以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1〜図5及び図7〜図11に、本発明の第1実施形態に係る高周波変圧器100を示す。
(構成の概要)
図1〜図5に示すように、本発明の第1実施形態に係る高周波変圧器100は、コア120と、コア120に巻回された一次巻線111及び二次巻線113と、一対のコア冷却体130と、据付部材140とを備えている。一次巻線111及び二次巻線113は、コイル110を構成している。コア120は、複数の帯状の非晶質合金薄帯125により構成されている。一次巻線111は、一次電圧を印加する一次巻線入力用端子112を4つ備えており、いずれか2つの一次巻線入力用端子112間に所定の高周波電圧が一次電圧として印加される。二次巻線113は、二次電圧を取り出す二次巻線出力用端子114を2つ備えており、それら二次巻線出力端子114の間から所望の高周波電圧が二次電圧として出力される。一対のコア冷却体130は、冷媒を用いてコア120を冷却するための装置であり、コア120の前面側と後面側にそれぞれ配置されている。据付部材140は、高周波変圧器100を所望の設置面に設置する(据え付ける)ために使用される部材であり、前面側のコア冷却体130の前面に配置された枠体141aと、後面側のコア冷却体130の後面に配置された枠体141bとを備えている。
(コア)
コア120は、図4と図5(a)及び(b)に示すように、正面から見た形状が矩形環状で所定厚さを持つ同一形状の2つのコアブロック(コア要素)121a及び121bから構成されている。コアブロック121a及び121bは、いずれも、1つまたは複数の帯状の非晶質合金薄帯125を連続的に巻回することで構成される環状積層体を矩形環状に切断して構成されたカットコアである。
コアブロック121a及び121bは、図5(a)及び(b)に示すように、同じ姿勢で全体が横に寝た「8」の字を描くように隣接させた状態で締結バンド123を巻き付けることで、結合・一体化されている。締結バンド123の両端は締結具124で締結されている。コアブロック121a及び121bからなるコアブロック結合体の外周面には、締結バンド123と締結具124が露出している。コアブロック121a及び121bの各々には、矩形の透孔122a及び122bが中央部に形成されている。コアブロック121a及び121bの結合部の両端には、締結バンド123とコアブロック121a及び121bの間に、隙間122c及び122dが形成されている。
コアブロック121aは、切断面121aaで分割された上下2つの部分121a1及び121a2から形成されている。コアブロック121bも、これと同様に、切断面121baで分割された上下2つのコアブロック片121b1及び121b2から形成されている。上位にあるコアブロック片121a2及び121b2は、いずれも、全体形状が略C字状とされている。下位にあるコアブロック片121a1及び121b1は、いずれも、全体形状が略U字状とされている。上位にあるコアブロック片121a2及び121b2の開口部は、それぞれ、下位にあるコアブロック片121a1及び121b1の開口部に対向配置されていて、相互に接合されている。
コアブロック121a及び121bを形成する各々の非晶質合金薄帯125は、いずれも帯状であり、各々の非晶質合金薄帯125の巻回方向(これは延在方向または長手方向でもある)に直交する2つの端縁125aは、図5(c)に示すように、コアブロック121a及び121bの幅方向の2つの側面から外部に露出している。つまり、各コアブロック121a及び121bを構成する帯状の非晶質合金薄帯125は、その巻回方向(これは延在方向または長手方向でもある)に直交する2つの側端(非晶質合金薄帯125の幅方向の2つの側端)にそれぞれ露出端縁125aを有しているのである。なお、後述するように、動作中にコア120内で生じる熱は、これら露出端縁125aを介してコア冷却体130に伝導されてから、冷媒によって外部に放散される。
(コイル)
コイル110を構成する一次巻線111と二次巻線113は、コアブロック121a及び121bの透孔122a及び122bを貫通して、両コアブロック121a及び121bからなるコアブロック結合体の中央にある結合部(コア120の中央部)に巻回されている。したがって、図1、図2及び図4に示すように、その結合部すなわちコア120の中央部は、一次巻線111及び二次巻線113の内側にあり、したがって、外部から見えるのは一次巻線111及び二次巻線113である。一次巻線111及び二次巻線113は、コア120(高周波変圧器100)の前方及び後方にそれぞれ突出している。他方、コア120の左側部及び右側部は、両巻線111及び113の外側にあり、したがって、高周波変圧器100の左方及び右方にそれぞれ露出している。
一次巻線111は、高電気伝導率且つ高熱伝導率の材料からなるパイプ(例えば銅製パイプ)により形成されており、その両端には巻線冷却用ニップル115a及び115bがそれぞれ装着されている。動作中に巻線冷却用ニップル115a及び115bのいずれか一方に外部から冷媒を供給し、他方から排出することで、一次巻線111を冷却することが可能である。同様に、二次巻線113も、高電気伝導率且つ高熱伝導率の材料よりなるパイプにより形成されており、その両端には巻線冷却用ニップル116a及び116bがそれぞれ装着されている。動作中に巻線冷却用ニップル116a及び116bのいずれか一方に外部から冷媒を供給し、他方から排出することで、二次巻線113を冷却することが可能である。
(コア冷却体)
一対のコア冷却体130は、同一の構成とされており、コア120の前面と後面にそれぞれ密着状態で固定(装着)されている。各コア冷却体130は、図7に示すような略矩形の薄い平板状の全体構成を有しており、3つの熱伝導部材131a、131b及び131cと、3つの冷媒案内部材132a、132b及び132cとを備えている。コア冷却体130は1つだけ設けるようにしてもよい。しかし、2つのコア冷却体130をコア120の前面と後面から挟み込むように装着するのが好ましい。冷却性能が倍増するからである。コア120に装着するコア冷却体130の総数は任意であるから、必要に応じて、3つあるいはそれ以上としてもよい。
冷媒案内部材132a、132b及び132cは、外部から供給される冷媒を、コア冷却体130のコア120に対向する対向面に設定された所定の冷媒流路に沿って案内する機能を持っており、前記冷媒流路に沿ってそれぞれ配置されている。前記冷媒流路の位置は、コア120の外面には限定されない。コア120の内面に設定してもよいことは言うまでもない。前記冷媒流路を流動する冷媒によってコア120を冷却できるものであれば、前記冷媒流路は任意の位置に設定可能であるし、前記冷媒流路の形状も任意に設定可能である。冷媒案内部材132a、132b及び132cの形状や大きさや総数は、前記冷媒流路に応じて任意に設定すればよい。
熱伝導部材131a、131b及び131cは、コア120から受け取った熱を対応する冷媒案内部材132a、132b及び132cに伝導する機能を持っており、対応する冷媒案内部材132a、132b及び132cのそれぞれの外周に沿って延在している。熱伝導部材131a、131b及び131cとそれらに対応する冷媒案内部材132a、132b及び132cとは、それらのほぼ全長に亘って密着状態で相互に接合されている。これは、熱伝導部材131a、131b及び131cから対応する冷媒案内部材132a、132b及び132cへの熱伝導が効率的に行われるようにするためである。
熱伝導部材131a、131b及び131cは、上述したように、コア120から熱を受け取って冷媒案内部材132a、132b及び132cに伝導するという機能(熱伝導中継機能)を持たせるために設けられているから、その必要がなければ、あるいは、設置の必要性が低ければ、省略してもよい。熱伝導部材131a、131b及び131cを省略した場合、熱伝導部材131a、131b及び131cが覆っていた領域には、例えば、冷媒案内部材132a、132b及び132cをいっそう幅広い形状にして、前記領域の少なくとも一部をも覆うようにしてもよいし、熱伝導部材131a、131b及び131cと同様の形状を有する他の冷媒案内部材を追加して、前記領域を覆うようにしてもよい。こうすれば、熱伝導効率が(コア冷却効率)が、熱伝導部材131a、131b及び131cを設けた場合とほぼ同等になる。
ここでは、熱伝導部材131a、131b及び131cは銅製の板材から形成され、冷媒案内部材132a、132b及び132cは銅製の偏平なパイプ(管材)から形成されている。これは、銅製の板材や管材は熱伝導率が高い(良好な熱伝導性を持つ)ため、コア120の内部で生じる熱を、熱伝導部材131a、131b及び131cを介して間接的に冷媒案内部材132a、132b及び132cの内部を流動する冷媒に伝導させたり、熱伝導部材131a、131b及び131cを介することなく直接的に冷媒案内部材132a、132b及び132cの内部を流動する冷媒に伝導させたりするのに有利だからである。したがって、熱伝導率が高い(良好な熱伝導性を持つ)材料であれば、銅製の板材や管材以外の材料を使用してもよいことは言うまでもない。また、熱伝導部材131a、131b及び131cと冷媒案内部材132a、132b及び132cの形状も、任意に設定可能である。
熱伝導部材131aは、図7及び図11に示すように、略U字状に加工された銅製の板材から形成されており、その2本の腕部の一方(図7(b)では右側の腕部)が他方(図7(b)では左側の腕部)よりも少し短くされている。この形状は、図5(a)の左側に示されたコアブロック121aの矩形環状の側面に重なり合うように設定したものである。熱伝導部材131aの内側には、略矩形の透孔134aが形成されている。熱伝導部材131aの外周面には、その外周面に沿って密着状態で延在し、熱伝導部材131aと同じ厚さとした冷媒案内部材132aが、ロウ付け等によって固着されている。このため、冷媒案内部材132aも、熱伝導部材131aと同様の略U字状に屈曲された形状を有している。冷媒案内部材132bの2本の腕部の一方(図7では右側の腕部)は、他方(図7では左側の腕部)よりも少し短い。図8及び図4に示すように、熱伝導部材131a及び冷媒案内部材132aは、図5(a)の左側に示されたコアブロック121aの矩形環状の側面全体に重なり合うようになっている。熱伝導部材131aの透孔134aは、コアブロック121aの矩形の透孔122aに重なり合うようになっている。
熱伝導部材131bは、熱伝導部材131aと同様に、略U字状に加工された銅製の板材から形成されているが、熱伝導部材131aとは逆に、その2本の腕部の一方(図7(b)では右側の腕部)が他方(図7(b)では左側の腕部)よりも少し長くされている。この形状は、図5(a)の右側に示されたコアブロック121bの矩形環状の側面に重なり合うように設定したものである。熱伝導部材131bの内側には、略矩形の透孔134bが形成されている。熱伝導部材131bの外周面には、その外周面に沿って密着状態で延在し、熱伝導部材131bと同じ厚さの冷媒案内部材132bが、ロウ付け等によって固着されている。このため、冷媒案内部材132bも、熱伝導部材131bと同様の略U字状に屈曲された形状を有している。冷媒案内部材132bの2本の腕部の一方(図7では左側の腕部)は、他方(図7では右側の腕部)よりも少し短い。図8及び図4に示すように、熱伝導部材131b及び冷媒案内部材132bは、図5(a)の右側に示されたコアブロック121bの矩形環状の側面全体に重なり合うようになっている。熱伝導部材131bの透孔134bは、コアブロック121bの矩形の透孔122bに重なり合うようになっている。
上述した構成を持つ2つの熱伝導部材131a及び131bは、それらの冷媒案内部材132a及び132bの内側部分を間に挟むようにして、1つの平面(図7では垂直面)上に同じ立位姿勢で相互に隣接して配置されており、その状態でロウ付け等によって相互に接合・一体化されている。上下方向に延在する2つの冷媒案内部材132a及び132bの内側部分同士は、図示しない連通部によって相互に連通しており、外部から供給される冷媒は冷媒案内部材132a及び132bのいずれか一方の内側部分から他方の内側部分に連続して流動可能となっている。つまり、冷媒案内部材132a及び132bの内側部分同士は互いに連通しているのである。また、前記内側部分に続く冷媒案内部材132aの中央部分は、熱伝導部材131aの外周面に沿って、外側に向かって(図7では水平方向に)延在している。さらに、前記中央部分に続く冷媒案内部材132aの外側部分は、熱伝導部材131aの外周面に沿って(図7では上下方向に)延在しており、その上端部は開口している。その上端部の開口には、連結部133aが形成されていて、連結部133aを介して冷媒案内部材132aから外部に冷媒が流出し、または冷媒案内部材132aに外部から冷媒が流入可能となっている。同様に、前記内側部分に続く冷媒案内部材132bの中央部分は、熱伝導部材131bの外周面に沿って、外側に向かって(図7では水平方向に)延在している。さらに、前記中央部分に続く冷媒案内部材132bの外側部分は、熱伝導部材131bの外周面に沿って(図7では上下方向に)延在しており、その上端部は開口している。その上端部の開口には、連結部133bが形成されていて、連結部133bを介して冷媒案内部材132bから外部に冷媒が流出し、または冷媒案内部材132bに外部から冷媒が流入可能となっている。
熱伝導部材131cは、熱伝導部材131a及び131bと同様に、直線状の銅製の板材から形成されている。熱伝導部材131cは、熱伝導部材131aの長い方の腕の内面側とそれに対向する熱伝導部材131bの長い方の腕の内側面との間に延在しており、熱伝導部材131a及び131bの短い方の腕の上端面の上に載せられたような状態にある。熱伝導部材131cの全長は、熱伝導部材131a及び131bの長い方の腕の内側面間の距離にほぼ等しい。熱伝導部材131cの左右の端面と、それらに対向する熱伝導部材131a及び131bの長い方の腕の内側面との間には、それぞれ、隙間が設けられている。熱伝導部材131cの下側面と、それに対向する熱伝導部材131a及び131bの短い方の腕の上端面との間には、それぞれ、隙間が設けられている。熱伝導部材131cの下側面と、それに対向する冷媒案内部材132a及び132bの短い方の腕の上端面の間には、小さな隙間が設けられている。熱伝導部材131cの外側面(図7では上側面)にも、その外面に沿って密着状態で延在するほぼ直線状の冷媒案内部材132cがロウ付け等によって固着されている。冷媒案内部材132cの両端部の開口は、上方に向けて湾曲されており、その両端部の開口には連結部133cがそれぞれ形成されていて、冷媒がいずれかの連結部133cを介して冷媒案内部材132cから外部に流出し、または冷媒案内部材132cに外部から冷媒が流入可能となっている。熱伝導部材131cと冷媒案内部材132cは、熱伝導部材131a及び131bと冷媒案内部材132a及び132bが配置された平面(図7では垂直面)上にある。
以上述べたように、コア冷却体130は、3つの熱伝導部材131a、131b及び131cと3つの冷媒案内部材132a、132b及び132cとを、同一平面(図7では垂直面)上で図7に示したレイアウトで接合・一体化することにより構成されている。コア冷却体130の全体形状は、図7に示すように、連結部133a、133b及び133cを除き、コア120に比べて十分薄い板状とされている。これは、コア冷却体130が占有するスペースに起因して、高周波変圧器100のサイズがあまり増加しないようにするためである。
コア冷却体130の冷媒案内部材132a、132b及び132cの先端部(連結部133a、133b及び133cを含む)は、図1及び図2に示すように、コア120の上面よりも上方に少し突出している。図1の左側にある冷媒案内部材132aの連結部133aと、それに近接する冷媒案内部材132cの連結部133cは、半円形状に湾曲した中継パイプ135によって相互接続されている。この中継パイプ135により、3つの冷媒案内部材132a、132b及び132cは直列に相互接続されたことになる。冷媒案内部材132cの中継パイプ135が接続されていない方の連結部133cには、コア冷却用ニップル136bが接続されている。コア冷却用ニップル136bに隣接する位置にある冷媒案内部材132bの連結部133bには、コア冷却用ニップル136aが接続されている。このように構成することで、冷媒がコア冷却用ニップル136a及び136bのいずれか一方から冷媒案内部材132a、132b及び132cの内部に供給され、他方から外部に排出されるようにしている。
冷媒は、高周波変圧器100の動作中ずっと、冷媒案内部材132a、132b及び132cの内部を循環せしめられる。冷媒は、例えば、最初に、冷媒案内部材132bの連結部133bに接続されたコア冷却用ニップル136aから、冷媒案内部材132bの内部に流入し、略U字状の冷媒案内部材132b(これはコアブロック121bに対向する位置にある)に沿って流動する。その後、冷媒案内部材132aの内部に流入し、略U字状の冷媒案内部材132a(これはコアブロック121aに対向する位置にある)に沿って流動する。続いて、中継パイプ135を介して冷媒案内部材132cの内部に流入し、直線状の冷媒案内部材132c(これはコアブロック121a及び121bの上端部に対向する位置にある)に沿って流動してから、冷媒案内部材132cの連結部133cに接続されたコア冷却用ニップル136bから外部に流出する。冷媒の流動方向は、これとは逆でもよい。
冷媒は、上述したようにして、3つの冷媒案内部材132a、132b及び132cの内部空間S(図11を参照)を順に流動するので、上述した冷媒流路は、これら冷媒案内部材132a、132b及び132cとほぼ同じ形状になる。
図4及び図11に明瞭に示すように、コア冷却体130を構成する3つの熱伝導部材131a、131b及び131cと3つの冷媒案内部材132a、132b及び132cのいずれもが、コア120を構成する2つのコアブロック121a及び121bの前面と後面に対して、密着した状態で固定されている。このため、コアブロック121a及び121bの内部で発生した熱は、(i)熱伝導部材131a、131b又は131cを経由して対応する冷媒案内部材132a、132b又は132cに熱伝導し、その後、冷媒案内部材132a、132b又は132cの内部を流動する冷媒に熱伝導するという経路(間接経路)と、(ii)熱伝導部材131a、131b又は131cを経由せず、冷媒案内部材132a、132b又は132cに直接的に熱伝導し、その後、冷媒案内部材132a、132b又は132cの内部を流動する冷媒に熱伝導するという経路(直接経路)の双方を通って、外部に放散されることができる。
以上の構成を持つコア冷却体130は、一対となって、コア120を構成する2つのコアブロック121a及び121bの前面及び後面にそれぞれ固定されている。コアブロック121a及び121bの前面及び後面には、それらを構成する非晶質合金薄帯125の巻回方向に沿って延在する露出端縁125a(図5(c)参照)が露出しているが、それら露出端縁125aは、コア冷却体130を構成する熱伝導部材131a、131b及び131cと冷媒案内部材132a、132b及び132cの対向面に対して、単に接触しているだけではない。熱伝導部材131a、131b及び131cと冷媒案内部材132a、132b及び132cの対向面の全体には、熱伝導率が高い(熱伝導性の良い)電気的絶縁性接着剤137が膜状に塗布・硬化されており、その電気的絶縁性接着剤137によって当該対向面に接着されているのである。これは、非晶質合金薄帯125の露出端縁125aから当該対向面への熱伝導を向上させるためである。高熱伝導率の電気的絶縁性接着剤137としては、例えば、熱伝導性RTVシリコーンゴムが使用可能であるが、これに限定されるわけではない。
例えば、図11に示すように、コアブロック121bの部分121b1の後面には、複数の非晶質合金薄帯125の露出端縁125aが存在していて、それら露出端縁125aは、熱伝導部材131bと冷媒案内部材132bの対向面に接触している。非晶質合金薄帯125は、それらの先端面を揃えられずに使用されているため、露出端縁125aと当該対向面との間には小さな隙間160が存在することが多く、したがって、露出端縁125aから当該対向面への熱伝導は非常に悪い。そこで、この問題を、当該対向面に高熱伝導率の電気的絶縁性接着剤137を膜状に塗布・硬化することで解決している。電気的絶縁性接着剤137の膜厚は、少なくとも、すべての隙間160を充填できる程度とするのが好ましい。その結果、不揃い状態にある露出端縁125aであっても、熱伝導部材131bと冷媒案内部材132bの対向面に単に接触するのではなく、電気的絶縁性接着剤137によって当該対向面に密着状態で強固に接合されることになるから、露出端縁125aから当該対向面への熱伝導特性を格段に向上させることができる。なお、電気的絶縁性接着剤137の膜は、隙間160が存在する箇所にとどまらず、当該対向面の全体を覆うように形成することで、熱伝導特性がより向上すると同時に、コア120の露出端面の電気的絶縁をも確保することができる。
コアブロック121a及び121bを構成する非晶質合金薄帯125の露出端縁125aは、図4及び図5に示すように、コアブロック121a及び121bの全体に亘って延在しているため、コアブロック121a及び121b(コア120)で生じる熱は、非晶質合金薄帯125の内部をその幅方向に伝導した後、その露出端縁125aから、熱伝導率が高い電気的絶縁性接着剤137を介して、一対のコア冷却体130に効率的に伝導されることができる。
なお、コア120の前面と後面に一対のコア冷却体130を装着した状態では、コアブロック121a及び121bの透孔122a及び122bは、それぞれ、各コア冷却体130の2つの透孔134a及び134bとほぼ重なり合っているため(図8参照)、コア120の前面と後面に一対のコア冷却体130が追加されていても、一次巻線111と二次巻線113をコアブロック121a及び121bの結合部に巻回(装着)する際に、何ら問題は生じない。
(据付部材)
据付部材140を構成する一対の枠体141a及び141bは、図9及び図10に示す構成を有している。両図から明らかなように、枠体141a及び141bの構成は同じである。コア120の前面側に配置された枠体141aは、矩形枠状の中央部141aaと、中央部141aaに対して前方に向かって直角に屈曲された下位鍔部141ab及び上位鍔部141acとから形成されている。上位鍔部141acの略中央には、運搬用アイボルト142aが固定されている。一次巻線111は、枠体141aの中央にある矩形透孔141adを通って前方に突出している。コア120の後面側に配置された枠体141bは、矩形枠状の中央部141baと、中央部141baに対して後方に向かって直角に屈曲された下位鍔部141bb及び上位鍔部141bcとから形成されている。上位鍔部141bcの略中央には、運搬用アイボルト142bが固定されている。二次巻線113は、枠体141bの中央にある矩形透孔141bdを通って前方に突出している。据付部材140は、例えば、一対の枠体141a及び141bの間に一対のコア冷却体130とコア120を挟み込んだ状態(図1及び図2参照)で、それらの周囲に強靱なテープ(図示せず)を巻回することで、コア冷却体130及びコア120と一体化される。しかし、これには限定されない。例えば、ロウ付けまたはボルト等によって、据付部材140をコア冷却体130に固着するようにしてもよい。なお、枠体141a及び141bの下位鍔部141ab及び141bbは、高周波変圧器100を設置する際に設置状態を安定化するための部品(鍔状の安定化部品)として機能する。
(動作)
次に、以上の構成を持つ第1実施形態に係る高周波変圧器100の動作について説明する。
高周波変圧器100を使用する際には、据付部材140の運搬用アイボルト142にワイヤ等を引っ掛けて運搬し、水平な設置面に設置する。必要に応じて、据付部材140の下位鍔部141ab及び141bbを設置面にボルト止めし、安定化させる。その時の状態(設置状態)は図1及び図2に示すようになる。この状態で、一次巻線111のいずれか2つの入力用端子112の間に高周波の一次電圧(例えば10kHz、1000V、1000kVA)を供給すると、所定の変圧比で一次電圧を変圧してなる高周波の二次電圧(例えば10kHz、100V、1000kVA)が、二次巻線113の2つの出力用端子114から出力される。
高周波変圧器100の動作中はずっと、ニップル136a及び136bのいずれか一方を介して、外部から一対のコア冷却体130に冷媒(例えば純水)を供給し、他方を介して排出させることで、対応する冷媒案内部材132a、132b及び132cの中に冷媒を循環させるようにする。こうすることで、非晶質合金薄帯125を用いたカットコアからなるコア120を一対のコア冷却体130によって効果的に冷却することが可能となる。これと同時に、巻線冷却用ニップル115a及び115bのいずれか一方に外部から冷媒(例えば純水)を供給し、他方から排出することで、一次巻線111を冷却し、また、巻線冷却用ニップル116a及び116bのいずれか一方に外部から同じ冷媒を供給し、他方から排出することで、二次巻線113を冷却する。
高周波変圧器100の動作中におけるコア120の冷却は、次のようにして行われる。すなわち、コア120を構成する2つのコアブロック121a及び121bの非晶質合金薄帯125は、図5に示すように矩形枠状に巻回されているが、それら露出端縁125aは、図4及び図11に示すように、各々のコア冷却体130を構成する熱伝導部材131a、131b及び131cと冷媒案内部材132a、132b及び132cの対向面に対して、単に接触しているだけでなく、当該対向面の全体に膜状に形成された高熱伝導率の電気的絶縁性接着剤137によって、当該対向面に接着されている。このため、当該対向面に接触している露出端縁125aについては、非晶質合金薄帯125の内部で発生した熱は、熱伝導部材131a、131b及び131cと冷媒案内部材132a、132b及び132cに直接的に伝導する。しかも、電気的絶縁性接着剤137によって露出端縁125aと当該対向面との密着度が高まるため、その熱伝導効率は向上する。他方、隙間160の存在によって当該対向面に接触していない露出端縁125aについては、非晶質合金薄帯125の内部で発生した熱は、電気的絶縁性接着剤137を介して、熱伝導部材131a、131b及び131cと冷媒案内部材132a、132b及び132cに間接的に伝導することが可能である。しかも、その熱伝導効率は、露出端縁125aが当該対向面に接触している直接的な熱伝導の場合に近づく。
したがって、コア120すなわちコアブロック121a及び121bの内部で発生した熱は、主として非晶質合金薄帯125の面内方向に伝導して、その露出端縁125aから熱伝導部材131a、131b及び131cと冷媒案内部材132a、132b及び132cとに効率的に伝導する。そして、冷媒案内部材132a、132b及び132cに伝導した熱は、それらの内部空間S(図11を参照)を循環する冷媒(図示せず)に直ちに吸収されて運搬され、その冷媒の循環に伴って高周波変圧器100の外部に放散される。また、熱伝導部材131a、131b及び131cに伝導した熱は、対応する冷媒案内部材132a、132b及び132cにそれぞれ伝導してから、冷媒案内部材132a、132b及び132cの内部空間Sを循環する冷媒に吸収され、その冷媒の循環に伴って高周波変圧器100の外部に放散される。このように、高周波変圧器100では、コア120の内部で発生する熱を、コア120の前後面に装着された一対のコア冷却体130とそれらの内部を循環する冷媒によって高効率で外部に放散することができるから、冷媒冷却式の冷却構造で効率的にカットコアよりなるコア120を冷却することが可能となる。
(作用効果)
以上詳細に述べたように、本発明の第1実施形態に係る高周波変圧器100では、コア120を構成する非晶質合金薄帯125が、一対のコア冷却体130の側に露出した露出端縁125aを有している。また、一対のコア冷却体130の各々が、外部から供給される冷媒を各コア冷却体130のコア120との対向面に設定された冷媒流路に沿って案内する冷媒案内部材132a、132b及び132cと、冷媒案内部材132a、132b及び132cの内周に密着状態でそれぞれ固定された熱伝導部材131a、131b及び131cとを有している。コア120を構成する非晶質合金薄帯125の露出端縁125aは、熱伝導部材131a、131b及び131cの対向面と、冷媒案内部材132a、132b及び132cの対向面とに、高い熱伝導性と電気絶縁性を持つ接着剤137を用いて接合されている。そして、高周波変圧器100の動作中にコア120(非晶質合金薄帯125)の内部で発生する熱を、非晶質合金薄帯125の露出端縁125aから直接的に冷媒案内部材132a、132b及び132cに伝導させると共に、熱伝導部材131a、131b及び131cを経由して対応する冷媒案内部材132a、132b及び132cに間接的に伝導させ、さらに、冷媒案内部材132a、132b及び132cに伝導した熱を、冷媒案内部材132a、132b及び132cの内部(すなわち所定の冷媒流路)を流動する冷媒によって、外部に放散するようになっている。
また、コア120を構成する非晶質合金薄帯125の露出端縁125aの不揃い等に起因して、露出端縁125aと、熱伝導部材131a、131b及び131cと冷媒案内部材132a、132b、132cの対向面との間には、隙間160が存在することが多く、露出端縁125aから熱伝導部材131a、131b及び131cと冷媒案内部材132a、132b、132cへの熱伝導効率が低下することが多い。しかし、露出端縁125aは、高い熱伝導性と電気絶縁性を持つ接着剤137を用いて前記対向面に接合されているため、例えば前記対向面への接着剤137の塗布量を適切に調整することにより、隙間160を接着剤137によって完全に充填された状態にすることが容易である。したがって、コア120で生じる熱は、接着剤137を通じて露出端縁125aから前記対向面に効率的に伝導する。必要な場合には、接着剤137によって露出端縁125aと前記対向面の間の電気的絶縁処理も同時に行える。
しかも、コア120で生じる熱のほとんどは、非晶質合金薄帯125をその面内方向に伝導して露出端縁125aを介して一対のコア冷却体130に到達するため、非晶質合金薄帯125の積層時または巻回時に隣接する非晶質合金薄帯125間に生じた隙間によって、非晶質合金薄帯125の巻回方向(長手方向または延在方向)に直交する方向への伝熱効率が低下しても、コア120を冷却する上での問題は生じない。
以上述べた理由により、本発明の第1実施形態に係る高周波変圧器100によれば、非晶質合金薄帯125よりなるコア120(カットコア)を冷媒冷却式で効果的に冷却することができる、つまり、冷媒冷却式で所望のコア冷却効果を得ることができるのである。
また、本第1実施形態に係る高周波変圧器100は、コア120を構成するコアブロック121a及び121bが、1つまたは複数の帯状の非晶質合金薄帯125を連続的に巻回することで構成される環状積層体を矩形環状に切断してなるカットコアであるが、コア120が1または複数の帯状の非晶質合金薄帯125を一方向に積層して構成される積層式コアであっても、コア120を冷却する機能は同じように発揮される。よって、コア120が積層式コアであっても、同じ冷却構造を利用することができる。
さらに、冷媒冷却式で所望のコア冷却効果を得ることができるので、磁束密度を従来よりも大きく設計することで、コア120を従来よりも小型化することが可能である。
(第1実施形態の変形例)
図6に、上述した本発明の第1実施形態に係る高周波変圧器100の変形例に使用したコア120Aを示す。この変形例では、図5に示したコア120の代わりに図6のコア120Aが使用されている点を除き、上述した第1実施形態に係る高周波変圧器100と同じ構成及び機能を持つ。
コア120Aは、図6に示すように、平面形状が矩形環状で所定厚さを持つ2つのコアブロック(コア要素)121Aa及び121Abから構成されている。
コアブロック121Aaは、第1実施形態に係る高周波変圧器100のコアブロック121aと同じカットコアから構成されているが、コアブロック121aとは異なり、2つの切断面121Aaaで分割された上中下3つの部分121Aa1、121Aa2及び121Aa3から形成されている。コアブロック121Abも、これと同様に、第1実施形態に係る高周波変圧器100のコアブロック121bと同じカットコアから構成されているが、コアブロック121bとは異なり、2つの切断面121Abaで分割された上中下3つの部分121Ab1、121Ab2及び121Ab3から形成されている。上位と下位にあるコアブロック片121Aa1及び121Aa2とコアブロック片121Ab1及び121Ab2は、いずれも、全体形状が略C字状とされている。中央にあるコアブロック片121Aa3と121Ab3は、いずれも、全体形状が所定間隔で平行に保持された2本の直線を組み合わせた形状とされている。上位と下位にあるコアブロック片121Aa1及び121Aa2の開口部は、それぞれ、中央にあるコアブロック片121Aa3の開口部に対向配置されていて、相互に接合されている。同様に、上位と下位にあるコアブロック片121Ab1及び121Ab2の開口部は、それぞれ、中央にあるコアブロック片121Ab3の開口部に対向配置されていて、相互に接合されている。このようにすることで、コアブロック121Aa及び121Ab(コア120A)の全体形状を、上記第1実施形態に係る高周波変圧器100のコアブロック121a及び121b(コア120)のそれと同じ矩形枠状としている。
2つのコアブロック121Aa及び121Abは、第1実施形態に係る高周波変圧器100のコア120と同様に、同じ姿勢で全体が横に寝た「8」の字を描くように隣接させた状態で、締結バンド123及び締結具124によって結合・一体化されることで、コア120Aとなっている。コアブロック121Aa及び121Abの各々は、矩形の透孔122a及び122bを中央部に備えており、コアブロック121Aa及び121Abからなるコアブロック結合体の外周面には、締結バンド123と締結具124が露出している。この点は、上記第1実施形態に係る高周波変圧器100のコア121a及び121bと同じである。
このように、本発明では、コア120、120Aは、非晶質合金薄帯125を用いたものであればよく、コア120、120Aの構成、例えばコアブロックの形状や数、各コアブロックを構成するコアブロック片の形状や数、コアブロックやコアブロック片の組み合わせ方等は、任意に変更が可能である。また、コア120、120Aは、非晶質合金薄帯125を用いたものに限定されるものではなく、珪素鋼板を用いたもの(カットコアや積層式コア)でもよい。また、コア120、120Aの構成に応じて、コア冷却体130の構成や数を任意に変更することが可能であることは言うまでもない。さらに、一次巻線111と二次巻線113のコア120、120Aへの装着形態は、必要に応じて任意に変更可能である。
(第2実施形態)
図12〜図16及び図18〜図19に、本発明の第2実施形態に係る高周波変圧器200を示す。
(構成の概要)
図12〜図16に示すように、本発明の第2実施形態に係る高周波変圧器200は、コア220と、コア220に巻回された一次巻線211及び二次巻線213と、コア220の外側面にそれぞれ配置された一対のコア冷却体230Aと、コア220の内側面にそれぞれ配置された一対のコア冷却体230Bと、コア220の上下面にそれぞれ配置されたコア冷却体235及び236とを備えている。一次巻線211及び二次巻線213は、コイル210を構成している。コア冷却体230A、230B、235及び236は、冷媒を用いてコア220を冷却するための装置であり、その総数は6個である。なお、上記第1実施形態に係る高周波変圧器100に備えられている据付部材140に相当する部材は設けられていない。コア冷却体235及び236が据付部材の機能を果たすように構成されているからである。
コア220は、複数の帯状(矩形)の非晶質合金薄帯225(図19を参照)を一方向に積層して構成された積層式コアである。この点で、2個(一対)のコア冷却体130が設けられており、また、コア120が非晶質合金薄帯125を用いたカットコアである上記第1実施形態に係る高周波変圧器100とは異なっている。
一次巻線211は、一次電圧を印加する一次巻線入力用端子212を4つ備えており、いずれか2つの一次巻線入力端子212間に所定の高周波入力電圧が印加される。二次巻線213は、二次電圧を取り出す二次巻線出力用端子214を2つ備えており、それら二次巻線出力端子214間から所定の高周波出力電圧が出力される。この点は上記第1実施形態と同じである。
(コア)
コア220は、図16(a)及び(b)に示すように、平面形状が直線状(「I」字状)で所定厚さを持つ(直方体状の)5つのコアブロック(コア要素)221a、221b、221c、221d及び221eから構成されている。コア220の全体形状は、漢字の「日」を横向きにした(90°回転させた)形状となっている。コアブロック221a、221b、221c、221d及び221eは、いずれも、矩形の複数の非晶質合金薄帯225を同一方向に積層して電気絶縁性の接着剤で固着してなる積層式コアである。
コアブロック221c及び221dは、水平方向に延在していると共に間隔をあけてコア220の上端及び下端に配置され、それらの間に残りのコアブロック221a、221b及び221eが等間隔で、コアブロック221c及び221dに直交するように(上下方向に延在するように)配置されている。2つのコアブロック221a及び221bは、コア220の左端及び右端にそれぞれ配置され、残りのコアブロック221eはコア220の中央に配置されている。上下方向に延在するコアブロック221a、221b及び221eの上端部と下端部は、それぞれ、上位にあるコアブロック221cの下側面と下位にあるコアブロック221dの上側面とに、電気絶縁性の接着剤(図示せず)によって固着されている。4つのコアブロック221a、221c、221e及び221dで囲まれた領域には、矩形の透孔222aが形成され、4つのコアブロック221b、221c、221e及び221dで囲まれた領域には、矩形の透孔222bが形成されている。このように、第2実施形態に係る高周波変圧器200では、コアブロック221a、221b、221c、221d及び221eが積層式コアから構成されているので、コアブロック121a及び121bがカットコアから構成されている上記第1実施形態に係る高周波変圧器100とは異なっている。
コアブロック221a、221b、221c、221d及び221eを形成する各々の非晶質合金薄帯225は、いずれも矩形の平坦な帯状であり、各々の非晶質合金薄帯225の延在方向(長手方向)に直交する2つの端縁225aは、図16(c)に示すように、各コアブロック221a、221b、221c、221d及び221eの幅方向の2つの側面から外部に露出している。つまり、各コアブロック221a、221b、221c、221d及び221eを構成する帯状の非晶質合金薄帯225は、その延在方向(これは長手方向でもある)に直交する2つの側端(非晶質合金薄帯225の幅方向の2つの側端)にそれぞれ露出端縁225aを有しているのである。なお、後述するように、動作中にコア220内で生じる熱は、これら露出端縁225aを介してコア冷却体230A、230B、235及び236に伝導されてから、冷媒によって外部に放散される。
(コイル)
コイル210を構成する一次巻線211と二次巻線213は、コア220の透孔222a及び222bを貫通して、コア220(すなわち中央のコアブロック221eの外周)に巻回されている。したがって、図12、図13及び図15に示すように、コア220の中央部(中央のコアブロック221e)は一次巻線211及び二次巻線213の内側にあり、したがって、外部からは見えない。一次巻線211及び二次巻線213は、コア220(高周波変圧器200)の前方及び後方にそれぞれ突出している。他方、コア220の左側面及び右側面は、両巻線211及び213の外側にあり、したがって、高周波変圧器200の左方及び右方にそれぞれ露出している。
一次巻線211は、高電気伝導率且つ高熱伝導率の材料からなるパイプ(例えば銅製パイプ)により形成されており、その両端には巻線冷却用ニップル215a及び215bがそれぞれ装着されている。動作中に巻線冷却用ニップル215a及び215bのいずれか一方に外部から冷媒を供給し、他方から排出することで、一次巻線211を冷却することが可能である。同様に、二次巻線213も、高電気伝導率且つ高熱伝導率の高熱伝導率材料よりなるパイプにより形成されており、その両端には巻線冷却用ニップル216a及び216bがそれぞれ装着されている。動作中に巻線冷却用ニップル216a及び216bのいずれか一方に外部から冷媒を供給し、他方から排出することで、二次巻線213を冷却することが可能である。
(コア冷却体)
一対のコア冷却体230Aは、同一の構成とされており、高熱伝導率の電気的絶縁性接着剤237を用いて、コア220の2つの外側面(左端にあるコアブロック221aの左側面と右端にあるコアブロック221bの右側面)にそれぞれ密着状態で固定(装着)されている。各コア冷却体230Aは、図18(a)に示すような略矩形の薄い平板状の全体構成を有しており、略矩形の薄板状の熱伝導部材231aと、熱伝導部材231aの外周縁に沿って延在する冷媒案内部材232aと、冷媒案内部材232aに設けられた2つの開口部(図示せず)にそれぞれ装着された2つのニップル233aとを備えている。冷媒案内部材232aは、ロウ付けなどによって熱伝導部材231aの外周縁に固定されている。熱伝導部材231aと冷媒案内部材232aは、コア220の対応する外側面の全体を覆っている。2つのニップル233aは、冷媒案内部材232aに対する冷媒の供給・排出用として設けられていて、それらの位置は熱伝導部材231a(コア冷却体230A)の一方の長辺の中央部とされている。冷媒を一方のニップル233aから供給すると、冷媒は冷媒案内部材232aを流動して他方のニップル233aから排出されるようになっている。冷媒案内部材232aの厚さは、熱伝導部材231aのそれにほぼ等しくされている。これは、冷媒案内部材232aと熱伝導部材231aをコアブロック221aの外側面全体に密着させて、コアブロック221aからコア冷却体230Aへの熱伝導効率を可能なかぎり高めるためである。
冷媒案内部材232aは、外部から供給される冷媒を、コア220の外側面に対向するコア冷却体230Aの対向面に設定された所定の冷媒流路に沿って案内する機能を持っており、前記冷媒流路に沿ってそれぞれ配置されている。前記冷媒流路の位置は、コア220の外側面に対向する箇所に限定されない。前記冷媒流路を流動する冷媒によってコア220を冷却できるものであれば、前記冷媒流路は任意の位置に設定可能であるし、前記冷媒流路の形状も任意に調整可能である。冷媒案内部材232aの形状や総数は、前記冷媒流路に応じて任意に設定すればよく、必要に応じて任意に調整可能である。
熱伝導部材231aは、コア220から受け取った熱を冷媒案内部材232aに伝導する機能を持っており、冷媒案内部材232aの外周に沿って延在している。冷媒案内部材232aは、熱伝導部材231aの外周縁にその全長に亘って密着状態で固定されている。これは、熱伝導部材231aから冷媒案内部材232aへの熱伝導が効率的に行われるようにするためである。
一対のコア冷却体230Bは、同一の構成とされており、高熱伝導率の電気的絶縁性接着剤237を用いて、コア220の2つの内側面(中央にあるコアブロック221eの2つの外側面)にそれぞれ密着状態で固定されている。各コア冷却体230Bは、図18(b)に示すような略矩形の薄い平板状の全体構成を有しており、略矩形の薄板状の熱伝導部材231bと、熱伝導部材231bの外周縁に沿って延在する冷媒案内部材232bと、冷媒案内部材232bに設けられた2つの開口部(図示せず)にそれぞれ装着された2つのニップル233bとを備えている。冷媒案内部材232bは、ロウ付けなどによって熱伝導部材231bの外周縁に固定されている。熱伝導部材231b冷媒案内部材232b、コア220の対応する外側面の全体を覆っている。2つのニップル233bは、冷媒案内部材232bに対する冷媒の供給・排出用として設けられていて、それらの位置は熱伝導部材231b(コア冷却体230B)の一方の長辺の上端部の近傍と下端部の近傍とされている。冷媒を一方のニップル233bから供給すると、冷媒は冷媒案内部材232bを流動して他方のニップル233bから排出されるようになっている。冷媒案内部材232bの厚さは、熱伝導部材231bのそれにほぼ等しくされている。これは、冷媒案内部材232bと熱伝導部材231bをコアブロック221eの外側面全体に密着させて、コアブロック221eからコア冷却体230Bへの熱伝導効率を可能なかぎり高めるためである。
冷媒案内部材232bは、外部から供給される冷媒を、コアブロック221eの露出端面に対向するコア冷却体230Bの対向面に設定された所定の冷媒流路に沿って案内する機能を持っており、前記冷媒流路に沿ってそれぞれ配置されている。前記冷媒流路の位置は、コアブロック221eの露出端面には限定されない。前記冷媒流路を流動する冷媒によってコア220を冷却できるものであれば、前記冷媒流路は任意の位置に設定可能であるし、前記冷媒流路の形状も任意に調整可能である。冷媒案内部材232bの形状や総数は、前記冷媒流路に応じて任意に設定すればよく、必要に応じて任意に調整可能である。
熱伝導部材231bは、コア220から受け取った熱を冷媒案内部材232bに伝導する機能を持っており、冷媒案内部材232bの内周に沿って延在している。冷媒案内部材232bは、熱伝導部材231bの外周縁にそのほぼ全長に亘って密着状態で固定されている。これは、熱伝導部材231bから冷媒案内部材232bへの熱伝導が効率的に行われるようにするためである。
熱伝導部材231a及び231bは、上述したように、コア220から熱を受け取って対応する冷媒案内部材232a及び232bに伝達するという機能(熱伝導中継機能)を持たせるために設けられているから、その必要がなければ、あるいは、設置の必要性が低ければ、省略してもよい。熱伝導部材231aを省略した場合、熱伝導部材231aが覆っていた領域には、例えば、冷媒案内部材232a及び232bをいっそう幅広い形状にして、前記領域の少なくとも一部をも覆うようにしてもよいし、熱伝導部材231a及び231bと同様の形状を有する他の冷媒案内部材を追加して、前記領域を覆うようにしてもよい。こうすれば、熱伝導効率が(コア冷却効率)が、熱伝導部材231a及び231bを設けた場合とほぼ同等になるため、好ましい。熱伝導部材231bを省略した場合も、熱伝導部材231aの場合と同様である。
コア冷却体235は、コア220の上面(上端にあるコアブロック221cの上面)に高熱伝導率の絶縁性接着剤238によって密着状態で固定されている。コア冷却体235は、図12〜図14に示すように、コア220の矩形の上面より大きい矩形の平板から構成されており、コア220の上面の全体を覆っている。コア冷却体235は、冷媒案内部材としての機能を有しており、熱伝導部材は設けられていない。コア冷却体235の内部には、所定形状とされた連続孔が形成されており、その連続孔の両端を形成する2つの開口がコア冷却体235の下面の前端部に形成されている。それら2つの開口には、ニップル235a及び235bがそれぞれ装着されている。ニップル235aは、コア冷却体235の左側端において下面に突出しており、その先端は前方に向いている。ニップル235bは、コア冷却体235の右側端において下面に突出しており、その先端はニップル235aとは逆に後方に向いている。冷媒を例えばニップル235aからコア冷却体235の内部に供給すると、コア冷却体235の内部の連続孔を通ってニップル235bから排出され、それによってコア冷却体235の全体を冷却するようになっている。
コア冷却体236は、コア220の下面(下端にあるコアブロック221dの下面)に高熱伝導率の絶縁性接着剤237によって密着状態で固定されている。コア冷却体236は、図12〜図14に示すように、コア220の矩形の下面より大きい矩形の平板から構成されており、コア220の下面の全体を覆っている。コア冷却体236は、冷媒案内部材としての機能を有しており、熱伝導部材は設けられていない。コア冷却体236の内部には、所定形状とされた連続孔が形成されており、その連続孔の両端を形成する2つの開口がコア冷却体236の下面の前端部に形成されている。それら2つの開口には、ニップル236a及び236bがそれぞれ装着されている。ニップル236aは、コア冷却体236の左側端において上面に突出しており、その先端は後方に向いている。ニップル236bは、コア冷却体236の右側端において上面に突出しており、その先端はニップル236aとは逆に前方に向いている。冷媒を例えばニップル236aからコア冷却体236の内部に供給すると、コア冷却体236の内部の連続孔を通ってニップル236bから排出され、それによってコア冷却体236の全体を冷却するようになっている。
ここでは、熱伝導部材231a及び231bと、コア冷却体235及び236は、銅製の板材から形成され、冷媒案内部材232a及び232bは、銅製の偏平な管材(パイプ)から形成されている。しかし、熱伝導率が高い材料であれば、銅製の板材や銅製の管材以外の材料を使用してもよいことは言うまでもない。
なお、本第2実施形態で使用されたコア冷却体235及び236は、内部に冷媒が流動する流路(冷媒流路)が設けられているから、コア冷却体230A及び230Bの冷媒案内部材232a及び232bと同様の機能を持ち、したがって、「冷媒案内部材」と呼ぶことも可能である。
コア冷却体236には、その左右の端部の近傍において、2本の連結ロッド251の下端部がねじ込まれている。コア冷却体235には、その左右の端部の近傍において、それら連結ロッド251の上端が挿通されており、コア冷却体235の上面において連結ロッド251の上端にナット252が締め付けられている。こうして、コア冷却体235及び236が相互に連結されると共に、コア冷却体230A及び230Bを備えたコア220(一次巻線及び二次巻線211及び213を含む)がコア冷却体235及び236によって上下から押圧・挟持されて、相互に一体化されている。
冷媒は、高周波変圧器200の動作中ずっと、コア冷却体230Aの冷媒案内部材232aとコア冷却体230Bの冷媒案内部材232bの内部空間S(図19を参照)、そして、コア冷却体235及び236の内部流路(図示せず)を循環せしめられる。上述した第1実施形態の高周波変圧器100とは異なり、冷媒案内部材232a及び232bとコア冷却体235及び236は相互に連通していないため、冷媒は冷媒案内部材232a及び232bの内部空間Sと、コア冷却体235及び236の内部流路とを別個に循環せしめられる。
冷媒は、上述したようにして、2つの冷媒案内部材232a及び232bの内部空間Sと、2つのコア冷却体235及び236の内部流路とを別個に流動するので、上述した冷媒流路は、冷媒案内部材232a及び232bの内部空間Sの形状とコア冷却体235及び236の内部流路の形状とを組み合わせたものになる。
図15及び図19に明瞭に示すように、一対のコア冷却体230Aの2つの熱伝導部材231aと冷媒案内部材232aが、左右のコアブロック221a及び221bの外面にそれぞれ固着され、一対のコア冷却体230Bの2つの熱伝導部材231bと冷媒案内部材232bが、中央のコアブロック221eの2つの外面にそれぞれ固着され、コア冷却体235が上位のコアブロック221cの上面に固着され、コア冷却体236が下位のコアブロック221dの下面に固着されている。このため、(i)コアブロック221a及び221bの内部で発生した熱は、熱伝導部材231aに熱伝導した後、冷媒案内部材232aの内部空間Sを流動する冷媒に熱伝導するという経路を通って外部に放散され、(ii)コアブロック221eの内部で発生した熱は、熱伝導部材231bに熱伝導した後、冷媒案内部材232bの内部空間Sを流動する冷媒に熱伝導するという経路を通って外部に放散され、(iii)コアブロック221cの内部で発生した熱は、コア冷却体235の内部流路を流動する冷媒に熱伝導するという経路を通って外部に放散され、(iv)コアブロック221dの内部で発生した熱は、コア冷却体236の内部流路を流動する冷媒に熱伝導するという経路を通って外部に放散されることができる。
以上の構成を持つコア冷却体230Aは、一対となって、コア220を構成する2つのコアブロック221a及び221bの外側面にそれぞれ固着されている。コアブロック221a及び221bの外側面には、それらを構成する非晶質合金薄帯225の長手(延在)方向に沿って延在する露出端縁225a(図16(c)参照)が露出しているが、それら露出端縁225aは、コア冷却体230Aを構成する熱伝導部材231aと冷媒案内部材232aの対向面に対して、単に接触しているだけではない。熱伝導部材231aと冷媒案内部材232aの対向面の全体には、熱伝導率が高い(熱伝導性の良い)電気的絶縁性接着剤237が膜状に塗布・硬化されており、その電気的絶縁性接着剤237によって当該対向面に接着されているのである。これは、非晶質合金薄帯225の露出端縁225aから当該対向面への熱伝導を向上させるためである。高熱伝導率の電気的絶縁性接着剤237としては、例えば、熱伝導性RTVシリコーンゴムが使用可能であるが、これに限定されるわけではない。
例えば、図19に示すように、コア220の右端にあるコアブロック221bの外側面には、複数の非晶質合金薄帯225の露出端縁225aが存在していて、それら露出端縁225aは、コア冷却体230Aの熱伝導部材231aと冷媒案内部材232aの対向面に接触している。非晶質合金薄帯225は、それらの先端面を揃えられずに使用されているため、露出端縁225aと当該対向面との間には小さな隙間260が存在することが多く、したがって、露出端縁225aから当該対向面への熱伝導は非常に悪い。そこで、この問題を、当該対向面に高熱伝導率の電気的絶縁性接着剤237を膜状に塗布・硬化することで解決している。電気的絶縁性接着剤237の膜厚は、少なくとも、すべての隙間260を充填できる程度とするのが好ましい。その結果、不揃い状態にある露出端縁225aであっても、熱伝導部材231aと冷媒案内部材232aの対向面に単に接触するのではなく、電気的絶縁性接着剤237によって当該対向面に密着状態で強固に接合されることになるから、露出端縁225aから当該対向面への熱伝導特性を格段に向上させることができる。なお、電気的絶縁性接着剤237の膜は、隙間260が存在する箇所にとどまらず、当該対向面の全体を覆うように形成することで、熱伝導特性がより向上すると同時に、コア220の露出端面の電気的絶縁をも確保することができる。
コアブロック221bを構成する非晶質合金薄帯225の露出端縁225aは、図15及び図16に示すように、コアブロック221bの全体に亘って延在しているため、コアブロック221bで生じる熱は、非晶質合金薄帯225の内部をその幅方向に伝導した後、その露出端縁225aから直接的に、また、熱伝導率が高い電気的絶縁性接着剤237を介して間接的に、コア冷却体230Aに効率的に伝導されることができる。
図19に示した状況は、コア220の左端にあるコアブロック221aの外側面と、その外側面に固着されたコア冷却体230Aの熱伝導部材231aと冷媒案内部材232aの対向面との間においても同様に存在する。したがって、コアブロック221aで生じる熱は、非晶質合金薄帯225の内部をその幅方向に伝導した後、その露出端縁225aから直接的に、また、熱伝導率が高い電気的絶縁性接着剤237を介して間接的に、コア冷却体230Aに効率的に伝導されることができる。同様に、図19に示した状況は、コア220の中央にあるコアブロック221eの2つの外側面と、それら2つの外側面にそれぞれ固着されたコア冷却体230Bの熱伝導部材231bと冷媒案内部材232bの対向面との間においても同様に存在する。したがって、コアブロック221eで生じる熱は、対応する非晶質合金薄帯225の内部をその幅方向に伝導した後、その露出端縁225aから直接的に、また、熱伝導率が高い電気的絶縁性接着剤237を介して間接的に、一対のコア冷却体230Bに効率的に伝導されることができる。
さらに、図19に示した状況は、コア220の上端にあるコアブロック221cの上面と、その上面に固着されたコア冷却体235の対向面との間や、コア220の下端にあるコアブロック221dの下面と、その下面に固着されたコア冷却体236の対向面との間においても同様に存在する。したがって、コアブロック221c及び221dで生じる熱は、それぞれ、対応する非晶質合金薄帯225の内部をその幅方向に伝導した後、その露出端縁225aから直接的に、また、熱伝導率が高い電気的絶縁性接着剤237を介して間接的に、コア冷却体235及び236に効率的に伝導されることができる。
なお、一対のコア冷却体230Aは左右端のコアブロック221a及び221bの外側面にそれぞれ装着され、一対のコア冷却体230Bは中央のコアブロック221eの2つの外側面にそれぞれ装着されているので、透孔222a及び222bはコア冷却体230A及び230Bの装着前とほぼ同様の状態で存在している(図15及び図16を参照)。したがって、コア220にコア冷却体230A及び230Bが装着されていても、一次巻線211と二次巻線213を中央のコアブロック221eに巻回(装着)する際に、何ら問題は生じない。
(動作)
次に、以上の構成を持つ第2実施形態に係る高周波変圧器200の動作について説明する。
高周波変圧器200を使用する際には、上位にあるコア冷却体235の適当な箇所にワイヤ等を引っ掛けて運搬し、水平な設置面に設置する。必要に応じて、下位にあるコア冷却体236を設置面にボルト止めし、安定化させる。その時の状態(設置状態)は図12及び図13に示すようになる。この状態で、一次巻線211のいずれか2つの入力用端子212の間に高周波の一次電圧(例えば10kHz、1000V、1000kVA)を供給すると、所定の変圧比で一次電圧を変圧してなる高周波の二次電圧(例えば10kHz、100V、1000kVA)が、二次巻線213の2つの出力用端子214から出力される。
高周波変圧器200の動作中はずっと、各コア冷却体230Aのいずれか一方のニップル233aを介して、外部からコア冷却体230Aに冷媒(例えば純水)を供給し、他方のニップル233aを介して排出させることで、対応する冷媒案内部材232aの中に冷媒を循環させるようにする。各コア冷却体230Bについても同様に、いずれか一方のニップル233bを介して、外部からコア冷却体230Bに冷媒(例えば純水)を供給し、他方のニップル233bを介して排出させることで、対応する冷媒案内部材232bの中に冷媒を循環させるようにする。さらに、上位のコア冷却体235のニップル235a及び235bのいずれか一方を介して、外部から上位のコア冷却体235に冷媒(例えば純水)を供給し、他方を介して排出させることで、コア冷却体235の中に冷媒を循環させるようにする。下位のコア冷却体236についても同様に、ニップル236a及び236bのいずれか一方を介して、外部からコア冷却体236に冷媒(例えば純水)を供給し、他方を介して排出させることで、下位のコア冷却体236の中に冷媒を循環させるようにする。こうすることで、非晶質合金薄帯225を用いた積層式コアからなるコアブロック221a、221b、221c、221d及び221eからなるコア220を、合計6つのコア冷却体230A、230B、235及び236によって効果的に冷却することが可能となる。また、同時に、巻線冷却用ニップル215a及び215bのいずれか一方に外部から冷媒(例えば純水)を供給し、他方から排出することで、一次巻線211を冷却する。同様に、巻線冷却用ニップル216a及び216bのいずれか一方に外部から冷媒を供給し、他方から排出することで、二次巻線213を冷却する。
高周波変圧器200の動作中におけるコア220の冷却は、次のようにして行われる。すなわち、コア220を構成する5つのコアブロック221a、221b、221c、221d及び221eの非晶質合金薄帯225は、図15及び図16に示すように、所定の積層方向に積層されており、それら非晶質合金薄帯225の露出端縁225aは、熱伝導性の良い絶縁性接着剤237を介して、各コア冷却体230A及び230Bの熱伝導部材231a及び231bと、コア冷却体235及び236の対向面(対向領域)に接触している。このため、コア220すなわちコアブロック221a、221b、221c、221d及び221eの非晶質合金薄帯225で発生した熱は、主として非晶質合金薄帯225の面内方向に伝導して、その露出端縁225aから熱伝導部材231a及び231bとコア冷却体235及び236に伝導する。図15及び図16に示すように、熱伝導部材231a及び231bの外周縁には冷媒案内部材232a及び231bが密着せしめられているので、その熱は、熱伝導部材231a及び231bから冷媒案内部材232a及び232bにそれぞれ効率的に伝導する。こうして冷媒案内部材232a及び232bに伝導した熱は、冷媒案内部材232a及び231bからそれらの内部空間S(図19を参照)を循環する冷媒(図示せず)に吸収されて運搬され、その冷媒の循環に伴って高周波変圧器200の外部に放散される。さらに、コア冷却体235の内部には、ニップル235a及び235b介して冷媒が循環されるようになっており、コア冷却体236の内部には、ニップル236a及び236bを介して冷媒が循環されるようになっているので、コア冷却体235及び236に伝導した熱は、それらの内部流路を循環する冷媒(図示せず)に吸収されて運搬され、その冷媒の循環に伴って高周波変圧器200の外部に放散される。
このように、高周波変圧器200の動作中にコア220に発生する熱の大部分は、コア220を含む平面に沿った前後、左右及び上下の6方向に伝導して、コア冷却体230A、230B、235及び236に送られ、それらの内部を流動する冷媒によって外部に効率的に放散されるから、冷媒冷却式で高い冷却効率が得られる。よって、非晶質合金薄帯225を利用した積層式コアよりなるコア220の利点を最大限に発揮させることが可能である。
(作用効果)
以上詳細に述べたように、本発明の第2実施形態に係る高周波変圧器200では、コア220を構成する非晶質合金薄帯225が、コア冷却体230A、230B、235及び236の側に露出した露出端縁225aを有している。また、コア冷却体230A及び230Bの各々が、外部から供給される冷媒をコア220の外側面及び内側面に設定された冷媒流路に沿って案内する冷媒案内部材232a及び232bと、冷媒案内部材232a及び232bの外周に密着状態でそれぞれ固定された熱伝導部材231a及び231bとを有している。コア220を構成する非晶質合金薄帯225の露出端縁225aは、熱伝導部材231a及び231bの対向面と、冷媒案内部材232a及び232bの対向面とに、高い熱伝導性と電気絶縁性を持つ接着剤237を用いて接合されている。また、これらの露出端縁225aは、コア冷却体235及び236の対向面に、高い熱伝導性と電気絶縁性を持つ接着剤237を用いて接合されている。そして、高周波変圧器200の動作中にコア220(非晶質合金薄帯225)の内部で発生する熱を、非晶質合金薄帯225の露出端縁225aから直接的にコア冷却体230A及び230Bの冷媒案内部材232a及び232bとコア冷却体235及び236に伝導させると共に、コア冷却体230A及び230Bの熱伝導部材231a及び231bを経由して対応する冷媒案内部材232a及び232bに間接的に伝導させ、さらに、冷媒案内部材232a及び232bとコア冷却体235及び236に伝導した熱を、冷媒案内部材232a及び232bの内部空間Sとコア冷却体235及び236の内部流路(すなわち所定の冷媒流路)を流動する冷媒によって、外部に放散するようになっている。
また、コア220を構成する非晶質合金薄帯225の露出端縁225aの不揃い等に起因して、露出端縁225aと、コア冷却体230A及び230Bの熱伝導部材231a及び231bと冷媒案内部材232a及び232bの対向面との間には、隙間260が存在することが多く、露出端縁225aから熱伝導部材231a及び231bと冷媒案内部材232a及び232bへの熱伝導効率が低下することが多い。しかし、露出端縁225aは、高い熱伝導性と電気絶縁性を持つ接着剤237を用いて前記対向面に接合されているため、例えば前記対向面への接着剤237の塗布量を適切に調整することにより、隙間260を接着剤237によって完全に充填された状態にすることが容易である。したがって、コア220で生じる熱は、接着剤237を通じて露出端縁225aから前記対向面に効率的に伝導すると同時に、接着剤237によって露出端縁225aと前記対向面の間の電気的絶縁処理も同時に行える。これは、コア220の露出端縁225aとコア冷却体235及び236との間の熱伝導及び電気的絶縁についても、同様である。
しかも、コア220で生じる熱のほとんどは、非晶質合金薄帯225をその面内方向に伝導して露出端縁225aを介してコア冷却体230A、230B、235及び236に到達するため、非晶質合金薄帯225の積層時に隣接する非晶質合金薄帯225間に生じた隙間によって、非晶質合金薄帯225の積層方向(長手方向または延在方向)に直交する方向への伝熱効率が低下しても、コア220を冷却する上での問題は生じない。
以上述べた理由により、本発明の第2実施形態に係る高周波変圧器200によれば、非晶質合金薄帯225よりなるコア220(積層式コア)を冷媒冷却式で効果的に冷却することができる、つまり、冷媒冷却式で所望のコア冷却効果を得ることができるのである。
また、本第2実施形態に係る高周波変圧器200は、コア220を構成するコアブロック221a、221b、221c、221d及び221eが、複数の帯状の非晶質合金薄帯225を一方向に積層して構成される積層式コアであるが、コア220が1つまたは複数の帯状の非晶質合金薄帯225を連続的に巻回することで構成される環状積層体を矩形環状に切断してなるカットコアであっても、コア220を冷却する機能は同じように発揮される。よって、コア220が積層式コアであっても、同じ冷却構造を利用することができる。
さらに、冷媒冷却式で所望のコア冷却効果を得ることができるので、磁束密度を従来よりも大きく設計することで、コア220を従来よりも小型化することが可能である。
なお、本第2実施形態において、コア冷却体230A及び230Bだけで必要なコア冷却能力を満たす場合は、コア冷却体235及び236を省略してもよい。また、非晶質合金薄帯225に代えて他の帯状の磁性薄板を用いてもよいことは言うまでもない。
(第2実施形態の変形例)
図17に、本発明の第2実施形態に係る高周波変圧器200の変形例に使用したコア220Aを示す。この変形例では、図16に示したコア220の代わりに図17のコア220Aが使用されている点を除き、上述した第2実施形態に係る高周波変圧器200と同じ構成及び機能を持つ。
コア220Aは、図17に示すように、平面形状が直線状(I型)で所定厚さを持つ(直方体状の)7つのコアブロック(コア要素)221Aa、221Ab、221Ac、221Ad、221Ae、221Af及び221Agから構成されている。コア220Aの全体形状は、漢字の「日」を横向きにした(90°回転させた)形状に似た形状となっている。コアブロック221Aa、221Ab、221Ac、221Ad、221Ae、221Af及び221Agは、いずれも、矩形の複数の非晶質合金薄帯225を同一方向に積層して電気絶縁性の接着剤によって固着したもの(積層式コア)である。
主たる3つのコアブロック221Aa、221Ab及び221Acは、垂直(上下)方向に延在していると共に間隔をあけてコア220Aの左端、右端及び中央に配置され、それらの間に残りの従たる4つのコアブロック221Ad、221Ae、221Af及び221Agが配置されている。コアブロック221Adは、コアブロック221Aa及び221Acの間の上端に配置され、コアブロック221Afは、コアブロック221Aa及び221Acの間の下端に配置されている。コアブロック221Adの左右両端は、コアブロック221Aa及び221Acの対向面に電気絶縁性の接着剤(図示せず)によって接着されている。コアブロック221Afの左右両端は、コアブロック221Aa及び221Acの対向面に電気絶縁性の接着剤(図示せず)によって接着されている。コアブロック221Aeの左右両端は、コアブロック221Ac及び221Abの対向面に電気絶縁性の接着剤(図示せず)によって接着されている。コアブロック221Agの左右両端は、コアブロック221Ac及び221Abの対向面に電気絶縁性の接着剤(図示せず)によって接着されている。コアブロック221Aa、221Ad、221Ac及び221Afの間には、矩形の透孔222Aaが形成されている。コアブロック221Ac、221Ae、221Ab及び221Agの間には、矩形の透孔222Abが形成されている。このようにすることで、コア220Aの全体形状を、上記第2実施形態に係る高周波変圧器200のコア220のそれとほぼ同一となるようにしている。
コア220Aの左右の外側面(すなわちコアブロック221Aaの左側面及び221Abの右側面)には、それぞれ、高熱伝導率の電気的絶縁性接着剤237を用いて、一対のコア冷却体230Aが密着状態で固定されている。コア220Aの上面(すなわちコアブロック221Aa及び221Abの上端面とコアブロック221Ad及び221Aeの上端面)には、高熱伝導率の電気的絶縁性接着剤237を用いて、コア冷却体235が密着状態で固定されている。コア220Aの下面(すなわちコアブロック221Aa及び221Abの下端面とコアブロック221Af及び221Agの下端面)には、高熱伝導率の電気的絶縁性接着剤237を用いて、コア冷却体236が密着状態で固定されている。コアブロック221Aaの右側面及び221Abの左側面と、コアブロック221Acの左右側面には、露出しており、一対のコア冷却体230Bは設けられていない。この点で、上記第2実施形態に係る高周波変圧器200とは異なっている。一対のコア冷却体230Bが省略されているのは、コアブロック221Aaの右側面及び221Abの左側面とコアブロック221Acの左右側面から放熱しなくても、コア220Aの左右の外側面に装着された一対のコア冷却体230Aと、コア220Aの上下面にそれぞれ装着されたコア冷却体235及び236だけで、必要なコア冷却能力が得られるからである。必要に応じて、これらの露出面を覆うようにコア冷却体230Bや他のコア冷却体を装着してもよいことは言うまでもない。
7つのコアブロック221Aa、221Ab、221Ac、221Ad、221Ae、221Af及び221Agを形成する各々の非晶質合金薄帯225は、上述した第2実施形態の高周波変圧器200に使用したものと同じである。コアブロック221Aaの非晶質合金薄帯225の露出端縁225aは、高熱伝導率の電気的絶縁性接着剤237を用いて、コアブロック221Aaの左側面全体においてコア冷却体230Aの対向面全体に接合されていると共に、高熱伝導率の電気的絶縁性接着剤237を用いて、コアブロック221Aaの上端面においてコア冷却体235の下面の対向領域に接合され、また、高熱伝導率の電気的絶縁性接着剤237を用いて、コアブロック221Aaの下端面においてコア冷却体236の上面の対向領域に接合されている。コアブロック221Abの非晶質合金薄帯225の露出端縁225aは、高熱伝導率の電気的絶縁性接着剤237を用いて、コアブロック221Abの右側面全体においてコア冷却体230Aの対向面全体に接合されていると共に、高熱伝導率の電気的絶縁性接着剤237を用いて、コアブロック221Abの上端面においてコア冷却体235の上面の対向領域に接合され、また、高熱伝導率の電気的絶縁性接着剤237を用いて、コアブロック221Abの下端面においてコア冷却体236の上面の対向領域に接合されている。コアブロック221Ac、221Ad及び221Aeの非晶質合金薄帯225の露出端縁225aは、高熱伝導率の電気的絶縁性接着剤237を用いて、コア冷却体235の下面の対向領域にそれぞれ接合されている、コアブロック221Ac、221Af及び221Agの非晶質合金薄帯225の露出端縁225aは、高熱伝導率の電気的絶縁性接着剤237を用いて、コア冷却体236の上面の対向領域にそれぞれ接合されている。
このため、コアブロック221Aa、221Ab、221Ac、221Ad、221Ae、221Af及び221Agで生じる熱は、非晶質合金薄帯225の内部をその幅方向に伝導した後、その露出端縁225aから直接的に、または、熱伝導率が高い電気的絶縁性接着剤237を介して間接的に、一対のコア冷却体230Aに効率的に伝導されることができると共に、熱伝導率が高い電気的絶縁性接着剤237を介して上下のコア冷却体235及び236に効率的に伝導されることができる。
このように、本発明では、コア220、220Aは、非晶質合金薄帯225を用いたものであればよく、コア220、220Aの構成、例えばコアブロックの形状や数、各コアブロックを構成するコアブロック片の形状や数、コアブロックやコアブロック片の組み合わせ方等は、任意に変更が可能である。また、コア220、220Aは、非晶質合金薄帯225を用いたものに限定されるものではなく、珪素鋼板を用いたもの(カットコアや積層式コア)でもよい。また、コア220、220Aの構成に応じて、コア冷却体230A及び230Bの構成や数を任意に変更することが可能であることは言うまでもない。さらに、一次巻線211と二次巻線213のコア220、220Aへの装着形態は、必要に応じて任意に変更可能である。
(第3実施形態)
図20は、本発明の第3実施形態に係る高周波変圧器において、コアを構成する非晶質合金薄帯の端縁とコア冷却体との接触状況を示す説明図である。
第3実施形態の高周波変圧器では、図11に示したコア冷却体130の代わりに図20のコア冷却体130Aが使用されている点を除き、上述した第1実施形態に係る高周波変圧器100と同じ構成及び機能を持つ。
コア冷却体130Aでは、3つの熱伝導部材131a、131b及び131cの各々が、コア冷却体130における熱伝導部材131a、131b及び131cの幅とそれらに対応する冷媒案内部材132a、132b及び132cの幅とを加算したものに等しい幅を有していて、熱伝導部材131a、131b及び131cのみがコア120(コアブロック121a及び121b)の前面又は後面に対向するように形成されている。そして、上述した第1実施形態に係る高周波変圧器100と同様に、コアブロック121a及び121bの各々の非晶質合金薄帯125の巻回方向に直交する露出端縁125aの全体が、熱伝導率が高い電気的絶縁性接着剤137を用いて、熱伝導部材131a、131b又は131cの対向面に、それぞれ接着されている。露出端縁125aは、冷媒案内部材132a、132b及び132cの対向面には接着されていない。
冷媒案内部材132a、132b及び132cは、コア冷却体130と同じ構成を有しているが、コア冷却体130とは異なり、対応する熱伝導部材131a、131b及び131cの前記対向面とは反対側の面に、それぞれ固着されている。このため、第3実施形態に係る高周波変圧器では、動作中にコア120(コアブロック121a及び121b)で発生する熱はすべて、まず熱伝導部材131a、131b及び131cに伝導し、その後、前記対向面とは反対側の前記面を介して対応する冷媒案内部材132a、132b及び132cに伝導して、冷媒案内部材132a、132b及び132cの内部空間Sを循環する冷媒によって外部に放散される。
本発明の第3実施形態に係る高周波変圧器は、以上のような構成及び機能を有するから、上述した第1実施形態に係る高周波変圧器100と同じ効果が得られることは明らかである。
(第4実施形態)
図21は、本発明の第4実施形態に係る高周波変圧器において、コアを構成する非晶質合金薄帯の端縁とコア冷却体との接触状況を示す説明図である。
第4実施形態の高周波変圧器では、図11に示したコア冷却体130の代わりに図21のコア冷却体130Bが使用されている点を除き、上述した第1実施形態に係る高周波変圧器100と同じ構成及び機能を持つ。
コア冷却体130Bにおいても、上記第3実施形態に係るコア冷却体130Aと同様に、3つの熱伝導部材131a、131b及び131cの各々が、コア冷却体130における熱伝導部材131a、131b及び131cの幅とそれらに対応する冷媒案内部材132a、132b及び132cの幅とを加算したものに等しい幅を有していて、熱伝導部材131a、131b及び131cのみがコア120(コアブロック121a及び121b)の前面又は後面に対向するように形成されている。そして、上述した第1実施形態に係る高周波変圧器100と同様に、コアブロック121a及び121bの各々の非晶質合金薄帯125の巻回方向に直交する露出端縁125aの全体が、熱伝導率が高い電気的絶縁性接着剤137を用いて、熱伝導部材131a、131b又は131cの対向面に、それぞれ接着されている。露出端縁125aは、冷媒案内部材132a、132b及び132cの対向面には接着されていない。
冷媒案内部材132a、132b及び132cは、コア冷却体130と同じ構成を有しているが、コア冷却体130及び130Aとは異なり、対応する熱伝導部材131a、131b及び131cの側端面に、それぞれ固着されている。冷媒案内部材132a、132b及び132cの各々は、対応する熱伝導部材131a、131b及び131cと同じ平面内にある。このため、第4実施形態に係る高周波変圧器では、動作中にコア120(コアブロック121a及び121b)で発生する熱はすべて、まず熱伝導部材131a、131b及び131cに伝導し、その後、その熱の大部分は、前記側端縁を介して対応する冷媒案内部材132a、132b及び132cに伝導して、冷媒案内部材132a、132b及び132cの内部空間Sを循環する冷媒によって外部に放散されると同時に、一部は熱伝導部材131a、131b及び131cから直接的に外部に放散される。
本発明の第4実施形態に係る高周波変圧器は、以上のような構成及び機能を有するから、上述した第1実施形態に係る高周波変圧器100と同じ効果が得られることは明らかである。
(比較試験)
本発明の効果を確認するため、本発明者らは以下のような比較試験を行った。図22及び図23は、それぞれ、その比較試験に使用した従来及び本発明の高周波変圧器の構成を示す。また、図24はその比較試験の試験結果を示す。
本発明者らは、(a)従来冷却法(非晶質合金薄帯の積層方向に冷却する)を用いた「従来例の高周波変圧器」と、(b)高熱伝導率の電気的絶縁性接着剤137を省いた点以外は、上述した第1実施形態に係る高周波変圧器100と同様の構成を持つ「比較例の高周波変圧器」と、(c)上述した第1実施形態に係る高周波変圧器100と同様の構成を持つ「本発明の高周波変圧器」との3つを製作し、それらのコアの温度上昇を、公知の温度測定装置(例えば、熱電対による直接測定法)を用いて測定した。
従来例の高周波変圧器(a)は、図22に示すように、コアの全体形状が漢字の「日」を横向きにした(90°回転させた)形状とした。このコアは、その厚さ方向に帯状の非晶質合金薄帯を積層してなる積層式コアであり、各部分の寸法は図22に記載したとおりである。このコアは、上述した第2実施形態に係る高周波変圧器200のコア220(図16参照)と同様の5つのコアブロックを、結合・一体化して構成した。このコアの重量は5.3kgであった。
本発明の高周波変圧器(c)は、コア120が、帯状の非晶質合金薄帯125を重ねて巻回してなる環状積層体を所定厚さの矩形環状に切断して形成されたカットコアとした。このコア120は、図23に示すように、平面形状が矩形環状で所定厚さを持つ同一形状の2つのコアブロック121a及び121bを、全体が横に寝た「8」の字を描くように隣接させた状態で結合・一体化して構成した。各部分の寸法は図23に記載したとおりである。コア120を構成する非晶質合金薄帯125の露出端縁125aと一対のコア冷却体130の対向面との間には、熱伝導率が高い(高熱伝導性の)電気的絶縁性接着剤137を膜状に形成した。このコアの重量は9kgであった。
比較例の高周波変圧器(b)は、上述した本発明の高周波変圧器(c)において、コア120を構成する非晶質合金薄帯125の露出端縁125aと一対のコア冷却体130の対向面との間に配置された電気的絶縁性接着剤137を省略し、電気的絶縁性テープを用いて両者を固定したものであり、それ以外の構成は本発明の高周波変圧器(c)と同じとした。このコアの重量は9kgであった。
以上の構成を持つ従来例の高周波変圧器(a)、比較例の高周波変圧器(b)、そして本発明の高周波変圧器(c)に対し、約5〜20kHzの範囲でコアの単位重量当たりの損失が約30(W/kg)となるような磁束密度を発生させ、測定された損失値から熱伝導率を算出して比較した。
その結果、従来例の高周波変圧器(a)、比較例の高周波変圧器(b)及び本発明の高周波変圧器(c)のコア温度上昇等価熱伝導率は、それぞれ、0.0048(W/cm・K)、0.0123(W/cm・K)、0.0461(W/cm・K)となった。この結果から、非晶質合金薄帯125の面内方向(積層方向に直交する方向)にコア冷却を行った比較例の高周波変圧器(b)では、非晶質合金薄帯の積層方向にコア冷却を行った従来例の高周波変圧器(a)に対し、コア温度上昇等価熱伝導率が約2.5倍に上昇することが分かった。さらに、非晶質合金薄帯125の露出端縁125aと一対のコア冷却体130の対向面との間に電気的絶縁性接着剤137を配置した本発明の高周波変圧器(c)では、比較例の高周波変圧器(b)に対し、コア温度上昇等価熱伝導率が約3.7倍に上昇することが分かった。
このように、本発明の高周波変圧器(c)では、冷却冷媒式で効率的なコア冷却が可能であり、したがって、従来の空冷式コア冷却では制限せざるを得なかった磁束密度を、より大きく設計することが可能であることが判明した。よって、本発明の高周波変圧器(c)によれば、非晶質合金薄帯125をコア120に用いた場合に期待される高効率化(低損失化)及び小型化という利点を実現することができる、換言すれば、非晶質合金薄帯125をコア120に用いた高周波変圧器100の性能を十分に発揮することが可能となることが、判明した。
ここで、コア120を冷媒冷却方式で冷却する場合の、コア120の発熱量と冷媒によって冷却されたコア冷却体130との間の熱伝導について、図25を用いて説明する。
図25は、帯状の非晶質合金薄帯125を積層してなる厚さt(cm)のコア120の積層方向に直交する方向の2つの端面を、高熱伝導率を有する一対のコア冷却体130で挟み込み、それらコア冷却体130にそれぞれ設けられた冷媒案内部材132a、132b及び132cに冷媒を流動させることでコア120を冷却する構成の一例を示す概念図である。
図25において、コア120の厚さがt、コア120の単位体積当たり重量がγ(kg/cm
3)、コア120の厚さ方向中心部(ここの温度がコア中で最高になる)と一対のコア冷却体130との間にある熱伝導経路全体の熱伝導率がλ(W/cm・K)であるとする。動作中に、コア120が高周波磁束に起因して単位重量あたり発熱量q(W/kg)で発熱するとき、それと同時に冷媒(例えば純水)で冷却される一対のコア冷却板130の温度がT
0(℃)であると、コア120の厚さ方向中心部における温度(コア温度)T
COREは、次の式(1)で与えられる。
式(1)によると、コア120の単位重量あたり発熱量qとコア120の厚さtが一定であっても、コア120と一対のコア冷却体130との間の熱伝導経路全体の熱伝導率λが大きいほど、コア120の中心部の温度T
COREは低いことが分かる。実際、本発明の高周波変圧器(c)では、コア120を構成する非晶質合金薄帯125の露出端縁125aを、各コア冷却体130を構成する熱伝導部材131a、131b及び131cと冷媒案内部材132a、132b及び132cの対向面に対して、当該対向面の全体に膜状に形成された高熱伝導率の電気的絶縁性接着剤137によって接着しているので、コア120と各コア冷却体130との間の熱伝導経路全体の熱伝導率λが、高熱伝導率の電気的絶縁性接着剤137を使用しない場合に比べて約3.7倍と、大きく増加している。そして、その結果として所望のコア冷却性能が得られたことが、式(1)からも確認できた。
(他の変形例)
上述した第1〜第4実施形態とそれらの変形例は、本発明を具体化した例を示すものである。したがって、本発明はこれらの実施形態と変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を外れることなく種々の変形が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した第1〜第4実施形態及びその変形例では、非晶質合金薄帯を用いたコアを使用しているが、本発明はこれには限定されない。帯状の磁性薄板であれば、非晶質合金薄帯以外の材料を用いて構成された任意のコアを使用可能である。ここで、帯状の磁性薄板とは、磁性をもつ帯状の薄板でコアとして使用可能なもの、例えば非晶質合金薄帯や珪素鋼板を意味し、その厚さや形状や積層方法等は必要に応じて任意に調整可能である。
また、上述した第1〜第4実施形態及びその変形例では、コアを構成する帯状の磁性薄板の露出端縁と、コア冷却体の対向面との間に、高熱伝導率を有する絶縁性接着剤を配置しているが、例えば、コア内の磁束密度並びに発熱密度が高いために、電気的絶縁性接着剤のみの絶縁性能だけでは不足する恐れがある場合は、各コア冷却体のコアに対向する面(領域)に高い電気的絶縁性能を有する極薄の絶縁テープを貼り付け、その上に高熱伝導率を有する電気的絶縁性接着剤を塗布するようにしてもよい。この変形例も本発明の範囲に含まれる。
さらに、上述した高熱伝導率を有する絶縁性接着剤の代わりに、接着性はないが高い熱伝導率と電気的絶縁性能を有するペースト状材料(例えばシリコーン・コンパウンドなどの流動性と高い粘性のあるもの)を塗布・硬化させ、さらに、コアとコア冷却体とを適当な固定部材(例えばボルト・ナット等)で接合するようにしてもよい。この変形例も本発明の範囲に含まれる。