JP2019058210A - 酸素飽和度推定装置、酸素飽和度測定装置、酸素飽和度推定プログラム、及び酸素飽和度推定方法 - Google Patents

酸素飽和度推定装置、酸素飽和度測定装置、酸素飽和度推定プログラム、及び酸素飽和度推定方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2019058210A
JP2019058210A JP2017182977A JP2017182977A JP2019058210A JP 2019058210 A JP2019058210 A JP 2019058210A JP 2017182977 A JP2017182977 A JP 2017182977A JP 2017182977 A JP2017182977 A JP 2017182977A JP 2019058210 A JP2019058210 A JP 2019058210A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
light
hemoglobin
oxygen saturation
attenuation
molar concentration
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2017182977A
Other languages
English (en)
Inventor
秀昭 羽石
Hideaki Haishi
秀昭 羽石
トルスン エズム
Tolsun Ezum
トルスン エズム
和也 中野
Kazuya Nakano
和也 中野
俊哉 中口
Toshiya Nakaguchi
俊哉 中口
孝明 中田
Takaaki Nakata
孝明 中田
成人 織田
Naruto Oda
成人 織田
峻 大西
Takashi Onishi
峻 大西
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Chiba University NUC
Original Assignee
Chiba University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Chiba University NUC filed Critical Chiba University NUC
Priority to JP2017182977A priority Critical patent/JP2019058210A/ja
Publication of JP2019058210A publication Critical patent/JP2019058210A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Measurement Of The Respiration, Hearing Ability, Form, And Blood Characteristics Of Living Organisms (AREA)

Abstract

【課題】測定対象に含まれるヘモグロビン以外の成分の影響を抑えて、酸素飽和度の推定精度を向上させる。【解決手段】酸素飽和度推定装置は、照射光の照射強度と透過光の受光強度とに基づいて、測定対象の血液中の酸素飽和度を算出する計算部141を備える。受光強度は、時間経過に伴う測定対象の血流変化に応じた強度を測定したものである。計算部141は、照射強度及び受光強度に基づいて、前記波長成分それぞれにおける全体吸光度を算出し、全体吸光度を、酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビン以外の要素による減衰項とのそれぞれの和からなる時間の関数として表した、N種類の波長に対応するN元の連立方程式を解いて、酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンのモル濃度とを算出して、酸素飽和度を算出する。【選択図】図2

Description

本発明は、測定対象への照射強度と時間経過に伴う血流変化に応じた受光強度とに基づいて酸素飽和度を算出する、酸素飽和度推定装置、酸素飽和度測定装置、酸素飽和度推定プログラム、及び酸素飽和度推定方法に関する。
測定対象に照射した照射光の強度と、測定対象に入射した入射光が透過又は反射した光の強度とに基づいて、ランバート・ベールの法則を利用して酸素飽和度を求めることが行われている。酸素化ヘモグロビン(HbO2;オキシヘモグロビンともいう)と脱酸素化ヘモグロビン(Hb;デオキシヘモグロビンともいう)とは、吸光特性が異なっている。この特性を利用して、従来、赤色光と近赤外光との異なる二つ以上の波長の光を用いて、酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンとの吸光度の比を測定することで、酸素飽和度が求められている。
測定対象の酸素飽和度を測定する際に、測定対象の中には、ヘモグロビン以外にも入射光に対する吸収を示す成分が存在している。このような成分としては、例えば測定対象の組織に含まれるメラニンや脂肪、水分等が挙げられる。これらの成分に入射光が吸収されて減衰することで、酸素飽和度の測定精度が低下することがある。
特許文献1には、ヘモグロビン以外の成分は波長依存性がないと仮定し、酸素飽和度の測定部位となる指を圧迫することで、組織を圧縮すると共に、動脈血と静脈血とを排除した状態で血液酸素飽和度を測定することが記載されている。そして、この圧迫した状態を基準として、圧迫状態を解除した状態での減光度の変化を測定することで、血液の厚み変化を確認し、組織の変化分の影響を排除して精度の高い血液酸素飽和度の連続監視が可能となることが記載されている。
特開2014−147473号公報
特許文献1に記載の技術では、ヘモグロビン以外の成分は波長依存性がないと仮定しているが、実際にはメラニンなど血液以外に成分は波長によって吸光特性が異なるため、この仮定に基づいて算出される酸素飽和度には大きな誤差が伴うと考えられる。また、圧迫により組織の厚みが変化することで、入射光の経路長が非線形に変化すると考えられる。このように、組織の厚みが変化しているにも関わらず光路長を同じと仮定して酸素飽和度を算出すると、算出誤差が増大することになる。また、特許文献1に記載の技術では、測定部位である指への血流を遮断する程度まで強く圧迫する必要があった。このように、血流を遮断する程度まで組織を圧迫した場合には、例えば入射光の光路に含まれるメラニンの量は変化しにくいのに対して、脂肪等は押し出されてその量が大きく減少する。したがって、測定部位の圧迫を行った場合には、入射光の減衰の度合いの予測が困難となる。
本発明は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的の一つは、測定対象に含まれるヘモグロビン以外の成分の影響を抑えて、酸素飽和度の推定精度を向上させた酸素飽和度推定装置、酸素飽和度測定装置、酸素飽和度推定プログラム、及び酸素飽和度推定方法を提供することである。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的である。
本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
〔1〕測定対象に照射されたN種類(Nは3以上の整数)の波長成分の光を含む照射光の照射強度と、前記測定対象を透過した透過光の受光強度とに基づいて、前記測定対象の酸素飽和度を算出する計算部を備え、前記受光強度は、時間経過に伴う前記測定対象の血液中の血流変化に応じた強度を測定したものであり、前記計算部は、前記照射強度及び前記受光強度に基づいて、前記波長成分それぞれにおける全体吸光度を算出し、前記全体吸光度を、酸素化ヘモグロビンのモル吸光係数とモル濃度との積からなる減衰項と、脱酸素化ヘモグロビンのモル吸光係数とモル濃度との積からなる減衰項と、前記酸素化ヘモグロビン及び前記脱酸素化ヘモグロビン以外の要素による減衰項とのそれぞれの和からなる時間の関数として表した、N種類の波長に対応するN元の連立方程式を解いて、前記酸素化ヘモグロビンのモル濃度と前記脱酸素化ヘモグロビンのモル濃度とを算出し、前記酸素化ヘモグロビンによる減衰項のモル濃度と、前記脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項のモル濃度とから前記酸素飽和度を算出することを特徴とする、酸素飽和度推定装置。
〔2〕前記酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビン以外の要素による減衰項は、前記酸素化ヘモグロビン及び前記脱酸素化ヘモグロビン以外の吸光物質による減衰項と、散乱光による減衰項とを含む、〔1〕に記載の酸素飽和度推定装置。
〔3〕前記酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビン以外の吸光物質による減衰項は、メラニン、水、及び脂肪からなる群より選ばれる少なくとも一つによる減衰項を含む、〔2〕に記載の酸素飽和度推定装置。
〔4〕前記計算部は、最小二乗法を用いて前記連立方程式を解き、前記連立方程式を解く際に、前記酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、前記脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項とが時間経過により変化して、前記酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビン以外の吸光物質による減衰項が時間経過により変化しないとして、各減衰項を算出する、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の酸素飽和度推定装置。
〔5〕前記計算部は、前記測定対象についての前記連立方程式を解いて、前記酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビン以外の吸光物質による減衰項を算出することで予め取得し、前記連立方程式を解く際に、前記全体吸光度から、予め取得した前記酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビン以外の吸光物質による減衰項を差し引いて、前記酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項を算出する〔4〕に記載の酸素飽和度推定装置。
〔6〕〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の酸素飽和度推定装置と、前記照射光を前記測定対象に照射する照射部と、前記透過光を検出して、前記透過光の受光強度を測定する受光部とを備えることを特徴とする、酸素飽和度測定装置。
〔7〕前記測定対象が、人又は人以外の動物であり、前記照射部は、前記照射光を前記測定対象の水かき部分に照射し、前記受光部は、前記水かき部分を透過した前記透過光を検出する、〔6〕に記載の酸素飽和度測定装置。
〔8〕前記測定対象において、前記透過光を検出する部位よりも上流側の血管を圧迫して、前記血流変化を生じさせる圧迫部をさらに備える〔6〕又は〔7〕に記載の酸素飽和度測定装置。
〔9〕コンピュータを、測定対象に照射されたN種類(Nは3以上の整数)の波長成分の光を含む照射光の照射強度と、前記測定対象を透過した透過光の受光強度とに基づいて、前記測定対象の血液中の酸素飽和度を算出する計算部として機能させ、前記受光強度は、時間経過に伴う前記測定対象の血流変化に応じた強度を測定したものであり、前記計算部は、前記照射強度及び前記受光強度に基づいて、前記波長成分それぞれにおける全体吸光度を算出し、前記全体吸光度を、酸素化ヘモグロビンのモル吸光係数とモル濃度との積からなる減衰項と、脱酸素化ヘモグロビンのモル吸光係数とモル濃度との積からなる減衰項と、酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビン以外の要素による減衰項とのそれぞれの和からなる時間の関数として表した、N種類の波長に対応するN元の連立方程式を解いて、前記酸素化ヘモグロビンのモル濃度と前記脱酸素化ヘモグロビンのモル濃度とを算出し、前記酸素化ヘモグロビンによる減衰項のモル濃度と、前記脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項のモル濃度とから前記酸素飽和度を算出する、
ことを特徴とする、酸素飽和度推定プログラム。
〔10〕測定対象に照射されたN種類(Nは3以上の整数)の波長成分の光を含む照射光の照射強度と、前記測定対象を透過した透過光の、時間経過に伴う前記測定対象の血流変化に応じた強度を測定した受光強度に基づいて、前記波長成分それぞれにおける全体吸光度を算出するステップと、前記全体吸光度を、酸素化ヘモグロビンのモル吸光係数とモル濃度との積からなる減衰項と、脱酸素化ヘモグロビンのモル吸光係数とモル濃度との積からなる減衰項と、酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビン以外の要素による減衰項とのそれぞれの和からなる時間の関数として表した、N種類の波長に対応するN元の連立方程式を解いて、前記酸素化ヘモグロビンのモル濃度と前記脱酸素化ヘモグロビンのモル濃度とを算出するステップと、前記酸素化ヘモグロビンによる減衰項のモル濃度と、前記脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項のモル濃度とから酸素飽和度を算出するステップとを備える、ことを特徴とする、酸素飽和度推定方法。
本発明によれば、測定対象に含まれるヘモグロビン以外の成分の影響を抑えて、酸素飽和度の推定精度を向上させた酸素飽和度推定装置、酸素飽和度測定装置、酸素飽和度推定プログラム、及び酸素飽和度推定方法を提供することができる。
実施形態に係る酸素飽和度測定装置のハードウェア構成の例を示すブロック図である。 実施形態に係る酸素飽和度測定装置の機能構成の例を示すブロック図である。 実施形態に係る受光ユニットの動作を説明するためのタイミング図である。 血流変化を生じさせた場合に推定される組織酸素飽和度(StO2)の変化の一例を表すグラフである。 血流変化を生じさせた場合に推定される、組織酸素飽和度及び各成分の変化の一例を表すグラフである。(a)は組織酸素飽和度、(b)はオキシヘモグロビンのモル濃度、(c)はデオキシヘモグロビンのモル濃度、(d)はヘモグロビンのモル濃度、(e)はメラニンによる減衰項、(f)は水による減衰項、(g)は脂肪による減衰項、(h)は散乱光による減衰項を表す。 血流変化を生じさせた場合に推定される組織酸素飽和度の変化の他の例を表すグラフである。 血流変化を生じさせた場合に算出される、酸素飽和度及び各成分の変化の他の例を表すグラフである。(a)は組織酸素飽和度、(b)はオキシヘモグロビンのモル濃度、(c)はデオキシヘモグロビンのモル濃度、(d)はヘモグロビンのモル濃度、(e)はメラニンによる減衰項、(f)は水による減衰項、(g)は脂肪による減衰項、(h)は散乱光による減衰項を表す。 血流変化を生じさせた場合に算出される、ヘモグロビンのモル濃度の変化の他の例を拡大して表すグラフである。 各減衰項の成分について、波長と吸光係数との関係を示す図である。 実施形態に係る酸素飽和度の推定方法の手順の一例を示すフローチャートである。 実施形態に係る酸素飽和度の推定方法の手順の他の例を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
本明細書において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の数値又は物性値を含むものとして用いることとする。例えば「1〜100」との数値範囲の表記は、その下限値「1」及び上限値「100」の双方を包含するものであり、「1以上100以下」を表す。他の数値範囲の表記も同様である。
[1.概要]
本実施形態に係る酸素飽和度測定装置(以降、「測定装置」ともいう。)は、照射部と、受光部と、圧迫部と、酸素飽和度推定装置(以降、「推定装置」ともいう。)とを備えている。推定装置は、測定対象に照射された照射光の照射強度と、測定対象を透過した透過光の受光強度とに基づいて、測定対象の血液中の酸素飽和度を算出する計算部を備える。このとき、照射光は、N種類(Nは3以上の整数)の波長成分の光を含んでいる。すなわち、照射光は、少なくとも3種類の波長成分の光を含んでいる。また、計算部は、時間経過に伴う測定対象の血流変化に応じた強度を測定した受光強度に基づいて、測定対象の酸素飽和度を算出する。
まず、計算部は、照射強度及び受光強度に基づいて照射光に含まれる波長成分それぞれにおける吸光度を算出する。この吸光度を、「全体吸光度」と称する。次に、計算部は、MBL法(modified Beer-Lambert)を用いて、全体吸光度を、照射光を減衰させる減衰項の和として表す。具体的には、全体吸光度を、酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビン以外の要素による減衰項(以下、「ヘモグロビン以外の要素による減衰項」ともいう。)とのそれぞれの和からなる時間の関数として表す。酸素化ヘモグロビンによる減衰項は、酸素化ヘモグロビンのモル吸光係数とモル濃度との積からなり、酸素化ヘモグロビンに起因する光量の減衰を表すものである。また、脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項は、脱酸素化ヘモグロビンのモル吸光係数とモル濃度との積からなり、脱酸素化ヘモグロビンに起因する光量の減衰を表すものである。また、ヘモグロビン以外の要素による減衰項は、酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビン以外の要素による光量の減衰を表すものである。この全体吸光度は、透過光のN種類の波長に対してそれぞれ表され、N元の連立方程式を構成する。そして、計算部は、この全体吸光度の連立方程式を解いて、酸素化ヘモグロビンのモル濃度と脱酸素化ヘモグロビンのモル濃度とを算出することができる。さらに、計算部は、酸素化ヘモグロビンのモル濃度と、脱酸素化ヘモグロビンのモル濃度とから酸素飽和度を算出することができる。
より具体的には、ヘモグロビン以外の要素による減衰項は、酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビン以外の吸光物質による減衰項と、散乱光による減衰項とを含むものである。酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビン以外の吸光物質(以降、「他の吸光物質」ともいう。)は、例えば、メラニン、水、脂肪等が挙げられる。他の吸光物質による減衰項が全体吸光度を表す式に含まれる数は、特に限定されないが、通常0以上、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上である。他の吸光物質による減衰項が全体吸光度を表す式に含まれる数が、上記下限値より多くなると、酸素飽和度の算出の精度を向上させることができる傾向にある。他の吸光物質による減衰項が全体吸光度を表す式に含まれる数の上限は特に限定されないが、多くなると計算量が増加するにも関わらず算出精度の向上が認められにくくなる傾向にある。このため、上限は通常10以下、好ましくは6以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下である。他の吸光物質による減衰項は、測定対象に含まれる物質の中でも照射光に対する主な吸収を示す物質による減衰項を含むことが好ましい。例えば、メラニン、水、及び脂肪からなる群より選ばれる少なくとも一つによる減衰項を含むことが好ましく、メラニン、水、及び脂肪による減衰項を含むことがより好ましい。
照射光が含むN種類の波長成分は、酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、ヘモグロビン以外の要素による減衰項とを合わせた数と同数か、合わせた数以上の種類であることが好ましい。例えば、ヘモグロビン以外の要素による減衰項が、他の吸光物質による減衰項を1つと、散乱光による減衰項を含む場合には、照射光に含まれる波長成分は通常4種類(N=4)、好ましくは4種類以上であることが好ましい。また、ヘモグロビン以外の要素による減衰項が、他の吸光物質による減衰項を2つと、散乱光による減衰項を含む場合には、照射光に含まれる波長成分は通常5種類(N=5)、好ましくは5種類以上であることが好ましい。また、ヘモグロビン以外の要素による減衰項が、他の吸光物質による減衰項を3つと、散乱光による減衰項を含む場合には、照射光に含まれる波長成分は通常6種類(N=6)、好ましくは6種類以上であることが好ましい。
計算部は、最小二乗法を用いて、全体吸光度を表すN元の連立方程式を解くことが好ましい。このとき、連立方程式を解く際に、酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項とが時間経過により変化して、ヘモグロビン以外の要素による減衰項が時間経過により変化しないとして、各減衰項を算出することが好ましい。または、連立方程式を解く際に、酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、散乱光による減衰項とが時間経過により変化して、他の吸光物質による減衰項が時間経過により変化しないとして、各減衰項を算出することがより好ましい。または、連立方程式を解く際に、酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項とが時間経過により変化して、他の吸光物質による減衰項と、散乱光による減衰項とが時間経過により変化しないとして、各減衰項を算出してもよい。
さらに、計算部は、予め、測定対象についての全体吸光度を表すN元の連立方程式を解くことで、他の吸光物質による減衰項を算出することで取得しておくことが好ましい。そして、新たに照射光を照射し透過光を検出して連立方程式を解く際に、このときの照射強度及び受光強度に基づいて算出される全体吸光度から、予め取得した他の吸光物質による減衰項を差し引いて、酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項とを算出することが好ましい。または、計算部は、予め、測定対象についての全体吸光度を表すN元の連立方程式を解くことで、他の吸光物質による減衰項と、散乱光による減衰項とを算出することで取得しておくことが好ましい。そして、新たに照射光を照射し透過光を検出して連立方程式を解く際に、このときの照射強度及び受光強度に基づいて算出される全体吸光度から、予め取得した他の吸光物質による減衰項と、散乱光による減衰項とを差し引いて、酸素化ヘモグロビンによる減衰項を算出してもよい。
以降、本実施形態においては、照射光が6種類(N=6)の波長成分の光を含んでいる場合を例に挙げて説明する。また、ヘモグロビン以外の要素による減衰項として、他の吸光物質による減衰項と、散乱光による減衰項を含む場合を例に挙げて説明する。具体的には、他の吸光物質による減衰項として、メラニン、水、及び脂肪による減衰項を含む場合を例に挙げて説明する。
[2.構成]
本実施形態に係る酸素飽和度測定装置の構成について、図1,図2を参照して説明する。
[2−1.ハードウェア構成]
図1に示すように、測定装置100は、推定装置200と、これに接続される照射ユニット10、受光ユニット20、及びカフ30を備えている。また、推定装置200は、キーボード、マウス等の入力装置(図示略)をさらに備えている。推定装置200は、例えば、受光ユニット20で得られたデータを処理するためのコンピュータによって構成されている。推定装置200は、CPU(Central Processing Unit;中央処理装置)40、メモリ50、表示装置60、及び入出力インターフェース(図示略)を備え、これらがデータを転送するための経路であるバス(図示略)によって接続されている。推定装置200は、入出力インターフェースを介して、照射ユニット10、受光ユニット20、カフ30、及び入力装置と接続されている。
なお、本実施形態において、コンピュータとは、ハードウェアとオペレーティングシステムとを含む概念であり、オペレーティングシステムの制御の下で動作するハードウェアを意味している。また、オペレーティングシステムが不要でアプリケーションプログラム単独でハードウェアを動作させるような場合には、そのハードウェア自体がコンピュータに相当する。ハードウェアは、少なくとも、CPU等のマイクロプロセッサと、記録媒体に記録されたコンピュータプログラムを読み取るための手段とを備えている。
以下、各部の構成を説明する。
<照射ユニット>
照射ユニット10は、測定対象に対して光を照射する照射装置である。照射ユニット10は、第一光源11、第二光源12、第三光源13、第四光源14、第五光源15、及び第六光源16を有している。これらを特に区別しない場合には、「光源11〜16」と総称する。光源11〜16は、特に限定されないが、例えば、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)、キセノンランプ等のハロゲンランプ、白熱灯等が挙げられる。これらの中でも、酸素飽和度に適した光量と波長を選択でき、小型化に適している観点から、LEDが好ましい。照射ユニット10は、光源11〜16から出射された光をそのまま測定対象に対して照射してもよく、光源11〜16から出射された光を所望の分光特性を有するフィルタと組み合わせて、このフィルタを通過した光を測定対象に対して照射してもよい。また、光源11〜16から出射された光は、例えば、光ファイバ、導光板、レンズ及びミラー等の図示しない導光手段を用いて導光されて、測定対象に照射されるようにしてもよい。
6種類の光源は分光データを用いたシミュレーション実験によって選択することが可能である。シミュレーション実験では全波長領域のデータを使った酸素飽和度測定結果を正解値とし、市販の6種類光源の組み合わせを使った結果と比べ、正解値に一番近い組み合わせを選ぶ。例としては、第一光源11は、ピーク波長が670nm、半値全幅が20nmである。また、第二光源12は、ピーク波長が700nm、半値全幅が30nmである。また、第三光源13は、ピーク波長が720nm、半値全幅が24nmである。また、第四光源14は、ピーク波長が760nm、半値全幅が30nmである。また、第五光源15は、ピーク波長が890nm、半値全幅が40nmである。また、及び第六光源16は、ピーク波長が940nm、半値全幅が50nmである。このように、光源11〜16は、互いに異なる6種類の波長成分の光を出射する。光源11〜16の波長は、後述する酸素飽和度の算出を行う場合に、算出される酸素飽和度が実際の酸素飽和度に対して精度よく向上できるようになる波長の組合せを選択することが好ましい。
<受光ユニット>
受光ユニット20は、測定対象を透過した透過光を検出する受光装置である。受光ユニット20は、光を検出する検出素子21を有している。検出素子21は、特に限定されないが、例えば、PINフォトダイオード、PN接合・フォトダイオード等のフォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトレジスタ等のフォトディテクタが挙げられる。これらの中でも、フォトダイオードが好ましい。受光ユニット20は、測定対象を透過した透過光を検出して、透過光の受光強度を測定する。そして、受光強度に応じた電流値が受光ユニット20の測定値として出力される。受光ユニット20は、照射ユニット10の光源11〜16の各ピーク波長に応じた、少なくとも6種類の波長の受光強度を測定することが好ましい。
受光ユニット20による透過光の検出の一例を、図3を参照して説明する。図3に示すように、照射ユニット10が有する光源11〜16(LED1〜6)は、互いに照射時間が重ならないようにして、LED1をパルス状に照射して(on)、LED1の照射を終了(off)してから、次にLED2がパルス状に照射される。このように、LED1〜6まで順に照射を行った後、再びLED1が照射を行う動作が繰り返される。このとき、フォトディテクタ(PD)がLED1〜6の照射のタイミングにあわせて、透過光を検出して強度を測定するよう動作する。このように、LED1〜6とフォトディテクタの動作を制御することで、照射ユニット10から出射される異なる波長成分の光を、受光ユニット20が検出することができる。
または、受光ユニット20は、さらに分光器(図示略)を備えていてもよい。そして、
受光ユニット20は、分光器によって検出した透過光から所望の波長の単色光を得ることができる。そして、得られた単色光の受光強度を測定することができる。さらに、分光器によって単色光の波長を変化させることで、透過光の吸収スペクトルを得ることができる。
照射ユニット10と受光ユニット20とは、測定対象を挟んで、互いに対向して配置される。照射ユニット10から出射された照射光が測定対象を透過して、受光ユニット20が測定対象を透過した透過光を検出することができる。すなわち、本実施形態の測定装置100は、透過型の酸素飽和度測定装置である。照射ユニット10及び受光ユニット20による測定部位は特に限定されないが、照射光の透過を容易にする観点から、照射ユニット10と受光ユニット20との間の距離が短くなる部位が好ましい。このような測定部位としては、例えば、手のひらの水かき、耳垂等が挙げられる。中でも、装着のしやすさ、組織の薄さによる透過のしやすさの観点から、水かきが好ましい。
<カフ>
カフ30は、測定対象に装着されて、その装着部位付近を圧迫して、血流変化を生じさせる圧迫装置である。カフ30は、ポンプ31と、圧力センサ32と、図示しない空気袋(図示略)を有している。この空気袋が装着部位において、その周囲に巻回されることで、カフ30が測定対象に装着される。ポンプ31から空気袋に空気を送り込み膨らませることで、測定対象を圧迫することができる。このとき、圧力センサ32はカフ30内の圧力を検出することで、ポンプ31の動作を制御して、所望のカフ圧で測定対象を圧迫することができるようになっている。透過光を検出する部位が手のひらの水かきである場合には、カフ30の装着部位は、その上流側となる上腕部であることが好ましい。
<CPU>
CPU40は、種々の制御や演算を行なう処理装置であり、メモリ50に格納された後述する本件のプログラムを読み出して実行することにより、種々の機能を実現する。そして、CPU40が、これらのプログラムを実行することにより、図2で示すように、処理部140の各機能手段としてそれぞれ機能する。なお、処理部140における処理機能の実現手段はプログラムに限定されず、推定装置200に搭載されるハードウェアにより実現されてもよい。例えば、処理部140を、ROM,RAM,CPU等を内蔵したワンチップマイコンとして構成してもよいし、あるいは、デジタル回路やアナログ回路といった電子回路として形成してもよい。
<メモリ>
メモリ50は、種々のデータやプログラムを格納するデータ記憶装置である。メモリ50は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリや、ROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、またはHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Device)等によって実現される。
<表示装置>
表示装置60としては、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)、LCD(Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(Organic Light-Emitting Diode Display)等のディスプレイが用いられる。
[2−2.機能構成]
図2に示すように、測定装置100を機能的に表すと、照射部110、受光部120、圧迫部130、及び推定装置200を備えて構成される。推定装置200は、処理部140、記憶部150、及び表示部160を備える。
以下、各部の構成を説明する。
<照射部>
照射部110は、照射ユニット10である。本実施形態の照射部110は、6種類の波長成分の光を含む照射光を測定対象に照射する。推定装置200は、照射部110から照射される照射光のタイミングを制御することで、所定の時間又は周期で測定対象に照射光を照射することができる。また、推定装置200は、照射部110から照射される照射光の照射強度を制御することができる。
<受光部>
受光部120は、受光ユニット20である。受光部120は、測定対象を透過した透過光を検出して、透過光の受光強度を測定する。本実施形態の受光部120は、少なくとも照射部110から出射される照射光に応じた種類の波長の受光強度を測定する。受光部120は、受光強度を表す受光信号を推定装置200に出力する。推定装置200は、受光部120で透過光を検出するタイミング及び検出波長を制御することができる。
<圧迫部>
圧迫部130は、カフ30である。圧迫部130は、測定対象において、透過光を検出する部位よりも血液の上流部分を圧迫して、血流変化を生じさせる。圧迫部130によるカフ30の動作によって、カフ30の装着部位における組織が圧迫されると共に、装着部位における血管が圧迫される。これにより、測定部位へと向かう血管の血流が妨げられて、測定部位へ流れる血液の量が減少する。カフ30の装着部位を圧迫して所定の期間が経過した後に、カフ30による組織及び血管の圧迫を解除することで、血管に血液が流入して、測定部位へと流れる血液の量が圧迫前と同程度にまで回復する。このようにして、測定部位における血流変化を生じさせることができる。推定装置200は、圧迫部130による圧迫のタイミングを制御することで、所定の時間又は周期で測定部位の血流変化を生じさせることができる。また、推定装置200は、圧迫部130によるカフ30の圧力を制御することで、測定部位の血流量を変化させることができる。
本実施形態において、圧迫部130により装着部位を圧迫する時間の長さは特に限定されないが、通常20秒以上、好ましくは1分以上であり、通常4分以下、好ましくは1分以下、より好ましくは30秒以下である。
また、圧迫部130によるカフ30の圧力は特に限定されないが50mmHg以上、240mmHg以下が好ましい。
<記憶部>
記憶部150は、メモリ50を用いてデータを格納している。記憶部150は、受光部120で得られた情報、及び処理部140で信号処理された情報を格納することができる。例えば、記憶部150は、受光部120で測定された受光強度を格納することができる。また、記憶部150は、計算部141で照射強度及び受光強度から算出される吸光度を格納することができる。また、記憶部150は、計算部141で算出される減衰項を格納することができる。また、記憶部150は、CPU40に実行させることで、後述する計算部141としてそれぞれ機能させるプログラムを予め保存する。これらのプログラムをあわせて、本件のプログラム(推定プログラム)と称する。
<処理部>
処理部140は、CPU40で演算処理される機能部位であり、各機能は個別のプログラムとして構成されている。処理部140は、図2で示すように、計算部141として機能する。
本件のプログラムは、例えばフレキシブルディスク、CD(CD−ROM,CD−R,CD−RW等)、DVD(DVD−ROM,DVD−RAM,DVD−R,DVD+R,DVD−RW,DVD+RW,HD DVD等)、ブルーレイディスク、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク等の、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録された形態で提供される。そして、推定装置200はその記録媒体からプログラムを読み取って内部記憶装置(例えば、メモリ50)または外部記憶装置に転送し格納して用いる。または、本件のプログラムを、例えば磁気ディスク,光ディスク,光磁気ディスク等の図示しない記憶装置(記録媒体)に記録しておき、その記憶装置から通信経路を介して推定装置200に提供するようにしてもよい。
<計算部>
〔酸素飽和度の算出について(1)〕
計算部141は、照射光の照射強度と透過光の受光強度とに基づいて、測定対象の酸素飽和度を算出するものである。なお、ここでの受光強度は、圧迫部130によって透過光を検出する部位よりも上流側を圧迫して血流変化を生じさせることで、時間経過に伴う測定対象の血流変化に応じた強度を測定したものが用いられる。
まず、計算部141は、下記式(1)によって、照射光の照射強度と透過光の受光強度とから、全体吸光度Aを求めることができる。
(式(1)中、A(λ,t)は、時間tにおける、波長λに対する吸光度を表す。
I(λ,t)は、時間tにおける、波長λに対する透過光の受光強度を表す。
0(λ,t)は、時間tにおける、波長λに対する照射強度を表す。)
次に、計算部141は、MBL法を用いることで、式(2)に示すように、時間tにおける波長λに対する全体吸光度Aを、各減衰項の和からなる時間の関数として表すことができる。なお、ここでは、減衰項として、酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、メラニンによる減衰項と、水による減衰項と、脂肪による減衰項と、散乱光による減衰項とが含まれる。また、計算部141は、全体吸光度Aを、透過光のN種類の波長に対するN元の連立方程式で表すことができる。また、計算部141は、式(3)に示すように、このN元の連立方程式を行列の形式で表すことができる。本実施形態では、式(3)においてN=6となる。
(式(2)中、A(λ,t)は、式(1)の説明と同様である。
εHbO2(λ)は、波長λに対する、酸素化ヘモグロビンのモル吸光係数を表す。
εHb(λ)は、波長λに対する、脱酸素化ヘモグロビンのモル吸光係数を表す。
εmelanin(λ)は、波長λに対する、メラニンのモル吸光係数を表す。
εwater(λ)は、波長λに対する、水のモル吸光係数を表す。
εfat(λ)は、波長λに対する、脂肪のモル吸光係数を表す。
HbO2(t)は、時間tにおける、酸素化ヘモグロビンのモル濃度を表す。
Hb(t)は、時間tにおける、脱酸素化ヘモグロビンのモル濃度を表す。
melanin(t)は、時間tにおける、メラニンのモル濃度を表す。
water(t)は、時間tにおける、水のモル濃度を表す。
fat(t)は、時間tにおける、脂肪のモル濃度を表す。
G(t)は、時間tにおける、散乱光による減衰項を表す。)
(式(3)中、A(t)は、時間tにおける、上付き文字に記載の第1から第NまでのN個の波長λに対する吸光度をそれぞれ表す。
εHbO2(λ)、εHb(λ)、εmelanin(λ)、εwater(λ)、εfat(λ)は、上付き文字に記載の第1から第NまでのN個の波長λに対するモル吸光係数をそれぞれ表す。各モル吸光係数の下付文字との対応関係は、式(2)の説明と同様である。
HbO2(t)、CHb(t)、Cmelanin(t)、Cwater(t)、Cfat(t)、G(t)は、式(2)の説明と同様である。)
式(3)は、全体吸光度Aと、モル吸光係数Eと、モル濃度Cとの関係から、式(4)によって表すことができる。
さらに、式(4)を変形することで、式(5)のように、モル濃度Cを、全体吸光度Aと、モル吸光係数Eとによって表すことができる。
計算部141は、最小二乗法を用いて、式(5)のモル濃度Cが最小となる解を算出する。計算部141は、各減衰項のモル濃度CHbO2(t)、CHb(t)、Cmelanin(t)、Cwater(t)、及びCfat(t)、並びに散乱光による減衰項G(t)を最小二乗解として算出することができる。さらに、計算部141は、下記式(6)から、酸素飽和度(組織酸素飽和度)を算出することができる。また、計算部141は、各減衰項のモル濃度と、公知のモル吸光係数との積から、各減衰項の値を算出することができる。
(式(2)中、StO2は酸素飽和度を表す。)
ここで、圧迫部130によって上流側の血管を圧迫して血流を遮断し、さらに圧迫から解放するようにして、血流変化を生じさせた場合において、上述した方法により算出される酸素飽和度の時間による変化は、図4に示される。同様に、酸素飽和度、酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン、及びヘモグロビンの濃度、並びにメラニンによる減衰項、水による減衰項、脂肪による減衰項、散乱光による減衰項の時間による変化を図5に示す。図4,図5では、1分付近から圧迫を開始して、4分10秒付近で圧迫を解放している。
図4,図5に示すように、約1分〜約4分の間の血流変化に伴い、酸素化ヘモグロビンの減少と、脱酸素化ヘモグロビンの増加に加えて、組織歩酸素飽和度が低下していることが分かる。また、圧迫の解放によって、組織歩酸素飽和度が増加している様子が測定されている。一方で、図5に一点鎖線で囲って示したように、血流変化が生じる約1分〜約4分の間、及び血流変化を生じさせていない約4分〜約7分の間において、メラニン及び脂肪の減衰項が変化していることが分かる。
ここで、酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビンは、血管を流れるヘモグロビンに由来するものであるため、血流の減少に伴う血中酸素量の低下によって、それぞれの濃度の変化が見られているのだと考えられる。一方、メラニン、水、脂肪といったヘモグロビン以外の成分は、測定対象の組織に含まれるものである。このため、測定部位の上流を圧迫して血流変化を変化させた場合には、測定部位には影響が少なく、ヘモグロビン以外の成分の減衰項には変化が生じないと予測される。しかしながら、上記測定では変化が生じていた。これは、式(3)から各減衰項のモル濃度を求める際に、ヘモグロビン以外の成分が、変動するヘモグロビンの成分の推定の影響を受けて、引っ張られるように変化しているためと考えられる。このように、本来変化が生じないであろうと考えられる成分に変化が生じていることは、酸素飽和度の算出の精度に影響を及ぼしていると考えられる。このため、以下に説明するように、計算部141は、他の吸光物質による減衰項が時間経過により変化しないとして、ステップ1の手法を行うことが好ましい。また、以下に説明するように、計算部141は、ステップ1の手法とステップ2の手法とを組み合わせて酸素飽和度の算出を行うことが好ましい。
〔酸素飽和度の算出について(2)〕
上述の通り、計算部141は、他の吸光物質による減衰項が時間経過により変化しないとして、酸素飽和度の算出を行うことが好ましい。このとき、計算部141は、以下に説明するステップ1とステップ2との2ステップにより酸素飽和度の算出を行うことがさらに好ましい。
・ステップ1
予め、測定位置の上流部分を圧迫して血流関連成分のみ変化させた状態において、酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、散乱光による減衰項が時間経過により変化して、他の吸光物質(メラニン、水、及び脂肪)による減衰項が、時間変化しないと仮定して、式(2)中の各減衰項を算出する。ここで、酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン、メラニン、水、及び脂肪による減衰項は、各減衰項のモル濃度とモル吸光係数との積により得られる。そして、モル吸光係数は時間経過によらず一定と考えられる。このため、計算部141は、最小二乗法を用いて、式(5)のモル濃度Cが最小となる解を算出する際に、酸素化ヘモグロビンによる減衰項のモル濃度と、脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項のモル濃度とが時間経過により変化して、メラニン、水、及び脂肪による減衰項のモル濃度が時間経過により変化しないと仮定して、各減衰項のモル濃度を算出する。この際、散乱による減衰は、ヘモグロビンが散乱体としても振舞うことから血流変化による影響を受けると想定している。さらに、算出された各減衰項のモル濃度とモル吸光係数との積から、各減衰項の値を算出することができる。中でも、他の吸光物質による減衰項を算出することが好ましい。
上記の算出において、時間経過のデータを利用する際、5点以上の時刻でのデータを用いるのが望ましいが、それらのデータは、血流量としてばらつきをもった点としてサンプリングすることが望ましい。このためには酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンとが互いに類似したモル吸光係数をとる800nm付近で計測した吸光度に着目し、血流を変動させた時間帯の中で、この吸光度が最大値、1/4値、1/2値、3/4値、最小値をとる時刻を選択する方法が有望である。ただし、これに限定されるものではない。
なお、ステップ1において、他の吸光物質による減衰項が、時間変化しないと仮定する場合、これらの成分による減衰項は、上記式(2)におけるメラニンによる減衰項εmelanin(λ)・Cmelanin(t)、水による減衰項εwater(λ)・Cwater(t)、脂肪による減衰項εfat(λ)・Cfat(t)と設定することができる(後述する式(7)参照)。
・ステップ2
ステップ1以降に測定を行った場合において、照射強度と受光強度に基づいて算出される全体吸光度から、ステップ1で算出された他の吸光物質による減衰項を差し引いて、酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項を算出する。
なお、ステップ2の手法は、ステップ1で算出された吸光度を用いるものであるが、他の吸光物質による減衰項の値には個人差があるため、通常は、ステップ1で測定した同一人物の減衰項を、ステップ2で用いることができる。
計算部141による処理を、式を参照して説明すると、式(2)において、εHbO2(λ)・CHbO2(t)、εHb(λ)・CHbO2(t)、G(t)の項、すなわち酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン、及び散乱光による減衰項を時間経過より変化すると仮定する。そして、下記式(7)で表される、メラニンによる減衰項εmelanin(λ)・Cmelanin(t)、水による減衰項εwater(λ)・Cwater(t)、脂肪による減衰項εfat(λ)・Cfat(t)を時間経過より変化しないと仮定する。
そして、ステップ1では、式(7)で表される、時間変化しない成分を算出する。さらに、下記式(8)に示すように、全体吸光度から、時間経過より変化しないと仮定して算出された式(7)の成分を差し引くことにより、酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビンによる吸光度、並びに散乱光による減衰を算出することができる。そして、式(8)から最小二乗法によりCHbO2(t)、CHb(t)を算出して、式(6)により酸素飽和度を求めることができる。
ここで、圧迫部130によって上流側の血管を圧迫して血流を遮断し、さらに圧迫から解放するようにして、血流変化を生じさせた場合において、上述した2ステップの方法により算出される酸素飽和度の時間による変化は、図6に示される。図6では、図4に示した「変化しないと仮定しない」手法により求めた酸素飽和度の変化と、「変化しないと仮定する」2ステップの手法により求めた酸素飽和度の変化との両方を示している。同様に、上述した2ステップの方法により算出される、酸素飽和度、オキシヘモグロビン、デオキシヘモグロビン、及びヘモグロビンの濃度、並びにメラニンによる減衰項、水による減衰項、脂肪による減衰項、及び散乱光による減衰項の時間による変化を図7に示す。
図6に示すように、「変化しないと仮定する」手法により求めた酸素飽和度は、「変化しないと仮定しない」手法により求めた場合よりも、約4分の付近において、吸光度が10%近く低下して算出された。このため、「変化しないと仮定する」2ステップの手法によって、酸素飽和度の推定の精度が向上したと考えられる。また、図7に示すように、他の吸光物質(メラニン、水、及び脂肪)による減衰項を時間変化しないと仮定しているため、これらの値はほぼ一定となっている。
なお、上述した各減衰項の変化は、図7(d)において「step1で使ったサンプル点」で示した5点の時刻のデータを用いて算出したものである。図7(d)を単独で表すとともに縦軸を拡大すると、図8のように表される。図8では、波長が800nmに近いバンドの吸光度(Aλ800)の計測値と時刻との関係を示している。上述した各減衰項の変化では、吸光度が、最大値、1/4値、1/2値、3/4値、最小値をとる、サンプル点5、サンプル点2、サンプル点3、サンプル点4、サンプル点1の時刻のデータを選択した。
上記説明では、酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン、メラニン、水、及び脂肪について、波長λに対する吸光係数を利用して酸素飽和度を算出する場合を例に挙げて説明した。これら減衰項の吸光係数は、例えば図9に示すように、公知の値を利用することができる。
<表示部>
表示部160は、表示装置60である。表示部160は、受光部120で得られた情報、処理部140で信号処理された情報、及び記憶部150に格納される情報等を表示することができる。例えば、表示部160は、受光部120で測定された受光強度を表示することができる。また、表示部160は、計算部141で算出される全体吸光度、及び各減衰項の値、並びに酸素飽和度を表示することができる。
[3.動作]
上述した測定装置100及び推定装置200の動作によって行う、本実施形態の酸素飽和度の推定方法について、図10,図11のフローチャートを参照して説明する。ここでは、図10のフローチャートを参照して、上述した計算部141によるステップ1の処理を経て酸素飽和度を算出する場合を例に挙げて説明する。また、図11のフローチャートを参照して、上述した計算部141によるステップ2の処理を経て酸素飽和度を算出する場合を例に挙げて説明する。
〔酸素飽和度の算出(1)〕
まず、圧迫部130によって、測定対象の透過光を検出する部位よりも上流部分を圧迫して、測定部位に血流変化を生じさせる(ステップS101)。
次に、照射部110は、照射光を測定対象の測定部位である水かき部分に照射する(ステップS102)。ここでは、6種類の波長成分の光を含む照射光を照射している。また、照射部110は、推定装置200の制御によって、所望の照射強度の照射光が出射される。
続いて、受光部120は、水かき部分を透過した透過光を検出する(ステップS103)。このとき、受光部120は、少なくとも照射光の波長に応じた波長の受光強度を測定する。また、受光部120によって測定される受光強度は、時間経過に伴う測定対象の血流変化に応じた強度を測定したものである。受光部120は、受光強度の測定値を、推定装置200に出力する。受光強度の測定後、圧迫部130による圧迫を解除する。
計算部141は、照射光の照射強度と、透過光の受光強度に基づいて、照射光の波長成分それぞれにおける全体吸光度を算出する(ステップS104)。
次に、計算部141は、全体吸光度を、酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、メラニン、水、及び脂肪による減衰項と、散乱光による減衰項の和からなる時間の関数として表した、N種類の波長に対応するN元の連立方程式を解いて、各減衰項のモル濃度を算出する(ステップS105)。このとき、計算部141は、式(3)の行列を用いて、最小二乗法により算出を行う。また、ここでは、酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、散乱光による減衰項とが時間経過により変化して、メラニン、水、及び脂肪による減衰項が時間経過により変化しないと仮定する。そして、酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、メラニン、水、及び脂肪による減衰項とのそれぞれのモル濃度、並びに散乱光による減衰項を算出する。
続いて、計算部141は、酸素化ヘモグロビンのモル濃度と、脱酸素化ヘモグロビン)のモル濃度とから、式(6)を用いて酸素飽和度を算出する(ステップS106)。計算部141は、求めた酸素飽和度のデータを表示部160に出力する。表示部160は、酸素飽和度のデータを受信して、酸素飽和度を表示する。
さらに、計算部141は、メラニン、水、及び脂肪による減衰項のモル濃度とモル吸光係数との積から、メラニン、水、及び脂肪による減衰項を算出する(ステップS107)。計算部141は、算出された各減衰項の値を記憶部150に出力する。記憶部150は、これらの情報を格納する。ステップS101〜S105,S107における処理は、計算部141によるステップ1の処理に相当する。
〔酸素飽和度の算出(2)〕
ステップS201〜S203では、ステップS101〜S103と同様にして、上流部分を圧迫して、測定部位に血流変化を生じさせた状態で、照射光の照射と透過光の受光強度の測定を行う。さらに、計算部141は、ステップS104と同様に、照射光の照射強度と、透過光の受光強度に基づいて、照射光の波長成分それぞれにおける全体吸光度を算出する(ステップS204)。
次に、計算部141は、ステップS105において予め算出された、他の吸光物質(メラニン、水、及び脂肪)による減衰項の値を記憶部150から読み出す。そして、式(8)に示すように、全体吸光度から、メラニン、水、及び脂肪の成分による減衰項を差し引く(ステップS205)。
さらに、計算部141は、ステップS205において、メラニン、水、及び脂肪の成分による減衰項が差し引かれた全体吸光度から、酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビンのモル濃度、並びに散乱光による減衰項を算出する(ステップS206)。
続いて、計算部141は、ステップS106と同様にして、式(6)を用いて酸素飽和度を算出する(ステップS207)。計算部141は、求めた酸素飽和度のデータを表示部160に出力する。表示部160は、酸素飽和度のデータを受信して、酸素飽和度を表示する。
[4.効果]
〔1〕推定装置200は、計算部141による演算によって、時間経過に伴う測定対象の血流変化に応じた強度を測定した受光強度及び照射強度に基づいて全体吸光度を算出する。さらに、全体吸光度をヘモグロビンによる減衰項と、ヘモグロビン以外の要素による減衰項との和からなる時間の関数として表した連立方程式を解くことで、酸素化ヘモグロビンのモル濃度と脱酸素化ヘモグロビンのモル濃度とを算出し、酸素飽和度を算出することができる。このように推定装置200では、血流の時間変化を利用することで、測定対象に含まれるヘモグロビン以外の成分の影響を抑えて、酸素飽和度を算出することができる。またこのとき、例えば血流を遮断する程度に圧迫を加えることや、そのための圧迫の制御、または測定部位における圧迫を要求するものではない。したがって、測定に伴って測定部位に及ぼされる影響が抑えられたものとなり、酸素飽和度の推定精度を向上させることができる。
従来のパルスオキシメータは、拍動を利用して動脈血の酸素飽和度を測定するものであった。測定装置100及び推定装置200によれば、心拍停止や、体動アーティファクトから受ける影響が大きい場合等の拍動の検出が困難な測定対象者に対しても、全体吸光度に含まれるヘモグロビンによる減衰項と、ヘモグロビン以外の要素による減衰項と区別することで、酸素飽和度測定が可能となる。なお、測定装置100及び推定装置200による測定と同時に計測した従来のパルスオキシメータの値との相関を求めることで、拍動がない場合においても、パルスオキシメータの代わりとして患者の状態を把握する際に用いることができる。また、測定装置100及び推定装置200は、構造がパルスオキシメータに似ているため、拍動の検出が可能な場合は、拍動による動脈血の酸素飽和度測定をすることも可能である。
〔2〕計算部141が全体吸光度から各減衰項を推定するに際して、ヘモグロビン以外の要素による減衰項として、ヘモグロビン以外の吸光物質による減衰項と、散乱光による減衰項とを推定する。このように、ヘモグロビン以外の吸光物質による影響に加えて、散乱光による影響を考慮することで、酸素飽和度の推定精度をより向上させることができる。
〔3〕計算部141が全体吸光度から各減衰項を推定するに際して、ヘモグロビン以外の要素による減衰項として、メラニン、水、及び脂肪からなる群より選ばれる少なくとも一つによる減衰項を含む。このように、測定対象として生体に多く含まれ、且つ透過光の強度に影響を与えやすい物質を考慮することで、酸素飽和度の推定精度をより向上させることができる。
〔4〕計算部141は、最小二乗法を用いて吸光度に関する連立方程式を解く。このとき、酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項とが時間経過により変化して、ヘモグロビン以外の吸光物質による減衰項が時間経過により変化しないとして、各減衰項を算出する。これにより、血流変化による変化が生じにくいヘモグロビン以外の吸光物質による減衰項が、ヘモグロビンによる減衰項を算出するに伴って、変化するように算出されてしまうことを防ぐことができる。従って、酸素飽和度の推定精度をさらに向上させることができる。
〔5〕計算部141は、ヘモグロビン以外の吸光物質による減衰項を算出することで予め取得しておき、これを全体吸光度から差し引いて、酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項を算出する。これにより、最小二乗法を用いてモル濃度を算出する際の処理量を軽減して、モル濃度及び酸素飽和度を速やかに算出することができる。
〔6〕測定装置100は、照射光を測定対象に照射する照射部110と、透過光を検出して受光強度を測定する受光部120とを備える。このように、測定装置100は、透過型であるため、透過光は主要な血液分布を通過することから、反射型の場合と比べて比較的に精度の高い測定を行うことができる。
〔7〕照射部110は照射光を測定対象の水かき部分に照射して、受光部120は水かき部分を透過した透過光を検出することで、組織酸素飽和度を測定することができる。水かきの部分では、例えば指と比べて比較的に低い強度の照射光で測定を行うことができる。したがって、長い時間測定を行った場合の低温やけどの症状が生じるおそれを低減することができる。また、装置の小型化が可能となる。
〔8〕測定装置100は、透過光を検出する部位よりも上流側の血管を圧迫して、血流変化を生じさせる圧迫部130をさらに備える。圧迫部130により血流変化を生じさせることで、計算部141による各減衰項及びの濃度の測定が可能である。また、測定装置100によれば、血流を遮断するほどの圧力で血管を圧迫するような、圧力の制御を要することなく測定をおこなうことができる。
[5.用途]
測定装置100及び推定装置200は、測定対象を透過した透過光の強度を測定することによって、被検体(測定対象)の酸素飽和度の測定に用いられる。測定対象は特に限定されないが、例えば、人や、人以外の動物等が挙げられる。
[6.その他]
上記の実施形態では、圧迫部130として、カフ30を用いて測定部位の上流部分で圧迫を行い、血流変化を生じさせる場合を例に挙げて説明した。圧迫部130はこれに限定されない。例えば、測定部位の上流部分を手で抑えたり、駆血帯を巻きつけたりすることで圧迫し、血流変化を生じさせてもよい。
100 酸素飽和度測定装置
200 酸素飽和度推定装置
10 照射ユニット
20 受光ユニット
30 カフ
110 照射部
120 受光部
130 圧迫部
140 処理部

Claims (10)

  1. 測定対象に照射されたN種類(Nは3以上の整数)の波長成分の光を含む照射光の照射強度と、前記測定対象を透過した透過光の受光強度とに基づいて、前記測定対象の血液中の酸素飽和度を算出する計算部を備え、
    前記受光強度は、時間経過に伴う前記測定対象の血流変化に応じた強度を測定したものであり、
    前記計算部は、
    前記照射強度及び前記受光強度に基づいて、前記波長成分それぞれにおける全体吸光度を算出し、
    前記全体吸光度を、酸素化ヘモグロビンのモル吸光係数とモル濃度との積からなる減衰項と、脱酸素化ヘモグロビンのモル吸光係数とモル濃度との積からなる減衰項と、前記酸素化ヘモグロビン及び前記脱酸素化ヘモグロビン以外の要素による減衰項とのそれぞれの和からなる時間の関数として表した、N種類の波長に対応するN元の連立方程式を解いて、前記酸素化ヘモグロビンのモル濃度と前記脱酸素化ヘモグロビンのモル濃度とを算出し、
    前記酸素化ヘモグロビンによる減衰項のモル濃度と、前記脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項のモル濃度とから前記酸素飽和度を算出する
    ことを特徴とする、酸素飽和度推定装置。
  2. 前記酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビン以外の要素による減衰項は、前記酸素化ヘモグロビン及び前記脱酸素化ヘモグロビン以外の吸光物質による減衰項と、散乱光による減衰項とを含む、
    請求項1に記載の酸素飽和度推定装置。
  3. 前記酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビン以外の吸光物質による減衰項は、メラニン、水、及び脂肪からなる群より選ばれる少なくとも一つによる減衰項を含む、
    請求項2に記載の酸素飽和度推定装置。
  4. 前記計算部は、
    最小二乗法を用いて前記連立方程式を解き、
    前記連立方程式を解く際に、前記酸素化ヘモグロビンによる減衰項と、前記脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項とが時間経過により変化して、前記酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビン以外の吸光物質による減衰項が時間経過により変化しないとして、各減衰項を算出する、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸素飽和度推定装置。
  5. 前記計算部は、
    前記測定対象についての前記連立方程式を解いて、前記酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビン以外の吸光物質による減衰項を算出することで予め取得し、
    前記連立方程式を解く際に、前記全体吸光度から、予め取得した前記酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビン以外の吸光物質による減衰項を差し引いて、前記酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項を算出する請求項4に記載の酸素飽和度推定装置。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸素飽和度推定装置と、
    前記照射光を前記測定対象に照射する照射部と、
    前記透過光を検出して、前記透過光の受光強度を測定する受光部とを備える
    ことを特徴とする、酸素飽和度測定装置。
  7. 前記測定対象が、人又は人以外の動物であり、
    前記照射部は、前記照射光を前記測定対象の水かき部分に照射し、
    前記受光部は、前記水かき部分を透過した前記透過光を検出する、
    請求項6に記載の酸素飽和度測定装置。
  8. 前記測定対象において、前記透過光を検出する部位よりも上流側の血管を圧迫して、前記血流変化を生じさせる圧迫部をさらに備える
    請求項6又は7に記載の酸素飽和度測定装置。
  9. コンピュータを、
    測定対象に照射されたN種類(Nは3以上の整数)の波長成分の光を含む照射光の照射強度と、前記測定対象を透過した透過光の受光強度とに基づいて、前記測定対象の血液中の酸素飽和度を算出する計算部として機能させ、
    前記受光強度は、時間経過に伴う前記測定対象の血流変化に応じた強度を測定したものであり、
    前記計算部は、
    前記照射強度及び前記受光強度に基づいて、前記波長成分それぞれにおける全体吸光度を算出し、
    前記全体吸光度を、酸素化ヘモグロビンのモル吸光係数とモル濃度との積からなる減衰項と、脱酸素化ヘモグロビンのモル吸光係数とモル濃度との積からなる減衰項と、酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビン以外の要素による減衰項とのそれぞれの和からなる時間の関数として表した、N種類の波長に対応するN元の連立方程式を解いて、前記酸素化ヘモグロビンのモル濃度と前記脱酸素化ヘモグロビンのモル濃度とを算出し、
    前記酸素化ヘモグロビンによる減衰項のモル濃度と、前記脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項のモル濃度とから前記酸素飽和度を算出する、
    ことを特徴とする、酸素飽和度推定プログラム。
  10. 測定対象に照射されたN種類(Nは3以上の整数)の波長成分の光を含む照射光の照射強度と、前記測定対象を透過した透過光の、時間経過に伴う前記測定対象の血流変化に応じた強度を測定した受光強度に基づいて、前記波長成分それぞれにおける全体吸光度を算出するステップと、
    前記全体吸光度を、酸素化ヘモグロビンのモル吸光係数とモル濃度との積からなる減衰項と、脱酸素化ヘモグロビンのモル吸光係数とモル濃度との積からなる減衰項と、酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビン以外の要素による減衰項とのそれぞれの和からなる時間の関数として表した、N種類の波長に対応するN元の連立方程式を解いて、前記酸素化ヘモグロビンのモル濃度と前記脱酸素化ヘモグロビンのモル濃度とを算出するステップと、
    前記酸素化ヘモグロビンによる減衰項のモル濃度と、前記脱酸素化ヘモグロビンによる減衰項のモル濃度とから酸素飽和度を算出するステップとを備える、
    ことを特徴とする、酸素飽和度推定方法。
JP2017182977A 2017-09-22 2017-09-22 酸素飽和度推定装置、酸素飽和度測定装置、酸素飽和度推定プログラム、及び酸素飽和度推定方法 Pending JP2019058210A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017182977A JP2019058210A (ja) 2017-09-22 2017-09-22 酸素飽和度推定装置、酸素飽和度測定装置、酸素飽和度推定プログラム、及び酸素飽和度推定方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017182977A JP2019058210A (ja) 2017-09-22 2017-09-22 酸素飽和度推定装置、酸素飽和度測定装置、酸素飽和度推定プログラム、及び酸素飽和度推定方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2019058210A true JP2019058210A (ja) 2019-04-18

Family

ID=66176823

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017182977A Pending JP2019058210A (ja) 2017-09-22 2017-09-22 酸素飽和度推定装置、酸素飽和度測定装置、酸素飽和度推定プログラム、及び酸素飽和度推定方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2019058210A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7263486B1 (ja) 2021-11-08 2023-04-24 浜松ホトニクス株式会社 代謝測定装置、代謝算出方法および代謝算出プログラム

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1989001758A1 (en) * 1987-09-04 1989-03-09 Vander Corporation Spectrophotometric method for quantitatively determining the concentration of a dilute component in a light- or other radiation-scattering environment
JPH11244267A (ja) * 1998-03-03 1999-09-14 Fuji Photo Film Co Ltd 血中成分濃度測定装置
JP2009011850A (ja) * 2004-03-30 2009-01-22 Toshiba Corp 生体情報計測装置
US20130281803A1 (en) * 2012-04-18 2013-10-24 Hutchinson Technology Incorporated Nirs device with optical wavelength and path length correction
JP2016187539A (ja) * 2015-03-30 2016-11-04 日本光電工業株式会社 生体情報測定システム

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1989001758A1 (en) * 1987-09-04 1989-03-09 Vander Corporation Spectrophotometric method for quantitatively determining the concentration of a dilute component in a light- or other radiation-scattering environment
JPH11244267A (ja) * 1998-03-03 1999-09-14 Fuji Photo Film Co Ltd 血中成分濃度測定装置
JP2009011850A (ja) * 2004-03-30 2009-01-22 Toshiba Corp 生体情報計測装置
US20130281803A1 (en) * 2012-04-18 2013-10-24 Hutchinson Technology Incorporated Nirs device with optical wavelength and path length correction
JP2016187539A (ja) * 2015-03-30 2016-11-04 日本光電工業株式会社 生体情報測定システム

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7263486B1 (ja) 2021-11-08 2023-04-24 浜松ホトニクス株式会社 代謝測定装置、代謝算出方法および代謝算出プログラム
WO2023079808A1 (ja) * 2021-11-08 2023-05-11 浜松ホトニクス株式会社 代謝測定装置、代謝算出方法および代謝算出プログラム
JP2023069585A (ja) * 2021-11-08 2023-05-18 浜松ホトニクス株式会社 代謝測定装置、代謝算出方法および代謝算出プログラム

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5607358B2 (ja) 組織酸素化の測定
JP4284674B2 (ja) 血中吸光物質濃度測定装置
KR100612827B1 (ko) 비 침습적인 헤모글로빈 농도와 산소 포화도 모니터링방법 및 장치
JP4176480B2 (ja) 非侵襲性のヘマトクリット測定値の精度を改善するための方法および装置
US8649838B2 (en) Wavelength switching for pulse oximetry
JP5096310B2 (ja) 身体の部位における血液の灌流を決定するための方法及び装置
JP2010521266A (ja) 血液成分濃度の非侵襲連続測定法
JP6667456B2 (ja) 対象のヘマトクリット値を非侵襲的に決定するプロセッサ、プログラム、デバイス及び方法
US8017407B2 (en) Device and method for monitoring blood parameters
WO2001084107A2 (en) Method for non-invasive spectrophotometric blood oxygenation monitoring
JP2007509718A5 (ja)
JP2008532680A5 (ja)
JP6878312B2 (ja) 光電式容積脈波記録法装置
AU2004285542A1 (en) Device and method for monitoring body fluid and electrolyte disorders
JP6276195B2 (ja) 血液中のヘモグロビン濃度を非侵襲的に測定するための方法、集成装置、センサ、及びコンピュータ・プログラム製品
JPWO2007139192A1 (ja) 光学的測定装置、光学的測定方法、及び光学的測定プログラムを格納した記憶媒体
WO2011135965A1 (ja) 散乱吸収体測定方法及び装置
US9597025B2 (en) Biological signal measuring system and biological signal measuring apparatus
JP2019058210A (ja) 酸素飽和度推定装置、酸素飽和度測定装置、酸素飽和度推定プログラム、及び酸素飽和度推定方法
US20090030296A1 (en) Predictive oximetry model and method
JP6698422B2 (ja) ヘマトクリット値測定装置および方法
Gazivoda et al. Measurement firmware for pulse oximetry sensor
KR102402263B1 (ko) 광자 확산 이론을 이용한 비침습적 당화혈색소 측정 시스템 및 그 방법
JP4272024B2 (ja) 光生体計測装置
JP7378118B2 (ja) 生体情報計測方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170925

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171024

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20171024

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171101

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200918

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210608

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20211130