JP2019067586A - リチウムイオン電池用電極の製造方法及び電極組成物の充填装置 - Google Patents

リチウムイオン電池用電極の製造方法及び電極組成物の充填装置 Download PDF

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Abstract

【課題】電極活物質と電解液との混合物を均一な密度で所定領域に充填することのできるリチウムイオン電池用電極の製造方法を提供すること。【解決手段】電極活物質と電解液とを含む電極組成物を、上面に開口する凹部を有する電池外装体の上記凹部内に充填する充填工程を有するリチウムイオン電池用電極の製造方法であって、上記充填工程では、上記電極組成物を供給する供給設備が有する供給口と上記電池外装体との水平方向の相対位置を変化させながら、上記電極組成物を上記凹部内に連続的に送り出すことを特徴とするリチウムイオン電池用電極の製造方法。【選択図】 図1

Description

本発明は、リチウムイオン電池用電極の製造方法及び電極組成物の充填装置に関する。
近年、環境保護のため二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が鋭意行われている。二次電池としては、高エネルギー密度、高出力密度が達成できるリチウムイオン電池(リチウムイオン二次電池ともいう)に注目が集まっている。
このようなリチウムイオン電池を製造する方法としては、電極活物質を含む粉体を圧延することによって電極用シートを作製する方法等が知られている(特許文献1参照)。
特開2015−028910号公報
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、粉体を所定密度に充填する押出工程の後に、これを供給対象物に対して供給する供給工程を行っているため、粉体の物性によっては、押出工程において調整された密度が変化してしまうことがあった。特に、流動性及び押出時の形状維持性が高くない電極活物質と電解液との混合物を所定の領域に供給する場合には、密度を均一にした状態で供給することが困難であった。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、電極活物質と電解液との混合物を均一な密度で所定領域に充填することのできるリチウムイオン電池用電極の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、電極活物質と電解液とを含む電極組成物を、上面に開口する凹部を有する電池外装体の上記凹部内に充填する充填工程を有するリチウムイオン電池用電極の製造方法であって、上記充填工程では、上記電極組成物を供給する供給設備が有する供給口と上記電池外装体との水平方向の相対位置を変化させながら、上記電極組成物を上記凹部内に連続的に送り出すことを特徴とするリチウムイオン電池用電極の製造方法、及び、電極活物質と電解液とを含む電極組成物を連続供給する電極組成物供給手段と、上面に開口する凹部を有する電池外装体を固定する電池外装体固定手段と、上記電極組成物供給手段と上記電池外装体固定手段との水平方向の相対位置を変化させる位置調整手段と、を備える電極組成物の充填装置であって、上記電極組成物供給手段は、上記電池外装体固定手段の上方に配置され、下方に向けて上記電極組成物を連続的に送り出す供給口を備えることを特徴とする電極組成物の充填装置に関する。
本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法は、電極活物質と電解液とを含む電極組成物を均一な密度で電池外装体に充填することができる。
図1は、充填工程の一例を模式的に示す斜視図である。 図2(a)〜図2(c)は、充填工程の一例を模式的に示す断面図である。 図3は、本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法により得られるリチウムイオン電池用電極の一例を模式的に示す断面図である。 図4(a)〜図4(c)は、充填工程における供給口の移動パターンの例を模式的に示す上面図である。 図5(a)及び図5(b)は、充填工程における供給口の移動パターンの別の例を模式的に示す上面図である。 図6(a)〜図6(c)は、充填工程において用いられる供給口の例を模式的に示す断面図である。 図7は、充填工程の別の一例を模式的に示す断面図である。 図8(a)及び図8(b)は、分断工程の一例を模式的に示す断面図である。 図9(a)及び図9(b)は、分断工程におけるシャッター部材と供給口の関係を模式的に示す斜視図である。 図10は、本発明の電極組成物の充填装置の例を模式的に示す断面図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、リチウムイオン電池と記載する場合、リチウムイオン二次電池も含む概念とする。
本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法は、電極活物質と電解液とを含む電極組成物を、上面に開口する凹部を有する電池外装体の上記凹部内に充填する充填工程を有するリチウムイオン電池用電極の製造方法であって、上記充填工程では、上記電極組成物を供給する供給設備が有する供給口と上記電池外装体との水平方向の相対位置を変化させながら、上記電極組成物を上記凹部内に連続的に送り出すことを特徴とする。
[充填工程]
充填工程では、電極組成物を供給する供給設備が有する供給口と電池外装体との水平方向の相対位置を変化させながら、電極組成物を凹部内に充填する。
供給口と電池外装体との水平方向の相対位置を変化させながら電極組成物を凹部内に連続的に送り出すことで、凹部内に充填される電極組成物が一箇所に集中して、密度がばらつくことを抑制することができる。
また、従来は電極組成物を供給する対象が平板状の基材などの表面であったため、塗布される領域が広く、領域全体において電極組成物の密度を均一にすることは困難であった。
これに対して、本願発明では、電極組成物を電池外装体の凹部内に連続的に送り出しながら充填するため、平面上に電極組成物を塗布した場合と比較して、電極活物質の充填密度を高くしやすく、かつその密度のバラツキを抑えやすい。
なお、電極組成物を凹部内に連続的に送り出す方法としては、例えばピストンにより電極組成物を押し出す方法や、スクリューの回転により電極組成物を押し出す方法等が挙げられ、供給される電極組成物自体は加圧されていてもよく、加圧されていなくてもよい。
本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法を構成する充填工程の一例を、図1を用いて説明する。
図1は、充填工程の一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、充填工程では、電極組成物20を凹部11内に連続的に送り出すことにより、電池外装体10の凹部11内に電極組成物20を充填する。このとき、固定治具40に固定された電池外装体10の上部に配置した供給口30を矢印pで示す方向に移動させることによって、供給口30と電池外装体10との水平方向の相対位置を変化させている。
なお、電池外装体10の上面側(固定治具40とは反対側)のうち凹部11を形成する部分以外の部分の表面10aは絶縁性材料で覆われており、凹部同士が向かい合うように電池外装体同士を貼り合わせた場合であっても、電池外装体を介して電極組成物同士が短絡しないよう構成されており、凹部11内の底部には集電体15が配置されている。そして、集電体15を電池外装体10の外側と接続するように、集電体15には電気取り出し用のリード電極(図示しない)が接続されている。
また、供給口30は、電極組成物を供給する供給設備(図示しない)の一部である。
続いて、図2(a)〜図2(c)を用いて充填工程を、図3を用いて充填工程により得られるリチウムイオン電池用電極を説明する。
図2(a)〜図2(c)は、充填工程の一例を模式的に示す断面図である。また図3は、本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法により得られるリチウムイオン電池用電極の一例を模式的に示す断面図である。
充填工程ではまず、図2(a)に示すように、電極組成物20を供給する供給設備300が有する供給口30を電池外装体10が有する凹部11上に配置する。この時、供給口30が配置される位置(初期位置ともいう)は、凹部11の平面視中央部ではなく、端部であることが好ましい。なお、図2(a)では、凹部11内に集電体15が配置されている。
続いて、図2(b)に示すように、供給口30から電極組成物20を送り出しながら、供給口30と電池外装体10との水平方向の相対位置を変化させる。供給口30と電池外装体10との水平方向の相対位置を変化させながら電極組成物20を凹部11内に送り出すことによって、凹部11内に供給された電極組成物20の密度の偏りを抑制することができる。そして、図2(c)に示すように、供給口30の位置が端部(図2(a)において供給口30が配置された端部とは別の端部)に到達するまで、電極組成物20を連続的に送り出すことにより、電極組成物20を凹部11内に均一に充填することができる。
図2(a)〜図2(c)に示す工程を経ることにより、図3に示すリチウムイオン電池用電極1が得られる。
リチウムイオン電池用電極1は、電池外装体10と、電池外装体10の凹部の底面に配置された集電体15と、凹部内に充填された電極組成物20とからなる。
リチウムイオン電池用電極1を構成する電極組成物20は、供給口30と電池外装体10との相対位置を変化させながら電極組成物20を凹部11内に送り出すことによって凹部内に電極組成物20が充填されているため、密度のバラツキが少ない。なお、図2(a)〜図2(c)において電池外装体10を凹部が形成された集電体に変更しても同様の効果を有する電極を得ることができる。
[電池外装体]
電池外装体について説明する。
電池外装体は、上面に開口する凹部を有している。
凹部に充填する電極組成物が正極活物質を含む場合には正極外装体ともいい、凹部に充填する電極組成物が負極活物質を含む場合には負極外装体ともいう。
電池外装体としては、公知の金属製容器のほか、公知の電池外装用ラミネートフィルム等を用いることができる。また、凹部が形成された集電体そのものを電池外装体として用いてもよい。集電体については後述する。
上記のラミネートフィルムとして、PP、アルミニウム、ナイロンを順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。なかでも電池内部に対して外部から掛かる圧を容易に調整でき、電極の界面での接触状態等を制御することが容易であること等の観点から、アルミラミネートフィルムがより好ましい。
また、電池外装体は集電体を兼ねたものであってもよいが、電池外装体が導電性を有さない場合には、電池外装体と電極組成物との間に集電体が配置されるように、凹部の底面に集電体が配置されていることが好ましい。電池外装体が集電体を兼ねたものである場合には、絶縁性を有する接着樹脂等を用いて電池外装体同士が短絡しないように貼り合わせることが望ましい。
さらに、電極外装体には、集電体と電気的に接続された電流取り出し用の端子が備えられていてもよい。
電池外装体が有する凹部の平面視形状は特に限定されず、矩形(正方形を含む)等の多角形であってもよく、円形や楕円形等であってもよい。また、これらの形状の一部に切り欠けが設けられたものや、反対にこれらの形状の一部が突出しているものであってもよい。
電池外装体が有する凹部の深さは特に限定されないが、得たいリチウムイオン電池を構成する活物質層の厚さに略対応した深さとすることが好ましい。
また、凹部の深さは、場所ごとに異なっていてもよく、同じであってもよい。
例えば、底の一部に集電体を配置した状態で凹部の底が平坦となるように、凹部の一部だけがさらに深い(集電体の厚さに相当する分だけ深い)形状の凹部であってもよい。
[集電体]
図2(a)〜図2(c)において電池外装体10の凹部11内に集電体15が配置されている集電体としては、公知の金属集電体及び導電材料と樹脂とから構成されてなる樹脂集電体(特開2012−150905号公報等に記載されている)等を好適に用いることができる。
金属集電体としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン及びこれらの一種以上を含む合金、ならびにステンレス合金からなる群から選択される一種以上の金属材料が挙げられ、これらの金属材料を薄板や金属箔等の形態で用いてもよく、基材表面にスパッタリング、電着、塗布等の手法により上記金属材料を形成したものであってもよい。
樹脂集電体を構成する導電材料としては、具体的には、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
これらの導電材料は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物を用いてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電材料としては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電材料の材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
導電材料の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、リチウムイオン電池の電気特性の観点から、0.01〜10μmであることが好ましく、0.02〜5μmであることがより好ましく、0.03〜1μmであることがさらに好ましい。
なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電材料の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
導電材料の形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であってもよく、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電性材料として実用化されている形態であってもよい。
導電材料は、その形状が繊維状である導電性繊維であってもよい。
導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。また、グラフェンを練りこんだポリプロピレン樹脂も好ましい。
導電材料が導電性繊維である場合、その平均繊維径は0.1〜20μmであることが好ましい。
樹脂集電体を構成する樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
[供給口]
続いて、供給口について説明する。
電極組成物を供給する供給設備は供給口を有しており、供給口によって電極組成物を凹部内に充填する。
供給口は、電極組成物を凹部に供給する略筒状の部材であり、電池外装体と対向する面に開口していることが好ましい。
また、供給口は、必要に応じて開閉できる構造であってもよい。
供給口の内形形状は特に限定されず、円形や楕円形等であってもよく、三角形、四角形、五角形等の多角形でもよく、十字型、丁字型、Y字型などであってもよい。また、上記形状の角に、R面取りやC面取りをした形状であってもよい。
また、内形形状が四角形の場合、一辺の長さが凹部の平面視形状の一辺の長さに略対応する長方形であることが好ましい。凹部の平面視形状が略円形の場合、該円の直径の長さ又は半径の長さに略対応する長方形であることが好ましい。
供給口の数は1つに限定されず、2つ以上であってもよい。
また、複数の供給口の内形形状は同じであってもよく、異なっていてもよい。
複数の供給口は互いに接合され、一体として移動してもよく、個別に移動してもよい。
また、複数の供給口に電極組成物を供給する供給設備は同じであってもよく、異なっていてもよい。すなわち、電極組成物の供給速度は、供給口ごとに異なっていてもよく、同じであってもよい。
供給口を有する供給設備は、供給口を通じて電極組成物を凹部内に送り出すことができるものであればよく、例えばスクリュー式フィーダーやピストン式フィーダー等が挙げられる。
[水平方向の相対位置の変化]
充填工程における、供給口と電池外装体との水平方向の相対位置の変化について説明する。
供給口と電池外装体との水平方向の相対位置を変化させる方法は特に限定されず、供給口の位置を固定したまま電池外装体の位置を変化させてもよく、電池外装体の位置を固定したまま供給口の位置を変化させてもよく、供給口及び電池外装体の位置をそれぞれ変化させてもよい。供給口及び電池外装体の位置の変化は、同時に行ってもよく、交互に行ってもよい。
以下、電池外装体を固定したまま、供給口を移動させる場合について説明するが、供給口を固定したまま電池外装体を移動させる方法等、他の方法に置き換えてもよい。
供給口から電極組成物を供給する前における供給口の位置を初期位置、供給口から電極組成物を供給し終えた後の供給口の位置を終端位置とする。
初期位置から終端位置までの移動は、供給口の形状、電極組成物の供給速度、凹部の平面視形状等に応じて適宜設定することができるが、電極組成物の充填密度を均一にする観点から、初期位置から終端位置までの移動は直線であり、方向転換をしないことが好ましい。
なお、図1及び図2(a)〜図2(c)に示す充填工程では、供給口の初期位置から終端位置までの移動は直線であり、方向転換を伴わない。
続いて、初期位置から終端位置までの移動経路について、図4(a)〜図4(c)及び図5(a)〜図5(b)を用いて説明する。
図4(a)〜図4(c)は、充填工程における供給口の移動パターンの例を模式的に示す上面図であり、図5(a)及び図5(b)は、充填工程における供給口の移動パターンの別の例を模式的に示す上面図である。
凹部の平面視形状が略矩形の場合、例えば、図4(a)に示すように、該略矩形の短辺に略対応する長さの供給口を用いて、該供給口を該略矩形の短辺の一方と接触する初期位置30Aに配置し、他方の短辺と接触する終端位置30Bに向かって直線的に動かす経路が挙げられる。凹部の平面視形状と供給口の形状とが対応しない場合には、図4(b)に示すように、該矩形の角部を初期位置30Aとして隣接する1の角部に向かって移動したのち、折り返して元の角部付近に戻る工程を順次繰り返して終端位置30Bに到達する経路や、図4(c)に示すように、該矩形の1の角部を初期位置30Aとし、隣接する角部に向かって渦巻状に順次移動して終端位置30Bに到達する経路等が挙げられる。
なお、供給口の移動には、初期位置から移動した後の供給口の最終的な停止位置が初期位置と同じ場合(初期位置と終端位置が同じ場合)や、供給口が回転する場合(重心が移動していない場合)も含む。
例えば、図5(a)に示すように、平面視形状が円形の凹部に対して、該円の直径と略同一の長さの長辺を有する長方形の供給口を、該円の中心と該供給口の重心を重ねた状態で180°回転させながら電極組成物を連続的に送り出す場合も、初期位置30Aと終端位置30Bが同一である(重なっている)が、供給口と電池外装体との水平方向の相対位置を変化させているものとする。
また、図5(b)に示すように、平面視形状が円形の凹部に対して、該円の半径と略同一の長さの長辺を有する長方形の供給口を、該円の中心を中心として360°回転させながら電極組成物を連続的に送り出す方法も、初期位置30Aと終端位置30Bが同一である(重なっている)が、供給口と電池外装体との水平方向の相対位置を変化させているものとする。
供給口を移動させている間、電極組成物の供給速度は一定であってもよく、供給口の移動パターンに応じて供給速度を変化(例えば、折り返しをする際に供給速度を低下させる等)させてもよい。
なお本明細書において、電極組成物を凹部内に連続的に送り出すとは、供給口と電池外装体との水平方向の相対位置が変化している間に供給口から電極組成物を凹部内に送り出すことを意味しており、充填工程の途中に供給口からの電極組成物の供給が止まる(一時停止)することを禁止するものではない。
従って、供給口からの電極組成物の供給速度を変化させる場合、供給速度を一時的にゼロにしてもよい。
本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法を構成する充填工程において、供給口は複数存在していてもよく、各供給口の形状、大きさ及び電極組成物の供給速度は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
ただし、各供給口が一体となった状態で、電池外装体との水平方向の相対位置を変化させることが好ましい。
供給口の周囲には、電池外装体の凹部の上面を塞ぐ平面を有するガイド部材が、供給口と一体化して配置されていてもよい。
上記ガイド部材が供給口の周囲に一体化して配置されていることによって、凹部内に充填された電極組成物の上面を塞ぐことができる。凹部内に充填された電極組成物の上面を塞ぐことによって、充填された電極組成物が凹部内から溢れ出すことを防ぐことができる。
ガイド部材が配置される位置は、供給口の周囲であれば特に限定されないが、少なくとも供給口の移動方向の反対側に設けられていることが好ましく、供給口と電極組成物との水平方向の相対位置の変化が終了した後に、供給口とガイド部材によって電池外装体の凹部の上面の全てを塞ぐことができる位置に設けられていることがより好ましい。
供給口の移動方向の反対側にガイド部材が配置されていると、供給口と電池外装体との水平方向の相対位置を変化させた際に、凹部内に充填された電極組成物の上面を、ガイド部材により塞ぐことができる。
供給口と電極組成物との水平方向の相対位置の変化が終了した後に、供給口とガイド部材によって電池外装体の凹部の上面の全てを塞ぐことができる位置にガイド部材が設けられていると、供給口と電極組成物との水平方向の相対位置の変化が終了した後に電極組成物を更に送り出すことにより、凹部内を加圧することができ、充填される電極組成物の密度をさらに均一にすることができる。
充填工程において用いられる供給口の例を図6(a)〜図6(c)を用いて説明する。
図6(a)〜図6(c)は、充填工程において用いられる供給口の例を模式的に示す断面図である。
図6(a)に示す供給口30の周囲には何も配置されておらず、図6(b)及び図6(c)に示す供給口30の周囲にはガイド部材50が配置されている。
図6(b)に示す供給口30の周囲には、供給口30の開口部と平面を共有するガイド部材50が配置されている。ガイド部材50は、供給口30の移動する方向(図6(b)中、矢印pで示す方向)とは反対側に配置されている。
図6(c)に示す供給口30の周囲には、供給口の周囲の全部にガイド部材50が配置されている。ガイド部材50は、供給口30の移動する方向(図6(c)中、矢印pで示す方向)に配置されるガイド部材50bと、その反対側に配置されるガイド部材50aからなる。
図6(b)及び図6(c)に示すガイド部材は、凹部上における供給口の初期位置、及び、移動方向を限定するものではないが、ガイド部材が凹部内に既に充填された電極組成物上を塞ぐように、凹部上における供給口の初期位置及び移動方向を設定することが好ましく、供給口と電池外装体との水平方向の相対位置を変化させた後に、供給口及びガイド部材によって凹部内に充填された電極組成物の上面の全てを覆うように、ガイド部材の形状及び位置を設定することがより好ましい。
ガイド部材が凹部内に既に充填された電極組成物上を塞ぐように、凹部上における供給口の初期位置及び移動方向を設定することで、凹部内に充填された電極組成物が規定の厚さ以上になることを抑制できるだけでなく、凹部の平面視形状に角部が存在する場合等に、該角部の先端(供給口からみてより遠い部分)まで電極組成物を充填しやすくなる。
また供給口と電池外装体との水平方向の相対位置を変化させた後に、供給口及びガイド部材によって凹部内に充填された電極組成物の上面の全てを覆うように、ガイド部材の形状及び位置を設定することによって供給口と電池外装体との水平方向の相対位置を変化させた後に電極組成物を更に送り出すことにより、凹部内を加圧することができ、電極組成物の密度のバラツキを抑制することができる。
図6(c)に示すガイド部材を有する供給口を用いた充填工程について説明する。
図7は、充填工程の別の一例を模式的に示す断面図である。
図7に示すように、供給口30の周囲には供給口30と一体化してガイド部材50が配置されており、ガイド部材50と供給口30とで、凹部内に充填された電極組成物20の上面を全て塞いでいる。ガイド部材50と供給口30により電極組成物20の上面が全て塞がれているため、電極組成物20を更に送り出すことにより、凹部内に圧力が加わり、凹部内における電極組成物の密度のバラツキを抑制することができる。
続いて、充填工程において電池外装体の凹部内に充填される電極組成物について説明する。
電極組成物は、電極活物質と電解液とを含み、必要に応じて導電助剤を含んでいてもよい。また、電極組成物は、公知のリチウムイオン電池用電極の製造に用いられる溶剤乾燥型のバインダー(カルボキシメチルセルロース、SBRラテックス及びポリフッ化ビニリデン等)、及び、水又は上記バインダーを溶解若しくは分散する溶剤とを含まないことが好ましい。
公知のリチウムイオン電池用電極を形成する際に用いられる電極スラリーは、電極活物質と溶剤乾燥型のバインダーと水又は溶剤とを含むため、電極形成後に乾燥固化させた後に電解液を電極活物質に含浸させる必要がある。
一方、電極組成物が活物質と電解液とを含み、溶剤乾燥型のバインダー、水及び溶剤を含まない場合には、該バインダーを乾燥させる工程、及び、電極を形成した後に改めて電解液を電極活物質に含浸させる工程が必要なくなり、工程が簡便となるだけでなく、電解液を均一に含む電極を形成できる効果も有するため好ましい。
電極活物質としては、正極活物質及び負極活物質が挙げられる。
正極活物質としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO、LiNiO、LiAlMnO、LiMnO及びLiMn等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO、LiNi1−xCo、LiMn1−yCo、LiNi1/3Co1/3Al1/3及びLiNi0.8Co0.15Al0.05)及び金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えばLiMM’M’’(M、M’及びM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO、LiCoPO、LiMnPO及びLiNiPO)、遷移金属酸化物(例えばMnO及びV)、遷移金属硫化物(例えばMoS及びTiS)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリフッ化ビニリデン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリ−p−フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
リチウムイオン電池用正極活物質の体積平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01〜100μmであることが好ましく、0.1〜35μmであることがより好ましく、2〜30μmであることがさらに好ましい。
負極活物質としては、炭素系材料[黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)及び炭素繊維等]、珪素系材料[珪素、酸化珪素(SiOx)、珪素−炭素複合体(炭素粒子の表面を珪素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子又は酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの並びに炭化珪素等)及び珪素合金(珪素−アルミニウム合金、珪素−リチウム合金、珪素−ニッケル合金、珪素−鉄合金、珪素−チタン合金、珪素−マンガン合金、珪素−銅合金及び珪素−スズ合金等)等]、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物及びリチウム・チタン酸化物等)及び金属合金(例えばリチウム−スズ合金、リチウム−アルミニウム合金及びリチウム−アルミニウム−マンガン合金等)等及びこれらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。
上記負極活物質のうち、内部にリチウム又はリチウムイオンを含まないものについては、予め負極活物質の一部又は全部にリチウム又はリチウムイオンを含ませるプレドープ処理を施してもよい。
これらの中でも、電池容量等の観点から、炭素系材料、珪素系材料及びこれらの混合物が好ましく、炭素系材料としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素及びアモルファス炭素がさらに好ましく、珪素系材料としては、酸化珪素及び珪素−炭素複合体がさらに好ましい。
負極活物質の体積平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01〜100μmが好ましく、0.1〜20μmであることがより好ましく、2〜10μmであることがさらに好ましい。
本明細書において、電極活物質の体積平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、日機装(株)製のマイクロトラック等を用いることができる。
導電助剤は、導電性を有する材料から選択される。
具体的には、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
これらの導電助剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物を用いてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電助剤としては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電助剤の材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
導電助剤の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01〜10μmであることが好ましく、0.02〜5μmであることがより好ましく、0.03〜1μmであることがさらに好ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電助剤の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
導電助剤の形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であってもよく、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電性樹脂組成物として実用化されている形態であってもよい。
導電助剤は、その形状が繊維状である導電性繊維であってもよい。
導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。また、グラフェンを練りこんだポリプロピレン樹脂も好ましい。
導電助剤が導電性繊維である場合、その平均繊維径は0.1〜20μmであることが好ましい。
電極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆層により被覆された被覆活物質であってもよい。
電極活物質の周囲が被覆層で被覆されていると、電極の体積変化が緩和され、電極の膨張を抑制することができるため好ましい。さらに、被覆活物質の非水溶媒に対する濡れ性を向上させることができ、電極が有する被覆活物質層に電解液を吸収させる工程に掛かる時間の短縮も可能になり好ましい。
なお、電極活物質として正極活物質を使用した場合の被覆活物質を被覆正極活物質といい、被覆活物質層を被覆正極活物質層ともいう。また電極活物質として負極活物質を使用した場合の被覆活物質を被覆負極活物質といい、被覆活物質層を被覆負極活物質層ともいう。
被覆層を構成する高分子化合物としては、特開2017−054703号公報に非水系二次電池活物質被覆用樹脂として記載されたものを好適に用いることができる。
[電解液]
電解液としては、リチウムイオン電池の製造に用いられる、電解質及び非水溶媒を含有する公知の電解液を使用することができる。
電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF及びLiClO等の無機酸のリチウム塩、LiN(CFSO、LiN(CSO及びLiC(CFSO等の有機酸のリチウム塩等が挙げられる。これらの内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはLiPFである。
非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物を用いることができる。
ラクトン化合物としては、5員環(γ−ブチロラクトン及びγ−バレロラクトン等)及び6員環のラクトン化合物(δ−バレロラクトン等)等を挙げることができる。
環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びブチレンカーボネート等が挙げられる。
鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート及びジ−n−プロピルカーボネート等が挙げられる。
鎖状カルボン酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及びプロピオン酸メチル等が挙げられる。
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン及び1,4−ジオキサン等が挙げられる。
鎖状エーテルとしては、ジメトキシメタン及び1,2−ジメトキシエタン等が挙げられる。
リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(トリフルオロメチル)、リン酸トリ(トリクロロメチル)、リン酸トリ(トリフルオロエチル)、リン酸トリ(トリパーフルオロエチル)、2−エトキシ−1,3,2−ジオキサホスホラン−2−オン、2−トリフルオロエトキシ−1,3,2−ジオキサホスホラン−2−オン及び2−メトキシエトキシ−1,3,2−ジオキサホスホラン−2−オン等が挙げられる。
ニトリル化合物としては、アセトニトリル等が挙げられる。
アミド化合物としては、DMF等が挙げられる。
スルホンとしては、ジメチルスルホン及びジエチルスルホン等が挙げられる。
非水溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
非水溶媒の内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのは、ラクトン化合物、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及びリン酸エステルであり、更に好ましいのはラクトン化合物、環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルであり、特に好ましいのは環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの混合液である。最も好ましいのはエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合液、又は、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合液である。
上述した被覆活物質を製造する方法について説明する。
被覆活物質は、例えば、高分子化合物及び電極活物質並びに必要により用いる導電剤を混合することによって製造してもよく、被覆層に導電剤を用いる場合には高分子化合物と導電剤とを混合して被覆材を準備したのち、該被覆材と電極活物質とを混合することにより製造してもよく、高分子化合物、導電剤及び電極活物質を混合することによって製造してもよい。
なお、電極活物質と高分子化合物と導電剤とを混合する場合、混合順序には特に制限はないが、電極活物質と高分子化合物とを混合した後、更に導電剤を加えて更に混合することが好ましい。
上記方法により、高分子化合物と必要により用いる導電剤を含む被覆層によって電極活物質の表面の少なくとも一部が被覆される。
上記の被覆材の任意成分である導電剤としては、電極組成物を構成する導電助剤と同様のものを好適に用いることができる。
本発明の製造方法に用いる電極組成物は、湿潤粉体であることが望ましく、電極活物質と電解液との混合比率は特に限定されないが、重量比で電極活物質:電解液=99:1〜80:20であることが好ましい。
湿潤粉体としての電極組成物は、電極活物質と電解液とを含む流動性の低い固液混合物(ペンデュラー状又はファニキュラー状ともいう)であることが好ましい。
最密充填された電極活物質に電解液を加える場合、電解液量が少ないと、電解液は活物質粒子同士の接触点を中心として環状に付着して不連続に存在する。この状態をペンデュラー状態(ペンデュラー状)という。そして、電解液量が増加すると、環状に付着した電解液はその環が大きくなり、環同士が相互に連繋し、空隙はあるものの電解液による相が連続構造を持つようになる。このような状態をファニキュラー状態(ファニキュラー状)という。
これらの固液混合物のうち、電極組成物としては、活物質及び電解液を含み、電解液による連続相を有さないペンデュラー状態の混合物であることがさらに好ましい。
電極組成物には、さらに、粘着性樹脂等が含まれていていることも好ましい。
電極組成物が、粘着性樹脂を含む場合には、電極組成物が上記凹部内に連続的に送り出されることで凹部内で圧着された状態となり、活物質間の電導性が良好となるため好ましい。
粘着性樹脂としては、被覆層を構成する高分子化合物(特開2017−054703号公報に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂等)に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調整したもの、及び、特開平10−255805公報等に粘着剤として記載されたものを好適に用いることができる。
なお、粘着性樹脂を含む場合、粘着性樹脂は電極活物質の表面に付着させる等して電極活物質と複合化して用いてもよく、電極活物質と粘着性樹脂とを別々に電極組成物に混合して用いてもよい。
また、電極活物質として被覆活物質を用い、被覆活物質、粘着性樹脂及び電解液を混合することにより電極組成物を準備してもよい。このとき、被覆活物質の被覆層を構成する高分子化合物と粘着性樹脂とは、同じものであってもよく、それぞれ異なっていてもよい。
なお、公知のリチウムイオン電池用電極に用いられる溶液乾燥型の電極用バインダーは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質同士を強固に固定するが、上記の粘着性樹脂は、含まれる揮発成分を除去しても完全な固体化はせずに粘着性を有する樹脂であり、公知のリチウムイオン電池用電極に用いられる溶液乾燥型の電極バインダーと粘着性樹脂とは異なる材料である。
電極組成物は、被覆活物質と電解液とを含んだ非結着体であることが好ましい。
被覆活物質と電解液とを含んだ非結着体とは、電極組成物を構成する電極活物質同士が溶液乾燥型の電極用バインダーにより互いの位置を固定されていないこと、及び、電極組成物中の電極活物質が全て、互いに決着していないことを意味する。
[分断工程]
本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法では、充填工程後に、板状のシャッター部材を電池外装体の凹部の上面に沿って移動させて供給口の表面に配置することにより、供給設備内に存在する電極組成物と凹部内に存在する電極組成物とを分断する分断工程を有することが好ましい。
上記分断工程を充填工程後に行うことで、シャッター部材により供給設備内に存在する電極組成物と凹部内に存在する電極組成物とを確実に平面で分断することができるため、凹部に充填された電極組成物の上面を平坦にし易く、電極組成物の密度のバラツキをより抑制することができる。
上述した分断工程の例について図8(a)及び図8(b)を用いて説明する。
図8(a)及び図8(b)は、分断工程の一例を模式的に示す断面図である。
図8(a)に示すように、シャッター部材60の下面は、供給口30に対向する面とは反対側に配置されており、凹部11内に充填された電極組成物20aの上面と接触する面である。図8(b)に示すように、シャッター部材60を凹部11の上面に沿って移動させて供給口30の表面に配置することにより、供給口30内(供給設備内)に存在する電極組成物20bと凹部11内に存在する電極組成物20aとを平面で分断することができる。
シャッター部材の形状は、供給口全体を封じることができる形状であれば制限はなく、好ましい形状としては供給口の形状にあわせた形状(例えば、図9(a)及び図9(b)に示す形状)等が挙げられる。
図9(a)及び図9(b)は、分断工程におけるシャッター部材と供給口の関係を模式的に示す斜視図である。
図9(a)及び図9(b)に示すように、供給口30の下面とシャッター部材60の下面が同一平面上に存在していると、凹部内に充填される電極組成物の上面の平坦度が高まり、充填密度のバラツキを抑制できてより好ましい。
シャッター部材を構成する材料は特に限定されないが、充分な機械的強度を備え、電解液との接触により膨潤しない材料であることが望ましく、供給口やガイド部材と同様の材料を用いてもよい。シャッター部材を構成する材料としては例えば、ステンレス等の金属が挙げられる。
本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法により得られたリチウムイオン電池用電極を用いてリチウムイオン電池を製造する方法について説明する。
本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法では、電極活物質として正極活物質を選択することにより、リチウムイオン電池用正極を得ることができ、電極活物質として負極活物質を選択することにより、リチウムイオン電池用負極を得ることができる。
従って、例えば、本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法によりリチウムイオン電池用正極及びリチウムイオン電池用負極をそれぞれ作製し、これらをセパレータを介して活物質層同士が対向する向きに重ね、電池外装体の凹部の周縁部で封止することにより、リチウムイオン電池を製造することができる。
[電極組成物の充填装置]
続いて、本発明の電極組成物の充填装置について説明する。
本発明の電極組成物の充填装置は、電極活物質と電解液とを含む電極組成物を連続供給する電極組成物供給手段と、上面に開口する凹部を有する電池外装体を固定する電池外装体固定手段と、上記電極組成物供給手段と上記電池外装体固定手段との水平方向の相対位置を変化させる位置調整手段と、を備える電極組成物の充填装置であって、上記電極組成物供給手段は、上記電池外装体固定手段の上方に配置され、下方に向けて上記電極組成物を連続的に送り出す供給口を備えることを特徴とする。
本発明の電極組成物の充填装置を用いることにより、本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法を容易に実施することができる。
図10を用いて、本発明の電極組成物の充填装置の例を説明する。
図10は、本発明の電極組成物の充填装置の例を模式的に示す断面図である。
図10に示すように、電極組成物の充填装置100は、電極組成物20を連続供給する供給口30を有する電極組成物供給手段300と、電池外装体10を固定する電池外装体固定手段400と、電極組成物供給手段300と電池外装体固定手段400との水平方向の相対位置を変化させる位置調整手段600とを備える。
位置調整手段600によって、電池外装体固定手段及び電池外装体10が矢印pで示す方向に移動し、電極組成物供給手段300と電池外装体固定手段400との水平方向の相対位置が変化している。そのため、電池外装体10の凹部11内に電極組成物20を連続的に送り出した際に、充填された電極組成物の充填密度がバラツキにくい。
[電極組成物供給手段]
本発明の電極組成物の充填装置を構成する電極組成物供給手段としては、本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法で説明した供給設備を好適に用いることができる。
[電池外装体固定手段]
本発明の電極組成物の充填装置を構成する電池外装体固定手段としては、電池外装体の変形を防止しながら、電極組成物供給手段と電池外装体固定手段との水平方向の相対位置を変化させることができるようなものであれば特に限定されず、凹部の上面を開口させたまま電池外装体を収容可能な空間を有する金属製ブロック等が挙げられる。
[位置調整手段]
本発明の電極組成物の充填装置を構成する位置調整手段としては、電極組成物供給手段と電池外装体固定手段との水平方向の相対位置を変化させるようなものであればよく、例えば、載置した電池外装体を電池外装体固定手段と共に一定方向に移動させるベルトコンベヤや、電極組成物供給手段が有する供給口を任意の位置に移動させる機械式アーム等が挙げられる。
[電極組成物]
本発明の電極組成物の充填装置において充填される電極組成物としては、本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法において説明された電極組成物を好適に用いることができる。
本発明のリチウムイオン電池用電極の製造方法により得られるリチウムイオン電池用電極は、特に、携帯電話、パーソナルコンピューター、ハイブリッド自動車及び電気自動車用に用いられるリチウムイオン電池用の電極として有用である。
1 リチウムイオン電池用電極
10 電池外装体
11 凹部
15 集電体
20 電極組成物
30 供給口
30A 初期位置
30B 終端位置
40 固定治具
50 ガイド部材
60 シャッター部材
100 電極組成物の充填装置
300 供給設備(電極組成物供給手段)
400 電池外装体固定手段
600 位置調整手段

Claims (5)

  1. 電極活物質と電解液とを含む電極組成物を、上面に開口する凹部を有する電池外装体の前記凹部内に充填する充填工程を有するリチウムイオン電池用電極の製造方法であって、
    前記充填工程では、前記電極組成物を供給する供給設備が有する供給口と前記電池外装体との水平方向の相対位置を変化させながら、前記電極組成物を前記凹部内に連続的に送り出すことを特徴とするリチウムイオン電池用電極の製造方法。
  2. 前記供給口の周囲には、前記電池外装体の前記凹部の上面を塞ぐ平面を有するガイド部材が、前記供給口と一体化して配置されており、
    前記充填工程では、前記ガイド部材を前記供給口と一体として前記電池外装体との水平方向の相対位置を変化させ、前記供給口と前記電池外装体との水平方向の相対位置の変化が終了した後、前記ガイド部材と前記供給口によって、前記電池外装体の前記凹部の上面の全てを塞ぎながら前記凹部内に前記電極組成物を更に送り出す請求項1に記載のリチウムイオン電池用電極の製造方法。
  3. 前記充填工程後に、さらに、板状のシャッター部材を前記電池外装体の前記凹部の上面に沿って移動させて前記供給口の表面に配置することにより、前記供給設備内に存在する電極組成物と前記凹部内に存在する電極組成物とを分断する分断工程を有する請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用電極の製造方法。
  4. 前記電極組成物は、前記電極活物質及び前記電解液を含み、前記電解液による連続相を有さない混合物である請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン電池用電極の製造方法。
  5. 電極活物質と電解液とを含む電極組成物を連続供給する電極組成物供給手段と、上面に開口する凹部を有する電池外装体を固定する電池外装体固定手段と、前記電極組成物供給手段と前記電池外装体固定手段との水平方向の相対位置を変化させる位置調整手段と、を備える電極組成物の充填装置であって、
    前記電極組成物供給手段は、前記電池外装体固定手段の上方に配置され、下方に向けて前記電極組成物を連続的に送り出す供給口を備えることを特徴とする電極組成物の充填装置。
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