次に、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A,B.各種実施形態:
C,D.各種変形例:
A.第1実施形態:
A−1:印刷材供給システムの構成:
図1は、印刷材供給システム1の概略構成を示す斜視図である。図1には、互いに直交するXYZ軸が描かれている。これ以降に示す図についても必要に応じてXYZ軸を付している。1のXYZ軸は他の図のXYZ軸にも対応している。印刷材供給システム1は、カートリッジ4と、印刷装置としてのプリンター10とを備える。印刷材供給システム1において、プリンター10のカートリッジ装着部6に、カートリッジ4が着脱自在に装着される。
本実施形態のプリンター10は、印刷材としてのインクをヘッド22から吐出するインクジェットプリンターである。プリンター10は、カートリッジ装着部6と、制御部31と、キャリッジ20と、ヘッド22と、駆動機構30とを備える。また、プリンター10は、プリンター10の動作を利用者が操作するための操作ボタン15を備える。
カートリッジ装着部6には、複数のカートリッジ4がそれぞれ着脱可能に装着される。本実施形態では、4色(ブラック、イエロー、マゼンダ、シアン)のインクに対応して4種類のカートリッジ4が1つずつ、すなわち合計4つのカートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着される。本実施形態のプリンター10では、前面(+Y軸方向側の面)に交換用カバー13が設けられている。交換用カバー13の+Z軸方向側を手前側(+Y軸方向側)に倒すと、カートリッジ装着部6の開口が現れて、カートリッジ4の着脱が可能となる。カートリッジ装着部6にカートリッジ4が装着されると、チューブ24を介してキャリッジ20に設けられたヘッド22にインクが供給可能となる。本実施形態では、プリンター10のポンプ機構(図示せず)によって、カートリッジ4内のインクを吸引することで、インクがヘッド22に供給される。なお、チューブ24は、インクの種類毎に設けられている。ここで、カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着された状態を「装着状態」とも呼ぶ。
ヘッド22には、インクの種類毎にノズルが設けられている。ヘッド22は、噴射ノズルから印刷用紙2に向かってインクを噴射して文字や画像等のデータを印刷する。なお、カートリッジ4をカートリッジ装着部6に装着する様子や、カートリッジ4及びカートリッジ装着部6の詳細構成については後述する。なお、本実施形態では、プリンター10は、カートリッジ装着部6がキャリッジ20の動きとは連動しない、いわゆる「オフキャリッジタイプ」と呼ばれるプリンターである。キャリッジ20にカートリッジ装着部6が設けられ、キャリッジ20と共にカートリッジ装着部6が移動する、いわゆる「オンキャリッジタイプ」と呼ばれるプリンターにも本発明は適用できる。
制御部31は、プリンター10の各部の制御や、カートリッジ4との間で信号の授受を行う。キャリッジ20は、ヘッド22を印刷用紙2に対して相対的に移動させる。
駆動機構30は、制御部31からの制御信号に基づいてキャリッジ20を往復動させる。駆動機構30は、タイミングベルト32と、駆動モーター34とを備える。タイミングベルト32を介して駆動モーター34の動力をキャリッジ20に伝達することによって、キャリッジ20が主走査方向(X軸方向)に往復移動する。また、プリンター10は、印刷用紙2を副走査方向(+Y軸方向)に移動させるための搬送機構を備える。印刷が行なわれる際には、搬送機構によって印刷用紙2が副走査方向に移動し、前面カバー11上に印刷完了後の印刷用紙2が出力される。
また、キャリッジ20を主走査方向に移動させた印刷領域外の位置には、ホームポジションと呼ばれる領域が設けられており、ホームポジションには、正常に印刷可能なようにメンテナンスを行うメンテナンス機構が搭載されている。メンテナンス機構は、キャップ部材8や、昇降機構(図示せず)や、吸引ポンプ(図示せず)などから構成されている。キャップ部材8は、ヘッド22の底面側(印刷用紙2と向かい合う側)でノズルが形成されている面(ノズル面)に押し付けられて、噴射ノズルを取り囲むように閉空間を形成する。昇降機構は、ヘッド22のノズル面に押し付けるためにキャップ部材8を昇降させる。吸引ポンプは、キャップ部材8がヘッド22のノズル面に押し付けられることで形成される閉空間に負圧を導入する。
本実施形態では、印刷材供給システム1の使用状態において、印刷用紙2を搬送する副走査方向に沿った軸をY軸とし、重力方向(上下方向)に沿った軸をZ軸とし、キャリッジ20の移動方向(左右方向)に沿った軸をX軸とする。ここで、「印刷材供給システム1の使用状態」とは、水平な面に印刷材供給システム1が設置された状態をいう。また、本実施形態では、副走査方向(前方向)を+Y軸方向、その逆方向(後方向)を−Y軸方向とし、重力方向の下方から上方に向かう方向(上方向)を+Z軸方向とし、その逆方向(下方向)を−Z軸方向とする。また、印刷材供給システム1を前側(+Y軸方向側)から見たときに、右側から左側に向かう方向を+X軸方向とし、その逆方向を−X軸方向とする。また本実施形態では、カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着される際の装着方向が−Y軸方向であり、カートリッジ4がカートリッジ装着部6から取り外される際の方向が+Y軸方向である。よって、カートリッジ装着部6のうち、−Y軸方向側を奥側とも呼び、+Y軸方向側を手前側とも呼ぶ。また、本実施形態では、複数のカートリッジ4のカートリッジ装着部6内における配列方向がX軸方向である。
図2は、装着状態におけるカートリッジ装着部6の正面図である。図2では、1つのカートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着された図を示している。以下では、カートリッジ装着部6において、X軸方向を「幅方向」、Z軸方向を「高さ方向」、Y軸方向を「長さ方向」とも呼ぶ。
カートリッジ装着部6は、カートリッジ4を収容するためのカートリッジ収容室60を形成している。ここで、カートリッジ収容室60のうち、4つのカートリッジ4のうちの1つを収容する部分をそれぞれスロット61とも呼ぶ。本実施形態では、第1〜第4のスロット61a〜61dが形成されている。第1のスロット61aは他のスロット61b〜61dに比べ幅が大きい。第1のスロット61aは、カートリッジ4を装着できる他に、カートリッジ4よりもX軸方向の寸法が大きいカートリッジ(「大容量カートリッジ」とも呼ぶ。)も装着できる。X軸方向の寸法が大きいカートリッジは、カートリッジ4に比べ多くの量のインクを収容できる。例えば、使用頻度の高いブラックインクを収容するために大容量カートリッジを用いても良い。なお、大容量カートリッジとカートリッジ4とは、X軸方向の寸法およびインクの収容量が異なる一方で他の構成は同一である。
図3は、図2のF2−F2断面図である。図3は、カートリッジ装着部6の一部と、カートリッジ4とを図示している。カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着された後に、ポンプ機構(図示せず)を駆動することによって、インクが矢印に示すようにカートリッジ4の印刷材収容部7から印刷装置10へと流通する。詳細には、印刷材収容部7のインクがカートリッジ4の印刷材供給部482からカートリッジ装着部6の流通管702へと流通する。
また、カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着された状態(装着状態)において、カートリッジ4の回路基板52の表面52aに設けられた複数の接触部cp(図3では1つのみ図示)と、対応するカートリッジ装着部6が備える複数の装置側端子803(図3では1つのみ図示)とが接触する。複数の接触部cpによって規定される接触面529は、所定方向に沿って傾斜した平面である。具体的には、接触面529は、+Z軸方向成分(鉛直上方向)と−Y軸方向成分(装着方向)を含む方向を向いて傾斜している。言い換えれば、接触面529は、カートリッジ4の第3面42から第4面44に向かうに従い、第1面45から第2面46に近づくように第4面44に対して傾斜している。本実施形態では、接触面529は、接触部が配置された平面(本実施形態では、回路基板52の表面52a)と略同一平面に位置する。傾斜面529は、例えば、水平な面である第4面44と傾斜面529との成す角度aが30°〜60°の範囲であっても良い。本実施形態では、第4面44と傾斜面529とが成す角度aは略40°である。
また、装着状態では、カートリッジ装着部6が備える装置側係合構造75と、カートリッジ4の第3面42に設けられたカートリッジ側係合構造420とが係合する。これにより、カートリッジ4の+Y軸方向への動きを規制する。
装着状態において、カートリッジ4はカートリッジ装着部6から外力Fs,Ft,Fp,Frを受ける。外力Fsは、装置側端子803からカートリッジ4に加えられる力である。外力Fsは、接触面529に対して所定の角度を形成するように設定されている。本実施形態では、外力Fsは、接触面529(回路基板52の表面52a)に対して略垂直に加わる力である。外力Ftは、装置側係合構造75からカートリッジ4に加えられる力である。装置側端子803と接触部cpとの接触を良好に図るために、装置側端子803の弾性力を接触部cpに対して十分に加えることで、接触部cpを押圧する必要がある。このために、本実施形態では、装置側端子803から接触部cpに加えられる外力(弾性力)は、接触面529に対して略垂直に設定される。
外力Ftは、カートリッジ4を押し上げる方向(+Z軸方向)に加わる力である。すなわち、外力Ftは、第3面42に対して略垂直に加えられる力である。言い換えれば、外力Ftの向きは、略鉛直上方向である。外力Frは、装置側係合構造75からカートリッジ4に加えられる力である。外力Frは、カートリッジ4を−Y軸方向(装着方向)に押す力である。外力Frは、装置側係合構造75と、カートリッジ4のカートリッジ側係合構造420とが係合することで生じる。外力Fpは、カートリッジ装着部6が備えるカバー部材706からカートリッジ4に加えられる力である。外力Fpは、カートリッジ4の第1面45に対して略垂直に加わる力である。すなわち、外力Fpは、カートリッジ4を+Y軸方向(取り外し方向)に押す力である。外力Fpと、外力Fsの+Y軸方向の分力Fs1との合力はカートリッジ4を+Y軸方向に移動させる力である。これに対して、カートリッジ4に対して外力Ftが加えられることで、カートリッジ4のY軸方向の動きが規制される。
また、外力Ftと外力Fsの−Z軸方向の分力Fs2とはそれぞれ、カートリッジ4を挟持する方向の力である。すなわち、外力Ftと分力Fs2とはそれぞれ、カートリッジ4の取り外し方向(+Y軸方向)に対して垂直な方向に働く力である。外力Ftや、分力Fs2が大きくなると、カートリッジ4をカートリッジ装着部6から容易に取り外すことが困難となる。
A−2:カートリッジ装着部の詳細構成:
次にカートリッジ装着部6の詳細構成について、図4〜図9を用いて説明する。図4は、カートリッジ装着部6の正面図である。図5は、カートリッジ装着部6の第1の外観斜視図である。図6は、カートリッジ装着部6の第2の外観斜視図である。図7は、カートリッジ装着部6の側面図である。図8は、図4のF4−F4断面図である。図9は、装置側係合構造420を説明するための図である。ここで、図7は、説明の容易のため、カートリッジ装着部6の内部の構成が現れるように、カートリッジ装着部6の一部の構成の図示は省略している。また、図9は、装置側係合構造の構成が現れるように、カートリッジ装着部6の一部の構成の図示を省略している。
図5及び図6に示すように、カートリッジ装着部6は、以下に述べる6つの壁62,64,65,66,67,68を備える。6つの壁62,64,65,66,67,68によって、カートリッジ収容室60が区画形成されている。6つの壁62,64,65,66,67,68の外形はそれぞれ、略長方形状である。ここで、壁65を、「装置側第1壁65」又は「装置側後壁65」とも呼ぶ。また、壁66を、「装置側第2壁66」又は「装置側前壁66」とも呼ぶ。また、壁62を、「装置側第3壁62」又は「装置側底壁62」とも呼ぶ。また、壁64を、「装置側第4壁64」又は「装置側上壁64」とも呼ぶ。また、壁67を、「装置側第5壁67」又は「装置側第1側壁67」とも呼ぶ。また、壁68を、「装置側第6壁68」又は「装置側第2側壁68」とも呼ぶ。また、各壁62,64,65,66,67,68はそれぞれ、単一の壁部材によって形成されても良いし、複数の壁部材が組み合わされることで形成されても良い。
図7に示すように、装置側第1壁65と装置側第2壁66とは、カートリッジ収容室60を挟んで互いに対向する。装置側第3壁62と装置側第4壁64とは、カートリッジ収容室60を挟んで互いに対向する。装置側第5壁67と装置側第6壁68とは、カートリッジ収容室60を挟んで互いに対向する。装置側第1壁65は、カートリッジ収容室60に対して−Y軸方向側に位置する。装置側第2壁66は、カートリッジ収容室60に対して+Y軸方向側に位置する。装置側第3壁62は、カートリッジ収容室60に対して−Z軸方向側に位置する。装置側第4壁64は、カートリッジ収容室60に対して+Z軸方向側に位置する。装置側第5壁67は、カートリッジ収容室60に対して+X軸方向側に位置する。装置側第6壁68は、カートリッジ収容室60に対して−X軸方向側に位置する。
図5及び図6に示すように、カートリッジ装着部6の外形は略直方体形状である。装置側第1壁65、装置側第2壁66、装置側第5壁67、装置側第6壁68はそれぞれ、使用状態において略垂直な壁である。装置側第3壁62と装置側第4壁64とはそれぞれ、使用状態において略水平な壁である。
装置側第2壁66は、カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着される際に通過する開口OP(図8)が形成されている。また、カートリッジ4を着脱する際には、Y軸方向に沿ってカートリッジ4が移動する。詳細には、−Y軸方向がカートリッジ4のカートリッジ装着部6への装着方向である。また、+Y軸方向がカートリッジ4のカートリッジ装着部6からの取り外し方向である。
図4及び図7に示すように、装置側第1壁65には、接触機構80と、流通ユニット70と、第1と第2の位置決め部材76,78と、が設けられている。各要素80,70,76,78,75はそれぞれ、スロット61a〜61dごとに設けられている。図4に示すように、装置側第4壁64に近い側から、接触機構80、第1の位置決め部材76、流通ユニット70、第2の位置決め部材78の順に位置する。第1と第2の位置決め部材76,78とは、流通ユニット70をZ軸方向について挟む位置に設けられている。
図6〜図8に示すように、接触機構80は、装置側端子群802と、コネクター基板804(図8)、端子保持部材81と、付勢部材806(図8)と、を備える。装置側端子群802は、9つの装置側端子803からなる。図8に示すように、9つの装置側端子803のそれぞれは、板状部材であり弾性変形する。詳細には、屈曲部818を中心として一端部812が矢印R1方向に弾性変形する。矢印R1方向とは、Y軸方向とZ軸方向に平行な方向である。装置側端子803は、一端部812が、端子保持部材81表面から露出するように端子保持部材81によって保持されている。他端部813は、コネクター基板804と接触することで電気的に接続されている。また、コネクター基板804は、プリンター10の制御部31と電気的に接続されている。また、一端部812は、カートリッジ4の装着状態において、カートリッジ4に設けられた対応するカートリッジ側端子と接触することで、電気的に接続される。
図6に示すように、端子保持部材81は、装置側端子群802を保持する。詳細には、端子保持部材81は、Z軸方向とX軸方向に微小に移動可能なように装置側端子群802(詳細には、装置側端子群802が固定された端子台)を保持する。端子保持部材81のX軸方向の両側面にはそれぞれ、一対の部材810,811が設けられている。一対の部材810,811は、Y軸方向に延びる柱状部材である。一対の部材810,811は、カートリッジ4をカートリッジ装着部6に装着する際に、カートリッジ4の回路基板52の近傍に設けられた溝に挿入される。図8に示す付勢部材806は、圧縮コイルバネである。付勢部材806は、端子保持部材81を+Y軸方向側に付勢している。また、図6に示すように、X軸方向の両側面に設けられた係合爪807と、装置側第1壁65に設けられた係合壁651とが係合することで、端子保持部材81の+Y軸方向の動きが規制される。また、端子保持部材81は、−Y軸方向の外力が加わることで付勢部材806の付勢力に抗して−Y軸方向に移動できる。
上記のように、装置側端子803は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の3方向にそれぞれに移動可能である。これにより、カートリッジ4をカートリッジ装着部6に装着する際に、装置側端子803が3方向に移動することで、カートリッジ側端子の装置側端子803に位置が微調整される。よって、カートリッジ側端子と装置側端子803との接触を確実に図ることができる。
図5、6、8に示すように、第1と第2の位置決め部材76,78は、装置側第1壁65から+Y軸方向に沿って延びる柱状部材である。第1と第2の位置決め部材76,78は、カートリッジ4に設けられた後述する第1と第2の部材貫通孔に挿入される。
図5及び図8に示すように、流通ユニット70は、流通管702と、カバー部材706と、付勢部材712(図8)と、を備えている。流通管702は、カートリッジ4の印刷材供給部482に挿入される。これにより、流通管702とカートリッジ4の印刷材供給部482とが接続され、カートリッジ4内のインクが流通管702を介して印刷装置10へと流通する。図8に示すように、流通管702は、内部に流路断面が円形の流通流路702dを有する。流通管702の円周のうち、−Z軸方向側には外部と流通流路702dとを連通させる連通穴702cが形成されている。カートリッジ4内のインクは連通穴702cを介して印刷装置10へと流通する。流通管702は、中心軸CAを有する。中心軸CAは、Y軸方向に沿って延びる。流通管702は、装置側第1壁65側に配置された基端部702aと、装置側第2壁66側に配置された先端部702bと、を有する。基端部702aから先端部702bに向かう方向が、+Y軸方向である。
図8に示すように、カバー部材706は、流通管702の一部分の周囲を取り囲む。また、カバー部材706は、印刷材受部710を有する。印刷材受部710の形状は、凹形状である。印刷材受部710は、流通管702やカートリッジ4の印刷材供給部482からインクが漏れ出した場合に、漏れ出したインクを受け入れることで捕捉する。付勢部材712は、圧縮コイルバネである。付勢部材712は、カバー部材706を+Y軸方向側に付勢している。カバー部材706は、−Y軸方向の外力が加わることで付勢部材712の付勢力に抗して−Y軸方向に移動できる。ここで、印刷材受部710は、カートリッジ4が装着される前の状態から装着状態に至る間の変位に拘わらず印刷材供給管642の−Z軸方向側(真下側)に配置されている。詳細には、印刷材受部710は、カートリッジ4が装着される前の状態から装着状態に至る間のカバー部材706の移動に拘わらず連通穴648の−Z軸方向側(真下側)に配置されている。これにより、流通管702からインクが漏れ出した場合でも、印刷材受部710がインクを捕捉することでインクが広範囲に亘って飛散する可能性を低減できる。Y軸方向について、印刷材受部710の長さはL1である。長さL1は、後述する案内部606の長さL2(図19)よりも長い。
図6及び図8に示すように、装置側第4壁64には、第1のレール機構89と、装置側識別部材82と、を備える。各要素89,82はそれぞれ、スロット61a〜61dごとに設けられている。第1のレール機構89は、カートリッジ4をカートリッジ装着部6に装着する際に、カートリッジ4の幅方向(X軸方向)の動きを規制しながら、カートリッジ4を装着位置まで案内する。図6に示すように、第1のレール機構89は、X軸方向に所定の間隔をあけて配置された一対のレール部材86,87を有する。一対のレール部材86,87は、装置側第4壁64からカートリッジ収容室60側に突出した部材である。一対のレール部材86,87は、Y軸方向に沿って延びる。
装置側識別部材82は、カートリッジ収容室60の各スロット61a〜61dに正しい種類(本実施形態ではインク色)のカートリッジ4が挿入されたか否かを識別するために用いられる。装置側識別部材82は、第1のレール機構89よりも装置側第1壁65側(−Y軸方向側)に位置する。各装置側識別部材82は、装着されるカートリッジ4内のインクの色に応じて、異なる形状を形成する(図6では便宜上、同一形状)。詳細には、図6に示すように、各装置側識別部材82は、少なくとも1つ以上のリブ(突起)によって形成されている。各装置側識別部材82において、リブの数と位置によって定まるパターンが装着されるカートリッジ4の種類に応じて異なる。カートリッジ4にも、リブによって形成された識別部材(「カートリッジ側識別部材」ともいう。)が設けられている。カートリッジ4の識別部材は、収容するインクの色に応じて異なる形状を形成している。そして、正しい種類のカートリッジ4がスロットに挿入される場合は、装置側識別部材82とカートリッジ側識別部材424とが衝突することなく、嵌め合う。一方、誤った種類のカートリッジ4がスロット61に挿入された場合は、装置側識別部材82とカートリッジ側識別部材424とが衝突し、更なるカートリッジ4の挿入が阻害される。これにより、誤った種類のカートリッジ4がカートリッジ装着部6の各スロット61a〜61dに装着される可能性を低減できる。
図5及び図8に示すように、装置側第3壁62は、第2のレール機構84と、装置側係合構造75と、を備える。各要素84,75はそれぞれ、スロット61a〜61dごとに設けられている。第2のレール機構84は、カートリッジ4をカートリッジ装着部6に装着する際に、カートリッジ4の幅方向(X軸方向)の動きを規制しながら、カートリッジ4を装着位置まで案内する。図5に示すように、第2のレール機構84は、X軸方向に所定の間隔をあけて配置された一対のレール部材88、89を有する。一対のレール部材88、89は、装置側第3壁62からカートリッジ収容室60側に突出した部材である。一対のレール部材88、89は、Y軸方向に沿って延びる。
装置側係合構造75は、カートリッジ4のカートリッジ側係合構造420(図9)と係合する。これにより、装着状態における+Y軸方向へのカートリッジ4の動きが規制される。図5,8,9に示すように、装置側係合構造75は、レバー部73と、取付部72(図9)と、付勢部材79と、を有する。
図8に示すように、レバー部73は、第2のレール機構84よりも装置側第1壁65側に位置する。レバー部73は、レバー本体77と、突起部74と、軸部71と、を有する。レバー本体77は、板状である。レバー本体77は、弾性を有する。レバー本体77は、カートリッジ4が装着されていない状態で水平に延びる。軸部71は、レバー本体77のうち装置側第1壁65側(−Y軸方向側)の端部に位置する。軸部71は、円筒形状であり、レバー本体77から−Z軸方向に延びる。図8に示すように、軸部71の軸孔には装置側第3壁62の一部分である突起部628が挿入される。これにより、軸部71を回転軸としてレバー本体77が回転移動できる。また、レバー部73のうち、軸部71側部分は、装置側第1壁65と装置側第3壁62とによってZ軸方向に挟持されている。これにより、レバー部73のうち、突起部74側部分は鉛直方向を含む方向RCに弾性変形できる。
突起部74は、カートリッジ4のカートリッジ側係合構造420(図9)と係合する部分である。突起部74は、レバー本体77のうち装置側第2壁66(+Y軸方向側)の端部に位置する。突起部74は、レバー本体77から+Z軸方向側に突出する。カートリッジ側係合構造420と装置側係合構造75とが係合した状態(「係合状態」とも呼ぶ。)では、カートリッジ4からの外力によって、レバー部73の突起部74側は−Z軸方向側へ変位する。これにより、係合状態では、レバー部73の突起部74によってカートリッジ4に対し略+Z軸方向側への弾性力が作用する。ここで、係合状態は、装着状態と同じ状態である。
図9に示すように、付勢部材79は引張コイルバネである。付勢部材79の一端は取付部72に取り付けられ、他端は装置側第3壁62の一部分627に取り付けられている。図5に示すように、レバー本体77に付勢部材79に抗した外力が加わることで、レバー本体77は、矢印+RB方向へと回動する。なお、図5では、レバー本体77に外力が加わっていない場合の状態(無荷重状態)のレバー本体77の状態を示している。また、レバー本体77に加わる外力が解除されると、レバー本体77は矢印−RB方向へと回動する。上記のごとく、レバー本体77の回動は、X軸方向とY軸方向に平行な平面(水平面)内で行われる。
A−3.カートリッジの外観構成:
次に、図10〜19を用いてカートリッジ4の外観構成について説明する。図10は、カートリッジ4の第1の外観斜視図である。図11は、カートリッジ4の第2の外観斜視図である。図12は、回路基板52の正面図である。図13は、回路基板52の側面図である。図14は、カートリッジ4の正面図である。図15は、カートリッジ4の上面図である。図16は、カートリッジ4の第1の側面図である。図17は、カートリッジ4の底面図である。図18は、カートリッジ4の背面図である。図19は、図17の部分拡大図である。図19は、理解の容易のために、装置側係合構造75の突起部74も図示している。カートリッジ4を説明するための図面に描かれたXYZ軸は、装着状態における印刷装置10のXYZ軸に対応している。
図10及び図11に示すように、カートリッジ4の外形は略直方体形状である。本実施形態では、カートリッジ4は、Y軸方向、Z軸方向、X軸方向の順で寸法が小さくなる。ここで、本実施形態では、X軸方向をカートリッジ4の「幅方向」とも呼び、Y軸方向をカートリッジ4の「長さ方向」とも呼び、Z軸方向をカートリッジ4の「高さ方向」とも呼ぶ。カートリッジ4は、内部にインクを収容するための容器本体450を備える。容器本体450はポリプロピレンやポリスチレン等の合成樹脂を成形することで形成された筐体である。容器本体450は、カートリッジの外殻(外表面)400を形成する。カートリッジ4は、第1面45と、第2面46と、第3面42と、第4面44と、第5面47と、第6面48と、を備える。第1面〜第6面45,46,42,44,47,48は、容器本体450によって形成されるカートリッジ4の外殻(外表面)400を構成する。外殻400の内側には、インクを収容する印刷材収容部7が配置されている。第1面〜第6面45,46,42,44,47,48の平面視における外形はそれぞれ、略長方形状である。また、第1〜第6面45,46,42,44,47,48の表面はそれぞれ、概ね平面である。「概ね平面」とは、面全域が完全に平坦である場合と、面の一部に凹凸を有する場合を含む。つまり、「概ね平面」とは、面の一部に多少の凹凸や多少の段差があっても、カートリッジ4の外表面が把握できるような場合を含む。ここで、第1面45を「前面45」とも呼ぶ。また、第2面46を「後面46」とも呼ぶ。また、第3面42を「底面42」とも呼ぶ。また、第4面44を「上面44」とも呼ぶ。また、第5面47を「第1側面47」とも呼ぶ。また、第6面48を「第2側面48」とも呼ぶ。
第1面45と第2面46とが対向する方向がY軸方向である。第3面42と第4面44とが対向する方向がZ軸方向である。第5面47と第6面48とが対向する方向がX軸方向である。
図16に示すように、第1面45と第2面46とは、印刷材収容部7(カートリッジ4の内部空間)を挟んで互いに対向する。第3面42と第4面44とは、印刷材収容部7を挟んで互いに対向する。図10及び図14に示すように、第5面47と第6面48とは、印刷材収容部7を挟んで互いに対向する。図16に示すように、第1面45は、印刷材収容部7に対して−Y軸方向側に位置する。第2面46は、印刷材収容部7に対して+Y軸方向側に位置する。第3面42は、印刷材収容部7に対して−Z軸方向側に位置する。第4面44は、印刷材収容部7に対して+Z軸方向側位置する。図10及び図14に示すように、第5面47は、印刷材収容部7に対して+X軸方向側に位置する。第6面48は、印刷材収容部7に対して−X軸方向側に位置する。第3面42は、第1面45,第2面46,第5面47,及び、第6面48と交わる。第4面44は、第1面45,第2面46,第5面47,及び、第6面48と交わる。第5面47は、第1面45,第2面46,第3面42、及び、第4面44と交わる。第6面48は、第1面45,第2面46,第3面42、及び、第4面44と交わる。本実施形態において、「交わる」とは、2つの面が相互に交差して実際に交わる状態と、一方の面の延長面が他方の面に実際に交わる状態と、相互の延長面同士が実際に交わる状態と、のいずれかの状態であることを意味する。
図16に示すように、第1面45は、装着状態において、カートリッジ装着部6と対向する面である。第1面45は、装着状態において、水平面に対して略垂直である。第3面42は、一端部面426と、他端部面423とを有する。一端部面426は、第2面46に接続されている。他端部面423は第1面45に接続されている。また、一端部面426と他端部面423とは互いに接続されている。Z軸方向について、他端部面423は、一端部面426よりも、第4面44に近い位置に配置されている。すなわち、他端部面423は、一端部面426よりも上側(+Z軸方向側)に位置する。
さらに、カートリッジ4は、図10に示すように、第1面45と第4面44とが交わるコーナー部50を備える。コーナー部50は、第1面45と第4面44に亘って形成された凹部である。コーナー部50は、第1面45の第4面44側の一端部45aと、第4面44の第1面45側の一端部44aとが位置する領域である。コーナー部50の底部には、第1面45と第4面44とを繋ぐ傾斜面51が形成されている。傾斜面51は、+Z軸方向成分と−Y軸方向成分とを含む方向を向いている。言い換えれば、傾斜面51は、第3面42から第4面44に近づくに従い、第1面45から第2面46に近づくように傾斜している。傾斜面51には、回路基板52が配置されている。回路基板52の表面52aは、傾斜面51と略同じ角度で傾斜している。すなわち、表面52aは、+Z軸方向成分と−Y軸方向成分とを含む方向を向いている。図11,図14に示すように、コーナー部50の両側面には、第1溝58と、第2溝59とが形成されている。第1溝58と第2溝59とはそれぞれ、第1面45から+Y軸方向に沿って延びる。カートリッジ4を装着する際には、第1溝58には部材811(図6)が挿入される。第2溝59には部材810(図6)が挿入される。これにより、カートリッジ側端子群500に対する、装置側端子群802の位置決めが行われる。
図12及び図13に示すように、回路基板52は、表面52aに設けられたカートリッジ側端子群500と、裏面52bに設けられた記憶装置520と、を有する。表面52a及び裏面52bは平面である。平面である表面52aのうち、カートリッジ4に取り付けられた状態において、平面である表面52aのうち、最も+Z軸方向側に位置する部分(一辺)を基板端部505とも呼ぶ。
カートリッジ側端子群500は、9つのカートリッジ側端子531〜539からなる。記憶装置520は、カートリッジ4のインクに関する情報(例えば、インク残量や収容するインク色)等を格納する。カートリッジ側端子群500が、印刷装置10の装置側端子群802(図6)と接触することで、例えば、記憶装置520のデータ信号の授受が記憶装置520と印刷装置10の制御部31との間で行われる。また、カートリッジ側端子群500の各端子531〜539が装置側端子群802の各端子(9つの端子)に接触することで、カートリッジ4が印刷装置10に装着されたと制御部31(図1)が判定する。この判定後、印刷装置10の制御部31による制御によって、印刷動作が可能な状態となる。
図12に示すように、9つのカートリッジ側端子531〜539はそれぞれ略矩形状に形成されている。9つのカートリッジ側端子531〜539は、それぞれ接触部cpを備える。9つのカートリッジ側端子531〜539は、2つの列R1,R2を形成するように配置されている。2つの列R1,R2は、異なる高さに位置する。また、2つの列R1,R2はそれぞれ、カートリッジ4の第5面47と第6面48とが対向する幅方向(Y軸方向)に沿って延びる列である。2つの列R1,R2のうち、−Z軸方向側の列を第1の端子列R1とも呼び、+Z軸方向側の列を第2の端子列R2とも呼ぶ。第1の端子列R1は、5つのカートリッジ側端子535,536,537,538,539からなる。第2の端子列R2は4つのカートリッジ側端子531,532,533,534からなる。各端子531〜539のそれぞれの中央部には、接触機構80が有する装置側端子803(図6)に接触する接触部cpが存在する。第1と第2の端子列R1,R2はそれぞれ、複数の接触部cpによって形成される列であると考えることもできる。
第1の端子列R1を形成する端子535〜539の各接触部cpと、第2の端子列R2を形成する端子531〜534の各接触部cpとは、互い違いに配置されている。詳細には、各接触部cpはいわゆる千鳥状に配置されている。
第1の端子列R1を形成する複数(5つ)の接触部cpのうち、複数(5つ)の接触部cpの幅Wa中央に位置する接触部を、第1接触部537cpとも呼ぶ。また、第1接触部537cpを有する端子を第1端子537とも呼ぶ。第1端子537を通り、かつ、幅方向(X軸方向)に対し垂直な仮想平面を「平面C1」とも呼ぶ。ここで、平面C1は、第1接触部537cpを通る。また、本実施形態では、平面C1は、回路基板52の幅中央も通る。また、平面C1は、カートリッジ4の幅中央も通る。ここで、第1の端子列R1に配置された5つの接触部cpが課題を解決するための手段に記載の「複数の接触部」に相当する。第1の端子列R1を形成する複数の接触部cpを「複数の接触部cpa」とも呼び、第2の端子列R2を形成する複数の接触部cpを「複数の接触部cpb」とも呼ぶ。本実施形態では、カートリッジ側端子531〜539が2つの端子列から形成されるとしたがこれに限られない。第1の端子列R1のみ又は第2の端子列R2のみであってもよい。
図12に示すように、回路基板52の+Z軸方向側の端部にはボス溝501が形成され、回路基板52の−Z軸方向側の端部にはボス孔502が形成されている。カートリッジ4に設置された状態の回路基板52は、ボス溝501およびボス孔502を用いてカートリッジ4の傾斜面51(図10)に固定されている。他の実施形態では、ボス溝401およびボス孔402の少なくとも一方を回路基板52から省略して、接着剤を用いて回路基板52を傾斜面51に固定しても良いし、傾斜面51に設けた係合爪(図示しない)を用いて回路基板52を固定しても良い。
図11に示すように、第1面45には、貫通孔452と、第1の部材貫通孔458と、第2の部材貫通孔459と、当接部457と、が設けられている。貫通孔452は、印刷材供給部482を受け入れている。貫通孔452には、少なくとも印刷材供給部482の一端である供給口480が配置されている。図14に示すように、供給口480は、平面C1を通る位置に配置されている。また、供給口480は、円形である。供給口480の中心は、平面C1を通る位置に配置されている。供給口480は、Z軸方向について、第4面44よりも第3面42側に寄った位置に配置されている。すなわち、カートリッジ4の高さTの半分より下側の範囲に供給口480が位置する。ここで、カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着される前の状態(「初期状態」とも呼ぶ。)では、供給口480をシート部材で塞いでも良い。シート部材は、流通管702によって破られる程度の薄さを有する。
図11に示すように、第1の部材貫通孔458と第2の部材貫通孔459とは、Z軸方向について貫通孔452を挟む位置関係にある。第1の部材貫通孔458には、装着状態において、第1の位置決め部材76(図8)が挿入される。第2の部材貫通孔459には、装着状態において、第2の位置決め部材78(図8)が挿入される。一対の部材貫通孔458,459と、一対の位置決め部材76,78とが協働することで、カートリッジ4をカートリッジ装着部6に装着する際における、カートリッジ4の挿入方向に垂直な面内方向の動きを規制する。面内方向とは、X軸方向とZ軸方向に平行な方向である。第1の部材貫通孔458は、Y軸方向に垂直な断面形状が略円形状である。一方、第2の部材貫通孔459は、Y軸方向に垂直な断面がZ軸方向に細長い楕円形状である。第2の部材貫通孔456のY軸方向の長さは、第2の位置決め部材78のY軸方向の長さよりも大きい。第2の部材貫通孔456に第2の位置決め部材78が挿入されると、Y軸方向に微小な隙間が生じる。このように、第2の部材貫通孔456のY軸方向の長さを大きくすることで、位置決め精度を保つ一方で寸法公差を許容することが容易となる。すなわち、スロット61内におけるカートリッジ4の位置決め精度は、第1の部材貫通孔458によって担保される。また、寸法公差等による第2の部材貫通孔459と第2の位置決め部材78との位置ずれは、第2の部材貫通孔459によって吸収される。
当接部457は、4つ設けられている。当接部457は、第1面45から突出した円板状である。図14に示すように、4つの当接部457は貫通孔452の周辺部に配置されている。4つの当接部457が、カートリッジ装着部6のカバー部材706(図8)の+Y軸方向側に位置する端面703(図5)と当接する。
図10に示すように、第4面44には、溝部445と、カートリッジ側識別部材424と、が設けられている。溝部445は、第4面44の途中から第2面46側端部まで延びる。溝部455を区画形成する一対の側壁442,444は、カートリッジ4の幅方向に所定間隔をあけて配置されている。具体的には、一対の側壁442,444は、溝部445内に一対のレール部材86,87(図6)が嵌め差し込まれる程度に間隔をあけて配置されている。カートリッジ側識別部材424は、少なくとも1つ以上のリブ(突起)によって形成される。リブの数と位置によって定まるカートリッジ識別部材424のパターンはカートリッジ4の種類に応じて異なる。Y軸方向について、カートリッジ側識別部材424は、溝部445の第1面45側端部に位置する溝入口447付近に配置されている。また、Y軸方向について、カートリッジ側識別部材424は、回路基板52よりも第2面46側に配置されている。
図11に示すように、第3面42には、溝部425と、カートリッジ側係合構造420と、が設けられている。溝部425は、第3面42の途中から第2面46側端部まで延びる。溝部425を区画形成する一対の側壁422,424は、カートリッジ4の幅方向に所定間隔をあけて配置されている。具体的には、一対の側壁422,424は、溝部425内に一対のレール部材88,89(図5)が嵌め差し込まれる程度に間隔をあけて配置されている。カートリッジ側係合構造420は、溝部425(溝入口427)よりも第1面45側に配置されている。カートリッジ側係合構造420は、溝形状(溝構造)である。カートリッジ側係合構造420は、装置側係合構造75と係合することで、カートリッジ装着部6から加えられる取り外し方向(+Y軸方向)への外力Fp,Fs1(図3)に抗して、カートリッジ4の+Y軸方向への動きを規制する。
図19に示すように、カートリッジ側係合構造420は、受入部601と、案内部606と、接続部608と、係合部612と、出口部616と、を備える。カートリッジ4をカートリッジ装着部6に装着する際には、突起部74は、受入部601,案内部606,接続部608,係合部612の順に移動する。装着状態では、突起部74は、係合部612の所定の係合位置Stで係合部612と係合する。カートリッジ4をカートリッジ装着部6から取り外す際には、突起部74は、係合部612,出口部616,受入部601の順に移動する。
受入部601は、第1面45から第2面46に向かって延び、装置側係合構造75の突起部74を受け入れる。受入部601は、第1面45に開口605を形成している。開口605を介して突起部74を受入部601内に受け入れる。受入部601は、カートリッジ側係合構造420の他の部分606,608,612,616よりも深い。よって、突起部74が他の部分606,608,612,616に位置する間は、レバー本体77の突起部74側が押し下げられる。これにより、レバー本体77の弾性力によって、突起部74を介してカートリッジ4が押し上げる方向(+Z軸方向)に外力Ft(図3)を受ける。
案内部606は、装置側係合構造75の突起部74を、係合位置St(係合部612が形成された位置)に導くための部分である。案内部606は、受入部601に接続されている。案内部606は、カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着される際のカートリッジ4の装着方向(−Y軸方向)に対して傾斜する方向に延びる。具体的には、案内部606は、装着方向に対してカートリッジ4の幅方向に傾斜している。案内部606は、受入部601から離れるに従って溝が浅くなる傾斜部606aを有する。案内部606と受入部601との境界には段差はない。ここで、第1面45と第2面46とが対向する方向(装着方向および取り外し方向)における案内部606の長さはL2である。ここで、長さL2は、印刷材受部710の長さL1(図8)よりも短い。
接続部608は、案内部606と係合部612とを接続する。接続部608は、溝を区画形成する+Y軸方向側の壁から−Y軸方向側へ突出する突起壁615を有する。係合部612は、突起壁615と対向する。係合部612は、係合壁614を有する。係合壁614は、カートリッジ側係合構造420の溝を区画形成する複数の壁部の1つである壁部633によって形成されている。係合部612は、平面C1を通る位置に形成されている。出口部616は、係合部612と受入部601とを接続する。出口部616は、受入部601に近づくに従って溝が深くなる傾斜部616aを有する。出口部616と受入部601との境界には段差620が形成されている。
次に、図19を用いてカートリッジ4の着脱操作時におけるカートリッジ側係合構造420内での突起部74の動きについて説明する。装着動作時において、第1の部材貫通孔458(図11)に第1の位置決め部材76が挿入され始め、かつ、第2の部材貫通孔459(図11)に第2の位置決め部材78が挿入され始めた後に、突起部74は受入部601から案内部606に移動する。案内部606を突起部74が移動する際には、付勢部材79(図9)の付勢力に抗してレバー本体77が−X軸方向成分を含む方向(図5の矢印+RB方向)に回動する。突起部74が案内部606を移動している期間に、カートリッジ4の第1面45(詳細には、当接部457)がカバー部材706の端面703(図5)に当接する。カートリッジ4を付勢部材712(図8)の付勢力に抗して装着方向に押し進めることで、突起部74が接続部608に到達する。接続部608に到達した突起部74は、装置側係合構造75の付勢部材79の付勢力によって+X軸方向成分を含む方向(図5の矢印−RB方向)に移動する。これにより、突起部74が突起壁615に衝突して止まる。このとき、クリック音が生じる。このクリック音により利用者は、カートリッジ4が装着方向に十分に進んだことを確認することができる。
利用者による装着方向へのカートリッジ4の押圧が解除されると、カートリッジ4は、流通ユニット70の付勢部材712(図8)の付勢力によって、取り外し方向(+Y軸方向)に僅かに押し返される。これにより、突起壁615による係合が解除されて突起部74が係合部612に到達する。そして、最終的には、係合部612の係合壁614に突起部74が衝突することで、付勢部材79(図9)の付勢力による+X軸方向への突起部74の動きが規制される。係合壁614に突起部74が衝突する際には、クリック音が生じる。このクリック音により利用者は、カートリッジ4が係合位置Stに到達し、カートリッジ装着部6の装着が完了したことを確認できる。また、装着状態においては、付勢部材712(図8)が取り外し方向(+Y軸方向)への外力Fpを加えている(図3)。しかしながら、突起部74が係合壁614に当接することで、カートリッジ4の取り外し方向への動きが規制される。
カートリッジ4をカートリッジ装着部6から取り外す際には、以下の手順となる。まず、利用者によって装着状態におけるカートリッジ4が装着方向へ押し込まれる。これにより、突起部74が係合壁614から離れてカートリッジ側係合構造420と装置側係合構造75との係合が解除される。すると、カバー部材706の付勢部材712の付勢力によって、カートリッジ4が取り外し方向(+Y軸方向)に移動する。これにより、突起部74が出口部616を通って受入部601に到達する。利用者は。付勢部材712の付勢力によって取り外し方向に所定距離移動したカートリッジ4を掴んでカートリッジ装着部6から取り外す。
A−4.カートリッジの内部構成:
図20は、カートリッジ4の分解斜視図である。図21は、流路ユニット9の分解斜視図である。図20に示すように、容器本体450は、第1容器本体5aと、第2容器本体5bとによって構成される。第1容器本体5aと第2容器本体5bとは、嵌合を解除することで互いに取り外すことができる。すなわち、第1容器本体5aと第2容器本体5bとは、別体である。第1容器本体5aは、第1面45を含む。また、第1容器本体5aは、第2面46を含まない。第2容器本体5bは、第2面46を含む。また、第2容器本体5bは、第1面45を含まない。印刷材収容部7は、主に、第2容器本体5bに収容されている。コーナー部50は、第1容器本体5aに形成されている。第1容器本体5aは、Z軸方向の両側に位置し、第2容器本体5b側に突出した突出部55、56を備える。カートリッジ側係合構造420のうち、係合部612(図19)を含む一部分は突出部55に形成されている。第1容器本体5aが備える突出部55,56が第2容器本体5bと嵌め合わされることで、第1容器本体5aに第2容器本体5bが取り付けられる。また、突出部55,56と第2容器本体5bとの間には遊びがある。この遊びによって、第2容器本体5bは、第1容器本体5aに対して微小に動くことができる。
印刷材収容部7は袋体である。印刷材収容部7内にはインクが充填されている。印刷材収容部7は、樹脂フィルム層の上にアルミニウム層が積層されたアルミラミネート複層フィルムによって形成されている。印刷材収容部7は、可撓性を有する。印刷材収容部7は、印刷材収容部7のインク残量が少なくなるにつれ、印刷材収容部7内部の容積が減少する。印刷材収容部7のうち、第1面45側の側面には印刷材収容部7内と連通する流路ユニット9が取り付けられている。
図20,図21に示すように、流路ユニット9は、流路本体90と、弁94と、弁座92と、を有する。流路本体90と弁座92とは、ポリプロピレンやポリスチレン等の合成樹脂を成形することで形成されている。弁94は、合成樹脂などの弾性部材によって形成されている。
流路本体90は、印刷材供給部482と、減圧部91とを有する。印刷材供給部482は、印刷材収容部7のインクを印刷装置10に供給するための流路を形成する。また、印刷材供給部482内には、流通管702の先端部702b側が挿入される。印刷材供給部482内に流通管702が挿入されることで、カートリッジ4の装着方向に垂直な面内方向における動きがある程度規制される。これにより、カートリッジ4のカートリッジ装着部6に対する装着方向に垂直な方向における位置決めが行われる。図21に示すように、印刷材供給部482の一端は供給口480であり、他端は連通口483である。供給口480は、外部に向かって開口している。連通口483は、印刷材収容部7内に配置されている。図20に示すように、印刷材供給部482は、流路本体90のうち第1面45側に位置する面95から延びる流路形成部材481を有する。流路形成部材481は、面95から−Y軸方向に沿って延びる。流路形成部材481は、円筒形状である。流路形成部材481は、印刷材供給部482のうち、供給口480を含む一端側部分である。流路形成部材481の中心軸CBはY軸方向に沿って延びている。印刷材供給部482の流路のうち、供給口480を含む一端側流路は、流路形成部材481によって形成されている。すなわち、印刷材供給部482のうち、供給口480を含む一端側部分の内部流路は、Y軸方向に沿って延びる。
流路形成部材481内には、弁ユニット(図示せず)が配置されている。弁ユニットは、弁と弁孔を有する弁座とを備える。弁座は、合成ゴムなどの弾性部材である。流通管702が供給口480を介して印刷材供給部482に挿入されると弁を弁座から離間させる。これにより、弁ユニットが開弁状態となり、印刷材供給部482の内部流路が開放される。また、流通管702の外周は、弁座によって気密に取り囲まれる。すなわち、流通管702が印刷材供給部482内に挿入されることで、カートリッジ4のカートリッジ装着部6に対する位置決めが行われる。詳細には、カートリッジ4の装着方向に垂直な面内方向における位置決めが行われる。なお、本実施形態では、装着状態において、流通管702の外周が弁座によって気密に取り囲まれているが、流通管702と印刷材供給部482との隙間からインクが外部に漏れ出さない構成であれば良い。例えば、流通管702が印刷材供給部482に嵌め挿し込まれても良い。すなわち、流通管702の外周の周方向全域に印刷材供給部482の内周が接触しても良い。
図20,図21に示すように、弁座92は、インクが流れる弁孔93を有する。インクが印刷材収容部7から印刷装置10へと流れる場合は、弁94は、弁座92から離れる。これにより、開弁状態になり印刷材供給部482内をインクが流通する。印刷材供給部482を流れるインクは印刷装置10へと流通する。一方、印刷材収容部7へ逆流する方向へのインクの流れが生じた場合は、弁94は弁座92に着座することで弁孔93を塞ぐ。これにより、インクの逆流を抑制する。上記のように、印刷材供給部482は、印刷材収容部7と印刷装置10とを連通させる。
減圧部91は、印刷材収容部7にインクを充填する際に、印刷材収容部7内を減圧するために用いる。減圧部91の一端91aは、外部に向かって開口する。減圧部91の他端91bは印刷材収容部7内で開口している。印刷材収容部7にインクを充填する前に、減圧部91によって外部から印刷材収容部7を減圧する。減圧後に、インクを印刷材供給部482から印刷材収容部7に流通させる。減圧部91の流路は、インクが印刷材収容部7に充填された後に、熱溶着等によって閉塞される。
A−5.カートリッジの装着態様:
図22〜図24を用いて、カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着される際の態様を説明する。図22は、第1の説明図である。図23は、第2の説明図である。図24は、第3の説明図である。図22,図23,図24の順で、カートリッジ4のカートリッジ装着部6への装着動作が進む。図22は、第1の位置決め部材76の第1の部材貫通孔458への挿入と、第2の位置決め部材78の第2の部材貫通孔459への挿入とが開始された時点(「第1の時点」とも呼ぶ。)を示している。図23は、カートリッジ側識別部材424が装置側識別部材82に到達した時点(「第2の時点」とも呼ぶ。)を示している。すなわち、図23はカートリッジ側識別部材424と装置側識別部材82との嵌め合いが開始される時点である。図24は、カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着された時点(「第3の時点」とも呼ぶ。)を示している。すなわち、図24は装着状態におけるF2−F2断面図である。
図22に示すように、第1の時点では、装置側識別部材82とカートリッジ側識別部材424との嵌め合いが未だ開始されていない。また、第1の時点では、カバー部材706とカートリッジ4とは接触することなく離れている。第1の時点において、印刷材供給部482と流通管702とはY軸方向に距離DA離れている。第1の時点において、カートリッジ側識別部材424と装置側識別部材82とはY軸方向に距離DB離れている。第1の時点において、印刷材供給システム1は距離DA>距離DBの関係を有する。また、第1の時点では、供給口480は印刷材受部710の上方(真上、第4面44側、+Z軸方向側)に位置する。すなわち、第1の時点では、供給口480と第3面42とは、Z軸方向について印刷材受部710を挟む位置関係を有する。ここで、第1の時点は、装置側係合構造75とカートリッジ側係合構造420とが係合する前の時点である。第1の時点では、装置側係合構造75の突起部74が受入部601に位置する。
図23に示すように、第2の時点では、カートリッジ4の第1面45がカバー部材706と当接することで、−Y軸方向(装着方向)への力をカバー部材706に加えている。これにより、付勢部材712の付勢力に抗してカバー部材706が−Y軸方向側へ移動する。また、第2の時点から第3の時点までに至る間に、流通管702が印刷材供給部482内に挿入される。すなわち、装置側端子803と回路基板52の接触部cpとが接触する前に、流通管702が印刷材供給部482内に挿入される。
図24に示すように、第3の時点では、装置側端子803と回路基板52の接触部cpとが接触する。また、第3の時点では、流通管702が印刷材供給部482内に挿入されて、印刷材供給部482から流通管702へのインクの流通が可能な状態となる。詳細には、流通管702が印刷材供給部482内に挿入された後に、装置側端子803と回路基板52の接触部cpとが接触する。また、第3の時点では、装置側係合構造75の突起部74とカートリッジ側係合構造420の係合部612とが係合する。すなわち、係合部612は、装置側係合構造75と係合するための部分である。
上記のように、カートリッジ4をカートリッジ装着部6に装着する際には、印刷材供給システム1の各要素は以下の関係を有する。すなわち、一対の位置決め部材76,78の一対の部材貫通孔458,459への挿入が開始された後に、装置側識別部材82とカートリッジ側識別部材424との嵌め合いが開始される。また、装置側識別部材82とカートリッジ側識別部材424との嵌め合いが開始された後に、流通管702が印刷材供給部482内に挿入される。また、流通管702が印刷材供給部482内に挿入されることで、印刷材供給部482から流通管702へのインクの流通が可能となった後に、装置側端子803と回路基板52の接触部cpとが接触する。
A−6.効果:
図25は、効果を説明するための第1の図である。図26は、効果を説明するための第2の図である。図25は、接触面529pが第4面44pに対して傾斜することなく、水平面である場合のカートリッジ4pの例である。図25は、カートリッジ4pの装着状態においてカートリッジ4pがカートリッジ装着部から受ける力の一部を模式的に示している。図26は、装着状態において、本実施形態のカートリッジ4がカートリッジ装着部6から受ける力の一部を模式的に示している。図25及び図26では、カートリッジ4,4pをZ軸方向に挟持する方向の成分を有する力を図示している。
図25及び図26において、回路基板の表面52aに配置された接触部cpに装置側端子803から加えられる外力Fs,Fdはそれぞれ、接触面529,529pに対して所定の角度を形成するように設定されている。図25及び図26では、外力Fs,Fdは、接触面529,529pに略垂直である。また、外力Fs,Fdの大きさは同一である。また、外力Ft,Ftdはそれぞれ、装置側係合構造75の突起部74から第3面42に加えられる力である。外力Ft,Ftdの向きはそれぞれ、略鉛直上方向である。
図25に示すように、接触面529pは、第4面44pに対して傾斜していない。この場合、取り外し方向に垂直な方向であって、かつ、カートリッジ4pを挟持する方向に加わる力は、力Fd,Ftdである。力Fdと力Ftdとは同じ大きさであり、カートリッジ4pの鉛直方向(Z軸方向)に加わる力は釣り合っている。
図26に示すように、接触面529は第4面44に対して所定方向に沿って傾斜している。この場合、力Fsは、鉛直下方向の力Fs2と、取り外し方向の力Fs1とに分解できる。鉛直下方向は、第4面44から第3面42に向かう方向である。取り外し方向は、第1面45から第2面46に向かう方向である。力F2sと力Ftとは同じ大きさとなり、カートリッジ4の鉛直方向(Z軸方向)に加わる力は釣り合っている。ここで、Fs=Fdであることから、Fs2<Fdの関係を満たす。また、Ft<Ftdの関係を満たす。
上記のように、本実施形態では、接触面529が第4面44に対して所定方向に沿って傾斜している。これにより、装着状態において、接触部cpに加わる力Fsのうちカートリッジ4が挟持される方向(−Z軸方向)の力Fs2を、接触面529pが傾斜していない場合よりも低減できる。これにより、カートリッジ4をカートリッジ装着部6から容易に取り外すことができる。例えば、カートリッジ側係合構造420と装置側係合構造75との係合が解除された場合に、カバー部材706の付勢部材712(図8)によって生じる付勢力によってカートリッジ4を取り外し方向にスムーズに移動させることができる。すなわち、付勢部材712の付勢力によって、装置側端子803から接触部cpが十分に離れる程度にカートリッジ4を取り外し方向に移動させることができる。これにより、利用者は、カートリッジ4をカートリッジ装着部6から取り外すことができる。
また、接触面529が第4面44に対して所定方向に沿って傾斜していることで、接触部cpに加わる力Fsは取り外し方向への力Fs1を発生させる。これにより、カートリッジ装着部6からカートリッジ4をより一層容易に取り外すことができる。例えば、カートリッジ側係合構造420と装置側係合構造75との係合が解除された直後の状態では、付勢部材712の付勢力Fp(図3)と力Fs1とがカートリッジ4の取り外し方向に加わる。これにより、取り外し方向へ加わる力を大きくでき、カートリッジ4をよりスムーズに取り外し方向に移動させることができる。
また、力Ftは、力Fs2と釣り合うため、力Fs2が小さくなることで、力Ftも小さくできる。これにより、装置側係合構造75からカートリッジ4に略鉛直上方向に加わる力Ftを低減できる。
また、上記実施形態によれば、カートリッジ4の係合部612が、第1端子537を通り、かつ、幅方向に対して垂直な平面C1を通る位置に配置されている(図19)。係合部612と突起部74とが係合することで、カートリッジ4の取り外し方向(+Y軸方向)への動きが規制される。すなわち、係合部612によって、カートリッジ4のカートリッジ装着部6に対する位置がある程度位置決めされる。よって、係合部612が、平面C1を通る位置に配置されることで、第1の端子列R1を形成する複数の端子535〜539のカートリッジ装着部6に対する位置決めを精度良く行うことができる。また、第1の端子列R1を形成する複数の端子535〜539に対する第2の端子列R2を形成する複数の端子531〜534の相対的な位置関係は一定である。よって、カートリッジ4が有する全ての端子531〜539のカートリッジ装着部6に対する位置決めを精度良く行うことができる。これにより、カートリッジ側端子群500と装置側端子群802との接触不良(導通不良)の発生を低減できる。
ここで、装着状態において、カートリッジ4を挟持する外力が偏重しすぎると、外力によって、カートリッジ4が正しい装着姿勢から傾いたり回転したりする場合がある。カートリッジ4が正しい装着姿勢から傾いたり回転したりすることで、カートリッジ4をカートリッジ装着部6から取り出しにくくなる場合が生じる。また、カートリッジ4が正しい装着姿勢から傾いたり回転したりすることで、接触部cpと印刷装置10(詳細には装置側端子803)との接触不良が発生する可能性がある。本実施形態では、係合部612が、平面C1を通る位置に配置されることで、平面C1上において係合部612と、第1端子537とによってカートリッジ4を挟持することができる。すなわち、装着状態において、突起部74によって係合部612に加えられる力と、装置側端子803によって第1端子537に加えられる力とによってカートリッジ4が挟持される。これにより、正しい装着姿勢に対して、カートリッジ4が傾いたり回転したりすることを抑制できる。よって、カートリッジ4をカートリッジ装着部6から容易に取り外すことができる。また、接触部cpと装置側端子803との接触不良が発生する可能性を低減できる。
上記実施形態では、さらに、第1端子537の第1接触部537cpは、平面C1を通る位置に配置されている(図12)。第1接触部537cpは、カートリッジ側端子群500と装置側端子群802とが実際に接触する部分である。また、第1接触部537cpは、カートリッジ4の幅方向(X軸方向)に沿って並んだ複数の接触部cpaの幅Wa中央に位置する(図12)。すなわち、第1接触部537cpが平面C1を通ることで、第1の端子列R1を形成する複数の端子535〜539のカートリッジ装着部6に対する位置決めをさらに精度良く行うことができる。これにより、カートリッジ4が有する全ての端子531〜539のカートリッジ装着部6に対する位置決めをさらに精度良く行うことができる。これにより、カートリッジ側端子群500と装置側端子群802との接触不良の発生をさらに低減できる。
また、流通管702が印刷材供給部482に挿入されることによっても、カートリッジ装着部6に対するカートリッジ4の位置決めが行われる。ここで、上記実施形態のカートリッジ4の供給口480は、平面C1を通る位置に配置されている(図14)。よって、上記実施形態によれば、第1の端子列R1を形成する複数の端子535〜539のカートリッジ装着部6に対する位置決めをさらに精度良く行うことができる。すなわち、カートリッジ4が有する全ての端子531〜539のカートリッジ装着部6に対する位置決めをさらに精度良く行うことができる。これにより、カートリッジ側端子群500と装置側端子群802との接触不良の発生をさらに低減できる。
また、供給口480によって、印刷装置10に対するカートリッジ4の位置決めが精度良く行われることで、平面C1を通る係合部612及び第1端子537が装着状態における設計された位置に精度良く配置できる。これにより、係合部612および第1端子537を用いてカートリッジ4を安定して挟持できる。また、カートリッジ4の回転や傾きを抑制することで、カートリッジ4を印刷装置10から容易に取り外すことができる。
また、上記実施形態によれば、供給口480が第4面44よりも第3面42側に配置されている(図14)。これにより、第1面45と第4面44とが交わるコーナー部50に配置された接触部cpと供給口480との距離を離すことができる。よって、供給口480からインクが漏れ出した場合でも、接触部cpにインクが付着する可能性を低減できる。これにより、接触部cpと印刷装置10(詳細には、装置側端子群802)との接触を良好に図ることができる。
また、上記実施形態によれば、カートリッジ側係合構造420が第3面42のうち他端部面423に形成されている(図16)。他端部面423は、一端部面426よりも第4面44に近い位置に配置されている。すなわち、他端部面423は、一端部面426よりも鉛直上方向側(+Z軸方向側)に位置する。これにより、第3面42と第4面44とが対向する方向(Z軸方向)における、カートリッジ4の第1面45側の大きさを小型化できる。また、カートリッジ4の印刷材収容部7は、容器本体450のうち第1面45よりも第2面46側に配置されている(図16)。容器本体450の第2面46側は、容器本体450の第1面45側よりもZ軸方向に長いため、内部の容積を十分に確保できる。よって、印刷材収容部7の容積を十分に確保できる。また、カートリッジ4のカートリッジ側係合構造420が配置された側である第1面45側の大きさを小型化することで、カートリッジ装着部6における装置側係合構造75が位置する部分の空間を十分に確保できる。これにより、装置側係合構造75の設計自由度を向上できる。例えば、装置側係合構造75の方向RC(図8)への弾性変形が極端に制限される可能性を低減できる。また、例えば、装置側係合構造75の構成要素(レバー部73や付勢部材79)を配置する空間を十分に確保できる。
また、上記実施形態によれば、カートリッジ側係合構造420と装置側係合構造75とが係合する前の時点(図22の第1の時点)から係合する時点(図24の第3の時点)までの間、供給口480が印刷材受部710の上方(真上)に位置する。言い換えれば、第1の時点において、供給口480と第3面42とは、印刷材受部710を挟む位置関係にある。これにより、カートリッジ4をカートリッジ装着部6に着脱する際に、インクが供給口480から下方側(第3面42側)に向かって漏れ出した場合でも、印刷材受部710によってインクを捕捉できる。インクが捕捉されることで、供給口480からインクが広範囲に亘って飛散する可能性を低減できる。
また、上記実施形態において、第1の時点では、装置側係合構造75の突起部74が受入部601に位置する(図22)。また、第1の時点では、印刷材受部710の上方に供給口480が位置する(図22)。すなわち、カートリッジ4をカートリッジ装着部6に装着する際に、装置側係合構造75の突起部74が案内部606に位置する間は印刷材受部710の上方(真上)に供給口480が位置する関係となる。これにより、供給口480からインクが下方側(第3面42側)に向かって漏れ出した場合でも、少なくとも突起部74が案内部606に位置する間は、供給口480からインクが広範囲に亘って飛散する可能性を低減できる。
また、上記実施形態によれば、第2容器本体5bは第1容器本体5aに対し取り外し可能に組み付けられている(図20)。また、カートリッジ側係合構造420は、第2容器本体5bよりも装着方向側(−Y軸方向側)に位置する第1容器本体5aに形成されている。ここで、カートリッジ側係合構造420と装置側係合構造75との係合の解除動作を行っても、カートリッジ側係合構造420と装置側係合構造75との係合が解除できない状態(不具合状態)が生じ得る。この場合でも、第2容器本体5bを第1容器本体5aから取り外すことで、利用者は、第1容器本体5a側で形成されている係合状態を確認し易い状態にできる。よって、利用者は、不具合状態が発生した原因を調べ易くなる。不具合状態の発生原因が解明されることで、利用者によって不具合状態が解消される可能性を向上できる。
ここで、印刷材収容部7は、主に、第2容器本体5bに収容されており、第2容器本体5b側は、第1容器本体5a側よりも重い。よって、装着状態において第2容器本体5b側は重力の影響を受けやすく、重力によって鉛直下方向に傾こうとする。また、第2容器本体5bが外力によってがたつく場合がある。上記実施形態では、容器本体450は、第1容器本体5a側に、カートリッジ側係合構造420と、接触部cpとが配置されている(図10,12,20)。よって、印刷装置10によってカートリッジ側係合構造420及び接触部cpに加えられる力によってカートリッジ4が挟持されることで、第1容器本体5a側の装着位置は安定する。すなわち、第2容器本体5bががたつき等によって変位した場合でも、印刷装置カートリッジ側係合構造420に第1容器本体5aは設計された装着位置からずれる可能性を低減できる。これにより、接触部cpと印刷装置10(詳細には、装置側端子803)との接触不良を抑制できる。また、上記実施形態では、突出部55,56と第2容器本体5bとの間には遊びがある。この遊びによって、第2容器本体5bががたつき等によって変位した場合でも、第1容器本体5aは設計された装着位置からずれる可能性をさらに低減できる。これにより、接触部cpと印刷装置10(詳細には、装置側端子803)との接触不良を更に抑制できる。また、この遊びによって、カートリッジ4全体が正しい装着姿勢から傾いたり回転したりすることを更に抑制できる。
また、上記実施形態では、カートリッジ側係合構造420の係合部612を含む一部分は、突出部55に形成されている(図20)。ここで突出部55は、第1容器本体5aのうち取り外し方向側に位置する。よって、第2容器本体5bを第1容器本体5aから取り外すことで、利用者は、不具合状態が発生した原因をより一層調べ易くできる。これにより、利用者によって不具合状態が解消される可能性をより一層向上できる。
ここで、印刷材収容部7は、主に、第2容器本体5bに収容されており、第2容器本体5b側は、第1容器本体5a側よりも重い。よって、装着状態において第2容器本体5b側は重力の影響を受けやすく、重力によって鉛直下方向に傾こうとする。また、第2容器本体5bが外力によってがたつく場合がある。しかしながら、上記実施形態では、突出部55,56と第2容器本体5bとの間には遊びがある。この遊びによって、第2容器本体5bががたつき等によって変位した場合でも、第1容器本体5aは設計された装着位置からずれる可能性をさらに低減できる。これにより、接触部cpと印刷装置10(詳細には、装置側端子803)との接触不良を更に抑制できる。また、この遊びによって、カートリッジ4全体が正しい装着姿勢から傾いたり回転したりすることを更に抑制できる。なお、この遊びは、2つの突出部55,56のうち少なくともいずれか一方にあれば良い。
また、上記実施形態では、カートリッジ4をカートリッジ装着部6に装着する際には、印刷材供給システム1の各要素は以下の関係を有する。
・第1の関係:
図22,図23に示すように、一対の位置決め部材76,78の一対の部材貫通孔458への挿入が開始された後に、装置側識別部材82とカートリッジ側識別部材424との嵌め合いが開始される(第1の関係)。一対の位置決め部材76,78が一対の部材貫通孔458,459に挿入されることで、カートリッジ4の挿入方向に垂直な面内方向のカートリッジ4の動きが規制される。これにより、カートリッジ4のカートリッジ装着部6に対する挿入方向に垂直な方向の位置決めが行われる。これにより、装置側識別部材82に対するカートリッジ側識別部材424の位置ずれを抑制できる。よって、カートリッジ装着部6に正しい種類のカートリッジ4が装着される際に、カートリッジ側識別部材424が装置側識別部材82に当たって、嵌め合いが阻害される可能性を低減できる。また、誤った種類のカートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着されようとした場合には、カートリッジ側識別部材424が装置側識別部材82に確実に当たって、カートリッジ4の更なる挿入を阻害できる。よって、カートリッジ装着部6の各スロット61a〜61dに誤った種類のカートリッジ4が装着される可能性を低減できる。
・第2の関係:
図23,図24に示すように、装置側識別部材82とカートリッジ側識別部材424との嵌め合いが開始された後に、流通管702が印刷材供給部482内に挿入される(第2の関係)。これにより、カートリッジ装着部6の各スロット61a〜61dに誤った種類のカートリッジ4が装着されたままの状態で、インクがカートリッジ4から印刷装置10に供給される可能性を低減できる。
・第3の関係:
図23,図24に示すように、流通管702が印刷材供給部482内に挿入されることで、印刷材供給部482から流通管702へのインクの流通が可能となった後に、装置側端子803と回路基板52の接触部cpとが接触する。これにより、印刷材供給部482から流通管702へのインクの流通が可能となる前の状態で、印刷装置10が印刷動作を開始することを防止できる。よって、ヘッド22から空気を吐出する動作であるいわゆる空打ち動作を防止できる。
また、上記実施形態では、第1面45が備える当接部457がカバー部材706の端面703に当接する(図23)。これにより、第1面45全体の精度に代えて当接部457を精度良く作製することで、カバー部材706にカートリッジ4を当接させるタイミングの精度を向上できる。
B.第2実施形態:
B−1.印刷材収容部7aの詳細:
図27は、第2実施形態の印刷材収容部7aを説明するための第1の図である。図28は、図27のF27−F27断面図である。図27は、印刷材収容部7aをY軸方向とZ軸方向に平行な平面で切断した時の模式図である。また、理解の容易のために、流路ユニット9を模式的に図示している。第1実施形態のカートリッジ4と第2実施形態のカートリッジ4aとの異なる点は、印刷材収容部7aの構成である。その他のカートリッジ4aの構成は、第1実施形態のカートリッジ4と同一の構成であるため、同一の構成については同一符号を付すと共に説明を省略する。また、第2実施形態のカートリッジ4aが装着される印刷装置は、第1実施形態の印刷装置10と同一の構成である。第1実施形態の印刷材収容部7は、後述する第2のシール部705を有さない。
図28に示すように、印刷材収容部7aは外殻を形成する第1と第2のシート部材732,734とによって形成されている。第1と第2のシート部材732,734は、樹脂フィルム層の上にアルミニウム層が積層されたアルミラミネート複層フィルムによって形成されている。図27に示すように、印刷材収容部7aは、第1のシール部704と、第2のシール部705とを備える。図28に示すように、第1のシール部704は、2つのシート部材732、734の外周部同士を溶着した部分である。第2のシール部705は、2つのシート部材732,734の一部分同士をX軸方向両側から挟みこんで溶着した部分である。第2のシール部705は、流路形成部材481の中心軸CBに垂直な方向に沿って形成されている。これにより、印刷材収容部7aの内部空間が、第1室720と第2室722とに区画形成される。第1室720にはインクが充填される。第2室722は、インクが充填されない密閉空間である。第1室720は印刷材供給部482と連通する。
印刷材収容部7aは例えば、以下の手順で作製できる。まず、第1と第2のシート部材732,734の外周部同士を溶着する。この際に流路ユニット9を第1と第2のシート部材732,734の一側面に取り付ける。次に、第1と第2のシート部材732,733のうち、流路ユニット9から+Y軸方向に離れた一部分同士を挟みこんで溶着することで第2のシール部705を形成する。次に、流路ユニット9を用いて第1室720にインクを充填する。
上記第2実施形態によれば、印刷材収容部7aは、インクが充填される第1室720と、インクが収容されない密閉空間である第2室722とを有する。ここで、カートリッジ4aの種類(インク色や使用される印刷装置の種類)に応じて、印刷材収容部7aに注入するインク量が異なる場合がある。この場合でも。第2のシール部705の位置を変更することで、共通のタイプの第1と第2のシート部材732,734を用いて、収容するインク量が異なる複数種の印刷材収容部7aを形成できる。これにより、カートリッジ4aの製造コストを低減できる。また、第2のシール部705を形成した後に、インクを第1室720に注入することから、第2のシール部705にはインクが注入されない。これにより、印刷に用いられないインク量(インク残量)を低減できる。
一般に、第1と第2のシート部材732,734の内面にはインクが付着する。付着したインクは、印刷に用いられることなく印刷材収容部7a内に残留する。第2のシール部705を形成することなく、印刷材収容部7aに少ない量のインクが充填される場合、充填量に対して第1と第2のシート部材732,734の内面に付着するインク量の割合が高くなる。すなわち、印刷に用いられないインク量の割合が高くる。一方で、印刷材収容部7aが第2のシール部705を有することで、インクに接触する第1と第2のシート部材732,734の面積を低減できる。これにより、充填量に対する第1と第2のシート部材732,734に付着するインク量の割合を低減できる。
B−2.第2実施形態の変形例:
図29は、第2実施形態の変形例を説明するための図である。図29に示すカートリッジ4bの印刷材収容部7bと、第2実施形態の印刷材収容部7aとの異なる点は、第2のシール部705bの形成位置である。その他の構成については、第2実施形態のカートリッジ4aと同一であるため同一の構成については同一符号を付すと共に説明を省略する。図29に示すように、第2のシール部705bを、中心軸CBに沿って形成しても良い。このようにしても第2実施形態と同様の効果を奏する。例えば、カートリッジ4bの製造コストを低減できる。なお、第2のシール部705bを中心軸CBに対して傾斜した方向に沿って形成しても良い。
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
C−1.カートリッジの接触面に関する変形例:
図30,図31Aにカートリッジの接触面に関する変形例を概念的に示す。図30,図31Aは、回路基板52の設置態様が第1実施形態のカートリッジ4とは異なる。その他のカートリッジの構成、および、印刷装置10の構成は第1実施形態と同一である。第1実施形態と同一の構成については同一符号を付すと共に説明を省略する。
図30に示すカートリッジ4cは、回路基板52が可動できる構成である。具体的には、回路基板52の一側面に、傾斜面51に回路基板52を取り付けるための取付部527が設けられている。取付部527を回転軸として回路基板52が可動できる。カートリッジ4cの装着状態では、第1実施形態と同様に、接触面529が形成される。
図31Aに示すカートリッジ4dは、回路基板52がバネ600によって傾斜面51に取り付けられている。カートリッジ4dの装着状態では、第1実施形態と同様に、接触面529が形成される。
また、後述するように、本明細書において、「面」(プレーン)という用語は、仮想的な面(仮想面、非実在面とも呼ぶ)と、実在面と、の両方を包含した意味で使用している。したがって、第1の端子列R1を形成する接触部cpaと第2の端子列R2を形成する接触部cpbとを含む3つ以上の接触部によって規定される接触面529は、所定方向に傾斜する仮想の平面と、実在の平面の両方を包含する。
図31Bは、所定方向に傾斜する仮想的な接触面529の一例を説明するための図である。図31Cは、図31Bを−X軸方向から見た図である。図31Bは、第1の端子列R1と第2の端子列R2との間に段差部Sが設けられている回路基板52の例である。この例では、第1の端子列R1を形成する端子534の接触部534cp、第2の端子列R2を形成する端子538、539の各々の接触部538cp、539cpを結ぶことによって仮想の接触面529が規定される。図31Cに示すように、各接触部534cp、538cp、539cpによって規定された仮想の接触面529は、所定方向に傾斜する。
図31Dは、所定方向に沿って傾斜する仮想的な接触面529の他の一例を説明するための図である。図31Dに示す回路基板52は、折り曲げ可能(フレキシブル)なフィルムを用いて形成されている。回路基板52が折り曲げ可能であるため図31B、図31Cに示した段差部Sが形成されていなくとも、仮想の接触面529は所定方向に沿って傾斜する。
上記のように、接触部cpによって形成される傾斜面(仮想的な接触面529、実在する接触面529の両方を含む)は、少なくとも装着状態において、第4面44に対して所定方向に沿って傾斜していれば良い。例示した以外の形態であっても、仮想的又は実在する接触面529が傾斜さえしていれば、上述したようにカートリッジ装着部6からカートリッジ4をより容易に取り外すことが可能になるからである。
C−2.カートリッジの形状に関する変形例:
図32,図33にカートリッジの形状に関する変形例を概念的に示す。図32,図33は、カートリッジの外観形状が第1実施形態のカートリッジ4とは異なる。その他のカートリッジの構成、および、印刷装置10の構成は第1実施形態と同一である。第1実施形態と同一の構成については同一符号を付すと共に説明を省略する。
図32に示すカートリッジ4eの外殻は、略楕円形又は略長円形の側面を有している。また、カートリッジ4eは、第1面45側に供給口480と第1と第2の部材貫通孔458,459と、第3面42側にカートリッジ側係合構造420を有し、コーナー部50に回路基板52を有する。なお、このカートリッジ4eを第1面45側から見ると、一定の幅を有している。このカートリッジ4eでも、カートリッジ装着部6の各要素(例えば、装置側係合構造75)と対応する要素(例えば、カートリッジ側係合構造420)を備えていれば、第1実施形態のカートリッジ4と互換性を確保することができる。
図33に示すカートリッジ4fは、外殻を構成する部材のうち第1容器本体5aは第1実施形態と同一である。このカートリッジ4fは、第2容器本体5bの外殻が曲面形状を有している。また、カートリッジ4fは、第1面45側に供給口480と第1と第2の部材貫通孔458,459と、第3面42側にカートリッジ側係合構造420を有し、コーナー部50に回路基板52を有する。なお、このカートリッジ4fを第1面45側から見ると、一定の幅を有している。このカートリッジ4fでも、カートリッジ装着部6の各要素(例えば、装置側係合構造75)と対応する要素(例えば、カートリッジ側係合構造420)を備えていれば、第1実施形態のカートリッジ4と互換性を確保することができる。
図32,図33に示したように、カートリッジの外形の形状には、様々な変形例が考えられる。カートリッジの外形の形状が略直方体以外の形状を有している場合にも、例えば図32及び図33に点線や実線で示したように、略直方体の6つの面、すなわち、図10,11に示した第1面45,第2面46、第3面42、第4面44、第5面47、第6面48を仮想的に考えることができる。本明細書において、「面」(プレーン)という用語は、このような仮想的な面(仮想面、非実在面とも呼ぶ)と、図10や図11に記載したような実在面と、の両方を包含した意味で使用することができる。また、「面」という用語は、平面と曲面の両方を包含した意味で使用される。
C−3.カートリッジ側端子群の変形例
図34〜図36は、回路基板の端子形状の変形例を示す図である。これらの回路基板52g〜52iは、図12に示した回路基板52とカートリッジ側端子531〜559の表面形状が異なるだけである。図34,図35の回路基板52g,52hは、個々の端子の形状が略長方形ではなく、不規則的な形状を有している。図36の回路基板52iでは、9つの端子531〜539が一列に配列されている。これらの回路基板52g〜52iにおいても、各端子531〜539に対応する装置側端子との接触部cpの配置は、図12の回路基板52と同じである。このように、個々の端子の表面形状としては、接触部cpの配置が同一である限り、種々の変形が可能である。
D.その他の変形例:
D−1.第1変形例:
上記実施形態では、印刷材収容部7が袋体で形成されていたが、これに限定されるものではなく、インクを収容するための構成であれば良い。例えば、カートリッジ4の外殻を構成する第1と第2容器本体5a,5b自体で印刷材収容部7を形成しても良い。
D−2.第2変形例:
図37は、第2変形例を説明するための図である。図37に示すカートリッジ4jは、装着部材904と、収容部材900と、接続部材902とを備える。装着部材904は、第1実施形態のカートリッジ4と同一の構成である。収容部材900は、インクを内部に収容するためのタンクである。接続部材902は、収容部材800と印刷材収容部7とを連通させるホースである。接続部材902は第2面46を貫通して印刷材収容部7に接続されている。収容部材900は、例えば、印刷装置10の外部に配置される。印刷装置10によってインクが消費されると、収容部材900から印刷材収容部7にインクが補充される。収容部材900のインクが無くなると、利用者は収容部材900を交換したり、収容部材900にインクを補充したりできる。
D−3.第3変形例:
図38は、第3変形例を説明するための図である。図38に示すカートリッジ4kは、第1容器本体5aと、供給ユニット910とを備える。第1容器本体5aは、第1実施形態の第1容器本体5aと同一である(図20)。第1容器本体5aは、回路基板52(図示せず)や貫通孔452などのカートリッジ装着部6の各要素(例えば、装置側端子群802)に対応する要素を備える。流通管702が挿入される印刷材供給部482は供給ユニット910が備える。供給ユニット910は、印刷材供給部としての供給部材914と、接続部材912と、収容部材911とを備える。供給部材914には、流通管702が挿入される。供給部材914は、第1実施形態の流路形成部材481(図20)と同一の構成である。収容部材911は、インクを内部に収容するためのタンクである。接続部材912は、収容部材911と供給部材914とを連通させるホースである。収容部材911は、例えば、印刷装置10の外部に配置される。印刷装置10によってインクが消費されると、収容部材911から直接にインクが供給部材914を介して印刷装置10に供給される。収容部材911のインクが無くなると、利用者は収容部材911を交換したり、収容部材911にインクを補充したりできる。
D−4.第4変形例:
本発明は、インクジェットプリンター及びそのインクカートリッジに限らず、インク以外の他の液体を噴射する任意の印刷装置(液体噴射装置)及びその液体を収容するためのカートリッジ(液体収容容器)にも適用することができる。例えば、以下のような各種の液体噴射装置及びその液体収容容器に適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置
(2)液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射装置
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ (Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材噴射装置
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する液体噴射装置
(5)精密ピペットとしての試料噴射装置
(6)潤滑油の噴射装置
(7)樹脂液の噴射装置
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を噴射する液体噴射装置
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッドを備える液体噴射装置
なお、「液滴」とは、液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれば良い。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良く、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体状組成物を包含するものとする。
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。