JP2019073758A - アルミニウム溶湯のP削減方法及び当該方法を用いたAl−Si系合金鋳物 - Google Patents

アルミニウム溶湯のP削減方法及び当該方法を用いたAl−Si系合金鋳物 Download PDF

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Abstract

【課題】取扱いが困難な塩素等の使用を伴うことなく、アルミニウム中のPの含有量を低下させることができる簡便かつ効率的な溶湯処理方法、及びPの含有量が削減された高強度なAl−Si系合金鋳物を提供する。【解決手段】アルミニウムの溶湯温度を1000℃超とすることを特徴とするアルミニウム溶湯中からのPの削減方法。当該溶湯温度に5〜60分間保持することが好ましく、アルミニウムがAl−Si系合金であることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、アルミニウム中のPの量を削減する溶湯処理方法に関するものである。
P(リン)はアルミニウムに含まれる代表的な不可避不純物であり、特にAl−Si系合金に混入されることが多い。ここで、Al−Si系合金に不純物としてPが混入する主な原因としては、金属Siに起因する経路と、過共晶Al−Si系合金のスクラップに起因する経路が存在する。
具体的には、Pは金属Siに不可避不純物として混入している場合が多く、当該金属Siを原料とする場合、Siを含有するアルミニウム合金にはPが混入してしまう。また、Pは初晶Siを微細化する作用があるため、初晶Siが晶出しやすい過共晶Al−Si系合金等に添加されることが多いが、当該過共晶Al−Si系合金等のスクラップを原料とする場合もPが混入することになる。
Pは初晶Siを微細化する作用を有するものの、共晶Siの微細化を阻害することが知られており、Al−Si系合金の強度を担保する等の観点から、Pの含有量を低下させる方法が切望されている。
例えば、特許文献1(特開2002−80920号公報)では、溶湯温度650〜850℃でP及び/又はSbを含有するアルミニウム溶湯にMgを添加し、且つ塩素ガスを吹き込み、溶湯中のP及び/又はSbを除去することを特徴とするアルミニウム溶湯からの脱P及び/又は脱Sb方法、が提案されている。
上記特許文献1に開示されている脱P方法においては、アルミニウム溶湯にMgを添加することで、溶湯中のPとMgが反応してP化Mg化合物を形成し、且つ塩素ガスを吹き込むことで、溶湯中のMgが塩素ガスと反応してMgClを形成し、溶湯中のP化Mg化合物を吸収してドロスとなって除去されることから、溶湯中のP量を低下させることができる、としている。
特開2002−80920号公報
しかしながら、塩素は極めて強い毒性を有し、毒物及び劇物取締法によって劇物に指定されていることに加えて、オゾン層ホールの原因物質としても指摘を受けている。そのため、塩素の取り扱いには十分な注意が必要となり、塩素を使用する場合は当該塩素を処理するための設備が別途必要となる。更に、塩素は高い腐食性を有しており、使用設備の腐食や塩素の漏出も深刻な問題となっている。
以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、取扱いが困難な塩素等の使用を伴うことなく、アルミニウム中のPの含有量を低下させることができる簡便かつ効率的な溶湯処理方法、及びPの含有量が削減された高強度なAl−Si系合金鋳物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく、アルミニウム溶湯処理方法について鋭意研究を重ねた結果、アルミニウム溶湯を一定温度以上に加熱すること等が極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、アルミニウムの溶湯温度を1000℃超とすること、を特徴とするアルミニウム溶湯中からのPの削減方法を提供する。即ち、基本的に溶湯温度の制御のみによってPを削減する方法であり、塩素等の添加を伴う必要がない。なお、「アルミニウム」には、アルミニウム及び各種アルミニウム合金が含まれる。
一般的に、アルミニウムを実操業として鋳造する場合、アルミニウムの溶湯を700〜800℃の温度域に保持し、脱ガス、滓取、成分調整等の炉内処理を行った後、所定形状の金型に注湯する。これに対し、本発明のアルミニウム溶湯中からのPの削減方法においては、アルミニウム溶湯を1000℃超の高温に加熱・保持することにより、アルミニウム溶湯中のPの含有量を簡便かつ効率的に低減することができる。
アルミニウム溶湯を1000℃超の高温に加熱・保持することでPの含有量が減少する理由は必ずしも明らかにはなっていないが、Al−P結合の分離及び分離したPの蒸発に起因していると考えられる。具体的には、Pはアルミニウム溶湯中においてAlと反応してAl−P系の晶出物を形成するが、溶湯の温度が1000℃超となると当該晶出物が溶解することでAlとPが分離し、分離したPが蒸発することでアルミニウム溶湯中のPの含有量が減少するのではないかと推測される。ここで、より好ましいアルミニウム溶湯の温度範囲は1000超〜1250℃、さらに好ましくは1100〜1200℃である。アルミニウム溶湯を1100℃超とすることでPの分離及び蒸発を促進することができ、1250℃以下とすることで、溶湯処理に必要な消費エネルギーや高温に伴う設備の劣化を抑制することができる。
本発明のアルミニウム溶湯中からのPの削減方法においては、前記溶湯温度に5〜60分間保持すること、が好ましい。アルミニウム溶湯を1000℃超(好ましくは1100〜1200℃)の高温に保持する時間を5分間以上とすることによって、アルミニウム溶湯のP含有量を15ppm以下とすることができ、60分間以下とすることによって、溶湯処理に必要な消費エネルギーや高温に伴う設備の劣化を抑制することができる。
また、本発明のアルミニウム溶湯中からのPの削減方法においては、前記アルミニウムがAl−Si系合金であること、が好ましい。Al−Si系合金ではPの含有量が多い過共晶Al−Si系合金等のスクラップが原料となる場合があるが、原料のP含有量が多い場合であっても、本発明のアルミニウム溶湯中からのPの削減方法を用いることで、簡便かつ効率的にPの含有量を低下させることができる。
更に、本発明のアルミニウム溶湯中からのPの削減方法においては、前記アルミニウム溶湯中のPの含有量が15ppm以下となること、が好ましい。Pの含有量を15ppm以下とすることで、共晶Siを十分に微細化することができ、Al−Si系合金に高い強度を付与することができる。ここで、アルミニウム溶湯中のより好ましいPの含有量は8ppm以下であり、最も好ましいPの含有量は5ppm以下である。
また、本発明は、
初晶α(Al)相が晶出し、
共晶Siの平均粒径(円相当径)が10μm以下であり、
Pの含有量が15ppm以下であり、
直径が10μm以上のAlP粒子が存在しないこと、
を特徴とするAl−Si系合金鋳物、も提供する。
本発明のAl−Si系合金鋳物ではPの含有量が15ppmとなっており、Pの含有量が極めて少ないことによって共晶Siの微細化が促進されることから、共晶Siの平均粒径(円相当径)が10μm以下となっている。ここで、AlP粒子はSiの異質核として作用し、AlP粒子が多い場合は過冷却せずに共晶凝固が生じることになる。当該一般的な凝固の場合は共晶Siが粗大になるが、本発明のAl−Si系合金鋳物ではPの含有量が低減されていることから、AlP粒子が少なくなると共に、AlP粒子が溶解することから、あらためて晶出する際にAlP粒子が微細(直径が10μm以下)となり、過冷却によって共晶Siが微細化している。
また、本発明のAl−Si系合金鋳物においては、Siの含有量が5〜14質量%であること、が好ましい。Siの含有量を5質量%以上とすることで、Al−Si系合金鋳物を製造する際のAl−Si系合金溶湯の流動性及び鋳型充填性を担保することができると共に、Al−Si系合金鋳物の強度及び耐摩耗性等を向上させることができる。一方で、Siの含有量を14質量%以下とすることで、Si添加の原料に起因するPの混入を低減することができる。
更に、本発明のAl−Si系合金鋳物においては、共晶温度が577℃未満であること、が好ましい。一般的に、Al−Si二元系状態図に示されている共晶温度は577℃であるが、Al−Si系合金がより低い共晶温度を有することで、共晶Siの微細化を促進することができる。なお、Al−Si系合金の共晶温度は、例えば、示差熱−熱重量同時測定装置(TG−DTA)等を用いて測定することができる。
本発明によれば、取扱いが困難な塩素等の使用を伴うことなく、アルミニウム中のPの含有量を低下させることができる簡便かつ効率的な溶湯処理方法、及びPの含有量が削減された高強度なAl−Si系合金鋳物を提供することができる。
実施Al−Si系合金鋳物1の組織写真である。 実施Al−Si系合金鋳物2の組織写真である。 実施Al−Si系合金鋳物3の組織写真である。 比較Al−Si系合金鋳物1の組織写真である。 比較Al−Si系合金鋳物3の組織写真である。
以下、本発明のアルミニウム溶湯のP削減方法及び当該方法を用いたAl−Si系合金鋳物について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
1.アルミニウム溶湯のP削減方法
本発明のアルミニウム溶湯のP削減方法は、アルミニウムの溶湯温度を1000℃超とすることを特徴とする極めて簡便かつ効率的なアルミニウム溶湯中からのPの削減方法である。溶湯温度を制御するのみでアルミニウム溶湯中からPを削減することができ、塩素等の添加を伴う必要がない。
ここで、ZnやMg等の蒸気圧の高い元素をアルミニウム溶湯から除去する場合、アルミニウム溶湯が入った炉内を減圧することが効果的であるとされている。しなしながら、当該方法では炉内を減圧するための設備が必要であることに加え、PはAlと反応してAl−P系晶出物を形成することから、当該方法ではPをアルミニウム溶湯から除去することが困難である。
これに対し、本発明のアルミニウム溶湯のP削減方法で極めて効率的にPを削減できる理由については必ずしも明らかになっていないが、アルミニウム溶湯の温度を1000℃超とすることでAl−P系晶出物が溶解することでAl−P結合が分離して、分離したPが蒸発することが原因であると考えられる。ここで、より好ましいアルミニウム溶湯の温度範囲は1000超〜1250℃、さらに好ましくは、1100〜1200℃であり、アルミニウム溶湯を1100℃超とすることでPの分離及び蒸発を促進することができ、1250℃以下とすることで、溶湯処理に必要な消費エネルギーや高温に伴う設備の劣化を抑制することができる。
また、本発明のアルミニウム溶湯のP削減方法は、アルミニウム溶湯からPを削減するだけでなく、鋳造を経て最終的に得られるAl−Si系合金鋳物の共晶Siを微細化する効果も有している。これは、Pによる共晶Siの微細化の阻害が低減されることに加えて、あらためてAlPとして晶出する際に非常に微細に晶出する。共晶Siの異質核として作用するAlPは、ある程度以上のサイズのものである。本発明では微細にAlPが晶出するので、AlPが存在していたとしても共晶Siの異質核として作用せず、過冷却する。これが共晶Siを粗大化させないことの原因であると考えられる。
また、アルミニウムはAl−Si系合金であること、が好ましい。Al−Si系合金ではPの含有量が多い過共晶Al−Si系合金等のスクラップが原料となる場合があるが、原料のP含有量が多い場合であっても本発明のアルミニウム溶湯中からのPの削減方法を用いることで、簡便かつ効率的にPの含有量を低下させることができる。
Al−Si系合金の種類は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々のAl−Si系合金を用いることができるが、Siの含有量を5〜14質量%とすることが好ましい。Siの含有量を5質量%以上とすることで、Al−Si系合金鋳物を製造する際のAl−Si系合金溶湯の流動性及び鋳型充填性を担保することができると共に、Al−Si系合金鋳物の強度及び耐摩耗性等を向上させることができる。一方で、Siの含有量を14質量%以下とすることで、Si添加の原料に起因する過剰なPの混入を低減することができる。
また、アルミニウム溶湯中のPの含有量が15ppm以下となることが好ましい。Pの含有量を15ppm以下とすることで、共晶Siを十分に微細化することができ、Al−Si系合金に高い強度を付与することができる。ここで、アルミニウム溶湯中のより好ましいPの含有量は8ppm以下であり、最も好ましいPの含有量は5ppm以下である。Pの含有量をより低減することで、Al−Si系合金鋳物の共晶Siをより顕著に微細化することができる。
なお、アルミニウム溶湯が入った炉内の雰囲気は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、大気、不活性ガス雰囲気、減圧及び真空雰囲気とすることができる。また、アルミニウム溶湯の加熱手段も本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の加熱方法を用いることができる。
2.Al−Si系合金鋳物
本発明のAl−Si系合金鋳物は、初晶α(Al)相が晶出し、共晶Siの平均粒径(円相当径)が10μm以下であり、Pの含有量が15ppm以下であり、直径が10μm以上のAlP粒子が存在しないこと、を特徴とするAl−Si系合金鋳物である。
ここで、円相当径とは、金属組織を顕微鏡観察した際に求まる共晶Siの占める面積を円相当の面積に換算したときの直径である。具体的には、顕微鏡写真を画像処理等して容易に求めることができる。共晶Siの領域とその他の領域とは顕微鏡写真上で明瞭にコントラストが異なるため、二値化処理したのち、各種画像計測処理を行う。また、平均粒径としては、例えば、一定視野内(測定面積:1.3mm、測定視野数:3)の円相当径の平均値を用いることができる。
AlとPの化合物であるAlPの格子定数は、Siの格子定数と約0.4%しか違わず、多面体Siの核生成物質であるとされている。当該特性を利用して、Pは過共晶Al−Si合金の初晶微細化剤として工業的に使用される場合があるが、一方で、共晶Siの微細化を阻害することが知られている。
これに対し、本発明のAl−Si系合金鋳物ではPの含有量が15ppm以下に抑えられており、共晶Siの平均粒径(円相当径)が10μm以下となっている。ここで、共晶Siを微細化する観点から、Pの含有量は8ppm以下とすることが好ましく、5ppm以下とすることがより好ましい。
また、本発明のAl−Si系合金鋳物においては、Siの含有量が5〜14質量%であること、が好ましい。Siの含有量を5質量%以上とすることで、Al−Si系合金鋳物を製造する際のAl−Si系合金溶湯の流動性及び鋳型充填性を担保することができると共に、Al−Si系合金鋳物の強度及び耐摩耗性等を向上させることができる。一方で、Siの含有量を14質量%以下とすることで、Si添加の原料に起因するPの混入を低減することができる。
一般的に、Al−Si系合金が亜共晶組成を有する場合はAl−Si系合金鋳物は初晶α(Al)と共晶からなる組織を有し、Al−Si系合金が共晶組成を有する場合は共晶組織、Al−Si系合金が過共晶組成を有する場合は初晶Siと共晶からなる組織となる。しかしながら、本発明のAl−Si系合金鋳物においては、亜共晶組成を有さない場合であっても、初晶α(Al)と共晶からなる組織を有することが好ましい。
本発明のAl−Si系合金鋳物では共晶温度が低下しており、例えば、Al−Si系合金が略共晶組成を有している場合であっても、カップルドゾーン(協調成長領域)の存在によって、初晶α(Al)と共晶からなる組織が形成されることになる。
更に、本発明のAl−Si系合金鋳物においては、共晶温度が577℃未満であること、が好ましい。Al−Si系合金がより低い共晶温度を有することで、共晶Siの微細化を促進することができる。なお、Al−Si系合金の共晶温度は、例えば、示差熱−熱重量同時測定装置(TG−DTA)等を用いて測定することができる。
本発明のAl−Si系合金鋳物ではAl−Si系合金溶湯の温度を1000℃超の高温に保持した後に鋳造することから、一般的な場合と比較して過冷度が大きくなり、共晶温度が低下する。ここで、Al−Si系合金溶湯の温度の増加に伴って過冷度も大きくなり、共晶温度の低下も顕著になる。また、Al−Si系合金溶湯の温度の増加に伴って当該溶湯中のP含有量が少なくなり、当該効果によっても共晶温度が低くなると思われる。
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それら設計変更は全て本発明の技術的範囲に含まれる。
≪実施例1≫
純度99.9質量%のアルミニウム地金、Al−25%Si合金地金及びロッドタイプのAl−19質量%Cu−1.4質量%P合金を黒鉛坩堝に挿入して750℃で溶解した後、重力金型鋳造法を用いて150℃に予熱した金型に鋳造し、舟型形状(JIS H 5202)に鋳造した。Al−Si系合金溶湯の組成を表1に示す。得られたAl−Si系合金鋳物の底面から13mmの位置を中心として、直径4mm、高さ4mmの円柱を切り出し、評価用試料とした。
次に、DTA装置でAl−Si系合金鋳物から切り出した評価用試料に対して溶湯過熱処理を施した。具体的には、評価用試料を1290K(1017℃)で10分間保持した後に冷却することで、実施Al−Si系合金鋳物1を得た。
実施Al−Si系合金鋳物1の組織写真(光学顕微鏡写真)を図1に示す。実施Al−Si系合金鋳物1は、初晶α(Al)と共晶からなる組織を有していることが分かる。当該組織の共晶Siの平均粒径(円相当径)を測定したところ、10μmであった。なお、共晶Siの平均粒径の測定には画像解析を用い、一定視野内(測定面積:1.3mm、測定視野数:3)の円相当径の平均値を求めた。
吸光光度法によって、実施Al−Si系合金鋳物1のP含有量を測定した。得られた結果を表2に示す。1290K(1017℃)以上の過熱でP含有量は50ppm以下となっており、P含有量が低減されていることが分かる。
また、DTA装置によって、実施Al−Si系合金鋳物1の共晶温度を測定したところ、562℃であった。得られた結果(過冷度)を表2に示す。なお、Al−Si二元系の共晶温度が577℃であることから、過冷度15Kは共晶温度が562℃であることに対応する。
≪実施例2≫
DTA装置を用いた溶湯過熱処理の保持温度を1390K(1117℃)としたこと以外は実施例1と同様にして、実施Al−Si系合金鋳物2を得た。実施Al−Si系合金鋳物2の組織写真(光学顕微鏡写真)を図2に示す。実施Al−Si系合金鋳物2は、初晶α(Al)と共晶からなる組織を有していることが分かる。
また、実施例1と同様にして、共晶Siの平均粒径(円相当径)、P含有量及び共晶温度を測定し、得られた結果を表2に示した。
≪実施例3≫
DTA装置を用いた溶湯過熱処理の保持温度を1490K(1217℃)としたこと以外は実施例1と同様にして、実施Al−Si系合金鋳物3を得た。実施Al−Si系合金鋳物3の組織写真(光学顕微鏡写真)を図3に示す。実施Al−Si系合金鋳物3は、初晶α(Al)と共晶からなる組織を有していることが分かる。
また、実施例1と同様にして、共晶Siの平均粒径(円相当径)、P含有量及び共晶温度を測定し、得られた結果を表2に示した。
≪比較例1≫
DTA装置を用いた溶湯過熱処理の保持温度を990K(717℃)としたこと以外は実施例1と同様にして、比較Al−Si系合金鋳物1を得た。比較Al−Si系合金鋳物1の組織写真(光学顕微鏡写真)を図4に示す。比較Al−Si系合金鋳物1では、初晶α(Al)は晶出しておらず、共晶組織を有していることが分かる。
また、実施例1と同様にして、共晶Siの平均粒径(円相当径)、P含有量及び共晶温度を測定し、得られた結果を表2に示した。
≪比較例2≫
DTA装置を用いた溶湯過熱処理の保持温度を1090K(817℃)としたこと以外は実施例1と同様にして、比較Al−Si系合金鋳物2を得た。また、実施例1と同様にして、P含有量及び共晶温度を測定し、得られた結果を表2に示した。
≪比較例3≫
DTA装置を用いた溶湯過熱処理の保持温度を1190K(917℃)としたこと以外は実施例1と同様にして、比較Al−Si系合金鋳物3を得た。比較Al−Si系合金鋳物3の組織写真(光学顕微鏡写真)を図5に示す。比較Al−Si系合金鋳物3では、初晶α(Al)は晶出しておらず、共晶組織を有していることが分かる。
また、実施例1と同様にして、共晶Siの平均粒径(円相当径)、P含有量及び共晶温度を測定し、得られた結果を表2に示した。
表2の結果より、Al−Si系合金溶湯の温度を1000℃超とすることで、初晶α(Al)が晶出すると共に、Pの含有量が極めて効果的に低減されていることが分かる。また、実施Al−Si系合金鋳物の共晶Siの平均粒径は微細化しており、10μm以下となっている。更に、表2の結果より、実施Al−Si系合金鋳物は、比較Al−Si系合金鋳物よりも共晶温度が低く、これによって初晶α(Al)の晶出が起こっていることが分かる。

Claims (7)

  1. アルミニウムの溶湯温度を1000℃超とすること、
    を特徴とするアルミニウム溶湯中からのPの削減方法。
  2. 前記溶湯温度に5〜60分間保持すること、
    を特徴とする請求項1に記載のアルミニウム溶湯中からのPの削減方法。
  3. 前記アルミニウムがAl−Si系合金であること、
    を特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウム溶湯中からのPの削減方法。
  4. 前記アルミニウム溶湯中のPの含有量が50ppm以下となること、
    を特徴とする請求項1〜3のうちのいずれかに記載のアルミニウム溶湯中からのPの削減方法。
  5. 初晶α(Al)相が晶出し、
    共晶Siの平均粒径(円相当径)が10μm以下であり、
    Pの含有量が15ppm以下であり、
    直径が10μm以上のAlP粒子が存在しないこと、
    を特徴とするAl−Si系合金鋳物。
  6. Siの含有量が5〜14質量%であること、
    を特徴とする請求項5に記載のAl−Si系合金鋳物。
  7. 共晶温度が577℃未満であること、
    を特徴とする請求項5又は6に記載のAl−Si系合金鋳物。
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