<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について図1〜図3を参照しながら説明する。
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は温度調整部(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、後述するようにガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド(インレットフランジ)209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)等の金属からなり、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、反応管203は垂直に据え付けられた状態となる。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成されている。処理容器の筒中空部には処理室201が形成されている。処理室201は、複数枚の基板としてのウエハ200を、後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に配列した状態で収容可能に構成されている。
処理室201内には、ノズル249a,249bが、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。ノズル249a,249bには、ガス供給管232a,232bが、それぞれ接続されている。このように、反応管203には2本のノズル249a,249bと、2本のガス供給管232a,232bとが設けられており、処理室201内へ複数種類のガスを供給することが可能となっている。
ガス供給管232a,232bには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a,241bおよび開閉弁であるバルブ243a,243bがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a,232bのバルブ243a,243bよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管232c,232dがそれぞれ接続されている。ガス供給管232c,232dには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるMFC241c,241dおよび開閉弁であるバルブ243c,243dがそれぞれ設けられている。
ガス供給管232aの先端部には、ノズル249aが接続されている。ノズル249aは、図2に示すように、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、ノズル249aは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。すなわち、ノズル249aは、処理室201内へ搬入された各ウエハ200の端部(周縁部)の側方にウエハ200の表面(平坦面)と垂直に設けられている。ノズル249aはL字型のロングノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁を貫通するように設けられており、その垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。ノズル249aの側面には、ガスを供給するガス供給孔250aが設けられている。ガス供給孔250aは、反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
ガス供給管232bの先端部には、ノズル249bが接続されている。ノズル249bは、ガス分散空間であるバッファ室237内に設けられている。バッファ室237は、反応管203の内壁と隔壁237aとの間に形成されている。バッファ室237(隔壁237a)は、図2に示すように、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、また、反応管203の内壁の下部より上部にわたる部分に、ウエハ200の積載方向に沿って設けられている。すなわち、バッファ室237(隔壁237a)は、ウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。隔壁237aのウエハ200と対向(隣接)する面の端部には、ガスを供給するガス供給孔250cが設けられている。ガス供給孔250cは、反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
ノズル249bは、バッファ室237のガス供給孔250cが設けられた端部と反対側の端部に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、ノズル249bは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。すなわち、ノズル249bは、処理室201内へ搬入されたウエハ200の端部の側方にウエハ200の表面と垂直に設けられている。ノズル249bはL字型のロングノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁を貫通するように設けられており、その垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。ノズル249bの側面には、ガスを供給するガス供給孔250bが設けられている。ガス供給孔250bは、バッファ室237の中心を向くように開口している。ガス供給孔250bは、ガス供給孔250cと同様に、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。バッファ室237内と処理室201内との差圧が小さい場合、複数のガス供給孔250bの開口面積および開口ピッチを、上流側(下部)から下流側(上部)にわたりそれぞれ同一にするとよい。また、バッファ室237内と処理室201内との差圧が大きい場合、ガス供給孔250bの開口面積を上流側から下流側に向かって徐々に大きくしたり、ガス供給孔250bの開口ピッチを上流側から下流側に向かって徐々に小さくしたりするとよい。
ガス供給孔250bのそれぞれの開口面積や開口ピッチを、上流側から下流側にかけて上述のように調節することで、ガス供給孔250bのそれぞれから、流速の差はあるものの、流量がほぼ同量であるガスを噴出させることが可能となる。そして、これら複数のガス供給孔250bのそれぞれから噴出するガスを、一旦、バッファ室237内に導入することで、バッファ室237内においてガスの流速差の均一化を行うことが可能となる。複数のガス供給孔250bのそれぞれよりバッファ室237内に噴出したガスは、バッファ室237内で粒子速度が緩和された後、複数のガス供給孔250cより処理室201内に噴出する。複数のガス供給孔250bのそれぞれよりバッファ室237内に噴出したガスは、ガス供給孔250cのそれぞれより処理室201内に噴出する際には、均一な流量と流速とを有するガスとなる。
このように、本実施形態では、反応管203の側壁の内壁と、反応管203内に配列された複数枚のウエハ200の端部(周縁部)と、で定義される平面視において円環状の縦長の空間内、すなわち、円筒状の空間内に配置したノズル249a,249bおよびバッファ室237を経由してガスを搬送している。そして、ノズル249a,249bおよびバッファ室237にそれぞれ開口されたガス供給孔250a〜250cから、ウエハ200の近傍で初めて反応管203内にガスを噴出させている。そして、反応管203内におけるガスの主たる流れを、ウエハ200の表面と平行な方向、すなわち、水平方向としている。このような構成とすることで、各ウエハ200に均一にガスを供給でき、各ウエハ200に形成される膜の膜厚の均一性を向上させることが可能となる。ウエハ200の表面上を流れたガス、すなわち、反応後の残ガスは、排気口、すなわち、後述する排気管231の方向に向かって流れる。但し、この残ガスの流れの方向は、排気口の位置によって適宜特定され、垂直方向に限ったものではない。
ガス供給管232aからは、所定元素を含む原料として、例えば、所定元素としてのシリコン(Si)を含むシラン原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
シラン原料ガスとは、気体状態のシラン原料、例えば、常温常圧下で液体状態であるシラン原料を気化することで得られるガスや、常温常圧下で気体状態であるシラン原料等のことである。本明細書において「原料」という言葉を用いた場合は、「液体状態である液体原料」を意味する場合、「気体状態である原料ガス」を意味する場合、または、その両方を意味する場合がある。
シラン原料ガスとしては、例えば、Siおよびハロゲン基を含む原料ガス、すなわち、ハロシラン原料ガスを用いることができる。ハロシラン原料とは、ハロゲン基を有するシラン原料のことである。ハロゲン基には、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基、ヨード基等が含まれる。すなわち、ハロゲン基には、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン元素が含まれる。ハロシラン原料は、ハロゲン化物の一種ともいえる。
ハロシラン原料ガスとしては、例えば、SiおよびClを含む炭素(C)非含有の原料ガス、すなわち、無機系のクロロシラン原料ガスを用いることができる。無機系のクロロシラン原料ガスとしては、例えば、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6、略称:HCDS)ガスや、オクタクロロトリシラン(Si3Cl8、略称:OCTS)ガス等を用いることができる。図8(a)にHCDSの化学構造式を、図8(b)にOCTSの化学構造式をそれぞれ示す。これらのガスは、1分子中に少なくとも2つのSiを含み、さらにClを含み、Si−Si結合、Si−Cl結合を有する原料ガスであるともいえる。これらのガスは、後述する成膜処理において、Siソースとして作用する。
また、ハロシラン原料ガスとしては、例えば、Si、Clおよびアルキレン基を含み、Si−C結合を有する原料ガス、すなわち、有機系のクロロシラン原料ガスであるアルキレンクロロシラン原料ガスを用いることもできる。アルキレン基には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が含まれる。アルキレンクロロシラン原料ガスを、アルキレンハロシラン原料ガスと称することもできる。アルキレンクロロシラン原料ガスとしては、例えば、ビス(トリクロロシリル)メタン((SiCl3)2CH2、略称:BTCSM)ガス、エチレンビス(トリクロロシラン)ガス、すなわち、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン((SiCl3)2C2H4、略称:BTCSE)ガス等を用いることができる。図9(a)にBTCSMの化学構造式を、図9(b)にBTCSEの化学構造式をそれぞれ示す。これらのガスは、1分子中に少なくとも2つのSiを含み、さらにCおよびClを含み、Si−C結合、Si−Cl結合等を有する原料ガスであるともいえる。これらのガスは、後述する成膜処理において、Siソースとしても作用し、Cソースとしても作用する。
また、ハロシラン原料ガスとしては、例えば、Si、Clおよびアルキル基を含み、Si−C結合を有する原料ガス、すなわち、有機系のクロロシラン原料ガスであるアルキルクロロシラン原料ガスを用いることもできる。アルキル基には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が含まれる。アルキルクロロシラン原料ガスを、アルキルハロシラン原料ガスと称することもできる。アルキルクロロシラン原料ガスとしては、例えば、1,1,2,2−テトラクロロ−1,2−ジメチルジシラン((CH3)2Si2Cl4、略称:TCDMDS)ガス、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン((CH3)4Si2Cl2、略称:DCTMDS)ガス、1−モノクロロ−1,1,2,2,2−ペンタメチルジシラン((CH3)5Si2Cl、略称:MCPMDS)ガス等を用いることができる。図10(a)にTCDMDSの化学構造式を、図10(b)にDCTMDSの化学構造式を、図10(c)にMCPMDSの化学構造式をそれぞれ示す。これらのガスは、1分子中に少なくとも2つのSiを含み、さらにCおよびClを含み、Si−C結合を有する原料ガスであるともいえる。なお、これらのガスはさらにSi−Si結合、Si−Cl結合等をも有する。これらのガスは、後述する成膜処理において、Siソースとしても作用し、Cソースとしても作用する。
また、シラン原料ガスとしては、例えば、Siおよびアミノ基(アミン基)を含む原料ガス、すなわち、アミノシラン原料ガスを用いることができる。アミノシラン原料とは、アミノ基を有するシラン原料のことであり、また、メチル基やエチル基やブチル基等のアルキル基を有するシラン原料でもあり、少なくともSi、窒素(N)およびCを含む原料のことである。すなわち、ここでいうアミノシラン原料は、有機系の原料ともいえ、有機アミノシラン原料ともいえる。
アミノシラン原料ガスとしては、例えば、ビスターシャリーブチルアミノシラン(SiH2[NH(C4H9)]2、略称:BTBAS)ガスを用いることができる。図11にBTBASの化学構造式を示す。BTBASは、1分子中に1つのSiを含み、Si−N結合、Si−H結合、N−C結合等を有し、Si−C結合を有さない原料ガスであるともいえる。BTBASガスは、後述する成膜処理において、Siソースとして作用する。アミノシラン原料ガスとしては、この他、テトラキスジメチルアミノシラン(Si[N(CH3)2]4、略称:4DMAS)ガス、トリスジメチルアミノシラン(Si[N(CH3)2]3H、略称:3DMAS)ガス、ビスジエチルアミノシラン(Si[N(C2H5)2]2H2、略称:BDEAS)ガス等を好適に用いることができる。
HCDS、BTCSM、TCDMDS、BTBAS等のように常温常圧下で液体状態である液体原料を用いる場合は、液体状態の原料を気化器やバブラ等の気化システムにより気化して、シラン原料ガス(HCDSガス、BTCSMガス、TCDMDSガス、BTBASガス等)として供給することとなる。
ガス供給管232bからは、原料とは化学構造(分子構造)が異なる反応体(リアクタント)として、例えば、酸素(O)含有ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249b、バッファ室237を介して処理室201内へ供給される。
O含有ガスは、後述する成膜処理において、酸化剤(酸化ガス)、すなわち、Oソースとして作用する。O含有ガスとしては、例えば、水蒸気(H2Oガス)や酸素(O2)ガス等を用いることができる。酸化剤としてH2Oガスを用いる場合は、例えば、逆浸透膜を用いて不純物を除去したRO(Reverse Osmosis)水や、脱イオン処理を施すことで不純物を除去した脱イオン水や、蒸留器を用いて蒸留することで不純物を除去した蒸留水等の純水(或いは超純水)を、気化器やバブラやボイラ等の気化システムにより気化して、H2Oガスとして供給することとなる。また、酸化剤としてO2ガスを用いる場合は、例えば、後述するプラズマ源を用いてこのガスをプラズマ励起し、プラズマ励起ガス(O2 *ガス)として供給することとなる。
また、ガス供給管232a,232bからは、上述の原料や反応体による成膜反応を促進させる触媒が、MFC241a,241b、バルブ243a,243b、ノズル249a,249b、バッファ室237を介して処理室201内へ供給される。触媒としては、例えば、C、NおよびHを含むアミン系ガスを用いることができる。
アミン系ガスとは、アンモニア(NH3)のHのうち少なくとも1つをアルキル基等の炭化水素基で置換したアミンを含むガスである。図12(a)〜図12(f)に示すように、孤立電子対を有するNを含み、酸解離定数(以下、pKaともいう)が例えば5〜11程度であるアミンを、触媒として好適に用いることができる。酸解離定数(pKa)とは、酸の強さを定量的に表す指標のひとつであり、酸からHイオンが放出される解離反応における平衡定数Kaを負の常用対数で表したものである。アミン系ガスとしては、炭化水素基が環状となった環状アミン系ガスや、炭化水素基が鎖状となった鎖状アミン系ガスを用いることができる。
環状アミン系ガスとしては、図12(a)に示すように、例えば、ピリジン(C5H5N、pKa=5.67)ガス、アミノピリジン(C5H6N2、pKa=6.89)ガス、ピコリン(C6H7N、pKa=6.07)ガス、ルチジン(C7H9N、pKa=6.96)ガス、ピペラジン(C4H10N2、pKa=9.80)ガス、ピペリジン(C5H11N、pKa=11.12)ガス等を用いることができる。環状アミン系ガスは、CとNとの複数種類の元素からその環状構造が構成される複素環化合物(複素環式化合物)、すなわち、N含有複素環化合物であるともいえる。
鎖状アミン系ガスとしては、図12(b)〜図12(f)に示すように、例えば、トリエチルアミン((C2H5)3N、略称:TEA、pKa=10.7)ガス、ジエチルアミン((C2H5)2NH、略称:DEA、pKa=10.9)ガス、モノエチルアミン((C2H5)NH2、略称:MEA、pKa=10.6)ガス、トリメチルアミン((CH3)3N、略称:TMA、pKa=9.8)ガス、モノメチルアミン((CH3)NH2、略称:MMA、pKa=10.6)ガス等を用いることができる。
触媒として作用するアミン系ガスを、アミン系触媒、或いは、アミン系触媒ガスと称することもできる。触媒ガスとしては、上述のアミン系ガスの他、非アミン系ガス、例えば、アンモニア(NH3、pKa=9.2)ガス等も用いることができる。
なお、ここで例示した触媒は、後述する成膜処理において、分子構造の一部が分解する場合もある。このような、化学反応の前後でその一部が変化する物質は、厳密には「触媒」ではない。しかしながら、本明細書では、化学反応の過程でその一部が分解する場合であっても、大部分は分解せず、また、反応の速度を変化させ、実質的に触媒として作用する物質を、「触媒」と称することとしている。
ガス供給管232c,232dからは、不活性ガスとして、例えば、窒素(N2)ガスが、それぞれMFC241c,241d、バルブ243c,243d、ガス供給管232a,232b、ノズル249a,249b、バッファ室237を介して処理室201内へ供給される。
後述する成膜処理において、ガス供給管232aから上述の原料を供給する場合、主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、第1供給系としての原料供給系(プリカーサ供給系)が構成される。ノズル249aを原料供給系に含めて考えてもよい。原料供給系を原料ガス供給系と称することもできる。ガス供給管232aからハロシラン原料を供給する場合、原料供給系をハロシラン原料供給系、或いは、ハロシラン原料ガス供給系と称することもできる。また、ガス供給管232aからアミノシラン原料を供給する場合、原料供給系をアミノシラン原料供給系、或いは、アミノシラン原料ガス供給系と称することもできる。
また、後述する成膜処理において、ガス供給管232bから上述の反応体を供給する場合、主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、第2供給系としての反応体供給系(リアクタント供給系)が構成される。ノズル249b、バッファ室237を反応体供給系に含めて考えてもよい。反応体供給系を反応ガス供給系と称することもできる。ガス供給管232bから酸化剤を供給する場合、反応体供給系を酸化剤供給系、酸化ガス供給系、或いは、O含有ガス供給系と称することもできる。
また、後述する成膜処理において、ガス供給管232a,232bから上述の触媒を供給する場合、主に、ガス供給管232a,232b、MFC241a,241b、バルブ243a,243bにより、第3供給系としての触媒供給系が構成される。ノズル249a,249b、バッファ室237を触媒供給系に含めて考えてもよい。触媒供給系を触媒ガス供給系と称することもできる。ガス供給管232a,232bからアミン系ガスを供給する場合、触媒供給系をアミン系触媒供給系、アミン供給系、或いは、アミン系ガス供給系と称することもできる。
また、主に、ガス供給管232c,232d、MFC241c,241d、バルブ243c,243dにより、不活性ガス供給系が構成される。
バッファ室237内には、図2に示すように、導電体からなり、細長い構造を有する2本の棒状電極269,270が、反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の配列方向に沿って配設されている。棒状電極269,270のそれぞれは、ノズル249bと平行に設けられている。棒状電極269,270のそれぞれは、上部より下部にわたって電極保護管275により覆われることで保護されている。棒状電極269,270のいずれか一方は、整合器272を介して高周波電源273に接続され、他方は、基準電位であるアースに接続されている。高周波電源273から棒状電極269,270間に高周波(RF)電力を印加することで、棒状電極269,270間のプラズマ生成領域224にプラズマが生成される。主に、棒状電極269,270、電極保護管275によりプラズマ発生器(プラズマ発生部)としてのプラズマ源が構成される。整合器272、高周波電源273をプラズマ源に含めて考えてもよい。プラズマ源は、後述するように、ガスをプラズマ励起、すなわち、プラズマ状態に励起(活性化)させるプラズマ励起部(活性化機構)として機能する。
電極保護管275は、棒状電極269,270のそれぞれをバッファ室237内の雰囲気と隔離した状態でバッファ室237内へ挿入できる構造となっている。電極保護管275の内部のO濃度が外気(大気)のO濃度と同程度であると、電極保護管275内へそれぞれ挿入された棒状電極269,270は、ヒータ207による熱で酸化されてしまう。電極保護管275の内部にN2ガス等の不活性ガスを充填しておくか、不活性ガスパージ機構を用いて電極保護管275の内部をN2ガス等の不活性ガスでパージすることで、電極保護管275の内部のO濃度を低減させ、棒状電極269,270の酸化を防止することができる。
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および排気バルブ(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されているバルブである。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。排気管231は、反応管203に設ける場合に限らず、ノズル249a,249bと同様にマニホールド209に設けてもよい。
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。ボートエレベータ115は、ボート217すなわちウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。また、マニホールド209の下方には、ボートエレベータ115によりシールキャップ219を降下させている間、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25〜200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる断熱板218が多段に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。但し、本実施形態はこのような形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料からなる筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、ノズル249a,249bと同様にL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する成膜処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する成膜処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
I/Oポート121dは、上述のMFC241a〜241d、バルブ243a〜243d、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s、整合器272、高周波電源273等に接続されている。
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a〜241dによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a〜243dの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作、整合器272によるインピーダンス調整動作、高周波電源273の電力供給等を制御するように構成されている。
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
(2)基板処理
上述の基板処理装置を用い、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に、第1層と第2層とが積層されてなる膜を形成するシーケンス例について、図4を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
図4に示す成膜シーケンスでは、
原料としてのHCDSガスおよび反応体としてのH2Oガスがそれぞれ単独で存在した場合にいずれの物質も熱分解しない第1温度下で、基板としてのウエハ200に対してHCDSガスを供給するステップと、ウエハ200に対してH2Oガスを供給するステップと、を非同時に行う第1サイクルを所定回数(m回)実施し、第1層として、SiおよびOを含むシリコン酸化層(SiO層)を形成する第1層形成ステップと、
第1温度とは異なる温度であってHCDSガスおよびH2Oガスがそれぞれ単独で存在した場合にいずれの物質も熱分解しない第2温度下で、ウエハ200に対してHCDSガスを供給するステップと、ウエハ200に対してH2Oガスを供給するステップと、を非同時に行う第2サイクルを所定回数(n回)実施し、第2層として、SiおよびOを含むシリコン酸化層(SiO層)を形成する第2層形成ステップと、
を行うことで、ウエハ200上に、第1層と第2層とが積層されてなる膜として、SiおよびOを含むシリコン酸化膜(SiO膜)を形成する。
上記において、m,nはそれぞれ1以上の整数である。図4に示す成膜シーケンスは、第1層形成ステップにおいて第1サイクルを1回実施(m=1)し、第2層形成ステップにおいて第2サイクルを2回実施(n=2)する例を示している。
また、図4に示す成膜シーケンスは、第1層形成ステップ、第2層形成ステップにおいて、それぞれ、ウエハ200に対して触媒としてピリジンガスを供給するステップを有する例を示している。具体的には、第1サイクル、第2サイクルにおいて、それぞれ、ウエハ200に対してHCDSガスおよびピリジンガスを供給するステップと、ウエハ200に対してH2Oガスおよびピリジンガスを供給するステップと、を非同時に行う例を示している。
また、図4に示す成膜シーケンスは、第1層形成ステップと第2層形成ステップとの間に、ウエハ200の温度を第1温度から第2温度へ変更する温度変更ステップを実施する例を示している。
本明細書では、図4に示す成膜処理のシーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例や他の実施形態の説明においても、同様の表記を用いることとする。
(HCDS+ピリジン→H2O+ピリジン)×m→温度変更→(HCDS+ピリジン→H2O+ピリジン)×n ⇒ SiO
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合、すなわち、表面に形成された所定の層や膜等を含めてウエハと称する場合がある。また、本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面、すなわち、積層体としてのウエハの最表面」を意味する場合がある。
従って、本明細書において「ウエハに対して所定のガスを供給する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)に対して所定のガスを直接供給する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等に対して、すなわち、積層体としてのウエハの最表面に対して所定のガスを供給する」ことを意味する場合がある。また、本明細書において「ウエハ上に所定の層(または膜)を形成する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)上に所定の層(または膜)を直接形成する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等の上、すなわち、積層体としてのウエハの最表面の上に所定の層(または膜)を形成する」ことを意味する場合がある。
また、本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
(搬入ステップ)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
(圧力・温度調整ステップ)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内のウエハ200が所望の温度(後述する第1温度)となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。また、回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転を開始する。回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転は、少なくとも、ウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
(第1層形成ステップ)
その後、次の2つのステップ、すなわち、ステップ1a,1bを順次実施する。
[ステップ1a]
このステップでは、処理室201内のウエハ200に対してHCDSガスとピリジンガスとを供給する。
バルブ243a,243bを開き、ガス供給管232a内へHCDSガスを、ガス供給管232b内へピリジンガスをそれぞれ流す。HCDSガス、ピリジンガスは、それぞれ、MFC241a,241bにより流量調整され、ノズル249a,249b、バッファ室237を介して処理室201内へ供給され、処理室201内へ供給された後に混合(Post−mix)し、排気管231から排気される。このとき同時にバルブ243c,243dを開き、ガス供給管232c,232d内へN2ガスを流す。ガス供給管232c,232d内を流れたN2ガスは、それぞれ、MFC241c,241dにより流量調整され、HCDSガス、ピリジンガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
このとき、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば1〜3000Pa、好ましくは133〜2666Paの範囲内の圧力とする。MFC241aで制御するHCDSガスの供給流量は、例えば1〜2000sccm、好ましくは10〜1000sccmの範囲内の流量とする。MFC241bで制御するピリジンガスの供給流量は、例えば1〜2000sccm、好ましくは10〜1000sccmの範囲内の流量とする。MFC241c,241dで制御するN2ガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。HCDSガスおよびピリジンガスをウエハ200に対して供給する時間、すなわち、ガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜100秒、好ましくは5〜60秒の範囲内の時間とする。
このとき、ヒータ207の温度は、処理室201内の温度が、例えば0℃以上150℃以下、好ましくは室温(25℃)以上100℃以下、より好ましくは40℃以上90℃以下の範囲内の温度(第1温度)となるような温度に設定する。この温度帯は、処理室201内にHCDSガスおよびH2Oガスがそれぞれ単独で存在した場合にいずれの物質も熱分解しない温度である。
HCDSガス供給時にピリジンガスを供給しない場合、ウエハ200の温度が350℃未満となるとウエハ200上にHCDSが化学吸着しにくくなり、実用的な成膜レートが得られなくなることがある。HCDSガスと一緒にピリジンガスを供給することで、ウエハ200の温度を150℃以下としても、ウエハ200上にHCDSを充分に化学吸着させ、実用的な成膜レートを得ることが可能となる。ピリジンガスの存在下において、ウエハ200の温度を100℃以下、さらには90℃以下とすることで、ウエハ200に加わる熱量を低減することができ、ウエハ200の受ける熱履歴の制御を良好に行うことができる。ピリジンガスの存在下では、ウエハ200の温度が0℃以上であれば、ウエハ200上にHCDSを化学吸着させることができ、成膜処理を進行させることが可能となる。
ウエハ200の温度を0℃未満とするには、処理室201内をこの温度に冷却するために大がかりな冷却機構を設ける必要が生じ、基板処理装置の製造コストの上昇や、温度制御の複雑化等を招いてしまう場合がある。ウエハ200の温度を0℃以上とすることで、これを解決することが可能となる。ウエハ200の温度を室温以上、好ましくは40℃以上とすることで、処理室201内を冷却するための冷却機構を設ける必要がなくなり、基板処理装置の製造コストを低減させ、温度制御を簡素化させることが可能となる。
よって、ウエハ200の温度は、0℃以上150℃以下、好ましくは室温以上100℃以下、より好ましくは40℃以上90℃以下の範囲内の温度とするのがよい。本実施形態では、ウエハ200の温度(第1温度)を一例として75℃に設定するようにしている。
上述の条件下でウエハ200に対してHCDSガスを供給することにより、ウエハ200(表面の下地膜)上に、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのClを含むSi含有層が形成される。Clを含むSi含有層は、Clを含むSi層であってもよいし、HCDSの吸着層であってもよいし、その両方を含んでいてもよい。なお、本明細書では、Clを含むSi含有層を、便宜上、単に、Si含有層とも称する。
Clを含むSi層とは、Siにより構成されClを含む連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできるClを含むSi薄膜をも含む総称である。Siにより構成されClを含む連続的な層を、Clを含むSi薄膜という場合もある。Clを含むSi層を構成するSiは、Clとの結合が完全に切れているものも含む。
HCDSの吸着層は、HCDS分子で構成される連続的な吸着層の他、不連続な吸着層をも含む。すなわち、HCDSの吸着層は、HCDS分子で構成される1分子層もしくは1分子層未満の厚さの吸着層を含む。HCDSの吸着層を構成するHCDS分子は、図8(a)に化学構造式を示すものだけでなく、SiとClとの結合が一部切れたものも含む。すなわち、HCDSの吸着層は、HCDSの物理吸着層であってもよいし、HCDSの化学吸着層であってもよいし、その両方を含んでいてもよい。
ここで、1原子層未満の厚さの層とは不連続に形成される原子層のことを意味しており、1原子層の厚さの層とは連続的に形成される原子層のことを意味している。1分子層未満の厚さの層とは不連続に形成される分子層のことを意味しており、1分子層の厚さの層とは連続的に形成される分子層のことを意味している。Si含有層は、Clを含むSi層とHCDSの吸着層との両方を含み得る。但し、上述の通り、Clを含むSi含有層については「1原子層」、「数原子層」等の表現を用いることとする。
ウエハ200上に形成されるSi含有層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップ1bでの酸化の作用がSi含有層の全体に届かなくなる。また、ウエハ200上に形成可能なSi含有層の厚さの最小値は1原子層未満である。よって、Si含有層の厚さは1原子層未満から数原子層程度とするのが好ましい。Si含有層の厚さを1原子層以下、すなわち、1原子層または1原子層未満とすることで、後述するステップ1bでの酸化の作用を相対的に高めることができ、ステップ1bでの酸化に要する時間を短縮することもできる。ステップ1aでのSi含有層の形成に要する時間を短縮することもできる。結果として、1サイクルあたりの処理時間を短縮することができ、トータルでの処理時間を短縮することも可能となる。すなわち、成膜レートを高くすることも可能となる。また、Si含有層の厚さを1原子層以下とすることで、膜厚均一性の制御性を高めることも可能となる。
HCDSガスが自己分解(熱分解)する条件下、すなわち、HCDSの熱分解反応が生じる条件下では、ウエハ200上にSiが堆積することでClを含むSi層が形成される。HCDSガスが自己分解(熱分解)しない条件下、すなわち、HCDSの熱分解反応が生じない条件下では、ウエハ200上にHCDSが吸着することでHCDSの吸着層が形成される。ウエハ200上にHCDSの吸着層を形成するよりも、ウエハ200上にClを含むSi層を形成する方が、成膜レートを高くすることができ、好ましい。但し、本実施形態では、ウエハ200の温度を例えば150℃以下の低温としているので、ウエハ200上へは、Clを含むSi層ではなく、HCDSの吸着層の方が形成されやすくなる。なお、HCDSガスと一緒にピリジンガスを供給しない場合には、HCDSの吸着層は、HCDSの化学吸着層ではなく、HCDSの物理吸着層によって構成されやすくなる。
ピリジンガスは、ウエハ200の表面に存在するO−H結合の結合力を弱め、HCDS分子からのClの脱離を促し、HCDS分子の化学吸着によるSi含有層の形成を促進させる触媒ガス(第1触媒ガス)として作用する。例えば、ピリジンガスは、ウエハ200の表面に存在するO−H結合に作用し、その結合力を弱めるように作用する。結合力の弱まったHと、HCDSガスのClと、が反応することで、Cl、Hを含むガス状物質が生成され、ウエハ200の表面からHが脱離すると共に、HCDS分子からClが脱離することとなる。Clを失ったHCDS分子(ハロゲン化物)は、ウエハ200等の表面に化学吸着する。これにより、ウエハ200上にHCDSの化学吸着層が形成されることとなる。
ピリジンガスの触媒作用により、ウエハ200の表面に存在するO−H結合の結合力が弱まるのは、ピリジン分子中の孤立電子対を有するNが、Hを引きつけるように作用するためである。pKaが大きい化合物は、Hを引き付ける力が強くなる。pKaが5以上の化合物を触媒ガスとして用いることで、HCDS分子からのClの脱離を促し、化学吸着によるSi含有層の形成を促進させることが可能となる。但し、pKaが過度に大きな化合物を触媒ガスとして用いると、HCDS分子から引き抜かれたClと触媒ガスとが反応し、これにより、塩化アンモニウム(NH4Cl)等の塩(パーティクル源)が発生する場合がある。そのため、pKaが例えば11以下、好ましくは7以下である化合物を触媒ガスとして用いるのが好ましい。ピリジンガスは、pKaが約5.67と比較的大きく、また、7以下であることから、触媒ガスとして好適に用いることが可能である。
Si含有層が形成された後、バルブ243a,243bを閉じ、処理室201内へのHCDSガス、ピリジンガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244を開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくはSi含有層の形成に寄与した後のHCDSガス、ピリジンガス、反応副生成物等を処理室201内から排除する。また、バルブ243c,243dは開いたままとして、処理室201内へのN2ガスの供給を維持する。N2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留する未反応もしくはSi含有層の形成に寄与した後のガス等を処理室201内から排除する効果を高めることができる。
このとき、処理室201内に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、処理室201内を完全にパージしなくてもよい。処理室201内に残留するガスが微量であれば、その後に行われるステップ1bにおいて悪影響が生じることはない。このとき処理室201内へ供給するN2ガスの流量も大流量とする必要はなく、例えば、反応管203(処理室201)の容積と同程度の量を供給することで、ステップ1bにおいて悪影響が生じない程度のパージを行うことができる。このように、処理室201内を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、スループットを向上させることができる。また、N2ガスの消費も必要最小限に抑えることが可能となる。
原料としては、HCDSガスの他、例えば、OCTSガス等の無機系のハロシラン原料ガスを用いることができる。また、原料としては、BTCSEガス、BTCSMガス、TCDMDSガス、DCTMDSガス、MCPMDSガス等の有機系のハロシラン原料ガスを用いることもできる。また、原料としては、BTBASガス、4DMASガス、3DMASガス、BDEASガス等のアミノシラン原料ガスを好適に用いることもできる。
触媒(第1触媒ガス)としては、ピリジンガスの他、例えば、アミノピリジンガス、ピコリンガス、ルチジンガス、ピペラジンガス、ピペリジンガス等の環状アミン系ガスや、TEAガス、DEAガス、MEAガス、TMAガス、MMAガス等の鎖状アミン系ガスや、NH3ガス等の非アミン系ガスを用いることができる。
不活性ガスとしては、N2ガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いることができる。
[ステップ1b]
ウエハ200上にSi含有層が形成された後、処理室201内のウエハ200に対してH2Oガスとピリジンガスとを供給する。
このステップでは、バルブ243a〜243dの開閉制御を、ステップ1aにおけるバルブ243a〜243dの開閉制御と同様の手順で行う。H2Oガス、ピリジンガスは、それぞれ、MFC241b,241aにより流量調整され、ノズル249b,249a、バッファ室237を介して処理室201内へ供給され、処理室201内へ供給された後に混合(Post−mix)し、排気管231から排気される。
このとき、MFC241bで制御するH2Oガスの供給流量は、例えば10〜10000sccm、好ましくは100〜1000sccmの範囲内の流量とする。MFC241aで制御するピリジンガスの供給流量は、例えば1〜2000sccm、好ましくは10〜1000sccmの範囲内の流量とする。H2Oガスおよびピリジンガスをウエハ200に対して供給する時間、すなわち、ガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜100秒、好ましくは5〜60秒の範囲内の時間とする。その他の処理条件は、例えば、ステップ1aと同様な処理条件とする。なお、ステップ1bで供給するピリジンガスの量と、ステップ1aで供給するピリジンガスの量とは、それぞれ独立に調整することが可能である。例えば、ステップ1a,1bにおけるピリジンガスの供給量は、同一としてもよく、異ならせてもよい。
上述の条件下でウエハ200に対してH2Oガスを供給することで、ステップ1aでウエハ200上に形成されたSi含有層(Clを含むSi含有層)の少なくとも一部が酸化(改質)される。Si含有層が改質されることで、SiおよびOを含む層、すなわち、シリコン酸化層(SiO層)が形成されることとなる。SiO層を形成する際、Si含有層に含まれていたCl等の不純物は、H2Oガスによる改質反応の過程において、少なくともClを含むガス状物質を構成し、処理室201内から排出される。すなわち、Si含有層中のCl等の不純物は、Si含有層中から引き抜かれたり、脱離したりすることで、Si含有層から分離する。これにより、ステップ1bで形成されるSiO層は、ステップ1aで形成されたSi含有層に比べてCl等の不純物が少ない層となる。
ピリジンガスは、H2Oガスが有するO−H結合の結合力を弱め、H2Oガスの分解を促し、H2OガスとSi含有層との反応によるSiO層の形成を促進させる触媒ガス(第2触媒ガス)として作用する。例えば、ピリジンガスは、H2Oガスの有するO−H結合に作用し、その結合力を弱めるように作用する。結合力の弱まったHと、ウエハ200上に形成されたSi含有層が有するClと、が反応することで、HCl等のCl、Hを含むガス状物質が生成され、H2O分子からHが脱離すると共に、Si含有層からClが脱離することとなる。Hを失ったH2OガスのOは、Clが脱離したSi含有層のSiと結合する。これにより、ウエハ200上に、酸化されたSi含有層、すなわち、SiO層が形成されることとなる。
ピリジンガスの触媒作用により、H2Oガスが有するO−H結合の結合力が弱まるのは、ピリジン分子中の孤立電子対を有するNが、Hを引きつけるように作用するためである。上述したように、pKaが大きい化合物は、Hを引き付ける力が強くなる。pKaが5以上の化合物を触媒ガスとして用いることで、H2Oガスが有するO−H結合の結合力を適正に弱めることができ、上述の酸化反応を促進させることが可能となる。但し、pKaが過度に大きな化合物を触媒ガスとして用いると、Si含有層から引き抜かれたClと触媒ガスとが反応してNH4Cl等の塩が発生する場合がある。そのため、pKaが例えば11以下、好ましくは7以下である化合物を触媒ガスとして用いるのが好ましい。ピリジンガスは、pKaが約5.67と比較的大きく、また、7以下であることから、触媒ガスとして好適に用いることが可能である。この点は、ステップ1aと同様である。
SiO層が形成された後、バルブ243b,243aを閉じ、処理室201内へのH2Oガス、ピリジンガスの供給をそれぞれ停止する。そして、ステップ1aと同様の処理手順により、処理室201内に残留する未反応もしくはSiO層の形成に寄与した後のH2Oガス、ピリジンガス、反応副生成物等を処理室201内から排除する。このとき、処理室201内に残留するガス等を完全に排除しなくてもよい点は、ステップ1aと同様である。
反応体としては、H2Oガスの他、例えば、過酸化水素(H2O2)ガス等のO−H結合を含むO含有ガス、すなわち、ヒドロキシ基(OH基)を含むガスを用いることができる。また、反応体としては、O−H結合非含有のO含有ガス、例えば、酸素(O2)ガス、オゾン(O3)ガス、水素(H2)ガス+O2ガス、H2ガス+O3ガス等を用いることもできる。
触媒(第2触媒ガス)としては、ピリジンガスの他、例えば、上述の各種のアミン系ガスや、非アミン系ガスを用いることができる。すなわち、ステップ1bで用いる第2触媒ガスとしては、ステップ1aで用いる第1触媒ガスと同一の分子構造(化学構造)を有するガス、すなわち、マテリアルの等しいガスを用いることができる。また、ステップ1bで用いる第2触媒ガスとしては、ステップ1aで用いる第1触媒ガスと異なる分子構造を有するガス、すなわち、マテリアルの異なるガスを用いることもできる。
不活性ガスとしては、N2ガスの他、例えば、上述の各種希ガスを用いることができる。
[所定回数実施]
上述したステップ1a,1bを非同時に、同期させることなく行う第1サイクルを所定回数(m回)、すなわち、1回以上実施する。これにより、ウエハ200上に、第1層として、所定組成および所定厚さのSiO層を形成することができる。
第1サイクルを1回実施することで形成されるSiO層の厚さ、すなわち、第1層形成ステップのサイクルレートは、変更不可能なものではなく、特定の手法によって微調整することが可能である。例えば、第1層形成ステップのサイクルレートは、第1層形成ステップの処理条件のうち、温度条件を適正に選択することによって精密に制御することが可能である。これは、発明者等が鋭意研究により初めて明らかにした知見である。発明者等は、例えば、第1層形成ステップを実施する際におけるウエハ200の温度(第1温度)を75℃とし、他の処理条件を上述の処理条件範囲内の所定の条件とすることで、第1層形成ステップのサイクルレートを2.0Å(0.2nm)とする精密な厚さ制御を行うことが可能であることを確認している。図4は、第1温度を75℃とした上述の処理条件下で第1サイクルを1回実施することで第1層を形成する例、すなわち、第1層として2.0Åの厚さのSiO層を形成する例を示している。
(温度変更ステップ)
ウエハ200上への第1層(SiO層)の形成が完了したら、ヒータ207の出力を調整し、ウエハ200の温度を、上述の第1温度(75℃)とは異なる第2温度へと変化させる。
第2温度は、第1層形成ステップで述べた理由と同様の理由から、例えば0℃以上150℃以下、好ましくは室温以上100℃以下、より好ましくは40℃以上90℃以下の範囲内の温度とする。この温度帯は、上述したように、処理室201内にHCDSガスおよびH2Oガスがそれぞれ単独で存在した場合にいずれの物質も熱分解しない温度である。
また、第1温度と第2温度との差は、例えば5℃以上50℃以下、好ましくは5℃以上30℃以下、より好ましくは10℃以上20℃以下とする。
第1温度と第2温度との差が50℃を超えると、上述の第1層と後述する第2層とで膜質の差が大きくなり、最終的に形成するSiO膜の特性が積層方向において不統一となる場合がある。また、温度変更ステップの所要時間、すなわち、ウエハ200の温度が第2温度に到達して安定するまでの待機時間が長くなり、基板処理の生産性が低下しやすくなる。第1温度と第2温度との差を50℃以下とすることで、第1層と第2層とで膜質を均一化させ、最終的に形成するSiO膜の特性を積層方向において統一させることが可能となる。また、上述の待機時間を短縮させ、基板処理の生産性を向上させることも可能となる。第1温度と第2温度との差を30℃以下とすることで、第1層と第2層とで膜質を充分に均一化させ、また、上述の待機時間を充分に短縮させることが可能となる。第1温度と第2温度との差を20℃以下とすることで、第1層と第2層とで膜質をさらに均一化させ、また、上述の待機時間をさらに短縮させることが可能となる。
第1温度と第2温度との差が5℃未満となると、上述の第1サイクルを1回実施することで形成されるSiO層の厚さ(第1層形成ステップにおけるサイクルレート)と、後述する第2サイクルを1回実施することで形成されるSiO層の厚さ(第2層形成ステップにおけるサイクルレート)と、の差が小さくなり過ぎ、最終的に形成されるSiO膜の膜厚制御性向上の効果が得られ難くなる。第1温度と第2温度との差を5℃以上とすることで、これを解決することが可能となる。第1温度と第2温度との差を10℃以上とすることで、上述のサイクルレートの差を充分に確保することができ、最終的に形成されるSiO膜の膜厚制御性を確実に向上させることが可能となる。
よって、第1温度と第2温度との差は、5℃以上50℃以下、好ましくは5℃以上30℃以下、より好ましくは10℃以上20℃以下とするのがよい。本実施形態では、一例として、第1温度と第2温度との差を15℃とし、第2温度を90℃に設定している。
(第2層形成ステップ)
ウエハ200の温度が第2温度に到達して安定したら、第2層形成ステップを実施する。
このステップでは、処理室201内のウエハ200に対してHCDSガスとピリジンガスとを供給するステップ2aと、処理室201内のウエハ200に対してH2Oガスとピリジンガスとを供給するステップ2bと、を順次実施する。ステップ2a,2bの処理手順および処理条件は、ウエハ200の温度を除き、ステップ1a,1bの処理手順および処理条件と同様とする。ステップ2a,2bを非同時に、同期させることなく行う第2サイクルを所定回数(n回)、すなわち、1回以上実施することで、第1層上に、第2層として、所定組成および所定厚さのSiO層を形成することができる。第2層の組成は、第1層の組成と同様となる。但し、第2層の組成は、第1層の組成と異ならせてもよい。
第2サイクルを1回実施することで形成されるSiO層の厚さ、すなわち、第2層形成ステップのサイクルレートは、第1層形成ステップのサイクルレートと同様、第2層形成ステップの処理条件のうち、温度条件を適正に選択することによって精密に制御することが可能である。そのため、本実施形態のように、第2層形成ステップにおけるウエハ200の温度(第2温度)を、第1層形成ステップにおけるウエハ200の温度(第1温度)と異ならせることで、第2層形成ステップのサイクルレートと、第1層形成ステップのサイクルレートと、を異ならせることが可能となる。例えば、第2温度を第1温度よりも高い温度(第2温度>第1温度)とすることで、第2層形成ステップのサイクルレートを、第1層形成ステップのサイクルレートよりも小さくすることが可能となる。また、第2温度を第1温度よりも低い温度(第2温度<第1温度)とすることで、第2層形成ステップのサイクルレートを、第1層形成ステップのサイクルレートよりも大きくすることも可能となる。
本実施形態では、第2温度を第1温度(75℃)よりも高い90℃とすることで、第2層形成ステップのサイクルレートを、第1層形成ステップのサイクルレート(2.0Å)よりも小さな1.5Å(0.15nm)とするように制御する。図4は、第2温度を90℃とした上述の処理条件下で第2サイクルを2回実施することで第2層を形成する例、すなわち、第2層として3.0Å(=1.5Å×2)の厚さのSiO層を形成する例を示している。
このように、第1層形成ステップ、温度変更ステップ、第2層形成ステップを順次実施することで、ウエハ200上に、第1層と第2層とが積層されてなるSiO膜が形成されることとなる。第1層と第2層とが積層されてなるSiO膜は、積層方向において統一された特性を有する膜、すなわち、第1層と第2層との間に界面が存在せず、膜全体として一体不可分な特性を有する膜となる。厚さ2.0Åの第1層と、厚さ3.0Åの第2層と、が積層されてなるSiO膜の膜厚は5.0Åになる。
(大気圧復帰ステップ)
ウエハ200上へのSiO膜の形成が完了したら、バルブ243c,243dを開き、ガス供給管232c,232dのそれぞれからN2ガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。N2ガスはパージガスとして作用する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(パージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
(搬出ステップ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、マニホールド209の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ヒータ207の出力は、ボートアンロードを開始する前に低下(或いは停止)させることが好ましい。この場合、ヒータ207や反応管203等の降温は、ボートアンロードと並行して行われることとなる。これにより、処理室201内の温度を速やかに低下させ(第1温度に近づけ)、次の成膜処理を迅速に開始することが可能となる。但し、ヒータ207の出力低下(或いは停止)は、ボートアンロードの完了後に開始してもよい。
ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出されることとなる(ウエハディスチャージ)。なお、ウエハディスチャージの後は、処理室201内へ空のボート217を搬入するようにしてもよい。
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
(a)本実施形態によれば、第1層形成ステップにおけるサイクルレートと、第2層形成ステップにおけるサイクルレートと、を上述のように異ならせるようにしている。これにより、最終的に形成されるSiO膜の膜厚制御性を向上させることが可能となる。
というのも、本実施形態により形成されるSiO膜の膜厚(5.0Å)は、第1層形成ステップのサイクルレート(2.0Å)の整数倍とは異なり、また、第2層形成ステップのサイクルレート(1.5Å)の整数倍とも異なっている。つまり、本実施形態により形成されるSiO膜の膜厚は、第1層形成ステップの処理条件下で第1サイクルを繰り返し実施することでは実現不可能な膜厚であり、また、第2層形成ステップの処理条件下で第2サイクルを繰り返し実施することでは実現不可能な膜厚であるといえる。
このように、本実施形態によれば、サイクルの繰り返し回数を調整するだけでは実現不可能な、極めて精密な膜厚制御を行うことが可能となる。このような精密な膜厚制御は、例えば1.5〜10Å、さらには2.5〜5Åの極めて薄い膜を形成する際に、特に重要な意義を有するといえる。
(b)本実施形態によれば、第1温度と第2温度とを異ならせることで、サイクルレートを上述のように制御するようにしている。これにより、SiO膜の面内膜厚均一性を低下させることなく、膜厚制御性を向上させることが可能となる。
というのも、HCDSガスとH2Oガスとを交互に供給することで成膜処理を行う際、HCDSガスやH2Oガスの供給量(供給時間や供給流量)を変化させることでサイクルレートを制御することも、膜厚制御方法の一例として考えられる。しかしながら、HCDSガスやH2Oガスの供給量を変化させると、ウエハ200上に形成されるSiO膜の面内膜厚均一性が低下してしまう場合があることを、発明者等は鋭意研究により明らかとした。発明者等は、HCDSガスの供給量を過剰に減らすと、ウエハ200の中心部と周縁部とでHCDSガスの供給量に差異が生じ、SiO膜の面内膜厚均一性低下を招いてしまう場合があることを確認している。また発明者等は、H2Oガスの供給量を過剰に増やすと、ウエハ200表面等におけるH2Oの吸着量が増加することで、SiO膜の面内膜厚均一性低下を招いてしまう場合があることも確認している。
これに対し、本実施形態によれば、第1サイクルあたりのウエハ200に対するHCDSガスの供給量と、第2サイクルあたりのウエハ200に対するHCDSガスの供給量と、を同一としても、温度条件を適切に選択することで、サイクルレートを上述のように制御することが可能となる。また、第1サイクルあたりのウエハ200に対するH2Oガスの供給量と、第2サイクルあたりのウエハ200に対するH2Oガスの供給量と、を同一としても、温度条件を適切に選択することで、サイクルレートを上述のように制御することが可能となる。すなわち、本実施形態によれば、SiO膜の面内膜厚均一性を低下させることなく、膜厚制御性を向上させることが可能となるのである。また、本実施形態によれば、HCDSガスやH2Oガスの流量制御や供給時間制御を簡素化させ、膜厚制御の再現性を高め、信頼性を向上させることも可能となる。
なお、本実施形態では、第1サイクルあたりのHCDSガスの供給流量と、第2サイクルあたりのHCDSガスの供給流量と、を同一とし、また、第1サイクルあたりのHCDSガスの供給時間と、第2サイクルあたりのHCDSガスの供給時間と、を同一とする例を示している。また、本実施形態では、第1サイクルあたりのH2Oガスの供給流量と、第2サイクルあたりのH2Oガスの供給流量と、を同一とし、また、第1サイクルあたりのH2Oガスの供給時間と、第2サイクルあたりのH2Oガスの供給時間と、を同一とする例を示している。
(c)第1層のマテリアルと、第2層のマテリアルとは、ともにSiOであって同一である。また、第1層の化学構造(分子構造、化学組成)と、第2層の化学構造(分子構造、化学組成)とは、同一である。本実施形態の成膜シーケンスは、膜質に対する温度依存性が比較的小さいことから、ウエハ200上に、膜厚方向にわたり均一な膜質を有する良質なSiO膜を形成することができる。
(d)一般的に、基板処理装置の昇温降温特性を考えると、昇温の所要時間は、降温の所要時間に比べて圧倒的に短時間となる。そのため、第2温度を第1温度よりも高い温度とする(成膜処理の途中で昇温を行う)本実施形態では、第1温度を第2温度よりも高い温度とする(成膜処理の途中で降温を行う)場合に比べ、温度変更ステップの所要時間、すなわち、成膜処理全体の所要時間を大幅に短縮させることが可能となる。結果として、本実施形態では、第1温度を第2温度よりも高い温度とする場合に比べ、成膜処理のスループットを高め、生産性を向上させることが可能となる。
(e)上述の効果は、成膜処理を行う際に、原料としてHCDSガス以外のガスを用いる場合や、反応体としてH2Oガス以外のガスを用いる場合や、触媒としてピリジンガス以外のガスを用いる場合にも、同様に得ることができる。
(4)変形例
本実施形態における基板処理のシーケンスは、図4に示す態様に限定されず、以下に示す変形例のように変更することができる。
(変形例1)
図4に示す成膜シーケンスは、第2温度を第1温度よりも高い温度(第2温度>第1温度)とすることで、第2層形成ステップのサイクルレートを、第1層形成ステップのサイクルレートよりも小さくしていた。しかしながら、本実施形態はこのような態様に限定されない。
例えば、図5に示すように、第2温度を第1温度よりも低い温度(第2温度<第1温度)とすることで、第2層形成ステップのサイクルレートを、第1層形成ステップのサイクルレートよりも大きくするようにしてもよい。図5に示す成膜シーケンスでは、ウエハ200の温度(第1温度)を90℃として第1サイクルを2回実施することで3Å(=1.5Å×2)の厚さの第1層(SiO層)を形成し、その後、ウエハ200の温度(第2温度)を75℃に変更して第2サイクルを1回実施することで2.0Åの厚さの第2層(SiO層)を形成するようにしている。
本変形例においても、図4に示す成膜シーケンスと同様の効果が得られる。なお、本変形例の場合、第1層の厚さ(3Å)を第2層の厚さ(2Å)以上の厚さとしている。また、第1サイクルの実施回数(2回)を第2サイクルの実施回数(1回)以上の回数としている。これらのことから、本変形例の第1層形成ステップを、SiO膜の本体部を形成するステップと考えることができ、本変形例の第2層形成ステップを、SiO膜の厚さを微調整するステップと考えることができる。
(変形例2)
図4に示す成膜シーケンスは、第1層形成ステップを実施した後に温度変更ステップを開始し、温度変更ステップが完了してから、すなわち、ウエハ200の温度が第2温度に到達して安定してから、第2層形成ステップを実施するようにしていた。しかしながら、本実施形態はこのような態様に限定されない。
例えば、図6に示すように、温度変更ステップを第1層形成ステップや第2層形成ステップと並行して実施するようにしてもよい。すなわち、ウエハ200の温度を変化させながら、第1層形成ステップや第2層形成ステップを実施するようにしてもよい。図6に示す成膜シーケンスは、第1層形成ステップの開始と同時にヒータ207の出力を小さく設定し(或いは停止し)、ウエハ200の温度を徐々に低下させつつ、第1層形成ステップおよび第2層形成ステップを順次実施する例を示している。また、ウエハ200の温度低下速度(降温レート)を所望の速度とするように制御してもよい。図7に示す成膜シーケンスは、第1層形成ステップを開始した後、処理の経過とともにヒータ207の設定出力を徐々に変化させることで降温レートを一定のレートとしつつ、第1層形成ステップおよび第2層形成ステップを順次実施する例を示している。
いずれの成膜シーケンスにおいても、ウエハ200の温度とサイクルレートとの関係を予め求めておき、その関係に基づいて設定温度や降温レート等を設定し、膜厚を調整するようにすればよい。また、いずれの成膜シーケンスにおいても、第1層形成ステップや第2層形成ステップをウエハ200の温度を変化させながら並行して実施することから、第1温度および第2温度を、それぞれ、所定の幅を有する温度帯(第1温度帯、第2温度帯)として捉えることができる。
本変形例においても、第1層形成ステップのサイクルレートと第2層形成ステップのサイクルレートとを異ならせることができ、図4に示す成膜シーケンスと同様の効果が得られる。
(変形例3)
図4に示す成膜シーケンスでは、成膜温度を2段階で変化させ、2段階のサイクルレートを用いて成膜処理を実施するようにしていた。しかしながら、成膜温度を3段階で変化させ、3段階のサイクルレートを用いて成膜処理を実施するようにしてもよい。本変形例においても、図4に示す成膜シーケンスと同様の効果が得られる。また、3段階のサイクルレートを利用して成膜処理を行うことで、最終的に形成されるSiO膜の膜厚制御性をさらに向上させることが可能となる。
(変形例4)
図4に示す成膜シーケンスでは、ピリジンガスを触媒として用い、ノンプラズマの低温条件下でSiO膜を形成するようにしていた。しかしながら、ピリジンガスのような触媒を用いず、プラズマを用いて低温条件下で成膜処理を行うようにしてもよい。この場合、以下に示すように、第1層形成ステップおよび第2層形成ステップでは、それぞれ、ウエハ200に対してBTBASガスを供給するステップと、ウエハ200に対してプラズマ励起させたO2ガス(O2 *)を供給するステップと、を非同時に行うサイクルを所定回数行うようにすればよい。
(BTBAS→O2 *)×m→温度変更→(BTBAS→O2 *)×n ⇒ SiO
ウエハ200に対してプラズマ励起させたO2ガスを供給するステップでは、MFC241bで制御するO2ガスの供給流量を、例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。棒状電極269,270間に印加する高周波電力(RF電力)は、例えば50〜1000Wの範囲内の電力とする。処理室201内の圧力は、例えば1〜500Pa、好ましくは1〜100Paの範囲内の圧力とする。他の処理手順、処理条件は、図4に示す成膜シーケンスの処理手順、処理条件と同様とする。本変形例においても、図4に示す成膜シーケンスと同様の効果が得られる。
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
例えば、上述の実施形態では、原料を供給した後に反応体を供給する例について説明した。しかしながら、本発明はこのような態様に限定されず、原料、反応体の供給順序は逆でもよい。すなわち、反応体を供給した後に原料を供給するようにしてもよい。供給順序を変えることにより、形成される膜の膜質や組成比を変化させることが可能となる。
また、上述の実施形態では、原料ガスとしてクロロシラン原料ガスを用いる例について説明した。本発明はこの態様に限定されず、クロロシラン原料ガス以外のハロシラン原料ガス、例えば、フルオロシラン原料ガスやブロモシラン原料ガス等を用いてもよい。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
上述の実施形態の手法により形成したシリコン系絶縁膜を、サイドウォールスペーサとして使用することにより、リーク電流が少なく、加工性に優れたデバイス形成技術を提供することが可能となる。また、上述のシリコン系絶縁膜を、エッチストッパーとして使用することにより、加工性に優れたデバイス形成技術を提供することが可能となる。また、一部の変形例を除き、プラズマを用いずにシリコン系絶縁膜を形成できることから、例えばDPTのSADP膜等、プラズマダメージを懸念する工程への適用も可能となる。
上述の実施形態等では、ウエハ200上にSiO膜を形成する例について説明した。本発明はこのような態様に限定されず、ウエハ200上に、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)、シリコン酸窒化膜(SiON膜)等のSi系酸化膜を形成する場合にも、好適に適用可能である。例えば、以下に示す成膜シーケンスにより、ウエハ200上にSiOC膜を形成する場合においても、本発明は好適に適用可能である。このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
(BTCSM+ピリジン→H2O+ピリジン)×m→温度変更→(BTCSM+ピリジン→H2O+ピリジン)×n ⇒ SiOC
(TCDMDS+ピリジン→H2O+ピリジン)×m→温度変更→(TCDMDS+ピリジン→H2O+ピリジン)×n ⇒ SiOC
また、本発明は、ウエハ200上に、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属元素を含む酸化膜、すなわち、金属系酸化膜を形成する場合においても、好適に適用可能である。すなわち、本発明は、ウエハ200上に、TiO膜、ZrO膜、HfO膜、TaO膜、NbO膜、AlO膜、MoO膜、WO膜を形成する場合にも、好適に適用することが可能となる。
例えば、原料ガスとして、チタニウムテトラクロライド(TiCl4)ガス、ハフニウムテトラクロライド(HfCl4)、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(Ti[N(CH3)2]4、略称:TDMAT)ガス、テトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム(Hf[N(C2H5)(CH3)]4、略称:TEMAH)ガス等を用い、以下に示す成膜シーケンスにより、ウエハ200上に、チタン酸化膜(TiO膜)、ハフニウム酸化膜(HfO膜)等を形成する場合においても、本発明は好適に適用可能である。
(TiCl4→H2O+ピリジン)×m→温度変更→(TiCl4→H2O+ピリジン)×n ⇒ TiO
(HfCl4→H2O+ピリジン)×m→温度変更→(HfCl4→H2O+ピリジン)×n ⇒ HfO
(TDMAT→O2 *)×m→温度変更→(TDMAT→O2 *)×n ⇒ TiO
(TEMAH→O2 *)×m→温度変更→(TEMAH→O2 *)×n ⇒ HfO
すなわち、本発明は、半導体元素や金属元素を含む酸化膜を低温条件下で形成する場合に、好適に適用することができる。成膜処理の処理手順、処理条件は、上述の実施形態や変形例の処理手順、処理条件と同様とすることができる。これらの場合においても、上述の実施形態や変形例と同様の効果が得られる。
基板処理に用いられるレシピ(処理手順や処理条件等が記載されたプログラム)は、処理内容(形成する膜の膜種、組成比、膜質、膜厚、処理手順、処理条件等)に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担(処理手順や処理条件等の入力負担等)を低減でき、操作ミスを回避しつつ、基板処理を迅速に開始できるようになる。
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
上述の実施形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の実施形態では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。これらの場合においても、処理手順、処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理手順、処理条件とすることができる。
例えば、図13に示す処理炉302を備えた基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、本発明は好適に適用できる。処理炉302は、処理室301を形成する処理容器303と、処理室301内へガスをシャワー状に供給するガス供給部としてのシャワーヘッド303sと、1枚または数枚のウエハ200を水平姿勢で支持する支持台317と、支持台317を下方から支持する回転軸355と、支持台317に設けられたヒータ307と、を備えている。シャワーヘッド303sのインレット(ガス導入口)には、ガス供給ポート332a,332bが接続されている。ガス供給ポート332aには、上述の実施形態の第1供給系、第3供給系と同様の供給系がそれぞれ接続されている。ガス供給ポート332bには、ガスをプラズマ励起させて供給する励起部としてのリモートプラズマユニット(プラズマ生成装置)339bと、上述の実施形態の第2供給系、第3供給系と同様の供給系がそれぞれ接続されている。シャワーヘッド303sのアウトレット(ガス排出口)には、処理室301内へガスをシャワー状に供給するガス分散板が設けられている。シャワーヘッド303sは、処理室301内へ搬入されたウエハ200の表面と対向(対面)する位置に設けられている。処理容器303には、処理室301内を排気する排気ポート331が設けられている。排気ポート331には、上述の実施形態の排気系と同様の排気系が接続されている。
また例えば、図14に示す処理炉402を備えた基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、本発明は好適に適用できる。処理炉402は、処理室401を形成する処理容器403と、1枚または数枚のウエハ200を水平姿勢で支持する支持台417と、支持台417を下方から支持する回転軸455と、処理容器403内のウエハ200に向けて光照射を行うランプヒータ407と、ランプヒータ407の光を透過させる石英窓403wと、を備えている。処理容器403には、ガス供給ポート432a,432bが接続されている。ガス供給ポート432aには、上述の実施形態の第1供給系、第3供給系と同様の供給系がそれぞれ接続されている。ガス供給ポート432bには、上述のリモートプラズマユニット339bと、上述の実施形態の第2供給系、第3供給系と同様の供給系がそれぞれ接続されている。ガス供給ポート432a,432bは、処理室401内へ搬入されたウエハ200の端部の側方、すなわち、処理室401内へ搬入されたウエハ200の表面と対向しない位置にそれぞれ設けられている。処理容器403には、処理室401内を排気する排気ポート431が設けられている。排気ポート431には、上述の実施形態の排気系と同様の排気系が接続されている。
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の実施形態や変形例と同様な処理手順、処理条件にて成膜処理を行うことができ、上述の実施形態や変形例と同様の効果が得られる。
また、上述の実施形態や変形例等は、適宜組み合わせて用いることができる。また、このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
(付記1)
本発明の一態様によれば、
原料および反応体がそれぞれ単独で存在した場合にいずれの物質も熱分解しない第1温度下で、基板に対して前記原料を供給する工程と、前記基板に対して前記反応体を供給する工程と、を非同時に行う第1サイクルを所定回数(m回)実施し、第1層を形成する工程と、
前記第1温度とは異なる温度であって前記原料および前記反応体がそれぞれ単独で存在した場合にいずれの物質も熱分解しない第2温度下で、前記基板に対して前記原料を供給する工程と、前記基板に対して前記反応体を供給する工程と、を非同時に行う第2サイクルを所定回数(n回)実施し、第2層を形成する工程と、
を行うことで、前記基板上に、前記第1層と前記第2層とが積層されてなる膜を形成する半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。
(付記2)
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
前記基板の温度を前記第1温度から前記第2温度へ変更(昇温又は降温)する工程をさらに有する。
(付記3)
付記1又は2に記載の方法であって、好ましくは、
前記第1層の厚さを前記第2層の厚さ以上の厚さとする。
(付記4)
付記1乃至3のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1サイクルの実施回数を前記第2サイクルの実施回数以上の回数とする。
(付記5)
付記1乃至4のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1層を形成する工程では前記膜の本体部を形成し、前記第2層を形成する工程では前記膜の厚さを微調整する。
(付記6)
付記1乃至5のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1温度と前記第2温度とを異ならせることで、前記第1層を形成する工程におけるサイクルレート(前記第1サイクルを1回実施することで形成される層の厚さ)と、前記第2層を形成する工程におけるサイクルレート(前記第2サイクルを1回実施することで形成される層の厚さ)と、を異ならせる。
(付記7)
付記1乃至6のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1サイクルあたりの前記基板に対する前記原料の供給量(供給時間、供給流量)と、前記第2サイクルあたりの前記基板に対する前記原料の供給量(供給時間、供給流量)と、を同一とする。
(付記8)
付記1乃至7のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1サイクルあたりの前記基板に対する前記反応体の供給量(供給時間、供給流量)と、前記第2サイクルあたりの前記基板に対する前記反応体の供給量(供給時間、供給流量)と、を同一とする。
(付記9)
付記1乃至8のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1温度と前記第2温度との差を5℃以上50℃以下(より好ましくは5℃以上30℃以下、さらに好ましくは10℃以上20℃以下)とする。
(付記10)
付記1乃至9のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記基板上に形成しようとする膜の厚さが、前記第1層を形成する工程におけるサイクルレートの整数倍とは異なる。
(付記11)
付記1乃至10のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記基板上に形成しようとする膜の厚さが、前記第2層を形成する工程におけるサイクルレートの整数倍とは異なる。
(付記12)
付記1乃至11のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記基板上に形成しようとする膜の厚さが、1.5Å以上10Å以下(より好ましくは2.5Å以上5Å以下)の範囲内の厚さである。
(付記13)
付記1乃至12のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1温度および前記第2温度を、それぞれ、0℃以上150℃以下(より好ましくは25℃以上100℃以下、さらに好ましくは40℃以上90℃以下)の範囲内の温度とする。
(付記14)
付記1乃至13のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1層のマテリアルと前記第2層のマテリアルとが同一である。より好ましくは、前記第1層の化学構造(分子構造)と前記第2層の化学構造とが同一である。より好ましくは、前記第1層の化学組成と前記第2層の化学組成とが同一である。
(付記15)
付記1乃至14のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記反応物は酸化剤であり、前記基板上に形成しようとする膜は酸化膜である。
(付記16)
付記15に記載の方法であって、好ましくは、
前記基板上に第1層を形成する工程、および、前記基板上に第2層を形成する工程は、それぞれ、前記基板に対して触媒を供給する工程をさらに有する。
(付記17)
付記16に記載の方法であって、好ましくは、
前記第1サイクルおよび前記第2サイクルでは、それぞれ、前記基板に対して前記原料および触媒を供給する工程と、前記基板に対して前記反応体および触媒を供給する工程と、を非同時に行う。
(付記18)
付記16又は17に記載の方法であって、好ましくは、
前記原料としてシリコンおよびハロゲン基を含むガス(ハロシランガス)を用いる。
(付記19)
付記16乃至18のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記酸化剤としてヒドロキシ基(OH基)を含むガス(H2O,H2O2)を用いる。
(付記20)
付記16乃至19のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1温度を前記第2温度未満の温度とすることで、前記第1層を形成する工程におけるサイクルレートを、前記第2層を形成する工程におけるサイクルレートよりも大きくする。
(付記21)
付記15に記載の方法であって、好ましくは、
前記原料としてシリコンおよびアミノ基を含むガス(アミノシランガス)を用いる。
(付記22)
付記21に記載の方法であって、好ましくは、
前記酸化剤としてプラズマ励起させた酸素含有ガスを用いる。
(付記23)
本発明の他の態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内の基板に対し原料を供給する第1供給系と、
前記処理室内の基板に対し反応体を供給する第2供給系と、
前記処理室内の基板の温度を調整する温度調整部と、
前記処理室内において、前記原料および前記反応体がそれぞれ単独で存在した場合にいずれの物質も熱分解しない第1温度下で、基板に対して前記原料を供給する処理と、前記基板に対して前記反応体を供給する処理と、を非同時に行う第1サイクルを所定回数実施し、第1層を形成する処理と、前記第1温度とは異なる温度であって前記原料および前記反応体がそれぞれ単独で存在した場合にいずれの物質も熱分解しない第2温度下で、前記基板に対して前記原料を供給する処理と、前記基板に対して前記反応体を供給する処理と、を非同時に行う第2サイクルを所定回数実施し、第2層を形成する処理と、を行うことで、前記基板上に、前記第1層と前記第2層とが積層されてなる膜を形成する処理を実施させるように、前記第1供給系、前記第2供給系および前記温度調整部を制御するよう構成される制御部と、
を備える基板処理装置が提供される。
(付記24)
本発明のさらに他の態様によれば、
原料および反応体がそれぞれ単独で存在した場合にいずれの物質も熱分解しない第1温度下で、基板に対して前記原料を供給する手順と、前記基板に対して前記反応体を供給する手順と、を非同時に行う第1サイクルを所定回数実施し、第1層を形成する手順と、
前記第1温度とは異なる温度であって前記原料および前記反応体がそれぞれ単独で存在した場合にいずれの物質も熱分解しない第2温度下で、前記基板に対して前記原料を供給する手順と、前記基板に対して前記反応体を供給する手順と、を非同時に行う第2サイクルを所定回数実施し、第2層を形成する手順と、
を行うことで、前記基板上に、前記第1層と前記第2層とが積層されてなる膜を形成する手順をコンピュータに実行させるプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。