JP2019056148A - 高張力厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

高張力厚鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】引張強さ780MPa以上で低温靭性およびアレスト性に優れ、かつHAZ靭性に優れることから大入熱溶接が適用でき、溶接施工効率に優れる、低温靭性、アレスト性およびHAZ靭性に優れる板厚が25mm以上の高張力厚鋼板の提供。【解決手段】化学組成が、C:0.05〜0.13%、Mn:1.0〜1.6%、S:0.001〜0.005%、Ti:0.010〜0.030%、O:0.0015〜0.0035%、B:0.0005〜0.0020%を含有し、炭素当量が0.45〜0.60であり、鋼中にTi酸化物の周囲にMnSが存在する複合介在物を含み、複合介在物の断面におけるMnSの面積率:10〜50%、その界面におけるMnSの割合:10%以上、粒径0.5〜5.0umの複合介在物の個数密度:10〜40個/mm2、その金属組織の平均有効結晶粒径:10μm以下の高張力厚鋼板である。【選択図】なし

Description

本発明は、高張力厚鋼板およびその製造方法に関する。
ペンストックや圧力容器の大型化に伴い、調達・運搬・施工コストの削減の観点から、引張強さが780MPa以上の高張力厚鋼板が構造物に使用されている。一方、ペンストックや圧力容器に使用される鋼板には、優れた低温靭性およびアレスト性が要求され、さらに近年では、高張力厚鋼板の溶接施工コストの削減を目的に、大入熱溶接の適用の要求も高まってきている。
アレスト性とは、脆性亀裂伝播停止特性であり、鋼板に亀裂が発生した場合でも、その亀裂の伝播を板厚が貫通する前に停止することができる。そのため、構造物が破壊に至る前に検査、補修が可能であり、被害を最小限に抑えることが可能になる。これまでに低温靭性およびアレスト性に優れる高張力厚鋼板の開発が検討されている。
例えば、特許文献1には、合金元素を添加することにより焼入れ性を確保し、高温域で圧下した後にさらに低温域で軽圧下の圧延を行うことにより、表層部の近傍の焼入れ性を低減して板厚方向の均質性を確保する方法が開示されている。
特許文献2には、Ti添加によりBの焼入れ性の向上に寄与する働きを活用し、低温域の圧下により表層部の靭性を向上させる発明が開示されている。
さらに、特許文献3には、Ti添加によりNを確実に固定してBの効果を確保し、加えてNbを添加して転位の回復・再結晶の遅延を図ることにより低温域での圧下による組織微細化効果を得て、低温靭性およびアレスト性を向上する発明が開示されている。
特開平2−77521号公報 特開昭62−196326号公報 特開平9−263828号公報
特許文献1では、溶接によるオーステナイト粒の粗大化抑制および組織微細化に最適なTi系複合介在物については何も検討されておらず、HAZ靭性は十分とはいえず、大入熱溶接にも対応できない。
特許文献2では、HAZ靭性に関しては何も検討されていない。
さらに、特許文献3により開示された特性は鋼板についてのみであり、大入熱溶接を適用する際に問題となるHAZ靭性については何も検討されていない。
本発明の目的は、ペンストックや圧力容器などの大型構造物に使用され、引張強さ780MPa以上で低温靭性およびアレスト性に優れ、かつ大入熱溶接においてHAZ靭性に優れることから大入熱溶接が適用でき、溶接施工効率に優れる高張力厚鋼板、すなわち低温靭性、アレスト性およびHAZ靭性に優れる板厚が25mm以上の高張力厚鋼板およびその製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために、引張強さが780MPa以上かつ低温靭性およびアレスト性に優れ、さらに大入熱溶接でもHAZ靭性に優れる化学組成および製造方法を検討した。
まず、鋳片製造において鋼中介在物制御を行った鋳片を製造し、その鋳片を熱間圧延および熱間圧延終了後にその温度から直接焼入れを行い、その後、焼戻しを行って高張力厚鋼板を製造し、この高張力厚鋼板を調査した。
まず、所望の引張強度を確保するために下記の式(1)で示される日本溶接協会規格(WES)で定義される焼入れ性の指標である炭素当量Ceqを検討した結果、炭素当量Ceqを0.45以上確保する必要があることがわかった。
Ceq=[C%]+[Si%]/24+[Mn%]/6+[Ni%]/40+[Cr%]/5+[Mo%]/4+[V%]/14・・・式(1)
式(1)において[ ]付元素は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
そこで、この範囲において強度、低温靭性およびアレスト性を得るための化学組成および金属組織を検討した結果、以下に列記の知見A〜Dを得られた。
(A)厚鋼板の低温靭性およびアレスト性の向上に最も有効な元素はNiであり、必要量添加する。
(B)Nbは、再結晶を遅延させることができ、低温で圧延を行うことにより高密度の転位を導入して変態核生成サイトを増加できるために組織微細化し、靭性およびアレスト性を向上することができる。
(C)Moは、溶接熱影響によるHAZの軟化に対し、炭化物の形成による析出強化により軟化を抑制できるため、衝撃を受けた際の軟化部への局所的な歪み集中を抑制できるため、必要量添加する。
(D)Tiは、Nと窒化物を形成することにより、圧延前の加熱および溶接時にオーステナイト粒の粗大化を抑制できるため、低温靭性およびHAZ靭性が向上する。また、Al含有量を制限した条件においては、Tiは優先的に酸化物を形成する。粒内変態核として組織微細化に寄与する好適な介在物の組成を検討した結果、Tiが酸素と結び付いたTi系介在物が有効である。
すなわち、溶接時に旧オーステナイト粒内にて粒内フェライトを効果的に成長させるためには、粒内フェライトの生成核となる介在物の制御が必須である。特に、板厚が厚い厚鋼板では、表面および内部での冷却速度の差異により、板厚方向での介在物の化学組成および個数の制御が困難である。このため、粒内フェライトの生成核となる介在物を制御する必要がある。そこで、粒内フェライトの成長のメカニズムを検討した結果、下記E〜Gの知見を得られた。
(E)製鋼段階でTi系酸化物の周辺にMnSが析出することによりTi系酸化物とMnSとを含有する複合介在物を生成させれば、MnSと母材のマトリクス界面にMnが欠乏した領域が形成される。このMn欠乏領域(以下、「初期Mn欠乏領域」という。)では、フェライト成長開始温度が大きく上昇する。そのため、母材を溶接した場合、その冷却過程において、このMn欠乏領域から粒内フェライトが優先的に成長する。
(F)母材の溶接を行うと、Ti系酸化物の近傍に存在する母材のマトリクス中のMnが拡散してTi系酸化物の内部に存在する原子空孔に吸収される。この結果、溶接により熱履歴を受けた母材のHAZとTi系酸化物の界面にMnが欠乏した領域が形成される。このMn欠乏領域(以下、「溶接Mn欠乏領域」という。)も粒内フェライトの優先成長の起点となる。
(G)上記(E)及び(F)の両作用によりHAZの組織を微細化できるため、必要なHAZの低温靭性を得ることができる。
(H)本発明者らは、以上のメカニズムに基づき、介在物に複合するMnS量および個数密度を制御することにより、効果的に粒内フェライトを核生成させることができることを知見した。さらに、本発明者らは、上記結晶粒微細化効果を得るためには、鋼中の介在物が以下に列記の要件[1]〜[3]を満たす必要があることを知見した。
[1]鋼中にTi酸化物の周囲にMnSを有する複合介在物であり、複合介在物の断面におけるMnSの面積率が10〜50%である。
[2]複合介在物の周長に占めるMnSの割合が10%以上である。
[3]粒径0.5〜5.0μmの複合介在物の個数密度が10〜40個/mmである。
(I)本発明者らは、そのようなTi系介在物を適量得るためには、製鋼段階での制御が必要であり、優先的に酸化物を形成し易いAl添加量を抑制し、Tiを一定量以上添加した上で、酸素ポテンシャルを調整することが重要であることを知見した。これによって、大入熱溶接でもHAZ靭性を向上させることが可能となった。
(J)アレスト性の確保には、組織微細化が有効であるが、熱間圧延前の加熱により板厚方向にオーステナイト粒径にばらつきが生じるため、微細な組織を鋼板全厚に確保するのは困難である。しかし、粒内変態核となるTi系介在物が含まれていると粗大なオーステナイト粒の内部で変態するため、鋼板全厚で微細な組織が得られ、アレスト性も向上することを知見した。
本発明は、これらの知見A〜Jに基づくものであり、以下に列記のとおりである。
(1)化学組成が、質量%で、C:0.05〜0.13%、Si:0.10〜0.50%、Mn:1.0〜1.6%、P:0.015%以下、S:0.001〜0.005%、Al:0.0028%以下、Cu:0.20〜0.50%、Ni:0.6〜2.0%、Cr:0.3〜1.0%、Mo:0.20〜0.8%、Nb:0.010〜0.030%、Ti:0.010〜0.030%、N:0.0020〜0.0040%、O:0.0015〜0.0035%、B:0.0005〜0.0020%、V:0〜0.05%、残部はFeおよび不純物であり、
以下の式(1)で定義される炭素当量Ceqが0.45〜0.60であり、
さらに、鋼中にTi酸化物の周囲にMnSが存在する複合介在物を含み、
前記複合介在物の断面における前記MnSの面積率が10〜50%であり、
その界面におけるMnSの割合が10%以上であり、
粒径0.5〜5.0umの前記複合介在物の個数密度が10〜40個/mmであり、
その金属組織の平均有効結晶粒径が10μm以下である、引張強さ780MPa以上で板厚25mm以上の低温靭性、アレスト性およびHAZ靭性に優れる高張力厚鋼板。
Ceq=[C%]+[Si%]/24+[Mn%]/6+[Ni%]/40+[Cr%]/5+[Mo%]/4+[V%]/14・・・(1)
式(1)において[ ]付元素は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
(2)V:0.01〜0.05質量%を含有する、1項に記載の高張力厚鋼板。
(3)RH真空脱ガス処理前において、溶鋼中の酸素ポテンシャルを10〜30ppmとして、RH真空脱ガス処理において化学組成を調整して溶鋼を製造し、
該溶鋼を用いて連続鋳造法により鋳片を製造し、
該鋳片を950〜1100℃の温度に加熱および均熱してから、
900℃以下の温度範囲にて累積圧下率50%以上で所定の板厚に仕上げるように熱間圧延を行い、
該熱間圧延の直後に700℃以上の温度から直接焼入れをする、1または2項に記載の高張力厚鋼板の製造方法。
(4)前記直接焼入れをした後にさらに600〜650℃の温度で焼戻しを施す、3項に記載の高張力厚鋼板の製造方法。
なお、本発明では厚鋼板の板厚を25mm以上と規定するが、本発明で規定する化学組成、介在物、金属組織の要件を満足すれば本発明の特性を得られるため、上限は規定しない。しかし、本発明の高張力厚鋼板の製造を考えると板厚は80mm以下となる。
本発明に係る板厚25mm以上の高張力厚鋼板および製造方法により、引張強さ780MPa以上で低温靭性およびアレスト性に優れ、かつ大入熱溶接においてHAZ靭性に優れる高張力厚鋼板を提供することが可能となる。これにより、ペンストックや圧力容器など大型構造物の製造において溶接施工効率を高めることができ、溶接施工コストを大幅に低減できることから産業上の効果は極めて大きい。
図1は、実施例におけるHAZ靭性を評価するための試験片採取要領を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.化学組成
本発明に係る高張力厚鋼板の化学組成を上述したように限定する理由を説明する。以降の説明では、化学組成または濃度に関する「%」は特に断りがない限り「質量%」を意味する。
はじめに必須元素を説明する。
(1−1)C:0.05〜0.13%
Cは、本発明に係る高張力厚鋼板の強度を決定する最も重要な元素である。C含有量が0.05%未満であると、必要とする780MPa以上の強度を得られない。したがって、C含有量は、0.05%以上であり、好ましくは0.06%以上であり、さらに好ましくは0.07%以上である。
一方、C含有量が0.13%を超えると、高張力厚鋼板の靭性、アレスト性およびHAZ靭性が劣化する。そのため、C含有量は、0.13%以下であり、好ましくは0.12%以下であり、さらに好ましくは0.10%以下である。
(1−2)Si:0.10〜0.50%
Siは、溶鋼の予備脱酸に有効な元素であり、かつ高張力厚鋼板の靭性を悪くすることなく強度を向上させる効果がある。Si含有量が0.10%未満ではこれらの効果を十分に得られない。したがって、Si含有量は、0.10%以上であり、好ましくは0.12%以上であり、さらに好ましくは0.14%以上である。
一方、Si含有量が0.50%を超えると、高張力厚鋼板の表面性状およびHAZ靭性を劣化させる。このため、Si含有量は、0.50%以下であり、好ましくは0.44%以下であり、さらに好ましくは0.39%以下である。
(1−3)Mn:1.0〜1.6%
Mnは、焼入れ性向上を通じて高張力厚鋼板の強度を向上させるために重要であるとともに、HAZ靭性の向上に好適な介在物形態を得るために必要である。したがって、Mn含有量は、1.0%以上であり、好ましくは1.1%以上であり、さらに好ましくは1.2%以上である。
一方、Mn含有量が1.6%を超えると高張力厚鋼板の靭性が劣化する。したがって、Mn含有量は、1.6%以下であり、好ましくは1.5%以下であり、さらに好ましくは1.4%以下である。
強度、低温靭性、アレスト性およびHAZ靭性をバランス良く得るためには、Mn含有量は1.2〜1.6%であることが好ましい。
(1−4)P:0.015%以下
Pは、結晶粒界に偏析して靱性を劣化させるため、P含有量はできるだけ低いことが好ましい。P含有量が0.015%を超えると靭性の劣化が著しい。したがって、P含有量は、0.015%以下であり、好ましくは0.007%以下であり、さらに好ましくは0.006%以下である。
(1−5)S:0.001〜0.005%
Sは、酸化物の表面にMnSを析出させ、MnSと母材のマトリクス界面にMn欠乏領域を形成する。そのため、母材を溶接した場合、このMn欠乏領域から粒内フェライトが優先的に核生成するので、組織が微細化し、HAZ部の低温靭性を確保することができる。そのため、S含有量は0.001%以上である。
しかし、S含有量が0.005%を超えると、高強度厚鋼板の延性や母材靭性を劣化させる原因になる。したがって、S含有量は、0.005%以下であり、好ましくは0.003%以下であり、さらに好ましくは0.002%以下である。
(1−6)Al:0.0028%以下
Alは、溶鋼の清浄度を得るために添加される元素である。しかし、Alは他の元素よりも優先的に酸化物を形成するため、本発明の低温靭性およびHAZ靭性の向上に寄与するTi系酸化物が得られなくなる。したがって、Al含有量は、0.0028%以下であり、好ましくは0.0022%以下であり、さらに好ましくは0.0021%以下である。
(1−7)Cu:0.20〜0.50%
Cuは、溶接性や靭性を大きく損なうことなく、焼入れ性を向上させて高強度厚鋼板の強度を向上させることができる。したがって、Cu含有量は、0.20%以上であり、好ましくは0.22%以上であり、さらに好ましくは0.23%以上である。
一方、Cu含有量が0.50%を越えると、高強度厚鋼板の靭性が劣化する。したがって、Cu含有量は、0.50%以下であり、好ましくは0.45%以下であり、さらに好ましくは0.39%以下である。
(1−8)Ni:0.6〜2.0%
Niは、焼入れ性を向上させて強度を得るだけでなく、同時に低温靭性およびアレスト性も向上できる有用な元素である。したがって、Ni含有量は、0.6%以上であり、好ましくは0.7%以上であり、さらに好ましくは0.8%以上である。
一方、Niは、高価な合金元素であり、2.0%を超えて含有すると経済合理性に合わなくなる。したがって、Ni含有量は、2.0%以下であり、好ましくは1.9%以下であり、さらに好ましくは1.8%以下である。
(1−9)Cr:0.3〜1.0%
Crは、低温靭性およびアレスト性を損なうことなく、強度を向上させることができる。したがって、Cr含有量は、0.3%以上であり、好ましくは0.4%以上であり、さらに好ましくは0.5%以上である。
一方、Cr含有量が1.0%を超えると、高強度厚鋼板の靭性を劣化させる。したがって、Cr含有量は、1.0%以下であり、好ましくは0.9%以下であり、さらに好ましくは0.8%以下である。
(1−10)Mo:0.20〜0.8%
Moは、高強度厚鋼板の強度を向上させ、またBの添加による靭性の劣化を緩和する効果を有する。また、引張強さが780N/mmを超える高張力厚鋼板の溶接では、溶接熱影響部による軟化が生じるが、Moは、溶接による熱によって析出物を形成して、軟化を抑制する効果を有する。これにより、高強度厚鋼板に衝撃が加わった際に軟化部への局所的な応力集中が緩和され、靭性の劣化が抑制される。したがって、Mo含有量は、0.20%以上であり、好ましくは0.3%以上であり、さらに好ましくは0.4%以上である。
一方、Mo含有量が0.8%を越えると、高強度厚鋼板の靭性が劣化する。したがって、Mo含有量は、0.8%以下であり、好ましくは0.7%以下であり、さらに好ましくは0.6%以下とする。
(1−11)Nb:0.010〜0.030%
Nbは、再結晶を遅延させることができ、低温で熱間圧延を行うことにより高密度の転位を導入して変態核生成サイトを増加できる。このため、組織微細化し、高強度厚鋼板の靭性およびアレスト性を向上することができる。したがって、Nb含有量は、0.010%以上であり、好ましくは0.012%以上であり、さらに好ましくは0.017%以上である。
一方、Nb含有量が0.030%を超えと高強度厚鋼板の靭性が劣化する。したがって、Nb含有量は、0.030%以下であり、好ましくは0.029%以下であり、さらに好ましくは0.028%以下である。
(1−12)Ti:0.010〜0.030%
Tiは、窒化物を生成して加熱時の結晶粒の粗大化を抑制するとともに、粒内変態核となる複合介在物の生成に必要である。しかし、Ti含有量が0.010%未満では、この作用が奏されない。したがって、Ti含有量は、0.010%以上であり、好ましくは0.011%以上であり、さらに好ましくは0.015%以上である。
一方、Ti含有量が0.030%を超えると、Ti炭化物が過剰に析出し母材靱性および溶接部靱性に悪影響を及ぼす。したがって、Ti含有量は、0.030%以下であり、好ましくは0.025%以下であり、さらに好ましくは0.020%以下である。
(1−13)N:0.0020〜0.0040%
Nは、Tiと窒化物を形成することにより加熱時の組織粗大化を抑制するため、高強度厚鋼板の靭性の向上に寄与する。したがって、N含有量は、0.0020%以上であり、好ましくは0.0024%以上であり、さらに好ましくは0.0025%以上である。
一方、N含有量が0.0040%を超えると、窒化物が粗大化することにより高強度厚鋼板の靭性が劣化する。したがって、N含有量は、0.0040%以下であり、好ましくは0.0038%以下であり、さらに好ましくは0.0037%以下である。
(1−14)O:0.0015〜0.0035%
O(酸素)は、粒内変態核となる複合酸化物の生成に必須である。したがって、O含有量は、0.0015%以上であり、好ましくは0.0017%以上であり、さらに好ましくは0.0020%以上である。
一方、Oは多量に含有すると清浄度の劣化が著しくなるため、母材、溶接金属部およびHAZともに実用的な靱性の確保が困難になる。したがって、O含有量は、0.0035%以下であり、好ましくは0.0033%以下であり、さらに好ましくは0.0030%以下である。
(1−15)B:0.0005〜0.0020%
Bは、少量で焼入れ性を向上することができるため、高強度厚鋼板の強度の向上に極めて有効である。さらに、溶接時はオーステナイト粒界に偏析し、粒界エネルギーを低下させることにより粒内から変態し、組織が微細化されるため、HAZ靭性の向上にも効果がある。したがって、B含有量は、0.0005%以上であり、好ましくは0.0006%以上であり、好ましくは0.0007%以上である。
一方、B含有量が0.0020%を超えると焼入れ性が過剰となり靭性を劣化させる。したがって、B含有量は、0.0020%以下であり、好ましくは0.0017%以下であり、さらに好ましくは0.0014%以下である。
次に任意元素を説明する。
(1−16)V:0〜0.05%
Vは、本発明では必要に応じて含有する任意元素であり、一般的に焼入れ性を向上させ、溶接時に析出することにより軟化を抑制することに有効である。しかし、V含有量が0.05%を超えると、析出物が粗大化して靭性が劣化する。したがって、V含有量は、0.05%以下であり、好ましくは0.04%以下であり、さらに好ましくは0.03%以下である。
上記効果を確実に得るためには、V含有量は、好ましくは0.01%以上であり、さらに好ましくは0.02%以上である。
(1−17)炭素当量Ceq:0.45〜0.60
さらに,本発明には所用の引張強さを確保するために、下記式(1)のように日本溶接協会規格(WES)で定義される焼入れ硬さの指標である炭素当量Ceqを0.45〜0.60とする。
Ceq=[C%]+[Si%]/24+[Mn%]/6+[Ni%]/40+[Cr%]/5+[Mo%]/4+[V%]/14・・・(1)
式(1)において[ ]付元素は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
上記式(1)で定義される炭素当量Ceqは、鋼板の焼入れ性を示す指標となる。引張強さを確保するためには、鋼板に含有するC、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、Vの含有量を、上記式(1)で定義される炭素当量Ceqを0.45以上にするように、調節する。炭素当量Ceqが0.45未満であると、焼入れ性が不足するために十分な引張強さが得られない。
炭素当量Ceqが大きくなるほど引張強さが高くなるが、炭素当量Ceqが0.60を超えると引張強さが過剰となり、それに伴ってシャルピーの吸収エネルギーが顕著に低下する。そのため、上記式(1)で定義される炭素当量Ceqは0.45〜0.60である。
(1−18)残部
上記以外の残部は、Feおよび不純物である。不純物としては、鉱石やスクラップ等の原材料に含まれるものや、製造工程において含まれるものが例示される。
2.複合介在物
さらに、本発明は、鋼板やHAZの組織微細化に寄与する複合介在物として、鋼中にTi酸化物の周囲にMnSが存在する複合介在物を含む。この複合介在物の断面におけるMnSの面積率、界面におけるMnSの割合、その介在物の粒径および個数密度が下記の範囲にある。
(2−1)複合介在物の断面におけるMnSの面積率:10%〜50%
本発明では、任意の切断面に現出した複合介在物を分析し、その複合介在物の断面積におけるMnSの面積率を測定することにより、複合介在物中のMnS量を規定する。
複合介在物の断面におけるMnSの面積率が10%未満であると、複合介在物中のMnS量が少なく、MnSとマトリクスとの界面に初期Mn欠乏層が十分に形成されない。その結果、溶接した際に粒内フェライトの生成が困難になる。したがって、複合介在物の断面におけるMnSの面積率は、10%以上であり、好ましくは12%以上であり、さらに好ましくは14%以上である。
一方、複合介在物の断面におけるMnSの割合が50%超であると、複合介在物がMnS主体となる。この場合、Ti系酸化物中の原子空孔に吸収されるMnは少なく、溶接Mn欠乏層が形成されず、粒内フェライトの生成が困難になる。このため、複合介在物の断面におけるMnSの面積率は、50%以下であり、好ましくは47%以下であり、さらに好ましくは46%以下である。
(2−2)Ti系複合介在物の界面におけるMnSの割合:10%以上
複合介在物中のMnSは、Ti系酸化物の周囲に形成される。複合介在物の周長に占めるMnSの割合が10%未満であると、MnSとマトリクスとの界面に形成される初期Mn欠乏領域が小さく、溶接しても粒内フェライト核生成が十分でない。このため、良好な低温HAZ靭性を得ることができない。したがって、複合介在物のマトリクスとの周長に占めるMnSの割合は、10%以上であり、好ましくは14%以上であり、さらに好ましくは17%以上である。
一方、MnSの割合が大きいほど初期Mn欠乏層は大きくなり粒内フェライトが生成し易くなる。このため、MnSの割合の上限は定めないが、通常80%以下となる。
(2−3)複合介在物の個数密度(粒径0.5〜5.0μmの複合介在物の個数密度):10〜40個/mm
複合介在物の個数密度とは、規定する粒径を有する複合介在物の単位面積当たりの個数のことをいう。複合介在物の粒径が0.5μm未満では、複合介在物の周囲から吸収できるMn量が少なく、その結果、粒内フェライトの生成量が低下する。一方、複合介在物の粒径が5.0μmより大きいと、複合介在物が破壊の起点になる。このため、本発明においては対象とする複合介在物の粒径を0.5〜5.0μmとする。
このような粒径を有する複合介在物の個数密度は、Mn吸収量に関わる。安定した粒内フェライトを核生成させるためには、各複合介在物が旧オーステナイト内に少なくとも1つ程度含まれる必要がある。そのため、複合介在物の個数密度は、10個/mm以上であり、好ましくは12個/mm以上であり、さらに好ましくは13個/mm以上である。
一方、複合介在物が過剰に多い場合は、延性破壊の吸収エネルギーが低下する。このため、複合介在物の個数密度は、40個/mm以下であり、好ましくは39個/mm以下であり、さらに好ましくは34個/mm以下である。
3.平均有効結晶粒径:10μm以下
さらに本発明は、アレスト性を確保するために有効結晶粒径のサイズは下記の範囲である。
低温靭性およびアレスト性を確保するには、結晶の破壊単位となる有効結晶粒径を小さくすることが有効である。平均有効結晶粒径が10μm以下であれば、脆性亀裂の伝播エネルギーを吸収し、本発明に必要なアレスト性を確保できる。平均有効結晶粒径が10μmを超えるとアレスト性を確保できない。
したがって、平均有効結晶粒径は、10μm以下であり、好ましくは9.9μm以下であり、さらに好ましくは9.5μm以下である。なお、平均有効結晶粒径は小さいほど低温靭性およびアレスト性が良好となるため、平均有効結晶粒径の下限は、規定しないが、通常5μmである。
4.製造方法
次に、本発明に係る高張力厚鋼板は、上記のような化学組成を有していても、所用のアレスト性およびHAZ靭性を確保するためには、製造方法が適切でなければ、上記の複合介在物を得られない。
(4−1)工程I
本発明に係る高張力圧鋼板の鋳片の製造では、鋼中介在物の制御のため、RH(Ruhrstahl-Hausen)真空脱ガス処理前に、Arガスを上部より溶鋼内に吹込み、溶鋼の表面のスラグと溶鋼を反応させる。これにより、スラグ内のトータルFe量を調整し、溶鋼内の酸素ポテンシャルを10〜30ppmに制御する。
ここで、Arガスの流量を100〜200L/minの間で調整し、吹き込み時間を5〜15minの間で調整する。
その後、RH真空脱ガス処理により各元素を添加して成分調整を行い、連続鋳造により300mm厚の鋳片を鋳造する。
(4−2)工程II〜IV
次に、工程Iにより得られた鋳片に、以下の工程II〜工程IVを順次行う。
工程II:950〜1100℃の温度域へ加熱、均熱化
工程III:900℃以下の温度範囲での累積圧下率が50%以上となるように所望の
板厚まで熱間圧延
工程IV:熱間圧延終了後、700℃以上の温度から強制冷却(直接焼入れ)
さらに必要に応じて、工程IVの後に工程Vを行ってもよい。
工程V:600〜650℃の温度での焼戻し
工程IIにおいては、加熱温度が950℃未満であると、固溶Nbが不足し、未再結晶域を広げる効果が不足するため、高密度の転位を導入できない。このため、変態核生成サイトが不足するために組織微細化ができず、低温靭性およびアレスト性を確保できない。一方、加熱温度が1100℃を超えるとオーステナイト粒の粗大化が顕著になり、組織微細化が十分にできなくなる。このため、低温靭性およびアレスト性を確保できない。したがって、加熱温度は、950〜1100℃とする。
工程IIIにおいては、固溶Nbを確保して未再結晶域を広げた状態であっても、900℃を超える温度域での圧下により導入された転位は、圧延中に徐々に回復が起こるため、組織を十分に微細化できるほど転位を蓄積することができない。900℃以下で圧延すればするほど転位の蓄積には好ましいが、一方で、低温領域での圧下は、鋼板の変形抵抗が大きく、圧延機への負荷が大きいため、設備面からはこの温度域での圧下は少ないほうがが好ましい。
900℃以下の温度範囲で累積圧下率が50%以上、好ましくは50〜60%で熱間圧延を行えば、所用のアレスト性を確保しつつ、設備への負荷も許容される。ただし、設備に問題なければ累積圧下率60%超で圧延してもアレスト性には何ら問題は生じない。ここで、900℃累積圧下率は、下記(式2)として定義する。
(900℃以下累積圧下率[%])={(圧延900℃時の鋼板厚[mm])-(圧延後鋼板板厚[mm])}/{(鋳片厚[mm])-(圧延後鋼板板厚[mm])}×100・・・(2)
工程IVにおいては、熱間圧延終了後に時間をおかずに強制冷却する。熱間圧延終了後できる限り早く強制冷却することが好ましいが、圧延機と冷却装置の位置関係により直ちに冷却ができない場合もある。このような場合でも少なくとも700℃以上から強制冷却すれば、十分な焼入れ効果を得られる。十分な焼入れ強度を得るには、強制冷却は、水などの冷却媒体が鋼板面全体に均一にあたるようにし、板厚の中心部が1℃/sec以上となる冷却速度で行うことが好ましい。
さらに必要に応じて工程Vを行うことができ、600〜650℃に焼戻しを行うことで靭性を向上させることができる。
このようにして、本発明に係る高張力厚鋼板を製造することができる。さらに、本発明に係る高張力厚鋼板およびその製造方法を具体的に説明するが、これは、本発明の例示であり、これにより本発明が限定されるものではない。
本発明では、転炉で溶製し、表1,2に示す化学組成を有する300mm厚の鋳片を連続鋳造法により作製した。ここで、複合介在物の制御の観点より、転炉においてRH真空脱ガス処理前の溶鋼中の酸素ポテンシャルを表3,4に示す量に調整した後、Ti等を添加して成分調整した。
Figure 2019056148
Figure 2019056148
その後、連続鋳造過程で溶鋼の温度を過度に高くせず、溶鋼の化学組成から決まる凝固温度に対し、その差が50℃以内になるように管理し、さらに凝固直前の電磁攪拌および凝固時の圧下を行って、300mm厚さの鋳片とした。
表1,2に示す化学組成を有する鋳片を表3,4に示す加工条件によって、鋳片に加熱および均熱、熱間圧延、焼入れを行い、一部の試料についてはさらに焼戻しを行って、板厚が25〜80mmの高強度厚鋼板を得た。
Ti系複合介在物の断面におけるMnS面積率およびMnS周長割合の算出には、高強度厚鋼板の板厚1/4t部より採取した複合介在物分析用の試験片を用いた。複合介在物は、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用い、複合介在物を面分析したマッピング画像から、MnS面積率および複合介在物の界面におけるMnS周長割合を測定した。MnS面積率および複合介在物の界面におけるMnS周長割合は、各試料につき20個ずつEPMAによる分析を行い、平均値を算出することにより求めた。
さらに、Ti系複合介在物の個数密度は、SEM-EDXを組み合わせた自動介在物分析装置から得た複合介在物の形状測定データから、粒径が0.5〜5.0μmの範囲である複合介在物の個数を算出することにより、個数密度を算出した。算出した結果を表3,4に示す。
平均有効結晶粒径の同定は、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)の電子線後方散乱回折法(EBSD)を用いたOrientation Imaging Microscopy法(OIM法)を用いて行った。EBSP-OIM法は、走査型電子顕微鏡(SEM)内で高傾斜した試料に電子線を照射し、後方散乱して形成された菊池パターンを高感度カメラで撮影し、コンピュータ画像処理することにより照射点の結晶方位を短待間で測定する装置およびソフトウエアにより構成されている。
これにより、バルク試料の表面の微細構造ならびに結晶方位を定量的に解析できる。その結晶粒の方位差を一般的に脆性亀裂伝播停止特性に寄与する閾値として認識されている15°を結晶粒界として定義してマッピングした画像より粒を可視化し、平均有効結晶粒径を求めた。
具体的には、高強度厚鋼板の1/4t部から試験片を採取し、板厚断面を鏡面研磨した後、電界研磨をして表面を調整した試料を用意した。その後、日本電子社製FE-SEM(例えばJEOL JSM 7800F)を使用して結晶粒径を測定した。測定領域は400μm×400μmとして測定ステップ間隔を0.4μmとした。EBSD測定・解析は、TSL社製のOIMソフトフェアを使用した。得られた平均有効結晶粒径を表3,4に示す。
表3,4で得られた高強度厚鋼板の板厚中央部より圧延と直角の方向にJIS Z2241−2016に準拠した4号引張試験片(丸棒)(径=14mm)と、JIS Z2242−2016に準拠したシャルピー試験片に準拠したシャルピー試験片(2mmVノッチ試験片)を採取した。ノッチ位置は板厚方向とした。
それぞれ機械特性試験を行い、引張強さ、降伏強さ、−60℃のシャルピー吸収エネルギーを測定した。脆性亀裂伝播停止特性は、温度勾配型ESSO試験を行い、Kcaが200MPa・m1/2となる温度を評価した。
図1は、実施例におけるHAZ靭性を評価するための試験片採取要領を示す図である。図1における符号1は2mmVノッチシャルピー試験片を示し、符号2は裏板を示し、符号3は溶接ビードを示し、符号4は鋼板を示す。
HAZ靭性は、鋼板4をレ型開先で突き合わせた後、80k級鋼用の直径4.8mmのサブマージアーク溶接用ソリッドワイヤ商品名Y−80と溶接フラックス商品名NB−80(共に日鐵住金溶接工業株式会社製)を用いて、溶接入熱60〜80kJ/cmにて図1に示す多層盛り溶接を行った。
その後、溶接長手方向と垂直に切断し、図1に示すように表層から1/4tの溶融部をノッチ位置として2mmVノッチシャルピー試験片を採取して、−40℃でシャルピー衝撃試験を行って吸収エネルギーを評価した。
特性の評価基準は以下の通りとした。
・降伏強さ:合格基準無し。
・引張強さ:780MPa以上を合格とした。
・鋼板靭性:−60℃シャルピー吸収エネルギーが100J以上を合格とした。
・アレスト性:Kcaが200MPa・m1/2となる温度が−10℃以下を合格とした。
・HAZ部靭性:−40℃シャルピー吸収エネルギーが47J以上を合格とした。
得られた試験結果を表3,4に示す。
Figure 2019056148
Figure 2019056148
表3における記号A01〜A30は、本発明の規定を全て満足する本発明例であり、表4における記号B01〜B31は、本発明の規定を満足しない比較例である。
記号A01〜A30は、引張強さ:780MPa以上、−60℃シャルピー吸収エネルギー:100J以上,Kcaが200MPa・m1/2となる温度:−10℃以下、−40℃シャルピー吸収エネルギー:47J以上の機械特性を備えており、低温靭性およびアレスト性に優れ、かつ大入熱溶接においてHAZ靭性に優れる。このため、大入熱溶接が適用でき、溶接施工効率に優れる、低温靭性、アレスト性およびHAZ靭性に優れる板厚が25mm以上の高張力厚鋼板である。このため、記号A01〜A30は、ペンストックや圧力容器などの大型構造物に好適に用いられる。
これに対し、記号B01は、C含有量が本発明の範囲の下限を下回るため、引張強さが不足した。
記号B02は、C含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B03は、Si含有量が本発明の範囲の下限を下回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B04は、Si含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B05は、Mn含有量が本発明の範囲の下限を下回り、MnS面積率およびMnS周長割合が不十分となったため、HAZ靭性が不足した。
記号B06は、Mn含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B07は、Al含有量が本発明の範囲の上限を上回り、個数密度が不十分となったため、HAZ靭性が不足した。
記号B08は、Cu含有量が本発明の範囲の下限を下回るため、引張強さが不足した。
記号B09は、Cu含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B10は、Ni含有量が本発明の範囲の下限を上回るため、アレスト性が不足した。
記号B11は、Cr含有量が本発明の範囲の下限を下回るため、引張強さが不足した。
記号B12は、Cr含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B13は、Mo含有量が本発明の範囲の下限を下回るため、引張強さが不足した。
記号B14は、Mo含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B15は、Nb含有量が本発明の範囲の下限を下回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B16は、Nb含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B17は、V含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B18は、Ti含有量が本発明の範囲の下限を下回るため、アレスト性が不足した。
記号B19は、Ti含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B20は、N含有量が本発明の範囲の下限を下回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B21は、N含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B22は、RH真空脱ガス処理前における溶鋼中の酸素ポテンシャルが本発明の範囲の下限を下回るとともにO含有量が本発明の範囲の下限を下回るため、個数密度が不十分となり、HAZ靭性が不足した。
記号B23は、RH真空脱ガス処理前における溶鋼中の酸素ポテンシャルが本発明の範囲の上限を上回るとともにO含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B24は、B含有量が本発明の範囲の下限を下回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B25は、B含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B26は、炭素当量Ceqが本発明の範囲の下限を下回るため、引張強さが不足した。
記号B27は、炭素当量Ceqが本発明の範囲の上限を上回るため、鋼板の靭性が不足した。
記号B28は、900℃以下の累積圧下率が本発明の範囲の下限を下回るため、アレスト性が不足した。
記号B29は、RH真空脱ガス処理前における溶鋼中の酸素ポテンシャルが本発明の範囲の下限を下回り、個数密度が不十分となったため、HAZ靭性が不足した。
記号B30は、RH真空脱ガス処理前における溶鋼中の酸素ポテンシャルが本発明の範囲の上限を上回り、MnS面積率およびMnS周長割合が不十分となったため、HAZ靭性が不足した。
さらに、記号B31は、S含有量が本発明の範囲の下限を下回り、MnS面積率及びMnS周長割合が不十分となったため、HAZ靭性が不足した。
1 2mmVノッチシャルピー試験片
2 裏板
3 溶接ビード
4 鋼板

Claims (4)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C:0.05〜0.13%、
    Si:0.10〜0.50%、
    Mn:1.0〜1.6%、
    P:0.015%以下、
    S:0.001〜0.005%、
    Al:0.0028%以下、
    Cu:0.20〜0.50%、
    Ni:0.6〜2.0%、
    Cr:0.3〜1.0%、
    Mo:0.20〜0.8%、
    Nb:0.010〜0.030%、
    Ti:0.010〜0.030%、
    N:0.0020〜0.0040%、
    O:0.0015〜0.0035%、
    B:0.0005〜0.0020%、
    V:0〜0.05%、
    残部はFeおよび不純物であり、
    以下の式(1)で定義される炭素当量Ceqが0.45〜0.60であり、
    さらに、鋼中にTi酸化物の周囲にMnSが存在する複合介在物を含み、
    前記複合介在物の断面における前記MnSの面積率が10〜50%であり、
    その界面におけるMnSの割合が10%以上であり、
    粒径0.5〜5.0umの前記複合介在物の個数密度が10〜40個/mmであり、
    その金属組織の平均有効結晶粒径が10μm以下である、引張強さ780MPa以上で板厚25mm以上の低温靭性、アレスト性およびHAZ靭性に優れる高張力厚鋼板。
    Ceq=[C%]+[Si%]/24+[Mn%]/6+[Ni%]/40+[Cr%]/5+[Mo%]/4+[V%]/14・・・(1)
    式(1)において[ ]付元素は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
  2. V:0.01〜0.05%を含有する、請求項1に記載の高張力厚鋼板。
  3. RH真空脱ガス処理前において、溶鋼中の酸素ポテンシャルを10〜30ppmとして、RH真空脱ガス処理において化学組成を調整して溶鋼を製造し、
    該溶鋼を用いて連続鋳造法により鋳片を製造し、
    該鋳片を950〜1100℃の温度に加熱および均熱してから、
    900℃以下の温度範囲にて累積圧下率50%以上で所定の板厚に仕上げるように熱間圧延を行い、
    該熱間圧延の直後に700℃以上の温度から直接焼入れをする、請求項1または2に記載の高張力厚鋼板の製造方法。
  4. 前記直接焼入れをした後にさらに600〜650℃の温度で焼戻し処理を施す、請求項3に記載の高張力厚鋼板の製造方法。
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