以下、図面を参照して本開示に係る実施形態について説明する。なお、図面には、便宜的に、D1軸、D2軸及びD3軸からなる直交座標系を付すことがある。実施形態に係るチップ型水晶デバイスは、いずれの方向が上方又は下方として用いられてもよい。ただし、以下では、便宜上、D3軸正側を上方として、又は現に説明している図面の紙面上方を上方として、上面又は下面等の用語を用いることがある。
(チップ型水晶デバイスの全体構成)
図1(a)は、実施形態に係るチップ型水晶デバイス1(以下、「チップ1」ということがある。)の外観を示す天面1a側から見た斜視図である。図1(b)は、チップ1の外観を示す底面1b側から見た斜視図である。
チップ1は、例えば、概ね直方体状に形成されている。チップ1の大きさは適宜に設定されてよい。一例を挙げると、平面視における1辺の長さは1mm以上5mm以下であり、厚さは、0.4mm以上2mm以下(ただし、平面視の短辺よりも小さい)である。チップ1の底面1bには、複数(図示の例では4つ)の外部端子3が露出している。チップ1は、例えば、不図示の回路基板に対して底面1bを対向させて配置され、回路基板に設けられたパッドと複数の外部端子3とがはんだ等からなるバンプを介して接合されることにより回路基板に実装される。
チップ1は、例えば、温度センサ付水晶振動子として機能するように構成されている。従って、例えば、チップ1は、複数の外部端子3の2つを介して不図示の回路基板に設けられた発振回路と接続され、固有振動を生じることにより一定の周波数の発振信号の生成に寄与する。また、チップ1は、例えば、チップ1の内部の温度に応じた信号強度の電気信号を複数の外部端子3の他の1つ又は2つを介して出力する。なお、当該他の2つの外部端子3の一方は、基準電位が付与されるものであってもよい。
チップ1は、例えば、水晶振動子5と、温度センサ130と、これらを封止する封止部9と、水晶振動子5及び温度センサ130と不図示の回路基板とを電気的に接続する再配線層11とを有している。
封止部9は、概ね直方体状に形成されており、天面1aと、その反対側に面する平面状の下面9aを有している。水晶振動子5及び温度センサ130は、封止部9の下面9aから下面を露出させつつ封止部9に埋設されている。再配線層11は、下面9aに重なっており、再配線層11の下面に上述の複数の外部端子3を有している。水晶振動子5及び温度センサ130は、再配線層11を介して複数の外部端子3と電気的に接続されている。このように、封止部9及び再配線層11によって、水晶振動子5及び温度センサ130をパッケージングするパッケージが構成されている。
(水晶振動子)
図3は、水晶振動子5の構成を示す分解斜視図である。図4は、図3のIV−IV線における断面図である。
水晶振動子5は、水晶素子120と、水晶素子120を気密封止する保持器118とを有している。保持器118は、水晶素子120が収容される凹部K1が形成されているパッケージ110と、凹部K1の開口を塞いで凹部K1内を気密封止する蓋体140とを有している。
(水晶振動子のパッケージ)
パッケージ110は、例えば、基板部110aと、基板部110aに重なる枠部110bとを有している。凹部K1は、基板部110aの上面と、枠部110bの内側面とで構成されている。基板部110a及び枠部110bの平面視における形状は例えば矩形である。基板部110a及び枠部110bは、例えばアルミナセラミックス又はガラス−セラミックス等のセラミック材料である絶縁層からなる。基板部110a又は枠部110bは、絶縁層を1層用いたものであっても、絶縁層を複数層積層したものであってもよい。
基板部110aの上面には、水晶素子120を接合するための一対の電極パッド111が設けられている。一対の電極パッド111は、基板部110aの一辺に沿うように隣接して設けられている。
基板部110aの下面の四隅には、水晶振動子5と他の電子回路とを接続するための一対の第一外部接続用電極端子G1及び一対の第二外部接続用電極端子G2が設けられている。一対の第一外部接続用電極端子G1は、基板部110aの下面の対角に位置するように設けられている。また、第二外部接続用電極端子G2は、第一外部接続用電極端子G1が設けられている対角とは異なる基板部110aの対角に位置するように設けられている。
特に図示しないが、基板部110aの表面及び内部には、一対の電極パッド111と、一対の第一外部接続用電極端子G1とを電気的に接続するための配線パターン及びビア導体が設けられている。一対の第二外部接続用電極端子G2は、例えば、電気的に浮遊状態とされ、又は基準電位が付与される。一対の第二外部接続用電極端子G2のいずれか又は双方は、パッケージ110内の不図示のビア導体及び封止用導体パターン112を介して蓋体140と接続されていてもよい。
封止用導体パターン112は、枠部110bと蓋体140とを封止部材141を介して接合する際に、封止部材141の濡れ性をよくする役割を果たしている。封止用導体パターン112は、例えばタングステン又はモリブデン等から成る導体パターンの表面にニッケルメッキ及び金メッキを順次施すことによって、例えば10〜25μmの厚みに形成されている。
(蓋体)
蓋体140は、例えば、鉄、ニッケル又はコバルトの少なくともいずれかを含む合金からなる。このような蓋体140は、真空状態にある凹部K1又は窒素ガスなどが充填された凹部K1を気密的に封止するためのものである。具体的には、蓋体140は、所定雰囲気で、パッケージ110の枠部110b上に載置され、枠部110bの封止用導体パターン112と蓋体140の封止部材141とが溶接されるように所定電流を印加してシーム溶接を行うことにより、枠部110bに接合される。
封止部材141は、パッケージ110の枠部110b上面に設けられた封止用導体パターン112に相対する蓋体140の箇所に設けられている。封止部材141は、例えば、銀ロウ又は金錫によって設けられている。銀ロウの場合は、その厚みは、10〜20μmである。例えば、成分比率は、銀が72〜85%、銅が15〜28%のものが使用されている。金錫の場合は、その厚みは、10〜40μmである。例えば、成分比率が、金が78〜82%、錫が18〜22%のものが使用されている。
(水晶素子)
水晶素子120は、図4に示されているように、導電性接着剤150を介して電極パッド111上に接合されている。水晶素子120は、安定した機械振動と圧電効果により、電子装置等の基準信号を発振する役割を果たしている。
水晶素子120は、水晶素板121の上面及び下面のそれぞれに励振用電極122、接続用電極123及び引き出し電極124を被着させた構造を有している。励振用電極122は、水晶素板121の上面及び下面のそれぞれに金属を所定のパターンで被着・形成したものである。引き出し電極124は、励振用電極122から水晶素板121の短辺に向かって延出されている。接続用電極123は、引き出し電極124と接続されており、水晶素板121の長辺又は短辺に沿った形状で設けられている。
本実施形態においては、電極パッド111と接続されている水晶素子120の一端を基板部110aの上面と接続した固定端とし、他端を基板部110aの上面と間を空けた自由端とした片保持構造にて水晶素子120が基板部110a上に固定されている。
水晶素板121の固定端側の外周縁は、平面視して、基板部110aの一辺と平行であり、枠部110bの内周縁に近付くように設けられている。このようにすることにより、水晶素子120の実装位置を視覚的によりわかりやすくすることができるので、水晶振動子の生産性を向上させることが可能となる。
ここで、水晶素子120の動作について説明する。水晶素子120は、外部からの交番電圧が接続用電極123から引き出し電極124及び励振用電極122を介して水晶素板121に印加されると、水晶素板121が所定の振動モード及び周波数で励振を起こすようになっている。
ここで、水晶素子120の作製方法について説明する。まず、水晶素子120は、人工水晶体を所定のカットアングルで切断して水晶素板121を得る。次に、水晶素板121の外周部と比べて水晶素板121の中央部が厚くなるように、水晶素板121の外周の厚みを薄くするベベル加工を行う。そして、水晶素板121の両主面にフォトリソグラフィー技術、蒸着技術又はスパッタリング技術によって、金属膜を被着させることにより、励振用電極122、接続用電極123及び引き出し電極124を形成する。このようにして水晶素子120が作製される。なお、主面は、板状部材の最も広い面(すなわち表面及び裏面)を意味する。以下、同様である。
水晶素子120の基板部110aへの接合方法について説明する。まず、導電性接着剤150は、例えばディスペンサによって電極パッド111上に塗布される。水晶素子120は、導電性接着剤150上に搬送され、導電性接着剤150上に載置される。そして導電性接着剤150は、加熱硬化させることによって、硬化収縮される。水晶素子120は、一対の電極パッド111に接合される。
導電性接着剤150は、シリコーン樹脂等のバインダーの中に導電フィラーとして導電性粉末が含有されているものであり、導電性粉末としては、アルミニウム、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、銀、チタン、ニッケル又は鉄のうちのいずれか、或いはこれらの組み合わせを含むものが用いられている。また、バインダーとしては、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂又はビスマレイミド樹脂が用いられる。
(温度センサ)
図5(a)は、温度センサ130の外観を示す平面図である。図5(b)は、温度センサ130の半導体基板132の構成を示す平面図である。図5(c)は、図5(a)のVc−Vc線における断面図である。ただし、便宜上、半導体基板132の断面にハッチングは付していない。
温度センサ130は、ダイオードを含むものであり、アノード端子131b及びカソード端子131aを有している。温度センサ130は、アノード端子131bからカソード端子131aへは電流を流すが、カソード端子131aからアノード端子131bへはほとんど電流を流さない順方向特性を有している。温度センサ130の順方向特性は、温度によって大きく変化する。具体的には、温度センサ130に一定電流を流したときの順方向電圧は、温度変化に対して線形的(直線的)に変化する。この電圧を測定することによって、温度情報を得ることができる。温度情報は、例えば、図示しない電子機器等のメインIC(Integrated Circuit)によって、温度変化に起因する水晶振動子の特性変化の補償に利用される。
温度センサ130には、1〜200μAの電流が流れるため、電子機器のマザーボード上に配置された回路が高インピーダンスの場合でも、十分な電流が確保できる。その結果、温度センサ130に電流値が小さいことにより生じるノイズが重畳することを低減することができる。また、温度センサ130の順方向電圧を超えない限り、急激に流れる電流量が大きくなることはないため、温度センサ130の発熱量を低減することができ、水晶素子120の実際の温度との読み取り誤差を小さくすることで、高精度の補正が可能となる。よって、水晶振動子は、水晶素子120の発振周波数に関する温度補償の精度を向上させることができる。
温度センサ130は、半導体基板132の主面132a上にカソード端子131a及びアノード端子131bが設けられて構成されている。すなわち、温度センサ130は、ベアチップであり、半導体基板132を囲むパッケージを有していない。
半導体基板132は、例えば、その全面に亘って概ね一定の厚さを有している。半導体基板132の平面形状は、適宜に設定されてよいが、例えば、概略、矩形(図示の例では長方形)である。カソード端子131a及びアノード端子131bは、矩形の2辺(図示の例では短辺)の互いに対向する方向(D1軸方向)において互いに離間して配置されている。
半導体基板132は、主面132a内に、p型半導体からなるp型領域132p、及びn型半導体からなるn型領域132nを有している。より具体的には、半導体基板132は、n型半導体からなるn型層133nと、n型層133nの一部の領域においてn型層133n上に位置している、p型半導体からなるp型層133pとを有している。そして、p型層133pによってp型領域132pが構成され、n型層133nのうちp型層133pの非配置領域によってn型領域132nが構成されている。
n型層133n及びp型層133pの厚さは適宜に設定されてよい。図示の例では、n型領域132nにおけるn型層133nの厚さは、半導体基板132の厚さとなっている。p型層133pの厚さは、例えば、半導体基板132の厚さの半分以下となっている。
p型層133p及びn型層133nは互いに接しており、pn接合を構成している。p型領域132p上にはアノード端子131bが設けられており、n型領域132n上にはカソード端子131aが設けられている。このようにして、半導体基板132にはダイオード134が構成されている。上記の説明から理解されるように、ダイオード134は、いわゆるプレーナ構造のものである。
このようなダイオード134の製造方法は、寸法等の具体的な条件を除いて公知の種々の製造方法と同様とされてよい。例えば、まず、複数の半導体基板132が多数個取りされるn型半導体ウェハを用意する。n型半導体ウェハは、例えば、リン(P)又はアンチモン(Sb)等を不純物として含むシリコン(Si)ウェハである。次に、p型領域132pとなる領域にマスクを介してホウ素(B)等の不純物を注入する。次に、適宜な薄膜形成法によってアノード端子131b及びカソード端子131aを形成する。その後、半導体ウェハをダイシングして個片化する。
以上のような構成のダイオード134においてアノード端子131b及びカソード端子131aに順方向電圧が印加されると、アノード端子131b及びカソード端子131aが主面132a上に位置していることから、矢印y1で示すように、電流は、主面132a付近において流れやすい。別の観点では、電流は、平面視における、p型領域132p及びn型領域132nの境界部132b(pn接合面)を超えるように流れやすい。
p型層133pは、n型層133n上に位置しているから、矢印y2で示すように、p型層133pの下面とn型層133nとの境界面133b(pn接合面)を介しても電流は流れることが可能である。ただし、境界面133bが主面132aから離れるほど、アノード端子131bから境界面133bを経由してカソード端子131aへ至る電流の経路は長くなる。ひいては、当該経路の抵抗は増加し、電流は流れにくくなる。
従って、ダイオード134においては、半導体基板132内の種々の部位の温度のうち、主面132aにおける温度がダイオード134の順方向特性に及ぼす影響が大きい。境界面133bの位置の深さによって、境界部132b及び境界面133bが順方向特性に及ぼす相対的な割合は変化するが、主面132aにおける温度が順方向特性に及ぼす影響が大きいという傾向自体に変わりはない。
なお、仮に、p型層133pが半導体基板132の厚さと同等であっても、アノード端子131b及びカソード端子131aが主面132a上に位置していることによって、上記と同様に半導体基板132の下面側(D3軸正側)に流れる電流は小さくなっていくから、主面132aにおける温度が順方向特性に及ぼす影響が大きいという傾向自体に変わりはない。
従って、ダイオード134は、主面132aを構成するp型領域132p上にアノード端子131bが設けられ、主面132aを構成するn型領域132n上にカソード端子131aが設けられていることにより、表面(主面132a)で温度を検出する(主面132aの温度を検出する)構成となっているといえる。
p型層133pが薄いほど、境界部132b及び境界面133bの温度は、主面132aの温度に近くなるから、主面132aの温度を精度良く検出することができる。例えば、p型層133pの厚さは、半導体基板132の厚さの1/2以下又は1/5以下とされてよい。
なお、p型層133pは、半導体基板132の主面132a側の一部にのみ形成されており、アノード端子131b及びカソード端子131aが主面132a上に位置しているから、半導体基板132のうち、主面132a側の一部にダイオード134が構成されていると捉えられてよい。この観点からも、温度センサ130は、表面(主面132a)で温度を検出するセンサであるといってよい。
図示の例では、n型半導体ウェハの一部をp型半導体にする態様を例にとったが、p型半導体ウェハの一部をn型半導体にしてもよい。すなわち、ダイオード134は、p型層の一部の領域においてn型層がp型層上に位置し、これにより、主面132a内にp型領域132p及びn型領域132nが構成されてもよい。
(封止部)
図1及び図2に戻って、封止部9は、チップ1の外形を再配線層11と共に構成している。封止部9の外形は、例えば、概略、直方体状である。封止部9は、例えば、樹脂によって構成されている。樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂であり、熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂若しくはフェノール樹脂である。樹脂には、当該樹脂よりも熱膨張係数が低い材料により形成された絶縁性粒子からなるフィラーが混入されていてもよい。絶縁性粒子の材料は、例えば、シリカ、アルミナ、フェノール、ポリエチレン、グラスファイバー、グラファイトフィラーである。封止部9の寸法は、チップ1内部の素子(ここでは水晶振動子5及び温度センサ130)の保護及び/又は絶縁等の観点から適宜に設定されてよい。
(再配線層)
再配線層11は、概ね一定の厚さの層状に形成されている。その平面形状は、例えば、概ね封止部9の下面9aの平面形状に一致する形状であり、本実施形態では矩形である。再配線層11は、例えば、絶縁層15と、絶縁層15の内部に設けられた複数の接続導体17と、絶縁層15の下面(封止部9とは反対側の面)に設けられた既述の複数の外部端子3とを有している。
絶縁層15は、例えば、絶縁性を有する複数の層が積層されて構成されている。絶縁層15を構成する複数の層は、互いに同一の材料から構成されていてもよいし、互いに異なる材料から構成されていてもよい。また、当該材料は、樹脂等の有機材料であってもよいし、SiO2等の無機材料であってもよいし、無機材料からなるフィラーが混入された樹脂のように、有機材料と無機材料とが混合されたものであってもよい。絶縁層15の厚さ及び絶縁層15を構成する複数の層それぞれの厚さは、チップ1内部の素子(ここでは水晶振動子5及び温度センサ130)の保護及び/又は絶縁等の観点から適宜に設定されてよい。
複数の接続導体17は、例えば、水晶振動子5(一対の第一外部接続用電極端子G1)と2つの外部端子3とを接続する2つの接続導体17と、温度センサ130(アノード端子131b及びカソード端子131a)と他の2つの外部端子3とを接続する2つの接続導体17とを含んでいる。
なお、アノード端子131b及びカソード端子131aの一方と接続される外部端子3は、基準電位と接続されていてもよい。別の観点では、温度センサ130の温度に応じた電圧(信号)は、アノード端子131b及びカソード端子131aの他方と接続される外部端子3を介して水晶振動子の外へ出力されてよい。
接続導体17は、例えば、符号は付さないが、絶縁層15の少なくとも一部を絶縁層15の厚さ方向に貫通するビア導体、及び絶縁層15の内部で絶縁層15に平行に延びる配線パターンとを含んでいる。なお、チップ1内の電子素子(5、130)の端子と複数の外部端子3との位置関係及び接続関係によっては、上記配線パターンは設けられなくてもよい。この場合、絶縁層15は、一の絶縁性の層から構成されていてもよい。
(各部の位置関係)
水晶振動子5は、一対の第一外部接続用電極端子G1及び一対の第二外部接続用電極端子G2を封止部9の下面9aから露出させるようにして封止部9に埋設されている。水晶振動子5のパッケージ110の下面と封止部9の下面9aとは概ね面一である。同様に、温度センサ130は、アノード端子131b及びカソード端子131aを封止部9の下面9aから露出させるようにして封止部9に埋設されている。温度センサ130の半導体基板132の下面と封止部9の下面9aとは概ね面一である。そして、再配線層11は、封止部9の下面9a、水晶振動子5の封止部9から露出している部分及び温度センサ130の封止部9から露出している部分を覆っている。
平面視における水晶振動子5と温度センサ130との位置関係及び距離は適宜に設定されてよい。例えば、温度センサ130は、水晶振動子5に対して、水晶振動子5の短手方向(D2軸方向)に位置している。別の観点では、温度センサ130は、水晶振動子5に対して、水晶素子120の固定端と自由端とを結ぶ方向(D1軸方向)に対して直交する方向に位置している。また、例えば、当該短手方向に見て、温度センサ130は、水晶振動子5のD1軸方向における長さの範囲内に収まっている。ただし、温度センサ130は、水晶振動子5に対して水晶振動子5の長手方向に位置するなどしてもよい。
また、例えば、温度センサ130は、平面視したときに、水晶素子120の固定端と自由端とを結ぶ方向において、温度センサ130の中心(図形重心)が、水晶振動子5の中心(図形重心)に対して、固定端側(−D1側)に位置するように配置されている。ただし、温度センサ130は、水晶素子120の固定端と自由端とを結ぶ方向において、その中心が水晶振動子5の中心に一致してもよいし、自由端側に位置してもよい。
また、例えば、温度センサ130は、その短手方向を温度センサ130と水晶振動子5との並び方向(D2軸方向)に合わせるように配置されている。別の観点では、温度センサ130は、アノード端子131b及びカソード端子131aの並び方向を、温度センサ130と水晶振動子5との並び方向に直交させるように配置されている。ただし、温度センサ130は、上記とは90°方向が異なっていてもよい。
(チップ型水晶デバイスの製造方法)
図6は、チップ1の製造方法の手順の一例を示すフローチャートである。図7(a)〜図8(c)は、チップ1の製造方法を説明するための断面図である。製造工程は、図7(a)から図8(c)へ順に進む。図9(a)〜図9(d)は、チップ1の製造方法を説明するための斜視図である。
ステップST1、図7(a)及び図9(a)では、支持体51を準備する。支持体51は、例えば、図9(a)に示すように、平坦な上面51aを有する部材であり、例えば、基板状である。その平面形状は適宜なものとされてよい。上面51aは、複数の第1領域51bを有している。各第1領域51bは、チップ1と同等の広さを有している。また、支持体51は、例えば、図7(a)に示すように、樹脂シート53に粘着剤54が塗布されて構成され、不図示の支持具に支持される。なお、支持体51は、不図示の支持具の平坦な上面に接着材若しくは粘着材が塗布されて形成されていてもよい。
なお、図7(a)〜図8(c)では、2つの第1領域51bに相当する部分が図示されている。図9(b)及び図9(d)では、1つの第1領域51bに相当する部分が図示されている。
ステップST2、図7(b)及び図9(b)では、支持体51の複数の第1領域51bそれぞれにおいて、支持体51の上面51a上に水晶振動子5及び温度センサ130を配置する。水晶振動子5は、外部端子3側を上面51aに向けて配置される。同様に、温度センサ130は、カソード端子131a及びアノード端子131bを上面51aに向けて配置される。
ステップST3及び図7(c)では、未硬化状態の封止材55を支持体51上に複数の第1領域51bに亘って供給して硬化させる。これにより、複数の第1領域51bに重なる複数の第2領域57b(図9(c))を有するウェハ57が構成される。複数の第2領域57bそれぞれにおいては、水晶振動子5及び温度センサ130が硬化状態の封止材55に埋設されている。封止材55は、封止部9となるものである。
封止材55の供給方法は適宜なものとされてよい。例えば、ディスペンサやスクリーン印刷によって液状の封止材55が供給されてもよいし、加熱により液状の封止材55になるシート状成形体が配置されてもよい。
封止材55の硬化は、加圧を行いつつ封止材55を加熱することによってなされる。その具体的方法は適宜なものとされてよい。例えば、支持体51を支持する不図示の支持具のヒータによって加熱したり、及び/又は上方からヒータを有する型によって封止材55を押圧してもよい。
ステップST4、図8(a)、図9(c)及び図9(d)では、支持体51がウェハ57から除去される。支持体51の除去は、剥離によるものであってもよいし、支持体51を溶融させたり、薬液に溶かしたりすることによって除去するものであってもよい。また、支持体51が除去された面は、適宜に洗浄及び/又は研削若しくは研磨が行われてもよい。
ステップST5及び図8(b)では、ウェハ57の、支持体51が除去された面に、再配線層11が設けられる。再配線層11の形成には、例えば、アディティブ法又はセミアディティブ法等の公知の方法が用いられてよい。
ステップST6及び図8(c)では、ウェハ57をダイシングして個片化する。これにより、チップ1が作製される。なお、ダイシングは、公知の方法によって行われてよく、例えば、ダイシングブレードによって行われてもよいし、レーザによって行われてもよい。
以上のとおり、チップ1は、水晶振動子5と、温度センサ130と、封止部9と、絶縁層15と、外部端子3とを有している。水晶振動子5は、水晶素子120及び水晶素子120を空間内(凹部K1内)に気密封止する保持器118(パッケージ110及び蓋体140)を有している。封止部9は、水晶振動子5及び温度センサ130が埋設されているとともに、下面9aから水晶振動子5の下面及び温度センサ130の下面を露出させている。絶縁層15は、封止部9の下面9aに重なっている。外部端子3は、絶縁層15の下面に位置しており、水晶振動子5及び温度センサ130の少なくとも一方に電気的に接続されている。
すなわち、水晶素子120は、直接的には保持器118によって気密封止され、封止部9及び再配線層11によって間接的に気密封止され、その一方で、温度センサ130は、封止部9及び再配線層11によって直接的に気密封止されている。これにより、例えば、振動可能にパッケージングされる必要がある水晶素子120を空間内に配置しつつ、そのような必要がない温度センサ130を簡素にパッケージングすることができる。また、例えば、市販の水晶振動子5を用いて温度センサ付水晶振動子を実現することができる。
本実施形態では、電子素子は、絶縁層15側の表面で温度を検出する温度センサ130を含んでいる。
ここで、水晶振動子5の外部環境の温度が変化した場合について考える。このような場合、上述のように保持器118、封止部9及び再配線層11によって水晶素子120をパッケージングしている構成においては、外部環境の温度変化は、再配線層11を介して水晶素子120へ伝わりやすい。
その理由としては、例えば、以下のものが挙げられる。凹部K1内は真空とされており(厳密には減圧されており)、理論上は、外部環境の温度変化は、水晶素子120の周囲の空間を介しては水晶素子120に伝わらない。または、凹部K1内に気体が封入されていても、気体及びパッケージ110の熱伝導率は相対的に低いから、外部環境の温度変化は、水晶素子120の周囲の空間を介しては水晶素子120に伝わりにくい。一方で、水晶素子120は、基板部110aの上面に実装されている(導電性接着剤150によって基板部110aに接合されている)から、基板部110aの温度変化の影響を受けやすい。そして、基板部110aは、再配線層11に重なっているから、水晶素子120の温度は、再配線層11の温度の影響を受けやすい。また、一般に、導電体(金属)は、絶縁体よりも熱伝導率が高い。一方で、外部端子3から第一外部接続用電極端子G1及び電極パッド111を経由して水晶素子120の励振用電極122まで、導電体の経路が構成されている。これによっても水晶素子120の温度は、再配線層11の温度の影響を受けやすい。
一方、絶縁層15(再配線層11)側の主面132aで温度を検出する温度センサ130を用いることによって、本実施形態とは異なり、温度センサのチップ全体で温度を検出する態様に比較して、検出温度が再配線層11(別の観点では基板部110a)の温度に追従しやすくなる。温度センサ130は、再配線層11に直接に当接しているから、一層、検出温度は再配線層11の温度に追従しやすくなる。従って、検出温度が水晶素子120の温度に追従しやすくなり、検出温度に基づく温度補償を高精度に行うことができる。
また、本実施形態では、温度センサ130は、絶縁層15に対向しているとともに封止部9に埋設されているセンサ基板(半導体基板132)と、センサ基板の絶縁層15側に位置している、電気的特性が温度に応じて変化する測温部(ダイオード134)と、を有している。
別の観点では、温度センサ130は、絶縁層15に対向しているとともに封止部9に埋設されている半導体基板132を有しており、半導体基板132の絶縁層15側の主面132aは、ダイオード134を構成しているp型領域132p及びn型領域132nを含んでいる。
すなわち、温度センサ130は、ベアチップ又はWLP(ウェハレベルパッケージ)式のチップ等である。従って、例えば、チップ1の小型化を図ることができる。また、例えば、パッケージングされている場合に比較して、ダイオード134(測温部)は、基板部110aの温度の影響を直接的に受けることになり、温度センサ130の感度が向上する。
また、本実施形態に係るチップ1の製造方法は、配置ステップ(ST2)、ウェハ形成ステップ(ST3)、除去ステップ(ST4)、再配線ステップ(ST5)及び個片化ステップ(ST6)を有している。配置ステップは、支持体51上の複数の第1領域51bそれぞれに、水晶振動子5及び電子素子(温度センサ130)を配置する。ウェハ形成ステップは、配置ステップの後に、未硬化状態の封止材55を支持体51上に複数の第1領域51bに亘って供給して硬化させる。これにより、複数の第1領域51bに重なる複数の第2領域57bを有しているとともに複数の第2領域57bそれぞれにおいて水晶振動子5及び温度センサ130が硬化状態の封止材55に埋設されているウェハ57が形成される。除去ステップは、封止ステップの後に、ウェハ57から支持体51を除去する。再配線ステップは、除去ステップの後に、ウェハ57の支持体51が除去された面に、絶縁層15と、複数の第2領域57bの水晶振動子5及び温度センサ130の少なくとも一方に接続されている複数の導体(3及び17)とを設ける。再配線ステップの後に、複数の第2領域57bを個片化する。
従って、上述したパッケージの構成を有するチップ1をウェハプロセスによって実現することができる。その結果、生産性が向上する。
(変形例)
以下、温度センサの構成に係る変形例を示す。なお、以下の変形例の説明では、上記の実施形態の構成と共通または類似する構成について、実施形態の構成に付した符号を用い、また、図示や説明を省略することがある。なお、実施形態の構成と対応(類似)する構成については、実施形態の構成と異なる符号を付した場合においても、特に断りがない点は、実施形態の構成と同様とされてよい。
既に述べたように、実施形態のn型半導体とp型半導体との上下及び/又は左右の位置関係は逆とされてもよい。図10(a)に示す変形例に係る温度センサ203は、そのような変形がなされている。すなわち、この変形例では、p型層133pの一部の領域においてn型層133nが設けられている。なお、以下に説明する種々の変形例においても、n型半導体とp型半導体との上下及び/又は左右の位置関係は逆とされてよい。
また、図10(a)の変形例では、平面視において、n型領域132nとp型領域132pとの境界部132bは、n型領域132nを囲むように形成されている。このように、n型領域132nとp型領域132pは、半導体基板の主面を一定方向に二分する構成でなくてもよい。
図10(b)の変形例に係る温度センサ205は、いわゆるウェルを有している。図示の例では、p型の半導体基板207にn型のウェル209が形成され、ウェル209内にp型の層210が形成されている。このようなウェルを設ける変形は、実施形態及び他の変形例のいずれに適用されてもよい。
図11(a)は、変形例に係る温度センサ211の断面図である。図11(b)は、温度センサ211の半導体基板の構成を示す平面図である。
温度センサ211は、実施形態と同様に、ダイオード215を含む半導体基板213を有し、半導体基板213が再配線層11に対向するとともに封止部9に埋設される構成である。ただし、温度センサ211は、ベアチップではなく、いわゆるWLP型のチップとして構成されている。
すなわち、温度センサ211は、半導体基板213、アノード端子131b及びカソード端子131a上に再配線層217を有している。再配線層217は、特に符号を付さないが、例えば、絶縁層と導体層とが適宜な数で積層されて構成されており、最上部には端子が露出している。
このように再配線層217を設ければ、例えば、アノード端子131b及びカソード端子131aの温度センサ130内における配置位置(ひいてはn型領域132n及びp型領域132pの配置位置)、再配線層11に接合される端子の温度センサ130内における配置位置、並びにこれらの位置関係の設計の自由度が向上する。
従って、例えば、半導体基板132(n型領域132n)の中心にアノード端子131b(p型領域132p)を位置させつつ、半導体基板213の両端を再配線層11に対して接合してよい。
本開示に係る技術は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
チップ型圧電デバイスは、温度センサ付水晶振動子に限定されない。換言すれば、圧電振動子とともに封止される電子素子は、温度センサに限定されないいし、圧電体は、水晶に限定されない。
例えば、圧電デバイスは、水晶発振器であってもよい。具体的には、例えば、実施形態において、温度センサ130に代えて、水晶素子120に電圧を印加して発振信号を生成する発振回路を含むICが設けられてもよい。ICは、温度センサを含み、温度補償を行ってもよい。なお、発振回路を有するICが設けられる場合、水晶素子120は、外部端子3ではなく、再配線層11の導体を介してICに接続される。ICは、再配線層11の導体を介して外部端子3とも接続される。
温度センサは、表面で温度を検出するものに限定されない。例えば、温度センサは、p型層及びn型層が積層的に配置され、その積層方向の両側にアノード端子及びカソード端子を有するものであってもよいし、積層的に配置された複数の抵抗体(サーミスタ)を含み、温度変化に対する抵抗の変化を利用するものであってもよい。
表面で温度を検出する温度センサはダイオードを有するものに限定されない。また、センサ基板と、センサ基板の再配線層11側に位置する測温部とを有する温度センサ(ベアチップ、WLP型チップ又はこれらに類するチップ)も、ダイオードを有するものに限定されない。例えば、温度センサは、適宜な絶縁基板と、絶縁基板の再配線層11側の主面上に配置された抵抗体とを有し、温度変化に対する抵抗の変化を利用するものであってもよい。
ベアチップ、WLP型チップ又はこれらに類するチップにおいて、センサ基板は、側面及び裏面(測温部とは反対側)に絶縁層及び/又は導体層が設けられていてもよい。換言すれば、半導体基板は、必ずしも一部が露出していなくてもよい。
温度センサがダイオードを含むものである場合において、温度センサは、パッケージングされたものであってもよい。この場合でも、例えば、封止部材内で半導体基板を再配線層11側に寄せたり、ダイオードが形成された面を再配線層11側に向けるように封止部材内で半導体基板が配置されたり、封止部材のうち半導体基板と再配線層11との間に位置する部分の熱伝導率を高くしたりして、表面で温度を検出しているといえる構成を実現することは可能である。また、実施形態では、温度センサは、ダイオードを1つのみ含んでいた。ただし、温度センサは、互いに接続された複数のダイオードを含んでいてもよい。
ダイオードとして、pn接合を有するものを例示したが、ダイオードは、PINダイオードのようにpn接合以外の接合面(境界部、境界面)を有するものであってもよい。なお、PINダイオードにおいては、p型領域及びn型領域の境界部(境界面)はi型領域(i型層)である。
ダイオードは、他の素子として機能可能な構成であっても構わない。例えば、温度センサは、トランジスタを含み、温度センサの配線又は再配線層11の配線によってベースとコレクタとが短絡されることなどにより、トランジスタの一部がダイオードとして機能してもよい。
ダイオードは、半導体基板の主面にp型領域及びn型領域が形成されるプレーナ構造に限定されず、p型層とn型層とが積層され、その積層方向に電流が流れる構造のものであってもよい。この場合であっても、ダイオードが温度センサ内で基板部側の表面に偏って設けられていれば、基板部側の表面で温度を検出しているといえる。
また、ダイオードは、実施形態に示した以外に、適宜な層等を有していてよい。例えば、半導体基板上に位置する酸化膜(例えばSiO2膜)、ゲートリング及びパッシベーション膜等を適宜に有していてもよい。
圧電振動子及び/又は電子素子(温度センサ)は、天面が封止部の天面から露出していてもよい。また、封止部は、天面及び/又は側面が、互いに異なる材料からなる多層構造とされていてもよい。例えば、封止部は、その内面及び/又は外面の一部又は全部に、封止部の内部を構成する材料とは異なる材料からなるフィルムを含んでいてもよい。再配線層は、外部端子上に、又は外部端子としてバンプを有していてもよい。