JP2019073596A - ポリアミド溶液、樹脂フィルムおよび電子装置 - Google Patents

ポリアミド溶液、樹脂フィルムおよび電子装置 Download PDF

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敏彦 片山
北村 昌弘
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昌弘 北村
律也 川崎
Ritsuya Kawasaki
律也 川崎
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Seiya Kikuchi
星矢 菊地
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Abstract

【課題】残留応力の低減および透明性に優れた樹脂フィルムを実現できるポリアミド溶液を提供する。【解決手段】本発明のポリアミド溶液は、透明部材を形成するためのポリアミド溶液であって、シリコーン変性ポリアミドと、溶媒と、を含むものである。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド溶液、樹脂フィルムおよび電子装置に関する。
これまで芳香族ポリアミドについて様々な検討がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、ジカルボン酸ジクロリドとジアミンとからなる芳香族ポリアミドを含有するポリアミド溶液をフィルムに製膜することが記載されている。
特開2014−156561号公報
本発明者が検討した結果、特許文献1に記載のポリアミド溶液からなる樹脂フィルムにおいては、残留応力の低減および透明性の点で改善の余地を有することが判明した。
現在、表示素子などの各種電子装置に用いる透明部材として、ポリアミドフィルムが活用されている。
本発明者はポリアミドフィルムの作製プロセスに着眼し検討したところ、ポリアミドを含有するポリアミド溶液を基板に塗工し、加熱した後冷却することによってポリアミドフィルムを作製するプロセスにおいて、プロセス過程中に基板とポリアミドフィルムとの熱寸法変化の乖離が大きくなることを見出した。これにより生じる基板反りは、製造プロセスの歩留まりを低下させるものであり、線膨張係数が比較的小さいことで知られるガラス基板で顕著になることが判明した。
このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、柔軟な構造をポリアミド中に導入することにより、基板上に成膜されたポリアミドフィルムの残留応力を低減でき、基板反りを抑制できることが判明した。そして、柔軟な構造についてさらに検討を進めた結果、柔軟構造としてシリコーン構造を採用し、かかるシリコーン構造を有するシリコーン変性ポリアミドを用いることにより、ポリアミドフィルムの透明性を維持しつつも、残留応力の低減を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、
透明部材を形成するためのポリアミド溶液であって、
シリコーン変性ポリアミドと、
溶媒と、を含む、ポリアミド溶液が提供される。
また本発明によれば、上記ポリアミド溶液からなる樹脂フィルムが提供される。
また本発明によれば、上記樹脂フィルムを備える電子装置が提供される。
本発明によれば、残留応力の低減および透明性に優れた樹脂フィルムを実現できるポリアミド溶液、それを用いた樹脂フィルムおよび電子装置が提供される。
本実施形態のポリアミド溶液の概要について説明する。
本実施形態のポリアミド溶液は、シリコーン変性ポリアミドと、溶媒と、を含むことができる。このポリアミド溶液(透明部材形成用樹脂組成物)は、透明部材を形成するために用いることができる。
本実施形態のポリアミド溶液は、基板上に塗布し加熱することにより、ポリアミド溶液からなる樹脂フィルム(ポリアミドフィルムと呼称することもある)を得ることができる。このポリアミドフィルムは、透明部材として、光デバイスなどの各種電子装置に適用することができる。すなわち、上記樹脂フィルム(ポリアミドフィルム)を備える電子装置を実現することができる。
本発明者はポリアミドフィルムの作製プロセスに着眼し検討したところ、ポリアミドを含有するポリアミド溶液を基板に塗工し、加熱した後冷却することによってポリアミドフィルムを作製するプロセスにおいて、プロセス過程中に基板とポリアミドフィルムとの熱寸法変化の乖離が大きくなることを見出した。
フレキシブルデバイスの製造プロセスを例に具体的に検討すると、次のようになる。まず、スリットコーティングなどの塗工方法を用いて、ポリアミド溶液をキャリアガラス上に塗工し、塗工膜を形成する。この塗工膜を加熱することによりポリアミドフィルムをキャリアガラス上に形成する。その後、ポリアミドフィルム上に、ディスプレイ用素子、光学用素子または照明用素子等の各種の電子素子を作製し、必要に応じて電子素子を封止した後、電子素子が形成されたポリアミドフィルムをキャリアガラスから、レーザー照射法などの剥離方法を用いて分離する。これにより、フレキシブルデバイスを得ることができる。
このような製造プロセスにおいて、ポリアミドフィルムの形成時に加熱処理が実施され、電子素子の形成時に比較的高温の加熱処理が実施され、その後、電子素子付きのポリアミドフィルムの冷却処理が実施される。その結果、これらの加熱処理によって、線膨張係数が比較的小さいことで知られるキャリアガラス(またはシリコンウエハ)とポリアミドフィルムとの熱寸法変化の乖離が大きくなり、室温に戻した時にポリアミドフィルム中の残留応力が高くなるため、基板の反りが発生することが判明した。また、冷却処理において、ポリアミドフィルムの表面が電子素子等で覆われた状態だと、空気中に存在する水分がポリアミドフィルム中に吸収されることが抑制されるため、室温に戻した時にポリアミドフィルム中の残留応力がより一層高くなるため、基板反りが生じることが判明した。
上記のフレキシブルデバイスの製造プロセスの例に限定されないが、ポリアミドフィルムの製膜プロセスやその後の電子装置の製造プロセスの過程において、様々な熱履歴が加わることで、基板とポリアミドフィルムとの熱寸法変化の乖離が大きくなり、室温に戻した時にポリアミドフィルム中の残留応力が高くなる。このため、基板反りが生じ、それによって製造プロセスの歩留まりや製造安定性等が低下する恐れがある。
このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、柔軟な構造をポリアミド中に導入することにより、基板上に成膜されたポリアミドフィルムの残留応力を低減でき、上記のような基板反りを抑制できることが判明した。そして、柔軟な構造についてさらに検討を進めた結果、柔軟構造としてシリコーン構造を採用し、かかるシリコーン構造を有するシリコーン変性ポリアミドを用いることにより、シリコーン変性ポリアミド含有ポリアミドフィルムの透明性を維持しつつも、残留応力の低減を実現できることを見出した。
本実施形態によれば、シリコーン構造を採用することにより、主鎖の結合回転が比較的に容易となるため、シリコーン変性ポリアミドを用いたポリアミドフィルムの柔軟性を高め、弾性率を低減させることが可能である。また、シリコーン構造は結合エネルギーが高いため、シリコーン変性ポリアミドを用いたポリアミドフィルムの耐熱性の低下を抑制することが可能である。
本実施形態において、上記透明部材としては、各種の用途に用いることができるが、例えば、ディスプレイ用基板、半導体絶縁膜、TFT−LCD絶縁膜、パッシベーション膜、液晶配向膜、光通信用材料、太陽電池用保護膜、反射防止膜照明用素子、センサ素子、発光素子の保護膜、透明基板、パワーモジュールの液状封止材、高耐熱のクリア塗料、金属の防さび塗膜、メガネのレンズなどが挙げられる。
本実施形態における透明性は、透明部材の各種用途における要求水準に応じて、適切に設定することが可能であるが、例えば、外観、全光線透過率(550nm)、黄色度、ヘイズなどを指標とすることができる。表示素子等の高度な透明性が要求される用途に用いる場合、透明部材として、例えば、全光線透過率(550nm)>80%、黄色度<10、およびヘイズ<2%の特性を満たすポリアミドフィルムを用いることができる。
以下、本実施形態のポリアミド溶液について詳述する。
本実施形態のポリアミド溶液は、シリコーン変性ポリアミドと溶媒とを含むことができる。当該シリコーン変性ポリアミドは、芳香族ジアミン由来の構造単位Aおよび芳香族二酸ジクロリド由来の構造単位Bがアミド結合を介して結合してなるポリアミド構造単位Xと、シリコーン化合物由来のシリコーン構造単位Yと、を分子中に有することができる。本実施形態のシリコーン変性ポリアミドは、主鎖骨格中にシリコーン化合物由来のシリコーン構造単位Yを有するので、柔軟性および耐熱性を高めることが可能である。
上記ポリアミド構造単位X中の芳香環としては、例えば、ベンゼン環;ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環などの縮合芳香環;ピリジン環、ピロール環などの複素芳香環;などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記芳香族ジアミン由来の構造単位Aは、カルボキシル基を有する構造単位a1を有することができる。すなわち、ポリアミド構造単位Xは、カルボキシル基を有する構造単位a1を含むことができる。このカルボキシル基は、芳香族ジアミン由来の構造単位A中の芳香環に直接結合したものを用いることができる。これにより、カルボキシル基とポリアミド構造単位X中のアミド結合との間で、アミド交換反応による架橋構造を形成することが可能である。このように架橋構造を備えるポリアミドフィルムは硬化樹脂フィルムとして用いることができる。したがって、本実施形態のポリアミドフィルムにおける耐薬品性を向上させることができる。
なお、アミド交換反応による架橋構造を形成する加熱処理を硬化処理と呼称する。
<芳香族ジアミン>
上記芳香族ジアミンとしては、例えば、分子中に芳香環を含む芳香族ジアミンを用いることが好ましい。芳香族ジアミンとしては、具体的には、芳香族カルボキシル基を備える芳香族ジアミン、芳香族カルボキシル基を備えない芳香族ジアミンが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記芳香族カルボキシル基を備える芳香族ジアミンとしては、例えば、アミノ基のうち少なくとも1つと、カルボキシル基とが、共にベンゼン環に直接結合し、該アミノ基及び該カルボキシル基の配位がメタ位であるものが好ましい。すなわち、ポリアミド構造単位Xは、アミド結合のうち少なくとも1つと、カルボキシル基とが、共に同一のベンゼン環に直接結合し、該アミド結合及び該カルボキシル基の配位がメタ位である芳香族ジアミンに由来する構造単位を備えることが好ましい。これにより、アミド交換反応によってアミノ基及びカルボキシル基の立体障害を低減し、ポリアミドフィルムの硬化性を高めることができる。
上記芳香族カルボキシル基を備える芳香族ジアミンとしては、例えば、芳香族ジアミンの構造中に含まれる芳香環1つに対して、1つのカルボキシル基を備えるものが好ましい。すなわち、芳香族ポリアミドが含有する芳香族カルボキシル基は、芳香環1つに対して、1つのカルボキシル基を備えるものが好ましい。これにより、束縛されていない芳香環の絶対数を低減できる。したがって、芳香環同士がスタッキングして、芳香族ポリアミドの分子鎖が凝集することを抑制できる。
上記芳香族カルボキシル基を備える芳香族ジアミンとしては、具体的には、3,5−ジアミノ安息香酸(DAB)、4,4’−ジアミノジフェン酸(DADP)、5,5’−メチレンビス(2−アミノ安息香酸)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(4−アミノ2−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、3,5−ビス(4−アミノフェノキシ)安息香酸、4,4’−ジアミノ−N−(4−カルボキシフェノキシ)ベンズアニリド、N−ビス(4−アミノフェニル)−4−カルボキシアニリン、5−アミノ−2−(4−アミノフェノキシ)安息香酸、3,5−ジアミノ−4−メトキシ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸などが挙げられる。以下に、これらの芳香族カルボキシル基を備える芳香族ジアミンの構造式を示す。芳香族カルボキシル基を備える芳香族ジアミンとしては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
Figure 2019073596
芳香族カルボキシル基を備えない芳香族ジアミンとしては、具体的には、剛直性芳香族ジアミン、非剛直性芳香族ジアミンなどを用いることができる。すなわち、本実施形態に係る芳香族ポリアミドは、例えば、剛直性芳香族ジアミンに由来する構造単位を含んでもよく、また、非剛直性芳香族ジアミンに由来する構造単位を含んでもよい。
なお、本実施形態において、剛直性芳香族ジアミンとは、芳香族カルボキシル基を備えない芳香族ジアミンのうち、二酸ジクロリドと縮合して剛直な構造単位を形成するものを示す。
ここで、剛直性芳香族ジアミンは、芳香族ジアミンの2つのアミンが、それぞれ、同一の芳香環と直接結合するものと、別々の芳香環と直接結合するものとがある。
芳香族ジアミンの2つのアミンが、それぞれ、同一の芳香環と直接結合することで結合手を形成している場合、剛直性芳香族ジアミンとは、2つの結合手が、互いに平行または同軸にあるものを示す。
また、芳香族ジアミンの2つのアミンが、それぞれ、別々の芳香環と直接結合することで結合手を形成している場合、剛直性芳香族ジアミンとは、その別々の芳香環同士が液晶骨格を形成しており、さらに、2つの結合手が、互いに平行または同軸にある状態を示す。液晶骨格において、2つの結合手が同軸にある例を下記(R1)に示す。
なお、2つの結合手が同軸とは、例えば、芳香族ジアミンの構造が、ベンゼン環に2つのアミンが直接結合した構造の場合、2つの結合手が、パラ位、すなわち、1,4位に存在することを示す。
また、2つの結合手が平行とは、例えば、芳香族ジアミンの構造が、ナフタレン環に2つのアミンが直接結合した構造の場合、2つの結合手が、1,5位または2,6位に存在することを示す。
Figure 2019073596
上記剛直性芳香族ジアミンとしては、例えば、その構造にフッ素原子を含む基を有するものが好ましい。すなわち、芳香族ポリアミドは、フッ素原子を含む基を有する剛直性芳香族ジアミンに由来する構造単位を備えることが好ましい。従来のポリアミド溶液において、芳香族ポリアミドが、剛直性芳香族ジアミンに由来した構造単位を備える場合、該剛直な芳香族ジアミンに由来した芳香環同士がスタッキングすることで凝集してしまい、樹脂膜の透明性が低下してしまうという不都合があった。しかしながら、フッ素原子を含む基は芳香環由来の電子を誘引する。これにより、芳香環同士のスタッキングを抑制できる。ここで、フッ素原子を含む基は、例えば、フッ素原子そのものであってもよいし、ペルフルオロメチル基−CFなどであってもよい。
上記剛直性芳香族ジアミンとしては、具体的には、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン(PFMB)、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビストリフルオロメトキシルベンジジン(PFMOB)などが挙げられる。以下に、これらの剛直性芳香族ジアミンの構造式を示す。剛直性芳香族ジアミンとしては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
Figure 2019073596
上記芳香族カルボキシル基を備えない芳香族ジアミンのうち、非剛直性芳香族ジアミンとは、上述した剛直性芳香族ジアミン以外のものを示す。
上記芳香族カルボキシル基を備えない芳香族ジアミンは、例えば、非剛直性芳香族ジアミンを含むことが好ましい。すなわち、芳香族ポリアミドは、非剛直性芳香族ジアミンに由来する構造単位を備えることが好ましい。非剛直の芳香族ジアミンに由来する構造単位は、立体障害が大きく、芳香環同士がスタッキングすることができない。したがって、芳香環同士がスタッキングすることで凝集してしまい、樹脂膜の透明性が低下することを抑制できる。
上記非剛直性芳香族ジアミンとしては、例えば、その構造にフッ素原子を含む基を有するものを用いるのが好ましい。すなわち、芳香族ポリアミドは、フッ素原子を含む基を有する非剛直性芳香族ジアミンに由来する構造単位を備えることが好ましい。これにより、芳香環同士がスタッキングを抑制し、樹脂膜の透明性が低下を抑制できる。なお、フッ素原子を含む基は、例えば、フッ素原子そのものであってもよいし、ペルフルオロメチル基−CFなどであってもよい。
上記非剛直性芳香族ジアミンとしては、具体的には、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオリン(FDA)、9,9−ビス(3−フルオロ−4−アミノフェニル)フルオリン(FFDA)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(4,4’−DDS)、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DDS)、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビストリフルオロメチルジフェニルエーテル(6FODA)、ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェニルオキシル)ベンゼン(6FOQDA)、ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェニルオキシル)ビフェニル(6FOBDA)などが挙げられる。以下に、これらの非剛直性芳香族ジアミンの構造式を示す。非剛直性芳香族ジアミンとしては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
Figure 2019073596
上記芳香族カルボキシル基を備えない芳香族ジアミンとしては、例えば、上述した剛直性芳香族ジアミンと、上述した非剛直性芳香族ジアミンとを共に含むことが好ましい。これにより、ポリアミドフィルムの透明性、硬化性を維持しつつ、適切な熱収縮性、機械特性を発現できる。
<芳香族二酸ジクロリド>
上記芳香族二酸ジクロリドとしては、分子中に芳香環を含む芳香族二酸ジクロリドを用いることが好ましい。なお、二酸ジクロリドとは、カルボン酸を塩素化した酸クロリド基(−COCl)を2つ以上備える化合物を示す。
上記芳香族二酸クロリドとして、例えば、酸クロリド基(−COCl)と、カルボキシル基とが共にベンゼン環に結合し、該酸クロリド基及び該カルボキシル基の配位がオルト位で構造を備えるものを使用してもよいが、かかる構造を備えないものを用いることが好ましい。すなわち、上記ポリアミド構造単位は、加熱によりイミド環を形成する基を有しないことが好ましい。
したがって、本実施形態のシリコーン変性ポリアミドは、分子中にイミド環を有していてもよいが、少なくともポリアミド構造単位X中にイミド環を有しない構成とすることができる。これにより、ポリアミド溶液およびポリアミドフィルムの透明性を向上させることが可能である。
芳香族二酸ジクロリドとしては、具体的には、テレフタル酸ジクロリド(TPC)、イソフタル酸ジクロリド(IPC)、2,6−ナフタル酸ジクロリド(NDC)、4,4’−ビフェニルジカルボニルジクロリド(BPDC)などが挙げられる。以下に、これらの芳香族二酸ジクロリドの構造式を示す。芳香族二酸ジクロリドとしては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
Figure 2019073596
上記シリコーン化合物としては、アミノ基反応性基または酸クロライド基反応性基(以下、この2つを反応性基と呼称することもある。)を有するものを用いることができる。具体的には、上記シリコーン化合物は、シリコーン構造単位Yの少なくとも一方の片末端または両末端に上記反応性基を備えることができる。上記アミノ基反応性基は、上述の芳香族ジアミンが有するアミノ基と反応し化学結合を形成できる反応性基を意味し、上記酸クロライド基反応性基は、上述の芳香族二酸ジクロリドが有する酸クロライド基と反応し化学結合を形成できる反応性基を意味する。
これにより、シリコーン変性ポリアミドの分子中において、上記シリコーン構造単位Yは、アミノ基反応性基または酸クロライド基反応性基を介してポリアミド構造単位Xと化学結合を構成することができる。これにより、シリコーン変性ポリアミド中において、シリコーン化合物とポリアミドとが相分離することを抑制できるため、透明性を高め、弾性率を低減することが可能になる。
本実施形態において、変性とは、シリコーン化合物とポリアミドとが化学的に結合した状態を指す。
上記シリコーン化合物としては、例えば、片末端のみに反応性基を備える片末端変性シリコーン化合物、および/または少なくとも両末端に反応性基を備える両末端変性シリコーン化合物を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記シリコーン構造単位Yは、シリコーン変性ポリアミドの分子中において、ポリアミド構造単位Xの片末端のみに化学結合するか、またはポリアミド構造単位Xの両末端にそれぞれ化学結合することができる。すなわち、シリコーン変性ポリアミドは、Y−X−・・・X、またはY−X−Y−X・・・−X−Y等の繰り返し構造を有することができる。
上記アミノ基反応性基は、エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基、酸ハライド基からなる群から選択される一種以上を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。このアミノ基反応性基を備えるシリコーン化合物は、上記芳香族ジアミン中のアミノ基と反応することができる。
上記酸クロライド基反応性基は、アミノ基およびヒドロキシ基からなる群から選択される一種以上を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。この酸クロライド基反応性基を備えるシリコーン化合物は、上記芳香族二酸ジクロリド中の酸クロライド基(−COCl)と反応することができる。
上記シリコーン化合物としては、下記一般式(3)で表されるケイ素基含有化合物を含むことができる。下記一般式(3)で表されるケイ素基含有化合物は、少なくとも両末端に上記反応性基を備えるものである。
Figure 2019073596
上記一般式(3)中、複数存在するRは、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜20の二価の有機基であり、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基であり、複数存在してもよいRは、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基であり、L、L、及びLは、それぞれ独立に、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸無水物基、酸エステル基、酸ハライド基、ヒドロキシ基、エポキシ基、又はメルカプト基であり、jは、3〜200の整数であり、kは、0〜197の整数である。}で表されるシリコーン化合物を含むことが好ましい。好ましい態様において、ケイ素基含有化合物は、一般式(3)で表されるシリコーン化合物である。
における炭素数1〜20の二価の有機基としては、メチレン基、炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基等が挙げられる。該炭素数2〜20のアルキレン基としては、耐熱性、残留応力、コストの観点から炭素数2〜10のアルキレン基が好ましく、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。該炭素数3〜20のシクロアルキレン基としては、上記観点から炭素数3〜10のシクロアルキレン基が好ましく、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基等が挙げられる。その中でも上記観点から炭素数3〜20の二価の脂肪族炭化水素が好ましい。該炭素数6〜20のアリーレン基としては、上記観点から炭素数3〜20の芳香族基が好ましく、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
一般式(3)において、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜3の一価の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜10の一価の芳香族炭化水素基であることが、得られるポリイミド膜が高耐熱性と低残留応力とを兼ね備える観点から好ましい。この観点で、炭素数1〜3の一価の脂肪族炭化水素は、好ましくはメチル基であり、炭素数6〜10の芳香族基は、好ましくはフェニル基である。
一般式(3)において、L、L、及びLは、それぞれ独立に、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸無水物基、酸エステル基、酸ハライド基、ヒドロキシ基、エポキシ基、又はメルカプト基である。
アミノ基は、置換されてもよく、例えばビス(トリアルキルシリル)アミノ基等が挙げられる。L、L、及びLがアミノ基である、一般式(3)で表される化合物の具体例としては、両末端アミノ変性メチルフェニルシリコーン(例えば信越化学社製の、X22−1660B−3(数平均分子量4,400)及びX22−9409(数平均分子量1,340))、両末端アミノ変性ジメチルシリコーン(例えば信越化学社製の、X22−161A(数平均分子量1,600)、X22−161B(数平均分子量3,000)及びKF8012(数平均分子量4,400)、X22−9666AS(数平均分子量1,080);東レダウコーニング製のBY16−835U(数平均分子量900);並びにチッソ社製のサイラプレーンFM3311(数平均分子量1000))等が挙げられる。
、L、及びLがイソシアネート基である化合物の具体例としては、前記、両末端アミノ変性シリコーンとホスゲン化合物を反応して得られるイソシアネート変性シリコーン等が挙げられる。
、L、及びLがカルボキシル基である化合物の具体例としては、例えば信越化学社の、X22−162C(数平均分子量4,600)、東レダウコーニング製のBY16−880(数平均分子量6,600)等が挙げられる。
、L、及びLが酸無水物基である化合物の具体例としては、下記式群:
Figure 2019073596

で表される基の少なくとも1つを有するアシル化合物等が挙げられる。
、L、及びLが酸無水物基である化合物の具体例としては、X22−168AS(信越化学製、数平均分子量1,000)、X22−168A(信越化学製、数平均分子量2,000)、X22−168B(信越化学製、数平均分子量3,200)、X22−168−P5−B(信越化学製、数平均分子量4,200)、DMS−Z21(ゲレスト社製、数平均分子量600〜800)等が挙げられる。
、L、及びLが酸エステル基である化合物の具体例としては、前記、L、L、及びLがカルボキシル基又は酸無水物基である化合物とアルコールを反応させて得られる化合物等、が挙げられる。
、L、及びLが酸ハライド基である化合物の具体例としては、カルボン酸塩化物、カルボン酸フッ化物、カルボン酸臭化物、カルボン酸ヨウ化物、等が挙げられる。
、L、及びLがヒドロキシ基である化合物の具体例としては、KF−6000(信越化学製、数平均分子量900)、KF−6001(信越化学製、数平均分子量1,800)、KF−6002(信越化学製、数平均分子量3,200)、KF−6003(信越化学製、数平均分子量5,000)等が挙げられる。ヒドロキシ基を有する化合物は、カルボキシル基又は酸無水物基を有する化合物と反応すると考えられる。
、L、及びLがエポキシ基である化合物の具体例としては、両末端エポキシタイプである、X22−163(信越化学製、数平均分子量400)、KF−105(信越化学製、数平均分子量980)、X22−163A(信越化学製、数平均分子量2,000)、X22−163B(信越化学製、数平均分子量3,500)、X22−163C(信越化学製、数平均分子量5,400);両末端脂環式エポキシタイプである、X22−169AS(信越化学製、数平均分子量1,000)、X22−169B(信越化学製、数平均分子量3,400);側鎖両末端エポキシタイプである、X22−9002(信越化学製、官能基当量5,000g/mol);等が挙げられる。エポキシ基を有する化合物は、ジアミンと反応すると考えられる。
、L、及びLがメルカプト基である化合物の具体例としては、X22−167B(信越化学製、数平均分子量3,400)、X22−167C(信越化学製、数平均分子量4,600)等が挙げられる。メルカプト基を有する化合物は、カルボキシル基又は酸無水物基を有する化合物と反応すると考えられる。
、L、及びLは、樹脂前駆体の分子量向上の観点、又は得られるポリイミドの耐熱性の観点から、それぞれ独立に、アミノ基又は酸無水物基であることが好ましく、さらに樹脂前駆体と溶媒とを含むワニスの白濁回避の観点、又はコストの観点から、それぞれ独立に、アミノ基であることがより好ましい。
又は、樹脂前駆体と溶媒とを含むワニスの白濁回避の観点、又はコストの観点から、L及びLが、それぞれ独立に、アミノ基又は酸無水物基であり、そしてkが0であることが好ましい。この場合、L及びLが共にアミノ基であることがより好ましい。
一般式(3)において、jの好ましい態様は、3〜200の整数であり、好ましくは10〜200の整数、より好ましくは20〜150の整数、さらに好ましくは30〜100の整数、特に好ましくは35〜80の整数である。一般式(3)において、kは、0〜197の整数であり、好ましくは0〜100、さらに好ましくは0〜50、特に好ましくは0〜25である。
好ましい態様において、本開示の各式において、R及びRは、残留応力、コストの観点から、それぞれ独立に、炭素数1〜3の一価の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜10の一価の芳香族炭化水素基である。又は、本開示の各式において、R及びRの一部は、耐熱性、残留応力の観点から、フェニル基であることが好ましい。
また、上記シリコーン化合物としては、下記一般式(4)で表されるケイ素基含有化合物を含むことができる。下記一般式(4)で表されるケイ素基含有化合物は、片末端に上記反応性基を備えるものである。
Figure 2019073596
上記一般式(4)中、R、R、L、jおよびkは、一般式(3)と同様である。上記R、Rのそれぞれは、Rと同様に、炭素数1〜20の一価の有機基を表す。具体的には、上記一般式(4)中のLは、それぞれ独立に、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、酸エステル基、酸ハライド基、ヒドロキシ基である。
上記下記一般式(4)で表されるケイ素基含有化合物の具体例としては、例えば、Lがアミノ基であるものとして、X22−9643(信越化学製、数平均分子量920)、X22−9644(信越化学製、数平均分子量2,700)、X22−9645(信越化学製、数平均分子量4,800)、X22−9665(信越化学製、数平均分子量560)等が挙げられ、Lがエポキシ基であるものとして、X22−173BX(信越化学製、数平均分子量2,500)、X22−173DX(信越化学製、数平均分子量4,600)等が挙げられ、Lがカルボキシル基であるものとして、X22−3710(信越化学製、数平均分子量1,450)等が挙げられ、Lが酸無水物基であるものとして、X22−178ASX(信越化学製、数平均分子量930)、X22−178BX(信越化学製、数平均分子量2,600)、X22−178DX(信越化学製、数平均分子量4,400)等が挙げられ、Lが酸エステル基であるものとして、カルボキシル基又は酸無水物基である化合物とアルコールを反応させて得られる化合物等が挙げられ、Lが酸ハライド基であるものとして、カルボン酸塩化物、カルボン酸フッ化物、カルボン酸臭化物、カルボン酸ヨウ化物、Lがヒドロキシ基であるものとして、X22−170BX(信越化学製、数平均分子量2,800)、X22−170DX(信越化学製、数平均分子量4,667)等が挙げられる。
本実施形態のシリコーン化合物の重量平均分子量は、例えば、500以上20,000以下であり、より好ましくは800以上15,000以下、さらに好ましくは1,000以上10,000以下である。シリコーン化合物の重量平均分子量を下限値以上とすることにより、詳細なメカニズムは定かではないが、シリコーン構造単位Yが、下記一般式(2)で表される構造単位が6つユニットで1螺旋構造となり、外側に疎水性基を配向させることが可能にあるため、ミクロ相分離構造を形成できるため、残留応力を低減させることが可能である。
Figure 2019073596
本実施形態のシリコーン変性ポリアミドの製造方法について説明する。
本実施形態のシリコーン変性ポリアミドの製造方法は、各原料成分の添加順番は適宜選択することが可能であるが、(i)上記芳香族ジアミンと芳香族二酸ジクロリドとを反応させて芳香族ポリアミドを得て、得られた芳香族ポリアミドと上記シリコーン化合物とを反応させて、シリコーン変性ポリアミドを得る工程、または(ii)上記芳香族ジアミンと芳香族二酸ジクロリドと上記シリコーン化合物とを反応させて、シリコーン変性ポリアミドを得る工程を含むことができる。例えば、アミノ基反応性基を備えるシリコーン化合物を用いる場合、上記(i)工程を採用することができる。上記(ii)工程において、芳香族ジアミンと酸クロライド基反応性基を備えるシリコーン化合物とを混合し、得られた混合物に芳香族二酸ジクロリドを添加して、これらを反応させることも可能であり、芳香族ジアミンに対して、芳香族二酸ジクロリドおよびアミノ基反応性基を備えるシリコーン化合物を添加して、これらを反応させることも可能である。
上記シリコーン変性ポリアミドの製造方法程は、溶媒中で芳香族ジアミン及び芳香族ジクロリドを重合反応させる重合工程を含むことができる。重合工程により、芳香族ポリアミドを得ることができる。これらを反応させる方法としては、従来公知の重縮合の方法を用いることができる。
なお、本実施形態において、芳香族ジアミン由来の構造単位Aとは、例えば、芳香族ジアミンが下記一般式(DA1)で示される場合、下記一般式(DA2)で示される構造単位を示す。また、芳香族二酸ジクロリド由来の構造単位Bとは、例えば、二酸ジクロリドが下記一般式(DC1)で示される場合、下記一般式(DC2)で示される構造単位を示す。
下記一般式(DA1)、一般式(DA2)、一般式(DC1)、一般式(DC2)において、RDA、RDCは、芳香環を有していれば、特に限定されず、それぞれ独立して、例えば、水素原子、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子からなる群より選択される1種または2種以上の原子によって構成される基を有することができる。
Figure 2019073596
上記ポリアミド構造単位Xは、複数の前記構造単位Aまたは/および複数の前記構造単位Bを有する事が可能である。
上記重合工程における反応温度としては、例えば、−20℃〜50℃でもよく、好ましくは0℃〜30℃でもよく、より好ましくは5℃〜25℃でもよい。
上記重合工程において、例えば、トラッピング試薬によって、ポリマー溶液から塩酸を取り除く除去工程を実施することができる。トラッピング試薬としては、具体的には、酸化プロピレン(PrO)などが挙げられる。溶媒中での縮合重合によって生成される塩酸は、酸化プロピレン(PrO)等の試薬によって捕捉される。
上記シリコーン変性ポリアミドの製造方法におけるシリコーン化合物の反応条件において、特に限定されないが、反応温度は−20〜150℃、反応時間は2〜72時間である。シリコーン化合物の反応を十分に進めるために、80℃で5時間程度の加熱が好ましい。また、反応時、アルゴンや窒素等の不活性雰囲気であることが好ましい。
以上により、シリコーン変性ポリアミドを得ることができる。
上記シリコーン構造単位Yの重量分率は、ポリアミド構造単位Xおよびシリコーン構造単位Yの合計値100wt%に対して、例えば、1wt%以上70wt%以下であり、好ましくは3wt%以上60wt%以下であり、より好ましくは5wt%以上50wt%以下とすることができる。これにより、透明性を維持しつつも、弾性率や残留応力を低減することが可能である。
上記シリコーン変性ポリアミドの数平均分子量(Mn)の下限値は、4.0×10以上であることが好ましく、5.0×10以上であることがより好ましく、6.0×10以上であることがより好ましく、7.0×10以上であることがより好ましく、8.0×10以上であることがさらに好ましい。
また、下限値と同様の観点から、数平均分子量(Mn)の上限値は、1.0×10以下であることが好ましく、8.0×10以下であることがより好ましく、6.0×10以下であることがより好ましく、4.0×10以下であることがさらに好ましい。
また、シリコーン変性ポリアミドの分子量分布(=Mw/Mn)の上限値は、5.0以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.8以下であることがより好ましく、2.6以下であることがより好ましく、2.4以下であることがさらに好ましい。なお、シリコーン変性ポリアミドの分子量分布の下限値は、例えば2.0以上とすることができる。
なお、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される。
<溶媒>
上記溶媒としては、シリコーン変性ポリアミドの溶解性の観点から、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール(IPA)、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン、クレゾール、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)およびウレア化合物から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ウレア化合物としては、ウレア結合を備える化合物であれば特に限定されないが、具体的には、テトラメチル尿素(TMU)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、テトラブチル尿素、N,N’−ジメチルプロピレン尿素、1,3−ジメトキシ−1,3−ジメチル尿素、N,N’−ジイソプロピル−O−メチルイソ尿素、O,N,N’−トリイソプロピルイソ尿素、O−tert−ブチル−N,N’−ジイソプロピルイソ尿素、O−エチル−N,N’−ジイソプロピルイソ尿素、O−ベンジル−N,N’−ジイソプロピルイソ尿素などが挙げられる。これにより、ポリアミド溶液およびポリアミドフィルムの透明性を向上させることが可能である。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のポリアミド溶液は、上記の成分とともに、目的に応じて他の成分を含むことができる。他の成分としては、例えば、無機充填材、表面処理剤、多官能エポキシ樹脂、多価カルボン酸、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、発泡剤、難燃剤、低応力剤、離型剤、イオン補足剤などの添加剤が挙げられる。
上記無機充填材としては、具体的には、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラスなどのケイ酸塩;酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、シリカ、溶融シリカなどの酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素などの窒化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウムなどのチタン酸塩などが挙げられる。無機充填材としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合せて用いることができる。
上記表面処理剤としては、上記シリコーン変性ポリアミドにおけるポリアミド構造単位X中のカルボキシル基と反応する官能基と、無機充填材と相互作用する官能基とを含み、無機充填材の表面を修飾できるものを用いることができる。
カルボキシル基と反応する官能基としては、具体的には、エポキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、チオール基、イソシアネート基などが挙げられる。また、無機充填材と相互作用する官能基としては、具体的には、ヒドロキシ基、炭素数1以上10以下のアルコキシ基などが挙げられる。
上記表面処理剤としては、具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、8−グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリメトキシシラン及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。これらの中でも、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランまたは3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランであることが好ましい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態において、無機充填材および表面処理剤を併用することにより、表面処理剤を介して、無機充填材と、シリコーン変性ポリアミド中のポリアミド構造単位Xとが疑似架橋構造を形成できる。疑似架橋構造の形成は、上記の硬化処理で行うことができるが、この硬化処理の加熱温度よりも低温の加熱処理で行うことができる。低温加熱処理の温度としては、具体的には、後述する硬化工程における温度を温度190℃以上280℃以下に設定できる。低温における加熱処理により、シリコーン変性ポリアミドと、大気中の酸素とが反応し、着色が生じることを抑制できる。
(樹脂フィルムの製造方法)
樹脂膜の製造方法としては、具体的には、ポリアミド溶液を支持基材上に塗工する塗工工程(S1)と、次いで、支持基材上に塗工したポリアミド溶液から溶媒を除去して乾燥膜を作成する乾燥工程(S2)と、次いで、熱処理によって乾燥膜を硬化させる硬化工程(S3)とを含む。
以下、各工程の詳細について説明する。
(塗工工程(S1))
塗工工程(S1)では、ポリアミド溶液を支持基材上に塗工する。
支持基材としては限定されず、樹脂膜の用途に応じて、公知の支持基材を用いることができる。支持基材としては、具体的には、ガラス基板;シリコン基板;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)などの樹脂基板などが挙げられる。
また、塗工方法としては限定されず、樹脂組成物が含む原料成分に応じて、公知の塗工方法を用いることができる。塗工方法としては、具体的には、ダイコート法、リップコート法、グラビアコート法、インクジェット法、スピンコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法などが挙げられる。
(乾燥工程(S2))
乾燥工程では、支持基材上に塗工したポリアミド溶液から溶媒を除去して乾燥膜を作成する。
乾燥方法としてはポリアミド溶液から溶媒を揮発させられれば限定されず、ポリマーの種類に応じて公知の方法を用いることができる。乾燥工程は、例えば、温度30℃以上100℃以下で1分間以上1時間以下の条件で行うことができる。
(硬化工程(S3))
硬化工程(S3)では、熱処理によって乾燥膜を硬化させる。乾燥膜を硬化する方法としては、例えば、特定の温度範囲での熱処理が挙げられる。
熱処理の温度の下限値は、例えば、280℃以上としてもよく、300℃以上としてもよく、320℃以上としてもよい。
また、熱処理の温度の上限値は、例えば、450℃以下としてもよく、430℃以下とすることが好ましく、400℃以下とすることがより好ましい。
なお、熱処理の時間は、例えば、5分間以上2時間以下とすることができる。
なお、上述したように、ポリアミド溶液が、無機充填材及び表面処理剤を含有する場合、または、多官能エポキシ樹脂を含有する場合、乾燥膜を低温硬化することができる。低温硬化における、熱処理の温度の下限値は、例えば、190℃以上とすることができ、200℃以上であることが好ましく、220℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることが更に好ましい。これにより、十分に乾燥膜を硬化できる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
<ポリマーの作製>
下記の表1に記載の原料成分および配合比率に従って、ポリマー1〜10を作製した。詳細を以下に示す。
(ポリマー1)
ポリアミド1としてカルボキシル基含有芳香族ポリアミドを合成して用いた。
機械式撹拌機、窒素導入口、及び排出口を備えた1Lの三つ口丸底フラスコに、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン(PFMB、6.4g,0.020mol)、3,5−ジアミノ安息香酸(DAB、0.8g,0.005mol)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDA、26.1g,0.075mol)及びN−メチルピロリドン(NMP、560ml)を加えた。4,4’−ジアミノ−2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン、3,5−ジアミノ安息香酸及び9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンが完全に溶解した後に、この溶液に酸化プロピレン(PrO、17.4g,0.3mol)を添加した。得られた溶液を5℃まで冷却した。冷却後、テレフタル酸ジクロリド(TPC、20.1g,0.099mol)を添加し、1時間撹拌した。得られた溶液を貧溶媒中に滴下する再沈殿法により精製し、ポリマー固形分を得た。得られたポリマー固形分は、乾燥機にて溶剤除去し、ポリアミド1を得た。
(ポリマー2)
ポリアミド2としてカルボキシル基含有シリコーン変性芳香族ポリアミドを合成して用いた。
機械式撹拌機、窒素導入口、及び排出口を備えた1Lの三つ口丸底フラスコに、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン(PFMB、6.4g,0.020mol)、3,5−ジアミノ安息香酸(DAB、0.8g,0.005mol)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDA、25.3g,0.073mol)、PAM−E(信越化学社製、両末端アミノ変性シリコーンオイル、数平均分子量260、0.7g,0.002mol)及びN−メチルピロリドン(NMP、330ml)を加えた。4,4’−ジアミノ−2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン、3,5−ジアミノ安息香酸、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン及びPAM−Eが完全に溶解した後に、この溶液に酸化プロピレン(PrO、17.4g,0.3mol)を添加した。得られた溶液を5℃まで冷却した。冷却後、テレフタル酸ジクロリド(TPC、20.3g,0.1mol)を添加し、1時間撹拌した。得られた溶液を貧溶媒中に滴下する再沈殿法により精製し、ポリマー固形分を得た。得られたポリマー固形分は、乾燥機にて溶剤除去し、ポリアミド2を得た。
(ポリマー3)
ポリアミド3としてカルボキシル基含有シリコーン変性芳香族ポリアミドを合成して用いた。
機械式撹拌機、窒素導入口、及び排出口を備えた1Lの三つ口丸底フラスコに、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン(PFMB、6.4g,0.020mol)、3,5−ジアミノ安息香酸(DAB、0.8g,0.005mol)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDA、25.3g,0.073mol)、X22−9409(信越化学社製、両末端アミノ変性シリコーンオイル、数平均分子量1,340、3.4g,0.002mol)及びN−メチルピロリドン(NMP、330ml)を加えた。4,4’−ジアミノ−2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン、3,5−ジアミノ安息香酸、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン及びX22−9409が完全に溶解した後に、この溶液に酸化プロピレン(PrO、17.4g,0.3mol)を添加した。得られた溶液を5℃まで冷却した。冷却後、テレフタル酸ジクロリド(TPC、20.3g,0.1mol)を添加し、1時間撹拌した。得られた溶液を貧溶媒中に滴下する再沈殿法により精製し、ポリマー固形分を得た。得られたポリマー固形分は、乾燥機にて溶剤除去し、ポリアミド3を得た。
(ポリマー4)
ポリアミド4としてカルボキシル基含有シリコーン変性芳香族ポリアミドを合成して用いた。
機械式撹拌機、窒素導入口、及び排出口を備えた1Lの三つ口丸底フラスコに、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン(PFMB、6.4g,0.020mol)、3,5−ジアミノ安息香酸(DAB、0.8g,0.005mol)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDA、26.1g,0.075mol)及びN−メチルピロリドン(NMP、180ml)を加えた。4,4’−ジアミノ−2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン、3,5−ジアミノ安息香酸、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンが完全に溶解した後に、この溶液に酸化プロピレン(PrO、17.4g,0.3mol)を添加した。得られた溶液を5℃まで冷却した。冷却後、テレフタル酸ジクロリド(TPC、19.3g,0.095mol)を添加し、1時間攪拌し芳香族ポリアミド溶液を得た。さらにX22−168AS(信越化学社製、両末端カルボン酸無水物変性シリコーンオイル、数平均分子量1,000、5.0g,0.005mol)を添加し、ウォーターバスにて80℃に加熱しながら5時間攪拌した。得られた溶液を貧溶媒中に滴下する再沈殿法により精製し、ポリマー固形分を得た。得られたポリマー固形分は、乾燥機にて溶剤除去し、ポリアミド4を得た。
(ポリマー5)
ポリアミド5としてカルボキシル基含有シリコーン変性芳香族ポリアミドを合成して用いた。
機械式撹拌機、窒素導入口、及び排出口を備えた1Lの三つ口丸底フラスコに、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン(PFMB、6.4g,0.020mol)、3,5−ジアミノ安息香酸(DAB、0.8g,0.005mol)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDA、26.1g,0.075mol)及びN−メチルピロリドン(NMP、210ml)を加えた。4,4’−ジアミノ−2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン、3,5−ジアミノ安息香酸、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンが完全に溶解した後に、この溶液に酸化プロピレン(PrO、17.4g,0.3mol)を添加した。得られた溶液を5℃まで冷却した。冷却後、テレフタル酸ジクロリド(TPC、19.3g,0.095mol)を添加し、1時間攪拌し芳香族ポリアミド溶液を得た。さらにX22−168−P5−B(信越化学社製、両末端カルボン酸無水物変性シリコーンオイル、数平均分子量4,200、4.2g,0.001mol)を添加し、ウォーターバスにて80℃に加熱しながら5時間攪拌した。得られた溶液を貧溶媒中に滴下する再沈殿法により精製し、ポリマー固形分を得た。得られたポリマー固形分は、乾燥機にて溶剤除去し、ポリアミド5を得た。
(ポリマー6)
ポリアミド6としてカルボキシル基含有シリコーン変性芳香族ポリアミドを合成して用いた。
機械式撹拌機、窒素導入口、及び排出口を備えた1Lの三つ口丸底フラスコに、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン(PFMB、6.4g,0.020mol)、3,5−ジアミノ安息香酸(DAB、0.8g,0.005mol)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDA、26.1g,0.075mol)及びN−メチルピロリドン(NMP、210ml)を加えた。4,4’−ジアミノ−2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン、3,5−ジアミノ安息香酸、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンが完全に溶解した後に、この溶液に酸化プロピレン(PrO、17.4g,0.3mol)を添加した。得られた溶液を5℃まで冷却した。冷却後、テレフタル酸ジクロリド(TPC、19.3g,0.095mol)を添加し、1時間攪拌し芳香族ポリアミド溶液を得た。さらにX22−168−P5−B(信越化学社製、両末端カルボン酸無水物変性シリコーンオイル、数平均分子量4,200、21.0g,0.005mol)を添加し、ウォーターバスにて80℃に加熱しながら5時間攪拌した。得られた溶液を貧溶媒中に滴下する再沈殿法により精製し、ポリマー固形分を得た。得られたポリマー固形分は、乾燥機にて溶剤除去し、ポリアミド6を得た。
(ポリマー7)
ポリアミド7としてカルボキシル基含有シリコーン変性芳香族ポリアミドを合成して用いた。
機械式撹拌機、窒素導入口、及び排出口を備えた1Lの三つ口丸底フラスコに、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン(PFMB、6.4g,0.020mol)、3,5−ジアミノ安息香酸(DAB、0.8g,0.005mol)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDA、26.1g,0.075mol)及びN−メチルピロリドン(NMP、210ml)を加えた。4,4’−ジアミノ−2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン、3,5−ジアミノ安息香酸、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンが完全に溶解した後に、この溶液に酸化プロピレン(PrO、17.4g,0.3mol)を添加した。得られた溶液を5℃まで冷却した。冷却後、テレフタル酸ジクロリド(TPC、19.9g,0.098mol)を添加し、1時間攪拌し芳香族ポリアミド溶液を得た。さらにX22−178ASX(信越化学社製、片末端カルボン酸無水物変性シリコーンオイル、数平均分子量930、3.7g,0.004mol)を添加し、ウォーターバスにて80℃に加熱しながら5時間攪拌した。得られた溶液を貧溶媒中に滴下する再沈殿法により精製し、ポリマー固形分を得た。得られたポリマー固形分は、乾燥機にて溶剤除去し、ポリアミド7を得た。
(ポリマー8)
ポリアミド8としてカルボキシル基含有シリコーン変性芳香族ポリアミドを合成して用いた。
機械式撹拌機、窒素導入口、及び排出口を備えた1Lの三つ口丸底フラスコに、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン(PFMB、6.4g,0.020mol)、3,5−ジアミノ安息香酸(DAB、0.8g,0.005mol)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDA、26.1g,0.075mol)及びN−メチルピロリドン(NMP、210ml)を加えた。4,4’−ジアミノ−2,2’−ビストリフルオロメチルベンジジン、3,5−ジアミノ安息香酸、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンが完全に溶解した後に、この溶液に酸化プロピレン(PrO、17.4g,0.3mol)を添加した。得られた溶液を5℃まで冷却した。冷却後、テレフタル酸ジクロリド(TPC、19.3g,0.095mol)を添加し、1時間攪拌し芳香族ポリアミド溶液を得た。さらにX22−178ASX(信越化学社製、片末端カルボン酸無水物変性シリコーンオイル、数平均分子量930、9.3g,0.01mol)を添加し、ウォーターバスにて80℃に加熱しながら5時間攪拌した。得られた溶液を貧溶媒中に滴下する再沈殿法により精製し、ポリマー固形分を得た。得られたポリマー固形分は、乾燥機にて溶剤除去し、ポリアミド8を得た。
Figure 2019073596
上記表1に記載の各原料成分の含有量は、全体を100wt%としたときの含有比率(wt%)で表される。
<ポリアミド溶液の作製>
(比較例1)
下記表2に示す配合割合にしたがって、ポリアミド1をNMPに添加、撹拌し、ポリアミド溶液を得た。
(比較例2)
次いで、下記表2に示す配合割合にしたがって、ポリアミド1をNMPに添加、撹拌し、ポリアミド1が完全に溶解したことを確認した後に、X22−168−P5−Bを添加、攪拌し、ポリアミド溶液を得た。
(参考例1)
下記表2に示す配合割合にしたがって、ポリアミド2をNMPに添加、撹拌し、ポリアミド溶液を得た。
(実施例1〜6)
下記表2に示す配合割合にしたがって、ポリアミド3〜8のそれぞれをNMPに添加、撹拌し、ポリアミド溶液を得た。
Figure 2019073596
上記表2に記載のシリコーン添加量は、ポリアミド構造単位Xおよびシリコーン構造単位Yの合計値100wt%に対する、シリコーン構造単位Yの重量分(wt%)を意味する。
(硬化フィルムの作製)
各実施例、各比較例、参考例のポリアミド溶液を用いて、ガラス支持材上にフィルムを作製した。
まず、得られたポリアミド溶液を平坦なガラス支持材(Corning Inc., U.S.A社製、Eagle−XG)に塗工した。次いで、ガラス支持材に塗工したポリアミド溶液を、80℃、30分の条件で乾燥させ、溶媒を完全に揮発させ、乾燥フィルムを得た。続いて、乾燥フィルム付ガラス支持材を不活性ガス雰囲気下で、下記の表3に示すキュア温度、時間で加熱硬化させた。ガラス支持材より剥離し、厚さ10μmの透明な硬化フィルムを得た。
各実施例、各比較例、参考例のポリアミドフィルム(硬化フィルム)を用いて、以下のようにして評価した。評価結果を表3、表4に示す。ただし、比較例2のポリアミドイミドフィルムについては白濁・ブリードが生じたため、残留応力、貯蔵弾性率等の評価項目における測定を実施しなかった。
(厚み)
得られたポリアミドフィルムの厚みは、接触式厚み計(KEYENCE社製,GT2)を用いて測定した。評価結果を下記表3に示す。
(外観)
得られたポリアミドフィルムの外観を目視で確認した。評価結果を表3に示す。
(全光線透過率)
得られたポリアミドフィルムの550nmの全光線透過率は、JIS K 7361−1に従ってUV可視紫外分光光度計(日本分光社製,V670)を用いて測定した。評価結果を下記表3に示す。
(黄色度)
得られたポリアミドフィルムの黄色度は、JIS K 7373に従ってUV可視紫外分光光度計にて測定した。分光光度計で全光線透過率を測定後、解析ソフトで算出した。評価結果を下記表3に示す。
(ヘイズ)
得られたポリアミドフィルムのヘイズは、JIS K 7136に従ってUV可視紫外分光光度計にて測定した。評価結果を下記表3に示す。
(貯蔵弾性率)
得られたポリアミドフィルムの貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(TA Instruments社製、RSA−G2)にて測定した。
上記硬化フィルムを幅5mmの短冊状に切り取って試験片を作製した。この試験片について、動的粘弾性測定装置を用いて、チャック間長20mm、荷重30g、昇温速度5℃/min、測定温度25℃−450℃の条件で貯蔵弾性率曲線を評価した。得られた貯蔵弾性率曲線から30℃における弾性率を算出し、貯蔵弾性率とした。評価結果を下記表3に示す。
(Rth)
得られたポリアミドフィルムの550nmのリターデーション(Rth)は、ミューラーマトリックスポラリメーター(AxoScan)にて測定した。評価結果を下記表3に示す。
(ガラス転移温度)
得られたポリアミドフィルムのガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置(TA Instruments社製、RSA−G2)にて測定した。測定温度25℃−450℃の条件でtanδ曲線を評価した。得られたtanδ曲線の最大値となる温度をガラス転移温度とした。評価結果を下記表4に示す。
(CTE)
得られたポリアミドフィルムの熱膨張係数(CTE)は、熱機械分析装置(NETZSCH社製TMA−4000SA)にて測定した。フィルムを幅5mmの短冊状に切り取って試験片とし、熱機械分析装置(を用いて、チャック間長10mm、荷重2g、昇温速度10℃/minで400℃まで昇温した。得られたTMA曲線から、30℃から300℃までの平均線膨張係数を求めた。評価結果を下記表4に示す。
(残留応力)
実施例1〜6、比較例1、参考例1のポリアミド溶液を用いて、シリコンウエハ上にポリアミドフィルム(硬化フィルム)を作製した。
まず得られたポリアミド溶液をシリコンウエハ(SUMCO社製、4インチΦ)に塗工した。次いで、シリコンウエハ上に塗工したポリアミド溶液を、80℃、30分の条件で乾燥させ、溶媒を完全に揮発させ、乾燥フィルムを得た。続いて、乾燥フィルム付シリコンウエハを不活性ガス雰囲気下で、表3に示すキュア温度、時間で加熱硬化させた。硬化フィルム付きシリコンウエハを得た。
得られた硬化フィルム付シリコンウエハ(サンプル)に対して、25℃から250℃まで昇温速度20℃/minで昇温し、5分ホールドすることで、当該硬化フィルムフィルムを乾燥させ、その後、10℃/minで降温し、250℃、230℃、180℃、130℃、80℃、30℃時点で5分ホールドした。
得られた硬化フィルム付シリコンウエハ(サンプル)の反り量は、温度可変レーザー三次元測定器(日立テクノロジーアンドサービス社製、LS220−MT100)にて測定した。降温後の30℃時点でのサンプルの反り量を、解析ソフトを用いて残留応力値に換算した。評価結果を下記表3に示す。
Figure 2019073596
Figure 2019073596
実施例1〜6のポリアミド溶液からなるポリアミドフィルムは、比較例2と比べて透明性に優れており、比較例1と比べて残留応力の低減に優れたものであることが分かった。

Claims (13)

  1. 透明部材を形成するためのポリアミド溶液であって、
    シリコーン変性ポリアミドと、
    溶媒と、を含む、ポリアミド溶液。
  2. 請求項1に記載のポリアミド溶液であって、
    前記シリコーン変性ポリアミドは、
    芳香族ジアミン由来の構造単位Aおよび芳香族二酸ジクロリド由来の構造単位Bがアミド結合を介して結合してなるポリアミド構造単位Xと、
    シリコーン化合物由来のシリコーン構造単位Yと、を分子中に有する、ポリアミド溶液。
  3. 請求項2に記載のポリアミド溶液であって、
    前記シリコーン変性ポリアミドは、前記ポリアミド構造単位Xの片末端または両末端に前記シリコーン構造単位Yが化学結合してなる、ポリアミド溶液。
  4. 請求項2または3に記載のポリアミド溶液であって、
    前記シリコーン構造単位Yは、アミノ基反応性基または酸クロライド基反応性基を介して前記ポリアミド構造単位Xと化学結合を構成する、ポリアミド溶液。
  5. 請求項4に記載のポリアミド溶液であって、
    前記アミノ基反応性基は、エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基、酸ハライド基からなる群から選択される一種以上を含む、ポリアミド溶液。
  6. 請求項4または5に記載のポリアミド溶液であって、
    前記酸クロライド基反応性基は、アミノ基およびヒドロキシ基からなる群から選択される一種以上を含む、ポリアミド溶液。
  7. 請求項2から6のいずれか1項に記載のポリアミド溶液であって、
    前記シリコーン構造単位Yの重量分率は、前記ポリアミド構造単位Xおよび前記シリコーン構造単位Yの合計値100wt%に対して、1wt%以上70wt%以下である、ポリアミド溶液。
  8. 請求項2から7のいずれか1項に記載のポリアミド溶液であって、
    前記ポリアミド構造単位Xは、複数の前記構造単位Aまたは複数の前記構造単位Bを有する、ポリアミド溶液。
  9. 請求項2から8のいずれか1項に記載のポリアミド溶液であって、
    前記芳香族ジアミン由来の構造単位Aが、カルボキシル基を有する構造単位a1を有する、ポリアミド溶液。
  10. 請求項2から9のいずれか1項に記載のポリアミド溶液であって、
    前記ポリアミド構造単位Xが、加熱によりイミド環を形成する基を有しない、ポリアミド溶液。
  11. 請求項2から10のいずれか1項に記載のポリアミド溶液であって、
    前記シリコーン化合物の重量平均分子量が500以上20,000以下である、ポリアミド溶液。
  12. 請求項1から11のいずれか1項に記載のポリアミド溶液からなる樹脂フィルム。
  13. 請求項12に記載の樹脂フィルムを備える電子装置。
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