JP2019077988A - 導水補修工法 - Google Patents

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博次 吉田
光應 木目
Mitsumasa Kime
光應 木目
冨永 聡
Satoshi Tominaga
聡 冨永
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Abstract

【課題】本発明の目的は躯体に施工傷を負わさず、施工性に優れ、且つ導水用空隙の確保に必要な空間が低減された導水補修工法を提供することである。【解決手段】漏水を伴う躯体のひび割れに対する導水補修工法であり;前記ひび割れの方向に沿って、可撓性のスペーサを前記躯体の表面に設ける工程1と、;一液湿気硬化型樹脂組成物層、及び前記一液湿気硬化型樹脂組成物層の少なくとも一方の面に積層された水溶性層を含む接着剤シートを、前記水溶性層及び前記躯体の表面の少なくともいずれかが湿潤した状態で、前記スペーサを覆い且つ前記ひび割れを跨ぐように前記躯体の表面に接着させる工程2と;前記一液湿気硬化型樹脂組成物層を硬化させる工程3と、を含む、導水補修工法。【選択図】なし

Description

本発明は、導水補修工法に関する。より具体的には、本発明は、施工性に優れ、且つ導水用空隙の確保に必要な空間が低減された導水補修工法に関する。
高架橋およびトンネルといったコンクリート建造物などの躯体に発生するひび割れを補修する工法として、様々の工法が検討されている。一般的なひび割れに対しては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ケイ酸塩、ポリマーセメントなどの補修材を注入又は浸透させる工法が一般的に行われている。
一方、ひび割れの中でも漏水を伴う特殊なひび割れに対しては、ひび割れ開口部を閉塞して漏水を止める止水工法と、ひび割れ開口部に通じる導水用空隙を設けて漏水を逃がす導水工法とが知られている。
止水工法の一例としては、漏水を生じている空隙に向かって注入用の孔を穿設し、注入用の孔から注入器によって止水材を注入する工法が提案されている(特許文献1)。止水工法の他の例としては、漏水のあるひび割れ等に沿って切削した溝に水膨潤性ゴムを挿入し、この水膨潤性ゴムの膨張性を利用して一時的な止水を行った後、エポキシ樹脂を塗布することにより止水するトンネルの止水工法が提案されている(特許文献2)。
止水工法には、漏出している水を塞き止める作業に高度な技術が必要となるだけでなく、漏水量が多い場合又は水圧が高い場合には、同じ場所で再び漏水したり、別の場所での漏水を誘発したりする問題がある。
導水工法は、上述のような問題が想定される施工箇所に対して適用される。導水工法の例としては、ひび割れに沿って溝を切り、この溝内部に樋状の導水材を埋め込み、導水材の外側にモルタルを充填し、さらにこの上に押さえ板をアンカーボルトで固定する工法;施工面に対し、ひび割れを覆うように樋材をアンカーボルトで取り付ける工法;及び施工面に対し、ひび割れを跨ぐように樋状の縁切り材を仮止めし、さらに縁切り材の表面とその両側の施工面とにプライマー及び止水剤を塗布する工法が提案されている(特許文献3)。当該止水剤としては、変性イソシアネートと特殊変性ポリエーテルアミンとの二成分を混合して得られる速硬化性のポリウレア樹脂が用いられる。この止水剤は、表面に水滴が存在していなければ塗布可能である。
特許第5300162号 特開平01−121500号公報 特開2006−161438号公報
従来の導水工法のうち、ひび割れに対して溝切りを行う工法は、その切削作業が煩わしく施工性に問題があるだけでなく、切削作業によって躯体に対して不可避的に施工傷を負わせることは、漏水により強度低下を生じやすい躯体部分にとっては好ましくない。また、アンカーボルトを使用する工法においても、同様に施工傷の問題がある。
また、従来の導水工法のうち、アンカーボルトを用いずにプライマーと止水剤とを塗布する工法では、プライマーの塗布作業と止水剤の塗布作業との二段階塗布作業が煩わしく、やはり施工性に問題がある。そして、当該止水剤が二成分系の速硬化性のポリウレア樹脂であるため、現場で二成分を混合し、且つ速やかに塗布しなければならない点でも作業が煩わしく、施工性に更なる問題がある。これらに加えて、当該止水剤が表面に水滴が存在していると塗布できないことから、常に水滴のない状態を維持しなければならない点でも作業が煩わしく、施工性に一層の問題がある。
さらに、従来の導水工法のいずれも、導水空隙の確保に樋形状の部材(樋状の導水材、樋材、樋状の縁切り材)を用いている。これら樋形状の部材は、プラスチック、金属又は木で構成される。一方で、躯体に生じるひび割れは、躯体表面に蛇行して生じることが多い。従って、樋形状の部材の幅は、ひび割れの蛇行幅全体(例えば図8における幅W)を含むように極めて広く設計される必要がある。このため、導水用空隙の確保に必要な空間が無駄に幅広となる問題がある。そうすると、漏水が効率よく集約されないことによる導水性の悪さに加え、躯体表面において漏水による湿潤を許す面積が大きいため腐食防止性及び強度維持性の点でも好ましくない。
そこで本発明の目的は、上記の問題に鑑み、躯体に施工傷を負わさず、施工性に優れ、且つ導水用空隙の確保に必要な空間が低減された導水補修工法を提供することにある。さらに本発明の目的は、施工傷が無く、導水用空隙の確保に必要な空間が低減された導水補修体を提供することにある。
本発明者は、鋭意検討の結果、導水用空隙の確保に可撓性のスペーサと止水性に優れた接着剤シートとを用いることによって、上記本発明の目的が達成されることを見出した。本発明は、この知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
(1)
漏水を伴う躯体のひび割れに対する導水補修工法であり、
前記ひび割れの方向に沿って、可撓性のスペーサを前記躯体の表面に設ける工程1と、
一液湿気硬化型樹脂組成物層、及び前記一液湿気硬化型樹脂組成物層の少なくとも一方の面に積層された水溶性層を含む接着剤シートを、前記水溶性層及び前記躯体の表面の少なくともいずれかが湿潤した状態で、前記スペーサを覆い且つ前記ひび割れを跨ぐように前記躯体の表面に接着させる工程2と、
前記一液湿気硬化型樹脂組成物層を硬化させる工程3と、
を含む、導水補修工法。
このように、スペーサと接着剤シートとを用いることで、スペーサで接着剤シートが躯体表面から持ち上がった状態で空隙が確保される。また、接着剤シートが一液湿気硬化型樹脂組成物層を含むことで、接着及び硬化後の止水性に優れるため、当該空隙を水密性に優れた導水用空隙として機能させることができる。それとともに、シート自体が一液湿気硬化型の接着剤として働くため、現場での接着剤組成物の調製作業、水滴のない状態を維持する作業、及び接着剤塗布作業等の煩わしい作業が不要であり、優れた施工性が得られる。それだけでなく、切削及びアンカーボルト固定などが不要であり、躯体に施工傷を負わさない。さらに、スペーサとして可撓性を有する部材を用いることで、スペーサをひび割れの延在形状に追随させることができるため、導水用空隙もひび割れの延在形状に沿い、導水用空隙の確保に必要な空間が低減される。
(2)
前記スペーサが発泡樹脂である、(1)に記載の導水補修工法。
このように、スペーサとして発泡樹脂を用いることで、躯体表面との設置面積が充分に得られるため、接着剤シートからの樹脂が導水用空隙へ進入することをより容易に防止でき、従って導水性をより容易に確保することができる。
(3)
前記発泡樹脂が発泡ポリオレフィンである、(2)に記載の導水補修工法。
このように、発泡樹脂として発泡ポリオレフィンを用いることで、スペーサの耐水性が良好となり、良好な導水性を長期間にわたって維持することができる。
(4)
前記工程1において、前記スペーサを前記ひび割れの両側にそれぞれ設ける、(1)〜(3)のいずれかに記載の導水補修工法。
このように、1本のひび割れに対し二本のスペーサを設けることで、導水用空隙の確保がより容易になる。
(5)
前記スペーサの幅と弾性率との積が20mm・MPa以上500mm・MPa以下である、(2)〜(4)のいずれかに記載の導水補修工法。
このように、スペーサの幅と弾性率との積が所定範囲内であることにより、導水用空隙の確保に必要な空間の低減及び導水性の確保がより容易となる。
(6)
前記スペーサの高さが3mm以上30mm以下である、(2)〜(5)のいずれかに記載の導水補修工法。
このように、スペーサの高さと弾性率との積が所定範囲内であることにより、導水用空隙の確保に必要な空間の低減及び導水性の確保がより容易となる。
(7)
前記接着剤シートが強化繊維を含む、(1)〜(6)のいずれかに記載の導水補修工法。
このように、接着剤シートが強化繊維を含むことによって、優れた剥落防止能が付与される。
(8)
ひび割れを有する躯体と、
前記ひび割れの方向に沿って設けられた可撓性のスペーサと、
前記スペーサを覆い且つ前記ひび割れを跨いで前記躯体の表面に接着している、一液湿気硬化型樹脂組成物硬化層と、
を含む、導水補修体。
このように、スペーサと一液湿気硬化型樹脂組成物層の硬化物とによって、スペーサで一液湿気硬化型樹脂組成物層の硬化物が躯体表面から持ち上がった状態で空隙が確保される。躯体の表面に接着している一液湿気硬化型樹脂組成物層の硬化物は止水性に優れるため、当該空隙を水密性に優れた導水用空隙として機能させることができる。切削跡及びアンカーボルト固定穴などの施工傷も無い。さらに、スペーサがひび割れの延在形状に追随しているため、導水用の空隙もひび割れの延在形状に沿い、導水用空隙の確保に必要な空間が低減される。
本発明によれば、躯体に施工傷を負わさず、施工性に優れ、且つ導水用空隙の確保に必要な空間が低減された導水補修工法を提供することができる。また、施工傷が無く、導水用空隙の確保に必要な空間が低減された導水補修体を提供することができる。
導水補修工法に用いられる接着剤シートの一例の断面を模式的に示す。 接着剤シートの第1変形例(図1の円囲み部分に対応する部分)である。 接着剤シートの第2変形例(図1の円囲み部分に対応する部分)である。 接着剤シートの第3変形例(図1の円囲み部分に対応する部分)である。 接着剤シートの第4変形例を模式的に示す。 接着剤シートの第5変形例の断面を模式的に示す。 接着剤シートの第6変形例の断面を模式的に示す。 導水補修工法の対象となる躯体を模式的に示す。 導水補修工法の第1実施形態における工程1を模式的に説明する。(a)におけるA−A断面図を(b)に示す。 導水補修工法の第1実施形態における工程2を模式的に説明する。(a)におけるB−B断面図を(b)に示す。 導水補修工法の第1実施形態における工程3で得られる導水補修体を示す。(a)におけるC−C断面図を(b)に示す。 導水補修工法の第2実施形態で得られる導水補修体の模式的断面図を示す。 導水補修工法の第3実施形態で得られる導水補修体の模式的断面図を示す。 導水補修工法の第4実施形態で得られる導水補修体の模式的断面図を示す。 実施例で用いられた、躯体を模したコンクリートの試験体(a)及び導水補修体モデル(b)を模式的に示す。 試験例で用いられた、止水性試験用のコンクリート試験体を模式的に示す。 試験例で用いられた、接着力試験用のコンクリート試験体を模式的に示す。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の要素には同一の符号を付しており、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は基本的に繰り返さない。
[1.接着剤シート]
本発明の導水補修工法に用いる接着剤シートについて説明する。
[1−1.接着剤シートの基本構成]
図1に、接着剤シートの一例の断面を模式的に示す。図1に示す接着剤シート100は、一液湿気硬化型樹脂組成物層120と、水溶性層150と、非水溶性層160とを含む。水溶性層150および非水溶性層160は、一液湿気硬化型樹脂組成物層120に直接積層されている。水溶性層150および非水溶性層160のうち、水溶性層150の側が、躯体の補修すべき面に貼り付けられる側となる。図2、図3および図4は、それぞれ、接着剤シートの第1変形例、第2変形例および第3変形例であり、図1の円囲み部分に対応する部分を示す。図5、図6及び図7は、接着剤シートの第4変形例、第5変形例および第6変形例を示す。
[1−2.一液湿気硬化型樹脂組成物層]
一液湿気硬化型樹脂組成物層120は、一液湿気硬化型樹脂組成物で構成される。一液湿気型硬化樹脂組成物は、一液湿気型硬化樹脂の未硬化物である。一液型であることにより、二液型のような混合作業が不要となるだけでなくシート化しておくことが可能であるため、接着剤樹脂組成物を現場で塗布する必要がなく、施工性が極めて良好である。さらに、混合作業が必要な二液型と異なり、硬化に供する樹脂組成物の均一性が良好である点で硬化不良が起こりにくく、したがって容易に良好な接着性を得ることができる。また、湿気硬化型であることにより、湿潤環境を有効利用して硬化させることができる。
一液湿気硬化型樹脂の例としては、変成シリコーン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリサルファイド樹脂が挙げられる。この中でも、変成シリコーン樹脂は、湿潤状態のコンクリートに対しても高い接着力を有するため好ましい。
変成シリコーン樹脂を用いた一液湿気型硬化樹脂組成物は、変成シリコーン樹脂と、その硬化剤とを含む。変成シリコーン樹脂を用いた一液湿気型硬化樹脂組成物は、具体的には変成シリコーン樹脂とシラノール縮合触媒とを含む混合物が挙げられる。この樹脂組成物は、さらに、エポキシ樹脂を含んでもよい。
変成シリコーン樹脂としては特に限定されないが、好ましくは加水分解性ケイ素基を有する。加水分解性ケイ素基を有する変成シリコーン樹脂は、ポリエーテル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマーおよびアクリル系ポリマーからなる群から選ばれるポリマーを主鎖(加水分解性ケイ素基を除く部分)とする。したがって、主鎖は、アルキレンオキサイド成分、オレフィン成分およびアクリル成分からなる群から選ばれるモノマーの重合体であってよく、この重合体は、単独重合体および共重合体を問わない。共重合体である場合、共重合成分としては、アルキレンオキサイド成分、オレフィン成分、アクリル成分、および他のビニル成分からなる群から選ばれてよい。
アルキレンオキサイド成分としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどが挙げられる。主鎖は、硬化後の伸びおよび粘性的な取り扱い易さの観点から、主としてプロピレンオキサイド単位から構成されるポリプロピレンオキサイドが好ましい。
オレフィン成分としては、イソブチレンが挙げられる。
アクリル成分としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−3−メチルブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル2−ヒドロキシプロピルフタル酸などが挙げられる。なお、アクリル系ポリマーが、他のビニルモノマー成分が共重合されたものである場合、加水分解性ケイ素基を有するビニルモノマー成分を共重合することにより加水分解性ケイ素基を導入することができる。
主鎖がアクリル単位を含んでいることは、耐候性が良好となる点で好ましい。さらに、耐候性の観点からは、主鎖中のアクリル単位の含有量は、5重量%以上20重量%以下であることが好ましい。
加水分解性ケイ素基としては特に限定されないが、ハロゲン化シリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基、アルコキシシリル基などが挙げられる。ここで、加水分解性ケイ素基におけるケイ素原子に結合した加水分解性基の数は1以上3以下が好ましい。また、1つのケイ素原子に結合した加水分解性基は1種であってもよく、複数種であってもよい。更に、加水分解性基と非加水分解性基とが1つのケイ素原子に結合していてもよい。加水分解性ケイ素基としては、安定性に優れ、取り扱いが容易である点で、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基などのアルコキシシリル基が好ましい。
変成シリコーン樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
加水分解性ケイ素基を有する変成シリコーン樹脂の数平均分子量は、たとえば、500以上500,000以下、500以上100,000以下、5,000以上30,000以下、1,000以上500,000以下、または1,000以上30,000以下である。上記下限値以上であることは、樹脂組成物の硬化時間が短い点、または硬化後の接着強度が良好である点で好ましい。上記上限値以下であることは、樹脂組成物の粘度が適当であり取扱性が良好である点で好ましい。
シラノール縮合触媒は、変成シリコーン樹脂組成物を短時間で硬化させるために用いられる。シラノール縮合触媒としては、ポリ(ジアルキルスタノキサン)ジシリケート化合物、モノアルキル錫エステルおよびジアルキル錫エステルなどの錫触媒、有機チタネートなどが挙げられる。
モノアルキル錫エステルとしては、例えば、ブチルスズトリス(2−エチルヘキサノエート)などが挙げられ、ジアルキル錫エステルとしては、例えば、ジブチル錫アセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジオレート、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジフェノキシド、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫アセトアセテート、オクタン酸第一錫などが挙げられる。
有機チタネートとしては、例えば、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシルチタネート)トリエタノールアミンチタネートなどのチタンアルコキシド類、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンエチルアセトアセテート、オクチレングリコレートなどのチタンキレート類などが挙げられる。
シラノール縮合触媒は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
樹脂組成物中のシラノール縮合触媒の含有量は、変成シリコーン樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下、好ましくは1重量部以上5重量部以下である。上記下限値以上であることは、硬化時間の短縮の点で好ましい。上記上限値以下であることは接着強度などの物性を担保する点で好ましい。
エポキシ樹脂としては特に限定されず、エポキシ基を有する樹脂であればよい。具体的には、不飽和の脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物、および複素環式化合物からなる群から選ばれる化合物にグリシジル基が結合したものが挙げられる。中性化抑制効果の観点からは、芳香族化合物を含むものであることが好ましい。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型およびこれらの水添化物などのビスフェノール型エポキシ樹脂;ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂などのエステル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型およびクレゾールノボラック型などのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂およびこれらの水添化物;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂などのトリスフェノール型の多官能エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート型、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型、テトラグリシジルメタキシレンジアミン型、ヒダントイン型などの含窒素環型多官能エポキシ樹脂;ナフタレン型などの縮環型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;エーテルエステル型エポキシ樹脂;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどの脂環式構造を有するエポキシ樹脂;ウレタン型エポキシ樹脂;ポリブタジエンおよびアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などのゴム骨格を有するゴム変成エポキシ樹脂などを用いることができる。エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、変成シリコーン樹脂100重量部に対し、たとえば1重量部以上100重量部以下、好ましくは2重量部以上80重量部以下であってよい。当該含有量が上記下限値以上であることは、接着層の良好な靭性、およびコンクリートとの湿潤状態における良好な接着強度を得ることができる点で好ましく、上記上限値以下であることは、接着層の良好な弾性を得ることができる点で好ましい。つまり、当該含有量を上記範囲とすることにより、本発明の導水補修工法によって形成される導水用空隙(後述図11の導水用空隙S,S’等)の水密性をより長期に亘って発揮することができる。
シリコーン樹脂は、オルガノハロゲンシランもしくはオルガノアルコキシシランを加水分解し縮重合し、分子末端がシラノール又はアルコキシシリルで封鎖されたものであればよく、特に限定を受けない。例えば、ジメチルシリコーン、ジメチルシリコーンのジフェニル誘導体、ジメチルシリコーンのメチルフェニル誘導体、ジメチルシリコーンのメチルトリフルオロプロピル誘導体、ジメチルシリコーンのテトラクロロフェニル誘導体などから導かれる主鎖を有するシリコーン樹脂が挙げられる。
例えば、ジメチルシリコーン、ジメチルシリコーンのジフェニル誘導体、ジメチルシリコーンのメチルフェニル誘導体、ジメチルシリコーンのメチルトリフルオロプロピル誘導体、ジメチルシリコーンのテトラクロロフェニル誘導体などから導かれる主鎖を有するシリコーン樹脂が挙げられる。
ポリウレタン樹脂としては、一液型シーラント材として公知のポリウレタンを広く用いることができ、特に限定を受けないが、ウレタンプレポリマーとして公知の液状のものが挙げられ、イソシアネートを0.5%以上5%以下程度含有するウレタンプレポリマーが挙げられる。このようなポリウレタンは、通常、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物から製造される。
ポリオールとしては、通常のポリウレタン樹脂の製造に用いられるものを使用することができ、具体的には、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコールなどのポリエーテル系ポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどのポリオレフィン系ポリオール、アジペート系ポリオール、ラクトン系ポリオール、ヒマシ油などのポリエステル系ポリオールなどが挙げられる。これらの化合物を2種以上併用してもよい。
ポリイソシアネート化合物としては、通常のポリウレタン樹脂の製造に用いられるものを使用することができ、具体的には、パラフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、4、4’ージフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタデシルジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート;イソホロンジイソシアネートなどの脂環式イソシアネート;キシレンジイソシアネートなどのアリール脂肪族イソシアネート;上記各イソシアネートの変性イソシアネート、または多価アルコール類と上述のジイソシアネート化合物との反応生成物であるトリイソシアネートなどが挙げられる。これらの化合物を2種以上併用してもよい。ポリウレタンは、上述のポリオールとポリイソシアネート化合物とから、通常のポリウレタン製造方法に準じて製造することができる。
ポリサルファイド樹脂としては、特に限定を受けないが、たとえばHS−(R−Smn−SHで表される重合体を用いることができる。式中、mの平均値は1.5以上2以下であってよく、nは2以上45以下であってよい。Rとしては2価の脂肪族基などが挙げられ、脂肪族基の炭素原子間には酸素原子が介在していてもよい。Rの具体例としては、−C24−、−C36−、−C48−、−C24OC24−、−C36OC36−、−C48OC48−、−C24OCH2OC24−、−C36OCH2OC36−、−C48OCH2OC48−などの2価の基が挙げられる。また芳香族ポリサルファイド、さらには末端にメルカプト基を有し、主鎖に主としてポリエーテルウレタン結合を有する変性ポリサルファイドを挙げることもできる。このようなポリサルファイドとして、具体的には、チオコールLPシリーズ(東レチオコール社製)として上市されているポリサルファイドが挙げられる。
一液湿気硬化型樹脂の樹脂組成物中には、必要に応じて、他の添加剤をさらに含んでいてもよい。他の添加剤としては、水酸化アルミニウムなどの難燃剤、脱水剤、エポキシシランカップリング剤、酸化防止剤、充填材、可塑剤、タレ防止剤、紫外線吸収剤、顔料、溶剤、及び香料などが挙げられる。
一液湿気硬化型樹脂組成物は、粘度が、たとえば1万mPa・s以上100万mPa・s以下、好ましくは2万mPa・s以上50万mPa・s以下であってよい。粘度が上記下限値以上であることは、接着剤シート100の製造において一液湿気硬化型樹脂組成物の層と水溶性物質の層とを積層する時に、樹脂組成物の垂れにくさの点で好ましく、上記上限値以下であることは、一液湿気硬化型樹脂組成物層120が躯体の表面へ良好に密着し、本発明の導水補修工法によって形成される導水用空隙(後述図11の導水用空隙S,S’等)の水密性が良好に得られる点で好ましい。なお、粘度は、JIS Z 8803に準拠して単一円筒形回転粘度計としてB型粘度計を用い、No.7ローター、23℃で測定した値である。
一液湿気硬化型樹脂組成物のチクソインデックス値は、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.5以上、さらに好ましくは5.0以上とするとよい。これにより、接着剤シート100を垂直な躯体表面に貼付けた場合であっても、接着剤シート100がずり落ちにくいため、施工性に優れる。また、チクソインデックス値は、10.0以下であることが好ましく、8.0以下であることがより好ましく、7.0以下であることがさらに好ましい。これにより、接着剤シート100の製造過程において、一液湿気硬化型樹脂組成物層に水溶性物質層を積層するときの作業性が良好となる。
本発明においてチクソインデックス値は、23℃の条件下で、B型粘度計のNo.7ローターを用いて、回転速度1rpmおよび10rpmで計測される粘度(Pa・s)の比〔(1rpmでの粘度)/(10rpmでの粘度)〕から求めた値である。
一液湿気硬化型樹脂組成物層120の厚さは、たとえば1mm以上3mm以下、好ましくは1mm以上2mm以下であってよい。当該厚さが上記下限値以上であることは良好な止水効果および接着強度を得る点で好ましく、上記上限値以下であることは導水補修工法において接着剤シート100が躯体表面との接地面積(後述図10の幅mで占められる部分)を確保しやすい点で好ましい。
[1−3.水溶性層]
水溶性層150は、任意の水溶性物質で構成される。たとえば、水溶性物質としては、天然、合成、および半合成の水溶性高分子が挙げられる。例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、メチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、グアガム、ローカストビーンガム、ゼラチン、キサンタンガム、カンテン、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ジエチルアミノアセテート、メタクリル酸/メタクリル酸メチル共重合体、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ソーダ、アクリル酸ソーダ/メタクリル酸ソーダ共重合体、アクリル酸ソーダ/マレイン酸ソーダ共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸ソーダ共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド系高分子等およびそれらの誘導体であり、好ましくはポリビニルアルコールおよびその誘導体、メチルセルロース、ポリビニルアセタールが挙げられる。
水溶性層150の厚さは、たとえば、5μm以上100μm以下、好ましくは20μm以上50μm以下であってよい。当該厚さが上記下限値以上であることは、表面がよりベタつきにくく取扱性がより良好である点で好ましく、上記上限値以下であることは、水溶性層150が湿潤状態に付された場合に溶けて一液湿気硬化型樹脂組成物層120をより容易に露出させることができる点で好ましい。同様の観点で、本発明では、水溶性物質としてポリビニルアルコールを用い、たとえば10μm以上80μm以下、好ましくは20μm以上45μm以下の厚さで設けることが特に好ましい。
水溶性層150はエンボス加工されていてもよい。エンボス加工を施すことにより水溶性層150の表面積が拡大する。このため水分との接触面積が大きくなり水溶性物質が細かく溶解するため、一液湿気硬化型樹脂組成物層と躯体の接着力が良好となる点で好ましい。
[1−4.非水溶性層]
非水溶性層160は、任意の非水溶性物質を含んで構成される。
非水溶性層160に含まれる非水溶性物質としては、たとえば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミドなどの非水溶性樹脂;およびガラス、バサルトなどの無機物が挙げられる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。ポリエステルは、接着剤シート100にコシを与えて取扱性を向上させ、ガスバリア性も向上させる。ポリオレフィンとしては、ポリエチレンおよびポリプロピレンが挙げられる。ポリオレフィンは、接着剤シート100にコシを与えて取扱性を向上させる。ポリアミドとしては、ナイロンが挙げられる。ポリアミドは、施工後の接着剤シート100(具体的には、接着剤シートの硬化体200。後述図11等参照)に耐衝撃性および耐寒冷性を与える。無機物は、不燃性である点で好ましい。
また、非水溶性層160に含まれる非水溶性物質は、繊維の態様であってもよい。繊維は、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、バサルト繊維などの繊維で構成されてよい。特に、強度、柔軟性などの観点からビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維が好ましい。また、強度、隣接する一液湿気硬化型樹脂組成物層120との接着性、および不燃性などの観点からガラス繊維が好ましい。
繊維の具体的態様としては、メッシュ、織布、網、編布および不織布が挙げられ、これらの中から1種を単独で、または2種以上の組み合わせで用いることができる。なお、メッシュとは、複数本の連続繊維束が交差積層し、その交差部分において繊維束同士が好ましくは接着された構造を持つ基材である。具体的には、2軸メッシュ(格子状メッシュ)、3軸メッシュ、4軸メッシュ、5軸メッシュ、およびそれ以上の多次元メッシュが挙げられる。好ましくは、経方向、斜方向、逆斜方向の3方向(具体的には繊維束の交差角が60度となるよう)に積層した3軸メッシュが用いられる。
図1に示す単層の非水溶性層160は、上述の樹脂または無機物のみで構成されてよい。層の態様は、ソリッド層であってもよいし、繊維層であってもよい。あるいは、単層の非水溶性層160は、上述の繊維とそれに含浸された樹脂で構成されてもよい。単層の非水溶性層160に繊維が含まれる場合は、当該繊維は隣接する一液湿気硬化型樹脂組成物層120に積層されている態様であるため、一液湿気硬化型樹脂組成物層120が硬化されると繊維により当該層120が強化され、躯体との固着状態が長期に亘ってより安定的に保たれる。
また、非水溶性層160は、適宜、接着剤層を介して積層されていてよい。あるいは、非水溶性層160が繊維層である場合、繊維層の凹凸がアンカー効果により一液湿気硬化型樹脂組成物層120の表面に食い込んでいてもよい。
単層の非水溶性層160の厚みは、たとえば20μm以上1000μm以下、好ましくは50μm以上500μm以下であってよい。当該厚みが上記下限値以上であることは、樹脂の所望の機能を発揮させる点で好ましく、上記上限値以下であることは、接着剤シート100の薄膜化および取扱性などの点で好ましい。
[1−5.製造]
接着剤シート100の製造方法としては特に限定されないが、膜状に押し出された一液湿気硬化型樹脂組成物の一方の面に水溶性層150、他方の面に非水溶性層160を設けることで得ることができる。
水溶性層150は、予め成膜した一液湿気硬化型樹脂組成物層120の表面に水溶性物質のシートを貼り合わせる方法によって設けてもよいし、水溶性物質のシートの上で一液湿気硬化型樹脂組成物を押し出して成膜する方法によって設けてもよいし、成膜した一液湿気硬化型樹脂組成物層120の表面に水溶性物質の溶液を塗布し乾燥させる方法によって設けてもよい。
非水溶性層160は、予め成膜した一液湿気硬化型樹脂組成物層120の表面に非水溶性物質のシートを貼り合わせる方法によって設けてもよいし、非水溶性物質のシートの上で一液湿気硬化型樹脂組成物を押し出して成膜する方法によって設けてもよい。
[1−6.保存]
接着剤シート100は、使用直前まで、湿気の遮断性を有する包装体内に密封収容される。包装体は、少なくとも湿気の遮断性を有していればよく、ハンドリングおよび廃棄性の観点から、たとえばヒートシールまたは粘着剤によって密封された包装袋であることが好ましく、さらに、金属(特にアルミニウムなど)箔または金属(特にアルミニウムなど)蒸着層を有することがより好ましい。
さらに、包装体に吸湿層を設けてもよいし、包装袋内に乾燥剤を別途封入してもよい。これにより、包装体の内部に含まれる水分が吸湿されるため、接着剤シート100を長期間保存することができる。
包装体に吸湿層を設ける場合は、吸湿能のある組成物が包装体内部に積層されていればよく、例えば、乾燥剤を練り込んだ樹脂組成物を包装体内部に積層することができる。包装体内部に積層する樹脂組成物としては、包装体に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、ゼオライト、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト、硫酸ガリウム、硫酸チタン、硫酸ニッケル、シリカゲル、塩化カルシウム、アルミナ、活性炭などが挙げられ、特に吸湿性能の点でゼオライト、酸化カルシウム、硫酸マグネシウムが好ましい。
乾燥剤としては、例えばゼオライト、硫酸マグネシウム、シリカ、酸化カルシウム、塩化カルシウムのような無機系乾燥剤、ポリアクリル酸誘導体、セルロース誘導体のような吸水性ポリマーなどが挙げられる。乾燥剤は、樹脂組成物に練り込むほか、包装体内部に別途封入して使用してもよい。
また、接着剤シート100は、非水溶性層160に剥離シートが設けられた状態で保存されてもよい。これにより、移送に伴う振動または温度変化によって一液湿気硬化型樹脂組成物が非水溶性層160の表面に滲みでてきた場合であっても、滲み出た一液湿気硬化型樹脂組成物が包装体に付着する等の汚染を防ぐことができる。剥離シートを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、及びナイロン等のポリアミドなどが挙げられ、扱いやすさの点でポリエチレンテレフタレートが好ましい。
[1−7.変形例]
[1−7−1.第1〜第3変形例]
非水溶性層160は、図1に示すように単層であってもよいし、図2、図3および図4に示す第1変形例、第2変形例及び第3変形例それぞれにおける非水溶性層1601,1602,1603のように複層であってもよい。
図2に示す複層の非水溶性層1601は、異なる材料で構成される複数の層が積層されている。図2に示す非水溶性層1601は第1非水溶性層161および第2非水溶性層162からなる2層構成であるが、3層以上で構成されてもよい。複数の層で構成されることにより、非水溶性層1601にそれぞれの層が有する機能を兼備させることができる。
たとえば、非水溶性層1601において、第1非水溶性層161および第2非水溶性層162は、それぞれ異なる樹脂で構成されてよい。
非水溶性層1601において、第1非水溶性層161および第2非水溶性層162のそれぞれが、態様の異なる繊維で構成されてもよい。一例として、強化繊維(好ましくはメッシュ)と不織布との複層構造が挙げられる。互いの繊維層が、ニードルパンチ加工などで一体化させられていてもよい。具体例として、第1非水溶性層161として強化繊維、第2非水溶性層162として不織布である複層構造が挙げられる。この場合、強化繊維が樹脂繊維で構成され、不織布が不燃性の無機繊維で構成されることが好ましい(実施例参照)。この場合、第1非水溶性層161を構成する強化繊維の凹凸がアンカー効果によって隣接層である一液湿気硬化型樹脂組成物層120の表面に食い込んでいてもよい。
非水溶性層1601において、第1非水溶性層161および第2非水溶性層162の一方が繊維層、他方が樹脂層(非繊維層)であってもよい。この場合、繊維層の凹凸がアンカー効果により樹脂層表面に食い込んでいてもよい。また、繊維層が一液湿気硬化型樹脂組成物層120に隣接する第1非水溶性層161の方を構成する場合、凹凸が一液湿気硬化型樹脂組成物層120の表面に食い込んでいてもよい。さらに、繊維層が接着剤シートの最表面側の第2非水溶性層162を構成する場合、繊維層が無機繊維で構成されることで、施工後、接着剤シートの硬化体200の表面が不燃性を有し火災のリスクを低下させることができる。
さらに、上述の非水溶性層1601の例において、非水溶性層1601に繊維が含まれる場合、繊維層には樹脂が含浸されていてもよい。
また、非水溶性層1601に繊維が含まれかつ当該繊維が一液湿気硬化型樹脂組成物層120に接している場合、繊維が一液湿気硬化型樹脂組成物層120に積層されている態様であるため、一液湿気硬化型樹脂組成物層120が硬化されると繊維により当該層120が強化され、躯体との固着状態が長期に亘ってより安定的に保たれる。
図3に示す複層の非水溶性層1602は、第1非水溶性層161および第2非水溶性層162が別の樹脂層163を介して一体化されていることを除いて、図2に示す非水溶性層1601と同様である。別の樹脂層163は、接着剤層であってもよいし、ポリエチレンなどによって構成される熱可塑性樹脂層であってもよい。一例として、第1非水溶性層161を構成するメッシュと、第2非水溶性層162を構成する樹脂シートとを用意し、別の樹脂層163を構成するポリエチレンなどの熱可塑性樹脂を押出機に供給して溶融混練し、メッシュと樹脂シートの間に、押出機からポリエチレン等の樹脂をシート状に押出して連続的に押出ラミネートすることによって積層一体化することで、複層の非水溶性層1602が調製されてよい。
図4に示す複数の非水溶性層1603は、2つの第1非水溶性層161で第2非水溶性層162を挟むように積層されていることを除いて、図2に示す非水溶性層1601と同様である。なお、図4に示す複数の非水溶性層1603では、それぞれの層が直接的に積層されているが、それぞれの層は接着剤層を介して接着されていてもよい。
複層の非水溶性層1601,1602,1603の厚みは、たとえば20μm以上1000μm以下、好ましくは50μm以上500μm以下であってよい。当該厚みが上記下限値以上であることは、接着剤シート100の強化の点で好ましく、上記上限値以下であることは、接着剤シート100の薄膜化および取扱性などの点で好ましい。
さらに、非水溶性層160,1601,1602,1603は、一液湿気硬化型樹脂組成物層120の硬化後に剥離可能となるように、離型処理されていてもよい。
[1−7−2.第4変形例]
また、接着剤シート100は、図5に示す第4変形例のように、その両側の辺縁部において、一液湿気硬化型樹脂組成物層120が積層されない部分が設けられてもよい。図5に示すように、当該辺縁部では非水溶性層160が露出している。躯体表面に接着剤シート100を接着する工程(後述工程2)においては、躯体表面に接着させた接着剤シート100の表面を中央部から辺縁部に向かって押圧することで、躯体との接着剤シート100の間に混入した気泡を脱泡することができる。接着剤シート100に一液湿気硬化型樹脂組成物層が積層されていない部分を設けておくことで、上記の押圧時の負荷によって一液湿気硬化型樹脂組成物が押し出されて辺縁部に進入する。進入した一液湿気硬化型樹脂組成物が非水溶性層160の端に達したことを確認することで、脱泡作業が行われたことを容易に確認できる。
一液湿気硬化型樹脂組成物層120が積層されていない辺縁部の幅としては、例えば、一液湿気硬化型樹脂組成物層120の厚みの5倍以上70倍以下が挙げられ、具体的には、10mm以上100mm以下、好ましくは20mm以上70mm以下とすることがさらに好ましい。また、一液湿気硬化型樹脂組成物層120が積層されていない辺縁部の面積が非水溶性層160の表面積全体に対して占める割合は、例えば5%以上50%以下、好ましくは10%以上40%以下が挙げられる。当該辺縁部の幅及び割合が上記下限値以上であることは、気泡の排除の確実性を高める点で好ましく、上記上限値以下であることは、脱泡作業の作業性を高める点および一液湿気硬化型樹脂組成物層120の硬化層の厚みを確保する点で好ましい。
また、接着剤シート100の非水溶性層160に剥離シートが積層されている場合、剥離シートは、非水溶性層160と同様のサイズで構成されるとともに、剥離シートを積層させたまま上述の脱泡作業を行うことができる。特に、非水溶性層160が繊維層のみで構成されている場合に脱泡作業を容易に行うことができる。
[1−7−3.第5変形例]
図6に示す第5変形例の接着剤シート100aは、一液湿気硬化型樹脂組成物層120aと、水溶性層150と、非水溶性層160(または非水溶性層1601,1602,1603)とを含む。接着剤シート100aは、一液湿気硬化型樹脂組成物層120aを除いて上述の接着剤シート100と同様である。
一液湿気硬化型樹脂組成物層120aは、一液湿気硬化型樹脂組成物と強化繊維とを含む。強化繊維には、一液湿気硬化型樹脂組成物が含浸されている。本実施形態では、一液湿気硬化型樹脂組成物が含浸された樹脂含浸繊維層130aの両面に、繊維を含まない一液湿気硬化型樹脂組成物で構成される樹脂層121a,122aが積層されている。本実施形態では、樹脂含浸繊維層130aの両面に樹脂層121a,122aが積層されているが、少なくとも、水溶性層150の側に樹脂層121aが積層されていればよい。このように、躯体910の表面930に接触させる側に繊維を含まない樹脂層121aを積層することで、接着剤シート100aの当該表面930への密着性が良好となる。
樹脂含浸繊維層130aに含まれる強化繊維は、その厚さ方向に連通する連通孔を有していればよい。強化繊維全体の面積に対する連通孔の開口面積の割合はたとえば30%以上80%以下であってよい。当該開口面積の割合が上記下限値以上であることは、樹脂含浸繊維層130aとそれに隣接する樹脂層121a,122aとの接着性との一体性に優れる点で好ましく、上記上限値以下であることは、強化繊維による一液湿気硬化型樹脂組成物層120aの補強強化に優れる点で好ましい。
強化繊維は、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、バサルト繊維などの繊維で構成されてよい。特に、強度、柔軟性、一液湿気硬化型樹脂組成物との接着性、躯体の表面との密着性などの観点からビニロン繊維が好ましい。また、強度、一液湿気硬化型樹脂との接着性、および不燃性などの観点からガラス繊維が好ましい。
強化繊維の具体的態様としては、メッシュ、織布、網、編布および不織布が挙げられ、これらの中から1種を単独で、または2種以上の組み合わせで用いることができる。なお、メッシュとは、複数本の連続繊維束が交差積層し、その交差部分において繊維束同士が好ましくは接着された構造を持つ基材である。具体的には、2軸メッシュ(格子状メッシュ)、3軸メッシュ、4軸メッシュ、5軸メッシュ、およびそれ以上の多次元メッシュが挙げられる。好ましくは、経方向、斜方向、逆斜方向の3方向(具体的には繊維束の交差角が60度となるよう)に積層した3軸メッシュが用いられる。
[1−7−4.第6変形例]
図7に示す第6変形例の接着剤シート100bは、一液湿気硬化型樹脂組成物層120と、水溶性層150とを含む。水溶性層150は、一液湿気硬化型樹脂組成物層120の一方の面だけでなく他方の面にも積層されていることを除いての接着剤シート100と同様である。
本実施形態の接着剤シート100bには表裏がない点で取扱及び施工が容易である。
[2.導水補修工法]
本発明の導水補修工法は、上述の接着剤シートを利用する。図8から図11に、第1実施形態の導水補修工法を模式的に説明する。
本発明の導水補修工法は、ひび割れを生じている躯体(図8参照)の表面にスペーサを設ける工程1(図9参照)と、接着剤シートを躯体の表面に接着させる工程2(図10参照)と、接着剤シートを硬化させる工程3(図11参照)とを含む。なお、工程1に先立って、適宜、前処理がなされてよい。本実施形態では上述の接着剤シート100を用いて施工する例を挙げるが、他の変形例の接着剤シートにも同様に適用される。
[2−1.躯体]
本発明で補修対象となる図8に示す躯体910としては、鉄道、道路等のトンネル、橋梁、建物等のコンクリート構造物であってよい。補修対象の躯体910にはひび割れ920が生じている。本発明は、水がひび割れ920の空隙を通って表面930で漏水が生じている場合に有用である。図示されているように、ひび割れ920はある程度の幅Hをもって蛇行している。本発明の導水補修工法は、幅Wが50cm以上である場合に特に有用である。
[2−2.前処理]
前処理においては、躯体910の表面930が調整されてよい。具体的には、表面調整の方法として、躯体の表面に存在する脆弱層を除去することができる。このような表面調整のより具体的な方法として、研磨、ケレン、サンドブラスト、ウォータージェット等が挙げられ、このような方法を行うために、サンダー、グラインダー、ワイヤーブラシ等を用いることができる。表面調整は、接着剤シート100が貼り付けられるひび割れ920の周辺部分のみに施されてよい。一方、ひび割れ920に沿って溝を切削する処理(例えば、Vカット切削、Uカット切削等)は、躯体910にとって強度低下リスクとなる施工傷を生じるため、本発明では行わない。
[2−3.工程1]
工程1では、図9に示すように、ひび割れ920の方向に沿って長尺のスペーサ300を躯体910の表面930に設ける。スペーサ300は、後述の工程2で貼り付けられる接着剤シート100を躯体910の表面930から持ち上げるように機能し、これにより接着剤シート100と当該表面930との間に空間(導水用空隙)を確保するための部材である。つまり、スペーサ300が設けられる位置は、導水用空隙の経路を決定する。導水用空隙の経路は、ひび割れ920上の経路、およびひび割れ920の終端から導水用空隙の流末(図11の流末E参照)まで漏水を案内すべき経路が含まれる。
スペーサ300は、接着テープ又は接着剤を介して躯体910の表面930に貼り付けられてよい。スペーサ300を貼り付けるための接着テープ又は接着剤としては、スペーサ300及び躯体910の表面930との間での材料適合性があれば特に限定されず、また、その接着強度も限定されない。本発明においては、施工中にスペーサ300の位置がずれない程度に貼り付けられていればよいため、当該接着強度としては、少なくとも仮止めが可能な程度の強度であればよい。
スペーサ300は、ひび割れ920をふさがないように、ひび割れ920の近傍に設けられる。本実施形態では、ひび割れ920の両側にそれぞれスペーサ300が設けられる。スペーサ300がひび割れ920から隔てる距離dは特に限定されないが、導水用空隙の幅を確保することで導水性を容易に得る観点から、例えば5mm以上、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上であってよく、また、躯体910の表面930において導水用空隙が占める面積を低減させる観点から、例えば300mm以下、好ましくは200mm以下であってよい。
スペーサ300は可撓性を有するため、ひび割れ920の延在形状に容易に追随させることができる。スペーサ300の弾性率としては特に限定されないが、施工時にかけられる負荷に抗い導水用空隙の高さを確保することで導水性を容易に得る観点から、例えば5MPa以上、好ましくは10MPa以上であってよく、ひび割れ920の延在形状への追随性を良好に得る観点から、たとえば200MPa以下、好ましくは100MPa以下であってよい。ここで、スペーサ300の弾性率は、JIS K7161に準拠して測定される値である。
スペーサ300の幅tは特に限定されないが、躯体910の表面930との接地面積を確保する観点から、例えば5mm以上、好ましくは10mm以上であってよい。躯体910の表面930との接地面積を充分に確保することで、施工時(たとえば脱泡作業等)に接着剤シート100にかかる負荷によって接着剤シート100からの樹脂が導水用空隙へ進入することをより容易に防止できるため、導水性をより容易に得ることができる。スペーサ300の幅tの範囲の上限は特に限定されないが、接着剤シート100と躯体表面との接地面積(後述図10の幅mで占められる部分)を確保しやすくする観点、及び導水用空隙の確保に必要な空間を低減する観点から、スペーサ300の幅tの範囲は例えば30mm以下、好ましくは20mm以下であってよい。
スペーサ300の高さhは特に限定されないが、施工時にかけられる負荷に抗い導水用空隙の高さを確保することで導水性を容易に得る観点から、例えば3mm以上、好ましくは5mm以上であってよい。スペーサ300の高さhの範囲の上限は特に限定されないが、スペーサ300により導水補修部分が躯体表面から過度に突出することを抑制する観点から、スペーサ300の高さhは例えば30mm以下、好ましくは20mm以下であってよい。
スペーサ300の幅tと弾性率との積は、導水用空隙の確保に必要な空間の低減及び導水性の確保の観点から、例えば20mmMPa以上500mmMPa以下、好ましくは50mmMPa以上200mmMPa以下、より好ましくは70mmMPa以上170mmMPa以下であってよい。
スペーサ300を構成する材料としては、上述の可撓性を発揮可能であれば特に限定されない。本実施形態においては、発泡樹脂であることが好ましい。これによって、躯体910の表面930との設置面積が充分に得られるため、施工時(たとえば脱泡作業等)に接着剤シート100にかかる負荷によって接着剤シート100からの樹脂が導水用空隙へ進入することをより容易に防止できるため、導水性をより容易に得ることができる。発泡樹脂のセル形態としては、独立孔及び連続孔のいずれであってもよいが、スペーサ300の内側(ひび割れ920の側)の空間で漏水を集約しやすくする点、又はスペーサ300自体が水を含むことによる劣化を防止する観点から、独立孔であることが好ましい。さらに、発泡樹脂を構成する樹脂としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)などの耐水性樹脂であることが好ましい。これによって、良好な導水性を長期間にわたって維持することができる。
[2−3.工程2]
工程2では、図10に示すように、接着剤シート100を、スペーサ300を覆い且つひび割れ920を跨ぐように躯体910の表面930に接着させる。接着剤シート100は、水溶性層150及び躯体910の表面930の少なくともいずれかが湿潤した状態で接着させる。具体的には、躯体910の表面930を水で濡らした状態または漏水で濡れている状態、接着剤シート100の水溶性層150表面を水で濡らした状態、もしくは、躯体910の表面930と接着剤シート100の水溶性層150表面との両方が水および/または漏水で濡れている状態で、接着剤シート100を貼り付ける。このような湿潤状態で接着剤シート100を貼り付けることにより、水溶性層150が溶けて一液湿気硬化型樹脂組成物層120が露出し、躯体910の表面930に一液湿気硬化型樹脂組成物層120が密着する。必要に応じて接着剤シート100を中央部から辺縁部に向かって転圧し、接着剤シート100と躯体910の表面930との間に混入した気泡を排除する脱泡作業を行うことより良好な密着状態を生じさせる。
本工程2では、工程1で設けられたスペーサ300で接着剤シート100が躯体910の表面930から持ち上がった状態で空隙sが形成される。接着剤シート100がひび割れ920を跨ぐように配設されるため、空隙sはひび割れ920内部と連通し、導水用空隙として適した空間となる。
接着シート100は、スペーサ300で持ち上げられた空間の両端部で躯体910の表面930に接着されることで、空隙sを当該両端部で封止する。封止効果を良好に得るために、当該両端部における接着部分それぞれの幅mは、スペーサ300の高さ等にもよるが、例えばスペーサ300の高さの1倍以上、好ましくは1.5倍以上であってよい。具体的には、当該接着部分それぞれの幅mは、3cm、好ましくは5cm以上であってよい。当該接着部分それぞれの幅mの範囲の上限は特に限定されないが、導水補修のみ(つまり導水用空隙の確保のみ)を目的とする場合、幅mは、スペーサ300の高さの10倍以下、具体的には30cm以下が挙げられる。或いは、接着剤シートとして強化繊維を含むものを用いる場合は、導水補修に加えて躯体910組織の剥落防止を兼ねる観点から、当該接着部分の幅mは、上記範囲の上限を超えて設けられてもよい。
工程2において、接着剤シート100を用いることで、シート自体が一液湿気硬化型の接着剤として働くため、現場での接着剤組成物の調製作業、水滴のない状態を維持する作業、及び接着剤塗布作業等の煩わしい作業が不要となる。従って、優れた施工性が得られる。
[2−4.工程3]
工程3では、図11に示すように、硬化工程では、躯体910に接着された接着剤シート100の一液湿気硬化型樹脂組成物層120を硬化する。これによって、接着剤シート100の硬化体200が生じ、導水補修体900が得られる。具体的には、接着剤シート100一液湿気硬化型樹脂組成物層120が、躯体910の補修すべき面に接着させられた状態で、工程2で与えられた水分を利用して硬化反応が進行した結果、一液湿気硬化型樹脂組成物120の硬化物(つまり一液湿気硬化型樹脂硬化層220。図中、接着剤シートの硬化体200の層構造の表記は省略している。)が生じる。これによって、一液湿気硬化型樹脂硬化層220が躯体910の表面930に強固に固着し、接着剤シートの硬化体200が躯体910と一体化する。これによって、躯体910の表面930に、導水用空隙S,S’がひび割れ920に沿って流末Eまで設けられた導水補修躯体900が得られる。
一液湿気硬化型樹脂硬化層220(つまり一液湿気硬化型樹脂組成物の硬化物)の引張強さTB(N/mm2)は、たとえば0.7N/mm2以上、好ましくは1.0N/mm2以上、より好ましくは1.5N/mm2以上であってよい。また、破断時伸びEB(%)は、たとえば10%以上、好ましくは50%以上であってよい。引張強さTBおよび破断時伸びEBが上記範囲となるように設計することにより、躯体910の表面930との接着強度により一層優れ、止水性により一層優れる。引張強さTBの上限は特に限定されず、大きいほど好ましい。破断時伸びEBの上限も特に限定されず、大きいほど好ましい。
なお、引張強さTBおよび破断時伸びEBは、JIS K6251に準拠してダンベル状3号形の試験片を引張速度500mm/分にて得られる値である。
一液湿気硬化型樹脂組成物硬化層220が止水性に優れるため、工程2で形成した空隙sを水密性に優れた導水用空隙S,S’として機能させることができる。本実施形態のように、スペーサ300と躯体910の表面930とが十分な接地面積を確保できており、スペーサ300の当該表面930への接着性が良好であれば、主にスペーサ300間の導水用空隙S内でひび割れ920からの漏水が導水されるが、導水される漏水は、スペーサ300を超えてスペーサ300の外側の導水用空隙S’に進入しても構わない。
導水補修体900には、切削跡及びアンカーボルト固定穴などの施工傷が無いため、もともとひび割れの発生及び漏水によって強度リスクをはらんでいる躯体910へ、施工傷による悪影響がなく、躯体910自体の強度が温存されている。接着剤シートの硬化物200に強化繊維を含んでいる場合は、導水補修体900には、導水補修に加えて躯体910組織の剥落防止が施されている。
さらに、スペーサ300がひび割れ920の延在形状に追随しているため、導水用空隙S,S’もひび割れの延在形状に沿い、導水用空隙S,S’の確保に必要な空間が低減される。つまり、躯体910の表面930において導水用空隙S,S’が占める面積が低減される。図示されるように、導水用空隙が占める幅は本実施形態の場合で主にSw(導水用空隙Sの幅)、最大でS’w(さらに導水用空隙S’を加えた幅)である。これは、樋形状の部材を用いて導水補修する従前の方法で導水用空隙の確保に必要となる幅(図8の幅Wに相当)に比べて大幅な低減となる。したがって、漏水が効率よく集約されることで導水性が向上するとともに、躯体910の表面930において漏水による湿潤を許す面積が小さいため、腐食防止性及び強度維持性の点でも好ましい。
[2−5.仕上げ処理]
硬化工程により一液湿気硬化型樹脂硬化層220を得た後、非水溶性層160は一液湿気硬化型樹脂硬化層220に積層されたままであってもよいし、剥離させてもよい。
また、アクリルウレタン系トップコート、アクリルシリコン系トップコート、フッ素系トップコート、アクリル系トップコート、ウレタン系トップコート、ポリウレア系トップコート等を施してもよい。
[2−6.他の実施形態]
図12に、本発明の第2実施形態の導水補修工法によって得られる導水補修体900cの断面を模式的に示す。本実施形態では、スペーサ300をひび割れ920の片側にのみ設けたことを除いて、上述の第1実施形態と同様にして得られる。導水補修体900cにおいても、1本のスペーサ300を覆うように且つひび割れ920に跨るように接着剤シートが躯体910の表面930に接着され、硬化を経て固着されることで、水密性の高い導水用空隙Sc,S’cが得られる。
図13に、本発明の第3実施形態の導水補修工法によって得られる導水補修体900cの断面を模式的に示す。本実施形態では、スペーサ300dとして可撓性チューブを用いることを除き、上述の第2実施形態と同様にして得られる。また、図示しないが、スペーサ300dとしての可撓性チューブをひび割れ920の両側に設けることで、上述の1実施形態と同様にして導水補修体を得てもよい。スペーサ300dに用いられる可撓性チューブとしては、メッシュチューブ及びスパイラルチューブ等の、JIS K7161に準拠した固有の弾性率は有しないもののチューブ体を構成する編組構造又は螺旋構造自体が伸縮性及び/又は弾性を有することで可撓性を呈するチューブ体(材質は、硬質樹脂及び軟質樹脂、並びに金属を問わない)、並びに軟質樹脂製のチューブ体(押出成形チューブ、メッシュチューブ、及びスパイラルチューブを問わない)等が挙げられる。図13においては、スペーサ300dとしてメッシュチューブを例示している。これらスペーサ300dとしての可撓性チューブの外径(幅t=高さh)及びひび割れ920からの幅dは、それぞれ、第1実施形態及び第2実施形態で用いられるスペーサ300の幅t及び高さh並びに幅dと同様に決定することができる。また、これら可撓性チューブを躯体910の表面930上に設ける場合、第1及び第2実施形態で用いられる接着テープ又は接着剤を用いてもよいが、可塑性止水材を用いると、より容易に躯体910の表面930上に貼り付けることができる。さらに、スペーサ300dを覆うように接着剤シートが躯体910の表面930に接着され、硬化を経て固着されることで、水密性の高い導水用空隙Sdが得られる。
図14に、本発明の第4実施形態の導水補修工法によって得られる導水補修体900eの断面を模式的に示す。本実施形態では、スペーサ300e自体がひび割れ920を跨ぐように躯体910の表面930上に配設されることを除いて、上述の第1実施形態と同様にして得られる。スペーサ300eとしては、メッシュチューブ等の、JIS K7161に準拠した固有の弾性率は有しないもののチューブ体を構成する編組構造自体が伸縮性及び/又は弾性を有することで可撓性を呈するチューブ体(材質は、硬質樹脂及び軟質樹脂、並びに金属を問わない)の半割体、並びに軟質樹脂製のチューブ体(押出成形チューブ及びメッシュチューブを問わない)の半割体等が挙げられる。図14においては、スペーサ300eとしてメッシュチューブの半割体を例示している。スペーサ300eは、可塑性止水材を用いて躯体910の表面930上に設けることができる。さらに、スペーサ300eを覆うように接着剤シートが躯体910の表面930に接着され、硬化を経て固着されることで、水密性の高い導水用空隙Seが得られる。
なお、上述の第3及び第4実施形態において用いられるスペーサ300d,300eのうち、JIS K7161に準拠した測定が可能なものの具体的な弾性率は、第1実施形態のスペーサ300において述べた弾性率と同様である。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(1)接着剤シートの作成
次のようにして、図1に示す接着剤シート100の第1変形例(図2)を作成した。剥離シートとして用意したポリエチレンテレフタレートシートの上に、ガラス不織布(図2の非水溶性層162に相当)及び強化繊維としてビニロン製3軸メッシュ(積水フィルム社製ビニロン3軸ソフ、図2の非水溶性層161に相当)を積層し、さらに、変成シリコーン樹脂(積水フーラー社製#77EXIIホワイト)を塗布し、一液湿気硬化型樹脂組成物層(図1の一液湿気硬化型樹脂組成物層120に相当)を得た。この場合、それら非水溶性層の両端から2cm程度の範囲においては塗布を行わず、非水溶性層1601を露出させた(図5参照)。さらに、ポリビニルアルコールシート(図1の水溶性層150に相当)を一液湿気硬化型樹脂組成物層に積層することによって、非水溶性層1601を有する接着剤シート100を作成した。得られた接着剤シート100において、一液湿気硬化型樹脂組成物層120(変成シリコーン樹脂層)の厚みは2mm、水溶性層150(ポリビニルアルコールシート層)の厚みは40μm、非水溶性層1601(つまりガラス不織布とビニロン製3軸メッシュとの厚みの合計)の厚みは800μmであった。また、剥離シート(ポリエチレンテレフタレートシート)の厚みは50μmであった。
(2)導水補修体モデルの作成
躯体のモデルとして、図15(a)に示すコンクリートU形側溝蓋(株式会社ユーコウ商会製)910f(600mm×400mm×60mm)を、24時間水に浸漬したものを用意した。このコンクリートU形側溝蓋910fには、10cmの蛇行幅Wでひび割れ920fが生じていると仮定した。
コンクリートU形側溝蓋910fの表面930fの水を軽く拭取った後、図示されたように表面930fの方向が鉛直面方向となるようにコンクリートU形側溝蓋910fを立てた状態で以下の作業を行った。粘着テープを用いてコンクリートU形側溝蓋910fの表面930fにスペーサ300を1本貼り付けた。この場合、仮想ひび割れ920fの延在形状に追随するように、スペーサ300も湾曲させて貼り付けた。また、スペーサ300は、仮想ひび割れ920fからおおよそ5mm(図9の距離d)離間させて貼り付けた。なお、スペーサ300には、断面が10mm角の正方形であるポリエチレン製フォーム材を用いた。本実施例で用いたスペーサ300の弾性率(JIS K7161に準拠した測定値)は10MPaであった。
上記(1)で得られた非水溶性層1601を有する接着剤シート100の剥離シートを剥離した後、ポリビニルアルコールシートの面を水で濡らした状態にし、濡らした面が躯体側となるように、接着剤シート100を、スペーサ300を覆うようにコンクリートU形側溝蓋910fの表面930fに接着させた。この際、接着された接着剤シート100を、中央部から辺縁部の方向(仮想ひび割れ920fから離れる方向)へ押圧することで脱泡作業を行った。脱泡作業における押圧は、押し出された一液湿気硬化型樹脂組成物が非水溶性層1601の端に達するまで行った。
接着剤シート100が接着されたコンクリートU形側溝蓋900fを7日間養生して接着剤シートの硬化体200とし、図15(b)に示す導水補修体モデル900fを得た。この導水補修体モデル900fは、図12に示す導水補修体900cのモデルである。
[実施例2]
コンクリートU形側溝蓋900fの表面930fに、スペーサ300としてのポリエチレン製フォーム材を、仮想ひび割れ920fを挟んで反対側にさらにもう1本貼り付けたことを除き、実施例1と同様にして導水補修体モデルを得た。本実施例で得られた導水補修体モデルは、図11に示す導水補修体900のモデルである。
[実施例3]
スペーサ300として、ポリエチレン製フォーム材の代わりにポリエチレン樹脂製のスパイラルチューブ(外径12.0mm)を用い、粘着テープの代わりに可塑性止水材(クニミネ工業製クニシールC−31)を用いてコンクリートU形側溝蓋910fの表面930fに貼り付けたことを除き、実施例1と同様にして導水補修体モデルを得た。本実施例で得られた導水補修体モデルは、図13に示す導水補修体900dのモデルである。
[実施例4]
スペーサ300として、ポリエチレン製フォーム材の代わりにPET樹脂製のメッシュ状パイプ(内径15mm)の半割体を用い、粘着テープの代わりに可塑性止水材(クニミネ工業製クニシールC−31)を用いてコンクリートU形側溝蓋910fの表面930fに貼り付けたことを除き、実施例1と同様にして導水補修体モデルを得た。本実施例で得られた導水補修体モデルは、図14に示す導水補修体900eのモデルである。
[比較例1]
スペーサとして硬質塩ビ製パイプの半割体(樋状部材)を用意した。硬質塩ビ製パイプの分割体は、軸方向に平行に分割された分割体であり、軸方向に垂直な断面において、内壁円弧の弦の長さが15cmである。コンクリートU形側溝蓋900fの表面930fに、硬質塩ビ製パイプの分割体を、可塑性止水材(クニミネ工業製クニシールC−31)を用いて、仮想ひび割れ920fの蛇行幅W全体に跨るように貼り付けた。接着剤シート100を、実施例1と同様にして接着、及び養生により固着させ、導水補修体のモデルを得た。
[導水性試験]
実施例及び比較例の導水補修体モデルについて、図15の矢印部分から導水用空隙に水を注ぎ、流末Eから水が流れ出ることを確認した。
[結果]
実施例1〜3及び比較例1の全ての導水補修体が、導水性試験に合格した。しかしながら、比較例1の導水補修体の作成においては、スペーサとして用いた硬質塩ビ製パイプの分割体は、仮想ひび割れ920fの蛇行幅Wよりも大きい幅を有するものが必要であり、本発明の導水補修工法ではアンカーボルトなどの物理的な固定手段も用いないため、コンクリートU形側溝蓋910fを立てた状態での施工が非常に困難であった。また、比較例1の導水補修体では、導水用空隙が蛇行幅Wを超えるほどに幅広となるため、導水性試験においてコンクリートU形側溝蓋910fの表面930fが水に晒される面積が非常に大きく、また、水の集約性も悪かった。上述の比較例では、仮想ひび割れ920fの蛇行幅Wが10cmのモデルを用いたが、蛇行幅Wが例えば50cmを超えるような実際の施工スケールにおいては上述の問題はさらに深刻となる。
一方で、可撓性のスペーサを用いた実施例1〜3の導水補修体の作成においては、スペーサとして比較的幅が小さい部材を用いるため施工が容易であった。特に、ポリエチレンフォームをスペーサとして用いた実施例1及び2では、スペーサとコンクリートU形側溝蓋910fの表面930fとの接地面積を容易に確保することができるため、より施工が容易であった。さらに、スペーサを仮想ひび割れ920fの両端に配設した実施例2では、接着剤シートを接着する工程において導水用空隙を与える空隙の確保がより容易であった。また、実施例1〜3の導水補修体では、導水用空隙が、仮想ひび割れ920fの蛇行幅Wより大幅に幅狭であるため、導水性試験においてコンクリートU形側溝蓋910fの表面930fが水に晒される面積が非常に小さくなり、また、水の集約性も良好であった。上述の実施例では、仮想ひび割れ920fの蛇行幅Wが10cmのモデルを用いたが、蛇行幅Wが例えば50cmを超えるような実際の施工スケールにおいても、同様に施工可能であり、同様の良好な結果を得ることができることは明らかである。
なお、上述の実施例で用いた一液湿気硬化型樹脂組成物は、以下の試験例で示されるように良好な止水性及び接着性を有しているため、上述の実施例で得られた導水補修体における導水用空隙が良好な水密性を有していることが容易に推認できる。
[試験例]
(1)接着剤シート又は接着剤樹脂組成物の用意
・参考例1〜4
次のようにして、図1の接着剤シート100を作成した。非水溶性層160を構成するためのポリエチレンテレフタレートシートの上に、一液湿気硬化型樹脂組成物層120を構成するための表1に示す接着剤樹脂組成物を塗布したのち、水溶性層150を構成するためのポリビニルアルコールシートを積層することによって、接着剤シート100(図1参照)を作成した。得られた接着剤シート100において、一液湿気硬化型樹脂組成物層120(変成シリコーン樹脂層)の厚みは3mm、水溶性層150(ポリビニルアルコールシート層)の厚みは40μm、非水溶性層160(ポリエチレンテレフタレートシート層)の厚みは50μmであった。
・比較参考例1
表1に示す接着剤樹脂組成物を用意した。比較参考例1では、接着剤樹脂組成物から接着剤シートを作成しなかった。
・比較参考例2
表1に示す接着剤シートを用意した。
(2)一液湿気硬化型樹脂の諸物性
参考例1から参考例4で用いた一液湿気硬化型樹脂組成物およびその硬化物について、以下のように諸物性値を測定した。
(2−1)粘度
一液湿気硬化型樹脂組成物(硬化前)の粘度を、JIS Z 8803に準拠して単一円筒形回転粘度計としてB型粘度計を用い、No.7ローター、23℃で測定した。
(2−2)チクソインデックス
一液湿気硬化型樹脂組成物(硬化前)のチクソインデックス値は、23℃の条件下で、B型粘度計のNo.7ローターを用いて、回転速度1rpmおよび10rpmで計測される粘度(Pa・s)の比〔(1rpmでの粘度)/(10rpmでの粘度)〕から求めた。
(2−3)引張強さTBおよび破断時伸びEB
一液湿気硬化型樹脂硬化物(硬化後)の引張強さTBおよび破断時伸びEBを、JIS K6251に準拠してダンベル状3号形の試験片を引張速度500mm/分にて測定した。
(3)止水性
(3−1)止水性試験用のコンクリート試験体の作成
躯体を模して、図16(a)に示すコンクリートの試験体910g(140mm×70mm×10mm)を用意した。試験体の中央には幅1mm、長さ60mmのスリットSLが設けられており、水中に24時間浸漬された。
参考例1〜4の接着剤シートの評価のため、スリットSLおよびその周辺の試験体表面に、参考例1〜4の接着剤シート100の水溶性層150(ポリビニルアルコールシート層)の面を水で濡らした状態にし、当該面を試験体に貼り付けた。
比較参考例1の接着剤樹脂組成物の評価のため、スリットSLおよびその周辺の試験体910g表面に、樹脂組成物を塗布した。
比較参考例2の接着剤シートの評価のため、スリットSLおよびその周辺の試験体910g表面に、比較参考例2の接着剤シートを貼り付けた。
その後、それぞれの試験体910gを7日間養生させることにより、図16(b)に示す止水性試験用のコンクリート試験体を得た。なお、図16(b)では、代表して参考例1〜4の接着剤シート100を用い、接着剤シートの硬化体200を固着させた例を示している。
(3−2)止水性試験
図16(b)に示すように、コンクリート試験体910gにおいて、接着剤シートの硬化体200を設けた側とは反対の面に、両端開口した筒体(開口断面積約30 cm2)を配し、当該筒体の中に300gの水を入れた。これにより、スリット920cの開口部に約10gf/cm2の水圧を負荷し、1週間放置した。
(4)接着力
(4−1)接着力試験用のコンクリート試験体の作成
コンクリート普通平板(300mm×300mm×60mm)を24時間、水に浸漬した。軽く表面の水を拭取ったのち、参考例1から参考例4の一液湿気硬化型樹脂組成物を用いた接着剤シート100の水溶性層(ポリビニルアルコールシート層)の面を水で濡らした状態にし、当該面を貼り付け、7日間養生した。これによって得られた、接着剤シートの硬化体200が固着したコンクリート普通平板910hを、40mm×40mmの方形にダイヤモンドカッターにて切り出した。さらに、接着剤シートの硬化体200側に、40mm×40mm×10mmの鋼製アタッチメントATをエポキシ樹脂系接着剤によって貼り付け、接着剤を硬化させた。
(4−2)平面接着力測定
建研式接着力試験器を用い、鋼製アタッチメントATを垂直方向(図17中矢印方向)に引張り、接着剤シートの硬化体200の固着力(平面接着力)を測定した。
(5)結果
上記の試験の結果を表1に示す。表1に示すように、参考例1〜参考例4で用いた一液湿気硬化型樹脂組成物をコンクリート試験体に適用すると、良好な止水性が発揮された。なお、比較参考例1では、参考例2と同じ変性シリコーン樹脂を用いているが、接着剤シートの形態である参考例2とは異なり塗布作業が必要であるため、作業性(施工性)は格段に悪かった。また、比較参考例2は、シートの形態で施工可能であるため作業性は問題なかったが、止水性に問題があった。また、参考例1〜参考例4で用いた一液湿気硬化型樹脂組成物をコンクリート試験体に適用すると、良好な平面接着力が発揮された。特に変成シリコーン樹脂を用いた参考例1および参考例2で高い平面接着力が発揮された。
本発明の好ましい実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれらのみに限定されるものではなく、本発明の趣旨から逸脱することのない様々な実施形態が他になされる。
[実施形態の各部と請求項の各構成要素との対応関係]
本明細書において、接着剤シート100,100a,100bが請求項の「接着剤シート」に相当し、一液湿気硬化型樹脂組成物層120が「一液湿気硬化型樹脂組成物層」に相当し、水溶性層150が「水溶性層」に相当し、非水溶性層160,1601,1602,1603が「非水溶性層」に相当し、一液湿気硬化型樹脂硬化層220が「一液湿気硬化型樹脂組成物硬化層」に相当し、スペーサ300,300d,300eが「スペーサ」に相当し、導水補修体900,900c,900d,900e及び導水補修体のモデル900fが「導水補修体」に相当し、躯体910及びコンクリート普通平板910fが「躯体」に相当し、ひび割れ920および仮想ひび割れ920fが「ひび割れ」に相当し、表面930,930fが「表面」に相当し、幅tが「スペーサの幅」に相当し、高さhが「スペーサの高さ」に相当する。
100,100a,100b 接着剤シート
120,120a 一液湿気硬化型樹脂組成物層
150 水溶性層
160,1601,1602,1603 非水溶性層
220 一液湿気硬化型樹脂硬化層(一液湿気硬化型樹脂組成物硬化層)
300,300d,300e スペーサ
900,900c,900d,900e 導水補修体
900f 導水補修体のモデル
910 躯体
910f コンクリートU形側溝蓋(躯体のモデル)
920 ひび割れ
920f 仮想ひび割れ(ひび割れのモデル)
930,930f 表面
t スペーサの幅
h スペーサの高さ

Claims (8)

  1. 漏水を伴う躯体のひび割れに対する導水補修工法であり、
    前記ひび割れの方向に沿って、可撓性のスペーサを前記躯体の表面に設ける工程1と、
    一液湿気硬化型樹脂組成物層、及び前記一液湿気硬化型樹脂組成物層の少なくとも一方の面に積層された水溶性層を含む接着剤シートを、前記水溶性層及び前記躯体の表面の少なくともいずれかが湿潤した状態で、前記スペーサを覆い且つ前記ひび割れを跨ぐように前記躯体の表面に接着させる工程2と、
    前記一液湿気硬化型樹脂組成物層を硬化させる工程3と、
    を含む、導水補修工法。
  2. 前記スペーサが発泡樹脂である、請求項1に記載の導水補修工法。
  3. 前記発泡樹脂が発泡ポリオレフィンである、請求項2に記載の導水補修工法。
  4. 前記工程1において、前記スペーサを前記ひび割れの両側にそれぞれ設ける、請求項1〜3のいずれかに記載の導水補修工法。
  5. 前記スペーサの幅と弾性率との積が20mm・MPa以上500mm・MPa以下である、請求項2〜4のいずれかに記載の導水補修工法。
  6. 前記スペーサの高さが3mm以上30mm以下である、請求項2〜5のいずれかに記載の導水補修工法。
  7. 前記接着剤シートが強化繊維を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の導水補修工法。
  8. ひび割れを有する躯体と、
    前記ひび割れの方向に沿って設けられた可撓性のスペーサと、
    前記スペーサを覆い且つ前記ひび割れを跨いで前記躯体の表面に接着している、一液湿気硬化型樹脂組成物硬化層と、
    を含む、導水補修体。
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