JP2016040505A - 冷却器及びそれを用いた冷却装置、並びに、発熱体の冷却方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】冷却器は、作動流体を収容する容器と、容器内において、作動流体と接するように且つ発熱体に対向するように設けられた冷却部材とを備える。冷却部材は、発熱体側に設けられた第1の多孔質体と、作動流体側に設けられた第2の多孔質体とを備えた積層構造に構成されている。第1の多孔質体が多孔質ナノ粒子の集合体で構成されており、第2の多孔質体がメッシュ構造を有する多孔質層で構成されており、冷却器の限界熱流束は2.3MW/m2超である。
【選択図】図5
Description
(1)原子炉圧力容器底部のメルトスルーを防止するために必要な2MW/m2を超えた2.3MW/m2超の限界熱流束を実現できる。
(2)第1の多孔質体の作動流体供給部と接触部で蒸気が発生すると毛細管現象により強制的に液体が接触部に供給されるので、プール沸騰冷却方式とする場合には水等の作動流体を収容する容器(水槽)は、水の流路やポンプ等を設ける必要が無く、単なる水溜を用いることができ、簡易な構造とすることができ、設置コストやランニングコストが安価となる。
(3)発熱体との接触部に設ける多孔質体の厚さは、毛管限界メカニズムの観点からは薄いほうがよいが、薄すぎると合体泡が多孔質体上部で滞留している間に多孔質体内部で液枯れが生じやすく、限界熱流束が小さくなる。そこで、本発明では発熱体との接触部に設ける多孔質体を第1の多孔質体とし、その上に(作動流体側に)、第1の多孔質体よりも作動流体の透過率が大きい第2の多孔質体を設けている。このような構成によれば、第1の多孔質体とその上方の蒸気塊との間に、作動流体を第1の多孔質体に向かって潤沢に液体を供給する第2の多孔質体が存在するため、第1の多孔質体の厚さを薄くしても、液枯れの発生が抑制され、限界熱流束が小さくなることを防ぐことができる。
(実施形態1)
図4は、実施形態1に係るプール沸騰方式による冷却器を示している。冷却器は、作動流体を収容する容器と、容器内において、作動流体と接するように且つ発熱体に対向して接するように設けられた冷却部材とを備える。冷却部材は、発熱体側に設けられた第1の多孔質体と、作動流体側に設けられた第2の多孔質体との積層構造に構成されている。
図6に、実施形態2に係る軽水炉の原子炉圧力容器底部の冷却器の模式図を示す。原子炉の側方から周方向に原子炉を囲むように支持リングが取り付けられ、支持リングに支持されたハニカム装着ネット(金属メッシュ)が取り付けられている。ハニカム装着ネットは、金属製でなくてもよく、耐熱樹脂で形成してもよい。原子炉圧力容器底部の冷却器の取り付け方法としては、まず、ハニカム状の第1の多孔質体及び第2の多孔質体との積層構造を有する冷却部材を、原子炉圧力容器底部を覆うように設け、仮止めする。次に、支持リングからハニカム装着ネットを下ろして原子炉圧力容器底部を覆った後に、支持リング近傍でハニカム装着ネットを引き寄せてハニカム装着ネットを原子炉圧力容器底部に接触させる。こうすることで、簡便に原子炉圧力容器底部に冷却器を取り付けることができる。冷却部材は、上記ハニカム装着ネットによって下から保持される構造となっている。ハニカム装着ネットはメッシュでなくてもよく、施工がより簡便であるため複数のテープを用いて形成してもよい。また、原子炉圧力容器底部の最深部を含む一部が水を収容した容器内に浸漬されている。冷却部材の第1の多孔質体及び第2の多孔質体は、実施形態1と同様の構造を有しており、良好な限界熱流束を実現し、原子炉圧力容器底部のメルトスルーを防止するために必要な2MW/m2を超えて、2.3MW/m2超の限界熱流束を実現できる。このように、本発明に係る冷却器は、特に原子炉事故時の原子炉圧力容器の底部の冷却に好適である。また、図6では、冷却部材を原子炉圧力容器底部の一部を覆っているが、原子炉圧力容器底部の、水を収容した容器内に浸漬された部分の全てを覆うように設けてもよい。
図7は、実施形態3に係る冷却装置を示している。冷却装置は、実施形態1に係る冷却器と、容器に接続されたコンデンサとを備える。コンデンサにおいて、蒸発した作動流体が液化されて、容器に戻る。冷却装置は、ポンプなどの外部動力源を必要とせず、装置全体としてのコンパクト性および省エネルギー性が優れている。図8は、実施形態3に係る冷却装置の変形形態を示している。なお、図7および8の構成を実施形態2の冷却器とともに用いることもできる。
冷却部材の第1の多孔質体として、以下のようにして、多孔質ナノ粒子の集合体を作製した。すなわち、まず、あらかじめ準備した800mLの蒸留水の入ったビーカー中に、ナノ粒子として、電子天秤で秤量した二酸化チタン(平均粒径21nm)を入れて分散させた。次に、伝熱面を容器内に設けて、当該容器内の水を沸騰させた。なお、伝熱面はあらかじめ研磨しておいた。続いて、沸騰水の入った容器内に前述のナノ粒子が分散した水を注入した。このとき、容器内のナノ粒子(二酸化チタン)濃度は4.0g/Lであった。このまま20分間の沸騰を続けた後、ナノ粒子の分散した水を容器から取り出し、伝熱面を蒸留水で洗浄した。このようにして、伝熱面がナノ粒子でコーティングされる。当該ナノ粒子のコーティング層が、伝熱面上に形成された第1の多孔質体(多孔質ナノ粒子の集合体)を構成している。
次に、冷却部材の第2の多孔質体(メッシュ構造を有する多孔質層)を準備した。第2の多孔質体の円板の直径は30mmであり、平均細孔径が0.13μm、空隙率は24.8%、板厚は1.0mmであった。
このような構成の第2の多孔質体(メッシュ構造を有する多孔質層)を第1の多孔質体(多孔質ナノ粒子の集合体)上に載せ、実施例1の冷却部材とした。
冷却部材の第1の多孔質体として、以下のようにして、多孔質ナノ粒子の集合体を作製した。すなわち、まず、あらかじめ準備した800mLの蒸留水の入ったビーカー中に、ナノ粒子として、電子天秤で秤量した二酸化チタン(平均粒径21nm)を入れて分散させた。次に、伝熱面を容器内に設けて、当該容器内の水を沸騰させた。なお、伝熱面はあらかじめ研磨しておいた。続いて、沸騰水の入った容器内に前述のナノ粒子が分散した水を注入した。このとき、容器内のナノ粒子(二酸化チタン)濃度は0.04g/Lであった。このまま20分間の沸騰を続けた後、ナノ粒子の分散した水を容器から取り出し、伝熱面を蒸留水で洗浄した。このようにして、伝熱面がナノ粒子でコーティングされる。当該ナノ粒子のコーティング層が、伝熱面上に形成された第1の多孔質体(多孔質ナノ粒子の集合体)を構成している。
次に、実施例1と同様の冷却部材の第2の多孔質体(メッシュ構造を有する多孔質層)を準備し、第1の多孔質体(多孔質ナノ粒子の集合体)上に載せ、比較例1の冷却部材とした。
冷却部材の第1の多孔質体として、以下のようにして、多孔質ナノ粒子の集合体を作製した。すなわち、まず、あらかじめ準備した800mLの蒸留水の入った容器を準備した。比較例2では、実施例1のようにナノ粒子を投入しなかった。次に、伝熱面を容器内に設けて、当該容器内の水を沸騰させた。なお、伝熱面はあらかじめ研磨しておいた。このまま20分間の沸騰を続けた後、水を容器から取り出し、伝熱面を蒸留水で洗浄した。
次に、実施例1の第2の多孔質体と同様の多孔質体(メッシュ構造を有する多孔質層)を準備し、伝熱面上に載せ、比較例1の冷却部材とした。
実施例1、比較例1及び比較例2の冷却部材に対し、図9に示した実験装置を用いて、限界熱流束を評価するため、以下の試験を行った。作動流体と接する接触部の直径を30mmとした。発熱体として、カートリッジヒータが埋め込まれた銅円柱を用いた。カートリッジヒータに印加する電圧を可変単巻変圧器でコントロールすることで加熱量を制御した。接触部からそれぞれ9.94mm、15.16mmの銅円柱中心軸上に設置した2つのφ0.5K型シース熱電対からの出力を用いて外挿して接触部の過熱度を、指示温度差と設定距離及び熱伝導率からフーリエの式で熱流束を求めた。容器は、内径87mm、外形100mmのパイレックス(登録商標)チューブとし、内部沸騰の様相を観察できるようにした。作動液体は、蒸留水を深さが60mmとなるようにし、ヒータで加熱して飽和温度に維持した。発生した蒸気は、パイレックス(登録商標)チューブの上端に設けたコンデンサで凝縮させて容器内に戻した。なお、図9では第1の多孔質体が伝熱面から分離するように記載されているが、これは測定器の構成を理解しやすいために描いたものであり、実際は上述の通り、伝熱面上に第1の多孔質体が形成される。
Claims (11)
- 発熱体を冷却するための沸騰方式による冷却器であって、
作動流体を収容する容器と、
前記容器内において、前記作動流体と接するように且つ前記発熱体に対向するように設けられた冷却部材と
を備え、
前記冷却部材は、前記発熱体側に設けられた第1の多孔質体と、前記作動流体側に設けられた第2の多孔質体とを備えた積層構造に構成され、
前記第1の多孔質体は、毛細管現象により前記作動流体を前記発熱体との接触部に供給する第1の作動流体供給部と、前記接触部で発生した蒸気を前記第2の多孔質体側へ排出する第1の蒸気排出部とを備え、
前記第2の多孔質体は、前記作動流体を前記第1の多孔質体に供給する第2の作動流体供給部と、前記第1の多孔質体から排出された蒸気を前記作動流体中へ排出する第2の蒸気排出部とを備え、前記第1の多孔質体よりも前記作動流体の透過率が大きい多孔質体で形成されており、
前記第1の多孔質体が多孔質ナノ粒子の集合体で構成されており、前記第2の多孔質体がメッシュ構造を有する多孔質層で構成されており、
限界熱流束が2.3MW/m2超である冷却器。 - 前記作動流体中にナノ粒子を0.4g/L以上の濃度で分散させておき、且つ、前記発熱体の作動液体に浸漬された部分の表面に、メッシュ構造を有する多孔質層で構成された前記第2の多孔質体を設けておき、
発熱体からの熱によって、前記作動流体中のナノ粒子が沸騰する発熱体の伝熱面上で析出して多孔質ナノ粒子の集合体である前記第1の多孔質体を前記発熱体と前記第2の多孔質体との間に形成することで、前記発熱体の作動液体に浸漬された部分の表面に前記冷却部材が装着するように形成されている請求項1に記載の冷却器。 - 前記作動流体中に分散させておく前記ナノ粒子の濃度が4.0g/L以上である請求項2に記載の冷却器。
- 前記第1の多孔質体と、前記発熱体との接触部に隙間領域が形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の冷却器。
- 前記第2の多孔質体が金属で形成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の冷却器。
- 前記金属で形成された第2の多孔質体の端部が前記発熱体に溶接により固定されている請求項5に記載の冷却器。
- 前記発熱体に放熱フィンが溶接されており、前記放熱フィンに前記第2の多孔質体が溶接により固定されている請求項6に記載の冷却器。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の冷却器と、
前記冷却器の容器に接続され、蒸発した作動流体を液化するコンデンサと
を備えた冷却装置。 - 作動流体を収容した容器の作動流体中に、発熱体を少なくとも部分的に浸漬して発熱体を冷却する沸騰方式による冷却方法において、
前記発熱体の作動液体に浸漬された部分の表面に、
前記発熱体側に設けられた第1の多孔質体と、前記作動流体側に設けられた第2の多孔質体とを備えた積層構造に構成された冷却部材であり、
前記第1の多孔質体は、毛細管現象により前記作動流体を前記発熱体との接触部に供給する第1の作動流体供給部と、前記接触部で発生した蒸気を前記第2の多孔質体側へ排出する第1の蒸気排出部とを備え、
前記第2の多孔質体は、前記作動流体を前記第1の多孔質体に供給する第2の作動流体供給部と、前記第1の多孔質体から排出された蒸気を前記作動流体中へ排出する第2の蒸気排出部とを備え、前記第1の多孔質体よりも前記作動流体の透過率が大きい多孔質体で形成されており、前記第1の多孔質体が多孔質ナノ粒子の集合体で構成されており、前記第2の多孔質体がメッシュ構造を有する多孔質層で構成されている冷却部材を装着する発熱体の冷却方法。 - 前記作動流体中にナノ粒子を0.4g/L以上の濃度で分散させておき、且つ、前記発熱体の作動液体に浸漬された部分の表面に、メッシュ構造を有する多孔質層で構成された前記第2の多孔質体を設けておき、
発熱体からの熱によって、前記作動流体中のナノ粒子が沸騰する発熱体の伝熱面上で析出して多孔質ナノ粒子の集合体である前記第1の多孔質体を前記発熱体と前記第2の多孔質体との間に形成することで、前記発熱体の作動液体に浸漬された部分の表面に前記冷却部材を装着する請求項9に記載の発熱体の冷却方法。 - 前記作動流体中に分散させておく前記ナノ粒子の濃度が4.0g/L以上である請求項10に記載の発熱体の冷却方法。
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