以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。また、本明細書において、「X〜Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
≪1.本発明の概要≫
本発明に係る酸化鉱石の製錬方法は、酸化鉱石を原料として、その酸化鉱石と炭素質還元剤とを混合して混合物とし、得られた混合物を高温下で還元処理に付して還元物であるメタルを製造する方法である。例えば、酸化鉱石として、酸化ニッケルや酸化鉄等を含有するニッケル酸化鉱石を原料とし、そのニッケル酸化鉱石を炭素質還元剤と混合して、高温下において、混合物に含まれるニッケルを優先的に還元し、また鉄を部分的に還元することで鉄とニッケルの合金であるフェロニッケルを製造する方法が挙げられる。
具体的に、本発明に係る酸化鉱石の製錬方法は、酸化鉱石と炭素質還元剤とを混合して得られる混合物を還元炉の炉床に載置し、その還元炉にて還元処理を施す酸化鉱石の製錬方法において、混合物に対する還元処理を施す際に、混合物中のメタルを溶融状態又は半溶融状態にするとともに、混合物に振動を加えるか、又は還元処理を施した後に還元処理により得られた還元物中のメタルを溶融状態若しくは半溶融状態にするとともに還元物に振動を加えることを特徴としている。
このように還元処理中の混合物又は還元処理後の還元物を溶融状態又は半溶融状態にして振動を加えることにより、溶融状態の微細なメタルの移動が促進され、メタルの凝集が進行させ、有効に粗大化したメタルを回収することができる。そして、このようなメタルによればスラグと選別しやすくなり、効率的にメタルを回収することができる。
以下では、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)として、ニッケル酸化鉱石の製錬方法を例に挙げて説明する。上述したように、製錬原料であるニッケル酸化鉱石は、酸化ニッケル(NiO)と酸化鉄(Fe2O3)とを少なくとも含むものであり、そのニッケル酸化鉱石を製錬原料として還元処理することで、メタルとして鉄−ニッケル合金(フェロニッケル)を製造することができる。
なお、本発明は、酸化鉱石としてニッケル酸化鉱石に限定されるものではなく、製錬方法としても酸化ニッケル等を含むニッケル酸化鉱石からフェロニッケルを製造する方法に限られるものではない。
≪2.ニッケル酸化鉱石の製錬方法≫
本実施の形態に係るニッケル酸化鉱石の製錬方法は、ニッケル酸化鉱石を炭素質還元剤と混合して混合物とし、その混合物に対して還元処理を施すことによって、還元物としてメタルであるフェロニッケルとスラグとを生成させる方法である。なお、メタルであるフェロニッケルは、還元処理を経て得られたメタルとスラグとを含む混合物から、そのメタルを分離することで回収することができる。
図1は、ニッケル酸化鉱石の製錬方法の流れの一例を示す工程図である。図1に示すように、この製錬方法は、ニッケル酸化鉱石を含む原料を混合する混合処理工程S1と、得られた混合物を所定の形状に成形する混合物成形工程S2と、成形された混合物(ペレット)を所定の還元温度で還元加熱する還元処理工程S3と、還元処理工程S3にて生成したメタルとスラグとを分離してメタルを回収する分離工程S4と、を有する。
<2−1.混合処理工程>
混合処理工程S1は、ニッケル酸化鉱石を含む原料粉末を混合して混合物を得る工程である。具体的には、混合処理工程S1では、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石に、炭素質還元剤を添加して混合し、また任意成分の添加剤として、鉄鉱石、フラックス成分、バインダー等の、例えば粒径が0.1mm〜0.8mm程度の粉末を添加して混合し、混合物を得る。なお、混合処理は、混合機等を用いて行うことができる。
原料鉱石であるニッケル酸化鉱石としては、特に限定されないが、リモナイト鉱、サプロライト鉱等を用いることができる。なお、ニッケル酸化鉱石は、酸化ニッケル(NiO)と、酸化鉄(Fe2O3)とを少なくとも含有する。
炭素質還元剤としては、特に限定されないが、例えば、石炭粉、コークス粉等が挙げられる。なお、この炭素質還元剤は、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石の粒度や粒度分布と同等の大きさのものであると、均一に混合し易く、還元反応も均一に進みやすくなるため好ましい。
炭素質還元剤の混合量としては、ニッケル酸化鉱石を構成する酸化ニッケルの全量をニッケルメタル還元するのに必要な化学当量と、酸化鉄(酸化第二鉄)を金属鉄に還元するのに必要な化学当量との両者合計値(便宜的に「化学当量の合計値」ともいう)を100質量%としたときに、好ましくは5質量%以上60質量%以下の炭素量の割合、より好ましくは10質量%以上40質量%以下の炭素量の割合、さらに好ましくは15質量%以上35質量%以下となるように調整することができる。このように、炭素質還元剤の混合量を、化学当量の合計値100質量%に対して5質量%以上の割合とすることで、ニッケルの還元を効率的に進行させることができ生産性が向上する。一方で、化学当量の合計値100質量%に対して60質量%以下の割合とすることで、鉄の還元量を抑えて、ニッケル品位の低下を防ぎ、高品質のフェロニッケルを製造することができる。このように、好ましくは、炭素質還元剤の混合量を化学当量の合計値100質量%に対して5質量%以上60質量%以下の炭素量の割合とすることで、混合物の表面に金属成分により生成した殻(メタルシェル)を均一に生成させて生産性を向上させることができ、またニッケル品位の高い高品質なフェロニッケルを得ることができ、好ましい。
また、任意成分の添加剤である鉄鉱石としては、例えば、鉄品位が50%程度以上の鉄鉱石、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬により得られるヘマタイト等を用いることができる。
また、フラックス成分としては、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、二酸化珪素等を挙げることができる。また、バインダーとしては、例えば、ベントナイト、多糖類、樹脂、水ガラス、脱水ケーキ等を挙げることができる。
混合処理工程S1では、上述したようなニッケル酸化鉱石を含む原料粉末を均一に混合することによって混合物を得る。この混合に際しては、混合性を高めるために混練を同時に行ってもよく、混合後に混練を行ってもよい。具体的に、混練は、例えば二軸混練機等を用いて行うことができ、混合物を混練することによってその混合物にせん断力を加え、炭素質還元剤や原料粉末等の凝集を解いて、均一に混合できるとともに、各々の粒子の密着性を向上させ、また空隙を減少させることができる。これにより、還元反応が起りやすくなるとともに均一に反応させることができ、還元反応の反応時間を短縮することができる。また、品質のばらつきを抑えることができる。そして、結果として、生産性の高い処理を施すことができ、高い品質のフェロニッケルを製造することができる。
また、混練した後、押出機を用いて押出してもよい。このように押出機で押出すことによって、より一層高い混練効果を得ることができる。
なお、下記表1に、混合処理工程S1にて混合する、一部の原料粉末の組成(重量%)の一例を示すが、原料粉末の組成としてはこれに限定されない。
<2−2.混合物成形工程>
混合物成形工程S2は、混合処理工程S1で得られた混合物を成形する工程である。具体的には、原料粉末を混合して得られた混合物を、ある程度の大きさ以上の塊(塊状化物、以下「ペレット」ともいう)に成形する。したがって、混合物成形工程S2は、ペレット製造工程とも換言することができる。
成形方法としては、特に限定されないが、混合物を塊状物化するのに必要な量の水分を添加し、例えば塊状物製造装置(転動造粒機、圧縮成形機、押出成形機等、あるいはペレタイザーともいう)を用いて所定の形状のペレットに成形する。
混合物を成形して得られるペレットの形状としては、例えば、球状、直方体状、立方体状、円柱状等とすることができる。このような形状とすることにより、混合物を成形し易くし、成形にかかるコストを抑えることができる。また、上述した形状は簡易な形状であって複雑なものではないため、不良品の発生を抑制することができ、得られるペレットの品質も均一にすることができる。
また、ペレットの形状としては、次工程の還元処理工程での処理において、ペレットを積層させた状態で処理できることが好ましく、その点においても、ペレットが球状、直方体状、立方体状、円柱状等であれば、還元炉内に積層させて載置させ易く、還元処理に供する処理量を多くすることができる。また、このように積層させて還元処理に供することで、一つのペレットを巨大化しなくても還元時の処理量を増やすことができるため、取り扱いが容易となり、また移動時等に崩れ落ちたりすることがなく、不良等の発生を抑えることができ、収率を高めることができる。
ペレットの大きさとしては、特に限定されないが、球状とする場合には、その直径が10mm〜30mm程度となるように成形することができる。また、直方体状、立方体状、円柱状等とする場合には、概ね、縦、横の内寸が500mm以下程度となるように成形することができる。これらのような大きさに成形してペレットとすることにより、還元処理が均一に施され、ばらつきが少なく、かつ生産性の高い製錬を行うことができる。
また、ペレットの体積としては、特に限定されないが、8000mm3以上となるように成形することができる。ペレットの体積が8000mm3以上であることにより、成形コストの上昇や還元炉への投入の手間を抑制することができる。また、ペレット全体に対する表面積の割合を少なくし、ペレット全体を均一に還元させ、高品質のフェロニッケルを製造することもできる。
混合物を成形した後には、その混合物に対して乾燥処理を施すようにしてもよい。混合物中には所定量の水分が含まれていることがあり、還元処理に際して急激な昇温によって内部の水分が一気に気化して膨張すると、その混合物が粉々になってしまう懸念がある。このような膨張を防ぐ観点から、成形した混合物に対して乾燥処理を施す工程を設けることができる。
具体的に、乾燥処理においては、例えばペレットの固形分が70重量%程度で、水分が30重量%程度となるように処理を施すことができる。例えば、150℃〜400℃、好ましくは300〜400℃の熱風をペレットに吹き付けて乾燥させる。
なお、比較的大きなペレットである場合、乾燥処理前や乾燥処理後の混合物にひびや割れが入っていてもよい。塊が大きい場合には、割れ等によって表面積が大きくなってもその影響は僅かであり、大きな問題にはならない。このため、還元処理に供される成形したペレットに割れ等があっても特に問題はない。
下記表2に、乾燥処理後の混合物における固形分中組成(重量部)の一例を示す。なお、混合物の組成としては、これに限定されるものではない。
<2−3.還元処理工程>
(1)還元処理
還元処理工程S3では、混合物成形工程S2を経て成形された混合物を還元炉内に装入して、所定の還元温度で加熱することによって還元処理を施す。この還元処理工程S3における還元処理により、製錬反応(還元反応)が進行して、還元物であるメタルとスラグとが生成する。
還元処理工程S3は、混合物を乾燥する乾燥工程S31と、乾燥させた混合物を予熱する予熱工程S32と、混合物を加熱して還元する還元工程S33と、得られた還元物を冷却する冷却工程S35と、を有する。また、還元工程S33を経て得られた還元物を所定の温度範囲に保持する温度保持工程S34を有してもよい。
ここで、還元処理工程S3における還元加熱処理は、還元炉等を用いて行われる。還元加熱処理に用いる還元炉としては、特に限定されないが、移動炉床炉を用いることが好ましい。還元炉として移動炉床炉を使用することにより、炉外で混合物の炉床への載置を行った後で、移動炉床炉に装入させることができるため、還元炉をより効率的に運用することができる。また、移動炉床炉を用いることで、連続的に還元反応が進行し、一つの設備で反応を完結させることができ、各工程における処理を別々の炉を用いて行うよりも処理温度の制御を的確に行うことができる。さらに、移動炉床炉を使用して一つの設備で各処理を行うことで、ヒートロスが低減されるとともに炉内雰囲気も的確に制御できるため、反応をより効果的に進行させることができる。そのため、より効果的に、ニッケル品位が高い鉄−ニッケル合金を得ることができる。
移動炉床炉としては、特に限定されず、回転炉床炉や、ローラーハースキルン等を用いることができる。このうち、回転炉床炉を用いる例としては、例えば、図2に示すような、円形状であって複数の処理室43〜46に区分けされた回転炉床炉(ロータリーハース炉)41を有する還元炉4を挙げることができる。回転炉床炉41は、平面上を回転移動する炉床を備えており、混合物を載置した炉床が所定の方向に回転移動することで、各領域においてそれぞれの処理が行われる。このとき、各領域を通過する際の時間(移動時間、回転時間)を制御することで、それぞれの領域での処理温度を調整することができ、回転炉床が1回転する毎に混合物5が製錬処理される。
なお、詳細は後述するが、炉床の移動手段としては、例えばレール又はベルトコンベアを用いる例が挙げられる。レールを用いる場合、炉床は炉床自体がレール上を移動するがレールは移動しない。一方で、ベルトコンベアを用いる場合、炉床はベルトの移動にしたがって移動する。このように、炉床自体が移動する移動炉床炉と、炉床が載置された部位が動くことにより炉床が移動する移動炉床炉が存在するが、いずれの移動炉床炉を用いることもできる。
回転炉床炉41では、例えば処理室43〜46のすべてを還元室として、乾燥室42から順次供給される混合物5に対して、処理室43〜46で還元処理を行ってもよい。他方で、処理室43を予熱室、処理室44を還元室、処理室45を温度保持室、処理室46を冷却室として、乾燥室42から順次供給される混合物5に対して、処理室43で予熱を行い、処理室44で還元処理を行い、処理室45で温度を保持した後、処理室46で冷却させ、外部冷却室47にてさらに冷却処理されるようになっていてもよい。このように、処理室43〜46の間で温度を異ならせる場合は、反応温度を厳密に制御してエネルギーロスを抑制するために、処理室43〜46を可動式の仕切り壁で仕切られた構成とすることが好ましい。なお、図2における回転炉床炉41上の矢印は、炉床の回転方向を示すとともに、処理物(混合物)の移動方向を示す。
回転炉床炉41を用いて、これらの処理を一つの還元炉内にて行うことによって、その還元炉内の温度を高い温度で維持することができるため、それぞれの工程における処理の都度、温度を上げたり下げたりする等の必要が無くなり、エネルギーコストを低減することができる。そのため、高い生産性で、品質の良好なフェロニッケルを、連続して安定的に作製することができる。
なお、特に混合物を還元炉に装入する場合、予めその還元炉の炉床に炭素質還元剤(以下、「炉床炭素質還元剤」ともいう)を敷き詰めて、その敷き詰められた炉床炭素質還元剤の上に混合物を載置してもよい。また、混合物を充填した容器を炉床炭素質還元剤上に載置した後、炭素質還元剤を用いて覆い隠す状態にすることもできる。このように、炉床に炭素質還元剤が敷き詰められた還元炉に混合物を装入し、又は、装入した混合物をさらに覆い隠すように炭素質還元剤で包囲させた状態で還元加熱処理を施すことで、混合物の崩壊を抑制しながら、製錬反応をより速く進行させることができる。また、特に炉床炭素質還元剤を敷き詰めることで、処理室43〜46において還元反応が進んでニッケルメタルやスラグが生成しても、炉床との反応が抑えられるため、スラグが炉床に染み込んだり貼り付いたりすることを低減することができる。
具体的に、還元処理工程S3における還元処理は、還元炉を用いて行われ、ニッケル酸化鉱石を含む混合物(ペレット)を、所定の還元温度に加熱した還元炉に装入することによって還元加熱する。還元炉を使用した還元処理においては、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石に含まれる酸化ニッケルは可能な限り完全に優先的に還元し、一方で、ニッケル酸化鉱石に含まれる酸化鉄は一部だけ還元して、目的とする高いニッケル品位のフェロニッケルが得られる、いわゆる部分還元を施す。
還元処理では、例えば1分程度のわずかな時間で、先ず還元反応の進みやすいペレットの表面近傍において混合物中のニッケル酸化鉱石及び鉄酸化物が還元されメタル化して鉄−ニッケル合金(以下、鉄−ニッケル合金を「フェロニッケル」ともいう)となり、殻(シェル)を形成する。一方で、殻の中では、その殻の形成に伴って容器中のスラグ成分が徐々に熔融して液相のスラグが生成する。これにより、混合物中では、フェロニッケルメタル(以下、単に「メタル」という)と、フェロニッケルスラグ(以下、単に「スラグ」という)とが分かれて生成する。
また、混合物が十分に混合されて組成ばらつきが実質的にない場合においては、原料同士が密着しているため、還元反応は均一に生じる。そのため、従来から言われているようにメタルシェルを生成し、その中である程度、時間をかけて反応して均一化する必要はなく、よってメタルシェルの生成が必須とはならない。すなわち、メタルシェルができなくても均一に反応が進み、フェロニッケルを製造することができる。
還元処理工程S3において、混合物中のスラグは熔融して液相となっているが、還元処理により既に分離して生成したメタルとスラグとは、混ざり合うことがなく、その後の冷却によってメタル固相とスラグ固相との別相として混在する混合物となる。この混合物の体積は、装入する混合物と比較すると、50%〜60%程度の体積に収縮している。
還元処理における温度(還元温度)としては、特に限定されないが、1200℃以上1450℃以下の範囲とすることが好ましく、1300℃以上1400℃以下の範囲とすることがより好ましい。このような温度範囲で還元することによって、均一に還元反応を生じさせることができ、品質のばらつきを抑制したフェロニッケルを生成させることができる。また、より好ましくは1300℃以上1400℃以下の範囲の還元温度で還元することで、比較的短時間で所望の還元反応を生じさせることができる。
なお、還元処理においては、上述した範囲の還元温度になるまでバーナー等により還元炉の内部温度を上昇させ、昇温後にその温度を維持する。
(2)混合物への振動の印加
本実施の形態においては、上述した還元処理の際に、溶融状態又は半溶融状態のメタルを含む混合物に対し振動を加えるか、又還元処理の後に、溶融状態若しくは半溶融状態のメタルを含む還元物に対し振動を加えることを特徴としている。
上述のように還元処理のみを施して生成するメタルは微細であることが多い。しかしながら、メタルが微細であると、スラグとメタルとを分離することが困難となる。そこで、溶融状態又は半溶融状態のメタルを含む混合物又は還元物を振動させる。これにより、溶融状態の微細なメタルの移動が促進され微細なメタル同士で凝集が進行し、メタルを粗大化することができる。そして、このようにメタルを粗大化することにより、スラグと選別しやすくなり、メタルを効率的に回収することができる。
なお、通常の操業でも装置の設計等に由来して混合物に振動が印加されることがあるが、本発明ではこのような通常の操業以外に意図して振動を印加する。振動を加える手段としては特に限定されず、例えば凹凸レール上の移動、ノッカーやバイブレーター等の機械的手段や、電磁誘導、音波等の手段を用いることができる。
振動の印加時期としては、特に限定されないが、少なくとも還元が進みメタルが生成した後に振動を印加する。印加の方法としては、連続的に印加することも、断続的に印加することもできる。
[電磁誘導による振動の印加]
例えば、還元処理を施されている混合物に磁界を印加することにより、電磁誘導作用を生じさせ、混合物を振動させることができる。また、還元処理中の混合物に対してではなく、還元処理を施して得られた還元物に、不活性雰囲気下等酸化が抑制された雰囲気下で磁界を印加することによって還元物を振動させることもできる。電磁誘導作用によるメタル粗大化の工程を還元処理と別の段の工程とすることによって、装置の設計の自由度が増して効率的にメタルを粗大化できる利点がある。
このようにして発生させた電磁誘導作用により振動を受けた微細なメタルは、微小距離の移動が促進され、凝集し粗大化する。この際、電磁誘導作用によりメタル内に渦電流が生じ、メタルは温度が上昇して粘性が下がり、メタルの粗大化がさらに進行する。一方で、スラグは酸化物であるため、電気伝導性が低く渦電流が発生せず、あまり温度が上昇することはない。したがって、混合物全体が完全な液体と溶け流れてしまうおそれはない。このように、電磁誘導による振動を印加することで、混合物全体としては形状をほぼ維持し、メタルのみが温度上昇して粘性が下がり半溶融状態となり凝集し、粗大化が進行する。なお、還元処理後の還元物に電磁誘導による振動を加えても温度上昇が十分でなくメタルを溶融状態又は半溶融状態にすることができない場合、炉等により加熱しながら磁場を印加することもできる。
磁界を発生させる方法としては、特に限定されず、例えばコイルに電流を通じさせること等、従来公知の手段を用いることができる。このような磁界を発生させる具体的な装置としては、例えば高周波溶解炉が挙げられる。
[音波による振動の印加]
還元処理を施されている混合物に音波を照射することにより、音波の振動エネルギーによって混合物を振動させることができる。また、還元処理中の混合物に対してではなく、還元処理を施して得られた還元物に、不活性雰囲気等の酸化が抑制された雰囲気下で音波を照射することによって還元物を振動させることもできる。音波によるメタル粗大化の工程を還元工程と別の段の工程とすることによって装置の設計の自由度が増して効率的にメタルの粗大化が可能となる。
このようにして発生させた音波により振動を受けた微細なメタルは、磁界による振動を受けた場合と同様にして微小距離を移動する。この際、メタルのみが温度上昇して粘性が下がり半溶融状態となり凝集し、粗大化が進行する。なお、還元処理後の還元物に音波による振動を加えても温度上昇が十分でなくメタルを溶融状態又は半溶融状態にすることができない場合、炉等により加熱しながら音波を照射することもできる。
音波の周波数としては、特に限定されないが、例えば1.00kHz以上の超音波を用いることが好ましい。音波の周波数が1.00kHz以上であることにより、高い音波エネルギーをメタルに印加することができる。なお、音波の周波数としては、例えば100MHz以下のものを用いることができる。なお、このような音波よりさらに高い周波数を伴う高周波誘導炉を用いて熔解することでも、同様にメタルの粗大化を可能とすることができる。
[凹凸レールによる振動の印加]
還元処理は、上述したように移動炉床炉を用いて行う。この移動炉床炉は、例えば、車輪を有し、混合物を載置し得る炉床と、その炉床の車輪を支えるとともに進路を誘導するレールとを備える構成とすることができる。そして、このレールとして凹凸を有しているものを用い、その凹凸のレール上に炉床を通過させることによって、炉床に振動を付与する。このようにして生じた振動は、炉床上に載置された混合物に伝達され、混合物に振動が加えられる。この際、例えば加熱等により溶融状態又は半溶融状態となった混合物中の微細なメタルは、振動により微小距離の移動が促進され、凝集し粗大化する。
凹凸としては、特に限定されないが、例えばレールの表面の凹凸加工や、レールの繋ぎ目等に設けた隙間を用いることができる。
炉床は、進行方向(前進)のみの移動又は進行方向(前進)及び逆方向(後進)の移動を交互に繰り返す移動のいずれも行うこともできる。連続的に混合物に振動を加え、観点から、進行方向(前進)及び逆方向(後進)の移動を交互に繰り返すことが
また、移動は連続的に行うことも、途中で停止して断続的に行うこともできる。
図3は炉床が進行方向のみの移動を行う場合に用いるレールの断面の模式図である。この凹凸レール1は、凸部11と凹部12を有している。この凹凸レール1においては、凸部11の形状が三角形であり、進行方向と逆側のみが傾斜しており、進行方向側は垂直である。一方で、図4は炉床が進行方向及び逆方向の移動を交互に繰り返す場合に用いるレールの断面の模式図である。この凹凸レール2は、凸部21と凹部22を有している。この凹凸レール2においては、凸部21の形状が三角形であり進行方向側及び逆方向側のいずれにも傾斜している。なお、図4に示す凹凸レール2は、炉床が進行方向のみの移動を行う場合にも用いることができる。
以下、凹凸レールを用いて混合物に振動を印加する方法を説明する。図5(a),(b)は、凹凸レールを用いて混合物に振動を印加する方法を説明するための模式図である。
炉床3は、混合物載置部31と車輪32a,32bとを備えて構成される。この炉床3は、上述した凹凸レール2上に配置され、この凹凸レール2上で進行方向及び逆方向の移動を交互に繰り返す。図5(a)においては、炉床3が備える車輪32a及び32bがいずれも凹凸レール2の凸部21に乗っている。図5(b)は、図4(b)に示した状態から炉床3が左方に移動した状態を示している。炉床3が左方に移動すると、炉床3の左側の車輪32aがレール2の凹部22に入り込み、炉床3が左下方向に傾いて振動が発生する。さらに左方に移動すると、左側の車輪32aは凸部21に乗るが、右側の車輪32bは凹部に入り込み、炉床3が右下方向に傾いて振動が発生する。このような移動を、左方右方に繰り返すことで炉床3及びその炉床3に載置された混合物に連続的な振動を加えることができる。
車輪の直径としては、特に限定されないが、例えば凹部の幅(凸部の頂点同士の間)の0.1倍以上のものを用いることが好ましく、0.2倍以上のものを用いることがより好ましい。車輪の直径が凹部の幅の0.1倍以上のものを用いることにより、炉床をより適切に移動させることができ、より大きな振動を発生させることができる。また、車輪の直径としては、凹部の幅の2倍以下のものを用いることが好ましく、1.5倍以下のものを用いることよりが好ましい。車輪の直径が凹部の幅の2倍以下のものを用いることにより、凹部に入り込ませることができる車輪の部分を多くすることができ、より大きな振動を発生させることができる。
凸部の形状としては、特に限定されないが、図3及び4に例示したように凸部の断面が三角形のもの以外に、四角形、五角形、半円形、半楕円形等のものを用いることができる。また、凹部の形状としては、特に限定されないが、図3及び4に例示したように凸部の断面が三角形のもの以外に、四角形、五角形、半円形、半楕円形等のものを用いることができる。
以上では、車輪を有する炉床と、凹凸レールとを用いて振動を加える例について説明したが、炉床が凹凸を有する面(以下、「凹凸面」ということもある)上を通過することにより振動を発生させることができる構成であれば、特に限定されるものではない。
このような炉床が凹凸面上を通過することにより振動を発生させる方法では、還元処理により得られた還元物に振動を加える場合、上述した電磁誘導や超音波による振動と異なり、不活性雰囲気等酸化が抑制された雰囲気下で振動させるだけではメタルを充分に加熱して溶融状態又は半溶融状態にすることができずメタルを粗大化できない。このような場合、例えば酸化が抑制された雰囲気下で、1200℃以上1450℃以下の範囲で加熱して溶融させながら、振動を加えることでメタルを粗大化することができる。
なお、凹凸レールによる振動は、還元処理中の混合物に対してではなく、還元処理を施して得られた還元物に対して、不活性雰囲気下等酸化が抑制された雰囲気下で、例えば加熱してメタルを溶融状態又は半溶融状態にしながら印加することもできる。このような場合、加熱炉内に上述したような凹凸レールを設けてもよい。
[ノッカー又はバイブレーターによる振動の印加]
また、移動炉床炉を用いて行う還元処理において、移動炉床炉としては、例えば、車輪を有し、混合物を載置し得る炉床と、その炉床の車輪を支えるとともに進路を誘導するレールとを備える構成とすることができる。また、移動炉床炉は、シート状、板状、容器上等の炉床と、その炉床の進路を誘導するベルトコンベアとを備える構成とすることができる。ここで、前者ではレール、後者ではベルトコンベアに例示されるような、炉床を支持し又は配置する支持部を振動させる。
このような振動は炉床上に載置された混合物に伝達され、混合物に振動が加えられる。混合物中の微細なメタルは、振動により微小距離の移動が促進され、凝集し粗大化する。
振動発生装置としては、特に限定されず、ノッカーやバイブレーター等を用いることが好ましい。これらは、安価で効率良く振動を発生させることができる。ノッカーやバイブレーターは支持部を有する装置に接触しており、ノッカーやバイブレーターにより生じた振動はこの装置を伝達して炉床及び混合物に振動を印加する。
振動の周波数としては、特に限定されず、接触装置や炉床の設計等を考慮して混合物に効率的に振動が伝達するよう選択することができる。
以上では、炉床をレール又はベルトコンベアに載置し、振動を加える例について説明したが、レール又はノッカーを用いる構成に限定されず、炉床を載置することができ、且つそれ自身が振動する載置部であれば用いることができる。
このような載置部を振動させる方法では、還元処理により得られた還元物に振動を加える場合、上述した電磁誘導や超音波による振動と異なり、不活性雰囲気等酸化が抑制された雰囲気下で振動させるだけではメタルを充分に加熱して溶融状態又は半溶融状態にすることができずメタルを粗大化できない。このような場合、例えば酸化が抑制された雰囲気下で、1200℃以上1450℃以下の範囲で加熱して溶融させながら、振動を加えることでメタルを粗大化することができる。
なお、ノッカー又はバイブレーターによる振動は、還元処理中の混合物に対してではなく、還元処理を施して得られた還元物に対して、不活性雰囲気下等酸化が抑制された雰囲気下で、例えば加熱してメタルを溶融状態又は半溶融状態にしながら印加することもできる。このような場合、加熱炉内に上述したようなレール又はベルトコンベアと、振動発生装置とを設けてもよい。
(4)冷却工程
冷却工程S34は、還元工程S33を経た後の還元物を、続く分離工程S4にて分離回収できる温度にまで冷却する工程である。
冷却工程S34における還元物の冷却は、還元反応を行う炉の内側にある処理室と、炉の外側に接続された処理室のうち、少なくともいずれかで行うことができる。例えば、図2の還元炉4では、回転炉床炉41の処理室46を冷却室とし、且つ炉外に外部冷却室47を設けることで、回転炉床炉41の内部における温度低下が小さくなるため、還元炉4におけるエネルギーロスを低減することができる。また、特に回転炉床炉41から外部冷却室47には熱が伝わり難くなるため、還元物の冷却をよりスムーズに行うことができる。
冷却工程S34において、還元工程S33を経た還元物を冷却室に移す温度(以下、「回収時温度」ともいう)は、還元物を実質的に固体として扱える温度であればよい。特に、回転炉床炉を用いて還元工程S33を行った場合には、回収時温度ができるだけ高い温度であることが好ましい。このとき、回収時温度をできるだけ高くすることで、冷却室に移すまでの回転炉床炉41の炉床の温度低下が小さくなる。そのため、回転炉床や炉内の雰囲気への冷却及び予熱によるエネルギーロスを低減することができ、再加熱に要するエネルギーをより一層節約することができる。
ここで、冷却工程S34における回収時温度は、600℃以上であることが好ましい。回収時温度をこのような高い温度にすることで、再加熱に要するエネルギーが大幅に低減するため、より低コストで効率的な製錬処理を行うことができる。また、回転炉床炉41の炉床における温度差が減少することで、その炉床や炉壁等に加わる熱応力も減少するため、回転炉床炉41の寿命を大きく延ばすことができることに加え、回転炉床炉41の操業中の不具合も大幅に減らすことができる。
本実施の形態では、還元処理工程S3における反応が理想的に進行した場合、還元処理工程S3を行った後の混合物は、メタルとスラグとの混在物になる。このとき、大きな塊のメタルが形成されることで、還元炉から回収する際における回収の手間を低減させることができ、また、メタル回収率の低下を抑えることができる。
<4.分離工程>
分離工程S4では、還元処理工程S3にて生成した還元物から、メタル(フェロニッケルメタル)を分離して回収する。具体的には、混合物を還元加熱処理することによって得られた、メタル相(メタル固相)とスラグ相(スラグ固相)とを含む混在物(還元物)から、メタル相を分離して回収する。
固体として得られたメタル相とスラグ相との混在物からメタル相とスラグ相とを分離する方法としては、例えば、篩い分けによる不要物の除去に加えて、比重による分離や、磁力による分離等の方法を利用することができる。また、得られたメタル相とスラグ相は、濡れ性が悪いことから容易に分離することができ、上述した大きな混在物に対して、例えば、所定の落差を設けて落下させ、あるいは篩い分けの際に所定の振動を与える等の衝撃を付与することで、その混在物から、メタル相とスラグ相とを容易に分離することができる。
このようにしてメタル相とスラグ相とを分離することによって、メタル相を回収し、フェロニッケルの製品とすることができる。
このような方法によれば、粗大化したメタルを効率的に回収することができ、その結果、スラグと選別しやすくなり、メタルの回収率を高めることができる。
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
≪実施例1〜5、比較例1〜5:電磁誘導による振動の印加≫
[混合処理工程]
原料鉱石としてのニッケル酸化鉱石と、鉄鉱石と、フラックス成分である珪砂及び石灰石、バインダー、及び炭素質還元剤(石炭粉、炭素含有量:85重量%、平均粒径:約150μm)を、適量の水を添加しながら混合機を用いて混合して混合物を得た。炭素質還元剤は、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石に含まれる酸化ニッケル(NiO)と酸化鉄(Fe2O3)とを過不足なく還元するのに必要な量の合計値を100質量%としたときに23質量%の割合となる量で含有させた。
[混合物成形工程]
次に、得られた混合物を、パン型造粒機を用いて球状に造粒して、φ15.0±0.5mmの大きさに篩った。
[還元処理工程]
次に、用意した混合物試料を、実質的に酸素を含まない窒素雰囲気にした、回転炉床炉を有する還元炉に各々装入した。還元炉としては、図2に示すように、炉床が回転移動する領域を4分割するように4つの処理室43〜46を備えた回転炉床炉41を有するものを用いた。この還元炉4では、乾燥室42が回転炉床炉41の処理室43に接続されており、また、外部冷却室47が回転炉床炉41の処理室46に接続されている。
そして、回転炉床炉41の炉外に接続された乾燥室42に混合物を装入して乾燥処理を施した。具体的に、固形分が70重量%程度、水分が30重量%程度となるように、200℃〜250℃の熱風を吹き付けることで乾燥させた。下記表3に、乾燥処理後の混合物の固形分組成(炭素を除く)を示す。
次いで、乾燥後の混合物を、乾燥室42に連続して回転炉床炉41の中に設けられた、予熱室である処理室43に移行させ、予熱室内の温度を700℃以上1280℃以下の範囲に保持して、ペレットに対して予熱処理を行った。
続いて、予熱処理後のペレットを、回転炉床炉41の中で処理室44に移行させて、表4に示す温度及び時間で還元処理を行った。なお、金属製の炉床に灰(主成分はSiO2であり、その他の成分としてAl2O3、MgO等の酸化物を少量含有する灰)を敷き詰め、その上に混合物又はペレットを載置するようにした。
還元処理を経て得られたペレットの還元物は、表4に示す還元温度と同じ温度に維持された温度保持室である処理室45と、冷却室である処理室46との順に移行させ、次いで、回転炉床炉41に接続された外部冷却室47に移行させ、窒素を流しながら速やかに室温まで冷却して大気中へ取り出した。なお、還元物の回転炉床炉41からの回収は、還元物を外部冷却室47に移行させる際に行い、外部冷却室47に設置したガイドに還元物を沿わせるようにして回収した。その後、回収した還元物は、湿式処理による粉砕後、磁力線別によってメタルを回収した。
ここで、回転炉床炉41は炉床と、その炉床を支持し誘導するレールを有している。このレールはフラットな形状であり、凹凸を有していない。また、その近傍にこのレールを振動させるバイブレーターやノッカーも配置されていない。
実施例1〜5では、上述した還元処理に次いで、還元物を移動炉床炉から取り出し、窒素雰囲気とした高周波溶解炉に装入して、磁場により電磁誘導作用を生じさせることで、10分間、還元物を振動させた。一方で、比較例1〜5では、上述した還元処理の際及びその後、振動を加えなかった。
[評価]
このようにして得られた各試料について、還元物を樹脂に埋め込み、金属顕微鏡で観察を行い、メタルの平均粒径を測定した。平均粒径は各試料に任意にメタル粒子を100個選び、その粒子断面の最大長さを測定し、100個の平均値を平均粒径とした。下記表4に、このようにして求めた平均粒径を示す。
還元加熱処理後に取り出した試料について、ニッケルメタル率、メタル中のニッケル含有率を、ICP発光分光分析器(SHIMAZU S−8100型)により分析して算出した。また、原料であるニッケル酸化鉱石中のニッケル含有量と回収したニッケル量から、ニッケル回収率を算出した。下記表4に、分析結果から算出した値を併せて示す。なお、ニッケルメタル率は(1)式、メタル中ニッケル含有率は(2)式、ニッケル回収率は(3)式により算出した。
ニッケルメタル率=混合物中のメタル化したNiの量÷(ペレット中の全てNiの量)×100(%) ・・・(1)式
メタル中ニッケル含有率=混合物中のメタル化したNiの量÷(ペレット中のメタル化したNiとFeの合計量)×100(%) ・・・(2)式
表4の結果に示されるように、実施例1〜5では、磁場を加えて電磁誘導作用を生じさせこれにより混合物に振動を加えたため、直径で比較例1〜5の5倍程度の大きさまでメタルを粗大化させることができた。そしてこれにより、還元物を効率的に回収することができ、高い生産性でもってメタルを製造することができた。また、ニッケルメタル率、メタル中ニッケル含有量及びニッケル回収率は、いずれも高い値で良好な結果となり、高品質なメタルを高収率で製造することができた。
一方で、比較例1〜5では、ニッケルメタル化率、メタル中ニッケル含有量及びニッケル回収率がいずれも実施例に比べて低い値となり、メタルを有効に回収することができなかった。
≪実施例6〜25、比較例6〜10:超音波による振動の印加≫
[混合処理工程]
原料鉱石としてのニッケル酸化鉱石と、鉄鉱石と、フラックス成分である珪砂及び石灰石、バインダー、及び炭素質還元剤(石炭粉、炭素含有量:85重量%、平均粒径:約80μm)を、適量の水を添加しながら混合機を用いて混合して混合物を得た。炭素質還元剤は、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石に含まれる酸化ニッケル(NiO)と酸化鉄(Fe2O3)とを過不足なく還元するのに必要な量の合計値を100質量%としたときに28質量%の割合となる量で含有させた。
[混合物成形工程]
次に、得られた混合物を、パン型造粒機を用いて球状に造粒して、φ15.0±0.5mmの大きさに篩った。
[還元処理工程]
次に、用意した混合物試料を、実質的に酸素を含まない窒素雰囲気にした、回転炉床炉を有する還元炉に各々装入した。還元炉としては、図2に示すような回転炉床炉41を有するものを用いた。
そして、回転炉床炉41の炉外に接続された乾燥室42に混合物を装入して乾燥処理を施した。具体的に、固形分が70重量%程度、水分が30重量%程度となるように、200℃〜250℃の熱風を吹き付けることで乾燥させた。乾燥処理後の試料の固形分組成(炭素を除く)は、実施例1と同様であり、表3に示したとおりである。
次いで、乾燥後の混合物を、処理室43に移行させ、予熱室内の温度を700℃以上1280℃以下の範囲に保持して、ペレットに対して予熱処理を行った。
続いて、予熱処理後のペレットを、処理室44に移行させて、表5に示す温度及び時間で還元処理を行った。なお、金属製の炉床に灰(主成分はSiO2であり、その他の成分としてAl2O3、MgO等の酸化物を少量含有する灰)を敷き詰め、その上に混合物又はペレットを載置するようにした。
還元処理を経て得られたペレットの還元物は、温度保持室である処理室45と、冷却室である処理室46との順に移行させ、次いで、外部冷却室47に移行させ、窒素を流しながら速やかに室温まで冷却して大気中へ取り出した。なお、還元物の回転炉床炉41からの回収は、還元物を外部冷却室47に移行させる際に行い、外部冷却室47に設置したガイドに還元物を沿わせるようにして回収した。その後、回収した還元物は、湿式処理による粉砕後、磁力線別によってメタルを回収した。
ここで、回転炉床炉41は炉床と、その炉床を支持し誘導するレールを有している。このレールはフラットな形状であり、凹凸を有していない。また、その近傍にこのレールを振動させるバイブレーターやノッカーも配置されていない。
実施例6〜20では、上述した還元処理の際に、混合物に、表5に示す周波数の音波を照射し振動させた。実施例21〜25では、上述した還元処理に次いで、還元物を移動炉床炉から取り出し、窒素雰囲気としたバッチ炉に装入して表5に示す温度で加熱しながら音波を照射し振動させた。一方で、比較例6〜10では、上述した還元処理の際及びその後、振動を加えなかった。
[評価]
このようにして得られた各試料について、実施例1〜5及び比較例1〜5と同様にして、平均粒径、ニッケルメタル率、メタル中ニッケル含有率及びニッケル回収率を算出した。下記表5に、分析結果から算出した値を併せて示す。
表5の結果に示されるように、実施例6〜25では、混合物に音波を照射し振動を加えたため、直径で比較例6〜10の30〜50倍程度の大きさまでメタルを粗大化させることができた。そしてこれにより、還元物を効率的に回収することができ、高い生産性でもってメタルを製造することができた。また、ニッケルメタル率、メタル中ニッケル含有量及びニッケル回収率は、いずれも高い値で良好な結果となり、高品質なメタルを高収率で製造することができた。
一方で、比較例6〜10では、ニッケルメタル化率、メタル中ニッケル含有量及びニッケル回収率がいずれも実施例に比べて低い値となり、有効にメタルを回収することができなかった。
≪実施例26〜45、比較例11〜14:凹凸レールによる振動の印加≫
[混合処理工程]
原料鉱石としてのニッケル酸化鉱石と、鉄鉱石と、フラックス成分である珪砂及び石灰石、バインダー、及び炭素質還元剤(石炭粉、炭素含有量:85重量%、平均粒径:約90μm)を、適量の水を添加しながら混合機を用いて混合して混合物を得た。炭素質還元剤は、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石に含まれる酸化ニッケル(NiO)と酸化鉄(Fe2O3)とを過不足なく還元するのに必要な量の合計値を100質量%としたときに27質量%の割合となる量で含有させた。
[混合物成形工程]
次に、得られた混合物を、パン型造粒機を用いて球状に造粒して、φ14.0±1.0mmの大きさに篩った。
[還元処理工程]
次に、用意した混合物試料を、実質的に酸素を含まない窒素雰囲気にした、回転炉床炉を有する還元炉に各々装入した。還元炉としては、図2に示すような回転炉床炉41を有するものを用いた。
そして、回転炉床炉41の炉外に接続された乾燥室42に混合物を装入して乾燥処理を施した。具体的に、固形分が70重量%程度、水分が30重量%程度となるように、200℃〜250℃の熱風を吹き付けることで乾燥させた。乾燥処理後の試料の固形分組成(炭素を除く)は、実施例1と同様であり、表3に示したとおりである。
次いで、乾燥後の混合物を、処理室43に移行させ、予熱室内の温度を700℃以上1280℃以下の範囲に保持して、ペレットに対して予熱処理を行った。
続いて、予熱処理後のペレットを、処理室44に移行させて、表6に示す温度及び時間で還元処理を行った。なお、金属製の炉床に灰(主成分はSiO2であり、その他の成分としてAl2O3、MgO等の酸化物を少量含有する灰)を敷き詰め、その上に混合物又はペレットを載置するようにした。
還元処理を経て得られたペレットの還元物は、温度保持室である処理室45と、冷却室である処理室46との順に移行させ、次いで、外部冷却室47に移行させ、窒素を流しながら速やかに室温まで冷却して大気中へ取り出した。なお、還元物の回転炉床炉41からの回収は、還元物を外部冷却室47に移行させる際に行い、外部冷却室47に設置したガイドに還元物を沿わせるようにして回収した。その後、回収した還元物は、湿式処理による粉砕後、磁力線別によってメタルを回収した。
ここで、回転炉床炉41は炉床と、その炉床を支持し誘導するレールを有している。このレールは、その近傍にバイブレーターやノッカーが設置されていない。
実施例26〜30、36〜40では、上述した還元処理の際に、図3に示す断面形状を有するレール(表6において「形状1」という)上を進行方向一方向のみに炉床を移動させ振動させた。実施例31〜35、41〜45では、図4に示す断面形状を有するレール(表6において「形状2」という)状を進行方向及び逆方向(表6において「前後方向」という)に炉床を移動させ振動させた。一方で、比較例11〜14では、上述した還元処理の際及びその後、振動を加えなかった。
[評価]
このようにして得られた各試料について、実施例1〜5及び比較例1〜5と同様にして、平均粒径、ニッケルメタル率、メタル中ニッケル含有率及びニッケル回収率を算出した。下記表6に、分析結果から算出した値を併せて示す。
表6の結果に示されるように、実施例26〜45では、混合物が載置された路床に凹凸上を通過させて振動を加えたため、直径で比較例11〜14の20〜30倍程度の大きさまでメタルを粗大化させることができた。そしてこれにより、還元物を効率的に回収することができ、高い生産性でもってメタルを製造することができた。また、ニッケルメタル率、メタル中ニッケル含有量及びニッケル回収率は、いずれも高い値で良好な結果となり、高品質なメタルを高収率で製造することができた。
一方で、比較例11〜14では、ニッケルメタル化率、メタル中ニッケル含有量及びニッケル回収率がいずれも実施例に比べて低い値となり、有効にメタルを回収することができなかった。
≪実施例46〜65、比較例15〜17:ノッカー又はバイブレーターによる振動の印加≫
[混合処理工程]
原料鉱石としてのニッケル酸化鉱石と、鉄鉱石と、フラックス成分である珪砂及び石灰石、バインダー、及び炭素質還元剤(石炭粉、炭素含有量:85重量%、平均粒径:約75μm)を、適量の水を添加しながら混合機を用いて混合して混合物を得た。炭素質還元剤は、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石に含まれる酸化ニッケル(NiO)と酸化鉄(Fe2O3)とを過不足なく還元するのに必要な量の合計値を100質量%としたときに25質量%の割合となる量で含有させた。
[混合物成形工程]
次に、得られた混合物を、パン型造粒機を用いて球状に造粒して、φ16.0±1.0mmの大きさに篩った。
[還元処理工程]
次に、用意した混合物試料を、実質的に酸素を含まない窒素雰囲気にした、回転炉床炉を有する還元炉に各々装入した。還元炉としては、図2に示すような回転炉床炉41を有するものを用いた。
そして、回転炉床炉41の炉外に接続された乾燥室42に混合物を装入して乾燥処理を施した。具体的に、固形分が70重量%程度、水分が30重量%程度となるように、200℃〜250℃の熱風を吹き付けることで乾燥させた。乾燥処理後の試料の固形分組成(炭素を除く)は、実施例1と同様であり、表3に示したとおりである。
次いで、乾燥後の混合物を、処理室43に移行させ、予熱室内の温度を700℃以上1280℃以下の範囲に保持して、ペレットに対して予熱処理を行った。
続いて、予熱処理後のペレットを、処理室44に移行させて、表6に示す温度及び時間で還元処理を行った。なお、金属製の炉床に灰(主成分はSiO2であり、その他の成分としてAl2O3、MgO等の酸化物を少量含有する灰)を敷き詰め、その上に混合物又はペレットを載置するようにした。
還元処理を経て得られたペレットの還元物は、温度保持室である処理室45と、冷却室である処理室46との順に移行させ、次いで、外部冷却室47に移行させ、窒素を流しながら速やかに室温まで冷却して大気中へ取り出した。なお、還元物の回転炉床炉41からの回収は、還元物を外部冷却室47に移行させる際に行い、外部冷却室47に設置したガイドに還元物を沿わせるようにして回収した。その後、回収した還元物は、湿式処理による粉砕後、磁力線別によってメタルを回収した。
ここで、回転炉床炉41は炉床と、その炉床を支持し誘導するレールを有している。このレールはフラットな形状であり、凹凸を有していない。
実施例46〜55では、上述した還元処理の際に、ノッカーを用いてレールを振動させた。実施例56〜65では、バイブレーターを用いてレールを振動させた。一方で、比較例15〜17では、上述した還元処理の際及びその後、振動を加えなかった。
[評価]
このようにして得られた各試料について、実施例1〜5及び比較例1〜5と同様にして、平均粒径、ニッケルメタル率、メタル中ニッケル含有率及びニッケル回収率を算出した。下記表7に、分析結果から算出した値を併せて示す。
表7の結果に示されるように、実施例46〜65では、レールに振動を加えて混合物に振動を加えたため、直径で比較例15〜17の20〜30倍程度の大きさまでメタルを粗大化させることができた。そしてこれにより、還元物を効率的に回収することができ、高い生産性でもってメタルを製造することができた。また、ニッケルメタル率、メタル中ニッケル含有量及びニッケル回収率は、いずれも高い値で良好な結果となり、高品質なメタルを高収率で製造することができた。
一方で、比較例15〜17では、ニッケルメタル化率、メタル中ニッケル含有量及びニッケル回収率がいずれも実施例に比べて低い値となり、有効にメタルを回収することができなかった。