JP2019048314A - 締結工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】非破断式の複数部材加締め式ファスナによって作業材を締結する締結工具に関し、装置構成の簡素化に寄与しうる技術を提供する。【解決手段】締結工具1は、ファスナ9のカラー95に係合可能なアンビル61と、ファスナ9のピン91の引張り領域914を把持可能なピン把持部63と、モータ2と、駆動機構4と、コントローラ154とを備える。駆動機構4は、モータ2の動力によって駆動され、ピン把持部63をアンビル61に対して前後方向に移動させる。コントローラ154は、引張り領域914を把持した状態のピン把持部63を初期位置から後方へ移動させるように駆動機構4を制御することで、軸部910に係合されたカラー95を、アンビル61によって軸部910の加締め溝に加締める。コントローラ154は、ピン把持部63の初期位置からの実際の移動距離が目標移動距離に達した場合、モータ2の駆動を停止する。【選択図】 図2
Description
本発明は、ピンとカラーとを備えたファスナによって作業材を締結する締結工具に関する。
複数の作業材を固く密着させて固定するためのファスナとして、互いに別体として形成されたピン(ボルトとも称されうる)とカラーとを備えたファスナが知られている。このようなファスナによる作業材の締結においては、まず、作業材に形成された取付け孔にピンが挿通され、カラーがピンの軸部に係合される。その後、締結工具によって、軸部のヘッドとは反対側の端部を含む領域が把持されて軸方向に引っ張られ、ヘッドとカラーとが作業材を挟着するとともに、カラーの内周部が、軸部に形成された加締め用の溝に圧着された状態となるように、カラーが軸部に加締められる。このことから、上記のような構成のファスナは、複数部材加締め式ファスナ(multi-piece swage type fastener)とも称されている。
複数部材加締め式ファスナに関して、典型的には、次の2つのタイプが知られている。第1のタイプのファスナは、加締め溝とは異なる破断用の溝が軸部に形成されたピンを含む。軸部のうち、破断用の溝を挟んでヘッドと反対側の部分は、一般的に、ピンテールと称されている。第1のタイプのファスナによる作業材の締結においては、カラーが軸部に加締められ、軸部が破断用の溝で破断して、締結工具に把持されたピンテールが分離されると、締結が完了する。第2のタイプのファスナは、軸部に破断用の溝は形成されておらず、第1のタイプと比べて短いピンを含む。第2のタイプのファスナによる作業材の締結においては、カラーが軸部に加締められた後、締結工具に把持された端部領域が軸部と一体のまま、締結が完了する。つまり、ピンが破断することは前提とされていない。この相違点に鑑み、第1のタイプおよび第2のタイプは、夫々、例えば、破断式(または引きちぎり式、ピンテール分離式)、非破断式(または軸維持式)とも称されうる。
特許文献1には、非破断式のファスナを使用して作業材を締結する締結工具が開示されている。この締結工具は、ピンの軸部の端部領域を把持可能な回転ナット部材と、カラーに係合可能なアンビルとを備えるとともに、流体圧を利用してシリンダ内に配置されたピストンを動かすことで、アンビルを回転ナット部材に対して軸方向に移動させる。これによってアンビルがカラーを押圧し、カラーを軸部に加締める。
特許文献1に開示された非破断式のファスナ用の締結工具は、加締めの進行に伴って流体に生じる背圧に基づいて、アンビルの移動を終了させる。この締結工具は、流体圧を用いた出力制御を行うため、出力管理が容易である一方、装置構成の簡素化が困難である。
本発明は、かかる状況に鑑み、非破断式の複数部材加締め式ファスナによって作業材を締結する締結工具に関し、装置構成の簡素化に寄与しうる技術を提供することを目的とするものである。
本発明の一態様によれば、ピンとカラーとを含む非破断式の複数部材加締め式ファスナによって作業材を締結する締結工具が提供される。ピンは、加締め溝が形成された軸部と、軸部の一端部に一体形成されたヘッドとを有する。カラーは、ピンとは別体として円筒状に形成され、軸部に係合可能に構成されている。
この締結工具は、アンビルと、ピン把持部と、モータと、駆動機構と、制御部とを備えている。アンビルは、カラーに係合可能に構成されている。ピン把持部は、締結工具の前後方向に延在する駆動軸に沿って、アンビルに対して相対移動可能に配置されている。また、ピン把持部は、軸部のヘッドとは反対側の端部領域を把持可能に構成されている。駆動機構は、モータの動力によって駆動され、ピン把持部をアンビルに対して前後方向に移動させるように構成されている。制御部は、モータの駆動を介して駆動機構の動作を制御するように構成されている。制御部は、端部領域を把持した状態のピン把持部を初期位置から後方へ移動させるように駆動機構を制御することで、軸部に係合されたカラーを、アンビルによって軸部の加締め溝に加締めるように構成されている。そして、制御部は、ピン把持部の初期位置からの実際の移動距離が目標移動距離に達した場合、モータの駆動を停止するように構成されている。
本態様に係る締結工具では、モータの動力によって、ピンの軸部の端部領域を把持するピン把持部を、カラーに係合可能なアンビルに対し、駆動軸に沿って相対移動させる構成が採用されている。これにより、流体圧を利用する締結工具と比べ、装置構成の簡素化を実現することができる。また、本態様の締結工具では、制御部が目標移動距離に基づいてモータの駆動を停止させることで、アンビルに対するピン把持部の後方への移動(つまり、加締め工程)を適切に終了させることができる。
本態様において、アンビルは、複数部材加締め式ファスナのカラーに係合可能であればよく、その構成は、特に限定されるものではない。アンビルは、典型的には、加締め力によってカラーを変形させる金属床として構成され、ボアを有する筒状体として形成される。なお、ボアは、カラーが挿入される開口端に向けて緩やかに拡径し、且つ、カラーの加締め領域の外径よりも小径に形成されたテーパ部を含むことが好ましい。この場合、ピン把持部がアンビルに対して後方に相対移動するにつれ、カラーがテーパ部の内周面に当接して軸方向および径方向内側に押圧され、圧搾されて変形しながらアンビルのボア内に入り込んでいくことになる。この結果、カラーは、加締め溝に圧着された状態で軸部に加締められ、ピンのヘッドとカラーとで作業材が締結される。
ピン把持部は、アンビルに対し、駆動軸に沿って前後方向に移動可能に配置され、ピンの軸部の端部領域を把持可能に構成されていればよく、その構成は特に限定されるものではない。例えば、ジョーと称される先端部を備えた任意の公知の構成を採用可能である。ジョーは、典型的には、端部領域に形成された引張り用の溝に係合することで軸部を把持可能な複数の爪を有する。なお、ジョーの構成(爪の数や形状等)は、端部領域の構成(例えば、引張り溝の数や形状)に応じて適宜設定されうるものである。ピン把持部は、典型的には、筒状のアンビルの内部に、アンビルと同軸状に配置される。
なお、典型的には、アンビルとピン把持部のうち何れか一方は、ハウジング(工具本体とも称される)に直接または別部材を介して連結されることで、ハウジングに保持される。アンビルおよびピン把持部は、ハウジングに対して着脱可能に構成されていてもよい。
モータは、直流モータであっても交流モータであってもよいし、ブラシの有無も特に限定されない。但し、小型で大出力が得られるという観点からは、ブラシレスDCモータが採用されることが好ましい。
駆動機構としては、モータの動力によって、ピン把持部をアンビルに対して前後方向に移動させることが可能な任意の構成を採用可能である。例えば、駆動機構として、送りネジ機構やボールネジ機構を好適に採用することができる。送りネジ機構およびボールネジ機構は、何れも回転運動を直線運動に変換可能な運動変換機構である。なお、送りネジ機構では、円筒状の回転部材の内周面に形成された雌ネジ部と、回転部材に挿通された移動部材の外周面に形成された雄ネジ部とが直接的に係合(螺合)する。一方、ボールネジ機構では、回転部材と移動部材は、円筒状の回転部材の内周面と、回転部材に挿通された移動部材の外周面との間に形成された螺旋状の軌道内に転動可能に配置された多数のボールを介して係合する。なお、典型的には、回転部材がベアリングを介してハウジングに保持される一方、移動部材がピン把持部に直接的または間接的に連結されるが、移動部材が回転可能にハウジングに支持され、回転部材がピン把持部に直接的または間接的に連結されていてもよい。
制御部としては、典型的には、制御回路が採用されうる。制御回路は、例えば、CPU、ROM、メモリ等を含むマイクロコンピュータで構成されてもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのプログラマブル・ロジック・デバイスで構成されてもよい。
なお、制御部が「モータの駆動を停止する」には、単にモータへの通電を停止すること、および、モータに制動力を付与して積極的に回転を停止させることが含まれる。前者の場合、モータの駆動が停止された後、モータは、慣性による回転が許容されつつ徐々に回転を停止する一方、後者の場合、慣性による回転が規制され、急速に回転を停止する。
「目標移動距離」は、例えば、予め設定されて締結工具に記憶されている距離であってもよいし、締結工具または外部装置に設けられた操作部を介して入力された情報に基づいて設定された距離であってもよい。あるいは、物理的構成によって設定される距離であってもよい。目標移動距離は、前後方向に関し、ピン把持部の初期位置から、ピン把持部によるピンの引張り力(軸方向の力)によって、軸部が破断したり、カラーや締結工具が損傷したりすることなく、加締め溝にカラーが確実に加締められた状態を実現しうる位置までの距離として設定することができる。なお、ピン把持部の移動距離および目標移動距離の何れについても、「距離」は、距離そのものに限られず、距離に対応する他の物理量が用いられてもよい。
本発明の一態様において、制御部は、ピン把持部の実際の移動距離が目標移動距離に達した場合、ピン把持部を前方へ移動させ、初期位置に復帰させるように駆動機構を制御してもよい。本態様によれば、ピン把持部は、初期位置から目標移動距離だけ後方に移動された後、制御部によって自動的に初期位置まで戻されるため、使用者がピン把持部を初期位置に戻すための指示操作を行う必要がなく、締結工具の利便性が向上する。
本発明の一態様において、締結工具は、ピン把持部の実際の移動距離が目標移動距離に達した場合、モータを制動するように構成された制動部を備えていてもよい。本態様によれば、モータの回転を急速に停止し、ピン把持部を停止させることができるため、ピン把持部の位置制御の正確性を向上することができる。なお、制動部は、例えば、モータに一体化された機械的ブレーキとして構成されていてもよいし、制御部によって兼用されてもよい。制御部が制動部を兼用する場合、制御部は、モータを電気的に制動すればよい。
本発明の一態様において、締結工具は、目標移動距離を調整可能に構成されていてもよい。軸部が破断することなく、加締め溝にカラーが確実に加締められた状態を実現しうる距離は、例えば、ファスナや作業材の仕様等の要因によって異なる場合がある。本態様によれば、制御部は、かかる要因に応じて適切に調整された目標移動距離を用いて駆動機構を制御することができる。なお、目標移動距離の調整方法は特に限定されるものではなく、例えば、操作部を介して入力された情報に基づいて調整されてもよいし、過去に使用された目標移動距離の履歴に基づいて算出された距離が、調整後の目標移動距離として採用されてもよい。具体的には、例えば、過去に使用され、記憶されていた複数の目標移動距離のうち1つが操作部を介して選択され、使用されてもよい。また、例えば、締結工具は、直近の過去において使用された所定数の目標移動距離を記憶し、これらの目標移動距離に基づいて算出した最適値(例えば、平均値)を、調整後の目標移動距離として採用してもよい。また、目標移動距離が、物理的構成によって設定される場合には、目標移動距離は、例えば、物理的構成の配置を変更することで調整されてもよい。
本発明の一態様において、制御部は、ピン把持部の後方への移動開始後のモータの回転量に基づいて、ピン把持部の実際の移動距離が目標移動距離に達したか否かを判断してもよい。モータの回転量は、ピン把持部の移動距離に対応する物理量である。よって、制御部は、例えば、モータの回転量が、目標移動距離に対応する目標値に達したか否かによって、ピン把持部の初期位置からの移動距離が目標移動距離に達したか否かを容易に判断することができる。なお、モータの回転量は、例えば、モータの回転位置センサからの出力信号や、モータを駆動するための駆動パルスによって特定されればよい。
本発明の一態様において、締結工具は、ピン把持部が、初期位置よりも後方の検出位置に配置されたことを検出可能に構成された検出器を更に備えていてもよい。そして、制御部は、検出器の検出結果に基づいて、ピン把持部の実際の移動距離が目標移動距離に達したか否かを判断するように構成されていてもよい。本態様によれば、制御部は、ピン把持部の初期位置からの移動距離が目標移動距離に達したか否かを容易に判断することができる。なお、検出器による検出方式は特に限定されるものではなく、接触方式、非接触方式(磁界検出方式、光学式等)の何れの方式も採用可能である。
本発明の一態様において、締結工具は、ピン把持部に直接的または間接的に干渉し、ピン把持部が後方へ移動するのを禁止するストッパを更に備えてもよい。そして、制御部は、ストッパによってピン把持部の後方への移動が禁止された場合に、ピン把持部の実際の移動距離が目標移動距離に達したと判断するように構成されていてもよい。本態様によれば、物理的な構成としてのストッパによって、ピン把持部が目標移動距離移動した時点で確実にピン把持部の移動を止めることができる。なお「ピン把持部に直接的または間接的に干渉する」とは、例えば、ピン把持部の一部に当接することや、ピン把持部に一体的に連結された別部材の一部に当接することを含む意である。
本発明の一態様によれば、締結工具は、目標移動距離に対応する情報を表示可能に構成された表示部を更に備えてもよい。本態様によれば、使用者は、表示された情報によって、適切な目標移動距離が設定されているか否かを容易に確認することができる。なお、表示部の構成や、情報の表示態様は特に限定されるものではない。表示部は、例えば、LED、液晶ディスプレイ等で構成することができる。また、採用可能な表示態様として、例えば、目標移動距離に対応する数値や文字の表示、LEDの点灯、点滅表示等が挙げられる。
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、非破断式の複数部材加締め式ファスナ(multi-piece swage type fastener)を用いて作業材を締結するように構成された締結工具を例示する。
<第1実施形態>
以下、図1〜図10を参照して、第1実施形態に係る締結工具1について説明する。まず、図1を参照して、締結工具1で使用可能なファスナの一例としてのファスナ9について説明する。図1に示すファスナ9は、ピン91と、ピン91とは別体として形成されたカラー95とを含む複数部材加締め式ファスナである。より詳細には、ファスナ9は、複数部材加締め式ファスナのうち、いわゆる非破断式(または軸維持式)のファスナと称されるものである。
以下、図1〜図10を参照して、第1実施形態に係る締結工具1について説明する。まず、図1を参照して、締結工具1で使用可能なファスナの一例としてのファスナ9について説明する。図1に示すファスナ9は、ピン91と、ピン91とは別体として形成されたカラー95とを含む複数部材加締め式ファスナである。より詳細には、ファスナ9は、複数部材加締め式ファスナのうち、いわゆる非破断式(または軸維持式)のファスナと称されるものである。
ピン91は、棒状の軸部910と、軸部910の一端部に形成されたヘッド917とを含む。軸部910は、一定の径を有する加締め領域911と、加締め領域911に比べて小径の引張り領域914とを含む。引張り領域914は、軸部910のうち、ヘッド917とは反対側の端部領域を構成している。加締め領域911は、軸部910のうち、引張り領域914以外の部分(つまり、引張り領域914とヘッド917の間の部分)であって、軸部910の大部分を占めている。加締め領域911は、カラー95を加締め可能な領域であって、加締め溝912を有する。なお、本実施形態では、加締め溝912は環状溝であって、加締め領域911の全長に亘って複数が形成されている。また、引張り領域914は、後述するピン把持部63(詳細には、ジョー630)によって把持され、引っ張られる部分であって、引張り溝915を有する。本実施形態では、引張り溝915は、複数の環状の溝として構成されている。
カラー95は、円筒状に形成され、ピン91の軸部910に係合可能に構成されている。カラー95の外周部における一端部には、径方向外側に突出するフランジ951が形成されている。フランジ951以外の外周部は、締結作業において後述するアンビル61のテーパ部617(図5参照)に係合する係合部953を構成する。係合部953は、カラー95のうち、アンビル61に負荷される加締め力によって変形する加締め領域である。カラー95の内径は、ピン91の軸部910の径よりも僅かに大きく設定されている。ピン91の軸部910がカラー95に挿通されることで、ピン91とカラー95とが係合する。カラー95に係合された状態で、ピン91の引張り領域914はカラー95から突出する。
以下、締結工具1について説明する。まず、図2を参照して、締結工具1の概略構成について簡単に説明する。
図2に示すように、締結工具1の外郭は、主に、アウタハウジング11と、ハンドル15と、ノーズ保持部材14を介して保持されたノーズ部6によって形成されている。
本実施形態では、アウタハウジング11は概ね矩形箱状に形成され、所定の駆動軸A1に沿って延在している。ノーズ部6は、駆動軸A1に沿って延在するように、アウタハウジング11の長軸方向における一端部に、ノーズ保持部材14を介して保持されている。ハンドル15は、アウタハウジング11の長軸方向における中央部から、駆動軸A1に交差する方向(本実施形態では、概ね直交する方向)に突出している。
以下では、締結工具1の方向に関して、説明の便宜上、駆動軸A1の延在方向(アウタハウジング11の長軸方向とも言い換えられる)を締結工具1の前後方向、ノーズ部6が配置されている側を前側、反対側を後側と定義する。また、駆動軸A1に直交し、ハンドル15の延在方向に対応する方向を上下方向、アウタハウジング11が配置されている側を上側、ハンドル15の突出端(自由端)側を下側と定義する。また、前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向と定義する。
図2に示すように、アウタハウジング11には、主に、モータ2と、モータ2の動力によって駆動される駆動機構4と、モータ2の動力を駆動機構4に伝達する伝達機構3とが収容されている。なお、本実施形態では、駆動機構4の一部(詳細には、ボールネジ機構40のナット41)は、インナハウジング13に収容されている。インナハウジング13は、アウタハウジング11に固定状に保持されている。この観点から、アウタハウジング11とインナハウジング13とをハウジング10として一体的にとらえることもできる。
ハンドル15は、使用者によって把持可能に構成されている。ハンドル15の上端部(アウタハウジング11に接続する基端部)には、使用者による押圧操作(引き操作)が可能に構成されたトリガ151が設けられている。ハンドル15の下端部には、バッテリ159を着脱可能に構成されたバッテリ装着部158が設けられている。バッテリ159は、締結工具1の各部およびモータ2へ電力を供給するための、繰り返し充電が可能な電源である。なお、バッテリ装着部158およびバッテリ159の構成は周知であるため、これらの説明は省略する。
ファスナ9を用いて作業材Wを締結する場合、使用者は、まず、図2に示すように、ヘッド917が作業材Wの一面に当接した状態となるように、作業材Wに形成された取付け孔にピン91の軸部910を挿通する。その後、使用者は、作業材Wの反対側の面から、カラー95を軸部910に遊嵌状に係合させる。使用者は、更に、カラー95から突出した引張り領域914を後述のピン把持部63に係合させる。トリガ151の押圧操作に応じて、モータ2を介して駆動機構4が駆動されると、軸部910がピン把持部63に把持されて後方へ引っ張られる。これに伴い、カラー95が軸部910の加締め溝912に加締められる。カラー95に適切な加締め力が付与されると、ピン把持部63の後方への移動が停止される。その後、ピン把持部63は、カラー95に加締められた軸部910を把持した状態で前方の初期位置へ戻されて、締結工程が終了する。締結工程については、後で詳述する。
以下、締結工具1の物理的構成について詳細に説明する。
まず、モータ2について説明する。図3に示すように、モータ2は、アウタハウジング11の後端部の下部に収容されている。本実施形態では、モータ2として、小型で高出力なブラシレスDCモータが採用されている。モータ2は、ステータ21およびロータ23を含むモータ本体部20と、ロータ23から延出されてロータ23と一体的に回転するモータシャフト25とを含む。モータ2は、モータシャフト25の回転軸A2が駆動軸A1の下方で駆動軸A1と平行に(つまり、前後方向に)延在するように配置されている。モータシャフト25の前端部は、減速機ハウジング30内に突出している。モータシャフト25の後端部には、モータ2を冷却するためのファン27が固定されている。
次に、伝達機構3について説明する。図3に示すように、本実施形態では、伝達機構3は、遊星減速機31と、中間シャフト33と、ナット駆動ギア35とを主体として構成されている。以下、これらについて順に説明する。
遊星減速機31は、モータ2から駆動機構4(詳細には、ボールネジ機構40)に至る動力伝達経路において、モータ2の下流側に配置されて、モータ2のトルクを増大させて中間シャフト33に伝達するように構成されている。本実施形態では、遊星減速機31は、2組の遊星歯車機構と、これらを収容する減速機ハウジング30を主体として構成されている。なお、遊星歯車機構の構成自体は周知であるため、ここでの詳細な説明は省略する。モータシャフト25は、遊星減速機31への回転動力の入力シャフトとされている。モータシャフト25の前端部(減速機ハウジング30内に突出している部分)には、遊星減速機31の第1の(上流側の)遊星歯車機構の太陽ギア311が固定されている。第2の(下流側の)遊星歯車機構のキャリア313は、遊星減速機31の最終出力シャフトとされている。
中間シャフト33は、キャリア313と一体的に回転するように構成されている。具体的には、中間シャフト33は、モータシャフト25と同軸状に回転可能に配置され、その後端部がキャリア313に連結されている。ナット駆動ギア35は、中間シャフト33の前端部の外周部に固定されている。ナット駆動ギア35は、後述するナット41の外周部に形成された被動ギア411に噛合し、中間シャフト33の回転動力をナット41に伝達する。ナット駆動ギア35と被動ギア411は、減速ギア機構として構成されている。
以下、駆動機構4について説明する。
図3に示すように、本実施形態では、駆動機構4は、アウタハウジング11の上部に収容されたボールネジ機構40を主体として構成されている。以下、ボールネジ機構40とその周辺の構成について、順に説明する。
図3および図4に示すように、ボールネジ機構40は、ナット41と、ネジシャフト46とを主体として構成されている。本実施形態では、ボールネジ機構40は、ナット41の回転運動をネジシャフト46の直線運動に変換して、後述のピン把持部63(図5参照)を直線状に移動するように構成されている。
本実施形態では、ナット41は、前後方向の移動が規制され、且つ、駆動軸A1周りに回転可能な状態で、インナハウジング13に支持されている。ナット41は、円筒状に形成されており、外周部に一体に設けられた被動ギア411を有する。ナット41は、被動ギア411の前側および後側で、ナット41に外嵌された一対のベアリング412、413を介して、インナハウジング13に対して駆動軸A1周りに回転可能に支持されている。被動ギア411は、ナット駆動ギア35に噛合している。被動ギア411がナット駆動ギア35からモータ2の回転動力を受けることで、ナット41が駆動軸A1周りに回転される。
ネジシャフト46は、駆動軸A1周りの回転が規制され、且つ、駆動軸A1に沿って前後方向に移動可能な状態でナット41に係合している。詳細には、図3および図4に示すように、ネジシャフト46は、長尺体として構成され、駆動軸A1に沿って延在するように、ナット41に挿通されている。ナット41の内周面に形成された螺旋溝とネジシャフト46の外周面に形成された螺旋溝によって規定される螺旋状の軌道内には、多数のボール(図示略)が転動可能に配置されている。ネジシャフト46は、これらのボールを介してナット41に係合している。これにより、ネジシャフト46は、ナット41の回転駆動によって、駆動軸A1に沿って前後方向に直線状に移動する。
図4に示すように、ネジシャフト46の後端部には、ローラ保持部463の中央部が固定されている。ローラ保持部463は、ネジシャフト46に直交して中央部から左右方向に突出するアーム部を有する。ローラ保持部463のアーム部の左右端部には、夫々、ローラ464が回転可能に保持されている。一方、アウタハウジング11の左右の内壁部には、左右一対のローラ464に対応して、夫々、前後方向に延在するローラガイド111が固定されている。なお、詳細な図示は省略するが、ローラ464は、ローラガイド111によって上側と下側への移動が規制されている。これにより、ローラガイド111内に配置されたローラ464は、ローラガイド111に沿って前後方向に転動可能とされている。
以上のように構成されたボールネジ機構40において、ナット41が回転軸A1周りに回転されると、ボールを介してナット41に係合したネジシャフト46は、ナット41およびハウジング10に対して前後方向に直線状に移動する。なお、ナット41の回転に伴い、ネジシャフト46には駆動軸A1周りのトルクが作用する可能性もあるが、ローラ464がローラガイド111に当接することで、かかるトルクに起因するネジシャフト46の駆動軸A1周りの回転が規制されている。
本実施形態では、ネジシャフト46には、ネジシャフト46が初期位置に配置されたことを検出可能とするための構成が設けられている。具体的には、図3に示すように、ネジシャフト46の後端部に固定されたローラ保持部463には、磁石保持部485が固定されている。磁石保持部485は、ネジシャフト46の上側に配置され、磁石保持部485の上端には、磁石486が取り付けられている。磁石486はネジシャフト46と一体化されているため、ネジシャフト46の前後方向の移動に伴って前後方向に移動する。
一方、アウタハウジング11には、初期位置センサ71が設けられている。本実施形態では、初期位置センサ71は、ネジシャフト46よりも上方に配置されており、ネジシャフト46が初期位置に配置された場合に磁石486を検出可能である。具体的には、初期位置センサ71として、ホール素子を備えたホールセンサが採用されている。初期位置センサ71は、図示しない配線を介してコントローラ154(図7参照)に接続されており、磁石486が所定の検出範囲内に配置されている場合、所定の検出信号をコントローラ154へ出力するように構成されている。本実施形態では、初期位置センサ71による検出結果は、コントローラ154によるモータ2の駆動制御に使用される。この点については後で詳述する。なお、上述のように、ピン把持部63はネジシャフト46に一体的に連結されているため、ネジシャフト46が初期位置に配置されることは、ピン把持部63が初期位置に配置されることと同義である。
また、図5に示すように、ハウジング10の前端部には、円筒状のノーズ保持部材14が螺合されている。また、ネジシャフト46の前端部には、連結部材49が連結され、ノーズ保持部材14内に摺動可能に保持されている。連結部材49は、円筒状に形成されており、その後端部がネジシャフト46の前端部に螺合されることで、ネジシャフト46に一体的に連結されている。また、連結部材49の前端部は、後述するピン把持部63の後端部に螺合されている。
以下、ノーズ部6の構成について説明する。なお、ノーズ部6の方向に関しては、ノーズ部6がハウジング10に装着された状態を基準として説明する。
図5に示すように、ノーズ部6は、アンビル61と、ピン把持部63とを主体として構成されている。なお、本実施形態では、ノーズ部6は、ハウジング10に対して着脱可能に構成されている。
アンビル61は、ファスナ9のカラー95に当接可能に構成されている。より詳細には、本実施形態では、アンビル61は、ボアを有する長尺の円筒状のスリーブとして構成されている。アンビル61は、ハウジング10に固定されたノーズ保持部材14に後端部が挿入された状態で、ノーズ保持部材14の前端部に螺合された円筒状の固定リング145によって保持されている。これにより、アンビル61は、ノーズ保持部材14と固定リング145を介してハウジング10に連結されている。
アンビル61の後側領域の内径は、後述のピン把持部63の基部632の外径と概ね同径に形成される一方、前側領域の内径は、後側領域よりも小径に形成されている。更に、前側領域の前端部領域は、開口端(前端)に向けて内径が緩やかに拡径するテーパ部617として形成されている。なお、テーパ部617は、前後方向に関して、カラー95の係合部953(図1参照)の高さよりも若干長く設定されている。テーパ部617の内径は、開口端では係合部953の外径よりも僅かに大きいが、開口端よりも後方では係合部953の外径よりも小さくなるように設定されている。これにより、係合部953の変形を促す強い軸方向の力が作用すると、係合部953は、開口端からテーパ部617へと変形を伴いながら入り込む。
ピン把持部63は、ファスナ9のピン91の軸部910(詳細には、引張り領域914)を把持可能に構成されるとともに、駆動軸A1に沿って、アンビル61に対して前後方向に相対移動可能に配置されている。より詳細には、ピン把持部63は、アンビル61のボア内にアンビル61と同軸状に配置され、駆動軸A1に沿ってボア内を摺動可能である。本実施形態では、ピン把持部63は、軸部910の引張り領域914を把持可能に構成されたジョー630と、ジョー630と一体形成された基部632とを含む。
ジョー630は、引張り領域914を把持可能な複数の爪(例えば、3つの爪)631を有する。爪631は、駆動軸A1を中心とする仮想円周状に等間隔で配置されている。また、ジョー630は、隣接する爪631同士の間隔が前端に向かって広がるように構成されている。ジョー630の前後方向の長さは、ピン把持部63が図5に示す初期位置に配置された場合、爪631の前端部がアンビル61のテーパ部617の前端から前方に突出するように設定されている。爪631の内側には、引張り領域914の確実な把持を可能とするために、引張り領域914に形成された引張り溝915に係合可能な突条が形成されている。また、基部632は、前端が閉塞された有底円筒状に形成されており、後端部は、連結部材49の前端部に螺合されている。これにより、ピン把持部63は、連結部材49を介してネジシャフト46に一体的に連結されている。以上のような構成により、ジョー630(爪631)による把持力は、ジョー630がアンビル61内に引き込まれ、後方へ移動するのに伴って増大する。
以下、ハンドル15について説明する。
図2に示すように、ハンドル15の上端部の前側には、トリガ151が設けられている。トリガ151の後側のハンドル15内部には、スイッチ152が収容されている。スイッチ152は、常時にはオフ状態で維持され、トリガ151の押圧操作に応じてオン状態に切り替えられる。スイッチ152は、配線(図示せず)を介して後述のコントローラ154に接続されており、オン状態またはオフ状態に対応する信号をコントローラ154に出力する。
ハンドル15の下端部は、矩形箱状に形成され、コントローラ収容部153を構成している。コントローラ収容部153内部には、第1基板(メイン基板)155が収容されている。第1基板155には、締結工具1の動作を制御するコントローラ154、3相インバータ201、電流検出アンプ205(図7参照)等が搭載されている。なお、本実施形態では、コントローラ154は、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ(EEPROM)、タイマ等を含むマイクロコンピュータとして構成されている。
コントローラ収容部153の上部には、操作・表示部5が設けられている。図6に示すように、操作・表示部5は、使用者による外部操作に応じて各種情報を入力可能な操作部51と、各種情報を表示可能な表示部53とを含む。本実施形態では、操作部51は、複数の押しボタン式のスイッチ511を含む。各スイッチ511は、押圧時にのみオン状態とされるモーメンタリスイッチ(いわゆるタクタイルスイッチ)として構成されており、コントローラ154に対し、オン状態またはオフ状態に対応するデジタル信号を出力する。また、本実施形態では、表示部53は、LEDランプ531と、数値および所定の文字を表示可能な複数の7セグメントLED533とを含む。コントローラ154は、操作部51から入力された情報に応じた情報や、エラー情報等の締結工具1に関連する各種情報を表示部53に表示させるように構成されている。
なお、本実施形態では、図2に示すように、操作部51と表示部53は、第1基板155とは異なる第2基板50に搭載され、コントローラ収容部153内において、コントローラ154の上方に配置されている。このように、操作部51および表示部53を、コントローラ154等が搭載された第1基板155とは別の第2基板50に搭載することで、操作部51および表示部53の配置の自由度を高めることができる。
以下、締結工具1の電気的な構成について説明する。
図7に示すように、締結工具1は、コントローラ154と、三相インバータ201と、ホールセンサ203とを備えている。三相インバータ201は、6つの半導体スイッチング素子を用いた三相ブリッジ回路を備えており、コントローラ154からの制御信号が示すデューティ比に従って三相ブリッジ回路の各スイッチング素子をスイッチング動作させることで、そのデューティ比に応じたパルス状の電流(駆動パルス)をモータ2に供給する。ホールセンサ203は、モータ2の各相に対応して配置される3つのホール素子を備えている。ホールセンサ203は、モータ2の回転位置センサであって、ロータ23が所定の回転位置に達する毎に(つまり、モータ2が所定量回転する毎に)、コントローラ154にパルス信号を出力するように構成されている。コントローラ154は、ホールセンサ203から入力されたパルス信号に基づいて、三相インバータ201を介してモータ2への通電を制御することで、モータ2の回転速度を制御する。
また、コントローラ154には、電流検出アンプ205が電気的に接続されている。電流検出アンプ205は、モータ2の駆動電流をシャント抵抗によって電圧に変換し、更にアンプによって増幅した信号をコントローラ154に出力する。更に、コントローラ154には、トリガ151のスイッチ152、操作部51、表示部53、および初期位置センサ71が電気的に接続されている。コントローラ154は、ホールセンサ203、スイッチ152、操作部51、および初期位置センサ71から出力された信号に基づいて、適宜、モータ2の駆動(つまり、駆動機構4の動作)を制御する。
本実施形態では、コントローラ154は、目標移動距離に基づいて、ピン把持部63の移動を制御するように構成されている。より詳細には、コントローラ154は、ピン把持部63の初期位置からの実際の移動距離が目標移動距離に達した場合、モータ2の駆動を停止することで、ピン把持部63の後方への移動を停止させる(つまり、加締め工程を終了する)ように構成されている。
上述のように、非破断式のファスナ9による作業材Wの締結では、ピン91の加締め溝912にカラー95が加締められた後、ピン把持部63は、ピン91の軸部910を把持したまま前方へ戻される必要がある。このため、ピン把持部63による軸部910の引張り力(軸方向の力)が、軸部910にカラー95を確実に加締めることができ、且つ、軸部910が破断したり、カラー95や締結工具1が損傷したりしない程度に制限される必要がある。引張り力は、ピン91を把持するピン把持部63の初期位置からの移動距離に対応して増大する。そこで、本実施形態では、目標移動距離として、初期位置から、適切な引張り力をピン91に与えることが可能な位置までのピン把持部63の移動距離が設定される。
なお、本実施形態では、ピン把持部63の実際の移動距離の特定には、ホールセンサ203の検出結果、すなわち、パルス信号が利用される。上述のように、パルス信号は、モータ2が所定量回転する毎に出力される。出力されたパルス信号の総数(以下、パルスカウントという)は、モータ2の駆動開始からのモータ2の回転量を示す物理量であって、ピン把持部63の実際の移動距離に対応する。そこで、本実施形態では、目標移動距離として、パルスカウントの目標値TCが採用されている。
本実施形態では、使用者は、操作部51を操作することで、目標値TCの調整(つまり、目標移動距離の調整)を行うことができる。目標値TCの初期値は、締結工具1で使用される典型的なファスナ9の仕様(材質、径等)に応じて予め定められ、工場出荷時に、例えば、コントローラ154のROMに記憶されている。しかしながら、同じファスナ9が使用される場合であっても、例えば、作業材Wの材質や厚さ等が異なる場合、適切な引張り力、つまり目標移動距離は異なりうる。また、ファスナ9とは異なる非破断式の複数部材加締め式ファスナが使用される場合にも、適切な引張り力、つまり目標移動距離は異なりうる。そこで、本実施形態では、操作部51の操作を介して目標値TCの調整が行われる。具体的には、目標値TCの調整は、その時点で記憶されている目標値TC(初期値あるいは初期値の調整後の値)を増減するための値を入力することで行われる。
ここで、図8を参照して、ファスナ9の締結工程の1サイクルにおけるネジシャフト46の移動と、ホールセンサ203および初期位置センサ71の検出結果(出力)との関係について、簡単に説明する。なお、上述の通り、磁石486はネジシャフト46と一体化されているため、ネジシャフト46およびピン把持部63の位置は、磁石486の位置に対応している。図中の矢印Pは、1サイクル中の磁石486の移動方向を示している。
図8に示すように、ネジシャフト46が初期位置に配置されている場合、磁石486は、初期位置センサ71の検出範囲R内の点線で示す位置486Aに配置されている。このとき、初期位置センサ71は、磁石486を検出し、コントローラ154に検出信号を出力している。モータ2が正転方向に駆動されることでネジシャフト46が後方へ移動され、磁石486が検出範囲Rから離脱すると、初期位置センサ71からの検出信号の出力がオフとなる。また、モータ2の駆動開始後、ホールセンサ203からは、モータ2が所定量回転する毎にパルス信号がコントローラ154に出力される。パルスカウントは、ネジシャフト46の移動に伴って増加していく。
本実施形態では、コントローラ154は、パルスカウントに基づいて、磁石486の実際の移動距離(つまり、ネジシャフト46およびピン把持部63の実際の移動距離)Dが目標移動距離に達したと判断した場合、モータ2の駆動を停止することで、ネジシャフト46の後方への移動を停止させる。具体的には、コントローラ154は、パルスカウントが目標値TCに達した場合、移動距離Dが目標移動距離に達したと判断し、モータ2の駆動を停止する。このとき磁石486は点線で示す位置486Bに配置されている。
その後、コントローラ154は、モータ2を逆転方向に駆動することで、ネジシャフト46を前方へ移動させる。磁石486が初期位置センサ71の検出範囲Rに進入し、初期位置センサ71によって検出されると、コントローラ154は、モータ2の駆動を停止する。これにより、ネジシャフト46の移動が停止され、ネジシャフト46は初期位置に復帰する。
なお、ここまででは、磁石486およびネジシャフト46の前後方向位置と、ホールセンサ203および初期位置センサ71の出力との関係を説明した。上述のように、ピン把持部63はネジシャフト46と一体的に前後方向に移動するため、ピン把持部63の位置と、ホールセンサ203および初期位置センサ71の出力との関係についても同じことがいえる。以下でも、説明の簡単化のため、同様にネジシャフト46の位置を用いて説明するが、ネジシャフト46をピン把持部63と読み替えることができる。
以下、図9および図10を参照して、ファスナ9の締結工程において、コントローラ154(詳細には、CPU)によって実行されるモータ2の駆動制御処理について説明する。なお、図9に示すモータ2の駆動制御処理は、バッテリ159がバッテリ装着部158に装着されることで締結工具1への電力供給が開始されると開始され、電力供給が停止されると終了される。なお、以下の説明では、処理中の各「ステップ」を「S」と簡略表記する。
モータ2の駆動制御処理開始時(締結工程の開始時)には、ネジシャフト46は初期位置に配置されている。よって、図10の時間t0で示すように、初期位置センサ71は検出信号を出力している。また、トリガ151のスイッチ152はオフ状態にあり、出力されるデューティ比およびモータ2の回転速度はゼロである。図9に示すように、処理が開始されると、コントローラ154は、目標移動距離の設定を行う(S101)。具体的には、コントローラ154は、予め記憶された目標値TCの初期値をRAMに読み出す。コントローラ154は、操作部51からの入力を受け付けた場合、入力された値に応じて初期値を変更し、最新の目標値TCとして記憶する。つまり、S101において、工場出荷時等に予め設定された目標値TC(目標移動距離)が、入力された値に応じて変更されることとなる。また、コントローラ154は、表示部53(7セグメントLED533)に、設定された目標移動距離に対応する数値を表示させる。
なお、コントローラ154は、目標値TCの初期値が変更された場合、最新の目標値TCを不揮発性メモリに記憶させてもよい。この場合、コントローラ154は、モータの駆動制御処理を開始する毎に、不揮発性メモリに記憶された目標値TCを読み出して使用すればよい。この場合、モータの駆動制御処理の都度、使用者が操作部51を操作して初期値を調整しなおす手間を不要とすることができる。また、目標値TCは、工場出荷時に予め記憶されているのではなく、操作部51を介して入力された情報に基づいて設定されてもよい。
コントローラ154は、トリガ151のスイッチ152がオフ状態の間は、操作部51からの入力に応じて目標移動距離を設定する処理を継続する(S102:NO、S101)。使用者は、上述のように、ピン91を作業材Wの取付け孔に挿入してカラー95をピン91に遊嵌状に係合させた後、引張り領域914をジョー630(爪631)に係合させる(図5参照)。使用者がトリガ151を押圧操作すると、スイッチ152がオン状態に切り替えられる(S102:YES)。
これに応じて、コントローラ154は、モータ2の駆動を開始する(S103)(図10の時間t1)。より詳細には、コントローラ154は、三相インバータ201を介してモータ2への通電を開始する。このときのモータ2(ロータ23)の回転方向は、ネジシャフト46をハウジング10に対して後方へ移動させる正転方向に設定される。また、デューティ比は100%に設定され、モータ2は最高速度で駆動される。また、コントローラ154は、ホールセンサ203から出力されるパルス信号のカウントを開始する。パルスカウントはRAMに記憶される。
コントローラ154は、スイッチ152がオン状態で、ネジシャフト46の実際の移動距離が目標移動距離に達していない間は(パルスカウントが目標値TCよりも小さい間は)、モータ2の駆動を継続する(S104:YES、S105:NO、S103)(図10の時間t1と時間t2の間の期間)。この間、ホールセンサ203からパルス信号が出力される毎に、パルスカウントが増加する。また、ピン把持部63が後方へ移動されることで、ジョー630によってピン91が強固に把持されて後方へ引っ張られる。これに伴い、カラー95は、アンビル61のテーパ部617(図5参照)へと縮径しながら進入する。ピン把持部63が後方へ移動されるのにつれて、カラー95は、アンビル61によって前方および径方向内側へと強く押圧され、加締め溝912に加締められる。
トリガ151の押圧操作が解除され、スイッチ152がオフ状態となった場合(S104:NO)、または、ネジシャフト46の実際の移動距離が目標移動距離に達した場合(パルスカウントが目標値TCに達した場合)(S105:YES)、コントローラ154は、モータ2を制動することで、ネジシャフト46を制動する(S106)(図10の時間t2)。また、コントローラ154は、パルス信号のカウントを停止し、RAMに記憶されているパルスカウントをゼロにリセットする。なお、本実施形態では、コントローラ154は、S106において、電気ブレーキを作動させることで、モータ2を急速に停止させる。モータ2の回転速度がゼロとなると、ネジシャフト46も停止する(図10の時間t3)。
コントローラ154は、モータ2の駆動を開始する(S107)(図10の時間t4)。このときのモータ2の回転方向は、ネジシャフト46をハウジング10に対して前方へ移動させる逆転方向に設定される。また、デューティ比は100%に設定され、モータ2は最高速度で駆動される。なお、図10に示すように、本実施形態では、コントローラ154は、S106でモータ2を制動した後、所定時間(t4―t2)が経過した時点で、ネジシャフト46の前方への移動を開始する。所定時間は、モータ2の制動により、確実にネジシャフト46が停止するのに必要な時間(t3―t2)よりも長く設定されているが、適宜、変更されてもよい。例えば、コントローラ154は、ネジシャフト46の実際の移動距離が目標移動距離に達した場合、モータ2の正転方向での駆動を一旦停止し、直ちに逆転方向での駆動を開始してもよい。また、図10に示すように、本実施形態では、トリガ151のスイッチ152がオフ状態とされていなくても、コントローラ154は自動的にネジシャフト46の前方への移動(初期位置への復帰)を開始する。
コントローラ154は、初期位置センサ71の検出信号の出力がオフの間、モータ2の駆動を継続する(S108:NO、S107)(図10の時間t4と時間t5の間の期間)。この間、カラー95が加締められた状態のピン91がジョー630に把持された状態で、ネジシャフト46が前方へ移動される。
コントローラ154は、初期位置センサ71の検出信号を認識した場合、モータ2を制動する(S108:YES、S109)(図10の時間t5)。なお、コントローラ154は、S109でも、S106と同様、電気ブレーキを作動させることで、モータ2を急速に停止させる。モータ2の回転速度がゼロとなると、ネジシャフト46は初期位置で停止する(図10の時間t6)。これをもって締結工程の1サイクルが終了する。コントローラ154は、S101の処理に戻る。
以上に説明したように、本実施形態の締結工具1では、駆動機構4が電動式のモータ2によって駆動されるため、流体圧を用いた駆動機構が採用される場合に比べ、締結工具1全体の構成を簡素化することができる。また、コントローラ154が、目標移動距離に基づいてモータ2の駆動を停止させる制御を行うことで、アンビルに対するピン把持部の後方への移動(つまり、加締め工程)を適切に終了させることができる。
本実施形態では、コントローラ154は、ピン把持部63の後方への移動開始後のモータ2の回転量(パルスカウント)を、ピン把持部63の移動距離に対応する物理量として利用している。コントローラ154は、モータ2の回転量(パルスカウント)が、目標移動距離に対応する目標値TCに達したか否かによって、ピン把持部63の実際の移動距離が目標移動距離に達したか否かを容易に判断することができる。特に、本実施形態では、モータ2としてブラシレスモータが採用されている。ブラシレスモータは、回転制御のためのホールセンサ203を有することが一般的である。よって、本実施形態では、モータ2の回転量をホールセンサ203からの出力(パルス信号)に基づいて算出することで、ピン把持部63の実際の移動距離を特定するための構成を別途設ける必要をなくし、構成の合理化を図っている。
また、本実施形態では、コントローラ154は、ピン把持部63の初期位置からの実際の移動距離が目標移動距離に達した場合、電気ブレーキを作動させることでモータ2を制動する。これにより、モータ2の回転を急速に停止し、ピン把持部63を停止させることができるため、ピン把持部63の位置制御の正確性を向上することができる。また、コントローラ154は、ピン把持部63の初期位置からの実際の移動距離が目標移動距離に達した場合、モータ2を逆転方向に駆動することでピン把持部63を前方へ移動させ、初期位置に復帰させる。つまり、コントローラ154は、ピン把持部63を初期位置から目標移動距離だけ後方に移動させた後、自動的に初期位置まで戻す。よって、使用者がピン把持部63を初期位置に戻すための指示操作(トリガ151の押圧を解除する操作)を行う必要がない。これにより、締結工具1の利便性が向上する。
更に、本実施形態では、コントローラ154は、操作部51を介して入力された値に基づいて、目標移動距離を調整する。つまり、使用者は、操作部51を操作することで、実際に使用するファスナや作業材の仕様に応じて、既に設定されている目標移動距離を適切に変更することができる。また、本実施形態では、設定された目標移動距離に対応する数値が表示部53(7セグメントLED533)に表示される。よって、使用者は、表示された数値によって、適切な目標移動距離が設定されているか否かを容易に確認することができる。そして、必要に応じて操作部51を操作し、目標移動距離を変更することができる。
<第2実施形態>
以下、図11〜図13を参照して、第2実施形態に係る締結工具100について説明する。本実施形態の締結工具100は、目標移動距離を設定するための構成が第1実施形態とは異なっている。また、この相違に伴って、モータ2の駆動制御処理の内容が一部異なっている。これらの相違点以外は、締結工具100の構成および駆動制御処理の内容は、第1実施形態と概ね同一である。よって、以下では、第1実施形態と同一の構成および処理の内容については、図示および説明を省略または簡略化し、主に異なる構成および処理の内容について図を参照して説明する。なお、この点については、後述の第3実施形態でも同様である。
以下、図11〜図13を参照して、第2実施形態に係る締結工具100について説明する。本実施形態の締結工具100は、目標移動距離を設定するための構成が第1実施形態とは異なっている。また、この相違に伴って、モータ2の駆動制御処理の内容が一部異なっている。これらの相違点以外は、締結工具100の構成および駆動制御処理の内容は、第1実施形態と概ね同一である。よって、以下では、第1実施形態と同一の構成および処理の内容については、図示および説明を省略または簡略化し、主に異なる構成および処理の内容について図を参照して説明する。なお、この点については、後述の第3実施形態でも同様である。
図11に示すように、締結工具100は、目標移動距離を設定するための構成として、初期位置センサ71の後方に配置された停止位置センサ77を備えている。停止位置センサ77は、初期位置センサ71と同様、ホール素子を備えたホールセンサである。停止位置センサ77は、図示しない配線を介してコントローラ154(図7参照)に電気的に接続されており、磁石486が所定の検出範囲内に配置されている場合、所定の検出信号をコントローラ154へ出力するように構成されている。詳細は後述するが、停止位置センサ77の検出結果は、ピン把持部63の初期位置からの実際の移動距離が目標移動距離に達したか否かの判断に利用される。
また、停止位置センサ77は、ハウジング10に対する前後方向位置を調整可能に構成されている。より詳細には、図11に示すように、アウタハウジング11の上部には、支持板73が固定されている。支持板73の前端部の下面には、初期位置センサ71が固定されている。また、図12および図13に示すように、支持板73は、初期位置センサ71に対して後側に形成されたガイド孔731を有する。ガイド孔731は、前後方向に延在する長穴である。停止位置センサ77は、略円柱状のセンサ保持部74の下端部に取り付けられている。また、センサ保持部74の上端部は、ナット75が螺合可能に構成されている。センサ保持部74は、支持板73の下方に停止位置センサ77が突出するようにガイド孔731に挿通され、上端部にナット75が螺合された状態で支持板73に支持されている。なお、センサ保持部74のうち、停止位置センサ77の上側には、外周から径方向外側へ突出するフランジ部741が形成されている。
使用者は、ナット75を緩めることで、センサ保持部74をガイド孔731内で前後方向に移動させた後、ナット75を締め付ける。これにより、ナット75とフランジ部741によって支持板73が挟持され、停止位置センサ77が支持板73に対して固定される。使用者は、このようにして、ハウジング10に対する停止位置センサ77の前後方向位置を調整することができる。本実施形態では、初期位置から、磁石486が停止位置センサ77の検出範囲に進入するときのピン把持部63の位置までの距離が、目標移動距離として用いられる。
本実施形態の駆動制御処理では、図9に示す第1実施形態の駆動制御処理のうち、S101の処理が省略される。また、S105の処理における判断方法が第1実施形態とは異なる。しかしながら、全体的な処理の流れとその他のステップの処理内容は第1実施形態と同一である。より詳細には、処理開始の後、コントローラ154は、まず、トリガ151のスイッチ152がオン状態とされるまで待機し、スイッチ152がオン状態とされるとモータ2を駆動して、ネジシャフト46を初期位置から後方へ移動させる(S102〜S104)。ネジシャフト46の移動に伴い、磁石486が停止位置センサ77の検出範囲に進入すると、停止位置センサ77からコントローラ154へ検出信号が出力される。コントローラ154は、停止位置センサ77からの検出信号を認識した場合に、ネジシャフト46の実際の移動距離が目標移動距離に達したと判断し、モータ2を制動する(S105:YES、S106)。その後の処理は、第1実施形態と同様である。
以上に説明したように、本実施形態の締結工具100は、停止位置センサ77を備えている。停止位置センサ77は、ピン把持部63が初期位置から後方に移動され、磁石486が検出範囲に進入すると、磁石486を検出する。コントローラ154は、停止位置センサ77の検出信号に基づいて、ピン把持部の実際の移動距離が目標移動距離に達したか否かを容易に判断することができる。
また、停止位置センサ77は、ハウジング10に対する前後方向位置を調整可能に構成されている。そして、停止位置センサ77の前後方向位置の調整によって、目標移動距離を調整することができる。よって、使用者は、実際に使用するファスナや作業材の仕様に応じて、既に設定されている目標移動距離を適切に変更することができる。特に、停止位置センサ77は、ナット75で支持板73に取り付けられているため、使用者は、簡単な操作で位置調整作業を行うことができる。
<第3実施形態>
以下、図14および図15を参照して、第3実施形態に係る締結工具101について説明する。本実施形態の締結工具101は、目標移動距離を設定するための構成が第1実施形態とは異なっている。また、この相違に伴って、モータ2の駆動制御処理の内容が一部異なっている。
以下、図14および図15を参照して、第3実施形態に係る締結工具101について説明する。本実施形態の締結工具101は、目標移動距離を設定するための構成が第1実施形態とは異なっている。また、この相違に伴って、モータ2の駆動制御処理の内容が一部異なっている。
図14に示すように、締結工具101は、目標移動距離を設定するための構成として、ハウジング10の後端部に連結されたストッパボルト120を備えている。ストッパボルト120は、駆動軸A1上に配置され、アウタハウジング11に対する前後方向位置が調整可能に構成されている。より詳細には、アウタハウジング11の後端部には、ネジシャフト46と同軸状に配置された円筒部121が設けられている。円筒部121の内周面には、雌ネジが形成されている。ストッパボルト120は、円筒部121に螺入されることで、アウタハウジング11に連結される。使用者は、ストッパボルト120を回転させることで、ハウジング10に対するストッパボルト120の先端部の位置(アウタハウジング11の内部空間に突出するストッパボルト120の軸部の長さ)を調整することができる。
また、ネジシャフト46の後端部には、延設シャフト47が連結され、ネジシャフト46に一体化されている。延設シャフト47は、ネジシャフト46と同様、駆動軸A1に沿って延在している。なお、ストッパボルト120が最も深く(前方へ)螺入された場合であっても、ネジシャフト46が初期位置に配置されているときには、延設シャフト47の後端部はストッパボルト120の前端部よりも前方に配置される。一方、図15に示すように、ネジシャフト46と共に延設シャフト47が後方へ移動し、ストッパボルト120の前端部に当接すると、ストッパボルト120によって、延設シャフト47がそれ以上後方へ移動することが禁止される。つまり、ストッパボルト120は、延設シャフト47に干渉することで、ネジシャフト46およびピン把持部63の後方への移動を禁止するストッパとして機能する。本実施形態では、初期位置から、延設シャフト47がストッパボルト120に当接するときのピン把持部63の位置までの距離が、目標移動距離として用いられる。
なお、アウタハウジング11の後端部は、ストッパボルト120を覆うカバー部材125が着脱可能とされている。具体的には、アウタハウジング11の後端部には、円筒部121を囲むように、外周面に雄ネジが形成された円筒部122が設けられている。カバー部材125は、有底円筒状に形成されている。カバー部材125の開口端部の内周面には、円筒部122の雄ネジに螺合可能な雌ネジが形成されている。締結工具101の使用時には、カバー部材125が取り付けられ、ストッパボルト120がカバー部材125で覆われる。一方、使用者は、カバー部材125を取り外し、上述のようにストッパボルト120の位置調整(つまり、目標移動距離の調整)を行うことができる。
本実施形態の駆動制御処理では、第2実施形態と同様、図9に示す第1実施形態の駆動制御処理のうち、S101の処理が省略される。また、S105の処理における判断方法が第1実施形態とは異なる。しかしながら、全体的な処理の流れとその他のステップの処理内容は第1実施形態と同一である。より詳細には、処理開始の後、コントローラ154は、まず、トリガ151のスイッチ152がオン状態とされるまで待機し、スイッチ152がオン状態とされるとモータ2を駆動して、ネジシャフト46を初期位置から後方へ移動させる(S102〜S104)。延設シャフト47がストッパボルト120に当接する位置までネジシャフト46が移動されると、ネジシャフト46はそれ以上後方へ移動不能となる。これに伴ってモータ2の負荷が増大し、駆動電流が増大する。コントローラ154は、電流検出アンプ205から出力される信号に基づき、駆動電流が予め設定された閾値を超えたと判断した場合に、ネジシャフト46の実際の移動距離が目標移動距離に達したと判断し、モータ2を制動する(S105:YES、S106)。その後の処理は、第1実施形態と同様である。
以上に説明したように、本実施形態の締結工具101は、延設シャフト47に干渉することで、ピン把持部63の後方への移動を禁止するストッパボルト120を備えている。そして、コントローラ154は、ストッパボルト120によってピン把持部63の後方への移動が禁止された状態となり、モータ2の駆動電流値が閾値を超えると、ピン把持部63の実際の移動距離が目標移動距離に達したと判断し、モータ2の駆動を停止する。本実施形態によれば、物理的な構成としてのストッパボルト120によって、ピン把持部63が目標移動距離移動した時点で確実にピン把持部63の移動を止めることができる。
また、ストッパボルト120は、ハウジング10に対して先端部の前後方向位置を調整可能に構成されている。そして、ストッパボルト120の先端部の前後方向位置の調整によって、目標移動距離を調整することができる。よって、使用者は、実際に使用するファスナや作業材の仕様に応じて、既に設定されている目標移動距離を適切に変更することができる。特に、ストッパボルト120は、アウタハウジング11の後端部に螺合されているだけであるため、使用者は、ストッパボルト120の回転という非常に簡単な操作だけで位置調整作業を行うことができる。
上記実施形態は単なる例示であり、本発明に係る締結工具は、例示された締結工具1、100、101の構成に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。なお、これらの変更は、これらのうちいずれか1つのみ、あるいは複数が、独立して、または実施形態に示す締結工具1、100、101、あるいは各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
例えば、締結工具1、100、101で使用可能な非破断式の複数部材加締め式ファスナは、上記実施形態で例示されたファスナ9(図1参照)に限られない。例えば、ピン91およびカラー95の径や長さ、加締め溝912の形状、引張り領域914の構成等は、適宜、変更が可能である。図16に示すファスナ90は、締結工具1、100、101で使用可能な非破断式の複数部材加締め式ファスナの別の一例である。
ファスナ90は、ファスナ9と同様、ピン92とカラー96とを含む。カラー96は、ファスナ9のカラー95と概ね同一の構成を有する。ピン92は、ファスナ9のピン91と同様、軸部920とヘッド927とを含む。軸部920は、一定の径を有する加締め領域921と、加締め領域よりも小径の引張り領域924とを含む。引張り領域924は、軸部920のうち、ヘッド927とは反対側の端部領域を構成している。加締め領域921は、軸部920のうち、引張り領域924以外の部分(つまり、引張り領域924とヘッド927の間の部分)であって、軸部920の大部分を占めている。
加締め領域921は、カラー96を加締め可能な領域であって、加締め溝922を有する。なお、加締め溝922は環状溝であって、加締め領域921の全長に亘って複数が設けられている。引張り領域924は、ピン把持部63によって把持され、引っ張られる部分である。引張り領域924は、軸部920の先端929(ヘッド927とは反対側の端)を含む端部926と、端部926と加締め領域921の間に形成された単一の引張り溝925とを含む。端部926は、加締め領域921の径よりも若干小さい一定の径を有する。引張り溝925は、端部926の径よりも小さい一定の径を有する中央部と、中央部と加締め領域921を接続するテーパ部と、中央部と端部926とを接続するテーパ部とを含む。つまり、引張り溝925は断面台形状の溝である。
ファスナ90が使用される場合には、ピン把持部63のジョー630(詳細には爪631)は、引張り溝925に係合され、少なくとも、引張り溝925の中央部と端部926とを接続するテーパ部に接触した状態で、ピン92をカラー96に対して後方へ引っ張る。
ノーズ部6のアンビル61およびピン把持部63の構成は、適宜、変更されてよい。例えば、アンビル61の形状やハウジング10への連結態様は変更されてもよい。同様に、ピン把持部63のジョー630や爪631の形状、ネジシャフト46との連結態様等は、適宜、変更されてよい。また、締結工具1、100、101に、ファスナ9、90、および更に別のファスナに夫々対応する複数のノーズ部のうち1つが選択的に装着され、使用されてもよい。このような構成が採用される場合には、操作部51の操作によって、使用されるファスナの種類に応じて予め用意された複数の目標移動距離のうち1つが選択可能であってもよい。また、例えば、過去に使用されたファスナの種類と目標移動距離とが、互いに対応付けられた状態で、履歴として記憶されてもよい。この場合、使用者は、操作部51を介して、記憶された履歴から、使用するファスナに対応する目標移動距離を適宜選択することが可能となる。
また、操作部51は、必ずしも締結工具1、100、101に設けられる必要はない。例えば、締結工具1、100、101が、有線または無線によって、使用者による外部操作が可能な外部装置(例えば、携帯端末)と通信可能に構成されている場合、コントローラ154は、通信を介して外部装置から入力された情報に基づき、移動距目標移動距離を設定および/または調整するように構成されていてもよい。
操作・表示部5は、スイッチ511を有する操作部51と、LEDランプ531と7セグメントLED533を有する表示部53とで構成された例であるが、操作部51と表示部53の構成は、適宜、変更されてよい。例えば、操作・表示部5は、タッチパネルとして構成されていてもよい。また、操作部51と表示部53とは、必ずしも一体化される必要はなく、締結工具1の別個の位置に互いに独立して設けられてもよい。この場合、操作部51および表示部53のうち少なくとも一方は、上記実施形態のように、第1基板(メイン基板)155とは別の基板に搭載されていることが好ましい。
また、第1実施形態では、コントローラ154は、予め記憶された目標移動距離(目標値TC)、または操作部51を介して設定された目標移動距離を用いているが、コントローラ154は、例えば、過去に使用された目標移動距離の履歴に基づいて、目標移動距離を調整してもよい。具体的には、例えば、コントローラ154は、締結工程の1サイクルが終了する毎に、使用された目標移動距離を不揮発性メモリに記憶する。メモリには、例えば、直近の所定回数分の目標移動距離の履歴が記憶される。そして、コントローラ154は、駆動制御処理の開始直後のS101において、記憶された履歴に基づいて算出した最適値を、目標移動距離として設定してもよい。この場合、例えば、使用者は、試しとして、締結工具1に締結工程を複数サイクル繰り返させることで、最適化された目標移動距離を設定することができる。また、ピン把持部63の後方への移動開始後のモータ2の回転量は、パルスカウントに代えて、モータ2に供給される駆動パルスの数に基づいて算出されてもよい。また、コントローラ154は、ピン把持部63の実際の移動距離が目標移動距離に達した後、自動的にピン把持部63を初期位置に復帰させるのではなく、トリガ151の押圧操作解除に応じて(つまり、使用者の指示操作に応じて)スイッチ152がオフ状態とされた場合にピン把持部63を初期位置に復帰させてもよい。
第1〜第3実施形態の初期位置センサ71および第2実施形態の停止位置センサ77には、磁界検出式のセンサが採用されているが、他の方式のセンサ(例えば、フォトインタラプタ等の光学式のセンサ)や接触式(機械式)のスイッチが採用されてもよい。
第3実施形態のストッパボルト120は、延設シャフト47に当接することで、間接的にピン把持部63に干渉し、ピン把持部63の後方への移動を禁止する。これに代えて、ピン把持部63に直接当接することで、または、ネジシャフト46に当接することで、ピン把持部63の後方への移動を禁止する部材が設けられてもよい。また、ストッパボルト120や、第2実施形態の停止位置センサ77の前後方向位置の調整方法は、適宜、変更されてもよい。また、目標移動距離は必ずしも調整可能とされる必要はない。
モータ2、伝達機構3、および駆動機構4の構成についても、適宜、変更されてよい。例えば、モータ2としてブラシ付のモータが採用されてもよいし、交流モータが採用されてもよい。例えば、遊星減速機31の遊星歯車機構の数や中間シャフト33の配置等が変更されてもよい。また、駆動機構4は、例えば、ナット41と、ボールを介してナットに係合するネジシャフト46とを備えたボールネジ機構40に代えて、内周部に雌ネジが形成されたナットと、外周部に雄ネジが形成され、ナットに直接螺合されたネジシャフトとを備えた送りネジ機構が採用されてもよい。また、ボールネジ機構40は、ネジシャフト46が、前後方向の移動が規制され、且つ、回転可能に支持される一方、ナット41が、ネジシャフト46の回転に伴って前後方向に移動するように構成されていてもよい。この場合、ピン把持部63は、直接的または間接的にナット41に連結されればよい。
コントローラ154は、CPU、ROM、メモリ等を含むマイクロコンピュータにて構成される例が挙げられているが、コントローラ(制御回路)は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのプログラマブル・ロジック・デバイスで構成されていてもよい。また、上記実施形態の駆動制御処理は、CPUが、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより実現されればよい。この場合、プログラムは、コントローラ154のROMに予め記憶されていてもよいし、コントローラ154が不揮発性メモリを含む場合は不揮発性メモリに記憶されていてもよい。あるいは、プログラムは、データを読み取り可能な外部の記憶媒体(例えば、USBメモリ)に記録されていてもよい。上記実施形態および変形例の駆動制御処理は、複数の制御回路で分散処理されてもよい。
上記実施形態およびその変形例の各構成要素と本発明の各構成要素との対応関係を以下に示す。ファスナ9、90は、本発明の「非破断式の複数部材加締め式ファスナ」の一例である。ピン91、92およびカラー95、96は、夫々、本発明の「ピン」および「カラー」の一例である。軸部910、920およびヘッド917、927は、夫々、本発明の「軸部」および「ヘッド」の一例である。加締め溝912、922および引張り領域914、924は、夫々、本発明の「加締め溝」および「端部領域」の一例である。
締結工具1、100、101は、本発明の「締結工具」の一例である。駆動軸A1は、本発明の「駆動軸」の一例である。アンビル61およびピン把持部63は、夫々、本発明の「アンビル」、「ピン把持部」の一例である。モータ2は、本発明の「モータ」の一例である。駆動機構4は、本発明の「駆動機構」の一例である。コントローラ154(CPU)は、本発明の「制御部」および「制動部」の一例である。停止位置センサ77は、本発明の「検出器」の一例である。ストッパボルト120は、本発明の「ストッパ」の一例である。表示部53は、本発明の「表示部」の一例である。
更に、本発明および上記実施形態とその変形例の趣旨に鑑み、以下の態様が構築される。以下の態様は、実施形態に示す締結工具1、上記変形例、または各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
[態様1]
使用者による外部操作が可能に構成され、前記目標移動距離を設定するための情報、および、設定された前記目標移動距離を変更するための情報のうち少なくとも一方が入力される操作部を更に備え、
前記制御部は、前記操作部から入力された情報に基づいて、前記目標移動距離を設定または調整するように構成されていてもよい。
[態様2]
前記モータは、ステータとロータを含むブラシレスモータであって、
所定の回転位置に配置された前記ロータを検出するように構成された回転位置センサを更に備え、
前記制御部は、前記回転位置センサの出力に基づいて前記モータの回転量を特定するように構成されていてもよい。
[態様1]
使用者による外部操作が可能に構成され、前記目標移動距離を設定するための情報、および、設定された前記目標移動距離を変更するための情報のうち少なくとも一方が入力される操作部を更に備え、
前記制御部は、前記操作部から入力された情報に基づいて、前記目標移動距離を設定または調整するように構成されていてもよい。
[態様2]
前記モータは、ステータとロータを含むブラシレスモータであって、
所定の回転位置に配置された前記ロータを検出するように構成された回転位置センサを更に備え、
前記制御部は、前記回転位置センサの出力に基づいて前記モータの回転量を特定するように構成されていてもよい。
1、100、101:締結工具
10:ハウジング
11:アウタハウジング
111:ローラガイド
120:ストッパボルト
121:円筒部
122:円筒部
125:カバー部材
13:インナハウジング
14:ノーズ保持部材
145:固定リング
15:ハンドル
151:トリガ
152:スイッチ
153:コントローラ収容部
154:コントローラ
155:第1基板
158:バッテリ装着部
159:バッテリ
2:モータ
20:モータ本体部
201:三相インバータ
203:ホールセンサ
205:電流検出アンプ
21:ステータ
23:ロータ
25:モータシャフト
27:ファン
3:伝達機構
30:減速機ハウジング
31:遊星減速機
33:中間シャフト
35:ナット駆動ギア
311:太陽ギア
313:キャリア
4:駆動機構
40:ボールネジ機構
41:ナット
411:被動ギア
412:ベアリング
413:ベアリング
46:ネジシャフト
463:ローラ保持部
464:ローラ
47:延設シャフト
485:磁石保持部
486:磁石
49:連結部材
5:操作・表示部
50:第2基板
51:操作部
511:スイッチ
53:表示部
531:LEDランプ
533:7セグメントLED
6:ノーズ部
61:アンビル
617:テーパ部
63:ピン把持部
630:ジョー
631:爪
632:基部
71:初期位置センサ
73:支持板
731:ガイド孔
74:センサ保持部
741:フランジ部
75:ナット
77:停止位置センサ
9、90:ファスナ
91、92:ピン
910、920:軸部
911、921:加締め領域
912、922:加締め溝
914、924:引張り領域
915、925:引張り溝
926:端部
917、927:ヘッド
929:先端
95、96:カラー
951:フランジ
953:係合部
A1:駆動軸
A2:回転軸
W:作業材
10:ハウジング
11:アウタハウジング
111:ローラガイド
120:ストッパボルト
121:円筒部
122:円筒部
125:カバー部材
13:インナハウジング
14:ノーズ保持部材
145:固定リング
15:ハンドル
151:トリガ
152:スイッチ
153:コントローラ収容部
154:コントローラ
155:第1基板
158:バッテリ装着部
159:バッテリ
2:モータ
20:モータ本体部
201:三相インバータ
203:ホールセンサ
205:電流検出アンプ
21:ステータ
23:ロータ
25:モータシャフト
27:ファン
3:伝達機構
30:減速機ハウジング
31:遊星減速機
33:中間シャフト
35:ナット駆動ギア
311:太陽ギア
313:キャリア
4:駆動機構
40:ボールネジ機構
41:ナット
411:被動ギア
412:ベアリング
413:ベアリング
46:ネジシャフト
463:ローラ保持部
464:ローラ
47:延設シャフト
485:磁石保持部
486:磁石
49:連結部材
5:操作・表示部
50:第2基板
51:操作部
511:スイッチ
53:表示部
531:LEDランプ
533:7セグメントLED
6:ノーズ部
61:アンビル
617:テーパ部
63:ピン把持部
630:ジョー
631:爪
632:基部
71:初期位置センサ
73:支持板
731:ガイド孔
74:センサ保持部
741:フランジ部
75:ナット
77:停止位置センサ
9、90:ファスナ
91、92:ピン
910、920:軸部
911、921:加締め領域
912、922:加締め溝
914、924:引張り領域
915、925:引張り溝
926:端部
917、927:ヘッド
929:先端
95、96:カラー
951:フランジ
953:係合部
A1:駆動軸
A2:回転軸
W:作業材
Claims (8)
- 加締め溝が形成された軸部と、前記軸部の一端部に一体形成されたヘッドとを有するピンと、前記ピンとは別体として形成され、前記軸部に係合可能に構成された円筒状のカラーとを含む非破断式の複数部材加締め式ファスナによって作業材を締結する締結工具であって、
前記カラーに係合可能に構成されたアンビルと、
前記締結工具の前後方向に延在する駆動軸に沿って、前記アンビルに対して相対移動可能に配置されるとともに、前記軸部の前記ヘッドとは反対側の端部領域を把持可能に構成されたピン把持部と、
モータと、
前記モータの動力によって駆動され、前記ピン把持部を前記アンビルに対して前後方向に移動させるように構成された駆動機構と、
前記モータの駆動を介して前記駆動機構の動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記端部領域を把持した状態の前記ピン把持部を初期位置から後方へ移動させるように前記駆動機構を制御することで、前記軸部に係合された前記カラーを、前記アンビルによって前記軸部の前記加締め溝に加締め、前記ピン把持部の前記初期位置からの実際の移動距離が目標移動距離に達した場合、前記モータの駆動を停止するように構成されていることを特徴とする締結工具。 - 請求項1に記載の締結工具であって、
前記制御部は、前記実際の移動距離が前記目標移動距離に達した場合、前記ピン把持部を前方へ移動させ、前記初期位置に復帰させるように前記駆動機構を制御するように構成されていることを特徴とする締結工具。 - 請求項1または2に記載の締結工具であって、
前記実際の移動距離が前記目標移動距離に達した場合、前記モータを制動するように構成された制動部を更に備えたことを特徴とする締結工具。 - 請求項1〜3の何れか1つに記載の締結工具であって、
前記締結工具は、前記目標移動距離を調整可能に構成されていることを特徴とする締結工具。 - 請求項1〜4の何れか1つに記載の締結工具であって、
前記制御部は、前記ピン把持部の後方への移動開始後の前記モータの回転量に基づいて、前記実際の移動距離が前記目標移動距離に達したか否かを判断するように構成されていることを特徴とする締結工具。 - 請求項1〜4の何れか1つに記載の締結工具であって、
前記ピン把持部が、前記初期位置よりも後方の検出位置に配置されたことを検出するように構成された検出器を更に備え、
前記制御部は、前記検出器の検出結果に基づいて、前記実際の移動距離が前記目標移動距離に達したか否かを判断するように構成されていることを特徴とする締結工具。 - 請求項1〜4の何れか1つに記載の締結工具であって、
前記ピン把持部に直接的または間接的に干渉し、前記ピン把持部が後方へ移動するのを禁止するストッパを更に備え、
前記制御部は、前記ストッパによって前記ピン把持部の後方への移動が禁止された場合に、前記実際の移動距離が目標移動距離に達したと判断するように構成されている締結工具。 - 請求項1〜7の何れか1つに記載の締結工具であって、
前記目標移動距離に対応する情報を表示可能に構成された表示部を更に備えたことを特徴とする締結工具。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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