本発明は、多量多種の血液検体を検査するための血液検体の検査前処理システムに関する。
血液検体の検査は、病院等の医療機関により患者から血液を容器に採取し、医療機関が採取した検体を検査機関に輸送し、検査機関において検査を行い、検査機関が検査結果を医療機関に報告する流れで行われるのが一般的である。したがって、登録衛生検査所などの検査機関には、様々な患者の検体が各医療機関から輸送され集合する。検査機関による検査結果は患者の健康や生命に係るものであるため、検査自体の正確性はもちろんのこと、患者と検査結果の結び付きが正確でなければならない。また、同様に、医療機関に対して、迅速な検査結果の報告が求められるため、正確性に加えて、効率性も要求される。このように、検体の検査の正確性及び効率性を向上させるためには、実際に検査する工程だけでなく、各検体を検査するために必要な分注工程、仕分け工程等の検査前工程が重要となる。そのため、これまでに検査前工程に関する処理装置や検査前処理システムについての検討がなされている。
例えば、特許文献1には、親検体容器に収容された親検体から子検体を作成する分注機構と、子検体ごとに、作成する優先度を記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された優先度に基づいて、同一の優先度を持つ子検体の作製に必要な量の親検体をまとめて吸引するよう、分注機構を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする検体分注処理装置が開示されている。さらに、当該検体分注処理装置を用いることにより、検体に対して依頼された依頼項目に基づいて分注する子検体容器ごとに優先度を持ち、その優先度に従って分注をすることにより、親検体の検体量が総分注量より不足している時にも、優先度の高い子検体を確実に作成することができ、検査結果の報告遅延のリスクを減少することができると記載されている。
また、例えば特許文献2には、検体が載るラックを投入するラック投入モジュールと、ラックで運ばれて来る検体に各種の検査前処理を行う複数の処理モジュールと、検査前処理を終えた検体を載せたラックが集められるラック収納モジュールとを有し、ラック投入モジュール、各種の処理モジュール、及びラック収納モジュールに及ぶ経路を搬送ラインで運ぶ検体検査前処理システムにおいて、立ち寄り情報に従って運ばれる検体が処理モジュールで検査前処理される検体処理時間と、立ち寄り情報に従って検体が経路を搬送ラインで運ばれる検体搬送時間と、をもとに検体の検査前処理が終了する終了予想時間を算定する算定機能を有することを特徴とする検体検査前処理システムが開示されている。さらに、当該検体検査前処理システムにより、検体を検索した時点から処理が終了するまでの所要時間を予測することで、患者の待ち時間低減と検査技師の業務効率向上を行うことができると記載されている。
また、特許文献3には、体液からなる検体をそれぞれ収容した多数の原容器に、それぞれ、検体情報を符号化した検体ナンバーを付し、当該検体ナンバーを付した原容器を無秩序に受け付けし、原容器の検体ナンバーに対応した検査指示情報に基づいて単一の検査項目(以下単一検査項目と称す)ないし複数の検査項目(以下検査項目群と称す)に対応した分注容器に必要量を分注し検査する検体検査システムにおいて、原容器を複数本ずつまとめて原容器ラックにセットするとともに、原容器ラックに付したラックナンバーと各検体対応のラック内座標とからなる分注前検体位置情報に各検体ナンバーを対応させて記憶する工程と、単一検査項目ないし検査項目群が特定された複数の分注容器を収容した分注容器ラックに対し、原容器ラック内にセットされている原容器内の検体が分注すべき検体であるか否かを、分注前検体位置情報をキーとしてラック内原容器ごとに判定し、分注すべきものについて分注容器ラック内の分注容器に自動分注機により分注するとともに、分注された分注容器をセットしている分注容器ラックナンバーと分注容器ラック内座標とからなる分注後検体位置情報に検体ナンバーを対応させて記憶する工程とを含むことを特徴とする検体自動分取分配方法が開示されている。さらに、当該検体自動分取分配方法により、検体の分注が正確かつ能率よく行えると記載されている。
特開2014−153179号公報
特開2010−107403号公報
特開平5−288754号公報
ここで、特許文献1に記載の検体分注処理装置、特許文献2に記載の検体検査前処理システム、特許文献3に記載の検体自動分取分配方法により、一定程度の効率性は向上しているものの、10万検体以上の非常に多い検体を検査する場合で、かつ、検査項目が多岐にわたる場合には、上記の検体分注処理装置や検体検査前処理システムを用いたとしても、要求される十分な効率性を得ることができなかった。また、このように多量の検体を検査するためには、患者と検査結果を正確に結びつけるための工夫が更に必要であった。したがって、本発明は以上の点の課題に鑑みてなされたものであり、多量多種の血液検体を、正確かつ効率的に検査できる、血液検体の検査前処理システムを提供することを目的とする。
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、10万検体以上の血液検体を24時間以内に検査するための血液検体の検査前処理システムにおいて、各工程及び工程の順序を工夫するとともに、血液検体を収容する分注前容器が収納された分注前ラックにおける血液検体の位置情報を、識別情報ラベルを読み取ることにより認識し、上清の液量を分注前に把握することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
(1)本発明の第1の態様は、10万検体以上の血液検体を24時間以内に検査するための血液検体の検査前処理システムであって、第一の識別情報ラベルが付された分注前容器に収容された血液検体を、遠心分離により上清及び沈殿物に分離する工程Aと、工程Aの後に、血液検体が収容された分注前容器を分注前専用ラックに収納する工程Bと、工程Bの後に、血液検体の入荷を確認する工程Cと、工程Cの後に、前記上清の液量を測定する工程Dと、工程Dの後に、分注前容器の上面に位置する蓋を開栓する工程Eと、工程Eの後に、前記上清を段階的に複数の分注用容器に自動的に分注する工程Fと、工程Fの後に、分注された検体を検査項目ごとに仕分けする工程Gと、を有し、前記分注前専用ラックは、一列で構成され、前記分注前専用ラックには第二の識別情報ラベルが付されており、工程Cにおいて、第一の識別情報ラベル及び第二の識別情報ラベルを読み取り、コンピューターに保存された依頼情報と照合することにより、血液検体の入荷確認及び分注前専用ラック内における分注前容器の位置情報を認識し、工程Dにおいて、上清の液量を、分注前専用ラックに収納した状態で軟X線液量測定装置を用いて測定する、血液検体の検査前処理システムである。
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の血液検体の検査前処理システムであって、工程Fは、検査種別に応じて複数のセクションに分類されており、複数のセクションのうち少なくとも一つのセクションでは、検査項目ごとに複数の分注用レーンを有しており、いずれかの分注用レーンにおいて、第一の分注用ラックに収納された分注用容器の全てに分注が完了した場合に、工程Fを止めないように機能する振り分け用レーンを、前記分注用レーンとは別に有することを特徴とするものである。
(3)本発明の第3の態様は、(2)に記載の血液検体の検査前処理システムであって、工程Fにおいて、前記振り分け用レーンが備えられたセクションを除く、少なくとも一つのセクションには、手で分断可能な連結容器及び当該連結容器が収納された第二の分注用ラックを備えており、検査頻度の低い検査項目に関する検体の上清を連結容器に分注し、その後、工程Gにおいて、当該連結容器を手で分断し、更に詳細な検査項目に応じて分断した各チューブを仕分けすることを特徴とするものである。
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載の血液検体の検査前処理システムであって、工程Fにおいて前記連結容器を収納する第二の分注用ラックが、ICタグ及びリライトラベルを備えていることを特徴とするものである。
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載の血液検体の検査前処理システムであって、前記分注前専用ラックが軟X線を通過させるための複数のスリットを両長辺に有することを特徴とするものである。
(6)本発明の第6の態様は、(1)から(5)のいずれかに記載の血液検体の検査前処理システムであって、工程Eにおける開栓工程が、自動開栓装置により自動的に行われ、前記自動開栓装置が、血液検体のコンタミネーションを防止するための、遮蔽板及び吸引装置を備えることを特徴とするものである。
(7)本発明の第7の態様は、(1)から(6)のいずれかに記載の血液検体の検査前処理システムであって、工程Fにおいて、採取装置による上清の採取を一度に行い、吸引した上清を段階的に複数の分注用容器に自動的に分注することを特徴とするものである。
本発明の血液検体の検査前処理システムは、検査前の各工程及び各工程の順序が工夫され、血液検体を収容する容器が収納されたラックにおける血液検体の位置情報を、識別情報ラベルを読み取ることにより認識でき、また、遠心分離により得られた上清の液量を分注前に把握できるため、本発明によれば多量多種の血液検体を正確かつ効率的に検査できる。
本発明の血液検体の検査前処理システムのフローを示す図面である。
分注前専用ラックに分注前容器が収納された態様及び分注前専用ラックの態様を示す図面である。
工程Fの一つのセクションにおいて、複数の分注用レーンと振り分け用レーンを有する態様を示す図面である。
振り分け用レーンに存在する複数の分注用ラック及び当該分注用ラックに収納された分注用容器を、工程Gにおいて検査項目ごとに仕分けする態様を示す図面である。
工程Gにおいて仕分けを行った後の態様を示す図面である。
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明の実施形態の説明の全体を通して、同じ要素には同じ符号を付している。
<血液検体の検査前処理システム>
本発明は、血液検体の検査前処理システムに関し、10万検体以上の血液検体を24時間以内に検査するためになされたものであり、特に多量多種の血液検体を検査する検査機関において有効である。本発明によれば、10万検体もの血液検体を24時間以内に検査することができ、迅速かつ正確な対応が求められる医療の分野において、サービスの向上を図ることができる。
本発明の血液検体の検査前処理システムは、図1に示すように、工程Aから工程Gを有し、各工程には、後述するように、正確性及び効率性を向上する観点から各工夫がなされている。以下、各工程について詳細に説明する。
なお、図2(a)に示すように、分注前の血液検体が収容された分注前容器10には、患者の情報を認識するための第一の識別情報ラベルXが付されている。第一の識別情報ラベルXは、バーコードやQRコードなど、読み取ることで情報を認識できるものであればよい。また、血液検体が収容される分注前容器10の材質としては、プラスチック製、ガラス製等を用いることができ、従来公知の技術によりあらかじめ血液分離剤が分注前容器10の底に注入されていてもよい。
ここで、第一の識別情報ラベルXは、患者の情報と血液検体を結びつけるための重要なものであり、かつ、多量に消費するものであることから、剥がれづらく、低コストで扱いやすいものであることが好ましい。よって、第一の識別情報ラベルXの材質は、特に限定はされないが、紙製であることが好ましい。また、第一の識別情報ラベルXが分注前容器10から剥がれることを防ぐために、第一の識別情報ラベルXが、当該第一の識別情報ラベルXの幅方向両端部同士が結合するように、分注前容器10の全周に付されることが好ましい。なお、後述する第二の識別情報ラベル及び第三の識別情報ラベルについても、第一の情報ラベルと同様に、紙製であることが好ましい。
[工程A]
工程Aは、血液検体を遠心分離により上清及び沈殿物に分離する工程である。遠心分離は、検体を遠心分離用ラックに収納し、従来公知の遠心分離機を用いて行うことができる。遠心分離用ラックとしては、特に限定されないが、物理的耐性の強い硬質プラスチック製であることが好ましい。なお、上清とは、本明細書において、血漿及び血清を含む概念として用いている。
[工程B]
工程Bは、工程Aの後に、血液検体が収容された分注前容器10を分注前専用ラック20に収納する工程である。図2(a)は、分注前容器10が分注前専用ラック20に収納された態様を示している。また、本発明に用いる分注前専用ラック20は、複数列ではなく、一列で構成されるものである。分注前専用ラック20が複数列からなる場合には、後述するように、工程C、工程D及び工程Eにおいて、処理効率や安全性が低下するため、本発明において、分注前専用ラック20は一列である必要がある。また、分注前専用ラック20が一列からなるため、転倒防止のために、分注前専用ラック20には、特許第4778367号公報に記載される可動片を底面に備えていることが好ましい。分注前専用ラック20の材質は特に限定されず、プラスチック製など従来公知の材質を用いることができる。また、分注前専用ラック20は、後述するように、上清の液量を、軟X線液量測定装置を用いて測定するために、軟X線を照射する部分に、図2(b)に示すように、軟X線を通過するための複数のスリット21を分注前専用ラック20の両長辺に有することが好ましい。
ところで、後述するように、血液検体を収容する分注前容器10の種類は、一種類に統一されていないため、分注前容器10及び当該分注前容器10に応じた蓋ごとに分注前専用ラック20に仕分けながら分注前容器10を分注前専用ラック20に収納する。仕分けが完了した分注前専用ラック20は、順次、分注前容器10の種類に応じて複数の分注前専用ラック20を収納できる収納ケースに移される。
[工程C]
工程Cは、工程Bの後に、血液検体の入荷を確認する工程である。工程Cの前工程である工程A及び工程Bの段階では、どの検体が実際に検査機関に入荷されたかどうかを把握できていないため、工程Cにおいて、コンピューターに保存された依頼情報と照合することにより血液検体の入荷の確認が行われる。具体的には、工程Cにおいて、血液検体が収容された各分注前容器10に付された第一の識別情報ラベルX及び当該分注前容器10が収納された分注前専用ラック20に付された第二の識別情報ラベルを読み取ることにより、血液検体の入荷確認及び分注前専用ラック20における分注前容器10の位置情報を認識することができる。なお、第一の識別情報ラベルX及び第二の識別情報ラベルの読み取りには、第一の識別情報ラベルX及び第二の識別情報ラベルのタイプに応じて、バーコードリーダーやQRコードリーダー等の従来公知の機器を用いることができる。
具体的には、工程Bにおいて仕分けが完了した分注前専用ラック20は、分注前容器10の種類に応じて複数の分注前専用ラック20を収納できる収納ケースに移されており、収納ケースを入荷確認装置に投入し、一つずつ分注前専用ラック20を切り出し、その後、分注前容器10に付された第一の識別情報ラベルXを正確に読み取るために、分注前専用ラック20に収納された分注前容器10を上から押さえて回転させながら読み取る。また、分注前専用ラック20に付された第二の識別情報ラベルは、所定の方向から読み取る。このように、工程Cにおいて、血液検体の入荷確認及び分注前専用ラック20内における分注前容器10の位置情報を認識することにより、多量の検体を検査する検査機関における検査の正確性を維持することができる。また、入荷確認は、検体の情報だけでなく、分注前専用ラック20と、分注前専用ラック20に収納された検体の位置と、を紐づけるものであるため、本発明では工程Dの前に、入荷確認工程である工程Cを設けている。
ところで、血液検体を収容する分注前容器10の種類は、一種類に統一されているわけではなく、大きさや材質の異なる数種類が存在し、検査機関には各種の分注前容器10に収容された血液検体が入荷されることが一般的である。また、分注前容器10を密封する蓋についても、分注前容器10に応じたゴム栓、プラスチック栓等、が用いられている。分注前容器10の大きさや蓋の種類は、例えば、工程Eの開栓工程において用いる機械の選択、工程Fにおける吸引時の深さや吸引速度にも影響する。よって、あらかじめコンピューターに分注前容器10及び蓋に関する詳細な情報を入力し、工程Cにおいて、分注前専用ラック20が入荷確認装置に投入される前に、第一の識別情報ラベルX及び第二の識別情報ラベルを認識する各検体の分注前容器10及び蓋をあらかじめ選択し、コンピューターに認識させる必要がある。分注前容器10及び蓋の認識は分注前専用ラック20ごとに行うため、一つの分注前専用ラック20には、同一種の蓋で密封された同一種の分注前容器10を収納することになる。
また、第一の識別情報ラベルXの読み取りに際し、バーコードリーダー等で読み取る必要があるが、分注前専用ラック20が複数列である場合には、列ごとに、分注前容器10を高さ方向に持ち上げなければ第一の識別情報ラベルXを読み取ることができない。その場合、分注前容器10を持ち上げるための時間がロスとなり、処理効率が低下することになる。そのため、本発明では、効率性を向上させるために、一列で構成された分注前専用ラック20を用いている。分注前専用ラック20に収納できる分注前容器10の本数は、作業性及び管理性の観点から、5本以上20本以下であることが好ましく、10本以上15本以下であることがより好ましい。
[工程D]
工程Dは、工程Cの後に、上清の液量を測定する工程である。工程Dでは、一つの分注前専用ラック20に収納された全ての検体に関する上清の液量を、分注前専用ラック20に収納した状態で軟X線液量測定装置を用いて測定する。工程Dにおいて、上清の液量を測定することにより、各検体の液量を分注前に事前に把握することができる。ここで、各検体に必要な検査項目はコンピューターにあらかじめ入力されており、検査に要する上清の液量を把握できる仕組みとなっている。
従来、あらかじめ分注前に血液検体中の上清の液量を把握できない場合には、分注時に初めて必要量があるかどうか把握でき、不足している場合にはエラーとなるだけでなく、分注器具(例えばチップ)に付着した上清がロスとなり、元々不足していたうえに、更に不足するという問題があった。そこで、工程Dにおいて、上清の液量を測定することにより、上清の液量が、検査に要求される量を満たしていない場合には、後工程に進めずに一度保持して医療機関に報告する、優先度の高い検査を進める等、状況に応じた対応を選択することができ、結果として、効率性の向上を図ることができ、医療機関及び患者に対するサービスを向上させることができる。また、分注前容器10を密封する蓋を外さなくても、血液検体中の上清の液量を測定することができるため、医療機関や患者からの信頼性を向上させることができる。そのため、本発明では、開栓工程である工程Eや自動分注工程である工程Fの前に、上清の液量を測定する工程Dを設けている。また、工程Dにおいて、上清の液量を測定した結果、不足している検体があった場合には、当該検体が収容された分注前容器10を収納した分注前専用ラック20は、一時的に分注前専用ラック20を保留するレーンに自動的に移動し、待機している別の分注前専用ラック20に収納された検体に関する上清の液量を測定する仕組みとすることで、時間的なロスを低減することができる。
また、多量の検査を行う検査機関においては、発注された検査に加えて、検査機関に入荷後、あるいは当初発注された検査の終了後に、追加検査の要望を相当数受ける場合が多い。そのような場合に、追加検査をするための上清が足りているかどうかを確認するために、多数存在する分注前容器10の中から該当する分注前容器10を見つけ出し、上清の液量を目視で確認することを要すると、効率性が大きく低下し、医療機関及び患者に対するサービスを低下させることにつながる。工程Dにおいて、分注前に上清の液量を把握することにより、追加検査の要望があったとしても、追加検査を行うために上清が足りているかどうかを即時に判断でき、医療機関に対して速やかに応答することができる。
ところで、分注前の上清の液量を測定する方法としては、従来より、可視光、レーザー、画像処理技術等が用いられてきた。しかしながら、上記のとおり、分注前容器10には、第一の識別情報ラベルXが付されており、従来の方法では、上記の可視光等の照射方向に第一の識別情報ラベルXが位置すると、当該第一の識別情報ラベルXが妨げとなり上清の液量を正確に測定できなかった。そのため、工程Dでは、上清の液量を、軟X線液量測定装置を用いて測定する。吸収波長が0.1nm以上50nm以下である軟X線を照射することにより、第一の識別情報ラベルXが分注前容器10に付されていたとしても、正確に上清の液量を測定することができる。
ここで、軟X線液量測定装置による上清の測定において、軟X線の進行方向に複数の分注前容器10が存在すると、上清の液量を正確に測定することができない。そのため、分注前専用ラック20が複数列からなる場合には、上清の液量を測定するために、列ごとに、分注前容器10を高さ方向に持ち上げる必要があり、その場合、持ち上げる時間がロスとなり、処理効率が低下することになる。そのため、本発明では効率性を向上させるために、分注前専用ラック20として、一列からなるものを用い、一つの分注前専用ラック20に収納された全ての検体に関する上清の液量を、分注前専用ラック20に収納した状態で軟X線液量測定装置を用いて測定する。
軟X線液量測定装置による上清の液量の測定には、軟X線を分注前容器10に通過させる必要がある。そのため、分注前専用ラック20に収納した状態で上清の液量を測定するために、分注前専用ラック20は、図2(b)に示すように、軟X線を通過させるための複数のスリット21を、分注前専用ラック20の両長辺に有することが好ましい。
[工程E]
工程Eは、工程Dの後に、分注前容器10の上面に位置する蓋を開栓する工程である。本発明の血液検体の検査前処理システムは、10万検体以上の血液検体を24時間以内に検査することを対象としているため、手作業による開栓ではなく、自動開栓装置により自動的に行われることが好ましい。また、各分注前容器10の蓋のタイプ(ゴム栓、プラスチック栓、シール栓等)は、あらかじめ工程Cにより認識されているため、蓋のタイプに適した装置に振り分けられる。
なお、自動開栓装置による開栓は、分注前専用ラック20ごとに行われ、一度の開栓作業により当該分注前専用ラック20に収納された分注前容器10の蓋を開栓する。なお、開栓方法は蓋の種類によって異なる。開栓の方法は特に限定されないが、例えばゴム栓やプラスチック栓の場合には、硬質の樹脂(例えばポリカーボネート樹脂)によりゴム栓の上端を把持し上下動させることにより開栓することができる。また、シール栓の場合には、針具と着脱可能なディスポカッターを備える保持具を用いて、まず、針具をシール栓の略中心部を貫通させ、その後、ディスポカッターでシール栓を打ち抜いて開栓することができる。このように、針具とディスポカッターにより、シール栓を保持するため、開栓時に血液検体へのシール栓の落下を防止することができる。また、ディスポカッターは血液検体ごとに交換するため、開栓時のコンタミネーションを防止することができる。
工程Aから工程Dでは、蓋により分注前容器10が密封されていたが、工程Eにおいて、初めて蓋が外されるため、血液検体の飛沫防止や検査の正確性の観点から検体同士のコンタミネーションを防止する必要がある。そのため、分注前容器10の開栓時に分注前専用ラック20から分注前容器10を持ち上げ、開栓後に持ち上げた分注前容器10を分注前専用ラック20に戻す作業が発生すると、振動により検体が飛散しコンタミネーション発生の原因となるため、分注前専用ラック20に分注前容器10を収納したまま開栓することが好ましい。
また、自動開栓装置には、コンタミネーションを防止するため、各分注前容器10の間を遮蔽する遮蔽板が設けられていることが好ましい。開栓時に当該遮蔽板により各分注前容器10を遮蔽することにより、検体同士のコンタミネーションを防止することができる。
また、血液検体は液体物であるため、目視できない飛沫物が発生する可能性もあり、この飛沫物がコンタミネーションの原因となる場合がある。そのため、血液検体の飛沫物を吸引する吸引装置が設けられていることが好ましい。
[工程F]
工程Fは、工程Eの後に、上清を段階的に複数の分注用容器30に自動的に分注する工程である。工程Fは、検査種別に応じて複数のセクションに分類されている。各セクションには、各セクションに応じた分注用ラック及び分注用ラックに収納された分注用容器や後述する連結容器が備えられている。各セクションは、例えば、複数の検査項目を一度に自動的に測定できる測定装置に供する上清を分注するセクション、一つの検査項目を自動的に測定できる測定装置に供する上清を分注するセクション、その他、検査頻度の低い少量多種の検体に関する上清を分注するセクション等に分類することができる。検査機関における検査においては、検査頻度の高い主要な検査項目と、検査頻度の低い検査項目とが存在する。検査頻度の高い検査項目としては、例えば、生化学的検査の対象となる、ALT、AST、γ-GT、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール、クレアチニン、アルブミン、尿酸、尿素窒素、カリウム、ナトリウム、CEA、AFPなどの腫瘍マーカー等が挙げられ、これらの検査は公知の自動分析装置を用いることにより、自動的に測定することができる。一方、検査頻度の低い検査項目としては、上記の自動分析装置で測定できないような、例えば、免疫血清学的検査の対象となる、H.ピロリ抗体、抗核抗体、風疹、麻疹などの各種ウイルス抗体、その他、新規の検査項目、特殊な検査方法を用いる検査項目等が挙げられる。工程Fにおける各セクションの順番は特に限定されないが、検査頻度の高い検査項目に関する検体の上清の分注数は、検査頻度の低い検査項目に関する検体の上清の分注数と比較して非常に多いことから、検査頻度の高い検査項目に関する検体の上清を分注するセクションを工程Fの上流側に設け、検査頻度の低い検査項目に関する検体の上清を分注するセクションを工程Fの下流側に設けることが、総合的な効率性及びサービスを向上させる観点で好ましい。
このように、工程Fは、検査種別に応じて複数のセクションに分類されており、発注に従って各セクションで分注され、一つの検体に関して複数の分注が行われるため、セクションごとに吸引を行うとすると、そのたびにロスが発生することとなる。そのため、あらかじめ必要な総分注量を計算し、採取装置による上清の採取を一度に行い、吸引した上清を段階的に複数の分注用容器30に自動的に分注することが好ましい。
複数のセクションのうち少なくとも一つのセクションでは、検査項目ごとに複数の分注用レーンを有しており、いずれかの分注用レーンにおいて、複数の第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30の全てに分注が完了した場合に、工程Fを止めないように機能する振り分け用レーンを、分注用レーンとは別に有する。このように、振り分け用レーンを設けることにより、継続的に工程Fを進めることができる。
以下、図3を用いて、例示的に、振り分け用レーンを設けたセクションについて説明する。例えば、当該セクションにおいて、第一の検査項目A、第二の検査項目B、第三の検査項目Cの3種類の検査に関する上清を分注する場合、第一の検査項目Aに関する上清は第一の分注用レーンAに、第二の検査項目Bに関する上清は第二の分注用レーンBに、第三の検査項目Cに関する上清は第三の分注用レーンCに、それぞれ配置された第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30に分注する。第一の分注用レーンA及び第二の分注用レーンBにおいて、準備した複数の第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30の全てに分注が完了した場合に、振り分け用レーンに準備した分注用容器30に分注される態様を示している。
第一の分注用レーンA、第二の分注用レーンB及び第三の分注用レーンCには、一列からなる第一の分注用ラック31が複数列に配置され(図3では5本の分注用容器30を収納した一つの第一の分注用ラック31が10列配置された態様を示している)、複数列に配置された第一の分注用ラック31は、一つのトレイ40に収納されている。各分注用レーンにおいて、例えば、最前列の第一の分注用ラック31に収納された最も左に位置する分注用容器30に分注し、その後は順次、右隣に位置する分注用容器30に分注し、一つの第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30の全てに分注が完了したら、一つ隣の第一の分注用ラック31に収納された最も左に位置する分注用容器30に分注するというように、上記同様の操作を繰り返す。なお、各第一の分注用ラック31には、バーコードラベル等の第三の識別情報ラベルが設けられ、かつ、上記のように分注用容器30に規則的に分注されるため、検査時に第一の分注用ラック31と第一の分注用ラック31内の分注用容器30の位置情報により、検査結果と検体情報を紐づけることができる。分注時には、発注された検査項目に応じて、一つの検体から複数の分注用レーンにわたって分注してもよい。
このように分注工程が進むにつれ、いずれかの分注用レーンに準備した、複数の第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30の全てに分注が完了する。その場合、振り分け用レーンがなければ、工程Fを一度止めて、分注が完了した分注用レーンに存在する複数の第一の分注用ラック31及び当該第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30を全て回収し、新たな複数の第一の分注用ラック31及び当該第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30を配置しなければならず、作業効率が大きく低下することになるが、振り分け用レーンを設けることにより、いずれかの分注用レーンに準備した、複数の第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30の全てに分注が完了したとしても、振り分け用レーンに設けられた第一の分注用ラック31に上清を分注することができ、継続して工程Fを進めることができるため、効率性が大きく向上する。そして、振り分け用レーンで分注用容器30に分注している間に、分注が完了した分注用レーンにおける収納された第一の分注用ラック31及び当該第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30をトレイ40と一緒に回収し、新たな分注用容器30を収納した第一の分注用ラック31及びトレイ40を当該分注用レーンに準備すればよい。なお、振り分け用レーンに準備した、複数の第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30の全てに分注が完了すると、工程Fを止めて、振り分け用レーンに複数の第一の分注用ラック31及び当該第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30を回収し、新たな複数の第一の分注用ラック31及び当該第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30を配置することになるが、工程F全体における停止頻度は、振り分け用レーンを設けない場合と比較して、効果的に低減することができる。
振り分け用レーンにも、上記同様に、一列からなる第一の分注用ラック31が複数列に配置されている。例えば、第一の分注用レーンAにおいて、準備した複数の第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30の全てに分注が完了した場合には、第一の分注用レーンAで第一の検査項目Aに必要な上清を分注できないため、振り分け用レーンに準備した、複数の第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30のうち、最前列の第一の分注用ラック31に収納された最も左に位置する分注用容器30に分注し、その後、当該第一の分注用ラック31には、第一の検査項目Aに必要な上清を分注し、その後、例えば第二の分注用レーンBに準備した複数の第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30の全てに分注が完了した場合には、振り分け用レーンにおける分注されていない分注用容器30が収納された第一の分注用ラック31を手前から自動的に選択し、当該第一の分注用ラック31の最も左に位置する分注用容器30に分注する、という仕組みとなっている。つまり、振り分け用レーンに配置された一つの第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30には、全て同じ検査項目に関する上清が分注されることになる。
ここで、上記したとおり、振り分け用レーンは、工程Fで継続的に分注できるように設けたものであるため、振り分け用レーンを設けた当該セクションにおいて、分注用レーンの数、一つの第一の分注用ラック31に収納できる分注用容器30の本数、分注用レーン及び振り分け用レーンに収納できる第一の分注用ラック31の数は、工程F全体における停止頻度を効果的に低減するために重要な要素となる。また、振り分け用レーンに存在する複数の第一の分注用ラック31及び当該第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30は、後述するように、別の仕分け装置を用いて仕分けするため、仕分け装置への持ち運び性等の作業性も重要となる。そのため、分注用レーンの数は、2以上5以下であり、一つの第一の分注用ラック31に収納できる分注用容器30の本数は、5本以上20本以下であり、分注用レーン及び振り分け用レーンに収納できる第一の分注用ラック31の数は、10個以上30個以下であることが、好ましい。このように、分注用レーンの数、一つの第一の分注用ラック31に収納できる分注用容器30の本数、分注用レーン及び振り分け用レーンに収納できる第一の分注用ラック31の数を調整することにより、工程F全体における停止頻度をより効果的に低減することができ、また仕分け装置への持ち運び性等の作業性も良好となる。さらに、工程Fにおける効率を向上させるために、分注用レーンの数は、3以上4以下であり、一つの第一の分注用ラック31に収納できる分注用容器30の本数は、5本以上10本以下であり、分注用レーン及び振り分け用レーンに収納できる第一の分注用ラック31の数は、10個以上20個以下であることが、より好ましい。
また、振り分け用レーンが備えられたセクションを除く、少なくとも一つのセクションには、手で分断可能な連結容器及び当該連結容器が収納された第二の分注用ラックを備えていることが好ましい。ここで、上記した検査頻度の低い検査項目についても、検査頻度は低いものの、具体的な検査項目の種類は100から400項目程度に及ぶ。これらの検査頻度の低い検査項目に関する上清については、単純に検査項目ごとに自動的に分注することは、自動分注装置の仕様及び工程Fの作業効率的な観点から極めて困難である。そのために、工程Fの自動分注工程において、検査頻度の低い検査項目に関する検体の上清を連結容器に分注し、その後、後述する工程Gにおいて、当該連結容器を手で分断し、更に詳細な検査項目に応じて分断した各チューブを仕分けすることが好ましい。
連結容器の素材としては特に限定されないが、コストの低いプラスチック製であることが好ましい。連結容器は、手で分断可能であることを要し、手でチューブに分断する際の作業性の観点から、連結容器は、一列から構成されることが好ましく、一列あたりのチューブの数は、5本以上10本以下であることが好ましい。また、第二の分注用ラックに収納できるチューブの数は、30本以上100本以下であることが好ましい。
上記のとおり、検査頻度の低い検査項目について、具体的な検査項目の種類は100から400程度に及ぶため、連結容器ごとに各検査項目に応じた上清を分注することは極めて困難である。そのため、検査内容に応じて内部的にそれらを分類(例えばアルファベットのaから始まる10から20分類程度)し、まずは、この分類ごとに連結容器に分注する。つまり、例えば、始めに分類aの血液検体に関する上清を連結容器に分注した場合には、その後は、その連結容器には、その分類aに係る血液検体に関する上清のみを分注することになる。そして、後述する工程Gにおいて、更に詳細に検査項目ごとに仕分けし、各血液検体に関する上清は検査に供される。これらの、内部的な分類は、検査方法、分析機器、検査名称、検査頻度を考慮して、適宜分類することができる。
また、連結容器を収納する第二の分注用ラックには、ICタグ及びリライトラベルが備えられている。当該ICタグを、工程Fにおける自動分注時に読み込むことにより、第二の分注用ラックに収納された連結容器と、分注した上清の分類及び各チューブの検査項目を内部的に把握することができる。リライトラベルについては、連結容器を収納する第二の分注用ラックに上記の分類を印字するものである。各分類や検査項目の頻度は、時期によって左右されるものでもあるため、仮に、あらかじめ分類が印字された第二の分注用ラックを用意するとなると、常に多くの種類の第二の分注用ラックを多数保管しておかなければならず、第二の分注用ラックの管理や第二の分注用ラックを探す手間となっていた。リライトラベルへの分類の印字は、後述する工程Gにおいてなされるため、準備する第二の分注用ラックの種類は一つでよく、また保管する数も大幅に削減することができる。
[工程G]
工程Gは、工程Fの後に、分注された検体を検査項目ごとに仕分けする工程である。工程Fにおいて、各セクションで分注された分注用容器30は、実際の検査に供されるため、検査室や検査担当者ごとに正確に仕分けする必要がある。
工程Fにおいて、振り分け用レーンで分注された分注用容器30については、いずれの第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30がどの検査項目に該当するかどうかを、内部的にはコンピューターで把握はできているが、目視で把握することはできない。そのため、このままでは、作業者は検査項目に応じた検査室や検査担当者に正確に受け渡すことができない。よって、振り分け用レーンに存在する複数の第一の分注用ラック31及び当該第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30を、トレイ40と一緒に回収し、別の仕分け装置を用いて仕分けする。
具体的には図4に示すように、まず、上記のとおり回収した複数の第一の分注用ラック31及び当該第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30を、トレイ40とともに仕分け前レーンにセットする。その後、第一の分注用ラック31ごとに仕分け装置内のラインに切り出し、第一の分注用ラック31に付された第三の識別情報ラベルを読み取る。第三の識別情報ラベルを読み取ることにより、どの検査項目に該当する第一の分注用ラック31であるかを認識し、各仕分け用のレーンに各第一の分注用ラック31を検査項目ごとに分類することができ、その後、各検体は検査に供される。なお、図4は、第三の検査項目Cに関する上清が収容された分注用容器30が収納された第一の分注用ラック31が仕分け装置内のラインに切り出され、当該第一の分注用ラック31に付された第三の識別情報ラベルを読み取り、読み取った情報をもとに仕分け用のレーンCに分類された態様を示している。
次に、工程Fにおいて、検査頻度の低い検査項目に関する検体の上清を分注した連結容器を、手でチューブに分断し、更に詳細な検査項目に応じて分断して仕分けする作業について詳細に説明する。上記のとおり、工程Fで連結容器に分注した時点では、各検査項目まで仕分けされていないため、更に詳細に検査項目ごとに仕分けする必要がある。まず、工程Fにおいて、分注された連結容器を収納する第二の分注用ラックに備えられたICタグを専用のリライトラベル印字装置で読み取り、対応する上記の分類をリライトラベルに印字する。上記のとおり、第二の分注用ラックのリライトラベルに付された分類と、第二の分注用ラックに収納された連結容器の各チューブの位置と、各チューブに収容された検体の情報は、内部的にコンピューターで把握されている。これらの情報をもとに専用のシール装置にて連結容器の各チューブに検査項目に応じた専用のシールを貼付する。その後、仕分けの作業をする者は、連結容器を手でチューブに分断し、シールの印字を見ながら検査項目ごとに仕分け用ラック50に仕分けをする。ここで、この仕分け作業は、これまでの工程と異なり、人の手で行うものであるため、人為的なミスが起こり得る。そのため、同じ記号のシールについて、例えば、コンピューターで内部的に管理された白と黒の2つのタイプを用い、仕分け用ラック50に規則的に、例えば、図5に示すように、仕分け用ラック50に手前の左から順にチューブを入れていくと、一定の模様や文字が出てくるように、上記のシール専用装置でシールを印字することで、仮に仕分けでミスが発生したとしても、目視によりミスを把握しやすくすることができ、正確性を向上させることができる。
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
10 分注前容器
20 分注前専用ラック
21 スリット
30 分注用容器
31 第一の分注用ラック
40 トレイ
50 仕分け用ラック
X 第一の識別情報ラベル
本発明は、多量多種の血液検体を検査するための血液検体の検査前処理方法に関する。
血液検体の検査は、病院等の医療機関により患者から血液を容器に採取し、医療機関が採取した検体を検査機関に輸送し、検査機関において検査を行い、検査機関が検査結果を医療機関に報告する流れで行われるのが一般的である。したがって、登録衛生検査所などの検査機関には、様々な患者の検体が各医療機関から輸送され集合する。検査機関による検査結果は患者の健康や生命に係るものであるため、検査自体の正確性はもちろんのこと、患者と検査結果の結び付きが正確でなければならない。また、同様に、医療機関に対して、迅速な検査結果の報告が求められるため、正確性に加えて、効率性も要求される。このように、検体の検査の正確性及び効率性を向上させるためには、実際に検査する工程だけでなく、各検体を検査するために必要な分注工程、仕分け工程等の検査前工程が重要となる。そのため、これまでに検査前工程に関する処理装置や検査前処理システムについての検討がなされている。
例えば、特許文献1には、親検体容器に収容された親検体から子検体を作成する分注機構と、子検体ごとに、作成する優先度を記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された優先度に基づいて、同一の優先度を持つ子検体の作製に必要な量の親検体をまとめて吸引するよう、分注機構を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする検体分注処理装置が開示されている。さらに、当該検体分注処理装置を用いることにより、検体に対して依頼された依頼項目に基づいて分注する子検体容器ごとに優先度を持ち、その優先度に従って分注をすることにより、親検体の検体量が総分注量より不足している時にも、優先度の高い子検体を確実に作成することができ、検査結果の報告遅延のリスクを減少することができると記載されている。
また、例えば特許文献2には、検体が載るラックを投入するラック投入モジュールと、ラックで運ばれて来る検体に各種の検査前処理を行う複数の処理モジュールと、検査前処理を終えた検体を載せたラックが集められるラック収納モジュールとを有し、ラック投入モジュール、各種の処理モジュール、及びラック収納モジュールに及ぶ経路を搬送ラインで運ぶ検体検査前処理システムにおいて、立ち寄り情報に従って運ばれる検体が処理モジュールで検査前処理される検体処理時間と、立ち寄り情報に従って検体が経路を搬送ラインで運ばれる検体搬送時間と、をもとに検体の検査前処理が終了する終了予想時間を算定する算定機能を有することを特徴とする検体検査前処理システムが開示されている。さらに、当該検体検査前処理システムにより、検体を検索した時点から処理が終了するまでの所要時間を予測することで、患者の待ち時間低減と検査技師の業務効率向上を行うことができると記載されている。
また、特許文献3には、体液からなる検体をそれぞれ収容した多数の原容器に、それぞれ、検体情報を符号化した検体ナンバーを付し、当該検体ナンバーを付した原容器を無秩序に受け付けし、原容器の検体ナンバーに対応した検査指示情報に基づいて単一の検査項目(以下単一検査項目と称す)ないし複数の検査項目(以下検査項目群と称す)に対応した分注容器に必要量を分注し検査する検体検査システムにおいて、原容器を複数本ずつまとめて原容器ラックにセットするとともに、原容器ラックに付したラックナンバーと各検体対応のラック内座標とからなる分注前検体位置情報に各検体ナンバーを対応させて記憶する工程と、単一検査項目ないし検査項目群が特定された複数の分注容器を収容した分注容器ラックに対し、原容器ラック内にセットされている原容器内の検体が分注すべき検体であるか否かを、分注前検体位置情報をキーとしてラック内原容器ごとに判定し、分注すべきものについて分注容器ラック内の分注容器に自動分注機により分注するとともに、分注された分注容器をセットしている分注容器ラックナンバーと分注容器ラック内座標とからなる分注後検体位置情報に検体ナンバーを対応させて記憶する工程とを含むことを特徴とする検体自動分取分配方法が開示されている。さらに、当該検体自動分取分配方法により、検体の分注が正確かつ能率よく行えると記載されている。
特開2014−153179号公報
特開2010−107403号公報
特開平5−288754号公報
ここで、特許文献1に記載の検体分注処理装置、特許文献2に記載の検体検査前処理システム、特許文献3に記載の検体自動分取分配方法により、一定程度の効率性は向上しているものの、10万検体以上の非常に多い検体を検査する場合で、かつ、検査項目が多岐にわたる場合には、上記の検体分注処理装置や検体検査前処理システムを用いたとしても、要求される十分な効率性を得ることができなかった。また、このように多量の検体を検査するためには、患者と検査結果を正確に結びつけるための工夫が更に必要であった。したがって、本発明は以上の点の課題に鑑みてなされたものであり、多量多種の血液検体を、正確かつ効率的に検査できる、血液検体の検査前処理方法を提供することを目的とする。
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、10万検体以上の血液検体を24時間以内に検査するための血液検体の検査前処理方法において、各工程及び工程の順序を工夫するとともに、血液検体を収容する分注前容器が収納された分注前ラックにおける血液検体の位置情報を、識別情報ラベルを読み取ることにより認識し、上清の液量を分注前に把握することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
(1)本発明の第1の態様は、10万検体以上の血液検体を24時間以内に検査するための血液検体の検査前処理方法であって、第一の識別情報ラベルが付された分注前容器に収容された血液検体を、遠心分離により上清及び沈殿物に分離する工程Aと、工程Aの後に、血液検体が収容された分注前容器を分注前専用ラックに収納する工程Bと、工程Bの後に、血液検体の入荷を確認する工程Cと、工程Cの後に、前記上清の液量を測定する工程Dと、工程Dの後に、分注前容器の上面に位置する蓋を開栓する工程Eと、工程Eの後に、前記上清を段階的に複数の分注用容器に自動的に分注する工程Fと、工程Fの後に、分注された検体を検査項目ごとに仕分けする工程Gと、を有し、前記分注前専用ラックは、一列で構成され、前記分注前専用ラックには第二の識別情報ラベルが付されており、工程Cにおいて、第一の識別情報ラベル及び第二の識別情報ラベルを読み取り、コンピューターに保存された依頼情報と照合することにより、血液検体の入荷確認及び分注前専用ラック内における分注前容器の位置情報を認識し、工程Dにおいて、上清の液量を、分注前専用ラックに収納した状態で軟X線液量測定装置を用いて測定する、血液検体の検査前処理方法である。
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の血液検体の検査前処理方法であって、工程Fは、検査種別に応じて複数のセクションに分類されており、複数のセクションのうち少なくとも一つのセクションでは、検査項目ごとに複数の分注用レーンが用いられており、いずれかの分注用レーンにおける第一の分注用ラックに収納された分注用容器の全てに分注が完了した場合に、工程Fを止めないように機能する振り分け用レーンが、前記分注用レーンとは別に用いられることを特徴とするものである。
(3)本発明の第3の態様は、(2)に記載の血液検体の検査前処理方法であって、工程Fにおいて、前記振り分け用レーンが用いられるセクションを除く、少なくとも一つのセクションでは、手で分断可能な連結容器及び当該連結容器が収納された第二の分注用ラックが用いられており、検査頻度の低い検査項目に関する検体の上清を連結容器に分注し、その後、工程Gにおいて、当該連結容器を手で分断し、更に詳細な検査項目に応じて分断した各チューブを仕分けすることを特徴とするものである。
(4)本発明の第4の態様は、(3)に記載の血液検体の検査前処理方法であって、前記連結容器を収納する第二の分注用ラックが、ICタグ及びリライトラベルを備えていることを特徴とするものである。
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載の血液検体の検査前処理方法であって、前記分注前専用ラックが、軟X線を通過させるための複数のスリットを両長辺に有することを特徴とするものである。
(6)本発明の第6の態様は、(1)から(5)のいずれかに記載の血液検体の検査前処理方法であって、工程Eにおける開栓工程が、自動開栓装置により自動的に行われ、前記自動開栓装置が、血液検体のコンタミネーションを防止するための、遮蔽板及び吸引装置を備えることを特徴とするものである。
(7)本発明の第7の態様は、(1)から(6)のいずれかに記載の血液検体の検査前処理方法であって、工程Fにおいて、採取装置による上清の採取を一度に行い、吸引した上清を段階的に複数の分注用容器に自動的に分注することを特徴とするものである。
本発明の血液検体の検査前処理方法は、検査前の各工程及び各工程の順序が工夫され、血液検体を収容する容器が収納されたラックにおける血液検体の位置情報を、識別情報ラベルを読み取ることにより認識でき、また、遠心分離により得られた上清の液量を分注前に把握できるため、本発明によれば多量多種の血液検体を正確かつ効率的に検査できる。
本発明の血液検体の検査前処理方法のフローを示す図面である。
分注前専用ラックに分注前容器が収納された態様及び分注前専用ラックの態様を示す図面である。
工程Fの一つのセクションにおいて、複数の分注用レーンと振り分け用レーンを有する態様を示す図面である。
振り分け用レーンに存在する複数の分注用ラック及び当該分注用ラックに収納された分注用容器を、工程Gにおいて検査項目ごとに仕分けする態様を示す図面である。
工程Gにおいて仕分けを行った後の態様を示す図面である。
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明の実施形態の説明の全体を通して、同じ要素には同じ符号を付している。
<血液検体の検査前処理方法>
本発明は、血液検体の検査前処理システムの検査前処理方法に関し、10万検体以上の血液検体を24時間以内に検査するためになされたものであり、特に多量多種の血液検体を検査する検査機関において有効である。本発明によれば、10万検体もの血液検体を24時間以内に検査することができ、迅速かつ正確な対応が求められる医療の分野において、サービスの向上を図ることができる。
本発明の血液検体の検査前処理方法は、図1に示すように、工程Aから工程Gを有し、各工程には、後述するように、正確性及び効率性を向上する観点から各工夫がなされている。以下、各工程について詳細に説明する。
なお、図2(a)に示すように、分注前の血液検体が収容された分注前容器10には、患者の情報を認識するための第一の識別情報ラベルXが付されている。第一の識別情報ラベルXは、バーコードやQRコード(登録商標)など、読み取ることで情報を認識できるものであればよい。また、血液検体が収容される分注前容器10の材質としては、プラスチック製、ガラス製等を用いることができ、従来公知の技術によりあらかじめ血液分離剤が分注前容器10の底に注入されていてもよい。
ここで、第一の識別情報ラベルXは、患者の情報と血液検体を結びつけるための重要なものであり、かつ、多量に消費するものであることから、剥がれづらく、低コストで扱いやすいものであることが好ましい。よって、第一の識別情報ラベルXの材質は、特に限定はされないが、紙製であることが好ましい。また、第一の識別情報ラベルXが分注前容器10から剥がれることを防ぐために、第一の識別情報ラベルXが、当該第一の識別情報ラベルXの幅方向両端部同士が結合するように、分注前容器10の全周に付されることが好ましい。なお、後述する第二の識別情報ラベル及び第三の識別情報ラベルについても、第一の情報ラベルと同様に、紙製であることが好ましい。
[工程A]
工程Aは、血液検体を遠心分離により上清及び沈殿物に分離する工程である。遠心分離は、検体を遠心分離用ラックに収納し、従来公知の遠心分離機を用いて行うことができる。遠心分離用ラックとしては、特に限定されないが、物理的耐性の強い硬質プラスチック製であることが好ましい。なお、上清とは、本明細書において、血漿及び血清を含む概念として用いている。
[工程B]
工程Bは、工程Aの後に、血液検体が収容された分注前容器10を分注前専用ラック20に収納する工程である。図2(a)は、分注前容器10が分注前専用ラック20に収納された態様を示している。また、本発明に用いる分注前専用ラック20は、複数列ではなく、一列で構成されるものである。分注前専用ラック20が複数列からなる場合には、後述するように、工程C、工程D及び工程Eにおいて、処理効率や安全性が低下するため、本発明において、分注前専用ラック20は一列である必要がある。また、分注前専用ラック20が一列からなるため、転倒防止のために、分注前専用ラック20には、特許第4778367号公報に記載される可動片を底面に備えていることが好ましい。分注前専用ラック20の材質は特に限定されず、プラスチック製など従来公知の材質を用いることができる。また、分注前専用ラック20は、後述するように、上清の液量を、軟X線液量測定装置を用いて測定するために、軟X線を照射する部分に、図2(b)に示すように、軟X線を通過するための複数のスリット21を分注前専用ラック20の両長辺に有することが好ましい。
ところで、後述するように、血液検体を収容する分注前容器10の種類は、一種類に統一されていないため、分注前容器10及び当該分注前容器10に応じた蓋ごとに分注前専用ラック20に仕分けながら分注前容器10を分注前専用ラック20に収納する。仕分けが完了した分注前専用ラック20は、順次、分注前容器10の種類に応じて複数の分注前専用ラック20を収納できる収納ケースに移される。
[工程C]
工程Cは、工程Bの後に、血液検体の入荷を確認する工程である。工程Cの前工程である工程A及び工程Bの段階では、どの検体が実際に検査機関に入荷されたかどうかを把握できていないため、工程Cにおいて、コンピューターに保存された依頼情報と照合することにより血液検体の入荷の確認が行われる。具体的には、工程Cにおいて、血液検体が収容された各分注前容器10に付された第一の識別情報ラベルX及び当該分注前容器10が収納された分注前専用ラック20に付された第二の識別情報ラベルを読み取ることにより、血液検体の入荷確認及び分注前専用ラック20における分注前容器10の位置情報を認識することができる。なお、第一の識別情報ラベルX及び第二の識別情報ラベルの読み取りには、第一の識別情報ラベルX及び第二の識別情報ラベルのタイプに応じて、バーコードリーダーやQRコード(登録商標)リーダー等の従来公知の機器を用いることができる。
具体的には、工程Bにおいて仕分けが完了した分注前専用ラック20は、分注前容器10の種類に応じて複数の分注前専用ラック20を収納できる収納ケースに移されており、収納ケースを入荷確認装置に投入し、一つずつ分注前専用ラック20を切り出し、その後、分注前容器10に付された第一の識別情報ラベルXを正確に読み取るために、分注前専用ラック20に収納された分注前容器10を上から押さえて回転させながら読み取る。また、分注前専用ラック20に付された第二の識別情報ラベルは、所定の方向から読み取る。このように、工程Cにおいて、血液検体の入荷確認及び分注前専用ラック20内における分注前容器10の位置情報を認識することにより、多量の検体を検査する検査機関における検査の正確性を維持することができる。また、入荷確認は、検体の情報だけでなく、分注前専用ラック20と、分注前専用ラック20に収納された検体の位置と、を紐づけるものであるため、本発明では工程Dの前に、入荷確認工程である工程Cを設けている。
ところで、血液検体を収容する分注前容器10の種類は、一種類に統一されているわけではなく、大きさや材質の異なる数種類が存在し、検査機関には各種の分注前容器10に収容された血液検体が入荷されることが一般的である。また、分注前容器10を密封する蓋についても、分注前容器10に応じたゴム栓、プラスチック栓等、が用いられている。分注前容器10の大きさや蓋の種類は、例えば、工程Eの開栓工程において用いる機械の選択、工程Fにおける吸引時の深さや吸引速度にも影響する。よって、あらかじめコンピューターに分注前容器10及び蓋に関する詳細な情報を入力し、工程Cにおいて、分注前専用ラック20が入荷確認装置に投入される前に、第一の識別情報ラベルX及び第二の識別情報ラベルを認識する各検体の分注前容器10及び蓋をあらかじめ選択し、コンピューターに認識させる必要がある。分注前容器10及び蓋の認識は分注前専用ラック20ごとに行うため、一つの分注前専用ラック20には、同一種の蓋で密封された同一種の分注前容器10を収納することになる。
また、第一の識別情報ラベルXの読み取りに際し、バーコードリーダー等で読み取る必要があるが、分注前専用ラック20が複数列である場合には、列ごとに、分注前容器10を高さ方向に持ち上げなければ第一の識別情報ラベルXを読み取ることができない。その場合、分注前容器10を持ち上げるための時間がロスとなり、処理効率が低下することになる。そのため、本発明では、効率性を向上させるために、一列で構成された分注前専用ラック20を用いている。分注前専用ラック20に収納できる分注前容器10の本数は、作業性及び管理性の観点から、5本以上20本以下であることが好ましく、10本以上15本以下であることがより好ましい。
[工程D]
工程Dは、工程Cの後に、上清の液量を測定する工程である。工程Dでは、一つの分注前専用ラック20に収納された全ての検体に関する上清の液量を、分注前専用ラック20に収納した状態で軟X線液量測定装置を用いて測定する。工程Dにおいて、上清の液量を測定することにより、各検体の液量を分注前に事前に把握することができる。ここで、各検体に必要な検査項目はコンピューターにあらかじめ入力されており、検査に要する上清の液量を把握できる仕組みとなっている。
従来、あらかじめ分注前に血液検体中の上清の液量を把握できない場合には、分注時に初めて必要量があるかどうか把握でき、不足している場合にはエラーとなるだけでなく、分注器具(例えばチップ)に付着した上清がロスとなり、元々不足していたうえに、更に不足するという問題があった。そこで、工程Dにおいて、上清の液量を測定することにより、上清の液量が、検査に要求される量を満たしていない場合には、後工程に進めずに一度保持して医療機関に報告する、優先度の高い検査を進める等、状況に応じた対応を選択することができ、結果として、効率性の向上を図ることができ、医療機関及び患者に対するサービスを向上させることができる。また、分注前容器10を密封する蓋を外さなくても、血液検体中の上清の液量を測定することができるため、医療機関や患者からの信頼性を向上させることができる。そのため、本発明では、開栓工程である工程Eや自動分注工程である工程Fの前に、上清の液量を測定する工程Dを設けている。また、工程Dにおいて、上清の液量を測定した結果、不足している検体があった場合には、当該検体が収容された分注前容器10を収納した分注前専用ラック20は、一時的に分注前専用ラック20を保留するレーンに自動的に移動し、待機している別の分注前専用ラック20に収納された検体に関する上清の液量を測定する仕組みとすることで、時間的なロスを低減することができる。
また、多量の検査を行う検査機関においては、発注された検査に加えて、検査機関に入荷後、あるいは当初発注された検査の終了後に、追加検査の要望を相当数受ける場合が多い。そのような場合に、追加検査をするための上清が足りているかどうかを確認するために、多数存在する分注前容器10の中から該当する分注前容器10を見つけ出し、上清の液量を目視で確認することを要すると、効率性が大きく低下し、医療機関及び患者に対するサービスを低下させることにつながる。工程Dにおいて、分注前に上清の液量を把握することにより、追加検査の要望があったとしても、追加検査を行うために上清が足りているかどうかを即時に判断でき、医療機関に対して速やかに応答することができる。
ところで、分注前の上清の液量を測定する方法としては、従来より、可視光、レーザー、画像処理技術等が用いられてきた。しかしながら、上記のとおり、分注前容器10には、第一の識別情報ラベルXが付されており、従来の方法では、上記の可視光等の照射方向に第一の識別情報ラベルXが位置すると、当該第一の識別情報ラベルXが妨げとなり上清の液量を正確に測定できなかった。そのため、工程Dでは、上清の液量を、軟X線液量測定装置を用いて測定する。吸収波長が0.1nm以上50nm以下である軟X線を照射することにより、第一の識別情報ラベルXが分注前容器10に付されていたとしても、正確に上清の液量を測定することができる。
ここで、軟X線液量測定装置による上清の測定において、軟X線の進行方向に複数の分注前容器10が存在すると、上清の液量を正確に測定することができない。そのため、分注前専用ラック20が複数列からなる場合には、上清の液量を測定するために、列ごとに、分注前容器10を高さ方向に持ち上げる必要があり、その場合、持ち上げる時間がロスとなり、処理効率が低下することになる。そのため、本発明では効率性を向上させるために、分注前専用ラック20として、一列からなるものを用い、一つの分注前専用ラック20に収納された全ての検体に関する上清の液量を、分注前専用ラック20に収納した状態で軟X線液量測定装置を用いて測定する。
軟X線液量測定装置による上清の液量の測定には、軟X線を分注前容器10に通過させる必要がある。そのため、分注前専用ラック20に収納した状態で上清の液量を測定するために、分注前専用ラック20は、図2(b)に示すように、軟X線を通過させるための複数のスリット21を、分注前専用ラック20の両長辺に有することが好ましい。
[工程E]
工程Eは、工程Dの後に、分注前容器10の上面に位置する蓋を開栓する工程である。本発明の血液検体の検査前処理方法は、10万検体以上の血液検体を24時間以内に検査することを対象としているため、手作業による開栓ではなく、自動開栓装置により自動的に行われることが好ましい。また、各分注前容器10の蓋のタイプ(ゴム栓、プラスチック栓、シール栓等)は、あらかじめ工程Cにより認識されているため、蓋のタイプに適した装置に振り分けられる。
なお、自動開栓装置による開栓は、分注前専用ラック20ごとに行われ、一度の開栓作業により当該分注前専用ラック20に収納された分注前容器10の蓋を開栓する。なお、開栓方法は蓋の種類によって異なる。開栓の方法は特に限定されないが、例えばゴム栓やプラスチック栓の場合には、硬質の樹脂(例えばポリカーボネート樹脂)によりゴム栓の上端を把持し上下動させることにより開栓することができる。また、シール栓の場合には、針具と着脱可能なディスポカッターを備える保持具を用いて、まず、針具をシール栓の略中心部を貫通させ、その後、ディスポカッターでシール栓を打ち抜いて開栓することができる。このように、針具とディスポカッターにより、シール栓を保持するため、開栓時に血液検体へのシール栓の落下を防止することができる。また、ディスポカッターは血液検体ごとに交換するため、開栓時のコンタミネーションを防止することができる。
工程Aから工程Dでは、蓋により分注前容器10が密封されていたが、工程Eにおいて、初めて蓋が外されるため、血液検体の飛沫防止や検査の正確性の観点から検体同士のコンタミネーションを防止する必要がある。そのため、分注前容器10の開栓時に分注前専用ラック20から分注前容器10を持ち上げ、開栓後に持ち上げた分注前容器10を分注前専用ラック20に戻す作業が発生すると、振動により検体が飛散しコンタミネーション発生の原因となるため、分注前専用ラック20に分注前容器10を収納したまま開栓することが好ましい。
また、自動開栓装置には、コンタミネーションを防止するため、各分注前容器10の間を遮蔽する遮蔽板が設けられていることが好ましい。開栓時に当該遮蔽板により各分注前容器10を遮蔽することにより、検体同士のコンタミネーションを防止することができる。
また、血液検体は液体物であるため、目視できない飛沫物が発生する可能性もあり、この飛沫物がコンタミネーションの原因となる場合がある。そのため、血液検体の飛沫物を吸引する吸引装置が設けられていることが好ましい。
[工程F]
工程Fは、工程Eの後に、上清を段階的に複数の分注用容器30に自動的に分注する工程である。工程Fは、検査種別に応じて複数のセクションに分類されている。各セクションには、各セクションに応じた分注用ラック及び分注用ラックに収納された分注用容器や後述する連結容器が備えられている。各セクションは、例えば、複数の検査項目を一度に自動的に測定できる測定装置に供する上清を分注するセクション、一つの検査項目を自動的に測定できる測定装置に供する上清を分注するセクション、その他、検査頻度の低い少量多種の検体に関する上清を分注するセクション等に分類することができる。検査機関における検査においては、検査頻度の高い主要な検査項目と、検査頻度の低い検査項目とが存在する。検査頻度の高い検査項目としては、例えば、生化学的検査の対象となる、ALT、AST、γ-GT、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール、クレアチニン、アルブミン、尿酸、尿素窒素、カリウム、ナトリウム、CEA、AFPなどの腫瘍マーカー等が挙げられ、これらの検査は公知の自動分析装置を用いることにより、自動的に測定することができる。一方、検査頻度の低い検査項目としては、上記の自動分析装置で測定できないような、例えば、免疫血清学的検査の対象となる、H.ピロリ抗体、抗核抗体、風疹、麻疹などの各種ウイルス抗体、その他、新規の検査項目、特殊な検査方法を用いる検査項目等が挙げられる。工程Fにおける各セクションの順番は特に限定されないが、検査頻度の高い検査項目に関する検体の上清の分注数は、検査頻度の低い検査項目に関する検体の上清の分注数と比較して非常に多いことから、検査頻度の高い検査項目に関する検体の上清を分注するセクションを工程Fの上流側に設け、検査頻度の低い検査項目に関する検体の上清を分注するセクションを工程Fの下流側に設けることが、総合的な効率性及びサービスを向上させる観点で好ましい。
このように、工程Fは、検査種別に応じて複数のセクションに分類されており、発注に従って各セクションで分注され、一つの検体に関して複数の分注が行われるため、セクションごとに吸引を行うとすると、そのたびにロスが発生することとなる。そのため、あらかじめ必要な総分注量を計算し、採取装置による上清の採取を一度に行い、吸引した上清を段階的に複数の分注用容器30に自動的に分注することが好ましい。
複数のセクションのうち少なくとも一つのセクションでは、検査項目ごとに複数の分注用レーンを有しており、いずれかの分注用レーンにおいて、複数の第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30の全てに分注が完了した場合に、工程Fを止めないように機能する振り分け用レーンを、分注用レーンとは別に有する。このように、振り分け用レーンを設けることにより、継続的に工程Fを進めることができる。
以下、図3を用いて、例示的に、振り分け用レーンを設けたセクションについて説明する。例えば、当該セクションにおいて、第一の検査項目A、第二の検査項目B、第三の検査項目Cの3種類の検査に関する上清を分注する場合、第一の検査項目Aに関する上清は第一の分注用レーンAに、第二の検査項目Bに関する上清は第二の分注用レーンBに、第三の検査項目Cに関する上清は第三の分注用レーンCに、それぞれ配置された第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30に分注する。第一の分注用レーンA及び第二の分注用レーンBにおいて、準備した複数の第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30の全てに分注が完了した場合に、振り分け用レーンに準備した分注用容器30に分注される態様を示している。
第一の分注用レーンA、第二の分注用レーンB及び第三の分注用レーンCには、一列からなる第一の分注用ラック31が複数列に配置され(図3では5本の分注用容器30を収納した一つの第一の分注用ラック31が10列配置された態様を示している)、複数列に配置された第一の分注用ラック31は、一つのトレイ40に収納されている。各分注用レーンにおいて、例えば、最前列の第一の分注用ラック31に収納された最も左に位置する分注用容器30に分注し、その後は順次、右隣に位置する分注用容器30に分注し、一つの第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30の全てに分注が完了したら、一つ隣の第一の分注用ラック31に収納された最も左に位置する分注用容器30に分注するというように、上記同様の操作を繰り返す。なお、各第一の分注用ラック31には、バーコードラベル等の第三の識別情報ラベルが設けられ、かつ、上記のように分注用容器30に規則的に分注されるため、検査時に第一の分注用ラック31と第一の分注用ラック31内の分注用容器30の位置情報により、検査結果と検体情報を紐づけることができる。分注時には、発注された検査項目に応じて、一つの検体から複数の分注用レーンにわたって分注してもよい。
このように分注工程が進むにつれ、いずれかの分注用レーンに準備した、複数の第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30の全てに分注が完了する。その場合、振り分け用レーンがなければ、工程Fを一度止めて、分注が完了した分注用レーンに存在する複数の第一の分注用ラック31及び当該第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30を全て回収し、新たな複数の第一の分注用ラック31及び当該第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30を配置しなければならず、作業効率が大きく低下することになるが、振り分け用レーンを設けることにより、いずれかの分注用レーンに準備した、複数の第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30の全てに分注が完了したとしても、振り分け用レーンに設けられた第一の分注用ラック31に上清を分注することができ、継続して工程Fを進めることができるため、効率性が大きく向上する。そして、振り分け用レーンで分注用容器30に分注している間に、分注が完了した分注用レーンにおける収納された第一の分注用ラック31及び当該第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30をトレイ40と一緒に回収し、新たな分注用容器30を収納した第一の分注用ラック31及びトレイ40を当該分注用レーンに準備すればよい。なお、振り分け用レーンに準備した、複数の第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30の全てに分注が完了すると、工程Fを止めて、振り分け用レーンに複数の第一の分注用ラック31及び当該第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30を回収し、新たな複数の第一の分注用ラック31及び当該第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30を配置することになるが、工程F全体における停止頻度は、振り分け用レーンを設けない場合と比較して、効果的に低減することができる。
振り分け用レーンにも、上記同様に、一列からなる第一の分注用ラック31が複数列に配置されている。例えば、第一の分注用レーンAにおいて、準備した複数の第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30の全てに分注が完了した場合には、第一の分注用レーンAで第一の検査項目Aに必要な上清を分注できないため、振り分け用レーンに準備した、複数の第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30のうち、最前列の第一の分注用ラック31に収納された最も左に位置する分注用容器30に分注し、その後、当該第一の分注用ラック31には、第一の検査項目Aに必要な上清を分注し、その後、例えば第二の分注用レーンBに準備した複数の第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30の全てに分注が完了した場合には、振り分け用レーンにおける分注されていない分注用容器30が収納された第一の分注用ラック31を手前から自動的に選択し、当該第一の分注用ラック31の最も左に位置する分注用容器30に分注する、という仕組みとなっている。つまり、振り分け用レーンに配置された一つの第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30には、全て同じ検査項目に関する上清が分注されることになる。
ここで、上記したとおり、振り分け用レーンは、工程Fで継続的に分注できるように設けたものであるため、振り分け用レーンを設けた当該セクションにおいて、分注用レーンの数、一つの第一の分注用ラック31に収納できる分注用容器30の本数、分注用レーン及び振り分け用レーンに収納できる第一の分注用ラック31の数は、工程F全体における停止頻度を効果的に低減するために重要な要素となる。また、振り分け用レーンに存在する複数の第一の分注用ラック31及び当該第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30は、後述するように、別の仕分け装置を用いて仕分けするため、仕分け装置への持ち運び性等の作業性も重要となる。そのため、分注用レーンの数は、2以上5以下であり、一つの第一の分注用ラック31に収納できる分注用容器30の本数は、5本以上20本以下であり、分注用レーン及び振り分け用レーンに収納できる第一の分注用ラック31の数は、10個以上30個以下であることが、好ましい。このように、分注用レーンの数、一つの第一の分注用ラック31に収納できる分注用容器30の本数、分注用レーン及び振り分け用レーンに収納できる第一の分注用ラック31の数を調整することにより、工程F全体における停止頻度をより効果的に低減することができ、また仕分け装置への持ち運び性等の作業性も良好となる。さらに、工程Fにおける効率を向上させるために、分注用レーンの数は、3以上4以下であり、一つの第一の分注用ラック31に収納できる分注用容器30の本数は、5本以上10本以下であり、分注用レーン及び振り分け用レーンに収納できる第一の分注用ラック31の数は、10個以上20個以下であることが、より好ましい。
また、振り分け用レーンが備えられたセクションを除く、少なくとも一つのセクションには、手で分断可能な連結容器及び当該連結容器が収納された第二の分注用ラックを備えていることが好ましい。ここで、上記した検査頻度の低い検査項目についても、検査頻度は低いものの、具体的な検査項目の種類は100から400項目程度に及ぶ。これらの検査頻度の低い検査項目に関する上清については、単純に検査項目ごとに自動的に分注することは、自動分注装置の仕様及び工程Fの作業効率的な観点から極めて困難である。そのために、工程Fの自動分注工程において、検査頻度の低い検査項目に関する検体の上清を連結容器に分注し、その後、後述する工程Gにおいて、当該連結容器を手で分断し、更に詳細な検査項目に応じて分断した各チューブを仕分けすることが好ましい。
連結容器の素材としては特に限定されないが、コストの低いプラスチック製であることが好ましい。連結容器は、手で分断可能であることを要し、手でチューブに分断する際の作業性の観点から、連結容器は、一列から構成されることが好ましく、一列あたりのチューブの数は、5本以上10本以下であることが好ましい。また、第二の分注用ラックに収納できるチューブの数は、30本以上100本以下であることが好ましい。
上記のとおり、検査頻度の低い検査項目について、具体的な検査項目の種類は100から400程度に及ぶため、連結容器ごとに各検査項目に応じた上清を分注することは極めて困難である。そのため、検査内容に応じて内部的にそれらを分類(例えばアルファベットのaから始まる10から20分類程度)し、まずは、この分類ごとに連結容器に分注する。つまり、例えば、始めに分類aの血液検体に関する上清を連結容器に分注した場合には、その後は、その連結容器には、その分類aに係る血液検体に関する上清のみを分注することになる。そして、後述する工程Gにおいて、更に詳細に検査項目ごとに仕分けし、各血液検体に関する上清は検査に供される。これらの、内部的な分類は、検査方法、分析機器、検査名称、検査頻度を考慮して、適宜分類することができる。
また、連結容器を収納する第二の分注用ラックには、ICタグ及びリライトラベルが備えられている。当該ICタグを、工程Fにおける自動分注時に読み込むことにより、第二の分注用ラックに収納された連結容器と、分注した上清の分類及び各チューブの検査項目を内部的に把握することができる。リライトラベルについては、連結容器を収納する第二の分注用ラックに上記の分類を印字するものである。各分類や検査項目の頻度は、時期によって左右されるものでもあるため、仮に、あらかじめ分類が印字された第二の分注用ラックを用意するとなると、常に多くの種類の第二の分注用ラックを多数保管しておかなければならず、第二の分注用ラックの管理や第二の分注用ラックを探す手間となっていた。リライトラベルへの分類の印字は、後述する工程Gにおいてなされるため、準備する第二の分注用ラックの種類は一つでよく、また保管する数も大幅に削減することができる。
[工程G]
工程Gは、工程Fの後に、分注された検体を検査項目ごとに仕分けする工程である。工程Fにおいて、各セクションで分注された分注用容器30は、実際の検査に供されるため、検査室や検査担当者ごとに正確に仕分けする必要がある。
工程Fにおいて、振り分け用レーンで分注された分注用容器30については、いずれの第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30がどの検査項目に該当するかどうかを、内部的にはコンピューターで把握はできているが、目視で把握することはできない。そのため、このままでは、作業者は検査項目に応じた検査室や検査担当者に正確に受け渡すことができない。よって、振り分け用レーンに存在する複数の第一の分注用ラック31及び当該第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30を、トレイ40と一緒に回収し、別の仕分け装置を用いて仕分けする。
具体的には図4に示すように、まず、上記のとおり回収した複数の第一の分注用ラック31及び当該第一の分注用ラック31に収納された分注用容器30を、トレイ40とともに仕分け前レーンにセットする。その後、第一の分注用ラック31ごとに仕分け装置内のラインに切り出し、第一の分注用ラック31に付された第三の識別情報ラベルを読み取る。第三の識別情報ラベルを読み取ることにより、どの検査項目に該当する第一の分注用ラック31であるかを認識し、各仕分け用のレーンに各第一の分注用ラック31を検査項目ごとに分類することができ、その後、各検体は検査に供される。なお、図4は、第三の検査項目Cに関する上清が収容された分注用容器30が収納された第一の分注用ラック31が仕分け装置内のラインに切り出され、当該第一の分注用ラック31に付された第三の識別情報ラベルを読み取り、読み取った情報をもとに仕分け用のレーンCに分類された態様を示している。
次に、工程Fにおいて、検査頻度の低い検査項目に関する検体の上清を分注した連結容器を、手でチューブに分断し、更に詳細な検査項目に応じて分断して仕分けする作業について詳細に説明する。上記のとおり、工程Fで連結容器に分注した時点では、各検査項目まで仕分けされていないため、更に詳細に検査項目ごとに仕分けする必要がある。まず、工程Fにおいて、分注された連結容器を収納する第二の分注用ラックに備えられたICタグを専用のリライトラベル印字装置で読み取り、対応する上記の分類をリライトラベルに印字する。上記のとおり、第二の分注用ラックのリライトラベルに付された分類と、第二の分注用ラックに収納された連結容器の各チューブの位置と、各チューブに収容された検体の情報は、内部的にコンピューターで把握されている。これらの情報をもとに専用のシール装置にて連結容器の各チューブに検査項目に応じた専用のシールを貼付する。その後、仕分けの作業をする者は、連結容器を手でチューブに分断し、シールの印字を見ながら検査項目ごとに仕分け用ラック50に仕分けをする。ここで、この仕分け作業は、これまでの工程と異なり、人の手で行うものであるため、人為的なミスが起こり得る。そのため、同じ記号のシールについて、例えば、コンピューターで内部的に管理された白と黒の2つのタイプを用い、仕分け用ラック50に規則的に、例えば、図5に示すように、仕分け用ラック50に手前の左から順にチューブを入れていくと、一定の模様や文字が出てくるように、上記のシール専用装置でシールを印字することで、仮に仕分けでミスが発生したとしても、目視によりミスを把握しやすくすることができ、正確性を向上させることができる。
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
10 分注前容器
20 分注前専用ラック
21 スリット
30 分注用容器
31 第一の分注用ラック
40 トレイ
50 仕分け用ラック
X 第一の識別情報ラベル