JP2019055857A - ガバナ調整治具 - Google Patents

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悠典 本田
Yusuke Honda
悠典 本田
照展 大石
Terunobu Oishi
照展 大石
美之 滝波
Yoshiyuki Takinami
美之 滝波
望 東海
Nozomi Tokai
望 東海
雅由 加藤
Masayoshi Kato
雅由 加藤
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Abstract

【課題】ガバナの重り位置調整作業に際して治具本体の動きを抑えることができるガバナ調整治具の提供。【解決手段】本発明は、本体30をガイドレール6のベース部6aに締結する第1クランプ31、第1締結ボルト33、及び第2クランプ32、第2締結ボルト34と、重り5の位置調整に関連する支持金具7を押し下げる第1移動ボルト37及び第2移動ボルト38とを備えており、第1移動ボルト37の軸部の先端と支持金具7の上部との接触点である第1接触点50と、第2締結ボルト34との距離L、及び第2移動ボルト38の軸部の先端と支持金具7の上部との接触点である第2接触点51と、第1締結ボルト33との距離Lのそれぞれは、第1移動ボルト37と第2移動ボルト38との間隔Tよりも大きく設定されている。【選択図】図7

Description

本発明は、エレベーターのガバナ(調速機)に備えられた重りの位置を調整する作業に活用されるガバナ調整治具に関する。
エレベーターには、乗かごが異常な速度で下降した際に乗りかごに設けられた非常停止装置を作動させて乗りかごを停止させるガバナが備えられている。このガバナは、上下方向に一対配置されたプーリと、これらのプーリに巻回されて乗りかごの昇降に伴って移動可能なガバナロープと、ガバナロープにテンションを付与する重りとを有している。
ガバナロープは、無端状に形成されており、重りの荷重等により経年的な伸びを生じる。このようなガバナロープの伸びを生じると、重りが下方向に回動して昇降路のピット床に接近する状態となる。重りがピット床に接触すると、ガバナロープに緩みが生じて乗りかごの非常停止機能が低下する。したがって、所定期間の経過後には、重りをピット床から離隔させるために、重りを上方向に回動させる重り位置調整作業が必要となる。このような重り位置調整作業に際して用いられるガバナ調整治具が、特許文献1に開示されている。
図9は特許文献1に開示された従来のガバナ調整治具を用いて行われる重り位置調整作業を示す正面図、図10は図9のA−A断面拡大図である。
図9に示すように、ガバナ1は、昇降路の上部に配置された図示しないプーリと、昇降路の下部に配置されたプーリ2と、これらのプーリ2等に巻回された無端状のガバナロープ3とを備えている。ガバナロープ3は連結部材を介して図示しない乗りかごに連結されており、乗りかごの昇降に伴って移動する。乗かごが異常速度で下降した際には、ガバナロープ3が把持具によって把持されてその移動が強制的に阻止される。これにより、乗りかごに設けられた非常停止装置が作動して、乗かごはその乗りかごを案内するガイドレール6に対して固定され停止する。
同図9に示すように、昇降路の下部に配置されたプーリ2の回転軸2aには支持体4が回動可能に取り付けられている。この支持体4の一端側には、ガバナロープ3にテンションを付与する重り5が取り付けられている。乗りかごのガイドレール6のベース部6aには支持金具7が取り付けられている。この支持金具7は、ガイドレール6のベース部6aにクランプ8,10及びボルト9,11によって締結されている。前述した支持体4の他端は、連結部12を介して支持金具7に回動可能に連結されている。
ガバナロープ3に経年的な伸びを生じると、同図9に示すように重り5が昇降路のピット床27に向って下方向に回動する。これに伴って重り5を保持する支持体4が回転軸2aを中心として同図9の反時計回りに回動する。この状態になると、重り5がピット床27に接触する虞が生じる。したがって、重り5をピット床27から離隔させる前述した重り位置調整作業が必要となる。
このような重り位置調整作業に際して用いられる従来のガバナ調整治具は、同図9及び図10に示すように、本体20と、この本体20との間でガイドレール6のベース部6aを把持するクランプ21,22と、ベース部6aを把持した状態でクランプ21,22をベース部6aに締結する締結ボルト23,24とを備えている。図10に示すように、クランプ21は、ベース部6aの一方の側端部に近接して対向する対向部21aを有している。同様に、クランプ22は、ベース部6aの他方の側端部に近接して対向する対向部22aを有している。また、ガバナ調整治具は、ガバナロープ3にテンションを付与する重り5の位置調整に関連して本体20に保持された移動ボルト25,26を備えている。これらの移動ボルト25,26は、ベース部6aに締結された支持金具7を下方向に移動させる際に活用される。
図9に示すように、ガバナロープ3の伸びに伴って下方に回動した状態となっている重り5を、ピット床27から離隔させるように上方に回動させる重り位置調整作業は、前述したガバナ調整治具を用いて以下のように行われる。
同図9に示すように、ガイドレール6のベース部6aにガバナ調整治具を締結した状態で、クランプ8,10のボルト9,11を交互に緩め、緩められたボルト9,11側に配置された移動ボルト25,26を回転させ、該当する移動ボルト25,26によって支持金具7を押し下げる。このような動作がクランプ8側及びクランプ10側に対して交互に行われる。これにより支持金具7が押し下げられ、支持金具7に連結部12を介して連結された支持体4がプーリ2の回転軸2aを中心にして、同図9の時計回りに回動する。この支持体4の回動に伴って重り5はピット床27から離隔するように上方向に回動する。例えば、支持体4が水平状態まで復帰した時点で該当するクランプ8,10が締め付けられ、クランプ8,10の双方によって支持金具7はガイドレール6のベース部6aに締結される。
実開平3−122065号公報
特許文献1に開示された従来技術においては、移動ボルト25,26で支持金具7を押し下げた際に上方向に向かう反力が生じる。この反力によって本体20をガイドレール6のベース部6aに締結していたクランプ21,22が上方に向かって滑る。これに伴って本体20が上方に向って動いてしまう。したがって、支持金具7を移動ボルト25,26によって押し下げる際に、本体20の上方向への動きを考慮しながら移動ボルト25,26を回転させることが必要となる。このためガバナ1の重り5の位置調整作業が煩雑で時間がかかり、作業能率の向上が見込めない。
上記課題を解決するために、本発明の目的は、ガバナの重り位置調整作業に際して治具本体の動きを抑えることができるガバナ調整治具を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係るガバナ調整治具は、エレベーターの乗りかごを案内するガイドレールのベース部に固定された本体と、前記本体との間で前記ベース部を把持するクランプと、前記ベース部を把持した状態で前記クランプを前記本体に締結する締結ボルトと、前記エレベーターのガバナに備えられたガバナロープにテンションを付与する重りの位置調整に関連して前記ベース部に締結された支持金具を移動させる際に活用され、前記本体に保持された移動ボルトとを備えており、前記クランプは、前記ベース部の一方側に配置された第1クランプと他方側に配置された第2クランプとから成り、前記締結ボルトは、前記第1クランプを前記本体に締結する第1締結ボルトと前記第2クランプを前記本体に締結する第2締結ボルトとから成り、前記移動ボルトは、前記ベース部を挟んで第1クランプ側に配置された第1移動ボルトと第2クランプ側に配置された第2移動ボルトとから成る前記重りの位置調整に際して用いられるガバナ調整治具において、前記第1移動ボルトと支持金具側部分との接触点である第1接触点と前記第2締結ボルトとの距離、及び前記第2移動ボルトと前記支持金具側部分との接触点である第2接触点と前記第1締結ボルトとの距離のそれぞれは、前記第1移動ボルトと前記第2移動ボルトとの間隔よりも大きく設定されていることを特徴としている。
本発明に係るガバナ調整治具は、ガバナの重り位置調整作業に際して治具本体の動きを抑えることができる。これにより重り位置調整作業が簡単になって比較的短時間で実施することができ、従来に比べて作業能率を向上させることができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明に係るガバナ調整治具の第1実施形態を用いて行われるガバナの重り位置調整作業を示す正面図である。 第1実施形態に係るガバナ調整治具に備えられた本体及び移動ボルトを示す正面図である。 図2に示す状態から移動ボルトを除いた状態を示す平面図である。 図2に示す状態から移動ボルトを除いた状態を示す裏面図である。 図2に示す状態から移動ボルトを除いた状態を示す側面図である。 第1実施形態を用いて行われた重り位置調整作業の終了時の状態を示す正面図である。 重り位置調整作業時に図1に示す第1実施形態に係るガバナ調整治具に作用する力を説明する図である。 本発明に係るガバナ調整治具の第2実施形態を示す要部拡大正面図である。 従来のガバナ調整治具を用いて行われる重り位置調整作業を示す正面図である。 図9のA−A断面拡大図である。 ガバナの重り位置調整作業時に図9に示す従来のガバナ調整治具に作用する力を説明する図である。
以下、本発明に係るガバナ調整治具の実施の形態を図面に基づいて説明する。
乗りかごに設けられた非常停止装置を作動させるガバナ1の構成は、前述した図9に示したものと同じである。すなわち図1に示すように、ガバナ1は、昇降路の上部に配置された図示しないプーリと、昇降路の下部に配置されたプーリ2と、これらのプーリ2等に巻回された無端状のガバナロープ3とを備えている。ガバナロープ3は連結部材を介して図示しない乗りかごに連結されており、乗りかごの昇降に伴って移動する。乗かごが異常速度で下降した際には、ガバナロープ3が把持具によって把持されてその移動が強制的に阻止される。これにより、乗りかごに設けられた非常停止装置が作動して、乗かごはその乗りかごを案内するガイドレール6に対して固定され停止する。また、昇降路の下部に配置されたプーリ2の回転軸2aには支持体4が回動可能に取り付けられている。この支持体4の一端側には、ガバナロープ3にテンションを付与する重り5が取り付けられている。乗りかごのガイドレール6のベース部6aには支持金具7が取り付けられている。この支持金具7は、ガイドレール6のベース部6aにクランプ8,10及びボルト9,11によって締結されている。前述した支持体4の他端は、連結部12を介して支持金具7に回動可能に連結されている。
[第1実施形態]
以下に、ガバナロープ3の経年的な伸びに伴ってピット床27に接近するように回動したガバナ1の重り5の位置調整に用いられる第1実施形態に係るガバナ調整治具の構成について、図1〜図7に基づいて説明する。
図1に示すように、第1実施形態に係るガバナ調整治具も、エレベーターの乗りかごを案内するガイドレール6のベース部6aに締結された鉄材から成る本体30を備えている。この本体30は、支持金具7の上側に配置されている。また、本体30との間でベース部6aを把持するクランプと、ベース部6aを把持した状態でクランプを本体30に締結する締結ボルト、及びこの締結ボルトに螺合するナットとを備えている。また、エレベーターのガバナ1に備えられたガバナロープ3にテンションを付与する重り5の位置調整に関連して本体30に保持された移動ボルトを備えている。この移動ボルトは、ベース部6aに締結された支持金具7を下方に移動させる際に活用される。
クランプは、ベース部6aの一方側に配置された第1クランプ31と他方側に配置された第2クランプ32とから成っている。図10に示したクランプ21,22と同様に、第1クランプ31は、ベース部6aの一方の側端部に近接して対向する対向部31aを有しており、第2クランプ32は、ベース部6aの他方の側端部に近接して対向する対向部32aを有している。締結ボルトは、第1クランプ31を本体30に締結する第1締結ボルト33と第2クランプ32を本体30に締結する第2締結ボルト34とから成っている。これらの第1締結ボルト33及び第2締結ボルト34のそれぞれには、本体30の締結に活用される図示しないナットが螺合されている。移動ボルトは、ベース部6aを挟んで第1クランプ31側に配置された第1移動ボルト37と第2クランプ32側に配置された第2移動ボルト38とから成っている。
第1クランプ31と第2クランプ32は同じ高さ位置に配置され、第1移動ボルト37と第2移動ボルト38は同じ高さ位置に配置されている。
第1実施形態に係るガバナ調整治具は、第1移動ボルト37及び第2移動ボルト38の高さ位置と、第1クランプ31及び第2クランプ32の高さ位置を互いに異ならせてある。例えば、第1移動ボルト37及び第2移動ボルト38は、第1クランプ31及び第2クランプ32よりも低い位置に配置されている。
また、図7に示すように、第1移動ボルト37の軸部の先端と、支持金具7の上部との接触点を構成する第1接触点50と第2締結ボルト34との距離Lは、第1移動ボルト37と第2移動ボルト38との間隔Tよりも大きく設定されている。同様に、第2移動ボルト38の軸部の先端と、支持金具7の上部との接触点を構成する第2接触点51と第1締結ボルト33との距離Lは、第1移動ボルト37と第2移動ボルト38との間隔Tよりも大きく設定されている。
図2〜図5に示すように、本体30は、立設部30aと、この立設部30aの下部に位置する底板部30bと、底板部30bから折り曲げ形成した立ち上がり部30cとを有している。また本体30は、立設部30aの両側部に形成した折り曲げ部30d,30eを有している。底板部30bから折り曲げ形成した立ち上がり部30cと、立設部30aの両側部に形成した折り曲げ部30d,30eは、本体30の強度の確保に貢献している。
また、図2に示すように、本体30の上部には、上方が開放されて第1締結ボルト33が挿入された第1切り欠き穴40と、上方が開放されて第2締結ボルト34が挿入された第2切り欠き部41とが形成されている。また、本体30の両側部には、第1移動ボルト37を回転させる工具の挿入が可能な第1開口部42と、第2移動ボルト38を回転させる工具の挿入が可能な第2開口部43とが形成されている。さらに、立設部30aの中央下側部分には、本体30の重量を軽減させる角穴状の穴部44が形成されている。
図3に示すように、本体30の底板部30bには第1移動ボルト37が挿通する挿通穴30b1と、第2移動ボルト38が挿通する挿通穴30b2とが形成されている。
底板部30bの裏面には、図2及び図4に示すように、挿通穴30b1に連通して第1移動ボルト37が螺合する第1ナット35と、挿通穴30b2に連通して第2移動ボルト38が螺合する第2ナット36とが、溶接部を介して取り付けられている。
本体30の立設部30aに形成した穴部44の上側には、本体30をガイドレール6のベース部6aの裏面に吸着させるマグネット45が設けられている。
このように構成された第1実施形態に係るガバナ調整治具を用いて行われるガバナ1の重り5の位置調整作業について説明する。
図1に示すように、第1実施形態に係るガバナ調整治具の本体30をマグネット45によってガイドレール6のベース部6aの裏面に吸着させた状態で、第1クランプ31、第2クランプ32、及び第1締結ボルト33、第2締結ボルト34によって、本体30を乗りかごのガイドレール6のベース部6aに締結し、第1移動ボルト37、第2移動ボルト38の軸部の先端を支持金具7の上部に当接させる。
この状態で、例えば支持金具7の一方側を締結していたクランプ8のボルト9を緩め、図示しない工具によって第1移動ボルト37を回転させて、第1移動ボルト37を下方に移動させる。これにより、支持金具7の一方側が押し下げられる。第1移動ボルト37を所定量移動させた状態、すなわち支持金具7の一方側を所定量押し下げた状態でボルト9を締め付け、クランプ8によって支持金具7の一方側をガイドレール6のベース部6aに締結する。
次に、支持金具7の他方側を締結していたクランプ10のボルト11を緩め、図示しない工具によって第2移動ボルト38を回転させて、第2移動ボルト38を下方に移動させる。これにより、支持金具7の他方側が押し下げられる。第2移動ボルト38を所定量移動させた状態、すなわち支持金具7の他方側を所定量押し下げた状態でボルト11を締め付け、クランプ10によって支持金具7の他方側をガイドレール6のベース部6aに締結する。このようにして行われる支持金具7の押し下げ動作は、必要に応じて複数回繰り返される。
前述した支持金具7の押し下げ動作は、図6に示すように支持体4が略水平方向に延設された状態となったとき完了する。この間、支持体4はプーリ2の回転軸2aを中心として時計回りに回動する。また、支持体4の一端に保持された重り5は、上方向に回動する。これにより重り5は、ピット床27との接触の懸念の無いピット床27から離隔した位置に保持される。
ここでガバナ1の重り5の位置調整作業に際して、前述した図9及び図10に示した従来技術におけるガバナ調整治具に作用する力と、第1実施形態に係るガバナ調整治具に作用する力とを対比する。
図11に示すように、従来技術にあっては、移動ボルト25,26とクランプ21,22が同一高さ位置に配置されている。これに伴って、移動ボルト25の軸部の先端と支持金具7の一方側(クランプ8側)の上部との接触点と、クランプ22を締結する締結ボルト24との距離は、移動ボルト25と移動ボルト26との間隔よりも小さくなっている。同様に、移動ボルト26の軸部の先端と支持金具7の他方側(クランプ10側)の上部との接触点と、クランプ21を締結する締結ボルト23との距離は、移動ボルト25と移動ボルト26との間隔よりも小さくなっている。
例えば、移動ボルト25を回転させて下方に移動させ支持金具7の一方側を押し下げるとき、移動ボルト25の軸部の先端と支持金具7の一方側の上部との接触点に、本体20及びクランプ21を押し上げる力である反力Fが生じる。
このとき、締結ボルト24を支点とし、反力Fの分力と、移動ボルト25の軸部の先端と支持金具7の一方側の上部の接触点と締結ボルト24との距離との積から成るモーメントが生じる。このモーメントによって本体20が時計回りに回動し、図10に示すガイドレール6のベース部6aの一方の側端部に対向するクランプ21の対向部21aが、ベース部6aの一方の側端部を押圧する力、すなわち前述した本体20及びクランプ21を押し上げる力に抗する力が生じる。
しかし、図9〜図11に示した従来技術にあっては、移動ボルト25の軸部の先端と支持金具7の一方側の上部との接触点と、締結ボルト24との距離が短くなることから、前述したモーメントは小さく、このモーメントによってクランプ21の対向部21aが、ベース部6aの一方の側端部を押圧する力は、反力Fによって本体20及びクランプ21を押し上げる力よりも弱くなる。これによって前述したように、移動ボルト25を回転させた際にクランプ21が上方に滑って本体20が上方に動きやすい。
これは、移動ボルト26を回転させて支持金具7の他方側を押し下げる場合も同様であり、クランプ22が上方に滑って本体20が上方に動きやすい。
これに対して、第1実施形態に係るガバナ調整治具は、図7に示すように、第1クランプ31及び第2クランプ32の下方位置に、第1移動ボルト37及び第2移動ボルト38を配置してある。これに伴って、第1移動ボルト37の軸部の先端と支持金具7の一方側の上部との第1接触点50と、第2締結ボルト34との距離Lが、第1移動ボルト37と第2移動ボルト38との間隔Tよりも大きくなる。
また例えば、第1移動ボルト37を回転させて下方に移動させ支持金具7の一方側を押し下げるとき、第1移動ボルト37の軸部の先端と支持金具7の一方側の上部との第1接触点50に、本体30及び第1クランプ31を押し上げる反力Fが生じる。
またこのとき、第2締結ボルト34を支点とし、反力Fの分力F1と、第1移動ボルト37の軸部の先端と支持金具7の一方側の上部との第1接触点50と、第2締結ボルト34との距離Lの積から成る大きなモーメントが生じる。この大きなモーメントによって本体30が時計回りに回動し、ガイドレール6のベース部6aの一方の側端部に対向する第1クランプ31の対向部31aが、ベース部6aの一方の側端部を押圧する力、すなわち本体30及び第1クランプ31を押し上げる力に抗する大きな力が生じる。
すなわち、第1移動ボルト37の軸部の先端と支持金具7の一方側の上部との第1接触点50と、第2締結ボルト34との距離Lが長くなることから、同図7の矢印46方向に作用する大きなモーメントによって、第1クランプ31の対向部31aがベース部6aの一方の側端部を押圧する力が、反力Fによって本体30及び第1クランプ31を押し上げる力よりも大きくなる。これにより、ベース部6aに対する第1クランプ31の上方への滑りを抑え、本体30の上方への移動を抑えることができる。
第2移動ボルト38を回転させて支持金具7の他方側を押し下げる場合も同様であり、第2クランプ32の上方への滑りを抑え、本体30の上方への動きを抑えることができる。
このように第1実施形態に係るガバナ調整治具は、ガバナ1の重り5の位置調整作業に際して、治具の本体30の上方への動きを抑えることができる。これにより第1移動ボルト37及び第2移動ボルト38によって支持金具7を押し下げる際に、本体30の上方への動きを考慮せずに重り位置調整作業を行うことができる。したがって、重り位置調整作業が簡単になって比較的短時間で実施することができ、作業能率を向上させることができる。
また、第1実施形態は、本体30をガイドレール6のベース部6aに取り付ける際に、マグネット45によって本体30をガイドレール6のベース部6aに吸着させることができるので、このベース部6aへの取り付け作業に際しての落下を防ぐことができ、この取り付け作業を容易に行うことができる。
また、第1実施形態は、本体30に角穴状の穴部44を形成してあることから、本体30が軽量になって取り扱いが容易になり、ベース部6aへの取り付け作業における作業性の向上に貢献する。
なお、重り位置調整作業完了後の第1実施形態に係るガバナ調整治具は、ガイドレール6のベース部6aから取り外すようにしてもよく、また、ガイドレール6のベース部6aに取り付けたままの状態にしてもよい。ガイドレール6のベース部6aから取り外すようにした場合には、第1実施形態に係るガバナ調整治具を、他のエレベーターに備えられたガバナ1の重り5の位置調整作業に活用させることができる。また、ガイドレール6のベース部6aに取り付けたままの状態とした場合には、支持金具7の上方への滑りを防止してより確実に支持体4を水平状態に保ち、重り5の下方向への回動を規制することができる。
また、前述した第1実施形態にあっては、本体30の底板部30bの裏面に、第1移動ボルト37が螺合する第1ナット35と、第2移動ボルト38が螺合する第2ナット36とを溶接部を介して固定してあるが、これらの第1ナット35と第2ナット36とを溶接部を介して本体30の底板部30bの上面に固定した構成にしてもよい。
[第2実施形態]
第2実施形態に係るガバナ調整治具は、ガバナ1の重り5の位置調整作業に際して、図8に示すように支持金具7の下側に配置されたものである。
第2実施形態にあっては、支持金具7はその下部に十分な剛性を有する底板部7aが溶接部を介して固定されている。この底板部7aに、第1移動ボルト37の軸部が挿通する挿通穴を形成し、その挿通穴に連通して第1移動ボルト37の軸部と螺合する第1ナット35を溶接部を介して固定してある。同様に、支持金具7の下部に固定した底板部7aに、第2移動ボルト38の軸部が挿通する挿通穴を形成し、その挿通穴に連通して第2移動ボルト38の軸部と螺合する第2ナット36を溶接部を介して固定してある。
また、ガバナ調整治具の本体30を支持金具7の前述した底板部7aの下側に配置してある。本体30の下部に、本体30をガイドレール6のベース部6aに締結する第1クランプ31及び第2クランプ32を配置してある。
本体30の上部に、水平方向に延設された十分な剛性を有する水平板部30fを溶接部を介して固定してある。この水平板部30fに第1移動ボルト37の軸部が挿通して頭部が係止される挿通穴と、第2移動ボルト38の軸部が挿通して頭部が係止される挿通穴を形成してある。前述した支持金具7の底板部7aと、本体30の水平板部30fとの間には、支持金具7を下方に移動させるための十分な間隔が設けられている。
第1移動ボルト37を図1に示した配置形態とは上下を逆にしてその軸部を前述の水平板部の挿通穴に挿通して支持金具7に固定された第1ナット35に螺合させ、この第1移動ボルト37の頭部が水平板部に係止されるまで第1移動ボルト37を回転させることが行われる。同様に、第2移動ボルト38を図1に示した配置形態とは上下を逆にしてその軸部を前述の水平板部の挿通穴に挿通して支持金具7に固定された第2ナット36に螺合させ、この第2移動ボルト38の頭部が水平板部に係止されるまで第2移動ボルト38を回転させることが行われる。
このように第1移動ボルト37及び第2移動ボルト38は、第1クランプ31及び第2クランプ32の上側に位置している。
ここで、第1移動ボルト37の軸部と支持金具側部分である第1ナット35との接触点である第1接触点50と、第2クランプ32を締結する第2締結ボルト34との距離L、及び第2移動ボルト38の軸部と支持金具側部分である第2ナット36との接触点である第2接触点51と、第1クランプ31を締結する第1締結ボルト33との距離Lのそれぞれは、第1移動ボルト37と第2移動ボルト38との間隔Tよりも大きく設定されている。
ガバナ1の重り5の位置調整作業に際しては、支持金具7の下側に当該ガバナ調整治具を配置して本体30を第1クランプ31及び第2クランプ32によってガイドレール6のベース部6aに締結する。本体30に固定した水平板部30fの挿通穴に挿通した第1移動ボルト37、第2移動ボルト38を、支持金具7の底板部7aに固定された第1ナット35及び第2ナット36のそれぞれに螺合させる。
この状態で、支持金具7のクランプ8,10を締結していたボルト9,11を選択的に緩め、該当する第1移動ボルト37、第2移動ボルト38のいずれかを回転させることにより、第1移動ボルト37が螺合する支持金具7の第1ナット35、あるいは第2移動ボルト38が螺合する支持金具7の第2ナット36の下方向への移動を介して、支持金具7を引き下げることができる。これにより、支持体4が時計回りに回動する。
この間、例えば第1移動ボルト37を回転させて支持金具7の一方側を引き下げるに際して、第1接触点50、すなわち第1移動ボルト37の軸部と支持金具7の第1ナット35とが螺合する部位において、上方に向う反力Fが生じる。この反力Fは本体30を押し上げる力となる。また、第2締結ボルト34を支点として、前述した反力Fの分力F1と、第2締結ボルト34と第1接触点50との距離との積から成る大きなモーメントが矢印52で示すように作用する。このモーメントは、第1クランプ31の対向部31aをガイドレール6のベース部6aの一方の側端部に押圧する力、つまり前述した本体30を押し上げる力に抗する力となる。このとき、大きなモーメントに伴って本体30を押し上げる力に抗する力が、本体30を押し上げる力よりも大きくなり、本体30が上方へ動くことなく、支持金具7の一方側を引き下げることができる。
第2移動ボルト38を回転させて支持金具7の他方側を引き下げる場合も同様であり、本体30が上方に動くことなく、支持金具7の他方側を引き下げることができる。
このように構成した第2実施形態に係るガバナ調整治具も、支持体4を介して下方に回動してピット床27に接近している重り5を、上方に回動させてピット床27から離隔させることができ、前述した第1実施形態と同等の効果が得られる。また、このように構成したものでは、ピット床27側からのガバナ1の重り5の位置調整作業が容易になる。
なお、各部の構成は図示の第1,第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
1・・ガバナ、2・・プーリ、2a・・回転軸、3・・ガバナロープ、4・・支持体、5・・重り、6・・ガイドレール、6a・・ベース部、7・・支持金具、7a・・底板部、8・・クランプ、9・・ボルト、10・・クランプ、11・・ボルト、12・・連結部、27・・ピット床、30・・本体、30f・・水平板部、31・・第1クランプ、31a・・対向部、32・・第2クランプ、32a・・対向部、33・・第1締結ボルト、34・・第2締結ボルト、35・・第1ナット、36・・第2ナット、37・・第1移動ボルト、38・・第2移動ボルト、40・・第1切り欠き穴、41・・第2切り欠き穴、42・・第1開口部、43・・第2開口部、44・・穴部、45・・マグネット、50・・第1接触点、51・・第2接触点、F・・反力、F1・・分力

Claims (5)

  1. エレベーターの乗りかごを案内するガイドレールのベース部に固定された本体と、前記本体との間で前記ベース部を把持するクランプと、前記ベース部を把持した状態で前記クランプを前記本体に締結する締結ボルトと、前記エレベーターのガバナに備えられたガバナロープにテンションを付与する重りの位置調整に関連して前記ベース部に締結された支持金具を移動させる際に活用され、前記本体に保持された移動ボルトとを備えており、
    前記クランプは、前記ベース部の一方側に配置された第1クランプと他方側に配置された第2クランプとから成り、前記締結ボルトは、前記第1クランプを前記本体に締結する第1締結ボルトと前記第2クランプを前記本体に締結する第2締結ボルトとから成り、前記移動ボルトは、前記ベース部を挟んで第1クランプ側に配置された第1移動ボルトと第2クランプ側に配置された第2移動ボルトとから成る前記重りの位置調整に際して用いられるガバナ調整治具において、
    前記第1移動ボルトと支持金具側部分との接触点である第1接触点と前記第2締結ボルトとの距離、及び前記第2移動ボルトと前記支持金具側部分との接触点である第2接触点と前記第1締結ボルトとの距離のそれぞれは、前記第1移動ボルトと前記第2移動ボルトとの間隔よりも大きく設定されていることを特徴とするガバナ調整治具。
  2. 請求項1に記載のガバナ調整治具において、
    前記第1移動ボルト及び前記第2移動ボルトの高さ位置と、前記第1クランプ及び前記第2クランプの高さ位置とを互いに異ならせてあることを特徴とするガバナ調整治具。
  3. 請求項2に記載のガバナ調整治具において、
    前記第1移動ボルト及び前記第2移動ボルトは、前記第1クランプ及び前記第2クランプよりも低い位置に配置されており、
    前記第1接触点は、前記第1移動ボルトの軸部の先端と前記支持金具側部分である前記支持金具の上部との接触点から成り、前記第2接触点は、前記第2移動ボルトの軸部の先端と前記支持金具側部分である前記支持金具の上部との接触点から成り、
    前記本体には、上方が開放されて前記第1締結ボルトが挿入された第1切り欠き穴と、上方が開放されて前記第2締結ボルトが挿入された第2切り欠き穴と、前記第1移動ボルトを回転させる工具の挿入が可能な第1開口部と、前記第2移動ボルトを回転させる工具の挿入が可能な第2開口部とが形成されており、
    前記本体には、前記第1移動ボルトが螺合する第1ナットと、前記第2移動ボルトが螺合する第2ナットとが溶接部を介して取り付けられていることを特徴とするガバナ調整治具。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のガバナ調整治具において、
    前記本体を前記ベース部に吸着させるマグネットを備えていることを特徴とするガバナ調整治具。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のガバナ調整治具において、
    前記本体は、重量を軽減させる穴部を有していることを特徴とするガバナ調整治具。
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