積で定義される規格化比表面積S=S×Rが0.001以上0.25以下の範囲内とされているので、骨格部の表面が適度に粗くなり、液相媒体との接触面積が十分に確保され、液相媒体を効率的に気化させることができる。
また、開口径が100μm以上2000μm以下の範囲内とされているので、液相媒体との接触面積が確保されるとともに、気相媒体を効率的に排出することができる。
さらに、気孔率が65%以上95%以下の範囲内とされているので、液相媒体との接触面積が確保されるとともに、気相媒体を効率的に排出することができる。
また、単相構造の気化部材用銅多孔質体によって、液相媒体との接触面積を十分に確保することができるとともに、気相媒体を効率的に排出することができる。
ここで、本発明の気化部材用銅多孔質体においては、前記銅繊維の直径Rが0.02mm以上1mm以下の範囲内とされ、前記銅繊維の長さLと直径Rとの比L/Rが4以上2500以下の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、前記銅繊維の直径Rが0.02mm以上1mm以下の範囲内とされ、前記銅繊維の長さLと直径Rとの比L/Rが4以上2500以下の範囲内とされているので、積層した際に適度に空隙が形成されるため、気孔率及び開口径を比較的容易に調整することができ、気孔率を65%以上95%以下の範囲内に、かつ、開口径を100μm以上2000μm以下の範囲内とすることができる。
本発明の沸騰冷却器は、発熱体からの熱を受けて液相媒体を気化させる沸騰部を備えた沸騰冷却器であって、前記沸騰部に、上述の気化部材用銅多孔質体が配設されていることを特徴としている。
この構成の沸騰冷却器においては、前記沸騰部に、上述の気化部材用銅多孔質体が配設されているので、沸騰部において、液相媒体と気化部材用銅多孔質体とが十分に接触するとともに気相媒体を排出することができ、液相媒体を効率的に気化させることができる。すなわち、沸騰部において、液相媒体の沸騰を促進することができる。これにより、沸騰冷却器の冷却性能を大幅に向上させることができる。
また、単相構造の気化部材用銅多孔質体によって、液相媒体と十分に接触させることができるとともに気相媒体を効率的に排出することができ、沸騰冷却器の構造を簡素化することができる。
本発明のヒートパイプは、発熱体からの熱を受けて液相媒体を気化させる蒸発部と、前記蒸発部で生じた気相媒体を液化させる凝縮部と、を備えたヒートパイプであって、前記蒸発部に配設される毛細管構造(蒸発部ウィック)として、上述の気化部材用銅多孔質体が配設されていることを特徴としている。
この構成のヒートパイプにおいては、前記蒸発部に配設される毛細管構造(蒸発部ウィック)として、上述の気化部材用銅多孔質体が配設されているので、蒸発部において、液相媒体と気化部材用銅多孔質体とが十分に接触するとともに気相媒体を排出することができ、液相媒体を効率的に気化させることができる。これにより、ヒートパイプの熱交換効率を大幅に向上させることができる。また、単相構造の気化部材用銅多孔質体によって、液相媒体と十分に接触させることができるとともに気相媒体を効率的に排出することができ、ヒートパイプの構造を簡素化することができる。
本発明によれば、液相媒体との接触面積を確保できるとともに、さらに気相媒体を効率的に排出することができ、発熱体からの熱によって液相媒体を効率的に気化させることが可能な気化部材用銅多孔質体、この気化部材用銅多孔質体を備えた沸騰冷却器、及び、ヒートパイプを提供することができる。
本発明の第一の実施形態である沸騰冷却器の一例を示す説明図である。 図1に示す沸騰冷却器に配設された気化部材用銅多孔質体の拡大模式図である。 本実施形態である気化部材用銅多孔質体の開口径を算出する方法を示す説明図である。 図2に示す気化部材用銅多孔質体の観察写真である。 図2に示す気化部材用銅多孔質体の製造方法の一例を示すフロー図である。 図2に示す気化部材用銅多孔質体を製造する製造工程を示す説明図である。 本発明の第二の実施形態であるヒートパイプの一例を示す説明図である。 本発明の他の実施形態である沸騰冷却器における沸騰部の拡大説明図である。 本発明の他の実施形態である沸騰冷却器における沸騰部の説明図である。 本発明の他の実施形態である沸騰冷却器における沸騰部の説明図である。 本発明の他の実施形態である沸騰冷却器における沸騰部の説明図である。 本発明の他の実施形態であるヒートパイプの説明図である。 本発明の他の実施形態であるヒートパイプの説明図である。 本発明の他の実施形態であるヒートパイプの説明図である。 本発明の他の実施形態であるヒートパイプの説明図である。 本発明の他の実施形態であるヒートパイプの説明図である。
以下に、本発明の実施形態である気化部材用銅多孔質体、及び、沸騰冷却器、ヒートパイプについて、添付した図面を参照して説明する。
(第一の実施形態)
まず、本発明の第一の実施形態である気化部材用銅多孔質体、及び、沸騰冷却器について、図1から図6を参照して説明する。
本実施形態である沸騰冷却器1は、例えば電力制御用半導体装置等において、発熱体である半導体素子を冷却するために用いられるものである。
本実施形態である沸騰冷却器1は、図1に示すように、内部に熱を媒体する熱媒体が充填された密封容器2と、この密封容器2の一面側(本実施形態では下面側)に配設された沸騰部3と、密封容器2のうち沸騰部3に対向する面側(本実施形態では上面側)に配設された凝縮部7と、を備えている。
ここで、熱媒体は、密封容器2の内部において、液相状態および気相状態で存在しており、熱媒体の蒸発潜熱によって、発熱体Hを冷却する構成とされている。
凝縮部7は、気相状態の熱媒体(気相媒体)を冷却して液化させる構成とされている。本実施形態においては、凝縮部7には、冷却媒体が流通する冷却流路8が配設されており、この冷却流路8によって、気相状態の熱媒体を冷却し、液化させる。
沸騰部3は、発熱体Hからの熱を受けて、液相状態の熱媒体(液相媒体)を加熱して気化させる構成とされている。
そして、本実施形態においては、図1に示すように、沸騰部3には、気化部材用銅多孔質体10が配設されている。この気化部材用銅多孔質体10は、その一面が密封容器2の壁面を介して発熱体Hに接触するように配置されている。
この気化部材用銅多孔質体10に、液相状態の熱媒体(液相媒体)が流通することで、発熱体Hの熱によって液相状態の熱媒体(液相媒体)が加熱されて気化することになる。そして、気相状態の熱媒体(気相媒体)が、気孔部を介して気化部材用銅多孔質体10から排出される。
ここで、本実施形態である気化部材用銅多孔質体10は、図2に示すように、複数の銅繊維11の焼結体からなり、複数の銅繊維11によって三次元網目構造の骨格部12が形成されている。
本実施形態である気化部材用銅多孔質体10においては、気孔率Pが65%以上95%以下の範囲内とされている。なお、気孔率Pは、以下の式で算出される。
P(%)=(1−(m/(V×D)))×100
m:気化部材用銅多孔質体10の質量(g)
V:気化部材用銅多孔質体10の体積(cm
:気化部材用銅多孔質体10を構成する銅繊維11の真密度(g/cm
また、本実施形態である気化部材用銅多孔質体10においては、外部に開口した気孔を有しており、この気孔の開口径Uが100μm以上2000μm以下の範囲内とされている。
ここで、本実施形態である気化部材用銅多孔質体10は、複数の銅繊維11の焼結体で構成されていることから、開口径Uは、図3に示すように正方形状の開口孔を有する立方体として規格化して算出した。
まず、図3において、立方体の一辺を構成する骨格相当径aを、銅繊維11の直径Rに対して、以下の関係式を満足するものとして規定した。
=π×(R/2)
そして、上述の気孔率Pから材料率Q=(100−P)を算出し、以下の式を満足するものとして開口径Uを規定した。
Q/100=(a+3×U×a)/(a+U)
さらに、本実施形態である気化部材用銅多孔質体10においては、比表面積S(m/g)と銅繊維11の直径R(m)の積で定義される規格化比表面積S=S×Rが0.001以上0.25以下の範囲内とされている。
ここで、測定される比表面積は、銅繊維11の直径Rが小さいほど大きくなる。このため、骨格部12の表面に形成される凹凸を評価するためには、銅繊維11の直径Rを考慮する必要がある。そこで、本実施形態では、比表面積S(m/g)と銅繊維11の直径R(m)の積で定義される規格化比表面積Sを規定し、骨格部12の表面に形成される凹凸を評価している。
また、骨格部12を構成する銅繊維11は、銅又は銅合金からなり、直径Rが0.02mm以上1mm以下の範囲内とされ、銅繊維11の長さLと直径Rとの比L/Rが4以上2500以下の範囲内とされている。本実施形態では、銅繊維11は、例えばC1020(無酸素銅)で構成されている。
なお、本実施形態では、銅繊維11には、ねじりや曲げ等の形状付与が施されている。また、本実施形態である気化部材用銅多孔質体10においては、その見掛け密度比Dが銅繊維11の真密度Dの36%以下とされている。銅繊維11の形状については、前記見掛け密度比Dが銅繊維11の真密度Dの36%以下となる限りにおいて、直線状、曲線状など任意であるが、銅繊維11の少なくとも一部に、ねじり加工や曲げ加工等により所定の形状付与加工をされたものを用いると、銅繊維11同士の間の空隙形状を立体的かつ等方的に形成させることができ、その結果、気化部材用銅多孔質体10の熱伝導性等の各種特性の等方性向上に繋がる。
なお、銅繊維11は、引き抜き法、コイル切削法、ビビリ切削法、ワイヤ切削法、溶融紡糸法などにより、所定の直径Rに調整され、これをさらに所定のL/Rを満たすように長さを調整して切断することにより、製造される。
ここで、直径Rとは、各繊維の断面積Aを元に算出される値であり、断面形状に関わらず真円であると仮定し、以下の式により定義されるものである。
R=(A/π)1/2×2
また、本実施形態である気化部材用銅多孔質体10においては、図4に示すように、骨格部12(銅繊維11)の表面には、鱗片状の凹凸を有するポーラス層13が形成されている。さらに、銅繊維11、11同士の結合部においては、互いの表面に形成されたポーラス層13,13同士が一体に結合している。
このポーラス層13の凹凸によって比表面積が大きくなり、上述した規格化比表面積S=S×Rが0.001以上0.25以下の範囲内となる。
以下に、本実施形態である気化部材用銅多孔質体10において、気孔率P、開口径U、規格化比表面積S、銅繊維11の直径R、銅繊維11の長さLと直径Rとの比L/Rを、上述のように規定した理由について説明する。
(気孔率P)
気化部材用銅多孔質体10の気孔率Pが65%未満の場合には、気相媒体を気化部材用銅多孔質体10から効率良く排出することができなくなるおそれがある。一方、気化部材用銅多孔質体10の気孔率Pが95%を超える場合には、液相媒体との接触が不十分となり、液相媒体を効率良く気化することができなくなるおそれがある。
以上のことから、本実施形態においては、気化部材用銅多孔質体10の気孔率Pを65%以上95%以下の範囲内に規定している。
なお、気相媒体を気化部材用銅多孔質体10からさらに効率良く排出するためには、気孔率Pの下限を70%以上とすることが好ましい。また、液相媒体をさらに効率良く気化するためには、気孔率Pの上限を93%以下とすることが好ましい。
(開口径U)
気化部材用銅多孔質体10の開口径Uが100μm未満の場合には、気相媒体を気化部材用銅多孔質体10から効率良く排出することができなくなるおそれがある。一方、気化部材用銅多孔質体10の開口径Uが2000μmを超える場合には、液相媒体との接触が不十分となり、液相媒体を効率良く気化することができなくなるおそれがある。
以上のことから、本実施形態においては、気化部材用銅多孔質体10の開口径Uを100μm以上2000μm以下の範囲内に規定している。
なお、気相媒体を気化部材用銅多孔質体10からさらに効率良く排出するためには、開口径Uの下限を500μm以上とすることが好ましい。また、液相媒体をさらに効率良く気化するためには、開口径Uの上限を1700μm以下とすることが好ましい。
(規格化比表面積S
気化部材用銅多孔質体10の規格化比表面積Sが0.001未満の場合には、液相媒体との接触が不十分となり、液相媒体を効率良く気化することができなくなるおそれがある。気化部材用銅多孔質体10の規格化比表面積Sが0.25を超える場合には、骨格部12に形成された凹凸が大きくなり過ぎ、液相媒体や気相媒体の通過を阻害するおそれがある。
以上のことから、本実施形態においては、気化部材用銅多孔質体10の規格化比表面積Sを0.001以上0.25以下の範囲内に規定している。
なお、液相媒体をさらに効率良く気化するためには、規格化比表面積Sの下限を0.02以上とすることが好ましく、0.166以上とすることがさらに好ましい。
(銅繊維11の直径R)
銅繊維11の直径Rを0.02mm以上とすることにより、銅繊維11同士の接合面積が確保され、熱伝導性を確保することができる。一方、銅繊維11の直径Rを1mm以下とすることにより、銅繊維11同士が接触する接点の数が確保され、熱伝導性を確保することができる。
以上のことから、本実施形態においては、銅繊維11の直径Rを0.02mm以上1mm以下の範囲内に規定している。
なお、銅繊維11同士の接合面積をさらに確保するためには、銅繊維11の直径Rの下限を0.05mm以上とすることが好ましい。また、銅繊維11同士が接触する接点の数をさらに確保するためには、銅繊維11の直径Rの上限を0.8mm以下とすることが好ましい。
(銅繊維11の長さLと直径Rとの比L/R)
銅繊維11の長さLと直径Rとの比L/Rを4以上とすることにより、積層配置したときに嵩密度Dが小さくなり、気孔率Pの高い気化部材用銅多孔質体10を得ることができる。一方、銅繊維11の長さLと直径Rとの比L/Rを2500以下とすることにより、積層配置したときに銅繊維11を均一に分散させることができ、均一な気孔率Pを有する気化部材用銅多孔質体10を得ることができる。
以上のことから、本実施形態では、銅繊維11の長さLと直径Rとの比L/Rを4以上2500以下の範囲内に設定している。
なお、さらなる気孔率Pの向上を図る場合には、銅繊維11の長さLと直径Rとの比L/Rの下限を5以上とすることが好ましい。また、気孔率Pがさらに均一な気化部材用銅多孔質体10を得るためには、銅繊維11の長さLと直径Rとの比L/Rの上限を1000以下とすることが好ましい。
次に、本実施形態である気化部材用銅多孔質体10の製造方法について、図5のフロー図及び図6の工程図等を参照して説明する。
まず、図6に示すように、上述した銅繊維11を、散布機31からステンレス製容器32内に向けて散布して嵩充填し、銅繊維11を積層する(銅繊維積層工程S01)。
ここで、この銅繊維積層工程S01では、充填後の嵩密度Dが銅繊維11の真密度Dの35%以下となるように複数の銅繊維11を積層配置する。なお、本実施形態では、銅繊維11にねじり加工や曲げ加工等の形状付与加工が施されているので、積層時に銅繊維11同士の間に立体的かつ等方的な空隙が確保されることになる。
次に、ステンレス製容器32内に嵩充填された銅繊維11を酸化還元処理する(酸化還元処理工程S02)。
この酸化還元処理工程S02においては、図5及び図6に示すように、銅繊維11の酸化処理を行う酸化処理工程S21と、酸化処理された銅繊維11を還元して焼結する還元処理工程S22と、を備えている。
酸化処理工程S21においては、図6に示すように、銅繊維11が充填されたステンレス製容器32を加熱炉33内に装入し、酸化雰囲気で加熱して銅繊維11を酸化処理し、銅繊維11の表面に、例えば厚さ1μm以上、100μm以下の酸化物層を形成する。
ここで、本実施形態においては、雰囲気中における酸素濃度を5vol%以上10vol%以下の範囲内としている。このように、酸素濃度を大気よりも低く設定することにより、酸化反応をゆっくり進行させることができる。
また、本実施形態における酸化処理工程S21においては、保持温度が500℃以上1000℃以下、保持温度での保持時間が10分以上2880分以下の範囲内とされている。
なお、本実施形態における酸化処理工程S21において、銅繊維11の表面に酸化物層を適切に形成するためには、雰囲気中における酸素濃度の下限を7vol%以上、上限を 9vol%以下とすることが好ましく、保持温度の下限を600℃以上とすることが好ましく、保持時間の下限を250分以下とすることが好ましい。
還元処理工程S22においては、図6に示すように、酸化処理工程S21を実施した後、銅繊維11が充填されたステンレス製容器32を加熱炉34内に装入し、還元雰囲気で加熱して、酸化された銅繊維11を還元処理するとともに銅繊維11同士を結合する。これにより、上述のポーラス層13が形成される。
本実施形態における還元処理工程S22の雰囲気は、例えば窒素と水素の混合ガス雰囲気等とすることができる。
また、本実施形態における還元処理工程S22においては、保持温度が500℃以上1000℃以下、保持温度での保持時間が10分以上1000分以下の範囲内とされている。
なお、本実施形態における還元処理工程S22において、銅繊維11の表面に形成された酸化物層を確実に還元してポーラス層13を形成するためには、保持温度の下限を600℃以上とすることが好ましく、保持時間の下限を30分以上とすることが好ましい。
このように、酸化処理工程S21によって銅繊維11の表面に酸化物層が形成され、この酸化物層によって複数の銅繊維11同士が架橋される。その後、還元処理S22を行うことで、銅繊維11の表面に形成された酸化物層が還元されて上述のポーラス層13が形成されることになる。
次に、酸化還元処理工程S02によってポーラス層13を形成した後、銅繊維11が充填されたステンレス製容器32を焼成炉35内に装入し、銅繊維11同士の焼結を行う(焼結工程S03)。
本実施形態における焼結工程S03の条件は、雰囲気がAr、N等の不活性ガス雰囲気中(本実施形態ではArガス雰囲気)で、保持温度が600℃以上1080℃以下、保持温度での保持時間が5分以上300分以下の範囲内とされている。
この焼結工程S03により、銅繊維11同士の焼結を進行させる。また、還元処理工程S22において閉気孔が形成されていた場合には、体積拡散によって閉気孔を除去する。
ここで、焼結工程S03における保持温度が600℃未満の場合には、体積拡散が十分に進行せず、焼結が不十分となるおそれがある。一方、焼結工程S03における保持温度が1080℃を超える場合には、銅の融点近傍にまで加熱されることになり、形状が維持できないとともに、強度及び気孔率の低下が起こるおそれがある。
以上のことから、本実施形態においては、焼結工程S03における保持温度を600℃以上、1080℃以下に設定している。なお、銅繊維11の焼結を確実に行うためには、焼結工程S03における保持温度の下限を700℃以上とすることが好ましい。また、強度及び気孔率の低下を確実に抑制するためには、焼結工程S03における保持温度の上限を1000℃以下とすることが好ましい。
なお、焼結工程S03は、還元処理工程S22に引き続いて行う場合、焼結工程S03における保持温度と還元処理工程S22における保持温度を同じ温度とすることが、省エネルギーの観点からも好ましい。
以上のような製造方法により、銅繊維11、11同士が焼結されて骨格部12が形成されるとともに、骨格部12の表面にポーラス層13が形成される。これにより、本実施形態である気化部材用銅多孔質体10が製造される。
以上のような構成とされた本実施形態である気化部材用銅多孔質体10によれば、複数の銅繊維11の焼結体からなり、三次元網目構造の骨格部12を有しており、比表面積S(m/g)と銅繊維11の直径R(m)の積で定義される規格化比表面積S=S×Rが0.001以上0.25以下の範囲内とされているので、骨格部12の表面に適度な凹凸が形成されており、液相媒体との接触面積が十分に確保され、液相媒体を効率的に気化させることができる。
また、気化部材用銅多孔質体10の開口径Uが100μm以上とされ、気孔率Pが65%以上とされているので、気化した気相媒体を気化部材用銅多孔質体10の外部へと効率的に排出することができる。
さらに、気化部材用銅多孔質体10の開口径Uが2000μm以下とされ、気孔率Pが95%以下とされているので、液相媒体との接触面積が確保され、液相媒体を効率良く気化させることができる。
また、本実施形態においては、銅繊維11の直径Rが0.02mm以上1mm以下の範囲内とされ、銅繊維11の長さLと直径Rとの比L/Rが4以上2500以下の範囲内とされているので、積層した際に立体的に空隙が形成されることになり、気化部材用銅多孔質体10の気孔率P及び開口径Uを比較的容易に調整することができる。
さらに、本実施形態である沸騰冷却器1においては、沸騰部3に、上述した気化部材用銅多孔質体10が配設されており、熱気化部材用銅多孔質体10が発熱体Hに対して密封容器2の壁面を介して接触されているので、発熱体Hの熱が熱気化部材用銅多孔質体10に伝達され、液相媒体が加熱されて気化することになる。
そして、気化部材用銅多孔質体10が上述のような構成とされていることから、液相媒体と気化部材用銅多孔質体10とが十分に接触するとともに、気化した気相媒体を気化部材用銅多孔質体10の外部へと速やかに排出することができ、液相媒体を効率的に気化させることができる。よって、沸騰冷却器1の冷却性能を大幅に向上させることができる。
また、沸騰部3には、単相構造の気化部材用銅多孔質体10が配設されており、この気化部材用銅多孔質体10によって、液相媒体と十分に接触させることができるとともに気相媒体を効率的に排出することができる構成とされているので、沸騰冷却器1の構造を簡素化することができる。
(第二の実施形態)
次に、本発明の第二の実施形態であるヒートパイプ51について、添付した図面を参照して説明する。
図7に、本実施形態であるヒートパイプ51を示す。
このヒートパイプ51は、図7に示すように、パイプ本体52を有しており、このパイプ本体52の内部に熱を媒体する熱媒体が充填されている。そして、このパイプ本体52の一端側(図7において右側)に、液相状態の熱媒体(液相媒体)を気化する蒸発部53が形成され、パイプ本体52の他端側(図7において左側)に、気相状態の熱媒体(気相媒体)を液化する凝縮部57が形成されている。
ここで、パイプ本体52は、熱伝導性に優れた金属、例えば銅又は銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金等で構成されていることが好ましく、本実施形態では無酸素銅で構成されている。
凝縮部57においては、パイプ本体52の外部に冷却機構58が配設されており、この冷却機構58によって気相状態の熱媒体(気相媒体)を冷却して液化するように構成されている。
そして、蒸発部53においては、パイプ本体52の内部に蒸発部ウィックとして、上述した気化部材用銅多孔質体10が配設されている。
蒸発部53に配設された気化部材用銅多孔質体10は、パイプ本体52の壁面を介して発熱体Hに接触するように配置されている。
以上のような構成とされた本実施形態であるヒートパイプ51によれば、蒸発部53に配設される蒸発部ウィックとして、上述した本実施形態である気化部材用銅多孔質体10が配設されているので、蒸発部53において、液相媒体と気化部材用銅多孔質体10とが十分に接触するとともに、気相媒体を気化部材用銅多孔質体10から速やかに排出することができ、液相媒体を効率的に気化させることができる。
これにより、ヒートパイプ51の熱交換効率を大幅に向上させることができる。
また、単相構造の気化部材用銅多孔質体10によって、液相媒体と十分に接触させることができるとともに気相媒体を効率的に排出することができ、ヒートパイプ51の構造を簡素化することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、図6に示す製造設備を用いて、気化部材用銅多孔質体10を製造するものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の製造設備を用いて銅多孔質体を製造してもよい。
また、本実施形態においては、無酸素銅(JIS C1020)からなる銅繊維を用いるものとして説明したが、これに限定されることはなく、りん脱酸銅(JIS C1201、C1220)やタフピッチ銅(JIS C1100)などの純銅、その他の銅合金等を用いてもよい。
さらに、第一の実施形態では、図1に示す構造の沸騰冷却器を例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、例えば図8に示す沸騰冷却器101のように、供給管105を介して、沸騰部103の気化部材用銅多孔質体10に対して液相媒体を供給するように構成したものであってもよい。
また、図9に示す沸騰冷却器201のように、発熱体Hを覆うように沸騰部203を形成し、ここに気化部材用銅多孔質体10を配設し、供給管205を介して、沸騰部203の気化部材用銅多孔質体10に対して液相媒体を供給するように構成したものであってもよい。
さらに、図10に示す沸騰冷却器301のように、発熱体Hの側面に沿うように沸騰部303を形成し、この沸騰部303の気化部材用銅多孔質体10に対して、供給管305を介して液相媒体を供給する構成としたものであってもよい。
また、図11に示す沸騰冷却器401のように、沸騰部403にフィンを設け、このフィンの表面に気化部材用銅多孔質体10を配設し、沸騰部403の気化部材用銅多孔質体10に対して霧状の液相媒体を供給するように構成したものであってもよい。
また、第二の実施形態では、図7に示すように、直管状のヒートパイプを例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、図12に示すヒートパイプ551、図13に示すヒートパイプ651、図14に示すヒートパイプ751、図15に示すヒートパイプ851のように、曲げ加工を施したものであってもよい。なお、図15に示すヒートパイプ851は、3次元で曲げ加工を行ったものである。
さらに、図16に示すヒートパイプ951のように、パイプ本体952をT字状に形成したものであってもよい。
なお、発熱体Hに接触配置された蒸発部、及び、凝縮部の配置は、それぞれ任意に設定することができる。
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
表1に示す焼結原料(銅繊維)を用いて、上述の実施形態で示した製造方法により、幅50mm×長さ50mm×厚さ2mmの銅多孔質焼結体を製造した。
ここで、酸化処理工程の条件は表1に示すものとした。また、還元処理工程は、N−3vol%Hの雰囲気、600℃で1時間保持の条件で実施した。
そして、焼結工程は、N雰囲気、600℃で1時間保持の条件で実施した。
なお、原料となる銅繊維の直径R、長さLと直径Rとの比L/Rは、以下のように測定した。
さらに、得られた銅多孔質焼結体の気孔率P、開口径U、規格化比表面積Sを、以下のように測定した。また、水の気化効率について、以下のように評価した。
(銅繊維の直径R)
焼結原料となる銅繊維の長さ方向に直交する断面を光学顕微鏡で観察し、撮影された画像を用いて画像処理によって算出された円換算径(Heywood径)R=(A/π)0.5×2の単純平均値を算出した。これを銅繊維の直径Rとした。
(長さLと直径Rとの比L/R)
銅繊維の長さLは、焼結原料となる銅繊維に対してマルバーン社製粒子解析装置「Morphologi G3」を用いて画像解析し、算出された単純平均値を用いた。これを用いて、長さLと直径Rとの比L/Rを算出した。
(気孔率P)
精密天秤を用いて水中法により真密度D(g/cm)を測定し、以下の式で気孔率Pを算出した。なお、銅多孔質焼結体の質量をm(g)、銅多孔質焼結体の体積をV(cm)とした。
気孔率P(%)=(1−(m/(V×D)))×100
(開口径U)
実施形態の欄及び図3に示したように、銅繊維の直径Rから、立方体の一辺を構成する骨格相当径aを、以下の式で算出した。
=π×(R/2)
そして、上述の気孔率Pから材料率Q=(100−P)を算出し、以下の式を満足するものとして開口径Uを規定した。
Q/100=(a+3×U×a)/(a+U)
(規格化比表面積S
銅多孔質焼結体の比表面積Sは、JIS Z8830に準拠し、クリプトンガスを用いたBET法により測定した値を用いた。
そして、測定された比表面積S(m/g)と銅繊維の直径R(m)から、規格化比表面積S=S×Rを算出した。
(気化効率)
得られた銅多孔質焼結体を銅製容器に配置し、これを140℃に設定したヒータの上に置き、十分に加熱した。その後、銅多孔質焼結体に対して3gの水を一気に加えた。
このときの温度変化を、熱電対を用いて計測した。水を加えて温度低下してから水が沸騰状態となり温度が一定となった後、水が全て蒸発して水蒸気となり、再度温度上昇するまでの蒸発時間を評価した。この時間が短いほど、気化効率が良いことになる。
酸化還元処理を実施していない従来例においては、規格化比表面積Sが0.0003と本発明の範囲よりも小さく、蒸発時間が191秒であった。
気孔率Pが61.6%と本発明の範囲よりも小さい比較例1においては、蒸発時間が192秒であった。
気孔率Pが96.5%と本発明の範囲よりも大きく、かつ、開口径Uが3503μmと本発明の範囲よりも大きい比較例2においては、蒸発時間が197秒であった。
開口径Uが42μmと本発明の範囲よりも小さい比較例3においては、蒸発時間が209秒であった。
これに対して、気孔率P、開口径U、規格化比表面積Sが本発明の範囲内とされた本発明例1−17においては、蒸発時間が176秒以下であった。また、銅繊維の材質を変更した場合であっても、同様の効果を確認できた。
以上のことから、本発明例によれば、液相媒体との接触面積を確保できるとともに、さらに気相媒体を効率的に排出することができ、発熱体からの熱によって液相媒体を効率的に気化させることが可能な気化部材用銅多孔質体を提供可能であることが確認された。
1、101、201、301、401 沸騰冷却器
3、103、203、303、403 沸騰部
7、107、207、307、407 凝縮部
10 気化部材用銅多孔質体
11 銅繊維
12 骨格部
51、551、651、751、851、951 ヒートパイプ
53、553、653、753、853、953 蒸発部
57、557、657、757、857、957 凝縮部

Claims (4)

  1. 接触する液相媒体を気化させる気化部材として用いられる気化部材用銅多孔質体であって、
    複数の銅繊維の焼結体からなり、三次元網目構造の骨格部を有し、気孔率が65%以上95%以下の範囲内とされ、
    開口径が100μm以上2000μm以下の範囲内とされるとともに、
    比表面積S(m/g)と前記銅繊維の直径R(m)の積で定義される規格化比表面積S=S×Rが0.001以上0.25以下の範囲内とされていることを特徴とする気化部材用銅多孔質体。
  2. 前記銅繊維の直径Rが0.02mm以上1mm以下の範囲内とされ、前記銅繊維の長さLと直径Rとの比L/Rが4以上2500以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1に記載の気化部材用銅多孔質体。
  3. 発熱体からの熱を受けて液相媒体を気化させる沸騰部を備えた沸騰冷却器であって、
    前記沸騰部に、請求項1及び請求項2に記載の気化部材用銅多孔質体が配設されていることを特徴とする沸騰冷却器。
  4. 発熱体からの熱を受けて液相媒体を気化させる蒸発部と、前記蒸発部で生じた気相媒体を液化させる凝縮部と、を備えたヒートパイプであって、
    前記蒸発部に配設される蒸発部ウィックとして、請求項1及び請求項2に記載の気化部材用銅多孔質体が配設されていることを特徴とするヒートパイプ。
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