JP2019081767A - 酸化感受性製剤のための安定なすぐ使用できる注入バッグを製造するプロセス - Google Patents

酸化感受性製剤のための安定なすぐ使用できる注入バッグを製造するプロセス Download PDF

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Abstract

【課題】酸化を受けやすい医薬品有効成分の薬液の湿熱滅菌中の最も多い分解生成物の形成を最小限にするためのプロセスの提供。【解決手段】酸化を受けやすい医薬品有効成分を、賦形剤及び脱酸素水と混合して、非無菌薬液を調製する。非無菌薬液を、湿熱滅菌可能な軟質注入バッグに充填する。非無菌薬液を含む軟質注入バッグを、事前設定した空気過剰圧約0.2バール〜約1.2バールで最終湿熱滅菌して、非経口薬物製品を得る。非経口薬物製品中の最も多い分解生成物は、非経口薬物製品中の酸化を受けやすい医薬品有効成分のラベル表示量の0.5重量%未満であるプロセス。【選択図】なし

Description

関連出願の相互参照
本出願は、「Process Of Manufacturing A Stable、Ready To Use Infusion Bag For An Oxidation Sensitive Formulation」と題され、2013年4月8日に米国特許商標局に出願された、仮特許出願第61/809,538号、および「Process Of Manufacturing A Stable、Ready To Use Infusion Bag For An Oxidation Sensitive Formulation」と題され、2014年4月5日に米国特許商標局に出願された、非仮特許出願第14/246,047号についての優先権を主張し、かつその恩典を請求する。上記で参照した特許出願の明細書は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書に開示されている薬物製品は、軟質注入バッグ中の医薬品有効成分を含む薬液の湿熱滅菌によって調製される、安定なすぐ使用できる非経口薬物製品であって、薬物製品中の医薬品有効成分が、周囲の酸素、光、または湿気による酸化を受けやすい、非経口薬物製品に関する。
無機および有機化合物の酸化は、電子を失うことおよび水素の分子を失うことによって起こる。アルコール、アルデヒド、ケトン、アルキン、アルケン、スルフィド、チオール、カルボン酸、ベンゾイン、フェノール、キノン、アルキルベンゼン、イミン、エポキシド、カテコール、エーテル、および有機金属は、被酸化性官能基の例である。これらの官能基は、アセトアミノフェン、アセチルシステイン、硫酸アミカシン、塩酸ドパミン、塩酸プロメタジン、リネゾリドなどの医薬化合物、およびアミノ酸などの化合物のクラスに見られる。
パラセタモールまたはN−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミドとも呼ばれるアセトアミノフェンは、非ステロイド系鎮痛薬であり、様々な経路を介して広く使用されている解熱薬であり、下記式に示すように表される:
Figure 2019081767
静脈内経路によって投与したアセトアミノフェンは、効果発現がより早く、経口または直腸アセトアミノフェン製剤よりも予測可能な薬物動態をもたらす。成人ボランティア6人に静脈内、経口、および直腸アセトアミノフェンを投与した研究では、観察された平均静脈内Cmaxは、経口経路および直腸経路による別々の投与と比較して、ほぼ2倍および4倍高い。静脈内治療グループは、経口または直腸投与後よりも、一貫してより優れた効果発現およびより高いピーク血漿およびばらつきがより少ない脳脊髄液(CSF)最高濃度値を示した。
静脈内アセトアミノフェンの利点は、静脈内アセトアミノフェンが手術前または手術中に投与でき、術後期の初期に有効な鎮痛療法が開始できるようになることである。静脈内アセトアミノフェンは、初回通過肝臓曝露および門脈循環を経由した代謝を回避するようであり、それは肝損傷の可能性を下げ得る。治療投与では、例えば、毎日4,000mgまで用いる場合、静脈内アセトアミノフェンは、めったに肝毒性と関連がなく、潜在的な肝臓症状を有する一部の患者での使用が安全であることが示されている。それにもかかわらず、その処方情報に応じて、静脈内アセトアミノフェンは、重篤な肝障害または重篤な活動性肝疾患のある患者に禁忌である。アセトアミノフェン注射の利点は、当技術分野でよく知られている。
アセトアミノフェンは、p−アミノフェノールと無水酢酸のアセチル化によって合成されるp−アミノフェノール誘導体である。アセトアミノフェンは、高温で、かつ酸性媒質または塩基性媒質の存在下でp−アミノフェノールに加水分解することができる。p−アミノフェノールは、アセトアミノフェンの貯蔵中または合成中に形成し得るアセトアミノフェン調製物中の主要な不純物である。p−アミノフェノールは、腎毒性および催奇形性を引き起こし得ることが報告されている;したがって、p−アミノフェノールの量は、厳密に制御すべきである。米国および英国薬局方は、アセトアミノフェン物質中のp−アミノフェノールの量を0.005%w/wに制限している。
アセトアミノフェンの水溶液中での分解は、酸触媒反応でも塩基触媒反応でもある。それは、アセトアミノフェンの濃度に関して一次であり、水素およびヒドロキシルイオン濃度に関して一次である。pH5およびpH6における緩衝溶液中のアセトアミノフェンの半減期は、それぞれ19.8年および21.8年と計算された。pH2では、半減期は0.73年であり、またpH9では、半減期は2.28年であり、中間値は中間pH値におけるものである。処方薬中にアセトアミノフェンを配合している間、製品の貯蔵寿命を最大化するために、媒質のpHを約5〜約6に保持することが望ましい。
加水分解に加えて、アセトアミノフェンは、窒素含有オリゴマーおよびポリマーの生成と共に容易に重合し得るキノン−イミンの形成を伴う酸化分解も起こす。これらのポリマー、特に、N−アセチル−p−ベンゾキノン−イミンから生じるものは、アセトアミノフェンの毒性代謝物であり、細胞障害効果および溶血効果を顕著に持っている。この代謝物の水性媒質中での分解は、さらにより複雑であり、p−ベンゾキノンおよびヒドロキノンを生じる。アセトアミノフェンの補助溶媒組成物には、エタノールおよびポリエチレングリコール400を含有するものもある。
アセトアミノフェンは、市販品であるCadence Pharmaceuticals,Inc.のOfirmev(登録商標)注射剤中の医薬品有効成分である。Ofirmev(登録商標)注射剤は、静脈内注入用のアセトアミノフェンの無菌で透明無色の非発熱性等張製剤である。Ofirmev(登録商標)注射剤は、pHが約5.5であり、浸透圧重量モル濃度が1キログラム当たり約290ミリオスモル(mOsm/kg)である。100mLにつき、アセトアミノフェン1000mg、米国薬局方(USP)、マンニトール3850mg、USP、システイン塩酸塩一水和物25mg、USP、および第二リン酸ナトリウム10.4mg、USPが含有されている。Ofirmev(登録商標)注射剤生成物のpHは、塩酸および/または水酸化ナトリウムで調整される。
最終滅菌は、熱的に安定な医薬品有効成分を滅菌するための選択法である。非無菌薬液の無菌性を達成するために、非無菌薬液は、オートクレーブ内で滅菌して、非無菌薬液中の微生物バイオバーデンの最低で6対数減少を得なければならない。各対数減少(10−1)は、微生物バイオバーデンの90%減少を表す。したがって、「6対数減少」(10−6)を達成するために示されるプロセスは、理論的には100万(10)からゼロに非常に近い生物数まで微生物バイオバーデンを減少させるはずである。非経口液剤、埋込型デバイスなどの重要な製品のために最大限の無菌性保証を提供するためにオーバーキルサイクルを使用することは一般的である。6対数減少は、非無菌薬液を、121℃(250°F)、100kPa(15psig)で少なくとも15分間、または134℃(273°F)、100kPa(15psig)で少なくとも3分間滅菌することによって達成される。所望の滅菌温度に到達するまでより時間がかかり得るので、非無菌薬液および機器がオーバーラップ内にオーバーラップされている場合に、追加の滅菌時間が通常必要である。アセトアミノフェン医薬品有効成分は、酸化を受けやすい。アセトアミノフェン薬液がpH約5〜約6の場合に、酸素存在下におけるアセトアミノフェンのオートクレーブサイクルは、ダイマーおよびポリマー不純物の形成をもたらす。最終滅菌中の医薬品有効成分の分解および不純物の生成を最小限にするために、異なる手法がとられている。1つの手法では、アセトアミノフェンを混ぜ合わせるのに使用した水を脱酸素化し、アセトアミノフェン薬液をその後、酸化防止剤の存在下において非酸素透過性ガラス瓶中で最終滅菌する。従来、患者の血流への非経口投与のための流体は、ガラス容器中に詰められていた。しかしながら、ガラス容器の製造および輸送は難しい。ガラスより資源消費が少なく、安く、かつ取扱いが便利な代替のポリマー材料を見つけるために工業的な努力が行なわれている。そのような努力の1つでは、最終滅菌中のアセトアミノフェン溶液の安定化を、アセトアミノフェンダイマーを使用して実施した。
Ofirmev(登録商標)注射剤の添付文書に基づいて、各100mLガラスバイアルは、アセトアミノフェン1000mgを含有している(10mg/mL)ことが推奨されている。ガラスバイアルの真空シールが侵入された後、または内容物を別の容器に移した場合、Ofirmev(登録商標)注射剤の投与量は、6時間以内に投与することが推奨されている。
唯一の補助溶媒としてプロピレングリコールを含有する、すぐ使用できるアセトアミノフェン注射液剤の市販されている組成物がいくつかあり、ここで、包装された、すぐ使用できるアセトアミノフェン注射剤を調製するためのプロセスは、以下のステップ:アセトアミノフェンを水、唯一の補助溶媒としてのプロピレングリコール、およびpHが4.5〜6.5のクエン酸緩衝液と混合すること;得られた溶液を70℃〜130℃の温度まで加熱すること;得られた溶液を同じ温度で少なくとも10分間保持すること;アセトアミノフェンを容器中に無菌的に包装し、容器中のアセトアミノフェン薬液を滅菌して非経口アセトアミノフェン薬物製品を得ることを含む。
また、アセトアミノフェン、水性溶媒、薬物製品のpHを4.5〜6.5に調整するための緩衝液、等張剤、および245nmで検出した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定されたピークの表面積の比としての、検出可能量の少なくとも0.005%のアセトアミノフェンダイマーを含有する、いくつかの市販されているすぐ使用できるアセトアミノフェンの静脈内注入液剤がある。
薬液中または薬物製品中の医薬品有効成分は、種々の物理的および化学的条件下で、例えば、非無菌薬液の最終滅菌中に分解を起こし、医薬品有効成分の効能に悪影響を及ぼす不純物を生じる。したがって、医薬品規制局(drug regulatory agencies)は、認可のために新薬または後発品の出願を提出する場合、新薬および後発品の出願人に医薬品有効成分の安定性を示すデータを提出することを要求する。したがって、薬物製品、医薬品有効成分およびその不純物を分析するための安定性を示す方法を開発する必要がある。非経口アセトアミノフェン薬物製品の製造中に、軟質注入バッグ中の薬液中に含有されている医薬品有効成分、すなわち、アセトアミノフェンは、下記:軟質注入バッグ中に非無菌のアセトアミノフェン薬液を充填したときに軟質注入バッグ中に存在する初期酸素;湿熱滅菌中に軟質注入バッグを通り抜ける酸素;および非無菌のアセトアミノフェン薬液を滅菌する121℃の温度によって分解を起こす。米国食品医薬品局(FDA)規定は、このような最終薬物製品製造中の医薬品有効成分の分解率が、米国薬局方(USP)、または日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)ガイドラインに従うことを提案している。分解生成物の判定基準を確立する際、重要な事柄は、最も高い分解生成物のレベルがUSPで規定されているかどうかである。薬物製品中の分解生成物レベルは、USPで規定されたレベル以内であることが要求される。
一般に、酸化を受けやすい医薬品有効成分の非経口剤形への加工中、医薬品有効成分は、最終湿熱滅菌中に医薬品有効成分が曝された熱によって分解を起こす。非経口製剤のためのICHガイドラインは、未知の不純物が特定されることを要求している。不純物の最大許容量は、1日量の濃度によって決まる。例えば、1日量が1日当たり2mgよりも大きい場合、確認限界は、医薬品有効成分の0.1重量%であり;1日量が1〜10mgの場合、確認限界は、医薬品有効成分の0.5重量%である。
湿熱滅菌サイクルでは、軟質注入バッグ中の薬液を含む内容物が滅菌中に軟質注入バッグを膨張させ、破裂させることを防ぐために、空気過剰圧は、通常約1.3バール〜約1.4バールに設定する。また、酸化を受けやすい医薬品有効成分の約1.4バールに設定された空気過剰圧での湿熱滅菌サイクルでは、酸化を受けやすい医薬品有効成分の分解は、非経口剤形の薬物製品中の酸化を受けやすい医薬品有効成分のラベル表示量の0.5重量%を超え得る。
従来の製剤およびプロセスは、製剤を安定化させるためにいくつかの賦形剤および包装を使用するが、最終滅菌中の医薬品有効成分の分解に取り組み損ねている。したがって、最終湿熱滅菌中の酸化を受けやすい製剤の分解を減らすために、長く感じたが未解決の要求がある。さらに、軟質注入バッグに含有されている安定な、酸化を受けやすい薬液の要求がある。さらに、最終湿熱滅菌中に酸化を受けやすい医薬品有効成分の酸化および分解を妨げ、または減らす、軟質注入バッグ中の安定なすぐ使用できる、酸化を受けやすい薬物製品を製造するためのプロセスの要求がある。
この概要は、本発明の詳細な説明にさらに開示されている、単純化された形で概念の選択を紹介するために提供している。この概要は、特許請求した主題の重要なまたは本質的な本発明の概念を特定するものではなく、また特許請求した主題の範囲を決定するためのものでもない。
本明細書に開示されているプロセスは、湿熱滅菌可能な容器、例えば、軟質注入バッグ中の酸化を受けやすい医薬品有効成分を含む非無菌の酸化を受けやすい薬液の湿熱滅菌によって作製された非経口薬物製品により高い安定性を提供するために、上記の要求に取り組む。
酸化を受けやすい医薬品有効成分は、賦形剤および脱酸素溶媒、例えば、脱酸素水と混合して、非無菌薬液を調製する。非無菌薬液は、容器、例えば、本明細書において「軟質注入バッグ」と呼ばれている軟質材料でできた容器に充填される。軟質注入バッグの充填体積は、例えば、約20mL〜約1000mLである。軟質注入バッグは、湿熱滅菌可能である。非無菌薬液を含有する軟質注入バッグは、その後、事前設定した空気過剰圧約0.2バール〜約1.2バールにおいて、例えば、0.7バールに事前設定して、オートクレーブ内での湿熱滅菌によって最終滅菌して、非経口薬物製品を得て、ここで、非経口薬物製品中で最も多い分解生成物は、酸化を受けやすい医薬品有効成分のラベル表示量の0.5重量%未満である。例えば、最も多い分解生成物は、酸化を受けやすい医薬品有効成分の約0.5重量%未満の不純物を含有する。軟質注入バッグ中の非無菌薬液の湿熱滅菌後に得られる非経口薬物製品は、安定なすぐ使用できる非経口薬物製品である。オートクレーブ中の空気過剰圧を事前設定した圧力約0.2バール〜約1.2バールに制御することにより、非経口薬物製品中の最も多い分解生成物の形成が、酸化を受けやすい医薬品有効成分のラベル表示量の約0.01重量%〜0.5重量%に低減されることが、予想外に発見された。一実施形態では、オートクレーブ中の空気過剰圧を事前設定した圧力約0.2バール〜約1.2バールに制御することにより、非経口薬物製品中の最も多い分解生成物の形成が、酸化を受けやすい医薬品有効成分のラベル表示量の0.5重量%未満に低減した。一実施形態では、薬液の蒸気滅菌中のオートクレーブ中の空気過剰圧は、約1.2バール未満に維持される。
一実施形態では、非無菌薬液を充填された軟質注入バッグは、1種または複数のオーバーラップ内に封入して、最終湿熱滅菌中および滅菌後の薬物製品の貯蔵中における軟質注入バッグ内の非無菌薬液への酸素、湿気、および/または光の侵入を妨げる。オーバーラップを含みまたは含まず、非無菌薬液を含む軟質注入バッグは、湿熱滅菌して、軟質注入バッグ中の非無菌薬液中の微生物バイオバーデンの最低で6対数減少を得る。
別の実施形態では、非無菌薬液を充填された軟質注入バッグは、オートクレーブ内で湿熱最終滅菌される。滅菌された、酸化を受けやすい薬液を含む軟質注入バッグは、クラス10,000またはクラス100,000クリーンルーム内でオーバーラップ内に封入して、薬物製品の貯蔵中における酸化を受けやすい薬物製品への酸素、湿気、および/または光の侵入を妨げる。一実施形態では、滅菌された、酸化を受けやすい薬物製品を含む軟質注入バッグは、クラス100,000クリーンルーム内のクラス100またはクラス10,000層流フード下でオーバーラップ内に封入される。
一実施形態では、軟質注入バッグ、または酸化を受けやすい薬液を含有するオーバーラップを含む軟質注入バッグは、酸化を受けやすい薬液中の微生物バイオバーデンの最低で6対数減少が得られるように構成された温度およびサイクル時間で、水カスケード滅菌法または蒸気滅菌によって滅菌し、例えば、最低温度約121℃で、事前設定した時間、例えば、約10分〜約30分間、空気過剰圧を約0.2バール〜約1.2バールの圧力、例えば、約0.7バールに設定して、滅菌する。
一実施形態では、酸化を受けやすい医薬品有効成分は、アセトアミノフェンであり、本明細書に開示されている非経口薬物製品は、軟質注入バッグ中に含有されている非経口アセトアミノフェン薬物製品である。酸化を受けやすいアセトアミノフェン医薬品有効成分は、賦形剤および脱酸素水と混合して、非無菌のアセトアミノフェン薬液を調製する。非無菌のアセトアミノフェン薬液は、軟質注入バッグ中に充填する。非無菌のアセトアミノフェン薬液を含む軟質注入バッグは、事前設定した空気過剰圧約0.2バール〜約1.2バールにおいて、例えば、0.7バールに事前設定して、オートクレーブ内での湿熱滅菌によって最終滅菌して、所望の治療濃度で軟質注入バッグ中の非経口アセトアミノフェン薬物製品を得る。オートクレーブ中の事前設定した空気過剰圧を約0.2バール〜約1.2バールに制御すること、例えば、事前設定した空気過剰圧を約0.7バールに制御することにより、非経口アセトアミノフェン薬物製品中の最も多い分解生成物の形成が、アセトアミノフェンのラベル表示量の0.5重量%未満に低減されることが、予想外に発見された。最も多い分解生成物は、酸化を受けやすい医薬品有効成分の既知の不純物または未知の不純物であり、非経口アセトアミノフェン薬物製品中のアセトアミノフェンの紫外線波長約244nmで分析される。
前述の概要、ならびに下記の本発明の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むとよりよく理解されよう。本発明を例示する目的で、本発明の代表的な構成が、図示されている。しかしながら、本発明は、本明細書に開示されている特定のプロセスおよび構造に限定されない。図中の数字によって参照されるプロセスステップまたは構造の説明は、本明細書の任意の後続の図面中の同じ数字で示されたプロセスステップまたは構造の説明に引き継がれる。
湿熱滅菌中の非無菌薬液中の酸化を受けやすい医薬品有効成分の分解を減らす安定なすぐ使用できる非経口薬物製品を調製するためのプロセスを例示的に示す図である。 酸化を受けやすい薬液を含有する、オーバーラップを有する湿熱滅菌可能な軟質注入バッグを例示的に示す図である。 0.2バール〜1.2バールに事前設定した空気過剰圧で、軟質注入バッグ中に充填された、酸化を受けやすい医薬品有効成分を含有する薬液を滅菌した結果を示すクロマトグラムを例示的に示す図である。 0.2バール〜1.2バールに事前設定した空気過剰圧で、軟質注入バッグ中に充填された、酸化を受けやすい医薬品有効成分を含有する薬液を滅菌したピーク結果を示す表を例示的に示す図である。 1.2バールよりも高い事前設定した空気過剰圧で、軟質注入バッグ中に充填された、酸化を受けやすい薬液を湿熱滅菌した結果を示すクロマトグラムを例示的に示す図である。 1.2バールよりも高い事前設定した空気過剰圧で、軟質注入バッグ中に充填された、酸化を受けやすい薬液を湿熱滅菌したピーク結果を示す表を例示的に示す図である。
図1は、湿熱滅菌中の非無菌薬液中の酸化を受けやすい医薬品有効成分の分解を減らす安定なすぐ使用できる非経口薬物製品を調製するためのプロセスを例示的に示す。本明細書では、「医薬品有効成分」は、薬物製品の製造に使用され、薬物の生成に使用したときに薬物製品中の有効成分になる、任意の原薬または原薬の混合物である。また、本明細書では、「薬液」は、軟質注入バッグ中の非無菌製剤を滅菌する前の医薬品有効成分および賦形剤の非無菌製剤を意味する。また、本明細書では、「薬物製品」は、非経口剤形の滅菌した薬液、例えば、軟質注入バッグ中の滅菌した薬液を意味する。薬液は、本明細書では「軟質注入バッグ」と呼ばれる湿熱滅菌可能な容器中で湿熱滅菌される。本明細書では、「滅菌」は、非無菌薬液中の微生物バイオバーデンの最低で6対数減少を達成するために容器中の非無菌薬液を最終滅菌することを意味する。
本明細書に開示されたプロセスでは、軟質材料、例えば、プラスチック材料でできた軟質注入バッグを製造する101。酸化を受けやすい医薬品有効成分と、1種または複数の賦形剤および脱酸素水とを混合して、非無菌薬液を調製する102。一実施形態では、酸化を受けやすい医薬品有効成分は、アセトアミノフェンである。一実施形態では、アセトアミノフェン溶液は、約2mM〜約500mMの少なくとも1種の酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、マレイン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、酒石酸緩衝液、フタル酸緩衝液、ギ酸緩衝液、トリス緩衝液、またはその任意の組合せを含む、水性基剤の等張液である。実施形態では、アセトアミノフェン溶液のpHは、約5〜約6である。
次いで、非無菌薬液を軟質注入バッグ中に充填する103。軟質注入バッグの充填体積は、例えば、約20mL〜約1000mLである。軟質注入バッグ中に非無菌薬液を含んでいる軟質注入バッグは、事前設定した空気過剰圧約0.2バール〜約1.2バールにおいて、例えば、0.7バールに事前設定して、オートクレーブ内での湿熱滅菌によって最終滅菌して104、安定なすぐ使用できる非経口薬物製品を生成する105。オートクレーブの空気過剰圧は、最も多い分解生成物の分解を、約0.01%の定量限界で逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)技術によって測定した、酸化を受けやすい医薬品有効成分のラベル表示量の0.5重量%未満、例えば、約0.01重量%〜約0.5重量%に維持する。最も多い分解生成物は、例えば、約244nmの紫外線波長で分析された既知の不純物または未知の不純物である。
一実施形態では、非無菌薬液を充填した軟質注入バッグは、1種または複数のオーバーラップ内に封入される。オーバーラップを含みまたは含まず、非無菌薬液を含む軟質注入バッグは、オートクレーブ内で湿熱滅菌して、非無菌薬液中の微生物バイオバーデンの最低で6対数減少を達成する。オーバーラップは、滅菌中および滅菌後の薬物製品105の貯蔵中における非無菌薬液への酸素、湿気、および/または光の侵入を防止または低減することによって、軟質注入バッグ中の非無菌薬液の分解を減らす。
別の実施形態では、非無菌薬液を充填した軟質注入バッグは、オートクレーブ内で湿熱最終滅菌される。滅菌された、酸化を受けやすい薬物製品を含む軟質注入バッグは、クラス10,000またはクラス100,000クリーンルーム内でオーバーラップ内に封入して、薬物製品105の貯蔵中における滅菌された軟質注入バッグ中の薬物製品への酸素、湿気、および/または光の侵入を妨げる。一実施形態では、滅菌された、酸化を受けやすい薬物製品を含む軟質注入バッグは、クラス100,000クリーンルーム内のクラス100またはクラス10,000層流フード下でオーバーラップ内に封入される。
酸化を受けやすい医薬品有効成分の最も多い分解生成物は、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によって測定して、非経口薬物製品105中の酸化を受けやすい医薬品有効成分のラベル表示量の0.5重量%未満である。別の実施形態では、最も多い分解生成物は、逆相HPLC法によって測定して、非経口薬物製品105中の酸化を受けやすい医薬品有効成分のラベル表示量の0.05重量%未満のレベルである。別の実施形態では、最も多い分解生成物は、非経口薬物製品105中の酸化を受けやすい医薬品有効成分のラベル表示量の約0.01重量%のレベルである。
図2は、酸化を受けやすい薬液(図示せず)を含有するオーバーラップ202を有する湿熱滅菌可能な軟質注入バッグ201を例示的に示す図である。本明細書に開示されている非経口薬物製品105は、軟質注入バッグ201内に含有されている酸化を受けやすい医薬品有効成分および1種または複数の賦形剤の滅菌された溶液を含む。軟質注入バッグ201は、酸化を受けやすい医薬品有効成分を含む非無菌薬液を充填されており、例えば、水カスケード滅菌法または蒸気滅菌法によって、以下の例示的なパラメーター:約0.2バール〜約1.2バールに事前設定した空気過剰圧、約121℃の滅菌温度、および約15分〜約30分の滅菌サイクル時間の下で、オートクレーブ内で滅菌して、薬液中の微生物バイオバーデンの最低で6対数減少を得る。調製された安定なすぐ使用できる非経口薬物製品105は、体積が、例えば、約20mL〜約1000mLの1回分の形態である。
本明細書に開示されている安定なすぐ使用できる非経口薬物製品105は一般に、任意の適当な治療有効量で酸化を受けやすい医薬品有効成分を含む酸化を受けやすい薬液の安定な製品に関するものであり、ここで、酸化を受けやすい医薬品有効成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、アルキン、アルケン、スルフィド、チオール、カルボン酸、ベンゾイン、フェノール、キノン、アルキルベンゼン、イミン、エポキシド、カテコール、エーテル、および有機金属を含む1種または複数の被酸化性官能基を有している。本明細書に開示されている安定なすぐ使用できる非経口薬物製品105はまた、一般に、アセトアミノフェン、アセチルシステイン、硫酸アミカシン、塩酸ドパミン、塩酸プロメタジン、リネゾリド、オキシトシンなどの医薬化合物中に1種または複数の被酸化性官能基を含んでいる酸化を受けやすい医薬品有効成分の安定な製品に関する。一実施形態では、本明細書に開示されている安定なすぐ使用できる非経口薬物製品105は、1種または複数の酸化を受けにくい医薬品有効成分と一緒に1種の酸化を受けやすい医薬品有効成分を含む。
一実施形態では、酸化を受けやすい医薬品有効成分は、アセトアミノフェンであり、軽度から中程度の痛みを治療するための単独または他の医薬品有効成分と併せた管理、補助的なオピオイド鎮痛薬を用いた中程度から重度の痛みの管理、および発熱の低減のために、治療有効量で存在する。通常、アセトアミノフェンは、例えば、全薬物製品の約0.01w/w%〜約99w/w%の量で存在する。
軟質注入バッグ201は、シクロオレフィンポリマー、ポリプロピレンポリマー、ポリ塩化ビニルポリマーなどからできている。軟質注入バッグ201の例は、Technoflex Societe Anonyme a DirectoireのTechnoflex(登録商標)注入バッグである。一実施形態では、軟質注入バッグ201は、最低で2種のポリマー材料の1種または複数の複合層を含む。別の実施形態では、軟質注入バッグ201は、1つまたは2つ以上の区画を含む。一実施形態では、軟質注入バッグ201は、1つまたは2つ以上のポート203を含む。
酸化を受けやすい薬液は、1種または複数の賦形剤を含む。例えば、酸化を受けやすい薬液の製剤は、ビヒクルを含む。一実施形態では、使用したビヒクルは、最低で2種の溶媒の混合物である。別の実施形態では、ビヒクルは、水、アルコール、グリコール、ジメチルアセトアミドN−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドなどの1種または複数を含む。別の実施形態では、賦形剤は、例えば、水、アルコール、グリコール、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドなどの1種または複数を含む。
一実施形態では、酸化を受けやすい薬液の製剤は、緩衝賦形剤を含む。一実施形態では、緩衝賦形剤は、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、マレイン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、酒石酸緩衝液、フタル酸緩衝液、ギ酸緩衝液、およびトリス緩衝液の1種または複数を含む。別の実施形態では、緩衝液は、例えば、約2ミリモル(mM)〜約500mMの濃度で存在する。例えば、緩衝液は、約80mM、約40mM、約20mM、約10mM、または約5mMの濃度で存在する。例えば、一実施形態では、アセトアミノフェン薬液は、約2mM〜約500mMの、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、マレイン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、酒石酸緩衝液、フタル酸緩衝液、ギ酸緩衝液、トリス緩衝液、またはその任意の組合せの少なくとも1種を含む。
一実施形態では、酸化を受けやすい薬液は、張性賦形剤を含む。一実施形態では、酸化を受けやすい薬液の製剤は、例えば、約0.1w/v%〜約1.5w/v%の塩化ナトリウム、約0.1w/v%〜約1.5w/v%の塩化カリウム、約0.1w/v%〜約1.5w/v%の塩化カルシウム、約1w/v%〜約20w/v%のデキストロースなどの糖、約0.1w/v%〜約10w/v%のプロピレングリコール、および約0.1w/v〜約10w/v%のグリセリンの1種または複数を含む。張性賦形剤は、薬物製品を血液に対して等張にする量で存在する。
酸化を受けやすい薬液のpHは、pH1〜14に調整されている。例えば、一実施形態では、酸化を受けやすい薬液のpHは、pH4〜8である。別の実施形態では、酸化を受けやすい薬液のpHは、pHが5.40〜5.60である。一実施形態では、アセトアミノフェン薬液のpHは、約5〜約6の範囲である。
一実施形態では、軟質注入バッグ201は、軟質注入バッグ201中の酸化を受けやすい薬液を滅菌する前に、1種または複数のオーバーラップ202内にオーバーラップされる。一実施形態では、オーバーラップ202は、滅菌中または滅菌後に軟質注入バッグ201内に含有されている酸化を受けやすい薬液への酸素の浸透を減らすまたは妨げるように構成されているバリヤー層である。別の実施形態では、オーバーラップ202は、滅菌中または滅菌後に軟質注入バッグ201内に含有されている酸化を受けやすい薬液への湿気の浸透を減らすまたは妨げるように構成されているバリヤー層である。別の実施形態では、オーバーラップ202は、滅菌中または滅菌後に軟質注入バッグ201内に含有されている酸化を受けやすい薬液への光の浸透および侵入を減らすまたは妨げるように構成されているバリヤー層、例えば、プラスチック箔またはアルミ箔である。別の実施形態では、オーバーラップ202は、酸素、湿気、および光の浸透および侵入を妨げるように構成されているバリヤー層、例えば、アルミニウムオーバーラップである。一実施形態では、酸化を受けやすい薬液は、最低で1種のオーバーラップ202、例えば、アルミニウムオーバーラップ、ならびに最低で1種の酸素捕捉剤、例えば、Multisorb Technologies,Inc.のD−100 FreshPax(登録商標)、三菱ガス化学株式会社のPharmakeep(登録商標)KH−500などでオーバーラップされた軟質注入バッグ201に充填される。別の実施形態では、酸素捕捉剤は、粉末、キャニスター、シートフィルム、および小包の形態である。別の実施形態では、酸化を受けやすい薬液は、最低で1種のオーバーラップ202、ならびに最低で1種の湿気捕捉剤、例えば、Dow Chemical CompanyのZoldine(登録商標)湿気捕捉剤、W.R.Grace & Co.−Conn.のSylosiv(登録商標)湿気捕捉剤などでオーバーラップされた軟質注入バッグ201に充填される。一実施形態では、湿気捕捉剤は、粉末、キャニスター、シートフィルム、および小包の形態である。一実施形態では、オーバーラップ202は、例えば、酸素浸透率が約<0.01[cm/(m*d*bar)]で水蒸気浸透率が約<0.01[g/(m*d)]のPolialuvel(登録商標)オーバーラップ、WIPF Management AG CorporationのWipf(登録商標)AGである。
一実施形態では、軟質注入バッグ201中の酸化を受けやすい薬液は、最低で1種のオーバーラップ202と共に湿熱滅菌される。別の実施形態では、酸化を受けやすい薬液を含有する軟質注入バッグ201は、最低で1種のオーバーラップ202と共にまたは1種もしくは複数のオーバーラップと共に湿熱滅菌され、オーバーラップ202は、軟質注入バッグ201内の酸化を受けやすい薬液への酸素、湿気、および/または光の侵入に対するバリヤーをもたらすように構成されている1種もしくは複数の酸素捕捉剤および/または湿気捕捉剤を含む。
本明細書に開示されている安定なすぐ使用できる非経口薬物製品105では、軟質注入バッグ201に充填される酸化を受けやすい薬液の体積は、例えば、約10mL〜約5000mLである。例えば、酸化を受けやすい薬液の体積は、約50mL〜約1000mLである。別の実施形態では、軟質注入バッグ201中の酸化を受けやすい薬液の体積は、約80mL〜約120mLである。一実施形態では、非経口アセトアミノフェン薬物製品中のアセトアミノフェンの力価は、10mg/mLである。
一実施形態では、酸化を受けやすい薬液を充填された軟質注入バッグ201は、最低温度約80℃における湿熱滅菌によって最終滅菌される。別の実施形態では、酸化を受けやすい薬液を充填された軟質注入バッグ201は、最低温度約90℃における湿熱によって最終滅菌される。別の実施形態では、酸化を受けやすい薬液を充填された軟質注入バッグ201は、最低温度約100℃における湿熱によって最終滅菌される。別の実施形態では、酸化を受けやすい薬液を充填された軟質注入バッグ201は、約5分〜約20分間、最低温度約121℃における湿熱によって最終滅菌される。
一実施形態では、本明細書に開示されている酸化を受けやすい薬物製品は、すぐ使用できる、アセトアミノフェンの非経口溶液であり、アセトアミノフェン薬物製品中の最も多い分解生成物は、非経口アセトアミノフェン薬物製品中のアセトアミノフェンのラベル表示量の0.5重量%未満である。一実施形態では、すぐ使用できる非経口アセトアミノフェン薬物製品中の最も多い分解生成物は、非経口アセトアミノフェン薬物製品中の酸化を受けやすいアセトアミノフェン医薬品有効成分の、任意の最も多い不純物の約0.1%以下、例えば、任意の最も多い不純物の約0.08%以下、任意の最も多い不純物の約0.050%以下、任意の最も多い不純物の約0.035%以下、または任意の最も多い不純物の約0.010%以下である。
(実施例1)
アセトアミノフェン薬液の製剤I〜Xの構成成分を以下の表に示す。緩衝剤の選択は、オートクレーブサイクル中の不純物の形成に影響がある。
Figure 2019081767
上記の表に基づいて、以下の製剤の実施例を検討する:
製剤Iは、pH5.5で10mg/mLのアセトアミノフェンを含む。
製剤IIは、pH5.5で10mg/mLのアセトアミノフェン、6.4mg/mLの塩化ナトリウム、1.92mg/mLのクエン酸、および0.86mg/mLの水酸化ナトリウムを含む。
製剤IIIは、pH5.5で10mg/mLのアセトアミノフェン、5.2mg/mLの塩化ナトリウム、3.54mg/mLのクエン酸、および1.79mg/mLの水酸化ナトリウムを含む。
製剤IVは、pH5.5で10mg/mLのアセトアミノフェン、0.58mg/mLの塩化ナトリウム、15.37mg/mLのクエン酸、および8mg/mLの水酸化ナトリウムを含む。
製剤Vは、pH5.5で10mg/mLのアセトアミノフェン、0.48mg/mLのリン酸二ナトリウム、および10.58mg/mLのリン酸一ナトリウム一水和物を含む。
製剤VIは、pH5.5で10mg/mLのアセトアミノフェン、2.68mg/mLのリン酸二ナトリウム、および0.08mg/mLのリン酸一ナトリウム一水和物を含む。
製剤VIIは、pH5.5で10mg/mLのアセトアミノフェン、1.34mg/mLのリン酸二ナトリウム、および0.04mg/mLのリン酸一ナトリウム一水和物を含む。
製剤VIIIは、pH5.5で10mg/mLのアセトアミノフェン、4.8mg/mLの酢酸、および2.82mg/mLの水酸化ナトリウムを含む。
製剤IXは、pH5.5で10mg/mLのアセトアミノフェン、1.15mg/mLの酢酸、および0.69mg/mLの水酸化ナトリウムを含む。
製剤Xは、pH5.5で10mg/mLのアセトアミノフェン、0.57mg/mLの酢酸、および0.34mg/mLの水酸化ナトリウムを含む。
上記表にした製剤I〜Xを、実験室規模で製造した。水中の溶存酸素含有量が百万分率(ppm)未満であることが分かるまで、窒素をバブリングすることによって水を脱酸素化した。薬物製品105に必要とされる最終的な水の約50パーセントを配合容器内に取り入れた。塩および緩衝賦形剤を配合容器に加え、完全に溶解するまで脱酸素水と混合した。水酸化ナトリウムおよび塩化水素(HCl)を用いて溶液のpHを5.5に調整した。別個に、秤量した量のアセトアミノフェンを、最終量の脱酸素水の約20パーセントと約1時間スラリーが形成するまで混合した。このスラリーを主配合容器に加え、加熱によってバルクの温度を約35℃〜45℃に高めた。透明溶液が得られるまで混合を続けた。加熱を止め、非無菌薬液を室温まで冷ました。最終体積を作り上げ、20mLガラスバイアルに充填した。Tuttnauer(登録商標)Brinkmann(登録商標)オートクレーブ内で非無菌薬液を121℃で30分間湿熱滅菌し、60℃で安定性に配置した。
安定性結果:
Figure 2019081767
結論:リン酸緩衝液を含有する製剤は、最大量の不純物を有していた。非緩衝溶液および酢酸塩緩衝溶液は、不純物の量が類似していた。クエン酸塩緩衝溶液は、オートクレービング後の不純物の量が最小であり、9日間の終了時にクエン酸塩緩衝溶液の不純物は、研究した製剤の中で最低であった。
蒸気滅菌サイクル中、2つの異なる事前設定した空気過剰圧において最も多い未知の不純物を以下に示す:
Figure 2019081767
製剤IIは、上記のように製造した。製剤IIを、ポリプロピレンのツイストオフ(twist off:ねじり切る)ポートを備えたポリプロピレン注入バッグに充填した。次いで、異なる空気過剰圧を使用してFedegari FOB3蒸気滅菌器内でポリプロピレン注入バッグをオートクレーブした。より低い事前設定した空気過剰圧は、より高い事前設定した空気過剰圧である約1.2バールにおいてボトル内でオートクレーブしたときの同じ製剤と比較して、より少ない不純物を生じ、より低い不純物レベルをもたらす。図3および図5は、それぞれ事前設定した低空気過剰圧および事前設定した高空気過剰圧によるクロマトグラムを例示的に示す。
図3は、0.2バール〜1.2バールに事前設定した空気過剰圧で、図2に例示的に示した軟質注入バッグ201に充填された、酸化を受けやすい医薬品有効成分を含有する薬液を滅菌した結果を示すクロマトグラムを例示的に示す。約0.2バールで滅菌した試料から得た関連物質のテストクロマトグラムは、図3に例示的に示されている。
図4は、0.2バール〜1.2バールに事前設定した空気過剰圧で、図2に例示的に示した軟質注入バッグ201に充填された、酸化を受けやすい医薬品有効成分を含有する薬液を滅菌したピーク結果を示す表を例示的に示す。図4は、アセトアミノフェンの希釈外部標準に対して測定した場合、保持時間約16.8分(RRT約1.21)における最も多い未知の不純物が約0.03%であることを示す。
図5は、1.2バールよりも高い事前設定した空気過剰圧で、図2に例示的に示した軟質注入バッグ201中に充填された、酸化を受けやすい薬液を湿熱滅菌した結果を示すクロマトグラムを例示的に示す。図5は、約1.2バールで滅菌した試料から得た関連物質のテストクロマトグラムを示す。
図6は、1.2バールよりも高い事前設定した空気過剰圧で、図2に例示的に示した軟質注入バッグ201中に充填された、酸化を受けやすい薬液を湿熱滅菌したピーク結果を示す表を例示的に示す。図6に示す通り、アセトアミノフェンの希釈外部標準に対して測定した場合、保持時間約16.8分(RRT約1.21)における最も多い未知の不純物は、約0.06%である。
(実施例2)
製剤II、IIIおよびIVは、上記で開示されたように調製し、ポリプロピレンのツイストオフポートを備えたポリプロピレン注入バッグに充填した。次いで、0.3バールに事前設定した空気過剰圧で、蒸気滅菌器内でポリプロピレン注入バッグをオートクレーブした。次いで、ポリプロピレン注入バッグを、例えば、Multisorb Technologies,Inc.のD−100 FreshPax(登録商標)などの酸素捕捉剤を含んだPolialuvel(登録商標)アルミニウムオーバーラップ中に包装し、安定性に配置した。
Figure 2019081767
結論:上記実施例2に開示された製剤II、IIIおよびIVは、バイアルと比較してオートクレービング後の不純物のレベルが低く、不純物のレベルは、安定した状態で増大しなかった。酸素捕捉剤を含んだアルミニウムオーバーラップ中に包装することにより、安定性研究中に不純物レベルが低下する。
(実施例3)
製剤XI
Figure 2019081767
上記製剤XIを使って別の実施例を検討する。必要とされる水の合計の約90%、例えば、約450Lを、配合容器に投入した。≦0.5ppmの酸素含量が達成されるまで、窒素をバブリングすることによって水を脱酸素化した。秤量した量のクエン酸を加え、秤量した量のクエン酸が完全に溶解するまで混合した。次いで、塩化ナトリウムを配合容器に加え、塩化ナトリウムが完全に溶解するまで混合した。5N NaOHまたは0.1N HClを用いて溶液のpHを5.5に調整した。35℃〜45℃の温度まで溶液を加熱した。アセトアミノフェンを配合容器に加え、アセトアミノフェンが完全に溶解するまで混合し、加熱を止めた。あらかじめ脱酸素化した水を用いて体積を作り上げて、非無菌薬液を生成した。非無菌薬液(100mL)をポリプロピレン注入バッグに充填し、ポリプロピレンのツイストオフポートを使用して密封した。水カスケードオートクレーブAquatherm(登録商標)3310を使用して、以下のオートクレーブサイクルを実施して、ポリプロピレン注入バッグを最終滅菌した。
Figure 2019081767
未知の不純物の形成は、使用した、時間および事前設定した空気過剰圧に依存することが判明した。約0.1バール〜約1.3バールの事前設定した空気過剰圧を、滅菌段階および冷却段階中にオートクレーブサイクルで使用して、ポリプロピレン注入バッグの破裂を防ぐ。滅菌が、滅菌に使用する時間および温度に主に依存するので、事前設定した空気過剰圧は、オートクレーブサイクル中の未知の不純物の形成と任意の関係があるべきではない。上記の表から、15分および20分の滅菌時間において、滅菌サイクルに使用する事前設定した空気過剰圧の増大に伴って、未知の不純物が増加することが分かっている。
本発明を記載することに関連して、特に以下の特許請求の範囲に関連して、用語「a」および「an」および「the」および類似の指示対象の使用は、本明細書において特に指示がない限り、または文脈によって明らかに否定されない限り、単数または複数の両方を包含すると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」および「含有する(containing)」は、特に記述されない限り、制限のない用語、すなわち、「を含むが、それだけには限定されない」を意味するもの、と解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の詳述は、本明細書において特に指示がない限り、単にその範囲内に含まれるそれぞれ別の値を個々に言及する簡略な方法として役立つものであり、それぞれ別の値が本明細書において個々に記述されたものとして本明細書に組み込まれる。本明細書において記載された全てのプロセスは、本明細書において特に指示がない限り、または文脈によって明らかに否定されない限り、任意の適当な順序で行なうことができる。本明細書で示されている任意および全ての例、または例示的な言葉、例えば、「など(such as)」、の使用は、単に本発明をより良く明らかにするものであり、特に主張がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中の言葉は、任意の特許請求されていない要素が本発明の実施に必須であると示すものとして解釈されるべきではない。
前述の実施例は、単に説明の目的のために示され、決して本明細書に開示された本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。本発明は、種々の実施形態を参照して説明してきたが、本明細書で使用されている単語は、限定する単語ではなく、説明および例示の単語であることが理解されたい。さらに、本発明は、特定の手段、材料、および実施形態に関して本明細書に記載されているが、本発明は、本明細書に開示された詳細に限定されるものではなく;むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるような、全ての機能的に同等な構造、プロセスおよび使用にまで広がる。本明細書の教示の利益を有する当業者は、それに対する多くの変更形態に影響を与える可能性があり、その態様において本発明の範囲および精神から逸脱することなく変更を行なうことができる。その上、その全ての可能な変形形態における上記の要素の任意の組合せは、本明細書において特に指示がない限り、または文脈によって明らかに否定されない限り、本明細書に包含される。

Claims (31)

  1. 湿熱滅菌可能な容器中の酸化を受けやすい医薬品有効成分を含む薬液の湿熱滅菌中の最も多い分解生成物の形成を最小限にするためのプロセスであって、
    空気過剰圧約0.2バール〜約1.2バールにおいて、前記湿熱滅菌可能な容器中の前記薬液を前記湿熱滅菌によって滅菌して、前記酸化を受けやすい医薬品有効成分のラベル表示量の0.5重量%未満の分解を伴って非経口薬物製品を得るステップを含む、プロセス。
  2. 前記湿熱滅菌可能な容器が、プラスチック材料でできた軟質注入バッグであり、前記プラスチック材料が、シクロオレフィンポリマー、ポリプロピレンポリマー、ポリ塩化ビニルポリマー、およびその任意の組合せの1種である、請求項1に記載のプロセス。
  3. 前記湿熱滅菌可能な容器の充填体積が、約20mL〜約1000mLである、請求項1に記載のプロセス。
  4. 被酸化性官能基を有する前記薬液が、アルコール、アルデヒド、ケトン、アルキン、アルケン、スルフィド、チオール、カルボン酸、ベンゾイン、フェノール、キノン、アルキルベンゼン、イミン、エポキシド、および有機金属を含む、請求項1に記載のプロセス。
  5. 前記酸化を受けやすい医薬品有効成分が、アセトアミノフェン、アセチルシステイン、硫酸アミカシン、塩酸ドパミン、塩酸プロメタジン、リネゾリド、およびオキシトシンからなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
  6. 前記薬液がアセトアミノフェン溶液である、請求項1に記載のプロセス。
  7. 前記アセトアミノフェン溶液が水性基剤の等張液である、請求項6に記載のプロセス。
  8. 前記アセトアミノフェン溶液が、約2mM〜約500mMの緩衝剤を含有する、請求項6に記載のプロセス。
  9. 前記アセトアミノフェン溶液のpHが、約5〜約6である、請求項8に記載のプロセス。
  10. 前記アセトアミノフェン溶液が、約2mM〜約500mMの、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、マレイン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、酒石酸緩衝液、フタル酸緩衝液、ギ酸緩衝液、トリス緩衝液、およびその任意の組合せの少なくとも1種を含む、請求項6に記載のプロセス。
  11. 前記湿熱滅菌可能な容器が、1種または複数のオーバーラップ内に封入される、請求項1に記載のプロセス。
  12. 前記1種または複数のオーバーラップが、酸素捕捉剤および湿気捕捉剤の1種または複数を含む、請求項11に記載のプロセス。
  13. 前記1種または複数のオーバーラップが、前記湿熱滅菌可能な容器内の前記薬液への酸素、湿気、および光の1種または複数の侵入に対するバリヤーをもたらすように構成されている、請求項11に記載のプロセス。
  14. 前記薬液を含んだ前記湿熱滅菌可能な容器の前記湿熱滅菌が、水カスケード滅菌および蒸気滅菌の1つによって行なわれる、請求項1に記載のプロセス。
  15. オーバーラップを含みまたは含まず、前記薬液を含む前記湿熱滅菌可能な容器の前記湿熱滅菌が、前記薬液中の微生物バイオバーデンの最低で6対数減少を得るように構成されている温度および時間で行なわれる、請求項1に記載のプロセス。
  16. オーバーラップを含みまたは含まず、前記薬液を含む前記湿熱滅菌可能な容器の前記湿熱滅菌が、最低温度約121℃で行なわれる、請求項1に記載のプロセス。
  17. オーバーラップを含みまたは含まず、前記薬液を含む前記湿熱滅菌可能な容器の前記湿熱滅菌が、約10分〜約30分の時間で行なわれる、請求項1に記載のプロセス。
  18. 前記最も多い分解生成物が、前記酸化を受けやすい医薬品有効成分の約0.01重量%〜約0.5重量%の不純物を含有する、請求項1に記載のプロセス。
  19. 空気過剰圧約0.2バール〜約1.2バールで湿熱滅菌器によって滅菌される、酸化を受けやすい医薬品有効成分および1種または複数の賦形剤の溶液と;
    前記酸化を受けやすい医薬品有効成分のラベル表示量の0.5重量%未満の最も多い分解生成物と
    を含む、非経口薬物製品。
  20. 酸化を受けやすい医薬品有効成分を含む薬液の湿熱滅菌中の最も多い分解生成物の形成を最小限にすることによって、安定なすぐ使用できる非経口薬物製品を調製するためのプロセスであって、
    湿熱滅菌可能な容器を製造するステップと;
    酸化を受けやすい薬液を前記製造した湿熱滅菌可能な容器に充填するステップと;
    前記製造した湿熱滅菌可能な容器に充填した前記酸化を受けやすい薬液を、空気過剰圧約0.2バール〜約1.2バールで、オートクレーブ内で滅菌して、前記安定なすぐ使用できる非経口薬物製品を得るステップと
    を含み、前記安定なすぐ使用できる非経口薬物製品中の最も多い分解生成物が、前記酸化を受けやすい医薬品有効成分のラベル表示量の0.5重量%未満である、プロセス。
  21. 前記湿熱滅菌可能な容器が、軟質注入バッグである、請求項20に記載のプロセス。
  22. 前記湿熱滅菌可能な容器がプラスチック材料でできており、前記プラスチック材料が、シクロオレフィンポリマー、ポリプロピレンポリマー、ポリ塩化ビニルポリマー、およびその任意の組合せの1種である、請求項20に記載のプロセス。
  23. 前記酸化を受けやすい薬液が、アルコール、アルデヒド、ケトン、アルキン、アルケン、スルフィド、チオール、カルボン酸、ベンゾイン、フェノール、キノン、アルキルベンゼン、イミン、エポキシド、および有機金属を含む被酸化性官能基を有する医薬品有効成分を含む、請求項20に記載のプロセス。
  24. 前記酸化を受けやすい医薬品有効成分が、アセトアミノフェン、アセチルシステイン、硫酸アミカシン、塩酸ドパミン、塩酸プロメタジン、リネゾリド、およびオキシトシンからなる群から選択される、請求項20に記載のプロセス。
  25. 前記酸化を受けやすい薬液が、医薬品有効成分としてアセトアミノフェンを含むアセトアミノフェン溶液である、請求項20に記載のプロセス。
  26. 前記アセトアミノフェン溶液が、約2mM〜約500mMの、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、マレイン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、酒石酸緩衝液、フタル酸緩衝液、ギ酸緩衝液、トリス緩衝液、およびその任意の組合せの少なくとも1種を含む、請求項25に記載のプロセス。
  27. 前記アセトアミノフェン溶液のpHが、約5〜約6である、請求項26に記載のプロセス。
  28. 前記湿熱滅菌可能な容器が、1種または複数のオーバーラップでオーバーラップされたプラスチック材料を含み、前記1種または複数のオーバーラップが、前記湿熱滅菌可能な容器内の前記酸化を受けやすい薬液への酸素、湿気、および光の1種または複数の侵入に対するバリヤーをもたらすように構成されている、請求項20に記載のプロセス。
  29. 前記湿熱滅菌可能な容器が、1種または複数の酸素捕捉剤を含む1種または複数のオーバーラップ内に封入される、請求項20に記載のプロセス。
  30. 前記酸化を受けやすい薬液を充填された前記湿熱滅菌可能な容器が、水カスケード滅菌および蒸気滅菌の1つによって湿熱滅菌器内で滅菌される、請求項20に記載のプロセス。
  31. 前記酸化を受けやすい薬液を充填された前記湿熱滅菌可能な容器が、前記酸化を受けやすい薬液中の微生物バイオバーデンの最低で6対数減少を得るように構成されている温度および時間で湿熱滅菌される、請求項20に記載のプロセス。
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