JP2019056113A - 繊維化パラミロン、添加剤、及び、該添加剤の製造方法 - Google Patents

繊維化パラミロン、添加剤、及び、該添加剤の製造方法 Download PDF

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圭 寺澤
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Abstract

【課題】ユーグレナ由来の繊維化パラミロン、及び繊維化パラミロンを含む添加剤の提供。【解決手段】複数の繊維状物が互いに絡み合うことによって寄り集まった状態となっている、繊維化パラミロン。0.1MのNaOH水溶液に溶解せず、水を含む液体に分散する性能を有する。パラミロン顆粒をせん断力によって繊維化することにより製造。【選択図】なし

Description

本願は、日本国特願2016−245593号および日本国特願2017−171267号の優先権を主張し、これら出願が引用によって本願明細書の記載に組み込まれる。
本発明は、繊維化パラミロンに関する。また、本発明は、例えば、食品分野で用いられる添加剤、及び、該添加剤の製造方法に関する。
従来、樹脂を含む組成物にフィラーとして添加される添加剤が知られている。この種の添加剤としては、パラミロン顆粒を含有する添加剤が知られている(特許文献1)。
特許文献1に記載の添加剤は、ユーグレナが貯めたパラミロン顆粒を細胞内から取り出すことによって得られる。特許文献1に記載の添加剤は、例えば、水を含まない組成物にフィラーとして配合される。その後、組成物は、板状に成形して複合体に形成され、各種の工業分野において使用される。
ところが、特許文献1に記載の添加剤は、パラミロン顆粒を含むため、水への分散性が良好でないことから、例えば、水を含む食品用途などの組成物に配合することが困難である。このように、特許文献1に記載の添加剤は、水への分散性が良好でないという問題を有する。
日本国特開2013−091716号公報
本発明は、このような問題点に鑑み、水への分散性が比較的良好である繊維化パラミロン、該繊維化パラミロンを含む添加剤、及び、該添加剤の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決すべく、本発明は、ユーグレナ由来の繊維化パラミロンを提供する。繊維化パラミロンは、複数の繊維状物が互いに絡み合うことによって寄り集まった状態となっていてもよい。斯かる繊維化パラミロンは、比較的均一且つ簡便に水に分散されることから、水への分散性が比較的良好であるため、水を含む液体に分散する性能を有する。斯かる繊維化パラミロンは、通常、0.1MのNaOH水溶液に溶解しない。斯かる繊維化パラミロンは、せん断力による解繊処理が施されたものである。
また、上記課題を解決すべく、本発明に係る添加剤は、上記の繊維化パラミロンを含むことを特徴とする。上記添加剤は、パラミロンの繊維状物を含むため、比較的均一且つ簡便に水に分散されることから、水への分散性が比較的良好である。
本発明に係る添加剤は、固形物の状態であってもよい。本発明に係る固形物の状態の添加剤は、水溶性高分子化合物をさらに含むことが好ましい。水溶性高分子化合物をさらに含むことにより、添加剤は、水への分散性がより良好となる。本発明に係る固形物の状態の添加剤は、水を含む溶媒に分散させるためのものであってもよい。
本発明に係る添加剤の製造方法は、パラミロン顆粒をせん断力によって繊維化することによりパラミロン顆粒を繊維状に形成するせん断工程を備えることを特徴とする。
繊維化パラミロンの電子顕微鏡写真。 繊維化パラミロンの電子顕微鏡写真(図1の一部の拡大図)。 繊維化パラミロンの電子顕微鏡写真。 パラミロン顆粒にせん断力を加える装置の一例を表した概略図。 パラミロン顆粒にせん断力を加える装置の他の例を表した概略図。 パラミロン顆粒にせん断力を加える装置の他の例を表した概略図。 パラミロン顆粒にせん断力を加える装置の他の例を表した概略図。 繊維化パラミロン及びパラミロン顆粒をそれぞれ含む組成物の外観写真。 繊維化パラミロンおよびパラミロン顆粒のX線回折(XRD)のチャート。 水に分散した繊維化パラミロン及びセルロースの光学顕微鏡写真。 本実施形態の添加剤及びセルロースを水に分散させた組成物の外観を表す写真。 水中沈定体積の評価結果を表す写真。 水中沈定体積の評価結果を表すグラフ。 水に分散した繊維化パラミロンの光学顕微鏡写真。 水中沈定体積の評価結果を表すグラフ。 水に分散した繊維化パラミロンの光学顕微鏡写真。 保水力の評価結果を表すグラフ。 β−1,3−グルカナーゼ酵素による分解性試験の結果(グルコース生成量の測定結果)を表すグラフ。 アルカリ性水溶液と繊維化パラミロン等とを混合したあとの外観を表す写真。 油分を含む組成物の分散(乳化)安定性の評価結果を表すグラフ。 ココア粉末を含む組成物の外観を表す写真。
以下、本発明に係る繊維化パラミロン(パラミロン繊維)の一実施形態について詳しく説明する。
本実施形態の繊維化パラミロンは、ユーグレナ由来のパラミロン顆粒が繊維化されることによって、複数の繊維状物が形成されたものである。上記の繊維化パラミロンは、複数の繊維状物の集合体を含む。繊維状物は、β−1,3−グルカンのミクロフィブリルを有する。パラミロン顆粒は、微細藻類のユーグレナによって細胞内に貯められたものである。パラミロン顆粒は、β−1,3−グルカンの1種であるパラミロンが細胞内で顆粒状となって産生されたものである。ユーグレナについては、後述する。
上記の繊維化パラミロンは、複数の繊維状物を含む。上記の繊維化パラミロンでは、通常、複数の繊維状物が互いに絡み合うことによって寄り集まった状態となっている。上記の繊維化パラミロンは、複数の繊維状物が集合して網状になった網目状構造を有する。上記の繊維化パラミロンは、水を含む液体に分散する性能を有する。上記の繊維化パラミロンは、比較的均一且つ簡便に水に分散されることから、水への分散性が比較的良好である。上記の繊維化パラミロンの水中沈定体積は、通常、35mL/g以上200mL/g以下である。水中沈定体積は、実施例に記載された方法によって測定する。
なお、後述する乾燥工程を経ない、水に分散した状態の繊維化パラミロンの水中沈定体積は、通常、70mL/g以上200mL/g以下である。一方、後述する乾燥工程を経て、いったん固形物の状態になった繊維化パラミロンの水中沈定体積は、通常、35mL/g以上200mL/g以下である。後者の繊維化パラミロンの水中沈定体積は、固形物となった繊維化パラミロンを水に加え、後述する実施例の<分散性の評価(2) 水中沈定体積>に記載されているように、スターラー等を利用して撹拌して再分散した繊維化パラミロンを用いて測定される。水中沈定体積の測定方法については、実施例で詳細に説明する。
上記の繊維化パラミロンの水中沈定体積が上記の数値範囲であることにより、上記の繊維化パラミロンは、水などの溶液を網目構造中に十分に保持することができる。
上記の繊維化パラミロンの各繊維状物の太さは、通常、10nm以上500nm以下である。斯かる太さは、20nm以上300nm以下であることが好ましく、100nm以上200nm以下であることがより好ましい。これにより、繊維状に形成されたパラミロンの繊維状物が、より水に分散しやすくなるという利点がある。電子顕微鏡(SEM)で観察すると、枝分かれした構造(分岐した構造)を有する繊維状物が観察され、多数の繊維状物で網目状となった様子が観察される。繊維化パラミロンの形状は、例えば、繊維化パラミロンを顕微鏡で観察することによって確認される。なお、上記の太さは、繊維状物を顕微鏡で観察したときに、長さ方向の任意の5点にて、各点で長さ方向に直交する方向での長さ(太さ)を平均した値によって決定される。
詳しくは、以下の方法によって繊維化パラミロンを観察することにより、繊維状物における太さを測定する。繊維化パラミロンと水とが共存する混合物に対しては、水をt−ブタノール(tert-ブチルアルコール)に置換する処理を行う。具体的に、繊維化パラミロンと水との混合物に対して、該混合物の0.5〜9倍容量のt−ブタノールを加えて、ボルテックスミキサー等によって、繊維化パラミロンを分散させる。比較的多量(例えば9倍容量)のt−ブタノールを加えた場合は、その後、遠心分離などによって固液分離処理を行い、上澄液を取り除き、固形分を得て、固形分をt−ブタノールに分散させ、同様な操作を3〜5回程度繰り返すことで、繊維化パラミロンがt−ブタノールに分散され、水をほとんど含まない試験液を調製する。試験液の一部を平板(例えばガラス板)上に滴下し、滴下された試験液を低温(例えば−20℃)に置いて凍結させる。さらに、減圧処理によって、t−ブタノールを揮発させる。その後、オスミウムプラズマイオンコート(厚さ20nm)を施し、走査型電子顕微鏡による一般的な観察方法によって、繊維化パラミロンを観察する。
上記の繊維化パラミロンは、せん断力による解繊処理が施されたものである。具体的に、上記の繊維化パラミロンは、後述する製造方法において、パラミロン顆粒がせん断力によって砕かれ、解繊されることによって形成される。このように、上記の繊維化パラミロンは、せん断力による物理的な解繊処理によって得られる。
なお、パラミロン顆粒に上記の解繊処理を施す前に、パラミロン顆粒に化学的な処理を施してもよい。この化学的な処理においては、パラミロン顆粒が完全溶解しない条件での処理(例えば0.25M NaOH水溶液による処理)をおこなうことができ、続いて、塩酸水溶液による中和処理を行うことができる。
走査型電子顕微鏡によって観察した繊維化パラミロンの観察像を図1〜図3に示す。図2は、図1における長方形部分の拡大図である。図3は、図1に示された繊維化パラミロンの製法と異なる製法で作られた繊維化パラミロンの観察像である。なお、図1〜図3において、右下のスケールの10目盛り分(一方端から他方端まで)が、各図に記載された長さである。図1〜図3では、繊維化パラミロンの各繊維状物が互いに絡み合って、各繊維状物が寄り集まった状態となり、3次元ネットワークを形成している様子が観察される。換言すると、繊維化パラミロンは、各繊維状物が互いに複雑に絡み合うことで網目状の構造となっている。繊維化されたパラミロンの各繊維状物では、太さに対する長手方向の長さの比が、通常、5〜5000である。繊維化パラミロンの各繊維状物の長手方向の長さは、通常、3μm以上100μm以下である。
上記の繊維化パラミロンは、通常、45%以上60%以下の結晶化度を有する。斯かる結晶化度は、実施例に記載された方法によってX線回折チャートを得て、さらに、斯かるチャートを基にして実施例に記載された方法によって求められる。結晶化度は、X線回折チャートにおける2θ=5〜80°における非晶質部の強度と結晶部の強度の比により求められる。パラミロン顆粒(繊維化パラミロンを製造する前)の結晶化度に対する、上記の繊維化パラミロンの結晶化度の相対値は、0.60以上0.90以下であってもよく、0.60以上0.85以下であってもよく、0.65以上0.80以下であってもよい。なお、上記のごとき結晶化度の相対値は、同じ測定条件で測定されたX線回折チャートに基づいた各結晶化度から算出される。
上記の繊維化パラミロンの体積基準でのメジアン径(D50)は、通常、原料のパラミロン顆粒の0.9倍以上3倍未満であり、好ましくは1.0倍以上2.0倍以下であり、より好ましくは1.2倍以下である。メジアン径は、事前に超音波照射により試料を分散させた後、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置で粒度を測定することによって求める。上記のメジアン径は、通常、6μm以下である。上記のメジアン径は、4μm以下であってもよい。
上記の繊維化パラミロンは、β−1,3−グルカナーゼによってグルコースへと分解されにくい。換言すると、上記の繊維化パラミロンは、β−1,3−グルカナーゼに対する感受性が低く、例えば化学処理された(後述)パラミロンよりも、β−1,3−グルカナーゼによって分解されにくい。β−1,3−グルカナーゼに対する感受性(グルコースへの分解され易さ)は、例えば、所定温度で所定時間、β−1,3−グルカナーゼと上記の繊維化パラミロンとを水中で接触させて生じるグルコースの量を測定することによって測定でき、その結果を基にして上記の感受性を比較できる。上記の繊維化パラミロンのグルコース生成量は、繊維化パラミロン1gあたりのグルコース生成量[mg/g]によって表すことができる。上記グルコース生成量は、実施例に記載された方法によれば、30mg/g(グルコース/繊維化パラミロン)以下であり、好ましくは10mg/g以下である。上記グルコース生成量は、実施例に記載された市販のグルコース定量キットを用いて、実施例に記載された方法によって測定される。上記の繊維化パラミロンは、化学処理されたパラミロンよりも、β−1,3−グルカナーゼに対する感受性が低いため、微生物による分解を受けにくい。
また、上記の繊維化パラミロンは、pHが比較的高い水溶液に溶解しない。例えば、上記の繊維化パラミロンは、0.1MのNaOH水溶液に溶解せず、0.3MのNaOH水溶液にも溶解しない。上記の繊維化パラミロンを乾燥させて粉砕した粉末250mgと、0.3MのNaOH水溶液の10mLとを混合し、20℃において1時間撹拌したあとに、混合液が懸濁している(透明でない)ことを観察することで、繊維化パラミロンが溶解しないことを確認できる。一方、パラミロン顆粒をNaOH水溶液やジメチルスルホキシド等にいったん溶解させた後に析出させたパラミロンは、0.1MのNaOH水溶液や0.3MのNaOH水溶液に溶解する。上記の混合液が透明か懸濁状態かを目視で観察することによって、溶解したか否かを確認する。仮に、目視で確認することが困難である場合、分光光度計を用いて660nmにおける上記混合液の吸光度を測定し、測定値が0.1以下であれば、溶解したと判定することが望ましい。同様の条件下で測定した純水の吸光度をブランク値とし、混合液の吸光度からブランク値を差し引くことで、混合液の最終的な吸光度を求める。
なお、化学処理されたパラミロンは、アルカリ性水溶液やDMSOなどによっていったん溶解される等の処理を受けていることから、せん断力を受けて繊維化された上記の繊維化パラミロンよりも、β−1,3−グルカン同士の水素結合が少なくなっていると考えられる。これにより、化学処理されたパラミロンは、上述したように、β−1,3−グルカナーゼによって分解されやすかったり、アルカリ性水溶液において溶解しやすかったりすると考えられる。
繊維化パラミロンは、水を含む液体に分散された状態であってもよく、水に分散されず凝集して粒状となった状態であってもよい。水に分散されていない状態であっても、繊維化パラミロンは、比較的均一且つ簡便に水に再分散されることから、水への分散性が比較的良好である。水に分散された状態の繊維化パラミロンは、分散された状態を比較的長期間保つことができるため、水への分散性が比較的良好である。
次に、本発明に係る添加剤の一実施形態について詳しく説明する。
本実施形態の添加剤は、上述した、繊維化パラミロンを含む。
本実施形態の添加剤は、液状(スラリー状など)であってもよい。液状の添加剤は、通常、水と、上記の繊維化パラミロンとを含む。液状の添加剤は、上記の繊維化パラミロンを含むため、通常、粘ちょうである。液状の添加剤は、上記繊維化パラミロンがすでに水に分散された状態であることから、さらに水に分散されたときに、水への分散性が比較的良好である。
上記の添加剤は、固形物であってもよい。固形物の状態の添加剤は、例えば、錠剤の形状であってもよい。添加剤は、例えば、多量の粒子を含む粉体であってもよい。上記の繊維化パラミロンは、例えば凝集して粒子となって添加剤に含まれる。上記の添加剤を構成する粒子や錠剤の大きさは、0.4μm以上10mm以下であってもよい。添加剤は、例えば、上記繊維化パラミロンを含有する粒子を含む少なくとも1つの錠剤で構成されてもよい。固形物の添加剤における水の含有率は、通常、5質量%未満である。固形物の状態の上記添加剤は、例えばセルロース繊維を含む粉体状の添加剤よりも、水への再分散性が良好である。
上記の固形物の状態の添加剤は、上記繊維化パラミロンを20質量%以上含んでもよく、50質量%以上含んでもよく、80質量%含んでいてもよい。また、上記の固形物の状態の添加剤は、全て繊維化パラミロンで構成されていてもよい。
上記の固形物の状態の添加剤は、水溶性高分子化合物をさらに含んでもよい。固形物の状態の添加剤は、上記繊維化パラミロンに対して100質量%以上の水溶性高分子化合物を含んでもよく、上記繊維化パラミロンに対して200質量%以上の水溶性高分子化合物を含んでもよい。添加剤の用途によって水溶性高分子化合物の含有割合を適宜変更することができる。
水溶性高分子化合物は、例えばパラミロン以外の固体粒子である。水溶性高分子化合物は、例えば固形物の状態の繊維化パラミロンに含浸する液体であってもよい。水溶性高分子化合物としては、例えば、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、キサンタンガム、キシログルカン、デキストリン、デキストラン、カラギーナン、ローカストビーンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、プルラン、澱粉(かたくり粉、クズ粉、コーンスターチ)、加工澱粉(カチオン化澱粉、燐酸化澱粉、燐酸架橋澱粉、燐酸モノエステル化燐酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化燐酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化燐酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉)、アラビアガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ポリデキストロース、ペクチン、キチン、キトサン、カゼイン、アルブミン、大豆蛋白溶解物、ペプトン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミノ酸、ポリ乳酸、ポリリンゴ酸、ポリグリセリン、ラテックス、ロジン系サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド・ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミン、植物ガム、ポリエチレングリコール、親水性架橋ポリマー、ポリアクリル酸塩、でんぷんポリアクリル酸共重合体、タマリンドガム、グァーガム、及び、コロイダルシリカからなる群より選択された少なくとも1種が挙げられる。固形物の状態の添加剤が水溶性高分子化合物を含むことにより、水への再分散性が向上され得る。
固形物の状態であり且つ水溶性高分子化合物を含む添加剤を光学顕微鏡で観察したときに、通常、粒子状の水溶性高分子化合物は、観察されない。上記水溶性高分子化合物は、溶解してから上記繊維化パラミロンの繊維状物と混ざり合っていることから、光学顕微鏡の観察像において、固形物の状態の添加剤は、形状を有する上記水溶性高分子化合物を含まない。
次に、本発明に係る繊維化パラミロンおよび添加剤の製造方法の一実施形態について詳しく説明する。
本実施形態の添加剤の製造方法は、パラミロン顆粒をせん断力によって繊維化することによりパラミロン顆粒を繊維状に形成するせん断工程を備える。せん断工程によって、パラミロン顆粒を繊維化することができる。
本実施形態の添加剤の製造方法は、固形物の添加剤を製造するために、せん断工程で得られた添加剤に乾燥処理を施す乾燥処理工程と、乾燥処理が施された添加剤に粉砕処理を施して、固形物の状態の添加剤を得る粉砕処理工程と、をさらに備える。
せん断工程では、例えば、ユーグレナが細胞内に貯めたパラミロン顆粒(1〜5μm程度の大きさ)に水の存在下でせん断力を加えることによって繊維化パラミロンを得て、液状の添加剤を製造する。
さらに、乾燥処理工程にて液状の添加剤を乾燥処理し、続いて、粉砕処理工程にて粉砕処理することによって、固形物の状態となった添加剤を製造する。
上記のごとく製造された添加剤は、アルカリや酸を用いた化学的な処理を行わなくても、物理的な処理によって、比較的簡便に製造することができる。本実施形態の上記添加剤は、化学処理のみによって繊維化されたパラミロンを含まず、せん断力などによる物理的な処理によって繊維化された繊維化パラミロンを含む。なお、せん断工程は、通常、水の存在下で行うが、水以外の溶媒の存在下で行ってもよい。
せん断工程では、上記の繊維化パラミロンは、せん断力による物理的処理によって、パラミロン顆粒が解繊されて調製される。物理的処理では、パラミロン顆粒を構成するβ−1,3−グルカンの水素結合がほとんど切断されずに、解繊処理が行われる。一方で、化学的な処理では、アルカリ性水溶液やDMSO等の溶液にパラミロンを一度完全に溶解させるため、β−1,3−グルカン同士の水素結合がなくなり、1本鎖のβ−1,3−グルカンを生じさせると考えられる。このことから、本実施形態の繊維化パラミロンは、化学的な処理が施されたパラミロンよりもパラミロン顆粒本来の結晶構造を比較的保持しており、比較的化学的に安定である可能性が高い。上述したように、本実施形態の繊維化パラミロンは、化学的な処理が施されたパラミロンよりも、アルカリ性水溶液等に溶解しにくく、また、β−1,3−グルカナーゼによって分解されにくい。よって、上記の繊維化パラミロンは、例えば食品として利用された場合に、体内でβ−1,3−グルカナーゼによって分解されにくく、繊維状の状態が保たれていることによる機能(例えば食物繊維の機能)を発揮することが期待できる。
せん断工程において、パラミロン顆粒にせん断力を加えることにより、パラミロン顆粒が解繊される。パラミロン顆粒は、数nmの太さのミクロフィブリルを含む。パラミロン顆粒は、比較的扁平な形状を有し、顆粒内部では、長手方向が揃うようにミクロフィブリルが並んでいる。顆粒内部では、扁平形状の周方向がミクロフィブリルの長手方向となるように、ミクロフィブリルが並び、ミクロフィブリルが束になっている。このようなパラミロン顆粒にせん断力が加わると、ミクロフィブリルの長手方向に対して垂直な方向に、ミクロフィブリルの束が離間し、パラミロン顆粒が解繊される。解繊処理が施された繊維化パラミロンは、通常、寄り集まったミクロフィブリルで構成されている。
せん断工程において、せん断力を加える装置としては、図4及び図5に示すように、互いに摺動しつつ相対移動する第1部材Y1及び第2部材Y2の間に、ユーグレナの細胞から取り出したパラミロン顆粒と水とを含む原材料液Aを入れて、第1部材Y1及び第2部材Y2を互いに摺動させるように構成された装置が挙げられる。また、せん断力を加える装置としては、図6に示すように、パラミロン顆粒を含む原材料液Aを噴射し、原材料液A同士を衝突させる装置が挙げられる。また、図7に示すように、パラミロン顆粒を含む原材料液Aを噴射し、原材料液Aを被衝突体X4に衝突させるように構成された装置が挙げられる。せん断工程においては、パラミロン顆粒が繊維化される条件下(所定の摺動部回転数、摺動面クリアランス、圧力等)で各装置を運転する。
前記第1部材Y1及び第2部材Y2が互いに摺動しつつ相対移動する装置は、図4及び図5に示すように、第1部材Y1と、第1部材Y1と摺動する第2部材Y2とを備える。例えば、第1部材Y1及び第2部材Y2は、図4に示すように、いずれも円柱状であり且つ同じ大きさである。第1部材Y1の円柱軸方向に垂直な面の一方と、第2部材Y2の円柱軸方向に垂直な面の一方とは、互いに向き合う。斯かる装置は、第1部材Y1及び第2部材Y2が各円柱軸を回転軸として回転するように構成されている。第1部材Y1及び第2部材Y2の各回転方向は、互いに反対方向である。なお、一方の部材が回転せず固定され、他方の部材が回転するように構成されてもよい。斯かる装置は、第1部材Y1及び第2部材Y2のそれぞれの上記一方の面(摺動面)同士が、上記回転によって摺動することにより、第1部材Y1及び第2部材Y2の間に入れられた原材料液A中のパラミロン顆粒に対してせん断力を加えてパラミロン顆粒を繊維化させるように構成されている。
上記の装置として、市販されているものが採用され得る。市販されている斯かる装置としては、例えば、増幸産業社製の石臼式摩砕機 製品名「スーパーマスコロイダー」等が挙げられる。
なお、前記第1部材及び第2部材が互いに摺動しつつ相対移動する装置は、図5に示すように、第1部材Y1と、第2部材Y2とを備え、第1部材Y1及び第2部材Y2が一方向及びその反対方向に往復して互いに相対移動することによって、第1部材Y1及び第2部材Y2が互いに摺動するように構成されてもよい。斯かる装置は、第1部材Y1及び第2部材Y2が互いに反対向きに相対移動して摺動することにより、第1部材Y1及び第2部材Y2の間に入れられた原材料液A中のパラミロン顆粒に対してせん断力を加えてパラミロン顆粒を繊維化させるように構成されている。
前記原材料液A同士を衝突させる装置は、図6に示すように、内部を通る原材料液Aを噴射するための第1配管X1と、内部を通る原材料液Aを噴射するための第2配管X2とを備える。第1配管X1及び第2配管X2の下流側の各先端には、ノズルが取り付けられている。斯かる装置は、各配管を経て各ノズルから噴射される原材料液A同士を衝突させるように構成されている。斯かる装置は、原材料液A同士が互いに衝突するときの角度(一方の噴射方向と他方の噴射方向との間の角度)が調節されるように構成されている。斯かる装置は、原材料液A同士が衝突することにより、原材料液A中のパラミロン顆粒に対してせん断力を加えてパラミロン顆粒を繊維化させるように構成されている。
斯かる装置として市販されているものを用いることができる。市販されている斯かる装置としては、例えば、スギノマシン社製の「スターバースト」、みずほ工業社製の「マイクロフルイダイザー」等が挙げられる。
前記原材料液Aを被衝突体X4に衝突させる装置は、図7に示すように、内部を通る原材料液Aを噴射するための噴射用配管X3と、噴射された原材料液Aが衝突する被衝突体X4とを備える。噴射用配管X3の下流側の先端には、ノズルが取り付けられている。被衝突体X4は、噴射された原材料液Aを吸収せずに表面で跳ね飛ばす材料で形成されている。斯かる装置は、噴射用配管X3を経てノズルから噴射される原材料液Aを被衝突体X4に衝突させるように構成されている。斯かる装置は、原材料液Aが被衝突体X4に衝突することにより、原材料液A中のパラミロン顆粒に対してせん断力を加えてパラミロン顆粒を繊維化させるように構成されている。
せん断工程において、上記装置以外に使用され得る装置としては、二軸混練機、高圧ホモジナイザー、高圧乳化機、二軸押し出し機、ビーズミルなどが挙げられる。凍結粉砕を行う解繊装置なども使用され得る。
せん断工程では、パラミロン顆粒にせん断力を加えることによって上記添加剤を製造する。従って、アルカリや酸を用いた化学的な処理を行わなくても、物理的な処理(せん断力による解繊処理)によって、比較的簡便に、繊維化パラミロンや上記添加剤を製造できる。
せん断工程では、まず、パラミロン顆粒と水とを少なくとも含む原材料液Aを調製する。パラミロン顆粒は、例えば、ユーグレナによって作られたβ−1,3−グルカンを主成分とする。ユーグレナによって作られたパラミロン顆粒は、通常、粒状である。なお、原材料液Aを調製する前に、パラミロン顆粒が溶解しない程度に、水酸化ナトリウム等のアルカリを利用した前処理を施しても良い。
ユーグレナは、大きさが概ね数マイクロメートルから数十マイクロメートル程度の微小な藻類である。ユーグレナは、自然界では、通常、水中を浮遊しつつ生息する。ユーグレナは、パラミロン顆粒を細胞内部に貯める微細藻類であれば、特に限定されない。パラミロン顆粒を細胞内部に貯めるユーグレナとしては、例えば、ユーグレナ(Euglena)属微細藻類が挙げられる。
上記のユーグレナ(Euglena)属微細藻類としては、例えば、Euglena gracilisEuglena longaEuglena caudataEuglena oxyurisEuglena tripterisEuglena proximaEuglena viridisEuglena sociabilisEuglena ehrenbergiiEuglena desesEuglena pisciformisEuglena spirogyraEuglena acusEuglena geniculataEuglena intermediaEuglena mutabilisEuglena sanguineaEuglena stellataEuglena terricolaEuglena klebsiEuglena rubra、又は、Euglena cyclopicolaなどが挙げられる。
前記Euglena gracilisとしては、例えば、Euglena gracilis NIES-48やEuglena gracilis EOD-1(後述する独立行政法人国立環境研究所微生物系統保存施設における保管株)などが挙げられる。
上記のユーグレナ属微細藻類は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(郵便番号292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)、独立行政法人国立環境研究所微生物系統保存施設(郵便番号305-8506 茨城県つくば市小野川16-2)、又は、The Culture Collection of Algae at the University of Texas at Austin, USA(http://web.biosci.utexas.edu/utex/default.aspx)などから容易に入手される。
ユーグレナは、パラミロン顆粒、ビタミン、カロテノイド、栄養価の高いタンパク質などの有価物を細胞内に含む。パラミロン顆粒は、通常、粒状の状態となって、ユーグレナの細胞内で産生されたものである。
せん断工程では、ユーグレナから単離されたパラミロン顆粒を用いて、原材料液Aを調製することが好ましい。これにより、原材料液Aにおけるパラミロン顆粒の濃度が高くなり、原材料液Aにおける不純物が比較的少なくなる。なお、原材料液Aは、培養などによって増殖されたユーグレナの細胞を含んでもよい。即ち、原材料液Aは、パラミロン顆粒が内包されたユーグレナの細胞を含んでもよい。これにより、せん断力を加えられたことによって得られる産物が、ユーグレナの細胞を構成する成分を含むこととなる。
原材料液Aにおけるパラミロン顆粒の濃度は、特に限定されないが、通常、0.1〜50質量%であり、好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%である。
次に、せん断工程では、例えば、互いに摺動しつつ相対移動する第1部材Y1及び第2部材Y2の間に、パラミロン顆粒を含む原材料液Aを入れて、第1部材Y1及び第2部材Y2を互いに摺動させつつ相対移動させることによって、水の存在下で原材料液A中のパラミロン顆粒にせん断力を加える。これにより、比較的大きいせん断力をパラミロン顆粒に加えることができ、比較的短時間で繊維化パラミロンを得ることができる。
上述したスーパーマスコロイダーを用いてせん断工程を行う場合、第1部材Y1及び第2部材Y2の回転数としては、例えば500〜3000rpm、より好ましくは1000〜2500rpmが採用される。また、第1部材及び第2部材(例えば砥石)の隙間は、特に制限されないが、スーパーマスコロイダーを利用する場合、砥石同士が軽接する隙間の状態を基準として(砥石の先端同士がわずかに接触した状態を基準として)、例えば、−10μm〜−800μm、好ましくは−50μm〜−500μmである。
繊維化される前(粒状)のパラミロン顆粒に加えるせん断力は、少なくともパラミロン顆粒を解繊する強さのせん断力である。上記のごとくせん断力を加えることによって、パラミロン顆粒が解繊され、繊維化パラミロンが得られる。
続いて、本実施形態の添加剤の製造方法では、固形物の状態の添加剤を得るために、乾燥処理工程及び粉砕処理工程を行う。詳しくは、せん断力によって繊維化されて水に分散した状態の繊維化パラミロンを含む添加剤に対して、乾燥処理を施す。乾燥処理としては、加熱乾燥処理、減圧乾燥処理、凍結乾燥処理、噴霧乾燥処理などが挙げられる。加えて、粉砕処理を施す。粉砕処理としては、ボールミルによる粉砕処理、石臼や乳鉢による粉砕処理などが挙げられる。このように、乾燥処理及び粉砕処理を施すことによって、固形物の状態の添加剤が製造される。なお、固形物の状態の添加剤は、粉砕処理後の繊維化パラミロンと、上述した水溶性高分子化合物とを混合することによって製造されてもよい。例えば、水と、水に分散した状態の繊維化パラミロンとを含む混合液に対して、上述した水溶性高分子化合物を添加した後に、上記の乾燥処理工程及び粉砕処理工程を行って、固形物の状態の添加剤を得てもよい。
上記の固形物の添加剤は、例えば、水を含む溶媒に分散させるために使用される。具体的に、固形物の添加剤は、例えば、水と混合されて水に分散された状態で、食品に添加されて使用される。また、固形物の添加剤は、例えば、水と混合されて水に分散された状態で、化粧料に添加されて使用される。また、固形物の添加剤は、例えば、水と混合されて水に分散された状態で、医薬品として経口投与されたり皮膚に塗布されたりして使用される。なお、固形物の添加剤は、そのまま経口投与されて使用され得る。
上記のごとく製造された固形物の添加剤は、下記のようにして使用される。
例えば、上記の固形物の添加剤と、水を含有する溶媒(例えば水)と、を混合することによって、前記添加剤に含まれていた繊維化パラミロンを前記溶媒に分散させる。添加剤中の繊維化パラミロンと水とが、例えば、単に撹拌されることのみによって混合されて、比較的容易に且つ均一に繊維化パラミロンが水に分散されることとなる。
上記混合のときには、水を含有する溶媒として、水を用いてもよい。なお、水に溶解する有機溶媒と、水と、を含む溶媒を調製した後に、斯かる溶媒と、上記の添加剤とを混合してもよい。さらに油分や粉体を混合してもよい。
上記混合のときに用い得る、水に溶解する有機溶媒としては、例えば、エタノールなどの1価アルコール、グリセリンなどの多価アルコール等が挙げられる。
上記混合のときには、通常、撹拌によって、上記の添加剤と、水を含有する溶媒と、を混合する。撹拌するための手段としては、例えば、撹拌子や撹拌羽根などが採用される。混合するときの温度は、特に限定されず、通常、室温である。
上記混合のときには、混合後に調製される組成物における繊維化パラミロンの濃度は、特に限定されないが、繊維化パラミロンの濃度が、通常0.25質量%以上40.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以上10.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以上5.0質量%以下となるように、添加剤と、水を含有する溶媒と、を混合して組成物を調製する。斯かる濃度が0.25質量%以上40.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下、より好ましくは1.0質量%以上5.0質量%以下となるように混合することによって、繊維化パラミロンをより簡便に且つより均一に分散させることができるという利点がある。
なお、上記のように混合して得られた繊維化パラミロンが分散した液状の組成物に、さらに水などの溶媒を加えて撹拌することによって、所定の濃度の繊維化パラミロンを含む組成物(分散液)を得てもよい。
上記混合後に調製された組成物は、上記の添加剤と水とを少なくとも含む。上記の組成物では、添加剤に含まれていた繊維化パラミロンが水に分散している。なお、上記の組成物は、水に溶解する有機溶媒、油分、粉体などをさらに含んでもよい。上記の組成物が油分や粉体などを含む場合、添加剤の繊維化パラミロンによって、油分や粉体が水に十分に分散される。
上記の添加剤は、被分散物を水中で分散させるための分散剤として利用できる。本発明は、斯かる分散剤、および、上記の分散剤と被分散物と水とを含む組成物にも関する。以下、本発明に係る組成物の一実施形態について詳しく説明する。
本実施形態の組成物は、上記の分散剤と、被分散物と、水とを含む。本実施形態の組成物は、上記の繊維化パラミロンによって被分散物が水に分散されている組成物である。組成物においては、繊維化パラミロンの各繊維状物の間で被分散物が繊維状物に絡まることによって、被分散物が分散していると考えられる。なお、本実施形態の組成物は、水に溶解する水溶性有機溶媒をさらに含んでもよい。本実施形態の組成物は、通常、液状である。本実施形態の組成物は、粘ちょうな状態であってもよい。
本実施形態の組成物は、水に被分散物が分散された状態を比較的長く保つことができる。換言すると、水に被分散物が分散された状態を、上記の分散剤が比較的長く保たせることによって、本実施形態の組成物は、十分な分散安定性を有する。
被分散物は、水に溶解しないものであれば、特に限定されない。被分散物としては、例えば、油分又は粉体が挙げられる。
上記の油分は、室温(20℃)にて、通常、液状である。油分は、室温(20℃)にて、固体状であってもよい。油分としては、エステル油、炭化水素油などが挙げられる。
エステル油としては、植物油や動物油などの天然油脂、合成エステル油などが挙げられる。一方、炭化水素油としては、流動パラフィンなどの鉱物油などが挙げられる。
上記の粉体は、粒子の集合体である。粉体は、水に溶解しないものであれば、特に限定されない。粉体としては、例えば、無機粉体、有機粉体などが挙げられる。無機粉体の材質としては、金属酸化物(シリカ等も含む)、粘土鉱物、セラミックなどが挙げられる。有機粉体の材質としては、合成樹脂、多糖類などが挙げられる。有機粉体としては、例えば、きな粉、ココアパウダー、カレー粉、ごま、緑茶パウダー、ウコンなどの食材が挙げられる。
上記の組成物は、被分散物を含む場合、繊維化パラミロンを0.01質量%以上50.0質量%以下含んでもよい。斯かる組成物は、繊維化パラミロンを0.05質量%以上40.0質量%以下含むことが好ましく、0.1質量%以上20質量%以下含むことがより好ましい。
上記の組成物において、水に対する被分散物の質量比は、0.01以上70.0以下であることが好ましい。斯かる質量比が0.01以上70.0以下であることによって、水に被分散物が分散された状態をより長く保つことができるという利点がある。
上記の組成物において、被分散物に対する繊維化パラミロンの質量比は、0.000001以上100以下であることが好ましい。斯かる質量比が0.000001以上100以下であることによって、水に被分散物が分散された状態をより長く保つことができるという利点がある。
上記の組成物は、例えば、上記の分散剤と、被分散物と、水を含む溶媒とを混合することによって製造される。上記の組成物の製造では、上記の繊維化パラミロンの存在下で、少なくとも水と被分散物とを撹拌して混合することにより、被分散物が水に分散された状態の組成物を得ることができる。
具体的には、上記の組成物の製造では、例えば、水などの水含有溶媒と、繊維化パラミロンとを含有する分散剤に、被分散物を加え、ミキサーなどを用いて撹拌し、組成物を得る。混合時の温度は、特に限定されず、通常、室温である。
被分散物を混合するときに、水含有溶媒が、水以外の1価アルコールや多価アルコールなどの水溶性有機溶媒を含んでもよい。1価アルコールとしては、例えばエタノール等が挙げられ、多価アルコールとしては、例えばグリセリン等が挙げられる。
水を含む分散剤に被分散物を加えて混合し、水に被分散物を分散させた後に、上記の水溶性有機溶媒をさらに加えて、組成物を製造してもよい。
上記の組成物の製造では、被分散物と混合される前の繊維化パラミロンは、水に分散された状態であることが好ましい。詳しくは、繊維化パラミロンを含む分散剤は、上述した方法によってパラミロン顆粒が繊維化された後、水分が揮発されず、繊維化パラミロンが水に分散された状態であることが好ましい。これにより、分散剤において、繊維化パラミロン同士が凝集することが抑制されているため、繊維化パラミロンによって、より十分に被分散物を水に分散させることができる。
上記の組成物は、例えば、食品、化粧料、又は医薬品などの用途で使用される。上記の食品としては、例えば、飲料、サプリメント、菓子類、調味料、畜肉加工食品、ドレッシング、麺類などが挙げられる。上記の化粧料としては、例えば、皮膚外用化粧料、毛髪用化粧料、入浴剤などが挙げられる。上記の医薬品としては、例えば、経口投与剤(飲み薬など)、皮膚外用剤(塗り薬など)、皮膚貼付剤(貼付薬など)が挙げられる。
本実施形態の繊維化パラミロン、添加剤(分散剤)、添加剤(分散剤)の製造方法、組成物は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示のものに限定されない。
また、一般の添加剤(分散剤)、添加剤(分散剤)の製造方法、組成物において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下のようにして、添加剤(繊維化パラミロン含有添加剤)を製造した。詳しくは、ユーグレナ属微細藻類によって産生されたパラミロン顆粒に対して、水の存在下にてせん断力を加えることにより、パラミロン顆粒を繊維化し、繊維化パラミロンが水に分散されたスラリー(液状の添加剤)を得た。さらに、乾燥処理及び粉砕処理を行うことによって、固形物の状態(粉体状)の添加剤を製造した。
(実施例1)
培養後のユーグレナ属微細藻類が細胞内に貯めたパラミロン顆粒を単離した。単離したパラミロンの濃度が5質量%となるように、パラミロン顆粒と水とを混合して、パラミロン顆粒を含む原材料液を調製した。
図4に示すような装置(具体的には、増幸産業社製の石臼式摩砕機 製品名「スーパーマスコロイダー」)を用いて、第1部材(砥石)と第2部材(砥石)との間に原材料液を入れて、第1部材と第2部材とを互いに摺動させることによって、パラミロン顆粒にせん断力を加え、パラミロン顆粒を繊維化し、繊維化パラミロンを含むスラリー(液状の添加剤)を製造した。
添加剤の製造において、上記の石臼式摩砕機を用いたせん断工程における湿式解繊処理は、下記条件にて行った。
[解繊処理]
・グラインダー種類:MKGCタイプ
・クリアランス(砥石の隙間): −100μm
・砥石回転数 : 1200 rpm
石臼式摩砕機で得られるスラリーを回収し、回収したスラリーに再度解繊処理を施すことによりスラリーを得て、同様な操作を合計20回繰り返すこと(20パス)によって、繊維化パラミロンを含むスラリーを得た。
さらに、このスラリー(液状の添加剤)に対して、凍結乾燥処理、及び、ボールミルによる粉砕処理を順に施し、固形物の状態の添加剤を製造した。
繊維化パラミロンを含むスラリー(液状の添加剤)、及び、繊維化させる前のパラミロン顆粒を含む原材料液の各外観写真を図8に示す。なお、実施例1の繊維化パラミロンを走査型電子顕微鏡で観察した観察像は、すでに示した図1及び図2である。
(実施例2)
上述した解繊処理の繰り返し回数を20回(20パス)でなく、10回(10パス)に変更した点以外は、実施例1と同様にして、繊維化パラミロンを含むスラリー状の添加剤(液状の添加剤)を製造した。
(実施例3)
上述した解繊処理の繰り返し回数を20回(20パス)でなく、5回(5パス)に変更した点以外は、実施例1と同様にして、繊維化パラミロンを含むスラリー状の添加剤(液状の添加剤)を製造した。
(実施例4)
上述した解繊処理の繰り返し回数を20回(20パス)でなく、15回(15パス)に変更した点以外は、実施例1と同様にして、繊維化パラミロンを含むスラリー状の添加剤(液状の添加剤)を製造した。
(実施例5)
実施例1で用いたパラミロン顆粒に対して、ビーズミルによってせん断力を加え、パラミロン顆粒を繊維化し、繊維化パラミロンを含むスラリー(液状の添加剤)を製造した。ビーズミルによる解繊処理は、サブミクロン粉砕に使用される一般的な運転条件でおこなった。パラミロン顆粒を10質量%含む原材料液に対してビーズミルによる解繊処理をおこなった。実施例5における繊維化パラミロンを走査型電子顕微鏡で観察した観察像は、すでに示した図3である。
(実施例6)
繊維化パラミロンを含む実施例1のスラリーと、デキストリン(水溶性高分子化合物)とを用いて、水溶性高分子化合物を含む添加剤を製造した。詳細には、実施例1のスラリーにデキストリンを添加して、デキストリンを溶解させ、溶解後の混合液から凍結乾燥で水分を昇華させることによって、固形物の状態の添加剤を製造した。固形分換算で、1質量部の繊維化パラミロンに対して、2質量部のデキストリンを混合した。
なお、デキストリンを水に溶解させたあとに水分を昇華させて添加剤を製造することにより、粒子状の水溶性高分子化合物(デキストリン)を含まない添加剤を製造できる。即ち、デキストリンが粒子状で含まれていない添加剤を製造できる。
(実施例7)
固形分換算で、1質量部の繊維化パラミロンに対して、1質量部のデキストリンを混合した点以外は、実施例6と同様にして、固形物の状態の添加剤を製造した。
(実施例8)
固形分換算で、1質量部の繊維化パラミロンに対して、0.5質量部のデキストリンを混合した点以外は、実施例6と同様にして、固形物の状態の添加剤を製造した。
(実施例9)
固形分換算で、1質量部の繊維化パラミロンに対して、0.25質量部のデキストリンを混合した点以外は、実施例6と同様にして、固形物の状態の添加剤を製造した。
(実施例10)
繊維化パラミロンを含む実施例5のスラリー(ビーズミルで調製)と、デキストリン(水溶性高分子化合物)とを用いて、水溶性高分子化合物を含む添加剤を製造した。詳細には、実施例5のスラリーにデキストリンを添加して、デキストリンを溶解させ、溶解後の混合液から凍結乾燥で水分を昇華させることによって、固形物の状態の添加剤を製造した。なお、固形分換算で、1質量部の繊維化パラミロンに対して、2質量部のデキストリンを混合した。
(参考例)
繊維化パラミロンを含む実施例1のスラリーから水分を昇華させて繊維化パラミロンの固形物を得た後に、繊維化パラミロンの固形物と、デキストリン粉体とを乾燥状態で混合し、固形物の状態の添加剤を製造した。
(比較例1)
実施例1においてせん断工程を行う前のパラミロン顆粒を用いた。
(比較例2)
実施例1においてせん断工程を行う前のパラミロン顆粒を準備した。このパラミロン顆粒を特開2011−184592号公報に記載の方法を用いて化学的に処理した。具体的には、パラミロン顆粒15gを1M NaOH水溶液600mLに加えて1時間撹拌しながら溶解させ、溶解後に、塩酸水溶液を加えることにより、中和処理を行った。中和処理によってゲル状物が生じた。遠心分離による分離処理によって得られた上澄み液を除去し、固形分を得た。固形分は、中和処理による塩(NaCl)を含んでいるため、得られた固形分に対して、多量の水を加えて、固形分を分散させてゲル状物を生じさせ、同様に遠心分離で分離処理を行うことにより、ゲル状物に含まれる塩類の除去処理を行った。塩類の除去処理を、ゲル状物に含まれるNaCl乾燥質量が、1M NaOH水溶液に溶解させたパラミロン顆粒の乾燥重量あたり0.1質量%以下となるまで繰り返し行い、化学処理パラミロンを製造した。ゲル状物に含まれるNaClの乾燥重量は、遠心分離後の上澄み液のNaCl濃度を、上澄み液の電気伝導度より算出することで求めた。なお、下記文献によると、この化学処理パラミロンは、電子顕微鏡によって観察した結果、繊維状ではなく、形や大きさが不定形の塊であった。
・文献名
「平成26年度戦略的基板技術高度化支援事業 多糖類パラミロンの高度培養生産技術及び利用に関する研究開発(研究開発成果等報告書 平成27年3月)」
<繊維化パラミロンの結晶性>
実施例1で製造した添加剤の繊維化パラミロンと、比較例1のパラミロン顆粒とについて、X線回折(XRD)による結晶性の測定をおこなった。測定条件は、下記の通りである。
測定用機器:PANalytical X'Pert3 Powder
管電圧 :45kV
管電流 :40mA
測定範囲 :5〜80°
解析ソフトウェア:HighScore(製品名)
測定によって得られたX線回折チャートを図9に示す。繊維化パラミロン及びパラミロン顆粒の各結晶化度は、2θ=5〜80°における非晶質部の強度(A)と、結晶部の強度(B)との比(B/A)を解析することによって求めた。解析において、各チャートのバックグラウンドを除去(バックグラウンド設定:Auto、ベンディングファクター:0、粒状度:100)した後、非晶質部を表す曲線を決定した。非晶質部を表す曲線は、2θ=14°、29°におけるチャートの接線を通るように決定した。非晶質部を表す曲線を決定するために採用したベンディングファクターと粒状度との値は、0/30(繊維化パラミロン)、0/20(パラミロン顆粒)とした。その結果、繊維化パラミロンの結晶化度は、51.0%であり、パラミロン顆粒の結晶化度は、66.2%であった。従って、パラミロン顆粒の結晶化度に対する、繊維化パラミロンの結晶化度の相対値(比)は、0.77であった。なお、比較例2の化学処理パラミロンの結晶化度は、37.6%であった。
<分散性の評価(1)>
上記のようにして製造した実施例1の固形物の添加剤と、水とを混合することによって、組成物を製造し、繊維化パラミロンの分散性を評価した。
詳しくは、組成物におけるパラミロンの濃度が3質量%となるように、撹拌子及びスターラーによる撹拌によって、繊維化パラミロンと水とをサンプル瓶内で混合した。撹拌子及びスターラーによる撹拌は下記条件にて行った。所定時間(1,3,5,24時間)、撹拌を続け、静置後に組成物の外観を目視で観察することにより、分散性を評価した。
[撹拌]
・撹拌子:PTFE製、全長15mm×直径1.5mm
・回転速度:300〜1000rpm(スターラー表示値)
なお、比較対象物として、市販の繊維化セルロース分散液(水に繊維状セルロースが分散されたもの)に、上記と同様の乾燥処理及び粉砕処理を施したものを用いた。詳細は、下記の通りである。
実施例1:上記スラリーから得た添加剤(固形物の状態)
セルロース1:スギノマシン社製 分散液 製品名「BiNFi-s FMa-10002」
に対して乾燥処理及び粉砕処理を施したもの(繊維長さは約1μm)
粉体状
セルロース2:スギノマシン社製 分散液 製品名「BiNFi-s WMa-10002」
に対して乾燥処理及び粉砕処理を施したもの
(繊維長さは上記FMa-10002よりも長い 粉体状でなく、半固形状
実施例1、及び、上記セルロース1、セルロース2をそれぞれ用いて、上記評価において、24時間撹拌を続けたあとの、繊維化パラミロンやセルロースの各光学顕微鏡写真を図10に示す。
上記評価を行ったときの、組成物の外観の写真を図11に示す。図11から把握されるように、実施例1の添加剤(固形物状態の繊維化パラミロンを含む)を水に分散させたときに、セルロースを含む固形状の比較対象物よりも、より均一且つ簡便に分散させることができた。即ち、実施例1の添加剤では、水と混合されて組成物が製造されたときに、均一且つ良好な分散が確認された。組成物の各粘度を比較すると、繊維化パラミロンを分散させた場合の方が、セルロースを分散させた場合よりも、十分に高かった。
次に、分散性の評価をするために、水中沈定体積を指標として、下記のように実験を行った。なお、水中沈定体積の測定方法は、不溶性食物繊維の性能を評価する方法として一般的に知られている。下記の<分散性の評価(2)>に、水中沈定体積の測定の詳細を示す。
<分散性の評価(2) 水中沈定体積>
武田・桐山の方法「印南 敏,桐山修八(1995)食物繊維,p.64 第一出版,東京」に準じて測定を行った。
詳しくは、スラリー状の各試験試料を、25mL容積のプラスチックチューブに、乾燥質量換算で250mg計り取り、プラスチックチューブを手で激しく振って、内容物を撹拌した。その後、25mL容積のメスシリンダーに内容物を移し、25mLになるまで純水を加えた。メスシリンダー内の液体を撹拌した後、37℃で24時間静置した。なお、実施例1のスラリー状の試験試料では、界面が見えない状態であったため、界面を測定するために乾燥質量換算で125mg計り取り、上記の方法と同じ方法で分散性の評価を行った。
実施例1〜3、実施例5、並びに、比較例1及び2の各試験サンプル(スラリー状 「乾燥前」)を用いて、上記<分散性の評価(2) 水中沈定体積>を行った。結果を表1に示す。また、「乾燥前」のサンプルについて評価を行った結果(分散後の外観写真、実施例5を除く)を図12に示す。「乾燥前」とは、各実施例等で製造したスラリー状の試験サンプルをそのまま用いて評価した結果を示したものである。「乾燥後」とは、各実施例等で製造したスラリー状の試験サンプルに対して一旦凍結乾燥を行って固形物を得て、得られた固形物を撹拌によって水に再分散させて評価した結果を示したものである。なお、「乾燥後」の試験サンプルの場合、撹拌は、<分散性の評価(1)>に記載の条件で行った。
図12から把握されるように、実施例1〜3の添加剤では、比較例1や比較例2の比較対象物よりも、繊維化パラミロンの分散状態がより均一であり、分散された状態が比較的長期間保たれた。
ところで、培養後のユーグレナ属微細藻類からパラミロン顆粒を単離せずに、培養後のユーグレナ属微細藻類そのもの(細胞内にパラミロン顆粒がある状態)を、乾燥質量換算で10質量%濃度となるように水と混合して、実施例5に記載の方法(ビーズミル使用)で、細胞中のパラミロン顆粒を繊維化しても、上記の実施例と同様の繊維化パラミロンを得ることができた。すなわち、培養後にパラミロン顆粒を単離しなくても、上記の実施例と同様の繊維化パラミロンを得ることができた。このような方法で得られた繊維化パラミロンの水中沈定体積は、乾燥前のサンプルにおいて、実施例5で得られた繊維化パラミロンの水中沈定体積と、ほぼ同じであった。
<分散性の評価(3) 水中沈定体積 水溶性高分子化合物の影響>
実施例1(スラリーの状態)、実施例6〜9(固形物の状態)、並びに、参考例(固形物の状態)の各試験サンプルを用いて、上記の<分散性の評価(2) 水中沈定体積>と同様の評価を行った。ただし、実施例6〜9、並びに、参考例の各試験サンプルに対しては、スターラーを用いた撹拌によって固形物を水に再分散させず、固形物の状態の各試験サンプルを水に入れて単に混合して水に馴染ませる程度に留めた。グラフ化した結果を図13に示す。また、繊維化パラミロンが分散している様子を光学顕微鏡で観察した観察像を図14に示す。図14において、「乾燥前」の実施例1のサンプルを水に分散させた状態が左側に示され、「乾燥後」の実施例6のサンプル(デキストリン含有)を水に分散させた状態が右側に示されている。なお、図14において、各写真の右下の線分は、50μm長さを示す。
図13から把握されるように、実施例6〜9の添加剤では、繊維化パラミロンに対する高分子化合物の質量比が大きくなるほど、繊維化パラミロンの分散状態がより均一に近づいた。実施例6〜9の添加剤は、積極的に撹拌しなくとも水への分散性が比較的良好であった。
なお、図13の参考例の結果から把握されるように、繊維化パラミロンと粒子状のデキストリンとを含有する固形物の状態の添加剤(参考例)を、スターラーによって撹拌せずに水に分散させると、水への分散性は、あまり良好でなかった。この参考例のように、撹拌せずに水へ分散させると分散性はあまり高くないが、一方で、撹拌して水に分散させることにより、実施例1のように水中沈定体積は大きく改善する。このことから、スターラーによって撹拌せずに水へ分散させた実施例6〜9においても、撹拌しながら水に分散させると、水中沈定体積が大きく向上すると予想される。
ビーズミルを用いて調製された実施例5(スラリーの状態)、並びに、実施例10(固形物の状態)の各試験サンプルを用いて、上記の<分散性の評価(2) 水中沈定体積>と同様の評価を行った。グラフ化した結果を図15に示す。また、繊維化パラミロンが分散している様子を光学顕微鏡で観察した観察像を図16に示す。図16において、「乾燥前」の実施例5のサンプルを水に分散させた状態が左側に示され、「乾燥後」の実施例10のサンプル(デキストリン含有)を水に分散させた状態が右側に示されている。なお、図16において、各写真の右下の線分は、50μm長さを示す。
図15から把握されるように、実施例5及び実施例10の添加剤では、繊維化パラミロンの分散状態が比較的良好であった。即ち、実施例5及び実施例10の添加剤は、水への分散性が比較的良好であった。
水中沈定体積の結果は、保水力とも正の相関があると考えられている。水中沈定体積の結果からも、実施例の繊維化パラミロンは、パラミロン顆粒に比べて大きな保水力を有することが確認できる。
<保水性の評価>
実施例1、並びに、比較例1及び2の各試験サンプルを用いて、下記のようにして保水性の評価を行った。
ガラス製遠沈管(50mL)の恒量を測定した。このガラス製遠沈管に乾燥質量換算で0.5gの各試験サンプルを入れ、さらに40mLの純水を添加した。これをよく撹拌した後、12時間以上静置した。その後、遠心分離(1000G,5分間)を2回行い、上澄みを除去してペレットを得た。このペレット中の水分を105℃で24時間以上乾燥することで除去した。乾燥処理前後の質量変化から、乾燥質量あたりの水の保水量(保水力[g water/g])を求めた。保水力を下記式によって求めた。
保水力(g water/g)=
(乾燥処理前後の質量変化量(g)/各サンプルの乾燥質量(g))
なお、独立した試験を3回実施し、それぞれの測定値を平均することによって保水力を求めた。ただし、比較例1を用いた評価では、1回だけ測定を行った。
保水力の評価結果を図17に示す。
図17から把握されるように、実施例1の添加剤では、比較例1や比較例2の比較対象物よりも、保水力が優れていた。
<粒度分布の測定>
実施例1、2、4、および、比較例1の添加剤を、乾燥物換算でそれぞれ0.1〜0.2質量%となるように水で希釈してから超音波照射によって分散させた後、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、LS200)を用いて粒度分布を測定した。体積基準でのメジアン径(D50)及び平均径を求めた。結果を表2に示す。
実施例の繊維化パラミロンは、互いに複雑に絡み合った3次元構造を有しつつ、繊維化パラミロンのメジアン径や平均径は、パラミロン顆粒のメジアン径や平均径に近い。
表2の結果より、繊維化パラミロンのメジアン径は4μm以下であり、パラミロン顆粒のメジアン径に対する繊維化パラミロンのメジアン径の比(解繊処理物のメジアン径/パラミロン顆粒のメジアン径)は1.2以下であることが確認された。
<β−1,3−グルカナーゼ酵素による分解性試験>
実施例1、比較例1、および比較例2のサンプル(乾燥前のスラリー状のサンプル)を用いて、各サンプルのβ−1,3−グルカナーゼによる分解性(β−1,3−グルカナーゼに対する感受性)を確認した。なお、比較例1のサンプルとして、パラミロン顆粒と純水とを混合し、撹拌することでスラリー状としたものを用いた。下記のようにして、各サンプルを用いて反応液を調製し、β−1,3−グルカナーゼをパラミロンに作用させ、生成したグルコース量を測定した。
・反応液の組成(純水を加えて全量で10mLになるように調製)
緩衝液:5mL / 酵素:0.1mL / 各サンプル:乾燥質量換算で30mg
緩衝液
フタル酸水素カリウム−水酸化ナトリウムバッファー(pH4.0)(東京化成工業社製)
酵素(β−1,3−グルカナーゼ)
endo−1,3−β−Glucanase(酵素含有量:50units/mL)(日本バイオコン社製)
詳しくは、恒温振とう機を用いて、40℃、45rpmの条件で、調製した反応液を24時間振とうさせて、パラミロンを酵素と反応させた。その後、製品名「グルコースCII−テストワコー」(和光純薬工業社製)を用いて、上記の酵素反応をさせたサンプルと、酵素反応させていないサンプルとについて、それぞれグルコース濃度を測定した。これにより、実施例1、比較例1、比較例2のサンプルのグルコース生成量[mg/g(グルコース/パラミロン)]を算出した。
結果を図18に示す。なお、実施例1、比較例2について、乾燥後の固形物の状態のサンプルを上記と同様に試験に供した。実施例1、比較例2について、乾燥前と乾燥後とで、β−1,3−グルカナーゼ酵素による分解性試験の結果に、ほとんど差が見られなかった。
<アルカリ性水溶液への溶解性試験>
実施例1、比較例1、および比較例2のサンプル(固形物の状態)を用いて、アルカリ性水溶液への溶解性を確認した。なお、実施例1のサンプルとして、乾燥後の粉末状のものを用いた。比較例1のサンプルとして、解繊前のパラミロン顆粒を乾燥させたあとに粉砕して粉末状としたものを用いた。比較例2のサンプルとして、凍結乾燥させた後に粉砕して粉末状としたものを用いた。なお、乾燥質量換算で250mgの各サンプルを、10mLの純水または0.5MHCl水溶液にそれぞれ添加して混合したところ、何れのサンプルも純水やHCl水溶液に溶解しないことを事前に確認した。
250mgの乾燥質量の各サンプルを、0.3Mの水酸化ナトリウム水溶液10mLに添加し、激しく振ったあと、室温(20℃)において80rpmで1時間振とう撹拌した。
同様にして、各サンプルを10mLの純水や0.1MNaOH水溶液などに添加して、1時間撹拌した。溶解性試験の結果を表3および図19に示す。図19は、撹拌後の混合液の外観を表す写真である。
比較例2のサンプルでは、撹拌直後にパラミロンがNaOH水溶液に溶解して透明になった。一方で、実施例1及び比較例1のサンプルでは、24時間攪拌を続けても、パラミロンがNaOH水溶液に溶解せず、懸濁した状態が続いた。なお、実施例1の繊維化パラミロン、比較例1のパラミロン顆粒のいずれも、0.1MのNaOH水溶液に溶解しないことを別途確認した。
<油分の分散性(分散安定性)の評価>
繊維化パラミロンを含有する実施例1の分散剤(添加剤 スラリー状)と、油分と、水とを混合することによって、水に油分が分散された組成物を調製した。評価方法の詳細は、下記の通りである。
油分:ナタネ油及び大豆油を含む植物油
水と油分との比:1対1[質量比]
組成物における繊維化パラミロンの濃度[質量%]:
0.25/0.5/1.0/1.5
繊維化パラミロンの濃度が上記に示す濃度となるように、ボルテックスミキサーによって、分散剤と油分と水とを試験管内で混合し、均一な分散液(組成物)を調製した。その後、試験管を室温で静置し、所定時間が経過(24時間まで)した後に、下側に分離した水相の高さを測定した。液全体の高さに対する、水相の高さの割合を求め、斯かる割合を分散安定性の指標とした。斯かる割合が低いほど、分散安定性に優れていることとなる。1条件につき6回の測定を行い、平均値によって分散安定性を評価した。
なお、上記分散剤の比較対象物として、下記のものを用いた。
・卵由来レシチン
・大豆由来サポニン
・繊維化される前の粒状パラミロン(パラミロン顆粒)
・繊維化セルロースの水分散液(上記のセルロース2)
(スギノマシン社製 製品名「BiNFi−s WMa−10002」)
上記の評価結果をグラフ化したものを図20に示す。図20から把握されるように、繊維化パラミロンを含む分散剤は、食品分野で一般的に用いられているレシチンやサポニンよりも、分散安定性に優れていた。また、同濃度での比較において、繊維化パラミロンは、繊維化セルロースやパラミロン顆粒よりも、分散安定性に優れていた。
0.5質量%以上の濃度で繊維化パラミロンを含む組成物では、24時間静置した後でも、相分離が観察されず、高い分散(乳化)安定性が示された。0.5〜1.5質量%の濃度で繊維化パラミロンを含む組成物は、0.25質量%の濃度で繊維化パラミロンを含む組成物よりも、分散(乳化)安定性が良好であった。一方で、同濃度(0.25質量%)であれば、繊維化パラミロンを含む組成物の方が、繊維化セルロースを含む組成物よりも、分散(乳化)安定性が高かった。
繊維化パラミロンを含む組成物は、レシチンやサポニンを含む組成物よりも、分散(乳化)安定性が高かった。
<粉体の分散性(分散安定性)の評価>
上記のようにして製造した、繊維化パラミロンを含有する各実施例の分散剤(添加剤 スラリー状)と、粉体(ココアパウダー)と、水とを混合することによって、水に粉体が分散された組成物を調製した。組成物を調製したあと、24時間後の外観を観察することによって、分散安定性を評価した。評価方法の詳細は、下記の通りである。
ガラス製の瓶のなかで、10mLの純水または試験サンプルの液体に、ココアパウダー385mgを懸濁させた。懸濁は、室温にて、ガラス製の瓶を手で激しく振ることによって行った。なお、各試験サンプルにおけるココアパウダーを除いた固形分を1.0[質量%]に統一した。
なお、比較対象物として、上記比較例1及び2以外に、下記のものを用意した。
・繊維化セルロース(セルロースナノファイバー CNFと略す):上記のセルロース2
上記の粉体の分散性の評価後の様子を図21に示す。図21から把握されるように、純水のみの場合、比較例1のPM顆粒を用いた場合では、ココアパウダーが沈降していた。比較例2の化学処理PMを用いた場合では、相分離が観察された。繊維化パラミロンを含む分散剤は、分散安定性に優れていた。
本発明の繊維化パラミロンは、例えば、水を含む溶媒と混合されることにより、比較的均一且つ簡便に、水に分散される。本発明の添加剤は、例えば、水を含む溶媒と混合されることにより、比較的均一且つ簡便に、繊維化パラミロンを水に分散させることができる。本発明の添加剤(分散剤)は、食品、化粧料、医薬品などの組成物に配合されて好適に使用される。本発明の添加剤の製造方法は、例えば、上記の添加剤を製造するために好適に使用される。上述した組成物は、食品、化粧料、医薬品などの用途で好適に使用される。
A:原材料液、
X1:第1配管、 X2:第2配管、 X3:噴射用配管、 X4:被衝突体、
Y1:第1部材、 Y2:第2部材。
上記課題を解決すべく、本発明は、0.1MのNaOH水溶液に溶解しない、ユーグレナ由来の繊維化パラミロンを提供する。繊維化パラミロンは、複数の繊維状物が互いに絡み合うことによって寄り集まった状態となっていてもよい。斯かる繊維化パラミロンは、比較的均一且つ簡便に水に分散されることから、水への分散性が比較的良好であるため、水を含む液体に分散する性能を有する斯かる繊維化パラミロンは、せん断力による解繊処理が施されたものである。

Claims (10)

  1. ユーグレナ由来の繊維化パラミロン。
  2. 複数の繊維状物が互いに絡み合うことによって寄り集まった状態となっている、請求項1に記載の繊維化パラミロン。
  3. 水を含む液体に分散する性能を有する、請求項1又は2に記載の繊維化パラミロン。
  4. 0.1MのNaOH水溶液に溶解しない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維化パラミロン。
  5. せん断力による解繊処理が施された、請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維化パラミロン。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維化パラミロンを含む、添加剤。
  7. 固形物の状態である、請求項6に記載の添加剤。
  8. 水溶性高分子化合物をさらに含む、請求項7に記載の添加剤。
  9. 水を含む溶媒に分散させるための、請求項6〜8のいずれか1項に記載の添加剤。
  10. パラミロン顆粒をせん断力によって繊維化することによりパラミロン顆粒を繊維状に形成するせん断工程を備える、添加剤の製造方法。
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