本発明は、スクロール圧縮機に関するものである。
従来より、固定スクロールと可動スクロールを備えたスクロール圧縮機が知られている。一般的なスクロール圧縮機には、可動スクロールの自転を規制するためにオルダム継手が設けられている。オルダム継手は、通常、可動スクロールとハウジングの間に配置される(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、オルダム継手の往復運動による慣性力を釣り合わせるためのバランスウエイトの取り付け位置又は質量を、オルダム継手の不釣り合い慣性力による振動が、密閉容器とアキュムレータとの接続方向と直角あるいはそれに近い角度に伝達されるように取り付けた構成が開示されている。
これにより、アキュムレータに伝達される振動が小さくなり、アキュムレータに接続する配管系の振動を小さくすることで、空調機全体の騒音の低減を図るようにしている。
ところで、従来の発明は、オルダム継手の不釣り合い慣性力による振動を、バランスウエイトを用いて所定方向に伝達させるようにしたものであり、振動自体を抑えるものではない。そして、オルダム継手の重量は、圧縮機全体の重量に比べて軽量であることから、振動の影響については、特に考慮されていなかった。
しかしながら、近年の圧縮機の大型化や高速化に伴い、オルダム継手の不釣り合い慣性力による圧縮機の剛性振動が無視できなくなっており、その対策が望まれていた。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、オルダム継手の往復運動に伴う圧縮機の剛体振動を抑えることにある。
本発明は、固定スクロール(30)と、該固定スクロール(30)とともに圧縮室(21)を形成する可動スクロール(40)と、該可動スクロール(40)に係合する駆動軸(60)と、該駆動軸(60)を回転自在に支持するハウジング(50)と、該可動スクロール(40)と該ハウジング(50)の間に配置されて該可動スクロール(40)の自転を規制するための往復運動を行うオルダム継手(90)とが、ケーシング(15)内に収容されたスクロール圧縮機を対象とし、次のような解決手段を講じた。
すなわち、第1の発明は、前記ケーシング(15)には、該ケーシング(15)を支持する支持脚(27)が、前記オルダム継手(90)の往復運動方向の両端側にそれぞれ設けられていることを特徴とするものである。
第1の発明では、オルダム継手(90)の往復運動による慣性力の影響で、オルダム継手(90)の往復運動方向の加振力が大きくなっている。そこで、ケーシング(15)の支持脚(27)を、オルダム継手(90)の往復運動方向の両端側にそれぞれ設けることで、オルダム継手(90)の往復運動方向の支持剛性を上げるようにしている。
このように、ケーシング(15)の支持脚(27)の配置を工夫するだけという、比較的簡単な構成で、圧縮機の剛体振動を省スペース且つ低コストで効果的に抑制することができる。また、ケーシング(15)に接続された配管に伝達される振動も低減することができる。
第2の発明は、第1の発明において、
前記支持脚(27)は、前記ケーシング(15)の周方向に間隔をあけて複数設けられ、
複数の前記支持脚(27)の下部には、防振部材(28)がそれぞれ配設され、
複数の前記防振部材(28)のうち、前記オルダム継手(90)の往復運動方向の両端側にそれぞれ設けられた該防振部材(28)のバネ定数は、その他の該防振部材(28)のバネ定数よりも高く設定されていることを特徴とするものである。
第2の発明では、ケーシング(15)の周方向に間隔をあけて複数の支持脚(27)が設けられる。オルダム継手(90)の往復運動方向の両端側にそれぞれ設けられた支持脚(27)の下部には、その他の支持脚(27)の下部に配設された防振部材(28)よりもバネ定数の高い防振部材(28)が配設されている。
これにより、オルダム継手(90)の往復運動による圧縮機の剛体振動を、バネ定数の高い防振部材(28)によって効果的に抑制することができる。
また、全ての防振部材(28)をバネ定数の高い防振部材(28)とした場合には、オルダム継手(90)の往復運動以外の要因による振動を抑えにくくなるが、本発明では、オルダム継手(90)の往復運動方向の両端側の防振部材(28)についてのみ、バネ定数の高いものを用いることで、オルダム継手(90)の往復運動による振動を抑えつつ、その他の要因による振動についても効果的に抑えることができる。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記支持脚(27)は、前記ケーシング(15)の周方向に間隔をあけて複数設けられ、
複数の前記支持脚(27)は、前記駆動軸(60)の軸方向から見て前記オルダム継手(90)の往復運動方向に対して線対称となるように配設されていることを特徴とするものである。
第3の発明では、複数の支持脚(27)を、駆動軸(60)の軸方向から見てオルダム継手(90)の往復運動方向に対して線対称となるように配設している。これにより、オルダム継手(90)の往復運動による慣性力が、何れかの支持脚(27)のみに偏って作用するのを抑え、ケーシング(15)をバランス良く支持することができる。
第4の発明は、前記ケーシング(15)には、前記駆動軸(60)の軸方向から見て長方形状に形成されて該ケーシング(15)を支持する支持板(35)が設けられ、
前記支持板(35)は、該支持板(35)の長辺が前記オルダム継手(90)の往復運動方向に沿って延びるように配設されていることを特徴とするものである。
第4の発明では、オルダム継手(90)の往復運動による慣性力の影響で、オルダム継手(90)の往復運動方向の加振力が大きくなっている。そこで、ケーシング(15)を支持する長方形状の支持板(35)を、支持板(35)の長辺がオルダム継手(90)の往復運動方向に沿って延びるように配設することで、オルダム継手(90)の往復運動方向の支持剛性を上げるようにしている。
このように、ケーシング(15)の支持板(35)の配置を工夫するだけという、比較的簡単な構成で、圧縮機の剛体振動を省スペース且つ低コストで効果的に抑制することができる。また、ケーシング(15)に接続された配管に伝達される振動も低減することができる。
本発明によれば、オルダム継手(90)の往復運動方向の両端側でケーシング(15)を支持することで、オルダム継手(90)の往復運動方向の支持剛性を上げ、圧縮機の剛体振動を抑えることができる。
本実施形態1に係るスクロール圧縮機の構成を示す縦断面図である。
固定スクロール及び可動スクロールを省略した状態の横断面図である。
オルダム継手の往復運動方向と支持脚との位置関係を示す横断面図である。
本実施形態2に係るスクロール圧縮機におけるオルダム継手の往復運動方向と支持板との位置関係を示す横断面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
《実施形態1》
図1に示すように、スクロール圧縮機(10)は、いわゆる全密閉圧縮機であり、冷凍サイクルを行う冷媒回路に接続され、冷媒回路の冷媒を吸入して圧縮する。スクロール圧縮機(10)は、空気調和装置の室外機の底板(11)に固定される。
スクロール圧縮機(10)では、ケーシング(15)の内部空間に、本体機構である圧縮機構(20)と、電動機(80)と、下部軸受部材(85)と、回転シャフトである駆動軸(60)とが収容されている。
ケーシング(15)は、縦長の円筒状に形成された密閉容器である。ケーシング(15)の内部空間では、上から下へ向かって順に、圧縮機構(20)と、電動機(80)と、下部軸受部材(85)とが配置されている。また、駆動軸(60)は、その軸方向がケーシング(15)の高さ方向に沿う姿勢で配置されている。なお、圧縮機構(20)の詳細な構造については、後述する。
ケーシング(15)には、吸入管(16)と吐出管(17)とが取り付けられている。吸入管(16)は、圧縮機構(20)に接続されている。吐出管(17)は、ケーシング(15)の内部空間における電動機(80)と圧縮機構(20)の間の部分に開口している。
ケーシング(15)の下部には、ケーシング(15)を室外機の底板(11)に固定するための支持ブラケット(25)が設けられている。支持ブラケット(25)は、ケーシング(15)の底部に取り付けられてケーシング(15)を下方から支持する取付部(26)と、防振部材(28)を介して底板(11)に固定される支持脚(27)とを有している。取付部(26)と支持脚(27)とは、一体に形成されている。支持脚(27)は、ケーシング(15)の周方向に間隔をあけて4つ設けられている(図3参照)。
底板(11)は、その一部が上方に膨出しており、底板(11)の膨出部分に防振部材(28)が設置されている。防振部材(28)は、上下方向に延びる円筒状のゴム材で構成されている。底板(11)の下面には、締結ナット(12)が溶接されている。
そして、支持ブラケット(25)の上方から締結ボルト(13)を差し込んで締結ナット(12)に締結させることで、ケーシング(15)の支持脚(27)と底板(11)との間に防振部材(28)が挟み込まれた状態で、ケーシング(15)が底板(11)に固定される。締結ボルト(13)と支持脚(27)との間には、ワッシャ(14)が挟み込まれている。
電動機(80)は、固定子(81)と回転子(82)とを備えている。固定子(81)は、ケーシング(15)に固定されている。回転子(82)は、固定子(81)と同軸に配置されている。回転子(82)には、駆動軸(60)の主軸部(61)が挿通されている。
駆動軸(60)には、主軸部(61)と、バランスウェイト部(62)と、偏心部(63)とが形成されている。バランスウェイト部(62)は、主軸部(61)の軸方向の途中に配置されている。主軸部(61)は、バランスウェイト部(62)よりも下側の部分が電動機(80)の回転子(82)を貫通している。
偏心部(63)は、主軸部(61)よりも小径の円柱状に形成され、主軸部(61)の上端面に突設されている。偏心部(63)の軸心は、主軸部(61)の軸心に対して偏心している。
駆動軸(60)には、上下方向に貫通する給油通路(70)が形成されている。ケーシング(15)の底部には、潤滑油である冷凍機油が貯留されている。駆動軸(60)が回転すると、ケーシング(15)の底部に貯留された冷凍機油が、給油通路(70)へ吸い上げられ、下部軸受部材(85)や圧縮機構(20)の摺動箇所へ供給される。
〈圧縮機構の構成〉
図2にも示すように、圧縮機構(20)は、ハウジング(50)と、固定スクロール(30)と、可動スクロール(40)と、オルダム継手(90)とを備えている。圧縮機構(20)では、固定スクロール(30)と可動スクロール(40)によって、流体室である圧縮室(21)が形成される。オルダム継手(90)は、可動スクロール(40)の自転運動を規制するための部材である。
ハウジング(50)は、厚肉の円板状に形成されており、その外周縁部がケーシング(15)に固定されている。ハウジング(50)の中央部には、中央凹部(51)と、環状凸部(54)とが形成されている。中央凹部(51)は、ハウジング(50)の上面に開口する円形状の窪みである。環状凸部(54)は、中央凹部(51)の外周に沿って形成され、ハウジング(50)の上面から突出している。環状凸部(54)の突端面は、平坦面となっている。また、環状凸部(54)の突端面には、その周方向に沿ってリング状の凹溝が形成されており、この凹溝にシールリング(58)が嵌め込まれている。
ハウジング(50)には、中央膨出部(52)が形成されている。中央膨出部(52)は、中央凹部(51)の下側に位置して下方へ膨出している。中央膨出部(52)には、中央膨出部(52)を上下に貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔に軸受メタル(53)が挿入されている。中央膨出部(52)の軸受メタル(53)には、駆動軸(60)の主軸部(61)が挿通され、駆動軸(60)を回転可能に支持している。
ハウジング(50)の上面のうち環状凸部(54)の外側の部分は、支持用平坦面(55)となっている。ハウジング(50)には、支持用平坦面(55)に開口する二つの固定側キー溝(56)が形成されている。
図2に示すように、固定側キー溝(56)は、駆動軸(60)の主軸部(61)の中心軸と直交する直線に沿って延びる細長い溝である。2つの固定側キー溝(56)は、駆動軸(60)の主軸部(61)の中心軸を挟んで反対側に位置している。詳しくは後述するが、ハウジング(50)では、支持用平坦面(55)がオルダム継手(90)と摺接し、固定側キー溝(56)にオルダム継手(90)の固定側キー部(93)が係合する。
図1に示すように、ハウジング(50)の上には、固定スクロール(30)と可動スクロール(40)とが載置されている。固定スクロール(30)は、ボルト等によってハウジング(50)に固定されている。一方、可動スクロール(40)は、駆動軸(60)により駆動されて公転運動を行う。
可動スクロール(40)は、可動側鏡板部(41)と、可動側ラップ(42)と、円筒部(43)とを一体に形成した部材である。可動側鏡板部(41)は、円板状に形成されている。可動側ラップ(42)は、渦巻き壁状に形成されており、可動側鏡板部(41)の上面に突設されている。
円筒部(43)は、可動側鏡板部(41)の下面に突設されており、ハウジング(50)の中央凹部(51)へ上方から挿入されている。円筒部(43)には、軸受メタル(44)が挿入されている。円筒部(43)の軸受メタル(44)には、駆動軸(60)の偏心部(63)が下方から挿入されている。
可動スクロール(40)の円筒部(43)は、ハウジング(50)の中央凹部(51)に挿入されている。また、可動スクロール(40)の可動側鏡板部(41)の下面は、ハウジング(50)の環状凸部(54)の突端面に設けられたシールリング(58)と摺接する。
可動スクロール(40)には、可動側鏡板部(41)の下面に開口する二つの可動側キー溝(46)が形成されている。可動側キー溝(46)は、駆動軸(60)の偏心部(63)の中心軸と直交する直線に沿って延びる細長い溝である。可動スクロール(40)では、可動側鏡板部(41)の下面がオルダム継手(90)と摺接し、可動側キー溝(46)にオルダム継手(90)の可動側キー部(91)が係合する。
固定スクロール(30)は、固定側鏡板部(31)と、固定側ラップ(32)と、外周部(33)とを一体に形成した部材である。固定側鏡板部(31)は、円板状に形成されている。固定側ラップ(32)は、渦巻き壁状に形成されており、固定側鏡板部(31)の下面に突設されている。外周部(33)は、固定側鏡板部(31)の外周部(33)から下方へ延びる厚肉のリング状に形成され、固定側ラップ(32)の周囲を囲っている。
固定側鏡板部(31)には、吐出ポート(22)が形成されている。吐出ポート(22)は、固定側鏡板部(31)の中央付近に形成された貫通孔であって、固定側鏡板部(31)を厚さ方向に貫通している。また、固定側鏡板部(31)の外周付近には、吸入管(16)が挿入されている。
圧縮機構(20)には、吐出ガス通路(23)が形成されている。この吐出ガス通路(23)は、その始端が吐出ポート(22)に連通している。図示しないが、吐出ガス通路(23)は、固定スクロール(30)からハウジング(50)に亘って形成されており、その他端がハウジング(50)の下面に開口している。
圧縮機構(20)において、固定スクロール(30)と可動スクロール(40)は、固定側鏡板部(31)の下面と可動側鏡板部(41)の上面が互いに向かい合い、固定側ラップ(32)と可動側ラップ(42)が互いに噛み合うように配置されている。そして、圧縮機構(20)では、固定側ラップ(32)と可動側ラップ(42)とが互いに噛み合うことによって、複数の圧縮室(21)が形成される。
図2に示すように、オルダム継手(90)は、一つのリング部(95)と、二つの可動側キー部(91)と、二つの固定側キー部(93)とを備えている。リング部(95)は、断面が矩形のリング状に形成されている。また、リング部(95)の厚さは、リング部(95)の全周に亘って一定となっている。リング部(95)の上面と下面とは、互いに平行な平坦面となっている。
運転中の圧縮機構(20)において、オルダム継手(90)のリング部(95)は、可動スクロール(40)とハウジング(50)の両方と常に摺接する。ただし、運転中の圧縮機構(20)において、オルダム継手(90)のリング部(95)が可動スクロール(40)及びハウジング(50)と物理的に接触している必要はない。
通常、リング部(95)と可動スクロール(40)の可動側鏡板部(41)の下面との間、及びリング部(95)とハウジング(50)の支持用平坦面(55)との間には、可動スクロール(40)とオルダム継手(90)をスムーズに移動させるために必要となる最小限の隙間が形成される。この隙間には冷凍機油が入り込み、この冷凍機油がオルダム継手(90)の潤滑に利用される。
リング部(95)には、その径方向の外側へ突出した部分が四つ形成されており、その部分に可動側キー部(91)と固定側キー部(93)とが一つずつ突設されている。可動側キー部(91)と固定側キー部(93)は、リング部(95)の周方向において90°間隔で交互に配置されている。
具体的に、可動側キー部(91)は、概ね直方体状の突起であって、リング部(95)の上面から突出している。2つの可動側キー部(91)は、リング部(95)の中心を挟んで反対側に配置されている。
一方、固定側キー部(93)は、概ね直方体状の突起であって、リング部(95)の下面から突出している。2つの固定側キー部(93)は、リング部(95)の中心を挟んで反対側に配置されている。
図1に示すように、オルダム継手(90)は、可動スクロール(40)の可動側鏡板部(41)とハウジング(50)の間に配置されている。オルダム継手(90)のリング部(95)は、可動スクロール(40)の可動側鏡板部(41)の下面に摺接するとともに、ハウジング(50)の支持用平坦面(55)に摺接する。
可動側キー部(91)は可動側キー溝(46)に嵌り込む。可動側キー部(91)の幅は、対応する可動側キー溝(46)の幅よりも僅かに狭くなっている。固定側キー部(93)は固定側キー溝(56)に嵌り込む(図2参照)。固定側キー部(93)の幅は、対応する固定側キー溝(56)の幅よりも僅かに狭くなっている。
ところで、スクロール圧縮機(10)において、電動機(80)へ通電すると、駆動軸(60)によって可動スクロール(40)が駆動される。可動スクロール(40)は、その自転運動がオルダム継手(90)によって規制されており、自転運動は行わずに公転運動だけを行う。
このとき、オルダム継手(90)は、固定側キー部(93)が固定側キー溝(56)に沿って図2の矢印方向に往復運動している。そして、オルダム継手(90)の往復運動による慣性力の影響で、オルダム継手(90)の往復運動方向の加振力が大きくなっている。そのため、オルダム継手(90)の不釣り合い慣性力による振動がケーシング(15)に伝達され、スクロール圧縮機(10)の剛体振動が大きくなる。
そこで、本実施形態では、ケーシング(15)の支持脚(27)の配置を工夫することで、スクロール圧縮機(10)の剛体振動を効果的に抑制できるようにしている。
具体的に、図3に示すように、ケーシング(15)の支持脚(27)は、ケーシング(15)の周方向に間隔をあけて4つ設けられている。支持脚(27)は、ケーシング(15)の径方向外方に突出して、その先端部に上下方向に貫通して締結ボルト(13)の軸部を挿通させる挿通孔(27a)が形成されている。
図3では、オルダム継手(90)の往復運動方向を、矢印方向(図3の上下方向)とした場合に、4つの支持脚(27)のうち2つの支持脚(27)は、オルダム継手(90)の往復運動方向の両端側にそれぞれ設けられている。残りの2つの支持脚(27)は、オルダム継手(90)の往復運動方向に直交する方向の両端側にそれぞれ設けられている。つまり、4つの支持脚(27)は、ケーシング(15)の周方向に沿って等間隔で且つ、駆動軸(60)の軸方向から見てオルダム継手(90)の往復運動方向に対して線対称となるように配設されている。
このように、ケーシング(15)の支持脚(27)を、オルダム継手(90)の往復運動方向の両端側にそれぞれを設けたことで、ケーシング(15)におけるオルダム継手(90)の往復運動方向の支持剛性を上げることができる。
また、4つの支持脚(27)の下部には、防振部材(28)がそれぞれ配設されている。4つの防振部材(28)のうち、オルダム継手(90)の往復運動方向の両端側にそれぞれ設けられた防振部材(28)のバネ定数は、その他の防振部材(28)のバネ定数よりも高く設定されている。
これにより、オルダム継手(90)の往復運動による慣性力を、往復運動の両端側に設けられた2つの支持脚(27)と、その下部に設けられたバネ定数の高い防振部材(28)とによって受け止めることで、スクロール圧縮機(10)の剛体振動を効果的に抑えることができる。
なお、本実施形態では、ケーシング(15)の支持脚(27)を、オルダム継手(90)の往復運動方向の略一致するように配設しているが、オルダム継手(90)の往復運動方向から多少ずれていても、スクロール圧縮機(10)の剛体振動を抑えることができるのであれば構わない。
−運転動作−
以下、スクロール圧縮機(10)の運転動作について説明する。スクロール圧縮機(10)において、可動スクロール(40)が公転運動を行うと、吸入管(16)を通って圧縮機構(20)へ流入した低圧のガス冷媒が、固定側ラップ(32)及び可動側ラップ(42)の外周側の端部付近から圧縮室(21)へ吸入される。可動スクロール(40)が更に移動すると、圧縮室(21)が吸入管(16)から遮断された閉じきり状態となり、その後、圧縮室(21)は、固定側ラップ(32)及び可動側ラップ(42)に沿ってそれらの内周側端部へ向かって移動してゆく。その過程で圧縮室(21)の容積が次第に減少し、圧縮室(21)内のガス冷媒が圧縮されてゆく。
可動スクロール(40)の移動に伴って圧縮室(21)の容積が次第に縮小してゆくと、やがて圧縮室(21)は吐出ポート(22)に連通する。そして、圧縮室(21)内で圧縮された冷媒(即ち、高圧のガス冷媒)は、吐出ポート(22)を通って吐出ガス通路(23)へ流入し、その後にケーシング(15)の内部空間における圧縮機構(20)と電動機(80)の間の部分へ吐出される。ケーシング(15)の内部空間へ吐出された高圧のガス冷媒は、吐出管(17)を通ってケーシング(15)の外部へ流出してゆく。
ケーシング(15)の内部空間には、冷凍機油が貯留されている。ケーシング(15)内に貯留された冷凍機油の圧力は、圧縮機構(20)から吐出されたガス冷媒の圧力と実質的に等しくなっている。スクロール圧縮機(10)の運転中には、駆動軸(60)が回転し、ケーシング(15)の底部に貯留された冷凍機油が給油通路(70)へ吸い上げられ、下部軸受部材(85)や圧縮機構(20)の摺動箇所へ供給される。
《実施形態2》
図4は、本実施形態2に係るスクロール圧縮機におけるオルダム継手の往復運動方向と支持板との位置関係を示す横断面図である。以下、前記実施形態1と同じ部分については、同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
図4に示すように、ケーシング(15)の下部には、ケーシング(15)を室外機の底板(11)に固定するための支持板(35)が設けられている。支持板(35)は、駆動軸(60)の軸方向から見て長方形状に形成されている。支持板(35)の四隅には、締結ボルト(13)の軸部を挿通させる挿通孔(35a)が形成されている。
図4では、オルダム継手(90)の往復運動方向を、矢印方向(図4の上下方向)とした場合に、支持板(35)は、支持板(35)の長辺がオルダム継手(90)の往復運動方向に沿って延びるように配設されている。
支持板(35)の四隅の下部には、防振部材(28)がそれぞれ配設されている。つまり、オルダム継手(90)の往復運動方向の両端側に、防振部材(28)が2つずつ設けられることとなり、ケーシング(15)におけるオルダム継手(90)の往復運動方向の支持剛性を上げることができる。
これにより、オルダム継手(90)の往復運動による慣性力を、往復運動方向に沿って延びる支持板(35)と、その下部に設けられた防振部材(28)とによって受け止めることで、スクロール圧縮機(10)の剛体振動を効果的に抑えることができる。
以上説明したように、本発明は、オルダム継手の往復運動に伴う圧縮機の剛体振動を抑えることができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
10 スクロール圧縮機
15 ケーシング
21 圧縮室
27 支持脚
28 防振部材
30 固定スクロール
35 支持板
40 可動スクロール
50 ハウジング
60 駆動軸
90 オルダム継手
本発明は、スクロール圧縮機に関するものである。
従来より、固定スクロールと可動スクロールを備えたスクロール圧縮機が知られている。一般的なスクロール圧縮機には、可動スクロールの自転を規制するためにオルダム継手が設けられている。オルダム継手は、通常、可動スクロールとハウジングの間に配置される(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、オルダム継手の往復運動による慣性力を釣り合わせるためのバランスウエイトの取り付け位置又は質量を、オルダム継手の不釣り合い慣性力による振動が、密閉容器とアキュムレータとの接続方向と直角あるいはそれに近い角度に伝達されるように取り付けた構成が開示されている。
これにより、アキュムレータに伝達される振動が小さくなり、アキュムレータに接続する配管系の振動を小さくすることで、空調機全体の騒音の低減を図るようにしている。
ところで、従来の発明は、オルダム継手の不釣り合い慣性力による振動を、バランスウエイトを用いて所定方向に伝達させるようにしたものであり、振動自体を抑えるものではない。そして、オルダム継手の重量は、圧縮機全体の重量に比べて軽量であることから、振動の影響については、特に考慮されていなかった。
しかしながら、近年の圧縮機の大型化や高速化に伴い、オルダム継手の不釣り合い慣性力による圧縮機の剛性振動が無視できなくなっており、その対策が望まれていた。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、オルダム継手の往復運動に伴う圧縮機の剛体振動を抑えることにある。
本発明は、固定スクロール(30)と、該固定スクロール(30)とともに圧縮室(21)を形成する可動スクロール(40)と、該可動スクロール(40)に係合する駆動軸(60)と、該駆動軸(60)を回転自在に支持するハウジング(50)と、該可動スクロール(40)と該ハウジング(50)の間に配置されて該可動スクロール(40)の自転を規制するための往復運動を行うオルダム継手(90)とが、ケーシング(15)内に収容されたスクロール圧縮機を対象とし、次のような解決手段を講じた。
すなわち、第1の発明は、前記ケーシング(15)には、該ケーシング(15)を支持する支持脚(27)が、前記オルダム継手(90)の往復運動方向の両端側にそれぞれ設けられ、
前記支持脚(27)は、前記ケーシング(15)の周方向に間隔をあけて複数設けられ、
複数の前記支持脚(27)の下部には、防振部材(28)がそれぞれ配設され、
複数の前記防振部材(28)のうち、前記オルダム継手(90)の往復運動方向の両端側にそれぞれ設けられた該防振部材(28)のバネ定数は、その他の該防振部材(28)のバネ定数よりも高く設定されていることを特徴とするものである。
第1の発明では、オルダム継手(90)の往復運動による慣性力の影響で、オルダム継手(90)の往復運動方向の加振力が大きくなっている。そこで、ケーシング(15)の支持脚(27)を、オルダム継手(90)の往復運動方向の両端側にそれぞれ設けることで、オルダム継手(90)の往復運動方向の支持剛性を上げるようにしている。
このように、ケーシング(15)の支持脚(27)の配置を工夫するだけという、比較的簡単な構成で、圧縮機の剛体振動を省スペース且つ低コストで効果的に抑制することができる。また、ケーシング(15)に接続された配管に伝達される振動も低減することができる。
また、ケーシング(15)の周方向に間隔をあけて複数の支持脚(27)が設けられる。オルダム継手(90)の往復運動方向の両端側にそれぞれ設けられた支持脚(27)の下部には、その他の支持脚(27)の下部に配設された防振部材(28)よりもバネ定数の高い防振部材(28)が配設されている。
これにより、オルダム継手(90)の往復運動による圧縮機の剛体振動を、バネ定数の高い防振部材(28)によって効果的に抑制することができる。
また、全ての防振部材(28)をバネ定数の高い防振部材(28)とした場合には、オルダム継手(90)の往復運動以外の要因による振動を抑えにくくなるが、本発明では、オルダム継手(90)の往復運動方向の両端側の防振部材(28)についてのみ、バネ定数の高いものを用いることで、オルダム継手(90)の往復運動による振動を抑えつつ、その他の要因による振動についても効果的に抑えることができる。
第2の発明は、第1の発明において、
前記支持脚(27)は、前記ケーシング(15)の周方向に間隔をあけて複数設けられ、
複数の前記支持脚(27)は、前記駆動軸(60)の軸方向から見て前記オルダム継手(90)の往復運動方向に対して線対称となるように配設されていることを特徴とするものである。
第2の発明では、複数の支持脚(27)を、駆動軸(60)の軸方向から見てオルダム継手(90)の往復運動方向に対して線対称となるように配設している。これにより、オルダム継手(90)の往復運動による慣性力が、何れかの支持脚(27)のみに偏って作用するのを抑え、ケーシング(15)をバランス良く支持することができる。
第3の発明は、前記ケーシング(15)には、前記駆動軸(60)の軸方向から見て長方形状に形成されて該ケーシング(15)を支持する支持板(35)が設けられ、
前記支持板(35)は、該支持板(35)の長辺が前記オルダム継手(90)の往復運動方向に沿って延びるように配設され、
前記支持板(35)の下部には、前記オルダム継手(90)の往復運動方向の両端側に、防振部材(28)が2つずつ設けられていることを特徴とするものである。
第3の発明では、オルダム継手(90)の往復運動による慣性力の影響で、オルダム継手(90)の往復運動方向の加振力が大きくなっている。そこで、ケーシング(15)を支持する長方形状の支持板(35)を、支持板(35)の長辺がオルダム継手(90)の往復運動方向に沿って延びるように配設することで、オルダム継手(90)の往復運動方向の支持剛性を上げるようにしている。
このように、ケーシング(15)の支持板(35)の配置を工夫するだけという、比較的簡単な構成で、圧縮機の剛体振動を省スペース且つ低コストで効果的に抑制することができる。また、ケーシング(15)に接続された配管に伝達される振動も低減することができる。
本発明によれば、オルダム継手(90)の往復運動方向の両端側でケーシング(15)を支持することで、オルダム継手(90)の往復運動方向の支持剛性を上げ、圧縮機の剛体振動を抑えることができる。
本実施形態1に係るスクロール圧縮機の構成を示す縦断面図である。
固定スクロール及び可動スクロールを省略した状態の横断面図である。
オルダム継手の往復運動方向と支持脚との位置関係を示す横断面図である。
本実施形態2に係るスクロール圧縮機におけるオルダム継手の往復運動方向と支持板との位置関係を示す横断面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
《実施形態1》
図1に示すように、スクロール圧縮機(10)は、いわゆる全密閉圧縮機であり、冷凍サイクルを行う冷媒回路に接続され、冷媒回路の冷媒を吸入して圧縮する。スクロール圧縮機(10)は、空気調和装置の室外機の底板(11)に固定される。
スクロール圧縮機(10)では、ケーシング(15)の内部空間に、本体機構である圧縮機構(20)と、電動機(80)と、下部軸受部材(85)と、回転シャフトである駆動軸(60)とが収容されている。
ケーシング(15)は、縦長の円筒状に形成された密閉容器である。ケーシング(15)の内部空間では、上から下へ向かって順に、圧縮機構(20)と、電動機(80)と、下部軸受部材(85)とが配置されている。また、駆動軸(60)は、その軸方向がケーシング(15)の高さ方向に沿う姿勢で配置されている。なお、圧縮機構(20)の詳細な構造については、後述する。
ケーシング(15)には、吸入管(16)と吐出管(17)とが取り付けられている。吸入管(16)は、圧縮機構(20)に接続されている。吐出管(17)は、ケーシング(15)の内部空間における電動機(80)と圧縮機構(20)の間の部分に開口している。
ケーシング(15)の下部には、ケーシング(15)を室外機の底板(11)に固定するための支持ブラケット(25)が設けられている。支持ブラケット(25)は、ケーシング(15)の底部に取り付けられてケーシング(15)を下方から支持する取付部(26)と、防振部材(28)を介して底板(11)に固定される支持脚(27)とを有している。取付部(26)と支持脚(27)とは、一体に形成されている。支持脚(27)は、ケーシング(15)の周方向に間隔をあけて4つ設けられている(図3参照)。
底板(11)は、その一部が上方に膨出しており、底板(11)の膨出部分に防振部材(28)が設置されている。防振部材(28)は、上下方向に延びる円筒状のゴム材で構成されている。底板(11)の下面には、締結ナット(12)が溶接されている。
そして、支持ブラケット(25)の上方から締結ボルト(13)を差し込んで締結ナット(12)に締結させることで、ケーシング(15)の支持脚(27)と底板(11)との間に防振部材(28)が挟み込まれた状態で、ケーシング(15)が底板(11)に固定される。締結ボルト(13)と支持脚(27)との間には、ワッシャ(14)が挟み込まれている。
電動機(80)は、固定子(81)と回転子(82)とを備えている。固定子(81)は、ケーシング(15)に固定されている。回転子(82)は、固定子(81)と同軸に配置されている。回転子(82)には、駆動軸(60)の主軸部(61)が挿通されている。
駆動軸(60)には、主軸部(61)と、バランスウェイト部(62)と、偏心部(63)とが形成されている。バランスウェイト部(62)は、主軸部(61)の軸方向の途中に配置されている。主軸部(61)は、バランスウェイト部(62)よりも下側の部分が電動機(80)の回転子(82)を貫通している。
偏心部(63)は、主軸部(61)よりも小径の円柱状に形成され、主軸部(61)の上端面に突設されている。偏心部(63)の軸心は、主軸部(61)の軸心に対して偏心している。
駆動軸(60)には、上下方向に貫通する給油通路(70)が形成されている。ケーシング(15)の底部には、潤滑油である冷凍機油が貯留されている。駆動軸(60)が回転すると、ケーシング(15)の底部に貯留された冷凍機油が、給油通路(70)へ吸い上げられ、下部軸受部材(85)や圧縮機構(20)の摺動箇所へ供給される。
〈圧縮機構の構成〉
図2にも示すように、圧縮機構(20)は、ハウジング(50)と、固定スクロール(30)と、可動スクロール(40)と、オルダム継手(90)とを備えている。圧縮機構(20)では、固定スクロール(30)と可動スクロール(40)によって、流体室である圧縮室(21)が形成される。オルダム継手(90)は、可動スクロール(40)の自転運動を規制するための部材である。
ハウジング(50)は、厚肉の円板状に形成されており、その外周縁部がケーシング(15)に固定されている。ハウジング(50)の中央部には、中央凹部(51)と、環状凸部(54)とが形成されている。中央凹部(51)は、ハウジング(50)の上面に開口する円形状の窪みである。環状凸部(54)は、中央凹部(51)の外周に沿って形成され、ハウジング(50)の上面から突出している。環状凸部(54)の突端面は、平坦面となっている。また、環状凸部(54)の突端面には、その周方向に沿ってリング状の凹溝が形成されており、この凹溝にシールリング(58)が嵌め込まれている。
ハウジング(50)には、中央膨出部(52)が形成されている。中央膨出部(52)は、中央凹部(51)の下側に位置して下方へ膨出している。中央膨出部(52)には、中央膨出部(52)を上下に貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔に軸受メタル(53)が挿入されている。中央膨出部(52)の軸受メタル(53)には、駆動軸(60)の主軸部(61)が挿通され、駆動軸(60)を回転可能に支持している。
ハウジング(50)の上面のうち環状凸部(54)の外側の部分は、支持用平坦面(55)となっている。ハウジング(50)には、支持用平坦面(55)に開口する二つの固定側キー溝(56)が形成されている。
図2に示すように、固定側キー溝(56)は、駆動軸(60)の主軸部(61)の中心軸と直交する直線に沿って延びる細長い溝である。2つの固定側キー溝(56)は、駆動軸(60)の主軸部(61)の中心軸を挟んで反対側に位置している。詳しくは後述するが、ハウジング(50)では、支持用平坦面(55)がオルダム継手(90)と摺接し、固定側キー溝(56)にオルダム継手(90)の固定側キー部(93)が係合する。
図1に示すように、ハウジング(50)の上には、固定スクロール(30)と可動スクロール(40)とが載置されている。固定スクロール(30)は、ボルト等によってハウジング(50)に固定されている。一方、可動スクロール(40)は、駆動軸(60)により駆動されて公転運動を行う。
可動スクロール(40)は、可動側鏡板部(41)と、可動側ラップ(42)と、円筒部(43)とを一体に形成した部材である。可動側鏡板部(41)は、円板状に形成されている。可動側ラップ(42)は、渦巻き壁状に形成されており、可動側鏡板部(41)の上面に突設されている。
円筒部(43)は、可動側鏡板部(41)の下面に突設されており、ハウジング(50)の中央凹部(51)へ上方から挿入されている。円筒部(43)には、軸受メタル(44)が挿入されている。円筒部(43)の軸受メタル(44)には、駆動軸(60)の偏心部(63)が下方から挿入されている。
可動スクロール(40)の円筒部(43)は、ハウジング(50)の中央凹部(51)に挿入されている。また、可動スクロール(40)の可動側鏡板部(41)の下面は、ハウジング(50)の環状凸部(54)の突端面に設けられたシールリング(58)と摺接する。
可動スクロール(40)には、可動側鏡板部(41)の下面に開口する二つの可動側キー溝(46)が形成されている。可動側キー溝(46)は、駆動軸(60)の偏心部(63)の中心軸と直交する直線に沿って延びる細長い溝である。可動スクロール(40)では、可動側鏡板部(41)の下面がオルダム継手(90)と摺接し、可動側キー溝(46)にオルダム継手(90)の可動側キー部(91)が係合する。
固定スクロール(30)は、固定側鏡板部(31)と、固定側ラップ(32)と、外周部(33)とを一体に形成した部材である。固定側鏡板部(31)は、円板状に形成されている。固定側ラップ(32)は、渦巻き壁状に形成されており、固定側鏡板部(31)の下面に突設されている。外周部(33)は、固定側鏡板部(31)の外周部(33)から下方へ延びる厚肉のリング状に形成され、固定側ラップ(32)の周囲を囲っている。
固定側鏡板部(31)には、吐出ポート(22)が形成されている。吐出ポート(22)は、固定側鏡板部(31)の中央付近に形成された貫通孔であって、固定側鏡板部(31)を厚さ方向に貫通している。また、固定側鏡板部(31)の外周付近には、吸入管(16)が挿入されている。
圧縮機構(20)には、吐出ガス通路(23)が形成されている。この吐出ガス通路(23)は、その始端が吐出ポート(22)に連通している。図示しないが、吐出ガス通路(23)は、固定スクロール(30)からハウジング(50)に亘って形成されており、その他端がハウジング(50)の下面に開口している。
圧縮機構(20)において、固定スクロール(30)と可動スクロール(40)は、固定側鏡板部(31)の下面と可動側鏡板部(41)の上面が互いに向かい合い、固定側ラップ(32)と可動側ラップ(42)が互いに噛み合うように配置されている。そして、圧縮機構(20)では、固定側ラップ(32)と可動側ラップ(42)とが互いに噛み合うことによって、複数の圧縮室(21)が形成される。
図2に示すように、オルダム継手(90)は、一つのリング部(95)と、二つの可動側キー部(91)と、二つの固定側キー部(93)とを備えている。リング部(95)は、断面が矩形のリング状に形成されている。また、リング部(95)の厚さは、リング部(95)の全周に亘って一定となっている。リング部(95)の上面と下面とは、互いに平行な平坦面となっている。
運転中の圧縮機構(20)において、オルダム継手(90)のリング部(95)は、可動スクロール(40)とハウジング(50)の両方と常に摺接する。ただし、運転中の圧縮機構(20)において、オルダム継手(90)のリング部(95)が可動スクロール(40)及びハウジング(50)と物理的に接触している必要はない。
通常、リング部(95)と可動スクロール(40)の可動側鏡板部(41)の下面との間、及びリング部(95)とハウジング(50)の支持用平坦面(55)との間には、可動スクロール(40)とオルダム継手(90)をスムーズに移動させるために必要となる最小限の隙間が形成される。この隙間には冷凍機油が入り込み、この冷凍機油がオルダム継手(90)の潤滑に利用される。
リング部(95)には、その径方向の外側へ突出した部分が四つ形成されており、その部分に可動側キー部(91)と固定側キー部(93)とが一つずつ突設されている。可動側キー部(91)と固定側キー部(93)は、リング部(95)の周方向において90°間隔で交互に配置されている。
具体的に、可動側キー部(91)は、概ね直方体状の突起であって、リング部(95)の上面から突出している。2つの可動側キー部(91)は、リング部(95)の中心を挟んで反対側に配置されている。
一方、固定側キー部(93)は、概ね直方体状の突起であって、リング部(95)の下面から突出している。2つの固定側キー部(93)は、リング部(95)の中心を挟んで反対側に配置されている。
図1に示すように、オルダム継手(90)は、可動スクロール(40)の可動側鏡板部(41)とハウジング(50)の間に配置されている。オルダム継手(90)のリング部(95)は、可動スクロール(40)の可動側鏡板部(41)の下面に摺接するとともに、ハウジング(50)の支持用平坦面(55)に摺接する。
可動側キー部(91)は可動側キー溝(46)に嵌り込む。可動側キー部(91)の幅は、対応する可動側キー溝(46)の幅よりも僅かに狭くなっている。固定側キー部(93)は固定側キー溝(56)に嵌り込む(図2参照)。固定側キー部(93)の幅は、対応する固定側キー溝(56)の幅よりも僅かに狭くなっている。
ところで、スクロール圧縮機(10)において、電動機(80)へ通電すると、駆動軸(60)によって可動スクロール(40)が駆動される。可動スクロール(40)は、その自転運動がオルダム継手(90)によって規制されており、自転運動は行わずに公転運動だけを行う。
このとき、オルダム継手(90)は、固定側キー部(93)が固定側キー溝(56)に沿って図2の矢印方向に往復運動している。そして、オルダム継手(90)の往復運動による慣性力の影響で、オルダム継手(90)の往復運動方向の加振力が大きくなっている。そのため、オルダム継手(90)の不釣り合い慣性力による振動がケーシング(15)に伝達され、スクロール圧縮機(10)の剛体振動が大きくなる。
そこで、本実施形態では、ケーシング(15)の支持脚(27)の配置を工夫することで、スクロール圧縮機(10)の剛体振動を効果的に抑制できるようにしている。
具体的に、図3に示すように、ケーシング(15)の支持脚(27)は、ケーシング(15)の周方向に間隔をあけて4つ設けられている。支持脚(27)は、ケーシング(15)の径方向外方に突出して、その先端部に上下方向に貫通して締結ボルト(13)の軸部を挿通させる挿通孔(27a)が形成されている。
図3では、オルダム継手(90)の往復運動方向を、矢印方向(図3の上下方向)とした場合に、4つの支持脚(27)のうち2つの支持脚(27)は、オルダム継手(90)の往復運動方向の両端側にそれぞれ設けられている。残りの2つの支持脚(27)は、オルダム継手(90)の往復運動方向に直交する方向の両端側にそれぞれ設けられている。つまり、4つの支持脚(27)は、ケーシング(15)の周方向に沿って等間隔で且つ、駆動軸(60)の軸方向から見てオルダム継手(90)の往復運動方向に対して線対称となるように配設されている。
このように、ケーシング(15)の支持脚(27)を、オルダム継手(90)の往復運動方向の両端側にそれぞれを設けたことで、ケーシング(15)におけるオルダム継手(90)の往復運動方向の支持剛性を上げることができる。
また、4つの支持脚(27)の下部には、防振部材(28)がそれぞれ配設されている。4つの防振部材(28)のうち、オルダム継手(90)の往復運動方向の両端側にそれぞれ設けられた防振部材(28)のバネ定数は、その他の防振部材(28)のバネ定数よりも高く設定されている。
これにより、オルダム継手(90)の往復運動による慣性力を、往復運動の両端側に設けられた2つの支持脚(27)と、その下部に設けられたバネ定数の高い防振部材(28)とによって受け止めることで、スクロール圧縮機(10)の剛体振動を効果的に抑えることができる。
なお、本実施形態では、ケーシング(15)の支持脚(27)を、オルダム継手(90)の往復運動方向の略一致するように配設しているが、オルダム継手(90)の往復運動方向から多少ずれていても、スクロール圧縮機(10)の剛体振動を抑えることができるのであれば構わない。
−運転動作−
以下、スクロール圧縮機(10)の運転動作について説明する。スクロール圧縮機(10)において、可動スクロール(40)が公転運動を行うと、吸入管(16)を通って圧縮機構(20)へ流入した低圧のガス冷媒が、固定側ラップ(32)及び可動側ラップ(42)の外周側の端部付近から圧縮室(21)へ吸入される。可動スクロール(40)が更に移動すると、圧縮室(21)が吸入管(16)から遮断された閉じきり状態となり、その後、圧縮室(21)は、固定側ラップ(32)及び可動側ラップ(42)に沿ってそれらの内周側端部へ向かって移動してゆく。その過程で圧縮室(21)の容積が次第に減少し、圧縮室(21)内のガス冷媒が圧縮されてゆく。
可動スクロール(40)の移動に伴って圧縮室(21)の容積が次第に縮小してゆくと、やがて圧縮室(21)は吐出ポート(22)に連通する。そして、圧縮室(21)内で圧縮された冷媒(即ち、高圧のガス冷媒)は、吐出ポート(22)を通って吐出ガス通路(23)へ流入し、その後にケーシング(15)の内部空間における圧縮機構(20)と電動機(80)の間の部分へ吐出される。ケーシング(15)の内部空間へ吐出された高圧のガス冷媒は、吐出管(17)を通ってケーシング(15)の外部へ流出してゆく。
ケーシング(15)の内部空間には、冷凍機油が貯留されている。ケーシング(15)内に貯留された冷凍機油の圧力は、圧縮機構(20)から吐出されたガス冷媒の圧力と実質的に等しくなっている。スクロール圧縮機(10)の運転中には、駆動軸(60)が回転し、ケーシング(15)の底部に貯留された冷凍機油が給油通路(70)へ吸い上げられ、下部軸受部材(85)や圧縮機構(20)の摺動箇所へ供給される。
《実施形態2》
図4は、本実施形態2に係るスクロール圧縮機におけるオルダム継手の往復運動方向と支持板との位置関係を示す横断面図である。以下、前記実施形態1と同じ部分については、同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
図4に示すように、ケーシング(15)の下部には、ケーシング(15)を室外機の底板(11)に固定するための支持板(35)が設けられている。支持板(35)は、駆動軸(60)の軸方向から見て長方形状に形成されている。支持板(35)の四隅には、締結ボルト(13)の軸部を挿通させる挿通孔(35a)が形成されている。
図4では、オルダム継手(90)の往復運動方向を、矢印方向(図4の上下方向)とした場合に、支持板(35)は、支持板(35)の長辺がオルダム継手(90)の往復運動方向に沿って延びるように配設されている。
支持板(35)の四隅の下部には、防振部材(28)がそれぞれ配設されている。つまり、オルダム継手(90)の往復運動方向の両端側に、防振部材(28)が2つずつ設けられることとなり、ケーシング(15)におけるオルダム継手(90)の往復運動方向の支持剛性を上げることができる。
これにより、オルダム継手(90)の往復運動による慣性力を、往復運動方向に沿って延びる支持板(35)と、その下部に設けられた防振部材(28)とによって受け止めることで、スクロール圧縮機(10)の剛体振動を効果的に抑えることができる。
以上説明したように、本発明は、オルダム継手の往復運動に伴う圧縮機の剛体振動を抑えることができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
10 スクロール圧縮機
15 ケーシング
21 圧縮室
27 支持脚
28 防振部材
30 固定スクロール
35 支持板
40 可動スクロール
50 ハウジング
60 駆動軸
90 オルダム継手