以下、本発明の実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各図に適宜示される矢印UPを液滴吐出装置の一例としてのインクジェット記録装置10の上方向とする。また、以下において、記録媒体の一例としての記録用紙Pの搬送方向を単に「搬送方向」と言い、その搬送方向上流側及び搬送方向下流側を、それぞれ単に「上流側」、「下流側」と言う場合がある。
図1に示されるように、インクジェット記録装置10は、記録用紙Pが収容される給紙部12と、給紙部12から繰り出された記録用紙Pに画像を記録する画像記録部14と、画像記録部14へ記録用紙Pを搬送する搬送手段16と、画像記録部14によって画像が記録された記録用紙Pを収容する排紙部18と、を有している。
画像記録部14は、液滴吐出ヘッドの一例としてのインクジェット記録ヘッド20を有している。インクジェット記録ヘッド20は、複数のノズル(図示省略)が形成されたノズル面21(図5参照)を有しており、そのノズル面21は、インクジェット記録装置10での画像記録が想定される記録用紙Pの最大幅と同程度か、又はそれ以上の記録可能領域を有している。
また、インクジェット記録ヘッド20は、記録用紙Pの搬送方向に対して、その上流側からイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に並設されており、サーマル方式や圧電方式等の公知の手段によって、インク滴(液滴)が吐出されるように構成されている。
なお、インクとしては、水性インク、油性インク、溶剤系インク等の各種インクが使用可能である。また、インクジェット記録装置10には、各インクジェット記録ヘッド20Y、20M、20C、20Kにインクを供給するインクタンク22Y、22M、22C、22Kが配設されている。
一方、給紙部12に収容されている複数枚の記録用紙Pは、ピックアップローラー24によって1枚ずつ取り出されるように構成されており、搬送ローラー対25によって画像記録部14へ搬送されるように構成されている。
搬送手段16は、記録用紙Pの印刷面をインクジェット記録ヘッド20のノズル面21に対して予め決められた間隔(例えば1mm程度)で対面させるための搬送ベルト30を有している。搬送ベルト30は、下流側に配置された駆動ローラー26と、上流側に配置された従動ローラー28とに張架されて、図示の矢印A方向に循環駆動(回転)するように構成されている。
また、従動ローラー28の上部には、搬送ベルト30の表面側から、その搬送ベルト30に従動する帯電ローラー32が配設されている。この帯電ローラー32によって搬送ベルト30が帯電される(電荷が与えられる)ことにより、記録用紙Pが搬送ベルト30に静電吸着されて搬送される構成になっている。
なお、搬送ベルト30は、記録用紙Pを静電吸着して保持する構成とされるものに限定されるものではなく、記録用紙Pとの摩擦や記録用紙Pを吸引又は粘着するなどの非静電的吸着手段によって保持する構成とされていてもよい。また、搬送ベルト30の下流側には、複数の搬送ローラー対35と複数の搬送ローラー対38とが配設されている。
また、搬送ベルト30の下方には、反転部34が設けられている。したがって、両面印刷するときには、搬送ローラー対35によって搬送された記録用紙Pが、反転部34の複数の搬送ローラー対36によって更に搬送され、再度インクジェット記録ヘッド20へ送られるようになっている。そして、画像が記録された記録用紙Pは、搬送ベルト30から剥離され、搬送ローラー対35及び搬送ローラー対38によって搬送されて、排紙部18へ排出される構成になっている。
なお、このインクジェット記録装置10には、画像信号に応じてインク滴の吐出タイミングと使用するノズルを決定し、そのノズルに駆動信号を印加するインクジェット記録ヘッド20のヘッド制御部(図示省略)と、インクジェット記録装置10全体の動作を制御する制御部の一例としてのシステム制御部23と、が備えられている。
<第1実施形態>
以上のような構成とされたインクジェット記録装置10において、次にインクジェット記録ヘッド20のノズル面21を清掃する第1実施形態に係るノズル面払拭装置50について説明する。
図2に示されるように、インクジェット記録ヘッド20は、ラック・ピニオンやスライドガイド等の公知の移動機構により、その長手方向(記録用紙Pの幅方向)に移動可能に構成されている。より具体的には、インクジェット記録ヘッド20は、画像記録部14(搬送手段16上)から退避可能になっており、画像記録部14の隣に配置されたメンテナンス部40へ移動可能に構成されている。
したがって、以下においては、インクジェット記録ヘッド20の画像記録部14側からメンテナンス部40側への移動を基準にして、画像記録部14側を「移動方向上流側」、メンテナンス部40側を「移動方向下流側」と言う場合がある。
メンテナンス部40には、ノズル面払拭装置50と、インクジェット記録ヘッド20のノズル面21と上下方向で対向する保護キャップ42と、がインクジェット記録ヘッド20の移動方向上流側から順に並んで設けられている。ノズル面払拭装置50及び保護キャップ42は、各々の位置で、ラック・ピニオンやシリンダー等の公知の昇降機構により、昇降移動のみ可能に構成されている。
つまり、ノズル面払拭装置50は、インクジェット記録ヘッド20の長手方向に移動不能に構成されており、インクジェット記録ヘッド20のノズル面21を払拭する際には、インクジェット記録ヘッド20が、その長手方向に移動することにより、そのノズル面21が、ノズル面払拭装置50の後述する払拭部材60によって払拭されるようになっている。
なお、図3に示されるように、インクジェット記録ヘッド20をメンテナンス部40に移動させたら、そのインクジェット記録ヘッド20を移動させず、ノズル面払拭装置50を、ラック・ピニオンやスライドガイド等の公知の移動機構により、インクジェット記録ヘッド20の長手方向(記録用紙Pの幅方向)に移動させて、そのノズル面21を払拭するようにしてもよい。
図2〜図5に示されるように、ノズル面払拭装置50は、ウェブ状(織布状)の払拭部材60と、払拭部材60の一端部側が巻き付けられた繰出ロール52と、払拭部材60の他端部側が巻き付けられるとともに、モーター48(図5参照)からの回転駆動力によって一定の巻取速度で回転駆動される巻取ロール54と、払拭部材60をノズル面21に接触させるために、その払拭部材60を下方から支持する支持ロール56と、を含んで構成されている。
繰出ロール52は、移動方向上流側に配置され、巻取ロール54は、移動方向下流側に配置されている。そして、支持ロール56は、繰出ロール52よりも移動方向下流側で、かつ巻取ロール54よりも移動方向上流側に配置されている。より具体的には、繰出ロール52と巻取ロール54と支持ロール56とは、それぞれの軸方向から見て、支持ロール56を頂点とした略二等辺三角形状の各角部に配置されている。
そして、図7に示されるように、支持ロール56の支持軸56Aの軸方向両端部には、支持ロール56を上方(ノズル面21)へ向かって付勢するための付勢手段の一例としてのコイルバネ58が設けられている。すなわち、コイルバネ58の上端部は、支持軸56Aの軸方向両端部に取り付けられており、コイルバネ58の下端部は、支持ロール56の支持軸56A、繰出ロール52の繰出軸52A及び巻取ロール54の巻取軸54Aを回転可能に支持する筐体状のホルダー44(図5参照)の一部(図示省略)に取り付けられている。
そして、払拭部材60は、モーター48によって巻取ロール54の巻取軸54Aが一方向(巻取方向)へ回転駆動されることにより、繰出ロール52から支持ロール56を介して巻取ロール54へ向かって移動する(一方向のみへ繰り出される)ようになっている。なお、払拭部材60は、ポリエステル樹脂やナイロン樹脂等の織布で構成されることが好ましい。
また、繰出ロール52と支持ロール56との間に張架されている払拭部材60には、洗浄液Sが吹き付けられるようになっている。すなわち、ホルダー44の上部には、その繰出ロール52と支持ロール56との間に張架されている払拭部材60に対向して、洗浄液Sを噴射するノズル46が配置されている。ノズル46にはポンプ(図示省略)が接続されており、そのポンプの作動によってノズル46から洗浄液Sが噴射されるようになっている。
ここで、本実施形態においては、図4(A)、図5に示されるように(図5では右側に実線で示されるインクジェット記録ヘッド20参照)、払拭部材60の繰出方向(巻取方向)と逆方向にインクジェット記録ヘッド20が移動して、そのノズル面21が払拭部材60に払拭されることを「通常拭き」と呼ぶ。
そして、本実施形態においては、図4(B)、図5に示されるように(図5では左側に実線で示されるインクジェット記録ヘッド20参照)、払拭部材60の繰出方向(巻取方向)と同方向にインクジェット記録ヘッド20が移動して、そのノズル面21が払拭部材60に払拭されることを「逆拭き」と呼ぶ。
つまり、本実施形態においては、次のようにしてインクジェット記録ヘッド20のノズル面21が清掃される。図6に示されるように、まずインクジェット記録ヘッド20をメンテナンス部40へ移動させ、次いで保護キャップ42を上昇させる。そして、その保護キャップ42へ空吐出を行い、その後、その保護キャップ42を待機位置へ下降させる。
次に、インクジェット記録ヘッド20を画像記録部14側へ一旦移動させる。そして、そのインクジェット記録ヘッド20をメンテナンス部40側へ移動させつつ逆拭きを行う。その後、インクジェット記録ヘッド20を画像記録部14側へ移動させつつ通常拭きを行う。これにより、インクジェット記録ヘッド20のノズル面21が清掃される。
こうして、ノズル面21の清掃が終了したら、再度インクジェット記録ヘッド20をメンテナンス部40側へ移動させる。そして、保護キャップ42を上昇させてノズル面21と対向させ、その保護キャップ42へ空吐出を行う。以上により、インクジェット記録ヘッド20に対するメンテナンスが終了する。なお、インクジェット記録ヘッド20は、その後、画像記録部14側へ移動し、搬送手段16と上下方向で対向する位置に配置される。
また、図5、図7に示されるように、ノズル面払拭装置50には、繰出ロール52の繰出軸52Aの軸方向一端部に一体回転可能に取り付けられた被ロック部材の一例としてのロックギア62に接触して、その回転を停止させるロック機構70が設けられている。ロック機構70は、ロックギア62に接触させるロック部材の一例としてのプランジャー72と、プランジャー72をロックギア62に対して接離させるソレノイド68と、を含んで構成されている。
このような構成とされたロック機構70によれば、ソレノイド68を駆動し、プランジャー72を突出させて、その先端部をロックギア62に接触させることにより、繰出ロール52の回転が停止し、払拭部材60の移動(繰出、巻取)が停止される(図7(B)参照)。また、ソレノイド68の駆動を停止し、プランジャー72を引っ込めて、その先端部をロックギア62から離すことにより、払拭部材60の移動(繰出、巻取)が開始される(図7(A)参照)。
また、ロック機構70は、図7に示される構成に限定されるものではなく、図8に示される構成とされていてもよい。すなわち、このロック機構70は、ロックギア62に噛合させるロック部材の一例としてのロック固定ギア74と、ロック固定ギア74をロックギア62に対して接離させるソレノイド68と、を含んで構成されている。なお、ロック固定ギア74は、ソレノイド68に対して出入可能に構成されたロッド69の先端部に回転不能に取り付けられている。
このような構成とされたロック機構70によれば、ソレノイド68を駆動し、ロック固定ギア74を突出させてロックギア62に噛合させることにより、繰出ロール52の回転が停止し、払拭部材60の移動(繰出、巻取)が停止される(図8(B)参照)。また、ソレノイド68の駆動を停止し、ロック固定ギア74を引っ込めてロックギア62との噛合を解除することにより、払拭部材60の移動(繰出、巻取)が開始される(図8(A)参照)。
また、図9に示されるように、繰出ロール52の繰出軸52Aの軸方向一端部に被ロック部材の一例としてのゴム製のロック円板64を一体回転可能に取り付け、そのロック円板64の回転を停止させるようにロック機構70を構成してもよい。
すなわち、このロック機構70は、ロック円板64の周縁部に接触させるロック部材の一例としてのゴム製のストッパー76と、ストッパー76をロック円板64に対して接離させるソレノイド68と、を含んで構成されている。なお、ストッパー76は、ソレノイド68に対して出入可能に構成されたロッド69の先端部に取り付けられている。
このような構成とされたロック機構70によれば、ソレノイド68を駆動し、ストッパー76を突出させてロック円板64の周縁部に接触させることによる摩擦で、繰出ロール52の回転が停止し、払拭部材60の移動(繰出、巻取)が停止される(図9(B)参照)。また、ソレノイド68の駆動を停止し、ストッパー76を引っ込めてロック円板64の周縁部から離すことにより、払拭部材60の移動(繰出、巻取)が開始される(図9(A)参照)。
更に、図10に示されるように、繰出ロール52の繰出軸52Aの軸方向一端部に被ロック部材の一例としての円板状のロックディスク66を一体回転可能に取り付け、そのロックディスク66の回転を停止させるようにロック機構70を構成してもよい。
すなわち、このロック機構70は、ロックディスク66の軸方向を向く表面に、同じく軸方向を向く表面を接触させるロック部材の一例としてのロック固定ディスク78と、ロック固定ディスク78をロックディスク66に対して接離させるソレノイド68と、を含んで構成されている。なお、ロック固定ディスク78は、ソレノイド68に対して出入可能に構成されたロッド69の先端部に回転不能に、かつ同軸的に取り付けられている。
このような構成とされたロック機構70によれば、ソレノイド68を駆動し、ロック固定ディスク78を突出させて、その軸方向を向く表面をロックディスク66の軸方向を向く表面に接触させることによる摩擦で、繰出ロール52の回転が停止し、払拭部材60の移動(繰出、巻取)が停止される(図10(B)参照)。また、ソレノイド68の駆動を停止し、ロック固定ディスク78を引っ込めてロックディスク66から離すことにより、払拭部材60の移動(繰出、巻取)が開始される(図10(A)参照)。
なお、ロック機構70は、繰出ロール52の繰出軸52Aに対して設けられることが好ましい。巻取ロール54の巻取軸54Aをロックする構成にすると、慣性力によって繰出ロール52から払拭部材60が繰り出されるおそれがあるが、繰出ロール52の繰出軸52Aをロックする構成にすると、繰出ロール52から払拭部材60が繰り出されるおそれがない。つまり、繰出ロール52と巻取ロール54との間の払拭部材60のテンションが維持される。
以上のような構成とされた第1実施形態に係るノズル面払拭装置50において、次にその作用(ノズル面払拭方法)について説明する。
インクジェット記録ヘッド20のノズル面21を清掃する際には、まず逆拭きを行う。したがって、図11(A)、図11(B)、図12に示されるように、メンテナンス部40において空吐出が終了したら、保護キャップ42を待機位置へ下降させる(S1)。そして、インクジェット記録ヘッド20を画像記録部14側へ一旦移動させ、逆拭き開始位置で停止させる(S2)。
逆拭き開始位置は、図11において仮想線K1で示される位置であり、ノズル面21の移動方向下流側端部21Aが、その仮想線K1上に配置される位置である。こうして、インクジェット記録ヘッド20が逆拭き開始位置に配置されたら、繰出ロール52のロックを解除した状態にする(S3)。すなわち、ソレノイド68の駆動を停止し、プランジャー72の先端部をロックギア62から離す。
そして、ノズル46から洗浄液Sを噴射し(S4)、払拭部材60に洗浄液Sを含浸させながら、モーター48(図5参照)を駆動して巻取ロール54を回転させる(S5)。一方、その動作と共に、インクジェット記録ヘッド20をメンテナンス部40側へ移動させる。そして、図11(C)に示されるように、洗浄液Sが含浸された払拭部材60がノズル面21の下流側端部21Aに接触可能な位置に到達したら、洗浄液Sの噴射を停止し(S6)、更にモーター48の駆動を停止する(S7)。
また、その動作と共に、ノズル面払拭装置50を上昇させ(S8)、かつソレノイド68を駆動して、プランジャー72を突出させ、その先端部をロックギア62に接触させる。つまり、ロック機構70により、繰出ロール52の回転を停止させ、払拭部材60の繰出(巻取)を停止させる(S9)。そして、インクジェット記録ヘッド20の移動に伴い(S10)、その繰出(巻取)が停止されたロック状態の払拭部材60でノズル面21を払拭する(第1払拭工程)。
このロック状態で第1規定時間が経過したら、図11(D)に示されるように、繰出ロール52のロックを解除し(S11)、払拭部材60への洗浄液Sの噴射を再開するとともに(S12)、モーター48を駆動して巻取ロール54を回転させる(払拭部材60を繰り出す)(S13)。そして、インクジェット記録ヘッド20の移動に伴い、その繰出(巻取)状態(ロック解除状態)の払拭部材60でノズル面21を払拭する(第2払拭工程)。
そして、このロック解除状態で第2規定時間が経過したら、図11(E)に示されるように、洗浄液Sの噴射を停止し(S14)、更にモーター48の駆動を停止するとともに(S15)、ロック機構70により、繰出ロール52の回転を停止させ、払拭部材60の繰出(巻取)を停止させる(S16)。そして、インクジェット記録ヘッド20の移動に伴い、その繰出(巻取)が停止されたロック状態の払拭部材60でノズル面21を払拭する(第1払拭工程)。
ここで、第1実施形態では、一例として、インクジェット記録ヘッド20のノズル面21の長手方向の長さが600mmとされており、インクジェット記録ヘッド20の移動速度が40mm/秒とされている。そして、払拭部材60の繰出速度(巻取速度)が3.2mm/秒とされている。この条件下では、払拭時間が「15秒」とされる。そして、第1規定時間が「3秒」とされ、第2規定時間が「2秒」とされる。
距離にすると、第1規定距離は「120mm(=40mm/秒×3秒)」とされ、第2規定距離は「80mm(=40mm/秒×2秒)」とされる。また、第1規定時間及び第2規定時間は、0.5秒以上30秒以下であることが好ましいが、インクジェット記録ヘッド20のノズル面21の長手方向の長さ、インクジェット記録ヘッド20の移動速度、払拭部材60の繰出速度(巻取速度)によって適宜決まる。
以上のような第1払拭工程と第2払拭工程とを予め決められたタイミング(第1規定時間及び第2規定時間)で2回以上切り替えて、ノズル面21の上流側端部21Bを払拭し終わるまで続けるが、その上流側端部21Bを払拭し終えたときの払拭部材60の状態によって、次のステップが異なる。
すなわち、払拭部材60の繰出(巻取)が停止されているロック状態であれば、繰出ロール52のロックを解除し(S17)、ノズル面払拭装置50を待機位置へ下降させる(S20)。これにより、逆拭き動作が終了する。一方、払拭部材60が繰り出されている(巻き取られている)ロック解除状態であれば、洗浄液Sの噴射を停止し(S18)、更にモーター48の駆動を停止させる(S19)。そして、ノズル面払拭装置50を待機位置へ下降させる(S20)。これにより、逆拭き動作が終了する。
このように、第1実施形態によれば、逆拭き時において、払拭部材60の繰出(巻取)が断続的に行われるため、払拭部材60の繰出(巻取)が常に停止されたロック状態でノズル面21全体が一気に払拭される場合に比べて、途中でフレッシュな払拭部材60に変更されるため、払拭部材60における清掃性能の低下が抑制される。
なお、上記の数値で示されるように、払拭部材60の繰出速度(巻取速度)は、インクジェット記録ヘッド20の移動速度よりも遅くする方が好ましい。これによれば、払拭部材60の繰出速度(巻取速度)が、インクジェット記録ヘッド20の移動速度よりも速い場合に比べて、払拭部材60における清掃性能の低下が抑制されるとともに、ノズル面21に対する清掃性能が向上される。
更に、第1払拭工程による払拭時間(払拭距離)と、第2払拭工程による払拭時間(払拭距離)と、は異なるようにすることが好ましい。より具体的には、第1払拭工程による払拭時間(払拭距離)を、第2払拭工程による払拭時間(払拭距離)よりも長くすることが好ましい。これによれば、移動してくるノズル面21に対する相対速度が大きい方の時間が長くなるため、ノズル面21に対する清掃性能が向上される。
また、払拭部材60には、洗浄液Sが含浸されるようになっているため、ノズル面21に対する払拭部材60の摺動抵抗が低減される。したがって、ノズル面21の撥水処理膜に対して与えるダメージ(摩耗劣化)が抑制される。
こうして、逆拭き動作が終了したら、ノズル面21の状態を安定化させる(払拭斑を低減させる)ために、通常拭きを行う(図6参照)。すなわち、まずインクジェット記録ヘッド20を通常拭き開始位置に配置する。なお、第1実施形態では、逆拭き動作終了時のインクジェット記録ヘッド20の位置が通常拭き開始位置となっており、ノズル面21の移動方向下流側端部21Aが、図11に示される仮想線K2上に配置される位置となっている。
そして、繰出ロール52に対するロックを解除した状態で、ノズル46から洗浄液Sを噴射し、払拭部材60に洗浄液Sを含浸させながら、モーター48を駆動して巻取ロール54を回転させる。一方、その動作と共に、インクジェット記録ヘッド20を画像記録部14側へ移動させる。
そして、洗浄液Sが含浸された払拭部材60がノズル面21の上流側端部21Bに接触可能な位置に到達したら、ノズル面払拭装置50を上昇させる。その後、インクジェット記録ヘッド20の移動に伴い、その繰出(巻取)状態(ロック解除状態)の払拭部材60でノズル面21全体を一気に払拭する。これにより、通常拭き動作が終了する。
ここで、通常拭きのときには、払拭部材60の繰出方向(巻取方向)が、移動してくるノズル面21に対して相対速度が増加する方向とされている。したがって、ロック解除状態で逆拭きのときのように、払拭部材60の繰出方向(巻取方向)が、移動してくるノズル面21に対して相対速度が減少する方向とされている場合に比べて、ノズル面21に対する清掃性能が向上される。
そのため、逆拭き時に、ロック状態の払拭部材60で払拭されたノズル面21の一部、又はロック解除状態の払拭部材60で払拭されたノズル面21の一部に残留していた除去しきれなかったインク残渣や異物(汚染物質)等が、ノズル面21に再付着されることなく、効率よく除去(清掃)される。したがって、インクジェット記録ヘッド20の交換寿命が延びる(インクジェット記録ヘッド20の寿命が長期安定化される)。
なお、インクジェット記録ヘッド20をメンテナンスする度に、ロック状態の払拭部材60とロック解除状態の払拭部材60とによって払拭されるノズル面21の部位を変えるようにすることが好ましい。具体的に説明すると、n回目の逆拭き時(n回目のメンテナンス時)に、ロック状態の払拭部材60で払拭されたノズル面21の一部が、n+1回目の逆拭き時(n+1回目のメンテナンス時)には、ロック解除状態の払拭部材60で払拭されるように、第1規定時間及び第2規定時間を変更することが好ましい。
これによれば、ロック状態の払拭部材60とロック解除状態の払拭部材60とによって払拭されるノズル面21の部位が常に同じである場合に比べて、ノズル面21に対する清掃性能が向上される。なお、第1規定時間及び第2規定時間(第1払拭工程と第2払拭工程とを切り替えるタイミング)は、システム制御部23の制御によって適宜変更すればよい。
また、第1規定時間及び第2規定時間を変更するのではなく、逆拭き開始位置を、n回目の逆拭き時(n回目のメンテナンス時)とn+1回目の逆拭き時(n+1回目のメンテナンス時)とで変更することで、n回目の逆拭き時に、ロック状態の払拭部材60で払拭されたノズル面21の一部が、n+1回目の逆拭き時には、ロック解除状態の払拭部材60で払拭されるようにしてもよい。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るノズル面払拭装置50について説明する。なお、上記第1実施例と同等の部位には同じ符号を付して詳細な説明(共通する作用を含む)は適宜省略する。
図13に示されるように、第2実施形態に係るインクジェット記録ヘッド20は、短尺状のヘッドH1〜H5が底面視で千鳥状に配置されて構成されている。したがって、第2実施形態に係るノズル面払拭装置50は、支持ロール56等の軸方向に2個並んで設けられている。つまり、一方のノズル面払拭装置50Aで、ヘッドH1、H3、H5を清掃し、他方のノズル面払拭装置50Bで、ヘッドH2、H4を清掃するようになっている。
以上のような構成とされた第2実施形態に係るノズル面払拭装置50において、次にその作用(ノズル面払拭方法)について説明する。
なお、この第2実施形態では、図3に示されたように、インクジェット記録ヘッド20がメンテナンス部40に配置されたまま、ノズル面払拭装置50が移動する場合で説明する。また、一方のノズル面払拭装置50Aの動作と他方のノズル面払拭装置50Bの動作とは同一であるため、ここでは、一方のノズル面払拭装置50Aについて説明する。
インクジェット記録ヘッド20のノズル面21を清掃する際には、まず逆拭きを行う。したがって、図14(A)、図15に示されるように、メンテナンス部40において空吐出が終了したら、保護キャップ42を待機位置へ下降させる(S1)。そして、ノズル面払拭装置50Aを移動させ、逆拭き開始位置で停止させる(S2)。
逆拭き開始位置は、図14において仮想線K3で示される位置であり、支持ロール56が、その仮想線K3上に配置される位置である。こうして、ノズル面払拭装置50Aが逆拭き開始位置に配置されたら、図14(B)に示されるように、ノズル面払拭装置50Aの繰出ロール52のロックを解除する(S3)。すなわち、ソレノイド68の駆動を停止し、プランジャー72の先端部をロックギア62から離す。
そして、ノズル46から洗浄液Sを噴射し(S4)、払拭部材60に洗浄液Sを含浸させながら、モーター48を駆動して巻取ロール54を回転させる(S5)。一方、その動作と共に、ノズル面払拭装置50Aを画像記録部14側へ移動させる。そして、洗浄液Sが含浸された払拭部材60がヘッドH1のノズル面21に接触可能な位置に到達したら、洗浄液Sの噴射を停止し(S6)、更にモーター48の駆動を停止する(S7)。
また、その動作と共に、ノズル面払拭装置50Aを上昇させ(S8)、かつソレノイド68を駆動して、プランジャー72を突出させ、その先端部をロックギア62に接触させる。つまり、ロック機構70により、繰出ロール52の回転を停止させ、払拭部材60の繰出(巻取)を停止させる(S9)。そして、図14(C)に示されるように、ノズル面払拭装置50Aの移動に伴い(S10)、その繰出(巻取)が停止されたロック状態の払拭部材60でヘッドH1のノズル面21を払拭する(第1払拭工程)。
なお、図14、図15では省略しているが、上記第1実施形態と同様に、ヘッドH1のノズル面21をロック状態の払拭部材60で払拭している途中の予め決められたタイミング(第1規定時間)で、払拭部材60に対するロック状態を解除し、そのロック解除状態の払拭部材60でヘッドH1のノズル面21を払拭する(第2払拭工程)。
そして、ヘッドH1のノズル面21をロック解除状態の払拭部材60で払拭している途中の予め決められたタイミング(第2規定時間)で、払拭部材60を再びロック状態にし、そのロック状態の払拭部材60でヘッドH1のノズル面21を払拭する(第1払拭工程)。つまり、ヘッドH1のノズル面21に対して第1払拭工程と第2払拭工程とを2回以上切り替えて払拭する。
こうして、ヘッドH1のノズル面21に対する払拭が終了したら、図14(D)に示されるように、繰出ロール52のロックを解除し(S11)、払拭部材60への洗浄液Sの噴射を再開するとともに(S12)、モーター48を駆動して巻取ロール54を回転させる(払拭部材60を繰り出す)(S13)。そして、洗浄液Sが含浸された払拭部材60がヘッドH3のノズル面21に接触可能な位置に到達したら、洗浄液Sの噴射を停止し(S14)、更にモーター48の駆動を停止する(S15)。
また、その動作と共に、ソレノイド68を駆動して、プランジャー72を突出させ、その先端部をロックギア62に接触させる。つまり、ロック機構70により、繰出ロール52の回転を停止させ、払拭部材60の繰出(巻取)を停止させる(S16)。そして、図14(E)に示されるように、ノズル面払拭装置50Aの移動に伴い、その繰出(巻取)が停止されたロック状態の払拭部材60でヘッドH3のノズル面21を払拭する(第1払拭工程)。
なお、図14、図15では省略しているが、上記したヘッドH1のときと同様に、ヘッドH3のノズル面21をロック状態の払拭部材60で払拭している途中の予め決められたタイミング(第1規定時間)で、払拭部材60に対するロック状態を解除し、そのロック解除状態の払拭部材60でヘッドH3のノズル面21を払拭する(第2払拭工程)。
そして、ヘッドH3のノズル面21をロック解除状態の払拭部材60で払拭している途中の予め決められたタイミング(第2規定時間)で、払拭部材60を再びロック状態にし、そのロック状態の払拭部材60でヘッドH3のノズル面21を払拭する(第1払拭工程)。つまり、ヘッドH3のノズル面21に対して第1払拭工程と第2払拭工程とを2回以上切り替えて払拭する。
こうして、ヘッドH3のノズル面21に対する払拭が終了したら、繰出ロール52のロックを解除し(S17)、払拭部材60への洗浄液Sの噴射を再開するとともに(S18)、モーター48を駆動して巻取ロール54を回転させる(払拭部材60を繰り出す)(S19)。そして、洗浄液Sが含浸された払拭部材60がヘッドH5のノズル面21に接触可能な位置に到達したら、洗浄液Sの噴射を停止し(S20)、更にモーター48の駆動を停止する(S21)。
また、その動作と共に、ソレノイド68を駆動して、プランジャー72を突出させ、その先端部をロックギア62に接触させる。つまり、ロック機構70により、繰出ロール52の回転を停止させ、払拭部材60の繰出(巻取)を停止させる(S22)。そして、ノズル面払拭装置50Aの移動に伴い、その繰出(巻取)が停止されたロック状態の払拭部材60でヘッドH5のノズル面21を払拭する(第1払拭工程)。
なお、図14、図15では省略しているが、上記したヘッドH1、H3のときと同様に、ヘッドH5のノズル面21をロック状態の払拭部材60で払拭している途中の予め決められたタイミング(第1規定時間)で、払拭部材60に対するロック状態を解除し、そのロック解除状態の払拭部材60でヘッドH5のノズル面21を払拭する(第2払拭工程)。
そして、ヘッドH5のノズル面21をロック解除状態の払拭部材60で払拭している途中の予め決められたタイミング(第2規定時間)で、払拭部材60を再びロック状態にし、そのロック状態の払拭部材60でヘッドH5のノズル面21を払拭する(第1払拭工程)。つまり、ヘッドH5のノズル面21に対して第1払拭工程と第2払拭工程とを2回以上切り替えて払拭する。
以上のような第1払拭工程と第2払拭工程とを他方のノズル面払拭装置50Bにおいても予め決められたタイミング(第1規定時間及び第2規定時間)で2回以上切り替えて行い、全てのヘッドH1〜H5のノズル面21に対する清掃が終了したら、各ノズル面払拭装置50A、50Bが終了位置に到達し、各ノズル面払拭装置50A、50Bが待機位置へ下降する(S23)。これにより、逆拭き動作が終了する。
このように、第2実施形態によれば、逆拭き時において、払拭部材60の繰出(巻取)が断続的に行われるため、払拭部材60の繰出(巻取)が常に停止されたロック状態でノズル面21全体が一気に払拭される場合に比べて、払拭部材60における清掃性能の低下が抑制される。
こうして、逆拭き動作が終了したら、ノズル面21の状態を安定化させる(払拭斑を低減させる)ために、通常拭きを行う(図6参照)。すなわち、ノズル面払拭装置50A、50Bを通常拭き開始位置に配置する。なお、第2実施形態では、逆拭き動作終了時のノズル面払拭装置50A、50Bの位置が通常拭き開始位置となっており、支持ロール56が、図14に示される仮想線K4上に配置される位置となっている。
そして、繰出ロール52に対するロックを解除した状態で、ノズル46から洗浄液Sを噴射し、払拭部材60に洗浄液Sを含浸させながら、モーター48を駆動して巻取ロール54を回転させる。一方、その動作と共に、ノズル面払拭装置50A、50Bをメンテナンス部40側へ移動させる。
そして、洗浄液Sが含浸された各払拭部材60が、それぞれヘッドH5のノズル面21及びヘッドH4のノズル面21に接触可能な位置に到達したら、ノズル面払拭装置50A、50Bを上昇させる。その後、ノズル面払拭装置50A、50Bの移動に伴い、その繰出(巻取)状態(ロック解除状態)の払拭部材60でヘッドH5、H3、H1及びヘッドH4、H2の各ノズル面21全体を一気に払拭する。これにより、通常拭き動作が終了する。
なお、この第2実施形態に係るノズル面払拭装置50においても、n回目の逆拭き時(n回目のメンテナンス時)とn+1回目の逆拭き時(n+1回目のメンテナンス時)とで、ロック状態の払拭部材60とロック解除状態の払拭部材60とによって払拭されるノズル面21の部位を変えるようにすることが好ましい。
以上、本実施形態に係るノズル面払拭方法及びノズル面払拭装置50について、図面を基に説明したが、本実施形態に係るノズル面払拭方法及びノズル面払拭装置50は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、ロック機構70は、図示のものに限定されるものではない。
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置10は、複写機、プリンター複合機、ワークステーション等の出力機器として用いられる記録装置など、記録用紙P上への文字や画像の記録に用いられるものに限定されるものではなく、例えば、高分子フィルムやガラス上に着色インクを吐出して行うディスプレイ用のカラーフィルターの作製などにも適用することが可能である。
すなわち、本実施形態における「記録媒体」には、記録用紙P以外に、例えばOHPシートや配線パターン等が形成される基板なども含まれる。そして、本実施形態における「画像」には、一般的な画像(文字、絵、写真など)のみならず、インク滴が記録媒体上に着弾されることで得られるドットのパターン(配線パターン)なども含まれる。