JP2019081838A - 樹脂組成物、フィルムコンデンサ及びその製造方法 - Google Patents

樹脂組成物、フィルムコンデンサ及びその製造方法 Download PDF

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Tatsuhito Fukuhara
達仁 福原
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邦幸 小林
尚弘 木村
Hisahiro Kimura
尚弘 木村
尚英 岩谷
Naohide Iwatani
尚英 岩谷
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泰典 川端
香澄 中村
Kasumi Nakamura
香澄 中村
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Abstract

【課題】注入口が狭い注型においても、注入作業の効率化と硬化物の物性との両立が可能な注型用の樹脂組成物、それを用いたフィルムコンデンサ及びその製造方法を提供すること。【解決手段】フィルムコンデンサ素子の封止に用いられる注型用の樹脂組成物は、硬化性成分と、平均粒径が30μm以下のフィラーと、を含有する。フィルムコンデンサの製造方法は、上記樹脂組成物を注型し、フィルムコンデンサ素子を封止する樹脂組成物又はその硬化物を含む封止部を備えたフィルムコンデンサを得る。【選択図】図3

Description

本発明は、樹脂組成物、フィルムコンデンサ及びその製造方法に関する。
フィルムコンデンサ等の電子部品は、例えば、太陽電池、産業機器、電気自動車等における電力変換装置(パワーコンディショナ)に用いられている。電子部品として用いられる成形体は、例えば、素子と、素子を封止する封止部とを備えている。例えば、フィルムコンデンサは、フィルムコンデンサ素子と、フィルムコンデンサ素子を封止する封止部とを備えており、フィルムコンデンサ素子を収容する空間を有する型部材の上記空間内にフィルムコンデンサ素子を配置した後に上記空間に封止材を供給して封止部を形成することにより得ることができる(例えば、下記特許文献1参照)。封止部としては、樹脂材料を含む硬化性の樹脂組成物の硬化物を用いることができる。
特開平7−161578号公報
従来の硬化性の樹脂組成物は、クラック防止の観点から硬化物の線膨張係数を低減するためにフィラーが高配合されており、高い粘度及び高いチキソ性を有していた。そのため、注型によって封止部を形成するには、フィルムコンデンサ素子と型部材との間に樹脂組成物が含浸するまで待機しながら注入作業を何度も繰り返す必要があった。注型する空間内に樹脂組成物が充分に含浸せず、封止部とフィルムコンデンサ素子又は型部材との間に空隙が生じると、耐クラック性等の特性が低下しやすい。
また近年、フィルムコンデンサの小型化が進んでおり、フィルムコンデンサ素子と型部材との間隔が狭くなると、樹脂組成物の注入口が狭小化して上記の注入作業にかかる時間が顕著に増加する。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、注入口が狭い注型においても、注入作業の効率化と硬化物の耐クラック性との両立が可能な注型用の樹脂組成物、それを用いたフィルムコンデンサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、硬化性成分と、平均粒径が30μm以下のフィラーと、を含有し、フィルムコンデンサ素子の封止に用いられる、注型用の樹脂組成物を提供する。
本発明の注型用の樹脂組成物によれば上記特定の平均粒径を有するフィラーを含有することにより、フィラーの配合による硬化物の耐クラック性の向上効果を充分に得ながらも、注型する際には低粘度化が可能となる。これにより、注入口が狭い注型においても、注入作業の効率化と硬化物の物性との両立が可能となり、小型化されたフィルムコンデンサを生産性よく製造することができる。また、本発明の注型用の樹脂組成物によれば、注入作業を短縮することにより、フィルム本体が外部に露出する時間を短縮できるため、フィルムコンデンサ素子が収容された空間への不純物の混入を抑制することができる。さらに、注入及び硬化の回数を低減することにより、硬化工程におけるフィルムコンデンサ素子への負荷(例えば、熱硬化の際の熱履歴)を緩和させることができるため、フィルムコンデンサを長寿命化させることができると共に、フィルム本体に用いるフィルムの選択の幅を広げることができる。
上記樹脂組成物は、上記フィラーとして、結晶シリカを含むことができる。
上記樹脂組成物は、上記フィラーとして、ウォラストナイトを含むことができる。
上記樹脂組成物は、B型粘度計を用いて40℃、60rpmの条件で測定した場合の粘度が5.0Pa・s以下であることが好ましい。
本発明の注型用の樹脂組成物は、注入口の最小幅が3mm以下の注型に用いられるものであってもよい。
本発明はまた、フィルムコンデンサ素子と、フィルムコンデンサ素子を封止する封止部と、を備え、封止部が、上記本発明に係る樹脂組成物又はその硬化物を含むフィルムコンデンサを提供する。本発明のフィルムコンデンサは、上記本発明に係る樹脂組成物を用いて注型成形することができ、信頼性(例えば、耐ヒートサイクル性)及び生産性に優れたものになり得る。
本発明はまた、上記本発明に係る樹脂組成物を注型し、フィルムコンデンサ素子を封止する前記樹脂組成物又はその硬化物を含む封止部を備えたフィルムコンデンサを得る、フィルムコンデンサの製造方法を提供する。
本発明のフィルムコンデンサの製造方法は、上記本発明に係る樹脂組成物が、硬化物の物性と注型の際の低粘度化とを両立することができることから、上記の信頼性に優れたフィルムコンデンサを生産性よく製造することができる。
本発明のフィルムコンデンサの製造方法において、注型における注入口の最小幅が3mm以下であってもよい。
本発明のフィルムコンデンサの製造方法において、上記樹脂組成物の注入回数を1回又は2回とすることができる。
本発明によれば、注入口が狭い注型においても、注入作業の効率化と硬化物の物性との両立が可能な注型用の樹脂組成物、それを用いたフィルムコンデンサ及びその製造方法を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係るフィルムコンデンサを示す斜視図である。 図2は、本発明の一実施形態に係るフィルムコンデンサを示す端面図である。 図3は、本発明の一実施形態に係るフィルムコンデンサの製造方法を示す斜視図である。 図4は、フィルムコンデンサの製造方法の一例を示す端面図である。 図5は、フィルムコンデンサの製造方法の他の例を示す端面図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
<樹脂組成物>
本実施形態に係る樹脂組成物は、注型用の樹脂組成物である。本実施形態に係る樹脂組成物を注型することにより成形体を得ることができる。本実施形態に係る硬化物は、本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物であり、硬化性の樹脂組成物を硬化させることにより得ることができる。また、本実施形態に係る樹脂組成物は、フィルムコンデンサ素子の封止に好適に用いられる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、硬化性成分と、フィラー成分と、を含有する。フィラー成分は、平均粒径が30μm以下のフィラー(以下、(F1)成分という場合もある)を含有することが好ましい。以下、樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
(硬化性成分)
硬化性成分は、例えば、硬化性樹脂及び硬化剤を含むことができる。硬化剤を用いることなく硬化性樹脂が硬化可能である場合には、硬化剤を用いなくてもよい。
硬化性成分としては、熱硬化性成分又は光硬化性成分を用いることが可能であり、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を用いることができる。硬化性成分としては、硬化性に優れる観点から、熱硬化性成分が好ましい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等が挙げられる。光硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂等が挙げられる。硬化性成分は、硬化物の透湿性が低く、硬化物により素子を封止した際に素子の劣化を防ぎやすい観点から、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のグリシジル基を有する樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂、ビスフェノールC型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールG型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールPH型エポキシ樹脂、ビスフェノールTMC型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(ヘキサンジオールビスフェノールSジグリシジルエーテル等)、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂(ビキシレノールジグリシジルエーテル等)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(水添ビスフェノールAグリシジルエーテル等)、これら樹脂の二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。
エポキシ樹脂の含有量は、吸水率の低い硬化物を得やすい観点から、硬化性樹脂の全質量を基準として、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。エポキシ樹脂の含有量は、硬化性樹脂の全質量を基準として100質量%であってもよい。
硬化性樹脂の含有量は、微細な隙間に樹脂組成物を含浸させやすい観点から、樹脂組成物の全質量(溶剤の質量を除く)を基準として、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。硬化性樹脂の含有量は、吸水率の低い硬化物を得やすい観点から、樹脂組成物の全質量(溶剤の質量を除く)を基準として、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が特に好ましい。これらの観点から、硬化性樹脂の含有量は、10〜60質量%が好ましい。
硬化剤としては、グリシジル基と反応する官能基を1分子中に2個以上有する化合物を用いることができる。硬化剤としては、フェノール樹脂、酸無水物等が挙げられる。
フェノール樹脂としては、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する樹脂を用いることができる。フェノール樹脂としては、フェノール類及び/又はナフトール類とアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂、ビフェニル骨格型フェノール樹脂、パラキシリレン変性フェノール樹脂、メタキシリレン・パラキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂、キシリレン変性ナフトール樹脂等が挙げられる。フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。ナフトール類としては、α−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。
酸無水物としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、オクテニル無水コハク酸等が挙げられる。
硬化剤の含有量は、硬化性樹脂の硬化性に優れる観点から、樹脂組成物の全質量(有機溶剤等の溶剤を除く)を基準として、10〜55質量%が好ましく、12〜40質量%がより好ましく、15〜30質量%が更に好ましい。
硬化性成分は、硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化促進剤としては、4級アンモニウム塩、アミン系の硬化促進剤、リン系の硬化促進剤等が挙げられる。アミン系の硬化促進剤としては、イミダゾール化合物、脂肪族アミン、芳香族アミン、変性アミン、ポリアミド樹脂等が挙げられる。リン系の硬化促進剤としては、ホスフィンオキサイド、ホスホニウム塩、ダイホスフィン等が挙げられる。
(フィラー成分)
フィラー成分の構成材料としては、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ウォラストナイト(ワラストナイト)、アエロジル、アルミナ、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、チタンホワイト、窒化珪素、炭化珪素等が挙げられる。シリカとしては、結晶シリカ、溶融シリカ、黒鉛、メラミンシアヌレート等が挙げられる。フィラー成分は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、並びに、メラミンシアヌレートは、難燃剤としての機能を有する場合があるが、本明細書においてはフィラー成分に分類する。これらの難燃剤としての機能を有するフィラーは、難燃性向上の観点から好ましい。
(平均粒径が30μm以下のフィラー(F1成分))
(F1)成分の構成材料としては、上記と同様のものが挙げられる。(F1)成分は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(F1)成分は、耐クラック性に優れた硬化物を得やすい観点から、シリカ、アルミナ及び炭酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種の無機粒子を含むことが好ましく、結晶シリカを含むことがより好ましい。
(F1)成分は、シリカ(好ましくは結晶シリカ)と、ウォラストナイトとを組み合わせて用いてもよい。
(F1)成分の粒径は、樹脂組成物の粘度の過剰な上昇が抑制されて樹脂組成物の取り扱いが容易である(作業性を確保しやすい)観点から、2μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、5μm以上が更に好ましく、10μm以上が更により好ましい。(F1)成分の粒径は、微細な隙間への含浸性に優れる樹脂組成物を得やすい観点から、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下が更に好ましい。これらの観点から、(F1)成分の粒径は、2〜30μmが好ましい。フィラー成分の粒径は、レーザー回折粒度分布計(例えば、株式会社堀場製作所製、商品名:LA920)により測定することができる。フィラー成分の平均粒径についても、これらの各範囲であることが好ましい。
フィラー成分の含有量は、樹脂組成物の全質量(有機溶剤等の溶剤を除く)を基準として下記の範囲が好ましい。フィラー成分の含有量は、硬化物の優れた強度が得られやすい観点、及び、硬化物の透湿性が低く、硬化物により素子を封止した際に素子の劣化を防ぎやすい観点から、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。フィラー成分の含有量は、樹脂組成物の粘度の過剰な上昇が抑制されて樹脂組成物の取り扱いが容易である(作業性を確保しやすい)観点から、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、フィラー成分の含有量は、30〜80質量%が好ましい。
(F1)成分の含有量は、樹脂組成物の全質量(有機溶剤等の溶剤を除く)を基準として下記の範囲が好ましい。(F1)成分の含有量は、硬化物の優れた強度が得られやすい観点、及び、硬化物の透湿性が低く、硬化物により素子を封止した際に素子の劣化を防ぎやすい観点から、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。(F1)成分の含有量は、樹脂組成物の粘度の過剰な上昇が抑制されて樹脂組成物の取り扱いが容易である(作業性を確保しやすい)観点から、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、フィラーの含有量は、30〜80質量%が好ましい。
(F1)成分の含有量は、樹脂組成物の全質量(有機溶剤等の溶剤を除く)を基準として下記の範囲が好ましい。(F1)成分の含有量は、硬化物の優れた強度が得られやすい観点、及び、硬化物の透湿性が低く、硬化物により素子を封止した際に素子の劣化を防ぎやすい観点から、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。(F1)成分の含有量は、樹脂組成物の粘度の過剰な上昇が抑制されて樹脂組成物の取り扱いが容易である(作業性を確保しやすい)観点から、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、フィラーの含有量は、30〜80質量%が好ましい。
本実施形態の樹脂組成物において、フィラー成分における粒径が30μm以下のフィラーの割合は、50質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが更により好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
更に、本実施形態の樹脂組成物において、フィラー成分における粒径が80μm以上のフィラーの割合は、20質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることが更により好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物において、全フィラー成分の平均粒径が、70μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが更に好ましく、30μm以下であることが更により好ましく、20μm以下であることが特に好ましい。
(その他の添加剤)
本実施形態に係る樹脂組成物は、上述した硬化性成分及びフィラー成分以外の添加剤を含有することができる。添加剤としては、消泡剤、難燃剤、カップリング剤、反応希釈剤、可撓性付与剤、顔料、着色剤、溶剤等が挙げられる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、樹脂組成物の含浸性を充分維持しつつ、耐クラック性に加えて耐湿熱性が更に向上した硬化物を得る観点から、難燃剤としてホスファゼン化合物を含有することが好ましい。
ホスファゼン化合物は、リン原子と窒素原子とが二重結合で結合した構造を有する化合物であり、難燃剤としての機能を有する。ホスファゼン化合物としては、下記一般式(1)で表される環状又は鎖状ホスファゼン化合物、上記環状又は鎖状ホスファゼン化合物が重合されたホスファゼン重合体、及び、上記環状及び/又は鎖状ホスファゼン化合物とエポキシ化合物、フェノール化合物、アミン化合物及び酸無水物から選ばれる少なくとも1種の化合物との反応物、等が挙げられる。ホスファゼン化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
Figure 2019081838
式(1)中、R及びRは各々独立に、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、炭素数7〜18のアルキルアリール基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数8〜18のアルケニルアリール基、アミノ基置換フェニル基、アミノアルキル基置換フェニル基(置換されるアミノアルキル基の炭素数は1〜6である)、ヒドロキシ基置換フェニル基、ヒドロキシアルキル基置換フェニル基(置換されるヒドロキシアルキル基の炭素数は1〜6である)、グリシジルオキシ基置換フェニル基、グリシジルオキシアルキル基置換フェニル基(置換されるグリシジルオキシアルキル基の炭素数は4〜9である)、シアノ基置換フェニル基、シアノアルキル基置換フェニル基(置換されるシアノアルキル基の炭素数は2〜7である)を示す。また、nは3〜10000の整数を示す。なお、複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよく、複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。
上記一般式(1)において、R及びRの一方又は両方は、フェニル基を含む基であることが好ましく、両方がフェニル基を含む基であることがより好ましい。この場合、ホスファゼン化合物は、リン原子の周囲をフェノキシ基が保護した分子構造を有することとなり、他のリン系難燃剤と比べて優れた耐湿性を得ることができる。
上記一般式(1)において、R及びRで示される置換基として選択し得るアミノ基置換フェニル基とは、ベンゼン環上の任意の炭素原子にアミノ基が1〜5個置換しているものをいう。アミノアルキル基置換フェニル基、ヒドロキシ基置換フェニル基、ヒドロキシアルキル基置換フェニル基、グリシジルオキシ基置換フェニル基、グリシジルオキシアルキル基置換フェニル基、シアノ基置換フェニル基、シアノアルキル基置換フェニル基についても同様である。ベンゼン環の任意の炭素原子にこれらの反応性官能基が置換した構造を有するホスファゼン化合物を用いた場合、封止部の耐クラック性、耐熱性等の物性が向上しやすいため好ましい。また、ベンゼン環の任意の炭素原子にメチル基が置換した構造(アルキルアリール基)を有するホスファゼン化合物は、常温で液状であり、樹脂組成物の含浸性が向上しやすいため好ましい。
ホスファゼン化合物のより具体的な例としては、ヘキサフェノキシシクロトリホスファゼン;ヘキサ(メチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、メチルフェノキシ基とフェノキシ基とが混合置換したシクロトリホスファゼン、メチルフェノキシ基とフェノキシ基とが混合置換したシクロホスファゼン混合物(一般式(1)のnが3〜15の混合物)、メチルフェノキシ基とフェノキシ基とが混合置換した線状ホスファゼン混合物(一般式(1)のnが平均3000の混合物)等のメチル基を有するホスファゼン化合物;ヘキサ(アミノフェノキシ)シクロトリホスファゼン、ヘキサ(アミノアルキルフェノキシ)シクロトリホスファゼン(例えば、ヘキサ(アミノエチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン等)、アミノフェノキシ基及び/又はアミノアルキルフェノキシ基とフェノキシ基とが混合置換したシクロトリホスファゼン、アミノフェノキシ基及び/又はアミノアルキルフェノキシ基とフェノキシ基とが混合置換したシクロホスファゼン混合物(一般式(1)のnが3〜15の混合物)、アミノフェノキシ基及び/又はアミノアルキルフェノキシ基とフェノキシ基とが混合置換した線状ホスファゼン混合物(一般式(1)のnが平均3000の混合物)等のアミノ基を有するホスファゼン化合物;ヘキサ(ヒドロキシフェノキシ)シクロトリホスファゼン、ヘキサ(ヒドロキシアルキルフェノキシ)シクロトリホスファゼン(例えば、ヘキサ(ヒドロキシエチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン等)、ヒドロキシフェノキシ基及び/又はヒドロキシアルキルフェノキシ基とフェノキシ基とが混合置換したシクロトリホスファゼン、ヒドロキシフェノキシ基及び/又はヒドロキシアルキルフェノキシ基とフェノキシ基とが混合置換したシクロホスファゼン混合物(一般式(1)のnが3〜15の混合物)、ヒドロキシフェノキシ基及び/又はヒドロキシアルキルフェノキシ基とフェノキシ基とが混合置換した線状ホスファゼン混合物(一般式(1)のnが平均3000の混合物)等のヒドロキシ基を有するホスファゼン化合物;ヘキサ(グリシジルオキシフェノキシ)シクロトリホスファゼン、ヘキサ(グリシジルオキシアルキルフェノキシ)シクロトリホスファゼン(例えば、ヘキサ(グリシジルオキシエチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン等)、グリシジルオキシフェノキシ基及び/又はグリシジルオキシアルキルフェノキシ基とフェノキシ基とが混合置換したシクロトリホスファゼン、グリシジルオキシフェノキシ基及び/又はグリシジルオキシアルキルフェノキシ基とフェノキシ基とが混合置換したシクロホスファゼン混合物(一般式(1)のnが3〜15の混合物)、グリシジルオキシフェノキシ基及び/又はグリシジルオキシアルキルフェノキシ基とフェノキシ基とが混合置換した線状ホスファゼン混合物(一般式(1)のnが平均3000の混合物)等のグリシジル基を有するホスファゼン化合物;ヘキサ(シアノフェノキシ)シクロトリホスファゼン、ヘキサ(シアノアルキルフェノキシ)シクロトリホスファゼン(例えば、ヘキサ(シアノエチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン等)、シアノフェノキシ基及び/又はシアノアルキルフェノキシ基とフェノキシ基とが混合置換したシクロトリホスファゼン、シアノフェノキシ基及び/又はシアノアルキルフェノキシ基とフェノキシ基とが混合置換したシクロホスファゼン混合物(一般式(1)のnが3〜15の混合物)、シアノフェノキシ基及び/又はシアノアルキルフェノキシ基とフェノキシ基とが混合置換した線状ホスファゼン混合物(一般式(1)のnが平均3000の混合物)等のシアノ基を有するホスファゼン化合物;上記ホスファゼン化合物が重合されたホスファゼン重合体;上記ホスファゼン化合物とエポキシ化合物、フェノール化合物、アミン化合物及び酸無水物から選ばれる少なくとも1種の化合物との反応物;などが挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物において用いられるホスファゼン化合物は、含浸性と難燃性とをより高水準で両立させることができると共に、吸水率の低い硬化物を得やすい観点から、リン原子と窒素原子とが二重結合で交互に結合した環状構造を有するシクロホスファゼン化合物を含むことが好ましい。シクロホスファゼン化合物は、一般式(1)中のnが3〜6の整数であるものが好ましい。シクロホスファゼン化合物は、市販品として入手可能であり、例えばFP−100、FP−110、FP−390、FP−300B(以上、株式会社伏見製薬所製、商品名)、SPS−100、SPB−100、SPE−100、SPH−100、SPB−100L(以上、大塚化学株式会社製、商品名)等が挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物において、ホスファゼン化合物の含有量は、樹脂組成物の全質量(有機溶剤等の溶剤を除く)を基準として1.0〜20.0質量%であることが好ましく、2.0〜15.0質量%であることがより好ましく、3.0〜10.0質量%であることが更に好ましく、4.0〜8.0質量%であることが更に好ましい。この含有量が1.0質量%以上であると、難燃性と含浸性とをより高水準で両立しやすく、20.0質量%以下であると、封止部の剛性、耐クラック性、耐熱性等の物性を良好なものとしやすい。
(粘度)
B型粘度計を用いて40℃、60rpmの条件で測定した場合の樹脂組成物の粘度は、微細な隙間に樹脂組成物を含浸する場合に優れた含浸性が得られる観点から、5.0Pa・s以下であり、3.0Pa・s以下が好ましく、2.0Pa・s以下がより好ましい。上記粘度は、例えば、1.0Pa・s以上であってよい。
<フィルムコンデンサ>
本実施形態に係るフィルムコンデンサは、フィルムコンデンサ素子と、上記フィルムコンデンサ素子を封止する封止部と、を備え、上記封止部が、本実施形態に係る樹脂組成物又はその硬化物を含む。
図1は、本発明の一実施形態に係るフィルムコンデンサを示す斜視図である。図2は、本発明の一実施形態に係るフィルムコンデンサを示す端面図である。図2の(a)は、図1のIIa−IIa線に沿った端面図である。図2の(b)は、図1のIIb−IIb線に沿った端面図である。
図1及び図2に示すフィルムコンデンサ100は、ケース型フィルムコンデンサである。フィルムコンデンサ100は、フィルムコンデンサ素子(フィルムコンデンサ巻回素子)10と、フィルムコンデンサ素子10を収容する素子収容空間20aを有する有底の外装ケース(ケース)20と、素子収容空間20a内においてフィルムコンデンサ素子10を封止する封止部30と、を備える。封止部30は、本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物を含む。
フィルムコンデンサ素子10は、例えば、巻回体12と、メタリコン電極14と、リード線16と、を有している。フィルムコンデンサ素子10の製造方法は、例えば、樹脂フィルムに金属蒸着して得られる部材(金属化フィルム)を巻き回して巻回体12を得る工程と、樹脂フィルムの巻回方向に直行する方向における巻回体12の両端面に金属(メタリコン材)を蒸着(メタリコン処理)してメタリコン電極14を得る工程と、メタリコン電極14にリード線16を接続する工程と、を備える。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム等が挙げられる。金属蒸着の金属としては、アルミニウム、亜鉛等が挙げられる。巻回体12は、例えば、略楕円形状の断面を有する筒状体である。メタリコン電極14は、巻回体12の両端面のそれぞれの全面に形成することができる。メタリコン電極14の金属としては、亜鉛、錫、アルミニウム等が挙げられる。リード線16は、例えば、巻回体12の両端面のそれぞれに2本ずつ配置されており、2本のリード線16は、両端面のそれぞれにおいて、端面の長手方向に互いに離れて配置されている。リード線16は、例えば、はんだによりメタリコン電極14に接続されている。
外装ケース20は、例えば、直方体形状を有しており、直方体形状の素子収容空間20aを内部に有している。外装ケース20の上部には、素子収容空間20aと連通する開口部が形成されている。外装ケース20は、例えばポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等によって形成されている。フィルムコンデンサ素子10のリード線16は、外装ケース20の開口部の開口方向に伸びており、リード線16の先端側の部分は、素子収容空間20aの外に突出している。
封止部30は、例えば、フィルムコンデンサ素子10の巻回体12の全体が覆われるように(外部に露出しないように)外装ケース20の素子収容空間20a内に充填されている。封止部30内において、フィルムコンデンサ素子10と外装ケース20の底面との間には封止部30が介在しており、フィルムコンデンサ素子10は外装ケース20の底面から離れて配置されている。封止部30内において、フィルムコンデンサ素子10と外装ケース20の側壁との間には封止部30が介在しており、フィルムコンデンサ素子10は外装ケース20の側壁から離れて配置されている。これらのようにフィルムコンデンサ素子10と外装ケース20との間に封止部30が介在している場合、フィルムコンデンサ素子10が封止部30に充分に保護されやすいため、フィルムコンデンサを長寿命化させやすい。
<フィルムコンデンサの製造方法>
本実施形態に係るフィルムコンデンサの製造方法においては、本実施形態に係る樹脂組成物を注型して、フィルムコンデンサ素子を封止する封止部を備えたフィルムコンデンサを得る。
本実施形態に係るフィルムコンデンサの製造方法は、例えば、硬化性の封止材として、本実施形態に係る樹脂組成物を外装ケース(ケース)の素子収容空間に供給する樹脂供給工程と、樹脂組成物を硬化する硬化工程と、をこの順に備えている。成形方法としては、真空注型、射出成形、インサート成形、押出成形、トランスファー成形等が挙げられる。
図3は、本実施形態に係るフィルムコンデンサの製造方法を示す斜視図である。まず、図3の(a)に示すように、フィルムコンデンサ素子10を外装ケース20の素子収容空間20a内に配置する。次に、図3の(b)に示すように、樹脂供給工程において、硬化性の封止材として樹脂組成物30aを素子収容空間20a内に供給する。これにより、図3の(c)に示すように、樹脂組成物30aが素子収容空間20a内に充填される。そして、硬化工程において、素子収容空間20a内の樹脂組成物30aを硬化して硬化物を得ることにより、図1及び図2に示すフィルムコンデンサ100を得ることができる。
樹脂供給工程においては、樹脂組成物を最小幅が3mm以下の注入口を有する空間(素子収容空間)に注入する工程を有する。図2の(a)及び(b)においては、注入口は、フィルムコンデンサ素子10と外装ケース20の側壁との間の空隙となる。注入口は、外装ケース20内にフィルムコンデンサ素子10を配置した状態で樹脂組成物を素子収容空間20aに注入する際に樹脂組成物が通過する注入経路である。注入口の幅は、フィルムコンデンサ素子10の所定の部位と当該部位と対向する外装ケース20の側壁との最短距離を意味し、注入口の最小幅は、上記幅の最小値を意味する。但し、フィルムコンデンサ素子10と外装ケース20の側壁とが接している部位は、注入口には該当せず、よって、注入口の最小幅は0mmより大きい。例えば、注入口の最小幅は、図2の(a)に示すフィルムコンデンサ素子10の長手方向に垂直な断面におけるフィルムコンデンサ素子10と外装ケース20の側壁との間の幅、及び、図2の(b)に示すフィルムコンデンサ素子10の長手方向に沿った断面におけるフィルムコンデンサ素子10と外装ケース20の側壁との間の幅のうち、小さい方の幅である。これらの幅のうち、少なくとも一方が3mm以下であればよいが、両方が3mm以下であってもよい。注入口の最小幅は、フィルムコンデンサ素子10のリード線16と外装ケース20の側壁との間の幅であってもよいが、リード線16を除いたフィルムコンデンサ素子10と外装ケース20の側壁との間の最小幅が3mm以下であることが好ましい。また、フィルムコンデンサ素子10と外装ケース20の側壁との間の幅の全てが3mm以下であってもよい。本実施形態の樹脂組成物を用いることにより、このような幅の狭い注入口を介して樹脂組成物を注入する場合であっても、優れた含浸性を得ることができる。
樹脂供給工程は、例えば、真空下、温度20〜90℃の条件で行うことができる。樹脂供給工程では、例えば、樹脂組成物の供給に伴い、浮力によってフィルムコンデンサ素子が樹脂組成物の液面に浮き上がることにより、フィルムコンデンサ素子と外装ケースの底面との間に樹脂組成物が介在してもよい。
硬化工程では、素子収容空間内に供給された樹脂組成物を硬化して硬化物を得る。硬化工程では、例えば、熱硬化性の樹脂組成物を加熱して硬化物を得る。樹脂組成物の硬化温度は、110℃以下であることが好ましい。硬化工程は、例えば、85〜105℃、3〜8時間の条件で行うことができる。複数の条件を組み合わせてもよく、一の温度で加熱した後に他の温度(例えば、上記一の温度よりも高温)で加熱してもよい。
本実施形態に係るフィルムコンデンサの製造方法においては、樹脂組成物の注入回数を1回又は2回とすることができる。先に、注入回数が2回の場合について説明する。
例えば、図4に示すように、外装ケース20の素子収容空間内に所定量の樹脂組成物3を注入し(図4の(a))、その後、フィルムコンデンサ素子10を、巻回体12の底部が浸漬するように外装ケース内に配置し(図4の(b))、その後、樹脂組成物3aを硬化し、形成される封止材32によってフィルムコンデンサ素子10を固定する(図4の(c))。次に、樹脂組成物を素子収容空間内に注入し(図4の(d))、樹脂組成物3bを硬化させて封止部30を形成することによりフィルムコンデンサ110が得られる(図4の(e))。
なお、本実施形態においては、外装ケースにフィルムコンデンサ素子を配置し、フィルムコンデンサ素子の巻回体の底部が浸漬されるまで樹脂組成物を素子収容空間内に供給した後に樹脂組成物を硬化させて、図4の(c)の状態を得てもよい。
本実施形態では、1回目の樹脂組成物の注入によってフィルムコンデンサ素子を固定することにより、2回目の樹脂組成物の注入の際に、浮力によってフィルムコンデンサ素子が樹脂組成物の液面に浮き上がることを抑制することができる。
次に、注入回数が1回の場合について説明する。
本実施形態の方法では、外装ケース20の素子収容空間内にフィルムコンデンサ素子10を配置し(図5の(a))、フィルムコンデンサ素子10が収容された素子収容空間に本実施形態の樹脂組成物を注入する樹脂供給工程(図5の(b))と、樹脂組成物3aを硬化させる硬化工程(図5の(c))と、をこの順に備える。本実施形態に係るフィルムコンデンサの製造方法では、樹脂供給工程の開始時において、フィルム本体(本実施形態では巻回体12)が封止材(樹脂供給工程で供給される本実施形態の樹脂組成物と同種の封止材、及び、樹脂供給工程で供給される本実施形態の樹脂組成物と異なる封止材)によって固定されておらず、樹脂供給工程において、樹脂組成物が素子収容空間に供給され始めてからフィルム本体が樹脂組成物に埋没するまで、本実施形態の樹脂組成物を硬化させることなく樹脂組成物が素子収容空間に供給される。「樹脂組成物を硬化させることなく」とは、例えば、樹脂組成物の硬化開始温度以上の温度に樹脂組成物を保持しないことをいう。樹脂供給工程の終了時においては、フィルム本体が樹脂組成物3aに埋没している(すなわち、フィルム本体の全体が樹脂組成物に覆われており、フィルム本体が樹脂組成物の外部に露出していない)。
本実施形態の方法においては、樹脂組成物の注入回数1回で、フィルムコンデンサ素子を封止する封止部を備えたフィルムコンデンサ120を得ることができる。なお、本実施形態においては、樹脂組成物の注入を連続的又は断続的に行ってもよい。
本実施形態の樹脂供給工程では、樹脂組成物が素子収容空間に供給され始めてからフィルム本体(本実施形態では巻回体12)が樹脂組成物に埋没するまでフィルム本体が固定されていてもよい。固定方法は特に限定されず、上方、下方、側方等のいずれの方向からフィルム本体を固定してもよい。複数の固定方法を併用してもよい。
フィルム本体(本実施形態では巻回体12)は、樹脂組成物が素子収容空間に供給され始めてからフィルム本体が樹脂組成物に埋没するまで固定部材(硬化性の封止材及びその硬化物を除く)によって固定されてもよい。固定部材の形状としては、特に限定されず、棒状、板状等が挙げられる。固定部材としてクリップ、ピン等を用いることもできる。固定部材は、硬い部材であってもよく、屈曲可能な柔らかい部材であってもよい。固定部材は、水平に配置されていてもよく、傾斜して配置されていてもよい。固定部材の配置位置は、特に限定されない。フィルム本体は、素子収容空間内に配置された固定部材により固定されてもよい。また、フィルムコンデンサ素子が、フィルム本体に接続されていると共に素子収容空間の外部へ伸びる配線部材を有している場合には、素子収容空間の外部で配線部材を固定することによりフィルム本体が固定されていてもよい。各配線部材が個々に固定されてもよく、複数の配線部材が一括して固定されてもよい。
外装ケースが、樹脂組成物が素子収容空間に供給され始めてからフィルム本体(本実施形態では巻回体12)が樹脂組成物に埋没するまでフィルム本体を固定する上述の固定部材を備えていてもよい。固定部材は、ケースと一体であってもよく、ケースと別体であってもよい。
固定部材は、ケースの素子収容空間内に配置されていてもよい。素子収容空間内における固定部材の配置位置は特に限定されず、例えば、素子収容空間を形成する底面又は内壁面に固定部材が接続されていてもよい。固定部材が素子収容空間内におけるケースの開口部に配置される態様であってもよい。また、素子収容空間内におけるケースの開口部よりも内側に固定部材が配置されると共に、固定部材よりも開口部側に封止部が延在して固定部材が封止部に覆われる態様であってもよい。この場合、フィルムコンデンサ素子が封止部に充分に保護されやすいため、フィルムコンデンサを長寿命化させやすい。さらに、固定部材は、ケースの素子収容空間の外部に配置されていてもよい。例えば、素子収容空間の外部において、ケースの側壁に接続された固定部材によってフィルムコンデンサ素子の配線部材を固定することによりフィルム本体が固定されていてもよい。
固定方法は、ケースを構成する固定部材を用いる方法に限られず、ケースを構成しない固定部材を用いることができる。例えば、素子収容空間の外部において、型部材(例えば、外装ケース)を支持する部材(例えばコンベア)に接続された部材によって配線部材を固定することによりフィルム本体が固定されていてもよい。また、素子収容空間の外部において、ケースに接触しない固定部材(本実施形態では巻回体12)によってフィルムコンデンサ素子の配線部材を固定することによりフィルム本体が固定されていてもよい。型部材の上方(例えば鉛直方向上方)に配置された固定部材によって固定してもよく、例えば、型部材の上方(例えば鉛直方向上方)に配置された板状部材によって配線部材の先端部を固定してもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、フィルムコンデンサにおいて、封止部に封止されるフィルムコンデンサ素子は、一つであってもよく、複数であってもよい。
フィルムコンデンサの封止部内において、フィルムコンデンサ素子と外装ケースの底面との間に封止部が介在することなく、フィルムコンデンサ素子が外装ケースの底面に接していてもよい。封止部内において、フィルムコンデンサ素子と外装ケースの側壁との間に封止部が介在することなく、フィルムコンデンサ素子が外装ケースの側壁に接していてもよい。
フィルムコンデンサ素子は、フィルムで形成されたフィルム本体(コンデンサ本体、フィルム素子本体)を有していればよく、特に限定されない。例えば、フィルムコンデンサ素子は、フィルムの巻回体(フィルムを巻き回して形成されたフィルム構造体)に代えて、フィルムの積層体(フィルムを積層して形成されたフィルム構造体)を有していてもよい。フィルム本体としては、金属化フィルムの巻回体又は積層体を用いることができる。
外装ケースに代えて、最終的に封止部から分離される部材(フィルムコンデンサを構成しない部材)を用いてもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜9]
<樹脂組成物の調製>
表1に示す下記成分を、同表に示す配合量(単位:質量部)で混合することにより樹脂組成物を調製した。
(熱硬化性樹脂)
R−139S:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三井化学株式会社製、商品名:エポミックR−139S
JER834:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱ケミカル株式会社製、商品名:JER834
(硬化剤)
酸無水物:3or4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、日立化成株式会社製、商品名:HN−2000
(硬化促進剤)
塩化ベンザルコニウム:日油株式会社製、商品名:M2−100R
(フィラー)
結晶シリカ:フミテック株式会社製、商品名:HC−15、平均粒径:12.8μm
結晶シリカ:シベルコ・ジャパン株式会社製、商品名:CA0040、平均粒径:3.65μm
ワラストナイト:林化成株式会社、商品名:VM−8N、平均粒子径:11μm
水酸化アルミニウム:日本軽金属株式会社製、商品名:AL−B143、平均粒径:5μm
(難燃剤)
ヘキサフェノキシシクロトリホスファゼン:大塚化学株式会社製、商品名:SPB−100、リン含有量:13.4質量%
ヒドロキシフェノキシ基とフェノキシ基とが混合置換したシクロトリホスファゼン:大塚化学株式会社製、商品名:SPH−100、リン含有量:12.5質量%
メチルフェノキシ基とフェノキシ基とが混合置換したシクロトリホスファゼン(液状):大塚化学株式会社製、商品名:SPB−100L、リン含有量:12.8質量%
(その他の添加剤)
消泡剤:シリコーン系消泡剤、信越化学工業株式会社製、商品名:KS−603
カップリング剤:エポキシ基含有シランカップリング剤、ダウコーニング社製、商品名:OFS−6040
着色剤:カーボンブラック、三菱ケミカル株式会社製、商品名:MA100
<物性測定>
上記樹脂組成物を用いて下記の物性測定を行った。物性測定は、上述の硬化剤と他成分とを混合した後、速やかに行った。物性測定の結果を表1に示す。
(吸水率)
直径60mmのアルミニウムシャーレ内に上記樹脂組成物を20g注入した。次に、上記樹脂組成物を105℃で8時間熱硬化させて硬化物を得た後、上記硬化物の質量を測定した。続いて、121℃、100%RH、2atmの条件で上記硬化物に37時間吸水させた後、上記硬化物の質量を測定した。下記式により硬化物の吸水率を算出した。
吸水率(質量%)=(吸水後の質量−吸水前の質量)/吸水前の質量
(粘度)
B型回転粘度計(TOKIMEC社製、商品名:BL)を用いて、温度40℃、回転数60rpm(60回転)の条件における上記樹脂組成物の粘度を測定した。温度は、恒温槽(ヤマト科学株式会社製、商品名:BF600)を用いて調整した。
(難燃性)
上記樹脂組成物を105℃で8時間熱硬化させて硬化物を得た後、縦125mm×横13.0mm、厚み5mmの直方体形状に硬化物を加工して試験片を得た。上記試験片を用いて、UL94Vの試験方法に従い難燃性を評価した。UL94Vの判定基準に従い、下部接炎について「V−0」、「V−1」、「V−2」、「V−NOT」の4段階で判定した。「V−0」が最も難燃性が高く、「V−1」、「V−2」及び「V−NOT」の順に難燃性が低下する。
(含浸性)
上記樹脂組成物の微細な隙間への含浸性を、以下の試験方法で評価した。まず、ガラスビーズ(平均粒径:50〜80μm)をφ15mmのポリエチレン製の試験管に充填し、その上に、充分に脱泡した樹脂組成物を注入した。ガラスビーズは試験管の底部から20mmの高さまで充填し、その上に樹脂組成物を20mmの高さで注入した。次いで、10mmHg(1.3kPa)で10分間減圧した後、常圧下、70℃で2時間、90℃で1時間、110℃で0.5時間、及び、145℃で2時間の条件で樹脂組成物を熱硬化させた。熱硬化後、樹脂組成物の硬化物で封止されていないガラスビーズの質量をWとし、はじめに試験管に充填したガラスビーズの全質量をWとして、含浸率(%)を下記式(I)により算出した。
含浸率={1−(W/W)}×100 (I)
算出した含浸率に基づき、以下の基準に基づき、含浸性を評価した。結果を表1に示す。
〇:含浸率が20%以上
△:含浸率が10%以上20%未満
×:含浸率が10%未満
試験管に充填されたガラスビーズ間の隙間はマイクロレベルで極めて狭い。そのため、上記含浸性の評価結果が良好(評価結果が「〇」)であれば、フィルムコンデンサにおける微細な隙間への樹脂組成物の含浸性が良好であると判断することができる。
(耐クラック性)
上記樹脂組成物の耐クラック性を、以下の試験方法で評価した。
直径60mmのアルミニウムシャーレ内に上記樹脂組成物を9g注入した。次に、この樹脂組成物を常圧下、120℃で45分間熱硬化させて硬化物を得た後、硬化物をアルミニウムシャーレから取り出すことなく、その樹脂硬化物上の中央に外径23mm、内径13mm、厚み3mmのスプリングワッシャーを乗せた。続いて、樹脂硬化物上のスプリングワッシャーが埋没するように、新たに樹脂組成物35gを注入し、スプリングワッシャーが完全に樹脂組成物中に埋没した状態で常圧下105℃8時間熱硬化させてスプリングワッシャーが埋没された硬化物を得た。この硬化物をアルミニウムシャーレから取り出し、−40℃に30分及び150℃に30分の試験槽へ交互に投入する(これを1サイクルとする)熱衝撃試験を実施した。この試験を硬化物表面に割れが発生するまで実施し、割れが発生した時点のサイクル数を計測した。
なお、耐クラック性の評価結果が200サイクル以上であればフィルムコンデンサ素子を封止した際に硬化物の熱衝撃に対する耐性を十分に確保することができると判断することができる。
Figure 2019081838
10…フィルムコンデンサ素子、12…巻回体、14…メタリコン電極、16…リード線、20…外装ケース、20a…素子収容空間、30…封止部、30a,30b…樹脂組成物、32…封止材、100,110,120…フィルムコンデンサ。

Claims (9)

  1. 硬化性成分と、平均粒径が30μm以下のフィラーと、を含有し、フィルムコンデンサ素子の封止に用いられる、注型用の樹脂組成物。
  2. 前記フィラーとして、結晶シリカを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記フィラーとして、ウォラストナイトを含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. B型粘度計を用いて40℃、60rpmの条件で測定した場合の粘度が5.0Pa・s以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  5. 注入口の最小幅が3mm以下の注型に用いられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  6. フィルムコンデンサ素子と、前記フィルムコンデンサ素子を封止する封止部と、を備え、
    前記封止部が、請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物又はその硬化物を含む、フィルムコンデンサ。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物を注型し、フィルムコンデンサ素子を封止する前記樹脂組成物又はその硬化物を含む封止部を備えたフィルムコンデンサを得る、フィルムコンデンサの製造方法。
  8. 前記注型における注入口の最小幅が3mm以下である、請求項7に記載のフィルムコンデンサの製造方法。
  9. 前記樹脂組成物の注入回数が、1回又は2回である、請求項7又は8に記載のフィルムコンデンサの製造方法。
JP2017209539A 2017-10-30 2017-10-30 樹脂組成物、フィルムコンデンサ及びその製造方法 Pending JP2019081838A (ja)

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