JP7280668B2 - パラミロン含有組成物、飲食品、カプセル剤、及び、前記パラミロン含有組成物の製造方法 - Google Patents

パラミロン含有組成物、飲食品、カプセル剤、及び、前記パラミロン含有組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば、飲食品用のパラミロン含有組成物、飲食品、カプセル剤、及び、パラミロン含有組成物の製造方法に関する。
従来、ユーグレナ由来のパラミロンを含む組成物であって、例えば飲食品の用途で使用される組成物が知られている。この種の組成物としては、例えば、アモルファス化されたパラミロンを含み、糖尿病などの疾病を抑制するためのパラミロン含有組成物が知られている(特許文献1)。
特許文献1に記載のパラミロン含有組成物は、微細藻類のユーグレナが細胞内に貯めたパラミロン顆粒を取り出し、該パラミロン顆粒を強アルカリ性水によって溶解させたあと、酸性水で中和処理することによって得られたアモルファスパラミロンを含む。特許文献1に記載のパラミロン含有組成物は、水を揮発させる処理によって塊状となったアモルファスパラミロンを含み、例えば飲食品や飼料として使用される。
特開2014-118374号公報
ところで、本来のパラミロンが有する機能をより十分に発揮させようとした場合、単位体積あたりのパラミロンの表面積をより大きくすべく、パラミロンを繊維状に形成した繊維化パラミロンを得ることが考えられる。
しかしながら、繊維状に形成された繊維化パラミロンに対して、特許文献1に記載のごとく水を揮発させる処理を施すと、その後の使用において、繊維化パラミロンを溶媒に再分散させた際に元の分散性を示しにくい。繊維化パラミロンを十分に分散させて使用するためには、パラミロン含有組成物において、繊維化パラミロンが水に分散していることが望ましい。
ところが、水を比較的多く含むパラミロン含有組成物では、水が雑菌の生育を助長するため、雑菌が繁殖しやすいという問題がある。
そこで、含有される繊維化パラミロンが分散された状態を保ちつつ、雑菌の繁殖が抑制されたパラミロン含有組成物が要望されている。
本発明は、このような問題点、要望点等に鑑み、含有される繊維化パラミロンが分散された状態を保ちつつ、雑菌の繁殖が抑制されたパラミロン含有組成物、該組成物を含むカプセル剤、及び、該パラミロン含有組成物の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決すべく、本発明は、油と、該油中に分散した繊維化パラミロンとを含む、パラミロン含有組成物を提供する。
本発明のパラミロン含有組成物においては、水よりも雑菌を繁殖させない油に繊維化パラミロンが分散しているため、雑菌の繁殖が抑制されている。また、水の沸点よりも高い温度で本発明のパラミロン含有組成物を加熱できることから、十分な殺菌処理を施すことができる。これにより、雑菌の繁殖が十分に抑制され得る。
上記のパラミロン含有組成物において、前記繊維化パラミロンは、複数の繊維状物が絡み合うことによって寄り集まった状態となっていてもよい。
上記のパラミロン含有組成物の用途は、飲食品であってもよい。上記の繊維化パラミロンは、通常、0.1MのNaOH水溶液に溶解しない。上記の繊維化パラミロンは、せん断力による解繊処理が施されたものである。上記のパラミロン含有組成物は、殺菌処理されていてもよい。
本発明の飲食品は、上記のパラミロン含有組成物を少なくとも含む。
本発明のカプセル剤は、上記のパラミロン含有組成物と、該パラミロン含有組成物を覆う被膜とを含む。
本発明に係るパラミロン含有組成物の製造方法は、溶媒中で、パラミロン顆粒をせん断力によって繊維化することによりパラミロン顆粒を繊維状に形成するせん断工程を備えることを特徴とする。
本発明のパラミロン含有組成物、飲食品、カプセル剤は、雑菌の繁殖が抑制されているという効果を奏する。また、本発明のパラミロン含有組成物の製造方法は、雑菌の繁殖が抑制されたパラミロン含有組成物を製造できるという効果を奏する。
パラミロン顆粒にせん断力を加える装置の一例を表した概略図。 パラミロン顆粒にせん断力を加える装置の他の例を表した概略図。 パラミロン顆粒にせん断力を加える装置の他の例を表した概略図。 パラミロン顆粒にせん断力を加える装置の他の例を表した概略図。 油の存在下でせん断工程を行って得られた繊維化パラミロンの光学顕微鏡写真。 せん断工程を油の存在下で実施する前の混合液(左)、及び、せん断工程を油の存在下で実施した後のパラミロン含有組成物(右)の外観写真。 水の存在下でビーズミルによってせん断工程を行って得られた繊維化パラミロンの光学顕微鏡写真。 水の存在下でビーズミルによってせん断工程を行って得られた繊維化パラミロンの電子顕微鏡写真。 水の存在下でせん断工程を行って得られた繊維化パラミロンの電子顕微鏡写真。 繊維化パラミロンの電子顕微鏡写真(図9の一部の拡大図)。
以下、本発明に係るパラミロン含有組成物(以下、単に組成物とも表記する)の一実施形態について詳しく説明する。
本実施形態の組成物は、油と、該油中に分散したユーグレナ由来の繊維化パラミロンとを含む。
上記の繊維化パラミロン(パラミロン繊維)は、ユーグレナ由来のパラミロン顆粒が繊維化されることによって、複数の繊維状物が形成されたものである。上記の繊維化パラミロンは、複数の繊維状物の集合体を含む。繊維状物は、β-1,3-グルカンのミクロフィブリルを有する。パラミロン顆粒は、微細藻類のユーグレナによって細胞内に貯められたものである。パラミロン顆粒は、β-1,3-グルカンの1種であるパラミロンが細胞内で顆粒状となって産生されたものである。ユーグレナについては、後述する。
上記の繊維化パラミロンは、複数の繊維状物を含む。上記の繊維化パラミロンでは、通常、複数の繊維状物が互いに絡み合うことによって寄り集まった状態となっている。上記の繊維化パラミロンは、複数の繊維状物が集合して網状になった網目状構造を有する。
上記の繊維化パラミロンの各繊維状物の太さは、通常、10nm以上500nm以下である。斯かる太さは、20nm以上300nm以下であることが好ましく、100nm以上200nm以下であることがより好ましい。電子顕微鏡(SEM)で観察すると、枝分かれした構造(分岐した構造)を有する繊維状物が観察され、多数の繊維状物で網目状となった様子が観察される。繊維化パラミロンの形状は、例えば、繊維化パラミロンを顕微鏡で観察することによって確認される。
詳しくは、以下の方法によって繊維化パラミロンを観察することにより、繊維状物における太さを測定する。繊維化パラミロンと油とが共存する混合物に対しては、油をt-ブタノール(tert-ブチルアルコール)に置換する処理を行う。具体的に、繊維化パラミロンと油との混合物に対して、該混合物の0.5~9倍容量のt-ブタノールを加えて、ボルテックスミキサー等によって、繊維化パラミロンを分散させる。比較的多量(例えば9倍容量)のt-ブタノールを加えた場合は、その後、遠心分離などによって固液分離処理を行い、上澄液を取り除き、固形分を得て、固形分をt-ブタノールに分散させ、同様な操作を3~5回程度繰り返すことで、繊維化パラミロンがt-ブタノールに分散され、油をほとんど含まない試験液を調製する。試験液の一部を平板(例えばガラス板)上に滴下し、滴下された試験液を低温(例えば-20℃)に置いて凍結させる。さらに、減圧処理によって、t-ブタノールを揮発させる。その後、オスミウムプラズマイオンコート(厚さ20nm)を施し、走査型電子顕微鏡による一般的な観察方法によって、繊維化パラミロンを観察する。
上記の繊維化パラミロンは、せん断力による解繊処理が施されたものである。具体的に、上記の繊維化パラミロンは、後述する製造方法において、パラミロン顆粒がせん断力によって砕かれ、解繊されることによって形成される。このように、上記の繊維化パラミロンは、せん断力による物理的な解繊処理によって得られる。
上記の繊維化パラミロンでは、各繊維状物が互いに絡み合って寄り集まった状態となり、3次元ネットワークを形成している。換言すると、繊維化パラミロンは、各繊維状物が互いに複雑に絡み合うことで網目状の構造となっている。このような状態で、繊維化パラミロンは、油に分散している。繊維化されたパラミロンの各繊維状物では、太さに対する長手方向の長さの比が、通常、5~5000である。繊維化パラミロンの各繊維状物の長手方向の長さは、通常、3μm以上100μm以下である。
上記の繊維化パラミロンは、通常、45%以上60%以下の結晶化度を有する。斯かる結晶化度は、常法に従ってX線回折チャートを得て、さらに、斯かるチャートを基にして求められる。結晶化度は、X線回折チャートにおける2θ=5~80°における非晶質部の強度と結晶部の強度の比により求められる。パラミロン顆粒(繊維化パラミロンを製造する前)の結晶化度に対する、上記の繊維化パラミロンの結晶化度の相対値は、0.60以上0.90以下であってもよく、0.60以上0.85以下であってもよく、0.65以上0.80以下であってもよい。なお、上記のごとき結晶化度の相対値は、同じ測定条件で測定されたX線回折チャートに基づいた各結晶化度から算出される。
上記の繊維化パラミロンは、β-1,3-グルカナーゼによってグルコースへと分解されにくい。換言すると、上記の繊維化パラミロンは、β-1,3-グルカナーゼに対する感受性が低く、例えば化学処理された(後述)パラミロンよりも、β-1,3-グルカナーゼによって分解されにくい。β-1,3-グルカナーゼに対する感受性(グルコースへの分解され易さ)は、例えば、所定温度で所定時間、β-1,3-グルカナーゼと上記の繊維化パラミロンとを水中で接触させて生じるグルコースの量を測定することによって測定でき、その結果を基にして上記の感受性を比較できる。上記の繊維化パラミロンのグルコース生成量は、繊維化パラミロン1gあたりのグルコース生成量[mg/g]によって表すことができる。上記グルコース生成量は、30mg/g(グルコース/繊維化パラミロン)以下であり、好ましくは10mg/g以下である。上記グルコース生成量は、市販のグルコース定量キットを用いて測定される。上記の繊維化パラミロンは、化学処理されたパラミロンよりも、β-1,3-グルカナーゼに対する感受性が低いため、微生物による分解を受けにくい。
また、上記の繊維化パラミロンは、比較的高いpHの水溶液に溶解しない。例えば、上記の繊維化パラミロンは、0.1MのNaOH水溶液に溶解せず、0.3MのNaOH水溶液にも溶解しない。油を取り除く処理を施した後、上記の繊維化パラミロンを乾燥させて粉砕した粉末250mgと、0.3MのNaOH水溶液の10mLとを混合し、20℃において1時間撹拌したあとに、混合液が懸濁している(透明でない)ことを観察することで、繊維化パラミロンが溶解しないことを確認できる。一方、パラミロン顆粒をNaOH水溶液やジメチルスルホキシド(DMSO)等にいったん溶解させた後に析出させたパラミロンは、0.1MのNaOH水溶液や0.3MのNaOH水溶液に溶解する。上記の混合液が透明か懸濁状態かを目視で観察することによって、溶解したか否かを確認する。仮に、目視で確認することが困難である場合、分光光度計を用いて660nmにおける上記混合液の吸光度を測定し、測定値が0.1以下であれば、溶解したと判定することが望ましい。同様の条件下で測定した純水の吸光度をブランク値とし、混合液の吸光度からブランク値を差し引くことで、混合液の最終的な吸光度を求める。
なお、化学処理されたパラミロンは、アルカリ性水溶液やDMSOなどによっていったん溶解される等の処理を受けていることから、せん断力を受けて繊維化された上記の繊維化パラミロンよりも、β-1,3-グルカン同士の水素結合が少なくなっていると考えられる。これにより、化学処理されたパラミロンは、上述したように、β-1,3-グルカナーゼによって分解されやすかったり、アルカリ性水溶液において溶解しやすかったりすると考えられる。
本実施形態の組成物に含まれる油は、沸点が水よりも高い有機物である。斯かる油は、同容量の水と混合した場合に、通常、室温において相分離を起こす。斯かる油は、室温(20℃)において、液状であってもよく、固形状であってもよい。斯かる油は、1種の油のみを含んでもよく、異なる2種以上の油の混合物であってもよい。
上記の油としては、エステル油、炭化水素油などが挙げられる。
エステル油としては、植物油や動物油などの天然油脂、合成エステル油などが挙げられる。一方、炭化水素油としては、流動パラフィンなどの鉱物油などが挙げられる。
天然油脂としては、牛脂、ラード、又は魚油などの動物油;大豆油、ナタネ油、ベニバナ油、綿実油、コーン油、ゴマ油、オリーブオイル、ヤシ油、パーム油、ひまわり油、こめ油、グレープシード油、アマニ油、エゴマ油、ヒマシ油、ホホバ油、又は落花生油などの植物油が挙げられる。エステル油は、植物油由来の中鎖脂肪酸オイル(MCTオイル、脂肪酸部分の炭素数が8~12)であってもよい。
合成エステル油としては、例えば、脂肪酸などの有機酸類と、アルコール類とのエステル化合物が挙げられる。斯かるエステル化合物としては、例えば、モノエステル化合物、ジエステル化合物、トリエステル化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
上記のエステル化合物を合成するための有機酸類としては、例えば、ラウリン酸やステアリン酸などの脂肪酸が用いられる。
上記のエステル化合物を合成するためのアルコール類としては、例えば、ラウリルアルコールやステアリルアルコールなどの1価アルコール、又は、エチレングリコールやグリセリンなどの多価アルコールが用いられる。
本実施形態の組成物は、液状(スラリー状など)であってもよい。液状の組成物は、通常、液状の油と、上記の繊維化パラミロンとを含む。液状の組成物は、上記の繊維化パラミロンを含むため、通常、粘稠である。
上記の組成物は、固形状であってもよい。固形状の組成物は、例えば、錠剤の形状であってもよい。組成物は、例えば、多量の粒子を含む粉体であってもよい。上記の組成物を構成する粒子や錠剤の大きさは、0.4μm以上10mm以下であってもよい。
上記の組成物は、上記繊維化パラミロンを20質量%以上含んでもよく、50質量%以上含んでもよく、80質量%含んでいてもよい。上記の組成物は、通常、上記繊維化パラミロンを5質量%以上25質量%以下含む。上記の組成物においては、上記繊維化パラミロン以外の成分の総質量に対して、油が占める質量割合は、95%以上であってもよい。
上記の組成物は、上記繊維化パラミロンや油以外の成分をさらに含んでもよい。なお、上記の組成物における水の含有率は、1質量%未満であってもよい。上記の組成物は、例えば、水の沸点よりも高い温度で殺菌処理されてもよい。
上記の組成物においては、水よりも雑菌を繁殖させない油に、上記の繊維化パラミロンが分散しているため、上記の組成物では、雑菌の繁殖が抑制されている。また、水の沸点よりも高い温度で上記の組成物を加熱できることから、十分な殺菌処理を施すことができる。これにより、上記の組成物は、雑菌の繁殖が十分に抑制される。
また、油中に繊維化パラミロンが分散した状態が維持されているため、繊維化パラミロンが十分に分散しているからこそ発揮される作用(例えば、繊維化パラミロンによる被分散物への分散作用、又は、繊維化パラミロンによる生体への生理的作用など)を、使用時において確実に利用できる。
さらに、油中において、繊維状物が絡み合うことによって寄り集まった状態であるため、繊維状物が互いに離間しすぎず均一に分散されやすい。従って、油中に分散した繊維化パラミロンをさらに他の溶媒(液体)に添加した際にも、繊維化パラミロンが均一に分散されやすい。
また、繊維化パラミロンにおいて、繊維状物が枝分かれしていると、その分、繊維化パラミロンの表面積を大きくできる。また、繊維状物が枝分かれしていると、繊維状物がより絡み合った状態を保持することができる。
さらに、上記の組成物は、さらなる乾燥処理を施すことなく使用できる。具体的には、上記の組成物は、繊維化パラミロン以外の成分がエステル油等の油であり、実質的に水を含まないため、水溶性の高分子材料や親水性の高分子材料と組み合わせた場合に、高分子材料を溶解させずに使用できる。より具体的には、上記の組成物をゼラチンなどの水溶性高分子材料の被膜で覆うことによって、ソフトカプセル化して、カプセル剤を作製できる。斯かるカプセル剤は、例えばサプリメントなどの用途で使用できる。
次に、本発明に係るパラミロン含有組成物の製造方法の一実施形態について詳しく説明する。
本実施形態のパラミロン含有組成物の製造方法は、溶媒中でパラミロン顆粒をせん断力によって繊維化することによりパラミロン顆粒を繊維状に形成するせん断工程を備える。せん断工程によって、パラミロン顆粒を繊維化することができる。上記の溶媒は、水と有機溶媒との混合溶媒であってもよく、水であってもよい。また、上記の溶媒は、油であってもよい。なお、油以外の溶媒の存在下でせん断工程をおこなった後、溶媒を油へ置換する置換工程をおこなってもよい。
せん断工程では、例えば、ユーグレナが細胞内に貯めたパラミロン顆粒(1~5μm程度の大きさ)に、溶媒の存在下でせん断力を加えることによって繊維化パラミロンを得て、液状の組成物を製造する。
上記のごとく製造された組成物は、アルカリや酸、ジメチルスルホキシド(DMSO)などを用いてパラミロン顆粒を溶解させる化学的な処理を行わなくても、物理的な処理によって、比較的簡便に製造することができる。本実施形態の上記組成物は、化学処理のみによって繊維化されたパラミロンを含まず、せん断力などによる物理的な処理によって繊維化された繊維化パラミロンを含む。なお、せん断工程は、油の存在下で行ってもよいが、油以外の溶媒の存在下で行ってもよい。
せん断工程では、せん断力による物理的処理によって、パラミロン顆粒が解繊されて、上記の繊維化パラミロンが調製される。物理的処理では、パラミロン顆粒を構成するβ-1,3-グルカンの水素結合がほとんど切断されずに、解繊処理が行われる。一方で、化学的な処理では、アルカリ性水溶液やDMSO等の溶液にパラミロンを一度完全に溶解させるため、β-1,3-グルカン同士の水素結合がなくなり、1本鎖のβ-1,3-グルカンを生じさせると考えられる。このことから、本実施形態の繊維化パラミロンは、化学的な処理が施されたパラミロンよりもパラミロン顆粒本来の結晶構造を比較的保持しており、比較的化学的に安定である可能性が高い。上述したように、本実施形態の繊維化パラミロンは、化学的な処理が施されたパラミロンよりも、アルカリ性水溶液等に溶解しにくく、また、β-1,3-グルカナーゼによって分解されにくい。よって、上記の繊維化パラミロンは、例えば飲食品として利用された場合に、体内でβ-1,3-グルカナーゼによって分解されにくく、繊維状の状態が保たれていることによる機能(例えば食物繊維の機能)を発揮することが期待できる。
せん断工程では、せん断力が加えられたパラミロン顆粒が解繊される。パラミロン顆粒は、数nmの太さのミクロフィブリルを含む。パラミロン顆粒は、比較的扁平な形状を有し、顆粒内部では、長手方向が揃うようにミクロフィブリルが並んでいる。顆粒内部では、扁平形状の周方向がミクロフィブリルの長手方向となるように、ミクロフィブリルが並び、ミクロフィブリルが束になっている。このようなパラミロン顆粒にせん断力が加わると、ミクロフィブリルの長手方向に対して垂直な方向に、ミクロフィブリルの束が離間し、パラミロン顆粒が解繊される。解繊処理が施された繊維化パラミロンは、通常、寄り集まったミクロフィブリルで構成されている。
せん断工程において、せん断力を加える装置としては、図1及び図2に示すように、互いに摺動しつつ相対移動する第1部材Y1及び第2部材Y2の間に、ユーグレナの細胞から取り出したパラミロン顆粒と溶媒とを含む原材料液Aを入れて、第1部材Y1及び第2部材Y2を互いに摺動させるように構成された装置が挙げられる。また、せん断力を加える装置としては、図3に示すように、パラミロン顆粒を含む原材料液Aを噴射し、原材料液A同士を衝突させる装置が挙げられる。また、図4に示すように、パラミロン顆粒を含む原材料液Aを噴射し、原材料液Aを被衝突体X4に衝突させるように構成された装置が挙げられる。せん断工程においては、パラミロン顆粒が繊維化される条件下(所定の摺動部回転数、摺動面クリアランス、圧力等)で各装置を運転する。
前記第1部材Y1及び第2部材Y2が互いに摺動しつつ相対移動する装置は、図1及び図2に示すように、第1部材Y1と、第1部材Y1と摺動する第2部材Y2とを備える。例えば、第1部材Y1及び第2部材Y2は、図1に示すように、いずれも円柱状であり且つ同じ大きさである。第1部材Y1の円柱軸方向に垂直な面の一方と、第2部材Y2の円柱軸方向に垂直な面の一方とは、互いに向き合う。斯かる装置は、第1部材Y1及び第2部材Y2が各円柱軸を回転軸として回転するように構成されている。第1部材Y1及び第2部材Y2の各回転方向は、互いに反対方向である。なお、一方の部材が回転せず固定され、他方の部材が回転するように構成されてもよい。斯かる装置は、第1部材Y1及び第2部材Y2のそれぞれの上記一方の面(摺動面)同士が、上記回転によって摺動することにより、第1部材Y1及び第2部材Y2の間に入れられた原材料液A中のパラミロン顆粒に対してせん断力を加えてパラミロン顆粒を繊維化させるように構成されている。
上記の装置として、市販されているものが採用され得る。市販されている斯かる装置としては、例えば、増幸産業社製の石臼式摩砕機 製品名「スーパーマスコロイダー」等が挙げられる。
なお、前記第1部材及び第2部材が互いに摺動しつつ相対移動する装置は、図2に示すように、第1部材Y1と、第2部材Y2とを備え、第1部材Y1及び第2部材Y2が一方向及びその反対方向に往復して互いに相対移動することによって、第1部材Y1及び第2部材Y2が互いに摺動するように構成されてもよい。斯かる装置は、第1部材Y1及び第2部材Y2が互いに反対向きに相対移動して摺動することにより、第1部材Y1及び第2部材Y2の間に入れられた原材料液A中のパラミロン顆粒に対してせん断力を加えてパラミロン顆粒を繊維化させるように構成されている。
前記原材料液A同士を衝突させる装置は、図3に示すように、内部を通る原材料液Aを噴射するための第1配管X1と、内部を通る原材料液Aを噴射するための第2配管X2とを備える。第1配管X1及び第2配管X2の下流側の各先端には、ノズルが取り付けられている。斯かる装置は、各配管を経て各ノズルから噴射される原材料液A同士を衝突させるように構成されている。斯かる装置は、原材料液A同士が互いに衝突するときの角度(一方の噴射方向と他方の噴射方向との間の角度)が調節されるように構成されている。斯かる装置は、原材料液A同士が衝突することにより、原材料液A中のパラミロン顆粒に対してせん断力を加えてパラミロン顆粒を繊維化させるように構成されている。
斯かる装置として市販されているものを用いることができる。市販されている斯かる装置としては、例えば、スギノマシン社製の「スターバースト」、みずほ工業社製の「マイクロフルイダイザー」等が挙げられる。
前記原材料液Aを被衝突体X4に衝突させる装置は、図4に示すように、内部を通る原材料液Aを噴射するための噴射用配管X3と、噴射された原材料液Aが衝突する被衝突体X4とを備える。噴射用配管X3の下流側の先端には、ノズルが取り付けられている。被衝突体X4は、噴射された原材料液Aを吸収せずに表面で跳ね飛ばす材料で形成されている。斯かる装置は、噴射用配管X3を経てノズルから噴射される原材料液Aを被衝突体X4に衝突させるように構成されている。斯かる装置は、原材料液Aが被衝突体X4に衝突することにより、原材料液A中のパラミロン顆粒に対してせん断力を加えてパラミロン顆粒を繊維化させるように構成されている。
せん断工程において、上記装置以外に使用され得る装置としては、二軸混練機、高圧ホモジナイザー、高圧乳化機、二軸押し出し機、ビーズミルなどが挙げられる。
せん断工程では、パラミロン顆粒にせん断力を加えることによって上記組成物を製造する。従って、アルカリや酸を用いた化学的な処理を行わなくても、物理的な処理(せん断力による解繊処理)によって、比較的簡便に、繊維化パラミロンや上記組成物を製造できる。
せん断工程では、まず、パラミロン顆粒と溶媒とを少なくとも含む原材料液Aを調製する。パラミロン顆粒は、例えば、ユーグレナによって作られたβ-1,3-グルカンを主成分とする。ユーグレナによって作られたパラミロン顆粒は、通常、粒状である。なお、原材料液Aを調製する前に、パラミロン顆粒が溶解しない程度に、水酸化ナトリウム等のアルカリを利用した前処理を施しても良い。
ユーグレナは、大きさが概ね数マイクロメートルから数十マイクロメートル程度の微小な藻類である。ユーグレナは、自然界では、通常、水中を浮遊しつつ生息する。ユーグレナは、パラミロン顆粒を細胞内部に貯める微細藻類であれば、特に限定されない。パラミロン顆粒を細胞内部に貯めるユーグレナとしては、例えば、ユーグレナ(Euglena)属微細藻類が挙げられる。
上記のユーグレナ(Euglena)属微細藻類としては、例えば、Euglena gracilis、Euglena longa、Euglena caudata、Euglena oxyuris、Euglena tripteris、Euglena proxima、Euglena viridis、Euglena sociabilis、Euglena ehrenbergii、Euglena deses、Euglena pisciformis、Euglena spirogyra、Euglena acus、Euglena geniculata、Euglena intermedia、Euglena mutabilis、Euglena sanguinea、Euglena stellata、Euglena terricola、Euglena klebsi、Euglena rubra、又は、Euglena cyclopicolaなどが挙げられる。
前記Euglena gracilisとしては、例えば、Euglena gracilis NIES-48やEuglena gracilis EOD-1(後述する独立行政法人国立環境研究所微生物系統保存施設における保管株)などが挙げられる。
上記のユーグレナ属微細藻類は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(郵便番号292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)、独立行政法人国立環境研究所微生物系統保存施設(郵便番号305-8506 茨城県つくば市小野川16-2)、又は、The Culture Collection of Algae at the University of Texas at Austin, USA(http://web.biosci.utexas.edu/utex/default.aspx)などから容易に入手される。
ユーグレナは、パラミロン顆粒、ビタミン、カロテノイド、栄養価の高いタンパク質などの有価物を細胞内に含む。パラミロン顆粒は、通常、粒状の状態となって、ユーグレナの細胞内で産生されたものである。
せん断工程では、ユーグレナから単離されたパラミロン顆粒を用いて、原材料液Aを調製することが好ましい。これにより、原材料液Aにおけるパラミロン顆粒の濃度が高くなり、原材料液Aにおける不純物が比較的少なくなる。なお、原材料液Aは、培養などによって増殖されたユーグレナの細胞を含んでもよい。即ち、原材料液Aは、パラミロン顆粒が内包されたユーグレナの細胞を含んでもよい。これにより、せん断力を加えられたことによって得られる産物が、ユーグレナの細胞を構成する成分を含むこととなる。
原材料液Aにおけるパラミロン顆粒の濃度は、特に限定されないが、通常、0.1~50質量%であり、好ましくは0.5~30質量%、より好ましくは1~20質量%である。
次に、せん断工程では、例えば、互いに摺動しつつ相対移動する第1部材Y1及び第2部材Y2の間に、パラミロン顆粒を含む原材料液Aを入れて、第1部材Y1及び第2部材Y2を互いに摺動させつつ相対移動させることによって、溶媒の存在下で原材料液A中のパラミロン顆粒にせん断力を加える。これにより、比較的大きいせん断力をパラミロン顆粒に加えることができ、比較的短時間で繊維化パラミロンを得ることができる。
上述したスーパーマスコロイダーを用いてせん断工程を行う場合、第1部材Y1及び第2部材Y2の回転数としては、例えば500~3000rpm、より好ましくは1000~2500rpmが採用される。また、第1部材及び第2部材(例えば砥石)の隙間は、特に制限されないが、スーパーマスコロイダーを利用する場合、砥石同士が軽接する隙間の状態を基準として(砥石の先端同士がわずかに接触した状態を基準として)、例えば、-10μm~-800μm、好ましくは-50μm~-500μmである。
繊維化される前(粒状)のパラミロン顆粒に加えるせん断力は、少なくともパラミロン顆粒を解繊する強さのせん断力である。上記のごとくせん断力を加えることによって、パラミロン顆粒が解繊され、繊維化パラミロンが得られる。
なお、固形状の組成物は、例えば45℃以上において液状であるが室温で固体状となる油を用いて製造できる。加熱によって油を液状に保たせつつせん断工程をおこなった後に、組成物を室温まで冷却することによって、固形状の組成物を製造できる。
また、せん断工程の後に、上記の組成物に対して、水の沸点よりも高い温度による殺菌処理を施してもよい。これにより、上記の組成物における雑菌の繁殖をより十分に抑制できる。
本実施形態のパラミロン含有組成物の製造方法は、せん断工程の後に、上述した置換工程をさらに備えてもよい。詳しくは、せん断工程においてパラミロンと共存させる特定溶媒と、最終的に製造される組成物に含有される油とが、異なる場合には、置換工程によって、特定溶媒を最終的な油に置換することができる。
置換工程では、例えば、せん断工程後のスラリー(水含有スラリー)に対して、水を上記の油に置換する処理を施す。
具体的には、せん断工程後のスラリーに対して固液分離処理(例えば、ろ過処理、遠心分離処理などの脱水処理)を施すことができる。固液分離処理後の固形分(水分含有)を油に添加した混合物を、水の沸点よりも高い温度で加熱して、水を蒸発させることによって、目的とする組成物を製造できる。
なお、油へ置換する途中の過程において、水及び油の両方に溶解する有機溶媒にいったん置換してから、さらに油に置換することができる。斯かる有機溶媒としては、例えば、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、イソブタノール、n-ブタノール、2-ペンタノール等を用いることができる。
このようにして置換工程を行っても、最終的に製造された組成物は、繊維状物が寄り集まった状態の繊維化パラミロンを含む。
上記のごとく製造された組成物は、油に溶解する物質を組成物中で溶解させる目的で、又は、被分散物を組成物中に分散させる目的で、使用される。
上記の被分散物としては、例えば、有機粉体などが挙げられる。有機粉体の材質としては、合成樹脂、多糖類などが挙げられる。有機粉体としては、例えば、きな粉、ココアパウダー、カレー粉、ごま、緑茶パウダー、ウコンなどの食材が挙げられる。
具体的には、上記の組成物と、油溶性ビタミン類又は被分散物とを混合したものが、例えばサプリメントの原料として使用される。また、上記の組成物は、例えば、油溶性の化粧品原料と混合されて、化粧料の原料として使用される。また、上記の組成物は、例えば、油溶性の有効成分と混合されて、医薬品として経口投与されたり皮膚に塗布されたりして使用される。なお、上記の組成物は、そのまま経口投与されて使用され得る。
より詳しくは、上記の組成物は、例えば、飼料、飲食品、化粧料、又は医薬品などの用途において、原料(添加剤)として使用される。上記の飲食品としては、例えば、飲料(ゼリー飲料を含む)、サプリメント、菓子類、調味料、畜肉加工食品、乳製品、茶、ドレッシング、麺類などが挙げられる。サプリメントとしては、例えば、上記の組成物をゼラチン膜でコートしたもの等が挙げられる。上記の化粧料としては、例えば、皮膚外用化粧料、毛髪用化粧料、入浴剤などが挙げられる。上記の医薬品としては、例えば、経口投与剤(飲み薬など)、皮膚外用剤(塗り薬など)、皮膚貼付剤(貼付薬など)が挙げられる。
続いて、本発明に係るカプセル剤の一実施形態について詳しく説明する。
本実施形態のカプセル剤は、上記のパラミロン含有組成物と、該パラミロン含有組成物を覆う被膜とを含む。換言すると、上記のカプセル剤は、中空状の被膜と、該被膜の内側に封入されたパラミロン含有組成物とを含む。
上記のカプセル剤の形状は、特に限定されず、例えば、真球状、楕円体状、ロッド状などが挙げられる。上記のカプセル剤の大きさは、5mm~5cmであってもよい。
被膜は、上記の組成物の外表面を全て覆っている。被膜は、通常、油に溶解しない材料で形成されている。換言すると、被膜の材質は、通常、油に溶解しない材質である。被膜の材質としては、例えば、ゼラチン、寒天、マンナン、カラギーナン、グアーガム、アラビアガム、カードラン(β-1,3グルカン)、プルラン、ヒアルロン酸、化学修飾したセルロース(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)といった水溶性高分子材料、又は、デンプン、コラーゲン、セルロース等の親水性高分子材料などが採用される。
上記の組成物を、一般的な方法によって被膜で覆うことによって、本実施形態のカプセル剤を製造できる。
本実施形態のカプセル剤は、例えば、上述した飼料、飲食品(サプリメント、乳製品、茶、飲料など)、化粧料、医薬品、又は、その他の用途で使用される。
さらに、本発明に係る飲食品の一実施形態について説明する。
本実施形態の飲食品は、上記のパラミロン含有組成物を少なくとも含む。本実施形態の飲食品は、上述した油溶性ビタミン類又は被分散物などをさらに含んでもよい。
飲食品としては、例えば、上述した飲料(ゼリー飲料を含む)、サプリメント、その他上記のもの等が挙げられる。
本実施形態のパラミロン含有組成物、飲食品、カプセル剤、及び、パラミロン含有組成物の製造方法は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示のものに限定されない。
また、一般の組成物、飲食品、カプセル剤、組成物の製造方法において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。
以下のようにして、パラミロン含有組成物を製造した。
(実施例1)
パラミロン顆粒を細胞内に有する培養後のユーグレナ属微細藻類に対して、油の存在下で、ビーズミルによってせん断力を加え、パラミロン顆粒を繊維化し、繊維化パラミロンを含むパラミロン含有組成物を製造した。ビーズミルによる解繊処理は、サブミクロン粉砕に使用される一般的な運転条件でおこなった。
詳しくは、中鎖脂肪酸オイル(MCTオイル)と、20質量%のパラミロン顆粒とを含む原材料液に対して、ビーズミルによる解繊処理を約40分間おこなった。
実施例1で製造された組成物における繊維化パラミロンを光学顕微鏡によって400倍で観察した観察像を図5に示す。左側の図5(A)の一部を拡大したものが、右側の図(B)である。この観察像から把握されるように、繊維化パラミロンは、繊維状物によって構成されていた。
また、上記の実施例で製造されたパラミロン含有組成物の外観を図6の右側に示す。左側は、せん断工程をおこなう前の混合液(油とパラミロン顆粒との混合液)の外観を示す。なお、図6は、室温で2日間放置した後の外観写真である。
せん断工程においては、解繊処理の途中で、パラミロンの濃度を調整したり時間を変更したりすることで、繊維状物の絡み合い状態を調整してもよい。
(実施例2)
培養後のユーグレナ属微細藻類が細胞内に貯めたパラミロン顆粒を単離した。単離したパラミロン顆粒に対して、水の存在下で、ビーズミルによってせん断力を加え、パラミロン顆粒を繊維化し、繊維化パラミロンを含むスラリーを調製した。ビーズミルによる解繊処理は、サブミクロン粉砕に使用される一般的な運転条件でおこなった。パラミロン顆粒を10質量%含む原材料液に対してビーズミルによる解繊処理をおこなった。
調製したスラリーに含まれる繊維化パラミロンを、光学顕微鏡で観察した観察像を図7に示す。また、走査型電子顕微鏡で観察した観察像を図8に示す。これらの観察像から把握されるように、繊維化パラミロンは、繊維状物によって構成されていた。繊維状物が枝分かれした構造(分岐した構造)を有することは、これらの観察像から明確に認識できる。
このスラリー中の水を油に置換する置換工程を行うことによって、図7及び図8に示すような繊維化パラミロンが油に分散した状態のパラミロン含有組成物を、最終的に製造できる。
油の存在下でせん断工程をおこなった後の繊維化パラミロン(図5(A)参照)と、水の存在下でせん断工程をおこなった後の繊維化パラミロン(図7参照)とは、光学顕微鏡観察像において、同様の形状である。水の存在下でせん断工程をおこなった後の繊維化パラミロンの繊維状物は、電子顕微鏡観察像において、枝分かれした構造(分岐した構造)を有する(図8参照)。従って、油の存在下でせん断工程をおこなった後の繊維化パラミロンの繊維状物も、同様に、枝分かれした構造(分岐した構造)を有するものである。
(実施例3)
培養後のユーグレナ属微細藻類が細胞内に貯めたパラミロン顆粒を単離した。単離したパラミロンの濃度が5質量%となるように、パラミロン顆粒と水とを混合して、パラミロン顆粒を含む原材料液を調製した。
・せん断工程
図1に示すような装置(具体的には、増幸産業社製の石臼式摩砕機 製品名「スーパーマスコロイダー」)を用いて、第1部材(砥石)と第2部材(砥石)との間に原材料液を入れて、第1部材と第2部材とを互いに摺動させることによって、パラミロン顆粒にせん断力を加え、パラミロン顆粒を繊維化し、繊維化パラミロンを含むスラリーを作製した。
せん断工程において、上記の石臼式摩砕機を用いた湿式解繊処理は、下記条件にて行った。
[解繊処理]
・グラインダー種類:MKGCタイプ
・クリアランス(砥石の隙間): -100μm
・砥石回転数 : 1200 rpm
石臼式摩砕機で得られるスラリーを回収し、回収したスラリーに再度解繊処理を施すことによりスラリーを得て、同様な操作を合計20回繰り返すこと(20パス)によって、繊維化パラミロンを含むスラリーを得た。
上記実施例3のせん断工程をおこなった後、スラリーの一部を取り出して電子顕微鏡観察用のサンプルを作製し、繊維化パラミロンを走査型電子顕微鏡で観察した。その観察像を図9及び図10に示す。これらの観察像から把握されるように、繊維化パラミロンは、繊維状物によって構成されていた。
このスラリー中の水を油に置換する置換工程を行うことによって、図9及び図10に示すような繊維化パラミロンが油に分散した状態のパラミロン含有組成物を、最終的に製造できる。
<繊維化パラミロン及び化学処理パラミロンの物性比較>
下記の2種のパラミロンの物性を比較すべく試験を実施した。
・上記の実施例で製造した組成物に含まれる繊維化パラミロン
・化学処理パラミロン(培養後のユーグレナ属微細藻類から取り出したパラミロン顆粒をいったん溶解させてから析出させたもの)
[化学処理パラミロンの作製]
培養後のユーグレナ属微細藻類から取り出したパラミロン顆粒を、特開2011-184592号公報に記載の方法によって化学的に処理した。具体的には、パラミロン顆粒15gを1M NaOH水溶液600mLに加えて1時間撹拌しながら溶解させ、溶解後に、塩酸水溶液を加えることにより、中和処理を行った。中和処理によってゲル状物が生じた。遠心分離による分離処理によって得られた上澄み液を除去し、固形分を得た。固形分は、中和処理による塩(NaCl)を含んでいるため、得られた固形分に対して、多量の水を加え、固形分を分散させてゲル状物を生じさせ、上記と同様に遠心分離によって分離処理を行うことにより、ゲル状物に含まれる塩類の除去処理を行った。ゲル状物に含まれるNaCl乾燥質量が、1M NaOH水溶液に溶解させたパラミロン顆粒の乾燥重量あたり0.1質量%以下となるまで、塩類の除去処理を繰り返し行って、化学処理パラミロンを作製した。遠心分離後の上澄み液のNaCl濃度を、上澄み液の電気伝導度から算出することによって、ゲル状物に含まれるNaClの乾燥重量を求めた。なお、下記文献によると、この化学処理パラミロンは、電子顕微鏡によって観察した結果、繊維状ではなく、形や大きさが不定形の塊であった。
・文献名
「平成26年度戦略的基板技術高度化支援事業 多糖類パラミロンの高度培養生産技術及び利用に関する研究開発(研究開発成果等報告書 平成27年3月)」
[β-1,3-グルカナーゼ酵素による分解性試験]
実施例3においてせん断工程をおこなった後のサンプル(水を油に置換する前のスラリー)と、上記の化学処理パラミロンのサンプルとを用いて、各サンプルのβ-1,3-グルカナーゼによる分解性(β-1,3-グルカナーゼに対する感受性)を確認した。詳しくは、以下のようにして、各サンプルを用いて反応液を調製し、β-1,3-グルカナーゼをパラミロンに作用させ、生成したグルコース量を測定した。
・反応液の組成(純水を加えて全量で10mLになるように調製)
緩衝液:5mL / 酵素:0.1mL / 各サンプル:乾燥質量換算で30mg
緩衝液
フタル酸水素カリウム-水酸化ナトリウムバッファー(pH4.0)(東京化成工業社製)
酵素(β-1,3-グルカナーゼ)
endo-1,3-β-Glucanase(酵素含有量:50units/mL)(日本バイオコン社製)
より詳しくは、恒温振とう機を用いて、40℃、45rpmの条件で、調製した反応液を24時間振とうさせて、パラミロンを酵素と反応させた。その後、製品名「グルコースCII-テストワコー」(和光純薬工業社製)を用いて、上記の酵素反応をさせたサンプルと、酵素反応させていないサンプルとについて、それぞれグルコース濃度を測定した。
実施例3のサンプルのグルコース生成量[mg/g(グルコース/パラミロン)]を算出したところ、5.8mg/gであった。
一方で、パラミロンを一旦アルカリに完全溶解させて再析出させた化学処理パラミロンについてはβ-1,3-グルカナーゼによって分解され、50mg/g以上のグルコースが生成されることを確認した。
[アルカリ性水溶液への溶解性試験]
実施例3においてせん断工程をおこなった後のサンプル(水を油に置換する前のスラリー)と、上記の化学処理パラミロンのサンプルとを用いて、アルカリ性水溶液への溶解性を確認した。なお、実施例3のサンプルとして、乾燥後の粉末状のものを用いた。
乾燥質量換算で250mgのサンプルを、10mLの純水または0.5M HCl水溶液にそれぞれ添加して混合したところ、何れのサンプルも純水やHCl水溶液に溶解しないことを事前に確認した。
250mgの乾燥質量の各サンプルを、0.3Mの水酸化ナトリウム水溶液10mLに添加し、激しく振ったあと、室温(20℃)において80rpmで1時間振とう撹拌した。
同様にして、各サンプルを10mLの純水に添加して、1時間撹拌した。
撹拌後、実施例3のサンプルにおいて、0.3MNaOH水溶液、純水の吸光度は、それぞれ、2.495、2.729となった。実施例3の繊維化パラミロンが0.3MNaOH水溶液や純水に溶解しないことを確認した。
一方で、パラミロンを一旦アルカリに完全溶解させて再析出させた化学処理パラミロンは、0.1MNaOH水溶液に溶解することを確認した。
本発明のパラミロン含有組成物は、例えば、油溶性物質又は被分散物と混合されることにより、比較的均一且つ簡便に、油溶性物質を油に溶解させること、又は、被分散物を油に分散させることができる。本発明のパラミロン含有組成物は、飲食品、化粧料、医薬品などの原料として好適に使用される。本発明のパラミロン含有組成物の製造方法は、例えば、上記の組成物を製造するために好適に使用される。
A:原材料液、
X1:第1配管、 X2:第2配管、 X3:噴射用配管、 X4:被衝突体、
Y1:第1部材、 Y2:第2部材。

Claims (9)

  1. 油と、該油中に分散した繊維化パラミロンとを含み、
    前記繊維化パラミロンが、分岐した構造を有する複数の繊維状物を含む、パラミロン含有組成物。
  2. 前記繊維化パラミロンは、複数の繊維状物が絡み合うことによって寄り集まった状態となっている、請求項1に記載のパラミロン含有組成物。
  3. 用途が飲食品である、請求項1又は2に記載のパラミロン含有組成物。
  4. 前記繊維化パラミロンは、0.1MのNaOH水溶液に溶解しない、請求項1~3のいずれか1項に記載のパラミロン含有組成物。
  5. 殺菌処理された、請求項1~4のいずれか1項に記載のパラミロン含有組成物。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載のパラミロン含有組成物を含む、飲食品。
  7. 請求項1~5のいずれか1項に記載のパラミロン含有組成物と、該パラミロン含有組成物を覆う被膜とを含む、カプセル剤。
  8. 中で、パラミロン顆粒をせん断力によって繊維化することによりパラミロン顆粒を繊維状に形成するせん断工程を備え、
    前記せん断工程では、前記パラミロン顆粒を前記せん断力によって解繊することにより、分岐した構造を有する複数の繊維状物を得る、パラミロン含有組成物の製造方法。
  9. 水中、又は、水及び有機溶媒の混合溶媒中で、パラミロン顆粒をせん断力によって繊維化することによりパラミロン顆粒を繊維状に形成するせん断工程を備え、
    前記せん断工程では、前記パラミロン顆粒を前記せん断力によって解繊することにより、分岐した構造を有する複数の繊維状物を得
    さらに、前記水又は前記混合溶媒を油へ置換する置換工程を備える、パラミロン含有組成物の製造方法。
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