JP2019077936A - 電解用電極およびそれを備えた電気機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】オゾンの生成性能に優れ、耐久性を向上させた電解用電極を提供すること。【解決手段】電極基体12と、電極基体12の表面に形成され、貴金属、貴金属を含む合金、貴金属を含む酸化物のうち、少なくとも1種からなる電極反応層13と、電極反応層13の表面に形成され、バインダーを主成分とし、水と電極反応層の表面との接触面積を制限する流体制限層14とから構成されている電解用電極11であり、流体制限層14が水の電極反応層13との接触を制限して酸素生成の電圧を高くし、オゾンを生成させるとともに、流体制限層14をバインダー材料で形成することにより、流体制限層14の剥離を防止し、耐久性を向上できる。【選択図】図1
Description
本発明は、水を電気分解し、活性物質を生成する電解用電極に関するものである。
従来、この種の電解用電極は、導電性基体の表面に貴金属、貴金属を含む合金、貴金属酸化物のいずれかを含む中間層を形成し、さらにこの中間層の表面に酸化触媒作用を有する誘電体を含む層状の表面層を形成するとともに、表面層には表面層を貫通し中間層に到達する孔を形成している(例えば、特許文献1参照)。
図4は、特許文献1に記載された従来の電解用電極の厚さ方向の概略断面拡大図を示すものである。
図4に示すように、電解用電極1を構成する導電性基体2の一方の表面に貴金属、貴金属を含む合金、もしくは貴金属酸化物からなる中間層3が形成され、さらに中間層3の表面にはタンタル、アルミニウム、チタン、タングステン、ニオブなどのアルコキシド化合物と溶剤の混合物を熱分解して得られる酸化物からなる誘電体材料の表面層4が形成されている。
また、この表面層4は、誘電体材料が中間層3の表面に塗布、常温乾燥、220℃乾燥、600〜700℃の高温焼成の工程を十数回繰り返して行なわれ、層状の構造となるように形成される。これにより、表面層4の厚さ方向には多数のクラックが発生し、このクラックを起点とし表面層4を貫通して中間層3まで到達することにより孔5が形成される。
電解用電極1をアノードとし、カソード電極を用いて水を電気分解すると、電解用電極1の側では水が孔5を通って中間層3に到達することにより、孔5と連接する中間層3の表面部分の僅かな面積上で電極反応が起こり、孔5と連接する中間層3の部分の貴金属の電流密度が上昇し、さらには表面層4の孔5周囲の誘電体材料の触媒作用により酸素が酸化されオゾンが生成する。
しかしながら、前記従来の構成では、表面層4を形成するために十数回の塗布、乾燥、焼成を繰り返しており、このような多層構造になると、表面層4の膜厚が不均一となることや発生したクラックの分岐と結合が複雑な構造となるので、クラックを起点とする孔5の安定した形成が困難となり、オゾンの生成が安定しないという課題を有していた。
また、表面層4の形成に十数回の塗布、乾燥、焼成を繰り返すという煩雑な製造工程となり、電解用電極1の生産性が悪いという課題を有していた。
また、表面層4の誘電体は金属アルコキシドを原料とした熱分解によって生成する粒子のみで構成されるが、600〜700℃の焼成では誘電体の粒子同士の結合や誘電体の粒子と中間層3の結合が半焼結状態であるので、中間層3と表面層4、表面層4自体の密着性が弱く、電極反応によって発生する酸素やオゾン等のガスの圧力によって表面層4の剥離が起き易くなり、耐久性が劣るという課題を有していた。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、安定したオゾンの生成や耐久性を向上させるとともに、生産性に優れた電解用電極を提供することを目的とする。
上記従来の課題を解決するために、本発明の電解用電極は、電極基体と、前記電極基体の表面に形成され、貴金属、貴金属を含む合金、貴金属を含む酸化物のうち、少なくとも1種からなる電極反応層と、前記電極反応層の表面に形成され、バインダーを主成分とし、水と前記電極反応層の表面との接触面積を制限する流体制限層とから構成されていることを特徴とするものである。
これにより、本発明の電解用電極をアノード電極とし、カソード電極との間に電圧または電流を印加した場合、アノード電極は、流体制限層が水と電極反応層との接触を制限し、水と電極反応層の接触面積を小さくするので、アノード電極は、流体制限層のない構成の電極よりも、水の電気分解による酸素生成の電圧が高くなる。この酸素生成の電圧がある電圧以上になると、酸素の生成と同時に酸素ラジカル等の活性種が生成され、この活性種と酸素が反応してオゾンが生成される。したがって、オゾンが生成可能な電圧以上となるように、流体制限層が電極反応層への水の浸透を抑制し、オゾン生成量に応じた電圧あるいは電流で電気分解することによって、任意の濃度のオゾン水を製造することができる。
また、流体制限層をバインダー材料で形成することによって、電極反応層との高い密着性を実現することができるので、流体制限層の剥離が防止され、電気分解する水と電極反応層との接触面積の変化を抑制することができる。
また、流体制限層に用いられるバインダーは、専用溶媒を用いることで簡単に濃度を調製することができるため、多くとも数回の塗布、焼成の繰り返しだけで所定の膜厚の流体制限層を形成することができる。
本発明によれば、安定したオゾンの生成や耐久性を向上させるとともに、生産性に優れた電解用電極を提供できる。
第1の発明は、電極基体と、前記電極基体の表面に形成され、貴金属、貴金属を含む合金、貴金属を含む酸化物のうち、少なくとも1種からなる電極反応層と、前記電極反応層の表面に形成され、バインダーを主成分とし、電気分解される水と前記電極反応層の表面の接触面積を制限する流体制限層とからていることを特徴とする電解用電極である。
これにより、第1の発明の電解用電極をアノード電極とし、カソード電極との間に電圧または電流を印加した場合、アノード電極は、流体制限層が水と電極反応層との接触を制限し、水と電極反応層の接触面積を小さくするので、アノード電極は、流体制限層のない構成よりも水の電気分解による酸素生成の電圧が高くなる。この酸素生成の電圧がある電圧以上になると、酸素の生成と同時に酸素ラジカル等の活性種が生成され、この活性種と酸素が反応してオゾンを生成させることができる。したがって、オゾンが生成可能な電圧以上となるように、流体制限層が電極反応層への水の浸透を抑制し、オゾン生成量に応じた電圧あるいは電流で電気分解することによって、任意の濃度のオゾン水を製造することができる。
また、流体制限層をバインダー材料で形成することによって、流体制限層と電極反応層との密着性を向上させることができる。したがって、電気分解によって発生する酸素などのガスによる流体制限層の破壊や、流体制限層と電極反応層の界面部の水の浸食による流体制限層の剥離を防止することができるため、水と電極反応層との接触面積が一定に保たれ、長期にわたり初期のオゾン生成性能を発揮させることができる。
また、流体制限層に用いられるバインダーは専用溶媒で濃度調製が簡単にできるため、多くとも数回の塗布、焼成の繰り返しで所定の膜厚が得られ、製造工程の簡素化、工数の削減による低コスト化が可能となり、生産性に優れた電解用電極を提供することができる。
第2の発明は、特に、第1の発明において、流体制限層は、主成分が誘電体材料の粒子とバインダーとから形成されているとともに、流体制限層に電極反応層と連通する流通路を設けたことを特徴とするものである。
これにより、電気分解される水が電極反応層に到達しやすくなり、水と電極反応層との接触面積を大きくすることができるので、オゾンとが生成する電圧の幅が狭くなる欠点があるものの、電極反応層での電極反応による電流密度を小さくすることができ、電極としての耐久性をさらに向上させることができる。
第3の発明は、特に、第2の発明において、流通路は、誘電体材料の粒子によって形成されていることを特徴とするものである。
これにより、電気分解される水は、主として流体制限層を構成する誘電体材料の粒子間およびこの粒子とバインダーとの界面の隙間を通って侵入するので、水と電極反応層の表面と接触する面積は、流体制限層に含まれる粒子の大きさ、含有量によって変化する。
したがって、流体制限層に含まれる粒子の大きさ、含有量が酸素生成の電圧を変化させることになるので、流体制限層が同じ膜厚でも誘電体材料の粒子の大きさ、含有量によってオゾンの生成量を制御することができ、電解用電極の設計の自由度が大きくなり、実用性の高い電解用電極を提供することができる。
第4の発明は、特に、第2または第3の発明において、誘電体材料の粒子は、略球形であることを特徴とするものである。
これにより、誘電体材料の粒子同士の隙間、誘電体材料の粒子とバインダーの界面の隙間を一様な形状、大きさとすることができるので、流路抵抗が安定した流通路を形成することができ、安定したオゾン生成性能を得ることができる。
第5の発明は、特に、第1から第4のいずれかの発明において、バインダーは、無機系バインダーであることを特徴とするものである。
これにより、水との馴染みを良くすることができるので、長時間使用されても安定した流体制限層への水の浸透が得られ、電解用電極のオゾン生成性能が安定させることができる。
第6の発明は、特に、第5の発明において、バインダーは、主成分がガラスであることを特徴とするものである。
これにより、流体制限層の硬度、強度を高くすることができるので、機械的な破損を防止することができ、耐久性を向上させることができる。
第7の発明は、特に、第6の発明において、バインダーは、主成分が、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の化合物を含まない組成のガラスであることを特徴とするものである。
これにより、水に浸漬された状態で放置されても水に溶解し易いアルカリ金属やアルカリ土類金属の溶出による流体制限層の多孔質化を防止することができるので、長期にわたり初期のオゾン生成性能を維持することができる。
第8の発明は、特に、第1から第7のいずれかの発明の電解用電極を備えた電気機器である。
これにより、安定してオゾンを生成できる電解用電極を有する電解装置を備えた電気機器を提供できる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における電解用電極の厚さ方向の概略断面拡大図を示すものである。
図1は、本発明の第1の実施の形態における電解用電極の厚さ方向の概略断面拡大図を示すものである。
図1において、電解用電極11は、電極基体12の一方の表面に、貴金属、貴金属を含む合金、貴金を含む属酸化物のうち、少なくとも1種から電極反応層13が形成され、さらに、電極反応層13の表面には、バインダーを主成分とし、水と電極反応層13の表面との接触面積を制限する流体制限層14が、順次形成され構成される。
電極基体12は、例えば、チタン、ニオブ、タンタル、ステンレスなどの金属が適用可能であるが、耐食性、機械的強度、加工性、コストなどの点から実用的にはチタンが適している。
電極反応層13は、貴金属、貴金属を含む合金、貴金属を含む酸化物のうち、少なくとも1種が用いられるが、水の電気分解には性能、耐久性の点で白金、白金を含む合金が適している。この電極反応層13の製法としては、出発原料として塩化白金酸をチタン基板の表面に塗布し、乾燥、焼成による熱分解して白金粒子の層を形成する焼成法、白金をチタン基板に電気めっきして、白金粒子の層を形成する電気めっき法などがあるが、特に限定されるものではなく、市販されている電極材料を採用してもよい。
流体制限層14は、バインダーを主成分とするコーティング剤を塗布し、加熱硬化させることによって形成される。このコーティング剤としては、ガラスペースト、金属アルコキシド、アルミナゾル、コロイダルシリカなどの無機系バインダーやナイロン樹脂ワニス、アクリル樹脂ワニス、シリコーン樹脂ワニスなど塗料として用いられている有機系バインダーが適用される。中でも水と電極反応層13の表面の接触面積を制限するという機能と耐久性の点からガラスペーストが好適である。
また、流体制限層14を形成する方法としては、スプレー塗装、刷毛やヘラ塗り、ロールコーター、スピンコーター、スクリーン印刷が挙げられ、限定されるものではない。流体制限層14として無機系材料を用いる場合はスパッタリング、CVDによる製法も採用することができる。
図2は、本発明の電解用電極11を用いた一例を示す流通式の電解装置の概略図である。図2において、電解装置15は、水の流入口16と電解された水の流出口17が設けられた筐体18と、筐体18の内部に取り付けられたアノードとしての電解用電極11と、対極19と、電解用電極11及び電極19に通電するための直流電源20とを備えている。
本発明の電解用電極11は、電極反応層13と流体制限層14を形成した面が対極19と対向するように配置され、水が電解用電極11と対極19の間を流れるように流路を設けて構成している。
次に、図2に示す電解装置15の動作とオゾン発生について説明する。電解装置15に一端に設けられた流入口16に水が所定の流量で供給され、水は電解用電極11と対極19と接触しながら両極の間で形成された流路を流れ、流出口17から排出される。電解装置15内の電解用電極11と対極19が水で満たされると、直流電源20から電解用電極11をアノード極、対極19をカソード極として電圧もしくは電流が印加され、水を電気分解する。
通常、アノード極である電解用電極11は水の電気分解処理で酸素が発生し、カソード極である対極19は水素が発生する。本発明では電解用電極11の水と接触する最表層には流体制限層14を形成している。
この流体制限層14は、誘電体材料であるため、直流電源20からの電圧もしくは電流が印加されても電極としての導電性が得られず、流体制限層14では水の電気分解反応が起こらない。水はこの流体制限層14中を浸透し、電解用電極11の電極基体12の表面に形成されている導電性の電極反応層13に到達すると電極反応層13の表面で電気分解される。
流体制限層14は、バインダーを主成分とするコーティング剤を塗布し、加熱硬化させて形成されたコーティング膜で構成される。このバインダーを主成分とするコーティング膜は緻密な膜構造であるが、一様の密度ではないため、水は相対的に膜の密度が小さい部分を介して流体制限層14中を浸透し、電極反応層13に到達する。
電極反応層13に到達した水と電極反応層13の接触面積は、電極反応層13全体の面積に比べ極めて小さく、流体制限層14ない電極構成よりも接触する電極反応層13の部分の電流密度が増加し、酸素発生の電圧が高くなる(過電圧が高くなる)。この酸素生成の電圧がある電圧以上になると、酸素の生成と同時に酸素ラジカル等の活性種が生成され、この活性種と酸素が反応してオゾンが生成される。
したがって、オゾンが生成する電圧以上で酸素生成の電極反応が起こるように流体制限層14の多孔性を制御し、オゾン生成量に応じた電圧あるいは電流で電気分解することによって所定の濃度のオゾン水を製造することができる。
流体制限層14はバインダー材料で形成される。バインダーは、本来接着剤としての機能を有するため、このバインダー材料を流体制限層14の形成に用いることにより流体制限層14と電極反応層13との密着性を向上させることができるので、電解によって発生する酸素などのガスの圧力による流体制限層14の破壊や、流体制限層14と電極反応層13の界面部の水の浸食による流体制限層14の剥離を防止することができる。
その結果、常に一定の水と電極反応層13との接触面積を維持することができるので、本発明の電解用電極11は長期にわたり初期のオゾン生成性能を維持することができる。
また、流体制限層14に用いられるバインダーは、専用溶媒で濃度調製が簡単にできるため、従来の電解用電極のように、十数回以上の塗り重ねを必要とせず、多くとも数回の塗布、焼成の繰り返しで所定の膜厚を得ることができる。これにより、製造工程の簡素化、製造工数の削減による低コスト化が可能となり、生産性に優れた電解用電極11を提供することができる。
本発明の流体制限層14に用いられるバインダーは、前述の通り、ガラスペースト、金属アルコキシド、アルミナゾル、コロイダルシリカなどの無機系バインダーやナイロン樹脂ワニス、アクリル樹脂ワニス、シリコーン樹脂ワニスなど塗料として用いられている有機系バインダーが適用されるが、特に、無機バインダーが好適である。無機系バインダーは親水性が高く、水との馴染みが良好であるため、流体制限層14の表面での水の弾きが抑制され、常に安定して水が流体制限層14内部へ浸透する。したがって、オゾン生成性能が安定化し、品質の高い電解用電極11を実現することができる。
無機バインダーとしては、特に主成分がガラスであることが好適である。ガラス材料は電極反応層13との優れた密着性を実現することができるとともに、流体制限層14自体の硬度、強度が高いので、機械的な破損を防止することができるので優れた耐久性を実現することができる。
また、ガラスの中でも主成分がアルカリ金属、およびアルカリ土類金属の化合物を含まない組成のガラスとすることが好ましい。アルカリ金属、アルカリ土類金属の化合物を含有したガラスからなる流体制限層14は長期間水中で浸漬されると、アルカリ金属、アルカリ土類金属が徐々に溶出し多孔質化する。多孔質化した流体制限層14は、水が電極反応層13へ浸透する箇所が多くなるため、水と電極反応層13と接触面積が増加し、酸素生成の電圧が低下し、オゾン生成性能が低下する。
本発明のアルカリ金属、アルカリ土類金属の化合物を含まないガラスからなる流体制限層14は、ガラス成分の溶出を抑制することができるため、電解用電極11が水に浸漬された状態で長期間放置されても流体制限層14の多孔質化を防止することができ、長期にわたり初期のオゾン生成性能を維持することができる。
アルカリ金属、アルカリ土類金属を含有しないガラスは、一般的には塗布後の焼成温度が900℃以上の高温となるが、電極基体12が金属材料である場合は、高温で焼成すると酸化が進行し、酸化層の剥離、電極の変形などが発生し、電解用電極11としての機能が発揮できなくなる可能性がある。
これらの課題を解決するためには、流体制限層14を700℃以下の比較的低い焼成温度で焼成する必要がある。この低い焼成温度と、アルカリ金属、アルカリ土類金属を含有しないガラス成分を両立するものとして、Si、Al、B、Biの酸化物を主成分とする組成のガラスが挙げられる。この組成のガラスで流体制限層14を形成することにより、オゾン生成性能と耐久性に優れた電解用電極11を実現することができる。
なお、本発明の流体制限層14は、緻密な構造であり、水の浸透が数十ナノからサブミクロンの微粒子間、あるいはガラスの分子構造の隙間を介して起こる。膜厚が厚いとバリア性が高くなり、水の浸透性が損なわれるため、10μm以下の薄膜で形成する方がよい。
また、本実施の形態では、電極基体12として金属材料を挙げているが、セラミックなどの誘電体の基板でもよい。セラミック基板を電極基体12として用いる場合は、電源に電気的に接続される電解用電極の端子部を電極反応層13と同じように導電性の被膜を設ける構成が必要である。
(実施の形態2)
図3は、本発明の第2の実施の形態おける電解用電極の厚さ方向の概略断面拡大図を示すものである。実施の形態1と異なる点は、流体制限層の構成材料にある。なお、図3において、実施の形態1と同じ構成材料には同じ符号を付けている。
図3は、本発明の第2の実施の形態おける電解用電極の厚さ方向の概略断面拡大図を示すものである。実施の形態1と異なる点は、流体制限層の構成材料にある。なお、図3において、実施の形態1と同じ構成材料には同じ符号を付けている。
電解用電極21は、電極基体12の一方の表面に貴金属、貴金属を含む合金、もしくは貴金属酸化物からなる電極反応層13が形成され、さらに電極反応層13の表面には、流体制限層22が形成されている。この流体制限層22は、主成分が誘電体材料の粒子23とバインダー24とからなり、電極反応層13と連通する流通路25が形成されている。
なお、電極基体12、電極反応層13は、実施の形態1と同様の材料を用いることができる。
本発明の流体制限層22を構成する誘電体材料の粒子23は、導電性を有せず、水環境に曝されても粒子成分が溶出しない化合物であれば適用することができ、これらの化合物としてはアルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカなどの金属酸化物、窒化物、炭化物が挙げられる。
また、これらの化合物は単独、混合物、複合化物のいずれも用いることができる。また、半導体のような電気抵抗が高い材料の粒子も適用可能である。
流体制限層22に用いられるバインダー24は、実施の形態1と同様な材料および製法が適用される。
流体制限層22に形成される流通路25は、含有する誘電体材料の粒子23によって形成されるものである。すなわち、誘電体材料の粒子23同士の微小な隙間、および、誘電体材料の粒子23とバインダー24の界面の隙間が連なることによって、電極反応層13に連通した流通路25が形成される。水はこの流通路25を通り、電極反応層13と接触する。
この構成によると、流通路25を設けることにより、電気分解される水が電極反応層13に到達しやすくなるので、水と電極反応層との接触面積を大きくすることができ、オゾンとが生成する電圧の幅が狭くなる欠点があるものの、電極反応層13での電流密度を小さくすることができるので、電極反応層13として用いられる貴金属の溶出量が少なくなり、電解用電極21の耐久性を向上させることができる。
流体制限層22の流通路25は、誘電体材料の粒子23同士の隙間および誘電体材料の粒子23とバインダー24の界面の隙間が連なって形成されるので、電気分解される水と接触する電極反応層13の表面の接触面積は、流体制限層22に含まれる誘電体材料の粒子23の大きさ、含有量によって変化する。
すなわち、流体制限層22に含まれる誘電体材料の粒子23の粒径が小さいと、接触する粒子同士の隙間、流体制限層22の流通路25が小さくなり、電極反応層13と接触する水との接触面積が小さくなる。その結果、酸素発生の電圧が高くなり、オゾンの生成量が多くなる。
一方、流体制限層22に含まれる誘電体材料の粒子23の含有量が少なくなると、形成される流通路25の数も少なくなり、電極反応層13と接触する水との接触面積が小さくなる。その結果、酸素発生の電圧が高くなり、オゾンの生成量が多くなる。
このことから、流体制限層22に含まれる誘電体材料の粒子23の大きさ、含有量により、酸素生成の電圧を制御することが可能である。したがって、流体制限層22が同じ膜厚でも誘電体材料の粒子23の大きさ、含有量によってオゾンの生成量を制御できるので、電解用電極21の設計の自由度が大きく、実用性の高い電解用電極21を提供することができる。
また、本発明に用いられる誘電体材料の粒子23は、その形状が球形であることが好ましい。誘電体材料の粒子23の形状を球形とすることにより、誘電体材料の粒子23同士の隙間、誘電体材料の粒子23とバインダー24の界面の隙間を比較的一様な形状、大きさとすることができるので、流路抵抗が安定した流通路25を形成することができ、安定したオゾン生成性能を得ることができる。
誘電体材料の粒子23として、一様に球形のアルミナビーズと、多角形で粒子の形状が異なるアルミナの粉砕粒子の両者について、バインダー24としてガラスペーストを用いて各々の流体制限層22を形成した電解用電極21を各10枚作製した。
これらの電解用電極21ついて、図2示した電解装置15を用い、電解用電極21をアノード、市販の白金電極をカソードとして水道水を流しながら一定電圧を印加し、生成するオゾン濃度を測定したところ、球状のアルミナ粒子を用いて形成した流体制限層22を有する電解用電極21は、ほぼ同様なオゾン濃度が得られたのに対し、形状の異なるアルミナ粒子を用いて形成した流体制限層22を有する電解用電極21は、オゾン濃度のばらつきが大きい結果を得た。
これは、流体制限層22を誘電体材料の粒子23として球形形状を用いて形成することにより、流体制限層22に一様な流通路25が形成され、電極反応層13に到達する水と電極反応層13との接触面積がほぼ同等となっていると推定される。その結果、安定したオゾン生成性能を実現できると考えられる。
なお、本発明の第1の実施の形態、第2の実施の形態における流体制限層14、22は、酸素生成の電圧を高くすることにより、オゾンが生成する。オゾンが生成する酸素生成の電圧を明確にするため、電解質として0.1M濃度の硫酸ナトリウム、参照電極としてAg/AgCl電極、対極として白金、作用極として本発明の電解用電極11、21を用い、ポテンショスタット測定器によって電流−電圧特性を評価した。
その結果、電解用電極11、21の電圧は、1.6〜3V(参照電極の電位に対して)の範囲がオゾン生成に好適であることがわかった。1.6V以下ではオゾンの生成量が少なく、3V以上では電流が大きく、電極反応層13に含まれる貴金属の溶出が大きくなり、耐久性が低下する。
なお、本発明の流体制限層14と22は、従来技術のように電極反応層13に到達するクラックは発生しておらず、従来技術のようにクラックを水の流通路とするものではない。
また、流体制限層14、22に用いられる材料は酸素を酸化し、オゾンの生成させる触媒効果もないと判断する。
以上のように、本発明の第1の実施の形態、第2の実施の形態における電解用電極は、流体制限層によってオゾンが生成する電圧を制御することができるので、任意の濃度のオゾン水を製造することができる。また、流体制限層と電極反応層の密着性が高く、流体制限層の剥離が防止されるため、耐久性に優れ、長期にわたり安定したオゾン濃度の水を得ることができる。また、流体制限層は簡単な工程で容易に形成できるので、生産性に優れている。
さらに、本発明の第1の実施の形態、第2の実施の形態における電解用電極を有する電解装置を備えた電気機器を提供することで、この電解用電極を有する電解装置が生成するオゾンにより、水や食品の除菌、臭気成分の分解による室内の脱臭、風呂水の浄化、浴槽の汚染防止などが実現できる。
以上のように、本発明にかかる電解用電極は、安定したオゾンの生成や耐久性を向上させるとともに、生産性に優れているので、オゾンによる水や食品の除菌、臭気成分の分解による室内の脱臭、風呂水の浄化、浴槽の汚染防止などの機能を有する電解装置を備えた電気機器に適用できる。
11、21 電解用電極
12 電極基体
13 電極反応層
14、22 流体制限層
23 誘電体材料の粒子
24 バインダー
25 流通路
12 電極基体
13 電極反応層
14、22 流体制限層
23 誘電体材料の粒子
24 バインダー
25 流通路
Claims (8)
- 電極基体と、
前記電極基体の表面に形成され、貴金属、貴金属を含む合金、貴金属を含む酸化物のうち、少なくとも1種からなる電極反応層と、
前記電極反応層の表面に形成され、バインダーを主成分とし、水と前記電極反応層の表面との接触面積を制限する流体制限層と、
から構成されていることを特徴とする電解用電極。 - 前記流体制限層は、主成分が誘電体材料の粒子と前記バインダーとから形成されているとともに、前記電極反応層と連通する流通路を有することを特徴とする請求項1に記載の電解用電極。
- 前記流通路は、前記誘電体材料の粒子によって形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電解用電極。
- 前記誘電体材料の粒子は、略球形であることを特徴とする請求項2または3に記載の電解用電極。
- 前記バインダーは、無機系バインダーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解用電極。
- 前記バインダーは、主成分がガラスであることを特徴とする請求項5に記載の電解用電極。
- 前記バインダーは、主成分が、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の化合物を含まない組成のガラスであることを特徴とする請求項6に記載の電解用電極。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の電解用電極を備えた電気機器。
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