次に、図面を参照して、本実施の形態について説明する。以下に説明する図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各構成部品の厚みと平面寸法との関係などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
また、以下に示す実施の形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、各構成部品の材質、形状、構造、配置などを特定するものではない。この実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
なお、以下の説明において、便宜上、矩形状の紙面に直交する高さ(厚み)方向(モジュールの高さ(厚み)方向)をZ、紙面の一辺に沿う方向(高さ方向Zに直交する一方向)をX、一辺に直交する他辺に沿う方向(他方向)をYと定義するが、これに限定されず、X、Y、Zは任意に設定可能である。
[第1の実施の形態]
(基本構成)
第1の実施の形態に係るパワーモジュール(PM;Power Module)1の模式的平面パターン構成は図1(a)に示すように表わされ、図1(a)のI−I線に沿う模式的断面構造は図1(b)に示すように表わされる。なお、図1(a)および図1(b)では、1 in 1(ワンインワン)モジュールタイプのPM1に適用した場合が例示されている。
ここで、図1において、絶縁基板20の上側をUP(U)側、絶縁基板20の下側をDOWN(D)側と定義する。この定義は、以降に示す全ての図面に適用する。
第1の実施の形態に係るPM1は、図1(a)および図1(b)に示すように、例えば、SiN系のセラミックス基板21の上面(第1面)に設けられたCu箔などのドレイン電極パターン(第1電極パターン)23U1およびソース電極パターン(第2電極パターン)23U2と、セラミックス基板21の下面(第2面)に設けられたCu箔などの裏面電極パターン(第3電極パターン)23Dとを有する絶縁基板20と、ドレイン電極パターン23U1上に配置されるパワー素子系の半導体デバイス(パワーデバイス)10と、絶縁基板20の裏面電極パターン23D上に配置される放熱器41と、異方性な熱伝導率を備える導電性のグラファイトプレート(グラファイト配線)18GPおよび第1配線パターンとなるCu配線パターン16を下面(第1主面)に有し、半導体デバイス10のソースパッド電極(図示省略)とソース電極パターン23U2とを接続する上部配線(配線リード部)30とを備える。
すなわち、第1の実施の形態に係るPM1は、絶縁基板20と、絶縁基板20上に配置され、その表面側と裏面側とに電極を有する半導体デバイス10と、一端が半導体デバイス10の表面側に接続され、他端が絶縁基板20に繋がる異方性な熱伝導率を備えるグラファイトプレート18GPとを備え、半導体デバイス10の表面側の熱をグラファイトプレート18GPを介して絶縁基板20へ伝達する。
グラファイトプレート18GPは、例えば、半導体デバイス10と接続される一端側と、一端側と同一平面で離れた位置の他端側とからなる長さGLと、その長さGLに平面視で直交する方向の幅GWとを有し、その幅GWは半導体デバイス10の幅CWよりも広い。これにより、グラファイトプレート18GPの高い熱伝導性(熱拡散性)の確保が容易となる。
半導体デバイス10は、U側がソース電極、D側がドレイン電極となるように配置される。後述する他の半導体デバイスについても同様である。
上部配線30は、下層のCu配線パターン16がブロック電極29を介してソース電極パターン23U2と接続されている。
ブロック電極29は、例えばCu(金属柱)からなり、上部配線30のCu配線パターン16との間、およびソース電極パターン23U2との間が、それぞれ銀焼成部27を介して接合されている。
半導体デバイス10は、上部配線30のCu配線パターン16との間、およびドレイン電極パターン23U1との間が、それぞれ銀焼成部27を介して接合されている。
ここで、図16に示すPM1以外では図示を省略しているが、実際には、半導体デバイス10の上面にはAl電極部61およびNiメッキ層63が順に形成されており、Al電極部61とNiメッキ層63と銀焼成部27とを介して、半導体デバイス10とCu配線パターン16との間が接合されるが、熱の観点からは、半導体デバイス10の上のAl電極61は厚みが薄いため、ほとんど無視できる。
放熱器41は、裏面電極パターン23Dとの間が、SnAgCu系はんだなどからなる接合部材26によって接合されている。
放熱器41は、半導体デバイス10からの発熱を吸収して放熱するAl製のヒートシンクや、放熱フィンまたは放熱ピン、若しくは半導体デバイス10からの発熱を冷却する冷却器であっても良い。
冷却器とした場合においては、冷却水として、例えば、水、または水とエチレングリコールとを50%ずつの割合で混合させた混合液や冷却気体(冷気)などの熱伝導率の良いものが用いられる。
上部配線30は、図示省略のゲートパッド電極とのワイヤボンディングのために、半導体デバイス10の上面に対して、ゲートパット電極を露出させるようにして接合されている。
なお、半導体デバイス10としては、パワーデバイスに限らず、例えばダイオードなどのFRDを含むものであっても良いし、1つまたは複数のチップの外囲がモールド樹脂やケースによって封止されたモジュールであっても良い。
絶縁基板20には、例えば、AMB(Active Metal Brazed、Active Metal Bond)基板を適用可能であるが、DBC(Direct Bonding Copper)基板、若しくはDBA(Direct Brazed Aluminum)基板なども適用できる。
第1の実施の形態に係るPM1は、片面冷却+上部配線構造において、上部配線30に高熱伝導材料であるグラファイトプレート18GPを採用したことにより、上部配線30での熱拡散効果が期待できる。
[第1の実施の形態における比較例]
(第1の実施の形態における比較例1)
第1の実施の形態における比較例1に係るPM11は、片面冷却+ワイヤボンディング構造であって、図2に示すように、セラミックス基板21上に設けられたドレイン電極パターン23Uを有する絶縁基板20と、ドレイン電極パターン23U上に銀焼成部27を介して配置されるパワー系の半導体デバイス10と、絶縁基板20の、ドレイン電極パターン23Uの対向面側の裏面電極パターン23D上に接合部材26を介して配置される放熱器41と、図示省略の半導体デバイス10のソースパッド電極とソース電極パターンとを接続するソースボンディングワイヤSWとを備える。
(第1の実施の形態における比較例2)
第1の実施の形態における比較例2に係るPM12は、両面冷却構造であって、図3に示すように、セラミックス基板21Dの両面に設けられた電極パターン23D・24Dを有する下部絶縁基板20Dと、電極パターン24D上に銀焼成部27を介して配置されるパワー系の半導体デバイス10と、銀焼成部27を介して半導体デバイス10と対向して配置され、セラミックス基板21Uの両面に設けられた電極パターン23U・24Uを有する上部絶縁基板20Uと、下部絶縁基板20Dの電極パターン23D上に接合部材26を介して配置される下部放熱器41Dと、上部絶縁基板20Uの電極パターン23U上に接合部材26を介して配置される上部放熱器41Uとを備える。
[熱抵抗特性]
第1の実施の形態に係るPM1とPM11(比較例1)・PM12(比較例2)とを対象に行った熱シミュレーションの結果(熱抵抗特性)は、図4に示すように表わされる。
図4に示すように、第1の実施の形態における比較例2に係るPM12は、冷却性能に優れた両面冷却構造であるため、第1の実施の形態における比較例1に係るPM11より約40%もの熱抵抗の低減が可能となる。
これに対し、第1の実施の形態に係るPM1は、第1の実施の形態における比較例2に係るPM12には及ばないものの、第1の実施の形態における比較例1に係るPM11より熱抵抗を約20%も低減可能となる。
すなわち、上部配線30として、異方性な熱伝導率を有する高熱伝導材料のグラファイトプレート18GPにCu配線パターン16を貼り合わせた構造を採用したことにより、第1の実施の形態に係るPM1においては、上部配線30での冷却性能(熱拡散効果)の向上が期待できる。
なお、上記した熱シミュレーションに用いたPM1・PM11・PM12の各部の寸法(厚み)は以下の通りであり、放熱器41の裏面の温度を65℃で固定した。
例えば、放熱器41・41D・41Uは1.0mm厚とし、接合部材26は0.2mm厚とし、セラミックス基板21・21D・21Uは0.25mm厚とし、電極パターン23D・23U1・23U2・23U・24D・24Uは1.0mm厚とし、半導体デバイス10は350μm厚のSiC MOSFETとした。また、銀焼成部27は60μm厚とし、ブロック電極29は350μm厚とし、Cu配線パターン16は0.2mm厚とし、グラファイトプレート18GPは0.7mm厚とした。
第1の実施の形態に係るPM1によれば、片面冷却構造を基本構造とし、半導体デバイス10上の上部配線30として、異方性な熱伝導率を持つグラファイトプレート18GPにCu配線パターン16を貼り合わせたグラファイト上部配線構造(グラファイト構造)を適用することによって、両面冷却構造に劣らない冷却性能を発揮できる。
また、第1の実施の形態に係るPM1においては、グラファイトプレート18GPの上部配線30への適用により、応力の低減をも同時に図ることが可能となる。
したがって、信頼性および生産性に優れ、両面冷却構造に比べて安価であり、両面冷却構造に劣らない冷却性能を発揮できると共に、応力の低減をも同時に図ることが可能なパワーモジュールを提供できる。
(グラファイトプレート18GP)
(基本構成)
第1の実施の形態に係るPM1においては、グラファイトプレート18GPとして、配向の異なる2種類のグラファイトプレートの使用が可能である。
グラファイトプレート18GPを構成するグラファイトシート(グラフェン)GSの模式的構成(積層構造例)は、図5に示すように表わされる。
グラファイトプレート18GPには、厚み方向よりも面方向に熱伝導率が高いXY配向(第1の配向)を有するグラファイトプレート18GP(XY)と、面方向よりも厚み方向に熱伝導率が高いXZ配向(第2の配向)を有するグラファイトプレート18GP(XZ)とがあり、グラファイトプレート18GP(XY)は図6(a)に示すように表わされ、グラファイトプレート18GP(XZ)は図6(b)に示すように表わされる。
図5に示すように、n層からなる各面のグラファイトシートGS1・GS2・GS3・…・GSnは、1つの積層結晶構造の中に多数の六方晶系の共有結合を有し、各面のグラファイトシートGS1・GS2・GS3・…・GSn間がファンデルワールス力によって結合されるようになっている。
すなわち、炭素系異方伝熱材料であるグラファイトは、炭素原子の六角形網目構造の層状結晶体であって、熱伝導も異方性を持っており、図5に示すグラファイトシートGS1・GS2・GS3・…・GSnは、結晶面方向(XY面上)に対して、Z軸の厚さ方向よりも大きな熱伝導度(高い熱伝導率)を有する。
したがって、図6(a)に示すように、XY配向を有するグラファイトプレート18GP(XY)は、例えば、X=1500(W/mK)、Y=1500(W/mK)、Z=5(W/mK)の熱伝導率を備える。
一方、図6(b)に示すように、XZ配向を有するグラファイトプレート18GP(XZ)は、例えば、X=1500(W/mK)、Y=5(W/mK)、Z=1500(W/mK)の熱伝導率を備える。
なお、グラファイトプレート18GP(XY)・18GP(XZ)は、共に、密度が2.2(g/cm3 )であり、厚さが2mm〜10mmであり、大きさが40mm×40mm以下である。
[第2の実施の形態]
(概略構成)
第2の実施の形態に係るPM1の模式的平面パターン構成は図7(a)に示すように表わされ、図7(a)のII−II線に沿う模式的断面構造は図7(b)に示すように表わされる。また、第2の実施の形態に係るPM1の模式的鳥瞰構成は、図8に示すように表わされる。なお、図7(a)・図7(b)および図8では、1 in 1モジュールタイプのPM1に適用した場合が例示されている。
ここで、図7(a)・図7(b)および図8に示すように、第2の実施の形態に係るPM1は、上部配線(配線リード部)30Aの構成を除けば、第1の実施の形態に係るPM1とほぼ同一の構成を備える。
第2の実施の形態に係るPM1は、図7(a)・図7(b)および図8に示すように、絶縁性のセラミックス基板21と、セラミックス基板21の上面(第1面)に配置されたドレイン電極パターン(第1電極パターン)23U1およびソース電極パターン(第2電極パターン)23U2と、セラミックス基板21の下面(第2面)に配置された裏面電極パターン(第3電極パターン)23Dとを備える絶縁基板20と、ドレイン電極パターン23U1上に配置され、その表面側と裏面側とに電極(図示省略)を有する半導体デバイス(パワーデバイス)10と、裏面電極パターン23D上に配置される放熱器41と、ソース電極パターン23U2上に配置されたブロック電極29と、異方性な熱伝導率を備えるグラファイトプレート(グラファイト配線)18GPと、グラファイトプレート18GPの下面(第1主面)に配置されたCu配線パターン(第1配線パターン)16Dおよび上面(第2主面)に配置されたCu配線パターン(第2配線パターン)16Uとを備え、一端側が半導体デバイス10の表面側のソースパッド電極と接続されると共に、一端側と同一平面で離れた位置の他端側がブロック電極29を介してソース電極パターン23U2と接続される上部配線(配線リード部)30Aとを備える。
第2の実施の形態に係るPM1において、上部配線30Aの模式的鳥瞰構成は、図9(a)に示すように表わされ、模式的正面(側面)構成は、図9(b)に示すように表わされる。
第2の実施の形態に係るPM1において、上部配線30Aは、図9(a)および図9(b)に示すように、例えばXY配向を有するグラファイトプレート18GP(XY)と、グラファイトプレート18GP(XY)の下面(第1主面)に貼り合わされたCu配線パターン16Dと、グラファイトプレート18GP(XY)の上面(第2主面)に貼り合わされたCu配線パターン16Uとを備える。下層のCu配線パターン16Dは、XZ面に対して、ブロック電極29と別体に形成された、ほぼI字状の断面形状を有する。
すなわち、第2の実施の形態に係るPM1は、絶縁性のセラミックス基板21と、セラミックス基板21の上面(第1面)に配置されたドレイン電極パターン23U1およびソース電極パターン23U2と、上面に対向する下面(第2面)に配置された裏面電極パターン23Dとを備える絶縁基板20と、ドレイン電極パターン23U1上に配置され、その表面側にソース電極、裏面側にドレイン電極を有する半導体デバイス10と、裏面電極パターン23D上に配置される放熱器41と、ソース電極パターン23U2上に配置されたブロック電極29と、異方性な熱伝導率を備えるグラファイトプレート18GPと、グラファイトプレート18GPの下面(第1主面)に配置されたCu配線パターン16Dおよび下面に対向する上面(第2主面)に配置されたCu配線パターン16Uとを備え、一端側が半導体デバイス10の表面側に接続されると共に、一端側と同一平面で離れた位置の他端側がブロック電極29を介してCu電極パターン23U2と接続される上部配線30Aとを備え、グラファイトプレート18GPは、厚み方向よりも面方向に熱伝導率が高いXY配向、または面方向よりも厚み方向に熱伝導率が高いXZ配向のいずれかを備えると共に、XY配向を有する複数のグラファイトシートGSを積層してなるプレート構造(18GP(XY))、またはXZ配向を有する複数のグラファイトシートGSを積層してなるプレート構造(18GP(XZ))を備え、半導体デバイス10の表面側の熱をグラファイトプレート18GPを介して絶縁基板20へ伝達する。
なお、XY配向を有するグラファイトプレート18GP(XY)は、例えば、X=1500(W/mK)、Y=1500(W/mK)、Z=5(W/mK)の熱伝導率を備える。
したがって、グラファイトプレート18GP(XY)を適用した上部配線30Aは、XY面に対して、より高い熱拡散効果が期待できると共に、上層のCu配線パターン16Uを備えたことによって、同時に、反り(応力)をも効果的に抑えることが可能となる。
(変形例)
第2の実施の形態の変形例に係るPM1の模式的鳥瞰構成は図10に示すように表わされる。
ここで、第2の実施の形態の変形例に係るPM1は、例えば図10に示すように、半導体デバイス10の方向を第2の実施の形態に係るPM1の場合と異ならせるようにして配置した場合を例示したものであって、半導体デバイス10の向きを除けば、第2の実施の形態に係るPM1とほぼ同一の構成を備えるため、詳細な説明は省略する。
すなわち、第2の実施の形態の変形例に係るPM1のように、半導体デバイス10は、ゲートパッド電極(図示省略)の向きが、上部配線30Aの延長方向と直交する方向となるように配置することも可能である。
上部配線30Aは、図示省略のゲートパッド電極とのワイヤボンディングのために、半導体デバイス10の上面に対して、ゲートパット電極(ゲートワイヤのボンディング面GB)を露出させるようにして接合される。
なお、詳細な説明は省略するが、図10に示した第2の実施の形態の変形例に係るPM1の構成は、他の実施の形態に係る構成のPM1にも同様に適用可能である。
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態に係るPM1の模式的平面パターン構成は図11(a)に示すように表わされ、図11(a)のIII−III線に沿う模式的断面構造は図11(b)に示すように表わされる。なお、図11(a)および図11(b)では、1 in 1モジュールタイプのPM1に適用した場合が例示されている。
ここで、図11(a)および図11(b)に示すように、第3の実施の形態に係るPM1は、上部配線(配線リード部)30Bの構成を除けば、第2の実施の形態に係るPM1とほぼ同一の構成を備える。
すなわち、第3の実施の形態に係るPM1は、図11(a)および図11(b)に示すように、セラミックス基板21と、セラミックス基板21の上面(第1面)に配置されたドレイン電極パターン(第1電極パターン)23U1およびソース電極パターン(第2電極パターン)23U1と、セラミックス基板21の下面(第2面)に配置された裏面電極パターン(第3電極パターン)23Dとを備える絶縁基板20と、ドレイン電極パターン23U1上に配置され、表面にソースパッド電極(図示省略)を有する半導体デバイス(パワーデバイス)10と、裏面電極パターン23D上に配置される放熱器41と、異方性な熱伝導率を備えるグラファイトプレート(グラファイト配線)18GPと、グラファイトプレート18GPの下面(第1主面)に配置され、一端側が半導体デバイス10のソースパッド電極と接続されると共に、他端側がソース電極パターン23U2と接続されるCu配線パターン(第1配線パターン)16D1と、グラファイトプレート18GPの上面(第2主面)に設けられたCu配線パターン(第2配線パターン)16Uとを有する上部配線(配線リード部)30Bとを備える。
第3の実施の形態に係るPM1において、上部配線30Bの模式的鳥瞰構成は、図12(a)に示すように表わされ、模式的正面(側面)構成は、図12(b)に示すように表わされる。
すなわち、第3の実施の形態に係るPM1において、上部配線30Bは、図12(a)および図12(b)に示すように、例えばXY配向を有するグラファイトプレート18GP(XY)と、グラファイトプレート18GP(XY)の下面に貼り合わされたCu配線パターン16D1と、グラファイトプレート18GP(XY)の上面に貼り合わされたCu配線パターン16Uとを備える。下層のCu配線パターン16D1は、XZ面に対して、ブロック状の接続電極部(ブロック電極)と一体的に形成された、ほぼL字状の断面形状を有する。
したがって、グラファイトプレート18GPを適用した上部配線30Bは、Cu配線パターン16D1のように、下層のCu配線パターンとブロック電極とを一体形成しつつ、上層のCu配線パターン16Uと併用させることによって、XY面に対して、より高い熱拡散効果が期待できると共に、反り(応力)をより効果的に低減させることが可能となる。
第3の実施の形態に係るPM1によれば、グラファイトプレート18GPの上下両面にCu配線パターン16U・16D1を貼り付けてなる上部配線30Bの採用により、生産性の観点から片面冷却構造とした場合にも両面冷却構造に劣らない冷却性能を確保できる。
同時に、応力に対する緩和効果も期待できる(例えば、グラファイトプレートとCu配線パターンとの貼り合わせにより、Cu配線パターンのみの場合と比較して、約50%の低減が可能)。
また、Cu配線パターン16D1の併用により、上部配線30Bとしての電気伝導性を損なうこともない。
なお、詳細な説明は省略するが、第3の実施の形態に係るPM1の構成(上部配線構造)は、第1の実施の形態など、他の実施の形態に係る構成のPM1にも同様に適用可能である。
すなわち、上部配線30Bは、グラファイトプレート18GPの上面にCu配線パターン16Uを備える構成としたが、上層のCu配線パターン16Uは必須の構成要件ではなく、Cu配線パターン16Uを省略した構成とすることも可能である。
また、いずれの実施の形態に係るPM1においても、グラファイトプレート18GPとしては、XY配向を有するグラファイトプレート18GP(XY)に限らず、例えば、XZ配向を有するグラファイトプレート18GP(XZ)も適用可能である。
すなわち、第3の実施の形態に係るPM1は、絶縁性のセラミックス基板21と、セラミックス基板21の上面に配置されたドレイン電極パターン23U1およびソース電極パターン23U2と、上面に対向する下面に配置された裏面電極パターン23Dとを備える絶縁基板20と、ドレイン電極パターン23U1上に配置され、その表面側と裏面側とに電極を有する半導体デバイス10と、裏面電極パターン23D上に配置される放熱器41と、異方性な熱伝導率を備えるグラファイト配線18GP、およびグラファイト配線18GPの下面に配置され、一端側が半導体デバイス10の表面側に接続されると共に、一端側と同一平面で離れた位置の他端側がソース電極パターン23U2と接続されるように配線パターンの厚みが部分的に異なるL字の断面形状を有するCu配線パターン16D1を有する上部配線30Bとを備え、グラファイト配線18GPは、厚み方向よりも面方向に熱伝導率が高いXY配向、または面方向よりも厚み方向に熱伝導率が高いXZ配向のいずれかを備えると共に、XY配向を有する複数のグラファイトシートGSを積層してなるプレート構造(18GP(XY))、またはXZ配向を有する複数のグラファイトシートGSを積層してなるプレート構造(18GP(XZ))を備え、半導体デバイス10の表面側の熱をグラファイト配線18GPを介して絶縁基板20へ伝達する。
[熱抵抗特性]
次に、第4の実施の形態に係るPM1をモデルに、シミュレーションを行った際の結果(上部配線と熱抵抗との関係性)について説明する。
[第4の実施の形態]
(概略構成)
第4の実施の形態に係るPM1の模式的平面パターン構成は図13(a)に示すように表わされ、図13(a)のIV−IV線に沿う模式的断面構造は図13(b)に示すように表わされる。なお、図13(a)および図13(b)では、1 in 1モジュールタイプのPM1に適用した場合が例示されている。
ここで、図13(a)および図13(b)に示すように、第4の実施の形態に係るPM1は、ブロック電極29Aを除けば、第1の実施の形態に係るPM1とほぼ同一の構成を備える。
すなわち、第4の実施の形態に係るPM1は、図13(a)および図13(b)に示すように、グラファイトプレート18GPの下面(第1主面)に、Cu配線パターン16を貼り合わせてなる上部配線30を備える。
上部配線30において、例えば、グラファイトプレート18GPの厚さtは0.7mm、Cu配線パターン16の厚さtcは0.2mmとされている。また、上部配線30は、幅(Y方向の長さ)がdとされている。
なお、グラファイトプレート18GPは、XY配向を有し、例えば、X=1500(W/mK)、Y=1500(W/mK)、Z=5(W/mK)の熱伝導率を備える。
第4の実施の形態に係るPM1において、絶縁基板20は、例えば、SiN系のセラミックス基板21の厚さを0.25mmとし、上層のドレイン電極パターン23U1およびソース電極パターン23U2として、1.0mm厚のCu箔を、15mm×15mmのサイズで形成した。
下層の裏面電極パターン23Dには、例えば、1.0mm厚のCu箔を用いた。
半導体デバイス10としては、例えば、350μm厚で、5mm×5mmのサイズのSiC MOSFETを用いた。
銀焼成部27は、厚さを60μmとした。
ブロック電極29Aは、例えば、0.35mm厚のCu箔を、3.2mm×3.2mmのサイズで形成した。
なお、ブロック電極29Aは、上部配線30のY方向のほぼ中央部に配置されると共に、上部配線30のX方向のエッジからの距離がeに設定される。
このような構成のPM1をシミュレーションモデルとし、上部配線30の幅dをd1=3.2mm、d2=7.5mm、d3=10mm、d4=15mmとした場合の熱抵抗(℃/W)についてシミュレーションした結果は、図14(a)および図14(b)に示すように表わされる。
なお、図14(a)は、ブロック電極29Aの上部配線30のX方向のエッジからの距離eを0、2.5mm、5mm、7.5mm、10mmとした場合の結果であり、図14(b)は、距離eを0とした場合の結果である。
上部配線30は、図14(a)からも明らかなように、幅dが大きい程、熱の拡散領域が増加するため、熱抵抗は低減される(最大で、約6%の減少)。
また、上部配線30の幅dは、図14(b)中に矢印で示すように、20mm以内(ブロック電極29からエッジまでの距離eは5mm程度まで)が効果的である。
図15(a)〜図15(c)は、シミュレーションの結果として、上部配線30と熱抵抗との関係についてそれぞれ示すもので、図15(a)は、Cu配線パターン16の厚さtc(tc=5mm以下)と熱抵抗との関係を、図15(b)は、Cu配線パターン16の厚さtc(tc=10mm以下)と熱抵抗との関係を、図15(c)は、グラファイトプレート18GPの厚さt(Cu配線パターン16の厚さtc=0.2mm)と熱抵抗との関係を、それぞれ示す。
図15(a)においては、グラファイトプレート18GPの厚さtを、t=3mmとした場合と、t=0(Cu配線パターン16単体)とした場合について示しており、図15(b)においては、グラファイトプレート18GPの厚さtを、t=0.7mmとした場合と、t=0とした場合について示している。
上部配線30は、図15(b)中に矢印で示すように、Cu配線パターン16の厚さtcが約9mm以下の場合に、Cu配線パターン16を単体で用いる場合よりも熱抵抗を低減できる。
図15(c)中に矢印で示すように、グラファイトプレート18GPの厚さtとしては、1mm程度あれば熱抵抗の低減の効果が十分に期待できる。
[応力緩和構造]
次に、第5の実施の形態に係るPM1をモデルに、グラファイト構造の適用によるPMの応力緩和構造について説明する。
[第5の実施の形態]
(概略構成)
第5の実施の形態に係るPM1の応力緩和構造について、シミュレーションを行うためのモデルの模式的断面構造は、図16(a)に示すように表わされる。なお、図16(b)は、図16(a)中の表示Aの部分を拡大して示す拡大図である。
ここで、グラファイトプレート18GPの熱膨張率(CTE)により、PM1におけるミーゼス応力の取得個所は、図16(b)中に示す表示Bにより表わされる。
図16(a)および図16(b)に示すPM1おいて、例えばX方向のサイズに関しては、裏面電極パターン23Dの長さx1=28mm、ドレイン電極パターン23U1の長さx2=15mm、ドレイン電極パターン23U1のエッジから半導体デバイス10までの距離(長さ)x3=5mm、半導体デバイス10の長さx4=5mm、裏面電極パターン23Dのエッジからセラミックス基板21のエッジまでの距離(長さ)x5=0.5mm、デバイス上Al電極部61の長さx6=4.94mm、デバイス上Niメッキ層63および銀焼成部27の長さx7=2.5mm、ソース電極パターン23U2の長さx8=12.5mm、両電極パターン23U1・23U2間の距離(長さ)x9=0.5mm、ブロック電極29の長さx10=2.5mmとした。
一方、PM1の、例えばZ方向のサイズ(厚さ)に関しては、銀焼成部27の厚さt1・t6=0.1mm(Meshで、0.01)、デバイス上Niメッキ層63の厚さt2=3μm(Meshで、0.0005)、デバイス上Al電極部61の厚さt3=0.005mm(Meshで、0.0005)、半導体デバイス10の厚さt4=0.35mm、デバイス下銀焼成部27の厚さt5=0.05mm、電極パターン23U1・23U2の厚さt7=0.5mm、セラミックス基板21の厚さt8=0.32mm、裏面電極パターン23Dの厚さt9=0.5mmとした(銀焼成部−Al電極部の界面はMeshで、0.0001)。
なお、グラファイトプレート18GPのCTEは、X=0.1ppm/K、Y=0.1ppm/K、Z=25ppm/K、Cu配線パターン16U・16DのCTEは、17ppm/Kである。また、SiN系のセラミックス基板21の厚さt8=0.3mmとした場合のCTEは、3ppm/Kであり、電極パターン23U1・23U2・23Dの厚さt7=t9=0.3mmとした場合のCTEは、17ppm/Kであり、全体のCTEが8ppm/K〜9ppm/K程度となるように調整される。
そして、上部配線30の、グラファイトプレート18GPの厚さtを、0.1mm、0.3mm、0.5mm、0.7mmとし、Cu配線パターン16D・16Uの厚さtcを、0.1mm、0.3mm、0.5mmとした場合について検討した。
なお、グラファイトプレート18GPの異方性(CTE X=0.1ppm/K、Y=0.1ppm/K、Z=25ppm/K)の効果をみるために、弾性率(ミーゼス応力)GPaは、Cuと同じ120GPaとした。
図17は、CTE(ppm)とミーゼス応力との関係(グラファイト構造のミーゼス応力比)を示すもので、CTE 17ppm時を100とした場合のミーゼス応力比である。なお、図17においては、グラファイト構造をシミュレーションするために、CuとINVとを用いた。
ここで、ミーゼス応力とは、物体内部に生じる応力状態を単一の値で示すために用いられる相当応力の1つである。ミーゼス応力の定義式を以下に示す。定義式中のσ1は最大主応力、σ2は中間主応力、σ3は最小主応力である。ここでは、各主応力σ1、σ2、σ3は、銀焼成部27に作用するX方向の主応力、Y方向の主応力、Z方向の主応力の中から選択される。
図17において、Cuは、シミュレーションモデルをCuの単体とした場合であり、Super Invarは、INVの単体とした場合であり、CIC1は、CuとINVとCuとの厚さの比を1:1:1とした場合であり、CIC3は、CuとINVとCuとの厚さの比を1:3:1とした場合である。
図17からも明らかなように、グラファイト構造は、ミーゼス応力比を約50%も低減可能である。
すなわち、CuとINVのCTEを変化させることによって、シミュレーションモデルにおけるミーゼス応力比は低減可能である。これは、Cu配線パターン16の厚みを変化させても、Al電極部61のミーゼス応力の変化は小さいが、上部配線30のCTEを変化させることによって、Al電極部61にかかるミーゼス応力を大きく改善できる可能性を示唆する。
したがって、グラファイトプレート18GPにCu配線パターン16D・16Uを貼り合わせたグラファイト構造の上部配線30は、応力の観点においても優れた構造となり得る。
なお、図17において、ミーゼス応力比が80を超える(CTE 約10ppm以上)と、モデルには破壊がみられる。
[第6の実施の形態]
(概略構成)
第6の実施の形態に係るPM1の模式的平面パターン構成は図18(a)に示すように表わされ、図18(a)のV−V線に沿う模式的断面構造は図18(b)に示すように表わされる。なお、図18(a)および図18(b)では、1 in 1モジュールタイプのPM1に適用した場合が例示されている。
ここで、図18(a)および図18(b)に示すように、第6の実施の形態に係るPM1は、グラファイト基板18GH1・18GH2の構成を除けば、第1の実施の形態に係るPM1とほぼ同一の構成を備える。
第6の実施の形態に係るPM1は、図18(a)および図18(b)に示すように、セラミックス基板21の上面(第1面)に配置された、熱膨張係数に異方性を有するグラファイト基板18GH1・18GH2をさらに備え、グラファイト基板18GH1上には半導体デバイス(パワーデバイス)10が接合されるドレイン電極パターン(第1電極パターン)22U1が、グラファイト基板18GH2上にはブロック電極29が接合されるソース電極パターン(第2電極パターン)22U2が、それぞれ配置されている。
すなわち、第6の実施の形態に係るPM1は、絶縁性のセラミックス基板21と、セラミックス基板21上に配置された熱膨張係数に異方性を有するグラファイト基板18GH1・18GH2と、グラファイト基板18GH1・18GH2上に配置され、その表面側と裏面側とに電極を有する半導体デバイス10と、半導体デバイス10の表面側に接続された異方性な熱伝導率を備えるグラファイト配線30とを備え、半導体デバイス10の表面側の熱をグラファイト配線30を介してセラミックス基板21へ伝達する。
また、第6の実施の形態に係るPM1は、絶縁性のセラミックス基板21と、セラミックス基板21上に配置された熱膨張係数に異方性を有するグラファイト基板18GH1・18GH2とを備えるグラファイト絶縁基板20Aと、グラファイト絶縁基板20A上に配置され、その表面側と裏面側とに電極を有する半導体デバイス10と、半導体デバイス10の表面側に接続された異方性な熱伝導率を備えるグラファイト配線30とを備え、半導体デバイス10の表面側の熱をグラファイト配線30を介してセラミックス基板21へ伝達する。
第6の実施の形態に係るPM1においては、グラファイト構造による熱拡散効果に加え、ドレイン電極パターン22U1上に接合される半導体デバイス10の形状(向きや縦横のサイズ)を変えることによって、接合部(銀焼成部27やAl電極部61)にかかる応力についての低減が可能である。
グラファイト基板18GH1上に正方形などのデバイス(モジュール)を接合すると、グラファイト基板18GH1上には熱伝導率・熱膨張係数に異方性があるため、熱膨張係数が大きい方位では、双方の熱膨張係数の差から接合部に大きな応力が生じるが、デバイスの形状をグラファイト基板18GH1の熱膨張係数とうまくマッチングさせることで、接合部にかかる応力を低減できる。
以下に、第6の実施の形態に係るPM1において、熱膨張係数に異方性を有するグラファイト基板18GH1を適用した場合を例に、接合部にかかる応力について説明する。
FRD SC1およびIGBT SC2を例に、グラファイト基板18GH1に対する配置を説明する模式的平面パターン構成(PMa)は図19(a)に示すように表わされ、SiC MOSFET SC3を例に、グラファイト基板18GH1に対する配置を説明する模式的平面パターン構成(PMb)は、図19(b)に示すように表わされる。
なお、半導体デバイス10は、実際にはグラファイト基板18GH1上のドレイン電極パターン22U1に接合されるが、ここでの説明では図示を省略している。
ダイオードなどを備えるIGBTの場合、図19(a)に示すように、グラファイト基板18GH1上には、半導体デバイス10として、FRD SC1およびIGBT SC2が接合される。
SiC MOSFETの場合、図19(b)に示すように、グラファイト基板18GH1上には、半導体デバイス10として、SiC MOS SC3が接合される。
ここで、グラファイト基板18GH1の熱膨張係数の配向を、例えばX=0.5ppm/K、Y=25ppm/K、z=0.5ppm/Kとした場合、FRD SC1・IGBT SC2・SiC MOS SC3としては、いずれも、長手(X)方向H1および短手(Y)方向C1を有する長方形のデバイス(H1>C1)を用い、それぞれの短手方向C1を熱膨張係数の大きい方位(Y)に対応させる。これにより、グラファイト基板18GH1・18GH2による熱拡散効果と共に、接合部にかかる応力をも低減可能となる。
なお、第6の実施の形態に係るPM1の構成は、他の実施の形態に係る構成のPM1にも同様に適用可能である。
[応力低減効果]
以下に、第1〜第6の実施の形態に係るPMにおいて、グラファイト基板の適用による応力低減効果について、さらに説明する。
(実施例1)
熱膨張係数に異方性を有するグラファイト基板を適用した場合を例に、接合部にかかる応力についてシミュレーションを行うための、シミュレーションモデルMDの模式的平面パターン構成は、図20(a)に示すように表わされ、図20(a)のVI−VI線に沿う模式的断面構造は、図20(b)に示すように表わされる。
ここでは、図20(a)・図20(b)に示した構成のシミュレーションモデルMDにおいて、下面Cu箔(裏面電極パターン23D)/Si3N4基板(セラミックス基板21)/グラファイトプレート(グラファイト基板18GH1・18GH2)/上面Cu箔(電極パターン22U1・22U2)からなる積層基板構造を、グラファイト絶縁基板と称する。
グラファイト絶縁基板が備えるグラファイトプレートは、熱伝導率・熱膨張係数に異方性があるため、正方形などのデバイスをダイ・ボンディングすると、熱膨張係数が大きい方位では熱膨張係数の差から接合部に大きな応力を生じるが、デバイスの形状をグラファイトプレートの熱膨張係数とうまくマッチングさせることで、接合部にかかる応力の低減が可能である。
シミュレーションモデルMDにおいては、図20(a)・図20(b)に示すように、例えば、10mm(GX)×21mm(LY1)のSiN系のセラミックス基板21を用い、半導体デバイス10が接合されるドレイン電極パターン22U1およびブロック電極(図示省略)が接合されるソース電極パターン22U2として、10mm(GX)×10mm(LY)のCu箔を用いた。
ドレイン電極パターン22U1およびソース電極パターン22U2は、距離LY2=1mmだけ離間されている。
裏面電極パターン23Dは、セラミックス基板21と同一寸法(10mm×21mm)とした。
グラファイト基板18GH1・18GH2は、ドレイン電極パターン22U1およびソース電極パターン22U2と同一寸法(10mm×21mm)とした。
半導体デバイス10としては、5mm(H1)×5mm(C1)を有する正方形のSiC MOSFETを用い(H1=C1)、ドレイン電極パターン22U1のエッジからの距離X1(2.5mm)・Y1(2.5mm)により、ドレイン電極パターン22U1上のほぼ中央部に、銀焼成部27を用いて接合させた。
グラファイト基板18GH1・18GH2の熱膨張係数の配向は、例えばX=25ppm/K、Y=0.1ppm/K、Z=0.1ppm/Kとした。
なお、図21に示すように、熱抵抗が最も低くなるように、各部の厚み(mm)が最適化される。本シミュレーションモデルMDの場合、例えば、半導体デバイス10は約0.35mm厚、グラファイト基板18GH1・18GH2は約1.5mm厚、セラミックス基板21は約0.32mm厚、ドレイン電極パターン22U1・22U2は約0.3mm厚、裏面電極パターン23Dは約0.2mm厚、銀焼成部27は約0.05mm厚とされ、最適化される。
このような構成において、例えば、無応力時を200℃とし、25℃時のミーゼス応力を算出することにより、銀焼成部27にかかる応力が求められる。
なお、図20に示した構成のシミュレーションモデルMDにおいて、グラファイト基板18GH1・18GH2の熱膨張係数の配向を、例えばX=25ppm/K、Y=0.5ppm/K、Z=0.5ppm/Kとした場合の、銀焼成部27にかかる応力についてシミュレーションを行った際の結果(全体の反り形状)を、図22に示す。
シミュレーションモデルMDの反りは、最大値で26.322μm、最小値で0.079μmであった。
次に、異なる構成のシミュレーションモデルについて説明する。なお、図20に示した構成のシミュレーションモデルMDにおいて、正方形の半導体デバイス10が接合された場合をシミュレーションモデルMD1とする。
図23(a)は、図20に示した構成のシミュレーションモデルMDにおいて、縦長の半導体デバイス(H2×C2、H2>C2)10aが接合された場合(シミュレーションモデルMD2)を例示するものであって、半導体デバイス10aとしては、6.25mm(H2)×4mm(C2)を有する長方形のSiC MOSFETを用い、ドレイン電極パターン22U1のエッジからの距離X2(1.875mm)・Y2(3mm)により、ドレイン電極パターン22U1上のほぼ中央部に接合される。
図23(b)は、図20に示した構成のシミュレーションモデルMDにおいて、横長の半導体デバイス(H3×C3、H3<C3)10bが接合された場合(シミュレーションモデルMD3)を例示するものであって、半導体デバイス10bとしては、4mm(H3)×6.25mm(C3)を有する長方形のSiC MOSFETを用い、ドレイン電極パターン22U1のエッジからの距離X3(3mm)・Y3(1.875mm)により、ドレイン電極パターン22U1上のほぼ中央部に接合される。
図23(c)は、図20に示した構成のシミュレーションモデルMDにおいて、縦長の半導体デバイス(H4×C4、H4≫C4)10cが接合された場合(シミュレーションモデルMD4)を例示するものであって、半導体デバイス10cとしては、8.33mm(H4)×3mm(C4)を有する長方形のSiC MOSFETを用い、ドレイン電極パターン22U1のエッジからの距離X4(0.835mm)・Y4(3.5mm)により、ドレイン電極パターン22U1上のほぼ中央部に接合される。
図23(d)は、図20に示した構成のシミュレーションモデルMDにおいて、横長の半導体デバイス(H5×C5、H5≪C5)10dが接合された場合(シミュレーションモデルMD5)を例示するものであって、半導体デバイス10dとしては、3mm(H5)×8.33mm(C5)を有する長方形のSiC MOSFETを用い、ドレイン電極パターン22U1のエッジからの距離X5(3.5mm)・Y5(0.835mm)により、ドレイン電極パターン22U1上のほぼ中央部に接合される。
図24(a)は、第1〜第6の実施の形態に係るパワーモジュールにおいて、熱膨張係数に異方性を有するグラファイト基板を適用した場合について、シミュレーションモデルMD1〜MD5を用いてシミュレーションを行った際の、エッジ(図20(a)・図20(b)のEDG)からの距離(Y1〜Y5)とミーゼス応力(GPa)との関係を説明するための特性図であり、図24(b)は、シミュレーションモデルMD1〜MD5とミーゼス応力比との関係を説明するための特性図である。
なお、図24(a)・図24(b)は、グラファイト基板18GH1の熱膨張係数の配向を、例えばX=25ppm/K、Y=0.5ppm/K、Z=0.5ppm/Kとした場合の例であり、図24(a)は、銀焼成部27にかかるミーゼス応力であり、図24(b)は、シミュレーションモデルMD1の場合を1GPaとしている。
図24(a)および図24(b)から、シミュレーションモデルMD1のミーゼス応力比を1とすると、シミュレーションモデルMD2・MD4のミーゼス応力比は1.05、シミュレーションモデルMD3のミーゼス応力比は0.83、シミュレーションモデルMD5のミーゼス応力比は0.84となる。
すなわち、グラファイト基板18GH1の熱膨張係数の配向を、例えばX=25ppm/K、Y=0.5ppm/K、Z=0.5ppm/Kとし、無応力時を200℃とした場合の、シミュレーションモデルMD1〜MD5の銀焼成部27にかかる応力(25℃時)は、モデルMD3・MD5の半導体デバイス10b・10dのように、熱膨張係数の大きい方位(X)のサイズを小さくすることにより低減可能となる。
(実施例2)
次に、ソース電極パターンがない場合を例に、銀焼成部27にかかる応力について説明する。
ソース電極パターンがない場合の、シミュレーションモデルMD1の模式的平面パターン構成は、図25(a)に示すように表わされ、図25(a)のVII−VII線に沿う模式的断面構造は、図25(b)に示すように表わされる。
グラファイト基板18GH1の熱膨張係数の配向は、例えばX=0.1ppm/K、Y=25ppm/K、Z=0.1ppm/Kであり、各部(10・18GH1・21・22U1・27)の厚み(mm)は、図21に示したように、熱抵抗が最も低くなるように最適化される。
なお、シミュレーションモデルMD2・MD3の場合も、半導体デバイス10a・10bの形状が異なるだけで、ほぼ同様である。
図26(a)は、第1〜第6の実施の形態に係るパワーモジュールにおいて、熱膨張係数に異方性を有するグラファイト基板を適用した場合について、シミュレーションモデルMD1〜MD3を用いてシミュレーションを行った際の、エッジ(図25(a)・図25(b)のEDG)からの距離(X1〜X3)とミーゼス応力との関係を説明するための特性図であり、図26(b)は、シミュレーションモデルMD1〜MD3とミーゼス応力比との関係を説明するための特性図である。
なお、図26(a)・図26(b)は、グラファイト基板18GH1の熱膨張係数の配向を、例えばX=0.5ppm/K、Y=25ppm/K、Z=0.5ppm/Kとした場合の例であり、図26(a)は、銀焼成部27にかかるミーゼス応力であり、図26(b)は、シミュレーションモデルMD1の場合を1としている。
図26(a)および図26(b)から、シミュレーションモデルMD1のミーゼス応力比を1とすると、シミュレーションモデルMD2のミーゼス応力比は0.96、シミュレーションモデルMD3のミーゼス応力比は1.02となる。
すなわち、グラファイト基板18GH1の熱膨張係数の配向を、例えばX=0.5ppm/K、Y=25ppm/K、Z=0.5ppm/Kとし、無応力時を200℃とした場合の、シミュレーションモデルMD1〜MD3の銀焼成部27にかかる応力(25℃時)は、モデルMD2の半導体デバイス10aのように、熱膨張係数の大きい方位(Y)のサイズを小さくすることにより低減可能となる。
図25に示した構成のシミュレーションモデルMD1〜MD3において、グラファイト基板18GH1の熱膨張係数の配向を、例えばX=0.1ppm/K、Y=25ppm/K、Z=0.1ppm/Kとした場合の、銀焼成部27にかかる応力についてシミュレーションを行った際の結果(全体の反り形状)を、図27(a)〜図27(c)に示す。
シミュレーションモデルMD1の反りは、最大値で22.599μm、最小値で0.128μmであり、シミュレーションモデルMD2の反りは、最大値で22.313μm、最小値で0.146μmであり、シミュレーションモデルMD3の反りは、最大値で22.972μm、最小値で0.322μmであった。
なお、第1〜第6の実施の形態に係るPM1においては、半導体デバイスとして、1 in 1モジュールタイプに適用した場合について説明したが、これに限らず、例えば2 in 1(ツーインワン)モジュールタイプのPMや、4 in 1(フォーインワン)モジュールタイプのPM、6 in 1 (シックスインワン)モジュールタイプのPMや、6 in 1モジュールにスナバコンデンサなどを備えた7 in 1(セブンインワン)モジュールタイプのPM、8 in 1(エイトインワン)モジュールタイプのPM、12 in 1(トゥエルブインワン)モジュールタイプのPM、14 in 1(フォーティーンインワン)モジュールタイプのPMなどにも適用できる。
(半導体デバイスの具体例)
第1〜第6の実施の形態に係るPM1であって、半導体デバイスとして適用可能な1 in 1モジュール50のSiC MOSFETの模式的回路表現は、図28に示すように表される。
図28には、MOSFET Qに逆並列接続されるダイオードDIが示されている。MOSFET Qの主電極は、ドレイン端子DTおよびソース端子STで表される。また、第1〜第6の実施の形態に係るPM1であって、半導体デバイスとして適用可能な1 in 1モジュール50のIGBTを(図示せず)を実現することもできる。
また、第1〜第6の実施の形態に係るPM1であって、半導体デバイスとして適用可能な1 in 1モジュール50のSiC MOSFETの詳細回路表現は、図29に示すように表される。
第1〜第6の実施の形態に係るPM1は、例えば、半導体デバイスが1 in 1モジュール50の構成を備える。すなわち、1個のMOSFET Qが1つのモジュールに内蔵されている。一例として、5チップ(MOSFET×5)搭載可能であり、それぞれのMOSFET Qは、5個まで並列接続可能である。なお、5チップの内、一部をダイオードDI用として搭載することも可能である。
さらに詳細には、図29に示すように、MOSFET Qに並列にセンス用MOSFET Qsが接続される。センス用MOSFET Qsは、MOSFET Qと同一チップ内に、微細トランジスタとして形成されている。
図29において、SSは、ソースセンス端子、CSは、電流センス端子であり、Gは、ゲート信号端子である。なお、第1〜第6の実施の形態においても、半導体デバイスQには、センス用MOSFET Qsが同一チップ内に、微細トランジスタとして形成されていても良い。
(回路構成)
次に、第1〜第6の実施の形態に係るPM1において、半導体デバイスの回路構成例について、より具体的に説明する。
ここでは、第1〜第6の実施の形態に係るPM1の半導体デバイスとして適用可能なモジュールであって、2個の半導体デバイスQ1・Q4が1つのモールド樹脂内に封止された半導体パッケージ装置、いわゆる2 in 1タイプのモジュールについて説明する。
半導体デバイスQ1・Q4として、SiC MOSFETを適用した2 in 1モジュール130Aの回路構成は、例えば図30に示すように表わされる。
すなわち、2 in 1モジュール130Aは、図30に示すように、2個のSiC MOSFET Q1・Q4が1つのモジュールとして内蔵された、ハーフブリッジ内蔵モジュールの構成を備える。
ここで、モジュールは、1つの大きなトランジスタとみなすことができるが、内蔵されているトランジスタが1チップまたは複数チップの場合がある。すなわち、モジュールには、1 in 1、2 in 1、4 in 1、6 in 1などがあり、例えば、1つのモジュール上において、2個分のトランジスタ(チップ)を内蔵したモジュールは2 in 1、2 in 1を2組み内蔵したモジュールは4 in 1、2 in 1を3組み内蔵したモジュールは6 in 1と呼ばれている。
図30に示すように、2 in 1モジュール130Aは、2個のSiC MOSFET Q1・Q4と、SiC MOSFET Q1・Q4に逆並列接続されるダイオードDI1・DI4が1つのモジュールとして内蔵されている。
図30において、G1は、SiC MOSFET Q1のゲート信号用のリード端子であり、S1は、SiC MOSFET Q1のソース信号用のリード端子である。同様に、G4は、SiC MOSFET Q4のゲート信号用のリード端子であり、S4は、SiC MOSFET Q4のソース信号用のリード端子である。
また、Pは、正側電源入力端子電極であり、Nは、負側電源入力端子電極であり、Oは、出力端子電極である。
また、第1〜第6の実施の形態に係るPM1の半導体デバイスとして適用可能なモジュールであって、半導体デバイスQ1・Q4として、IGBTを適用した2 in 1モジュール(図示せず)を実現することもできる。
第1〜第6の実施の形態に係るPM1に適用可能な半導体デバイスQ2・Q5、および半導体デバイスQ3・Q6についても同様である。
(デバイス構造)
第1〜第6の実施の形態に係るPM1に適用可能な半導体デバイスQ1・Q4の例であって、ソースパッド電極SP、ゲートパッド電極GPを含むSiC MOSFET 130Aの模式的断面構造は、図31に示すように表わされる。
図31に示すように、SiC MOSFET 130Aは、n- 高抵抗層からなる半導体層31と、半導体層31の表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたソース領域33と、pボディ領域32間の半導体層31の表面上に配置されたゲート絶縁膜34と、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35と、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36と、半導体層31の表面と反対側の裏面に配置されたn+ ドレイン領域37と、n+ ドレイン領域37に接続されたドレイン電極38とを備える。
ゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35に接続され、ソースパッド電極SPは、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36に接続される。また、ゲートパッド電極GPおよびソースパッド電極SPは、図31に示すように、SiC MOSFET 130Aの表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜39上に配置される。
なお、ゲートパッド電極GPおよびソースパッド電極SPの下方の半導体層31内には、図示していないが、微細構造のトランジスタ構造が形成されていても良い。
さらに、図31に示すように、中央部のトランジスタ構造においても、パッシベーション用の層間絶縁膜39上にソースパッド電極SPが延在して配置されていても良い。
図31において、SiC MOSFET 130Aは、プレーナゲート型のnチャネル縦型SiC MOSFETで構成されているが、後述する図34に示すように、トレンチゲート型のnチャネル縦型SiC T(Trench) MOSFET 130Cなどで構成されていても良い。
または、第1〜第6の実施の形態に係るPM1に適用可能な半導体デバイスQ1・Q4としては、SiC MOSFET 130Aの代わりに、GaN系FETなどを採用することもできる。
第1〜第6の実施の形態に係るPM1に適用可能な半導体デバイスQ2・Q5、および半導体デバイスQ3・Q6についても同様である。
さらには、第1〜第6の実施の形態に係るPM1に適用可能な半導体デバイスQ1〜Q6には、バンドギャップエネルギーが、例えば、1.1eV〜8eVのワイドバンドギャップ型と称される半導体を用いることができる。
同様に、第1〜第6の実施の形態に係るPM1に適用可能な半導体デバイスQ1・Q4の例であって、エミッタパッド電極EP、ゲートパッド電極GPを含むIGBT 130Bの模式的断面構造は、図32に示すように表わされる。
図32に示すように、IGBT 130Bは、n- 高抵抗層からなる半導体層31と、半導体層31の表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたエミッタ領域33Eと、pボディ領域32間の半導体層31の表面上に配置されたゲート絶縁膜34と、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35と、エミッタ領域33Eおよびpボディ領域32に接続されたエミッタ電極36Eと、半導体層31の表面と反対側の裏面に配置されたp+ コレクタ領域37Pと、p+ コレクタ領域37Pに接続されたコレクタ電極38Cとを備える。
ゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35に接続され、エミッタパッド電極EPは、エミッタ領域33Eおよびpボディ領域32に接続されたエミッタ電極36Eに接続される。また、ゲートパッド電極GPおよびエミッタパッド電極EPは、図32に示すように、IGBT 130Bの表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜39上に配置される。
なお、ゲートパッド電極GPおよびエミッタパッド電極EPの下方の半導体層31内には、図示していないが、微細構造のIGBT構造が形成されていても良い。
さらに、図32に示すように、中央部のIGBT構造においても、パッシベーション用の層間絶縁膜39上にエミッタパッド電極EPが延在して配置されていても良い。
図32において、IGBT 130Bは、プレーナゲート型のnチャネル縦型IGBTで構成されているが、トレンチゲート型のnチャネル縦型IGBTなどで構成されていても良い。
第1〜第6の実施の形態に係るPM1に適用可能な半導体デバイスQ2・Q5、および半導体デバイスQ3・Q6についても同様である。
半導体デバイスQ1〜Q6としては、SiC DI MOSFET、SiC T MOSFETなどのSiC系パワーデバイス、或いはGaN系高電子移動度トランジスタ(HEMT: High Electron Mobility Transistor)などのGaN系パワーデバイスを適用可能である。また、場合によっては、Si系MOSFETやIGBTなどのパワーデバイスも適用可能である。
―SiC DI MOSFET―
第1〜第6の実施の形態に係るPM1に適用可能な半導体デバイスの例であって、SiC DI MOSFET 130Dの模式的断面構造は、図33に示すように表わされる。
図33に示すSiC DI MOSFET 130Dは、n- 高抵抗層からなる半導体層31と、半導体層31の表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたn+ ソース領域33と、pボディ領域32間の半導体層31の表面上に配置されたゲート絶縁膜34と、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35と、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36と、半導体層31の表面と反対側の裏面に配置されたn+ ドレイン領域37と、n+ ドレイン領域37に接続されたドレイン電極38とを備える。
図33において、SiC DI MOSFET 130Dは、pボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたn+ ソース領域33が、ダブルイオン注入(DII)で形成され、ソースパッド電極SPは、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36に接続される。
図示を省略するゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35に接続される。また、ソースパッド電極SPおよびゲートパッド電極GPは、図33に示すように、SiC DI MOSFET 130Dの表面を覆うように、パッシベーション用の層間絶縁膜39上に配置される。
SiC DI MOSFET 130Dは、図33に示すように、pボディ領域32に挟まれたn- 高抵抗層からなる半導体層31内に、破線で示されるような空乏層が形成されるため、接合型FET(JFET)効果に伴うチャネル抵抗R JFETが形成される。また、pボディ領域32/半導体層31間には、図33に示すように、ボディダイオードBDが形成される。
―SiC T MOSFET―
第1〜第6の実施の形態に係るPM1に適用可能な半導体デバイスの例であって、SiC T MOSFETの模式的断面構造は、図34に示すように表わされる。
図34に示すSiC T MOSFET 130Cは、n層からなる半導体層31Nと、半導体層31Nの表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたn+ ソース領域33と、pボディ領域32を貫通し、半導体層31Nまで形成されたトレンチ内にゲート絶縁膜34および層間絶縁膜39U・39Bを介して形成されたトレンチゲート電極35TGと、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36と、半導体層31Nの表面と反対側の裏面に配置されたn+ ドレイン領域37と、n+ ドレイン領域37に接続されたドレイン電極38とを備える。
図34において、SiC T MOSFET 130Cは、pボディ領域32を貫通し、半導体層31Nまで形成されたトレンチ内にゲート絶縁膜34および層間絶縁膜39U・39Bを介してトレンチゲート電極35TGが形成され、ソースパッド電極SPは、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36に接続される。
図示を省略するゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜34上に配置されたトレンチゲート電極35TGに接続される。また、ソースパッド電極SPおよびゲートパッド電極GPは、図34に示すように、SiC T MOSFET 130Cの表面を覆うように、パッシベーション用の層間絶縁膜39U上に配置される。
SiC T MOSFET 130Cでは、SiC DI MOSFET 130Dのような接合型FET(JFET)効果に伴うチャネル抵抗R JFETは形成されない。また、pボディ領域32/半導体層31N間には、図33と同様に、ボディダイオードBDが形成される。
(応用例)
第1〜第6の実施の形態に係るPM1を用いて構成される3相交流インバータ40Aであって、半導体デバイスとしてSiC MOSFETを適用し、電源端子PL・接地端子NL間にスナバコンデンサCを接続した回路構成例は、図35に示すように表わされる。
同様に、半導体デバイスとしてIGBTを適用し、電源端子PL・接地端子NL間にスナバコンデンサCを接続した3相交流インバータ(図示せず)を実現することもできる。
PM1を電源Eと接続し、スイッチング動作を行うと、接続ラインの有するインダクタンスLによって、SiC MOSFETやIGBTのスイッチング速度が速いため、大きなサージ電圧Ldi/dtを生ずる。例えば、電流変化di=300Aとし、スイッチングに伴う時間変化dt=100nsecとすると、di/dt=3×109(A/s)となる。
インダクタンスLの値により、サージ電圧Ldi/dtの値は変化するが、電源Eに、このサージ電圧Ldi/dtが重畳される。電源端子PL・接地端子NL間に接続されるスナバコンデンサCによって、このサージ電圧Ldi/dtを吸収することができる。
(具体例)
次に、図36を参照して、半導体デバイスとしてSiC MOSFETを適用し、第1〜第6の実施の形態に係るPM1を用いて構成した3相交流インバータ42Aについて説明する。
図36に示すように、3相交流インバータ42Aは、ゲートドライバ(GD)180に接続されたパワーモジュール部130と、3相交流モータ部51と、電源もしくは蓄電池(E)53と、コンバータ55とを備える。パワーモジュール部130は、3相交流モータ部51のU相、V相、W相に対応して、U相、V相、W相のインバータが接続されている。
ここで、GD180は、SiC MOSFET Q1・Q4、SiC MOSFET Q2・Q5、およびSiC MOSFET Q3・Q6に接続されている。
パワーモジュール部130は、電源もしくは蓄電池(E)53が接続されたコンバータ55のプラス端子(+)Pとマイナス端子(−)Nとの間に接続され、インバータ構成のSiC MOSFET Q1・Q4、Q2・Q5、およびQ3・Q6を備える。また、SiC MOSFET Q1〜Q6のソース・ドレイン間には、フリーホイールダイオードDI1〜DI6がそれぞれ逆並列に接続されている。
また、図示しないが、半導体デバイスとしてIGBTを適用し、第1〜第6の実施の形態に係るPM1を用いて構成した3相交流インバータを実現することもできる。
以上説明したように、第1〜第6の実施の形態によれば、安価であり、両面冷却構造に劣らない冷却性能を発揮できると共に、応力の低減をも同時に図ることが可能なPMを実現できる。
なお、第1〜第6の実施の形態に係るPMにおいて、半導体デバイスとして適用可能なモジュールとしては、例えば、4端子電極構造などのモールド型パワーモジュールであっても良い。
また、第1〜第6の実施の形態に係るPMに適用可能な半導体デバイスとしては、SiC系パワーデバイスに限らず、GaN系やSi系のパワーデバイスなどのワイドバンドギャップ型と称されるパワーデバイスも採用可能である。
また、樹脂モールドされたモールド型パワーモジュールに限らず、ケース型のパッケージによってパッケージングされたパワーモジュールにも適用可能である。
[第7の実施の形態における比較例]
まず、第7の実施の形態における比較例に係るパワーモジュールについて説明する。ここでは、パワーモジュールの1つとして、IGBTのようなパワー素子(チップ)を含むパワーデバイス(半導体デバイス)の外囲が樹脂でモールドされたパワーモジュールを例示する。
(片面冷却構造:空冷)
第7の実施の形態における比較例に係るパワーモジュールの模式的断面構造は、図37に示すように表される。この第7の実施の形態における比較例に係るパワーモジュールでは、片面冷却構造(空冷)を採用している。具体的には、図37に示すように、パワーモジュール107の下面に接合材106を介してヒートシンク105が配置されている。片面冷却構造(空冷)のため、冷却能力が低い。このようなパワーモジュールは、産機パワーモジュールなどに使用される。
(片面冷却構造:水冷)
第7の実施の形態における比較例に係るパワーモジュールの模式的断面構造は、図38に示すように表される。この第7の実施の形態における比較例に係るパワーモジュールでは、片面冷却構造(水冷)を採用している。具体的には、図38に示すように、パワーモジュール113の下面に接合材112を介して水冷機111が配置されている。片面冷却構造(水冷)のため、冷却能力は片面冷却構造(空冷)より高いが両面冷却構造(水冷)には劣る。このようなパワーモジュールは、現在の一般的な車載モジュールに使用される。
(両面冷却構造:水冷)
第7の実施の形態における比較例に係るパワーモジュールの模式的断面構造は、図39に示すように表される。この第7の実施の形態における比較例に係るパワーモジュールでは、両面冷却構造(水冷)を採用している。具体的には、図39に示すように、パワーモジュール123の下面に接合材122Aを介して水冷機121が配置されている。また、パワーモジュール123の上面に接合材122Bを介して水冷機124が配置されている。両面水冷のため、冷却能力は非常に高いが、冷却器が二つ必要なため、組立が難しくなるとともに非常に高価である。このようなパワーモジュールは、次世代の車載モジュールに使用される。
[第7の実施の形態]
次に、第7の実施の形態に係るパワーモジュールについて説明する。ここでも、パワーデバイスの外囲が樹脂でモールドされたパワーモジュール1を例示する。
(基本構造)
第7の実施の形態に係るパワーモジュールの模式的断面構造は、図40に示すように表される。また、図40に示されるパワーモジュールが備えるグラファイトプレート18GPの模式的断面構造は、図41に示すように表される。図中の矢印は、グラファイトプレート18GPにおける高熱伝導率の方向を表している。
図40および図41に示すように、第7の実施の形態に係るパワーモジュールは、下面(第1面)と下面に対向する上面(第2面)とを有し、後述するような動作時に発熱する半導体回路を封止するパワーモジュール1であって、パワーモジュール1の下面側に配置された水冷用の冷却器28と、冷却器28のパワーモジュール1の下面が接合された面に一方面が接合され、パワーモジュール1の上面に他方面が接合されたグラファイトプレート18GPとを備え、第2のグラファイトプレート18GP(XZ)1,18GP(XZ)2の間にパワーモジュール1が配置されている。グラファイトプレート18GPは、熱伝導配向の違う2種類のグラファイトプレート18GPが熱伝導率の高い向きで貼り合わされた構造である。
詳細については後述するが、グラファイトプレート18GPは、第1のグラファイトプレート18GP(XY)に第2のグラファイトプレート18GP(XZ)1,18GP(XZ)2が直交する向きで貼り合わされた構造をしている。ここでいう直交は、略直交であればよく、ある程度の誤差を含んでいてもよい。
また、第1のグラファイトプレート18GP(XY)は、厚み方向よりも面方向に熱伝導率が高いXY配向(第1の配向)を備えている。
また、第1のグラファイトプレート18GP(XY)は、XY配向を有する複数のグラファイトシートGSを積層してなるプレート構造を備えてもよい(図6参照)。
また、第2のグラファイトプレート18GP(XZ)1,18GP(XZ)2は、面方向よりも厚み方向に熱伝導率が高いXZ配向(第2の配向)を備えてもよい。
また、第2のグラファイトプレート18GP(XZ)1,18GP(XZ)2は、XZ配向を有する複数のグラファイトシートGSを積層してなるプレート構造を備えている(図6参照)。
また、第2のグラファイトプレート18GP(XZ)1,18GP(XZ)2の上面(一方面)は、第1のグラファイトプレート18GP(XY)に貼り合わされ、第2のグラファイトプレート18GP(XZ)1,18GP(XZ)2の下面(他方面)は、冷却器28に接合されている。
また、1つの第1のグラファイトプレート18GP(XY)の同一面に複数の第2のグラファイトプレート18GP(XZ)1,18GP(XZ)2が貼り合わされていてもよい。
また、複数のパワーモジュール11,12,13が内蔵され、複数のパワーモジュール11,12,13の各連結部に第2のグラファイトプレート18GP(XZ)3,18GP(XZ)4が配置されていてもよい(図52参照)。
また、グラファイトプレート18GPの少なくとも一部の両面にCu層5のような金属層が形成されていてもよい(図49、図52参照)。
また、パワーモジュール1は、パワー端子P,N、出力端子Oおよび信号部端子RTを有し、各端子P,N,Oの一部を除きモールド樹脂により被覆されている(図46参照)。
また、モールド樹脂の上面から上部電極1Iが露出し、モールド樹脂の下面から下部電極1Aが露出していてもよい(図53参照)。
また、上部電極1Iとグラファイトプレート18GPの接合材3Dとしてはんだまたは銀焼成が用いられているが、他の熱伝導性の良い接合材でもよい(図53参照)。
また、下部電極1Aと冷却器28の接合材3Aとしてはんだまたは銀焼成が用いられているが、他の熱伝導性の良い接合材でもよい(図53参照)。
また、グラファイトプレート18GPのパワーモジュール1の上面との接合面と反対側の面に放熱器Fが配置されていてもよい(図52参照)。
また、冷却器28は、内部に冷却液WRが流れる水冷機であり、冷却液WRとしては、例えば、水または水とエチレングリコールとを50%ずつの割合で混合させた混合液が用いられる。
また、パワーモジュール1は、Si系またはSiC系のIGBT、ダイオード、MOSFET、GaN系FETのいずれかのパワー半導体を備えている。
また、パワーモジュール1は、ワンインワンモジュール、ツーインワンモジュール、フォーインワンモジュール、シックスインワンモジュール、セブンインワンモジュール、エイトインワンモジュール、トゥエルブインワンモジュール、またはフォーティーンインワンモジュールのいずれかを構成してもよい。
また、パワーモジュール1は、シックスインワンモジュールタイプを用いてインバータまたはコンバータを構成してもよい。
また、第1の電源端子Pと第2の電源端子Nとの間に直列接続されるとともに上面(第1面)と上面に対向する下面(第2面)とを有する基板(例えば下部絶縁基板20D)の上面上に配置されたパワーデバイス1Eと、基板の下面側に配置された冷却器28とを有し、該パワーデバイス1Eの接続点を出力端子Oに接続するように構成されたパワーモジュール1であって、パワーデバイス1Eは下面(第1面)と下面に対向する上面(第2面)とを有し、冷却器28の基板の下面側と、パワーデバイス1Eの上面側とを熱的に接続するグラファイトプレート18GPを備え、グラファイトプレート18GPは、熱伝導配向の違う2種類のグラファイトプレート18GPが熱伝導率の高い向きで貼り合わされた構造である(図53参照)。
なお、図41に示す第1のグラファイトプレート18GP(XY)と第2のグラファイトプレート18GP(XZ)1,18GP(XZ)2との接合面7A,7Bは、ロウ付けで接合しているが、他の熱伝導性の良い接合法でもよい。
(グラファイトプレート)
第7の実施の形態に係るパワーモジュールにおいては、グラファイトプレート18GPとして、配向の異なる2種類のグラファイトプレートを使用している。
グラファイトプレート18GPを構成するグラファイトシート(グラフェン)GSの模式的構成(積層構造例)は、図5に示すように表わされる。
グラファイトプレート18GPには、厚み方向よりも面方向に熱伝導率が高いXY配向(第1の配向)を有する第1のグラファイトプレート18GP(XY)と、面方向よりも厚み方向に熱伝導率が高いXZ配向(第2の配向)を有する第2のグラファイトプレート18GP(XZ)とがあり、第1のグラファイトプレート18GP(XY)は図6(a)に示すように表わされ、第2のグラファイトプレート18GP(XZ)は図6(b)に示すように表わされる。
図5に示すように、n層からなる各面のグラファイトシートGS1・GS2・GS3・…・GSnは、1つの積層結晶構造の中に多数の六方晶系の共有結合を有し、各面のグラファイトシートGS1・GS2・GS3・…・GSn間がファンデルワールス力によって結合されるようになっている。
すなわち、炭素系異方伝熱材料であるグラファイトは、炭素原子の六角形網目構造の層状結晶体であって、熱伝導も異方性を持っており、図5に示すグラファイトシートGS1・GS2・GS3・…・GSnは、結晶面方向(XY面上)に対して、Z軸の厚さ方向よりも大きな熱伝導度(高い熱伝導率)を有する。
したがって、図6(a)に示すように、XY配向を有する第1のグラファイトプレート18GP(XY)は、例えば、X=1500(W/mK)程度、Y=1500(W/mK)程度、Z=5(W/mK)程度の熱伝導率を備える。
一方、図6(b)に示すように、XZ配向を有する第2のグラファイトプレート18GP(XZ)は、例えば、X=1500(W/mK)程度、Y=5(W/mK)程度、Z=1500(W/mK)程度の熱伝導率を備える。
なお、第1のグラファイトプレート18GP(XY)と第2のグラファイトプレート18GP(XZ)は、共に、密度が2.2(g/cm3 )程度であり、厚さが0.7mm〜10mm程度であり、大きさが40mm×40mm程度以下である。
[熱抵抗比較]
次に、冷却構造と熱抵抗との関係性について説明する。
(片面冷却構造)
第7の実施の形態における比較例に係る片面冷却構造のパワーモジュールの熱抵抗シミュレーションの構造モデルを示す模式的断面構造は、図42に示すように表される。また、図42に示される構造モデルのSiCチップ113Eを上から見た場合の模式的上面構成は、図43に示すように表される。
この片面冷却構造の熱抵抗シミュレーションでは、図42に示すように、例えば、SiCチップ113Eの厚さは0.35mm、銀焼成部113Dの厚さは0.06mm、Cu層113Cの厚さは1.0mm、Si3N4層113Bの厚さは0.25mm、Cu層113Aの厚さは1.0mm、SnAgはんだ112の厚さは0.2mm、冷却器(Al層)111の厚さは1.0mmとした。また、図43に示すように、例えば、SiCチップ113Eのサイズは5mm×5mm、Si3N4層113Bのサイズは15mm×15mm、冷却器(Al層)111のサイズは25mm×25mmとした。このような片面冷却構造を採用した場合、例えば、熱抵抗は0.304(℃/W)であった。
(両面冷却構造)
第7の実施の形態における比較例に係る両面冷却構造のパワーモジュールの熱抵抗シミュレーションの構造モデルを示す模式的断面構造は、図44に示すように表される。ここでも、SiCチップ123Eを上から見た場合の模式的上面構成については、図43を用いて説明する。
この両面冷却構造の熱抵抗シミュレーションでは、図44に示すように、例えば、冷却器(Al層)124の厚さは1.0mm、SnAgはんだ122Bの厚さは0.2mm、Cu層123Iの厚さは1.5mm、Si3N4層123Hの厚さは0.25mm、Cu層123Gの厚さは1.5mm、銀焼成部123Fの厚さは0.06mm、SiCチップ123Eの厚さは0.35mm、銀焼成部123Dの厚さは0.06mm、Cu層123Cの厚さは1.0mm、Si3N4層123Bの厚さは0.25mm、Cu層123Aの厚さは1.0mm、SnAgはんだ122Aの厚さは0.2mm、冷却器(Al層)121の厚さは1.0mmとした。また、図43に示すように、例えば、SiCチップ123Eのサイズは5mm×5mm、Si3N4層123Bのサイズは15mm×15mm、冷却器(Al層)121のサイズは25mm×25mmとした。更に、図示は省略しているが、例えば、SiCチップ123E上の接合部(銀焼成部123F)のサイズは3mm×3mmとした。このような両面冷却構造を採用した場合、例えば、熱抵抗は0.184(℃/W)となり、片面冷却構造に比べ40%程度減少した。
(半両面冷却構造)
第7の実施の形態に係る半両面冷却構造のパワーモジュールの熱抵抗シミュレーションの構造モデルを示す模式的断面構造は、図45に示すように表される。ここでも、SiCチップ1Eを上から見た場合の模式的上面構成については、図43を用いて説明する。
この半両面冷却構造の熱抵抗シミュレーションでは、図45に示すように、例えば、第1のグラファイトプレート18GP(XY)の厚さは1.0mm、第2のグラファイトプレート18GP(XZ)の幅は2mm、SnAgはんだ3Dの厚さは0.2mm、Cu層1Iの厚さは1.5mm、Si3N4層1Hの厚さは0.25mm、Cu層1Gの厚さは1.5mm、銀焼成部1Fの厚さは0.06mm、SiCチップ1Eの厚さは0.35mm、銀焼成部1Dの厚さは0.06mm、Cu層1Cの厚さは1.0mm、Si3N4層1Bの厚さは0.25mm、Cu層1Aの厚さは1.0mm、SnAgはんだ3A,3B,3Cの厚さは0.2mm、冷却器(Al層)2の厚さは1.0mmとした。また、図43に示すように、例えば、SiCチップ1Eのサイズは5mm×5mm、Si3N4層1Bのサイズは15mm×15mm、冷却器(Al層)2のサイズは25mm×25mmとした。更に、図示は省略しているが、例えば、SiCチップ1E上の接合部(銀焼成部1F)のサイズは3mm×3mmとした。このような半両面冷却構造を採用した場合、例えば、熱抵抗は0.209(℃/W)となり、片面冷却構造に比べ32%程度減少した。すなわち、一つの冷却器で両面冷却に近い冷却能力を有することが分かった。
以上のように、第7の実施の形態に係るパワーモジュールでは、グラファイトの異方性熱伝導率を生かして、配向の違う二つのグラファイトプレート18GPを貼り合わせ、両面冷却の2つの冷却器の役割を、冷却器(水冷機)2のみで果たさせている。そのため、例えば、1500W/m・K程度の高い熱伝導率でXY方向に熱を拡げ、また、1500W/m・K程度の高い熱伝導率でパワーモジュールの上部までほぼ冷却器28の温度になる。これにより、一つの冷却器28で模擬的に両面冷却器に匹敵する冷却能力を有することが可能となる。
なお、接合材3A,3B,3C,3Dは、はんだや銀焼成に限定されるものではなく、コンパウンドやグリースでもよい。ただし、コンパウンドやグリースを用いた場合は熱抵抗が大きくなるため、はんだや銀焼成を用いるのが望ましい。
[具体例]
次に、第7の実施の形態に係るパワーモジュールの具体例について説明する。
第7の実施の形態に係るパワーモジュールの具体例を示す模式的平面パターン構成は、図46(a)に示すように表わされる。また、図46(a)のVIII−VIII線に沿う模式的断面構造は、図46(b)に示すように表わされる。更に、図46(a)に示されるパワーモジュールの模式的右側面構成は、図46(c)に示すように表される。ここでいう「右側面」とは、端子のない側から見た側面である。
このパワーモジュールにおいては、パワーデバイスとして、図30に示す2 in 1モジュールタイプのパワーモジュールを採用している。具体的には、図46に示すように、パワーデバイスが封止されたパワーモジュール1を備え、パワーデバイスへ電源を供給するパワー端子P,Nと、パワーデバイスからの出力を行う出力端子Oと、パワーデバイスの動作を制御する信号部端子RTとを有する。信号部端子RTは、折り曲げてゲートドライブと接続される。パワー端子P,N、出力端子Oおよび信号部端子RTの一部を除きモールド樹脂により被覆されていてもよい。
この例では、第1のグラファイトプレート18GP(XY)は、パワーモジュール1の上面よりも大きいサイズとし、第2のグラファイトプレート18GP(XZ)1,18GP(XZ)2は、パワーモジュール1と同程度の高さとしている。このようなグラファイトプレート18GPによれば、パワーモジュール1の上面側を効果的に冷却することが可能である。
また、第1のグラファイトプレート18GP(XY)の両端部に第2のグラファイトプレート18GP(XZ)1,18GP(XZ)2を貼り合せている。これにより、冷却器28と接合されたループ状のグラファイトプレート18GPが構成され、そのループの内側にパワーモジュール1を配置することができる。このようなグラファイトプレート18GPによれば、高い熱伝導率でXY方向およびXZ方向に熱を拡げ、高い冷却能力を発揮することが可能である。
もちろん、第1のグラファイトプレート18GP(XY)および第2のグラファイトプレート18GP(XZ)1,18GP(XZ)2のサイズ、数、形状、位置関係等は適宜変更することが可能である。例えば、図46(b)に示すように、第1のグラファイトプレート18GP(XY)のX方向における両端部は、第2のグラファイトプレート18GP(XZ)1,18GP(XZ)2よりも外方に向けて僅かに突出していてもよいし、第2のグラファイトプレート18GP(XZ)の端面が第1のグラファイトプレート18GP(XY)の外側の面と面一になる
ようにしても良い。
[変形例]
次に、第7の実施の形態に係るパワーモジュールの変形例について説明する。
(応力低減構造)
第7の実施の形態に係るパワーモジュールの模式的断面構造は、図47(a)に示すように表される。また、図47(a)中の表示Aの部分を拡大した拡大断面構造は、図47(b)に示すように表される。
パワーモジュール1自体の合成的な熱膨張率(CTE)は、モールドの樹脂が支配的になるため、図47(b)中に示す表示Bの部分に最もストレスがかかる。表示Bの部分とは、パワーモジュール1とグラファイトプレート18GPとを接合する接合材3Dのグラファイトプレート18GPとの接合部分(以下、単に「接合部」という。)である。接合部にかかるミーゼス応力は、以下の定義式により求めることができる。
ここで、ミーゼス応力とは、物体内部に生じる応力状態を単一の値で示すために用いられる相当応力の1つである。定義式中のσ1は最大主応力、σ2は中間主応力、σ3は最小主応力である。ここでは、各主応力σ1、σ2、σ3は、接合部に作用するX方向の主応力、Y方向の主応力、Z方向の主応力の中から選択される。
第7の実施の形態に係るパワーモジュールが備えるグラファイトプレート18GPの変形例を示す模式的断面構造は、図48に示すように表される。図48に示すように、グラファイトプレート18GPの両面にグラファイトプレート18GPよりも薄いCu層5が形成されている。ここでは、Cu層5を例示しているが、Cuに代えて、その他の金属やセラミックなどを採用してもよい。
図48に示されるグラファイトプレート18GPを用いたパワーモジュールの模式的断面構造は、図49に示すように表される。図49に示すように、第1のグラファイトプレート18GP(XY)の上面および下面にCu層5Aが形成されている。また、第2のグラファイトプレート18GP(XZ)1,18GP(XZ)2の側面にCu層5B1,5C1が形成されている。これにより、パワーモジュール1の合成的なCTEに合わせることで、接合部にかかるミーゼス応力を低減することが可能となる。
図48に示されるグラファイトプレート18GPを用いた別のパワーモジュールの模式的断面構造は、図52に示すように表される。図49と異なる点は、第2のグラファイトプレート18GP(XZ)1,18GP(XZ)2の上面および下面にCu層5B2,5C2が形成されている点である。この場合も、パワーモジュール1の合成的なCTEに合わせることで、接合部にかかるミーゼス応力を低減することが可能となる。
(放熱器)
第7の実施の形態に係るパワーモジュールの変形例を示す模式的断面構造は、図52に示すように表される。図52に示すように、第1のグラファイトプレート18GP(XY)上に金属、セラミック、グラファイトなどからなる放熱器(フィン)Fが配置されていてもよい。これにより、第1のグラファイトプレート18GP(XY)の上面からも放熱を行うことができるため、より冷却能力を高めることが可能である。
(6in1モジュール)
第7の実施の形態に係るパワーモジュールの変形例を示す模式的平面パターン構成は、図52(a)に示すように表わされる。また、図52(a)のIX−IX線に沿う模式的断面構造は、図52(b)に示すように表わされる。
このパワーモジュールにおいては、パワーデバイスとして、6 in 1 (シックスインワン)モジュールタイプのパワーモジュールを採用している。具体的には、図52に示すように、パワーデバイスが封止されたパワーモジュール11,12,13を備え、パワーデバイスへ電源を供給するパワー端子(P1,N1),(P2,N2),(P3,N3)と、パワーデバイスからの出力を行う出力端子O1,O2,O3と、パワーデバイスの動作を制御する信号部端子RT1,RT2,RT3とを有する。信号部端子RT1,RT2,RT3は、折り曲げてゲートドライブ回路と接続される。パワー端子(P1,N1),(P2,N2),(P3,N3)、出力端子O1,O2,O3および信号部端子RT1,RT2,RT3の一部を除きモールド樹脂により被覆されている。
このような6 in 1モジュールタイプにおいては、第1のグラファイトプレート18GP(XY)がX方向に長くなる。そのため、第1のグラファイトプレート18GP(XY)の両端部に第2のグラファイトプレート18GP(XZ)1,18GP(XZ)2を貼り合せるだけでなく、パワーモジュール11,12,13の各連結部にも第2のグラファイトプレート18GP(XZ)3,18GP(XZ)4を貼り合せるのが望ましい。これにより、4つの第2のグラファイトプレート18GP(XZ)1,18GP(XZ)2,18GP(XZ)3,18GP(XZ)4を通じて熱が伝導するため、2 in 1モジュールタイプと比べても冷却能力が低下しない。また、パワーモジュール11,12,13の各連結部に第2のグラファイトプレート18GP(XZ)3,18GP(XZ)4を貼り合せるようにしているため、各パワーモジュール11,12,13をむらなく冷却できる効果もある。このようなパワーモジュールは、エアコン等のインバータ回路または電源装置等のコンバータ回路に適用するのが好適である。
なお、第7の実施の形態に係るパワーモジュールにおいては、パワーデバイスとして、2 in 1モジュールタイプと6 in 1モジュールタイプに適用した場合について説明したが、これに限らず、例えば1 in 1(ワンインワン)モジュールタイプのパワーモジュールや、4 in 1(フォーインワン)モジュールタイプのパワーモジュール、6 in 1モジュールにスナバコンデンサなどを備えた7 in 1(セブンインワン)モジュールタイプのパワーモジュール、8 in 1(エイトインワン)モジュールタイプのパワーモジュール、12 in 1(トゥエルブインワン)モジュールタイプのパワーモジュール、14 in 1(フォーティーンインワン)モジュールタイプのパワーモジュールなどにも適用できる。
[詳細な断面構造例]
次に、第7の実施の形態に係るパワーモジュールの詳細な断面構造例について説明する。なお、以下では、図45に示されるパワーモジュールに対応する各部については同じ符号を用いて説明することにする。
(詳細な断面構造例1)
第7の実施の形態に係るパワーモジュールの詳細な断面構造は、図53に示すように表される。図53に示すように、第7の実施の形態に係るパワーモジュールは、セラミックス基板1Bの両面に設けられた電極パターン1A・1Cを有する下部絶縁基板20Dと、電極パターン1C上に接合材1Dを介して配置されるパワーデバイス1Eと、パワーデバイス1E上に接合材1Fを介して配置される金属1Jと、接合材1Kを介して金属1Jと対向して配置され、セラミックス基板1Hの両面に設けられた電極パターン1G・1Iを有する上部絶縁基板20Uと、下部絶縁基板20Dの電極パターン1A上に接合材3Aを介して配置される冷却器28と、上部絶縁基板20Uの電極パターン1I上に接合材3Dを介して配置される第1のグラファイトプレート18GP(XY)と、上面が第1のグラファイトプレート18GP(XY)に直交する向きで貼り合わされ、下面が接合材3B,3Cを介して冷却器28に接合される第2のグラファイトプレート18GP(XZ)1,18GP(XZ)2とを備え、モールド樹脂6の上面から電極パターン(上部電極)1Iが露出し、モールド樹脂6の下面から電極パターン(下部電極)1Aが露出している。すなわち、モールド樹脂6の上面および下面から金属が露出しているため、はんだや銀焼成などの接合材3D,3Aを用いて第1のグラファイトプレート18GP(XY)および冷却器28と強固に接合することができる。
なお、セラミックス基板1B・1Hは、例えばSiN層,AlN層などである。電極パターン1A・1C・1G・1Iは、例えばCu層,Al層などである。パワーデバイス1Eは、例えばSiCチップやSiによるIGBTなどである。金属1Jは、例えばCu層,CuMo層などである。
(詳細な断面構造例2)
第7の実施の形態に係る別のパワーモジュールの詳細な断面構造は、図54に示すように表される。図53と異なる点は、第1のグラファイトプレート18GP(XY)の両面にCu層5Aが形成されている点である。既に説明した通り、Cuに代えて、その他の金属やセラミックなどを採用してもよい。このようなパワーモジュールによれば、パワーモジュール1の合成的なCTEに合わせることで、接合部にかかるミーゼス応力を低減することが可能となる。
もちろん、このようなパワーモジュールにおいても、図49を用いて説明したように、第2のグラファイトプレート18GP(XZ)1,18GP(XZ)2の側面にCu層5B1,5C1が形成されていてもよい。また、図52を用いて説明したように、第2のグラファイトプレート18GP(XZ)1,18GP(XZ)2の上面および下面にCu層5B2,5C2が形成されていてもよい。
[半導体デバイスの具体例]
第7の実施の形態に係るパワーモジュールであって、半導体デバイス(パワーデバイス)として適用可能な1 in 1モジュール50のSiC MOSFETの模式的回路表現は、図28に示すように表される。
図28には、MOSFET Qに逆並列接続されるダイオードDIが示されている。MOSFET Qの主電極は、ドレイン端子DTおよびソース端子STで表される。また、第7の実施の形態に係るパワーモジュールであって、半導体デバイスとして適用可能な1 in 1モジュール50のIGBTを(図示せず)を実現することもできる。
また、第7の実施の形態に係るパワーモジュールであって、半導体デバイスとして適用可能な1 in 1モジュール50のSiC MOSFETの詳細回路表現は、図29に示すように表される。
第7の実施の形態に係るパワーモジュールは、例えば、複数個の半導体デバイスが1 in 1モジュール50の構成を備える。すなわち、1種のMOSFET Qチップが1つのモジュールに複数個並列に接続されて内蔵されている。一例として、5チップ(MOSFET×5)搭載可能であり、それぞれのMOSFET Qは、5個まで並列接続可能である。なお、5チップの内、一部をダイオードDI用として搭載することも可能である。
さらに詳細には、図29に示すように、MOSFET Qに並列にセンス用MOSFET Qsが接続される。センス用MOSFET Qsは、MOSFET Qと同一チップ内に、微細トランジスタとして形成されている。
図29において、SSは、ソースセンス端子、CSは、電流センス端子であり、Gは、ゲート信号端子である。なお、第7の実施の形態においても、半導体デバイスQには、センス用MOSFET Qsが同一チップ内に、微細トランジスタとして形成されていても良い。
(回路構成)
次に、第7の実施の形態に係るパワーモジュールにおいて、半導体デバイスの回路構成例について、より具体的に説明する。
ここでは、第7の実施の形態に係るパワーモジュールの半導体デバイスとして適用可能なモジュールであって、2種類の半導体デバイスQ1・Q4が1つのモールド樹脂内に封止された半導体パッケージ装置、いわゆる2 in 1タイプのモジュールについて説明する。
半導体デバイスQ1・Q4として、SiC MOSFETを適用した2 in 1モジュール130Aの回路構成は、例えば図30に示すように表わされる。
すなわち、2 in 1モジュール130Aは、図30に示すように、2種類のSiC MOSFET Q1・Q4が各パワーデバイスへ電源を供給するパワー端子P,Nとの間に直列接続され、その接続点が出力端子Oに接続され、各パワーデバイスの動作を制御するための信号が信号部端子G1,G2に接続されるように1つのモジュールとして内蔵された、ハーフブリッジ内蔵モジュールの構成を備える。
ここで、モジュールは、1つの大きなトランジスタとみなすことができるが、1チップ内に複数のトランジスタセルを並列接続したトランジスタチップが1チップまたは複数チップを並列接続する場合がある。すなわち、モジュールには、1 in 1、2 in 1、4 in 1、6 in 1などがあり、例えば、1つのモジュール上において、2個分のトランジスタ(チップ)を内蔵したモジュールは2 in 1、2 in 1を2組み内蔵したモジュールは4 in 1、2 in 1を3組み内蔵したモジュールは6 in 1と呼ばれている。
図30に示すように、2 in 1モジュール130Aは、2個のSiC MOSFET Q1・Q4と、SiC MOSFET Q1・Q4に逆並列接続されるダイオードDI1・DI4が1つのモジュールとして内蔵されている。
図30において、G1は、SiC MOSFET Q1のゲート信号用のリード端子であり、S1は、SiC MOSFET Q1のソース信号用のリード端子である。同様に、G4は、SiC MOSFET Q4のゲート信号用のリード端子であり、S4は、SiC MOSFET Q4のソース信号用のリード端子である。
また、Pは、正側電源入力端子電極であり、Nは、負側電源入力端子電極であり、Oは、出力端子電極である。
また、第7の実施の形態に係るパワーモジュールの半導体デバイスとして適用可能なモジュールであって、半導体デバイスQ1・Q4として、IGBTを適用した2 in 1モジュール(図示せず)を実現することもできる。
また、Pは、正側電源入力端子電極であり、Nは、負側電源入力端子電極であり、Oは、出力端子電極である。
第7の実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスQ2・Q5、および半導体デバイスQ3・Q6についても同様である。
(デバイス構造)
第7の実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスQ1・Q4の例であって、ソースパッド電極SP、ゲートパッド電極GPを含むSiC MOSFET 130Aの模式的断面構造は、図31に示すように表わされる。
図31に示すように、SiC MOSFET 130Aは、n- 高抵抗層からなる半導体層31と、半導体層31の表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたソース領域33と、pボディ領域32間の半導体層31の表面上に配置されたゲート絶縁膜34と、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35と、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36と、半導体層31の表面と反対側の裏面に配置されたn+ ドレイン領域37と、n+ ドレイン領域37に接続されたドレイン電極38とを備える。
ゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35に接続され、ソースパッド電極SPは、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36に接続される。また、ゲートパッド電極GPおよびソースパッド電極SPは、図31に示すように、SiC MOSFET 130Aの表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜39上に配置される。
なお、ゲートパッド電極GPおよびソースパッド電極SPの下方の半導体層31内には、図示していないが、微細構造のトランジスタ構造が形成されていても良い。
さらに、図31に示すように、中央部のトランジスタ構造においても、パッシベーション用の層間絶縁膜39上にソースパッド電極SPが延在して配置されていても良い。
図31において、SiC MOSFET 130Aは、プレーナゲート型のnチャネル縦型SiC MOSFETで構成されているが、後述する図34に示すように、トレンチゲート型のnチャネル縦型SiC T(Trench) MOSFET 130Cなどで構成されていても良い。
または、第7の実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスQ1・Q4としては、SiC MOSFET 130Aの代わりに、GaN系FETなどを採用することもできる。
第7の実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスQ2・Q5、および半導体デバイスQ3・Q6についても同様である。
さらには、第7の実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスQ1〜Q6には、バンドギャップエネルギーが、例えば、1.1eV〜8eVのワイドバンドギャップ型と称される半導体を用いることができる。
同様に、第7の実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスQ1・Q4の例であって、エミッタパッド電極EP、ゲートパッド電極GPを含むIGBT 130Bの模式的断面構造は、図32に示すように表わされる。
図32に示すように、IGBT 130Bは、n- 高抵抗層からなる半導体層31と、半導体層31の表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたエミッタ領域33Eと、pボディ領域32間の半導体層31の表面上に配置されたゲート絶縁膜34と、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35と、エミッタ領域33Eおよびpボディ領域32に接続されたエミッタ電極36Eと、半導体層31の表面と反対側の裏面に配置されたp+ コレクタ領域37Pと、p+ コレクタ領域37Pに接続されたコレクタ電極38Cとを備える。
ゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35に接続され、エミッタパッド電極EPは、エミッタ領域33Eおよびpボディ領域32に接続されたエミッタ電極36Eに接続される。また、ゲートパッド電極GPおよびエミッタパッド電極EPは、図32に示すように、IGBT 130Bの表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜39上に配置される。
なお、ゲートパッド電極GPおよびエミッタパッド電極EPの下方の半導体層31内には、図示していないが、微細構造のIGBT構造が形成されていても良い。
さらに、図32に示すように、中央部のIGBT構造においても、パッシベーション用の層間絶縁膜39上にエミッタパッド電極EPが延在して配置されていても良い。
図32において、IGBT 130Bは、プレーナゲート型のnチャネル縦型IGBTで構成されているが、トレンチゲート型のnチャネル縦型IGBTなどで構成されていても良い。
第7の実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスQ2・Q5、および半導体デバイスQ3・Q6についても同様である。
半導体デバイスQ1〜Q6としては、SiC DI MOSFET、SiC T MOSFETなどのSiC系パワーデバイス、或いはGaN系HEMTなどのGaN系パワーデバイスを適用可能である。また、場合によっては、Si系MOSFETやIGBTなどのパワーデバイスも適用可能である。
―SiC DI MOSFET―
第7の実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスの例であって、SiC DI MOSFET 130Dの模式的断面構造は、図33に示すように表わされる。
図33に示すSiC DI MOSFET 130Dは、n- 高抵抗層からなる半導体層31と、半導体層31の表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたn+ ソース領域33と、pボディ領域32間の半導体層31の表面上に配置されたゲート絶縁膜34と、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35と、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36と、半導体層31の表面と反対側の裏面に配置されたn+ ドレイン領域37と、n+ ドレイン領域37に接続されたドレイン電極38とを備える。
図33において、SiC DI MOSFET 130Dは、pボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたn+ ソース領域33が、ダブルイオン注入(DII)で形成され、ソースパッド電極SPは、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36に接続される。
図示を省略するゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35に接続される。また、ソースパッド電極SPおよびゲートパッド電極GPは、図33に示すように、SiC DI MOSFET 130Dの表面を覆うように、パッシベーション用の層間絶縁膜39上に配置される。
SiC DI MOSFET 130Dは、図33に示すように、pボディ領域32に挟まれたn- 高抵抗層からなる半導体層31内に、破線で示されるような空乏層が形成されるため、接合型FET(JFET)効果に伴うチャネル抵抗R JFETが形成される。また、pボディ領域32/半導体層31間には、図33に示すように、ボディダイオードBDが形成される。
―SiC T MOSFET―
第7の実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスの例であって、SiC T MOSFETの模式的断面構造は、図34に示すように表わされる。
図34に示すSiC T MOSFET 130Cは、n層からなる半導体層31Nと、半導体層31Nの表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたn+ ソース領域33と、pボディ領域32を貫通し、半導体層31Nまで形成されたトレンチ内にゲート絶縁膜34および層間絶縁膜39U・39Bを介して形成されたトレンチゲート電極35TGと、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36と、半導体層31Nの表面と反対側の裏面に配置されたn+ ドレイン領域37と、n+ ドレイン領域37に接続されたドレイン電極38とを備える。
図34において、SiC T MOSFET 130Cは、pボディ領域32を貫通し、半導体層31Nまで形成されたトレンチ内にゲート絶縁膜34および層間絶縁膜39U・39Bを介してトレンチゲート電極35TGが形成され、ソースパッド電極SPは、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36に接続される。
図示を省略するゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜34上に配置されたトレンチゲート電極35TGに接続される。また、ソースパッド電極SPおよびゲートパッド電極GPは、図34に示すように、SiC T MOSFET 130Cの表面を覆うように、パッシベーション用の層間絶縁膜39U上に配置される。
SiC T MOSFET 130Cでは、SiC DI MOSFET 130Dのような接合型FET(JFET)効果に伴うチャネル抵抗R JFETは形成されない。また、pボディ領域32/半導体層31N間には、図33と同様に、ボディダイオードBDが形成される。
(応用例)
第7の実施の形態に係るパワーモジュールを用いて構成される3相交流インバータ40Aであって、半導体デバイスとしてSiC MOSFETを適用し、電源端子PL・接地端子NL間にスナバコンデンサCを接続した回路構成例は、図35に示すように表わされる。
同様に、半導体デバイスとしてIGBTを適用し、電源端子PL・接地端子NL間にスナバコンデンサCを接続した3相交流インバータ(図示せず)を実現することもできる。
パワーモジュールを電源Eと接続し、スイッチング動作を行うと、接続ラインの有するインダクタンスLによって、SiC MOSFETやIGBTのスイッチング速度が速いため、大きなサージ電圧Ldi/dtを生ずる。例えば、電流変化di=300Aとし、スイッチングに伴う時間変化dt=100nsecとすると、di/dt=3×109(A/s)となる。
インダクタンスLの値により、サージ電圧Ldi/dtの値は変化するが、電源Eに、このサージ電圧Ldi/dtが重畳される。電源端子PL・接地端子NL間に接続されるスナバコンデンサCによって、このサージ電圧Ldi/dtを吸収することができる。
(具体例)
次に、図36を参照して、半導体デバイスとしてSiC MOSFETを適用し、第7の実施の形態に係るパワーモジュールを用いて構成した3相交流インバータ42Aについて説明する。
図36に示すように、3相交流インバータ42Aは、ゲートドライバ(GD)180に接続されたパワーモジュール部130と、3相交流モータ部51と、電源もしくは蓄電池(E)53と、コンバータ55とを備える。パワーモジュール部130は、3相交流モータ部51のU相、V相、W相に対応して、U相、V相、W相のインバータが接続されている。
ここで、GD180は、SiC MOSFET Q1・Q4、SiC MOSFET Q2・Q5、およびSiC MOSFET Q3・Q6に接続されている。
パワーモジュール部130は、電源もしくは蓄電池(E)53が接続されたコンバータ55のプラス端子(+)Pとマイナス端子(−)Nとの間に接続され、インバータ構成のSiC MOSFET Q1・Q4、Q2・Q5、およびQ3・Q6を備える。また、SiC MOSFET Q1〜Q6のソース・ドレイン間には、フリーホイールダイオードDI1〜DI6がそれぞれ逆並列に接続されている。
また、図示しないが、半導体デバイスとしてIGBTを適用し、第7の実施の形態に係るパワーモジュールを用いて構成した3相交流インバータを実現することもできる。
以上説明したように、第7の実施の形態によれば、一つの冷却器で両面冷却に近い冷却能力を有する安価なパワーモジュールおよびグラファイトプレートを提供することができる。
なお、第7の実施の形態に係るパワーモジュールにおいて、半導体デバイスとして適用可能なモジュールとしては、例えば、4端子電極構造などのモールド型パワーモジュールであっても良い。
また、第7の実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスとしては、SiC系パワーデバイスに限らず、Si系パワーデバイスや、GaN系などのワイドバンドギャップ型と称されるパワーデバイスも採用可能である。
また、樹脂モールドされたモールド型パワーモジュールに限らず、ケース型のパッケージによってパッケージングされたパワーモジュールにも適用可能である。
[第8〜第14の実施の形態における基本技術]
第8〜第14の実施の形態に係るパワーモジュールを説明する前に、基礎となる基本技術について簡単に説明する。なお、ここでは、パワー素子系の半導体デバイス(パワーデバイス)として、SiC MOSFETを適用した場合を例に説明する。
第8〜第14の実施の形態に係るパワーモジュール(PM)11の基礎となる基本技術に係るPM11であって、半導体デバイスにSiC MOSFET Q1を適用した1 in 1モジュールの模式的断面構造は、図55に示すように表わされ、PM11の模式的回路構成は、図56に示すように表わされる。
また、第8〜第14の実施の形態の基本技術に係るPM11であって、半導体デバイスとしてSiC MOSFET Q1・Q4を適用した2 in 1モジュールの模式的平面パターン構成は、図57(a)に示すように表わされ、図57(a)の表示11A部分(要部)の拡大構成は、図57(b)に示すように表わされる。
なお、基本的な構成に関しては、2 in 1モジュールも1 in 1モジュールもほぼ同様なので、ここでは図55に示した1 in 1モジュールを参照して具体的に説明し、2 in 1モジュールについては簡単な説明にとどめる。
図55に示すように、基本技術に係る1 in 1モジュールタイプのPM11は、セラミックス基板21と、セラミックス基板21の上面側に設けられたドレイン電極パターン25D1およびソース電極パターン25S1とソース信号電極パターンSL1およびゲート信号電極パターンGL1と、セラミックス基板21の下面側に設けられた裏面電極パターン23Rとを有する絶縁基板20を備える。
ここで、図55において、絶縁基板20の上側をU(UP)側、絶縁基板20の下側をD(DOWN)側と定義する。この定義は、以降に示す全ての図面に適用する。
1 in 1モジュールタイプのPM11は、図55に示すように、ドレイン電極パターン25D1上にフェイスアップで配置されるSiC MOSFET Q1を半導体デバイスとして備える。SiC MOSFET Q1は、表面側に、ソースパッド電極SP1、ソースセンスパッド電極SSP1およびゲートパッド電極GP1を有し、裏面側に、ドレイン電極38を備える。
また、1 in 1モジュールタイプのPM11は、図55に示すように、SiC MOSFET Q1のソースパッド電極SP1とソース電極パターン25S1との間に接続されて、ソースパワーライン配線用の主配線となるリードフレームSM1を備える。
また、1 in 1モジュールタイプのPM11は、図55に示すように、ソースセンスパッド電極SSP1をソース信号電極パターンSL1に接続するソースセンス用ボンディングワイヤSSW1と、ゲートパッド電極GP1をゲート信号電極パターンGL1に接続するゲート信号用ボンディングワイヤGW1とを備える。
1 in 1モジュールタイプのPM11では、ソース信号電極パターンSL1に接続されるソースセンス用ボンディングワイヤSSW1の、SiC MOSFET Q1上でのワイヤ・ボンディング部の位置が、SiC MOSFET Q1のソースセンスパッド電極SSP1上となっている。すなわち、基本技術に係るPM11では、図56に示すように、ソースセンス用ボンディングワイヤSSW1がSiC MOSFET Q1により近い、リードフレームSM1の内側に接続される。
このため、半導体デバイスとして、例えばSiC MOSFET Q1が適用されるPM11においては、SiC MOSFET Q1の高温になる動作による熱の影響でソースセンスパッド電極SSP1の温度が大きく上昇し、ソースセンスパッド電極SSP1とソースセンス用ボンディングワイヤSSW1との接合界面への応力集中やソースセンス用ボンディングワイヤSSW1内の局所的な粒径変化などから、ソースセンス用ボンディングワイヤSSW1の接続性を劣化させる。
なお、ゲート信号用ボンディングワイヤGW1の場合は、ボンディングされるゲートパッド電極GP1の直下には、基本的にMOSFET構造のセルが存在せず、そこでの温度上昇がソースセンスパッド電極SSP1に比べて大きくないため、劣化が抑制される。
基本技術に係る2 in 1モジュールタイプのPM11の場合も同様に、図57(a)および図57(b)に示すように、ソース信号電極パターンSL1・SL4に接続されるソースセンス用ボンディングワイヤSSW1・SSW4の、SiC MOSFET Q1・Q4上でのワイヤ・ボンディング部の位置が、SiC MOSFET Q1においてはソースセンスパッド電極SSP1(図示省略)上となっており、SiC MOSFET Q4においてはソースセンスパッド電極SSP4上となっているため、ソースセンス用ボンディングワイヤSSW1・SSW4の接続性の劣化が課題となっている。
このように、高温動作するSiC MOSFET Qが半導体デバイスとして搭載されるPM11においては、ソースセンス用ボンディングワイヤSSWの接続性の劣化が問題となる。
[第8の実施の形態]
第8の実施の形態に係るPM1の模式的断面構造は、図58(a)に示すように表わされ、PM1の模式的回路構成は、図58(b)に示すように表わされる。また、第8の実施の形態に係るPM1に適用可能な半導体デバイスの模式的平面パターン構成は、図59に示すように表わされる。
なお、ここでは、パワー素子系の半導体デバイス(パワーデバイス)として、SiC MOSFET Q1を適用した1 in 1モジュールを例に説明する。
図58(a)および図58(b)に示すように、第8の実施の形態に係るPM1は、SiN系のセラミックス基板21と、セラミックス基板21の上面(U)側に設けられたCu箔などのドレイン電極パターン(第2主電極パターン)25D1およびソース電極パターン(第1主電極パターン)25S1とソース信号電極パターン(信号配線パターン)SL1およびゲート信号電極パターン(制御信号配線パターン)GL1と、セラミックス基板21の下面(D)側に設けられたCu箔などの裏面電極パターン23Rと、を有する絶縁基板20を備える。
ここで、図58(b)に示すように、ソース信号電極パターンSL1には、ソースセンス端子SS1(SST1)が、ゲート信号電極パターンGL1には、ゲート端子G1(GT1)が、それぞれ接続される。
また、第8の実施の形態に係るPM1は、ドレイン電極パターン25D1上に配置されるSiC MOSFET Q1を半導体デバイスとして備える。SiC MOSFET Q1は、例えば図59に示すように、SiC MOSFET Q1の表面上において、2個のソースパッド電極(主パッド電極)SP1と、1個のゲートパッド電極(制御パッド電極)GP1と、1個のカレントセンスパッド電極CS1と、1個のソースセンスパッド電極SSP1とを備え、周辺部および中央部には、ゲートフィンガー電極GFが配置されている。
ソースパッド電極SP1、ゲートパッド電極GP1、カレントセンスパッド電極CS1、およびソースセンスパッド電極SSP1の表面を除く、SiC MOSFET Q1の表面上には、ポリイミド樹脂などで形成される表面保護膜PEが配置されている。
また、図59では、図示を省略しているが、SiC MOSFET Q1の表面側に対向する裏面側にはドレイン電極(主電極)38を備える。
なお、他の構成例として、必ずしも2個のソースパッド電極SP1が必要なわけではなく、1個のソースパッド電極SP1を備えた構成であっても良い。また、ソースセンスパッド電極SSP1は省略することが可能である。
SiC MOSFET Q1は、図58(a)に示すように、ドレイン電極38が銀焼成やはんだなどの接合部材27を用いてドレイン電極パターン25D1に接合されることによって、絶縁基板20上にフェイスアップで実装されている。
また、第8の実施の形態に係るPM1は、SiC MOSFET Q1のソースパッド電極SP1とソース電極パターン25S1との間に接続されて、ソースパワーライン配線用の主配線となるリードフレームSM1を備える。リードフレームSM1は、寄生インダクタンスLsmと寄生抵抗Rsmとを備える。
リードフレームSM1としては、Cu、Al、クラッド材(例えば、Cu/インバー/Cuの積層体)、若しくはCuMoのいずれかを備える。
リードフレームSM1のソース電極パターン25S1との接続、およびリードフレームSM1のソースパッド電極SP1との接続には、接合部材27が用いられる。
なお、以下の説明では、ソースパッド電極SP1とリードフレームSM1との接合部をデバイス側接合部(第1接合部)DCとし、デバイス側接合部DCと離隔し、デバイス側接合部DCよりも発熱の影響が小さくて相対的に温度が低いリードフレームSM1とソース電極パターン25S1との接合部を、ランド側接合部(第2接合部)SCとする。
図58(a)に示すように、第8の実施の形態に係るPM1の場合、ソース電極パターン25S1とソース信号電極パターンSL1との間にドレイン電極パターン25D1が位置し、ランド側接合部SCよりも、ソース信号電極パターンSL1に近接してデバイス側接合部DCが配置されている。
第8の実施の形態に係るPM1は、ランド側接合部SC側において、リードフレームSM1をソース信号電極パターンSL1に接続するソースセンス用ボンディングワイヤ(第1ボンディングワイヤ)SSW1と、デバイス側接合部DC側において、ゲートパッド電極GP1をゲート信号電極パターンGL1に接続するゲート信号用ボンディングワイヤ(第2ボンディングワイヤ)GW1とを備える。
すなわち、第8の実施の形態に係るPM1では、図58(b)に示すように、ソースセンス用ボンディングワイヤSSW1が、SiC MOSFET Q1により遠い、ランド側接合部SC側(リードフレームSM1のSiC MOSFET Q1から見て外側)に接続される。
ソースセンス用ボンディングワイヤSSW1およびゲート信号用ボンディングワイヤGW1は、Al、Cu、クラッド材、またはこれらを1つ以上有する合金を備える。
ソースセンス用ボンディングワイヤSSW1は、φ=150μm程度のワイヤ径を備えてウエッジボンディングされ、ゲート信号用ボンディングワイヤGW1は、φ=150μm程度のワイヤ径を備えてウエッジボンディングされる。
そして、第8の実施の形態に係るPM1は、SiC MOSFET Q1の外囲が全体的にモールド樹脂によって封止(樹脂モールド)されてモールド型パッケージタイプのパワーモジュール、若しくは、ケース内に収納されてケース型パッケージタイプのパワーモジュールとなる。
なお、上記した第8の実施の形態に係るPM1では、ランド側接合部SC側において、ソースセンス用ボンディングワイヤSSW1をリードフレームSM1と接続するようにしたが、ソースセンス用ボンディングワイヤSSW1はソース電極パターン25S1と接続するようにしても良い(後述する他の実施の形態においても同様である)。
すなわち、第8の実施の形態に係るPM1は、ソース電極パターン25S1およびソース信号電極パターンSL1を有するセラミックス基板21と、表面にソースパッド電極SP1を有し、セラミックス基板21上に配置されるSiC MOSFET Q1と、ソースパッド電極SP1とソース電極パターン25S1との間に接続されたリードフレームSM1と、リードフレームSM1とソースパッド電極SP1とのデバイス側接合部DCと離隔し、リードフレームSM1とソース電極パターン25S1とのランド側接合部SCと、ランド側接合部SCとソース信号電極パターンSL1との間に接続されたソースセンス用ボンディングワイヤSSW1とを備え、ランド側接合部SCは、デバイス側接合部DCよりも半導体デバイス動作時における温度が相対的に低い。
また、第8の実施の形態に係るPM1は、絶縁性のセラミックス基板21と、セラミックス基板21上に配置されたソース電極パターン25S1、ドレイン電極パターン25D1、ソース信号電極パターンSL1およびゲート信号電極パターンGL1とを備える絶縁基板20と、表面側にソースパッド電極SP1およびゲートパッド電極GP1を有すると共に、裏面側にドレイン電極38を有し、ドレイン電極パターン25D1上にフェイスアップで配置されたSiC MOSFET Q1と、ソースパッド電極SP1とソース電極パターン25S1との間に接続されたリードフレームSM1と、リードフレームSM1とソースパッド電極SP1とのデバイス側接合部DCと離隔し、デバイス側接合部DCよりも半導体デバイス動作時における温度が相対的に低いリードフレームSM1とソース電極パターン25S1とのランド側接合部SCと、ソース信号電極パターンSL1との間に接続されたソースセンス用ボンディングワイヤSSW1と、ゲートパッド電極GP1とゲート信号電極パターンGL1との間に接続されたゲート信号用ボンディングワイヤGW1とを備え、ソースセンス用ボンディングワイヤSSW1は、一端が、ソース信号電極パターンSL1に接続され、他端が、ランド側接合部SCのリードフレームSM1またはソース電極パターン25S1に接続される。
なお、絶縁基板20には、例えば、AMB基板を適用可能であるが、DBC基板、若しくはDBA基板なども適用できる。
また、冷却効果を高めるために、絶縁基板20の裏面電極パターン23R上にヒートシンクや冷却器などの放熱器(図示省略)を配置するようにしても良い。
(製造方法)
第8の実施の形態に係るPM1は、例えば、セラミックス基板21と、セラミックス基板21上に配置されたソース電極パターン25S1、ドレイン電極パターン25D1、ソース信号電極パターンSL1およびゲート信号電極パターンGL1とを有する絶縁基板20の、ドレイン電極パターン25D1上に、表面側にソースパッド電極SP1およびゲートパッド電極GP1を有すると共に、裏面側にドレイン電極38を有するSiC MOSFET Q1をフェイスアップで配置する工程と、ソースパッド電極SP1とソース電極パターン25S1との間にリードフレームSM1を接続する工程と、リードフレームSM1とソースパッド電極SP1とのデバイス側接合部DCと離隔し、デバイス側接合部DCよりも相対的に温度が低いリードフレームSM1とソース電極パターン25S1とのランド側接合部SCと、ソース信号電極パターンSL1との間に、ソースセンス用ボンディングワイヤSSW1を接続する工程と、ゲートパッド電極GP1とゲート信号電極パターンGL1との間にゲート信号用ボンディングワイヤGW1を接続する工程とを有する。
−スイッチング損失から見たソースセンス端子の役割説明−
ここで、第8の実施の形態に係るPM1において、半導体デバイスとして、SiC MOSFETを適用したSiCパワーモジュールを例に、リードフレームSMの寄生インダクタンスによるスイッチング損失について説明する。
図60(a)および図60(b)に示すように、半導体デバイスとしてSiC MOSFET Q1を適用したSiCパワーモジュールSPM1においては、SiC MOSFET Q1のドレイン(D1)−ソース(S1)間に流れる電流Idに対して、リードフレームSM1の寄生インダクタンスLsmにより、−Lsm・d(Id)/dtだけ起電する。なお、ゲート(G1)の起電圧Esを、例えば、Lg・(di/dt)と仮定する。ただし、diは、スイッチングに伴う電流変化であり、dtは、スイッチングに伴う時間変化である。
すると、ターンオン時の電流立ち上がり時には、図60(a)に示すように、起電圧Esが、ゲート(G1)−ソース(S1)間寄生容量に印加される電圧の増加を抑制する方向に発生する。そのため、負荷電流を流すのに必要なゲート−ソース間寄生容量の印加電圧に到達させるまでの蓄積時間が長くなり、結果として、スイッチング時間の長時間化、スイッチング損失の増大に繋がる。
一方、ターンオフ時の電流立ち上がり時には、図60(b)に示すように、起電圧Esが、ゲート−ソース間寄生容量に印加される電圧の減少を抑制する方向に発生する。そのため、ゲート閾値を下回るまでの放電時間が長くなり、結果として、スイッチング時間の長時間化、スイッチング損失の増大に繋がる。
これに対し、モータ駆動における3相ブリッジ回路(モジュール)の損失は導通損失が主であるため、ソースセンス用ボンディングワイヤSSW1のワイヤ・ボンディング部の位置の、ランド側接合部SC側への変更による全体の損失増加への影響は小さく、大きなトレ−ドオフなく、高温動作に対するワイヤ接続の高耐熱化および信頼性の確保といったメリットが得られる。
特に、高速スイッチング動作(高周波駆動)を必要としない、例えば5kHz〜10kHz程度の低周波駆動するモータや(高温でも動作する)インバータ用向けSiCパワーモジュールSPM1では、ワイヤ・ボンディング部の位置の変更によるインダクタンス増加の発生損失に対する影響は小さい。
このように、ソースパワーライン配線用の主配線に、細線ワイヤでなく、リードフレームSM1を適用することによって寄生インダクタンス(Ls)を低減させると共に、大電流が集中して流れ、発熱により高温となる領域(デバイス側接合部DC)を避け、発熱の影響がより小さく、デバイス側接合部DCよりも相対的に温度の低いランド側接合部SC側にソースセンス用ボンディングワイヤSSW1を接続することで、寄生インダクタンスLsによるスイッチング損失の増加は抑制できることから、大きなトレードオフなく導入することができる。
すなわち、高温になりやすいインバータ用向けSiCパワーモジュールSPM1においては、信号検知のために必要なソースセンス用ボンディングワイヤSSW1の、SiCパワーモジュールSPM1の動作中でもデバイス側接合部DCに比べて高温にならない、ランド側接合部SC側へのワイヤ・ボンディングが有効となる。
なお、ソースセンス用ボンディングワイヤSSW1の、ランド側接合部SCへのワイヤ・ボンディング部の位置の変更は、ケースおよびモールドの両タイプのモジュールへの適用が可能である。
したがって、SiC MOSFET Q1に大電流が流れることにより、ソースパッド電極SP1がジャンクション温度と同程度まで熱くなったとしても、ワイヤの粒径の粗大化が起こりやすいケースタイプのモジュールでのワイヤSSW1の破断や、モールドタイプのモジュールでの熱応力によるワイヤSSW1の接合面(界面)での破断を回避できる。
上記したように、第8の実施の形態に係るPM1によれば、ソースパワーライン配線用の主配線にリードフレームSM1を適用し、デバイス側接合部DCよりもSiC MOSFET Q1の動作時における温度が相対的に低いランド側接合部SC側にソースセンス用ボンディングワイヤSSW1を接続することで、高温になる動作によるワイヤ接続への熱の影響を軽減でき、ワイヤ接続性に対する高耐熱化および信頼性を向上させることが可能となる。
なお、SiC MOSFET Q1としては、SiC DI MOSFET、SiC T MOSFETなどのSiC系パワーデバイス、あるいはGaN系HEMTなどのGaN系パワーデバイスを適用可能である。また、場合によっては、Si系MOSFETやSi系IGBTやSiC系IGBTなどのパワーデバイスも適用可能である。
また、SiC MOSFET Q1としては、1チップ(デバイス)からなるものに限らず、複数チップを並列接続してなる構成とするようにしても良い。
SiC MOSFET Q1を、複数チップを並列接続してなる構成とした場合、リードフレームSM1やソースセンス用ボンディングワイヤSSW1などは複数チップに共通に接続される。
[第9の実施の形態]
第9の実施の形態に係るPM1であって、樹脂モールド前の模式的鳥瞰パターン構成は図61に示すように表される。なお、ここでは、パワー素子系の半導体デバイス(パワーデバイス)として、SiC MOSFET Q1・Q4を適用した、2 in 1モジュールタイプのハーフブリッジ内蔵モジュールを例に説明する。
また、第9の実施の形態に係るPM1であって、SiC MOSFET Q1・Q4を適用したハーフブリッジ内蔵モジュールの模式的平面パターン構成は、図62(a)に示すように表わされ、図62(a)の表示1A部分(要部)の拡大構成は、図62(b)に示すように表わされる。
さらに、第9の実施の形態に係るPM1であって、SiC MISFET Q1・Q4を適用したハーフブリッジ内蔵モジュールの回路構成は、図63に示すように表される。
そして、第9の実施の形態に係るPM1であって、モールドタイプのモジュールとして、ハーフブリッジ内蔵モジュールの樹脂モールド後の模式的鳥瞰構成は、図64に示すように表わされる。
なお、第9の実施の形態に係るPM1において、図62(b)の矢印B方向から見た要部の模式的側面構成は、図65に示すように表わされる。
すなわち、第9の実施の形態に係るPM1は、直列接続された2個のSiC MOSFET Q1・Q4が、1つのモジュールに内蔵されたハーフブリッジ内蔵モジュールの構成を備える。
第9の実施の形態に係るPM1は、図64に示すように、樹脂モールド層115に被覆されたセラミックス基板21の第1の辺に配置された正側電源入力端子電極(正側電力端子)Pおよび負側電源入力端子電極(負側電力端子)Nと、第1の辺に隣接する第2の辺に配置されたゲート端子(ゲート)GT1・ソースセンス端子SST1と、第1の辺に対向する第3の辺に配置された出力端子電極(出力端子)Oと、第2の辺に対向する第4の辺に配置されたゲート端子GT4・ソースセンス端子SST4とを備える。
なお、第9の実施の形態に係るPM1は、2個の出力端子Oを備えた4電力端子構造のパワーモジュールとなっている。
ここで、図61〜図65に示すように、ゲート端子GT1・ソースセンス端子SST1は、SiC MOSFET Q1のゲート信号電極パターンGL1・ソース信号電極パターンSL1に接続され、ゲート端子GT4・ソースセンス端子SST4は、SiC MOSFET Q4のゲート信号電極パターンGL4・ソース信号電極パターンSL4に接続される。
図61〜図65に示すように、ゲート信号電極パターンGL1・GL4およびソース信号電極パターンSL1・SL4には、外部取り出し用のゲート端子GT1・GT4およびソースセンス端子SST1・SST4がはんだ付けなどによって接続される。
なお、図61〜図65に示すように、ゲート信号電極パターンGL1・GL4およびソース信号電極パターンSL1・SL4は信号基板261・264上に配置され、信号基板261・264はセラミックス基板21上にはんだ付けなどによって接続されている。
信号基板261・264は、セラミックス基板で形成可能である。セラミックス基板は、例えば、Al2O3、AlN、SiN、AlSiC、若しくは、少なくとも表面が絶縁性のSiCなどで形成されていても良い。
また、図61〜図65においては、図示を省略しているが、SiC MOSFET Q1・Q4のD1・S1間およびD4・S4間に、逆並列にダイオードが接続されていても良い。
正側電力端子P・負側電力端子N、外部取り出し用のゲート端子GT1・GT4およびソースセンス端子SST1・SST4は、例えば、Cuで形成可能である。
主配線導体である電極パターン25D1・25D4・25DNは、例えば、Cuによって形成可能である。
ここで、図61〜図65に示された例では、2 in 1モジュールタイプのハーフブリッジ内蔵モジュールにおいて、電極パターン25D1が、ハイ(High)側デバイス(SiC MOSFET Q1)用のドレイン電極パターンとして機能する。
また、電極パターン25D4が、ロウ(Low)側デバイス(SiC MOSFET Q4)用のドレイン電極パターンとして機能すると共に、ハイ側デバイス用のソース電極パターン(25S1)としても機能する。すなわち、ドレイン電極パターン25D4は、SiC MOSFET Q4のドレイン電極であると同時に、SiC MISFET Q1のソース電極となる。
さらに、負側電力端子Nに接続される電極パターン25DNが、ロウ側デバイス用のソース電極パターン(25S4)としても機能する。
すなわち、第9の実施の形態に係るPM1においては、図61〜図65に示すように、SiC MOSFET Q1は電極パターン25D1上に搭載されて、ドレインD1が電極パターン25D1と接続されると共に、ソースS1がリードフレームSM1を介して電極パターン25D4と接続される。同様に、SiC MOSFET Q4は電極パターン25D4上に搭載されて、ドレインD4が電極パターン25D4と接続されると共に、ソースS4がリードフレームSM4を介して電極パターン25DNと接続される。
また、図61〜図65に示すように、第9の実施の形態に係るPM1にあっては、ランド側接合部SC側において、リードフレームSM1をソース信号電極パターンSL1に接続するソースセンス用ボンディングワイヤ(第1ボンディングワイヤ)SSW1と、ランド側接合部SCに対向するデバイス側接合部DC側において、ゲートパッド電極GP1をゲート信号電極パターンGL1に接続するゲート信号用ボンディングワイヤ(第2ボンディングワイヤ)GW1とを備える。
同様に、ランド側接合部SC側において、リードフレームSM4をソース信号電極パターンSL4に接続するソースセンス用ボンディングワイヤ(第1ボンディングワイヤ)SSW4と、ランド側接合部SCに対向するデバイス側接合部DC側において、ゲートパッド電極GP4をゲート信号電極パターンGL4に接続するゲート信号用ボンディングワイヤ(第2ボンディングワイヤ)GW4とを備える。
すなわち、SiC MOSFET Q1・Q4の各ソース信号電極パターンSL1・SL4には、図63に示すように、ランド側接合部SC側において、リードフレームSM1・SM4またはソース電極パターン25S1・25S4を接続するための、ソースセンス用ボンディングワイヤSSW1・SSW4がウエッジボンディングされる。
その他の構成および製造の方法などは第8の実施の形態の場合と、ほぼ同様である。
上記したように、第9の実施の形態に係るPM1によっても、ソースパワーライン配線用の主配線にリードフレームSM1・SM4を適用し、デバイス側接合部DCよりもSiC MOSFET Q1・Q4の動作時における温度が相対的に低いランド側接合部SC側にソースセンス用ボンディングワイヤSSW1・SSW4を接続することで、高温になる動作によるワイヤ接続への熱の影響を軽減でき、ワイヤ接続性に対する高耐熱化および信頼性を向上させることが可能となる。
第9の実施の形態によれば、高温になる動作によるワイヤ接続への熱の影響を軽減でき、ワイヤ接続性に対する高耐熱化および信頼性を向上させることが可能なPMとして、2 in 1モジュールタイプのハーフブリッジ内蔵モジュールを提供することが可能となる。
[第10の実施の形態]
第10の実施の形態に係るPM1の模式的平面パターン構成は、図66に示すように表わされる。また、第10の実施の形態に係るPM1の発熱時の温度拡散(温度分布)に関するシミュレーション結果は、図67に示すように表わされる。
ここで、第10の実施の形態に係るPM1は、図66に示すように、ソースパッド電極SP1とリードフレームSM1との接合部であるデバイス側接合部DC、およびリードフレームSM1とソース電極パターン25S1との接合部であるランド側接合部SCの配置の違いを除けば、第8の実施の形態に係るPM1とほぼ同一の構成を備える。
すなわち、第10の実施の形態に係るPM1は、セラミックス基板21と、セラミックス基板21の上面(U)側に設けられたドレイン電極パターン(第2主電極パターン)25D1およびソース電極パターン(第1主電極パターン)25S1とソース信号電極パターン(信号配線パターン)SL1と、セラミックス基板21の下面(D)側に配置された裏面電極パターン23Rとを備える絶縁基板20と、ドレイン電極パターン25D1上にフェイスアップで配置され、表面にソースパッド電極(主パッド電極)SP1を有するパワー素子系の半導体デバイス(SiC MOSFET)Q1と、ソースパッド電極SP1とソース電極パターン25S1との間に接続されて、ソースパワーライン配線用の主配線となるリードフレームSM1と、ランド側接合部SCとソース信号電極パターンSL1との間を接続するソースセンス用ボンディングワイヤSSW1とを備える。
第10の実施の形態に係るPM1の場合、ドレイン電極パターン25D1とソース信号電極パターンSL1との間にソース電極パターン25S1が位置し、デバイス側接合部DCよりも、ソース信号電極パターンSL1に近接してランド側接合部SCが配置されている。
なお、図66および図67では、SiC MOSFET Q1上のゲートパッド電極(GP1)、セラミックス基板21上のゲート信号電極パターン(GL1)、およびゲートパッド電極(GP1)とゲート信号電極パターン(GL1)との間を接続するゲート信号用ボンディングワイヤ(GW1)、並びにパッケージ(樹脂モールド層115)については、図示を省略している。
また、図67中に示すBEは、リードフレームSM1をソース電極パターン25S1に接続するための金属柱からなるブロック電極である。ブロック電極BEとしては、Cuなどにより形成可能である。ブロック電極BEは、リードフレームSM1の一部として一体的に形成されるものであっても良い。
第10の実施の形態に係るPM1の、発熱時の温度拡散(温度分布)に関するシミュレーション結果は、図67に示すように表わされる。なお、図67は、図66のX−X線に沿う断面に対応しており、色の薄い部分ほど高い温度を示している。また、本シミュレーション結果は、SiC MOSFET Q1の動作からある程度の時間が経過した後の、これ以上は温度が変化しない飽和時を示している。
図67からも明らかなように、SiC MOSFET Q1の動作によって温度が上昇するのは、ほぼデバイス側接合部DCの付近であり、図中に表示1Cで示す領域(ランド側接合部SC付近)まで熱が大幅に上昇することはない。
したがって、SiC MOSFET Q1に大電流が流れて高温により動作することによって、ソースパッド電極SP1がジャンクション温度と同程度まで熱くなったとしても、ソースセンス用ボンディングワイヤSSW1の破断や、ソースセンス用ボンディングワイヤSSW1の接合面での破断を回避できる。
第10の実施の形態に示したPM1は、実施の形態に示す他のパワーモジュールにも適用可能である。
[第11の実施の形態]
第11の実施の形態に係るPM1の模式的断面構造は、図68に示すように表わされる。
ここで、図68に示すように、第11の実施の形態に係るPM1は、リードフレームSM1の構成を除けば、第8の実施の形態に係るPM1とほぼ同一の構成を備える。そのため、重複説明を避け、異なる部分について説明する。
すなわち、第11の実施の形態に係るPM1は、図68に示すように、リードフレームSM1に代えて、ソースパワーライン配線用の主配線として配線リード部(リードフレーム)30SMを採用した場合の例であって、配線リード部30SMは、異方性な熱伝導率・熱膨張係数を備えるグラファイトプレート(グラファイト配線)18GP(XZ)と、グラファイトプレート18GP(XZ)の下面側に配置された下部Cu配線パターン16Dおよび上面側に配置された上部Cu配線パターン16Uとを備え、一端側が半導体デバイス(SiC MOSFET)Q1のソースパッド電極SP1と接続されると共に、他端側がブロック電極BEを介して、セラミックス基板21上のソース電極パターン25S1と接続される。
グラファイトプレート18GP(XZ)は、面方向よりも厚み方向に相対的に熱伝導率が高いXZ配向を備える。前記XZ配向は、配線リード部30SMの延長方向である図示Y方向に直交する図示XZ面の方向に実質的に一致する。すなわち、グラファイト配線18GP(XZ)は、面方向に相対的に熱伝導率が低い配向を備え、面方向よりも厚み方向に相対的に熱伝導率が高いXZ配向を備える。
そして、ランド側接合部SC側において、配線リード部30SMまたはソース電極パターン25S1をソース信号電極パターンSL1に接続するための、ソースセンス用ボンディングワイヤSSW1がウエッジボンディングされる。
ここで、グラファイトプレート18GP(XZ)について簡単に説明すると、グラファイトプレートを構成するグラファイトシート(グラフェン)GSの模式的構成(積層構造例)は、図5に示すように表わされる。
グラファイトプレートには、厚み方向よりも面方向に熱伝導率が高いXY配向を有するグラファイトプレート18GP(XY)と、面方向よりも厚み方向に熱伝導率が高いXZ配向を有するグラファイトプレート18GP(XZ)とがあり、グラファイトプレート18GP(XY)は図6(a)に示すように表わされ、グラファイトプレート18GP(XZ)は図6(b)に示すように表わされる。
図5に示すように、n層からなる各面のグラファイトシートGS1・GS2・GS3・…・GSnは、1つの積層結晶構造の中に多数の六方晶系の共有結合を有し、各面のグラファイトシートGS1・GS2・GS3・…・GSn間がファンデルワールス力によって結合されるようになっている。
すなわち、炭素系異方伝熱材料であるグラファイトは、炭素原子の六角形網目構造の層状結晶体であって、熱伝導も異方性を持っており、図5に示すグラファイトシートGS1・GS2・GS3・…・GSnは、結晶面方向(XY面上)に対して、Z軸の厚さ方向よりも大きな熱伝導度(高い熱伝導率)を有する。
したがって、図6(a)に示すように、XY配向を有するグラファイトプレート18GP(XY)は、例えば、X=1500(W/mK)、Y=1500(W/mK)、Z=5(W/mK)の熱伝導率を備える。
一方、図6(b)に示すように、XZ配向を有するグラファイトプレート18GP(XZ)は、例えば、X=1500(W/mK)、Y=5(W/mK)、Z=1500(W/mK)の熱伝導率を備える。
なお、グラファイトプレート18GP(XY)・18GP(XZ)は、共に、密度が2.2(g/cm3 )程度であり、厚さが0.7mm〜10mm程度であり、大きさが40mm×40mm程度以下である。
第11の実施の形態に係るPM1によれば、グラファイトプレート18GP(XZ)の採用により、SiC MOSFET Q1が高温により動作することによってデバイス側接合部DC側で発生する熱が、配線リード部30SMを介して、ランド側接合部SC側へと伝達されるのを抑制できるようになる。
したがって、第11の実施の形態に係るPM1によっても、ソースパワーライン配線用の主配線にリードフレームSM1にグラファイトプレート18GP(XZ)を採用すると共に、デバイス側接合部DCよりもSiC MOSFET Q1の動作時における温度が相対的に低いランド側接合部SC側にソースセンス用ボンディングワイヤSSW1を接続することで、高温になる動作によるワイヤ接続への熱の影響をより効果的に軽減でき、ワイヤ接続性に対する高耐熱化および信頼性を向上させることが可能となる。
また、第11の実施の形態に係るPM1のように、配線リード部30SMにグラファイトプレート18GPを採用したことにより、さらに配線リード部30SMの分だけ増加する共通Ls(抵抗)を抑制することが可能となる。
なお、第11の実施の形態に示したPM1は、実施の形態に示す他のパワーモジュールにも適用可能である。
[第12の実施の形態]
第12の実施の形態に係るPM2であって、シックスインワン(6 in 1)モジュールの模式的鳥瞰パターン構成は、図69に示すように表わされる。
なお、第12の実施の形態に係るPM2は、例えば図59に示したPM1を3個、共通のセラミックス基板21A上に並列に配置し、6 in 1モジュールタイプのスイッチングモジュールを構成した場合の例である。
ここで、6 in 1モジュールタイプのスイッチングモジュールの場合、基本的な構造は、1 in 1モジュールタイプのPMや2 in 1モジュールタイプのPMと同様である。すなわち、第12の実施の形態に係るPM2であって、6 in 1モジュールタイプのスイッチングモジュールは、図69に示すように、2 in 1モジュールタイプのPM11・12・13を備える。
PM11は、半導体デバイスとして、例えばSiC MOSFET Q1・Q4を搭載し、PM12は、例えばSiC MOSFET Q2・Q5を搭載し、PM13は、例えばSiC MOSFET Q3・Q6を搭載し、PM11・12・13はPM1と同様であり、詳しい説明は省略する。
なお、第12の実施の形態に係るPM2であって、6 in 1モジュールタイプのスイッチングモジュールは、例えば、2 in 1モジュールタイプのPM11・12・13を、図示省略の共通のモールド樹脂またはケースによって一体的に封止してなる構成を備える。
すなわち、6 in 1モジュールタイプのスイッチングモジュール(第12の実施の形態に係るPM2)においては、PM11・12・13を共通のセラミックス基板21A上に並列に配置して一体型のパッケージ(図示省略の樹脂モールド層)として封止すると共に、裏面電極パターン23Rを共通化(一体化)することが可能である。
若しくは、個別のモールド樹脂またはケースによって別体として封止した2 in 1モジュールタイプのPM11・12・13を、さらに共通のセラミックス基板21A上に並列に配置して、6 in 1モジュールタイプのスイッチングモジュールとすることも可能である。
このような第12の実施の形態に係るPM2の構成(6 in 1モジュールタイプのスイッチングモジュール)とした場合にも、図69に示すように、PM11・12・13において、ソースパッド電極SP1・SP4、SP2・SP5、SP3・SP6とソース電極パターン25S1(25D4)・25S4(25DN)、25S2(25D5)・25S5(25DN)、25S3(25D6)・25S6(25DN)との間に接続されるリードフレームSM1・SM4、SM2・SM5、SM3・SM6と、ランド側接合部SCのリードフレームSM1・SM4、SM2・SM5、SM3・SM6とソース信号電極パターンSL1・SL4、SL2・SL5、SL3・SL6との間を接続するソースセンス用ボンディングワイヤSSW1・SSW4、SSW2・SSW5、SSW3・SSW6とを備えることにより、高温になる動作によるワイヤ接続への熱の影響を軽減でき、ワイヤ接続性に対する高耐熱化および信頼性を向上させることが可能となる。
なお、ソースセンス用ボンディングワイヤSSW1・SSW4、SSW2・SSW5、SSW3・SSW6は、ランド側接合部SC側において、ソース電極パターン25S1(25D4)・25S4(25DN)、25S2(25D5)・25S5(25DN)、25S3(25D6)・25S6(25DN)と接続されても良い。
[第13の実施の形態]
第13の実施の形態に係るPM1であって、1 in 1モジュールの模式的平面パターン構成は、図70(a)に示すように表わされ、図70(a)のXI−XI線に沿う模式的断面構造は、図70(b)に示すように表わされる。
ここで、図70(a)および図70(b)に示すように、第13の実施の形態に係るPM1は、リードフレームSMの構成を除けば、第8の実施の形態に係るPM1とほぼ同一の構成を備えるので、重複説明を避け、異なる部分について説明する。
第13の実施の形態に係るPM1は、図70(a)および図70(b)に示すように、ソースパワーライン配線用の主配線として延長リードフレーム(リードフレーム)SML1を採用した場合の例であって、延長リードフレームSML1は、一端側がセラミックス基板21上のソース電極パターン25S1と接続され、SiC MOSFET(半導体デバイス)Q1のソースパッド電極SP1と接続される他端側が延長されて、ソース電極パターン25S1とは別の電極パターン(配線電極パターン)25K1に接続されている。
そして、別の電極パターン25K1との第2のランド側接合部(第3接合部)SB側において、延長リードフレームSML1または別の電極パターン25K1が、ソースセンス用ボンディングワイヤSSW1を介して、ソース信号電極パターンSL1と接続されている。
すなわち、第13の実施の形態に係るPM1は、セラミックス基板21と、セラミックス基板21上に配置されたドレイン電極パターン25D1、ソース電極パターン25S1、ソース信号電極パターンSL1、ゲート信号電極パターンGL1、および電極パターン25K1とを備える絶縁基板20と、表面にソースパッド電極SP1およびゲートパッド電極GP1を有すると共に、裏面にドレイン電極38を有し、ドレイン電極パターン25D1上にフェイスアップで配置されるSiC MOSFET Q1と、ソースパッド電極SP1とソース電極パターン25S1との間に接続されると共に、ソースパッド電極SP1との接続端側が延長されて電極パターン25K1と接続された延長リードフレームSML1と、延長リードフレームSML1とソースパッド電極SP1とのデバイス側接合部DC、デバイス側接合部DCと離隔し、デバイス側接合部DCよりもデバイス動作時における温度が相対的に低い延長リードフレームSML1とソース電極パターン25S1とのランド側接合部SC、およびデバイス側接合部DCよりもデバイス動作時における温度が相対的に低い延長リードフレームSML1と電極パターン25K1との第2のランド側接合部SBと、一端が、ソース信号電極パターンSL1と接続されると共に、他端が第2のランド側接合部SBに接続されたソースセンス用ボンディングワイヤSSW1と、ゲートパッド電極GP1とゲート信号電極パターンGL1との間に接続されたゲート信号用ボンディングワイヤGW1とを備え、ソースセンス用ボンディングワイヤSSW1の他端が、第2のランド側接合部SBの延長リードフレームSML1または電極パターン25K1に接続される。
このような構成とした場合にも、デバイス側接合部DCよりもSiC MOSFET Q1の動作時における温度が相対的に低い第2のランド側接合部SB側にソースセンス用ボンディングワイヤSSW1を接続することで、高温になる動作によるワイヤ接続への熱の影響を軽減でき、ワイヤ接続性に対する高耐熱化および信頼性を向上させることが可能となる。
第13の実施の形態に係るPM1によれば、延長リードフレームSML1の長さに応じてモジュール(図示省略の樹脂モールド層)が長くなるものの、ゲート信号電極パターンGL1およびソース信号電極パターンSL1が接合部SB・DC間に存在するため、ソースセンス用ボンディングワイヤSSW1およびゲート信号用ボンディングワイヤGW1のワイヤ長を共に短くできる。
第13の実施の形態に示したPM1は、実施の形態に示す他のパワーモジュールにも適用可能である。
[第14の実施の形態]
第14の実施の形態に係るPM1であって、1 in 1モジュールの模式的平面パターン構成は、図71(a)に示すように表わされ、図71(a)のXII−XII線に沿う模式的断面構造は、図71(b)に示すように表わされる。
ここで、図71(a)および図71(b)に示すように、第14の実施の形態に係るPM1は、絶縁基板20の構成を除けば、第8の実施の形態に係るPM1とほぼ同一の構成を備えるので、重複説明を避け、異なる部分について説明する。
第14の実施の形態に係るPM1においては、図71(a)および図71(b)に示すように、導電性を有する金属板(例えば、厚銅基板)45を備える。厚銅基板45の上面(U)側には、はんだ層29を介して、SiC MOSFET(半導体デバイス) Q1が配置される。
また、厚銅基板45は単体では絶縁状態を保持できないため、厚銅基板45のU側であって、SiC MOSFET Q1の両側には、無機系接着剤などからなる接着絶縁層43・44が配置されている。接着絶縁層43上には、ソース信号電極パターンSL1およびゲート信号電極パターンGL1が配置されている。接着絶縁層44上には、ソース電極パターン25S1が配置されている。
厚銅基板45の下面(D)側には、絶縁層(例えば、絶縁基板や絶縁樹脂シートなど)47を介して、水冷(液冷)式の冷却器49を配置するようにしても良い。冷却器49とした場合においては、冷媒として、熱伝導率の良い、例えば水、または水とエチレングリコールとを50%ずつの割合で混合させた混合液、若しくは冷却気体(冷気)などが用いられる。
すなわち、第14の実施の形態に係るPM1は、導電性の厚銅基板45と、厚銅基板45上に、接着絶縁層43・44を介して配置されたソース電極パターン25S1、ソース信号電極パターンSL1およびゲート信号電極パターンGL1と、表面に主パッド電極を有し、前記基板上に配置されるSiC MOSFET Q1と、ソースパッド電極SP1とソース電極パターン25S1との間に接続されたリードフレームSM1と、リードフレームSM1とソースパッド電極SP1とのデバイス側接合部DCと離隔し、デバイス側接合部DCよりもデバイス動作時における温度が相対的に低いリードフレームSM1とソース電極パターン25S1とのランド側接合部SCと、ソース信号電極パターンSL1との間に接続されたソースセンス用ボンディングワイヤSSW1とを備える。
ソースセンス用ボンディングワイヤSSW1は、一端が、ソース信号電極パターンSL1に接続され、他端が、ランド側接合部SC側において、リードフレームSM1またはソース電極パターン25S1と接続される。
第14の実施の形態に係るPM1は、SiC MOSFET Q1の表面のゲートパッド電極GP1とゲート信号電極パターンGL1との間がゲート信号用ボンディングワイヤGW1により接続される。
第14の実施の形態に係るPM1によっても、ソースパワーライン配線用の主配線にリードフレームSM1を適用し、デバイス側接合部DCよりもSiC MOSFET Q1の動作時における温度が相対的に低いランド側接合部SC側にソースセンス用ボンディングワイヤSSW1を接続することで、高温になる動作によるワイヤ接続への熱の影響を軽減でき、ワイヤ接続性に対する高耐熱化および信頼性を向上させることが可能となる。
また、第14の実施の形態に係るPM1によれば、厚銅基板45の採用により、低コストで、基板全体の反りを低減可能となる。
なお、第14の実施の形態に示したPM1は、第8〜第14の実施の形態に示す他のパワーモジュールにも適用可能である。
(パワーモジュールの具体例)
以下に、第8〜第14の実施の形態に係るPMの具体例について説明する。もちろん、以下に説明するPMにおいても、ソースパワーライン配線用の主配線となるリードフレームSMを採用し、リードフレームSMのランド側接合部SC・SBとソース信号電極パターンSLとの間を接続するソースセンス用ボンディングワイヤSSWを備えている。ソースパワーライン配線用の主配線としては、配線リード部30SMや延長リードフレームSMLであっても良い。
なお、上述した第8〜第14の実施の形態のうちのいくつかの実施の形態においては、半導体デバイスとして、SiC MOSFETを例に説明したが、PM内に配置されるパワー素子(スイッチング素子)は、SiC MOSFET以外の素子であってもよい。
たとえば、スイッチング素子としては、Si−IGBT、SiC−IGBT、SiC−バイポーラトランジスタ、SiC−JFETなどであってもよい。
図32において、スイッチング素子がSiC−IGBTの場合には、ソースパッド電極SP、ドレイン電極38、ゲートパッド電極GPおよびソースセンスパッド電極SSPが、それぞれ、SiC−IGBTのエミッタパッド電極、コレクタ電極、ゲートパッド電極およびエミッタセンスパッド電極に対応する。
また、スイッチング素子がSiC−バイポーラトランジスタの場合には、ソースパッド電極SP、ドレイン電極38、ゲートパッド電極GPおよびソースセンスパッド電極SSPが、それぞれ、SiC−バイポーラトランジスタのエミッタパッド電極、コレクタ電極、ベースパッド電極およびエミッタセンスパッド電極に対応する(図示省略)。
第8〜第14の実施の形態に係るPMとしては、1 in 1モジュールタイプ、2 in 1モジュールタイプ、および6 in 1モジュールタイプのPMに限らず、例えば、4 in 1(フォーインワン)モジュールタイプのPMや、6 in 1モジュールにスナバコンデンサなどを備えた7 in 1(セブンインワン)モジュールタイプのPM、8 in 1(エイトインワン)モジュールタイプのPM、12 in 1(トゥエルブインワン)モジュールタイプのPM、14 in 1(フォーティーンインワン)モジュールタイプのPMなどにも適用できる。
(半導体デバイスの具体例)
第8〜第14の実施の形態に係るPMであって、半導体デバイスとして適用可能な1 in 1モジュールタイプのPM50のSiC MOSFETの模式的回路表現は、図28に示すように表される。
図28には、SiC MOSFET Qに逆並列接続されるダイオードDIが示されている。SiC MOSFET Qの主電極は、ドレイン端子DTおよびソース端子STで表される。また、第8〜第14の実施の形態に係るPMであって、半導体デバイスとして適用可能な1 in 1モジュール50のIGBTを(図示せず)を実現することもできる。
また、第8〜第14の実施の形態に係るPMであって、半導体デバイスとして適用可能な1 in 1モジュールタイプのPM50のSiC MOSFETの詳細回路表現は、図29に示すように表される。
第8〜第14の実施の形態に係るPMは、例えば、半導体デバイスが1 in 1モジュールタイプのPM50の構成を備える。すなわち、複数個のMOSFETセルを並列接続したSiC MOSFET Qが1つのモジュールに内蔵されている。また、1つのモジュール内に複数個のSiC MOSFETチップを搭載可能であり、一例として、5チップ(MOSFET×5)を並列接続可能である。なお、5チップの内、一部をダイオードDI用として搭載することも可能である。
さらに詳細には、図29に示すように、SiC MOSFET Qに並列にセンス用MOSFET Qsが接続される。センス用MOSFET Qsは、SiC MOSFET Qと同一チップ内に、微細トランジスタとして形成されている。
図29において、SSは、ソースセンス端子、CSは、電流(カレント)センス端子であり、Gは、ゲート端子である。なお、第8〜第14の実施の形態においても、SiC MOSFET Qには、センス用MOSFET Qsが同一チップ内に、微細トランジスタとして形成されていても良い。
(回路構成)
次に、第8〜第14の実施の形態に係るPMにおいて、半導体デバイスの回路構成例について、より具体的に説明する。
ここでは、第8〜第14の実施の形態に係るPMの半導体デバイスとして適用可能なモジュールであって、2個の半導体デバイスが1つのモールド樹脂内に封止されたPM、いわゆる2 in 1モジュールタイプのPMについて説明する。
半導体デバイスとして、SiC MOSFET Q1・Q4を適用した2 in 1モジュールタイプのPM(2 in 1モジュール)130Aの回路構成は、例えば図30に示すように表わされる。
すなわち、2 in 1モジュール130Aは、図30に示すように、2個のSiC MOSFET Q1・Q4が1つのモジュールとして内蔵された、ハーフブリッジ内蔵モジュールの構成を備える。
ここで、モジュールは、1つの大きなトランジスタとみなすことができるが、内蔵されているトランジスタが1チップまたは複数チップの場合がある。すなわち、モジュールには、1 in 1、2 in 1、4 in 1、6 in 1などがあり、例えば、1つのモジュール上において、2個分のトランジスタ(チップ)を内蔵したモジュールは2 in 1、2 in 1を2組み内蔵したモジュールは4 in 1、2 in 1を3組み内蔵したモジュールは6 in 1と呼ばれている。
図30に示すように、2 in 1モジュール130Aは、2個のSiC MOSFET Q1・Q4と、SiC MOSFET Q1・Q4に逆並列接続されるダイオードDI1・DI4が、1つのモジュールとして内蔵されている。なお、ダイオードDI1・DI4は、寄生ダイオードを用いることにより省略することもできる。
図30において、G1は、SiC MOSFET Q1のゲート信号用のリード端子(いわゆる、ゲート端子)であり、S1は、SiC MOSFET Q1のソース信号用のリード端子(いわゆる、ソースセンス端子)である。同様に、G4は、SiC MOSFET Q4のゲート信号用のリード端子であり、S4は、SiC MOSFET Q4のソース信号用のリード端子である。
また、Pは、正側電源入力端子電極であり、Nは、負側電源入力端子電極であり、Oは、出力端子電極である。
また、第8〜第14の実施の形態に係るパワーモジュールの半導体デバイスとして適用可能なモジュールであって、半導体デバイスQ1・Q4として、IGBTを適用した2 in 1モジュール(図示せず)を実現することもできる。
また、Pは、正側電源入力端子電極であり、Nは、負側電源入力端子電極であり、Oは、出力端子電極である。
図69に示す、第12の実施の形態に係るPM2に適用可能な半導体デバイス(Q2・Q5)、および半導体デバイス(Q3・Q6)についても同様である。
(デバイス構造)
第8〜第14の実施の形態に係るPMに適用可能な半導体デバイス(Q1・Q4)の例であって、ソースパッド電極SP、ゲートパッド電極GPを含むSiC MOSFET 130Aの模式的断面構造は、図31に示すように表わされる。
図31に示すように、SiC MOSFET 130Aは、n- 高抵抗層からなる半導体層31と、半導体層31の表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたソース領域33と、pボディ領域32間の半導体層31の表面上に配置されたゲート絶縁膜34と、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35と、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36と、半導体層31の表面と反対側の裏面に配置されたn+ ドレイン領域37と、n+ ドレイン領域37に接続されたドレイン電極38とを備える。
ゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35に接続され、ソースパッド電極SPは、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36に接続される。また、ゲートパッド電極GPおよびソースパッド電極SPは、図31に示すように、SiC MOSFET 130Aの表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜39上に配置される。
なお、ゲートパッド電極GPおよびソースパッド電極SPの下方の半導体層31内には、図示していないが、微細構造のトランジスタ構造が形成されていても良い。
さらに、図31に示すように、中央部のトランジスタ構造においても、パッシベーション用の層間絶縁膜39上にソースパッド電極SPが延在して配置されていても良い。
図31において、SiC MOSFET 130Aは、プレーナゲート型のnチャネル縦型SiC MOSFETで構成されているが、後述する図34に示すように、トレンチゲート型のnチャネル縦型SiC T MOSFET 130Cなどで構成されていても良い。
または、第8〜第14の実施の形態に係るPMに適用可能な半導体デバイスとしては、SiC MOSFET 130Aの代わりに、GaN系FETなどを採用することもできる。
第8〜第14の実施の形態に係るPMに適用可能な半導体デバイス(Q2・Q5、Q3・Q6)についても同様である。
さらには、第8〜第14の実施の形態に係るPMに適用可能な半導体デバイスQ1〜Q6には、バンドギャップエネルギーが、例えば、1.1eV〜8eVのワイドバンドギャップ型と称される半導体を用いることができる。
同様に、第8〜第14の実施の形態に係るPMに適用可能な半導体デバイス(Q1・Q4)の例であって、エミッタパッド電極EP、ゲートパッド電極GPを含むIGBT 130Bの模式的断面構造は、図32に示すように表わされる。
図32に示すように、IGBT 130Bは、n- 高抵抗層からなる半導体層31と、半導体層31の表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたエミッタ領域33Eと、pボディ領域32間の半導体層31の表面上に配置されたゲート絶縁膜34と、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35と、エミッタ領域33Eおよびpボディ領域32に接続されたエミッタ電極36Eと、半導体層31の表面と反対側の裏面に配置されたp+ コレクタ領域37Pと、p+ コレクタ領域37Pに接続されたコレクタ電極38Cとを備える。
ゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35に接続され、エミッタパッド電極EPは、エミッタ領域33Eおよびpボディ領域32に接続されたエミッタ電極36Eに接続される。また、ゲートパッド電極GPおよびエミッタパッド電極EPは、図32に示すように、IGBT 130Bの表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜39上に配置される。
なお、ゲートパッド電極GPおよびエミッタパッド電極EPの下方の半導体層31内には、図示していないが、微細構造のIGBT構造が形成されていても良い。
さらに、図32に示すように、中央部のIGBT構造においても、パッシベーション用の層間絶縁膜39上にエミッタパッド電極EPが延在して配置されていても良い。
図32において、IGBT 130Bは、プレーナゲート型のnチャネル縦型IGBTで構成されているが、トレンチゲート型のnチャネル縦型IGBTなどで構成されていても良い。
第8〜第14の実施の形態に係るPMに適用可能な半導体デバイス(Q2・Q5、Q3・Q6)についても同様である。
半導体デバイスQ1〜Q6としては、SiC DI MOSFET、SiC T MOSFETなどのSiC系パワーデバイス、或いはGaN系HEMTなどのGaN系パワーデバイスを適用可能である。また、場合によっては、Si系MOSFETやIGBTなどのパワーデバイスも適用可能である。
―SiC DI MOSFET―
第8〜第14の実施の形態に係るPMに適用可能な半導体デバイスの例であって、SiC DI MOSFET 130Dの模式的断面構造は、図33に示すように表わされる。
図33に示すSiC DI MOSFET 130Dは、n- 高抵抗層からなる半導体層31と、半導体層31の表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたn+ ソース領域33と、pボディ領域32間の半導体層31の表面上に配置されたゲート絶縁膜34と、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35と、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36と、半導体層31の表面と反対側の裏面に配置されたn+ ドレイン領域37と、n+ ドレイン領域37に接続されたドレイン電極38とを備える。
図33において、SiC DI MOSFET 130Dは、pボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたn+ ソース領域33が、ダブルイオン注入(DII)で形成され、ソースパッド電極SPは、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36に接続される。
図示を省略するゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35に接続される。また、ソースパッド電極SPおよびゲートパッド電極GPは、図33に示すように、SiC DI MOSFET 130Dの表面を覆うように、パッシベーション用の層間絶縁膜39上に配置される。
SiC DI MOSFET 130Dは、図33に示すように、pボディ領域32に挟まれたn- 高抵抗層からなる半導体層31内に、破線で示されるような空乏層が形成されるため、接合型FET(JFET)効果に伴うチャネル抵抗R JFETが形成される。また、pボディ領域32/半導体層31間には、図33に示すように、ボディダイオードBDが形成される。
―SiC T MOSFET―
第8〜第14の実施の形態に係るPMに適用可能な半導体デバイスの例であって、SiC T MOSFETの模式的断面構造は、図34に示すように表わされる。
図34に示すSiC T MOSFET 130Cは、n層からなる半導体層31Nと、半導体層31Nの表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたn+ ソース領域33と、pボディ領域32を貫通し、半導体層31Nまで形成されたトレンチ内にゲート絶縁膜34および層間絶縁膜39U・39Bを介して形成されたトレンチゲート電極35TGと、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36と、半導体層31Nの表面と反対側の裏面に配置されたn+ ドレイン領域37と、n+ ドレイン領域37に接続されたドレイン電極38とを備える。
図34において、SiC T MOSFET 130Cは、pボディ領域32を貫通し、半導体層31Nまで形成されたトレンチ内にゲート絶縁膜34および層間絶縁膜39U・39Bを介してトレンチゲート電極35TGが形成され、ソースパッド電極SPは、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36に接続される。
図示を省略するゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜34上に配置されたトレンチゲート電極35TGに接続される。また、ソースパッド電極SPおよびゲートパッド電極GPは、図34に示すように、SiC T MOSFET 130Cの表面を覆うように、パッシベーション用の層間絶縁膜39U上に配置される。
SiC T MOSFET 130Cでは、SiC DI MOSFET 130Dのような接合型FET(JFET)効果に伴うチャネル抵抗R JFETは形成されない。また、pボディ領域32/半導体層31N間には、図33と同様に、ボディダイオードBDが形成される。
(応用例)
第8〜第14の実施の形態に係るPMを用いて構成される3相交流インバータ40Aであって、半導体デバイスとしてSiC MOSFETを適用し、電源端子PL・接地端子NL間にスナバコンデンサCを接続した回路構成例は、図35に示すように表わされる。
同様に、半導体デバイスとしてIGBTを適用し、電源端子PL・接地端子NL間にスナバコンデンサCを接続した3相交流インバータ(図示せず)を実現することもできる。
PMを電源Eと接続し、スイッチング動作を行うと、SiC MOSFETやIGBTのスイッチング速度が速いため、接続ラインの有するインダクタンスLによって、大きなサージ電圧−Ldi/dtを生ずる。例えば、電流変化di=300Aとし、スイッチングに伴う時間変化dt=100nsecとすると、di/dt=3×109(A/s)となる。
インダクタンスLの値により、サージ電圧−Ldi/dtの値は変化するが、電源Eに、このサージ電圧−Ldi/dtが重畳される。電源端子PL・接地端子NL間に接続されるスナバコンデンサCは、このサージ電圧−Ldi/dtの大きさに影響するインダクタンスLの値を低減することを目的に設けられる。
(具体例)
次に、図36を参照して、半導体デバイスとしてSiC MOSFETを適用し、第8〜第14の実施の形態に係るPMを用いて構成した3相交流インバータ42Aについて説明する。
図36に示すように、3相交流インバータ42Aは、ゲートドライバ(GD)180に接続されたパワーモジュール部130と、3相交流モータ部51と、電源、若しくは蓄電池(E)53と、コンバータ55とを備える。パワーモジュール部130は、3相交流モータ部51のU相、V相、W相に対応して、U相、V相、W相のインバータが接続されている。
パワーモジュール部130は、電源、若しくは蓄電池(E)53が接続されたコンバータ55のプラス端子(+)Pとマイナス端子(−)Nとの間に接続されると共に、インバータ構成のSiC MOSFET Q1・Q4、Q2・Q5、およびQ3・Q6を備え、GD180からの制御信号は、SiC MOSFET Q1・Q4、SiC MOSFET Q2・Q5、およびSiC MOSFET Q3・Q6のゲートにそれぞれ供給される。また、SiC MOSFET Q1〜Q6のソース・ドレイン間には、フリーホイールダイオードDI1〜DI6がそれぞれ逆並列に接続されている。
また、図示しないが、半導体デバイスとしてIGBTを適用し、第8〜第14の実施の形態に係るパワーモジュールを用いて構成した3相交流インバータを実現することもできる。
以上説明したように、第8〜第14の実施の形態によれば、高温での動作によるワイヤ接続への熱の影響を軽減でき、ワイヤ接続に対する高耐熱化および信頼性を向上させることが可能なPMおよびその製造方法を実現できる。
なお、第8〜第14の実施の形態に係るPMにおいて、半導体デバイスとして適用可能なモジュールとしては、例えば、3電力端子構造などのパワーモジュールであっても良い。
また、第8〜第14の実施の形態に係るPMに適用可能な半導体デバイスとしては、SiC系パワーデバイスに限らず、GaN系やSi系のパワーデバイスなどのワイドバンドギャップ型と称されるパワーデバイスも採用可能である。
また、第8〜第14の各実施の形態に係るPMは、1 in 1モジュールや2 in 1モジュール、または6 in 1モジュールによらず、いずれも、4 in 1モジュールタイプのPMや、7 in 1モジュールタイプのPM、8 in 1モジュールタイプのPM、12 in 1モジュールタイプのPM、14 in 1モジュールタイプのPMなどにも適用できる。
[第15の実施の形態]
(基本構成)
第15の実施の形態に係るパワーモジュール(PM)1の模式的平面パターン構成は図72(a)に示すように表わされ、図72(a)のXIII−XIII線に沿う模式的断面構造は図72(b)に示すように表される。なお、図72(a)および図72(b)では、複数の半導体デバイス(パワートランジスタデバイス)Qの一例として、例えば3個の半導体デバイス(モジュール)Q11・Q12・Q13を搭載した場合が例示されている。
第15の実施の形態に係るPM1は、図72(b)に示すように、絶縁層21と、絶縁層21上に配置され、異方性な熱伝導率を備えるグラファイト基板18GHと、グラファイト基板18GH上に配置され、動作時に発熱する半導体デバイスQ11・Q12・Q13とを備える。
グラファイト基板18GHは、表面にグラファイト基板の表面電極層23を備える。すなわち、グラファイト基板18GHは一方の面を金属と接合された複合材を備えていても良い。
半導体デバイスQ11・Q12・Q13は、表面電極層23と銀焼成層27を介して接合されていても良い。
また、グラファイト基板18GHのグラファイトは厚み方向に高熱伝導率が配向されている。
絶縁層21はセラミックス基板を備えていても良い。また、セラミックス基板の裏面には、銅箔層22が配置されていても良い。すなわち、絶縁層21はセラミックス基板と金属の複合材を備えていても良い。
(変形例1)
第15の実施の形態の変形例1に係るPM1であって、図72(a)と同様の模式的平面パターン構成のXIII−XIII線に沿う模式的断面構造は、図73(a)に示すように表される。なお、図73(a)では、複数の半導体デバイス(パワートランジスタデバイス)Qの一例として、例えば3個の半導体デバイス(モジュール)Q11・Q12・Q13を搭載した場合が例示されている。
第15の実施の形態の変形例1に係るPM1は、図73(a)に示すように、絶縁層21と、絶縁層21上に配置されたグラファイト基板18GHと、グラファイト基板18GH上に配置された半導体デバイスQ11・Q12・Q13とを備える。
グラファイト基板18GHは、表面にグラファイト基板の表面電極層23を備える。また、グラファイト基板18GHは、裏面にグラファイト基板の裏面電極層24を備える。すなわち、グラファイト基板18GHは表面・裏面の両方の面を金属と接合された複合材を備えていても良い。
半導体デバイスQ11・Q12・Q13は、表面電極層23と銀焼成層27を介して接合されていても良い。
グラファイト基板18GHのグラファイトは厚み方向に高熱伝導率が配向されている。
また、図73(a)に示すように、絶縁層21とグラファイト基板18GHは、熱伝導層25を介して接触している。
絶縁層21はセラミックス基板を備えていても良い。また、セラミックス基板は、裏面にセラミックス基板の裏面電極層22を備えていても良い。すなわち、絶縁層21はセラミックス基板と金属の複合材を備えていても良い。
熱伝導層25は、熱伝導シート層、半田層、若しくは銀焼成層のいずれかを備えていても良い。
セラミックス基板は、Al2O3、Si3N4、若しくはAlNのいずれかを備えていても良い。
(変形例2)
第15の実施の形態の変形例2に係るPM1であって、図72(a)と同様の模式的平面パターン構成のXIII−XIII線に沿う模式的断面構造は、図73(b)に示すように表される。なお、図73(b)では、複数の半導体デバイス(パワートランジスタデバイス)Qの一例として、例えば3個の半導体デバイス(モジュール)Q11・Q12・Q13を搭載した場合が例示されている。
第15の実施の形態の変形例2に係るPM1は、図73(b)に示すように、絶縁層21と、絶縁層21上に配置されたグラファイト基板18GHと、グラファイト基板18GH上に配置された半導体デバイスQ11・Q12・Q13とを備える。
グラファイト基板18GHは、表面にグラファイト基板の表面電極層23を備える。また、グラファイト基板18GHは、裏面にグラファイト基板の裏面電極層24を備える。すなわち、グラファイト基板18GHは表面・裏面の両方の面を金属と接合された複合材を備えていても良い。
半導体デバイスQ11・Q12・Q13は、表面電極層23と銀焼成層27を介して接合されていても良い。
グラファイト基板18GHのグラファイトは厚み方向に高熱伝導率が配向されている。
また、図73(b)に示すように、絶縁層21とグラファイト基板18GHは、熱伝導層25を介して接触している。
絶縁層21はセラミックス基板を備えていても良い。また、セラミックス基板の表面には、セラミックス基板の表面電極層36が配置され、裏面には、セラミックス基板の裏面電極層22が配置されていても良い。結果として、絶縁層21はセラミックス基板と金属の複合材を備え、DBC基板を備えていても良い。
熱伝導層25は、熱伝導シート層、半田層、若しくは銀焼成層のいずれかを備えていても良い。
セラミックス基板は、Al2O3、Si3N4、若しくはAlNのいずれかを備えていても良い。
第15の実施の形態およびその変形例1・2に係るPM1は、グラファイト基板18GHと絶縁層(セラミックス基板)との貼り合せ構造を備える。
第15の実施の形態およびその変形例1・2に係るPM1は、グラファイトプレートに対して、低コストのセラミックス基板、例えばAl2O3を貼り合せたDBC基板を用いたパワーモジュール構造を備えていても良い。また、貼り合せ方として、カーボンシートや半田層、若しくは銀焼成層で接合するような縦構造を備えていても良い。これにより、低コストかつ信頼性を確保した基板構造が得られる。また、グラファイトプレートとAl2O3のセラミックス基板をロウ付けなどで接合する縦構造を備えていても良い。
(第15の実施の形態における比較例1)
第15の実施の形態における比較例1に係るPM1Aの模式的断面構造は、図74(a)に示すように表される。なお、図74(a)では、複数の半導体デバイス(パワートランジスタデバイス)Qの一例として、例えば3個の半導体デバイス(モジュール)Q11・Q12・Q13を搭載した場合が示されている。
第15の実施の形態における比較例1に係るPM1Aは、図74(a)に示すように、絶縁層21Nと、絶縁層21Nの表面に配置された厚銅層22Uと、絶縁層21Nの裏面に配置された厚銅層22Dと、厚銅層22U上に半田層27Sを介して配置された半導体デバイスQ11・Q12・Q13とを備える。厚銅層22U/絶縁層21N/厚銅層22Dによって、結果として、厚銅絶縁基板が構成されている。絶縁層21Nとしては、例えば、SiN系セラミックス層などが適用可能である。
(第15の実施の形態における比較例2)
第15の実施の形態における比較例2に係るPM1Aの模式的断面構造は、図74(b)に示すように表される。図74(a)と同様に、図74(b)では、複数の半導体デバイス(パワートランジスタデバイス)Qの一例として、例えば3個の半導体デバイス(モジュール)Q11・Q12・Q13を搭載した場合が示されている。
第15の実施の形態における比較例2に係るPM1Aは、図74(b)に示すように、絶縁層21Sと、絶縁層21Sの表面に配置された厚銅層22Uと、絶縁層21Sの裏面に配置された銅箔層22Cと、厚銅層22U上に半田層27Sを介して配置された半導体デバイスQ11・Q12・Q13とを備える。厚銅層22U/絶縁層21S/銅箔層22Cによって、結果として、厚銅+絶縁シートからなる厚銅絶縁シート基板が構成されている。絶縁層21Sとしては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂をベース樹脂とした半硬化材料のシート層などが適用可能である。
(熱抵抗シミュレーション)
熱抵抗シミュレーションにおいて、境界条件は、裏面65℃、熱伝達率=5000(W/m2K)、SiC半導体デバイスQの発熱量を100Wとした。
裏面65℃とは、冷却器28の下層面に境界条件として65℃固定を想定している。水冷式と仮定し、熱伝達率=5000(W/m2K)と設定している。すなわち、アルミニウム製の冷却器28において、冷却水温度を65℃固定とする。熱伝達率とは2つの物体の接触面を通過する熱の伝わり易さのことであり、熱伝導率とは異なる。
熱抵抗Rthjw(℃/W)は、SiC半導体デバイスQのTj(ジャンクション温度)とTw(冷却水温度)間の熱抵抗を表す。
―第15の実施の形態―
第15の実施の形態に係るPM1の熱抵抗シミュレーションに適用する模式的断面構造は、図75(a)に示すように表され、熱伝導層25Tと冷却器28が追加されている。熱抵抗シミュレーションに適用する各層の材質/厚さは、以下の通りである。すなわち、半導体デバイスQ(SiC/0.25mm)、銀焼成層27(銀/0.03mm)、グラファイト基板18GHの表面電極層23(Cu/1mm)、グラファイト基板18GH(グラファイト/3mm)、セラミックス基板21(Al2O3/0.32mm)、セラミックス基板21の裏面電極層22(Cu/0.5mm)、熱伝導層25T(カーボンシート/0.2mm)、冷却器28(Al/1mm)である。
絶縁層21として、セラミックス基板(Si3N4)を適用する例では、以下の通りである。すなわち、半導体デバイスQ(SiC/0.25mm)、銀焼成層27(銀/0.08mm)、グラファイト基板18GHの表面電極層23(Cu/1mm)、グラファイト基板18GH(グラファイト/3mm)、セラミックス基板21(Si3N4/0.32mm)、セラミックス基板21の裏面電極層22(Cu/0.5mm)、熱伝導層25T(カーボンシート/0.2mm)、冷却器28(Al/1mm)である。
―変形例1―
第15の実施の形態の変形例1に係るPM1の熱抵抗シミュレーションに適用する模式的断面構造は、図75(b)に示すように表され、熱伝導層25Tと冷却器28が追加されている。熱抵抗シミュレーションに適用する各層の材質/厚さは、以下の通りである。すなわち、半導体デバイスQ(SiC/0.25mm)、銀焼成層27(銀/0.03mm)、グラファイト基板18GHの表面電極層23(Cu/0.7mm)、グラファイト基板18GH(グラファイト/3mm)、グラファイト基板18GHの裏面電極層24(Cu/0.7mm)、熱伝導層25(カーボンシート/0.2mm)、セラミックス基板21(Al2O3/0.32mm)、セラミックス基板21の裏面電極層22(Cu/0.1mm)、熱伝導層25T(カーボンシート/0.2mm)、冷却器28(Al/1mm)である。
―変形例2―
第15の実施の形態の変形例2に係るPM1の熱抵抗シミュレーションに適用する模式的断面構造は、図75(c)に示すように表され、熱伝導層25Tと冷却器28が追加されている。熱抵抗シミュレーションに適用する各層の材質/厚さは、以下の通りである。すなわち、半導体デバイスQ(SiC/0.25mm)、銀焼成層27(銀/0.03mm)、グラファイト基板18GHの表面電極層23(Cu/0.7mm)、グラファイト基板18GH(グラファイト/3mm)、グラファイト基板18GHの裏面電極層24(Cu/0.7mm)、熱伝導層25(カーボンシート/0.2mm)、セラミックス基板21の表面電極層36(Cu/0.1mm)、セラミックス基板21(Al2O3/0.32mm)、セラミックス基板21の裏面電極層22(Cu/0.1mm)、熱伝導層25T(カーボンシート/0.2mm)、冷却器28(Al/1mm)である。
―第15の実施の形態における比較例1―
第15の実施の形態における比較例1に係るPM1Aの熱抵抗シミュレーションに適用する模式的断面構造は、図76(a)に示すように表される。熱抵抗シミュレーションに適用する各層の材質/厚さは、以下の通りである。すなわち、半導体デバイスQ(SiC/0.25mm)、半田層27S(半田/0.15mm)、厚銅層22U(Cu/1.5mm)、絶縁層21N(Si3N4/0.32mm)、厚銅層22D(Cu/1.5mm)、熱伝導層25T(カーボンシート/0.2mm)、冷却器28(Al/1mm)である。
―第15の実施の形態における比較例2―
第15の実施の形態における比較例2に係るPM1Aの熱抵抗シミュレーションに適用する模式的断面構造は、図76(b)に示すように表される。すなわち、熱抵抗シミュレーションに適用する各層の材質/厚さは、以下の通りである。半導体デバイスQ(SiC/0.25mm)、半田層27S(半田/0.15mm)、厚銅層22U(Cu/3mm)、絶縁層21S(樹脂シート/0.1mm)、銅箔層22C(Cu/0.3mm)、熱伝導層25T(カーボンシート/0.2mm)、冷却器28(Al/1mm)である。
(熱抵抗シミュレーションの比較結果)
第15の実施の形態およびその変形例1〜2に係るPM1と第15の実施の形態における比較例1〜4に係るPM1Aとの熱抵抗シミュレーションの比較結果は、図77に示すように表される。
図77のC1は、第15の実施の形態における比較例1において、図76(a)に示すように、チップ下接合層として、半田層27Sを適用する例に対応している。
図77のC2は、第15の実施の形態における比較例2において、図76(b)に示すように、チップ下接合層として、半田層27Sを適用する例に対応している。
図77のC3は第15の実施の形態における比較例3を表し、第15の実施の形態における比較例1において、チップ下接合層として、銀焼成層27を適用する例に対応している。
図77のC4は第15の実施の形態における比較例4を表し、第15の実施の形態における比較例2において、チップ下接合層として、銀焼成層27を適用する例に対応している。
第15の実施の形態における比較例1〜4に係るPM1Aの熱抵抗シミュレーション結果によれば、熱抵抗Rthjw(℃/W)の値は、C1/C2/C3/C4に対して、約0.85(℃/W)/0.83(℃/W)/0.75(℃/W)/0.73(℃/W)が得られている。
図77のE1は第15の実施の形態において、Cu(23)/グラファイト基板(18GH)/セラミックス基板21(Al2O3)/Cu(22)なる構造例に対応している。
図77のE2は第15の実施の形態の変形例1において、Cu(23)/グラファイト基板(18GH)/Cu(24)/熱伝導層(カーボンシート:25)/セラミックス基板21(Al2O3)/Cu(22)なる構造例に対応している。
図77のE3は第15の実施の形態の変形例2において、Cu(23)/グラファイト基板(18GH)/Cu(24)/熱伝導層(カーボンシート:25)/Cu(36)/セラミックス基板21(Al2O3)/Cu(22)なる構造例に対応している。
第15の実施の形態およびその変形例1〜2に係るPM1の熱抵抗シミュレーション結果によれば、熱抵抗Rthjw(℃/W)の値は、E1/E2/E3に対して、約0.73(℃/W)/0.74(℃/W)/0.74(℃/W)が得られている。
第15の実施の形態における比較例1・2に係るPM1Aでは、第15の実施の形態における比較例3・4(チップ下を銀焼成層で接合した場合)或いは、第15の実施の形態およびその変形例1・2に係るPM1に比較し、熱抵抗が相対的に高い結果が得られている。
一方、第15の実施の形態における比較例3・4(チップ下を銀焼成層で接合した場合)では、第15の実施の形態およびその変形例1・2に係るPM1と同程度の熱抵抗シミュレーション結果が得られている。しかしながら、第15の実施の形態における比較例1・2に係るPM1Aの半田層27Sを銀焼成層27に置換した第15の実施の形態における比較例3・4(チップ下を銀焼成層で接合した場合)では、信頼性が低下する。この理由は、以下の通りである。
第15の実施の形態における比較例1〜4の構造の場合、厚さ2mm以上の銅板を基板に使用するため、環境温度やデバイスの発熱による温度変化により熱応力が接合部である半田層27Sや銀焼成層27にかかる。この際に、銅(Cu)とSiCの線膨張係数(温度変化に対する材料の伸び率)が大きく異なるため(銅の線膨張係数は、例えば約16.5ppm/K、SiCの線膨張係数は、例えば約3ppm/K)、銀焼成層からなる接合部を有する第15の実施の形態における比較例3・4にかかるPM1Aの信頼性が低下する。銀焼成層よりも半田層の方が信頼性が保持可能なのは、弾性率が低いためである。ただし、半田は融点が低く、SiCデバイスを高温駆動化するためには適していない。ここで、ppmは10-6を表す。以下同様である。
一方、図77に示す第15の実施の形態およびその変形例1〜2に係るPM1では、チップ下を銀焼成層で接合した場合、信頼性を保持可能である。この理由は、以下の通りである。即ち、グラファイトは低熱伝導方向に例えば約25.2ppm/K、高熱伝導方向に例えば約−0.6ppm/Kと異方性をもっており、銅との複合基板(Cu/グラファイト/Cu)とすると、合成的な線膨張係数は銅より低くなる。更に、材料の弾性率が銅の120GPaに比べてグラファイトは50GPaと柔らかいこともあり、チップ下接合部にかかる熱応力を下げることができる。結果として、第15の実施の形態およびその変形例1〜2に係るPM1では、第15の実施の形態における比較例3・4(チップ下を銀焼成層で接合した場合)よりも銀焼成接合部の信頼性がもつことになる。すなわち、第15の実施の形態およびその変形例1〜2に係るPM1では、相対的に熱抵抗が低くかつ高信頼性が得られる。
(第15の実施の形態:セラミックス基板依存性)
第15の実施の形態に係るPM1において、セラミックス基板21の材料をAl2O3/Si3N4/AlNと変化させた場合の熱抵抗シミュレーション結果は、図78に示すように表される。図78において、E11/E12/E13は、セラミックス基板21として、Al2O3/Si3N4/AlNを用いた例に対応している。熱抵抗シミュレーション結果により、熱抵抗Rthjw(℃/W)の値は、E11/E12/E13に対して、約0.73(℃/W)/0.67(℃/W)/0.64(℃/W)が得られている。
図78の例では、熱抵抗シミュレーションに適用する各層の材質/厚さは、以下の通りである。すなわち、半導体デバイスQ(SiC/0.25mm)、銀焼成層27(銀/0.03mm)、グラファイト基板の表面電極層23(Cu/1mm)、グラファイト基板18GH(グラファイト/3mm)、セラミックス基板21(Al2O3/Si3N4/AlN 0.32mm)、セラミックス基板の裏面電極層22(Cu/1mm)、熱伝導層25T(カーボンシート/0.2mm)、冷却器28(Al/1mm)である。
(第15の実施の形態の変形例1:熱伝導層とセラミックス基板の組み合わせ依存性)
第15の実施の形態の変形例1に係るPM1において、熱伝導層25(熱伝導シート層/半田層/銀焼成層)とセラミックス基板21(Al2O3/Si3N4/AlN)の組み合わせによる熱抵抗シミュレーション結果は、図79に示すように表される。
図79のE21は、熱伝導層25/セラミックス基板21の組み合わせとして、熱伝導シート層/Al2O3に対応している。
図79のE22は、熱伝導層25/セラミックス基板21の組み合わせとして、半田層/Al2O3に対応している。
図79のE23は、熱伝導層25/セラミックス基板21の組み合わせとして、銀焼成層/Al2O3に対応している。
図79のE24は、熱伝導層25/セラミックス基板21の組み合わせとして、熱伝導シート層/Si3N4に対応している。
図79のE25は、熱伝導層25/セラミックス基板21の組み合わせとして、半田層/Si3N4に対応している。
図79のE26は、熱伝導層25/セラミックス基板21の組み合わせとして、銀焼成層/Si3N4に対応している。
図79のE27は、熱伝導層25/セラミックス基板21の組み合わせとして、熱伝導シート層/AlNに対応している。
図79のE28は、熱伝導層25/セラミックス基板21の組み合わせとして、半田層/AlNに対応している。
図79のE29は、熱伝導層25/セラミックス基板21の組み合わせとして、銀焼成層/AlNに対応している。
図79の例では、熱抵抗シミュレーションに適用する各層の材質/厚さは、以下の通りである。すなわち、半導体デバイスQ(SiC/0.25mm)、銀焼成層27(銀/0.03mm)、グラファイト基板18GHの表面電極層23(Cu/0.8mm)、グラファイト基板18GH(グラファイト/3mm)、グラファイト基板18GHの裏面電極層24(Cu/0.8mm)、熱伝導層25(熱伝導シート層/0.2mm/半田層/銀焼成層)、セラミックス基板21(Al2O3/0.32mm/Si3N4/AlN)セラミックス基板21の裏面電極層22(Cu/0.1mm)、熱伝導層25T(カーボンシート/0.2mm)、冷却器28(Al/1mm)である。
第15の実施の形態の変形例1に係るPM1において、熱伝導層25(熱伝導シート層/半田層/銀焼成層)とセラミックス基板21(Al2O3/Si3N4/AlN)の組み合わせによる熱抵抗シミュレーション結果によれば、熱抵抗Rthjw(℃/W)の値は、E21/E22/E23/E24/E25/E26/E27/E28/E29に対して、約0.75(℃/W)/0.73(℃/W)/0.72(℃/W)/0.70(℃/W)/0.68(℃/W)/0.67(℃/W) /0.68(℃/W)/0.66(℃/W)/0.65(℃/W)が得られている。
(第15の実施の形態の変形例2:熱伝導層とセラミックス基板の組み合わせ依存性)
第15の実施の形態の変形例2に係るPM1において、熱伝導層(熱伝導シート層/半田層/銀焼成層)とセラミックス基板(Al2O3/Si3N4/AlN)の組み合わせによる熱抵抗シミュレーション結果は、図80に示すように表される。
図80のE31は、熱伝導層25/セラミックス基板21の組み合わせとして、熱伝導シート層/Al2O3に対応している。
図80のE32は、熱伝導層25/セラミックス基板21の組み合わせとして、半田層/Al2O3に対応している。
図80のE33は、熱伝導層25/セラミックス基板21の組み合わせとして、銀焼成層/Al2O3に対応している。
図80のE34は、熱伝導層25/セラミックス基板21の組み合わせとして、熱伝導シート層/Si3N4に対応している。
図80のE35は、熱伝導層25/セラミックス基板21の組み合わせとして、半田層/Si3N4に対応している。
図80のE36は、熱伝導層25/セラミックス基板21の組み合わせとして、銀焼成層/Si3N4に対応している。
図80のE37は、熱伝導層25/セラミックス基板21の組み合わせとして、熱伝導シート層/AlNに対応している。
図80のE38は、熱伝導層25/セラミックス基板21の組み合わせとして、半田層/AlNに対応している。
図80のE39は、熱伝導層25/セラミックス基板21の組み合わせとして、銀焼成層/AlNに対応している。
図80の例では、熱抵抗シミュレーションに適用する各層の材質/厚さは、以下の通りである。すなわち、半導体デバイスQ(SiC/0.25mm)、銀焼成層27(銀/0.03mm)、グラファイト基板18GHの表面電極層23(Cu/0.8mm)、グラファイト基板18GH(グラファイト/3mm)、グラファイト基板18GHの裏面電極層24(Cu/0.8mm)、熱伝導層25(熱伝導シート層/0.2mm/半田層/銀焼成層)、セラミックス基板21の表面電極層36(Cu/0.1mm)、セラミックス基板21(Al2O3/0.32mm/Si3N4/AlN)、セラミックス基板21の裏面電極層22(Cu/0.1mm)、熱伝導層25T(カーボンシート/0.2mm)、冷却器28(Al/1mm)である。
第15の実施の形態の変形例2に係るPM1において、熱伝導層25(熱伝導シート層/半田層/銀焼成層)とセラミックス基板21(Al2O3/Si3N4/AlN)の組み合わせによる熱抵抗シミュレーション結果によれば、熱抵抗Rthjw(℃/W)の値は、E31/E32/E33/E34/E35/E36/E37/E38/E39に対して、約0.75(℃/W)/0.73(℃/W)/0.72(℃/W)/0.70(℃/W)/0.68(℃/W)/0.67(℃/W) /0.68(℃/W)/0.66(℃/W)/0.65(℃/W)が得られている。
第15の実施の形態に係るPM1は、図72(a)および図72(b)に示すように、例えば、SiN系のセラミックス基板21の上面(第1面)に設けられた導電性のグラファイト基板(グラファイトプレート)18GHと、セラミックス基板21の下面(第2面)に設けられたCu箔などの裏面電極パターン(第1電極パターン)22と、グラファイト基板18GH上に配置されたCu箔などの表面電極パターン(第2電極パターン)23とを有するグラファイト絶縁基板20と、表面電極パターン23上に図示矢印X方向に沿って並べて配置された3個の半導体デバイスQ11・Q12・Q13とを備える。
第15の実施の形態に係るPM1は、図示していないが、半導体デバイスQ11・Q12・Q13の外囲が全体的にモールド樹脂によって封止(樹脂モールド)されてモールド型パッケージタイプのパワーモジュール、若しくはケース内に収納されてケース型パッケージタイプのパワーモジュールとなる。
グラファイト基板18GHは、セラミックス基板21よりも厚く、略均一な厚さを有するプレート型構造を備える。
第15の実施の形態に係るPM1において、グラファイト基板18GHは、グラファイト熱伝導率配向として、面方向(XY面)よりも厚み方向(XZ面、YZ面)に熱伝導率が高い異方性な熱伝導率を備える。
すなわち、グラファイト基板18GHには、半導体デバイスQ11・Q12・Q13の配置の方向(面方向)に対し、最も熱拡散が良好となる配向方向が存在する。
グラファイト基板18GHにおいて、最も熱拡散が良好となる配向方向とは、熱伝導率が相対的に高い方向であって、例えば、半導体デバイスQ11・Q12・Q13の配置の方向をX方向とすると、X方向にほぼ垂直なYZ方向(X方向と実質的に直交するYZ面)となる。
なお、配向方向は、グラファイト基板18GHの配向がXZ方向の場合にはGH(XZ)と表記し、YZ方向の場合にはGH(YZ)と表記する。
すなわち、第15の実施の形態に係るPM1は、異方性な熱伝導率を備えるグラファイト基板18GHと、グラファイト基板18GH上に並べて配置され、動作時に発熱する3個の半導体デバイスQ11・Q12・Q13とを備え、グラファイト基板18GHの平面上、半導体デバイスQ11・Q12・Q13の並びの方向が、グラファイト基板18GHの熱伝導率が相対的に低いX方向(並びの方向)を基準として、−45度以上+45度以下の範囲(許容されるずれ量:図81参照)とされる。
また、第15の実施の形態に係るPM1は、セラミックス基板21と、セラミックス基板21の上面に配置された異方性な熱伝導率を備えるグラファイト基板18GHと、セラミックス基板21の上面に対向する下面に配置された裏面電極パターン22と、グラファイト基板18GH上に配置された表面電極パターン23と、表面電極パターン23を介して、グラファイト基板18GH上に並べて配置され、動作時に発熱する3個の半導体デバイスQ11・Q12・Q13とを備え、グラファイト基板18GHは、面方向よりも厚み方向に熱伝導率が相対的に高い配向を備え、グラファイト基板18GHの平面上、3個の半導体デバイスQ11・Q12・Q13の並びの方向が、グラファイト基板18GHの熱伝導率が相対的に低い配向方向を基準として、−45度以上+45度以下の範囲とされる。
もしくは、第15の実施の形態に係るPM1は、セラミックス基板21と、セラミックス基板21の上面に配置された異方性な熱伝導率を備えるグラファイト基板18GHとを備えるグラファイト絶縁基板20と、グラファイト基板18GH上に並べて配置され、動作時に発熱する3個の半導体デバイスQ11・Q12・Q13とを備え、グラファイト基板18GHは、面方向よりも厚み方向に熱伝導率が相対的に高い配向を備え、グラファイト基板18GHの平面上、3個の半導体デバイスQ11・Q12・Q13の並びの方向が、グラファイト基板18GHの熱伝導率が相対的に低い配向方向を基準として、−45度以上+45度以下の範囲とされる。
第15の実施の形態に係るPM1において、半導体デバイスQ11・Q12・Q13は、それぞれ、表面電極パターン23上に銀焼成層27を介して接合されている。なお、半導体デバイスQ11・Q12・Q13の接合には、銀焼成以外に、SnAgCu系の半田などを用いることも可能である。すなわち、グラファイト基板18GH上に表面電極パターン23を配置したことにより、半田接合に限らず、銀焼成による接合が可能である。
図72(a)および図72(b)に示した第15の実施の形態に係るPM1においては、例えば、セラミックス基板21の厚さが約0.32mm、グラファイト基板18GHの厚さ(H)が約2.5mm、裏面電極パターン22の厚さが約0.2mm、表面電極パターン23の厚さが約0.3mm、銀焼成層27の厚さが約60μm、半導体デバイスQ11・Q12・Q13の厚さが約350μmとされている。
裏面電極パターン22の熱伝達率は、約30000(W/m2K)である。
また、半導体デバイスQ11・Q12・Q13は、X方向およびY方向のサイズ(C1×L1)が5mm×5mm程度とされている。半導体デバイスQ11・Q12・Q13は、X方向に対しては、表面電極パターン23の各エッジからの距離がX1、各半導体デバイスQ11・Q12・Q13間の間隔距離がX2とされ、Y方向に対しては、表面電極パターン23の各エッジからの距離がY1とされている。
第15の実施の形態に係るPM1において、半導体デバイスQ11・Q12・Q13の並びの方向の間隔距離X2は、半導体デバイスQ11・Q12・Q13からグラファイト基板18GHのエッジまでの距離Y1よりも短い。
なお、半導体デバイスQ11・Q12・Q13としては、SiC MOSFETやIGBTといったパワートランジスタデバイスに限らず、例えばFRD(Fast Recovery Diode)やショットキーバリアダイオードなどを含むものであっても良いし、1つまたは複数のチップの外囲がモールド樹脂やケースによって封止されたモジュールタイプであっても良い。
SiC MOSFETの場合には、上側がソース電極、下側がドレイン電極となるように配置される。IGBTの場合には、上側がエミッタ電極、下側がコレクタ電極となるように配置される。後述する他の半導体デバイスについても同様である。
また、図示していないが、裏面電極パターン22に、放熱器としてのAl製のヒートシンクや放熱フィンまたは放熱ピン、もしくは冷却器を接合するようにしても良い。液冷(水冷)式とした場合においては、冷媒として、例えば、水、または水とエチレングリコールとを50%ずつの割合で混合させた混合液や冷却気体(冷気)などの熱伝導率の良いものが用いられる。
第15の実施の形態に係るPM1によれば、複数の半導体デバイスQを並べて配置した場合のモジュール構造において、グラファイト基板18GHの配向方向を、最も熱拡散が良好となる方向に近似(実質的に一致)させることによって、さらなる低熱抵抗化を図ることができる。
なお、複数の半導体デバイスQは、3個に限定されないことは勿論であり、並べて配置される場合に限定されるものでもない。
また、グラファイト絶縁基板20としては、グラファイト基板18GHの上面に絶縁性の基板などが配置された構成とすることも可能であり、グラファイトプレートを備えた、例えばAMB基板、DBC基板、もしくはDBA基板などの絶縁基板を適用できる。
(グラファイトプレート)
(基本構成)
第15の実施の形態に係るPM1においては、グラファイト基板18GHとして、配向の異なる2種類のグラファイトプレートの使用が可能である。
グラファイト基板18GHとして適用可能なグラファイトプレートを構成するグラファイトシート(グラフェン)GSの模式的構成(積層構造例)は、図5に示すように表される。
グラファイト基板18GHには、面方向よりも厚み方向に熱伝導率が高いXZ配向を有するグラファイトプレート18GH(XZ)と、面方向よりも厚み方向に熱伝導率が高いYZ配向を有するグラファイトプレート18GH(YZ)とを適用可能であり、グラファイトプレート18GH(YZ)は図81(a)に示すように表わされ、グラファイトプレート18GH(XZ)は図81(b)に示すように表される。
図73に示すように、n層からなる各面のグラファイトシートGS1・GS2・GS3・…・GSnは、1つの積層結晶構造の中に多数の六方晶系の共有結合を有し、各面のグラファイトシートGS1・GS2・GS3・…・GSn間がファンデルワールス力によって結合されている。
すなわち、炭素系異方伝熱材料であるグラファイトは、炭素原子の六角形網目構造の層状結晶体であって、熱伝導も異方性を持っており、図5に示すグラファイトシートGS1・GS2・GS3・…・GSnは、結晶面方向(XY面上)に対して、Z軸の厚さ方向よりも大きな熱伝導度(高い熱伝導率)を有する。
一方、図81(a)に示すように、GH(YZ)配向を有するグラファイトプレート18GH(YZ)場合には、例えば、X=5(W/mK)、Y=1500(W/mK)、Z=1500(W/mK)の熱伝導率を備える。
これに対し、図81(b)に示すように、GH(XZ)配向を有するグラファイトプレート18GH(XZ)の場合には、例えば、X=1500(W/mK)、Y=5(W/mK)、Z=1500(W/mK)の熱伝導率を備える。
なお、グラファイトプレート18GH(XZ)・18GH(YZ)は、共に、密度が2.2(g/cm3 )程度であり、厚さが0.7mm〜10mm程度であり、大きさが40mm×40mm以下程度である。
ここで、グラファイトプレート18GH(YZ)をグラファイト基板18GHとして適用した第15の実施の形態に係るPM1においては、図81(a)および図81(b)に示すように、半導体デバイスQ11・Q12・Q13の配置の方向PD1が、X方向にほぼ一致する、グラファイト基板18GHのGH(YZ)の配向方向TDと実質的に直交する熱伝導率の相対的に低い配向方向PDに対し、グラファイト基板18GHの平面(基板面)上において、時計方向に約−45度以上+45度以下の角度θの範囲、好ましくは、約−30度以上+30度以下の角度θの範囲とされる。
一方、グラファイトプレート18GH(XZ)をグラファイト基板18GHとして適用した第15の実施の形態に係るPM1においては、図81(c)および図81(d)に示すように、半導体デバイスQ11・Q12・Q13の配置の方向PD1が、Y方向にほぼ一致する、グラファイト基板18GHのGH(XZ)配向の配向方向TDと実質的に直交する熱伝導率の相対的に低い配向方向PDに対し、グラファイト基板18GHの平面(基板面)上において、時計方向に約−45度以上+45度以下の角度θの範囲、好ましくは、約−30度以上+30度以下の角度θの範囲とされる。
(配向方向による熱抵抗シミュレーション)
第15の実施の形態に係るPM1の熱抵抗特性について、GH(XZ)配向を例にシミュレーションを行った結果は、図82(a)に示すように表わされ、GH(YZ)配向を例にシミュレーションを行った結果は、図82(b)に示すように表される。
なお、両シミュレーションは、図72(a)および図72(b)に示したPM1において、X1を2mmとし、Y1を、2mm、4mm、6mm、8mm、10mmとした場合の熱抵抗(℃/W)について、X2を、2mm(図示(a))、4mm(図示(b))、6mm(図示(c))、8mm(図示(d))、10mm(図示(e))とした場合について実施した。
図82(a)および図82(b)から明らかなように、複数の半導体デバイスQを配置したモジュール構造においては、グラファイト基板18GHがGH(XZ)配向ならばX方向の距離(X2)を伸ばすほど熱抵抗は下がり、GH(YZ)配向ならばY方向の距離(Y1)を伸ばすほど熱抵抗が下がる。
また、以上の結果から、熱伝導率が低い配向方向に対しては、ある程度の距離(例えば、X2・Y1=4mm程度以上)の距離があれば熱干渉を防げることもわかった。
すなわち、図82(a)および図82(b)に示すように、複数の半導体デバイスQをX方向に配置したPM1においては、低熱抵抗化のためには、GH(YZ)配向のグラファイト基板18GHの方が有効であり、複数の半導体デバイスQをY方向に配置したPM1においては、低熱抵抗化のためには、GH(XZ)配向のグラファイト基板18GHの方が有効となる。
第15の実施の形態に係るPM1によれば、異方性ではあるが高熱伝導率を有するグラファイトプレート18GH(XZ)・18GH(YZ)を用いたグラファイト絶縁基板20を使用し、そのグラファイト基板18GH上に複数の半導体デバイスQを並べて配置した場合のモジュール構造において、最も熱拡散が良好となるグラファイトプレート18GH(XZ)・18GH(YZ)配向の配向方向TDとして、複数の半導体デバイスQのY方向・X方向の配置の方向とほぼ垂直となるようにすることで、熱拡散性が良好で、構造的にも簡素であり、安価で、より低熱抵抗化が可能なパワーモジュールを提供できる。
[第16の実施の形態]
(概略構成)
第16の実施の形態に係るPM1であって、樹脂モールド前の模式的鳥瞰パターン構成は図83(a)に示すように表わされ、模式的平面パターン構成は図83(b)に示すように表される。なお、図83(a)および図83(b)は、PM1における半導体デバイスの配置の具体例を示すものであって、半導体デバイスQとして、SiC MOSFET Q1・Q4を適用した、2 in 1モジュールタイプのハーフブリッジ内蔵モジュールが例示されている。
すなわち、第16の実施の形態に係るPM1は、例えば図30(a)に示すように、直列接続された2個のSiC MOSFET Q1・Q4が、1つのモジュールに内蔵されたハーフブリッジ内蔵モジュールの構成を備える。
第16の実施の形態に係るPM1は、図示省略の樹脂モールド層に被覆されたセラミックス基板21の第1の辺に配置された正側電源入力端子電極(正側電力端子)Pおよび負側電源入力端子電極(負側電力端子)Nと、第1の辺に隣接する第2の辺に配置されたゲート端子GT1(ゲートG1)・ソースセンス端子SST1(ソースS1)と、第1の辺に対向する第3の辺に配置された出力端子電極(出力端子)Oと、第2の辺に対向する第4の辺に配置されたゲート端子GT4(ゲートG4)・ソースセンス端子SST4(ソースS4)とを備える。
なお、第16の実施の形態に係るPM1は、2個の出力端子Oを備えた4電力端子構造のパワーモジュールとなっている。
ここで、図83(a)および図83(b)に示すように、2個のSiC MOSFET Q1・Q4はそれぞれ3個のデバイス(チップ)を備え、SiC MOSFET Q1の各チップは、ゲート端子GT1・ソースセンス端子SST1に共通に接続され、SiC MOSFET Q4の各チップは、ゲート端子GT4・ソースセンス端子SST4に共通に接続される。
ゲート端子GT1・ソースセンス端子SST1は、SiC MOSFET Q1のゲート信号電極パターンGL1・ソース信号電極パターンSL1に接続され、ゲート端子GT4・ソースセンス端子SST4は、SiC MOSFET Q4のゲート信号電極パターンGL4・ソース信号電極パターンSL4に接続される。
図83(a)および図83(b)に示すように、ゲート信号電極パターンGL1・GL4およびソース信号電極パターンSL1・SL4には、外部取り出し用のゲート端子GT1・GT4およびソースセンス端子SST1・SST4が半田付けなどによって接続される。
なお、図83(a)および図83(b)に示すように、ゲート信号電極パターンGL1・GL4およびソース信号電極パターンSL1・SL4は信号基板261・264上に配置され、信号基板261・264はセラミックス基板21上に半田付けなどによって接続されていても良い。
信号基板261・264は、セラミックス基板で形成可能である。セラミックス基板は、例えば、Al2O3、AlN、SiN、AlSiC、若しくは、少なくとも表面が絶縁性のSiCなどで形成されていても良い。
また、図83(a)および図83(b)においては図示を省略しているが、SiC MOSFET Q1・Q4のドレインD1・ソースS1間およびドレインD4・ソースS4間に、逆並列にダイオード(DI1・DI4)が接続されていても良い。
正側電力端子P・負側電力端子N、外部取り出し用のゲート端子GT1・GT4およびソースセンス端子SST1・SST4は、例えば、Cuで形成可能である。
主配線導体である表面電極パターン23(23D1・23D4・23DN)は、例えば、Cuによって形成可能である。
ここで、図83(a)および図83(b)に示された例では、2 in 1モジュールタイプのハーフブリッジ内蔵モジュールにおいて、表面電極パターン23D1が、ハイ(High)側デバイス(SiC MOSFET Q1)用のドレイン電極パターンとして機能する。
また、表面電極パターン23D4が、ロウ(Low)側デバイス(SiC MOSFET Q4)用のドレイン電極パターンとして機能すると共に、ハイ側デバイス用のソース電極パターン(23S1)としても機能する。つまり、ドレイン電極パターン23D4は、SiC MOSFET Q4のドレイン電極であると同時に、SiC MISFET Q1のソース電極となる。
さらに、負側電力端子Nに接続される表面電極パターン23DNが、ロウ側デバイス用のソース電極パターン(23S4)として機能する。
すなわち、第16の実施の形態に係るPM1においては、図83(a)および図83(b)に示すように、SiC MOSFET Q1は表面電極パターン23D1上に搭載されて、ドレインD1が表面電極パターン23D1と接続されると共に、ソースS1がボンディングワイヤ(図示省略のソース信号用ボンディングワイヤ)を介して表面電極パターン23D4と接続される。
同様に、SiC MOSFET Q4は表面電極パターン23D4上に搭載されて、ドレインD4が表面電極パターン23D4と接続されると共に、ソースS4がボンディングワイヤ(図示省略のソース信号用ボンディングワイヤ)を介して表面電極パターン23DNと接続される。
また、第16の実施の形態に係るPM1にあっては、図示していないが、SiC MOSFET Q1のソースセンスパッド電極をソース信号電極パターンSL1に接続するソースセンス用ボンディングワイヤと、ゲートパッド電極をゲート信号電極パターンGL1に接続するゲート信号用ボンディングワイヤとを備える。
同様に、図示していないが、SiC MOSFET Q4のソースセンスパッド電極をソース信号電極パターンSL4に接続するソースセンス用ボンディングワイヤと、ゲートパッド電極をゲート信号電極パターンGL4に接続するゲート信号用ボンディングワイヤとを備える。
つまり、SiC MOSFET Q1・Q4の各ソース信号電極パターンSL1・SL4には、ソースセンスパッド電極を接続するための、ソースセンス用ボンディングワイヤがウエッジボンディングされる。
その他の構成などは第15の実施の形態の場合と、ほぼ同様であり、セラミックス基板21の上面上で、表面電極パターン23D1・23D4・23DNの下面には、グラファイト絶縁基板を構成する、GH(YZ)配向を備えるグラファイト基板18GHが配置されている。
すなわち、第16の実施の形態に係るPM1は、図83(a)および図83(b)に示すように、セラミックス基板21と、セラミックス基板21の上面(第1面)に配置されたグラファイト基板18GHと、グラファイト基板18GH上に配置された表面電極パターン(第2電極パターン)23D1・23D4・23DNと、セラミックス基板21の下面(第2面)に配置された裏面電極パターン(第1電極パターン)(図示省略)とを備えるグラファイト絶縁基板と、表面電極パターン23D1・23D4上に図示矢印X方向に沿って並べて配置された複数のSiC MOSFET Q1・Q4とを備える。
第16の実施の形態に係るPM1において、グラファイト基板18GHのGH(YZ)配向は、複数のSiC MOSFET Q1・Q4の配置のX方向にほぼ直交する、Y方向にほぼ一致する配向方向TDとされる。つまり、X方向に並べて配置されるSiC MOSFET Q1・Q4の、GH(YZ)の配向方向TDに対する並びの方向PD1のずれの許容量(許容されるずれ量)は、X方向に対応する配向方向PDを基準とし、グラファイト基板18GHの平面(基板面)上において、時計方向に約−45度以上+45度以下の角度θの範囲、好ましくは、約−30度以上+30度以下の角度θの範囲とされる。
なお、図83(a)および図83(b)において、半導体デバイスQがSiC MOSFETの場合、GT1・GT4は、SiC MOSFET Q1・Q4のゲート信号用のリード端子(いわゆる、ゲート端子)であり、SST1・SST4は、SiC MOSFET Q1・Q4のソース信号用のリード端子(いわゆる、ソースセンス端子)である。
これに対し、IGBTの場合には、GT1・GT4は、IGBT Q1・Q4のゲート信号用のリード端子(いわゆる、図30(b)のゲート端子G1・G4)となり、SST1・SST4は、IGBT Q1・Q4のエミッタ信号用のリード端子(いわゆる、図30(b)のエミッタセンス端子E1・E4)となる。
第16の実施の形態に係るPM1によれば、グラファイト基板18GHを適用したグラファイト絶縁基板の採用により、複数の半導体デバイスQの配置の方向PD1を、グラファイト基板18GHのGH(XZ)・GH(YZ)配向の配向方向TDにほぼ直交する熱伝導率の相対的に低い配向方向PDにより近似させることによって、高い熱拡散効果が期待できる。
すなわち、第16の実施の形態に係るPM1によっても、熱拡散性が良好で、構造的にも簡素であり、安価で、より低熱抵抗化が可能なパワーモジュールとすることができる。
なお、2 in 1モジュールタイプのPM1としては、ソース電極パターンを半導体デバイスQ1・Q4の上方に備える構造のものにも適用可能であり、また、2 in 1モジュールタイプのものに限定されるものでもない。
(熱の干渉作用)
以下に、第15〜第18の実施の形態に係るPMでの熱の干渉作用について説明する。
PMにおいては、小型化のために半導体デバイスQを近接させて配置したり、高い熱拡散効果を得ようとグラファイト基板18GHを必要以上に厚くすると、熱の干渉作用を起こしやすくなる。
第15〜第18の実施の形態に係るPMにおいて、デバイス間距離(例えば、図72(a)のX2)を広くした場合を例に、熱の干渉作用について説明するための模式的断面構造は、図84(a)に示すように表わされ、図84(a)に対応する模式的平面構成は、図84(b)に示すように表される。なお、図84(a)の断面構造は、図84(b)のXIV−XIV線に沿う断面に対応している。
ここで、半導体デバイスQA・QBからの熱が下方に約45度の角度で拡散すると仮定すると、図84(a)および図84(b)に示すように、グラファイト基板18GHの厚さ(H)をH1mmとし、デバイス間距離をX2a(X2a>X2)mmとした場合、半導体デバイスQAからの熱T1と半導体デバイスQBからの熱T1とがグラファイト基板18GH内で干渉し合う領域はほとんどできない。
すなわち、半導体デバイスQA・QBの並びのX方向の間隔距離X2aとしては、半導体デバイスQA・QBからグラファイト基板18GHの上面(第1面)に対向する下面(第2面)側までの距離(H)の2倍程度以上長いことが望ましい。
これに対し、第15〜第18の実施の形態に係るPMにおいて、デバイス間距離(X2)を狭くした場合を例に、熱の干渉作用について説明するための模式的断面構造は、図85(a)に示すように表わされ、図85(a)に対応する模式的平面構成は、図85(b)に示すように表される。なお、図85(a)の断面構造は、図85(b)のXV−XV線に沿う断面に対応している。
図85(a)および図85(b)に示すように、グラファイト基板18GHの厚さ(H)をH1mmとし、デバイス間距離をX2b(X2b<X2)mmとした場合、半導体デバイスQAからの熱T2と半導体デバイスQBからの熱T2とが、グラファイト基板18GH内で干渉し合う領域T3ができる。領域T3は、熱抵抗を上昇させる要因となり、望ましくない。
なお、図86(a)に示すように、デバイス間距離をX2a(X2a>X2)mmとした場合に、高い熱拡散効果を期待して、グラファイト基板18GHの厚さ(H)をH2(H2>H1)mmまで厚くすると、半導体デバイスQAからの熱T1と半導体デバイスQBからの熱T1とが、グラファイト基板18GH内で干渉し合う領域T3ができる。
逆に、図86(b)に示すように、デバイス間距離をX2b(X2b<X2)mmとした場合に、熱拡散効果を犠牲にして、グラファイト基板18GHの厚さ(H)をH3(H3<H1)mmまで薄くすると、半導体デバイスQAからの熱T1と半導体デバイスQBからの熱T1とが、グラファイト基板18GH内で干渉し合う領域はほとんどできない。
このように、グラファイト基板18GHの厚さ(H)と、半導体デバイスQA・QBのデバイス間距離(X2)との間には、トレードオフの関係があるため、グラファイト基板18GHの配向方向TDを、最も熱拡散が良好となる方向に近似(実質的に一致)させることによって、より効果的に低熱抵抗化が図れる。
なお、半導体デバイスQA・QBは、所定の角度を有して斜めに配置するようにした場合、同一直線上に直線的に配置される場合に比べ、デバイス間距離を若干は稼ぐことができるため、熱が干渉し合う領域を形成できにくくはなるものの、完全に抑制するのは難しい。
(半導体デバイスの配置例)
図87(a)〜図87(c)は、第15〜第18の実施の形態に係るPMにおいて、半導体デバイスQ11・Q12・Q13の配置例を示すものである。
半導体デバイスQ11・Q12・Q13は、例えば図87(a)に示すように、グラファイト基板18GHの基板面上、並びの配置の方向PDAが、X方向に対応する配向方向PDに沿ってほぼ直線状に配置される。
また、半導体デバイスQ11・Q12・Q13は、例えば図87(b)に示すように、グラファイト基板18GHの基板面上において、グラファイト基板18GHの一辺に対応するX方向に沿う配向方向PDに対し、所定の角度だけマイナス(−)方向に傾斜した配置の方向PDBにほぼ直線状に配置されても良い。
また、半導体デバイスQ11・Q12・Q13は、例えば図87(c)に示すように、グラファイト基板18GHの基板面上において、中央の半導体デバイスQ12に対し、半導体デバイスQ11がX方向に沿う配向方向PDから所定の角度だけプラス(+)方向に傾斜した配置の方向PDDに、半導体デバイスQ13が配向方向PDから所定の角度だけマイナス方向に傾斜した配置の方向PDCに、いわゆる千鳥状に配置することも可能である。
さらには、図89に示すように、例えば図87(c)のグラファイト基板18GHの基板面上において、半導体デバイスQ11またはQ13のいずれか一方が半導体デバイスQ12と同じ直線上(配向方向PD)に配置され、半導体デバイスQ11またはQ13のいずれか他方が半導体デバイスQ12に対して所定の角度だけ傾斜した配置の方向PDDまたはPDCに配置される組み合わせとしても良い。
(配置と熱抵抗との関係)
次に、第15〜第18の実施の形態に係るPMにおいて、半導体デバイスの配置のずれ量と熱抵抗との関係について説明する。
第15〜第18の実施の形態に係るPMにおいて、熱抵抗シミュレーションに用いたシミュレーションモデルの模式的平面構成は、図88(a)に示すように表わされ、熱抵抗シミュレーションの結果は、図88(b)に示すように表わされ、シミュレーション結果に基づく低熱抵抗化の効果(ずれ量の許容範囲)は、図88(c)に示すように表される。
シミュレーションモデルは、図88(a)に示すように、半導体デバイスQ11・Q12・Q13を図示矢印Y方向に沿って千鳥状(X方向に所定のずれ量をもって交互)に配置している。半導体デバイスQ11・Q12・Q13は、X方向およびY方向のサイズ(C1×L1)が5mm×5mmとされている。
半導体デバイスQ11・Q13は、X方向に対しては、表面電極パターン23の近い方のエッジ(近エッジ)からの距離X1が2mm、Y方向に対しては、近エッジからの距離Y1が2mmとされている。
半導体デバイスQ12は、Y方向に対しては、それぞれ隣接する半導体デバイスQ11・Q13との距離Y2が4mmとされている。
シミュレーションは、半導体デバイスQ13のX1が2mmの場合をX2=0とし、X方向に0から1mmずつ増加させた場合の熱抵抗について、半導体デバイスQ11のX1が2mmの場合をX3=0とし、X3を、0mm(図示(a))、1mm(図示(b))、2mm(図示(c))、3mm(図示(d))、4mm(図示(e))、5mm(図示(f))、6mm(図示(g))、7mm(図示(h))、8mm(図示(i))、9mm(図示(j))とした場合について実施した。
なお、図88(b)のシミュレーション結果は、X2=9mm、X3=9mmの時を1として規格化されている。
図88(b)の結果からも明らかなように、半導体デバイスQ11・Q12・Q13をY方向に千鳥状に配置した場合、中央に配置した半導体デバイスQ12に対し、半導体デバイスQ11・Q13のいずれか一方でもY方向の直線上(YZ方向)からX方向に外れると熱抵抗が増加する。
このような特性を有するシミュレーションモデルにおいて、グラファイト基板18GHとして、半導体デバイスQ11・Q12・Q13の配置されたY方向と実質的に直交するX方向に沿ったGH(XZ)配向を備えるようにした場合には、図88(c)中に斜線部YRで示すように、中央の半導体デバイスQ12に対する半導体デバイスQ11・Q13のずれ量が45度以下であれば、熱抵抗の増加は6%程度に抑えることができる。
すなわち、図87(b)および図87(c)に示した配置例の場合、熱抵抗の増加を抑えるためには、グラファイト基板18GHのGH(YZ)配向に対応する配向方向TDにほぼ直交する配向方向(X方向)PDを0とした際の、半導体デバイスQ11・Q12・Q13の並びの配置の方向PDD・PDCの角度が、グラファイト基板18GHの平面(基板面)上において、時計方向に約−45度以上+45度以下、好ましくは、約30度以上+30度以下になるように配置するのが望ましい。
図89は、第15〜第18の実施の形態に係るPMにおいて、熱抵抗シミュレーションに用いた他のモデル例を示すもので、中央の半導体デバイスQ12に対して、半導体デバイスQ11をX方向にずらさずに配置すると共に、半導体デバイスQ13を所定の角度によりX方向に斜めにずらして配置するようにした場合の例である。
シミュレーションモデルにおいて、半導体デバイスQ11・Q12・Q13は、X方向およびY方向のサイズ(C1×L1)が5mm×5mmとされている。
半導体デバイスQ13は、X方向に対しては、表面電極パターン23の近エッジからの距離X1が2mm、Y方向に対しては、近エッジからの距離Y1が2mmとされている。
半導体デバイスQ12は、Y方向に対しては、それぞれ隣接する半導体デバイスQ11・Q13との間隔距離Y2が約4mmとされている。
半導体デバイスQ11は、Y方向に対しては、近エッジからの距離Y1が2mmとされている。
このシミュレーションモデルの場合、半導体デバイスQ11の、中央の半導体デバイスQ12に対するX方向のずれ量が9以下となるように配置される。すなわち、半導体デバイスQ11(Q12)の、X方向に対する遠い方のエッジ(遠エッジ)からの距離11(X3=9)に対し、半導体デバイスQ13の、X方向に対する遠エッジからの距離が20(X2=18)とされる。これにより、図88(c)中に斜線部YRで示すように、中央の半導体デバイスQ12に対する半導体デバイスQ11・Q13のずれ量が45度以下となって、熱抵抗の増加を6%程度に抑えることが可能となる。
[第17の実施の形態]
(概略構成)
第17の実施の形態に係るPM1の模式的鳥瞰パターン構成は図90(a)に示すように表わされ、模式的平面パターン構成は図90(b)に示すように表される。なお、図90(a)および図90(b)では、3電力端子構造のPM1に適用した場合が例示されている。
ここで、図90(a)および図90(b)に示すように、第17の実施の形態に係るPM1は、電力端子構造を除けば、第16の実施の形態に係るPM1とほぼ同一の構成を備える。
すなわち、第17の実施の形態に係るPM1は、図90(a)および図90(b)に示すように、セラミックス基板21と、セラミックス基板21の上面(第1面)に配置されたグラファイト基板18GHと、グラファイト基板18GH上に配置された表面電極パターン(第2電極パターン)23D1・23D4・23DNと、セラミックス基板21の下面(第2面)に配置された裏面電極パターン(第1電極パターン)(図示省略)とを備えるグラファイト絶縁基板と、表面電極パターン23D1・23D4上に図示矢印X方向に沿って並べて配置された複数の半導体デバイス(モジュール)Q1・Q4とを備える。
第17の実施の形態に係るPM1において、グラファイト基板18GHの配向方向TDにおけるGH(YZ)配向は、複数の半導体デバイスQ1・Q4のX方向に沿う配向方向PDにほぼ直交する方向とされる。
図90(a)および図90(b)において、Pは、正側電源入力端子電極であり、Nは、負側電源入力端子電極であり、Oは、出力端子電極であり、1個の出力端子電極Oを備えた3電力端子構造のPMとなっている。
なお、図90(a)および図90(b)において、GL1は、SiC MOSFET Q1のゲート信号用のリード端子(図示省略)が接続されるゲート信号電極パターンであり、SL1は、SiC MOSFET Q1のソース信号用のリード端子(図示省略)が接続されるソース信号電極パターンである。同様に、GL4は、SiC MOSFET Q4のゲート信号用のリード端子(図示省略)が接続されるゲート信号電極パターンであり、SL4は、SiC MOSFET Q4のソース信号用のリード端子(図示省略)が接続されるソース信号電極パターンである。
また、図中におけるBW1は、SiC MOSFET Q1のソースパッド電極をソース電極としても機能する表面電極パターン23D4に共通に接続するためのソース信号用ボンディングワイヤであり、BW4は、SiC MOSFET Q4のソースパッド電極をソース電極としても機能する表面電極パターン23DNに共通に接続するためのソース信号用ボンディングワイヤである。
第17の実施の形態に係るPM1によっても、グラファイト基板18GHの基板面上、複数の半導体デバイスQ1・Q4の配置の方向PD1を、グラファイト基板18GHのGH(YZ)配向に対応する配向方向(Y方向)TDにほぼ直交する配向方向(X方向)PDとすることにより、熱拡散性が良好で、構造的にも簡素であり、安価で、より低熱抵抗化が可能となる。
[第18の実施の形態]
(概略構成)
第18の実施の形態に係るPM1の模式的平面パターン構成は図91に示すように表される。なお、図91では、半導体デバイスQとして、例えばダイオードのFRD QA2やショットキーバリアダイオードなどを含むIGBT QA1を適用した場合が例示されている。
図91に示すように、第18の実施の形態に係るPM1は、セラミックス基板21の上面(第1面)に配置された、熱伝導率と熱膨張係数(熱膨張率(CTE))とに異方性を有するグラファイト基板18GHを備え、グラファイト基板18GH上にはIGBT QA1およびFRD QA2がラレルに並べて配置される表面電極パターン(第2電極パターン)(図示省略)が、セラミックス基板21の下面(第2面)には図示省略の裏面電極パターン(第1電極パターン)が、それぞれ配置されている。
グラファイト基板18GHはXZ配向を備え、図示矢印で示すGH(XZ)の配向方向TDに対して、並べて配置されたIGBT QA1およびFRD QA2の並びの配置の方向PD1が実質的に直交する配向方向(Y方向)PDとされる。
なお、IGBT QA1およびFRD QA2は、実際にはグラファイト基板18GH上の表面電極パターンに接合されるが、ここでの説明では図示を省略している。
第18の実施の形態に係るPM1によっても、IGBT QA1およびFRD QA2の並びの配置の方向PD1を、グラファイト基板18GHのGH(XZ)の配向方向(X方向)TDにほぼ直交する配向方向(Y方向)PDとすることにより、熱拡散性が良好で、構造的にも簡素であり、安価で、より低熱抵抗化が可能となる。
第18の実施の形態に係るPM1においては、グラファイト構造による熱拡散効果に加え、表面電極パターン上に接合される半導体デバイスQ(QA1・QA2)の向きや縦横のサイズといった形状を変えることによって、接合部(銀焼成層)にかかる応力についての低減が可能である。
すなわち、グラファイト基板18GH上に正方形などの半導体デバイスQを接合すると、グラファイト基板18GHには熱膨張係数に異方性があるため、熱膨張係数が大きい方位では、双方の熱膨張係数の差から接合部に大きな応力が生じるが、半導体デバイスQの形状をグラファイト基板18GHの熱膨張係数とうまくマッチングさせることで、接合部にかかる応力を低減できる。
なお、接合部にかかる応力の低減は、第18の実施の形態に係るPM1に限らず、他の実施の形態に係る構成のPMの場合も同様である。
(応力緩和構造)
ここで、実施の形態に係るPMにおいて、熱膨張係数に異方性を有するグラファイト基板を適用した場合を例に、接合部にかかる応力について説明する。
FRD SC1およびIGBT SC2を例に、半導体デバイスQのグラファイト基板18GH1に対する配置を説明する模式的平面パターン構成(PMa)は図19(a)に示すように表わされ、SiC MOS SC3・SC4を例に、半導体デバイスQのグラファイト基板18GH1に対する配置を説明する模式的平面パターン構成(PMb)は、図19(b)に示すように表される。
なお、半導体デバイスQは、実際にはグラファイト基板18GH1上の表面電極パターンに接合されるが、ここでの説明では図示を省略している。
ダイオードなどを備えるIGBTの場合、図19(a)に示すように、グラファイト基板18GH1上には、半導体デバイスQとして、FRD SC1およびIGBT SC2が並べて配置される。
SiC MOSFETの場合、図19(b)に示すように、グラファイト基板18GH1上には、半導体デバイスQとして、SiC MOS SC3・SC4が並べて配置される。
ここで、グラファイト基板18GH1の熱膨張係数の配向を、例えばX=0.5ppm/K、Y=25ppm/K、z=0.5ppm/Kとした場合、FRD SC1、IGBT SC2、SiC MOS SC3・SC4としては、いずれも、X方向H1およびY方向C1を有する長方形のデバイス(H1>C1)を用い、それぞれのY方向C1を熱膨張係数の大きい方位に対応させる。これにより、グラファイト基板18GH1による熱拡散効果と共に、接合部にかかる応力をも低減可能となる。
以下に、第15〜第18の実施の形態に係るPMにおいて、グラファイト基板の適用による応力低減効果について、さらに説明する。
(実施例1)
熱膨張係数に異方性を有するグラファイト基板を適用した場合を例に、接合部にかかる応力についてシミュレーションを行うための、シミュレーションモデルMDの模式的平面パターン構成は、図20(a)に示すように表わされ、図20(a)のVI−VI線に沿う模式的断面構造は、図20(b)に示すように表される。
ここでは、図20(a)および図20(b)に示した構成のシミュレーションモデルMDにおいて、下面Cu箔(裏面電極パターン22)/Si3N4基板(セラミックス基板21)/グラファイトプレート(グラファイト基板18GH1・18GH2)/上面Cu箔(表面電極パターン231・232)からなる積層基板構造を、グラファイト絶縁基板20と称する。
グラファイトプレートは、熱伝導率・熱膨張係数に異方性があるため、正方形などのデバイスをダイ・ボンディングすると、熱膨張係数が大きい方位では熱膨張係数の差から接合部に大きな応力を生じるが、デバイスの形状をグラファイトプレートの熱膨張係数とうまくマッチングさせることで、接合部にかかる応力の低減が可能である。
シミュレーションモデルMDにおいては、図20(a)および図20(b)に示すように、例えば、10mm(GX)×21mm(LY1)のSiN系のセラミックス基板21を用い、半導体デバイスQが接合される表面電極パターン231およびブロック電極(図示省略)が接合される表面電極パターン232として、10mm(GX)×10mm(LY)のCu箔を用いた。
表面電極パターン231・232は、距離LY2=1mmだけ離隔されている。
裏面電極パターン22は、セラミックス基板21とほぼ同一寸法(10mm×21mm)とした。
グラファイト基板18GH1・18GH2は、表面電極パターン231・232とほぼ同一寸法(10mm×10mm)である。
半導体デバイスQとしては、5mm(H1)×5mm(C1)を有する正方形のSiC MOSFETを用い(H1=C1)、表面電極パターン231のエッジからの距離X1(2.5mm)・Y1(2.5mm)により、表面電極パターン231上のほぼ中央部に銀焼成層27を用いて接合される。
グラファイト基板18GH1・18GH2の熱膨張係数の配向は、例えばX=25ppm/K、Y=0.1ppm/K、Z=0.1ppm/Kとした。
なお、図21に示すように、熱抵抗が最も低くなるように、各部の厚み(mm)が最適化される。本シミュレーションモデルMDの場合、例えば、半導体デバイスQは0.35mm厚、グラファイト基板18GH1・18GH2は1.5mm厚、セラミックス基板21は0.32mm厚、表面電極パターン231・232は0.3mm厚、裏面電極パターン22は0.2mm厚、銀焼成層27は0.05mm厚とされ、いずれも最適化される。
このような構成において、例えば、無応力時を200℃とし、25℃時のミーゼス応力を算出することにより、銀焼成層(接合部)27にかかる応力が求められる。
なお、図20に示した構成のシミュレーションモデルMDにおいて、グラファイト基板18GH1・18GH2の熱膨張係数の配向を、例えばX=25ppm/K、Y=0.5ppm/K、Z=0.5ppm/Kとした場合の、銀焼成層27にかかる応力についてシミュレーションを行った際の結果(全体の反り形状)を、図22に示す。
シミュレーションモデルMDの反りは、最大値で26.322μm、最小値で0.079μmであった。
ここで、ミーゼス応力とは、物体内部に生じる応力状態を単一の値で示すために用いられる相当応力の1つである。ミーゼス応力の定義式を以下に示す。定義式中のσ1は最大主応力、σ2は中間主応力、σ3は最小主応力である。ここでは、各主応力σ1、σ2、σ3は、銀焼成層27に作用するX方向の主応力、Y方向の主応力、Z方向の主応力の中から選択される。
次に、異なる構成のシミュレーションモデルについて説明する。なお、図20に示した構成のシミュレーションモデルMDにおいて、正方形の半導体デバイスQが接合された場合をシミュレーションモデルMD1とする。
図23(a)は、図20に示した構成のシミュレーションモデルMDにおいて、縦長の半導体デバイス(H2×C2、H2>C2)Qaが接合された場合(シミュレーションモデルMD2)を例示するものであって、半導体デバイスQaとしては、6.25mm(H2)×4mm(C2)を有する長方形のSiC MOSFETを用い、表面電極パターン231のエッジからの距離X2(1.875mm)・Y2(3mm)により、表面電極パターン232上のほぼ中央部に接合される。
図23(b)は、図20に示した構成のシミュレーションモデルMDにおいて、横長の半導体デバイス(H3×C3、H3<C3)Qbが接合された場合(シミュレーションモデルMD3)を例示するものであって、半導体デバイスQbとしては、4mm(H3)×6.25mm(C3)を有する長方形のSiC MOSFETを用い、表面電極パターン231のエッジからの距離X3(3mm)・Y3(1.875mm)により、表面電極パターン231上のほぼ中央部に接合される。
図23(c)は、図20に示した構成のシミュレーションモデルMDにおいて、縦長の半導体デバイス(H4×C4、H4≫C4)Qcが接合された場合(シミュレーションモデルMD4)を例示するものであって、半導体デバイスQcとしては、8.33mm(H4)×3mm(C4)を有する長方形のSiC MOSFETを用い、表面電極パターン231のエッジからの距離X4(0.835mm)・Y4(3.5mm)により、表面電極パターン231上のほぼ中央部に接合される。
図23(d)は、図20に示した構成のシミュレーションモデルMDにおいて、横長の半導体デバイス(H5×C5、H5≪C5)Qdが接合された場合(シミュレーションモデルMD5)を例示するものであって、半導体デバイスQdとしては、3mm(H5)×8.33mm(C5)を有する長方形のSiC MOSFETを用い、表面電極パターン231のエッジからの距離X5(3.5mm)・Y5(0.835mm)により、表面電極パターン231上のほぼ中央部に接合される。
図24(a)は、第15〜第18の実施の形態に係るパワーモジュールにおいて、熱膨張係数に異方性を有するグラファイト基板を適用した場合について、シミュレーションモデルMD1〜MD5を用いてシミュレーションを行った際の、銀焼成層27のエッジ(EDG)からの距離とミーゼス応力(GPa)との関係を説明するための特性図であり、図24(b)は、シミュレーションモデルMD1〜MD5とミーゼス応力比との関係を説明するための特性図である。
なお、図24(a)および図24(b)は、グラファイト基板18GH1の熱膨張係数の配向を、例えばX=25ppm/K、Y=0.5ppm/K、Z=0.5ppm/Kとした場合の例であり、図24(a)は、銀焼成層27にかかるミーゼス応力であり、図24(b)は、シミュレーションモデルMD1の場合を1としている。
図24(a)および図24(b)から、シミュレーションモデルMD1のミーゼス応力比を1とすると、シミュレーションモデルMD2・MD4のミーゼス応力比は1.05、シミュレーションモデルMD3のミーゼス応力比は0.83、シミュレーションモデルMD5のミーゼス応力比は0.84となる。
すなわち、グラファイト基板18GH1の熱膨張係数の配向を、例えばX=25ppm/K、Y=0.5ppm/K、Z=0.5ppm/Kとし、無応力時を200℃とした場合の、シミュレーションモデルMD1〜MD5の銀焼成層27にかかる応力(25℃時)は、モデルMD3・MD5の半導体デバイスQb・Qdのように、熱膨張係数の大きい方位(X)のサイズを小さくすることにより低減可能となる。
(実施例2)
次に、表面電極パターン232がない場合を例に、銀焼成層27にかかる応力について説明する。
表面電極パターン231しかない場合の、シミュレーションモデルMD1の模式的平面パターン構成は、図25(a)に示すように表わされ、図25(a)のVII−VII線に沿う模式的断面構造は、図25(b)に示すように表される。
グラファイト基板18GH1の熱膨張係数の配向は、例えばX=0.1ppm/K、Y=25ppm/K、Z=0.1ppm/Kであり、各部(Q・18GH・21・231・27)の厚み(mm)は、図21に示したように、熱抵抗が最も低くなるように最適化される。
なお、シミュレーションモデルMD2・MD3の場合も、図25(a)および図25(b)のMD1とは、半導体デバイスQa・Qbの形状が異なるだけで、ほぼ同様である。
図26(a)は、第15〜第18の実施の形態に係るPMにおいて、熱膨張係数に異方性を有するグラファイト基板を適用した場合について、シミュレーションモデルMD1〜MD3を用いてシミュレーションを行った際の、銀焼成層27のエッジ(EDG)からの距離とミーゼス応力との関係を説明するための特性図であり、図26(b)は、シミュレーションモデルMD1〜MD3とミーゼス応力比との関係を説明するための特性図である。
なお、図26(a)および図26(b)は、グラファイト基板18GH1の熱膨張係数の配向を、例えばX=0.5ppm/K、Y=25ppm/K、Z=0.5ppm/Kとした場合の例であり、図26(a)は、銀焼成層27にかかるミーゼス応力であり、図26(b)は、シミュレーションモデルMD1の場合を1としている。
図26(a)および図26(b)から、シミュレーションモデルMD1のミーゼス応力比を1とすると、シミュレーションモデルMD2のミーゼス応力比は0.96、シミュレーションモデルMD3のミーゼス応力比は1.02となる。
すなわち、グラファイト基板18GH1の熱膨張係数の配向を、例えばX=0.5ppm/K、Y=25ppm/K、Z=0.5ppm/Kとし、無応力時を200℃とした場合の、シミュレーションモデルMD1〜MD3の銀焼成層27にかかる応力(25℃時)は、モデルMD2の半導体デバイスQaのように、熱膨張係数の大きい方位(Y)のサイズを小さくすることにより低減可能となる。
図23および図25に示した構成のシミュレーションモデルMD1〜MD3において、グラファイト基板18GH1の熱膨張係数の配向を、例えばX=0.1ppm/K、Y=25ppm/K、Z=0.1ppm/Kとした場合の、銀焼成層27にかかる応力についてシミュレーションを行った際の結果(全体の反り形状)を、図92(a)〜図92(c)に示す。
シミュレーションモデルMD1の反りは、最大値で22.599μm、最小値で0.128μmであり、シミュレーションモデルMD2の反りは、最大値で22.313μm、最小値で0.146μmであり、シミュレーションモデルMD3の反りは、最大値で22.972μm、最小値で0.322μmであった。
なお、第15〜第18の実施の形態に係るPM1においては、半導体デバイスとして、1 in 1モジュールタイプに適用した場合について説明したが、これに限らず、例えば2 in 1(ツーインワン)モジュールタイプのPMや、4 in 1(フォーインワン)モジュールタイプのPM、6 in 1 (シックスインワン)モジュールタイプのPMや、6 in 1モジュールにスナバコンデンサなどを備えた7 in 1(セブンインワン)モジュールタイプのPM、8 in 1(エイトインワン)モジュールタイプのPM、12 in 1(トゥエルブインワン)モジュールタイプのPM、14 in 1(フォーティーンインワン)モジュールタイプのPMなどにも適用できる。
(半導体デバイスの具体例)
第15〜第18の実施の形態に係るPMであって、半導体デバイスとして適用可能な1 in 1モジュールタイプのPM50のSiC MOSFETの模式的回路表現は、図28に示すように表される。
図28には、SiC MOSFET Qに逆並列接続されるダイオードDIが示されている。ダイオードDIとして寄生ダイオードを用いる場合には省略することもできる。SiC MOSFET Qの主電極は、ドレイン端子DTおよびソース端子STで表される。また、第15〜第18の実施の形態に係るPMであって、半導体デバイスとして適用可能な1 in 1モジュール50のIGBTを(図示せず)を実現することもできる。
また、第15〜第18の実施の形態に係るPMであって、半導体デバイスとして適用可能な1 in 1モジュールタイプのPM50のSiC MOSFETの詳細回路表現は、図29に示すように表される。
第15〜第18の実施の形態に係るPMは、例えば、半導体デバイスが1 in 1モジュールタイプのPM50の構成を備える。すなわち、1個のSiC MOSFET Qが1つのモジュールに内蔵されている。一例として、5チップ(MOSFET×5)搭載可能であり、それぞれのSiC MOSFET Qは、5個まで並列接続可能である。なお、5チップの内、一部をダイオードDI用として搭載することも可能である。
さらに詳細には、図29に示すように、SiC MOSFET Qに並列にセンス用MOSFET Qsが接続される。センス用MOSFET Qsは、SiC MOSFET Qと同一チップ内に、微細トランジスタとして形成されている。
図29において、SSは、ソースセンス端子、CSは、電流(カレント)センス端子であり、Gは、ゲート端子である。なお、第15〜第18の実施の形態においても、SiC MOSFET Qには、センス用MOSFET Qsが同一チップ内に、微細トランジスタとして形成されていても良い。
(回路構成)
次に、第15〜第18の実施の形態に係るPMにおいて、半導体デバイスの回路構成例について、より具体的に説明する。
ここでは、第15〜第18の実施の形態に係るPMの半導体デバイスとして適用可能なモジュールであって、2個の半導体デバイスが1つのモールド樹脂内に封止されたPM、いわゆる2 in 1モジュールタイプのPMについて説明する。
半導体デバイスとして、SiC MOSFET Q1・Q4を適用した2 in 1モジュールタイプのPM(2 in 1モジュール)130Aの回路構成は、例えば図30に示すように表される。
すなわち、2 in 1モジュール130Aは、図30に示すように、2個のSiC MOSFET Q1・Q4が1つのモジュールとして内蔵された、ハーフブリッジ内蔵モジュールの構成を備える。
ここで、モジュールは、1つの大きなトランジスタとみなすことができるが、内蔵されているトランジスタが1チップまたは複数チップの場合がある。すなわち、モジュールには、1 in 1、2 in 1、4 in 1、6 in 1などがあり、例えば、1つのモジュール上において、2個分のトランジスタ(チップ)を内蔵したモジュールは2 in 1、2 in 1を2組み内蔵したモジュールは4 in 1、2 in 1を3組み内蔵したモジュールは6 in 1と呼ばれている。
図30に示すように、2 in 1モジュール130Aは、2個のSiC MOSFET Q1・Q4と、SiC MOSFET Q1・Q4に逆並列接続されるダイオードDI1・DI4が、1つのモジュールとして内蔵されている。
図30において、G1は、SiC MOSFET Q1のゲート信号用のリード端子(いわゆる、ゲート端子)であり、S1は、SiC MOSFET Q1のソース信号用のリード端子(いわゆる、ソースセンス端子)である。同様に、G4は、SiC MOSFET Q4のゲート信号用のリード端子であり、S4は、SiC MOSFET Q4のソース信号用のリード端子である。
また、Pは、正側電源入力端子電極であり、Nは、負側電源入力端子電極であり、Oは、出力端子電極である。
また、第15〜第18の実施の形態に係るパワーモジュールの半導体デバイスとして適用可能なモジュールであって、半導体デバイスQ1・Q4として、IGBTを適用した2 in 1モジュール(図示せず)を実現することもできる。
第15〜第18の実施の形態に係るPMに適用可能な半導体デバイス(Q2・Q5)、および半導体デバイス(Q3・Q6)についても同様である。
―電源装置―
第15〜第18の実施の形態に係る2 in 1モジュール130Aによれば、正側電源入力端子電極(第1の電源)Pと負側電源入力端子電極(第2の電源)Nとの間にSiC MOSFET(第1のスイッチングデバイス)Q1とSiC MOSFET(第2のスイッチングデバイス)Q4とが直列接続され、その接続点の電圧を出力端子電極Oより出力する電源装置(電源回路)を構成できる。
特に、電源装置において、SiC MOSFET Q1・Q4をそれぞれ複数のチップにより構成すると共に、複数のチップの並び方向のチップ間距離(X2)を、各チップからグラファイト基板の端面までの距離(Y1)よりも短くすることにより、熱拡散性が良好で、構造的にも簡素であり、安価で、より低熱抵抗化が可能な電源装置とすることができる。
なお、ここでの詳細な説明は省略するが、他の実施の形態に係るPMの場合も同様に、例えば半導体デバイスとしてIGBT Q1・Q4を適用したPMにも適用可能である。また、複数のチップをグラファイト基板の配向方向と実質的に直交するようにそれぞれ並べて配置するようにしても良い。
(デバイス構造)
第15〜第18の実施の形態に係るPMに適用可能な半導体デバイス(Q1・Q4)の例であって、ソースパッド電極SP、ゲートパッド電極GPを含むSiC MOSFET 130Aの模式的断面構造は、図31に示すように表される。
図31に示すように、SiC MOSFET 130Aは、n- 高抵抗層からなる半導体層31と、半導体層31の表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたソース領域33と、pボディ領域32間の半導体層31の表面上に配置されたゲート絶縁膜34と、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35と、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36と、半導体層31の表面と反対側の裏面に配置されたn+ ドレイン領域37と、n+ ドレイン領域37に接続されたドレイン電極38とを備える。
ゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35に接続され、ソースパッド電極SPは、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36に接続される。また、ゲートパッド電極GPおよびソースパッド電極SPは、図31に示すように、SiC MOSFET 130Aの表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜39上に配置される。
なお、ゲートパッド電極GPおよびソースパッド電極SPの下方の半導体層31内には、図示していないが、微細構造のトランジスタ構造が形成されていても良い。
さらに、図31に示すように、中央部のトランジスタ構造においても、パッシベーション用の層間絶縁膜39上にソースパッド電極SPが延在して配置されていても良い。
図31において、SiC MOSFET 130Aは、プレーナゲート型のnチャネル縦型SiC MOSFETで構成されているが、後述する図34に示すように、トレンチゲート型のnチャネル縦型SiC T MOSFET 130Cなどで構成されていても良い。
または、第15〜第18の実施の形態に係るPMに適用可能な半導体デバイスとしては、SiC MOSFET 130Aの代わりに、GaN系FETなどを採用することもできる。
第15〜第18の実施の形態に係るPMに適用可能な半導体デバイス(Q2・Q5、Q3・Q6)についても同様である。
さらには、第15〜第18の実施の形態に係るPMに適用可能な半導体デバイスQ1〜Q6には、バンドギャップエネルギーが、例えば、1.1eV〜8eVのワイドバンドギャップ型と称される半導体を用いることができる。
同様に、第15〜第18の実施の形態に係るPMに適用可能な半導体デバイス(Q1・Q4)の例であって、エミッタパッド電極EP、ゲートパッド電極GPを含むIGBT 130Bの模式的断面構造は、図32に示すように表される。
図32に示すように、IGBT 130Bは、n- 高抵抗層からなる半導体層31と、半導体層31の表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたエミッタ領域33Eと、pボディ領域32間の半導体層31の表面上に配置されたゲート絶縁膜34と、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35と、エミッタ領域33Eおよびpボディ領域32に接続されたエミッタ電極36Eと、半導体層31の表面と反対側の裏面に配置されたp+ コレクタ領域37Pと、p+ コレクタ領域37Pに接続されたコレクタ電極38Cとを備える。
ゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35に接続され、エミッタパッド電極EPは、エミッタ領域33Eおよびpボディ領域32に接続されたエミッタ電極36Eに接続される。また、ゲートパッド電極GPおよびエミッタパッド電極EPは、図32に示すように、IGBT 130Bの表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜39上に配置される。
なお、ゲートパッド電極GPおよびエミッタパッド電極EPの下方の半導体層31内には、図示していないが、微細構造のIGBT構造が形成されていても良い。
さらに、図32に示すように、中央部のIGBT構造においても、パッシベーション用の層間絶縁膜39上にエミッタパッド電極EPが延在して配置されていても良い。
図32において、IGBT 130Bは、プレーナゲート型のnチャネル縦型IGBTで構成されているが、トレンチゲート型のnチャネル縦型IGBTなどで構成されていても良い。
第15〜第18の実施の形態に係るPMに適用可能な半導体デバイス(Q2・Q5、Q3・Q6)についても同様である。
半導体デバイスQ1〜Q6としては、SiC DI MOSFET、SiC T MOSFETなどのSiC系パワーデバイス、或いはGaN系HEMTなどのGaN系パワーデバイスを適用可能である。また、場合によっては、Si系MOSFETやIGBTなどのパワーデバイスも適用可能である。
―SiC DI MOSFET―
第15〜第18の実施の形態に係るPMに適用可能な半導体デバイスの例であって、SiC DI MOSFET 130Dの模式的断面構造は、図33に示すように表される。
図33に示すSiC DI MOSFET 130Dは、n- 高抵抗層からなる半導体層31と、半導体層31の表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたn+ ソース領域33と、pボディ領域32間の半導体層31の表面上に配置されたゲート絶縁膜34と、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35と、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36と、半導体層31の表面と反対側の裏面に配置されたn+ ドレイン領域37と、n+ ドレイン領域37に接続されたドレイン電極38とを備える。
図33において、SiC DI MOSFET 130Dは、pボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたn+ ソース領域33が、ダブルイオン注入(DII)で形成され、ソースパッド電極SPは、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36に接続される。
図示を省略するゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35に接続される。また、ソースパッド電極SPおよびゲートパッド電極GPは、図33に示すように、SiC DI MOSFET 130Dの表面を覆うように、パッシベーション用の層間絶縁膜39上に配置される。
SiC DI MOSFET 130Dは、図33に示すように、pボディ領域32に挟まれたn- 高抵抗層からなる半導体層31内に、破線で示されるような空乏層が形成されるため、接合型FET(JFET)効果に伴うチャネル抵抗R JFETが形成される。また、pボディ領域32/半導体層31間には、図33に示すように、ボディダイオードBDが形成される。
―SiC T MOSFET―
第15〜第18の実施の形態に係るPMに適用可能な半導体デバイスの例であって、SiC T MOSFETの模式的断面構造は、図34に示すように表される。
図34に示すSiC T MOSFET 130Cは、n層からなる半導体層31Nと、半導体層31Nの表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたn+ ソース領域33と、pボディ領域32を貫通し、半導体層31Nまで形成されたトレンチ内にゲート絶縁膜34および層間絶縁膜39U・39Bを介して形成されたトレンチゲート電極35TGと、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36と、半導体層31Nの表面と反対側の裏面に配置されたn+ ドレイン領域37と、n+ ドレイン領域37に接続されたドレイン電極38とを備える。
図34において、SiC T MOSFET 130Cは、pボディ領域32を貫通し、半導体層31Nまで形成されたトレンチ内にゲート絶縁膜34および層間絶縁膜39U・39Bを介してトレンチゲート電極35TGが形成され、ソースパッド電極SPは、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36に接続される。
図示を省略するゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜34上に配置されたトレンチゲート電極35TGに接続される。また、ソースパッド電極SPおよびゲートパッド電極GPは、図34に示すように、SiC T MOSFET 130Cの表面を覆うように、パッシベーション用の層間絶縁膜39U上に配置される。
SiC T MOSFET 130Cでは、SiC DI MOSFET 130Dのような接合型FET(JFET)効果に伴うチャネル抵抗R JFETは形成されない。また、pボディ領域32/半導体層31N間には、図33と同様に、ボディダイオードBDが形成される。
(応用例)
第15〜第18の実施の形態に係るPMを用いて構成される3相交流インバータ40Aであって、半導体デバイスとしてSiC MOSFETを適用し、電源端子PL・接地端子NL間にスナバコンデンサCを接続した回路構成例は、図35に示すように表される。
同様に、半導体デバイスとしてIGBTを適用し、電源端子PL・接地端子NL間にスナバコンデンサCを接続した3相交流インバータ(図示せず)を実現することもできる。
PMを電源Eと接続し、スイッチング動作を行うと、接続ラインの有するインダクタンスLによって、SiC MOSFETやIGBTのスイッチング速度が速いため、大きなサージ電圧Ldi/dtを生ずる。例えば、電流変化di=300Aとし、スイッチングに伴う時間変化dt=100nsecとすると、di/dt=3×109(A/s)となる。
インダクタンスLの値により、サージ電圧Ldi/dtの値は変化するが、電源Eに、このサージ電圧Ldi/dtが重畳される。電源端子PL・接地端子NL間に接続されるスナバコンデンサCによって、このサージ電圧Ldi/dtを吸収することができる。
(具体例)
次に、図36を参照して、半導体デバイスとしてSiC MOSFETを適用し、第15〜第18の実施の形態に係るPMを用いて構成した3相交流インバータ42Aについて説明する。
図36に示すように、3相交流インバータ42Aは、ゲートドライバ(GD)180に接続されたパワーモジュール部130と、3相交流モータ部51と、電源もしくは蓄電池(E)53と、コンバータ55とを備える。パワーモジュール部130は、3相交流モータ部51のU相、V相、W相に対応して、U相、V相、W相のインバータが接続されている。
ここで、GD180は、SiC MOSFET Q1・Q4、SiC MOSFET Q2・Q5、およびSiC MOSFET Q3・Q6に接続されている。
パワーモジュール部130は、電源もしくは蓄電池(E)53が接続されたコンバータ55のプラス端子(+)Pとマイナス端子(−)Nとの間に接続され、インバータ構成のSiC MOSFET Q1・Q4、Q2・Q5、およびQ3・Q6を備える。また、SiC MOSFET Q1〜Q6のソース・ドレイン間には、フリーホイールダイオードDI1〜DI6がそれぞれ逆並列に接続されている。
また、図示しないが、半導体デバイスとしてIGBTを適用し、第15〜第18の実施の形態に係るパワーモジュールを用いて構成した3相交流インバータを実現することもできる。
以上説明したように、第15〜第18の実施の形態によれば、熱拡散性が良好で、より低熱抵抗化が可能なPMおよび電源装置を実現できる。
なお、第15〜第18の実施の形態に係るPMに適用可能な半導体デバイスとしては、SiC系パワーデバイスに限らず、GaN系やSi系のパワーデバイスなどのワイドバンドギャップ型と称されるパワーデバイスも採用可能である。
また、樹脂モールドされたモールド型パワーモジュールに限らず、ケース型のパッケージによってパッケージングされたパワーモジュールにも適用可能である。
[その他の実施の形態]
上記のように、いくつかの実施の形態について記載したが、開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
このように、本実施の形態は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。